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高等学校物理/物理II/電気と磁気
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2024-11-08T05:51:32Z
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text/x-wiki
== 静電誘導と誘電分極 ==
=== コンデンサー ===
{{Main|高等学校物理/物理I/電気#コンデンサー}}
=== 誘電体 ===
まず、高校物理でいう「誘電体」(ゆうでんたい)とは、通常のセラミック、雲母(マイカ)、あるいは通常のプラスチックなどのように、電気を通さない物質である。セラミックやマイカのように、石のような性質をもつ物質が、誘電体である場合が多い。
つまり、金属は、誘電体ではない。金属は、誘電体ではなく、(金属は)導体である。
では、誘電体の物理について、説明する。
[[File:誘電体コンデンサー.svg|thumb|400px|誘電体を入れたコンデンサー]]
コンデンサーに誘電体を入れると、誘電体が誘電分極を起こすため、コンデンサのプラス極板で発生した電気力線のいくつかが打ち消される。
その結果、誘電体の入ったコンデンサーの極板間の電場は、極板の電荷密度で発生する電荷が真空中でつくる電場よりも弱くなる。
この結果、静電容量が変わる。
さて、真空中の静電容量の公式は、
:<math>C=\varepsilon_0 \frac{S}{d}</math>
であった。
誘電体のある場合の静電容量は、
:<math>C=\varepsilon \frac{S}{d}</math>
となる。
ここで、 <math>\varepsilon </math>を'''誘電率'''(ゆうでんりつ)という。
<math>\varepsilon_0 </math>を、'''真空中の誘電率'''という。
{| class="wikitable" style="float:right"
|+ 物質の比誘電率
|- style="background:silver"
! 物質 !! 比誘電率
|-
| 空気 (20℃) || 1.0005
|-
| パラフィン (20℃) || 2.2
|-
| ボール紙 (20℃) || 3.2
|-
| 雲母 || 7.0
|-
| 水 (20℃) || 約80
|-
| チタン酸バリウム || 約5000
|-
|}
ここで、比
:<math> \varepsilon _r = \frac{\varepsilon}{\varepsilon_0}</math>
を、'''比誘電率'''(ひ ゆうでんりつ)という。
つまり、<math> \varepsilon _r </math> は比誘電率である。
いっぽう、 <math> \varepsilon _0 </math> および <math> \varepsilon </math> は、比誘電率ではない。
比誘電率 <math> \varepsilon _r </math> をもちいれば、静電容量 C の式は、
:<math> C = \varepsilon \frac{S}{d} = \varepsilon _r \varepsilon _0 \frac{S}{d} </math>
と書ける。
=== コンデンサの静電エネルギー ===
:
U=2⁻¹CV²
=2⁻¹QV
=(2C)⁻¹Q²
== 電流による磁界 ==
磁石のまわりには物体を動かす力のあるものが生じている。
これを'''磁場'''(じば)と呼ぶ。'''磁界'''(じかい)ともいう。
電流が流れているときにも、そのまわりには、右ねじの法則(right-handed screw rule)に従う向きに磁界が生ずる。
電流I[A]が直線的に流れているとき、磁界の大きさは
<math>
B = \frac {\mu_0} {2\pi a} I
</math>
であることが知られている。
ここで、aは磁束密度を測る点と、電線の距離。
また、<math>\mu_0</math>は真空の透磁率(とうじりつ、permeability)を表し、値は <math>4\pi \times 10^{-7}</math>[H/m] である。
<!-- アンペールの法則? -->
=== 電磁誘導と電磁波 ===
==== 電磁誘導 ====
磁場を伴う物体が運動すると、そのまわりには電場が生ずることを'''電磁誘導'''(でんじゆうどう、electromagnetic induction)という。
仮に、ソレノイド(solenoid、コイルのこと)の近くでそれを行なったとすると、生じた電場によってソレノイドの中には電流が流れる。
生ずる電場の大きさは、
<math>
\vec E = \frac 1 {2\pi a} \frac {d\vec B}{d t}
</math>
となる。(半径aの円形のコイルの場合。)
Eの単位は[V/m]であり、Bの単位は[T]である。
==== 電磁波 ====
磁場の変化によって電場が生じる現象は、電磁誘導の節で説明した通りである。また、実験によって電場の変化が磁場を引き起こすことも知られており、これにより何もない空間中で電場と磁場が伝播することが予想される。
(:電磁波の伝播のスキマティックな図)
: ※ 市販の大学向け教科書を読んでも、ヘルツの実験に関する説明が不足しているため、高校での説明が求められる。
: ※ なお、高校の専門科目『物理』で学ぶ内容である。
物理実験家ヘルツは、放電実験を通じて受信機を回路中に設置し、送信側の放電によって電場が遠く離れた受信側の回路に伝わることを確認した。この実験では、ヘルツが受信回路の向きを変えながら実験を行ったことにより、送信機の向きに対する受信機の向きによって電場の伝わり方が異なることが分かった。このことから、電場には遠隔作用に偏光性があることが示唆される。
: (※ 範囲外)なお、方解石などの偏光作用は、既にこの時代に知られていたと考えられる。
電場のこの特性には偏光性があるため、波として扱うことは適切である。
ヘルツの実験から得られる知見としては、
* 電場は遠隔作用によって伝わること
* 放電は電場の遠隔作用を引き起こすこと
* この電場の遠隔作用には偏光作用があること
が実験的に確認された。
物理学の分野では、ヘルツの実験の以前から、理論物理学者マクスウェルによって、電磁波が電場と磁場の相互作用によって真空中を伝達することが予測されていた。そのため、ヘルツの実験はマクスウェルが予測した電磁波の証明と見なされている。現代においても、物理学者たちはそのように考えている。
また、マクスウェルが理論的に求めた電磁波の速度は、既に知られていた光速(おおよそ3×10<sup>8</sup> m/s)と精度良く一致していた。このことから、光が電磁波の一種であることが明らかとなる。
:(啓林館の教科書にある余談:)余談ではあるが、人類初の無線通信に成功したのはマルコーニであり、ヘルツではないため、誤解のないように留意されたい。
ヘルツの実験では、厳密には放電による電場の伝播が観測されたが、磁場もこの実験で伝播すると考えられ、実際に人類には支障は生じていないため、今でもヘルツの実験がマクスウェルの予測した電磁波の証明として伝えられている。
光には反射、屈折、回折、さらにはヤングのスリットによる回折などの現象が見られるが、ヘルツの放電実験でも同様の配置で金属板を配置し、電磁波の反射、屈折、回折が確認されている(※ 参考文献: 実教出版の専門『物理』の検定教科書)。これにより、光が電磁波の一種であることが示されている。
:(※ 範囲外:)また、電磁波の反射を利用して波長を測定することに、ヘルツは成功した<ref>西條敏美『測り方の科学史 II 原子から素粒子へ』、恒星社、2012年3月15日初版発行、45ページ<br>北海道大学出版『近代科学の源流~物理学編』1974~1977年を参考にしたようだが、北海道大のこの文献は絶版である</ref>。電磁波を反射させることで、到来する波と干渉して定常波を形成するはずである。ヘルツの実験例では、受信機を送信機から離すと、33cmごとに顕著な反応が見られた。この実験では半波長が33cmであったと推測され、すなわち波長66cmの電磁波が実験で生成されたと思われる。
: ただし、ヘルツのような方法で測定できる波長は、人間が肉眼で確認でき、手で動かせる程度の波長に限られる。つまり、センチメートル単位や1メートル以上の波長である。一方、波長がナノメートル単位やマイクロメートル単位の場合は、回折格子などを用いて波長を測定することになる。詳しくは『[[高等学校物理/物理II/原子と原子核]]』のコラムを参照されたい。フラウンホーファーやラザフォードなどの物理学者がスペクトル用の回折格子を作成している。
{{コラム|(※ 範囲外: )医療MRIの磁気の波も、物理学的には電磁波|width=100%|2=医療分野において、磁気共鳴画像法(MRI)は、X線などの放射線を使わずに人体内部の詳細な画像を取得する技術として広く利用されている。MRIの基本的な原理は、体内の水素原子と磁場との相互作用を利用しており、この技術は患者にとって安全であると広く認識されている。
しかし、MRIの磁場に関する理解を深めるためには、物理学的な観点からの考察が重要だ。MRIは強力な磁場を使用し、その中で水素原子が特定の周波数で共鳴する。この共鳴により、体内の水素原子から放出される信号を捉えて画像化する。ここで注目すべきは、この信号が電磁波の一種であるということだ。
マクスウェルの方程式によれば、電場の変化が生じると、磁場も変化し、その逆もまた然りである。したがって、MRIのように強い磁場が作用する環境では、電場も生じることになる。MRIで用いられる磁場は、患者の体内に存在する水素原子からの信号を生成し、これを受信することで画像を形成するが、この過程も電磁波の生成に関連している。
このように、MRIでの磁気の波は、単に磁場の変化に留まらず、物理学的には電磁波として理解されるべきである。この観点から見ると、MRIが生成する信号は、電磁波の一種として捉えることができ、従って、電磁波に関する理論や法則が適用される。
患者がMRIを受ける際、体内を通過する電磁波が安全である理由は、これらの波が非常に低いエネルギーを持つためだ。X線とは異なり、MRIの電磁波は生体に対する影響が少なく、非侵襲的な画像診断を可能にする。したがって、MRIは多くの医療現場で不可欠なツールとなっている。
MRIにおける磁気の波とその物理的な性質を理解することは、医療技術の進歩だけでなく、医療現場での信頼性や安全性を高めるためにも重要だ。今後の研究や技術の発展により、MRIがさらに進化し、より多くの人々に利益をもたらすことが期待される。
}}
== 磁性体 ==
[[File:Magnetic field near pole.svg|thumb|right|200px|棒磁石の周りに方位磁針を置いて磁場の向きを調べる。]]
磁石のまわりには別の磁石を動かす力のもととなるものが生じている。
これを'''磁場'''(じば、magnetic field)あるいは'''磁界'''(じかい)と呼ぶ。(日本の物理学では磁場と呼ぶことが多く、また、日本の電気工学では磁界と呼ばれることが多い。明治期の訳語の際の、日本国内の業界ごとの違いに過ぎず、地域社会的な事象であり、呼び方は物理の本質とは関係ないので、ここでは、どちらの表現を用いるかは、本書では特にこだわらない。英語では物理学・電気工学とも“magnetic field”で共通している。)
鉄やコバルトやニッケルに磁石を近づけると、磁石に吸い付けられる。
また、鉄やコバルトやニッケルに強い磁化を与えると、鉄やコバルトやニッケルそのものが磁場を周囲に及ぼすようになる。
このような、もともとは磁場を持たなかった物体が、強い磁場を受けたことによって磁場を及ぼすようになる現象を'''磁化'''(じか、magnetization)という。
あるいは電荷の静電誘導と対応させて、磁化のことを'''磁気誘導'''(じきゆうどう、magnetic induction)ともいう。
そして、鉄やコバルトやニッケルのように、磁石に引き付けられ、さらに磁化をする能力がある物体を'''強磁性体'''(きょうじせいたい、ferromagnet)という。
鉄とコバルトとニッケルは強磁性体である。
銅は磁化しないし、銅は磁石に引きつけられないので、銅は強磁性体ではない。
;磁気遮蔽
静電誘導を利用した、静電遮蔽(せいでんしゃへい)と言われる、中空の導体をつかって物質を囲むことで外部電場を遮蔽する方法があったのと同様の、磁気の遮蔽が、強磁性体でも出来る。中空の強磁性体を用いて、強磁性体の内部は磁場を遮蔽できる。これを'''磁気遮蔽'''(じきしゃへい、magnetic shielding)という。磁気シールドともいう。
:磁性体:magnetic substance
:強磁性体:ferromagnet
:常磁性体:paramagnetic substance
:反磁性体:diamagnetic snbstance
反磁性体が分かりづらいかもしれないが、単に、その材料に加えられた磁場を打ち消す方向に、磁化をするだけの材料である。
そもそも、磁力線とあまり相互作用しない物質も多い。たとえば、ガラスや水による、磁気への影響は、真空の場合とほとんど変わらない。ガラスや水の比透磁率(ひ とうじりつ) μ (ミュー)は、ほぼ1である。
なお、鉄の比透磁率は、状態によって透磁率に数百〜数千の違いがあるが、wikipedia日本語版で調べた場合の鉄の透磁率は約5000である。
では、透磁率がほぼ1の物質は、磁場の方向は、外部磁場を基準として、どちら向きだろうか? 外部磁場を打ち消す方向に磁化しているのだろうか? それとも、外部磁場と同じ方向に磁化しているのだろうか?
その違いこそが、常磁性(じょうじせい)と反磁性(はんじせい)のちがい、である。
ある物質が、外部磁場にほとんど反応しないが、しかし少しだけ外部磁場と同じ方向に、磁化をしている現象のことを常磁性といい、そのような物質を常磁性体という。常磁性体をあらわす物質として、アルミニウムや空気などある。
一方、ある物質が、外部磁場にほとんど反応しないが、しかし少しだけ外部磁場を打ち消す方向に、磁化をしている現象のことを反磁性といい、そのような物質を反磁性体という。反磁性体をあらわす物質として、銅や水や水素などがある。
== ※ 範囲外: スピンと磁性体 ==
元素や分子の種類によって、磁性のちがいがある理由として、化学結合での電子軌道に原因があると考えられている。
化学の教科書の発展事項に、「s軌道」や「p軌道」などの理論があるが、この理論で、その理由を説明できるとされている。なお、答を先にいうと、「d軌道」の特徴が、磁性の原因である。(証明は省略)
元々、(化学結合で電子殻(でんしかく)に発生することのある)孤立電子には磁性があり、その磁性が電子が2個そろって(孤立でなくなり)電子対になる事で、磁性が打ち消しあっていると考えられる。なお、孤立電子がもともと持っている磁性のことを'''スピン'''という。よく化学の理論では、スピンを上矢印「↑」と下矢印「↓」の2種類であらわす事が多いのであるが、その理由はもとをたどれば、そもそも磁石の向きが2種類(たとえばN極とS極という2種類の極がある)であるからである。
電子殻とは、化学Iの始めのほうでも習う、「K殻は8個の電子が入る」などの、アレのことである。
まとめると、
:* そもそも単独の1個の電子には、じつは磁性がある。そのため、孤立電子には磁性がある(スピン)。そしてこの磁性こそが(電子の「スピン」と言われる磁性こそが)、おそらく孤立電子が電子対になろうとする理由のひとつであり、つまりそもそも共有結合が起きる理由のひとつであろう。
:* しかし、化学反応によって孤立電子は、化学結合として、すぐに周囲の分子や原子と結合してしまうので、孤立電子ではなく電子対になってしまい、2個の反対方向の磁性をもった電子対が、磁性を打ち消しあう。おそらく、このような理由により、多くの(化学結合の結果である)物質は、外部磁場との相互作用が弱い物質が多く、強磁性となる元素や分子の物質は少なく、多くの元素や分子の物質は常磁性または反磁性になってしまうであろう。
{{コラム|※ 範囲外: ハードディスクの「スピンヘッド」とは?|
すでにパソコンなどのハードディスクの読みとりヘッドのセンサーで「スピンヘッド」という技術が実用化されてるが、しかし、これは、けっして、各電子のスピンに情報を記録しているわけではない。
そもそも、ハードディスクのディスク側の技術ではなく、ディスクの情報を読み取るセンサーであるヘッド側の技術である。
このスピンヘッドは、「巨大磁気抵抗効果」(きょだい じきていこう こうか)と言われる現象を利用しており、このような物理現象の起きる原理として仮説としてスピンが想像されているので「スピンヘッド」というのである。
「巨大磁気抵抗効果」とは、厚さが うすめ(厚さ 数ナノメートルほど)の非磁性体の導体金属を、上下に磁性体の層で挟むと、その上下の磁性体が同じ向きに磁化している場合と、いっぽう反対方向に磁化している場合とで、挟まれた非磁性の導体金属の電気抵抗の値が、違っている、という現象である。
ハードディスクの応用のほかにも、高精度の磁気センサーとして、「スピンヘッド」技術は実用化している。
いっぽう、この「スピンヘッド」技術とは別に、磁気抵抗効果を、パソコンのメモリー内にある個々のメモリー素子に応用する事で大容量かつ電力消費のすくない「磁気メモリ」をつくろうとする研究開発がされており、エレクトロニクスならぬ「スピントロニクス」として期待されている。しかし、「上下の磁性体の磁化の向きを変えるための電気コイル回路を、どうやって微小化して、素子として大量に配置すればいいのか?」という未解決の難題があり、よって2017年の時点では、まだ、高容量の磁気メモリーは実用化していない。
}}
== ※ 範囲外: 「強誘電体」と圧電体 ==
「磁性体に『強磁性体』があるのなら、誘電体にも『強誘電体』があるのか?」のような疑問は、とうぜん、思うであろう。
チタン酸鉛 <chem>PbTiO3</chem> や、ニオブ酸リチウム <chem>LiNbO3</chem> が、「強誘電体」に分類される場合もある。
しかし、強磁性体が磁気テープや磁気ハードディスクなどの記録メディアに用いられている状況とは異なり、「強誘電体」は記録メディアには用いられていない。過去には、そのような「強誘電体メモリ」を目指す研究開発もあったが、しかし2017年の時点では、まだ「強誘電体メモリ」のようなデバイスは実用化していない。
ただし、他の用途で、これらの物質は産業に実用化されている。
チタン酸鉛やニオブ酸リチウムは、この物質に圧力をくわえると電圧が発生する事から、圧電体(あつでんたい)という素子として活用されている。(※ 『[[高等学校化学I/セラミックス]]』で「圧電性セラミックス」として圧電体を紹介。高校化学の範囲内である。2017年の現在では高校3年の選択化学(専門化学)の範囲内だろう。)
なお、これらの圧電体に、電圧をくわえると、物質がひずむ。
このため、圧電体に交流電圧を加えることで、圧電体が短時間で何回も周期的に振動することにより、圧電体の周囲にある空気も振動させる事ができるので、超音波を発生するための素子として、すでに実用化されている。
なお、ある種類の物質が、圧力をくわえると電圧が発生する現象が起きる物質の場合、そのような性質のことを圧電性(あつでんせい)という。
== 半導体 ==
ケイ素 Si やゲルマニウム Ge は、導体と絶縁体の中間の抵抗率をもつことから、ケイ素({{Lang-en-short|silicon}})やゲルマニウム({{Lang-en-short|germanium}})などは半導体と言われる。
この半導体の結晶に、わずかに、リンPなどの不純物を入れることで、抵抗率を大きく下げられる。
:(※ 範囲外、注釈: )暗黙の前提すぎるので、検定教科書ではいちいち説明されないかもしれないが、いわゆる「パソコン」や「コンピュータ」などのハードウェアの内部は、主に半導体からなる部品である。
:パソコン部品のうち、いわゆる「メモリ」や、なんとか「チップ」とか言われる部分の材料は、たいてい、下記のような意味でのシリコン半導体からなる部品である、
=== n型半導体 ===
ケイ素原子は価電子が4個であり、ケイ素の結晶は、4つの価電子が共有結合をしている。
これにリンPが加わると、リンは価電子が5個なので、1個の価電子が余り、この余った価電子が自由電子として、結晶を動き回れるようになる。
このような仕組みで、ケイ素にリンを加えることで、抵抗率が大きく下がる、というのが定説である。
このように、負の電子が余ることで、導電率が上がってる半導体を '''n型半導体''' という。(「n」は negative の略。)
=== p型半導体 ===
シリコンの結晶に、不純物として、ホウ素BやアルミニウムAlなど、価電子が3個の元素が加わると、電子が1個、足りなくなる。
この、電子の不足したぶんの空席を'''正孔'''(postive hole、ホール)という。
正孔は正電荷をもつ。
電圧が掛かると、この正孔を埋めるように近くの結合にあった電子が移動するが、もとの電子があった場所に新たな正孔ができるので、見かけ上は正孔が電子と逆方向に動いたように見える。
よって、正孔が動くことで、電流を流している、と見なせる。
また、このように、正の電荷をもつ粒子によって導電率が上がってる半導体を '''p型半導体''' という。(「p」は positive の略。)
=== キャリア ===
n型半導体では電子が電流を運ぶ。
p型半導体では正孔が電流を運ぶ。
このように、半導体中での電流の担い手を、'''キャリア'''(carrier)という。
つまり、n型半導体のキャリアは電子で、p型半導体のキャリアは正孔である。
=== pn接合 ===
[[File:ダイオードの順方向.svg|thumb|300px|ダイオードの順方向。電流は流れる。]]
[[File:ダイオードの逆方向.svg|thumb|300px|ダイオードの逆方向。電流は流れない。]]
p型半導体とn型半導体を接合し(pn接合)た物体が、一方向のみに電流を流す。
このような部品を'''ダイオード'''(diode)という。
p側に正電圧を掛け、n側に負電圧を掛けた時、電流が流れる。
一方、p側に負電圧を描け、n側に正電圧を掛けても、電流が流れない。
回路において、ダイオードが電流を流す向きを'''順方向'''(じゅんほうこう)という。順方向とは反対向きを'''逆方向'''という。ダイオードの逆方向には、電流は流れない。
このように一方向に流れる仕組みは、ダイオードでは、つぎのような仕組みで、電流が流れるからである。
このように一方向にだけ電流を流すことを'''整流'''(せいりゅう)という。なお、半導体を使わなくても、真空管でも整流だけなら可能である。(ただし真空管の場合、熱の発生が膨大であったり、耐久性が劣るので、電子部品としての実用性は、空管は低いので、現代は真空管は電子部品としては使われていない。)
パソコンで、デジタル波形やデジタル信号のように四角の電流波形を作っている方法は、おおむね、このダイオードと、後述するトランジスタとを、うまく組合せることで、デジタル波形をつくるという仕組みである。(※ 数研出版の検定教科書も、そういう見解である。)
* p側に正電圧を掛け、n側に負電圧を掛けた時
ダイオードのp側に正電圧をかけ、n側に負電圧をかけると、p側では正電極の正電圧から正孔が反発して接合面へと向かい、n側では電子が負電極から反発して接合面へと向かう。そして、接合面で正孔と電子がであい、消滅する。この結果、見掛け上、正電荷が、正電極から負電極に移動したのと、同等の結果になる。
そして、正電極から、つぎつぎと正孔が供給されるので、電流が流れ続ける。
* p側に負電圧を描け、n側に正電圧を掛けた時
いっぽう、p側に負電圧を描け、n側に正電圧を掛けた時、p側では正孔は電極(電極には負電圧が掛かっている)に引き寄せられ、接合面からは遠ざかる。同様にn側では電子が電極(正電圧が掛かってる)に引き寄せられ、接合面からは遠ざかる。
この結果、接合面には、余分な正孔も余分な電子もない状態となり、よって接合面の付近にはキャリアがなく、この接合面付近のキャリアの無い部分は'''空乏層'''(くうぼうそう、depletion layer)と呼ばれる。
そして、それ以降は、正孔も電子も、もうどこにも移動の余地がないので、よって電流が流れない。
{{コラム|※ 範囲外: 「半導体」とは?|
物理学や化学でいう半導体とは、上述のように、シリコンなどの結晶および、それらの結晶に、不純物を加えることで電気特性を調整した物質の事である。
いっぽう、磁性体は、半導体ではない。
しかし、世間一般では、大企業の「半導体メーカー」とされる企業が生産した電子部品が、まとめて「半導体」と言われることもあり、このため、たとえ磁性体を活用した製品であり、半導体をあまり活用していない製品であっても、半導体と言われることも多い。
よくある例としては、磁気ハードディスクですら「半導体」と言われる場合もある。
しかし、物理学では、磁性体は、けっして半導体ではない。化学でも同様に、「磁性体は、けっして半導体ではない」として扱う。
磁性体だけでなく、液晶も同様である。 同様に、液晶ディスプレイも、液晶のぶぶんは、半導体ではない。
大学の物理や化学でも、磁性体は、半導体ではない、として扱う。液晶も同様であり、大学では、液晶は半導体ではない、として扱う。
本wikibooks高校教科書でも、磁性体や液晶は、半導体ではない、として扱う。
なお、中学高校の社会科の地理科目の工業統計では、きちんと「電子部品」という表現で、半導体や液晶、ハードディスクなどを、まとめて表現している。
}}
=== トランジスタ ===
[[ファイル:Transistor description ja.svg|right|frame|NPN型トランジスタの模式図(バイポーラトランジスタ)]]
半導体を3つnpnまたはpnpのように組み合わせると、電流を増幅(ぞうふく)することができる。'''増幅作用'''(ぞうふくさよう)という。
NPNとは、片端から順に見てN型・P型・N型の順に並んでるという事である。
同様に、PNPとは、片端から順に見てN型・P型・N型の順に並んでるという事である。
増幅といっても、けっして無からエネルギーが発生するわけではないので、混同しないように。
説明の簡略化のため、外部電源が省略される事があるが、実際は外部電源も必要である。半導体素子は小さな電流しか流せぬから、電流を減らすための抵抗素子としての保護抵抗(ほごていこう)も必要である。
なお、図のように長方形状に並んでいる方式のトランジスタを'''バイポーラトランジスタ'''という。(※ 検定教科書の数研出版の教科書で、「バイポーラトランジスタ」をコラムで習う。)
バイポーラトランジスタには、端子が主に3つあり、「エミッタ」や「ベース」や「コレクタ」という合計3つの端子がある。
バイポーラトランジスタでの電流の増幅とは、ベース電流を増幅してコレクタに集めるである(PNPの場合)。電流の向きはPNP型のばあいと NPP型のばあいとでは異なるが、どちらの場合でもベース電流が増幅されるという仕組みは共通である。
さて、模式図では模式的に真ん中の半導体はうすめ、小さめに書かれるが、実際のトランジスタは真ん中の半導体はそうではないので、参考程度に。
教育では、半導体の高校生や専門外(電子専攻以外)の人むけには、よくバイポーラトランジスタが単純なので紹介されるが、実際に市販のコンピュータ部品などでよく使われるトランジスタの方式は、これとは形状がけっこう異なる。
市販のコンピュータ部品のトランジスタには、電界効果トランジスタといわれる方式のものが、よく用いられる。(もちろん、電界効果トランジスタにも、「増幅」の機能がある。)
:(※ 啓林館の検定教科書で、「電界効果トランジスタ」がコラム欄で紹介されている。)
:※ 電界効果型の場合は、「ソース」や「ゲート」や「ドレイン」などの端子がある。原理は異なるので、対応はしない。
(※ 詳しくは大学の電気工学または工業高校の電子回路などの科目で習う。)
{{-}}
トランジスタは、回路図では、模式的に下図のように書かれる。
[[File:NPN transistor symbol jp.svg|thumb|300px|left|NPNトランジスタの図記号。]]
[[File:PNP transitor symbol.svg|thumb|center|PNPトランジスタの図記号。]]
{{-}}
{{コラム|半導体の範囲外の話題のあれこれ|
;「真空管トランジスタ」とは別物
実は、電流増幅回路をつくるだけなら、真空管でも作れるが現代では真空管には経済的な実用性が無いので、真空管の増幅回路は、一般の製品にある電子部品としては、使われていない。なお、真空管の電流増幅回路のことも「トランジスタ」というので、混同しないように注意のこと。
;露光機なしでも手作業でトランジスタを作れるという報告あり
学術書の出典は無いので、やや不確かさな情報であるが、 実はダイオードやトランジスタは、作るだけなら、材料を融かす「るつぼ」などの高温用設備さえあれば、あとは材料のシリコンや添加物のリンなどだけで、作れてしまうと言われている。(つまり、露光機(ろこうき)などの微細加工の設備は、無くてもダイオードなどを作れる、という。)
そもそも、半導体トランジスタの発明者が試作品として点接触トランジスタを製造した時代には、まだ露光機などの設備は無かったのだから、考えてみれば露光機なしでもトランジスタ自作が可能なのは当然といえば当然ではある。
歴史的な経緯で、理科教育では半導体工学を説明する際に、トランジスタなどの発明当時の先端理論である「量子力学」(りょうし りきがく)という原子スケールの世界の物理法則の理論をまとめて説明するので、あたかも半導体の製造にも原子スケールの微細加工のための設備が不可欠のように想像しがちであるが、実は露光機などの設備はなくてもトランジスタは作れてしまうらしい。
露光機などを使わないで材料とルツボなどの比較的に単純な設備だけで手作業的に自作した半導体は、集積度が低いので実用には無らない事もあり、工学書などでは紹介はされないのであろう。
(別件かもしれないが、)そもそも、半導体の発明当時は、女性工員とかに細かい配線作業などをさせていた時代もあった(「トランジスタ・ガール」と言われていた)、と言われるくらい。
}}
ダイオードやトランジスタの他にも半導体を組み合わせた電子部品はあるが(他にも「サイリスタ」とか色々とある)、高校物理の範囲を超えるので、説明は省略する。(※ もし仕事で専門的な情報が必要になれば、工業高校むけの『電子回路』の教科書にけっこう詳しく書いてあるので、それを読めばいい。なお、書店の資格コーナー本にある電気工事士や電気主任技術者試験とかの対策品には、ほぼ電子回路が範囲外なので、あまり電子回路の説明は書いてない。なので、工業高校『電子回路』の教科書、または工業高専などの同等の科目の教科書を参照のこと。)
:※ 集積回路について、1990年代くらいの参考書の数研出版チャート式の物理2に、後述のような集積回路などの説明があった。
:2010年以降の現在、『情報』教科が2000年代に加わったので、CPUなどの説明の一部が『情報』教科に移動している。
パソコンのCPUなどの部品も、中身の多くは半導体であり、ダイオードやトランジスタなどの素子がCPUなどの内部にたくさんある、と言われている。(※ 他にも「水晶振動子」とか色々とCPU内には あるが、物理2の範囲外なので説明を省略。)
集積回路やLSI(Large Scale Integrated、大規模集積回路)などと言われる組織も、なにを集積(「集積」を英語で integrate インテグレート という)したのかというと、半導体素子を集積したと言う意味である。
なお、「IC」(アイシー)とは Integrated Circuit の略称であり、これを和訳したものが「集積回路」である。
つまり、集積回路やLSIの中身は、半導体であり、トランジスタなどの素子が高密度で、その回路中に詰まっている。
電子部品の半導体の材料としては、通常はシリコン結晶が使われる。(※ 啓林館、数研など、結晶であることも言及。)
研究開発ではシリコン以外の材料も研究されており一部の特殊用途ではGaAsやInGaPなどが利用されているが(※ 数研の検定教科書はGaAsやInGaPなどにコラムで言及)、しかし現状では、シリコンが市販のコンピュータ部品中の半導体素子の材料では主流である。
なお、シリコン半導体の材料内部はシリコン結晶であるが、表面は保護膜および絶縁のために酸化させられており、シリコン半導体表面は酸化シリコンの保護膜になっている。シリコンが酸化すると、絶縁物になるので、保護膜になるわけである(※ 数研出版の教科書もそう言っている。)
半導体の内部に、添加物などで特性を変えることにより、抵抗やコンデンサも半導体内部に製造できる。(※ 数研が、抵抗やコンデンサも半導体内部で作っている事に言及。)
(※ 範囲外: )しかし、コイルは半導体内部に作ることが出来無い。
== 発展: 相対論の一次近似 ==
=== 運動する磁束は電場を誘起する ===
磁場Bの中を、電荷qの荷電粒子が速度vで運動すると、ローレンツ力はベクトル外積を用いて f=q・v×B の力が粒子に働くが、ここで観測者の座標系を変えたとして、同じ粒子を、粒子と同じ方向に速度vで動く座標形Kの中の観測者から見たらどうなるか? 座標系Kでは、粒子の速度は v(K)=0 であり、磁束の速度を V<sub>b</sub> とすると、前の座標系の粒子とは反対方向に動くので、
:V<sub>b</sub> =-v である。
新しい座標系Kから観測しても、粒子が f=q・v×B の大きさの力を受けて加速されることには変わらないが、座標系kでは、荷電粒子は静止していたのに、ローレンツ力を受けたと考えるのは不合理である。磁束は、V<sub>b</sub>=-v で運動していたので、磁束の運動によって f=q・(-V<sub>b</sub>)×B = -q・V<sub>b</sub>×B の力を受けたと考えるべきである。粒子を質量0の質点とみなせば、静止している荷電粒子に力を及ぼせるのは、電場だけだから、つまり速度 V<sub>b</sub> で運動する磁束が、 E=-V<sub>b</sub>×B の誘導電場を誘起することになる。このとき、磁場と誘導された電場は垂直である。
=== 運動する電場は磁界を作る ===
もし、「運動する電場は磁界を作る」とすれば、アンペールの法則 「直線状に無限に長い導線を流れる 電流I は距離R だけ離れた場所に B・2πr=μI の磁場を作る。」という現象は、じつは「導線の中で荷電粒子が運動することによって、荷電粒子といっしょにその粒子が作る電場も動き、その電場の運動が、磁場を誘起している。」という可能性がある。
電流が流れている無限長の、まっすぐな導線を考える。線密度 q[C/m] で分布した電荷は、図のように円筒対称な電荷を作る。
(※ ここに図を。)
直線から距離rのときの電気力線の密度Dは
:D=εE= <math> \frac{q}{2\pi r}</math>
よって
:εE・2πr =q ①
電流 I は電荷分布 q が速度 V<sub>e</sub> で運動しているとして
:I = qV<sub>e</sub>
:[A]=[c/m]・[m/s]=[c/m]
と定義すれば、
電流 qV<sub>e</sub> が距離 r のところに作る磁場Bはアンペールの法則から、
:B・2πr(=μI)= μqV<sub>e</sub> ②
となる。
このとき、磁場の向きは、V<sub>e</sub> から 半径r方向 にねじを回す向きである。
:②÷①から B/εE = μ V<sub>e</sub> B=εμ V<sub>e</sub>・E
向きまでふくめてベクトル積で表せば、
:<math>\vec {B} </math>=εμ <math>\vec {V_e} \times \vec E</math> となる。
つまり
:速度 V<sub>e</sub> で運動する電場 E は、誘導磁場 B=εμV<sub>e</sub>×E を作る。
という、重要な結論が得られる。
あるいは、 μH=B をもちいて B=μH=εμ V<sub>e</sub> ×E より
:H=εμV<sub>e</sub>×E となって、さらに D=εE より
:H=μV<sub>e</sub>×D
である。
まとめ
速度 V<sub>b</sub>で運動する磁束Bは
:E=-V<sub>b</sub>×B
の誘導電場を誘起する。 ・・□1
速度 V<sub>e</sub> で運動する電場 E は
:B = εμ V<sub>e</sub> × E
の誘導磁場を作る。
E,Bのかわりに、D,Hを使って表記すれば、
:D = -ε V<sub>b</sub> × B
かつ
:H = V<sub>e</sub> × D (・・・□2)
さて、電磁波が速度Cで真空中を伝わるとすれば、 Vb = Ve = C とする。 □1式と□2式の外積をとると、
: E×H =(-V<sub>b</sub>×B)× (V<sub>e</sub>×D) = (-C×μH) × (C×εE)
:= εμ ( C<sup>2</sup>) E×H
よって
:εμ・c<sup>2</sup> =1
である。
よって、電磁波の速度は <math> c = \frac{1}{ \sqrt{ \varepsilon \mu} }</math> と予測できる。
このεとμに実測値を入れると、光速の測定値 <math> c = 299792458 m/s</math> と、高い精度で一致する。
この事から、光は、電磁波である事が分かる。また、電磁波は、光速度Cで真空中を伝わる。
また、これより、運動電場の誘導する磁場は
:B = (1/ C<sup>2</sup> )V<sub>e</sub>×E ③
とも変形できる。
③式を、ガウスの法則(①式) と組み合わせると、アンペールの法則(②式)が得られる。
よって、「速度 V<sub>e</sub> で運動する電場 E は、 B=εμ V<sub>e</sub> ×E の誘導磁場を作る。」という過程が妥当だったことがわかる。
=== ポインティング ベクトル ===
電磁波では電場 E と磁場 B が光速 C で運動しているので 磁束の運動速度 V<sub>b</sub> は V<sub>b</sub> = C であり、誘導電場 E は E =-V<sub>b</sub>×B であるので、両式より E = -c×B である。(電磁波の電場と磁場の関係式)なお
:<math> \mathbb{B} = \mu \mathbb{H} </math>
であるので、
電磁波は
:<math> \mathbb{E} \times \mathbb{H} </math>
の方向に進んでいるはずだ、ということを注目しよう。
この <math> \mathbb{E} \times \mathbb{H} </math> で定義される量を '''ポインティング ベクトル''' とよぶ。
これは単位面積をとおって流れ出る電磁場のエネルギーの流れの量をあらわす。
さて、電磁場のエネルギー密度は <math> u = \frac{1}{2}\varepsilon E^2 + \frac{1}{2}\mu H^2 </math> なので、これに電磁波の電場と磁場の関係式 <math> \mathbb{E} = - \mathbb{C} \times \mathbb{B} </math> を代入して、
:<math> \varepsilon \mu \cdot c^2 = 1 </math>
の関係を用いると、(エネルギーでは、2乗によりマイナス符号がなくなるので、絶対値を取って|E|=|c×B| としておくと、計算が簡単になる場合がある。)
結果として
:<math> u = \varepsilon E^2 </math> (電磁波のエネルギー密度)
となる。
電磁波が、壁にあたって吸収されるとき、単位時間に単位面積あたり 光速C の大きさの体積のなかの電磁波が壁に衝突するので、
:c・u
のエネルギーが、単位時間に単位面積に流れ込むはずである。
s= c・u に u= ε・E^2 を代入して、 <math> \epsilon \mu \cdot c^2 = 1 </math> と |E|=|c×B|を利用すると、結果的に
: s = <math> \frac{1}{ \sqrt{ \varepsilon \mu} } \epsilon E^2 </math> =<math> \frac{1}{ \sqrt{ \varepsilon \mu} } \epsilon |E||cB| </math> =|E|・|H|
である。
よってポインティング ベクトル E×H は単位面積を通って流れ出る電磁場のエネルギーの流れをあらわす。
:E×Hの単位は [V/m]・[A/m]=[V・A/m<sup>2</sup>]=[W/m<sup>2</sup>]
=== ポインティング ベクトル と 運動量密度 ===
ポインティング ベクトル S = E×H = εμ(C<sup>2</sup>)E×H は
:D=εE と B=μH をもちいて S = E×H =(C<sup>2</sup>)D×B とも書ける。
:<math> \mathbb{D} \times \mathbb{B} = \frac{1}{c^2} \mathbb{E} \times \mathbb{H} </math>
である。
天下り的な説明であるが、この G=D×B という量は、運動量の密度である。この量 G=D×B を、電磁波の「運動量密度」(うんどうりょうみつど)という。実際に、D×B の単位は
:[D×B] = [{1 / (C<sup>2</sup>)}] [E×H] = [1 / (m/s)<sup>2</sup>] [W/m<sup>2</sup>]
:= [N・s/m<sup>3</sup>]
となる。
たしかに、運動量の密度の単位と等しい。
* 発展: 光電効果との関係
ところで、のちの単元で習うが、光電効果では エネルギーuと運動量pの関係は、光速度Cをもちいて、 u=cp と書ける。
:s=c・u は s= cu =|E×H| であり、 u=cp とあわせて、
:s=c (cp) = (c<sup>2</sup>) p =|E×H|
これより
:p = (1/c<sup>2</sup>) |E×H| = εμ |E×H|
: = |εE×μH| = |D×B|
向きまで含めて
:p = D×B
となって、確かに G = D×B は運動量密度となる。
=== 電磁誘導の再検討 ===
長さLのまっすぐな針金が、速度vで磁場Bの中を横切るとする。簡単のため、針金の軸と速度vの方向と磁場Bは垂直とする。このとき、針金の中の電荷にかかる力および電場はローレンツ力により、
:F = q v×B
:F/q = E = v×B の電位が、針金の長さ方向に派生する。
電場Eにそって長さLだけ、電荷qが上げられたら、エネルギーは qEL 変化する。電位は V=EL である。
:V = LvB = ⊿Φ/⊿t
これより、誘導電圧 V は、磁束の1秒あたりの時間変化になる。
では、仮に固定された回路の中にソレノイドを通して、このソレノイドに交流電流を流した場合も、回路に誘導電圧が発生するのであろうか。答えは「する」。
{{コラム|電機設備などの「半導体」|
コンピュータ以外の用途でも、比較的に大き目の電流や電圧などをつかう電機設備や強電(きょうでん)設備などで、整流などの目的で、電機設備のための専用の半導体ダイオードを使うことがある。
パソコン用の半導体と、電機設備用の半導体とは、(物理学的な原理はほぼ同じであるが)製品としては、まったく定格(ていかく)電流・定格電圧などの仕様の異なる別製品なので、混同しないように。使用可能な電流の定格値がまったくケタ違いに(パソコン用と電気設備用とでは)違うので、絶対に混同してはいけない。
もし仮に、本来なら電気設備用の半導体で整流すべき場所を、パソコン用の半導体で整流すると、きっと事故などにつながり危険なので、絶対に混用せぬこと。
}}
{{stub}}
[[Category:高等学校教育|物ふつり2てんきとしき]]
[[Category:電気|高ふつり2てんきとしき]]
[[Category:物理学教育|高ふつり2てんきとしき]]
[[Category:高等学校理科 物理II|てんきとしき]]
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物理数学I
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本項は物理学 物理数学 の解説です。
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*[[物理数学 変分法|変分法]]
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[[Category:数学|ふつりすうかく1]]
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==関連教科書==
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__NOTOC__
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PHPはWeb開発において非常に人気のあるサーバーサイドプログラミング言語です。その理由として、PHPはシンプルで学びやすい構文を持ち、特にWebアプリケーションの開発に最適化されている点が挙げられます。また、豊富なオープンソースのフレームワークやライブラリが利用可能であり、個人開発者から大規模なプロジェクトに至るまで、広範なユーザー層に支持されています。
本書では、プログラミング初心者を対象に、PHPの基本的な概念、構文、関数の作成方法、オブジェクト指向プログラミングにおけるクラスの活用方法などを丁寧に解説しています。読者が実際に手を動かしながらコードを記述し、動作確認を行うことで、実践的なスキルを身に付けられるよう構成されています。
2024年11月現在、PHPの唯一の公式サポートバージョンはPHP 8であり、最新の機能とセキュリティ対策が導入されています<ref>{{Cite web|url=https://www.php.net/supported-versions.php|title=PHP: Supported Versions|accessdate=2024-11-08}}</ref>。本書では、PHP 8をベースに、基礎的な知識からWebアプリケーション開発に必要なスキルを順を追って学べるように設計されています。特にPHP初心者が無理なく理解できるよう、豊富なサンプルコードとわかりやすい説明を通じて、ステップバイステップで学習を進めていきます。
なお、PHP 7.4は2022年11月28日に公式サポートが終了しており、セキュリティアップデートなどの提供は行われていません<ref>{{Cite web|url=https://www.php.net/eol.php|title=PHP: Unsupported Branches|accessdate=2024-11-08}}</ref>。そのため、最新バージョンであるPHP 8の使用が推奨されます。
== 目次 ==
# [[/開発環境|開発環境]]
# [[/コマンドラインでの活用|コマンドライン]]
# [[/入門/テキスト表示とコメント|テキスト表示とコメント]]
# [[/入門/変数と値|変数と値]]
# [[/入門/変数の種類|データ型]]
# [[/配列|配列]]
# [[/制御構造|制御構造]]
# [[/関数|関数]]
# [[/クラス|PHPのオブジェクト指向]]
# [[/Webアプリケーション向けの機能|Webアプリケーション向けの機能]]
# [[/ファイル入出力|ファイル入出力]]
# [[/データベースとの連動|データベースとの連携]]
# [[/Null安全性|Null安全性]]
# [[/ジェネリックプログラミング|ジェネリックプログラミング]]
# [[/新機能|バージョンごとの新機能]]
== 脚註 ==
{{Wikipedia|PHP (プログラミング言語)}}
<references />
[[Category:PHP|*]]
[[Category:プログラミング言語]]
{{NDC|007.64}}
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民法第709条
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/* 特別法による修正 */
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[[法学]]>[[民事法]]>[[民法]]>[[コンメンタール民法]]>[[第3編 債権 (コンメンタール民法)]]
== 条文 ==
([[不法行為]]による[[損害賠償]])
;第709条
: [[故意]]又は[[過失]]によって他人の権利又は'''法律上保護される利益'''を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する[[責任]]を負う。
== 解説 ==
債権の発生原因の一つである、不法行為の成立要件を規定している。
=== 要件 ===
==== 故意または過失 ====
:不法行為においては加害者に「故意または過失」があることが要件とされている。この点で[[債務不履行]]([[民法第415条|415条]])や[[物権的請求権]]とは異なる。故意・過失の立証責任は原告側にあるので、請求権が競合する場合には、債務不履行責任の追及や物権的請求権の行使のほうが認められやすいといえる。
:一方で、刑事法や英米法と異なり日本民法においては、不法行為が故意でなされた場合も過失でなされた場合も、結果についての責任は異ならないというのが、伝統的見解であって、故意論が展開される例は少なく、加害者の主観等については過失の有無が議論されることが法廷においても学説においても、ほとんどである。但し、近時の有力な学説では、故意をより重い責任要素で損害賠償の範囲や金額を過失に比べ拡大する(事実、慰謝料の算定などはその傾向がある)とするものもある。
===== 過失 =====
:'''過失'''とは、予見可能な結果について、結果回避義務の違反があったことをいうと解されている。いいかえれば、予見が不可能な場合や、予見が可能であっても結果の回避が不可能な場合には過失を認めることができない。
:結果回避義務については、専門的な職業に従事する者は一般人よりも高度の結果回避義務が要求されると考えられている。医療事故における医師の場合などがこれにあたる。
:また、取引等の相手が違法を犯すことについての回避義務について認められることもある([[#契約確認|最判平成13年3月2日]])。
===== 特別法による修正 =====
;責任の軽減:[[失火ノ責任ニ関スル法律]](失火責任法)は「民法第七百九条ノ規定ハ失火ノ場合ニハ之ヲ適用セス但シ失火者ニ重大ナル過失アリタルトキハ此ノ限ニ在ラス」と規定する。
:この規定により、失火の場合は故意または重過失がない限り不法行為責任は負わない。木造家屋の多い日本では、失火による不法行為責任が過大になりやすいことにかんがみた立法である。
;無過失責任:「故意または過失」を要件から省く立法的解決もあり、無過失責任と呼ばれる。無過失責任の代表例として、[[製造物責任法]]がある。製造物責任法3条は「製造業者等は(…)その引き渡したものの欠陥により他人の生命、身体または財産を侵害したときは、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる」と定めている。これにより製造業者は、製造物から生じた拡大損害については無条件で責任を負うことになる。
==== 権利侵害(侵害の違法性) ====
:侵害の対象となる権利は、明治以来判例によって拡大されてきた。生命、身体、有形の財産が侵害の対象となることは当初より争いはなかったが、著作権や人格権などの無体財産権の扱いは判例上変遷している。'''桃中軒雲右衛門事件'''においては、法律上規定のない権利は侵害対象にならないとされたが、'''大学湯事件'''においては「法律上保護される利益」が侵害対象であるとされ、老舗銭湯ののれんは法律上保護される利益に当たるとされた。
:その後、学説からは「権利侵害」とは侵害行為の違法性をいうのであり、「違法な侵害」であるかどうかに関して、「被侵害利益の重大性」と「侵害の態様」との相関関係によって判断すべきであるとする相関関係説が唱えられた。この理論に従えば、侵害が軽度のものであっても、被侵害利益が(生命など)重大であれば違法性が肯定されることになる。
:また、適法な権利行使(例えば工場の操業)であっても、周囲に与える影響が被害者にとって社会観念上の受忍限度を超える場合には不法行為になるという'''受忍限度論'''も提唱され、公害事件を通じて判例法理として定着している。
:現在では、所有権、担保物権、債権、知的所有権、人格権など幅広い権利が被侵害利益となっているが、パブリシティー権(著名なものの名称等が有する顧客吸引力などの経済的価値を独占的に支配する財産的権利、[[#パブリシティー権|判例]]参照)や環境権など、未だその権利性が争いの余地がある「権利」もある。
=====不法行為の成立を阻却する事由=====
======責任能力======
:'''[[民法第712条]]'''および'''[[民法第713条]]'''参照
======違法性阻却事由(法定)======
;正当防衛および緊急避難:'''[[民法第720条]]'''参照
======違法性阻却事由(その他)======
;自力救済
;正当業務行為
:#報道等に関するものについては、事実の摘示により名誉を侵害すると訴えられる場合が少なくないが、それが専ら公益の目的を持ったものであり、真実ないし真実であるとを信じるに足る理由がある場合には違法な行為といえない([[#報道|判例10]]、[[#報道2|判例27]]、[[#報道3|判例31]]、[[#報道4|判例38]])。なお、刑法理論「[[名誉に対する罪#真実性の証明|真実性の証明]]」も参照。
;被害者の承諾
==== 損害の発生 ====
:財産的損害と精神的損害がある。
:財産的損害は、積極的損害(直接の被害額)と消極的損害(不法行為がなければ得られたはずの利益=逸失利益)がある。
:損害の内容については学説上対立がある。差額説は、不法行為によって減少した価値を金銭評価したものが損害の実質であるとする。損害事実説は、ある損害それ自体の内容を金銭評価したものが損害の実質であるとする。
:精神的損害は、被害者の精神的苦痛である。
==== 因果関係 ====
侵害行為と損害との間に因果関係があるか、という要件である。
===== 相当因果関係 =====
:不法行為において因果関係が持つ意味は、因果関係を認めうる範囲で加害者に賠償責任を負わせる点にある。ここで、いわゆる事実的因果関係(「あれなくばこれなし」の関係)を前提にすると、因果関係の範囲が広くなりすぎ、損害賠償の範囲が過大になりすぎることになる。
:したがって、不法行為法では、事実的因果関係が成立していることを前提にしつつ、[[民法第416条]]を準用し、損害賠償させるべき範囲をより狭く限定している。これを'''相当因果関係'''といい判例上確立した準則である(富貴丸事件:大連判大正15年5月22日)。ただし、相当因果関係の概念に関しては、学説において有力かつ強い批判がなされている。
======不法行為と被害者の自殺======
:裁判において、従来、自殺は行為者の意思が大きく関与し、不法行為から、そのような意思の形成が生じるとは通常は認められず、加害者側において自殺を予見し又は予見しうる状況にあったと認めることは困難であるとして相当因果関係を認めることに慎重であったが、近年においては、当該不法行為により災害神経症状態を惹起し、統計的に自殺率の高いうつ病等を罹患、その後自殺した事例については、相当因果関係を認めるものもある。ただし、この場合であっても、被害者(自殺者)の性格的傾向等の心因的要因の寄与を認め、第722条2項を類推適用し、損害額を減額する傾向にある。
:;相当因果関係を認めない例
:*交通事故と被害者の自殺([[#被害者の自殺|最判昭和50年10月03日]])
:*教師の違法な懲戒と生徒の自殺([[#違法な懲戒|最判昭和52年10月25日]])
:;相当因果関係を認めた例
:*交通事故と被害者の自殺([[#被害者の自殺2|最判平成5年09月09日]])
:*過重労働と自殺([[民法第715条#過重労働|最判平成12年03月24日]] [通称:電通損害賠償事件])
===== 因果関係の立証責任 =====
不法行為に基づく損害賠償請求を行うためには、原告側が侵害行為と損害の間の因果関係を立証しなければならない。しかし、公害事件や医療過誤事件など、一般市民である被害者には挙証が難しいケースも多い。このため、判例法理や立法的解決によって立証責任の軽減が図られてきた。
;蓋然性説:因果関係の100%までを原告側で立証する必要はなく、蓋然性が認められる範囲まで立証すれば、その時点で因果関係が推定され、その後は被告側が反証に成功しない限り因果関係は肯定されるとする理論。
;疫学的因果関係:公害など、多くの因子が被害に絡む場合に、侵害行為と被害発生との間に統計的な有意性が認められれば因果関係を肯定しようという理論。[[w:四日市ぜんそく|四日市ぜんそく]]訴訟で用いられた。
=== 効果 ===
:損害賠償は金銭でなされるのが原則である([[民法第722条|722条1項]]で[[民法第417条|417条]]を準用)。ただし、名誉毀損の場合は例外的に謝罪広告等の措置も請求できる([[民法第723条|723条]])。また、そのほか解釈として、原状回復・差止などが認められうる。
==== 金銭賠償の原則 ====
===== 損害賠償の内容 =====
:賠償されるべき損害には財産的損害と精神的損害がある。
:財産的損害には物理的な損害のほか、生命侵害、身体侵害などがある。著作権、特許権、債権などの財産権一般への侵害もある。それぞれについて積極損害と消極損害を観念しうる。
:精神的損害からは、慰謝料請求権が生ずる。
===== 損害賠償の範囲 =====
:不法行為から生じた全損害について賠償させるのは、被告にとって過酷であることから、相当因果関係説によって損害賠償の範囲が制限される。
:判例は債務不履行責任における損害賠償の範囲の規定([[民法第416条|416条]])を不法行為に類推適用し、原則として「通常生ずべき損害」の賠償で足り、「当事者がその損害を予見し、または予見することができたとき」は「特別の事情によって生じた損害」まで賠償する必要があると考えている(富貴丸事件:大連判大正15年5月22日)。ただし、学説上は、有力な反対意見があり長年議論されている([[#特別事情|判例;大隈健一郎裁判官反対意見参照]])。
====== 損害賠償の範囲内とされるもの ======
;訴訟に要する弁護士費用:訴訟遂行は一般人には困難であり、不法行為のように被害者に非がない案件について弁護士費用は損害の範囲に入る([[#弁護士費用|判例]])。
===== 損害賠償額の算定 =====
:物の滅失に関する損害賠償額は、物の交換価格による。交換価格の算定基準時が問題になるが、原則として物の滅失時とする。ただし被害者があらかじめその物の転売を予定していて、滅失後に高騰することを「予見し、又は予見することができたとき」([[民法第416条|416条2項]])のであれば、騰貴時とすることも考えられる(富貴丸事件判決)。
:生命侵害の場合には、積極損害(葬式費用など)よりも、消極損害(逸失利益)のほうがはるかに大きくなる。逸失利益は、被害者が生きていたならば得られた収入から、生活費を控除し、ここから中間利息を控除して(現在価値に割り引いて)算出する。中間利息の控除方式には、ホフマン式とライプニッツ式とがある。基準となる収入は、被害者の収入が明らかであればその額を用いるが、児童など、収入が明らかでないときは、賃金センサスに基づいた平均賃金を用いる。
:なお、過失相殺など損害賠償額の調整については[[民法第722条|722条2項]]を参照。
===== 損害賠償の請求主体 =====
:財産的損害であれ、精神的損害であれ、第一義的な請求主体は被害者自身である。被害者が死亡した場合は、慰謝料請求権は当然に相続されると解されている。
:生命侵害の場合、被害者の父母・配偶者・子は固有の慰謝料請求権を有する([[民法第711条|711条]])。
:胎児も請求主体になる。胎児は、損害賠償請求権については「既に生まれたもの」とみなされる([[民法第721条|721条]])。これにより、たとえば父が不法行為により死亡した場合、死の時点で母胎にいた胎児は、出生後、損害賠償請求権を獲得する。権利能力の始期を定めた[[民法第3条|3条]]の例外を定めたものである。
===== 不法行為による損害賠償債権の性質 =====
:悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務、または、人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務であれば、相殺の受働債権にならない([[民法第509条|509条]])。
==== 名誉回復処分 ====
:'''[[民法第723条]]'''参照
==== 原状回復・差止 ====
不法行為の一般的効果として、金銭による損害賠償以外のものが解釈上認められるかが問題となる。金銭による損害賠償以外のものとしては、原状回復又は差止が想定しうる。
*'''原状回復'''; 過去に発生した損害を除去し、損害の存在しなかった状態に戻すこと。
*'''差止''': 将来において損害を発生させるであろう行為を停止させること。
===== 原状回復請求権 =====
:判例、通説ともに否定。
:「金銭賠償の原則」が定立されており、原状回復の費用を見積もりそれに還元すれば足りるため。
===== 差止請求権 =====
:判例は不分明であるが、どちらかと言えば否定的([[#差止|事実上、不法行為の存在を前提として差し止めを認めた判例]])
:学説上も賛否が分かれている。
== 参照条文 ==
* [[民法第710条]](財産以外の損害の賠償)
* [[民法第711条]](近親者に対する損害の賠償)
* [[国家賠償法第1条]]
* [[外国等に対する我が国の民事裁判権に関する法律]] - [[主権免除]]
* [[失火ノ責任ニ関スル法律]](失火責任法) - 適用除外、過失要件の加重
== 判例 ==
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=57289 所有権移転登記抹消等請求](最高裁判決 昭和30年5月31日)[[民法第177条]]
#;不動産の二重売買における第二の買主が悪意の場合と第一の買主に対する不法行為責任の有無
#:乙が甲から不動産を買い受けて登録を経ないうち、丙が甲から右不動産を買い受けて登記をなし、これをさらに丁に売り渡して登記を経たため、乙がその所有権取得を丁に対抗することができなくなつた場合において、丙がその買受当時甲乙間の売買の事実を知つていたというだけでは、丙は乙に対し不法行為責任を負うものではない。
#:- '''不動産の二重売買そのものは不法行為とは言えない。'''
#:*<small>一般に不動産の二重売買における第二の買主は、たとい悪意であつても、登記をなすときは完全に所有権を取得し、第一の買主はその所有権取得をもつて第二の買主に対抗することができないものと解すべきであるから、本件建物の第二の買主で登記を経た上告人(丙)は、たとい悪意ではあつても、完全に右建物の所有権を取得し、第一の買主たる被上告人(乙)はその所有権取得をもつて上告人および同人から更に所有権の移転を受けその登記を経た丁に対抗することができないことは、当然の筋合というべきである。</small>
#[http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=57462&hanreiKbn=02 損害賠償請求] (最高裁判決 昭和32年01月31日)[[民法第189条]],民訴法199条1項(現・[[民事訴訟法第114条]]),民訴法709条(→民事執行法)
#;不法行為による物の滅失毀損と損害賠償額算定の基準時期
#:不法行為による物の滅失毀損に対する損害賠償の金額は、特段の事由のないかぎり、滅失毀損当時の交換価格により定むべきである。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=57564 売掛代金請求](最高裁判決 昭和32年3月5日)商法第42条(現[[商法第24条|24条]]),商法第38条(現[[商法第21条|第21条]]),[[民法第715条]]
#;所有権侵害の故意と特定人に対する所有権侵害の認識の要否。
#:不法行為者に所有権侵害の故意があるというためには、特定人の所有権を侵害する事実につき認識のあることを要するものではなく、単に他人の所有権を侵害する事実の認識があれば足りる。
# [https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=57563 損害賠償請求](最高裁判決 昭和32年5月10日)
#;不法行為における過失の認定の当否
#:甲事実および乙事実がともに診療行為上の過失となすに足るものである以上、裁判所が甲または乙のいずれかについて過誤があつたものと推断しても、過失の事実認定として不明または未確定というべきではない。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=53662 損害賠償請求](最高裁判決 昭和34年11月26日)[[民法第722条]]2項,民訴法185条(現[[民事訴訟法第247条|247条]])
#;刑事判決における過失の有無の判断と民事判決
#:自動車運転者が業務上過失致死被告事件の判決で過失を否定された場合でも、不法行為に関する民事判決ではその過失を否定しなければならぬものではない。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52929 建物収去、土地明渡請求](最高裁判決 昭和35年9月20日)借地法10条(現[[借地借家法第14条|借地借家法14条]]),[[民法第703条]]
#;建物取得後借地法10条(現[[借地借家法第14条|借地借家法14条]])の買取請求権行使までの間における敷地不法占有と損害の有無。
#:借地法10条(現[[借地借家法第14条|借地借家法14条]])の建物買取請求権が行使された場合、土地賃貸人は、特段の事情がないかぎり、右買取請求権行使以前の期間につき賃料請求権を失うものではないけれども、これがため右期間中は建物取得者の敷地不法占有により賃料相当の損害を生じないとはいい得ない。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=54824 損害賠償請求](最高裁判決 昭和36年2月16日) <small>輸血取締規則(昭和20年厚生省令3号)2条,輸血取締規則(昭和20年厚生省令3号)3条,輸血に関し医師又は歯科医師の準拠すべき基準(昭和27年厚生省告示138号)2(1),輸血に関し医師又は歯科医師の準拠すべき基準(昭和27年厚生省告示138号)4,輸血に関し医師又は歯科医師の準拠すべき基準(昭和27年厚生省告示138号)5,輸血に関し医師又は歯科医師の準拠すべき基準(昭和27年厚生省告示138号)7,輸血に関し医師又は歯科医師の準拠すべき基準(昭和27年厚生省告示138号)11</small>
#;給血者に対する梅毒感染の危険の有無の問診の懈怠と輸血による梅毒感染についての医師の過失責任。
#:給血者がいわゆる職業的給血者で、血清反応陰性の検査証明書を持参し、健康診断および血液検査を経たことを証する血液斡旋所の会員証を所持していた場合でも、同人が、医師から問われないためその後梅毒感染の危険のあつたことを言わなかつたに過ぎないような場合、医師が、単に「身体は丈夫か」と尋ねただけで、梅毒感染の危険の有無を推知するに足る問診をせずに同人から採血して患者に輸血し、その患者に給血者の罹患していた梅毒を感染させるに至つたときは、同医師は右患者の梅毒感染につき過失の責を免れない。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=54920 損害賠償請求](最高裁判決 昭和38年8月8日)
#;第三者の詐欺による売買における売主の代金請求権の存在と右第三者に対する不法行為にもとづく損害賠償請求権の存否。
#:第三者の詐欺による売買により目的物件の所有権を喪失した売主は、買主に対し代金請求権を有していても、右第三者に対する不法行為にもとつぐ損害賠償請求権がないとはいえない。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=54949 損害賠償請求](最高裁判決 昭和38年9月26日)[[民法第416条]]2項
#;特別事情の予見可能ありとして、不法行為と損害との間に、相当因果関係の存在が認められた事例。
#:自動車運転手甲がガソリンを使用して自動三輪車のクラツチを洗滌するに際し、その作業を助けるため甲の傍近くから電灯を照射している乙がいる等判示の事情の存する場合においては、甲が、自己の過失によりガソリンの入つている罐に引火炎上させ狼狽してこれを投げすてたときは、右炎上したガソリン罐が乙にあたりその衣服を炎上させ乙に火傷を負わせて死にいたらしめるであろうことを予見しうるものであるから、甲の前記クラツチ洗滌行為と乙の死亡との間には相当因果関係が存すると解すべきである。
# <span id="差止"></span>[http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=56244 村道供用妨害排除請求](最高裁判決 昭和39年1月16日)[[民法第198条]],民法第710条
##村民の村道使用関係の性質
##:村民各自は、村道に対し、他の村民の有する利益ないし自由を侵害しない程度において、自己の生活上必須の行動を自由に行いうべき使用の自由権を有する。
##'''村民の村道使用権に対する侵害の継続と妨害排除請求権の成否'''
##:村民の右村道使用の自由権に対して継続的な妨害がなされた場合には、当該村民は、右妨害の排除を請求することができる。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=53875 損害賠償請求](最高裁判決 昭和39年7月28日)民訴法395条1項6号(現[[民事訴訟法第312条|312条]]2項6号)
#;医師の消毒の不完全を理由とする損害賠償の請求を認容する判決において右消毒の不完全部分を確定しないで過失を認定しても違法でないとされた事例。
#:注射の際の医師による消毒の不完全を理由とする損害賠償の請求を認容する判決において、右消毒の不完全が注射器具、施術者の手指もしくは患者の注射部位のいずれに存するかを確定しないで過失を認定しても、違法とはいえない。
#:*原審において、感染経路を他の可能性を検討の上、「注射器具」「施術者の手指」「患者の注射部位」のいずれかまで絞り込んだが、いずれかは特定しなかった。いずれであっても医師の過失は認めうるので特定までは必要ないとの判断。
# <span id="報道"></span>[http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=57744 名誉および信用毀損による損害賠償および慰藉料請求](最高裁判決 昭和41年6月23日)
#;公共の利害に関する事実の摘示と名誉毀損の成否
#:名誉毀損については、当該行為が公共の利害に関する事実に係りもつぱら公益を図る目的に出た場合において、摘示された事実が真実であることが証明されたときは、その行為は、違法性を欠いて、不法行為にならないものというべきである。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=53980 損害賠償請求](最高裁判決 昭和43年3月15日)[[民法第695条]]、[[民法第696条]]
#;示談当時予想しなかつた後遺症等が発生した場合と示談の効力
#:交通事故による全損害を正確に把握し難い状況のもとにおいて、早急に、小額の賠償金をもつて示談がされた場合において、右示談によつて被害者が放棄した損害賠償請求は、示談当時予想していた損害についてのみと解すべきであつて、その当時予想できなかつた後遺症等については、被害者は、後日その損害の賠償を請求することができる。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=54954 損害賠償請求](最高裁判決 昭和43年6月27日)[[国家賠償法第1条]]1項,[[不動産登記法施行細則第47条]],民法第416条
##'''偽造の登記済証に基づく登記申請を受理するについて登記官吏に過失があるとされた事例'''
##:登記申請書に添付されていた登記済証が偽造であつて、その作成日として記載されている日当時官制上存在しなかつた登記所名が記載され、同庁印が押捺されているにもかかわらず、登記官吏がこれを看過してその申請にかかる所有権移転登記手続をした場合には、右登記官吏に、登記申請書類を調査すべき義務を怠つた過失があるというべきである。
##'''登記官吏の過失によつて無効な所有権移転登記が経由された場合に右過失と右登記を信頼して該不動産を買い受けた者が被つた損害との間に相当因果関係があるとされた事例'''
##:登記官吏の右過失によつて、無効な所有権移転登記が経由された場合には、右過失と右登記を信頼して該不動産を買い受けた者がその所有権を取得できなかつたために被つた損害との間には、相当因果関係があるというべきである。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=66616 損害賠償請求](最高裁判決 昭和43年9月24日)
#;交差点において追抜態勢にある自動車運転手の並進車に対する注意義務の範囲
#:交差点において追抜態勢にある自動車運転手は、特別の事情のないかぎり、並進車が交通法規に違反して進路を変えて、突然自車の進路に近寄つてくることまでも予想して、それによつて生ずる事故の発生を未然に防止するため徐行その他避譲措置をとるべき業務上の注意義務はないと解するのが相当である。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=55001 慰藉料並に損害賠償請求](最高裁判決 昭和43年11月15日)
#;交通事故により会社代表者を負傷させた者に対する会社の損害賠償請求が認められた事例
#:甲が交通事故により乙会社の代表者丙を負傷させた場合において、乙会社がいわゆる個人会社で、丙に乙会社の機関としての代替性がなく、丙と乙会社とが経済的に一体をなす等判示の事実関係があるときは、乙会社は、丙の負傷のため利益を逸失したことによる損害の賠償を甲に請求することができる。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=55100 損害賠償謝罪広告請求](最高裁判決 昭和43年12月24日)民訴法756条<!--旧法-->,民訴法745条2項<!--旧法-->
#;仮処分命令が不当であるとして取り消された場合において仮処分申請人に過失があるとはいえないとされた事例
#:会社を被申請人とする仮処分命令が、同会社に対しては被保全権利が存在しないとして取り消された場合においても、右会社の取締役が会社の営業と競合する事業を個人として営んでいたため、仮処分申請人が被申請人を右取締役個人とすべきであるにもかかわらず、これを右会社と誤認した等判示の事実関係のもとにおいては、右仮処分命令を取り消す判決が確定しても、この一事をもつて、ただちに右申請人に過失があつたものとすることはできない。
# <span id="弁護士費用"></span>[http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=55036 抵当権設定登記抹消登記手続等請求](最高裁判決 昭和44年2月27日)
#;不法行為による損害と弁護士費用
#:不法行為の被害者が、自己の権利擁護のため訴を提起することを余儀なくされ、訴訟追行を弁護士に委任した場合には、その弁護士費用は、事案の難易、請求額、認容された額その他諸般の事情を斟酌して相当と認められる額の範囲内のものにかぎり、右不法行為と相当因果関係に立つ損害というべきである。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=70377 約束手形金請求](最高裁判決 昭和45年5月22日)[[民法第715条]],[[手形法第43条]]
#;偽造手形の取得者の損害賠償請求権と手形法上の遡求権との関係
#: 対価を支払つて偽造手形を取得した手形所持人は、その出捐と手形偽造行為との間に相当因果関係が認められるかぎり、その出捐額につき、ただちに損害賠償請求権を行使することができ、手形の所持人としてその前者に対し手形法上の遡求権を有することによつては、損害賠償の請求を妨げられることはない。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=54169 損害賠償請求](最高裁判決 昭和45年7月24日)[[民法第147条]]1号,[[民法第149条]],[[所得税法第9条]]1項21号,民訴法235条(現[[民事訴訟法第147条|147条]])
#;一部請求の趣旨が明示されていない場合の訴提起による時効中断の範囲
#:一個の債権の一部についてのみ判決を求める趣旨が明示されていないときは、訴提起による消滅時効中断の効力は、右債権の同一性の範囲内においてその全部に及ぶ。
# <span id="訴訟物の個数"></span>[http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=51932 損害賠償請求](最高裁判決 昭和48年4月5日)民事訴訟法第186条(現[[民事訴訟法第246条|第246条]]),民事訴訟法224条1項(現[[民事訴訟法第134条|第134条]]2項),[[民法第722条]]2項
#;身体傷害による財産上および精神上の損害の賠償請求における請求権および訴訟物の個数
#:同一事故により生じた同一の身体傷害を理由として財産上の損害と精神上の損害との賠償を請求する場合における請求権および訴訟物は、一個である。(→[[民法第722条#訴訟物|過失相殺への適用]])
# <span id="特別事情"></span>[http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=51910 損害賠償請求](最高裁判決 昭和48年6月7日)[[民法第416条]],[[民事訴訟法第746条]]<!--旧法-->,[[民事訴訟法第755条]]<!--旧法-->,[[民事訴訟法第756条]]<!--旧法-->
#;不法行為による損害賠償と民法416条
#:不法行為による損害賠償についても、[[民法第416条]]の規定が類推適用され、特別の事情によつて生じた損害については、加害者において右事情を予見しまたは予見することを得べかりしときにかぎり、これを賠償する責を負うものと解すべきである。
#:*<small>'''[[w:大隅健一郎|大隅健一郎]]反対意見'''(適宜抽出引用及び改行)
#:*:債務不履行の場合には、当事者は合理的な計算に基づいて締結された契約によりはじめから債権債務の関係において結合されているのであるから、債務者がその債務の履行を怠つた場合に債権者に生ずる損害について予見可能性を問題とすることには、それなりに意味があるのみならず、もし債権者が債務不履行の場合に通常生ずべき損害の賠償を受けるだけでは満足できないならば、特別の事情を予見する債権者は、債務不履行の発生に先立つてあらかじめこれを債務者に通知して、将来にそなえる途もあるわけである。これに反して、多くの場合全く無関係な者の間で突発する不法行為にあつては、故意による場合はとにかく、過失による場合には、予見可能性ということはほとんど問題となりえない。(略)その結果、民法416条を不法行為による損害賠償の場合に類推適用するときは、立証上の困難のため、被害者が特別の事情によつて生じた損害の賠償を求めることは至難とならざるをえない。
#:*:そこで、この不都合を回避しようとすれば、公平の見地からみて加害者において賠償するのが相当と認められる損害については、特別の事情によつて生じた損害を通常生ずべき損害と擬制し、あるいは予見しまたは予見しうべきでなかつたものを予見可能であつたと擬制することとならざるをえないのである。そうであるとするならば、むしろ、不法行為の場合においては、各場合の具体的事情に応じて実損害を探求し、損害賠償制度の基本理念である公平の観念に照らして加害者に賠償させるのが相当と認められる損害については、通常生ずべきものであると特別の事情によつて生じたものであると、また予見可能なものであると否とを問わず、すべて賠償責任を認めるのが妥当であるといわなければならない。不法行為の場合には、無関係な者に損害が加えられるものであることからいつて、債務不履行の場合よりも広く被害者に損害の回復を認める理由があるともいえるのである。
#:*:不法行為による損害賠償責任が認められるためには、行為と損害との間に、その行為がなかつたならば当該損害は生じなかつたであろうという関係が存しなければならないが、かような事実的な因果の連鎖は際限のないものであるから、法律上の問題としては、右のような事実的因果関係の存在を前提としながら、そのうちどの範囲の損害を行為者に賠償させるのが妥当かという考慮が必要とされる。これがいわゆる法律上の因果関係の問題であるが、従来法律上の因果関係の問題として論じられていたものの中には、過失の問題、賠償額の算定(いかなる価格によるべきか、その価格の算定は何時を基準とすべきか)の問題など、本来因果関係の範疇の外にある問題が混入していることを注意しなければならない。また、行為との間に事実的因果関係のある損害につきどこまで行為者に賠償させるのが妥当かということは、いうまでもなく価値判断の問題であつて、事実として確定されるものではない。それは、各個の事件ごとに、その事実関係の中から、不法行為制度の基本理念である公平の観念に照らして導かれるべきものであつて、不法行為における損害賠償責任の正しい限界づけは、個々の判例の中から類型的に帰納されえても、一般的な公式によつて定められるべきものではない。
#:*:以上述べたところは財産的損害の賠償についてであつて、慰籍料については、裁判所が、諸般の事情を斟酌して、自由裁量により決することをうるものと考える。</small>
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52072 慰藉料請求](最高裁判決 昭和49年3月22日)
#;責任能力のある未成年者の不法行為と監督義務者の不法行為責任
#:未成年者が責任能力を有する場合であつても、監督義務者の義務違反と当該未成年者の不法行為によつて生じた結果との間に相当因果関係を認めうるときは、監督義務者につき民法709条に基づく不法行為が成立する。([[民法第714条#解説]]参照)
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=66816 損害賠償請求](最高裁判決 昭和49年6月27日)
#;将来の支出が予想される手術費用の損害賠償が認められた事例
#:交通事故により顔面に負傷した被害者の傷痕及び大腿部の採皮痕がケロイド状醜痕としてのこり、これを除去するための美容的形成手術費等の将来の支出が治療上必要であり、かつ、確実と認められるときには、右支出による損害の賠償を現在の請求として求めることができる。
#[http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=54195&hanreiKbn=02 損害賠償請求](最高裁判決 昭和49年06月28日)[[民法第509条]]
#;同一交通事故によつて生じた物的損害に基づく損害賠償債権相互間における相殺の許否
#:双方の過失に基因する同一交通事故によつて生じた物的損害に基づく損害賠償債権相互間においても、相殺は許されない。
#<span id="被害者の自殺"></span>[http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=66834&hanreiKbn=02 損害賠償請求](最高裁判決 昭和50年10月03日) [[民法第416条]]
#;交通事故により負傷した被害者の自殺と事故との相当因果関係が否定された事例
#:*(最高裁・原審が支持する原々審判決)
#:*:事故と自殺の条件関係自体は推認できるが,仮に被害者の性格変化が自殺に影響を及ぼしていてもそのような性格変化が受傷から通常生じるとは認められず,加害者側において自殺を予見し又は予見しうる状況にあったと認めることは困難
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=54204 損害賠償請求([東大ルンバールショック事件])](最高裁判決 昭和50年10月24日)[[国家賠償法第1条]]1項,民訴法185条(現247条),民訴法394条(現312条1, 3項)
#;医師が治療としてした施術とその後の発作等及びこれにつづく病変との因果関係を否定したのが経験則に反するとされた事例
#:<u>訴訟上の因果関係の立証は,一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく,経験則に照らして全証拠を総合検討し,特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認しうる高度の蓋然性を証明することであり,その判定は,通常人が疑を差し挟まない程度に真実性の確認を持ちうるものであることを必要とし,かつそれで足りる。</u>
#:*重篤な化膿性髄膜炎に罹患した三才の幼児が入院治療を受け、その病状が一貫して軽快していた段階において、医師が治療としてルンバール(腰椎穿刺による髄液採取とペニシリンの髄腔内注入)を実施したのち、嘔吐、けいれんの発作等を起こし、これにつづき右半身けいれん性不全麻癖、知能障害及び運動障害等の病変を生じた場合、右発作等が施術後15分ないし20分を経て突然に生じたものであつて、右施術に際しては、もともと血管が脆弱で出血性傾向があり、かつ、泣き叫ぶ右幼児の身体を押えつけ、何度か穿刺をやりなおして右施術終了まで約30分を要し、また、脳の異常部位が左部にあつたと判断され、当時化膿性髄膜炎の再燃するような事情も認められなかつたなど判示の事実関係のもとでは、他に特段の事情がないかぎり、右ルンバ一ルと右発作等及びこれにつづく病変との因果関係を否定するのは、経験則に反する。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=54219 損害賠償請求](最高裁判決 昭和51年9月30日)[[予防接種法第2条]]2項,予防接種実施規則(昭和33年9月17日厚生省令第27号。ただし昭和45年7月11日厚生省令第44号による改正前のもの)4条
##'''インフルエンザ予防接の実施と医師の問診'''
##:インフルエンザ予防接種を実施する医師が予診としての問診をするにあたつては、予防接種実施規則4条の禁忌者を識別するために、接種直前における対象者の健康状態についてその異常の有無を概括的、抽象的に質問するだけでは足りず、同条掲記の症状、疾病及び体質的素因の有無並びにそれらを外部的に徴表する諸事由の有無につき、具体的に、かつ被質問者に的確な応答を可能ならしめるような適切な質問をする義務がある。
##'''予防接種実施規則4条の禁忌者を識別するための適切な問診を尽くさなかつたためその識別を誤つて実施されたインフルエンザ予防接種により接種対象者が死亡又は罹病した場合と結果の予見可能性の推定'''
##:インフルエンザ予防接種を実施する医師が、接種対象者につき予防接種実施規則4条の禁忌者を識別するための適切な問診を尽くさなかつたためその識別を誤つて接種をした場合に、その異常な副反応により対象者が死亡又は罹病したときは、右医師はその結果を予見しえたのに過誤により予見しなかつたものと推定すべきである。
#<span id="違法な懲戒"></span>[https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=64110 損害賠償等](最高裁判決 昭和52年10月25日)
#;高校教師の違法な懲戒権の行使と生徒の自殺との間の相当因果関係が否定された事例
#:高校生が、授業中の態度や過去の非行事実につき担任教師から三時間余にわたり応接室に留めおかれて反省を命ぜられたうえ、頭部を数回殴打されるなど違法な懲戒を受け、それを恨んで翌日自殺した場合であつても、右懲戒行為がされるに至つた経緯等とこれに対する生徒の態度等からみて、教師としての相当の注意義務を尽くしたとしても、生徒が右懲戒行為によつて自殺を決意することを予見することが困難な状況であつた判示の事情のもとにおいては、教師の懲戒行為と生徒の自殺との間に相当因果関係はない。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=53272 慰藉料](最高裁判決 昭和54年3月30日)
#;妻及び未成年の子のある男性と肉体関係を持ち同棲するに至つた女性の行為と右未成年の子に対する不法行為の成否
#:妻及び未成年の子のある男性が他の女性と肉体関係を持ち、妻子のもとを去つて右女性と同棲するに至つた結果、右未成年の子が日常生活において父親から愛情を注がれ、その監護、教育を受けることができなくなつたとしても、'''右女性の行為'''は、特段の事情のない限り、未成年の子に対して不法行為を構成するものではない。
#:*父親がその未成年の子に対し愛情を注ぎ、監護、教育を行うことは、他の女性と同棲するかどうかにかかわりなく、父親自らの意思によつて行うことができるのであるから、他の女性との同棲の結果、未成年の子が事実上父親の愛情、監護、教育を受けることができず、そのため不利益を被つたとしても、そのことと右女性の行為との間には'''相当因果関係がない'''。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=53322 損害賠償](最高裁判決 昭和56年7月16日)[[民法第715条]],[[水道法第15条]]1項
#;違法建築物についての給水装置新設工事申込の受理の事実上の拒絶につき市が不法行為法上の損害賠償責任を負わないとされた事例
#:市の水道局給水課長が給水装置新設工事申込に対し当該建物が建築基準法に違反することを指摘して、その受理を事実上拒絶し申込書をその申込者に返戻した場合であつても、それが、右申込の受理を最終的に拒否する旨の意思表示をしたものではなく、同法違反の状態を是正して建築確認を受けたうえ申込をするよう一応の勧告をしたものにすぎず、他方、右申込者はその後一年半余を経過したのち改めて右工事の申込をして受理されるまでの間右申込に関してなんらの措置を講じないままこれを放置していたなど、判示の事実関係の下においては、市は、右申込者に対し右工事申込の受理の拒否を理由とする不法行為法上の損害賠償の責任を負うものではない。
# [https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=70414 損害賠償](最高裁判決 昭和57年7月1日)
#;競業禁止契約の当事者でない第三者に対するパチンコ営業禁止の仮処分命令が債権侵害を理由に第三者の営業を禁止することは許されないとして取り消された場合において仮処分債権者に過失の推定を覆えすに足りる特段の事情がないとはいえないとされた事例
#:甲に対してパチンコ遊技場の経営権を譲渡しこれとの間で自己名義では同一町内でパチンコ営業をしない旨の競業禁止契約を締結した乙が、右契約に前後してかねて親交のあつた丙を勧誘してパチンコ営業をすることを決意させ、同一町内で土地建物を買い受け旧建物を解体して店舗用建物を建築し風俗営業の許可申請を警察に提出するなどの開業準備をさせたが、丙は右町内に住んだことやパチンコ営業をした経験がないため右開業準備もほとんど乙が丙から任されてしたもので、乙は、丙の氏名を表面に出さないで建物の建築請負契約を締結し、みずからパチンコ機械の注文をし、風俗営業の許可申請にも管理者として名を連ね、将来は責任者としてパチンコ営業をする予定になつており、また、丙は、甲と乙との間で建物建築に関して紛争が生じ、警察において事情聴取や話合いの機会がもたれた際も表だつた行動には出なかつたなどの判示の事情があるときには、甲が乙及び丙の両名を相手方として申請し発令を受けた右建物におけるパチンコ営業禁止の仮処分命令が、いわゆる債権侵害を理由にしては第三者たる丙のパチンコ営業を禁止することは許されないとして丙に関する部分が取り消されて確定したとしても、丙名義のパチンコ営業が実際には甲の乙に対する競業禁止契約に基づく権利の侵害行為にはあたらないもので甲において右事実を容易に知ることのできる事情があつたとか、又は、右の侵害行為がある場合に甲が第三者たる丙に対して営業禁止を請求する権利があると考えたことが実体法の解釈として不合理なものであるといえない限り、甲が丙を相手方としてパチンコ営業を禁止する仮処分を申請したことには過失の推定を覆えすに足りる特段の事情がないとはいえない。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52148 損害賠償](最高裁判決 昭和58年9月6日) [[民法第412条]],自動車損害賠償保障法第3条
#;不法行為と相当因果関係に立つ損害である弁護士費用の賠償債務が履行遅滞となる時期
#:不法行為と相当因果関係に立つ損害である弁護士費用の賠償債務は、当該不法行為の時に履行遅滞となるものと解すべきである。
#:*当該不法行為時から法定利率による利息計算が始まる。
# <span id="報道2"></span>[http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=55168 反論文掲載](最高裁判決 昭和62年4月24日)日本国憲法第21条,[[民法第1条]],民法第709条,民法第723条,[[刑法第230条の2|刑法第230条ノ2]]
#;新聞紙上における政党間の批判・論評の意見広告につき名誉毀損の不法行為の成立が否定された事例
#:新聞社が新聞紙上に掲載した甲政党の意見広告が、乙政党の社会的評価の低下を狙つたものであるが乙政党を批判・論評する内容のものであり、かつ、その記事中乙政党の綱領等の要約等が一部必ずしも妥当又は正確とはいえないとしても、右要約のための綱領等の引用文言自体は原文のままであり、要点を外したものといえないなど原判示の事実関係のもとでは、右広告の掲載は、その広告が公共の利害に関する事実にかかり専ら公益を図る目的に出たものであり、かつ、主要な点において真実の証明があつたものとして、名誉毀損の不法行為となるものではない。
# [https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52177 謝罪広告等請求事件](最高裁判決昭和63年2月16日)
##'''氏名を正確に呼称される利益'''
##:氏名を正確に呼称される利益は、不法行為法上の保護を受け得る利益である。
##:*氏名は、社会的にみれば、個人を他人から識別し特定する機能を有するものであるが、同時に、その個人からみれば、人が個人として尊重される基礎であり、その個人の人格の象徴であつて、人格権の一内容を構成するものというべきであるから、人は、他人からその氏名を正確に呼称されることについて、不法行為法上の保護を受けうる人格的な利益を有するものというべきである。
##'''テレビ放送のニュース番組において在日韓国人の氏名を日本語読みによつて呼称した行為が違法ではないとされた事例'''
##:昭和50年当時テレビ放送のニュース番組において在日韓国人の氏名をそのあらかじめ表明した意思に反して日本語読みによつて呼称した行為は、在日韓国人の氏名を日本語読みによつて呼称する慣用的な方法が是認されていた社会的な状況の下では、違法とはいえない。
##:*原審の確定したところによれば、上告人は、韓国籍を有する外国人であり、その氏名は漢字によつて「A」と表記されるが、民族語読みによれば「D」と発音されるところ、被上告人は、昭和50年9月1日及び同月2日のテレビ放送のニユース番組において、上告人があらかじめ表明した意思に反して、上告人の氏名を日本語読みによつて「E」と呼称したというのであるが、漢字による表記とその発音に関する我が国の歴史的な経緯、右の放送当時における社会的な状況など原審確定の諸事情を総合的に考慮すると、在日韓国人の氏名を民族語読みによらず日本語読みで呼称する慣用的な方法は、右当時においては我が国の社会一般の認識として是認されていたものということができる。そうすると、被上告人が上告人の氏名を慣用的な方法である日本語読みによつて呼称した右行為には違法性がない。
# [https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52197 損害賠償](最高裁判決 昭和63年9月6日)
#;訴えの提起が違法な行為となる場合
#:訴えの提起は、提訴者が当該訴訟において主張した権利又は法律関係が事実的、法律的根拠を欠くものである上、同人がそのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たのにあえて提起したなど、裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠く場合に限り、相手方に対する違法な行為となる。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=55846 損害賠償](最高裁判決 平成5年3月25日)
#;危険物であることを知ってこれを運送する海上物品運送業者に対し右危険物の製造業者及び販売業者が危険性の内容等を告知する義務の有無
#:海上物品運送業者が危険物であることを知って運送品を運送する場合において、通常尽くすべき調査により、その危険性の内容、程度及び運搬、保管方法等の取扱上の注意事項を知り得るときは、右危険物の製造業者及び販売業者は、海上物品運送業者に対し、右の危険性の内容等を告知する義務を負わない。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=63011 損害賠償、同附帯](最高裁判決 平成5年6月11日)[[民法第623条]],[[労働基準法第13条]]
#;管理者に準ずる地位にある職員が組合員バッジの取外し命令に従わないため点呼執行業務から外して営業所構内の火山灰の除去作業に従事することを命じた業務命令が違法とはいえないとされた事例
#:自動車営業所の管理者に準ずる地位にある職員が、取外し命令を無視して組合員バッジの着用をやめないため、同人を通常業務である点呼執行業務から外し、営業所構内の火山灰の除去作業に従事することを命じた業務命令は、右作業が職場環境整備等のために必要な作業であり、従来も職員が必要に応じてこれを行うことがあったなど判示の事情の下においては、違法なものとはいえない。
#<span id="被害者の自殺2"></span>[http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=63037&hanreiKbn=02 損害賠償反訴、同附帯](最高裁判決 平成5年09月09日)[[民法第416条]]
#;交通事故と被害者の自殺との間に相当因果関係があるとされた事例
#:交通事故により受傷した被害者が自殺した場合において、その傷害が身体に重大な器質的障害を伴う後遺症を残すようなものでなかったとしても、右事故の態様が加害者の一方的過失によるものであって被害者に大きな精神的衝撃を与え、その衝撃が長い年月にわたって残るようなものであったこと、その後の補償交渉が円滑に進行しなかったことなどが原因となって、被害者が、災害神経症状態に陥り、その状態から抜け出せないままうつ病になり、その改善をみないまま自殺に至ったなど判示の事実関係の下では、右事故と被害者の自殺との間に相当因果関係がある。
# <span id="報道3"></span>[http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52442 慰藉料](最高裁判決 平成6年2月8日)
#;ある者の前科等にかかわる事実が著作物で実名を使用して公表された場合における損害賠償請求の可否
#:ある者の前科等にかかわる事実が著作物で実名を使用して公表された場合に、その者のその後の生活状況、当該刑事事件それ自体の歴史的又は社会的な意義その者の事件における当事者としての重要性、その者の社会的活動及びその影響力について、その著作物の目的、性格等に照らした実名使用の意義及び必要性を併せて判断し、右の前科等にかかわる事実を公表されない法的利益がこれを公表する理由に優越するときは、右の者は、その公表によって被った精神的苦痛の賠償を求めることができる。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=57057 損害賠償](最高裁判決 平成7年6月9日)[[民法第415条]]
##'''診療契約に基づき医療機関に要求される医療水準'''
##:新規の治療法の存在を前提にして検査・診断・治療等に当たることが診療契約に基づき医療機関に要求される医療水準であるかどうかを決するについては、当該医療機関の性格、その所在する地域の医療環境の特性等の諸般の事情を考慮すべきであり、右治療法に関する知見が当該医療機関と類似の特性を備えた医療機関に相当程度普及しており、当該医療機関において右知見を有することを期待することが相当と認められる場合には、特段の事情がない限り、右知見は当該医療機関にとっての医療水準であるというべきである。
##'''昭和49年12月に出生した未熟児が未熟児網膜症にり患した場合につきその診療に当たった医療機関に当時の医療水準を前提とした注意義務違反があるとはいえないとした原審の判断に違法があるとされた事例'''
##:昭和49年12月に出生した未熟児が未熟児網膜症にり患した場合につき、その診療に当たった甲病院においては、昭和48年10月ころから、光凝固法の存在を知っていた小児科医が中心になって、未熟児網膜症の発見と治療を意識して小児科と眼科とが連携する体制をとり、小児科医が患児の全身状態から眼科検診に耐え得ると判断した時期に眼科医に依頼して眼底検査を行い、その結果未熟児網膜症の発生が疑われる場合には、光凝固法を実施することのできる乙病院に転医をさせることにしていたなど判示の事実関係の下において、甲病院の医療機関としての性格、右未熟児が診療を受けた当時の甲病院の所在する県及びその周辺の各種医療機関における光凝固法に関する知見の普及の程度等の諸般の事情について十分に検討することなく、光凝固法の治療基準について一応の統一的な指針が得られたのが厚生省研究班の報告が医学雑誌に掲載された昭和50年8月以降であるということのみから、甲病院に当時の医療水準を前提とした注意義務違反があるとはいえないとした原審の判断には、診療契約に基づき医療機関に要求される医療水準についての解釈適用を誤った違法がある。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=55866 損害賠償](最高裁判決 平成8年1月23日)民法第415条
#;医薬品の添付文書(能書)に記載された使用上の注意事項と医師の注意義務
#:医師が医薬品を使用するに当たって医薬品の添付文書(能書)に記載された使用上の注意事項に従わず、それによって医療事故が発生した場合には、これに従わなかったことにつき特段の合理的理由がない限り、当該医師の過失が推定される。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=69646 預託金返還請求、民訴法第一九八条二項の申立](最高裁判決 平成9年4月24日)[[民法第708条]],[[民法第715条]],証券取引法(平成3年法律第96号による改正前のもの)50条1項,証券会社の健全性の準則等に関する省令(昭和40年大蔵省令第60号。平成3年大蔵省令第55号による改正前のもの)1条
#;証券会社の従業員が顧客に利回り保証の約束をして株式等の取引を勧誘し一連の取引をさせた場合に右取引による顧客の損失について証券会社が不法行為責任を免れないとされた事例
#:証券会社の営業部員が、株式等の取引の勧誘をするに際し、取引の開始を渋る顧客に対し、法令により禁止されている利回り保証が会社として可能であるかのように装って利回り保証の約束をして勧誘し、その旨信じた顧客に取引を開始させ、その後、同社の営業部長や営業課長も右約束を確認するなどして取引を継続させ、これら一連の取引により顧客が損失を被ったもので、顧客が右約束の書面化や履行を求めてはいるが、自ら要求して右約束をさせたわけではないなど判示の事実関係の下においては、<u>顧客の不法性に比し、証券会社の従業員の不法の程度が極めて強いものと評価することができ、証券会社は、顧客に対し、不法行為に基づく損害賠償責任を免れない</u>。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52613 損害賠償請求事件](最高裁判決 平成11年10月22日)[[国民年金法第30条]],[[厚生年金保険法第47条]],[[国民年金法第35条]]1号,[[厚生年金保険法第53条]]1号,[[民法第896条]],[[国民年金法第33条の2]],[[厚生年金保険法第50条の2]],[[国民年金法第37条]],[[厚生年金保険法第58条]]
##'''不法行為により死亡した者の相続人が被害者の得べかりし障害基礎年金及び障害厚生年金を逸失利益として請求することの可否'''
##:障害基礎年金及び障害厚生年金の受給権者が不法行為により死亡した場合には、その相続人は、加害者に対し、被害者の得べかりし右各障害年金額を逸失利益として請求することができる。
##'''不法行為により死亡した者の相続人が被害者の得べかりし障害基礎年金及び障害厚生年金についての各加給分を逸失利益として請求することの可否'''
##:障害基礎年金及び障害厚生年金についてそれぞれ加給分を受給している者が不法行為により死亡した場合には、その相続人は、加害者に対し、被害者の得べかりし右各加給分額を逸失利益として請求することはできない。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=57036 損害賠償請求事件](最高裁判決 平成11年12月20日)[[民法第416条]]
#;交通事故の被害者が事故のため介護を要する状態となった後に別の原因により死亡した場合に死亡後の期間に係る介護費用を右交通事故による損害として請求することの可否
#:交通事故の被害者が事故のため介護を要する状態となった後に別の原因により死亡した場合には、<u>死亡後の期間に係る介護費用</u>を右交通事故による損害として請求することはできない。
#:*交通事故で傷害を負い、その後遺障害のため他人の介護を要する状態にあったが、本件訴訟の係属中に胃がんにより死亡したという案件。
#[https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=69637 損害賠償請求事件](最高裁判決 平成12年9月7日)[[民法第416条]]、[[民法第877条]]
#;不法行為によって扶養者が死亡した場合における被扶養者の将来の扶養利益喪失による損害額の算定方法
#::*不法行為によって扶養者が死亡し、当該扶養者に多額の借財があって被扶養者である相続人が相続を放棄した場合に、加害者に対し扶養利益の喪失による損害賠償を請求することができるか、また、その算定基準について。
#:不法行為によって扶養者が死亡した場合における被扶養者の将来の扶養利益喪失による損害額は、扶養者の生前の収入、そのうち被扶養者の生計の維持に充てるべき部分、被扶養者各人につき扶養利益として認められるべき比率割合、扶養を要する状態が存続すべき期間などの具体的事情に応じて算定すべきである。
#:*不法行為によって死亡した者の配偶者及び子が右死亡者から扶養を受けていた場合に、加害者は右配偶者等の固有の利益である扶養請求権を侵害したものであるから、右配偶者等は、相続放棄をしたときであっても、加害者に対し、扶養利益の喪失による損害賠償を請求することができる。
#:*その扶養利益喪失による損害額は、相続により取得すべき死亡者の逸失利益の額と当然に同じ額となるものではなく、個々の事案において、扶養者の生前の収入、そのうち被扶養者の生計の維持に充てるべき部分、被扶養者各人につき扶養利益として認められるべき比率割合、扶養を要する状態が存続する期間などの具体的事情に応じて適正に算定すべきものである。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52268 損害賠償等請求事件](最高裁判決 平成13年2月13日)[[著作権法第20条]],著作権法第第7章権利侵害,[[民法第719条]]
##'''メモリーカードの使用がゲームソフトの著作者の有する同一性保持権を侵害するとされた事例'''
##:パラメータにより主人公の人物像が表現され,その変化に応じてストーリーが展開されるゲームソフトについて,パラメータを本来ならばあり得ない高数値に置き換えるメモリーカードの使用によって,主人公の人物像が改変され,その結果,上記ゲームソフトのストーリーが本来予定された範囲を超えて展開されるなど判示の事実関係の下においては,当該メモリーカードの使用は,上記ゲームソフトを改変し,その著作者の有する同一性保持権を侵害する。
##'''専らゲームソフトの改変のみを目的とするメモリーカードを輸入,販売し,他人の使用を意図して流通に置いた者の不法行為責任'''
##:専らゲームソフトの改変のみを目的とするメモリーカードを輸入,販売し,他人の使用を意図して流通に置いた者は,他人の使用により,ゲームソフトの同一性保持権の侵害をじゃっ起したものとして,ゲームソフトの著作者に対し,不法行為に基づく損害賠償責任を負う。(→[[民法第719条#関連性2|共同不法行為]])
# <span id="契約確認"></span>[http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52293 著作権侵害差止等請求事件](最高裁判決 平成13年3月2日)[[著作権法第22条]],[[著作権法第22条の2]],著作権法第7章権利侵害,民法第719条
#;専ら音楽著作物を上映し又は演奏して公衆に直接見せ又は聞かせるために使用されるカラオケ装置につきリース業者がリース契約を締結して引き渡す場合の注意義務
#:カラオケ装置のリース業者は,カラオケ装置のリース契約を締結した場合において,当該装置が専ら音楽著作物を上映し又は演奏して公衆に直接見せ又は聞かせるために使用されるものであるときは,リース契約の相手方に対し,当該音楽著作物の著作権者との間で著作物使用許諾契約を締結すべきことを告知するだけでなく,上記相手方が当該著作権者との間で著作物使用許諾契約を締結し又は申込みをしたことを確認した上でカラオケ装置を引き渡すべき条理上の注意義務を負う。
# <span id="報道4"></span>[http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=62816 損害賠償請求事件](最高裁判決 平成14年1月29日)民法第710条,[[刑法第230条の2]]第1項
#;通信社が新聞社に記事を配信するに当たりその内容を真実と信ずるについて相当の理由があるとはいえないとされた事例
#:通信社が,殺人未遂罪で逮捕された甲が7,8年前に自宅で大麻を所持しており,その事実を捜査機関が突き止めた旨の事実を記事にして配信し,新聞社がこれを掲載した場合に,甲が自宅に大麻を所持していた事実の裏付けになる資料は甲と離婚した乙の供述のみであること,捜査の対象となっていない大麻所持についての報道であること,甲以外の関係者からそのころの甲と大麻とのかかわりについて取材することが不可能であった状況がうかがえないこと,捜査官が甲の大麻所持についていかなる事実を把握し,どのような心証を持ち,どのように判断しているのかについての取材内容が明らかでないことなど判示の事情の下においては,乙の供述が一貫し,甲が大麻と深いつながりがあることを自ら認めており,記事作成の時点で甲が既に逮捕され,甲に対する取材が不可能であった等の事情が存するときであっても,通信社に上記配信記事に摘示された事実を真実と信ずるについて相当の理由があったものとはいえない。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=62539 損害賠償請求事件](最高裁判決 平成15年11月14日)[[民法第415条]]
#;食道がんの手術の際に患者の気管内に挿入された管が手術後に抜かれた後に患者が進行性のこう頭浮しゅにより上気道狭さくから閉そくを起こして呼吸停止及び心停止に至った場合において担当医師に再挿管等の気道確保のための適切な処置を採るべき注意義務を怠った過失があるとされた事例
#:食道がんの手術の際に患者の気管内に挿入された管が手術後に抜かれた後に,患者が,進行性のこう頭浮しゅにより上気道狭さくから閉そくを起こし,呼吸停止及び心停止に至った場合において,上記抜管の約5分後に患者の吸気困難な状態が高度になったことを示す胸くうドレーンの逆流が生じたことなどから,その時点で,担当医師は,患者のこう頭浮しゅの状態が相当程度進行し,既に呼吸が相当困難な状態にあることを認識することが可能であり,これが更に進行すれば,上気道狭さくから閉そくに至り,呼吸停止,ひいては心停止に至ることも十分予測することができたなど判示の事情の下においては,担当医師には,上記時点で,再挿管等の気道確保のための適切な処置を採るべき注意義務を怠った過失がある。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52290 損害賠償請求事件](最高裁判決 平成15年11月14日)[[建築士法第3条]],[[建築士法第3条の2]],[[建築士法第3条の3]],建築士法(平成9年法律第95号による改正前のもの)18条,建築基準法(平成10年法律第100号による改正前のもの)5条の2
##'''建築士が建築士法3条から3条の3まで及び建築基準法5条の2の各規定等による規制の実効性を失わせる行為をした場合における建築物の購入者に対する不法行為の成否'''
##:建築士は,その業務を行うに当たり,建築物を購入しようとする者に対する関係において,建築士が建築士法3条から3条の3まで及び建築基準法5条の2の各規定等による規制の潜脱を容易にする行為等,その規制の実効性を失わせるような行為をしてはならない法的義務があり,故意又は過失によりこれに違反する行為をした場合には,その行為により損害を被った建築物の購入者に対し,不法行為に基づく賠償責任を負う。
##'''建築確認申請書に自己が工事監理を行う旨の実体に沿わない記載をした一級建築士が建築主に工事監理者の変更の届出をさせる等の適切な措置を執らずに放置した行為が当該建築主から瑕疵のある建物を購入した者に対する不法行為となるとされた事例'''
##:一級建築士又は二級建築士による設計及び工事監理が必要とされる建物の建築につき一級建築士が建築確認申請手続を代行した場合において,建築主との間で工事監理契約が締結されておらず,将来締結されるか否かも未定であるにもかかわらず,当該一級建築士が,建築主の求めに応じて建築確認申請書に自己が工事監理を行う旨の実体に沿わない記載をし,工事監理を行わないことが明確になった段階でも,建築主に工事監理者の変更の届出をさせる等の適切な措置を執らずに放置したこと,そのため,実質上,工事監理者がいない状態で建築された当該建物が重大な瑕疵のある建築物となったことなど判示の事情の下においては,当該一級建築士の上記行為は,建築士法3条の3及び建築基準法5条の2の各規定等による規制の実効性を失わせる行為をしたものとして当該建物を購入した者に対する不法行為となる。
# <span id="パブリシティ権"></span>[http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52332 製作販売差止等請求事件](最高裁判決 平成16年2月13日)[[民法第198条]],[[民法第199条]],[[民法第206条]],[[知的財産基本法第2条]]2項
#;競走馬の所有者が当該競走馬の名称を無断で利用したゲームソフトを製作,販売した業者に対しいわゆる物のパブリシティ権の侵害を理由として当該ゲームソフトの製作,販売等の差止請求又は不法行為に基づく損害賠償請求をすることの可否
#:競走馬の所有者は,当該競走馬の名称を無断で利用したゲームソフトを製作,販売した業者に対し,その名称等が有する顧客吸引力などの経済的価値を独占的に支配する財産的権利(いわゆる物のパブリシティ権)の侵害を理由として当該ゲームソフトの製作,販売等の差止請求又は不法行為に基づく損害賠償請求をすることはできない。
#:*現行法上,物の名称の使用など,物の無体物としての面の利用に関しては,商標法,著作権法,不正競争防止法等の知的財産権関係の各法律が,一定の範囲の者に対し,一定の要件の下に排他的な使用権を付与し,その権利の保護を図っているが,その反面として,<u>その使用権の付与が国民の経済活動や文化的活動の自由を過度に制約することのないようにするため</u>,各法律は,それぞれの知的財産権の発生原因,内容,範囲,消滅原因等を定め,その排他的な使用権の及ぶ範囲,限界を明確にしている。上記各法律の趣旨,目的にかんがみると,競走馬の名称等が顧客吸引力を有するとしても,物の無体物としての面の利用の一態様である競走馬の名称等の使用につき,法令等の根拠もなく競走馬の所有者に対し排他的な使用権等を認めることは相当ではなく,また,競走馬の名称等の無断利用行為に関する不法行為の成否については,違法とされる行為の範囲,態様等が法令等により明確になっているとはいえない現時点において,これを肯定することはできないものというべきである。したがって,本件において,差止め又は不法行為の成立を肯定することはできない。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=34907 損害賠償請求事件](最高裁判決 平成19年7月6日)
#;建物の設計者,施工者又は工事監理者が,建築された建物の瑕疵により生命,身体又は財産を侵害された者に対し不法行為責任を負う場合
#:<u>建物の建築に携わる設計者,施工者及び工事監理者は,建物の建築に当たり,契約関係にない居住者を含む建物利用者,隣人,通行人等に対する関係でも,当該建物に'''建物としての基本的な安全性が欠けることがないように配慮すべき注意義務'''を負い</u>,これを怠ったために建築された建物に上記安全性を損なう瑕疵があり,それにより居住者等の生命,身体又は財産が侵害された場合には,設計者等は,不法行為の成立を主張する者が上記瑕疵の存在を知りながらこれを前提として当該建物を買い受けていたなど特段の事情がない限り,これによって生じた損害について不法行為による賠償責任を負う。
## [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=81511 損害賠償請求事件](最高裁判決 平成23年7月21日)
##;「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵」の意義
##:「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵」とは,居住者等の生命,身体又は財産を危険にさらすような瑕疵をいい,建物の瑕疵が,居住者等の生命,身体又は財産に対する現実的な危険をもたらしている場合に限らず,当該瑕疵の性質に鑑み,これを放置するといずれは居住者等の生命,身体又は財産に対する危険が現実化することになる場合には,当該瑕疵は,建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵に該当する。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=36310 損害賠償請求事件](最高裁判決 平成20年4月24日)
##チーム医療として手術が行われる場合にチーム医療の総責任者が患者やその家族に対してする手術についての説明に関して負う義務
##:チーム医療として手術が行われる場合,チーム医療の総責任者は,条理上,患者やその家族に対し,手術の必要性,内容,危険性等についての説明が十分に行われるように配慮すべき義務を有する。
##チーム医療として手術が行われるに際し,患者やその家族に対してする手術についての説明を主治医にゆだねたチーム医療の総責任者が,当該主治医の説明が不十分なものであっても説明義務違反の不法行為責任を負わない場合
##:チーム医療として手術が行われ,チーム医療の総責任者が患者やその家族に対してする手術についての説明を主治医にゆだねた場合において,当該主治医が説明をするのに十分な知識,経験を有し,同総責任者が必要に応じて当該主治医を指導,監督していたときには,当該主治医の上記説明が不十分なものであったとしても,同総責任者は説明義務違反の不法行為責任を負わない。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=36428 損害賠償請求事件](最高裁判決 平成20年6月10日)[[民事訴訟法第248条|民訴法248条]]
#;採石権侵害の不法行為を理由とする損害賠償請求事件において,損害の発生を前提としながら,[[民事訴訟法第248条|民訴法248条]]の適用について考慮することなく,損害額を算定することができないとして請求を棄却した原審の判断に違法があるとされた事例
#:採石権侵害の不法行為を理由とするXのYに対する損害賠償請求事件において,Xが採石権を有する土地でYが採石したとの事実が認定されており,これによればXに損害が発生したことは明らかである以上,上記採石行為の後,Yが当該土地につき採石権を取得して適法に採石したため,Yの違法な行為による採石量と適法な行為による採石量とを明確に区別することができず,損害額の立証が極めて困難であったとしても,[[民事訴訟法第248条|民訴法248条]]により,口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づいて相当な損害額が認定されなければならず,損害額を算定することができないとしてXの請求を棄却した原審の判断には,違法がある。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=37489 損害賠償請求事件](最高裁判決 平成21年3月27日)
#;全身麻酔と局所麻酔の併用による手術中に生じた麻酔による心停止が原因で患者が死亡した場合において,麻酔医に各麻酔薬の投与量を調整すべき注意義務を怠った過失があり,同過失と死亡との間に相当因果関係があるとされた事例
#:全身麻酔と局所麻酔の併用による手術を受けた65歳の患者が術中に麻酔の影響により血圧が急激に低下し,引き続き生じた心停止が原因となって死亡した場合において,次の(1),(2)などの事実関係の下では,各麻酔薬の投与量をどの程度減らすかについて麻酔医の裁量にゆだねられる部分があり,いかなる程度減量すれば死亡の結果を回避することができたといえるかが確定できないとしても,その投与量を適切に調整しても患者の死亡という結果を避けられなかったというような事情がうかがわれない以上,麻酔医には患者の年齢や全身状態に即して各麻酔薬の投与量を調整すべき注意義務を怠った過失があり,この過失と患者の死亡との間に相当因果関係がある。<small>
#::# 全身麻酔薬プロポフォールについては,局所麻酔薬と併用投与する場合及び高齢者に投与する場合には血圧低下等の副作用が現れやすいので投与速度を減ずるなど慎重に投与すべきことが,局所麻酔薬塩酸メピバカインについては,重大な副作用として心停止等があり,高齢者には投与量の減量等を考慮して慎重に投与すべきことが,各能書に記載されていた。
#::# 麻酔医は,全身麻酔により就眠を得た患者に対し,能書に記載された成人に対する通常の用量の最高限度量の塩酸メピバカインを投与し,その効果が高まるに伴って低下した患者の血圧が少量の昇圧剤では回復しない状態となっていたにもかかわらず,プロポフォールを成人において通常適切な麻酔深度が得られるとされる速度のまま持続投与した。</small>
#[https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=81272 損害賠償請求事件] (最高裁判決 平成23年4月26日)[[民法第416条]]
#;精神神経科の医師の患者に対する言動と上記患者が上記言動に接した後にPTSD(外傷後ストレス障害)と診断された症状との間に相当因果関係があるということはできないとされた事例
#:精神神経科の医師が,過去に知人から首を絞められるなどの被害を受けたことのある患者に対し,人格に問題があり,病名は「人格障害」であると発言するなどした後,上記患者が,精神科の他の医師に対し,頭痛,集中力低下等の症状を訴え,上記の言動を再外傷体験としてPTSD(外傷後ストレス障害)を発症した旨の診断を受けたとしても,次の1.,2.など判示の事情の下においては,上記の言動と上記症状との間に相当因果関係があるということはできない。
#:#上記の言動は,それ自体がPTSDの発症原因となり得る外傷的な出来事に当たるものではないし,上記患者がPTSD発症のそもそもの原因となった外傷体験であるとする上記被害と類似し,又はこれを想起させるものでもない。
#:#PTSDの発症原因となり得る外傷体験のある者は,これとは類似せず,また,これを想起させるものともいえない他の重大でないストレス要因によってもPTSDを発症することがある旨の医学的知見が認められているわけではない。
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{{前後
|[[民法]]
|[[第3編 債権 (コンメンタール民法)|第3編 債権]]<br>[[第3編 債権 (コンメンタール民法)#5|第5章 不法行為]]
|[[民法第708条]]<br>(不法原因給付)
|[[民法第710条]]<br>(財産以外の損害の賠償)
}}
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[[category:民法|709]]
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wikitext
text/x-wiki
[[法学]]>[[民事法]]>[[民法]]>[[コンメンタール民法]]>[[第3編 債権 (コンメンタール民法)]]
== 条文 ==
([[不法行為]]による[[損害賠償]])
;第709条
: [[故意]]又は[[過失]]によって他人の権利又は'''法律上保護される利益'''を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する[[責任]]を負う。
== 解説 ==
債権の発生原因の一つである、不法行為の成立要件を規定している。
=== 要件 ===
==== 故意または過失 ====
:不法行為においては加害者に「故意または過失」があることが要件とされている。この点で[[債務不履行]]([[民法第415条|415条]])や[[物権的請求権]]とは異なる。故意・過失の立証責任は原告側にあるので、請求権が競合する場合には、債務不履行責任の追及や物権的請求権の行使のほうが認められやすいといえる。
:一方で、刑事法や英米法と異なり日本民法においては、不法行為が故意でなされた場合も過失でなされた場合も、結果についての責任は異ならないというのが、伝統的見解であって、故意論が展開される例は少なく、加害者の主観等については過失の有無が議論されることが法廷においても学説においても、ほとんどである。但し、近時の有力な学説では、故意をより重い責任要素で損害賠償の範囲や金額を過失に比べ拡大する(事実、慰謝料の算定などはその傾向がある)とするものもある。
===== 過失 =====
:'''過失'''とは、予見可能な結果について、結果回避義務の違反があったことをいうと解されている。いいかえれば、予見が不可能な場合や、予見が可能であっても結果の回避が不可能な場合には過失を認めることができない。
:結果回避義務については、専門的な職業に従事する者は一般人よりも高度の結果回避義務が要求されると考えられている。医療事故における医師の場合などがこれにあたる。
:また、取引等の相手が違法を犯すことについての回避義務について認められることもある([[#契約確認|最判平成13年3月2日]])。
===== 特別法による修正 =====
;責任の軽減:[[失火ノ責任ニ関スル法律]](失火責任法)は「民法第七百九条ノ規定ハ失火ノ場合ニハ之ヲ適用セス但シ失火者ニ重大ナル過失アリタルトキハ此ノ限ニ在ラス」と規定する。
:この規定により、失火の場合は故意または重過失がない限り不法行為責任は負わない。木造家屋の多い日本では、失火による不法行為責任が過大になりやすいことにかんがみた立法である。
;無過失責任:「故意または過失」を要件から省く立法的解決もあり、無過失責任と呼ばれる。無過失責任の代表例として、[[製造物責任法]]がある。製造物責任法3条は「製造業者等は(…)その引き渡したものの欠陥により他人の生命、身体または財産を侵害したときは、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる」と定めている。これにより製造業者は、製造物から生じた拡大損害については無条件で責任を負うことになる。
==== 権利侵害(侵害の違法性) ====
:侵害の対象となる権利は、明治以来判例によって拡大されてきた。生命、身体、有形の財産が侵害の対象となることは当初より争いはなかったが、著作権や人格権などの無体財産権の扱いは判例上変遷している。'''桃中軒雲右衛門事件'''においては、法律上規定のない権利は侵害対象にならないとされたが、'''大学湯事件'''においては「法律上保護される利益」が侵害対象であるとされ、老舗銭湯ののれんは法律上保護される利益に当たるとされた。
:その後、学説からは「権利侵害」とは侵害行為の違法性をいうのであり、「違法な侵害」であるかどうかに関して、「被侵害利益の重大性」と「侵害の態様」との相関関係によって判断すべきであるとする相関関係説が唱えられた。この理論に従えば、侵害が軽度のものであっても、被侵害利益が(生命など)重大であれば違法性が肯定されることになる。
:また、適法な権利行使(例えば工場の操業)であっても、周囲に与える影響が被害者にとって社会観念上の受忍限度を超える場合には不法行為になるという'''受忍限度論'''も提唱され、公害事件を通じて判例法理として定着している。
:現在では、所有権、担保物権、債権、知的所有権、人格権など幅広い権利が被侵害利益となっているが、パブリシティー権(著名なものの名称等が有する顧客吸引力などの経済的価値を独占的に支配する財産的権利、[[#パブリシティー権|判例]]参照)や環境権など、未だその権利性が争いの余地がある「権利」もある。
=====不法行為の成立を阻却する事由=====
======責任能力======
:'''[[民法第712条]]'''および'''[[民法第713条]]'''参照
======違法性阻却事由(法定)======
;正当防衛および緊急避難:'''[[民法第720条]]'''参照
======違法性阻却事由(その他)======
;自力救済
;正当業務行為
:#報道等に関するものについては、事実の摘示により名誉を侵害すると訴えられる場合が少なくないが、それが専ら公益の目的を持ったものであり、真実ないし真実であるとを信じるに足る理由がある場合には違法な行為といえない([[#報道|判例10]]、[[#報道2|判例27]]、[[#報道3|判例31]]、[[#報道4|判例38]])。なお、刑法理論「[[名誉に対する罪#真実性の証明|真実性の証明]]」も参照。
;被害者の承諾
:損害を受けた者が、事前に損害の原因である行為を承諾していた場合は、そもそも不法な「侵害」ということができないので賠償を請求することはできない。[[民法第1条|第1条]]第2項に言う「信義誠実」則のうち「禁反言の法則(エストッペルの原則)」に反しているということができる。ただし、その承諾が、加害者により作出されたものであった場合などは、行為の全体を観察し無効な承諾又は取り消しうる承諾として違法性を阻却する事由から排除することとなる。
==== 損害の発生 ====
:財産的損害と精神的損害がある。
:財産的損害は、積極的損害(直接の被害額)と消極的損害(不法行為がなければ得られたはずの利益=逸失利益)がある。
:損害の内容については学説上対立がある。差額説は、不法行為によって減少した価値を金銭評価したものが損害の実質であるとする。損害事実説は、ある損害それ自体の内容を金銭評価したものが損害の実質であるとする。
:精神的損害は、被害者の精神的苦痛である。
==== 因果関係 ====
侵害行為と損害との間に因果関係があるか、という要件である。
===== 相当因果関係 =====
:不法行為において因果関係が持つ意味は、因果関係を認めうる範囲で加害者に賠償責任を負わせる点にある。ここで、いわゆる事実的因果関係(「あれなくばこれなし」の関係)を前提にすると、因果関係の範囲が広くなりすぎ、損害賠償の範囲が過大になりすぎることになる。
:したがって、不法行為法では、事実的因果関係が成立していることを前提にしつつ、[[民法第416条]]を準用し、損害賠償させるべき範囲をより狭く限定している。これを'''相当因果関係'''といい判例上確立した準則である(富貴丸事件:大連判大正15年5月22日)。ただし、相当因果関係の概念に関しては、学説において有力かつ強い批判がなされている。
======不法行為と被害者の自殺======
:裁判において、従来、自殺は行為者の意思が大きく関与し、不法行為から、そのような意思の形成が生じるとは通常は認められず、加害者側において自殺を予見し又は予見しうる状況にあったと認めることは困難であるとして相当因果関係を認めることに慎重であったが、近年においては、当該不法行為により災害神経症状態を惹起し、統計的に自殺率の高いうつ病等を罹患、その後自殺した事例については、相当因果関係を認めるものもある。ただし、この場合であっても、被害者(自殺者)の性格的傾向等の心因的要因の寄与を認め、第722条2項を類推適用し、損害額を減額する傾向にある。
:;相当因果関係を認めない例
:*交通事故と被害者の自殺([[#被害者の自殺|最判昭和50年10月03日]])
:*教師の違法な懲戒と生徒の自殺([[#違法な懲戒|最判昭和52年10月25日]])
:;相当因果関係を認めた例
:*交通事故と被害者の自殺([[#被害者の自殺2|最判平成5年09月09日]])
:*過重労働と自殺([[民法第715条#過重労働|最判平成12年03月24日]] [通称:電通損害賠償事件])
===== 因果関係の立証責任 =====
不法行為に基づく損害賠償請求を行うためには、原告側が侵害行為と損害の間の因果関係を立証しなければならない。しかし、公害事件や医療過誤事件など、一般市民である被害者には挙証が難しいケースも多い。このため、判例法理や立法的解決によって立証責任の軽減が図られてきた。
;蓋然性説:因果関係の100%までを原告側で立証する必要はなく、蓋然性が認められる範囲まで立証すれば、その時点で因果関係が推定され、その後は被告側が反証に成功しない限り因果関係は肯定されるとする理論。
;疫学的因果関係:公害など、多くの因子が被害に絡む場合に、侵害行為と被害発生との間に統計的な有意性が認められれば因果関係を肯定しようという理論。[[w:四日市ぜんそく|四日市ぜんそく]]訴訟で用いられた。
=== 効果 ===
:損害賠償は金銭でなされるのが原則である([[民法第722条|722条1項]]で[[民法第417条|417条]]を準用)。ただし、名誉毀損の場合は例外的に謝罪広告等の措置も請求できる([[民法第723条|723条]])。また、そのほか解釈として、原状回復・差止などが認められうる。
==== 金銭賠償の原則 ====
===== 損害賠償の内容 =====
:賠償されるべき損害には財産的損害と精神的損害がある。
:財産的損害には物理的な損害のほか、生命侵害、身体侵害などがある。著作権、特許権、債権などの財産権一般への侵害もある。それぞれについて積極損害と消極損害を観念しうる。
:精神的損害からは、慰謝料請求権が生ずる。
===== 損害賠償の範囲 =====
:不法行為から生じた全損害について賠償させるのは、被告にとって過酷であることから、相当因果関係説によって損害賠償の範囲が制限される。
:判例は債務不履行責任における損害賠償の範囲の規定([[民法第416条|416条]])を不法行為に類推適用し、原則として「通常生ずべき損害」の賠償で足り、「当事者がその損害を予見し、または予見することができたとき」は「特別の事情によって生じた損害」まで賠償する必要があると考えている(富貴丸事件:大連判大正15年5月22日)。ただし、学説上は、有力な反対意見があり長年議論されている([[#特別事情|判例;大隈健一郎裁判官反対意見参照]])。
====== 損害賠償の範囲内とされるもの ======
;訴訟に要する弁護士費用:訴訟遂行は一般人には困難であり、不法行為のように被害者に非がない案件について弁護士費用は損害の範囲に入る([[#弁護士費用|判例]])。
===== 損害賠償額の算定 =====
:物の滅失に関する損害賠償額は、物の交換価格による。交換価格の算定基準時が問題になるが、原則として物の滅失時とする。ただし被害者があらかじめその物の転売を予定していて、滅失後に高騰することを「予見し、又は予見することができたとき」([[民法第416条|416条2項]])のであれば、騰貴時とすることも考えられる(富貴丸事件判決)。
:生命侵害の場合には、積極損害(葬式費用など)よりも、消極損害(逸失利益)のほうがはるかに大きくなる。逸失利益は、被害者が生きていたならば得られた収入から、生活費を控除し、ここから中間利息を控除して(現在価値に割り引いて)算出する。中間利息の控除方式には、ホフマン式とライプニッツ式とがある。基準となる収入は、被害者の収入が明らかであればその額を用いるが、児童など、収入が明らかでないときは、賃金センサスに基づいた平均賃金を用いる。
:なお、過失相殺など損害賠償額の調整については[[民法第722条|722条2項]]を参照。
===== 損害賠償の請求主体 =====
:財産的損害であれ、精神的損害であれ、第一義的な請求主体は被害者自身である。被害者が死亡した場合は、慰謝料請求権は当然に相続されると解されている。
:生命侵害の場合、被害者の父母・配偶者・子は固有の慰謝料請求権を有する([[民法第711条|711条]])。
:胎児も請求主体になる。胎児は、損害賠償請求権については「既に生まれたもの」とみなされる([[民法第721条|721条]])。これにより、たとえば父が不法行為により死亡した場合、死の時点で母胎にいた胎児は、出生後、損害賠償請求権を獲得する。権利能力の始期を定めた[[民法第3条|3条]]の例外を定めたものである。
===== 不法行為による損害賠償債権の性質 =====
:悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務、または、人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務であれば、相殺の受働債権にならない([[民法第509条|509条]])。
==== 名誉回復処分 ====
:'''[[民法第723条]]'''参照
==== 原状回復・差止 ====
不法行為の一般的効果として、金銭による損害賠償以外のものが解釈上認められるかが問題となる。金銭による損害賠償以外のものとしては、原状回復又は差止が想定しうる。
*'''原状回復'''; 過去に発生した損害を除去し、損害の存在しなかった状態に戻すこと。
*'''差止''': 将来において損害を発生させるであろう行為を停止させること。
===== 原状回復請求権 =====
:判例、通説ともに否定。
:「金銭賠償の原則」が定立されており、原状回復の費用を見積もりそれに還元すれば足りるため。
===== 差止請求権 =====
:判例は不分明であるが、どちらかと言えば否定的([[#差止|事実上、不法行為の存在を前提として差し止めを認めた判例]])
:学説上も賛否が分かれている。
== 参照条文 ==
* [[民法第710条]](財産以外の損害の賠償)
* [[民法第711条]](近親者に対する損害の賠償)
* [[国家賠償法第1条]]
* [[外国等に対する我が国の民事裁判権に関する法律]] - [[主権免除]]
* [[失火ノ責任ニ関スル法律]](失火責任法) - 適用除外、過失要件の加重
== 判例 ==
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=57289 所有権移転登記抹消等請求](最高裁判決 昭和30年5月31日)[[民法第177条]]
#;不動産の二重売買における第二の買主が悪意の場合と第一の買主に対する不法行為責任の有無
#:乙が甲から不動産を買い受けて登録を経ないうち、丙が甲から右不動産を買い受けて登記をなし、これをさらに丁に売り渡して登記を経たため、乙がその所有権取得を丁に対抗することができなくなつた場合において、丙がその買受当時甲乙間の売買の事実を知つていたというだけでは、丙は乙に対し不法行為責任を負うものではない。
#:- '''不動産の二重売買そのものは不法行為とは言えない。'''
#:*<small>一般に不動産の二重売買における第二の買主は、たとい悪意であつても、登記をなすときは完全に所有権を取得し、第一の買主はその所有権取得をもつて第二の買主に対抗することができないものと解すべきであるから、本件建物の第二の買主で登記を経た上告人(丙)は、たとい悪意ではあつても、完全に右建物の所有権を取得し、第一の買主たる被上告人(乙)はその所有権取得をもつて上告人および同人から更に所有権の移転を受けその登記を経た丁に対抗することができないことは、当然の筋合というべきである。</small>
#[http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=57462&hanreiKbn=02 損害賠償請求] (最高裁判決 昭和32年01月31日)[[民法第189条]],民訴法199条1項(現・[[民事訴訟法第114条]]),民訴法709条(→民事執行法)
#;不法行為による物の滅失毀損と損害賠償額算定の基準時期
#:不法行為による物の滅失毀損に対する損害賠償の金額は、特段の事由のないかぎり、滅失毀損当時の交換価格により定むべきである。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=57564 売掛代金請求](最高裁判決 昭和32年3月5日)商法第42条(現[[商法第24条|24条]]),商法第38条(現[[商法第21条|第21条]]),[[民法第715条]]
#;所有権侵害の故意と特定人に対する所有権侵害の認識の要否。
#:不法行為者に所有権侵害の故意があるというためには、特定人の所有権を侵害する事実につき認識のあることを要するものではなく、単に他人の所有権を侵害する事実の認識があれば足りる。
# [https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=57563 損害賠償請求](最高裁判決 昭和32年5月10日)
#;不法行為における過失の認定の当否
#:甲事実および乙事実がともに診療行為上の過失となすに足るものである以上、裁判所が甲または乙のいずれかについて過誤があつたものと推断しても、過失の事実認定として不明または未確定というべきではない。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=53662 損害賠償請求](最高裁判決 昭和34年11月26日)[[民法第722条]]2項,民訴法185条(現[[民事訴訟法第247条|247条]])
#;刑事判決における過失の有無の判断と民事判決
#:自動車運転者が業務上過失致死被告事件の判決で過失を否定された場合でも、不法行為に関する民事判決ではその過失を否定しなければならぬものではない。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52929 建物収去、土地明渡請求](最高裁判決 昭和35年9月20日)借地法10条(現[[借地借家法第14条|借地借家法14条]]),[[民法第703条]]
#;建物取得後借地法10条(現[[借地借家法第14条|借地借家法14条]])の買取請求権行使までの間における敷地不法占有と損害の有無。
#:借地法10条(現[[借地借家法第14条|借地借家法14条]])の建物買取請求権が行使された場合、土地賃貸人は、特段の事情がないかぎり、右買取請求権行使以前の期間につき賃料請求権を失うものではないけれども、これがため右期間中は建物取得者の敷地不法占有により賃料相当の損害を生じないとはいい得ない。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=54824 損害賠償請求](最高裁判決 昭和36年2月16日) <small>輸血取締規則(昭和20年厚生省令3号)2条,輸血取締規則(昭和20年厚生省令3号)3条,輸血に関し医師又は歯科医師の準拠すべき基準(昭和27年厚生省告示138号)2(1),輸血に関し医師又は歯科医師の準拠すべき基準(昭和27年厚生省告示138号)4,輸血に関し医師又は歯科医師の準拠すべき基準(昭和27年厚生省告示138号)5,輸血に関し医師又は歯科医師の準拠すべき基準(昭和27年厚生省告示138号)7,輸血に関し医師又は歯科医師の準拠すべき基準(昭和27年厚生省告示138号)11</small>
#;給血者に対する梅毒感染の危険の有無の問診の懈怠と輸血による梅毒感染についての医師の過失責任。
#:給血者がいわゆる職業的給血者で、血清反応陰性の検査証明書を持参し、健康診断および血液検査を経たことを証する血液斡旋所の会員証を所持していた場合でも、同人が、医師から問われないためその後梅毒感染の危険のあつたことを言わなかつたに過ぎないような場合、医師が、単に「身体は丈夫か」と尋ねただけで、梅毒感染の危険の有無を推知するに足る問診をせずに同人から採血して患者に輸血し、その患者に給血者の罹患していた梅毒を感染させるに至つたときは、同医師は右患者の梅毒感染につき過失の責を免れない。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=54920 損害賠償請求](最高裁判決 昭和38年8月8日)
#;第三者の詐欺による売買における売主の代金請求権の存在と右第三者に対する不法行為にもとづく損害賠償請求権の存否。
#:第三者の詐欺による売買により目的物件の所有権を喪失した売主は、買主に対し代金請求権を有していても、右第三者に対する不法行為にもとつぐ損害賠償請求権がないとはいえない。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=54949 損害賠償請求](最高裁判決 昭和38年9月26日)[[民法第416条]]2項
#;特別事情の予見可能ありとして、不法行為と損害との間に、相当因果関係の存在が認められた事例。
#:自動車運転手甲がガソリンを使用して自動三輪車のクラツチを洗滌するに際し、その作業を助けるため甲の傍近くから電灯を照射している乙がいる等判示の事情の存する場合においては、甲が、自己の過失によりガソリンの入つている罐に引火炎上させ狼狽してこれを投げすてたときは、右炎上したガソリン罐が乙にあたりその衣服を炎上させ乙に火傷を負わせて死にいたらしめるであろうことを予見しうるものであるから、甲の前記クラツチ洗滌行為と乙の死亡との間には相当因果関係が存すると解すべきである。
# <span id="差止"></span>[http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=56244 村道供用妨害排除請求](最高裁判決 昭和39年1月16日)[[民法第198条]],民法第710条
##村民の村道使用関係の性質
##:村民各自は、村道に対し、他の村民の有する利益ないし自由を侵害しない程度において、自己の生活上必須の行動を自由に行いうべき使用の自由権を有する。
##'''村民の村道使用権に対する侵害の継続と妨害排除請求権の成否'''
##:村民の右村道使用の自由権に対して継続的な妨害がなされた場合には、当該村民は、右妨害の排除を請求することができる。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=53875 損害賠償請求](最高裁判決 昭和39年7月28日)民訴法395条1項6号(現[[民事訴訟法第312条|312条]]2項6号)
#;医師の消毒の不完全を理由とする損害賠償の請求を認容する判決において右消毒の不完全部分を確定しないで過失を認定しても違法でないとされた事例。
#:注射の際の医師による消毒の不完全を理由とする損害賠償の請求を認容する判決において、右消毒の不完全が注射器具、施術者の手指もしくは患者の注射部位のいずれに存するかを確定しないで過失を認定しても、違法とはいえない。
#:*原審において、感染経路を他の可能性を検討の上、「注射器具」「施術者の手指」「患者の注射部位」のいずれかまで絞り込んだが、いずれかは特定しなかった。いずれであっても医師の過失は認めうるので特定までは必要ないとの判断。
# <span id="報道"></span>[http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=57744 名誉および信用毀損による損害賠償および慰藉料請求](最高裁判決 昭和41年6月23日)
#;公共の利害に関する事実の摘示と名誉毀損の成否
#:名誉毀損については、当該行為が公共の利害に関する事実に係りもつぱら公益を図る目的に出た場合において、摘示された事実が真実であることが証明されたときは、その行為は、違法性を欠いて、不法行為にならないものというべきである。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=53980 損害賠償請求](最高裁判決 昭和43年3月15日)[[民法第695条]]、[[民法第696条]]
#;示談当時予想しなかつた後遺症等が発生した場合と示談の効力
#:交通事故による全損害を正確に把握し難い状況のもとにおいて、早急に、小額の賠償金をもつて示談がされた場合において、右示談によつて被害者が放棄した損害賠償請求は、示談当時予想していた損害についてのみと解すべきであつて、その当時予想できなかつた後遺症等については、被害者は、後日その損害の賠償を請求することができる。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=54954 損害賠償請求](最高裁判決 昭和43年6月27日)[[国家賠償法第1条]]1項,[[不動産登記法施行細則第47条]],民法第416条
##'''偽造の登記済証に基づく登記申請を受理するについて登記官吏に過失があるとされた事例'''
##:登記申請書に添付されていた登記済証が偽造であつて、その作成日として記載されている日当時官制上存在しなかつた登記所名が記載され、同庁印が押捺されているにもかかわらず、登記官吏がこれを看過してその申請にかかる所有権移転登記手続をした場合には、右登記官吏に、登記申請書類を調査すべき義務を怠つた過失があるというべきである。
##'''登記官吏の過失によつて無効な所有権移転登記が経由された場合に右過失と右登記を信頼して該不動産を買い受けた者が被つた損害との間に相当因果関係があるとされた事例'''
##:登記官吏の右過失によつて、無効な所有権移転登記が経由された場合には、右過失と右登記を信頼して該不動産を買い受けた者がその所有権を取得できなかつたために被つた損害との間には、相当因果関係があるというべきである。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=66616 損害賠償請求](最高裁判決 昭和43年9月24日)
#;交差点において追抜態勢にある自動車運転手の並進車に対する注意義務の範囲
#:交差点において追抜態勢にある自動車運転手は、特別の事情のないかぎり、並進車が交通法規に違反して進路を変えて、突然自車の進路に近寄つてくることまでも予想して、それによつて生ずる事故の発生を未然に防止するため徐行その他避譲措置をとるべき業務上の注意義務はないと解するのが相当である。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=55001 慰藉料並に損害賠償請求](最高裁判決 昭和43年11月15日)
#;交通事故により会社代表者を負傷させた者に対する会社の損害賠償請求が認められた事例
#:甲が交通事故により乙会社の代表者丙を負傷させた場合において、乙会社がいわゆる個人会社で、丙に乙会社の機関としての代替性がなく、丙と乙会社とが経済的に一体をなす等判示の事実関係があるときは、乙会社は、丙の負傷のため利益を逸失したことによる損害の賠償を甲に請求することができる。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=55100 損害賠償謝罪広告請求](最高裁判決 昭和43年12月24日)民訴法756条<!--旧法-->,民訴法745条2項<!--旧法-->
#;仮処分命令が不当であるとして取り消された場合において仮処分申請人に過失があるとはいえないとされた事例
#:会社を被申請人とする仮処分命令が、同会社に対しては被保全権利が存在しないとして取り消された場合においても、右会社の取締役が会社の営業と競合する事業を個人として営んでいたため、仮処分申請人が被申請人を右取締役個人とすべきであるにもかかわらず、これを右会社と誤認した等判示の事実関係のもとにおいては、右仮処分命令を取り消す判決が確定しても、この一事をもつて、ただちに右申請人に過失があつたものとすることはできない。
# <span id="弁護士費用"></span>[http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=55036 抵当権設定登記抹消登記手続等請求](最高裁判決 昭和44年2月27日)
#;不法行為による損害と弁護士費用
#:不法行為の被害者が、自己の権利擁護のため訴を提起することを余儀なくされ、訴訟追行を弁護士に委任した場合には、その弁護士費用は、事案の難易、請求額、認容された額その他諸般の事情を斟酌して相当と認められる額の範囲内のものにかぎり、右不法行為と相当因果関係に立つ損害というべきである。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=70377 約束手形金請求](最高裁判決 昭和45年5月22日)[[民法第715条]],[[手形法第43条]]
#;偽造手形の取得者の損害賠償請求権と手形法上の遡求権との関係
#: 対価を支払つて偽造手形を取得した手形所持人は、その出捐と手形偽造行為との間に相当因果関係が認められるかぎり、その出捐額につき、ただちに損害賠償請求権を行使することができ、手形の所持人としてその前者に対し手形法上の遡求権を有することによつては、損害賠償の請求を妨げられることはない。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=54169 損害賠償請求](最高裁判決 昭和45年7月24日)[[民法第147条]]1号,[[民法第149条]],[[所得税法第9条]]1項21号,民訴法235条(現[[民事訴訟法第147条|147条]])
#;一部請求の趣旨が明示されていない場合の訴提起による時効中断の範囲
#:一個の債権の一部についてのみ判決を求める趣旨が明示されていないときは、訴提起による消滅時効中断の効力は、右債権の同一性の範囲内においてその全部に及ぶ。
# <span id="訴訟物の個数"></span>[http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=51932 損害賠償請求](最高裁判決 昭和48年4月5日)民事訴訟法第186条(現[[民事訴訟法第246条|第246条]]),民事訴訟法224条1項(現[[民事訴訟法第134条|第134条]]2項),[[民法第722条]]2項
#;身体傷害による財産上および精神上の損害の賠償請求における請求権および訴訟物の個数
#:同一事故により生じた同一の身体傷害を理由として財産上の損害と精神上の損害との賠償を請求する場合における請求権および訴訟物は、一個である。(→[[民法第722条#訴訟物|過失相殺への適用]])
# <span id="特別事情"></span>[http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=51910 損害賠償請求](最高裁判決 昭和48年6月7日)[[民法第416条]],[[民事訴訟法第746条]]<!--旧法-->,[[民事訴訟法第755条]]<!--旧法-->,[[民事訴訟法第756条]]<!--旧法-->
#;不法行為による損害賠償と民法416条
#:不法行為による損害賠償についても、[[民法第416条]]の規定が類推適用され、特別の事情によつて生じた損害については、加害者において右事情を予見しまたは予見することを得べかりしときにかぎり、これを賠償する責を負うものと解すべきである。
#:*<small>'''[[w:大隅健一郎|大隅健一郎]]反対意見'''(適宜抽出引用及び改行)
#:*:債務不履行の場合には、当事者は合理的な計算に基づいて締結された契約によりはじめから債権債務の関係において結合されているのであるから、債務者がその債務の履行を怠つた場合に債権者に生ずる損害について予見可能性を問題とすることには、それなりに意味があるのみならず、もし債権者が債務不履行の場合に通常生ずべき損害の賠償を受けるだけでは満足できないならば、特別の事情を予見する債権者は、債務不履行の発生に先立つてあらかじめこれを債務者に通知して、将来にそなえる途もあるわけである。これに反して、多くの場合全く無関係な者の間で突発する不法行為にあつては、故意による場合はとにかく、過失による場合には、予見可能性ということはほとんど問題となりえない。(略)その結果、民法416条を不法行為による損害賠償の場合に類推適用するときは、立証上の困難のため、被害者が特別の事情によつて生じた損害の賠償を求めることは至難とならざるをえない。
#:*:そこで、この不都合を回避しようとすれば、公平の見地からみて加害者において賠償するのが相当と認められる損害については、特別の事情によつて生じた損害を通常生ずべき損害と擬制し、あるいは予見しまたは予見しうべきでなかつたものを予見可能であつたと擬制することとならざるをえないのである。そうであるとするならば、むしろ、不法行為の場合においては、各場合の具体的事情に応じて実損害を探求し、損害賠償制度の基本理念である公平の観念に照らして加害者に賠償させるのが相当と認められる損害については、通常生ずべきものであると特別の事情によつて生じたものであると、また予見可能なものであると否とを問わず、すべて賠償責任を認めるのが妥当であるといわなければならない。不法行為の場合には、無関係な者に損害が加えられるものであることからいつて、債務不履行の場合よりも広く被害者に損害の回復を認める理由があるともいえるのである。
#:*:不法行為による損害賠償責任が認められるためには、行為と損害との間に、その行為がなかつたならば当該損害は生じなかつたであろうという関係が存しなければならないが、かような事実的な因果の連鎖は際限のないものであるから、法律上の問題としては、右のような事実的因果関係の存在を前提としながら、そのうちどの範囲の損害を行為者に賠償させるのが妥当かという考慮が必要とされる。これがいわゆる法律上の因果関係の問題であるが、従来法律上の因果関係の問題として論じられていたものの中には、過失の問題、賠償額の算定(いかなる価格によるべきか、その価格の算定は何時を基準とすべきか)の問題など、本来因果関係の範疇の外にある問題が混入していることを注意しなければならない。また、行為との間に事実的因果関係のある損害につきどこまで行為者に賠償させるのが妥当かということは、いうまでもなく価値判断の問題であつて、事実として確定されるものではない。それは、各個の事件ごとに、その事実関係の中から、不法行為制度の基本理念である公平の観念に照らして導かれるべきものであつて、不法行為における損害賠償責任の正しい限界づけは、個々の判例の中から類型的に帰納されえても、一般的な公式によつて定められるべきものではない。
#:*:以上述べたところは財産的損害の賠償についてであつて、慰籍料については、裁判所が、諸般の事情を斟酌して、自由裁量により決することをうるものと考える。</small>
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52072 慰藉料請求](最高裁判決 昭和49年3月22日)
#;責任能力のある未成年者の不法行為と監督義務者の不法行為責任
#:未成年者が責任能力を有する場合であつても、監督義務者の義務違反と当該未成年者の不法行為によつて生じた結果との間に相当因果関係を認めうるときは、監督義務者につき民法709条に基づく不法行為が成立する。([[民法第714条#解説]]参照)
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=66816 損害賠償請求](最高裁判決 昭和49年6月27日)
#;将来の支出が予想される手術費用の損害賠償が認められた事例
#:交通事故により顔面に負傷した被害者の傷痕及び大腿部の採皮痕がケロイド状醜痕としてのこり、これを除去するための美容的形成手術費等の将来の支出が治療上必要であり、かつ、確実と認められるときには、右支出による損害の賠償を現在の請求として求めることができる。
#[http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=54195&hanreiKbn=02 損害賠償請求](最高裁判決 昭和49年06月28日)[[民法第509条]]
#;同一交通事故によつて生じた物的損害に基づく損害賠償債権相互間における相殺の許否
#:双方の過失に基因する同一交通事故によつて生じた物的損害に基づく損害賠償債権相互間においても、相殺は許されない。
#<span id="被害者の自殺"></span>[http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=66834&hanreiKbn=02 損害賠償請求](最高裁判決 昭和50年10月03日) [[民法第416条]]
#;交通事故により負傷した被害者の自殺と事故との相当因果関係が否定された事例
#:*(最高裁・原審が支持する原々審判決)
#:*:事故と自殺の条件関係自体は推認できるが,仮に被害者の性格変化が自殺に影響を及ぼしていてもそのような性格変化が受傷から通常生じるとは認められず,加害者側において自殺を予見し又は予見しうる状況にあったと認めることは困難
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=54204 損害賠償請求([東大ルンバールショック事件])](最高裁判決 昭和50年10月24日)[[国家賠償法第1条]]1項,民訴法185条(現247条),民訴法394条(現312条1, 3項)
#;医師が治療としてした施術とその後の発作等及びこれにつづく病変との因果関係を否定したのが経験則に反するとされた事例
#:<u>訴訟上の因果関係の立証は,一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく,経験則に照らして全証拠を総合検討し,特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認しうる高度の蓋然性を証明することであり,その判定は,通常人が疑を差し挟まない程度に真実性の確認を持ちうるものであることを必要とし,かつそれで足りる。</u>
#:*重篤な化膿性髄膜炎に罹患した三才の幼児が入院治療を受け、その病状が一貫して軽快していた段階において、医師が治療としてルンバール(腰椎穿刺による髄液採取とペニシリンの髄腔内注入)を実施したのち、嘔吐、けいれんの発作等を起こし、これにつづき右半身けいれん性不全麻癖、知能障害及び運動障害等の病変を生じた場合、右発作等が施術後15分ないし20分を経て突然に生じたものであつて、右施術に際しては、もともと血管が脆弱で出血性傾向があり、かつ、泣き叫ぶ右幼児の身体を押えつけ、何度か穿刺をやりなおして右施術終了まで約30分を要し、また、脳の異常部位が左部にあつたと判断され、当時化膿性髄膜炎の再燃するような事情も認められなかつたなど判示の事実関係のもとでは、他に特段の事情がないかぎり、右ルンバ一ルと右発作等及びこれにつづく病変との因果関係を否定するのは、経験則に反する。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=54219 損害賠償請求](最高裁判決 昭和51年9月30日)[[予防接種法第2条]]2項,予防接種実施規則(昭和33年9月17日厚生省令第27号。ただし昭和45年7月11日厚生省令第44号による改正前のもの)4条
##'''インフルエンザ予防接の実施と医師の問診'''
##:インフルエンザ予防接種を実施する医師が予診としての問診をするにあたつては、予防接種実施規則4条の禁忌者を識別するために、接種直前における対象者の健康状態についてその異常の有無を概括的、抽象的に質問するだけでは足りず、同条掲記の症状、疾病及び体質的素因の有無並びにそれらを外部的に徴表する諸事由の有無につき、具体的に、かつ被質問者に的確な応答を可能ならしめるような適切な質問をする義務がある。
##'''予防接種実施規則4条の禁忌者を識別するための適切な問診を尽くさなかつたためその識別を誤つて実施されたインフルエンザ予防接種により接種対象者が死亡又は罹病した場合と結果の予見可能性の推定'''
##:インフルエンザ予防接種を実施する医師が、接種対象者につき予防接種実施規則4条の禁忌者を識別するための適切な問診を尽くさなかつたためその識別を誤つて接種をした場合に、その異常な副反応により対象者が死亡又は罹病したときは、右医師はその結果を予見しえたのに過誤により予見しなかつたものと推定すべきである。
#<span id="違法な懲戒"></span>[https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=64110 損害賠償等](最高裁判決 昭和52年10月25日)
#;高校教師の違法な懲戒権の行使と生徒の自殺との間の相当因果関係が否定された事例
#:高校生が、授業中の態度や過去の非行事実につき担任教師から三時間余にわたり応接室に留めおかれて反省を命ぜられたうえ、頭部を数回殴打されるなど違法な懲戒を受け、それを恨んで翌日自殺した場合であつても、右懲戒行為がされるに至つた経緯等とこれに対する生徒の態度等からみて、教師としての相当の注意義務を尽くしたとしても、生徒が右懲戒行為によつて自殺を決意することを予見することが困難な状況であつた判示の事情のもとにおいては、教師の懲戒行為と生徒の自殺との間に相当因果関係はない。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=53272 慰藉料](最高裁判決 昭和54年3月30日)
#;妻及び未成年の子のある男性と肉体関係を持ち同棲するに至つた女性の行為と右未成年の子に対する不法行為の成否
#:妻及び未成年の子のある男性が他の女性と肉体関係を持ち、妻子のもとを去つて右女性と同棲するに至つた結果、右未成年の子が日常生活において父親から愛情を注がれ、その監護、教育を受けることができなくなつたとしても、'''右女性の行為'''は、特段の事情のない限り、未成年の子に対して不法行為を構成するものではない。
#:*父親がその未成年の子に対し愛情を注ぎ、監護、教育を行うことは、他の女性と同棲するかどうかにかかわりなく、父親自らの意思によつて行うことができるのであるから、他の女性との同棲の結果、未成年の子が事実上父親の愛情、監護、教育を受けることができず、そのため不利益を被つたとしても、そのことと右女性の行為との間には'''相当因果関係がない'''。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=53322 損害賠償](最高裁判決 昭和56年7月16日)[[民法第715条]],[[水道法第15条]]1項
#;違法建築物についての給水装置新設工事申込の受理の事実上の拒絶につき市が不法行為法上の損害賠償責任を負わないとされた事例
#:市の水道局給水課長が給水装置新設工事申込に対し当該建物が建築基準法に違反することを指摘して、その受理を事実上拒絶し申込書をその申込者に返戻した場合であつても、それが、右申込の受理を最終的に拒否する旨の意思表示をしたものではなく、同法違反の状態を是正して建築確認を受けたうえ申込をするよう一応の勧告をしたものにすぎず、他方、右申込者はその後一年半余を経過したのち改めて右工事の申込をして受理されるまでの間右申込に関してなんらの措置を講じないままこれを放置していたなど、判示の事実関係の下においては、市は、右申込者に対し右工事申込の受理の拒否を理由とする不法行為法上の損害賠償の責任を負うものではない。
# [https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=70414 損害賠償](最高裁判決 昭和57年7月1日)
#;競業禁止契約の当事者でない第三者に対するパチンコ営業禁止の仮処分命令が債権侵害を理由に第三者の営業を禁止することは許されないとして取り消された場合において仮処分債権者に過失の推定を覆えすに足りる特段の事情がないとはいえないとされた事例
#:甲に対してパチンコ遊技場の経営権を譲渡しこれとの間で自己名義では同一町内でパチンコ営業をしない旨の競業禁止契約を締結した乙が、右契約に前後してかねて親交のあつた丙を勧誘してパチンコ営業をすることを決意させ、同一町内で土地建物を買い受け旧建物を解体して店舗用建物を建築し風俗営業の許可申請を警察に提出するなどの開業準備をさせたが、丙は右町内に住んだことやパチンコ営業をした経験がないため右開業準備もほとんど乙が丙から任されてしたもので、乙は、丙の氏名を表面に出さないで建物の建築請負契約を締結し、みずからパチンコ機械の注文をし、風俗営業の許可申請にも管理者として名を連ね、将来は責任者としてパチンコ営業をする予定になつており、また、丙は、甲と乙との間で建物建築に関して紛争が生じ、警察において事情聴取や話合いの機会がもたれた際も表だつた行動には出なかつたなどの判示の事情があるときには、甲が乙及び丙の両名を相手方として申請し発令を受けた右建物におけるパチンコ営業禁止の仮処分命令が、いわゆる債権侵害を理由にしては第三者たる丙のパチンコ営業を禁止することは許されないとして丙に関する部分が取り消されて確定したとしても、丙名義のパチンコ営業が実際には甲の乙に対する競業禁止契約に基づく権利の侵害行為にはあたらないもので甲において右事実を容易に知ることのできる事情があつたとか、又は、右の侵害行為がある場合に甲が第三者たる丙に対して営業禁止を請求する権利があると考えたことが実体法の解釈として不合理なものであるといえない限り、甲が丙を相手方としてパチンコ営業を禁止する仮処分を申請したことには過失の推定を覆えすに足りる特段の事情がないとはいえない。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52148 損害賠償](最高裁判決 昭和58年9月6日) [[民法第412条]],自動車損害賠償保障法第3条
#;不法行為と相当因果関係に立つ損害である弁護士費用の賠償債務が履行遅滞となる時期
#:不法行為と相当因果関係に立つ損害である弁護士費用の賠償債務は、当該不法行為の時に履行遅滞となるものと解すべきである。
#:*当該不法行為時から法定利率による利息計算が始まる。
# <span id="報道2"></span>[http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=55168 反論文掲載](最高裁判決 昭和62年4月24日)日本国憲法第21条,[[民法第1条]],民法第709条,民法第723条,[[刑法第230条の2|刑法第230条ノ2]]
#;新聞紙上における政党間の批判・論評の意見広告につき名誉毀損の不法行為の成立が否定された事例
#:新聞社が新聞紙上に掲載した甲政党の意見広告が、乙政党の社会的評価の低下を狙つたものであるが乙政党を批判・論評する内容のものであり、かつ、その記事中乙政党の綱領等の要約等が一部必ずしも妥当又は正確とはいえないとしても、右要約のための綱領等の引用文言自体は原文のままであり、要点を外したものといえないなど原判示の事実関係のもとでは、右広告の掲載は、その広告が公共の利害に関する事実にかかり専ら公益を図る目的に出たものであり、かつ、主要な点において真実の証明があつたものとして、名誉毀損の不法行為となるものではない。
# [https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52177 謝罪広告等請求事件](最高裁判決昭和63年2月16日)
##'''氏名を正確に呼称される利益'''
##:氏名を正確に呼称される利益は、不法行為法上の保護を受け得る利益である。
##:*氏名は、社会的にみれば、個人を他人から識別し特定する機能を有するものであるが、同時に、その個人からみれば、人が個人として尊重される基礎であり、その個人の人格の象徴であつて、人格権の一内容を構成するものというべきであるから、人は、他人からその氏名を正確に呼称されることについて、不法行為法上の保護を受けうる人格的な利益を有するものというべきである。
##'''テレビ放送のニュース番組において在日韓国人の氏名を日本語読みによつて呼称した行為が違法ではないとされた事例'''
##:昭和50年当時テレビ放送のニュース番組において在日韓国人の氏名をそのあらかじめ表明した意思に反して日本語読みによつて呼称した行為は、在日韓国人の氏名を日本語読みによつて呼称する慣用的な方法が是認されていた社会的な状況の下では、違法とはいえない。
##:*原審の確定したところによれば、上告人は、韓国籍を有する外国人であり、その氏名は漢字によつて「A」と表記されるが、民族語読みによれば「D」と発音されるところ、被上告人は、昭和50年9月1日及び同月2日のテレビ放送のニユース番組において、上告人があらかじめ表明した意思に反して、上告人の氏名を日本語読みによつて「E」と呼称したというのであるが、漢字による表記とその発音に関する我が国の歴史的な経緯、右の放送当時における社会的な状況など原審確定の諸事情を総合的に考慮すると、在日韓国人の氏名を民族語読みによらず日本語読みで呼称する慣用的な方法は、右当時においては我が国の社会一般の認識として是認されていたものということができる。そうすると、被上告人が上告人の氏名を慣用的な方法である日本語読みによつて呼称した右行為には違法性がない。
# [https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52197 損害賠償](最高裁判決 昭和63年9月6日)
#;訴えの提起が違法な行為となる場合
#:訴えの提起は、提訴者が当該訴訟において主張した権利又は法律関係が事実的、法律的根拠を欠くものである上、同人がそのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たのにあえて提起したなど、裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠く場合に限り、相手方に対する違法な行為となる。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=55846 損害賠償](最高裁判決 平成5年3月25日)
#;危険物であることを知ってこれを運送する海上物品運送業者に対し右危険物の製造業者及び販売業者が危険性の内容等を告知する義務の有無
#:海上物品運送業者が危険物であることを知って運送品を運送する場合において、通常尽くすべき調査により、その危険性の内容、程度及び運搬、保管方法等の取扱上の注意事項を知り得るときは、右危険物の製造業者及び販売業者は、海上物品運送業者に対し、右の危険性の内容等を告知する義務を負わない。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=63011 損害賠償、同附帯](最高裁判決 平成5年6月11日)[[民法第623条]],[[労働基準法第13条]]
#;管理者に準ずる地位にある職員が組合員バッジの取外し命令に従わないため点呼執行業務から外して営業所構内の火山灰の除去作業に従事することを命じた業務命令が違法とはいえないとされた事例
#:自動車営業所の管理者に準ずる地位にある職員が、取外し命令を無視して組合員バッジの着用をやめないため、同人を通常業務である点呼執行業務から外し、営業所構内の火山灰の除去作業に従事することを命じた業務命令は、右作業が職場環境整備等のために必要な作業であり、従来も職員が必要に応じてこれを行うことがあったなど判示の事情の下においては、違法なものとはいえない。
#<span id="被害者の自殺2"></span>[http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=63037&hanreiKbn=02 損害賠償反訴、同附帯](最高裁判決 平成5年09月09日)[[民法第416条]]
#;交通事故と被害者の自殺との間に相当因果関係があるとされた事例
#:交通事故により受傷した被害者が自殺した場合において、その傷害が身体に重大な器質的障害を伴う後遺症を残すようなものでなかったとしても、右事故の態様が加害者の一方的過失によるものであって被害者に大きな精神的衝撃を与え、その衝撃が長い年月にわたって残るようなものであったこと、その後の補償交渉が円滑に進行しなかったことなどが原因となって、被害者が、災害神経症状態に陥り、その状態から抜け出せないままうつ病になり、その改善をみないまま自殺に至ったなど判示の事実関係の下では、右事故と被害者の自殺との間に相当因果関係がある。
# <span id="報道3"></span>[http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52442 慰藉料](最高裁判決 平成6年2月8日)
#;ある者の前科等にかかわる事実が著作物で実名を使用して公表された場合における損害賠償請求の可否
#:ある者の前科等にかかわる事実が著作物で実名を使用して公表された場合に、その者のその後の生活状況、当該刑事事件それ自体の歴史的又は社会的な意義その者の事件における当事者としての重要性、その者の社会的活動及びその影響力について、その著作物の目的、性格等に照らした実名使用の意義及び必要性を併せて判断し、右の前科等にかかわる事実を公表されない法的利益がこれを公表する理由に優越するときは、右の者は、その公表によって被った精神的苦痛の賠償を求めることができる。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=57057 損害賠償](最高裁判決 平成7年6月9日)[[民法第415条]]
##'''診療契約に基づき医療機関に要求される医療水準'''
##:新規の治療法の存在を前提にして検査・診断・治療等に当たることが診療契約に基づき医療機関に要求される医療水準であるかどうかを決するについては、当該医療機関の性格、その所在する地域の医療環境の特性等の諸般の事情を考慮すべきであり、右治療法に関する知見が当該医療機関と類似の特性を備えた医療機関に相当程度普及しており、当該医療機関において右知見を有することを期待することが相当と認められる場合には、特段の事情がない限り、右知見は当該医療機関にとっての医療水準であるというべきである。
##'''昭和49年12月に出生した未熟児が未熟児網膜症にり患した場合につきその診療に当たった医療機関に当時の医療水準を前提とした注意義務違反があるとはいえないとした原審の判断に違法があるとされた事例'''
##:昭和49年12月に出生した未熟児が未熟児網膜症にり患した場合につき、その診療に当たった甲病院においては、昭和48年10月ころから、光凝固法の存在を知っていた小児科医が中心になって、未熟児網膜症の発見と治療を意識して小児科と眼科とが連携する体制をとり、小児科医が患児の全身状態から眼科検診に耐え得ると判断した時期に眼科医に依頼して眼底検査を行い、その結果未熟児網膜症の発生が疑われる場合には、光凝固法を実施することのできる乙病院に転医をさせることにしていたなど判示の事実関係の下において、甲病院の医療機関としての性格、右未熟児が診療を受けた当時の甲病院の所在する県及びその周辺の各種医療機関における光凝固法に関する知見の普及の程度等の諸般の事情について十分に検討することなく、光凝固法の治療基準について一応の統一的な指針が得られたのが厚生省研究班の報告が医学雑誌に掲載された昭和50年8月以降であるということのみから、甲病院に当時の医療水準を前提とした注意義務違反があるとはいえないとした原審の判断には、診療契約に基づき医療機関に要求される医療水準についての解釈適用を誤った違法がある。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=55866 損害賠償](最高裁判決 平成8年1月23日)民法第415条
#;医薬品の添付文書(能書)に記載された使用上の注意事項と医師の注意義務
#:医師が医薬品を使用するに当たって医薬品の添付文書(能書)に記載された使用上の注意事項に従わず、それによって医療事故が発生した場合には、これに従わなかったことにつき特段の合理的理由がない限り、当該医師の過失が推定される。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=69646 預託金返還請求、民訴法第一九八条二項の申立](最高裁判決 平成9年4月24日)[[民法第708条]],[[民法第715条]],証券取引法(平成3年法律第96号による改正前のもの)50条1項,証券会社の健全性の準則等に関する省令(昭和40年大蔵省令第60号。平成3年大蔵省令第55号による改正前のもの)1条
#;証券会社の従業員が顧客に利回り保証の約束をして株式等の取引を勧誘し一連の取引をさせた場合に右取引による顧客の損失について証券会社が不法行為責任を免れないとされた事例
#:証券会社の営業部員が、株式等の取引の勧誘をするに際し、取引の開始を渋る顧客に対し、法令により禁止されている利回り保証が会社として可能であるかのように装って利回り保証の約束をして勧誘し、その旨信じた顧客に取引を開始させ、その後、同社の営業部長や営業課長も右約束を確認するなどして取引を継続させ、これら一連の取引により顧客が損失を被ったもので、顧客が右約束の書面化や履行を求めてはいるが、自ら要求して右約束をさせたわけではないなど判示の事実関係の下においては、<u>顧客の不法性に比し、証券会社の従業員の不法の程度が極めて強いものと評価することができ、証券会社は、顧客に対し、不法行為に基づく損害賠償責任を免れない</u>。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52613 損害賠償請求事件](最高裁判決 平成11年10月22日)[[国民年金法第30条]],[[厚生年金保険法第47条]],[[国民年金法第35条]]1号,[[厚生年金保険法第53条]]1号,[[民法第896条]],[[国民年金法第33条の2]],[[厚生年金保険法第50条の2]],[[国民年金法第37条]],[[厚生年金保険法第58条]]
##'''不法行為により死亡した者の相続人が被害者の得べかりし障害基礎年金及び障害厚生年金を逸失利益として請求することの可否'''
##:障害基礎年金及び障害厚生年金の受給権者が不法行為により死亡した場合には、その相続人は、加害者に対し、被害者の得べかりし右各障害年金額を逸失利益として請求することができる。
##'''不法行為により死亡した者の相続人が被害者の得べかりし障害基礎年金及び障害厚生年金についての各加給分を逸失利益として請求することの可否'''
##:障害基礎年金及び障害厚生年金についてそれぞれ加給分を受給している者が不法行為により死亡した場合には、その相続人は、加害者に対し、被害者の得べかりし右各加給分額を逸失利益として請求することはできない。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=57036 損害賠償請求事件](最高裁判決 平成11年12月20日)[[民法第416条]]
#;交通事故の被害者が事故のため介護を要する状態となった後に別の原因により死亡した場合に死亡後の期間に係る介護費用を右交通事故による損害として請求することの可否
#:交通事故の被害者が事故のため介護を要する状態となった後に別の原因により死亡した場合には、<u>死亡後の期間に係る介護費用</u>を右交通事故による損害として請求することはできない。
#:*交通事故で傷害を負い、その後遺障害のため他人の介護を要する状態にあったが、本件訴訟の係属中に胃がんにより死亡したという案件。
#[https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=69637 損害賠償請求事件](最高裁判決 平成12年9月7日)[[民法第416条]]、[[民法第877条]]
#;不法行為によって扶養者が死亡した場合における被扶養者の将来の扶養利益喪失による損害額の算定方法
#::*不法行為によって扶養者が死亡し、当該扶養者に多額の借財があって被扶養者である相続人が相続を放棄した場合に、加害者に対し扶養利益の喪失による損害賠償を請求することができるか、また、その算定基準について。
#:不法行為によって扶養者が死亡した場合における被扶養者の将来の扶養利益喪失による損害額は、扶養者の生前の収入、そのうち被扶養者の生計の維持に充てるべき部分、被扶養者各人につき扶養利益として認められるべき比率割合、扶養を要する状態が存続すべき期間などの具体的事情に応じて算定すべきである。
#:*不法行為によって死亡した者の配偶者及び子が右死亡者から扶養を受けていた場合に、加害者は右配偶者等の固有の利益である扶養請求権を侵害したものであるから、右配偶者等は、相続放棄をしたときであっても、加害者に対し、扶養利益の喪失による損害賠償を請求することができる。
#:*その扶養利益喪失による損害額は、相続により取得すべき死亡者の逸失利益の額と当然に同じ額となるものではなく、個々の事案において、扶養者の生前の収入、そのうち被扶養者の生計の維持に充てるべき部分、被扶養者各人につき扶養利益として認められるべき比率割合、扶養を要する状態が存続する期間などの具体的事情に応じて適正に算定すべきものである。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52268 損害賠償等請求事件](最高裁判決 平成13年2月13日)[[著作権法第20条]],著作権法第第7章権利侵害,[[民法第719条]]
##'''メモリーカードの使用がゲームソフトの著作者の有する同一性保持権を侵害するとされた事例'''
##:パラメータにより主人公の人物像が表現され,その変化に応じてストーリーが展開されるゲームソフトについて,パラメータを本来ならばあり得ない高数値に置き換えるメモリーカードの使用によって,主人公の人物像が改変され,その結果,上記ゲームソフトのストーリーが本来予定された範囲を超えて展開されるなど判示の事実関係の下においては,当該メモリーカードの使用は,上記ゲームソフトを改変し,その著作者の有する同一性保持権を侵害する。
##'''専らゲームソフトの改変のみを目的とするメモリーカードを輸入,販売し,他人の使用を意図して流通に置いた者の不法行為責任'''
##:専らゲームソフトの改変のみを目的とするメモリーカードを輸入,販売し,他人の使用を意図して流通に置いた者は,他人の使用により,ゲームソフトの同一性保持権の侵害をじゃっ起したものとして,ゲームソフトの著作者に対し,不法行為に基づく損害賠償責任を負う。(→[[民法第719条#関連性2|共同不法行為]])
# <span id="契約確認"></span>[http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52293 著作権侵害差止等請求事件](最高裁判決 平成13年3月2日)[[著作権法第22条]],[[著作権法第22条の2]],著作権法第7章権利侵害,民法第719条
#;専ら音楽著作物を上映し又は演奏して公衆に直接見せ又は聞かせるために使用されるカラオケ装置につきリース業者がリース契約を締結して引き渡す場合の注意義務
#:カラオケ装置のリース業者は,カラオケ装置のリース契約を締結した場合において,当該装置が専ら音楽著作物を上映し又は演奏して公衆に直接見せ又は聞かせるために使用されるものであるときは,リース契約の相手方に対し,当該音楽著作物の著作権者との間で著作物使用許諾契約を締結すべきことを告知するだけでなく,上記相手方が当該著作権者との間で著作物使用許諾契約を締結し又は申込みをしたことを確認した上でカラオケ装置を引き渡すべき条理上の注意義務を負う。
# <span id="報道4"></span>[http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=62816 損害賠償請求事件](最高裁判決 平成14年1月29日)民法第710条,[[刑法第230条の2]]第1項
#;通信社が新聞社に記事を配信するに当たりその内容を真実と信ずるについて相当の理由があるとはいえないとされた事例
#:通信社が,殺人未遂罪で逮捕された甲が7,8年前に自宅で大麻を所持しており,その事実を捜査機関が突き止めた旨の事実を記事にして配信し,新聞社がこれを掲載した場合に,甲が自宅に大麻を所持していた事実の裏付けになる資料は甲と離婚した乙の供述のみであること,捜査の対象となっていない大麻所持についての報道であること,甲以外の関係者からそのころの甲と大麻とのかかわりについて取材することが不可能であった状況がうかがえないこと,捜査官が甲の大麻所持についていかなる事実を把握し,どのような心証を持ち,どのように判断しているのかについての取材内容が明らかでないことなど判示の事情の下においては,乙の供述が一貫し,甲が大麻と深いつながりがあることを自ら認めており,記事作成の時点で甲が既に逮捕され,甲に対する取材が不可能であった等の事情が存するときであっても,通信社に上記配信記事に摘示された事実を真実と信ずるについて相当の理由があったものとはいえない。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=62539 損害賠償請求事件](最高裁判決 平成15年11月14日)[[民法第415条]]
#;食道がんの手術の際に患者の気管内に挿入された管が手術後に抜かれた後に患者が進行性のこう頭浮しゅにより上気道狭さくから閉そくを起こして呼吸停止及び心停止に至った場合において担当医師に再挿管等の気道確保のための適切な処置を採るべき注意義務を怠った過失があるとされた事例
#:食道がんの手術の際に患者の気管内に挿入された管が手術後に抜かれた後に,患者が,進行性のこう頭浮しゅにより上気道狭さくから閉そくを起こし,呼吸停止及び心停止に至った場合において,上記抜管の約5分後に患者の吸気困難な状態が高度になったことを示す胸くうドレーンの逆流が生じたことなどから,その時点で,担当医師は,患者のこう頭浮しゅの状態が相当程度進行し,既に呼吸が相当困難な状態にあることを認識することが可能であり,これが更に進行すれば,上気道狭さくから閉そくに至り,呼吸停止,ひいては心停止に至ることも十分予測することができたなど判示の事情の下においては,担当医師には,上記時点で,再挿管等の気道確保のための適切な処置を採るべき注意義務を怠った過失がある。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52290 損害賠償請求事件](最高裁判決 平成15年11月14日)[[建築士法第3条]],[[建築士法第3条の2]],[[建築士法第3条の3]],建築士法(平成9年法律第95号による改正前のもの)18条,建築基準法(平成10年法律第100号による改正前のもの)5条の2
##'''建築士が建築士法3条から3条の3まで及び建築基準法5条の2の各規定等による規制の実効性を失わせる行為をした場合における建築物の購入者に対する不法行為の成否'''
##:建築士は,その業務を行うに当たり,建築物を購入しようとする者に対する関係において,建築士が建築士法3条から3条の3まで及び建築基準法5条の2の各規定等による規制の潜脱を容易にする行為等,その規制の実効性を失わせるような行為をしてはならない法的義務があり,故意又は過失によりこれに違反する行為をした場合には,その行為により損害を被った建築物の購入者に対し,不法行為に基づく賠償責任を負う。
##'''建築確認申請書に自己が工事監理を行う旨の実体に沿わない記載をした一級建築士が建築主に工事監理者の変更の届出をさせる等の適切な措置を執らずに放置した行為が当該建築主から瑕疵のある建物を購入した者に対する不法行為となるとされた事例'''
##:一級建築士又は二級建築士による設計及び工事監理が必要とされる建物の建築につき一級建築士が建築確認申請手続を代行した場合において,建築主との間で工事監理契約が締結されておらず,将来締結されるか否かも未定であるにもかかわらず,当該一級建築士が,建築主の求めに応じて建築確認申請書に自己が工事監理を行う旨の実体に沿わない記載をし,工事監理を行わないことが明確になった段階でも,建築主に工事監理者の変更の届出をさせる等の適切な措置を執らずに放置したこと,そのため,実質上,工事監理者がいない状態で建築された当該建物が重大な瑕疵のある建築物となったことなど判示の事情の下においては,当該一級建築士の上記行為は,建築士法3条の3及び建築基準法5条の2の各規定等による規制の実効性を失わせる行為をしたものとして当該建物を購入した者に対する不法行為となる。
# <span id="パブリシティ権"></span>[http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52332 製作販売差止等請求事件](最高裁判決 平成16年2月13日)[[民法第198条]],[[民法第199条]],[[民法第206条]],[[知的財産基本法第2条]]2項
#;競走馬の所有者が当該競走馬の名称を無断で利用したゲームソフトを製作,販売した業者に対しいわゆる物のパブリシティ権の侵害を理由として当該ゲームソフトの製作,販売等の差止請求又は不法行為に基づく損害賠償請求をすることの可否
#:競走馬の所有者は,当該競走馬の名称を無断で利用したゲームソフトを製作,販売した業者に対し,その名称等が有する顧客吸引力などの経済的価値を独占的に支配する財産的権利(いわゆる物のパブリシティ権)の侵害を理由として当該ゲームソフトの製作,販売等の差止請求又は不法行為に基づく損害賠償請求をすることはできない。
#:*現行法上,物の名称の使用など,物の無体物としての面の利用に関しては,商標法,著作権法,不正競争防止法等の知的財産権関係の各法律が,一定の範囲の者に対し,一定の要件の下に排他的な使用権を付与し,その権利の保護を図っているが,その反面として,<u>その使用権の付与が国民の経済活動や文化的活動の自由を過度に制約することのないようにするため</u>,各法律は,それぞれの知的財産権の発生原因,内容,範囲,消滅原因等を定め,その排他的な使用権の及ぶ範囲,限界を明確にしている。上記各法律の趣旨,目的にかんがみると,競走馬の名称等が顧客吸引力を有するとしても,物の無体物としての面の利用の一態様である競走馬の名称等の使用につき,法令等の根拠もなく競走馬の所有者に対し排他的な使用権等を認めることは相当ではなく,また,競走馬の名称等の無断利用行為に関する不法行為の成否については,違法とされる行為の範囲,態様等が法令等により明確になっているとはいえない現時点において,これを肯定することはできないものというべきである。したがって,本件において,差止め又は不法行為の成立を肯定することはできない。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=34907 損害賠償請求事件](最高裁判決 平成19年7月6日)
#;建物の設計者,施工者又は工事監理者が,建築された建物の瑕疵により生命,身体又は財産を侵害された者に対し不法行為責任を負う場合
#:<u>建物の建築に携わる設計者,施工者及び工事監理者は,建物の建築に当たり,契約関係にない居住者を含む建物利用者,隣人,通行人等に対する関係でも,当該建物に'''建物としての基本的な安全性が欠けることがないように配慮すべき注意義務'''を負い</u>,これを怠ったために建築された建物に上記安全性を損なう瑕疵があり,それにより居住者等の生命,身体又は財産が侵害された場合には,設計者等は,不法行為の成立を主張する者が上記瑕疵の存在を知りながらこれを前提として当該建物を買い受けていたなど特段の事情がない限り,これによって生じた損害について不法行為による賠償責任を負う。
## [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=81511 損害賠償請求事件](最高裁判決 平成23年7月21日)
##;「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵」の意義
##:「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵」とは,居住者等の生命,身体又は財産を危険にさらすような瑕疵をいい,建物の瑕疵が,居住者等の生命,身体又は財産に対する現実的な危険をもたらしている場合に限らず,当該瑕疵の性質に鑑み,これを放置するといずれは居住者等の生命,身体又は財産に対する危険が現実化することになる場合には,当該瑕疵は,建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵に該当する。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=36310 損害賠償請求事件](最高裁判決 平成20年4月24日)
##チーム医療として手術が行われる場合にチーム医療の総責任者が患者やその家族に対してする手術についての説明に関して負う義務
##:チーム医療として手術が行われる場合,チーム医療の総責任者は,条理上,患者やその家族に対し,手術の必要性,内容,危険性等についての説明が十分に行われるように配慮すべき義務を有する。
##チーム医療として手術が行われるに際し,患者やその家族に対してする手術についての説明を主治医にゆだねたチーム医療の総責任者が,当該主治医の説明が不十分なものであっても説明義務違反の不法行為責任を負わない場合
##:チーム医療として手術が行われ,チーム医療の総責任者が患者やその家族に対してする手術についての説明を主治医にゆだねた場合において,当該主治医が説明をするのに十分な知識,経験を有し,同総責任者が必要に応じて当該主治医を指導,監督していたときには,当該主治医の上記説明が不十分なものであったとしても,同総責任者は説明義務違反の不法行為責任を負わない。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=36428 損害賠償請求事件](最高裁判決 平成20年6月10日)[[民事訴訟法第248条|民訴法248条]]
#;採石権侵害の不法行為を理由とする損害賠償請求事件において,損害の発生を前提としながら,[[民事訴訟法第248条|民訴法248条]]の適用について考慮することなく,損害額を算定することができないとして請求を棄却した原審の判断に違法があるとされた事例
#:採石権侵害の不法行為を理由とするXのYに対する損害賠償請求事件において,Xが採石権を有する土地でYが採石したとの事実が認定されており,これによればXに損害が発生したことは明らかである以上,上記採石行為の後,Yが当該土地につき採石権を取得して適法に採石したため,Yの違法な行為による採石量と適法な行為による採石量とを明確に区別することができず,損害額の立証が極めて困難であったとしても,[[民事訴訟法第248条|民訴法248条]]により,口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づいて相当な損害額が認定されなければならず,損害額を算定することができないとしてXの請求を棄却した原審の判断には,違法がある。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=37489 損害賠償請求事件](最高裁判決 平成21年3月27日)
#;全身麻酔と局所麻酔の併用による手術中に生じた麻酔による心停止が原因で患者が死亡した場合において,麻酔医に各麻酔薬の投与量を調整すべき注意義務を怠った過失があり,同過失と死亡との間に相当因果関係があるとされた事例
#:全身麻酔と局所麻酔の併用による手術を受けた65歳の患者が術中に麻酔の影響により血圧が急激に低下し,引き続き生じた心停止が原因となって死亡した場合において,次の(1),(2)などの事実関係の下では,各麻酔薬の投与量をどの程度減らすかについて麻酔医の裁量にゆだねられる部分があり,いかなる程度減量すれば死亡の結果を回避することができたといえるかが確定できないとしても,その投与量を適切に調整しても患者の死亡という結果を避けられなかったというような事情がうかがわれない以上,麻酔医には患者の年齢や全身状態に即して各麻酔薬の投与量を調整すべき注意義務を怠った過失があり,この過失と患者の死亡との間に相当因果関係がある。<small>
#::# 全身麻酔薬プロポフォールについては,局所麻酔薬と併用投与する場合及び高齢者に投与する場合には血圧低下等の副作用が現れやすいので投与速度を減ずるなど慎重に投与すべきことが,局所麻酔薬塩酸メピバカインについては,重大な副作用として心停止等があり,高齢者には投与量の減量等を考慮して慎重に投与すべきことが,各能書に記載されていた。
#::# 麻酔医は,全身麻酔により就眠を得た患者に対し,能書に記載された成人に対する通常の用量の最高限度量の塩酸メピバカインを投与し,その効果が高まるに伴って低下した患者の血圧が少量の昇圧剤では回復しない状態となっていたにもかかわらず,プロポフォールを成人において通常適切な麻酔深度が得られるとされる速度のまま持続投与した。</small>
#[https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=81272 損害賠償請求事件] (最高裁判決 平成23年4月26日)[[民法第416条]]
#;精神神経科の医師の患者に対する言動と上記患者が上記言動に接した後にPTSD(外傷後ストレス障害)と診断された症状との間に相当因果関係があるということはできないとされた事例
#:精神神経科の医師が,過去に知人から首を絞められるなどの被害を受けたことのある患者に対し,人格に問題があり,病名は「人格障害」であると発言するなどした後,上記患者が,精神科の他の医師に対し,頭痛,集中力低下等の症状を訴え,上記の言動を再外傷体験としてPTSD(外傷後ストレス障害)を発症した旨の診断を受けたとしても,次の1.,2.など判示の事情の下においては,上記の言動と上記症状との間に相当因果関係があるということはできない。
#:#上記の言動は,それ自体がPTSDの発症原因となり得る外傷的な出来事に当たるものではないし,上記患者がPTSD発症のそもそもの原因となった外傷体験であるとする上記被害と類似し,又はこれを想起させるものでもない。
#:#PTSDの発症原因となり得る外傷体験のある者は,これとは類似せず,また,これを想起させるものともいえない他の重大でないストレス要因によってもPTSDを発症することがある旨の医学的知見が認められているわけではない。
----
{{前後
|[[民法]]
|[[第3編 債権 (コンメンタール民法)|第3編 債権]]<br>[[第3編 債権 (コンメンタール民法)#5|第5章 不法行為]]
|[[民法第708条]]<br>(不法原因給付)
|[[民法第710条]]<br>(財産以外の損害の賠償)
}}
{{stub|law}}
[[category:民法|709]]
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Linuxハードウェア
0
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2024-11-07T22:21:17Z
Ef3
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最新のハードウェア規格(USB4、NVMe、Wi-Fi 6Eなど)を追加 古くなった技術(PPPoE、USB 2.0のみの説明)を削除または更新 チップセットの説明を現代的なものに更新 より体系的な構造に整理 具体的な対応状況や注意点を追加
263209
wikitext
text/x-wiki
<small>[[情報技術]]>Linuxハードウェア</small>
----
==Linuxハードウェア==
本稿では、現代のLinuxシステムにおけるハードウェアサポートについて解説する。特に、カーネルレベルでの対応状況、デバイスドライバの実装、およびハードウェアの選定指針について詳述する。なお、本稿は基本的なLinuxシステムの知識を前提とする。
===システムバスとデバイス接続===
現代のPCアーキテクチャでは、PCIe(PCI Express)がシステムバスの中核を担っている。PCIeは直接的な拡張カード接続に加え、多くの内部インターフェースの基盤となっている。例えば、NVMeストレージやThunderboltインターフェースもPCIeをベースとしている。Linuxカーネルは、PCIeデバイスの列挙からパワーマネジメント、MSI(Message Signaled Interrupts)などの高度な機能まで、包括的にサポートしている。
===USB実装とデバイスサポート===
現代のLinuxカーネルは、USBプロトコルスタックを完全に実装している。USB 2.0から最新のUSB4まで、すべての規格がxHCIホストコントローラを通じてサポートされている。USB4の実装には、Thunderboltプロトコルのサポートも含まれており、DisplayPortやPCIeトンネリングにも対応している。
デバイスクラスドライバは、USBデバイスフレームワーク(usbcore)を基盤として実装されている。標準デバイスクラスは以下のように実装されている:
マスストレージクラスは、SCSI上位層(usb-storage)を通じて実装される。これにより、ブロックデバイスとしての抽象化が提供され、ファイルシステム層での統一的なアクセスが可能となる。
HID(Human Interface Device)クラスは、入力サブシステム(input)を通じて実装される。キーボードやマウスなどの入力デバイスは、evdevインターフェースを通じてユーザースペースに公開される。これにより、X11やWaylandなどのディスプレイサーバーが統一的に入力を処理できる。
===ストレージサブシステム===
現代のLinuxストレージスタックは、複数の層で構成されている。物理デバイスレベルでは、SATA(libata)とNVMe(nvme)が主要なドライバフレームワークとなっている。特にNVMeは、高性能ストレージ向けに最適化された新しいアーキテクチャを採用している。
NVMeドライバは、マルチキューアーキテクチャを活用し、現代のマルチコアプロセッサ上で高い性能を実現する。また、名前空間管理やNVMeパススルーなど、高度な機能もサポートしている。
SATA(Serial ATA)デバイスは、libataフレームワークを通じてサポートされる。このフレームワークは、AHCI(Advanced Host Controller Interface)を実装し、NCQ(Native Command Queuing)やホットプラグなどの機能をサポートする。
===ネットワークインターフェース===
ネットワークデバイスのサポートは、netdeviceフレームワークを基盤として実装されている。このフレームワークは、イーサネットやWi-Fiなどの様々なネットワーク技術に対して統一的なインターフェースを提供する。
有線ネットワークでは、主要なチップセットメーカー(Intel、Realtek、Broadcomなど)のドライバが、netdeviceフレームワーク上に実装されている。これらのドライバは、最新の10GbE(10ギガビットイーサネット)以上の高速インターフェースもサポートしている。
無線ネットワークは、mac80211フレームワークを通じて実装される。このフレームワークは、Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)やWi-Fi 6Eまでの最新規格をサポートし、高度な機能(MU-MIMO、OFDMA、BSS Coloringなど)にも対応している。さらに、cfg80211を通じて、無線規制データベースとの連携も行われる。
===グラフィックスサブシステム===
Linuxのグラフィックススタックは、Direct Rendering Infrastructure(DRI)とKernel Mode Setting(KMS)を基盤としている。これにより、ユーザースペースのMesa 3Dドライバとカーネルスペースのドライバが密接に連携し、効率的な3Dアクセラレーションを実現している。
Intel GPUは、i915ドライバを通じてサポートされる。このドライバは、Gen12(Xe)アーキテクチャまでの統合グラフィックスをサポートし、OpenGLやVulkanなどの3DAPIに対応している。
AMD GPUは、AMDGPUドライバによってサポートされる。このドライバは、GCNアーキテクチャ以降のGPUをサポートし、最新のRDNA 2アーキテクチャまでカバーしている。また、AMDの計算用APIであるROCmもサポートしている。
NVIDIA GPUは、プロプライエタリなNVIDIAドライバまたはオープンソースのNouveauドライバを通じてサポートされる。プロプライエタリドライバは、CUDA計算やRTXレイトレーシングなどの高度な機能をサポートしている。
===システム構築と最適化===
ハードウェアの選定においては、以下の点を考慮する必要がある:
カーネルバージョンとの整合性:新しいハードウェアでは、最新のカーネルバージョンが必要となる場合が多い。特に、Intel第12世代以降のプロセッサやAMD Ryzen 7000シリーズでは、電力管理やスケジューリングの最適化のために新しいカーネルが推奨される。
メモリ構成:現代のシステムでは、メモリ帯域幅とレイテンシが重要な要素となる。DDR5メモリシステムでは、適切なXMP/EXPOプロファイルの選択とカーネルのメモリ管理パラメータの調整が必要となる場合がある。
ストレージ階層:NVMeストレージを使用する場合、マルチキュー設定の最適化やIO schedulerの選択が重要となる。また、zoned namespaceなどの新しい機能を活用する場合は、ファイルシステムレベルでの対応も必要となる。
===デバッグとトラブルシューティング===
システムの問題解決には、以下のツールとアプローチが有効である:
* sysfsとdebugfs:デバイスの状態確認とパラメータ調整
* ftrace:カーネルレベルのトレーシング
* perf:パフォーマンス解析
* DMESGとsyslog:システムログの解析
特に、新しいハードウェアを導入する際は、これらのツールを用いた綿密な動作確認が推奨される。
===参考資料===
* [https://tldp.org/ Linux Documentation Project]
* [https://www.kernel.org/doc/ Linux Kernel Documentation]
* [https://wiki.archlinux.org/ ArchWiki]
[[Category:情報技術]]
{{NDC|007.63}}
{{DEFAULTSORT:Linuxはとうえあ}}
[[Category:情報技術]]
{{NDC|007.63}}
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Linuxカーネルのバージョンごとのハードウェアサポートの変遷
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wikitext
text/x-wiki
<small>[[情報技術]]>Linuxハードウェア</small>
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==Linuxハードウェア==
本稿では、現代のLinuxシステムにおけるハードウェアサポートについて解説する。特に、カーネルレベルでの対応状況、デバイスドライバの実装、およびハードウェアの選定指針について詳述する。なお、本稿は基本的なLinuxシステムの知識を前提とする。
===システムバスとデバイス接続===
現代のPCアーキテクチャでは、PCIe(PCI Express)がシステムバスの中核を担っている。PCIeは直接的な拡張カード接続に加え、多くの内部インターフェースの基盤となっている。例えば、NVMeストレージやThunderboltインターフェースもPCIeをベースとしている。Linuxカーネルは、PCIeデバイスの列挙からパワーマネジメント、MSI(Message Signaled Interrupts)などの高度な機能まで、包括的にサポートしている。
===USB実装とデバイスサポート===
現代のLinuxカーネルは、USBプロトコルスタックを完全に実装している。USB 2.0から最新のUSB4まで、すべての規格がxHCIホストコントローラを通じてサポートされている。USB4の実装には、Thunderboltプロトコルのサポートも含まれており、DisplayPortやPCIeトンネリングにも対応している。
デバイスクラスドライバは、USBデバイスフレームワーク(usbcore)を基盤として実装されている。標準デバイスクラスは以下のように実装されている:
マスストレージクラスは、SCSI上位層(usb-storage)を通じて実装される。これにより、ブロックデバイスとしての抽象化が提供され、ファイルシステム層での統一的なアクセスが可能となる。
HID(Human Interface Device)クラスは、入力サブシステム(input)を通じて実装される。キーボードやマウスなどの入力デバイスは、evdevインターフェースを通じてユーザースペースに公開される。これにより、X11やWaylandなどのディスプレイサーバーが統一的に入力を処理できる。
===ストレージサブシステム===
現代のLinuxストレージスタックは、複数の層で構成されている。物理デバイスレベルでは、SATA(libata)とNVMe(nvme)が主要なドライバフレームワークとなっている。特にNVMeは、高性能ストレージ向けに最適化された新しいアーキテクチャを採用している。
NVMeドライバは、マルチキューアーキテクチャを活用し、現代のマルチコアプロセッサ上で高い性能を実現する。また、名前空間管理やNVMeパススルーなど、高度な機能もサポートしている。
SATA(Serial ATA)デバイスは、libataフレームワークを通じてサポートされる。このフレームワークは、AHCI(Advanced Host Controller Interface)を実装し、NCQ(Native Command Queuing)やホットプラグなどの機能をサポートする。
===ネットワークインターフェース===
ネットワークデバイスのサポートは、netdeviceフレームワークを基盤として実装されている。このフレームワークは、イーサネットやWi-Fiなどの様々なネットワーク技術に対して統一的なインターフェースを提供する。
有線ネットワークでは、主要なチップセットメーカー(Intel、Realtek、Broadcomなど)のドライバが、netdeviceフレームワーク上に実装されている。これらのドライバは、最新の10GbE(10ギガビットイーサネット)以上の高速インターフェースもサポートしている。
無線ネットワークは、mac80211フレームワークを通じて実装される。このフレームワークは、Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)やWi-Fi 6Eまでの最新規格をサポートし、高度な機能(MU-MIMO、OFDMA、BSS Coloringなど)にも対応している。さらに、cfg80211を通じて、無線規制データベースとの連携も行われる。
===グラフィックスサブシステム===
Linuxのグラフィックススタックは、Direct Rendering Infrastructure(DRI)とKernel Mode Setting(KMS)を基盤としている。これにより、ユーザースペースのMesa 3Dドライバとカーネルスペースのドライバが密接に連携し、効率的な3Dアクセラレーションを実現している。
Intel GPUは、i915ドライバを通じてサポートされる。このドライバは、Gen12(Xe)アーキテクチャまでの統合グラフィックスをサポートし、OpenGLやVulkanなどの3DAPIに対応している。
AMD GPUは、AMDGPUドライバによってサポートされる。このドライバは、GCNアーキテクチャ以降のGPUをサポートし、最新のRDNA 2アーキテクチャまでカバーしている。また、AMDの計算用APIであるROCmもサポートしている。
NVIDIA GPUは、プロプライエタリなNVIDIAドライバまたはオープンソースのNouveauドライバを通じてサポートされる。プロプライエタリドライバは、CUDA計算やRTXレイトレーシングなどの高度な機能をサポートしている。
===システム構築と最適化===
ハードウェアの選定においては、以下の点を考慮する必要がある:
カーネルバージョンとの整合性:新しいハードウェアでは、最新のカーネルバージョンが必要となる場合が多い。特に、Intel第12世代以降のプロセッサやAMD Ryzen 7000シリーズでは、電力管理やスケジューリングの最適化のために新しいカーネルが推奨される。
メモリ構成:現代のシステムでは、メモリ帯域幅とレイテンシが重要な要素となる。DDR5メモリシステムでは、適切なXMP/EXPOプロファイルの選択とカーネルのメモリ管理パラメータの調整が必要となる場合がある。
ストレージ階層:NVMeストレージを使用する場合、マルチキュー設定の最適化やIO schedulerの選択が重要となる。また、zoned namespaceなどの新しい機能を活用する場合は、ファイルシステムレベルでの対応も必要となる。
{| class="wikitable"
|+ Linuxカーネルのバージョンごとのハードウェアサポートの変遷
! カーネルバージョン !! リリース日 !! 主要なハードウェアサポートの変更
|-
| 5.19 - 6.6
| 2022年7月 - 現在
|
* Intel第13/14世代Raptor/Meteor Lakeの完全サポート
* AMD Zen 4アーキテクチャの電力管理の改善
* USB4 v2(80Gbps)のサポート
* Intel Arc GPUドライバの大幅な改善
* AMDのRDNA 3 GPUサポート
* DDR5メモリの最適化
|-
| 5.10 - 5.18
| 2020年12月 - 2022年6月
|
* Intel第12世代Alder Lakeハイブリッドアーキテクチャ対応
* AMD Zen 3アーキテクチャの完全サポート
* USB4/Thunderbolt 4の統合実装
* Apple M1チップの初期サポート
* Intel Xe Graphics アーキテクチャ対応
* Wi-Fi 6E(6GHz帯)サポート
|-
| 5.0 - 5.9
| 2019年3月 - 2020年11月
|
* AMD Zen 2アーキテクチャのサポート
* NVMe zoned namespaceのサポート
* USB4の初期実装
* RISC-Vアーキテクチャの基本サポート
* exFATファイルシステムの公式サポート
* AMD RDNAアーキテクチャ対応
|-
| 4.15 - 4.20
| 2018年1月 - 2019年2月
|
* AMD Zen/Zen+アーキテクチャの最適化
* Intel Cannonlake/Icelake世代の初期サポート
* AMDのVega GPUサポート
* 5レベルページテーブルのサポート
* x86 PTIの実装(Meltdown対策)
|-
| 4.9 - 4.14
| 2016年12月 - 2017年12月
|
* AMD Ryzen初期サポート
* NVMe パススルーの実装
* Intel Skylake/Kabylakeの完全サポート
* PCIe AERの改善
* TCP BBRの実装
|-
| 4.0 - 4.8
| 2015年4月 - 2016年11月
|
* NVMeドライバの成熟
* AMD GCNアーキテクチャの改善
* Intel Skylakeの初期サポート
* Thunderbolt 3のサポート
* DRMレンダリングの最適化
|-
| 3.14 - 3.19
| 2014年3月 - 2015年3月
|
* Intel Haswell/Broadwellの完全サポート
* AMDのHSAアーキテクチャ対応
* NVMeの初期実装
* DRMドライバの大幅改善
* USB 3.1サポート
|-
| 3.8 - 3.13
| 2013年2月 - 2014年2月
|
* ARM64(AArch64)アーキテクチャのサポート
* Intel Haswell世代の初期サポート
* AMDのGCN 1.1アーキテクチャ対応
* F2FSファイルシステムの導入
* マルチキューブロックレイヤー
|-
| 3.0 - 3.7
| 2011年7月 - 2012年12月
|
* Intel Sandy/Ivy Bridgeの最適化
* Btrfsファイルシステムの安定化
* USB 3.0の完全サポート
* Open-channel SSDサポート
* AMDのSouthern Islandsアーキテクチャ対応
|}
===デバッグとトラブルシューティング===
システムの問題解決には、以下のツールとアプローチが有効である:
* sysfsとdebugfs:デバイスの状態確認とパラメータ調整
* ftrace:カーネルレベルのトレーシング
* perf:パフォーマンス解析
* DMESGとsyslog:システムログの解析
特に、新しいハードウェアを導入する際は、これらのツールを用いた綿密な動作確認が推奨される。
===参考資料===
* [https://tldp.org/ Linux Documentation Project]
* [https://www.kernel.org/doc/ Linux Kernel Documentation]
* [https://wiki.archlinux.org/ ArchWiki]
[[Category:情報技術]]
{{NDC|007.63}}
{{DEFAULTSORT:Linuxはとうえあ}}
[[Category:情報技術]]
{{NDC|007.63}}
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物理数学II
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245031
2024-11-08T03:51:24Z
Tomzo
248
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wikitext
text/x-wiki
<small>[[物理学]] > 物理数学II </small>
----
本項は物理学 物理数学II の解説です。
*[[物理数学II/複素解析|複素解析]]
*[[物理数学II/特殊関数|特殊関数]]
*[[物理数学II/直交関数系|直交関数系]]
**[[物理数学II フーリエ解析|フーリエ解析]]
*[[物理数学II 複素関数|複素関数]]
==関連教科書==
*[[物理数学I]]
{{DEFAULTSORT:ふつりすうかく2}}
[[カテゴリ:物理学]]
[[カテゴリ:数学]]
[[Category:物理数学|*2]]
[[Category:書庫]]
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日本史/中世/鎌倉時代
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2024-11-08T05:52:30Z
Tomzo
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wikitext
text/x-wiki
{{Pathnav|メインページ|歴史学|中世|frame=1}}
[[{{PAGENAME}}]]では、鎌倉時代について解説する。
== 範囲 ==
[[w:源頼朝|源頼朝]]が、鎌倉に初の幕府を置いてから、後醍醐天皇らに滅ぼされるまでの150年ほどを、幕府があった鎌倉から名を冠し、「鎌倉時代」と言う。
== 政治 ==
=== 概略 ===
* 1156年、[[w:保元の乱|{{Ruby|保元|ほうげん}}の乱]]勃発。
* 1159年、[[w:平治の乱|{{Ruby|平治|へいじ}}の乱]]勃発。
* 1177年、[[w:鹿ケ谷の陰謀|{{Ruby|鹿ケ谷|ししがたに}}の陰謀]]の発生。
* 1185年、 [[w:壇ノ浦の戦い|{{Ruby|壇ノ浦|だんのうら}}の戦い]]により平家滅亡。源頼朝が守護・地頭を設置する。
* 1192年、源頼朝が [[w:征夷大将軍|{{Ruby|征夷大将軍|せいいいたいしょうぐん}}]]に任命される。
* 1221年、[[w:承久の乱|{{Ruby|承久|じょうきゅう}}の乱]]勃発。
** 後鳥羽上皇が幕府を滅ぼそうと兵を鎌倉に向けた事件。
* 1232年、[[s:御成敗式目|御成敗式目]](貞永式目)が定められる。
* 1247年、[[w:宝治合戦|{{Ruby|宝治|ほうち}}合戦]]の発生。
* 1249年、[[w:引付衆|{{Ruby|引付衆|ひきつけしゅう}}]]が設置される。
* 1252年、宗尊親王が将軍となる(皇族将軍の開始)
* 1274年、[[w:文永の役|{{Ruby|文永|ぶんえい}}の役]]の発生。
* 1281年、[[w:弘安の役|{{Ruby|弘安|こうあん}}の役]]の発生。
* 1285年、[[w:霜月騒動|{{Ruby|霜月騒動|しもつきそうどう}}]]の発生。
* 1297年、[[w:永仁の徳政令|{{Ruby|永仁|えいにん}}の徳政令]]の発布。
=== 平氏政権の興亡 ===
院政期に力を持ちつつあった平家は、[[w:保元の乱|{{Ruby|保元|}}の乱]]や[[w:平治の乱|{{Ruby|平治|}}の乱]]により、棟梁の[[w:平清盛|{{Ruby|平清盛|たいらのきよもり}}]]を中心に権力を握るようになった。[[w:平治の乱|{{Ruby|平治|}}の乱]]のあと、[[w:平清盛|{{Ruby|平清盛|}}]]は[[w:白河法皇|{{Ruby|白河法皇|しらかわほうおう}}]]に認められ、武士で初めて[[w:太政大臣|{{Ruby|太政大臣|だじょうだいじん}}]]に就任した。その後、摂津の[[w:大輪田泊|{{Ruby|大和田泊|おおわだのとまり}}]]を改修して[[w:日宋貿易|{{Ruby|日宋貿易|}}]]を行ったほか、[[w:平清盛|{{Ruby|平清盛|}}]]の娘[[w:徳子|{{Ruby|徳子|とくこ}}]]を[[w:高倉天皇|{{Ruby|高倉天皇|たかくらてんのう}}]]に嫁がせ外戚とし、権力を振るうなど栄華を極めた。
しかし、この動きに対し、東国の武士などには不満を持つ者もいた。[[w:平清盛|{{Ruby|平清盛|}}]]が[[w:後白河法皇|{{Ruby|後白河法皇|}}]]を幽閉したことを契機とし、[[w:後白河法皇|{{Ruby|後白河法皇|}}]]の息子である[[w:以仁王|{{Ruby|以仁王|もちひとおう}}]]が令旨を出すと、源氏を中心とした武士が蜂起し、いわゆる[[w:源平合戦|{{Ruby|源平合戦|げんぺいがっせん}}]]がおこった。[[w:源平合戦|{{Ruby|源平合戦|}}]]は初めは平氏優位に進んでいたが[[w:福原京|{{Ruby|福原京|ふくはらきょう}}]]への遷都の失敗や、[[w:養和の飢饉|{{Ruby|養和|ようわ}}の飢饉]]の発生、[[w:平清盛|{{Ruby|平清盛|}}]]の死亡などの複数の要因や、[[w:源義経|{{Ruby|源義経|}}]]の活躍などにより次第に不利になり、1185年、 [[w:壇ノ浦の戦い|{{Ruby|壇ノ浦|だんのうら}}の戦い]]で平家は滅亡した。
=== 鎌倉幕府の成立 ===
源平合戦で源氏が有利になるにつれて、[[w:源頼朝|{{Ruby|源頼朝|}}]]は、鎌倉幕府の統治機構の基礎を築いていった。1180年に[[w:侍所|{{Ruby|侍所|さむらいどころ}}]]を設置し、1183年に[[w:後白河法皇|{{Ruby|後白河法皇|}}]]に東国支配を認めさせ、ついで、1184年に[[w:公文所|{{Ruby|公文所|くもんじょ}}]]や[[w:問注所|{{Ruby|問注所|もんちゅうじょ}}]]を設置した。またその翌年1185年には[[w:守護|{{Ruby|守護|しゅご}}]]・[[w:地頭|{{Ruby|地頭|じとう}}]]を認めさせ、鎌倉幕府の統治体制の基礎を作り、1192年に[[w:源頼朝|{{Ruby|源頼朝|}}]]は[[w:征夷大将軍|{{Ruby|征夷大将軍|せいいいたいしょうぐん}}]]に就任した。頼朝の死後、御家人の中で力を握ったのが、頼朝の妻でもあった[[w:北条政子|{{Ruby|北条政子|ほうじょうまさこ}}]]をはじめとした、[[w:北条氏|{{Ruby|北条氏|ほうじょうし}}]]だった。その後、[[w:後鳥羽上皇|{{Ruby|後鳥羽上皇|}}]]は朝廷の権威を高めようとし、[[w:西面の武士|{{Ruby|西面の武士|さいめんのぶし}}]]を配置するなどした。そんな中、三代将軍[[w:源実朝|{{Ruby|源実朝|みなもとのさねとも}}]]が[[w:公暁|{{Ruby|公暁|くぎょう}}]]に暗殺される事件が起こると、朝廷と幕府の対立は決定的なものとなり、1221年[[w:承久の変|{{Ruby|承久の変|じょうきゅうのへん}}]]が起こった。結果は、武士の信任を得ていた北条氏の勝利となり、変に関与した3上皇は流布され、京都には朝廷の監視を行う[[w:六波羅探題|{{Ruby|六波羅探題|ろくはらたんだい}}]]がおかれた。
=== 得宗政治への推移 ===
=== 元寇と鎌倉幕府の衰退 ===
== 社会・経済 ==
{{節スタブ}}
=== 土地制度 ===
=== 交通 ===
「[[w:ご恩と奉公|ご恩と奉公]]」で有名な主従関係は「[[wikt:いざ鎌倉|いざ鎌倉]]」、すなわち有事の際に武士が駆けつけやすいよう、鎌倉から全国に街道が整備される要因である。
=== 貨幣制度 ===
=== 貿易 ===
=== 貴族・武家の暮らし ===
=== 庶民の暮らし ===
== 文化 ==
{{節stub}}
== 関連項目 ==
{{Wikipedia|鎌倉時代}}
* [[中世]]
{{日本史info}}
{{stub}}
[[カテゴリ:鎌倉時代|かまくらしたい]]
f9rzfomkacv9dbawip7o4mu3qqwq6bc
Windows入門
0
9400
263240
262971
2024-11-08T07:56:25Z
~2024-9934
84838
/* Windowsとは */
263240
wikitext
text/x-wiki
== Windowsとは ==
Windows(Microsoft Windows)とは、[[w:マイクロソフト|マイクロソフト社]]が開発した[[w:オペレーティングシステム|OS]]。家庭向けから企業向けまで幅広い範囲で使用されている。
== 最新バージョン ==
* Windows 11 バージョン 24H2<ref>{{Cite web
| url = https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows/release-health/windows11-release-information
| title = Windows 11 のリリース情報
| date = 2024-10-01
| accessdate = 2024-10-25
}}</ref>
* Windows 10 バージョン 22H2(最終バージョン、サポート期限は2025年10月14日まで)<ref>{{Cite web
| url = https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows/release-health/release-information
| title = Windows 10 リリース情報
| date = 2022-10-18
| accessdate = 2023-03-05
}}</ref>
* Windows Server 2025<ref>{{Cite web
| url = https://docs.microsoft.com/ja-jp/windows-server/get-started/windows-server-release-info
| title = Windows Server のリリース情報 {{!}} Microsoft Docs
| date = 2024/11/01
| accessdate = 2024/11/04
}}</ref>
== Windowsの世代別の特徴 ==
Windowsは、MS-DOSおよびPC-DOSのアドオンとして最初にリリースされました。その後、DOSを必要としない9x系が登場し、Windows 95からWindows Meまでのバージョンが展開されました。これらのバージョンの名称には、発行年の下二桁が冠されています(例: Windows 95、Windows 98)。これらのバージョンは一般に「9x系」として知られています。しかし、この系列は動作が不安定であるという問題がありました。そのため、Windows Meを最後に、完全にNT系へと移行しました。
===DOSアドオン時代===
DOSアドオン時代のWindowsは、MS-DOSとPC-DOSの機能を拡張するために開発されました。初期のWindowsは、グラフィカルユーザーインターフェイス(GUI)を提供し、ユーザーがコンピュータをより直感的に操作できるようにすることを目指していました。最初のバージョンであるWindows 1.0は1985年にリリースされ、その後のバージョンでは多くの機能が追加されていきました。
この時代のWindowsは、主にアプリケーションの実行やファイル管理に利用されており、MS-DOSのコマンドライン環境に依存していました。ユーザーは、プログラムを起動する際にDOSのコマンドを使用し、その後GUIに切り替える形で操作を行っていました。Windows 3.0(1990年)は、そのシンプルなデザインとマルチタスク機能により、広く受け入れられ、PC市場での地位を確立しました。
しかし、DOSアドオン時代のWindowsは、MS-DOSの制約により限界がありました。特に、メモリ管理やハードウェアの制御に関する問題が多く、安定性に欠けることがしばしばありました。このため、ユーザーはより高機能で安定したオペレーティングシステムを求めるようになり、結果的にWindows NT系への移行が進むこととなりました。
{|class="wikitable"
|+ DOSアドオン時代のWindows
!|Win Ver.!!DOS Ver.!!プロダクト名!!発売年
|-
|1.0||1.0||[[w:Microsoft Windows 1.0|Microsoft Windows 1.0]]||1985年
|-
|2.0||2.0||[[w:Microsoft Windows 2.0|Microsoft Windows 2.0]]||1987年
|-
|3.0||3.0||[[w:Microsoft Windows 3.0|Microsoft Windows 3.0]]||1990年
|-
|3.1||3.1||[[w:Microsoft Windows 3.1|Microsoft Windows 3.1]]||1993年
|}
Windows 3.1と同時期にリリースされたOS/2 Ver.2.11には、Windows互換環境であるWIN-OS/2が含まれていました。また、Windows 3.1がインストールされているPC向けには、OS/2 Ver.2.11 for Windowsがリリースされ、Windows 3.1を基にWIN-OS/2を構成することが可能でした。
OS/2 V2は完全な32ビットOSであり、その上にマルチDOS仮想マシン環境としてWIN-OS/2が構築されました。このため、16ビットコードと32ビットコードが保護機構なしに混在するWindows 9x系と比べて、OS/2はより安定していました。
===9.x系===
Windows 9.x系は、Windows 95、Windows 98、Windows Meなどを含む、Microsoftのオペレーティングシステムのシリーズです。この系列は、ユーザーに直感的な操作を提供するグラフィカルユーザーインターフェイス(GUI)を採用し、MS-DOSを基盤とした従来のWindowsとは異なり、MS-DOSを必要としない新しいアーキテクチャを導入しました。
Windows 95から始まる9.x系では、独自のカーネルを使用し、MS-DOSの制約から解放されました。これにより、より高いパフォーマンスと安定性を実現し、多くの家庭向けや一般ユーザー向けのアプリケーションに対応しました。しかし、動作が不安定であることや、メモリ管理の問題が指摘され、特に大規模なアプリケーションを実行する際には課題が残りました。
最終的に、9.x系の限界が明らかになるにつれて、より高機能で安定したNT系への移行が進みました。
{|class="wikitable"
|+ Windows 9.x系
!|Win Ver.!!DOS Ver.!!プロダクト名!!発売年
|-
|4.0||7.0<br />(OSR2以降は7.1)||[[w:Microsoft Windows 95|Windows 95]]||1995年
|-
|4.10||7.1||[[w:Microsoft Windows 98|Windows 98]]||1998年
|-
|4.10||7.1||Windows 98 Second Edition||1999年
|-
|4.90||8||[[w:Microsoft Windows Millennium Edition|Windows Me]]||2000年
|-
|}
==== OSR2 ====
OSR2(OEM Service Release 2)は、1996年にリリースされたWindows 95のマイナーアップデート版です。このバージョンは主にOEM(オリジナル機器メーカー)向けに提供され、初期のWindows 95からの改善が多数含まれています。
OSR2では、Internet Explorer 4.0が統合されており、ユーザーがインターネットに簡単に接続できるようになりました。また、USB(Universal Serial Bus)デバイスのサポートも追加され、さまざまな周辺機器を接続する利便性が向上しました。さらに、従来のFAT16ファイルシステムよりも効率的なFAT32が導入され、大容量のハードディスクをより効果的に利用できるようになったことも大きな特徴です。
OSR2は、Windows 95の最終バージョンとして位置づけられ、これによりWindows 98への移行がスムーズに進む重要な役割を果たしました。
:{| class="wikitable"
!style="width:4rem"|項目
!style="width:7rem"|OSR
!OSR2
|-
!発売時期
|1995年8月
|1996年12月
|-
!対象
|一般ユーザー
|OEM
|-
!販売形態
|パッケージ販売
|OEM提供のみ
|-
!主な機能
| -
|FAT32ファイルシステム、Internet Explorer 3.01、DirectX 3.0、USBサポート強化、IEEE 1394サポート、その他バグ修正
|}
=== NT系 ===
NT系(Windows NT)は、Microsoftが開発したオペレーティングシステムのシリーズで、最初のバージョンであるWindows NT 3.1が1993年にリリースされました。NTは「New Technology」の略で、主に企業向けやサーバー環境を想定した設計がされています。
NT系の特徴として、完全32ビットアーキテクチャを採用しており、高度なメモリ管理、セキュリティ機能、マルチタスク処理を実現しています。また、ハードウェアの抽象化層(HAL)を導入することで、さまざまなハードウェアプラットフォームに対応可能です。
この系列は、Windows 2000、Windows XP、Windows Serverなど、後の多くのWindowsバージョンの基盤となり、特にビジネス環境において広く利用されています。NT系は、その安定性とセキュリティにより、個人ユーザーから企業まで幅広いユーザーに支持されています。
Windows 8.1までのOSのサポートは終了している。
以下のオペレーティングシステムがNT系に該当する。なお、発売年は最初に発売された言語版もしくはエディションを記載する。
{|class="wikitable"
|+ Windows NT系のリビジョンと発売年次
|- style="position:sticky; top:0;"
! NT Ver. !! RTM Build !! プロダクト名 !! エディション !! 発売年
|-
|NT 3.1||528||Windows NT 3.1||Windows NT, Windows NT Advanced Server||1993年
|-
|NT 3.5||807||Windows NT 3.5||Workstation, Server||1994年
|-
|NT 3.51||1057||Windows NT 3.51||Workstation, Server||1995年
|-
|NT 4.0||1381||Windows NT 4.0||Workstation, Server, Server Enterprise Edition, Terminal Server, Embedded||1996年
|-
|NT 5.0||2195||[[W:Microsoft Windows 2000|Windows 2000]]||Professional, Server, Advanced Server, Datacenter Server||2000年
|-
|NT 5.1||2600||[[W:Microsoft Windows XP|Windows XP]]||Home, Professional, Media Center, Tablet PC, Starter, Embedded, Nエディション||2001年
|-
|NT 5.1||2600||Windows Fundamentals for Legacy PCs|| - ||2006年
|-
|NT 5.2||3790||[[W:Microsoft Windows Server 2003|Windows Server 2003]]||Standard, Enterprise, Datacenter, Web, Storage, Small Business Server, Compute Cluster Server||2003年
|-
|NT 5.2||3790||[[w:Microsoft Windows XP Professional x64 Edition|Windows XP x64 Edition]]||64-bit Edition, Professional x64 Edition||2003年<br/>2005年
|-
|NT 5.2||3790||[[W:Microsoft Windows Home Server|Windows Home Server]]||||2007年
|-
|NT 6.0||6000||[[W:Microsoft Windows Vista|Windows Vista]]||Starter, Home Basic, Home Premium, Business, Enterprise, Ultimate, N Edition||2006年<ref>ビジネス向け</ref><br />2007年<ref>一般消費者向け</ref>
|-
|NT 6.0||6001||Windows Vista Service Pack 1|| ||2008年
|-
|NT 6.0||6001||[[W:Microsoft Windows Server 2008|Windows Server 2008]]||Standard, Enterprise, Datacenter, Web, Foundation, Itanium-based Systems, Storage, Small Business Server||2008年
|-
|NT 6.0|| 6002 ||Windows Vista Service Pack 2|| ||2009年
|-
|NT 6.0|| 6002 ||Windows Server 2008 Service Pack 2|| ||2009年
|-
|NT 6.1|| 7600 ||[[W:Microsoft Windows 7|Windows 7]]|| Starter, Home Basic, Home Premium, Professional, Enterprise, Ultimate ||2009年
|-
|NT 6.1|| 7600 ||[[w:Windows Server 2008 R2|Windows Server 2008 R2]]||Standard, Enterprise, Datacenter, Web, Foundation, Itanium-based Systems||2009年
|-
|NT 6.2|| 9200 ||[[W:Microsoft Windows 8|Windows 8]]|| 無印, Pro , Enterprise , Windows RT ||2012年
|-
|NT 6.3|| 9600 ||[[W:Microsoft Windows 8#Windows_8.1|Windows 8.1]]<ref>Windows 8.1は、Windows 8の仕様変更・改良版です。</ref>|| 無印, Pro , Enterprise , Windows RT ||2013年
|-
|NT 10.0|| 10240 ||[[W:Microsoft Windows 10|Windows 10]]|| Home, Pro, Education/Pro Education, Enterprise/Enterprise LTSB ||2015年
|-
|NT 10.0|| 14393 ||[[W:Microsoft Windows Server 2016|Windows Server 2016]]||Standard, Enterprise, Datacenter||2016年
|-
|NT 10.0|| (なし) ||[[W:Microsoft Windows Server 2019|Windows Server 2019]]||Standard, Enterprise, Datacenter||2018年
|-
|NT 10.0|| (なし) ||[[W:Microsoft Windows Server 2022|Windows Server 2022]]||Standard, Datacenter, Datacenter: Azure Edition||2021年
|-
|NT 10.0|| (なし) ||[[W:Microsoft Windows Server 2025|Windows Server 2025]]||Standard, Datacenter, Datacenter: Azure Edition||2024年
|}
==== クライアントOS ====
; Windows NT 3.1
: 1993年にリリースされた最初のNT系オペレーティングシステムで、主にサーバーやワークステーション向けに設計された。
; Windows NT 4.0
: 1996年にリリースされ、Windows 95のGUIを採用し、ユーザーフレンドリーなインターフェイスが特徴。クライアントおよびサーバー向けに広く使用された。
; Windows 2000
: 2000年に登場し、ビジネス向けに特化した機能や、セキュリティ向上が図られた。エンタープライズ環境での利用が推奨された。
; Windows XP
: 2001年にリリースされ、個人向けとビジネス向けの両方のエディションが登場。ユーザーインターフェイスの大幅な改善と、安定性、セキュリティの向上が評価された。
; Windows Vista
: 2007年に登場し、セキュリティ機能の強化や新しいインターフェイスが導入されたが、ハードウェア要件が高く、批判も受けた。
; Windows 7
: 2009年にリリースされ、Vistaの改善版として位置づけられ、使いやすさとパフォーマンスの向上が評価された。
; Windows 8/8.1
: 2012年に登場したWindows 8はタッチスクリーン操作を意識した設計で、2013年に8.1がリリースされ、ユーザーからのフィードバックを反映した改良が行われた。
; Windows 10
: 2015年にリリースされ、ユーザーのフィードバックを取り入れた機能が追加され、Windows 7と8の要素を統合した。定期的なアップデートが行われるサービスモデルを採用。
; Windows 11
: 2021年に発表され、新しいユーザーインターフェイスとともに、タスクバーやウィンドウの操作性が向上。新しいシステム要件が設定された。
==== サーバOS ====
; Windows NT Server 3.1
: 1993年にリリースされた最初のNT系サーバOSで、基本的なサーバ機能を提供し、企業向けに設計された。
; Windows NT Server 4.0
: 1996年に登場し、Windows 95のインターフェイスを採用。リモート管理機能やセキュリティの強化が図られ、広く普及した。
; Windows 2000 Server
: 2000年にリリースされ、Active Directoryを導入。ネットワーク管理が容易になり、信頼性とセキュリティが向上した。
; Windows Server 2003
: 2003年に登場し、Windows 2000 Serverの後継として、セキュリティ機能やパフォーマンスが大幅に改善された。
; Windows Server 2008
: 2008年にリリースされ、仮想化機能のHyper-Vが追加され、クラウド環境への対応が進んだ。また、サーバーマネージャーによる管理の簡素化が図られた。
; Windows Server 2012
: 2012年に登場し、さらに強化されたHyper-V機能や、ストレージ機能の向上が特徴。クラウドサービスとの統合が進められた。
; Windows Server 2016
: 2016年にリリースされ、コンテナ機能のサポートや、セキュリティ強化のための新機能が追加された。さらに、データセンター向けの機能が強化された。
; Windows Server 2019
: 2018年に登場し、Hybrid Cloud機能が強化され、オンプレミスとクラウドの統合が容易になった。また、セキュリティやストレージ機能も改善された。
; Windows Server 2022
: 2021年にリリースされ、セキュリティ強化や、クラウド接続機能の向上が図られ、データセンター向けの新機能も追加された。
; Windows Server 2025
: 2025年にリリースされ、AIや機械学習機能の統合、さらなるセキュリティの強化、クラウドネイティブアプリケーションがサポートされている。
== Windowsのセットアップ ==
== Windowsでの操作方法 ==
この節では基本操作や基礎知識を説明する。
=== スタートボタン ===
Windowsではスタートボタンから、ソフトを起動したり、シャットダウンすることができる。Windows 3.51以前のものとWindows 8を除くすべてのOSでは左下のWindowsマーク([[File:Windows logo - 2012.svg|15px]]など)があるところがスタートボタンと呼ばれる。また、キーボードのショートカットキーはWindowsキーである。
=== コントロールパネル ===
コントロールパネルは、Windowsオペレーティングシステムにおいて、システムやソフトウェアの設定を行うためのツールで、プリンタの設定から使用中のソフトウェアの管理など幅広い設定が行えます。異なるバージョンのWindowsでは、このツールの名称が異なる場合があります。
=== 設定アプリ ===
Windows 10以降、Microsoftは従来の「コントロールパネル」の機能を新しい「設定⚙」アプリに置き換える取り組みを進めています。設定アプリはより直感的で使いやすいインターフェースを提供し、モバイルデバイスやタッチスクリーンにも適しています。また、設定アプリは従来のコントロールパネルよりもさまざまな設定項目にアクセスしやすくなっており、新しい機能の追加やアップデートも継続的に行われています。このような動きは、Windowsの使いやすさや一貫性を向上させることを目指しています。
==== Windows Update ====
Windows Updateは、Windowsオペレーティングシステムの更新プログラムに関する情報を提供し、必要に応じてその更新プログラムを表示およびインストールするためのツールです。システムのセキュリティや機能の向上のために定期的な更新プログラムの適用が重要です。
==== デバイス マネージャー====
デバイス マネージャーは、ディスプレイ、プリンター、マウス、キーボードなどの周辺機器、およびPC内部のハードウェアやCPUなどを「デバイス」として管理します。このツールを使用することで、デバイスに関する情報を参照し、設定を変更できます。
また、コマンドプロンプトを使用して、デバイス マネージャーを起動することもできます(「<syntaxhighlight lang="shell" inline> mmc devmgmt.msc </syntaxhighlight>」コマンドを使用)。
==== プログラムと機能 ====
「プログラムと機能」は、コンピュータにインストールされているアプリケーションの一覧を表示し、必要に応じてアプリケーションの削除や変更を行うためのツールです。また、Windowsの更新プログラムもここから管理できます。
==== 既定のプログラム ====
「既定のプログラム」は、特定のファイル拡張子やプロトコルに対して、どのアプリケーションが関連づけられるかを設定するためのツールです。例えば、ファイルの拡張子が「.docx」の場合、関連づけられているアプリケーションとして[[Microsoft Word]]を選択できます。
この設定を使用することで、特定のファイルを開く際に使用するアプリケーションを指定できます。
;注意
:Windows 10以降では、「設定⚙」が徐々にコントロールパネルの機能を置き換えつつあり、新しい設定オプションが提供されています。そのため、一部の設定項目はコントロールパネルではなく「設定⚙」で管理されています。ユーザーは特定の設定項目を見つけるために、Windowsのバージョンに応じて設定アプリを活用することをお勧めします。
=== ファイルの使いかた ===
ここでは、ファイルの使い方を説明する。Windowsのファイルでは、おもにWindowsでは、最も標準的なファイル形式を使っている。また、Windows各種では、あらかじめ写真など(イメージ画像など)が入っている場合が多い。
Windows独自の拡張子で代表的なものとしては
.exe (実行可能アプリケーション)
が多い。
=== PC ===
PCはPCに接続されている周辺機器の情報を表示するウインドウである。
カメラなどをUSB接続する場合はPCから開くこともできる。
Windows 8.1から現在の'''PC'''という名称になったが、
[[w:Microsoft Windows XP|Windows XP]]以前は'''マイコンピュータ'''、
[[W:Microsoft Windows Vista|Windows Vista]]では、'''コンピュータ'''、
[[W:Microsoft Windows 7|Windows 7]] と [[W:Microsoft Windows 8|Windows 8]]では、'''コンピューター'''
という名称であった。
=== ホットキー ===
ホットキーとは、画面上のメニューからマウスで選択して実行する命令や、特定の文字列の入力などの利用頻度が高い連続したキー操作を簡単なキー操作で実行する機能である。また、そのために割り当てられたキー入力の組み合わせ入力数を減らしたり、マウスを使わずに操作できる。Windowsには、3つのホットキーが搭載されている(デスクトップパソコンのみ)。
=== クリック/ダブルクリック/ドラッグ/右クリック/ホイール ===
クリックとはマウスの左側のボタンを1回クリックする動作のことを言い、右側を1回クリックすることを右クリックという。右クリックは基本プロパティを開くために使われていて、基本使われることはない。左側を2回クリックすることをダブルクリックと言い、アイコンの上でダブルクリックすると、ソフトウェアが起動する。
:左側のボタンを押したまま動かすとドラッグという動作になる。アイコンの上でドラッグをして、ファイルの移動などで使われるのが一般的である。
:ホイールとは中心にある軸のことを言い、スクロールの操作などに使われる。最近のマウスでは左右に動かせるマウスもある。
:一見どのパソコンにも共通しているような操作だが、微妙に違う。
:設定で左側のボタンと、右側のボタンの操作を入れ替えることができる。
== 脚注 ==
<references/>
== 関連項目 ==
{{Commons|Category:Microsoft Windows|Microsoft Windows}}
{{Wikipedia|Microsoft Windows}}
{{Wikipedia|MS-DOS}}
*[[MS-DOS/PC DOS入門]] - [[w:cmd.exe|コマンドプロンプト]]の使い方など
*[[OSとアプリケーション]]
*[[拡張子ハンドブック]]
{{Stub}}
[[カテゴリ:Microsoft Windows]]
6rvxm6ifznni7tgmcuze8yhyl7bw9ji
プログラミング言語
0
10048
263208
204245
2024-11-07T21:49:10Z
Ef3
694
Darkmodeでの視認性を損なう style= で直接していしている色指定
263208
wikitext
text/x-wiki
<!-- [[File:Programming-languages.png|center|Programming Languages]] -->
<div style="margin: auto; width: 12em; text-align: center; font-size: 4.4em; font-weight: bold; color: #AC8022; border: double 1px #2822AC; border-width: thick 0;"><span style="color:#2822AC">λ</span> プログラミング言語 <span style="color:#2822AC">Υ</span></div>
__NOTOC__
== 目次 ==
<!--
{| style="width:100%;"
| style="background-color: #D9DFFF; border: double 2px #BBCCFF; padding: 6px;" |
# [[/Introduction|Introduction]] {{stage short|25%|12 Sept 2005}}
# [[/Syntax Specification|Specifying the Syntax of Programming Languages]] {{stage short|25%|12 Sept 2005}}
# [[/Semantics Specification|Specifying the Semantics of Programming Languages]] {{stage short|50%|12 Sept 2005}}
# [[/Functional Languages|Functional Languages]] {{stage short|00%|12 Sept 2005}}
# [[/Imperative Languages|Imperative Languages]] {{stage short|00%|12 Sept 2005}}
# [[/Object-oriented Languages|Object-oriented Languages]] {{stage short|00%|12 Sept 2005}}
# [[/Scripting Languages|Scripting Languages]] {{stage short|00%|12 Sept 2005}}
# [[/Logical Languages|Logical Languages]] {{stage short|00%|12 Sept 2005}}
# [[/Aspect-oriented Languages|Aspect-oriented Languages]] {{stage short|00%|12 Sept 2005}}
# [[/Domain-specific Languages|Domain-specific Languages]] {{stage short|00%|12 Sept 2005}}
# [[/Procedural Languages/]]
# [[/Concurrent Languages/]]
|}
-->
# [[/はじめに|はじめに]]
# [[/文法仕様|プログラミング言語の文法仕様]]
# [[/意味論|プログラミング言語の意味論]]
# [[/関数型言語|関数型言語]]
# [[/命令型言語|命令型言語]]
# [[/オブジェクト指向言語|オブジェクト指向言語]]
# [[/スクリプト言語|スクリプト言語]]
# [[/論理型言語|論理型言語]]
# [[/アスペクト言語|アスペクト言語]]
# [[/ドメイン特化型言語|ドメイン特化型言語]]
# [[/プロシージャ型言語|手続き型言語]]
# [[/並行処理言語|並行処理言語]]
[[Category:プログラミング言語|*]]
{{NDC|007.64}}
amerovuczbkz9y2c5dhl7hnl84i18qu
刑事訴訟法第405条
0
13589
263241
198904
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Tomzo
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wikitext
text/x-wiki
[[法学]]>[[コンメンタール]]>[[コンメンタール刑事訴訟法]]
==条文==
(上告のできる判決、上告申立理由)
;第405条
: 高等裁判所がした第一審又は第二審の判決に対しては、左の事由があることを理由として上告の申立をすることができる。
:# 憲法の違反があること又は憲法の解釈に誤があること。
:# 最高裁判所の判例と相反する判断をしたこと。
:# 最高裁判所の判例がない場合に、大審院若しくは上告裁判所たる高等裁判所の判例又はこの法律施行後の控訴裁判所たる高等裁判所の判例と相反する判断をしたこと。
==解説==
==参照条文==
==判例==
#[https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=33235 殺人,強姦致死,窃盗被告事件]([[w:光市母子殺害事件|光市母子殺害事件]] 最高裁判決平成18年6月20日)
#;主婦を強姦目的で殺害した上姦淫しさらにその場で生後11か月の同女の長女をも殺害するなどした当時18歳の被告人につき第1審判決の無期懲役の科刑を維持した控訴審判決が量刑不当として破棄された事例
#:〈量刑不当を理由として上告を受理し、原判決を破棄した例〉
#:*検察官の上告趣意は,判例違反をいう点を含め,実質は量刑不当の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。しかしながら,所論にかんがみ職権をもって調査すると,原判決は,下記1以下に述べる理由により破棄を免れない。
#:*原判決及びその是認する第1審判決が酌量すべき事情として述べるところは,これを個々的にみても,また,これらを総合してみても,いまだ被告人につき死刑を選択しない事由として十分な理由に当たると認めることはできないのであり,原判決が判示する理由だけでは,その量刑判断を維持することは困難であるといわざるを得ない。
#:*そうすると,原判決は,量刑に当たって考慮すべき事実の評価を誤った結果,死刑の選択を回避するに足りる特に酌量すべき事情の存否について審理を尽くすことなく,被告人を無期懲役に処した第1審判決の量刑を是認したものであって,その刑の量定は甚だしく不当であり,これを破棄しなければ著しく正義に反するものと認められる。
----
{{前後
|[[コンメンタール刑事訴訟法|刑事訴訟法]]
|[[コンメンタール刑事訴訟法#3|第3編 上訴]]<br>
[[コンメンタール刑事訴訟法#3-3|第3章 上告]]<br>
|[[刑事訴訟法第404条|第404条]]<br>(公判に関する規定の準用)
|[[刑事訴訟法第406条|第406条]]<br>(上告審として受理できる事件)
}}
{{stub|law}}
[[category:刑事訴訟法|405]]
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text/x-wiki
[[法学]]>[[コンメンタール]]>[[コンメンタール刑事訴訟法]]
==条文==
(上告のできる判決、上告申立理由)
;第405条
: 高等裁判所がした第一審又は第二審の判決に対しては、左の事由があることを理由として上告の申立をすることができる。
:# 憲法の違反があること又は憲法の解釈に誤があること。
:# 最高裁判所の判例と相反する判断をしたこと。
:# 最高裁判所の判例がない場合に、大審院若しくは上告裁判所たる高等裁判所の判例又はこの法律施行後の控訴裁判所たる高等裁判所の判例と相反する判断をしたこと。
==解説==
==参照条文==
*[[刑事訴訟法第405条|第405条]] - 本条に該当しないときであっても上告を受理できる場合
*[[刑事訴訟規則]](最高裁規則)
**(違憲判断事件の優先審判)
**:[[刑事訴訟規則第256条|第256条]]
**:最高裁判所は、原判決において法律、命令、規則又は処分が憲法に違反するものとした判断が不当であることを上告の理由とする事件については、原裁判において同種の判断をしていない他のすべての事件に優先して、これを審判しなければならない。
==判例==
----
{{前後
|[[コンメンタール刑事訴訟法|刑事訴訟法]]
|[[コンメンタール刑事訴訟法#3|第3編 上訴]]<br>
[[コンメンタール刑事訴訟法#3-3|第3章 上告]]<br>
|[[刑事訴訟法第404条|第404条]]<br>(公判に関する規定の準用)
|[[刑事訴訟法第406条|第406条]]<br>(上告審として受理できる事件)
}}
{{stub|law}}
[[category:刑事訴訟法|405]]
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刑事訴訟法第406条
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text/x-wiki
[[法学]]>[[コンメンタール]]>[[コンメンタール刑事訴訟法]]=[[コンメンタール刑事訴訟法/改訂]]
==条文==
(上告審として受理できる事件)
;第406条
: 最高裁判所は、[[刑事訴訟法第405条|前条]]の規定により上告をすることができる場合以外の場合であっても、法令の解釈に関する重要な事項を含むものと認められる事件については、その判決確定前に限り、裁判所の規則の定めるところにより、自ら上告審としてその事件を受理することができる。
==解説==
==参照条文==
*[[刑事訴訟規則]](最高裁規則)
**(跳躍上告)
**:[[刑事訴訟規則第254条|第254条]]
**:#地方裁判所又は簡易裁判所がした第一審判決に対しては、その判決において法律、命令、規則若しくは処分が憲法に違反するものとした判断又は地方公共団体の条例若しくは規則が法律に違反するものとした判断が不当であることを理由として、最高裁判所に上告をすることができる。
**:#検察官は、地方裁判所又は簡易裁判所がした第一審判決に対し、その判決において地方公共団体の条例又は規則が憲法又は法律に適合するものとした判断が不当であることを理由として、最高裁判所に上告をすることができる。
**(跳躍上告と控訴)
**:[[刑事訴訟規則第255条|第255条]]
**::[[刑事訴訟規則第254条|前条]]の上告は、控訴の申立があつたときは、その効力を失う。但し、控訴の取下又は控訴棄却の裁判があつたときは、この限りでない。
**(上告審としての事件受理の申立)
**:[[刑事訴訟規則第257条|第257条]]
**::高等裁判所がした第一審又は第二審の判決に対しては、その事件が法令(裁判所の規則を含む。)の解釈に関する重要な事項を含むものと認めるときは、上訴権者は、その判決に対する上告の提起期間内に限り、最高裁判所に上告審として事件を受理すべきことを申し立てることができる。但し、[[刑事訴訟法第405条|法第405条]]に規定する事由をその理由とすることはできない。
**(申立の方式)
**:[[刑事訴訟規則第258条|第258条]]
**::[[刑事訴訟規則第257条|前条]]の申立をするには、申立書を原裁判所に差し出さなければならない。
**(原判決の謄本等の交付)
**:[[刑事訴訟規則第258条の2|第258条の2]]
**:#[[刑事訴訟規則第257条|第257条]]の申立てがあつたときは、原裁判所に対して[[刑事訴訟法第46条|法第46条]]の規定による判決の謄本の交付の請求があつたものとみなす。ただし、申立人が申立ての前に判決の謄本の交付を受けているとき(その交付を受けるに当たり、起訴状に記載された個人特定事項のうち起訴状抄本等に記載がないもの([[刑事訴訟法第271条の5|法第271条の5]]第1項([[刑事訴訟法第404条|法第404条]]において準用する場合を含む。)の決定により通知することとされたものを除く。)又は訴因変更等請求書面に記載された個人特定事項のうち訴因変更等請求書面抄本等に記載がないもの([[刑事訴訟法第312条の2|法第312条の2]]第4項([[刑事訴訟法第404条|法第404条]]において準用する場合を含む。)において読み替えて準用する[[刑事訴訟法第271条の5|法第271条の5]]第1項の決定により通知することとされたものを除く。)を被告人に知らせてはならない旨の条件が付され、又は被告人に知らせる時期若しくは方法を指定された場合を含む。)又は[[刑事訴訟法第271条の6|法第271条の6]]第4項若しくは第5項(これらの規定を[[刑事訴訟法第312条の2|法第312条の2]]第4項において準用する場合を含む。)の規定による判決の抄本の交付、[[刑事訴訟法第299条の6|法第299条の6]]第4項若しくは第5項の規定による判決の抄本の交付若しくは[[刑事訴訟法第404条|法第404条]]において準用する[[刑事訴訟法第271条の6|法第271条の6]]第4項若しくは第5項(これらの規定を[[刑事訴訟法第404条|法第404条]]において準用する[[刑事訴訟法第312条の2|法第312条の2]]第4項において準用する場合を含む。)若しくは[[刑事訴訟法第299条の6|法第299条の6]]第4項若しくは第5項の規定による判決の抄本の交付を受けているときは、この限りでない。
**:#前項本文の場合には、原裁判所は、遅滞なく判決の謄本を申立人に交付しなければならない。ただし、弁護人又は被告人その他訴訟関係人(検察官を除く。)から[[刑事訴訟規則第257条|第257条]]の申立てがあつた場合であつて、次の各号に掲げるときは、当該各号に定める措置をとることをもつて、判決の謄本の交付に代えることができる。
**:##[[刑事訴訟規則第257条|第257条]]の申立てに係る事件において[[刑事訴訟法第271条の2|法第271条の2]]第2項の規定による起訴状抄本等の提出があつたとき又は[[刑事訴訟法第312条の2|法第312条の2]]第2項([[刑事訴訟法第404条|法第404条]]において準用する場合を含む。)の規定による訴因変更等請求書面抄本等の提出があつたとき
**:##:[[刑事訴訟法第271条の6|法第271条の6]]第3項から第5項まで(これらの規定を[[刑事訴訟法第312条の2|法第312条の2]]第四項において準用する場合を含む。)の規定による措置又は[[刑事訴訟法第404条|法第404条]]において準用する[[刑事訴訟法第271条の6|法第271条の6]]第3項から第5項まで(これらの規定を[[刑事訴訟法第404条|法第404条]]において準用する[[刑事訴訟法第312条の2|法第312条の2]]第四項において準用する場合を含む。)の規定による措置
**:##[[刑事訴訟規則第257条|第257条]]の申立てに係る事件において検察官が[[刑事訴訟法第299条の4|法第299条の4]]第1項、第3項、第6項若しくは第8項(これらの規定を[[刑事訴訟法第404条|法第404条]]において準用する場合を含む。)の規定による措置をとつたとき又は裁判所が[[刑事訴訟法第299条の5|法第299条の5]]第3項([[刑事訴訟法第404条|法第404条]]において準用する場合を含む。)の規定による措置をとつたとき
**:##:[[刑事訴訟法第299条の6|法第299条の6]]第3項から第5項まで(これらの規定を[[刑事訴訟法第404条|法第404条]]において準用する場合を含む。)の規定による措置
**:#第1項ただし書又は前項の場合には、裁判所書記官は、判決の謄本又は抄本を交付した日を記録上明らかにしておかなければならない。
**(処置をとるべきことの請求)
**:[[刑事訴訟規則第258条の3|第258条の3]]
**:#裁判所は、[[刑事訴訟規則第258条の2|前条]] 前条第2項ただし書の規定により付した条件に弁護人が違反したとき、又は同項ただし書の規定による時期若しくは方法の指定に弁護人が従わなかつたときは、弁護士である弁護人については当該弁護士の所属する弁護士会又は日本弁護士連合会に通知し、適当な処置をとるべきことを請求することができる。
**:#前項の規定による請求を受けた者は、そのとつた処置をその請求をした裁判所に通知しなければならない。
**(事件受理の申立理由書)
**:[[刑事訴訟規則第258条の4|第258条の4]]
**:#申立人は、[[刑事訴訟規則第258条の2|第258条の2]]第2項の規定による謄本又は抄本の交付を受けたときはその日から、[[刑事訴訟規則第258条の2|同条]]第1項ただし書の場合には[[刑事訴訟規則第257条|第257条]]の申立てをした日から14日以内に理由書を原裁判所に差し出さなければならない。この場合には、理由書に相手方の数に応ずる謄本及び原判決の謄本又は抄本を添付しなければならない。
**:#前項の理由書には、第一審判決の内容を摘示する等の方法により、申立ての理由をできる限り具体的に記載しなければならない。
**(原裁判所の棄却決定)
**:[[刑事訴訟規則第259条|第259条]]
**::[[刑事訴訟規則第257条|第257条]]の申立が明らかに申立権の消滅後にされたものであるとき、又は[[刑事訴訟規則第258条の4|前条]]第1項の理由書が同項の期間内に差し出されないときは、原裁判所は、決定で申立を棄却しなければならない。
**(申立書の送付等)
**:[[刑事訴訟規則第260条|第260条]]
**:#原裁判所は、[[刑事訴訟規則第258条の4|第258条の4]]第1項の理由書及び添付書類を受け取つたときは、前条の場合を除いて、速やかにこれを[[刑事訴訟規則第258条|第258条]]の申立書とともに最高裁判所に送付しなければならない。
**:#最高裁判所は、前項の送付を受けたときは、速やかにその年月日を検察官に通知しなければならない。
**(事件受理の決定)
**:[[刑事訴訟規則第261条|第261条]]
**:#最高裁判所は、自ら上告審として事件を受理するのを相当と認めるときは、前条の送付を受けた日から14日以内にその旨の決定をしなければならない。この場合において申立の理由中に重要でないと認めるものがあるときは、これを排除することができる。
**:#最高裁判所は、前項の決定をしたときは、同項の期間内にこれを検察官に通知しなければならない。
**(事件受理の決定の通知)
**:[[刑事訴訟規則第262条|第262条]]
**::最高裁判所は、[[刑事訴訟規則第261条|前条]]第1項の決定をしたときは、速やかにその旨を原裁判所に通知しなければならない。
**(事件受理の決定の効力等)
**:[[刑事訴訟規則第263条|第263条]]
**:#[[刑事訴訟規則第261条|第261条]]第1項の決定があつたときは、[[刑事訴訟規則第258条の4|第258条の4]]第1項の理由書は、その理由([[刑事訴訟規則第261条|第261条]]第1項後段の規定により排除された理由を除く。)を上告の理由とする上告趣意書とみなす。
**:#前項の理由書の謄本を相手方に送達する場合において、[[刑事訴訟規則第261条|第261条]]第1項後段の規定により排除された理由があるときは、同時にその決定の謄本をも送達しなければならない。
**(申立の効力)
**:[[刑事訴訟規則第264条|第264条]]
**::[[刑事訴訟規則第257条|第257条]]の申立は、原判決の確定を妨げる効力を有する。但し、申立を棄却する決定があつたとき、又は[[刑事訴訟規則第261条|第261条]]の決定がされないで同項の期間が経過したときは、この限りでない。
==判例==
#[https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=33235 殺人,強姦致死,窃盗被告事件]([[w:光市母子殺害事件|光市母子殺害事件]] 最高裁判決平成18年6月20日)
#;主婦を強姦目的で殺害した上姦淫しさらにその場で生後11か月の同女の長女をも殺害するなどした当時18歳の被告人につき第1審判決の無期懲役の科刑を維持した控訴審判決が量刑不当として破棄された事例
#:〈量刑不当を理由として上告を受理し、原判決を破棄した例〉
#:*検察官の上告趣意は,判例違反をいう点を含め,実質は量刑不当の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。しかしながら,所論にかんがみ職権をもって調査すると,原判決は,下記1以下に述べる理由により破棄を免れない。
#:*原判決及びその是認する第1審判決が酌量すべき事情として述べるところは,これを個々的にみても,また,これらを総合してみても,いまだ被告人につき死刑を選択しない事由として十分な理由に当たると認めることはできないのであり,原判決が判示する理由だけでは,その量刑判断を維持することは困難であるといわざるを得ない。
#:*そうすると,原判決は,量刑に当たって考慮すべき事実の評価を誤った結果,死刑の選択を回避するに足りる特に酌量すべき事情の存否について審理を尽くすことなく,被告人を無期懲役に処した第1審判決の量刑を是認したものであって,その刑の量定は甚だしく不当であり,これを破棄しなければ著しく正義に反するものと認められる。
----
{{前後
|[[コンメンタール刑事訴訟法|刑事訴訟法]]
|[[コンメンタール刑事訴訟法#3|第3編 上訴]]<br>
[[コンメンタール刑事訴訟法#3-3|第3章 上告]]<br>
|[[刑事訴訟法第405条|第405条]]<br>(上告のできる判決、上告申立理由)
|[[刑事訴訟法第407条|第407条]]<br>(上告趣意書)
}}
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[[category:刑事訴訟法|406]]
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カテゴリ:理論計算機科学
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2024-11-08T03:46:16Z
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[[Category:計算機科学]]
[[Category:数学]]
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著作権法第15条
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text/x-wiki
[[法学]]>[[民事法]]>[[コンメンタール著作権法]]
== 条文 ==
(職務上作成する著作物の著作者)
;第15条
# [[著作権法第2条|法人]]その他使用者(以下この条において「法人等」という。)の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成する[[著作権法第2条|著作物]](プログラムの著作物を除く。)で、その法人等が自己の著作の名義の下に公表するものの著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とする。
# 法人等の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成する[[著作権法第2条|プログラム]]の著作物の著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とする。
== 解説 ==
職務著作について規定する。
=== 要件 ===
職務著作の成立要件は
# 法人その他使用者(法人等)の発意に基づくものであること
# 法人等の業務に従事する者が職務上作成するものであること<ref>文化庁では、2の要件を法人等の業務に従事する者の創作であることと職務上作成されることにさらに分説している([http://www.bunka.go.jp/chosakuken/gaiyou/chosakusya.html 文化庁 | 著作権 | 著作権制度に関する情報 | 著作権制度の解説資料 | 著作権制度の概要 | 著作者について])。</ref>
# 法人等が自己の著作の名義の下に公表するものであること
# 作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがないこと
とされる(1項)。ただし、[[著作権法第2条|プログラムの著作物]]の場合は、3の要件は不要である(2項)。
=== 効果 ===
著作者が法人等とみなされる。
== 参照条文 ==
== 判例 ==
*[http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=62498 著作権使用差止請求事件](最高裁判例 平成15年04月11日)
== 脚注 ==
<references />
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{{前後
|[[コンメンタール著作権法|著作権法]]
|[[コンメンタール著作権法#s2|第2章 著作者の権利]]<br>[[コンメンタール著作権法#s2-2|第2節 著作者]]
|[[著作権法第14条]]<br>(著作者の推定)
|[[著作権法第16条]]<br>(映画の著作物の著作者)
}}
{{stub|law}}
[[Category:著作権法|015]]
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中学校高等学校保健体育実技編/体つくり運動
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一回、本文を修正。
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[[中学校の学習]]>[[中学校保健体育]]>[[中学校高等学校保健体育実技編]]>体つくり運動
[[高等学校の学習]]>[[高等学校保健体育]]>[[中学校高等学校保健体育実技編]]>体つくり運動
== 歴史 ==
=== 発祥 ===
=== 日本への普及と発展 ===
=== 世界体操祭 ===
== 資料出所 ==
※下記、2冊を読み比べて執筆しました。
* 佐伯年詩雄ほか編著 年度版『中学体育実技』学研教育みらい
* 高橋健夫ほか編著 年度版『ステップアップ高校スポーツ'''』'''大修館書店
[[カテゴリ:高等学校保健体育]]
[[カテゴリ:中学校保健体育]]
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高等学校政治経済/現代社会の諸課題
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text/x-wiki
== 現代日本の政治や経済の諸課題 ==
=== 大きな政府と小さな政府 ===
=== 少子高齢社会と社会保障 ===
=== 住民生活と地方自治 ===
=== 情報化の進展と市民生活 ===
=== [[経済学 社会保障制度 労働|労使関係と労働市場]] ===
=== [[経済学 現代経済の仕組み 経済主体とその活動#大企業と中小企業|産業構造の変化と中小企業]] ===
産業の中心が、一次産業から二次産業、二次産業から三次産業へと移ることを'''ぺティ・クラークの法則'''という。そして日本では経済のソフト化が進んでいる。
=== [[経済学 現代経済の仕組み 経済主体とその活動#消費者問題|消費者問題と消費者保護]] ===
=== 公害防止と環境保全 ===
=== 農業と食料問題 ===
=== 国際社会の政治や経済の諸課題 ===
=== 地球環境問題 ===
=== 核兵器と軍縮 ===
=== 国際経済格差の是正と国際協力 ===
北と南の国際的な格差問題を[[w:南北問題|南北問題]](North South problem <ref>橋場弦 ほか監修『WORLD HISTORY for HighScool 英文詳説世界史』、2019年10月15日 第1版 第3刷発行、P.371</ref>)という。発展途上国が宗主国の影響で[[w:モノカルチャー経済|モノカルチャー経済]]に陥っていることが原因である。工業化を目指し資金を借り入れた国では[[w:累積債務問題|累積債務問題]]が発生し、支払いのリスケジューリングなどの対策がとられた。逆に工業化に成功した国々は[[w:NIEs|NIEs]]といわれた。工業化がなされていない国は[[w:後発発展途上国|後発発展途上国]]と呼ばれている。先進国側では[[w:開発援助委員会|DAC]]が置かれた。途上国側では、第1回[[w:国連貿易開発会議|国連貿易開発会議]]にてプレビッシュ報告がなされて、70年代には[[:w:NIEO|NIEO]]が宣言された。
先進国政府の援助は[[w:ODA|ODA]]とよばれ、グランド・エレメントという指標がある。日本の二国間ODAの特徴として、アジアからアフリカへと配分が変わってきている。
=== 経済摩擦と外交 ===
日本とアメリカの間では[[w:貿易摩擦|貿易摩擦]]や経済摩擦が起こったので、[[w:日米構造協議|日米構造協議]]や日米包括経済協議といわれる交渉が行われた。
== その他 ==
2015年ごろ「相対的貧困率」という用語が流行した(2017年度センター試験にも出題された)。「相対的貧困」の内容は、単なる所得格差のことである。なので、所得格差の高い国ほど、相対的貧困率が高くなる。
よって、アメリカ合衆国は相対的貧困率が高い。
なお、2000年度の各国の相対的貧困率は、(2017年度センター試験によると)
:日本: 15.0%
:アメリカ: 17.0%
:デンマーク: 5.0%
:ドイツ: 11.0%
:::(「OECD編著『格差は拡大しているか』(2010年)により作成」とのこと)
である。
左翼運動化はよく「ドイツに見習え。欧州に見習え」というが、日本と比べてドイツの相対的貧困率は、それほど低いわけでもない。
== 人種・民族問題 ==
== 国際社会における日本の立場と役割 ==
==巻末資料==
=== Q&A:「シビリアン・コントロールとは?」 ===
* Q. シビリアン・コントロールとは何でしょうか?
*: 「国民が、選挙で選ばれた国民の代表(政治家)を通じて、軍隊を、コントロールする。」ということです。
* Q.誰がコントロールするのでしょうか?
*: 「国民」の代表者。
* Q.何をコントロールするのでしょうか?
*: 「軍隊」です。
* Q.どうやってコントロールするのでしょうか?
*: 「選挙で選ばれた国民の代表(政治家)」を通じてコントロールします。
* Q.シビリアンとは何でしょうか?
*: 「選挙で選ばれた国民の代表(政治家)」のことです。
シビリアン・コントロールとは、
(誰が?)→(どうする?)→(何を?)→(どうやって?)
国民が → コントロールする → 軍隊を → 選挙で選ばれた国民の代表(政治家)を通じて
ということです。
つまり、「国民が、選挙で選ばれた国民の代表(政治家)を通じて、軍隊を、コントロールする。」ということです。
シビリアン・コントロールのよりくわしい内容については、ウィキペディア[[w:文民統制|文民統制]]を参照ください。
== (※ 範囲外)背景的な議論マナーや反証可能性など ==
:※ ここで紹介されている議論のマナーなどは、あくまで政治学や経済学や法律学での議論のマナーです。
:哲学や文学や芸術などの議論では、議論のマナーが違う場合もあります。政治学・経済学・法律学 以外についての議論のマナーは、それぞれの学問の専門書をお読みください。
=== 政経の教科書の巻末などにある議論のこと ===
高校の公民(「政治経済」や「公共」など)だと、教科書の章末や巻末などで、2つの対立概念を提示していて、それぞれの立場からの議論を手短かに展開しています。で、その章末などの議論の例では、2つの対立する意見を紹介しています。たとえば、「政府は日本は農業を保護するべきか」
:意見A. 保護すべきである。なぜなら~(以下略)
:意見B. 保護すべきではない。なぜなら~(以下略)
みたいなのです。
他にも、男女平等をどうするのかとか、国際化と日本文化との問題をどうするかとか、科目と時代によって色々と教科書に議論が載っているでしょう。
政治の問題などは、個人が一人で進めるわけにはいかないので、少なくとも政治家や知識人などが議論をせざるを得ません。
ある程度の検証をされている対立意見に耳を傾けて(時間に限りはありますが)、さらにそれを自分らでも検証したりするのが、本当の議論です。
農業問題など政治問題の、議論の典型的な主張の内容を覚えるのも大切ですが、それと同じくらい、政治経済についての議論のマナーを身に着けるのも大切です。
教科書巻末などの「議論」は、おおむね、下記に述べるような手法で、議論が展開されているだろうと思います。読者が将来的に議論をしたり読んだりする際の参考にしてください。
=== エコーチェンバーを自動防止できる ===
高校の公共などの科目で、「エコー・チェンバー」と言う用語を習います。エコーチェンバーとは何かについては『[[中学校社会_公民/世論とマスメディア#※_中学の範囲外%3A_情報の片寄り]]』を参照してください。
さて、対立意見を両方の立場でそれぞれ読んだりすることで、読者はエコーチェンバーを自動的に防げます。
だから教科書の巻末・章末の議論にある対立意見も、かならず両方の意見にきちんと目を通しましょう。
さて、教科書以外の読書のさい、決して、やみくもに書籍をたくさん読んでも、もし自分とまったく同じ意見の人の本ばかり読んでいてはエコーチェンバーになってしまい意味がありません。だから教科書以外の読書では、時々でよいので、自分の価値観とは反対の主張がされている本も読みましょう。
たとえば自分が「農業をもっと保護すべき」だと思うのなら、その逆の「農業をもっと自由化・規制緩和・補助金削減しろ」みたいな論者の主張の書籍をときどきは読むべきなのです。
=== 反証可能性 ===
議論のための前提として、正しい反対意見によって間違った学説を淘汰(反証)して修正できる仕組みが確保されていなければいけません。このような仕組みのことを、科学哲学(かがくてつがく)という学問でも「'''反証可能性'''」と言います。科学哲学者カール=ポパーの提唱した概念です。
人は誰しも、「自分の意見こそが正しい」と先入観を思いがちですので、だから対立意見にも耳を傾けて、自分の考えを現実を説明できる正しい考えへと修正するのが大事なのです。もっとも、人生の時間には限りがあるので、なんでもかんでも文句を聞き入れるのではなく、的確な統計などのまとまった優れた対立意見だけを聞くことになるでしょうが。
たとえば理科なら実験や観測で間違った学説を淘汰できるし、数学なら証明や計算で間違った学説を淘汰して修正できますので、反証可能性があります。
社会科・政治経済でも、統計などで、政策や法律などの効果を、ある程度は検証して修正できますので、数学ほどではないですが反証可能性のようなものは存在しているでしょう。
本ページでは修正と言ってますが、マチガイがあっても、間違った部分だけを限定的に取り除いて、正しい情報に交換すればいいのです。学説全体を無くす必要はありません。少なくとも学問の世界ではそうです。
よほどマチガイの割合が多い学説なら、ゼロから学説を作り直したほうが早いですが、しかし市販の書籍などに紹介されるような学説やら政策などの場合なら、マトモな出版社から出ている教科書や書籍なら、ゼロから学説・主張を作り直すのは時間の無駄です。そもそも学問というのは、アイデアを共有する知的な営み(いとなみ)でもあります。
文学や芸術や哲学など、統計などによる検証が難しいかもしれない学問もあるかもしれませんが(そのため科学哲学の「反証可能性」がなじまない分野もあるかもしれませんが)、少なくとも政治学と経済学は、統計などによる反証可能性が必要ですし、実際に統計などによる反証による学問の発展が可能です。
しかし、仮に文学そのもに反証可能性が仮に無いとしても、文芸小説などを売っている出版社には利益というお金が必要であり、社会でのお金の流れは経済などの影響を受け、そして経済学には反証可能性があります。だから出版人は、経済の反証可能性を無視することはできません。少なくとも最終的・長期的には、文学人などと言えでも経済などの反証可能性のようなものを無視できません。
さて、もし、ある仮説において、反証可能性が確保されていないと、少なくとも「科学」 science とはみなされません。まあ、哲学も法学も「科学」 science ではないのですが。もっとも、法律でも、裁判の原告と被告の法廷闘争を思い起こせば分かるように、対立意見どうしを裁判官が聞いています。
芸術など一部の分野では例外があるでしょうが、多くの学問の分野で、反証可能性は尊重されているだろうと思います。というか、日本の大学研究者への補助金の科研費(科学研究費)は、少なくとも建前上では科学的でないと予算がおりません。「科学研究費」「という、その名の通り。
高校の「政治経済」や「公共」などの公民科目の検定教科書を作るような人たちは当然ですが、「反証可能性」などの概念を知っているだろうから、だから巻末などの議論でわざわざ対立する主張を提示しているのです。
なぜ、わざわざこういう事を言うのかと言うと、世間の教育評論家のなかには、これが出来ていない人が多くあります。世間では、知的なレベルの低い人でも教育評論をしています。世の中には、こういう反証の基本的な検証作業のできないオトナもいて、高校生以下の知力のオトナもいます。困ったことに、そういった人でも大卒などの学歴を手にしてしまっている場合もあります。
=== 反証可能性のためのノウハウ ===
==== 統計や歴史事実などを基本に ====
反証可能性の確立のためには検証が必要ですので、政治経済の議論の場合なら、統計などの具体的で数値的な情報が必要です。もしくは、「西暦〇〇年に□□が起きた」みたいに実際に歴史上に起きた事例などです。
おそらく、政治経済の巻末にある議論の例でも、数値などが提示されているか、もしくはインターネットを使えば省庁や学会などの調査した統計にアクセスできるような具体的な情報が提示されているかと思います。
==== 善悪などの主観的表現は最小限に ====
こういった政治学・経済学のような議論の際には、けっして、あいまいな表現や主観的な表現を、議論での主張の根拠にしてはいけません。
たとえばダメな例として、「私は農家が好き」とか「農業って面白そう」とか「農家は偉い」とか、あなたがどう思っても、そういうのは日本の農業政策をどうすべきかとは関係ありません。農業に限らず在日外国人の議論でも男女平等の議論でも何でも同様、あなたの思いは、とりあえず社会の議論としては検証には関係ありません。
もっとも、「日本国民の〇〇パーセントは農業について好意的印象を持っている」と言ったような大規模アンケートなどの結果なら、議論の根拠にする意味はあるかもしれません。しかし、少なくとも、あなたの好き嫌いは議論の検証結果には関係ありません。
自分に都合よく自分勝手に解釈できてしまい内容を都合よく変更できてしまう表現をしていては、議論が深まりませんし、相手や第三者からすれば信用もされません。
他のダメそうな例として、「善」・「悪」というのも、政治経済の議論としては要注意の表現です。往々にして個人的な「好き」をもっともらしく言い換えただけのゴマカシの表現が「善」だったりする場合もあります。
窃盗(せっとう)などの明らかな犯罪ならともかく、あるいはウソツキなど議論の妨害行為ならともかく、法律違反でもウソツキでもないのに何かを「悪」と断じる人には(たとえば「日本の農業政策の〇〇は悪である」みたいな)、議論では注意が必要かもしれません。
なにより問題なのは、善悪を理由にして、対立意見を悪だと断定して、そして対立意見を耳に入れようとせずに現実を無視する人が、世間には時々います。
しかし、自分に近い意見だけを耳にしていては、エコーチェンバーにおちいってしまいます。どんなに人数だけは多くの人の意見を聞こうが、書籍数だけは多くの書籍を読もうが、自分と同じ意見だけの本を読んでいてはエコーチェンバーになるので、政治経済の勉強としては無駄になってしまいます。
さて、最近(2023年に記述)は少なくなりましたが、2005年あたりまでは、左翼マスコミや左翼政党などの左翼主張を並べ立てて対立陣営を批判するだけの行為を「議論」だと勘違いしている、ヘンな人もいました。
大物の左翼政治家だろうが右翼政治家だろうが、それは何の統計でもなく、だから政治経済の議論においては、まったく証明の根拠の主流にはなりません。他に統計などがある場合の傍証(ぼうしょう)にはなるかもしれませんが、しかし証明の主流の手段にはならないのです。
==== これから証明しようとすることを根拠にしない(循環論) ====
例として、2005年くらいの「つくる会」の歴史教科書運動のとき、以前の教科書の中立性などが疑問視されたのですが(ロシアや中国など旧・共産圏に好意的すぎないか、など)、ネットの意見やら一部の評論家などから、「以前の(つくる会以外の)教科書は中立的で正しいに決まっている。なぜなら、中高の教科書を見ても書いてある話題を紹介しているだけだからだ」という言説がありました。
しかし、そもそも、当時の議論していた問題こそ、その根拠として提示されている中高の教科書の記述内容の妥当性です。
このように、なにかの議論で妥当性を検証する際は、根拠には、検証しようとする対象以外のものを根拠にしないといけません。
たとえば、中高の歴史教科書の記述の妥当性を検証しようとする場合なら、大学レベルの学術書をいくつも読んだり(歴史学の学術書を読むのは当然、歴史学の公平性そのものを検証するために他の学問の書籍も多く調べる必要があるかもしれません)、論文を読んだり、そのほか、多くの歴史評論なども読む必要もあります。とても大変な活動です。
このように多くのものを読まないといけないのに、しかし世間では、そういう読書をサボって、検証対象になっている書籍だけしか読まずに、にもかかわらず、なにかを検証したつもりになっている頭のわるい人が、世間には少なくないのです。
「先生の言っていることは正しいと思いま~す。なぜなら、先生がそう言ってたからで~す!」みたいな理屈は、なんの証明にもなっていません。
こういうのを循環論(じゅんかんろん)と言います。循環論とは、証明しようとする対象そのものを根拠として理屈を展開してしまう、論理展開のミスことです。
教育問題以外でも、循環論はよくありました。たとえば新聞の信頼性の議論で、「朝日新聞・毎日新聞などの主張は正しいか」という議論なのに、その根拠として朝日新聞・毎日新聞などにありそうな言説を根拠にする人もいたのです。同様、「産経新聞の主張は正しいか。正しい。なぜなら産経新聞に書いてあった内容と一致するから」みたいな困った言説もよくありました。
朝日新聞とテレビ朝日の関係のように大手新聞社はテレビ局を持っていたり、雑誌も「週刊朝日」とかありますので、新聞の信頼性を証明する際に根拠とする情報は、新聞・テレビ以外のものでないといけませんし、系列の出版社以外の情報源でないといけません。
==== 大小などの基準をハッキリ ====
他にも要注意の表現として、「大きいので」とか「小さいので」などの表現も要注意です。「何と比べて大きい/小さい から」なのか、大小の基準をなるべくハッキリさせましょう。他の例として「強いので」・「弱いので」も同様、基準の必要な表現です。
議論でマチガイを突っ込まれると、基準を都合よく後から操作する人がいます。
素直に間違いを認めればいいのに、たとえばマチガイに気づいた時点で議論相手に「私のマチガイでした。なので、基準を変えますね。では、新しい基準で議論を続けて、議論を深めましょう」とか言えばいいのに、
しかし自分のマチガイを認めたくないばかりに(なぜなら「自分がバカだった」と認めたくないので)、だから基準を最初から提示しない人がいるのです。
しかし、そういった態度では、議論が深まりません。
マチガイを認めないことこそ、本当のマチガイです。古代中国の孔子(こうし)も「過ちて(あやまちて)改めざる。 これを過ち(あやまち)という」と述べています。
:※ [[高等学校情報/その他の技術的な話題#ブレーンストーミングの仕方]]でも、相手のアイデアを利用するのが推奨されています。議論の本来の目的は、決して言い負かすことではないはずです。議論の正しい目的は、理解を深めることや、すぐれた対策を打ち出すこと、などのはずです。
==== マチガイを恐れない勇気 ====
さて、仮に事実が一つだとすると、対立する2つの政策意見のうち、少なくともどちらか一つの主張は、思考法などのどこかが間違っているわけです。
しかし、マチガイのない人間はいません。仮に人間が間違えたとしても、それでも実用的な政策などを決めるために、議論をするのです。人間の集団がイキイキと生きていくためには、今後のことをどうするかを主体的に決めなければいけません。
マチガイを恐れて何も主張しなければ、何も決定に影響を与えられません。そのせいで何も決定できなければ、何も事態が改善されません。たとえば大地震でも大災害でも何でもいいですが、そういった事が起きたとき、マチガイを恐れて何もしないで被災者を放置することが、一番のマチガイです。
政治ではないですが、裁判での原告と被告との法廷闘争も似たようなものでしょう。
人間が死んでないかぎり、間違っても、やり直せばいいだけです。
==== 論点をすりかえない ====
反証可能性とはあまり関係ない話題ですが、議論のマナーとして、議論開始前に事前に提示された論点をずらしてはいけません。
よくあるマナー違反が、新たな視点にて論点を追加した際に、どさくさに紛れて不都合な論点を消そうとする、迷惑な人です。
たとえば、先に2022年の自民党政権のときの物価高を問題視する議論で、「じゃあ2010年代前半の民主党政権のときのデフレ不況はどうだったんだよ!」と意見を出してきたりして、議論を2022年の話から2010年代前半の話に変えようとするような行為です。しかしこれは議論ではありません。
なぜなら、2010年代の不況の原因がデフレであろうがなかろうが、2022年代が物価高であった事実は統計などから明白だからです。
しかし世間には、論点を追加することで、不都合な以前の論点をうすめようとしたり消そうとしたりする人がいます。
もちろん、かならずしも論点を追加する人が悪意とは限らず、純粋に視野の広い人が善意で論点を追加する場合もあるので、いちがいに批判はできません。しかし、そういう善意の人のふりをして、論点を追加することで、不都合な論点をすりかえようとする悪意の人もいます。
このような卑怯な論点のすりかえに対抗するため、もし論点があらたに議論中に追加された場合は、追加されたほうの論点は議論の後回しに分けて、時間が余った時などにだけ議論するのが良いでしょう。もしくは、1~2分など短時間にだけ新規の論点について説明してもらうのが限度でしょうか。
事前に計画された古い論点から、(自分が)逃げない、(相手を)逃さないようにしましょう。最悪、そのような議論のルールを守れない人は、議論から追い出す必要があるかもしれません。
もし古い論点そのものに問題がある場合でも、それは議論を開始する前に指摘しておきましょう。もし議論開始後の議論中に新規に追加を主張された論点があっても、新規追加されたほうの論点は後回しにされなければなりません。
なお暗黙の前提として、こういった論点のスケジュール管理をできるようにするため、論点は箇条書きに分けましょう。また、箇条書きにされた一つ一つの論点は、なるべく短めの文章にすることです。
中学高校あたりの国語や社会科での議論やディベートの実習だと、先生がこういった論点の管理をしてくれますが、しかし学校以外では自分たちで論点をきちんと管理するしかありません。
逆に言うと、もし論争相手から論点の変更が主張されていなければ、論争相手から不都合な統計などを出されたりしたら、その統計に不備が見つけられない限り、少なくともその統計を認めなければいけません。
==== 普段の読書の仕方 ====
===== 最低でも3冊は対立意見の本を読む =====
大学などでは、もしアナタが政治的・経済的な思想を主張したいなら、ふだんの読書のさい、入門レベルの分かりやすい本でも良いので、最低でも3冊はアナタの主張と対立する意見の根拠が書かれている本を読むのが良いとされています。知識人のように、政治・経済について主張したいなら、そうすべきでしょう。
その根拠として、
:・まず読書の一般常識的に、なにかに入門するための読書をするさい、3冊を読んで共通点を見つけるのが良いとされています。
:・そして、自分の対立意見については、ふつうの人はあまり対立意見の根拠には詳しくないのが通常です。
なので、これらを組み合わせると、もし読書で議論のように考えを深めたいなら、自分の考えとちがった対立意見の本を最低でも3冊は読むことになるでしょう。
高校の在学中は時間的に難しいかもしれませんが、大学や就職後などの読書では、次第にこういった読書法も身に着けることになるでしょうか。
たとえば、アナタが左翼思想の持ち主なら、最低でも3冊は右翼思想の本を読む。逆に、アナタが右翼思想の持ち主なら、最低でも3冊は左翼思想の本を読む。・・・といった具合に、です。
もちろん、自分の考えと近い内容の本については、もっと多くの十冊以上とか読むわけです。
もし、親書やら文庫のたった3冊すら読めないレベルの読書週間なら、あるいは対立意見の本を読むのに精神的に耐えられないなら、そもそも思想とかに深入りするのをヤメたほうが安全です。
たった3冊すらも対立意見の本を読めない程度の精神力の弱さなら、スポーツや芸能などのよほどの天才でもない限り、世間の常識にしたがって普通の仕事に就職して、普通に上司に従ったりなどして生きていくほうが安全でしょう。
{{stub}}
[[Category:社会科学|せいしけいさい]]
[[Category:高等学校教育|せいしけいさい]]
[[Category:社会科教育|高せいしけいさい]]
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高等学校物理/物理I/運動とエネルギー/運動の法則
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2024-11-08T03:38:41Z
米マリオ
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wikitext
text/x-wiki
== 力の性質 ==
=== 力とは ===
力(ちから、英語:force)とは、物体を動かしたり、変形させたりする原因である。
力はベクトルで表わされる量であり、単位には ニュートン (記号 N )を用いる。
1ニュートンの大きさの定義とは、質量 1kg の物体に力を加えた時に、1m/s<sup>2</sup>の加速度を生じさせる力の大きさを1ニュートンと定めている。質量の大きい物体ほど、速度を変化させるのに、より大きな力が必要である。つまり質量とは、加速度の変化のしにくさを表す量である。
中学では、「1ニュートンは、約100gの重さ」と習うが、高校では、後述するように力を正確に考えるため、高校では、重さによる力の定義は、用いない。なぜなら、月と地球では重力の大きさが違うので、もし「重さ」によって力を定義してしまうと、場所によって力の大きさの基準が違うので、不合理である。高校では、質量と加速度にもとづいて、「力」を定義する。
*質量とは何か
では、質量(しつりょう、mass)とは何か? 中学で習ったように「質量」を考えてよい。
月と地球では、重力の大きさが違うので、「重さ」(weight)と「質量」(mass)とは、異なる概念である。
しかし、分銅で測れば、月でも地球でも、同じ質量を測れる。
2019年にキログラムの定義が改定され、『キログラム (記号は kg) は質量のSI単位であり、プランク定数 ''h'' を単位 J s (kg m<sup>2</sup> s<sup>−1</sup> に等しい)で表したときに、その数値を{{val|6.62607015|e=-34}} と定めることによって定義される。ここで、メートル及び秒は、それぞれ ''c'' 及び''Δν''<sub>Cs</sub>を用いて定義される。』となった。
このニュートンという単位は、既に知られている[s],[kg],[m]を用いてかくことが出来る
単位である。実際には
:[N] = [kg] <math>\cdot</math> [m/s<math>{}^2</math>]
が得られる。この関係は以降の節で扱う[[w:ニュートン方程式|運動方程式]](うんどうほうていしき、equation of motion)に従う。
質量 m [kg] の物体に掛かる重力の大きさ W [N]は、次のように表される。
:<math>W=mg</math>
この式において、 g は重力加速度であり、単位は[m/s<sup>2</sup>]。
;(参考 単位系の国際標準化)
昔は、製造業の機械工業などでは、力の単位に、ニュートンの他にも、{{Ruby|グラム重|グラムじゅう}}やキログラム重といった重力と質量に基づく[[W:重力単位系|重力単位系]]が使われていた時代があった。
しかし、現在では、力の単位は、ニュートンを原則的に使用することが、国際的に推奨されている。読者が高校生・大学生なら、学校の試験などではニュートンを力の単位に用いるべきである。
力の単位をニュートン単位に統一した理由は、昔は国や業界ごとに物理量で用いる単位が別々であり、不便であったので、その不便を解消しようと国際的な取り決めがなされたからである。その国際的な取り決めによって、力の単位にはニュートンを用いることが決まり、質量の単位にはグラムまたはキログラムを用いることが決まり、重さと質量とを区別することが決まったのである。
また、この国際的に取り決めた単位系を{{Ruby|'''国際単位系'''|こくさい たんいけい}}([[W:フランス語|仏]]: ''Système International d'unités'')と言いSIと略され、国際単位系が定める最も基本的な様々な単位の総称し{{Ruby|'''SI単位'''|エスアイたんい}}と言う。SI単位はSI基本単位、SI組立単位、SI接頭語から成る。
また、国際単位系では、長さの単位にはメートルやミリメートル、センチメートルといったメートル法を用い、時間の単位には秒を用いる。
(※ 参考) 速度などの秒の記号は検定教科書では小文字「s」である。たとえば秒速の記号は m/s である。1時間、2時間などの「時間」の記号は h である。時速なら km/h がよく使われる。しかし「分」については、漢字のまま「分」で書くことが検定教科書でも許されている<ref>コンデックス情報研究所 編『いつの間に?!ココまで変わった学校の教科書』、成美堂出版、2019年 8月20日 発行、P107、</ref>。
高校入学から先の、高校や大学での理科の学習では、物理量の単位系には、原則としてSI単位が用いられる。物理学の科目だけでなく、生物や化学や地学などでも、単位系は、特別な理由が無いかぎりはSI単位系およびSI併用単位(リットル L や角度 °や1時間 h など)を用いるのが普通である。
(※参考) メートル m やキロメートルkm、キログラム kg やグラム g、 秒 s 、電流のアンペア A などが SI単位である。
(※ 参考) なお、リットルの大文字 L および小文字 l は SI単位 ではないが、しかしSIと併用される「SI併用単位」としてリットルは認められている。慣習的には、小文字 l が数字のイチとまぎらわしいので、大文字 L が使われることが多い<ref>コンデックス情報研究所 編『いつの間に?!ココまで変わった学校の教科書』、成美堂出版、2019年 8月20日 発行、P106、</ref>。
※ 高校生が理科のテストの答案を書く際などにSI単位やSI併用単位などについてよく分からければ、高校理科の検定教科書やふつうの受験参考書にある単位を使用すればいい。
=== 力の測り方 ===
==== フックの法則 ====
<gallery widths=400px heights=380px>
File:ばねの自然長 縦.svg|フックの法則。<br>力は伸びに比例する。
File:ばねの自然長 横.svg|フックの法則。
</gallery>
----
ばね を考えれば分かると思うが、一般に物体は形を変えるような力が働いたとき、形を戻そうとする力を働かせる。
このように元の形に戻ろうとする性質を'''弾性'''(だんせい、elasticity)という。また弾性による復元力を'''弾性力'''(elastic force)と呼ぶ。弾性力の向きは、加えた力とは反対向きである。ばね の場合、弾性力の向きは、伸びの向きとは反対向きである。
なお、ばね に力がかかってないときの元々の長さのことを、「自然の長さ」あるいは'''自然長'''(しぜんちょう)という
多くの固体の物体は、物体に加える外力が小さい場合には弾性を示す。
弾性力の大きさは、伸び(または 縮み)の長さに比例する。この比例係数(伸びと弾性力の比例係数)は、物質によって異なる。
弾性力の式は、伸びを x[m] とすると、弾性力 F[N] の大きさは、次の式で表せる。
:<math>
F = k x
</math>
これを'''フックの法則'''(Hooke's law)と呼ぶ。
[[File:フックの法則 直線の範囲.svg|thumb|400px|left|フックの法則]]
物体が ばね であれば、比例定数 k [N/m] を '''ばね定数''' という。
高校の段階では、物体が ばね でなくとも、弾性力をしめす物体について、この係数 k を「ばね定数」と読んでも構わないだろう。(いくつかの検定教科書でも、そのように記述している。)
なお、単位 N/m は ニュートン毎メートル (ニュートンまいメートル)と読む。
{{-}}
*参考: 塑性(そせい)
いっぽう、粘土(ねんど)のように容易に形を変えることが出来る物質も存在する。このような形を変えられる性質を「塑性」(そせい,plastic)という。普通科高校の教科では「塑性」を扱わないので、塑性については説明を省略する。
このように、弾性力の有無および弾性力の強さは、物質によって大きく変わる物質の性質である。
=== 力のつりあい ===
==== 力の合成 ====
[[File:Vector parallelogram.PNG|right|250px|thumb|ある物体に向きのちがう力F1(青矢印)と力F2(青矢印)を加えると、物体に加わる合力は、図のような(F1とF2を辺とする、)平行四辺形の対角線の向きになる。]]
ここで、ある物体に対して、2つの力
<math>\vec {F_1}</math>
および
<math>\vec {F_2}</math>
が働くときに、その力は互いに足し合わされ、物体には合計で
:<math>
\vec {F_1} + \vec{F_2}
</math>
だけの力が働くとする。
このように力はベクトルとしての加法則を満たすのである。
2つ以上の力を足しあわせて1つの力と見なすとき、その足し合わせた結果の力を'''合力'''(ごうりょく、resultant force)という。
また、合力を求めるために力を足しあわせることを「力の合成」(composition force)などという。
特に大きさが等しく向きが反対向きであるとき2力の合計はベクトルとして
0になり、物体に力が働いていない状態と等しくなる。このような状態を
力がつりあっているという。
*3つ以上の力の合成
:(※ 図を追加してください。)
<math>
\vec {F_1} + \vec{F_2} + \vec{F_3}
</math>
についての作図は、まず<math>
\vec {F_1} + \vec{F_2}
</math>を作図し、
そして
<math>
(\vec {F_1} + \vec{F_2}) + \vec{F_3}
</math>
を作図すれば良い。
どの順番から作図しても答えは同じで、
<math>
\vec {F_1} + (\vec{F_2} + \vec{F_3})
</math>
を作図しても、答えは同じである。
*問題
ある物体に、(I)x方向に<math>f</math>[N]、y方向に<math>f</math>[N]の力が
それぞれ独立に働いているとする。
このとき、この物体には合計でどれだけの力がどの方向に働いているか計算せよ。
また、(II)それぞれの力の向きがどちらもx軸方向、
(III)片方がx軸方向でもう片方が(-x)軸 方向、
(IV)もしくは片方がx軸方向で、もう片方がx軸から測って反時計回りに
60<math>{}^\circ</math>の方向のときにどのような力を受けているかを計算せよ。
**解答
(I)
ベクトルの加法を用いると得られる力は
:<math>
(f,0) + (0,f)
</math>
:<math>
= (f,f) = \sqrt 2 f (1,1)
</math>
となる。これは、方向がx軸から測って反時計回りに45<math>{}^\circ</math>だけ回転した方向に
等しい力で大きさは
:<math>
\sqrt 2 f
</math>
に等しい力である。
(II)
同様にベクトルの加法を用いると、
:<math>
(f,0)+(f,0)
</math>
:<math>
= (2f,0)
</math>
となる。これは向きはx軸方向で大きさは2fの力である。
(III)
ベクトルの加法を用いると、
:<math>
(f,0)+(-f,0)
</math>
:<math>
= (0,0)
</math>
となる。これは力が働いていない状態である。
(IV)
ベクトルの加法を用いると、
:<math>
(f,0)+f(\frac 1 2,\frac {\sqrt 3} 2)
</math>
:<math>
= f ( \frac 3 2, \frac {\sqrt 3} 2)
</math>
:<math>
= f \sqrt 3 ( \frac {\sqrt 3} 2, \frac 1 2)
</math>
となる。これはx軸から見て30<math>{}^\circ</math>方向の力で、力の大きさは
:<math>
\sqrt 3 f
</math>
に等しい。
==== 力の分解 ====
[[File:2力の分解.svg|thumb|400px|2力の分解]]
力の合成の作業とは逆に、1つの力を2つの力に分解できる。分け方は無数にあるが、1つ目の力を決めると、平行四辺形の法則により、もう一方の力は自動的に決まる。
{{-}}
==== 力のつりあい ====
ある物体に いくつかの力が 同時に はたらいていて、その合力が 0 のとき、「これらの力は'''つりあっている'''」とか「'''つりあい'''の状態である」などという。
===== 2力のつりあい =====
[[File:2力のつりあい.svg|thumb|500px|2力のつりあい]]
2力がつりあうためには、同一作用線上で、逆向きで、力の大きさが等しい、という3つの条件が必要である。
この3つの条件が成り立つ時、静止していた物体はそのまま静止し続け、運動していた物体はそのまま同じ速度で運動しつづける。
「逆向きで、力が等しい」という条件を式で書けば、
:<math> \vec {F _1} = - \vec{F _2} </math>
となる。
F<sub>2</sub>を移項すれば、
:<math> \vec {F _1} + \vec{F _2} = \vec{0}</math>
である。
※ 数学について<br />
<math> \vec{0} </math>
は 零ベクトル(ゼロベクトル) といい、大きさがゼロのベクトルのことであり、向きは無い。
===== 3力のつりあい =====
[[File:3力のつりあい.svg|thumb|400px|3力のつりあい]]
関係式
:<math> \vec {F_1} + \vec{F_2} + \vec{F_3} = \vec{0}</math>
が成り立つ。
x成分、y成分、それぞれ、次の関係式が成り立つ。
:<math> F_{1x} + F_{2x} + F_{3x} = 0</math>
:<math> F_{1y} + F_{2y} + F_{3y} = 0</math>
===== 作用・反作用の法則 =====
[[File:Spring of action-reaction-law.svg|thumb|300px|作用・反作用の例]]
人が ばね を引いているとき、同時に ばね も人を引いている。
このように、物体Aに物体Bが力を加えるとき、相手の物体Bからも物体Aに同じ大きさの力が及んでいる。
このように、物体はお互いに力を及ぼしあっている。また、その及ぼしあう2つの力の向きは、逆向きである。また、それぞれの力は、同じ作用線の上にある。
このようなお互いに及ぼしあう2つの力のうち、一方の力を'''作用'''(さよう、action)といい、もう一方の力を'''反作用'''(はんさよう、reaction)という。
たとえば物体Aから物体Bに及ぼす力を「作用」とすれば、物体Bから物体Aに及ぼす力は「反作用」になる。
:物体Aから物体Bに力Fを及ぼしているとき、同時に、物体Bからも、大きさの等しい力で、反対方向の力が、同一作用線上で、及んでいる。
これを '''作用反作用の法則''' (運動の第三法則)という。(高校生は、「作用反作用の法則が、第何番目だったか?」は覚えなくてよい。)
== 運動の法則 ==
=== 慣性の法則 ===
物体は外部から力が働かない限り、その速度を変えることはない。静止していた物体は、外部から力が働かない限り、静止し続ける。(自由落下運動に関しては、重力が働いているので、物体には外部から力が掛かっている。)静止している物体の速度は速度v=0だと考える
運動している物体は、外部から力が掛からない限り、その速度を保ち続ける。(摩擦による速さの低下に関しては、摩擦力が物体に生じているので、これは外部から力が働いてることになる。)
物体が静止していたにせよ、動いていたにせよ、どちらにせよ、物体は外部から力が働かない限り、その速度を変えることはない。
これを'''運動の第一法則'''という。
物体の運動の、このような性質を'''慣性'''(かんせい、inertia)と言うので、この法則は'''慣性の法則'''(law of inertia)という。
===運動方程式===
==== 理論 ====
:<math>
m \vec a = \vec F
</math>
を'''運動方程式'''(うんどう ほうていしき)といい、物体に加わる力と、その力のよって生じる加速度の関係は、運動方程式で表される。
なお、2つ以上の力が加わるときは、たとえば2つの力の場合は、
:<math>
m \vec a = \vec F_1 + \vec F_2
</math>
である。
本節の以降の文で、運動方程式を証明する。
一般に、静止している物体が動きだすには、力を受けることが必要なことが知られている。
[[File:台車模型を引く実験.svg|thumb|900px|center|台車模型を引く実験]]
{{-}}
実験をするには、たとえば図のように、台車を ばねばかり で、一定の力で引っ張れば良い。それを、自動記録紙で記録する。
<gallery widths=350px| heights=250px>
File:台車実験v-tグラフ.svg|台車実験の実験結果をv-tグラフ化したもの。(模式図)
File:台車実験a-mグラフ.svg|台車実験の実験結果をa-mグラフ化したもの。(模式図)
</gallery>
{{-}}
実験の結果によると、全ての物体は
ある一定の力<math>F</math>[N]を受けたとき、加速度<math>a</math>[m/s<sup>2</sup>]の大きさは、物体の受けた力に比例し、また、物体の持っている質量<math>m</math>[kg]に反比例をする。
この法則を式で表せば、比例係数をk<sub>1</sub>として、
:<math>\vec a=k_1 \frac{\vec F}{m}</math>
これを'''運動の第二法則'''である。
この第二法則を力を基準に書き換えれば、比例係数をk<sub>2</sub>として、
:<math>\vec F=k_2 m \vec a</math>
と表わせる。
ここで、比例係数k<sub>2</sub>の大きさが1になるように、力の定めた単位が力の単位の N('''ニュートン''')である。ニュートン単位の記号は N である。
1N (1ニュートン) の力の大きさの定義とは、質量1kgの物体に力を加えた時に、1m/s<sup>2</sup>の加速度を生じさせる力の大きさを 1N と定めている。
Nと、m(メートル)、kg(キログラム)、s(秒)との関係は、
:N = kg ・m/s<sup>2</sup>
である。
ニュートン単位を用いた力と質量と加速度との関係の方程式
:<math>
m \vec a = \vec F
</math>
を'''運動方程式'''(うんどうほうていしき、equation of motion)と言う。
複数の力が加わっている場合は、たとえば2つの力の加わる場合は、単に力を合成すればいいだけなので
:<math>
m \vec a = \vec F_1 + \vec F_2
</math>
となる。
* 例1
例えば、ある一定の力fを一様に受けている
質量mの物体は、運動方程式に従うと、
加速度
:<math>
\vec a = \frac {\vec f} {m}
</math>
の等加速度直線運動をする。
* 例2。 重力
ある質量 m 物質が、重力 mg を受けて自由落下する場合、その物質の運動方程式を表そう。
空気抵抗を無視すれば
:ma = mg
である。
よって、両辺からmを割れば、
:a=g
であり、質量によらず、つねに自由落下する物体は、重力加速度 g で等加速度運動することが分かる。
空気抵抗がある場合は、おもに物理 II の範囲なので、説明を省略する。空気抵抗の場合の計算も簡単なので高校2年程度でも可能だが、物理Iでは他にも単元があり、他に勉強しないといけないことが多くあるので、空気抵抗のある場合を、物理 II に回そう。
==== おもりの引き上げ ====
[[File:おもりの引き上げ.svg|thumb|300px|おもりの引き上げをする際の、力と加速度の仕組み。]]
右の図のように質量mの おもり を加速度aで引き上げる場合、運動方程式は
:ma=T-mg
となる。ただし、それぞれの代数の向きは右図のように取った。
:(※ 未記述)
{{clear}}
==== 例題: 定滑車をふくむ運動 ====
[[File:糸でつながれた2物体.svg|thumb|400px|糸でつながれた2物体]]
水平で滑らかな机の上に、質量 M[kg] の台車がある。その台車に ひも がつながれ、滑車を介して、ひも の先に質量 m[kg] の おもり が釣り下げられている。
この場合の、加速度の式を求めよ。なお、重力加速度を g とする。
また、ひも が台車を引く力の大きさを求めよ。
なお、たるんでいない、軽い ひも による力の性質として、ひも による力は、ひも の 両端で、同じであるという性質がある。
なので、台車を引っ張るひもの力の大きさが T ならば、おもりを引き上げる ひも の力の大きさも同じく T になる。
また、このTのような、ひも が何かを引っ張る力のことを'''張力'''(ちょうりょく)という。
'''解法'''<br />
[[File:糸でつながれた2物体 解法.svg|thumb|400px|糸でつながれた2物体 解法]]
運動方程式は、台車の式 と おもりの式 を、それぞれ別に、式を立てる。
まず、台車については、加速度の向きは、物体の動く右向きを正とする。
球については、鉛直下向きを正とする。
ひも が台車を引く力大きさを T とする。
台車の水平方向の運動方程式は
:<math> Ma=T </math>
台車の鉛直方向の力の影響については、机からの垂直抗力で打ち消されるため、無視できる。また、滑らかな机を考えているので、摩擦の影響も無視できる。
おもりの鉛直方向の運動方程式は
:<math> ma=mg-T </math>
では、加速度 a を先に求めるとする。そのためには、式を連立して、張力 Tを消去すればよいので、おもりの式の T に Ma を代入すれば、
:<math> ma=mg-Ma </math>
となる。
移項して加速度aについて、まとめて、
:<math> ma+Ma=(m+M)a=mg </math>
よって、
:<math> a= \frac{mg}{m+M} </math> (答え)
また、ひも が引く力の大きさ T (張力)は、先ほど求めた加速度の結果の式を、台車の式 <math> Ma=T </math> に代入すればよく、
代入すると、
:<math> T = M\frac{mg}{m+M} </math>
となる。
よって、
:<math> T = \frac{mMg}{m+M} </math> (答え)
である。
{{clear}}
==== 例題: アトウッドの器械 ====
[[File:アトウッドの器械.svg|thumb|300px|アトウッドの器械]]
右図のように、ひもの両端に、質量mと質量M( 仮定: 不等式 m<M が成り立つとする)のおもりを、滑車を介して、図のように釣り下げたとする。そして、手で、 おもり の両方を支えながら、静止させとするとする。
反動をつけず、ゆっくりと手を離したとする。
このときの加速度 a と、張力 T を求めよ。
*解法
右図での、左側のおもりの運動方程式は
:ma=Tーmg
である。
右図での、右側のおもりの運動方程式は、
:Ma=MgーT
である。
加速度aおよび張力Tを求めるには、この運動方程式の2式を連立して解けばよい。
*答え
:<math> a = \frac{M-m}{M+m} g</math>
:<math> T = \frac{2Mm}{M+m} g</math>
{{clear}}
== さまざまな力 ==
=== 摩擦力 ===
[[File:静止摩擦の初等力学.svg|thumb|400px|静止摩擦力と抗力<br />図の場合、押す力 f と静止摩擦力 F とは、つり合っている。また、重力 W と 垂直抗力 N とは、つり合っている。]]
摩擦力(まさつりょく、friction force)も、力の一種でありベクトルで表わされる。一般に、摩擦力には静止摩擦力と動摩擦力の2通りがあることが知られている。
==== 静止摩擦力 ====
静止している物体を動かし始めるのに必要な力を'''静止摩擦力'''(せいしまさつりょく、static friction force)という。
水平な机の上に置いた物を、水平方向に動かそうとして水平方向に引いてみても、加える力が小さいうちは、動かない。
同様に、机の上に置いた物を水平方向に押してみても、やはり加える力が小さい内は、動かない。
これは、摩擦力(まさつりょく)が、机の面と平行な方向の動きをさまたげようとして、加えた力とは反対向きに、摩擦力が働いていて、つり合っているからである。
物体を引いて動かそうとして力を加えているときは、引く向きとは逆向きに、摩擦力が働く。
同様に、物体を押して動かそうとしているときは、押す向きとは逆向きに、摩擦力が働く。
このように静止している物体に対して働く力を'''静止摩擦力'''(static friction force)という。
静止している物体を動かすには、摩擦のため、力が余計に必要になる。
加える力が大きくしていくと、そのうち、加えた力の大きさが、摩擦力をこえて、動き始める。つまり、ある物体の静止摩擦力には、大きさに上限がある。
物体が動き出す直前の摩擦力を'''最大摩擦力'''(さいだい まさつりょく、maximum functional force)という。静止摩擦力を F として、最大摩擦力を F<sub>0</sub> とすれば、これらの関係を式で表わすと、
:<math>F \leqq \mu _0 N</math>
となる。
最大摩擦力 F<sub>0</sub> の大きさは、物体と面とが、互いに垂直に押しあう力、つまり垂直抗力(すいちょく こうりょく) の大きさに比例する。垂直抗力の記号は N で書くのが普通である。
最大摩擦 F<sub>0</sub> と垂直抗力 N の関係を式で書くと、
:<math>F_0 = \mu _0 N</math>
となる。
<math>\mu</math>は比例係数であり、定数であり、'''静止摩擦係数'''(せいしまさつけいすう、coefficient of static friction)と言う。
静止摩擦係数は物質ごとに決まる定数であり、実験によると、物質と面のそれぞれの材質によって決まり、接触面積にはあまり関係しない。
摩擦係数は、例えばゴムでは非常に大きい。靴の滑り止めなどにゴム製の素材が使われる理由の一つは、このような理由である。また、スケートリンクの氷の上で物体を滑らせると、滑らせた物体が静止すること無くいつまでも滑り続けている様子が観察される。これは、氷は摩擦係数が小さいからである。
物体が載っている床に物体が沈まないためには、床が物体を押し返す必要があるので、このような床からの反発力を考える必要がある。
このような床から物体に掛かる力は、床からの'''抗力'''(こうりょく、reaction)と呼ばれる。床の面の接線方向に対して、抗力の方向が垂直なので、'''垂直抗力'''(すいちょく こうりょく)とよばれる。
===== 摩擦角 =====
[[File:摩擦角の模式図.svg|thumb|400px|摩擦角]]
ある板に物体を乗せ、この板ごと傾けると、ある傾きをこえた段階で、物体が滑り始める。このときの角度を'''摩擦角'''(まさつかく、friction angle)という。この摩擦角の大きさ
<math>\theta</math>
は、物体の重力 mg の、板と平行方向の分力 <math>mg \sin \theta </math> が、最大摩擦力 μN (=μmg cos''θ'' )を越えたときの角度である。
なお、物体の質量を m とした。また、静止摩擦係数を <math>\mu</math> とした。
なぜ、摩擦角の大きさがこうなるかというと、まず、物体は重力を受けて、鉛直下方向に mg の力を受ける。
このうち、この力は斜面方向に
:<math>mg\sin \theta</math>
であり、面に対して垂直な方向に
:<math>mg \cos \theta</math>
の大きさを持っている。このとき静止摩擦力の最大値は
:<math>F = \mu N = \mu mg \cos \theta</math>
となるので、斜面方向に働く重力 <math>mg\sin \theta</math> が、摩擦力 <math>= \mu mg \cos \theta</math> よりも大きいとき、この物体は動きだすことになる。
よって、このような <math>\theta</math> の条件は、
:<math>\sin \theta \ge \mu \cos \theta</math>
よって
:<math>\tan \theta \ge \mu</math>
となる。
なお、「tan」とは三角関数のタンジェントであり、<math>\tan \theta = \frac{\sin \theta}{\cos \theta}</math> で定義される。
このように、摩擦角の大きさは質量によらない。
==== 動摩擦力 ====
[[File:動摩擦の模式図.svg|thumb|400px|動摩擦]]
あらい面の上を滑っている物体にも、摩擦力が掛かるので、外部から力を加えないでいると、やがて止まってしまう。このように、すべっている物体にかかる摩擦力を '''動摩擦力'''(どうまさつりょく、kinetic friction force) と呼ぶ。
動摩擦力の大きさ <math>F '</math> は、垂直抗力(N)に比例する。
:<math>F_0 = \mu ' N</math>
この係数 <math>\mu '</math> を '''動摩擦係数'''(coefficient of kinetic friction) という。
<math>\mu '</math>は、おもに材質によって決まり、物体の滑る速度には、ほとんど依存しない。また、<math>\mu '</math>は、物体の接触面積には、ほとんど依存しない。
一般に、動摩擦係数の大きさは、静止摩擦係数よりも小さい。すなわち、
:<math>\mu ' < \mu _0 </math>
である。
[[File:引っ張る動摩擦.svg|thumb|left|400px|引く力の大きさによらず、動摩擦の大きさは一定である。]]
{{-}}
[[File:引く力と動摩擦.svg|thumb|right|400px|物体を引く力と、摩擦力との関係]]
あらい水平面上で、物体に糸をつけて、水平方向に引くする。引く力を大きくしていくと、引く力の大きさと、摩擦力の大きさの関係は、右の図のようになる。
{{-}}
*参考: 転がり摩擦 (※ 計算問題にしづらいため、入試では出題されにくい)
先ほどの節で学んだ、面上を滑る場合の摩擦力は、滑り摩擦(すべり まさつ)という種類の摩擦である。
一方、小球が転がったり、円筒が転がったりする場合の摩擦を、転がり摩擦(ころがり まさつ)という。(転がり摩擦も、検定教科書の範囲)
<gallery widths=150px heights=150px>
File:Ball bearing.jpg|ベアリング。玉軸受(たまじくうけ)。
ファイル:Angular-contact-ball-bearing single-row din628 type-b 120.png|玉軸受の断面
ファイル:Cylindrical-roller-bearing din5412-t1 type-n ex.png|ベアリング。ころ軸受(ころじくうけ)。
</gallery>
転がり摩擦力は、滑り摩擦力よりも、小さい。車輪やベアリング(軸受け)は、この転がり摩擦の原理を利用したものである。「軸受け」は「じくうけ」と読む。
高校の理科や、大学入試の理科では、転がり摩擦については、あまり扱わないので、普通科高校の読者はあまり転がり摩擦に深入りしないこと。
機械部品に使われているベアリングの場合、物体間に潤滑油(じゅんかつゆ)や、粘性(ねんせい)の高い油性のグリスを加えてあり、滑りやすくしているのが普通である。(※ 普通科高校の理科では範囲外だろう。普通科の生徒は、この文を気にしなくて良いだろう。)
{{-}}
*参考: ハイドロ プレーニング (※ 計算問題にしづらいため、入試では出題されにくい)
[[File:hydroplaning.svg|thumb|250px|left|ハイドロプレーニングが発生している状態の概念図]]
[[Image:Tire tread.jpg|thumb|right|250px|タイヤの溝]]
物体間に水や油などの液体があると、滑りやすくなる。雨の日の濡れた路面では、滑りやすくなる。人間も、雨の日の道路で滑りやすくなるが、自動車や自転車なども滑りやすくなる。
また、滑るため、ブレーキが効かなくなり、この現象をハイドロ プレーニングといい、とても危険である。
タイヤに溝があるのは、水を排出しやすくして、滑りにくくするためである。だが、それでも晴れの日の乾いた地面と比べれば、雨の日は滑りやすい。また、高速で走行すると排出が追い付かず、ハイドロプレーニングが起きやすくなる。なので、雨の日は、ゆっくり目に、車間距離を多めにして、安全に運転する必要がある。
{{-}}
* その他、自動車関連の摩擦の話題 (※ 計算問題にしづらいため、入試では出題されにくい)
市販の資料集を読むと、この他にも、自動車のブレーキと摩擦の関係、レーシングカーと垂直抗力の関係、自動車のABSの仕組みなど、いろいろな話題が書いてあったりする。(たとえば数研出版の資料集など) だが、始めて摩擦を習う諸君の場合、当面は、そこまで深入りしなくても良いだろう。実際に検定教科書や、多くの参考書でも、そこまでは説明されていないのが普通である。物理学的には、応用として興味深い話題だが、いかんせん読者の高校生には物理に使える学習時間が限られている。他の教科も勉強しなければならない。
=== 液体や気体に関する力 ===
==== 圧力 ====
[[File:Pressure schematic.svg|thumb|300px|圧力の説明図。スポンジの上にある おもり 。 <br />同じ重さの おもり でも、スポンジと接する部分の面積によって、めりこむ深さが違う。狭い面積で接するほど、その面積に重さの力が集中し、スポンジに深く、めりこむ。]]
'''圧力'''(あつりょく、pressure)とは、単位面積あたりに(たとえば 1m<sup>2</sup> あたりに)垂直に押す力の大きさである。体の一部分を指で押した場合と、とがった針のようなもので押した場合とでは、同じ力で押したとしても結果に違いが出る。前者では皮膚がへこむ程度で済むが、後者では皮膚が破れてしまうこともある。これは、後者の方が皮膚に働く圧力が強いことによる。
圧力は単位面積当たりに働く力のことであり、働く面積が小さいときには単位面積当たりに働く力は強くなる。そのため、鋭くとがった針に力をかけたときには、皮膚に対して強い圧力がかかったのである。
圧力の単位はN/m<sup>2</sup>(ニュートン毎平方メートル)である。これは、力の単位を(たとえば N ニュートン)、面積の単位で(たとえば m<sup>2</sup> で)割ったもので与えられる。このはN/m<sup>2</sup>の単位は、'''Pa'''('''パスカル''')と略される。「Pa」の 頭文字 P は、大文字で書くのが普通である。
[[File:山頂と海面の気圧.svg|thumb|500px|山頂と海面の気圧]]
大気中にある物質は、大気から圧力を受けている。この大気による圧力を'''大気圧'''(たいきあつ、atmospheric pressure)という。
大気にかぎらず、気体は、接する物質に圧力をおよぼす。気体による圧力を'''気圧'''(きあつ)という。
水中にある物質は、まわりの水から圧力を受けており、この水による圧力を'''水圧'''(すいあつ、fluid pressure)という。
この大気圧や水圧のように、液体や気体の中にある物質は、まわりにある液体または気体からの圧力を受ける。
液体や気体は、流れることができるので、液体と気体をまとめて'''流体'''(りゅうたい、fluid)ということもある。
*備考
大気圧について、1.013×10<sup>5</sup>Pa を、 1atmという。atmは「アトム」と読む。
また、ヘクトパスカル(hPa)を用いれば、 1.013×10<sup>5</sup>Pa = 1013hPa である。
hは10<sup>2</sup>を表す接頭辞(せっとうじ)である。
我々の住む地表は大気の海の海底にあると解釈することが出来て、我々自身も大気自身から強い圧力を受けている。このような圧力に耐えるため、我々の体は内側から大気圧とちょうど同じ程度の圧力になるように、大気圧を押し返している。このことによって大気圧に耐えることが出来ているのである。
このことはしかし、急激に回りの大気の圧力が下がったときに身体に変調をきたすことに通じてもいる。例としては、人間は生身で宇宙空間に出ることが出来ないことがあげられる。宇宙空間には酸素が無いことからヘルメットのようなものをつけて酸素を供給することが必要な事は確かである。しかし、宇宙空間のように極端に圧力が低いところでは、人間は、体に異常を感じると考えられる。そのため、全身を宇宙服でくまなく覆い身体の回りの圧力を地上での圧力と同じ程度に保つことが求められるのである。
==== 水圧と浮力 ====
===== 水圧 =====
[[File:Pressure distribution on an immersed cube.png|thumb|400px|水圧の説明図。水深が深くなるほど、比例して水圧が強くなる。水圧の方向は、物体の面に垂直方向に働く。]]
物体を水に沈めると、物体は水によって全体に圧力を受ける。このように水の中にある物体にかかる圧力を、'''水圧'''(fluid pressure)と呼ぶ。水圧は水の深さだけによって決まる性質があり、方向によらない。したがって、同じ深さでは、水圧の大きさは、どの方向でも同じである。また、水圧の大きさは、水の深さに比例する。
そして、水圧の力の大きさの値は、その上にある流体の重さによって決まる。その圧力の値は、流体の重さの作る力を、圧のかかる面積で割った値である。
水圧 p[Pa]の式は、つぎの式になる。
:<math>p = \rho g h</math>
なお、水圧を与える液体の密度を <math>\rho</math>[kg/m<sup>3</sup>] として、液体が存在する地点での重力加速度を <math>g</math> とした。
なぜこうなるかというと、深さ h[m] での力をF[N]とすると、
:<math>p=\frac{F}{S} = \frac{ \rho g h S}{S} = \rho g h</math>
(圧力の値は、流体の重さの作る力を、圧のかかる面積で割った値である。)
大気圧を考慮すると、大気圧をP0[Pa]とすれば、水圧p[Pa]は
:<math>p = \rho g h + p_0</math>
である。
*例
深海探査を行う船は、外壁に使う金属間の継ぎ目に大きな圧力がかかるため、その圧力に堪えられるだけの強度を持った細工をしないと、継ぎ目が砕けて船全体が水に浸かってしまう。
*例
空気圧も空気の深さだけによっている。そのため、高い山に登ることによって空気圧が低くなった情况を見ることが出来る。空気圧が低くなったことの代表的な現象として、袋詰めになっている食糧などがふくらんでしまうことがあげられる。これは、回りの空気圧が下がったのに対して、袋詰めになっているものの中の圧力は変化することが出来ないので、相対的に袋の中の圧力が外の圧力より高くなったことによる。また、高山では湯を沸かしたとき沸騰の温度が 100 <math>{}^\circ C</math> よりも低くなる現象も、空気圧が低くなっていることによる現象である。これは、物質の沸点がまわりの物質の圧力に依存していることによる。
===== 浮力 =====
[[File:浮力の式の求め方.svg|thumb|400px|浮力の式の求め方]]
水に軽い物体を沈めると、その物体はどこからか力を受けて水から浮き上がって来る。この力を'''浮力'''(ふりょく)と言う。
浮力は、物体の鉛直方向の上下面が液体から受ける、上向きの力と、下向きの力との差によって生じている。
水に浮かぶ物体が静止するときは、物体の重さと、浮力とが、釣り合っているときである。
[[Image:Principio di Archimede galleggiamento.png|thumb|水に浮かぶ物体は、物体の重さと浮力とが釣り合うときに、物体は静止する。<br>また、浮力の大きさは、水面から下で物体が排除した重さによる力の大きさに等しい。]]
液体中で静止している物体について、浮力の大きさの値は、水面から下にある物体体積が排除した重さによる力の大きさに等しい。これを'''アルキメデスの原理'''という。
よって、体積 V[m<sup>3</sup>] の物体にかかる、浮力 F[N] の大きさは
:<math>F = \rho V g </math>
である。
*証明
右図のような円柱状の物体が水中にあるとしよう。
そもそも、浮力の力は、物体の上下面の受ける、水圧による力(ちから)の差によるものである。
まず、水圧を求める必要があるので、上面および下面での水圧をそれぞれ求める。
大気圧を p0[Pa] とすれば、上面に掛かる水圧 p1[Pa]は、
:<math>p_1 = \rho g h_1 + p_0</math>
下面に掛かる水圧 p2[Pa]は
:<math>p_2 = \rho g h_2 = \rho g (h_1 + h) + p_0</math>
である。
水圧により、上面に掛かる力 F1[N] は、
:<math>F_1 = p_1 S = \rho g h_1 S + p_0 S</math>
である。
水圧により、下面に掛かる水圧 F2[N] は
:<math>F_2 = p_2 S = \rho g h_2 S = \rho g (h_1 + h) S + p_0 S</math>
である。
F1 と F2 は逆向きであり、F2 のほうが深い場所(h2 = h + h1 ) にあるので F1 よりも大きい。つまり、F1 > F2 である。
なので、差し引き、<math>F_2 - F_1</math> が、浮力として働く。
浮力を計算すると、
:<math>F_1 - F_2 = \{ \rho g h_1 S + p_0 S \} - \{ \rho g (h_1 + h) S + p_0 S \} = \rho g h S </math>
である。
よって、これまでの結果をまとめると、浮力 <math>F_2 - F_1</math> は
:<math>F_1 - F_2 = \rho g S h </math>
さて、体積 V は、
:<math>V=Sh </math>
である。これを浮力の式に代入して、
:<math>F_1 - F_2 = \rho g S h = \rho g V </math>
よって、物体にかかる浮力は、物体の体積に比例する。また、浮力が、液体の密度にも比例する。
これらの比例関係を合わせると、物体が受ける浮力は、物体が押しのけた液体の質量に比例することになる。
このとき、立方体に水圧によってかかる力は、物体の上の面より下の面の方がより深い位置にあることから、物体には上向きの力が働くことが予想される。このため、物体には上向きの力が働きこの力がちょうど浮力に対応するものになるのである。また、今のことから浮力は、物体の高さに比例する。また、圧力に圧力を受ける面の面積をかけたものが力によって生じる力になるので、浮力自身は物体が圧力を受ける面の面積にも比例する。さらに、より正確には物体にかかる浮力は物体が沈められている液体の密度にも比例することが知られている。そのため、これらを合わせると、物体が受ける浮力は物体が押しのけた液体の質量に比例することが分かるのである。
==== パスカルの原理 ====
[[File:Hydraulic Force svk.png|thumb|200px|ピストンの面積を変えると増力するのにつかうことができる。]]
:(※ 未記述)
{{-}}
[[カテゴリ:力学]]
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高等学校商業 経済活動と法/権利と義務
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2024-11-08T05:57:40Z
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text/x-wiki
== 権利と義務 ==
=== 権利と義務の意義 ===
民法第1条「私権は、公共の福祉に適合しなければならない。権利の行使及び義務の履行(りこう)は、信義に従い誠実に行わなければならない。権利の濫用は、これを許さない。」と定めている
=== 権利の限界 ===
'''権利の濫用'''
{{コラム|宇奈月温泉事件|
(※ 代表的な判例なので、覚えること。)
}}
== 権利・義務の主体と、権利能力 ==
=== 権利・義務の主体 ===
仮に、生き物でない石コロなどに、権利や義務を与えても、法律的になんの役立たない。つまり、石コロは、権利をもつ資格が無く、義務をおう資格も無い。
権利をもったり、義務を負ったりする資格をもつ者のことを、'''権利・義務の主体'''という。そして、権利・義務の主体になることのできる資格を'''権利能力'''という。
私たちのような実在の生きている人間の個人個人は、権利義務の主体になりうる。
私達のような実在の人間の他にも、会社や協同組合・学校などの組織も、権利・義務の主体になってもいい法律になっている。
一方、イヌやネコは権利能力をもてないし、権利・義務の主体にもなれない。(※参考文献: 実教出版『経済活動と法』、森島昭夫、平成25年検定版、15ページ傍注。 参考文献:有斐閣『民法 総則・物件 第5版』山野目章夫、2013年第5版2刷、28ページ。)
会社や協同組合などを、契約などの権利・義務の概念から見た場合、'''法人'''(ほうじん)という。
一方、生きている人間の個人個人のことを'''自然人'''(しぜんじん)という。
日本の民法で単に「人」と言った場合、自然人と法人との両方を含む場合もあるが、単に自然人のみを言う場合もあるので、どちらの意味で持ちているか注意が必要である。
外国人に対しても、権利能力は原則として平等に認められている。(民3 (2) )(←※民法第3条の2項めの事。このような場合、法学書では一般には 民3② のように書かれるが、Wikibooks当記事では、コンピューターによる文字化けのリスクのため、書き方を変えることにする。)(※ 外国人の権利能力についても検定教科書の範囲内。)
なお、法人には、選挙権や相続権は無い。(※ 石原豊昭『法律トラブルを解決するなら この一冊』、自由国民社、2013年 第3版、126ページ)選挙権を持てるのは自然人だけであり、さらに法律の定める有権者としての資格を満す必要がある。
== 自然人の権利能力 ==
自然人は、出生(しゅっしょう)したときに権利能力を取得する。(←民法3条より) つまり、自然人は、生まれたときから、権利能力を持っており、うまれたばかりの赤ちゃんでも権利能力を持っている。
このような決まりがあるため、赤ちゃんの父母が死んだ時、赤ちゃんは法の定めに従って財産を相続できる。
また、赤ちゃんでも、法律的には物を所有したり、財産を所有したり、土地を所有できる。
自然人の権利能力の取得時期を、「権利能力の'''始期'''(しき)」という。まとめると、自然人の権利能力の始期は、出生のときである。
そして、人(自然人)が死ぬと、その人の権利能力も無くなる。人の権利能力の終わりのとき('''終期'''(しゅうき) )は、その人の死亡のときである。
* 胎児の例外
胎児(たいじ)とは、まだ生まれる前の赤ちゃんで、母親のお腹の中にいる状態の赤ちゃんである。仮に父親が交通事故などで死んだ場合を考えると、もし原則どおりに権利能力の始期が出生からだとすると、胎児である赤ちゃんは、仮にのちに生きて生まれても、その赤ちゃんは父親の財産を相続できなくなってしまう。
そこで、例外的に胎児であっても、親の財産の相続に関しては、その胎児が後に(のちに)生きて生まれることを条件に、法律上では、胎児はすでに生きて生まれた人として扱う。(民886) 同様の理由で、損害賠償についても、胎児は、すでに生きて生まれた者として扱う。(民721)
まとめると、日本の民法など法律上では、胎児は、相続と損害賠償については、生きて生まれることを条件に、すでに生まれたものと見なしている。
* (※ 範囲外: )
刑法と民法とで、人の始期の決まりかたが違う。
== 失踪宣告 ==
長年、消息が途絶えていたり、長年の行方不明などで、生死がハッキリしない場合、このような状態を'''失踪'''(しっそう)という。一定の期間を越えた失踪は、すでに死んだものとして扱う。
もし、そういう制度が無いと、仮に、その行方不明者がお金の貸し借りをしていた場合、家族などは本人がいないため、それを解決できなくなるという恐れがある。
海難事故や戦災による失踪の場合、1年で死亡として扱う。なお、海難事故や戦災などによる、特に危険な出来事による失踪のことを'''特別失踪'''という。つまり、民法では、特別失踪は、1年間の生死不明で死亡として扱う。
いっぽう、それ以外の失踪(「'''普通失踪'''」という)の場合、7年間の生死不明で死亡として扱う。(民31)
これらの期間(普通失踪なら7年、特別失踪なら1年)の経過によって、家族などが家庭裁判所などに行方不明者の失踪宣告をしてもらう申し立てが可能になり、そして、行方不明者が法律上の死亡として扱われる。
そして、失踪宣告により、すでに死亡したと扱われるので、相続が始まる。
長年の行方不明だったために死亡として処理された者が、のちに生きて帰って来た場合、失踪宣告が取り消される。(民32) しかし、すでに相続によって財産が移動してしまった場合、もし家族が失踪者の生存を知らずに相続を行った場合(このような場合を「善意」の場合、などという)なら、移動してしまったぶんの財産を戻すことはできない。(※ 範囲外)(※ 参考文献: 有斐閣『基本民法 I』大村敦志、第3版、平成23年、183ページ.)
== 自然人の行為能力と制限行為能力者制度 ==
* [[高等学校商業 経済活動と法/自然人の行為能力と制限行為能力者制度]]
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[[カテゴリ:高等学校商業]]
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高等学校商業 経済活動と法/企業再編
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== 合併 ==
=== 合併とは ===
2つの会社がくっつつ契約をして、1つの会社になることを'''合併'''(がっぺい)という。(会社748) 合併には、'''吸収合併'''と'''新設合併'''がある。
吸収合併とは、例えばA社とB社が合併したら、A社が残り、B社は消滅し、B社の権利義務をA社が承継するという合併である。
つまり、片方の会社(仮にA社とする)を残して、もう片方の会社(仮にB社とする)を無くし、なくなったほうの会社(B社)の設備や人員や契約や権利や債務などを、残ったほうの会社(A社)が獲得する合併が、吸収合併である。
以前のB社の株主は、合併時に、そのぶんの株価に見合った対価の交付(A社の株の交付、または金銭の交付)を受ける。
いっぽう、新設合併とは、例えばA社とB社が合併させ、新しくC社を誕生させ、以前のA社の株主とB社の株主には、C社の株を交付する合併である。
実際の合併の多くでは、許認可などを得る手続きの簡易化のため、吸収合併が使われる事が多い。(参考文献: 実教出版の教科書。)(参考文献2: 有斐閣『会社法』、伊藤靖史ほか、第3版、)
さて、合併において、合併後も残るほうの会社を「存続会社」といい、いっぽう、法人格が消えるほうの会社を「消滅会社」という。
吸収合併では、たとえばA社がB社を吸収して合併したことによりA社が残ってB社が消滅したとしたら、つまりA社のほうが存続会社であり、B社は消滅会社である。
いっぽう、新設合併では、A社とB社が新設合併でC社を設立したら、つまりA社とB社の両方とも消滅会社である。
吸収合併でも新設合併でも、消滅会社にとっては会社は無くなるが、株主は対価の交付を受けるため、清算手続きは行われない。(※ 検定教科書の範囲内。東京法令の教科書。)
また、会社が合併する際には、両会社の株主に重大な影響を与えるので、原則として両社の株主総会での特別決議承認が必要である。(※ 検定教科書の範囲内。実教出版、東京法令の教科書の両方に記述あり。)(会社783、795、804)
もし合併が決まった際、合併に反対の少数株主は、自分の有する株式を公正な価格で買い取ってもらう事になり、このことを反対株主の'''買取請求権'''という。
※ 本節で言及する「合併」は、説明の簡単化のため、断りのないかぎり、株式会社どうしの合併とした。なお、会社の種類には株式会社のほかにも合名会社や合資会社などがある。
※ 3つ以上の会社が合併しても良いが、本節では説明の簡単化のため、断りのないかぎり、2社の会社が合併する事例に言及した。
=== 債権者保護手続き ===
ある会社に債権を持ってる債権者にとっては、その会社の合併が行われると、大きな影響を受ける。
そこで会社法では、合併を行おうとするさいに、債権者を保護するための様々な手続きを定めており、これを'''債権者保護手続き'''という。債権者保護手続きでは、まず合併のさいは、債権者に知らせるため、債権者に催告または1か月以上の公告をしなければならない事を定めており、債権者に異議を申せる機会を与えなければならない事を定めている。(会社789、799)
なお、公告は官報などで行う。
もし合併によって債権者の債権が失われて債権者に損失の生じる場合、または債権者に損失の生じる可能性の高い場合は、合併をする会社は債権者に弁済か担保提供などをしなければならない。
=== 合併を行う理由 ===
最近の合併は、主に次のような理由で行われる場合が多い。
:規模を拡大して会社を強くするため。
:または、倒産しそうな会社を救済するため。
== 分割 ==
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著作権法/概論
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:※ 本ページでは主に著作権法を説明するが、必要に応じて、特許権などの知的財産権も説明したり、あるいは不正競争防止法などの、関連する法律も説明する。
:※ 本書の記述では、体系的であることよりも、初学者にとっての好奇心や分かりやすさを目指すこととした。そのため、あまり体系的でなく、網羅的でもない。より専門的な記事を読むか、もしくは市販の専門書で、学習していただきたい。
== 参考文献 ==
本ページの執筆に際し、以下の参考文献を用いている。(まだ本ページは執筆中)
:有斐閣『標準 著作権法』高林龍、第2版、
:有斐閣『著作権法』中山信弘、第2版、
:有斐閣『知的財産権法概論』紋谷暢男、
:三省堂『現代法入門』、
:高校の情報科目の検定教科書など
== 総論 ==
'''著作権法'''により、著作権についての決まりが定められている。
著作権の対象は、おもに小説・音楽・絵画・映画などであり、書籍や新聞、書籍、音楽や絵画などでの作品などが対象だが、コンピュータのソフトウェアも著作物に含まれる。
さて、ひとくちに著作権法におけるルールを説明するにも、コンピュータソフトウェアと、それ以外(通常の小説、音楽、絵画、映画)とでは、大きく違う。
なので、本ページではとりあえず小説・音楽・絵画・映画の著作権法における保護について説明する。
さて、「1600年 関ヶ原の合戦」などのように単なる1個の事実を記した文章は、著作権の保護対象にならない。「2017年1月5日、天気は晴れ。」のような文章も、単なる出来事を記録したものであり、著作権の保護対象にはならない。著作権で保護されるためには、思想または感情を表現する事が必要である。なので、単なる出来事やデータの記述は、著作権の保護対象にならない。
著作権法では「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。 」(著作権法2条1項)と定めている。
なお、「1234年 関ヶ原の合戦」は事実でなく間違いであるが、当然、著作権では保護されない。なぜなら、思想や感情が表現されてないからである。
さて、たとい幼児の描いた絵画であっても、あるいはアマチュア作曲家の作曲した曲でも、著作権での保護対象になる。著作権法で要求される芸術性あるいは創作性とは、作家が芸術性や創作を目指したものであれば充分であり、けっして技巧のうまさは要求しない。けっして、その作品の価値が、えらい肩書きをもった芸術家に認められなくても、あるいは美大や音大や芸大の教授に作品価値を認められなくても、誰かが小説や絵画をつくりさえすれば、その作品は著作権の保護対象物である。
つまり、プロかアマチュアかに関係なく、芸術性・創作性のある著作物をつくれば、著作権の保護対象になる。著作者が、大人か子供かにも関係なく、芸術性・創作性のあるのある作品を作りさえすれば、著作権の保護対象になる。
つまり、ある著作物が、著作権法で保護されるためには、その著作物が、思想や感情を(小説や絵画などの)創作的手法で表現したものである事が必要である。だが、その思想や感情そのものの創作性は、いっさい要求されない。つまり、すでに充分に知られた思想であっても、それを(小説や絵画などの)創作的手法で表現さえしていれば、著作権法での保護に値する。
なお、美術思想や音楽思想などの思想(アイディア)そのものは、著作権では保護されない。著作権で保護されるのは、作品だけである。保護されうる作品は、必ずしも画集や音楽CDなどの物体の形でなくとも、構わない。演劇や歌謡の公演などであっても、それを作品として披露すれば著作権は発生し、著作権法によって保護される。
また、工業図面や企業の社内マニュアルは、著作権法では保護されない。それらを保護する法は、不正競争防止法などの、著作権法以外の法律である。営業秘密は、不正競争防止法により保護される。
そもそも工業図面や社内マニュアルは、思想や感情を表現したものではない。
:(※ 勉強法について:) けっして断片的に「工業図面や企業の社内マニュアルは、著作権法では保護されない」だけを単独で覚えるのではなく、「工業図面や社内マニュアルなどは、思想や感情を表現する目的のものではない。よって、著作権法では保護されない。なぜなら、著作権法で保護される著作物とは、思想や感情を表現している必要があるから」のように、関連づけて覚える事。
そもそも著作権法の第1条に、著作権法の目的とは、「文化の発展」に寄与する事が目的である、と定められている。
学術論文などの論文も、著作権による保護対象になる。ただし、学術的発見そのものは、著作権の保護対象ではない。学術的発見を文章でどう表現するかは、一般に、書き手ごとに千差万別である。なので、学術論文なども著作権の保護対象になるのである。
「1600年 関ヶ原の戦い」などの歴史的事実そのものは、著作権保護の対象ではないが、しかし歴史評論書や歴史教科書などは著作権保護の対象になる。なぜなら、ある歴史的な出来事について、どう評論するかは、一般に、千差万別であるため。
さて、他人の著作物の盗作には、著作権は発生しない。これは当然であろう。また、模倣にも、著作権は発生しない。つまり、あくまでも、少なくとも何らかの創作性が無いと、著作権は認められない。
また、ゴッホなどの絵画をそのまま正面から撮影した写真などは、誰が撮影しても同じような写真になるため、この場合は著作権の保護対象から外れる。写真そのものは著作権の保護対象になるが、しかし、絵画撮影の場合、このような場合は保護されない。
つまり、誰がつくっても同じような形態になるような作品は、著作権の保護対象から外れる。
さて、特許では、特許庁などの機関が審査して特許として承認されることで特許権が発生する。いっぽう、著作権は、そのような審査は無い。(無審査主義、無方式主義)
著作権は、その著作物を創作した時点で権利が発生し、その創作者じしんが著作者となり、創作者じしんが著作権者になる。
著作権は、登録を必要としない。たとい、なにかの機関(たとえば「著作権保護団体」のような団体名を名乗る機関)に作品を登録しなくても、作品を創作さえすれば、著作権は発生します。(※ 高校の検定教科書の範囲内。たとえば、数研出版『情報の科学』に、そのような記述あり。)
そもそも、ほぼ毎日、どこかで誰かが創作物を著作しているのに、いちいち著作物を行政機関などにより審査するのは、労力の無駄であり、税金の無駄でもあろう。もっとも、このような登録機関が無いために、古い映画などのように、複数人で作られた古い作品の著作者が誰なのかがハッキリしないので、メディア関連企業などがその作品を扱うさいに訴訟リスクがひそんでしまう問題もある。
著作権の保護期間は、日本では、原則として、公表後から著作者の'''死後50年'''まで、である。ただし映画は、公表後から著作者の死後70年まで、である。
なお、商人が自分の会社名・企業名などを占有する権利は、(著作権法の範囲ではなく、)会社法などで保護される権利である。(※ 参考文献: 有斐閣『商法総則・商行為法』大塚英明ほか。)(カッコ内の「著作権法の範囲ではなく、」はwikibooks利用者すじにくシチューの見解による補足。) 商品名やブランド名、などの権利は、商標法で保護される商標権の範囲である。
なお、企業名・会社名といった商号の権利は、「商号権」という。(商号権と商標権とは、異なる権利である。) 商号についての権利は、主に商法や会社法によって規定されているが、不正競争防止法も商号の保護に関係する。
商号権の発生の要件は、原則的に、法務局などへの登記によって発生する。(例外的に、未登記商号が保護される場合もあるが、本wikibooks教科書は著作権法の教科書なので、未登記商号の説明を省略する。) (登記された)商号権の保護期間は、法には定めがなく、商号の使用を続けているかぎり永久に使えるが、2年間使用していないと、登記を抹消される事がある。
さて、商品名などといった商標権の保護期間は、更新をすることによって、永久に使える。(※ 参考文献: 有斐閣『特許法入門』、島並良 ほか、7ページ。) もしブランド名の保護期間が有限だとすると、偽ブランド品をつくる企業が合法的に同じブランド名を名乗れてしまい、消費者は被害を受けてしまうだろう。なお、商標権の登録の届出先は、特許庁である。 (法務局ではない。)
== 言語の著作物 ==
:(10条1項1号)
著作権法では「小説、脚本、論文、講演その他」を言語の著作物とすると規定している。文字によって固定されている必要はなく、口述であっても、言語の著作物になる。
=== 新聞記事 ===
事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道は、著作権法の保護する「著作物」に該当しない、と規定されている。(著作10条の2)
ただし、この規定は、簡単な死亡記事(日時、死因、享年など)や人事異動など、誰が書いても同じ文体になってしまうような事実を書いただけの記事にのみ適用される、と考えられている。つまり、記者の個性が文体に入るような記事は、著作権で保護されるだろう。
そもそも、誰が書いても同じになるような出来事なら、創作性が否定されるのであり、そして、創作性が否定されているものを著作権法は保護しないのである、と考える事も可能である。(法学書でも、そういう考えを紹介している。)
== 「表現の自由」との兼ね合い ==
著作権法による規制は、創作者の著作権という権利を守るためとはいえ、創作者以外の他人に、真似(まね)とはいえ表現を禁止するものであるので、著作権法は「表現の自由」を規制するものでもある。「表現の自由」は,憲法でも想定されている理念でもある。
また、著作者は、引用などの例外を除けば、自分の創作物を、原則的に、他人に使わせないように独占できる。(排他的独占権)
もちろん、著作権法によって、けっして正当な言論活動や報道活動などが禁止されないように、著作権法による表現規制の要件として、たとい先の著作者の真似を禁止しても、かわりの表現方法がたくさんあるということ、のような要件が事実上はある。
つまり、その分野において、かわりの表現の「選択の幅」があることが、ほぼ事実上の要件となっているようだ。(※ 参考文献: 有斐閣『著作権法』中山信弘、第2版、65ページ)
そして、「創作性」とは、選択の幅が無数になる分野において、創作者が特定の表現をした場合に、その「創作性」が認められる、と一般的にみなされている。
そのため、歴史の年号や、簡単な死亡記事などのような、たんなる事実そのものは、著作権法では保護されない。もし、事実そのものを著作権で保護してしまうと、学問の自由などに対する、重大な侵害になってしまう。なので、たんなる事実そのものは、著作権法では保護されない、という側面もあるだろう。(※ 参考文献: 有斐閣『著作権法』中山信弘、第2版、47ページ)
さきほど、著作権はアイディアを保護しない、と述べたように、たとい他人のアイディアをつかっても、著作権法違反にはならない。
また、著作権法の対象では代わりの表現方法という選択の幅が無数にあるので、特許権の(最長の)保護期間20年よりも長く、著作権では50年という長い期間の保護がされる、とも考えることもできるだろう。(※ 参考文献: 有斐閣、高林龍、5ページ)
また、著作権法ではアイディアを保護しないことによって、「表現の自由」や「学問の自由」をけっして著作権法で禁止してしまわないように、防いでいるとも考えられる。(※ 参考文献: 有斐閣、中山信弘、57ページ)
== 美術の著作物 ==
著作権法では、著作権法で保護される「美術」の例としては、絵画・版画・彫刻が、例に挙げられている。(著作権法10条1項目4) だが、それ以外の美術的な著作物でも、実際に著作権が保護されている。具体例をあげれば、舞台装置、生け花、書(書道)、マンガなども、著作権が保護されている。建築物の形にも、それが美術的な目的で創作されたなら、著作権法の保護対象。
いっぽう、半導体チップの模様が、どんなに美しくても、著作権法の保護対象にならない。けっして美術的な目的で半導体チップの模様が生産されてはいないので、半導体チップの模様は著作権法の保護対象にならない。(※ 参考文献: 有斐閣『著作権法』中山信弘。)このように、どんなに美しかろうが、美術的な目的で制作されてないかぎり、著作権法の保護対象には、ならない。
== 建築の著作物 ==
土地に定着する工作物にも、創作性があれば著作権法の保護対象である。(民法学などに「土地の工作物」のような用語がある。)庭園は、工作物と見なせるので、建築物としての保護を与えられる。いっぽうで、庭園を美術と見なしてもよい。このように、美術と建築の境界が不明瞭な事例もある。(東京地決平15・6・11判時1840号・106項<ノグチ・ルーム事件>にて、庭園が建築物と認定されている。)
== 映画の著作物 ==
著作権の保護期間は、日本では、原則として、公表後から著作者の'''死後50年'''まで、である。ただし映画は、公表後から著作者の死後70年まで、である。
したがって、「映画」とは何かが、法的にも重要になる。
著作権法では、実は「映画」とは何かの定義が無い。(※ 参考文献: 有斐閣『標準 著作権法』、高林龍、第2版、60ページ) なので、映画館で見ないビデオ作品やビデオ録画映像やテレビ番組などは、はたして「映画」に入るのかどうか、実は、なやみどころであるようだ。とはいえ、判例や国際的な著作権動向などにより、市販されてるビデオ作品などは、たいてい「映画」と見なされるようである。たとえば参考文献『現代法入門』(三省堂)では、テレビの報道番組は、映画の著作物と見なされる、と紹介している。
いわゆる「アニメーション」も、著作権法でいう「映画」に含められる。一般にゲームソフトの映像部分も、著作権法でいう「映画」と見なされる。(※ 参考文献: 三省堂『現代法入門』)
防犯ビデオの映像のように、単にビデオカメラをどこかに固定して、そして単にビデオカメラに写る物を録画しただけの映像は、創作性が認められないため、著作権法では保護されない。
さて、映画では、誰が「著作者」なのだろうか。映画会社で製作している映画の場合なら、映画会社が著作権者である。(※ 参考文献: 有斐閣『標準 著作権法』、高林龍)
著作権法では、法人が著作権者になる事も認められている。(著作権法15条)法人が著作権者になっているという事を「法人著作」という。法人名義で公表されている著作物は、法人が著作権者になる。
著作権法16条では、映画の著作権者とは「映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者とする。」という規定がある。しかし、この条文だけでは、結局、誰が著作者なのかがハッキリしていない。
さらに、著作権法2条1項10号に「映画製作者」とは「映画の著作物の製作に発意と責任を有する者をいう」とあるが、結局、だれが映画製作者なのか、ハッキリしていない。だが一般的に、「映画製作者」とは、いわゆる「映画会社」の事だろうと見なされている。(※ 参考文献: 有斐閣『標準 著作権法』、高林龍)
なぜ、映画会社を著作権者にするかというと、一般的な理由としては、
:理由1: 映画の流通の際に、もし著作権者が多すぎると、著作権者の許可を取る手間が煩雑になり、流通を妨げる必要がある。なので、なるべく著作権者の数を少数にするのが望ましい。制作スタッフの人数は膨大であるので、制作スタッフ全員を著作権者とすると、権利処理が煩雑になる。
:理由2: ふつう、映画会社が、膨大な製作資金を提供しているので、映画会社に著作権の権利を認めるのが望ましいだろう。
このため、映画会社が著作権者の場合は、映画監督やプロデューサーは著作権者ではない。このような、映画会社を著作権者とする仕組みが、監督などに不利であるので、この仕組みに対する反対意見などの議論もある。
また、裁判判決の中には、監督名義が公表されている作品の場合には、たとい法人名義が公表されていても、映画会社ではなく監督が著作権者とされる、という判決もある。(※ 参考文献: 有斐閣『標準 著作権法』、高林龍)(<黒澤明DVD事件 第1審> 東京地判平成19・9・14判時1996・123 )この黒沢DVD事件では、映画会社名義と監督名義(黒澤明)の両方が公開されていた。
== プログラムの著作物 ==
著作権法で保護される「プログラム」とは、ソフトウェアのコード文の事である。「C言語」などの文法は、著作権法では保護されない。同様に、通信プロトコルなどのプロトコルも、著作権保護を受けない。プログラム言語(文法)、プロトコル、解法は、著作権保護の対象から外れる。
たとえばエアコンの温度調節プログラムには、物語性は無いが、しかし、このようなプログラムでも著作権が保護される。
ただし、ゲームソフトの物語文や映像の部分などは、通常の著作権が発生する。
なぜ、エアコンのプログラムなどのような物語文でもないプログラムが、著作権の対象にあってるかというと、通説では、アメリカ合衆国の圧力によって、日本の著作権法に含まれる事になったという説が一般的であり、法学書などでも、そう紹介されてる。
日本では昭和60年(1985年)の著作権法改正で、プログラムのコードを著作権保護の対象とする事になった。
昭和の当時の対案としては、著作権ではなく特許権で保護する案も日本の通産省などにあったようだが、どうやらアメリカ政府が、プログラムは著作権保護を原則とする事を要望してたようだ。
しかし、実際にこのようなプログラム著作権が運用されてくうちに、しだいに、当初に予想したよりも著作権ではプログラムの権利保護の効果が弱い、という事が分かってきた。
なにが分かってきたかというと、そもそも、著作権ではアイディアは保護されないという原則にもとづき、プログラム著作権でもアイディアはまったく保護されない。(※ 参考文献: 『ビジネス法務検定3級』、著:東京商工会議所、出版:中央経済社、)なので、たとい、どんなに画期的なアイディアがそのプログラムに使われても、そのアイディアはいっさい著作権保護の対象には、ならない。(しかし、プログラムを用いた発明の特許を特許法で保護する事は可能である。)
※ 発明のアイディアを保護するのは特許権や実用新案などであり、著作権ではない。
なので、エアコン制御などの技術的なプログラムの場合なら(ゲームソフトなど物語性のあるものは別)、他人のプログラムのアイディアだけを模倣して、プログラムを作成しなおせば、理論上は著作権侵害にならない(特許侵害などの可能性はありうるが)、・・・と考えられている。
結局、もはや著作権だけでは充分にプログラムをもちいた発明的なアイディアを保護できない事が21世紀の現代では分かっており、なので、特許権や不正競争防止法などを活用するによって、プログラムの発明を保護する必要がある事が分かっている。
※ 備考: なお海外の話題だが、1995年に締結したWTO(世界貿易機関)でもコンピュータプログラムを著作物として扱うことになった。(※ 参考文献: 清水書院『現代社会ライブラリーにようこそ! 2018-19』、2018年4月18日 初版、276ページ)
== 音楽の著作物 ==
:(10条1項2号)
音楽は、メロディ、リズムなどから構成される。音楽の著作物に、歌詞を含めることも可能である。
即興曲(アドリブ)も、音楽の著作物に含まれる。
歌詞だけを取り出せば、言語の著作物とみなす事も可能である。
== 著作権の制限 ==
=== 付随対象著作物の利用(30条の2) ===
自分の著作物を撮影しようとして、その際に、背景にある他人の著作物が写り込んでしまっても、どうしても写り込みをしてしまうような、しかたない場合であれば、著作権法では、そのような撮影は合法であるし、そうして撮影した写真やビデオをネットにアップロードする事も合法である。(※ 参考文献: 有斐閣『著作権法』、中山信弘)(※ 参考文献: 有斐閣『標準 著作権法』、高林龍)
平成24年(2012年)の著作権法改正で、このような規定が新設された。
ただし、合法となる場合とは、「写り込み」が、しかたない場合で、社会通念上、分離が困難な場合に限る。(分離困難性)
また、このような考えにもとづき、キャラクターの印刷されたTシャツ(たとえばミッキーマウスの印刷されたTシャツ)を着ている子供を親が撮影しても、著作権侵害にはならず、合法である。
== 引用 ==
報道や研究、批評などの目的があれば、他人の著作物を、適切な限度内で、自己の作品・著作物に取り込める。このような行為のことを「引用」(いんよう)という。
ただし、引用の要件の1つとして、出所の明示の義務がある。(著作権法48条)
また、原則として、改変をせずに引用しなければならない。例外的に翻訳の場合、改変が認められる。(43条)
さて、引用の要件の1つとして「公正な慣行」が定められている。
単に「慣行」なだけでは、合法な「引用」とは認められない。たとえば、仮に、ある業界で、ろくに出典を明記せずに他人の著作物を写して公開する事が横行していたとしら、まず、違法だと見なされるだろう。(なお、そもそも出所明示は法的義務である。(48条))
このように、引用では、けっして単なる「慣行」だけではなく、さらに「公正な」という条件が追加されている。では、何が「公正な慣行」なのかというと、結局、判例などにもとづく事になる。
また、引用が認められるには、一般的に、必要最小限のていどの引用である必要がある。引用の要件として「正当な範囲内」という要件が定められている。このため、書籍などの引用の際は、その書籍全体の引用をすることは許されないのが通常である。
しかし例外的に、俳句の1句ていどの場合、その句全体を引用する事は許される。俳句の一部分を取り出しても、作品としての意味をなさないからである。
引用は、かならずしも必要最低限でなくてもかまわない、とする判決がある。(<脱ゴーマニズム宣言事件>東京地判平11・8・31判時1702・145)原告の、引用は最小限とするべき、という主張をしりぞけた判決である。しかし学説では、この判決には批判的な意見もついており、けっして引用者が主観的に限度を設定できるわけではないだろう、という批判の学説もある。(※ 高林龍『標準 著作権法』(有斐閣)などで、そのような批判学説が紹介されている。)
== 美術の原作品の所有者の権利 ==
* 予備知識
美術の原作品を売買したり、写真の原作品を売買しても、あるいは売買でなく譲渡しても、著作権者は、原作品を創作した人物に著作権があるままである。
たとい、画廊などで展示しているような絵画作品の原作品の売買であっても、著作権者は創作した本人のままである。
* 本題
さて、著作権法25条による展示権の原則では、著作権者が展示権を有するが、しかし、原則どおりでは、原作品を購入するなどして適法に入手した者が、画廊で展示できなくなってしまう。
そこで例外的に、屋内での展示なら、著作権者の許可なくして展示できるというような規定が著作権法46条にある。しかし、屋外での展示には、著作権者の許諾が必要である。なお、このような許諾ない展示ができる場合の要件は、あくまで「原作品」であるのが要件である。
つまり、複製品は、第46条の範囲外。(※ 参考文献: 有斐閣『著作権法』、中山信弘)
なお、屋外の著作物については、一般公衆が写真を撮影したり写生するなどの利用をできる権利が、著作権法46条で認めらている。なので、著作権者がいったん屋外展示を許諾してしまうと、かなり広範な権利を一般公衆に与える事になる。
== 著作権と所有権 ==
著作権は、譲渡したり、相続することもできる。
著作権には、このような所有権のような性質もあるため、著作権法に関する法学では、必要に応じて所有権の考えが借用される。(※ 参考文献: 高林龍『標準 著作権法』、有斐閣、10ページ)
そして、所有権は物権であるので、つまり著作権法の法学では、必要に応じて物権の考えが借用される。(※ 参考文献: 高林龍)
また、著作権侵害に対する損害賠償についても、所有権や物権の考えが借用される。(※ 参考文献: 高林龍) そもそも、著作権法では損害賠償については規定されておらず、実務上は民法の不法行為(709条)の規定にしたがっている。(※ 参考文献: 有斐閣『著作権法』、中山信弘、第2版、627ページ)
== コンピュータ修理のための複製 ==
パソコンを修理業者に頼んで修理する際、修理業者は、いったんパソコン内のデータやプログラムを複製する必要がある可能性がありうる。
もし、パソコン内のデータやプログラムに他人の著作物があれば、修理業者は、その著作物を無断で複製する事になる。
コンピュータの修理のためなら、そのコンピュータ内の著作物を、修理のあいだ、一時的に複製する事は合法である。(著作47条の3)
著作権法では、原則的には他人の著作物は複製できないが、しかし例外的にいくつかの場合、複製が認められてる。
== 障害者福祉のための利用 ==
視覚障害者のために、著作物を点字化する場合がある。著作権法では、点字化は「複製」である、と扱われる。つまり、点字化をする行為には、創作性は無い、と扱われている。
:(※ 調査中) 著作権法第37条で、障害者の福祉利用の場合について、例外的な配慮が定められているようだ。 ※ しかし、私がまだ調査中。(詳しい人がいれば、ぜひWikibooksのこの教科書の執筆に協力ください。)
※ 私が何が分からないかというと、以下の点。
:<br /> 点字化による複製は合法らしい。まあ意図は分かる。しかし、それが脱法的な複製の抜け穴に使われないだろうか?というのが私の疑問。あるいは、目的外利用を禁じる規定でも、あるのだろうか?
聴覚障害者のために映像著作物などに手話を追加したりすることも、著作権法では「複製」として扱われる。
著作権法では、手話の追加についても、聴覚障害者のためとして、例外的な便宜がされている。
また、字幕の追加が、聴覚障害者のためとして、著作権法37条にて便宜がされている。2000年(平成21年)に、聴覚障害者のための字幕についての規定が著作権法に加わった。
----
:↑ ここまで、記述を書き換え済み。
:↓ まだ、書き換えてない。
----
== ※ 以降、まだ書き換えてない ==
公表後の、著作者の生存期間中は、当然、著作権は保護される。
:※ 著作物の発表後に著作者が長生きすると、たとえば、もし発表後に著作者が100年間生きた場合、著作権が切れるのは発表後から150年(=100+50)という計算になる。
また、著作権の一部は、財産的な権利であると見なされるので、他人に譲渡できるし、著作者の死後には相続もできる。
著作権が侵害された場合に、損害賠償を請求する事もできる。この事も、財産権が侵害された場合に損害賠償が請求できるのと同様の現象だと理解できるだろう。
* 著作者人格権
:公表権 - 著作物を公開するかどうかを、著作者じしんが決める権利。
:氏名保持権 - 公開するさいに自分の氏名を公表するかを、著作者じしんが決める権利。また、公開するさいに自分の名称(氏名やペンネームなど)をどう表記するかを決める権利。
:同一性保持権 - 著作物を許可なく改変されない権利。
* 著作権
* 著作隣接権
たとえば、音楽作品のレコード製作者やCD製作者などの、著作物を伝達する仕事の人にも、'''著作隣接権'''(ちょさく りんせつけん)という権利がある。
このため、たとえばベートーベンやバッハなどの、中世や近世のクラシック音楽を、現代の人が演奏したCDやレコードなどは、
たとえ作曲家がずっと昔に死んで著作権がきれていても、現代のCD製作者の著作隣接権は切れてないし、そのCDに演奏を提供した演奏者の著作隣接権もまだ切れていないのが普通なので、クラシックCDであっても、決してCD製作者などの権利者に無許可ではインターネット上に公開してはいけない。
:複製権(ふくせいけん) - 著作物を、著者などの権利者に無断で複製されない権利。
:上演権・演奏権・上映権 - 著作物を無断で上演・演奏・上映されない権利。
:口述権(こうじゅつけん)・展示権(てんじけん) - 著作物を無断で口述したり展示したりされない権利。
:頒布権(はんぷけん) - 著作物が映画の場合の権利で、著作物(映画)を無断で譲ったり貸したりされない権利。
:翻訳権(ほんやくけん)・翻案権(ほんあんけん) - 無断で翻訳、加工、編曲などされない権利。
:譲渡権(じょうとけん)・貸与権(たいよけん) - 無断で譲ったり貸与されたりしない権利。
=== 著作権について ===
=== 著作権 ===
人間がつくった文章や、人間がつくった音楽や歌詞、人間が描いた絵やアニメーション、人間が撮影した写真やテレビ映像や映画などの動画には、すべて'''著作権'''(ちょさくけん)があり、勝手に他人が公開してはいけません。
'''著作権法'''(ちょさくけんほう)という法律によって、著作権のありかたが決められています。
なお、著作権についての国際条約として'''ベルヌ条約'''があり、日本国もベルヌ条約に加盟しています。なので、日本の著作権は、ベルヌ条約などの著作権にかんする国際条約に、なるべく整合性をもつようになっています。
さて、著作権は、その作品をさいしょにつくった人に、権利があります。なので、たとい他人がつくった作品を書き写したりしても、著作権はさいしょにつくった人にあるままです。
さて、たとい お金を出してお店で買ったイラスト集や音楽CDや映画DVDなどでも、著作権のため、けっしてインターネットなどで公開してはいけません。
イラスト集や音楽CDなどを買ったときに購入品とともに付いてくる権利は、単に、その作品を自分が見てもいいという権利と、自分の家族などがその作品を見てもいいという権利だけなので、インターネットの第三者には勝手に作品を公開してはいけません。
著作権のある物を、著作者以外が許可なく利用することは、法律できびしく罰せられる場合があります。
インターネット上でデジタル化された文章や音楽や映像にも、著作権があります。
また、大人や子どもの区別なく、作品をつくれば、その作品についての著作者になります。たとえば、中学生でも、何か作品をつくって発表すれば、つくった作品についての著作権をもちます。
なお、写真を撮影した場合は、撮影した人のもつ著作権とは別に、撮影された被写体の人に肖像権(しょうぞうけん)があります。
* 範囲外
:※ じっさいには、衣服など工業製品の形にも、その形を考えた人の権利( 意匠権(「いしょうけん」と読む)など )があったりする場合があるのだが、かといって衣服を撮影できないと裸を撮影するハメになってしまうので、慣習では、衣服の場合は例外的に、人物の写真などを公開するという目的なら、インターネットにも公開しても良いという慣習になっている。
:また、他人の作品を公開するかどうかの有無にかかわらず、他人がつくった作品を「自分が作りました」という行為は、法律で罰せられる場合がある。
:※ 著作権は、作家のアイディアを直接には保護しません。(※ 参考文献: 有斐閣『知的財産権概論』、紋谷暢男、2012年第3版) 具体例を考えてみましょう、たとえば、アメリカのあるアニメ会社が「ネズミを主人公にしたアニメをつくったら面白いんじゃないか?」と思ったとして、そのアメリカの会社が実際にそういうアニメを作ったとしましょう。それに対して、数年後に日本のあるマンガ家が、「動物を主人公にしたマンガを書いたら面白いんじゃないか? そうだ、ライオンを主人公にしたマンガを書こう。」とか思って、そういうマンガを書いたとしましょう。一切、その日本のマンガ家の作品は、著作権を侵害した事になりません。
:※ 発明家のアイディアを保護する制度は、特許権や実用新案権の制度です。著作権は、アイディアを保護しません。
:※ (絵画を描いたり、作曲するなりして、)作品を創作すれば、たとい、その作品に大したアイディアが無くても、著作権によって保護されます。つまり、'''アイディアと著作性とは、切り離されています。'''
:※ ある著作物が、「著作権法によって保護されるべき」と見なされるには、要件として思想や感情が必要ですが、しかし、その思想や感情のアイディアの利用権は、著作権法では保護しません。
:※ ただし、'''間接的には、不正競争防止法などによって、商品のアイディアが守られる可能性があります。''' (※ 不正競争防止法については、情報科の検定教科書の範囲外。記述が見当たらない。ただし、公民科目の「政治経済」や「現代社会」のほうで、ひょっとしたら紹介されてる可能性はあるかも?) 芸術作品だって、それを販売したり商用利用すれば、りっぱな商品でしょう。不正競争防止法により、他社商品と類似しすぎている商品は、規制されます。この規制は、いわゆる「コピー商品」を規制する目的です。たとい模倣品が、完全に同じコピーでなくても、ほとんど同じ機能・形態なら、実質的なコピー商品だろうと見なされ、不正競争防止法などにより規制されます。不正競争防止法による「コピー商品」排除の保護期間は、元ネタの商品の販売開始日から3年間です。
== その他の権利 ==
自分の顔や すがた には'''肖像権'''(しょうぞうけん)があり、この肖像権によって、顔写真など(自分を特定できる写真)が無断で撮影されるのを拒否できたり、無断で似顔絵などを書かれるのを拒否できる。
肖像権は著作権ではない。また、肖像権についての法律による定めがない。
しかし、日本では、判例などによって肖像権が認められている。
== 引用や二次利用 ==
=== 引用のさいのルール ===
文章で書かれた書籍などの文章作品は、必要最低限なら、評論や紹介などの正当な目的なら、一定の条件を守れば、著作者の許可がなくても、自分の作品のいちぶに組み入れて発表できます。
このような、他人に著作物を、正当な手続きのうえで、著作者の許可なく、自分の著作物にとりこむ行為を'''引用'''(いんよう)といいます。
引用のさいには、つぎの事が必要になります。
:・ もとの著作物の題名および著作者の名称、出版社などを明示すること。出典(しゅってん)を明示するため。
:・ 引用された文章は、かぎ括弧(『』や「」など)を付けるなどして、引用された部分を、自分の著作した部分と区別できるようにすること。
:・ 必要最低限の量だけ、引用している事。
現代の慣習では、音楽や絵画などは、引用が認められていません。また、歌詞も、引用が認められていません。
なので引用をするさいは、書籍や新聞の、文章だけを引用するのが、安全でしょう。
* 出典の表示のしかた
:・ 書籍から引用する場合 - 最低でも、著者名、その出版物のタイトル、出版社名、出版年、引用ページ番号、を書くこと。(一般に書籍はページ量がとても多いので、どのページから引用したかを書かないと、第三者が確認するさいに手間が掛かってしまう。)
:・ インターネットから引用する場合 - 最低でも、URL、ページ名、確認した年月日、を書くこと。(引用後にページ内容が変更される場合があるので、ページをいつ確認したかを表示する必要がある。)
:・ 新聞から引用する場合 - 新聞社名、いつの日付の新聞か、朝刊や夕刊かの区別、などを表示する。
* 著者に連絡すべきかどうか?
引用のさい、著作者にも連絡して許可をもらったほうがいいか、それとも連絡しないべきかについては、議論があります。(※ 検定教科書でも、教科書出版社によって、意見が分かれている。)
「どの程度が『必要最低限』かどうかは人によって基準が異なるので、連絡したほうがイイ」という意見もあれば、「著作者への連絡によって、著作者は連絡に対応させられてしまうため、著作者に時間と手間をかけてしまう。なので、著作権法で『引用』として認められるていどの範囲であれば、無断で引用するべきだ」という意見もある。
=== 著作物の二次利用の許可 ===
[[File:Freedom mark.png|thumb|400px|自由利用マーク]]
著作者が、じぶんの作ったその著作物を、読者などの利用者が自由に利用してもいいと認める場合には、その意志を表示するためのマークがあります。
たとえば、文化庁のさだめた「自由利用マーク」があります。(※ 中学・高校の検定教科書の範囲内)
:※ もし、文化庁の「自由利用マーク」を実際に利用する場合には、文化庁のホームページに細かい決まりが書いてあるので、それを確認のこと。(中学の検定教科書でも、そういった感じのことを呼びかけている。)
:※ クリエイティブ・コモンズについては科目「社会と情報」の範囲外。科目「情報の科学」にてクリエイティブ・コモンズについて習う。
== フリーウェア、フリーコンテンツの著作権 ==
インターネット上では、著者みずからが無料で公開してるコンテンツ(小説、絵画、音楽などの作品)や、無料で使わせてくれるソフトウェアなどがあります。
このような、無料のソフトウェアを「フリーウェア」「フリーソフト」といいます。また、このような無料コンテンツを「フリーコンテンツ」といいます。あるいは単に「無料ソフト」「無料コンテンツ」などといいます。
これら無料のソフトウェアやコンテンツは、一般に、著作者は著作権を放棄していません。
ユーザが無料で出来ることは、あくまで、ユーザが個人で利用する範囲内です。
== ファイル共有ソフトと著作権侵害とウイルス ==
ファイル共有ソフトを導入したコンピュータどうしのネットワークでは、有料のソフトウェアや有料の動画や音楽などのコンテンツなどを不正コピーしたファイルが、無料で出回っていることがある。
このような、不正コピーは、著作権侵害行為であり、違法行為である。
なお、ファイル共有ソフト自体は、単にコンピュータどうしの送受信の手段のソフトであり、著作権侵害ではないし、違法ソフトでもない。)
しかし、ファイル共有ソフトのネットワークでは、ウイルスも多く出回っており、しかも、それらのウイルスが、アイコンを動画ファイルや音楽ファイルなどのアイコンに偽装している場合もある。
:※ 一般のネットワークと異なり、ファイル共有のネットワークには管理者などが居ないので、ウイルスなどが放置されやすい。
このような危険性もあるので、ファイル共有ソフトは、あまり用いないほうが安全である。
{{stub|law}}
[[Category:著作権法|かいろん]]
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有機化学/有機化学の化学結合
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[[File:Resonance CH3COO with valence electron.svg|thumb|600px|left|図1<br>酢酸イオンの共鳴]]
{{-}}
酢酸イオンが、なぜ、CH<sub>3</sub>COO で安定になるかというと、上記の図のように'''共鳴'''(きょうめい、resonance)してるから。
なお、説明の都合上、上記の図では、二つの状態のあいだを行ったり来たりしているかのように書いたが、しかし実際には、けっして図の左側の構造か右の構造かのどちらかではなく、どちらでもなく下図のように、重ね合わせたような構造になっている<ref>山口達明、『有機化学の理論 <<学生の疑問に答えるノート>>』、三共株式会社、2020年10月10日 第5版 第1刷発行、P33</ref>。つまり、けっして上記の図1の左右の状態のあいだを振動しているわけではない<ref>山口達明、『有機化学の理論 <<学生の疑問に答えるノート>>』、三共株式会社、2020年10月10日 第5版 第1刷発行、P33</ref>。
[[File:Resonance CH3COO delocalize.svg|thumb|300px|left|図2<br>酢酸イオンの共鳴<br />非局在]]
けっして「図1の右矢印と左矢印の反応が釣り合っている」といった状態ではなく、つまりたとえば当wiki『[[高等学校化学II/化学平衡]]』で習うようないわゆる平衡状態ではなく、そうではなくて、共鳴でとりうる状態とは最初から重ね合わせのような図2の別の状態だと言う意味である。
なお高校ではベンゼン環の共鳴を習うが、高校ではベンゼン環の共鳴に限ってだが、ベンゼン環の共鳴では単結合と二重結合のあいだの状態を取っているなどとサラっと説明されている。実は高校でされるこの説明は、かなり高度な考えなのである。
ややこしいことに、化学史ではベンゼン環の初期の研究者である化学者ケクレは、平衡状態のように解釈していたことが分かっている<ref>山口達明、『有機化学の理論 <<学生の疑問に答えるノート>>』、三共株式会社、2020年10月10日 第5版 第1刷発行、P33</ref>。だが現在の学会の定説では、平衡状態ではないというのが、共鳴の理論における定説である。
酢酸が水溶液中では、メチル基(CH<sub>3</sub>)の水素は電離せずに、カルボキシ基COOHのほうの水素が電離するのは、このような理由による。
{{-}}
[[File:Resonance CH3COO delocalize.svg|thumb|300px|left|酢酸イオンの共鳴<br />非局在<br>(再掲)]]
つまり、けして、どちらか片方の酸素イオンの周囲にだけに電子は局在していない。つまり、両方の酸素原子の周囲にわたって電子は存在している。このような状態を'''非局在化'''(delocalize)という。
なお、非局在化をあらわす矢印は、双頭の矢印 <math>\leftrightarrow</math> である。可逆反応ではないため、<math>\rightleftarrows</math> は用いない。
酢酸イオンのほか、ベンゼンでも共鳴構造が見られる。(※ ベンゼンの共鳴については、高校化学でも習う。)
本ページでは例として酢酸について記述したが、もちろん酢酸以外のカルボン酸でも同様に、共鳴の原理は成り立つ。
{{-}}
== 古典的な共鳴理論の限界 ==
=== 4員環や5員環など ===
上述のように、共鳴理論はベンゼンの六員環を説明できるが、四員環や五員環、八員環については十分に説明できない。
[[File:Cyclobutadien.svg|right|150px|thumb|シクロブタジエンの構造。不安定である。]]
[[File:Cyclooctatetraen.svg|right|150px|thumb|シクロオクタテトラエンの構造。不安定である。]]
結論として、共鳴二重結合を含む四員環は不安定であり、合成してもすぐに壊れてしまう。また、八員環も同様に、共鳴二重結合を含むものは不安定であり、合成後にすぐに壊れることが多い。
一方、五員環やその化合物(例えばチオフェン)は、安定的に存在することができる。
結局、共鳴理論だけでは実際の六員環の安定性を完全に説明することはできない。このように、共鳴理論には限界がある。一般に、実験科学における理論には適用限界があり、理論を実用に適用する際には、実例を把握して慎重に吟味する必要がある。
=== フェナントレンやアントラセンなど ===
[[File:Anthracene-numbering.svg|thumb|アントラセン]]
[[File:Phenanthrene (numbered).svg|thumb|フェナントレン(※書式は従来のロビンソン構造式)]]
ベンゼン環同士が結合した分子を見ると、その中に反応性の高い部分と低い部分が混在している場合がある。例えば、アントラセンはベンゼン環が3つ直線状に結合している形だが、中央の分子が特に反応しやすい(図の9位と10位)。
また、フェナントレンでは、曲がり角の部分が反応しやすい(図の9位と10位)。
このように、高校で習うような古典的なケクレの理論だけでは説明しにくい現象が存在する。
[[File:Clar structure anthracene.svg|thumb|クラール構造で書いたアントラセンの例<br>(記法が化学界で定まりきっておらず、文献によって記法が若干異なる)]]
[[File:Clar structure phenanthrene.svg|thumb|クラール構造で書いたフェナントレンの例]]
そのため、学者の中には、不安定な環に対して「ベンゼン環同士の結合の化合物の構造式では、環の内部に「〇」を書かないべきである」と主張する者もいる。一方、安定な環にだけ「〇」を書くべきだとする学者(例えばスコットランドの化学者 E. クラールなど)もいる。[参考文献: [細矢 治夫『化学 × 数学 「ベンゼンの亀の甲をあばく」』](http://www.takeda-foundation.jp/cafe/cafe_RepView.html?pmt=cafe_201201_pmt.html)] [参考文献: 細矢治夫『はじめての構造化学』、オーム社、平成25年6月25日 第1版 第1刷、184ページ]
従来のベンゼン環の内部に「〇」を書く方式での構造式の書き方は「ロビンソン構造式」と呼ばれる。一方、クラールの記法およびクラールから派生した記法は「クラール構造」と呼ばれる。[参考文献: 化学同人の『大学院 有機化学』(野依良治ほか編著)にクラール構造について書かれている。未購入のため、版やページの出典は未紹介。書店で立ち読みしただけ。値段が高い。]
なお、クラール構造は隣り合わないとされることがある(この定義は一部の文献で見られる)。そのため、ナフタレンのようにベンゼン環が2つだけの場合、片方だけに「〇」が書かれることがある。野依らの著書『大学院 有機化学』では、クラール構造の丸印の記法は破線による青色の丸印であることが多い(ロビンソン構造との区別のためかもしれないが、著者に確認したわけではない)。
{{stub}}
{{DEFAULTSORT:ゆうきかかくのかかくけつこう}}
[[category:有機化学]]
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中学校技術/マルチメディア関係の技術
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text/x-wiki
{{半保護S}}
== 版画 ==
*凸版(とっぱん)
*凹版(おうばん)
[[Image:Intaglio printing.png|thumb|凹版印刷のしくみ。版の凹んだ部分にインクをいれ、上から紙などを押し当てる]]
*平板
*孔板
== 書体 ==
=== 和文の書体 ===
* 明朝体
日本語の文字を描くときに使われる事の多い書体である。
(※ 範囲外) 小学校の教科書や中学の国語教科書など一部の教科書に使われている手書き風の書体は、一見すると明朝体っぽく見えますが、じつは違う書体の「教科書体」である場合があります。「教科書体」と言う、日本の教科書産業において普及している独自の書体が別に存在しています<ref>コンデックス情報研究所 編『いつの間に?!ココまで変わった学校の教科書』、成美堂出版、2019年 8月20日 発行、P197</ref>。教科書体と明朝体とを決して混同しないようにしましょう。なお、中学高校の一般の教科書にある明朝体っぽい書体は、実際に明朝体である場合が多いです<ref>コンデックス情報研究所 編『いつの間に?!ココまで変わった学校の教科書』、成美堂出版、2019年 8月20日 発行、P200</ref>。
:※ なお、教科書体を使いたい場合、Windowsなら既に Office 2021 に入っているので(「 UD デジタル教科書体」が入っている)、Office 2021 を持っているなら購入の必要は無い。
* ゴシック体
[[Image:Japanese gothic typeface comparison.svg|thumb|left|300px|日本におけるコンピュータ用ゴシック体の比較。MS ゴシック・MS P ゴシック(マイクロソフト)、 Osaka (Apple)、東風ゴシック (GNU/Linux)、ヒラギノ角ゴシック・ヒラギノ丸ゴシック・(大日本スクリーン製造)・小塚ゴシック (Adobe)]]
強調したい語句に使われる場合もある。(ゴシック体は、太さがほぼ一定であり、全体的にゴシック体は明朝体よりも太いと感じられる。なお、また、ゴシック体は明朝体とは書体が異なるので、周囲が明朝体の場合、ゴシック体があると明朝体と区別しやすい。)
:※ なお、パソコンの有料OS専用の書体は、そのOS購入者のみに利用を許している場合もある。具体例をあげると、windowsに付属する「MSゴシック」や「MS明朝」などは、けっして他人に配布してはならない。けっして、OSから書体のデータを抜き出して他人に書体データを配布してはならない。
:(※ 範囲外: )ちなみに、パソコン用語では書体のことをフ「ォント」という。
{{clear}}
* 勘亭流(かんていりゅう)
[[File:Kanteiryu sample.png|thumb|left|勘亭流の見本。「江戸文字」と書かれている。]]
{{clear}}
=== 欧文書体 ===
* ローマン
* イタリック
図のように、斜めっぽくになっている書体。
[[画像:TeTeX roman italic.png|400px|left|thumb|立体活字とイタリック体による "The five boxing wizards jump quickly." の例。図の上段に立体活字(立体)、下段にイタリック体を示す。]]
{{clear}}
*サンセリフ
<gallery widths=250px heights=100px>
Image:Serif and sans-serif 01.svg|サンセリフフォント
Image:Serif and sans-serif 02.svg|セリフフォント
Image:Serif and sans-serif 03.svg|セリフフォント(赤い部分がセリフ)
</gallery>
=== 書体の使用時の注意 ===
世間一般の書体の中には、有料の物もあるので、学校教科書で紹介されたフォント以外を使用する際には注意。
=== まとめ ===
上述の書体画像のように、印刷物などの文字では、すでに書体が用意されている。
また、印刷にかぎらず、コンピューター上での画像の制作などでも、画像中に文字が必要な場合、特に芸術的なコダワリがなければ、時間を節約のために、文字の制作は、すでにある書体で済ませよう。
画像ソフトなどでも、書体が利用できるものがあるので、そういうソフトを使えばよい。書体を使えば、いちいち手書きで文字を書かなくて済む。
:※ なお、パソコンの有料OS専用の書体は、そのOS購入者のみに利用を許している場合もあるので、けっして、OSから書体のデータを抜き出して他人に書体データを配布してはならない。つまり、windowsに付属する「MSゴシック」や「MS明朝」などは、けっして他人に配布してはならない。
なお、英語で、ゴシック体や明朝体などのような、印刷などで使われる書体のことを font (フォント)という。パソコンのワープロソフトなどで「フォント」の設定項目があれば、書体の設定のことである。
== 色 ==
=== 色の三要素 ===
[[File:色の三要素.svg|thumb|600px|明度・彩度・色相の説明図。]]
人間の目の色の感じる細胞には、三種類あるので、それに応じて、美術での色の感じ方も色を3種類に分解するのが一般である。
色の分解の仕方には、いくつかの種類がある。中学範囲を無視して代表的なものを紹介すると、
:* 明度(めいど、英:value バリュー)、彩度(さいど、英:chroma クロマ)、色相(しきそう、英:hue ヒュー)の3種類に分解する方式。
:* 赤・緑・青の三種類に分解する方式。いわゆる「RGB」(アールジービー)。レッド(red)・グリーン(green)・ブルー(blue)の略。家電の映像ディスプレイなどでの発色に用いられることが多い。
:* 赤・黄色・青の三種類に分解する方式。いわゆるCMY(シーエムワイ)。シアン(Cyan、水色)、マゼンタ(Magenta、赤紫)、イエロー(Yellow、黄色)の略。カラー印刷などでは、CMYに黒(blac'''k''')を加えたCMYK(シーエムワイケー)が用いられている。
などがある。
中学校・高校の美術では、「色の三要素」と言ったら、普通は、明度(めいど)・彩度(さいど)・色相(しきそう)の3つのことを言う。
明度(めいど)というのは、「白っぽいか、それとも灰色っぽいか、それとも黒っぽいか?」という事である。
「赤っぽさ」とか「黄色っぽさ」とか白黒灰以外の要素は、明度には含まないない。
<gallery widths=200px heights=200px>
Image:Munsell Color.jpg|典型的な色空間。色相、明度、彩度からなる。中心軸(無彩色)からの距離が彩度。
Image:Saturation.gif|色空間の横断面。中心からの距離が彩度。
</gallery>
※ 読者は、これらの話題は「美術の話題では?」と思うかもしれないが、じつは画像処理ソフトなどを扱うとき、色の加工や調整などを行う際、これらの知識が必要になる場合がある。また、テレビモニターなどの画質調整などをする際に、必要になることがありうる知識でもある。
* 色相環(しきそうかん、hue circle、)
<gallery widths=200px heights=200px>
ファイル:HLSColorSpace.png|色相環
ファイル:MunsellColorCircle.png|色相環
</gallery>
=== 三原色 ===
* 減法混色 (げんぽうこんしょく、subtractive color)
[[ファイル:Synthese-.svg|left|thumb|減法混合。原色のうち、シアンとマゼンタはそれぞれ青と赤とも呼ばれることもある。]]
赤(正確にはマゼンダ)・黄色(イエロ-)・青(正確にはシアン)の三種類に分解する方式。
印刷物の色を分解するときに用いることが多い方式。
絵の具を混ぜるとき、赤色の絵の具、黄色の絵の具、青色の絵の具の三色をまぜると、黒色になるという事実にもとづく。
※ 絵の具は工業製品である。中学では「美術」教科で扱うの内容だが、技術を学ぶなら、中学でならう混色の原理くらい理解しておこう。
{{clear}}
* 加法混色(Additive color)
[[ファイル:AdditiveColorMixing.svg|thumb|180px|left|加法混合]]
色を赤・緑・青の三種類に分解する方式。
光の色を分解するときに用いる事が多い。複数の光を重ねるとき、赤の光と、緑の光と、青の光とをまぜると、白色の光になるからである。
{{clear}}
=== 色の対比 ===
* 明度対比
* 彩度対比
* 色相対比
{{clear}}
== バリア・フリー ==
* ピクトグラム
<gallery widths=150px heights=150px>
ファイル:Wheelchair_symbol.svg|車椅子マーク
ファイル:PublicInformationSymbol EmergencyExit.svg|非常口マーク
</gallery>
* ユニバーサル・デザイン(Universal Design、UD)
世の中には身体や健康に障害を持った人がいます。なるべく、そういった障害のある人でも鑑賞しやすいように作品をつくるべきです。
== アニメーションの原理 ==
そもそもテレビなどで見られる動居ているように見える映像の原理は、静止画像を瞬時に切り替えて、動いているように見せているだけである。
絵が動いているようにみえる「アニメ」も、絵を瞬時に切りかえているだけである。
詳しくは美術で説明している。(『[[中学校美術/美術1#アニメーションの原理]]』で詳しく説明した。)
== カメラ・写真の技法 ==
=== レンズの焦点距離による違い ===
:※ 中学では「美術」で習うが、技術者志望だったらレンズの広角・望遠の種類くらい知っとけ。だいたい、製造業でも工場内の様子の写真とか撮影することあるわ。まさか、オマエさん、工場内の撮影の際に、いちいち外部からカメラマンを呼ぶつもりでもあるまい。
* 広角(こうかく、wide angle)
焦点距離が近く、広い範囲の角度を写せる。
* 望遠 (telephoto)
焦点距離が長く、遠くを写すのに適する。
広角レンズと望遠レンズは異なる形状のため、同じレンズでは両方は撮影できないのが普通。
{| class="wikitable" style="width: 60%; margin-left: 20px"
|+'''焦点距離別の被写界深度の比較(F値=5.6)'''
|-
| style="padding: 10px" | [[File:Portrait24mm5 6.jpg|150x97px]]<br />'''広角レンズ'''<br />24mm(35mm判)<br />対角線画角84°
| style="padding: 10px" | [[File:Portrait50mm5 6.jpg|150x97px]]<br />標準レンズ<br />50mm(35mm判)<br />対角線画角46°
| style="padding: 10px" | [[File:Portrait100mm5 6.jpg|150x97px]]<br />中望遠レンズ<br />100mm(35mm判)<br />対角線画角24°
|-
| colspan="3" |橋の欄干やその影に注目すると、24mmではかなり奥まで合焦しているように感じられる。50mmでは橋の中ほどより先ではボケている。100mmでは欄干はボケている。なお作例では、被写体(人物)の大きさを一定にしようと撮影しているため、カメラから被写体までの距離(ピント位置)は異なる。
|}
== 動画の作成 ==
:※ 文科省の YouTube 動画教材で、マルメディア制作の教育そのものズバリな教材があるので、それを視聴してください。[https://www.youtube.com/watch?v=QUsgNJ-gN9w リンク:文部科学省/mextchannel『【情報Ⅰ】コミュニケーションと情報デザイン(4)「デジタル化の現場で学ぶ!マルチメディア作品の作り方!」 ] ,2023年10月4日に確認.
現代では、パソコンで低価格で動画を編集できる。けっして、テープやフィルムを使わないでも、動画を撮影したり、編集することができる。
ただし、撮影にはデジタルビデオカメラが必要だし、編集にはビデオ編集ソフトなどのソフトウェアが必要になる。
さて、Windowsを出しているマイクロソフト社から、かつてWindowsムービーメーカーというビデオ編集ソフトが出ていたが、しかし、マイクロソフトはムービーメーカーのサポート(不具合対応などのこと)を終了した。マイクロソフト公式サイトでは、もうムービーメーカーを配布してない。
このため、教育現場などでの利用は、不安がある。
ただし、windows11から、別の動画編集ソフト Microsoft Clipchamp (クリップチャンプ)が追加され、現在は windows11 ユーザーなら無料で使える。(だが、教育現場ではまだwindows11が普及してないだろう(2023年の時点))
ほか、他社から出ている動画編集ソフトで、数千円~1万円ていどで、安価な動画編集ソフトがある。
無料でも動画編集ソフトがあるが、しかしサポートなどは無く、バグなどのトラブル解決は自己責任である。
;撮影
説明の簡単化のため、まず実写ビデオ映像の撮影を例にあげる。
まず、デジタル編集をするので、撮影にもデジタルビデオカメラを使う。
なお、実写ビデオの撮影の場合、映像だけでなく音声も同時に収録することになる。一般的なビデオカメラには録音用マイクが内蔵されているので、中学生レベルなら、わざわざマイクを買う必要は無い。(※ 仮にマイクだけを高品質品に買い換えても、ビデオ映像の画質が普通なので、高品質の録音は無駄になる。テレビ局などで使う業務用のビデオカメラ用マイクは正しく扱えれば高音質だが、しかし取り扱いには、かなりの専門知識が必要なので、中学生では使えこなせず、無駄になるので、本章では説明を省略する。)
:※ 教育図書(教科書会社のひとつ)の教科書では、カメラ用の安価な外づけマイクの存在を説明している。
ともかく、映像の撮影とともに録音をするので、映画など映像作品の撮影時には、余計な音を立てないように、気をつけること。(ただし、運動会とか楽しむ学校行事の撮影などは別です。)
映画の撮影の場合、たとえ騒音などで録音に失敗しただけでも、役者の動きごと、取り直すハメになってしまう場合も多い。
一応、実写ビデオ映像に、あとから音声だけ録音しなおして追加する「アテレコ」という手法(映像業界の用語で「当ててレコーディング」のこと)もあるが、手間がかなり増えるのと、役者にアテレコの特殊技能が必要になるので、なるべくビデオ撮影時に録音も成功させたほうが早い。
[[File:Slik pro 700DX 02.jpg|250px|thumb|right|カメラ用の三脚。(ビデオ用かどうかは不明)]]
さて、ビデオ作品の撮影中は、カメラを固定させる必要のある場合も多く、その場合には三脚(さんきゃく)を使う。
撮影したビデオのファイルの保存は、最終的に、MPEG(エムペグ)形式やAVI(エーブイアイ)形式など、パソコンで扱える形式で保存することになる。(もし、最初からMPEG形式またはAVI形式で保存できるなら、ファイル形式には、それを選ぶ。)
:※ 高校レベルだけど、インターネットの動画によく使われてるのは MPEG4 である(※ 数研出版『情報I』)。mpeg2はDVDのやつなので、少し違う。なお、「MPEG」の4文字は Moving Picture Exports Group の略(※高校の実教出版、日本文教出版の教科書に英訳がある)。
;音声の編集
なお、Windowsの場合、録音アプリケーションの『サウンド レコーダー』が無料で付属している(Windows7で確認)。ちょっとした録音だけなら、このアプリだけで充分である。
ただし、マイクが無いと録音できない。一般的なビデオカメラには、内蔵マイクがついている。撮影と同時に、マイクで録音できるだろう。
これとは別に、ビデオカメラ専用マイクを取り付ける方法もあるが、専門的なので省略する。
音声の編集では、音声の編集機能のあるソフトを使い、余計な音をカットすることができる。画面には、音声とともに音量の波形の変化が表示されるので、波形を見ながら判断して、不要な音をカットしたり、音量を調節できる。
音声ファイルどうしを合成したり、切り貼りしたりもできる。
:※ もし、もっと画質・音質の良い撮影をしたい場合、上記では説明してない機器がいくつも追加で必要になる。さらに、専門知識も、上述では説明してない多くの知識が必要になる。なので実務では、もし学校が実際に学校行事などを撮影して記録映像として残す場合には、プロの撮影業者に外注する場合もある。
:事実、卒業アルバム写真などの写真撮影などではプロのカメラマンに依頼するのと同様、各種の学校行事のビデオ撮影でもプロに依頼することもある。
;創作物では絵コンテが必要
単に事実を記録するだけなら、絵コンテは不要です。
しかし、なにか物語のような創作物を芝居(しばい)などで演じたりして動画にする場合には、絵コンテが必要です。創作物の動画にする場合には、事前に絵コンテを作成しておきましょう。(※ 検定教科書でも、教育図書の教科書で、絵コンテが必要だと説明している。)
また、シナリオについても、事前に作成しておきましょう。
:(※ 範囲外)実写や演劇の絵コンテの場合、写実的に描く必要も無いし、芸術的に描く必要もないし、マンガ的・アニメ的に描く必要もありません。役者やカメラマンなどがどう動けばいいかが分かるように、絵コンテを書けばいいのです。たとえば絵コンテのなかの人物の目を書く場合は、キティちゃんみたいな、少し大きめの点の目でも構いません。それでも役者とカメラマンに動きが分かるからです。耳も書く必要が無かったりします。顔の絵は丸で済むことも多いからか、こういう絵コンテの書き方を「丸チョン」(まるちょん)とか俗(ぞく)に言います。
:必要ならコンテ中に文章で「背を向ける」「歩き出る」とか書いてもいいくらいです。絵と文字で、撮影スタッフに指示が伝わればいいのです<ref>小島真也 著『動画制作の教科書 企画づくりから撮影技術の基礎、編集と公開まで』、技術評論社、P.40</ref>。
:画面の中で、どのくらいの大きさを被写体が占めるかとか、そういうのを絵で具体的に指定します。
:なお、これは(画面中の被写体の大きさのこと)、アニメの絵コンテでも同じように要求されることです。
;手書きアニメ
なお、手書きのアニメを作りたい場合、現在ではコンピュータ上で編集するのが、アニメ産業での実務でも通例である。(昔は「セル」といわれる透明なプラスチックにアニメ専用の絵の具を塗る「セル画」(セルが)を使っていたが、しかし、絵の具の乾燥の待ちや、物量がかさばるなど、手間が掛かるし、保管場所も必要になってしまうので、もう現代のアニメ産業ではセル画は使わないのが通例。)
:(範囲外: )ただしアニメ用語としては「セル」という用語が残っており、画像ソフトなどでいう「レイヤー」のような意味に相当する。しかし物理的なプラスチックセルはもう使われていないのが普通。
アニメ専用のソフトウェアもあるが、専門的なので説明を省略。(いちおう東京書籍の検定教科書には「アニメーション作成ソフトウェア」の画面の例が掲載されている。)
:(※ もし情報が必要ならウィキペディア『[[w:2Dアニメーション制作ソフト一覧]]』などを参照せよ。)
{{コラム|(※ 範囲外) 個人製作アニメ用の絵の調達の方法|
[[Image:Pen Tablet.jpg|thumb|200px|ペンタブレット]]
(検定教科書では説明してないが、)そもそも、アニメ用の静止画の絵をどうやって用意するかというと、個人製作の場合、
# 自分で紙にエンピツで線画を描いて、
# スキャナーなどでパソコンに読み込み、線画を下書きにして、パソコン上で画像制作ソフトなどで、(色をぬれるようにするため、)輪郭線を描く。なおマウスだと作業しづらいので、パソコンで絵を描くための専用のデジタル式ペンが市販されている(「ペン タブレット」という)。
# パソコン上で色を塗る、などの追加作業をする。色を塗る際、塗りつぶし機能(いわゆる「バケツ」機能)を使って色を塗る。
こうして絵をパソコン上で何枚も用意していき、今度はアニメ編集ソフトで、その絵を読み込んでいくわけである。
:※ アニメ産業では、業務用の機械で、紙に書いた線画から直接的にスキャンしてアニメ用の線画データを作成する業務用機械があるが、しかし一般の家電屋では入手できないのと、使いこなすのに高度な技能とほかの設備(トレス台(トレスだい)など)が必要である。なので、一般人は市販のスキャナーなどでスキャンしてからパソコン上で輪郭線を入力したほうが早い。
:※ ペンタブレットが無くても、マウスでも清書できるように、いくつかの画像処理ソフトには「パス」という機械的に曲線を描く機能も用意されている(しかし、Windows『ペイント』アプリにはパス機能は無い)。 無料の画像処理ソフトで『GIMP』(ギンプ)というソフトがあって、GIMPにパスの機能があるが、しかしGIMPの操作がとても複雑なので中学生は勉強しなくていい。「パス」という概念さえ知ってればいい。
:※ パソコン上で清書するさい、後述する「レイヤー」機能を使うと、作業しやすい。「下書きレイヤー」と「清書レイヤー」を用意し、スキャンした下書き画像を「下書きレイヤー」にして、その下書きレイヤーの濃さを下げて、その上に「清書レイヤー」を重ね、その清書レイヤーにマウスやペンタブレットで画像をい入力していくという手法がある。
}}
一般に、アニメづくりで必要になる絵の枚数について、コンピュータで動画を表示する場合に、人間の目で「滑らかに動いてる」ように感じさせるために必要な絵の枚数は、1秒あたり、30枚ほど必要である(※ 東京書籍の教科書で、1秒あたり30枚と書かれている)。
つまり、単純計算で、1分あたり1800枚が必要になる。(実際のアニメ産業では、たとえば会話シーンなら、絵の口の部分だけ動かしたりするなどして、同じシーンでの口以外の残りの部分の絵は使いまわしをするなどして、絵の枚数を減らすことによって労力を減らすのが普通。)
また、アニメでは、背景の絵の階層(レイヤー)と、人物の絵の階層(レイヤー)というように、動きのまとまりごとに絵を分けることができる。そして、背景のレイヤーの上に、人物のレイヤーを合成表示することができる。(※ 東京書籍の検定教科書に、背景レイヤーの存在が書いてある。)
このようにアニメ編集ソフトでは、レイヤーを合成表示できるようになっている。
(検定教科書では書かれてないが、)口なしの顔の絵の階層(「レイヤー」という)の上に、口の絵の階層(レイヤー)を重ねられるようになっている。 (※ 顔と口パクの例は、wikibooksのオリジナル。)
:(※ アニメ編集ソフトにかぎらず、画像編集ソフトやアニメ風イラスト作成ソフトなどにも、レイヤーの合成表示の機能がついていることが多い。なお、Windows7に付属してくる『ペイント』アプリには、レイヤーの機能は無い。
:無料ソフトで画像製作ソフトなどで、レイヤー機能のあるアプリがいくつか存在している。もし将来、レイヤーの使い方について勉強したければ、それらの無料ソフトを使えばいい(わざわざ高額な商品を買う必要は無い)。)
絵とは別に音声も必要である。キャラクターの声の調達では、人間の声を録音すればいい。
個人制作のアニメの録音では、マイクなどを使って、サウンド編集ソフトを使いながら録音することになる。
::(アニメ産業などでは、別々の企業として、絵を描く人(アニメーターという)と、録音の技術者と、音楽担当や、声の俳優などが別々の企業に別れているが、しかし、個人製作では外注は費用的に困難である。個人製作では、自分で絵を描いたり、録音とかをしたりすることになるだろう。)
::アニメ編集ソフトだけがあっても、アニメは作れない。絵を描いたり録音したりとかは、自分で手や足や口を動かさなければならない。
個人製作のアニメの音声の録音では、マイクが必要なので、あらかじめパソコン用で録音用のマイクを購入しておく必要があるだろう。(※ パソコン用の録音マイクは家電量販店で数千円~1万円くらいで販売されている。)(録音用のマイクを買うこと。けっして、まちがえてカラオケ用やスピーカー用のマイクを買わないように。)
{{コラム|(※ 範囲外) 個人製作アニメ用のマイク選びの予備知識|
:※ パソコン用マイクや録音マイクにも種類があるが、専門的な話題になるので、おおよその説明だけをする。とりあえず、どのパソコンにも接続できる形式の安め(数千円ていど)のマイクを買ってみて、問題点があれば、より高いマイクを買うことになるだろう。現在では、ネット通話などのためのパソコン用の録音マイクが、数千円で家電量販店で購入できるハズ。
:※ マイクの種類はかなり専門的な話題になり、パソコン接続用の録音マイク以外にも、テレビ局・ラジオ局やミュージック会社などの人が使うような業務用の音響機器用の中間装置(「オーディオインターフェース」という)に接続する方式のマイクもある。しかし、初心者は、パソコン接続用マイクを買うのが良い。高価なマイクの中には、専用の音響機器につながないと使用できないものがあり、付属する機材も大きいので、初心者には高価なマイクは不要である。「オーディオインターフェース」は、いくつも調整ツマミがあったりして(いわゆる「ミキサー」の機能を兼ねていたりする場合もある)、中学生・高校生には使いこなせないので、購入は不要である。
::※ 読者が音響以外の分野にも知識を応用できるように、工業的な原理を説明しよう。そもそも、パソコンは本来、数値計算の機器であり、あまり物理量の測定・計測とか観測とかは苦手である。いっぽう、'''マイクは、じつは音波を計測することのできる計測機器'''なのである。計測機器では一般に、精度の高い計測を行う場合には、ノイズの除去や電圧の安定化のために、専用の外部電源を積んでいる専用の外部機器(大きさは種類にもよるが、これだけで大きさが小型タブレットPC~ノートパソコンくらいの大きさだったりする)が必要だったり、場合によっては専用のケーブル(けっこう太い場合があり、直径1センチくらいあったりする)すらも必要になったりする。外部電源が必要だったりするので、コンセントをもう1個使う場合もある。
::また、専用の外部機器に調整ツマミがいくつも付いているのも、なにもマイクにかぎらず、計測機器ではよくある仕様である。
::しかしパソコンでは、小型化や省電力化のため、こういった計測用の外部電源や専用機器・専用ケーブルなどは、まったく付いていない。
::もし、デジタルの測定機器をパソコンにそのまま接続すると、計測するデータの品質は(業務用の測定機器と比べると)かなり精度は低くなるのが通常である。あるいは、専門の測定機器では、そもそもパソコンには直接接続できない構造になっている場合もある。
:いっぽう、パソコン用のマイクは、小型化・省エネ化のために最低限の品質になっているので、テレビ局・ラジオ局などの業務用のマイクとは、性能がかなり違っている。なのでパソコン用のマイクで録音しても、けっしてテレビ局・ラジオ局とかの人が使っているマイクのような低ノイズの録音は出来ない。(パソコンにかぎらず、ラジカセとかに接続するマイクで録音してもノイズが発生するのは、こういうことが原因のひとつ。家庭用のマイクでは、あまりノイズを除去できない。)なので、テレビ局のような低ノイズの録音は、学生はあきらめよう。
:※ パソコン用マイクですら種類はいろいろとあり、「コンデンサマイク」または「ダイナミックマイク」とか、いろいろマイクの種類がある。さらに「USB接続」または「3.5mmステレオミニプラグ」とか、あるいは「指向性」の有無とか、いろいろな要因があるが、中学高校レベルを大幅に超えるので説明を省略。これらの用語が分からないなら、使用すべきマイクは当面のあいだ、家電量販店で購入できるような、普通のパソコン用の録音マイクを買うのが良いだろう。けっして、通販とか専門店とかで、高いマイクは買わないほうが安全である。
:※ なお、工業高校の科目『電子技術』の教科書を読むと、コンデンサマイクなどの仕組みが大まかに書いてある。よく、子供むけの技術書などに書いてあるマイクの仕組みで、「振動板に取り付けたコイルが一緒に振動することで起電力が発生するのを利用して、・・・」というのはダイナッミクマイクの仕組みである。ダイナミックマイクとは、磁石の近くにあるコイルが振動することにより、コイルに発生する起電力を読み取ることで、音を検出している。(なお、ラジオ局などで使われる「リボンマイク」というのも、磁界のなかにある金属部品のとりついたリボンを音で振動させることで検出している(※ 参考文献: 工業高校の教科書『電子技術』、実教出版)。)
いっぽう、コンデンサマイクには、振動板に(コイルではなく)コンデンサの電極の(2枚あるうちの)片方1枚だけが取り付けられているので「コンデンサマイク」という。コンデンサの電極の片方が振動することにより、コンデンサの電気容量も振動するので、それを音の検出に利用している仕組みである。
}}
:※ マイクと口との距離は、手に持って使うタイプのマイクや、それと大きさ・形の似たマイクの場合なら、距離は 5~10センチくらいが目安です<ref>さらだたまこ 著『部活でスキルアップ! 放送部 活躍のポイント 増補改訂版』、メイツユニバーサルコンテンツ、P36</ref>。
:(※ 範囲外)どんなに高性能なマイクを使っても、マイクだけでノイズ(雑音)を除去するのは不可能です。実務では、どうしてもノイズを除去する必要のある場合は現代では、専用のソフトウェアで除去しています<ref>小島真也 著『動画制作の教科書 企画づくりから撮影技術の基礎、編集と公開まで』、技術評論社、P.140</ref>。このため、実際の現場での聞こえ方とは、若干の違いがあります。
:その場合でも、完全にノイズを取りきるのは不可能です<ref>小島真也 著『動画制作の教科書 企画づくりから撮影技術の基礎、編集と公開まで』、技術評論社、P.140</ref>。なので、まず、目立つノイズだけを取り除き<ref>小島真也 著『動画制作の教科書 企画づくりから撮影技術の基礎、編集と公開まで』、技術評論社、P.140</ref>、あとは可能で必要なら他のノイズを取り除きます。
:※ 人間の声の録音について、ノイズ除去のための加工とは別に、視聴者が聞きやすくするために声色を加工することもある。(文科省の動画教材でそう取材先の技術者が述べている。)
:※ ほかの例としては、英単語のリスニング教材を聞いていると、会話文に使われる単語の例文で、声優さんが声の加工をして、役を演じ分けて一人二役していたりとか。その教材では英語の男性声優と、日本語訳の女性声優とが居て、会話文で急に役が増えると中学生が混乱するから。なるほど、「学校の勉強も、しましょうね」ってことか。
:小型で安物のマイクも、それはそれで持ち運びには便利なので使い道があるので、もしマイクを買い換えても、前のマイクは捨てる必要は無い。
あまり高価なマイクを買ってしまっても、個人には、防音設備のある録音スタジオなどは使用できないので、高価すぎるマイクは無駄になってしまうので、高すぎない値段の録音マイクでいい。
{{コラム|(※ 範囲外) 個人製作アニメ用の録音のノウハウ|
;息継ぎ
実際に録音を始めてみると分かると思うが、息継ぎの音などが、どうしても入る。対策は結論から言うと、サウンド編集ソフトで息継ぎの音を除去したり、編集ソフトの音量調節で息継ぎしている部分の音量を下げたりすることになるだろう。
また、息継ぎの長さは人それぞれなので、けっして、映像制作の段階では、あらかじめ息継ぎの時間の長さを予想して、映像を用意することはできない。
息継ぎの時間は、けっこう長く、数秒ほどの時間である。けっして一瞬では、「一息つく」だけの息継ぎすら、終わらない。なのに「音楽」教科の授業でおこなう合唱や歌唱では、息継ぎの時間の長さが気にならない理由は、じつは作曲家が息継ぎが気にならないようにメロディを工夫しているのである。
消費者の多くは、アニメ鑑賞では息継ぎの音を嫌がる(そもそも世間一般の放映されているアニメでは、通常の声のシーンでは、息継ぎの音が無い)。
もし息継ぎのたびにマイクから離れるたり顔を動かしたりすると、今度はその 足音 とか 顔を動かす際の服のこすれる音 がマイクに入りしかねないので、どっちみちサウンド編集ソフトに頼ることになる。
もし、息継ぎせずに いっぺん に長いセリフをしゃべろうとしても、後半にいくほど声量が低くなり聞き苦しくなってしまうだけで無駄なので、息継ぎは必要である。
これは裏を返すと、絵コンテや台本を書く段階で、息継ぎのことまで少しは考えておく必要がある。長すぎるセリフは、息継ぎで中断されるので、そのままでは発音できない。(おそらく、どうしても長すぎるセリフを録音したい場合、たとえば、まず息継ぎありで録音し、あとから編集で息継ぎを除去して、編集によって息継ぎ前後の音声を合成したりすることになるだろう。)
どうすれば息継ぎの無理のない絵コンテ・台本を書けるかというと、答えは単純で、絵コンテ担当者や台本担当者などは実際に自分の口で、発声して確認してみればいいだけである。
個人製作アニメにかぎらず、一般に、なにかを発注依頼する場合、一般的なマナーとして、試作の段階では、自分でかるく作ってみた試作品を、最低でも1回は自分で実験してみて確認してみるのは当然のマナーであろう。
;口の水分
:そのほか注意事項として、ノドが極端に渇いていたりすると<ref>さらだたまこ 著『部活でスキルアップ! 放送部 活躍のポイント 増補改訂版』、メイツユニバーサルコンテンツ、P39</ref>、閉じた口を開く際に、はりついた口びるがハガれる音が、発生しやすくなる(リップ ノイズ)。空腹だと、リップノイズが発生しやすくなる<ref>さらだたまこ 著『部活でスキルアップ! 放送部 活躍のポイント 増補改訂版』、メイツユニバーサルコンテンツ、P39</ref>。ほか、対策としては、事前に、うがい等をしたり、一口くらい水を飲んで、口の中を通常の水分に保っておくことになる。ツバで くちびるをぬらしてみても、無駄である(試せば分かるが、ノドが渇いていたら、ツバでぬらしても効果が無い)。
;余計な音
:台本のページをめくる音なども、ノイズの原因になるので、録音の最中には台本に触れないでおくことになる。
;確認作業
:おそらく、上記のような理由のため、セリフを1フレーズ録音するたびに、いったん録音を終了して、録音が成功しているかを簡易に確認して、もし問題が見つからなかったら次の録音に進むことになるだろう。(これとは別方式で、すべてのフレーズをまとめて録音してから、まとめて確認し、あとから問題のあったフレーズだけを再収録するという方式もあるらしいが、しかし初心者は1フレーズずつ録音を確認していくほうが安全だろう。)
;編集
:実際に息継ぎの音をソフトウェアで除去してみると分かると思うが、キャラクターが黙ったまま何もせずに沈黙しているように聞こえてしまうので、沈黙の部分を編集ソフトで除去して、あたかも役者が沈黙せずにしゃべりつづけているように編集することになる。
個人制作アニメにかぎらず、実写ビデオに後からナレーションなどを追加する場合なども、同じような問題に遭遇することになるので、ナレーションを録音したあとにサウンド編集することになるだろう。
}}
値段はかなり高くなりますが、実写の動画を作る際、高性能マイクで集めた音声と、高性能ビデオで撮影した映像は、AVミキサーという機器で統合できます<ref>平井聡一郎 著『これならできる!学校DXハンドブック 小中高特別支援学校のデジタル化を推進する「授業以外のIT活用事例」』、翔泳社、2022年 3月16日 初版 第1刷発行、P202</ref>。
まあ、家電量販店などでは、AVミキサー無しでもビデオカメラなどで撮影と音声収録とが一体化した商品が昭和の昔から売られていますが。
テレビ局とか音楽レコード会社とかは、AVミキサーなどの機器を使って映像制作しているわけです。学校の放送室などにもAVミキサーが置いてあったりします。
もしかしたらAVミキサー以外の方法でも音声と映像の統合は今どきは可能なのかもしれませんが、とりあえず、放送室にある機材は何なのかの説明のため、AVミキサーという機器のノン材を教えときます。
当然ですが、今時のAVミキサーには、パソコンへの出力のためのUSBポートなども存在しています。パソコンで編集することが前提です。
マイクとビデオカメラがそれぞれ1個だけならミキサー無しでも可能かもしれませんが、しかし立派な映像を作る場合は2個以上のマイクと2個以上のビデオカメラによって撮影することもあります<ref>平井聡一郎 著『これならできる!学校DXハンドブック 小中高特別支援学校のデジタル化を推進する「授業以外のIT活用事例」』、翔泳社、2022年 3月16日 初版 第1刷発行、P203</ref>。つまり、複数台のマイクとビデオカメラで撮影する場合があるのです。そういう場合、AVミキサー無しだと、編集が難しくなります。
技術の授業だけでなく、音楽の授業にも関わってくる話題です<ref>平井聡一郎 著『これならできる!学校DXハンドブック 小中高特別支援学校のデジタル化を推進する「授業以外のIT活用事例」』、翔泳社、2022年 3月16日 初版 第1刷発行、P203</ref>。
ただし、学生レベルでは、AVミキサーまでは使い方を勉強しなくても大丈夫だと思います。きっと、教員または部活の顧問などの大人が、AVミキサーの扱いをやってくれるでしょう。
なぜなら、中高生むけの放送部のマニュアル本を読んでも、ミキサーの使い方までは指導していません<ref>さらだたまこ 著『部活でスキルアップ! 放送部 活躍のポイント 増補改訂版』、メイツユニバーサルコンテンツ、</ref>。つまり、AVミキサーの取り扱いは教員や顧問など大人の仕事、というわけでしょう。
{{コラム|個人製作アニメでの映像と声の製作の順序|
絵のキャラクターの絵での口の開閉のタイミングと、音声でのセリフの聞こえるタイミングとを、どうやって一致させるか?
方法は大まかに2通り。
パターン1: 先に声を収録し、あとから絵描きが口の動きを描く。
パターン2: 先に口の絵を動画をつくり、その動きにあわせて、声を収録する。
簡単なのは、パターン1(先に声を収録)である。
パターン1の重要な点として、'''録音の時点では、じつは動画はまったく完成していない'''のが普通である。
なぜならセリフの具体的な秒数の長さが分からないのに、アニメーター(アニメ用の絵を描く専門職の人)は口の動きや顔の動きの絵を描くことはできないからである。
(アニメ業界用語で「アフター レコーディング」(和製英語)と聞くと、あたかも映像だけは完成してそうな字面(じづら)なので、勘違いしやすい。しかし、おそらく個人製作アニメでは、声の録音の段階では映像はまったく完成してないだろう。)
:※ 「アフレコ」・「アフターレコーディング」の用語は不正確である。正確には、先に声を取ってから後から映像製作する手法のことを「プレスコ」(プレ スコアリング)というが、あまり一般には普及していない用語である。
なので、声を収録する際は、個人製作アニメの声の録音なら、声の提供者は、
:あるいは絵コンテの絵(絵は大雑把)をスキャンして制作されたビデオ動画を見ながら録音することになったり(なお、絵コンテをそのままスキャンして作ったビデオ動画や、それにわずかに加工を加えた(たとえば口の開閉などを追加した)ビデオ動画の、動画そのものやその動画を作ることを、映像業界の用語で「絵コンテ撮」(えこんて さつ)という)、
:そもそも映像がない段階だったりして台本とマイク類だけで録音室の中で録音する、
等ということになったりするだろう。
:※ 検定教科書や市販の一般的な書籍でのアニメ制作の工程についての説明の順序では、先にアニメの原理をイラストつきで説明してから、あとの段落で録音を説明する場合が多いので、
:あたかも「先にビデオ映像が完成してから、その映像をもとに録音する」かのように、初心者は勘違いしがちである
:しかし、じつは録音の段階ではビデオ映像は完成してない場合も多いようである。
}}
;文字などの表示
映像作品の題名の表示や、スタッフ(製作者の一覧)の表示などで文字を表示したい場合、
けっして、いちいち手書きで書く必要はないのです。(昭和の昔はそういう時代もあったかもしれないが、現代では不要。)
現代では、パソコン上で、題名の表示の画面や、スタッフの一覧の表示画面などの作成も可能です。(検定教科書の開隆堂の教科書で、パソコンで編集した文字ファイルを画面表示できると説明している。ただし、具体的な方法は述べてない。)
方法はおそらく、静止画での文字表示にかぎる手法ですが、次のような手法があると思います(※ 未確認)。
# まず、あらかじめワープロソフトやプレゼンテーションソフトなどで、文字だけの画面で、表示したい文字を配置した画面を作っておき、
# その画面をプレゼンソフトなどのファイル変換の機能を使って静止画像ファイル形式( PNG画像 や JPEG画像 など)に変換し、
# さらに、ビデオ編集ソフトの変換機能で、静止画像ファイルを動画ファイル形式(MPEG動画など)に変換して、
# さらに映像作品に連結したり合成したります(一般的なビデオ編集ソフトに、そういう機能があると思います。)
ビデオ作品中での文字の大きさは、やや大きめにしましょう。
ついつい初心者は、書籍のような小さい文字のサイズで、画面上の文字をつくりがちです。しかし、それだと、視聴者には文字が小さすぎて見えません。
テレビ画面でビデオ作品を表示する可能性を考えて、ビデオ作品では文字のサイズは、けっこう大きめにします。
さて、話題は変わり、法律的なハナシですが、映像作品には著作権がありますので、たとえ学校でつくる映像といえども著作者の表示が必要ですので、たとえば「2019年度 △△市立××中学校 3年生 制作」のように、少なくとも、どこの学校の、何年度の何年生の生徒がつくったのかくらいは表示する必要があるでしょう。
たとえ子供がつくった映像作品でも、著作権は発生します。
プライバシー保護などの理由で、生徒名までは書けないにしても、せめて学校名くらいは書く必要があるでしょう。
あと、忘れがちですが題名は必要です。第三者に紹介したりするとき、何の作品か分かるようにする必要があります。
文化祭を撮影した映像なのか、それとも卒業式の映像なのか、題名から分かるようにしましょう。
もし題名で『私たちの思い出』とだけ書かれても、それが文化祭なのか修学旅行なのか卒業式なのか運動会なのか、第三者には、さっぱり分かりません。
『文化祭の思い出』とか『私たちの文化祭』のように、なんの行事を撮影したのか、題名から分かるようにしましょう。
== テレビ電話 ==
[[File:Webcam On Laptop.JPG|thumb|ウェブカメラ]]
現在の人類のパソコン技術では、パソコンを使って、いわゆる「テレビ電話」ができます。(ここまで検定教科書で説明されています。)
インターネットの技術を応用して、ネットを介してテレビ電話ができます。
また、テレビ電話用のソフトウェアも、安価もしくは無料で配布されています。(テレビ電話の「スカイプ」は無料のはず。)
ただし、パソコンでテレビ電話をするためには、テレビ電話用にパソコン接続のできるカメラ(「webカメラ」というのがある)や、パソコン接続のできるマイクが必要です。(市販のパソコンには、カメラやマイクが内蔵されていない種類の製品も多い。)
:※ 東京書籍の検定教科書に、イラストで、webカメラっぽい機器のとりついたパソコンのイラストが掲載されている。
webカメラは、デジカメとは違う機器です。
※ webカメラは名前はweb「カメラ」とはいうが、しかし写真カメラとは違っており、けっして1枚しか撮影しないわけではなく、どっちかというとビデオカメラに近い。
なお、テレビ電話で通話をする際、もしイヤホンを使わずに相手からの通話をスピーカーからそのまま出力すると、相手の声がマイクに入力されるので繰り返し同じ声が出力されつづけるので(たとえば相手が「こんにちは」と1回いっただけでも、スピーカーから声をそのまま出力するとマイクに声が ひろわれる結果、「こんにちは こんにちは こんにちは こんにちは ・・・」といつまでもスピーカーから出力が続く)、イヤホンを接続して、イヤホンから音声を出力しましょう。
やまびこ(エコー echo) みたいに、自分の声が返ってくるので、音響機器のこういう繰り返し現象は「エコー」と言われる。
一般の古いアナログ電話などでも、音声が小さくて耳に当てないと聞こえないのは、こういうエコーを防ぐ事情があると思われる。
ときどき、電話機などで、出力音声の大きい電話があるが、あれはどういう仕組みかというと、「エコーキャンセラー」などと言われる電子回路によって、その電話機から発生した音が(電話機にある)マイク部分から入力されるを打ち消しているのである。(※ ウィキペディア日本語版にも『[[w:エコー除去]]』という記事がある。)
エコーキャンセラーの原理は、メーカーが非公開にしている部分もあるが、大まかな原理は、スピーカー部への入力信号から予想される音を、マイク入力信号から差し引いているだけであろう。「オペアンプ」(正確には差動増幅器(さどう ぞうふくき)、※ 工業高校で習う)という半導体回路デバイスを使うと、信号どうしを差し引くことができるので、それを使っていると思われる。
なお、エコーキャンセラーは、専門的には「防側音」(ぼうそくおん)回路などとも言われる。ただし、完全に打ち消すことはできないし、音質は変わってしまう。
一般のパソコンには、まったく、そんな気の利いた機能(エコーキャンセラー、防側音回路など)は無いので、テレビ電話の利用者のほうが、自分でイヤホンを使って、スピーカー出力音がマイクに入らないように工夫することになる。
なお、電話機で適度に出力音が遅れる(「遅延」(ちえん)という)のも、通信速度のほかにも、ハウリングなどを防ぐ理由もあるだろう。
== バリアフリー技術 ==
テレビ電話の技術とは別に、パソコン使用者の動きをパソコン接続カメラを使ってパソコンに入力することによって、目の動きやまばたきの動きだけでパソコンを操作する技術がある。身体障害などで手を使えない人のための技術として、応用されている。(東京書籍の教科書で説明されている。)
== 人工音声 ==
ソフトウェア技術により、声を(人間ではなく)機械で行うことができる。なので人間が録音しなくても、すでに機械で人工的にスピーカーから声を出すためのソフトウェアが存在している。
webページの読み上げなどで、応用されている。(ここまで、東京書籍の教科書で、バリアフリー技術の一環として説明されている。)
:(世界には、弱視(じゃくし)などの障害で、文字が読みづらい人がいる。
:また、咽頭(いんとう)ガンなどで声を出せなくなった人のための技術としても、人工音声は活用されている。)
人工音声ソフトでは、音声の生成は、パソコン内部で声を生成している。なので、マイクなど外部機器が無くても、人工音声は使用できる。人工音声に必要な機器は、パソコン本体のほかに、通常のパソコン内蔵のスピーカーで充分である。
:(※ 範囲外: )
:・人工音声のソフトウェアは、無料のものから有料のものまで、いろいろなソフトがある。
:・無料や低価格のものは音質に欠点があり、機械による音声なので、不自然な声色に聞こえる場合が多い。(人間そっくりの人工音声ソフトもあるが、高価格だったりして、とても一般消費者が気軽に購入できるような価格ではなかったりする。)
:・また、テキストデータを機会的に読み上げているだけなので、webページの読み上げなどでは、漢字の発音が不正確だったりする。
:・用途はバリアフリー以外にも各種の音声ガイダンスなどとしても、人工音声は活用されている。
:・無料の人工音声ソフトウェアのいくつかは、インターネット上では無料で配布されている。
== 副教材、学校教員むけ専門誌など ==
=== コンピュータ関連 ===
==== 3Dプリンタと3D-CAD ====
いちぶの教科書会社の発行出版する教員むけ機関誌をみると、中学技術家の今後の教育カリキュラムの研究として、3Dプリンタを3D-CAD(キャド)と連動させる教育研究も紹介されている(いちぶの中学で教育を実験中らしい)。
(※ 3D-CAD は「スリーディー キャド」と読む。)
中学生に3Dプリンタをつかわせて、作りたい おもちゃ みたいなのを作らせようというカリキュラムが研究されてるらしい。
ただし、ソフトウェアにAutodesk(企業名)の製品を使う事や、プリンタ設備の初期投資など、高価であるのが難点である。
==== 教育用のプログラム言語 ====
「スクラッチ」というプログラム言語が初等〜中等教育用に開発された言語として世界的に有名である。
それとは別の言語として、日本では「ドリトル」という言語が日本人によって開発されている。なお、ドリトルを開発したのは日本の大学の教員。大阪電気通信大学の教員。
==== その他 ====
[[File:Raspberry Pi 3 B+ (39906370335).png|thumb|ラズベリーパイ]]
「ラズベリーパイ」という名の小型のコンピュータがある。
中学技術の教育の業界では、ラズベリーパイを技術教育に活用しようという教育研究の話題がチラホラと聞かれる。
=== 熱機関 ===
:※ マルチメディアとは話題が違いますが、話の流れ上、教員むけ専門誌の話題などが出たので、しばらくの間、このページをお借りしてマルチメディア以外の技術家庭の教育動向も報告します。
検定教科書では、内燃機関の代表例としてガソリンエンジンぐらいしか扱わない。
だが、どうやら、実習などで、外燃機関としてスターリングエンジンの模型をあつかわせる中学もあるらしい。
このほか、ロータリーエンジンも紹介するようだ。なお、高校の『数学活用』(実教出版)でロータリーエンジンが紹介されている(「ルーローの三角形」との関連で)。
== 出典・脚注 ==
<references/>
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{{DEFAULTSORT:あるちめでいあかんけい}}
[[Category:中学校技術]]
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比較言語学
0
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~2024-9934
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263238
wikitext
text/x-wiki
'''比較言語学'''とは、[[言語学]]のうち、ほかの言語と比較してその共通点を調べることで同系性や親縁性を発見、また、それらの共通祖語を構築することを目的としている分野。
一方、歴史的解明を目的とせず、単に比較することを目的としたものを対照言語学という。
== 語族・語派 ==
* [[インド・ヨーロッパ語族]]
* [[アフロ・アジア語族]]
* [[ニジェール・コンゴ語族]]
* [[ナイル・サハラ語族]]
* [[ウラル語族]]
* [[シナ・チベット語族]]
詳しくは[[w:語族の一覧]]を参照
== 方法 ==
* 主に語彙、文法、音韻などから同系のものを推測する。
**例 インド・ヨーロッパ語族:英語father,ドイツ語Vater(ここまでゲルマン語派),スペイン語padre,フランス語père(ここまでイタリック語派)
== 関連項目 ==
{{Wikipedia}}
* [[言語学]]
{{DEFAULTSORT:ひかくけんこかく}}
[[カテゴリ:言語学|*]]
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特許法第1条
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{{知財コンメンヘッダ|特許}}
== 条文 ==
(目的)
;第1条
:この法律は、[[特許法第2条#発明|発明]]の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的とする。
== 解説 ==
特許法の目的について規定している。
== 関連条文 ==
* [[実用新案法第1条]]
* [[意匠法第1条]]
* [[商標法第1条]]
{{前後
|[[コンメンタール特許法|特許法]]
|第1章 総則
| -
|[[特許法第2条|2条]]
}}
{{stub|law}}
[[Category:特許法|001]]
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民事訴訟法/不服申立て
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Tomzo
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== 上訴 ==
上訴をするには原則、訴える側に、上訴後に勝訴した場合の実質的な利益がなければならない。
このような亊を、「'''上訴の利益'''」(「不服の利益」ともいう)が上訴を起こす側に存在している、などのように言い、具体的には下記のような内容である。
たとえば、上訴前の判決で全部勝訴した側の当事者が上訴しても、棄却されるのが通常である。つまり、全部勝訴の場合には、上訴の利益は無いのが原則である。一部認容判決の場合は、原告・被告両方に上訴の権利がある<ref>安西、P246</ref>。
また、単に判決理由が納得できないという程度の理由では、上訴は基本的に認められない<ref>安西、P246 ※ 本文のページ中央あたり</ref>。
;上訴の効果
適法に上訴がなされると、原裁判は確定しなくなり、このことを'''確定遮断効'''という(116条2項)。また上訴により、上級の裁判所が審理が移動するが、これを'''移審効'''という(規174条)。また、この2つの効果の適用範囲については、上訴した側の不服申立ての限度にかかわらず、元裁判の全体に確定遮断効と移審効が適用される('''上訴不可分の原則''')。
=== 抗告 ===
'''抗告'''とは、判決以外の決定または命令に対して不服を申し立てる独立の簡易な上訴である。
事件の本体についての訴訟とまとめてしまうと訴訟経済的に不経済なので、独立して抗告という制度が存在している<ref>安西、P253</ref>。
「'''通常抗告'''」には、抗告期間の定めがなく、いつでも抗告できるが、執行停止能が無い。
一方、「'''即時抗告'''」は、抗告期間が1週間以内であるが、執行停止能がある(332条)。
;最高裁判所に対する抗告
最高裁判所に対する抗告として「'''特別抗告'''」が存在しており、これは憲法違反を理由とした抗告であり、高等裁判所の命令・決定に対して最高裁へ抗告できる。
「'''許可抗告'''」とは、最高裁判所などの判例に反する決定・命令が高等裁判所から出された場合に、最高裁判所に抗告することで、最高裁判所による法令解釈の統一性を図る制度である(337条)。
平成8年に許可広告は制定され、比較的に新しい制度である。8年以前には最高裁への抗告は、特別抗告しかなかった。
== 脚注 ==
<references/>
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[[category:民事訴訟法|ふふくもうしたて]]
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物理数学II/特殊関数
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== 球函数 ==
=== Legendre 函数 ===
Legendre の微分方程式
<math>(1-x^2)\frac{d^2w}{dx^2} - 2x \frac{dw}{dx} + \nu (\nu+1)w = 0</math>
は、<math>z = \frac{1-x}{2}</math> と変換すると、
<math>z(1-z)\frac{d^2w}{dz^2} + (1-2z)\frac{dw}{dz} + \nu(\nu+1)w = 0</math>
となる。これは、Gauss の超幾何微分方程式で、<math>\alpha = \nu+1,\beta = -\nu,\gamma = 1</math> とした場合だから、微分方程式の解は超幾何函数を使って、
<math>w = F(\nu+1,-\nu,1,z) = \sum_{k=0}^\infty \frac{(\nu+1)_k(-\nu)_k}{(k!)^2}\left(\frac{1-x}{2}\right)^k</math>
とかける。これを <math>\nu</math> 次 Legendre 函数 <math>P_\nu(x)</math> という。
次に、<math>P_\nu(x)</math> に線型独立なもう一つの解を定数変化法で求める。
<math>w = P_\nu(x) v(x) </math>
とおいて、Legendre の微分方程式に代入すると、
<math>(1-x^2)P_\nu v'' + \{2(1-x^2)P_\nu' -2xP_\nu \}v' = 0</math>
これは、<math>v'</math> に対する微分方程式として
<math>\frac{dv'}{v'} + \frac{dx\{2(1-x^2)P_\nu'P_\nu-2x{P_\nu}^2 \}}{(1-x^2){P_\nu}^2} = 0</math>
即ち、
<math>\frac{dv'}{v'} + \frac{d[(1-x^2)P_\nu^2]}{(1-x^2){P_\nu}^2} = 0</math>
と変形できる。
これを積分して、
<math>v' = \frac{C}{(1-x^2){P_\nu}^2}</math>
を得る。もう一度積分すると、
<math>v(x) = C\int \frac{dx}{(1-x^2){P_\nu}^2} + C'</math>
となるから、
<math>w(x) = P_\nu(x) v(x) = CP_\nu(x)\int\frac{dx}{(1-x^2){P_\nu}^2} + C' P_\nu(x)</math>
である。今求めているのは、<math>P_\nu(x)</math> に独立な解であるから <math>C' = 0</math> としていい。<math>C = 1</math> とし、積分範囲を <math>\int_\infty^x</math> と取るときの <math>w(x)</math> を第二種 Legendre 函数 <math>Q_\nu(x)</math> と定義する。
すなわち、
<math>Q_\nu(x) = P_\nu(x)\int_\infty^x\frac{dx}{(1-x^2){P_\nu(x)}^2} </math>
である。
=== Legendre 多項式 ===
Legendre 函数 <math>P_\nu(x) </math> は <math>\nu </math> が非負整数 <math>n </math> のとき多項式になる。
<math>P_n(x) = \sum_{k=0}^\infty \frac{(n+1)_k(-n)_k}{(k!)^2}\left(\frac{1-x}{2}\right)^k = \sum_{k=0}^n \frac{(n+1)_k(-n)_k}{(k!)^2}\left(\frac{1-x}{2}\right)^k</math>
Pochhammer 記号について
<math>(n)_k = n(n+1)\cdots (n+k-1) = \frac{(n+k-1)!}{(n-1)!} </math>
<math>(-n)_k = (-n)(-n+1)\cdots(-n+k-1) = (-1)^kn(n-1)\cdots(n-k+1) = (-1)^k \frac{n!}{(n-k)!}</math> (ただし、<math>k \le n </math> のとき)
<math>k > n </math> ならば、<math>(-n)_k = 0 </math>となるから、
<math>P_n(x) = \sum_{k=0}^n \frac{(n+k)!}{(k!)^2(n-k)!}\left(\frac{x-1}{2}\right)^k </math>
を得る。Legendre 多項式は Rodrigues の公式
<math>P_n(x) = \frac{1}{2^n n!} \frac{d^n}{dx^n} (x^2-1)^n</math>
によっても定義される。
実際、
<math>\begin{align}P_n(x) &= \frac{1}{2^n n!} \frac{d^n}{dx^n} \{(x-1)^n(2+x-1)^n\} \\
&= \frac{1}{2^n n!} \frac{d^n}{dx^n}\sum_{k=0}^n \binom{n}{k} 2^{n-k} (x-1)^{n+k} \\
&= \frac{1}{2^n n!} \sum_{k=0}^n \frac{n!}{k!(n-k)!}\frac{(n+k)!}{k!} 2^{n-k} (x-1)^{k} \\
&= \sum_{k=0}^n \frac{(n+k)!}{(k!)^2(n-k)!} \left(\frac{x-1}{2}\right)^k \\
\end{align}</math>
となる。
次に、Legendre 多項式の <math>x</math> の冪での表示を求める。Rodrigues の公式を展開して、
<math>\begin{align}P_n(x) &= \frac{1}{2^n n!} \frac{d^n}{dx^n} (x^2-1)^n \\
&= \frac{1}{2^n n!} \frac{d^n}{dx^n} \sum_{k=0}^n \frac{n!}{k!(n-k)!}(-1)^k x^{2n-2k} \\
&= \frac{1}{2^n} \sum_{k=0}^{\left[\frac n 2 \right]} \frac{(-1)^k}{k!(n-k)!} \frac{(2n-2k)!}{(n-2k)!}x^{n-2k}
\end{align}</math>
ここで、いくつかの項は微分で落ちる。項が残る条件は <math>n - 2k \ge 0</math> で、 <math>k</math> が整数だから、 <math>\left[\frac n 2\right] \ge k</math> である。
さらに、
<math>\begin{align}
P_n(x) &= \frac{1}{2^n} \sum_{k=0}^{\left[\frac n 2 \right]} \frac{(-1)^k(2n-2k)!}{k!(n-k)!(n-2k)!} x^{n-2k} \\
&= \sum_{k=0}^{\left[\frac n 2 \right]} \frac{(-1)^k}{2^k} \frac{(2n-2k)!}{2^{n-k}k!(n-k)!(n-2k)!} x^{n-2k} \\
&= \sum_{k=0}^{\left[\frac n 2 \right]} \frac{(-1)^k}{2^k} \frac{(2n-2k-1)!!}{k!(n-2k)!} x^{n-2k}
\end{align}</math>
として Legendre 多項式の表示が得られる。ここで、<math>(2k)!! = 2^kk!, (2k-1)!! = \frac{(2k)!}{(2k)!!} = \frac{(2k)!}{2^kk!}</math> となることを使った。
Rodrigues の公式に Goursat の公式を使うと、
<math>P_n(x) = \frac{1}{2\pi i} \oint_x \left\{\frac{t^2-1}{2(t-x)}\right\}^n \frac{dt}{t-x}</math>
となる。ここで、<math>\frac{t^2-1}{2(t-x)} = \frac{1}{\zeta}</math> と変換をすると、<math>\zeta t^2 -2t + 2x - \zeta = 0</math> となるから、<math>t</math> について解いて、 <math>t = \frac{1-\sqrt{1-2x\zeta + \zeta^2}}{\zeta} = \frac{1-R}{\zeta}</math> となる。ここで、<math>R = \sqrt{1-2x\zeta + \zeta^2}</math> と置いた。<math>dR = \frac{\zeta - x}{R}d\zeta</math> となるから、<math>t </math> の微分は<math>dt =-\frac{d\zeta}{\zeta^2}(1-R) - \frac{dR}{\zeta} = \frac{1-R-x\zeta}{\zeta^2R}d\zeta </math> となる。<math>t - x = \frac{1-R-x\zeta}{\zeta} </math> であったから、<math>\frac{dt}{t-x} = \frac{d \zeta}{R\zeta}. </math>
<math>P_n(x) = \frac{1}{2\pi i} \oint_0 \frac{1}{\sqrt{1-2x\zeta + \zeta^2}}\frac{d\zeta}{\zeta^{n+1}}</math>
これは、
<math>\frac{1}{\sqrt{1-2xt + t^2}} = \sum_{n=0}^\infty P_n(x) t^n</math>
ということを意味する。すなわち、これが Legendre 多項式の母函数である。
=== Legendre の陪函数 ===
Legendre の陪微分方程式
<math>(1-x^2)\frac{d^2w}{dx^2} - 2x\frac{dw}{dx} + \left\{n(n+1) - \frac{m^2}{1-z^2}\right\} w = 0</math>
の解を求めたい。
Legendre の微分方程式
<math>(1-x^2)\frac{d^2w}{dx^2} - 2x \frac{dw}{dx} + n(n+1)w = 0</math>
で
<math>w = (1-x^2)^{\frac m 2} v</math>
とおいて、Legendre の陪微分方程式に代入すると、
<math>(1-x^2)v'' - 2(m+1)v' + (n-m)(n+m+1)v = 0</math>
を得る。
次に、Legendre の微分方程式を <math>w</math> の代わりに <math>u</math> とおいて、一回微分すると、
<math>(1-x^2)\frac{d^3u}{dx^3} - 2(1+1)x \frac{d^2u}{dx^2} + \{n(n+1) - 2\}\frac{du}{dx} = 0</math>
もう一回微分すると、
<math>(1-x^2)\frac{d^3u}{dx^3} - 2(1+1+1)x \frac{d^2u}{dx^2} + \{n(n+1) - 2 - 4\}\frac{du}{dx} = 0</math>
すなわち、Legendre の微分方程式を <math>m</math> 階微分すると、<math>2(1+2+\cdots +m) = m(m+1)</math> となるから、
<math>(1-x^2)\frac{d^{m+2}u}{dx^{m+2}} - 2(m+1)x \frac{d^{m+1}u}{dx^{m+1}} + (n-m)(n+m+1)\frac{d^mu}{dx^m} = 0</math>
である。
よって、
<math>v = \frac{d^mu}{dx^m}</math>
の関係があることがわかる。ここで、<math>u</math> は Legendre の微分方程式の解だから、
<math>u = P_n(x),Q_n(x)</math>
を代入して、
Legendre の陪微分方程式の解として、
<math>w = (1-x^2)^{\frac m 2}\frac{d^mP_n}{dx^m},(1-x^2)^{\frac m 2}\frac{d^mQ_n}{dx^m}</math>
を得る。この解をLengendre 陪函数として、
<math>P^m_n(x) = (1-x^2)^{\frac m 2}\frac{d^mP_n}{dx^m},\, Q^m_n(x) = (1-x^2)^{\frac m 2}\frac{d^mQ_n}{dx^m}</math>
と定義する。
=== 球面調和函数 ===
ラプラス方程式
<math>\triangle \Psi = 0</math>
を球座標で表すと、
<math>\frac{1}{r^2}\frac{\partial}{\partial r} \left(r^2 \frac{\partial \Psi}{\partial r} \right) + \frac{1}{r^2} \Lambda \Psi = 0</math>
となる。だたし、
<math>\Lambda = \frac{1}{\sin \theta} \frac{\partial}{\partial \theta} \left(\sin \theta \frac{\partial} {\partial \theta} \right) + \frac{1}{\sin^2\theta}\frac{\partial^2}{\partial \varphi^2}</math>
である。<math>\Psi</math> が
<math>\Psi(r,\theta, \phi) = r^nY_n(\theta,\varphi)</math>
の形であるとき、<math>Y_n(\theta, \varphi)</math> を <math>n</math> 次の球面調和関数という。
== Bessel 函数 ==
電磁気学や量子力学などで、微分方程式
<math>\frac{d^2w}{dz^2} + \frac 1 z \frac{dw}{dz} + \left(1 - \frac{\nu^2}{z^2}\right)w = 0 </math>
を解く必要が発生する。この微分方程式の解を Bessel 函数という。
<math>w = \sum_{k=0}^\infty c_k z^{\rho + k}</math>
の形の級数展開を仮定する。
このとき、
<math> \frac{d^2w}{dz^2} =\sum_{k=0}^\infty (\rho + k)(\rho + k - 1)c_k z^{\rho + k-2} </math>
<math> \frac 1 z \frac{dw}{dz} =\sum_{k=0}^\infty (\rho + k)c_k z^{\rho + k-2} </math>
であるから、微分方程式は、
<math>\sum_{k=0}^\infty \left[\{(\rho+k)^2 - \nu^2\}c_kz^{\rho+k-2} + c_kz^{\rho + k}\right] = 0</math>
となる。
<math>\frac{1}{z^2}</math> の項は、<math>(\rho^2 - \nu^2)c_0 = 0</math> であるから、<math>\rho = \pm \nu</math>.
<math>\frac{1}{z}</math> の項は、<math>\{(\rho+1) - \nu^2\}c_1 = 0</math> であるから、<math>c_1 = 0</math>.
<math>k \ge 0</math> について、<math>-c_{k-2} = \{(\rho+k)^2 - \nu^2\}c_k</math> を得る。これより、<math>c_{2k+1} = 0</math> がわかる。
<math>\rho = \nu</math> のときは、
<math>c_{2k} = \frac{-c_{2(k-1)}}{2(\nu+k)\cdot 2k}</math>
であるから、
<math>c_{2k} = \frac{(-1)^k}{2^{2k}k!(\nu+k)(\nu+k-1)\cdots(\nu+1)} = \frac{(-1)^k\Gamma(\nu+1)}{2^{2k}k!\Gamma(\nu+k+1)}</math>
である。すなわち、
<math>w = c_0\sum_{k=0}^\infty \frac{(-1)^k\Gamma(\nu+1)}{2^{2k}k!\Gamma(\nu+k+1)} z^{2k}</math>
ここで、<math>c_0 = \frac{1}{2^{\nu} \Gamma(\nu+1)}</math> に選んだものを <math>\nu</math> 次 Bessel 函数 <math>J_\nu(z)</math> とする。
すなわち、
<math>J_\nu(z) = \sum_{k=0}^\infty \frac{(-1)^k}{k!\Gamma(\nu+k+1)} \left(\frac z 2\right)^{2k+\nu} </math>
である。<math>\rho = -\nu</math> のときも同様に計算することで、同じ式になる。
=== 性質 ===
負の整数 <math>-n</math> 次の Bessel 函数について、
<math>J_{-n}(z) = \sum_{k=n}^\infty \frac{(-1)^k}{k!\Gamma(-n+k+1)} \left(\frac z 2\right)^{2k-n} = \sum_{k=0}^\infty \frac{(-1)^{k+n}}{(k+n)!\Gamma(k+1)} \left(\frac z 2\right)^{2k+n} = (-1)^nJ_{n}(z) </math>
Bessel 函数の母函数は、
<math>\begin{align}\sum_{n=-\infty}^\infty J_n(z)t^n &= \sum_{n=0}^\infty J_n(z)t^n + \sum_{n=1}^\infty (-1)^nJ_n(z)t^{-n} \\
&= \sum_{n=0}^\infty \sum_{m=0}^\infty \frac{(-1)^m}{m!(n+m)!} \left(\frac z 2\right)^{2m+n}t^n + \sum_{n=1}^\infty \sum_{l=0}^\infty \frac{(-1)^{l+n}}{l!(n+l)!} \left(\frac z 2\right)^{2l+n}t^{-n}
\end{align}</math>
ここで、第一の総和で、<math>l = m + n</math> 、第二の総和で、<math>m = l + n</math> と置くと、
<math>\begin{align}\sum_{n=-\infty}^\infty J_n(z)t^n &=
\sum_{m=0}^\infty \sum_{l=m}^\infty \frac{(-1)^m}{m!l!} \left(\frac z 2\right)^{m+l}t^{l-m} + \sum_{l=0}^\infty \sum_{m=l+1}^\infty \frac{(-1)^{m}}{l!m!} \left(\frac z 2\right)^{l+m}t^{l-m}\\
&= \sum_{m,l = 0}^{\infty} \frac{1}{m!l!} \left(\frac{zt}{2}\right)^l \left(-\frac{z}{2t}\right)^m \\
&= \sum_{l = 0}^{\infty} \frac{1}{l!} \left(\frac{zt}{2}\right)^l \sum_{m = 0}^{\infty} \frac{1}{m!}\left(-\frac{z}{2t}\right)^m \\
&= e^{\frac z 2 \left(t - \frac 1 t\right)}
\end{align}</math>
となる。
また、母函数を <math>t^{n+1}</math> で割ると、
<math>\frac{e^{\frac z 2 \left(t - \frac 1 t\right)}}{t^{n+1}} = \frac{J_n(z)}{t} + \sum_{k=-\infty,k \neq n}^\infty J_k(z)t^{k-n-1} </math>
となるから、<math>t</math> について原点反時計回りに積分すると、
<math>J_n(z) = \frac{1}{2\pi i} \oint_0 \frac{e^{\frac z 2 \left(t - \frac 1 t\right)}}{t^{n+1}} dt</math>
が得られる。<math>t = e^{i\theta}</math> とすると、
<math>J_n(z) = \frac{1}{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}e^{z\frac{e^{i\theta}- e^{-i\theta}}{2}}e^{-in\theta}d\theta = \frac{1}{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}e^{iz\sin\theta - in\theta}d\theta = \frac{1}{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}[\cos(z\sin\theta - n\theta) + i\sin(z\sin\theta - n\theta)]d\theta</math>
ここで、<math>\sin(z\sin\theta - n\theta)</math> は奇函数だから積分は0。<math>\cos(z\sin\theta - n\theta)</math> は偶函数だから、
<math>J_n(z) = \frac 1 \pi \int_0^\pi\cos(n\theta - z\sin\theta)d\theta</math>
を得る。
母函数に<math>t=1</math> を代入すると、
<math>\sum_{k=-\infty}^{\infty} J_k(z) = 1</math>
あるいは、
<math>J_0(z) + 2\sum_{k=1}^\infty J_{2k}(z) =1</math>
を得る。
<math>e^{\frac{x+y}{2}(t-1/t)} = e^{\frac{x}{2}(t-1/t)}e^{\frac{y}{2}(t-1/t)}</math>
であるから、Bessel 函数の加法定理
<math>J_n(x+y) = \sum_{m=-\infty}^\infty J_{n-m}(x)J_m(y)</math>
を得る。
上昇演算子と <math>\overset{(\nu)}{T} </math> 下降演算子 <math>\underset{(\nu)}{T} </math> を次のように定義する。
<math>\overset{(\nu)}{T} = z^\nu\frac{d}{dz}z^{-\nu} =\frac{d}{dz} -\frac{\nu}{z} </math>
<math>\underset{(\nu)}{T} = z^{-\nu}\frac{d}{dz}z^\nu = \frac{d}{dz} + \frac{\nu}{z} </math>
ここで、右辺は、<math>\overset{(\nu)}{T}f = z^\nu\frac{d}{dz}(z^{-\nu}f) = z^\nu\left(-\nu z^{-\nu-1}f+ z^{-\nu}\frac{df}{dz} \right) =\left(\frac{d}{dz} -\frac{\nu}{z}\right)f </math> から成り立つ。下降演算子についても同様である。
これを Bessel 函数に作用させると、
<math>\begin{align}\overset{(\nu)}{T} J_\nu(z) &= z^\nu \frac{d}{dz} \sum_{k=0}^\infty \frac{(-1)^k z^{2k}}{2^{2k+\nu}k!\Gamma(\nu+k+1)} \\
&= z^\nu \sum_{k=1}^\infty \frac{(-1)^k z^{2k-1}}{2^{2k+\nu-1}(k-1)!\Gamma(\nu+k+1)} \\
&= -\sum_{k=0}^\infty \frac{(-1)^k z^{2k+1+\nu}}{2^{2k+\nu+1}k!\Gamma(\nu+1+k+1)} \\
&= -J_{\nu+1}(z)
\end{align} </math>
となる。また、
<math>\begin{align}\underset{(\nu)}{T} J_\nu(z) &= z^{-\nu} \frac{d}{dz} \sum_{k=0}^\infty \frac{(-1)^k z^{2k+2\nu}}{2^{2k+\nu}k!\Gamma(\nu+k+1)} \\
&= z^{-\nu} \sum_{k=0}^\infty \frac{(-1)^k (k+\nu) z^{2k+2\nu-1}}{2^{2k+\nu-1}k!\Gamma(\nu+k+1)} \\
&= \sum_{k=0}^\infty \frac{(-1)^k z^{2k+\nu-1}}{2^{2k+\nu-1}k!\Gamma(\nu+k)} \\
&= J_{\nu-1}(z)
\end{align} </math>
である。すなわち、
<math>J^'_\nu(z) - \frac{\nu}{z}J_\nu(z) = -J_{\nu+1}(z)</math>
<math>J^'_\nu(z) + \frac{\nu}{z}J_\nu(z) = J_{\nu-1}(z) </math>
二式を辺々加えて、
<math>2J^'_{\nu}(z) = J_{\nu-1}(z) - J_{\nu+1}(z) </math>
または、辺々引いて、
<math>\frac{2\nu}{z}J_\nu(z) = J_{\nu-1}(z) + J_{\nu+1}(z) </math>
を得る。
ところで、明らかに
<math>\underset{(\nu+1)}{T}\overset{(\nu)}{T}J_\nu(z) = - J_\nu(z)</math>
となる。この式は二階の微分方程式であるから、Bessel の微分方程式に帰着するはずである。実際、左辺を展開すると、
<math>\underset{(\nu+1)}{T}\overset{(\nu)}{T} = \left(\frac{d}{dz} +\frac{\nu+1}{z}\right) \left(\frac{d}{dz} -\frac{\nu}{z}\right) = \frac{d^2}{dz^2} +\frac{1}{z}\frac{d}{dz} - \frac{\nu^2}{z^2} </math>
となる。逆に考えると、昇降演算子とは微分方程式を因数分解したものだとも考えられる。
=== 第二種 Bessel 函数 ===
<math>\nu</math> が非整数のときは、<math>J_\nu(z),J_{-\nu}(z)</math> が独立な2解を与えるが、整数のときは、<math>J_{-n}(z) = (-1)^nJ_{n}(z) </math> という関係があるから、独立ではない。そこで、位数 <math>n</math> のときの Bessel の微分方程式の独立なもうひとつの解が存在する。Bessel の微分方程式を <math>\nu </math> で偏微分すれば、
<math>\frac{d^2}{dz^2} \left.\left(\frac{\partial J_\nu(z)} {\partial \nu}\right) \right|_{\nu=n} + \frac 1 z \frac{d}{dz}\left.\left(\frac{\partial J_\nu(z)} {\partial \nu}\right) \right|_{\nu=n} + \left(1 - \frac{n^2}{z^2}\right) \left.\left(\frac{\partial J_\nu(z)} {\partial \nu}\right) \right|_{\nu=n} = 0 </math>
となるから、<math>\left.\left(\frac{\partial J_\nu(z)} {\partial \nu} \right) \right|_{\nu=n} </math> は微分方程式の解である。<math>\left.\left(\frac{\partial J_{-\nu}(z)} {\partial \nu} \right) \right|_{\nu=n} </math> も同じ微分方程式を満たすから、その線形結合として、
<math>Y_n(z) = \frac 1 \pi \left(\left.\left(\frac{\partial J_\nu(z)} {\partial \nu}\right) \right|_{\nu=n} - (-1)^n \left.\left(\frac{\partial J_{-\nu(z)}} {\partial \nu} \right) \right|_{\nu=n} \right) </math>
を定義すると、<math>J_n (z) </math> に独立な解を与える。非整数の <math>\nu </math> に対しては、
<math>Y_\nu (z) = \frac{\cos \nu \pi J_\nu (z) - J_{-\nu} (z)}{\sin \nu \pi} </math>
と定義すると、 <math>\nu \rightarrow n </math> の極限として、 <math>Y_n(z) </math> を得ることができる。
第一種、第二種 Hankel 函数をそれぞれ
<math>H^{(1)}_\nu(z) = J_\nu(z) + i Y_\nu(z)</math>
<math>H^{(2)}_\nu(z) = J_\nu(z) - i Y_\nu(z) </math>
で定義する。
== 楕円積分と楕円函数 ==
第一種完全楕円積分 <math>K(k)</math> と第二種完全楕円積分 <math>E(k)</math> は
<math>K(k) = \int_0^{\frac \pi 2} \frac{d\theta}{\sqrt{1-k^2\sin^2\theta}}</math>
<math>E(k) = \int_0^{\frac \pi 2} {\sqrt{1-k^2\sin^2\theta}}d\theta</math>
で定義される。
Taylor 展開して、
<math>\begin{align}K(k) &= \int_0^{\frac \pi 2} \frac{d\theta}{\sqrt{1-k^2\sin^2\theta}} \\
&= \int_0^{\frac \pi 2} \sum_{n=0}^\infty \binom{-\frac 1 2}{n}(-1)^n k^{2n}\sin^{2n}\theta d\theta \\
&= \sum_{n=0}^\infty \frac{(2n-1)!!}{{(2n)!!}}k^{2n}\int_0^{\frac \pi 2}\sin^{2n}\theta d\theta \\
&= \frac \pi 2 \sum_{n=0}^\infty \left(\frac{(2n-1)!!}{{(2n)!!}}\right)^2 k^{2n} \\
\end{align}</math>
<math>\begin{align}E(k) &= \int_0^{\frac \pi 2} {\sqrt{1-k^2\sin^2\theta}}d\theta \\
&= \int_0^{\frac \pi 2} \sum_{n=0}^\infty \binom{\frac 1 2}{n}(-1)^n k^{2n}\sin^{2n}\theta d\theta \\
&= \sum_{n=0}^\infty \frac{-(2n-1)!!}{{(2n-1)(2n)!!}} k^{2n}\int_0^{\frac \pi 2}\sin^{2n}\theta d\theta \\
&= \frac \pi 2 \sum_{n=0}^\infty \left(\frac{(2n-1)!!}{{(2n)!!}}\right)^2 \frac{k^{2n}}{1-2n} \\
\end{align}</math>
となる。あるいは、超幾何函数を使うと、
<math>K(k) = \frac \pi 2 F\left(\frac 1 2, \frac 1 2; 1; k^2 \right)</math>
<math>E(k) = \frac \pi 2 F\left(\frac 1 2, -\frac 1 2; 1; k^2 \right)</math>
となる。この変形に、
<math>\left(\frac 1 2 \right)_n = \left(\frac{1}{2}\right)\left(\frac{1+2}{2}\right)\cdots \left(\frac{1+2n-2}{2}\right) = \frac{(2n-1)
!!}{2^n}</math>
<math>\left(-\frac 1 2 \right)_n = \left(-\frac{1}{2}\right)\left(\frac{1}{2}\right)\left(\frac{1+2}{2}\right)\cdots \left(\frac{1+2n-4}{2}\right) = -\frac{(2n-3)
!!}{2^n} </math>
を使う。
=== Theta函数 ===
<math>\vartheta(z,\tau) = \sum_{n=-\infty}^{\infty} e^{\pi in^2\tau + 2\pi inz}</math>
<math>\vartheta_{01}(z, \tau) = \sum_{n=-\infty}^{\infty} e^{\pi in^2\tau + 2\pi in\left(z+\frac 1 2\right)} = \vartheta\left(z+\frac 1 2, \tau\right)</math>
<math>\vartheta_{10}(z, \tau) = \sum_{n=-\infty}^{\infty} e^{\pi i\left(n + \frac 1 2 \right)^2\tau + 2\pi i\left(n+\frac 1 2\right)z} = e^{\frac 1 4 \pi i \tau + \pi i z}\vartheta\left(z+\frac 1 2, \tau\right)</math>
<math>\vartheta_{11}(z, \tau) = \sum_{n=-\infty}^{\infty} e^{\pi i\left(n + \frac 1 2 \right)^2\tau + 2\pi i\left(n+\frac 1 2\right)\left(z+\frac 1 2\right)} = e^{\frac 1 4 \pi i \tau + \pi i \left(z + \frac 1 2\right)}\vartheta\left(z+\frac 1 2, \tau\right)</math>
と定義する。<math>\vartheta_{00}(z,\tau) = \vartheta(z,\tau)
</math> とする。
<math>\vartheta(z+1,\tau) = \vartheta(z,\tau)</math>
<math>\vartheta(z+\tau,\tau) = e^{-\pi i (\tau + 2z)}\vartheta(z,\tau)</math>
さらに、
<math>\vartheta_{00}(z+1,\tau) = \vartheta_{00}(z,\tau)</math>
<math>\vartheta_{01}(z+1,\tau) = \vartheta_{01}(z,\tau)</math>
<math>\vartheta_{10}(z+1,\tau) = -\vartheta_{10}(z,\tau)</math>
<math>\vartheta_{11}(z+1,\tau) = -\vartheta_{11}(z,\tau)</math>
また、
<math>\vartheta_{00}(z+\tau,\tau) = e^{-\pi i (\tau + 2z)}\vartheta_{00}(z,\tau)</math>
<math>\vartheta_{01}(z+\tau,\tau) = -e^{-\pi i (\tau + 2z)} \vartheta_{01}(z,\tau)</math>
<math>\vartheta_{10}(z+\tau,\tau) = e^{-\pi i (\tau + 2z)}\vartheta_{10}(z,\tau)</math>
<math>\vartheta_{11}(z+\tau,\tau) = -e^{-\pi i (\tau + 2z)} \vartheta_{11}(z,\tau)</math>
<math>\vartheta_{00}\left(z+\frac 1 2,\tau\right) = \vartheta_{01}(z,\tau)</math>
<math>\vartheta_{01}\left(z+\frac 1 2,\tau\right) = \vartheta_{00}(z,\tau)</math>
<math>\vartheta_{10}\left(z+\frac 1 2,\tau\right) = -\vartheta_{11}(z,\tau)</math>
<math>\vartheta_{11}\left(z+\frac 1 2,\tau\right) = -\vartheta_{10}(z,\tau)</math>
Jacobi の楕円函数を
<math>\operatorname{sn} u = -\frac{\vartheta_{00} \vartheta_{11}(\zeta)}{\vartheta_{10}\vartheta_{01}(\zeta)}</math>
<math>\operatorname{cn} u = \frac{\vartheta_{01} \vartheta_{10}(\zeta)}{\vartheta_{10}\vartheta_{01}(\zeta)}</math>
<math>\operatorname{dn} u = \frac{\vartheta_{01} \vartheta_{00}(\zeta)}{\vartheta_{00}\vartheta_{01}(\zeta)}</math>
で定義する。ただし、<math>k = \left(\frac{\vartheta_{10}}{\vartheta_{00}}\right)^2</math> ,<math>u = \pi \vartheta_{00}^2 \zeta</math> である。
== 参考文献 ==
* 寺沢寛一『自然科学者のための数学概論(増訂版)』岩波書店、1983年。
* 高木貞治『定本 解析概論』岩波書店、2010年。
* 犬井鉄郎『特殊函数』岩波書店、1962年。
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Nermer314
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/* 球面調和函数 */
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wikitext
text/x-wiki
{{substub}}
== 球函数 ==
=== Legendre 函数 ===
Legendre の微分方程式
<math>(1-x^2)\frac{d^2w}{dx^2} - 2x \frac{dw}{dx} + \nu (\nu+1)w = 0</math>
は、<math>z = \frac{1-x}{2}</math> と変換すると、
<math>z(1-z)\frac{d^2w}{dz^2} + (1-2z)\frac{dw}{dz} + \nu(\nu+1)w = 0</math>
となる。これは、Gauss の超幾何微分方程式で、<math>\alpha = \nu+1,\beta = -\nu,\gamma = 1</math> とした場合だから、微分方程式の解は超幾何函数を使って、
<math>w = F(\nu+1,-\nu,1,z) = \sum_{k=0}^\infty \frac{(\nu+1)_k(-\nu)_k}{(k!)^2}\left(\frac{1-x}{2}\right)^k</math>
とかける。これを <math>\nu</math> 次 Legendre 函数 <math>P_\nu(x)</math> という。
次に、<math>P_\nu(x)</math> に線型独立なもう一つの解を定数変化法で求める。
<math>w = P_\nu(x) v(x) </math>
とおいて、Legendre の微分方程式に代入すると、
<math>(1-x^2)P_\nu v'' + \{2(1-x^2)P_\nu' -2xP_\nu \}v' = 0</math>
これは、<math>v'</math> に対する微分方程式として
<math>\frac{dv'}{v'} + \frac{dx\{2(1-x^2)P_\nu'P_\nu-2x{P_\nu}^2 \}}{(1-x^2){P_\nu}^2} = 0</math>
即ち、
<math>\frac{dv'}{v'} + \frac{d[(1-x^2)P_\nu^2]}{(1-x^2){P_\nu}^2} = 0</math>
と変形できる。
これを積分して、
<math>v' = \frac{C}{(1-x^2){P_\nu}^2}</math>
を得る。もう一度積分すると、
<math>v(x) = C\int \frac{dx}{(1-x^2){P_\nu}^2} + C'</math>
となるから、
<math>w(x) = P_\nu(x) v(x) = CP_\nu(x)\int\frac{dx}{(1-x^2){P_\nu}^2} + C' P_\nu(x)</math>
である。今求めているのは、<math>P_\nu(x)</math> に独立な解であるから <math>C' = 0</math> としていい。<math>C = 1</math> とし、積分範囲を <math>\int_\infty^x</math> と取るときの <math>w(x)</math> を第二種 Legendre 函数 <math>Q_\nu(x)</math> と定義する。
すなわち、
<math>Q_\nu(x) = P_\nu(x)\int_\infty^x\frac{dx}{(1-x^2){P_\nu(x)}^2} </math>
である。
=== Legendre 多項式 ===
Legendre 函数 <math>P_\nu(x) </math> は <math>\nu </math> が非負整数 <math>n </math> のとき多項式になる。
<math>P_n(x) = \sum_{k=0}^\infty \frac{(n+1)_k(-n)_k}{(k!)^2}\left(\frac{1-x}{2}\right)^k = \sum_{k=0}^n \frac{(n+1)_k(-n)_k}{(k!)^2}\left(\frac{1-x}{2}\right)^k</math>
Pochhammer 記号について
<math>(n)_k = n(n+1)\cdots (n+k-1) = \frac{(n+k-1)!}{(n-1)!} </math>
<math>(-n)_k = (-n)(-n+1)\cdots(-n+k-1) = (-1)^kn(n-1)\cdots(n-k+1) = (-1)^k \frac{n!}{(n-k)!}</math> (ただし、<math>k \le n </math> のとき)
<math>k > n </math> ならば、<math>(-n)_k = 0 </math>となるから、
<math>P_n(x) = \sum_{k=0}^n \frac{(n+k)!}{(k!)^2(n-k)!}\left(\frac{x-1}{2}\right)^k </math>
を得る。Legendre 多項式は Rodrigues の公式
<math>P_n(x) = \frac{1}{2^n n!} \frac{d^n}{dx^n} (x^2-1)^n</math>
によっても定義される。
実際、
<math>\begin{align}P_n(x) &= \frac{1}{2^n n!} \frac{d^n}{dx^n} \{(x-1)^n(2+x-1)^n\} \\
&= \frac{1}{2^n n!} \frac{d^n}{dx^n}\sum_{k=0}^n \binom{n}{k} 2^{n-k} (x-1)^{n+k} \\
&= \frac{1}{2^n n!} \sum_{k=0}^n \frac{n!}{k!(n-k)!}\frac{(n+k)!}{k!} 2^{n-k} (x-1)^{k} \\
&= \sum_{k=0}^n \frac{(n+k)!}{(k!)^2(n-k)!} \left(\frac{x-1}{2}\right)^k \\
\end{align}</math>
となる。
次に、Legendre 多項式の <math>x</math> の冪での表示を求める。Rodrigues の公式を展開して、
<math>\begin{align}P_n(x) &= \frac{1}{2^n n!} \frac{d^n}{dx^n} (x^2-1)^n \\
&= \frac{1}{2^n n!} \frac{d^n}{dx^n} \sum_{k=0}^n \frac{n!}{k!(n-k)!}(-1)^k x^{2n-2k} \\
&= \frac{1}{2^n} \sum_{k=0}^{\left[\frac n 2 \right]} \frac{(-1)^k}{k!(n-k)!} \frac{(2n-2k)!}{(n-2k)!}x^{n-2k}
\end{align}</math>
ここで、いくつかの項は微分で落ちる。項が残る条件は <math>n - 2k \ge 0</math> で、 <math>k</math> が整数だから、 <math>\left[\frac n 2\right] \ge k</math> である。
さらに、
<math>\begin{align}
P_n(x) &= \frac{1}{2^n} \sum_{k=0}^{\left[\frac n 2 \right]} \frac{(-1)^k(2n-2k)!}{k!(n-k)!(n-2k)!} x^{n-2k} \\
&= \sum_{k=0}^{\left[\frac n 2 \right]} \frac{(-1)^k}{2^k} \frac{(2n-2k)!}{2^{n-k}k!(n-k)!(n-2k)!} x^{n-2k} \\
&= \sum_{k=0}^{\left[\frac n 2 \right]} \frac{(-1)^k}{2^k} \frac{(2n-2k-1)!!}{k!(n-2k)!} x^{n-2k}
\end{align}</math>
として Legendre 多項式の表示が得られる。ここで、<math>(2k)!! = 2^kk!, (2k-1)!! = \frac{(2k)!}{(2k)!!} = \frac{(2k)!}{2^kk!}</math> となることを使った。
Rodrigues の公式に Goursat の公式を使うと、
<math>P_n(x) = \frac{1}{2\pi i} \oint_x \left\{\frac{t^2-1}{2(t-x)}\right\}^n \frac{dt}{t-x}</math>
となる。ここで、<math>\frac{t^2-1}{2(t-x)} = \frac{1}{\zeta}</math> と変換をすると、<math>\zeta t^2 -2t + 2x - \zeta = 0</math> となるから、<math>t</math> について解いて、 <math>t = \frac{1-\sqrt{1-2x\zeta + \zeta^2}}{\zeta} = \frac{1-R}{\zeta}</math> となる。ここで、<math>R = \sqrt{1-2x\zeta + \zeta^2}</math> と置いた。<math>dR = \frac{\zeta - x}{R}d\zeta</math> となるから、<math>t </math> の微分は<math>dt =-\frac{d\zeta}{\zeta^2}(1-R) - \frac{dR}{\zeta} = \frac{1-R-x\zeta}{\zeta^2R}d\zeta </math> となる。<math>t - x = \frac{1-R-x\zeta}{\zeta} </math> であったから、<math>\frac{dt}{t-x} = \frac{d \zeta}{R\zeta}. </math>
<math>P_n(x) = \frac{1}{2\pi i} \oint_0 \frac{1}{\sqrt{1-2x\zeta + \zeta^2}}\frac{d\zeta}{\zeta^{n+1}}</math>
これは、
<math>\frac{1}{\sqrt{1-2xt + t^2}} = \sum_{n=0}^\infty P_n(x) t^n</math>
ということを意味する。すなわち、これが Legendre 多項式の母函数である。
=== Legendre の陪函数 ===
Legendre の陪微分方程式
<math>(1-x^2)\frac{d^2w}{dx^2} - 2x\frac{dw}{dx} + \left\{n(n+1) - \frac{m^2}{1-z^2}\right\} w = 0</math>
の解を求めたい。
Legendre の微分方程式
<math>(1-x^2)\frac{d^2w}{dx^2} - 2x \frac{dw}{dx} + n(n+1)w = 0</math>
で
<math>w = (1-x^2)^{\frac m 2} v</math>
とおいて、Legendre の陪微分方程式に代入すると、
<math>(1-x^2)v'' - 2(m+1)v' + (n-m)(n+m+1)v = 0</math>
を得る。
次に、Legendre の微分方程式を <math>w</math> の代わりに <math>u</math> とおいて、一回微分すると、
<math>(1-x^2)\frac{d^3u}{dx^3} - 2(1+1)x \frac{d^2u}{dx^2} + \{n(n+1) - 2\}\frac{du}{dx} = 0</math>
もう一回微分すると、
<math>(1-x^2)\frac{d^3u}{dx^3} - 2(1+1+1)x \frac{d^2u}{dx^2} + \{n(n+1) - 2 - 4\}\frac{du}{dx} = 0</math>
すなわち、Legendre の微分方程式を <math>m</math> 階微分すると、<math>2(1+2+\cdots +m) = m(m+1)</math> となるから、
<math>(1-x^2)\frac{d^{m+2}u}{dx^{m+2}} - 2(m+1)x \frac{d^{m+1}u}{dx^{m+1}} + (n-m)(n+m+1)\frac{d^mu}{dx^m} = 0</math>
である。
よって、
<math>v = \frac{d^mu}{dx^m}</math>
の関係があることがわかる。ここで、<math>u</math> は Legendre の微分方程式の解だから、
<math>u = P_n(x),Q_n(x)</math>
を代入して、
Legendre の陪微分方程式の解として、
<math>w = (1-x^2)^{\frac m 2}\frac{d^mP_n}{dx^m},(1-x^2)^{\frac m 2}\frac{d^mQ_n}{dx^m}</math>
を得る。この解をLengendre 陪函数として、
<math>P^m_n(x) = (1-x^2)^{\frac m 2}\frac{d^mP_n}{dx^m},\, Q^m_n(x) = (1-x^2)^{\frac m 2}\frac{d^mQ_n}{dx^m}</math>
と定義する。
=== 球面調和函数 ===
ラプラス方程式
<math>\triangle \Psi = 0</math>
を球座標で表すと、
<math>\frac{1}{r^2}\frac{\partial}{\partial r} \left(r^2 \frac{\partial \Psi}{\partial r} \right) + \frac{1}{r^2} \Lambda \Psi = 0</math>
となる。だたし、
<math>\Lambda = \frac{1}{\sin \theta} \frac{\partial}{\partial \theta} \left(\sin \theta \frac{\partial} {\partial \theta} \right) + \frac{1}{\sin^2\theta}\frac{\partial^2}{\partial \varphi^2}</math>
である。<math>\Psi</math> が
<math>\Psi(r,\theta, \varphi) = r^nY_n(\theta,\varphi)</math>
の形であるとき、<math>Y_n(\theta, \varphi)</math> を <math>n</math> 次の球面調和関数という。
== Bessel 函数 ==
電磁気学や量子力学などで、微分方程式
<math>\frac{d^2w}{dz^2} + \frac 1 z \frac{dw}{dz} + \left(1 - \frac{\nu^2}{z^2}\right)w = 0 </math>
を解く必要が発生する。この微分方程式の解を Bessel 函数という。
<math>w = \sum_{k=0}^\infty c_k z^{\rho + k}</math>
の形の級数展開を仮定する。
このとき、
<math> \frac{d^2w}{dz^2} =\sum_{k=0}^\infty (\rho + k)(\rho + k - 1)c_k z^{\rho + k-2} </math>
<math> \frac 1 z \frac{dw}{dz} =\sum_{k=0}^\infty (\rho + k)c_k z^{\rho + k-2} </math>
であるから、微分方程式は、
<math>\sum_{k=0}^\infty \left[\{(\rho+k)^2 - \nu^2\}c_kz^{\rho+k-2} + c_kz^{\rho + k}\right] = 0</math>
となる。
<math>\frac{1}{z^2}</math> の項は、<math>(\rho^2 - \nu^2)c_0 = 0</math> であるから、<math>\rho = \pm \nu</math>.
<math>\frac{1}{z}</math> の項は、<math>\{(\rho+1) - \nu^2\}c_1 = 0</math> であるから、<math>c_1 = 0</math>.
<math>k \ge 0</math> について、<math>-c_{k-2} = \{(\rho+k)^2 - \nu^2\}c_k</math> を得る。これより、<math>c_{2k+1} = 0</math> がわかる。
<math>\rho = \nu</math> のときは、
<math>c_{2k} = \frac{-c_{2(k-1)}}{2(\nu+k)\cdot 2k}</math>
であるから、
<math>c_{2k} = \frac{(-1)^k}{2^{2k}k!(\nu+k)(\nu+k-1)\cdots(\nu+1)} = \frac{(-1)^k\Gamma(\nu+1)}{2^{2k}k!\Gamma(\nu+k+1)}</math>
である。すなわち、
<math>w = c_0\sum_{k=0}^\infty \frac{(-1)^k\Gamma(\nu+1)}{2^{2k}k!\Gamma(\nu+k+1)} z^{2k}</math>
ここで、<math>c_0 = \frac{1}{2^{\nu} \Gamma(\nu+1)}</math> に選んだものを <math>\nu</math> 次 Bessel 函数 <math>J_\nu(z)</math> とする。
すなわち、
<math>J_\nu(z) = \sum_{k=0}^\infty \frac{(-1)^k}{k!\Gamma(\nu+k+1)} \left(\frac z 2\right)^{2k+\nu} </math>
である。<math>\rho = -\nu</math> のときも同様に計算することで、同じ式になる。
=== 性質 ===
負の整数 <math>-n</math> 次の Bessel 函数について、
<math>J_{-n}(z) = \sum_{k=n}^\infty \frac{(-1)^k}{k!\Gamma(-n+k+1)} \left(\frac z 2\right)^{2k-n} = \sum_{k=0}^\infty \frac{(-1)^{k+n}}{(k+n)!\Gamma(k+1)} \left(\frac z 2\right)^{2k+n} = (-1)^nJ_{n}(z) </math>
Bessel 函数の母函数は、
<math>\begin{align}\sum_{n=-\infty}^\infty J_n(z)t^n &= \sum_{n=0}^\infty J_n(z)t^n + \sum_{n=1}^\infty (-1)^nJ_n(z)t^{-n} \\
&= \sum_{n=0}^\infty \sum_{m=0}^\infty \frac{(-1)^m}{m!(n+m)!} \left(\frac z 2\right)^{2m+n}t^n + \sum_{n=1}^\infty \sum_{l=0}^\infty \frac{(-1)^{l+n}}{l!(n+l)!} \left(\frac z 2\right)^{2l+n}t^{-n}
\end{align}</math>
ここで、第一の総和で、<math>l = m + n</math> 、第二の総和で、<math>m = l + n</math> と置くと、
<math>\begin{align}\sum_{n=-\infty}^\infty J_n(z)t^n &=
\sum_{m=0}^\infty \sum_{l=m}^\infty \frac{(-1)^m}{m!l!} \left(\frac z 2\right)^{m+l}t^{l-m} + \sum_{l=0}^\infty \sum_{m=l+1}^\infty \frac{(-1)^{m}}{l!m!} \left(\frac z 2\right)^{l+m}t^{l-m}\\
&= \sum_{m,l = 0}^{\infty} \frac{1}{m!l!} \left(\frac{zt}{2}\right)^l \left(-\frac{z}{2t}\right)^m \\
&= \sum_{l = 0}^{\infty} \frac{1}{l!} \left(\frac{zt}{2}\right)^l \sum_{m = 0}^{\infty} \frac{1}{m!}\left(-\frac{z}{2t}\right)^m \\
&= e^{\frac z 2 \left(t - \frac 1 t\right)}
\end{align}</math>
となる。
また、母函数を <math>t^{n+1}</math> で割ると、
<math>\frac{e^{\frac z 2 \left(t - \frac 1 t\right)}}{t^{n+1}} = \frac{J_n(z)}{t} + \sum_{k=-\infty,k \neq n}^\infty J_k(z)t^{k-n-1} </math>
となるから、<math>t</math> について原点反時計回りに積分すると、
<math>J_n(z) = \frac{1}{2\pi i} \oint_0 \frac{e^{\frac z 2 \left(t - \frac 1 t\right)}}{t^{n+1}} dt</math>
が得られる。<math>t = e^{i\theta}</math> とすると、
<math>J_n(z) = \frac{1}{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}e^{z\frac{e^{i\theta}- e^{-i\theta}}{2}}e^{-in\theta}d\theta = \frac{1}{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}e^{iz\sin\theta - in\theta}d\theta = \frac{1}{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}[\cos(z\sin\theta - n\theta) + i\sin(z\sin\theta - n\theta)]d\theta</math>
ここで、<math>\sin(z\sin\theta - n\theta)</math> は奇函数だから積分は0。<math>\cos(z\sin\theta - n\theta)</math> は偶函数だから、
<math>J_n(z) = \frac 1 \pi \int_0^\pi\cos(n\theta - z\sin\theta)d\theta</math>
を得る。
母函数に<math>t=1</math> を代入すると、
<math>\sum_{k=-\infty}^{\infty} J_k(z) = 1</math>
あるいは、
<math>J_0(z) + 2\sum_{k=1}^\infty J_{2k}(z) =1</math>
を得る。
<math>e^{\frac{x+y}{2}(t-1/t)} = e^{\frac{x}{2}(t-1/t)}e^{\frac{y}{2}(t-1/t)}</math>
であるから、Bessel 函数の加法定理
<math>J_n(x+y) = \sum_{m=-\infty}^\infty J_{n-m}(x)J_m(y)</math>
を得る。
上昇演算子と <math>\overset{(\nu)}{T} </math> 下降演算子 <math>\underset{(\nu)}{T} </math> を次のように定義する。
<math>\overset{(\nu)}{T} = z^\nu\frac{d}{dz}z^{-\nu} =\frac{d}{dz} -\frac{\nu}{z} </math>
<math>\underset{(\nu)}{T} = z^{-\nu}\frac{d}{dz}z^\nu = \frac{d}{dz} + \frac{\nu}{z} </math>
ここで、右辺は、<math>\overset{(\nu)}{T}f = z^\nu\frac{d}{dz}(z^{-\nu}f) = z^\nu\left(-\nu z^{-\nu-1}f+ z^{-\nu}\frac{df}{dz} \right) =\left(\frac{d}{dz} -\frac{\nu}{z}\right)f </math> から成り立つ。下降演算子についても同様である。
これを Bessel 函数に作用させると、
<math>\begin{align}\overset{(\nu)}{T} J_\nu(z) &= z^\nu \frac{d}{dz} \sum_{k=0}^\infty \frac{(-1)^k z^{2k}}{2^{2k+\nu}k!\Gamma(\nu+k+1)} \\
&= z^\nu \sum_{k=1}^\infty \frac{(-1)^k z^{2k-1}}{2^{2k+\nu-1}(k-1)!\Gamma(\nu+k+1)} \\
&= -\sum_{k=0}^\infty \frac{(-1)^k z^{2k+1+\nu}}{2^{2k+\nu+1}k!\Gamma(\nu+1+k+1)} \\
&= -J_{\nu+1}(z)
\end{align} </math>
となる。また、
<math>\begin{align}\underset{(\nu)}{T} J_\nu(z) &= z^{-\nu} \frac{d}{dz} \sum_{k=0}^\infty \frac{(-1)^k z^{2k+2\nu}}{2^{2k+\nu}k!\Gamma(\nu+k+1)} \\
&= z^{-\nu} \sum_{k=0}^\infty \frac{(-1)^k (k+\nu) z^{2k+2\nu-1}}{2^{2k+\nu-1}k!\Gamma(\nu+k+1)} \\
&= \sum_{k=0}^\infty \frac{(-1)^k z^{2k+\nu-1}}{2^{2k+\nu-1}k!\Gamma(\nu+k)} \\
&= J_{\nu-1}(z)
\end{align} </math>
である。すなわち、
<math>J^'_\nu(z) - \frac{\nu}{z}J_\nu(z) = -J_{\nu+1}(z)</math>
<math>J^'_\nu(z) + \frac{\nu}{z}J_\nu(z) = J_{\nu-1}(z) </math>
二式を辺々加えて、
<math>2J^'_{\nu}(z) = J_{\nu-1}(z) - J_{\nu+1}(z) </math>
または、辺々引いて、
<math>\frac{2\nu}{z}J_\nu(z) = J_{\nu-1}(z) + J_{\nu+1}(z) </math>
を得る。
ところで、明らかに
<math>\underset{(\nu+1)}{T}\overset{(\nu)}{T}J_\nu(z) = - J_\nu(z)</math>
となる。この式は二階の微分方程式であるから、Bessel の微分方程式に帰着するはずである。実際、左辺を展開すると、
<math>\underset{(\nu+1)}{T}\overset{(\nu)}{T} = \left(\frac{d}{dz} +\frac{\nu+1}{z}\right) \left(\frac{d}{dz} -\frac{\nu}{z}\right) = \frac{d^2}{dz^2} +\frac{1}{z}\frac{d}{dz} - \frac{\nu^2}{z^2} </math>
となる。逆に考えると、昇降演算子とは微分方程式を因数分解したものだとも考えられる。
=== 第二種 Bessel 函数 ===
<math>\nu</math> が非整数のときは、<math>J_\nu(z),J_{-\nu}(z)</math> が独立な2解を与えるが、整数のときは、<math>J_{-n}(z) = (-1)^nJ_{n}(z) </math> という関係があるから、独立ではない。そこで、位数 <math>n</math> のときの Bessel の微分方程式の独立なもうひとつの解が存在する。Bessel の微分方程式を <math>\nu </math> で偏微分すれば、
<math>\frac{d^2}{dz^2} \left.\left(\frac{\partial J_\nu(z)} {\partial \nu}\right) \right|_{\nu=n} + \frac 1 z \frac{d}{dz}\left.\left(\frac{\partial J_\nu(z)} {\partial \nu}\right) \right|_{\nu=n} + \left(1 - \frac{n^2}{z^2}\right) \left.\left(\frac{\partial J_\nu(z)} {\partial \nu}\right) \right|_{\nu=n} = 0 </math>
となるから、<math>\left.\left(\frac{\partial J_\nu(z)} {\partial \nu} \right) \right|_{\nu=n} </math> は微分方程式の解である。<math>\left.\left(\frac{\partial J_{-\nu}(z)} {\partial \nu} \right) \right|_{\nu=n} </math> も同じ微分方程式を満たすから、その線形結合として、
<math>Y_n(z) = \frac 1 \pi \left(\left.\left(\frac{\partial J_\nu(z)} {\partial \nu}\right) \right|_{\nu=n} - (-1)^n \left.\left(\frac{\partial J_{-\nu(z)}} {\partial \nu} \right) \right|_{\nu=n} \right) </math>
を定義すると、<math>J_n (z) </math> に独立な解を与える。非整数の <math>\nu </math> に対しては、
<math>Y_\nu (z) = \frac{\cos \nu \pi J_\nu (z) - J_{-\nu} (z)}{\sin \nu \pi} </math>
と定義すると、 <math>\nu \rightarrow n </math> の極限として、 <math>Y_n(z) </math> を得ることができる。
第一種、第二種 Hankel 函数をそれぞれ
<math>H^{(1)}_\nu(z) = J_\nu(z) + i Y_\nu(z)</math>
<math>H^{(2)}_\nu(z) = J_\nu(z) - i Y_\nu(z) </math>
で定義する。
== 楕円積分と楕円函数 ==
第一種完全楕円積分 <math>K(k)</math> と第二種完全楕円積分 <math>E(k)</math> は
<math>K(k) = \int_0^{\frac \pi 2} \frac{d\theta}{\sqrt{1-k^2\sin^2\theta}}</math>
<math>E(k) = \int_0^{\frac \pi 2} {\sqrt{1-k^2\sin^2\theta}}d\theta</math>
で定義される。
Taylor 展開して、
<math>\begin{align}K(k) &= \int_0^{\frac \pi 2} \frac{d\theta}{\sqrt{1-k^2\sin^2\theta}} \\
&= \int_0^{\frac \pi 2} \sum_{n=0}^\infty \binom{-\frac 1 2}{n}(-1)^n k^{2n}\sin^{2n}\theta d\theta \\
&= \sum_{n=0}^\infty \frac{(2n-1)!!}{{(2n)!!}}k^{2n}\int_0^{\frac \pi 2}\sin^{2n}\theta d\theta \\
&= \frac \pi 2 \sum_{n=0}^\infty \left(\frac{(2n-1)!!}{{(2n)!!}}\right)^2 k^{2n} \\
\end{align}</math>
<math>\begin{align}E(k) &= \int_0^{\frac \pi 2} {\sqrt{1-k^2\sin^2\theta}}d\theta \\
&= \int_0^{\frac \pi 2} \sum_{n=0}^\infty \binom{\frac 1 2}{n}(-1)^n k^{2n}\sin^{2n}\theta d\theta \\
&= \sum_{n=0}^\infty \frac{-(2n-1)!!}{{(2n-1)(2n)!!}} k^{2n}\int_0^{\frac \pi 2}\sin^{2n}\theta d\theta \\
&= \frac \pi 2 \sum_{n=0}^\infty \left(\frac{(2n-1)!!}{{(2n)!!}}\right)^2 \frac{k^{2n}}{1-2n} \\
\end{align}</math>
となる。あるいは、超幾何函数を使うと、
<math>K(k) = \frac \pi 2 F\left(\frac 1 2, \frac 1 2; 1; k^2 \right)</math>
<math>E(k) = \frac \pi 2 F\left(\frac 1 2, -\frac 1 2; 1; k^2 \right)</math>
となる。この変形に、
<math>\left(\frac 1 2 \right)_n = \left(\frac{1}{2}\right)\left(\frac{1+2}{2}\right)\cdots \left(\frac{1+2n-2}{2}\right) = \frac{(2n-1)
!!}{2^n}</math>
<math>\left(-\frac 1 2 \right)_n = \left(-\frac{1}{2}\right)\left(\frac{1}{2}\right)\left(\frac{1+2}{2}\right)\cdots \left(\frac{1+2n-4}{2}\right) = -\frac{(2n-3)
!!}{2^n} </math>
を使う。
=== Theta函数 ===
<math>\vartheta(z,\tau) = \sum_{n=-\infty}^{\infty} e^{\pi in^2\tau + 2\pi inz}</math>
<math>\vartheta_{01}(z, \tau) = \sum_{n=-\infty}^{\infty} e^{\pi in^2\tau + 2\pi in\left(z+\frac 1 2\right)} = \vartheta\left(z+\frac 1 2, \tau\right)</math>
<math>\vartheta_{10}(z, \tau) = \sum_{n=-\infty}^{\infty} e^{\pi i\left(n + \frac 1 2 \right)^2\tau + 2\pi i\left(n+\frac 1 2\right)z} = e^{\frac 1 4 \pi i \tau + \pi i z}\vartheta\left(z+\frac 1 2, \tau\right)</math>
<math>\vartheta_{11}(z, \tau) = \sum_{n=-\infty}^{\infty} e^{\pi i\left(n + \frac 1 2 \right)^2\tau + 2\pi i\left(n+\frac 1 2\right)\left(z+\frac 1 2\right)} = e^{\frac 1 4 \pi i \tau + \pi i \left(z + \frac 1 2\right)}\vartheta\left(z+\frac 1 2, \tau\right)</math>
と定義する。<math>\vartheta_{00}(z,\tau) = \vartheta(z,\tau)
</math> とする。
<math>\vartheta(z+1,\tau) = \vartheta(z,\tau)</math>
<math>\vartheta(z+\tau,\tau) = e^{-\pi i (\tau + 2z)}\vartheta(z,\tau)</math>
さらに、
<math>\vartheta_{00}(z+1,\tau) = \vartheta_{00}(z,\tau)</math>
<math>\vartheta_{01}(z+1,\tau) = \vartheta_{01}(z,\tau)</math>
<math>\vartheta_{10}(z+1,\tau) = -\vartheta_{10}(z,\tau)</math>
<math>\vartheta_{11}(z+1,\tau) = -\vartheta_{11}(z,\tau)</math>
また、
<math>\vartheta_{00}(z+\tau,\tau) = e^{-\pi i (\tau + 2z)}\vartheta_{00}(z,\tau)</math>
<math>\vartheta_{01}(z+\tau,\tau) = -e^{-\pi i (\tau + 2z)} \vartheta_{01}(z,\tau)</math>
<math>\vartheta_{10}(z+\tau,\tau) = e^{-\pi i (\tau + 2z)}\vartheta_{10}(z,\tau)</math>
<math>\vartheta_{11}(z+\tau,\tau) = -e^{-\pi i (\tau + 2z)} \vartheta_{11}(z,\tau)</math>
<math>\vartheta_{00}\left(z+\frac 1 2,\tau\right) = \vartheta_{01}(z,\tau)</math>
<math>\vartheta_{01}\left(z+\frac 1 2,\tau\right) = \vartheta_{00}(z,\tau)</math>
<math>\vartheta_{10}\left(z+\frac 1 2,\tau\right) = -\vartheta_{11}(z,\tau)</math>
<math>\vartheta_{11}\left(z+\frac 1 2,\tau\right) = -\vartheta_{10}(z,\tau)</math>
Jacobi の楕円函数を
<math>\operatorname{sn} u = -\frac{\vartheta_{00} \vartheta_{11}(\zeta)}{\vartheta_{10}\vartheta_{01}(\zeta)}</math>
<math>\operatorname{cn} u = \frac{\vartheta_{01} \vartheta_{10}(\zeta)}{\vartheta_{10}\vartheta_{01}(\zeta)}</math>
<math>\operatorname{dn} u = \frac{\vartheta_{01} \vartheta_{00}(\zeta)}{\vartheta_{00}\vartheta_{01}(\zeta)}</math>
で定義する。ただし、<math>k = \left(\frac{\vartheta_{10}}{\vartheta_{00}}\right)^2</math> ,<math>u = \pi \vartheta_{00}^2 \zeta</math> である。
== 参考文献 ==
* 寺沢寛一『自然科学者のための数学概論(増訂版)』岩波書店、1983年。
* 高木貞治『定本 解析概論』岩波書店、2010年。
* 犬井鉄郎『特殊函数』岩波書店、1962年。
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Nermer314
62933
/* Legendre の陪函数 */
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wikitext
text/x-wiki
{{substub}}
== 球函数 ==
=== Legendre 函数 ===
Legendre の微分方程式
<math>(1-x^2)\frac{d^2w}{dx^2} - 2x \frac{dw}{dx} + \nu (\nu+1)w = 0</math>
は、<math>z = \frac{1-x}{2}</math> と変換すると、
<math>z(1-z)\frac{d^2w}{dz^2} + (1-2z)\frac{dw}{dz} + \nu(\nu+1)w = 0</math>
となる。これは、Gauss の超幾何微分方程式で、<math>\alpha = \nu+1,\beta = -\nu,\gamma = 1</math> とした場合だから、微分方程式の解は超幾何函数を使って、
<math>w = F(\nu+1,-\nu,1,z) = \sum_{k=0}^\infty \frac{(\nu+1)_k(-\nu)_k}{(k!)^2}\left(\frac{1-x}{2}\right)^k</math>
とかける。これを <math>\nu</math> 次 Legendre 函数 <math>P_\nu(x)</math> という。
次に、<math>P_\nu(x)</math> に線型独立なもう一つの解を定数変化法で求める。
<math>w = P_\nu(x) v(x) </math>
とおいて、Legendre の微分方程式に代入すると、
<math>(1-x^2)P_\nu v'' + \{2(1-x^2)P_\nu' -2xP_\nu \}v' = 0</math>
これは、<math>v'</math> に対する微分方程式として
<math>\frac{dv'}{v'} + \frac{dx\{2(1-x^2)P_\nu'P_\nu-2x{P_\nu}^2 \}}{(1-x^2){P_\nu}^2} = 0</math>
即ち、
<math>\frac{dv'}{v'} + \frac{d[(1-x^2)P_\nu^2]}{(1-x^2){P_\nu}^2} = 0</math>
と変形できる。
これを積分して、
<math>v' = \frac{C}{(1-x^2){P_\nu}^2}</math>
を得る。もう一度積分すると、
<math>v(x) = C\int \frac{dx}{(1-x^2){P_\nu}^2} + C'</math>
となるから、
<math>w(x) = P_\nu(x) v(x) = CP_\nu(x)\int\frac{dx}{(1-x^2){P_\nu}^2} + C' P_\nu(x)</math>
である。今求めているのは、<math>P_\nu(x)</math> に独立な解であるから <math>C' = 0</math> としていい。<math>C = 1</math> とし、積分範囲を <math>\int_\infty^x</math> と取るときの <math>w(x)</math> を第二種 Legendre 函数 <math>Q_\nu(x)</math> と定義する。
すなわち、
<math>Q_\nu(x) = P_\nu(x)\int_\infty^x\frac{dx}{(1-x^2){P_\nu(x)}^2} </math>
である。
=== Legendre 多項式 ===
Legendre 函数 <math>P_\nu(x) </math> は <math>\nu </math> が非負整数 <math>n </math> のとき多項式になる。
<math>P_n(x) = \sum_{k=0}^\infty \frac{(n+1)_k(-n)_k}{(k!)^2}\left(\frac{1-x}{2}\right)^k = \sum_{k=0}^n \frac{(n+1)_k(-n)_k}{(k!)^2}\left(\frac{1-x}{2}\right)^k</math>
Pochhammer 記号について
<math>(n)_k = n(n+1)\cdots (n+k-1) = \frac{(n+k-1)!}{(n-1)!} </math>
<math>(-n)_k = (-n)(-n+1)\cdots(-n+k-1) = (-1)^kn(n-1)\cdots(n-k+1) = (-1)^k \frac{n!}{(n-k)!}</math> (ただし、<math>k \le n </math> のとき)
<math>k > n </math> ならば、<math>(-n)_k = 0 </math>となるから、
<math>P_n(x) = \sum_{k=0}^n \frac{(n+k)!}{(k!)^2(n-k)!}\left(\frac{x-1}{2}\right)^k </math>
を得る。Legendre 多項式は Rodrigues の公式
<math>P_n(x) = \frac{1}{2^n n!} \frac{d^n}{dx^n} (x^2-1)^n</math>
によっても定義される。
実際、
<math>\begin{align}P_n(x) &= \frac{1}{2^n n!} \frac{d^n}{dx^n} \{(x-1)^n(2+x-1)^n\} \\
&= \frac{1}{2^n n!} \frac{d^n}{dx^n}\sum_{k=0}^n \binom{n}{k} 2^{n-k} (x-1)^{n+k} \\
&= \frac{1}{2^n n!} \sum_{k=0}^n \frac{n!}{k!(n-k)!}\frac{(n+k)!}{k!} 2^{n-k} (x-1)^{k} \\
&= \sum_{k=0}^n \frac{(n+k)!}{(k!)^2(n-k)!} \left(\frac{x-1}{2}\right)^k \\
\end{align}</math>
となる。
次に、Legendre 多項式の <math>x</math> の冪での表示を求める。Rodrigues の公式を展開して、
<math>\begin{align}P_n(x) &= \frac{1}{2^n n!} \frac{d^n}{dx^n} (x^2-1)^n \\
&= \frac{1}{2^n n!} \frac{d^n}{dx^n} \sum_{k=0}^n \frac{n!}{k!(n-k)!}(-1)^k x^{2n-2k} \\
&= \frac{1}{2^n} \sum_{k=0}^{\left[\frac n 2 \right]} \frac{(-1)^k}{k!(n-k)!} \frac{(2n-2k)!}{(n-2k)!}x^{n-2k}
\end{align}</math>
ここで、いくつかの項は微分で落ちる。項が残る条件は <math>n - 2k \ge 0</math> で、 <math>k</math> が整数だから、 <math>\left[\frac n 2\right] \ge k</math> である。
さらに、
<math>\begin{align}
P_n(x) &= \frac{1}{2^n} \sum_{k=0}^{\left[\frac n 2 \right]} \frac{(-1)^k(2n-2k)!}{k!(n-k)!(n-2k)!} x^{n-2k} \\
&= \sum_{k=0}^{\left[\frac n 2 \right]} \frac{(-1)^k}{2^k} \frac{(2n-2k)!}{2^{n-k}k!(n-k)!(n-2k)!} x^{n-2k} \\
&= \sum_{k=0}^{\left[\frac n 2 \right]} \frac{(-1)^k}{2^k} \frac{(2n-2k-1)!!}{k!(n-2k)!} x^{n-2k}
\end{align}</math>
として Legendre 多項式の表示が得られる。ここで、<math>(2k)!! = 2^kk!, (2k-1)!! = \frac{(2k)!}{(2k)!!} = \frac{(2k)!}{2^kk!}</math> となることを使った。
Rodrigues の公式に Goursat の公式を使うと、
<math>P_n(x) = \frac{1}{2\pi i} \oint_x \left\{\frac{t^2-1}{2(t-x)}\right\}^n \frac{dt}{t-x}</math>
となる。ここで、<math>\frac{t^2-1}{2(t-x)} = \frac{1}{\zeta}</math> と変換をすると、<math>\zeta t^2 -2t + 2x - \zeta = 0</math> となるから、<math>t</math> について解いて、 <math>t = \frac{1-\sqrt{1-2x\zeta + \zeta^2}}{\zeta} = \frac{1-R}{\zeta}</math> となる。ここで、<math>R = \sqrt{1-2x\zeta + \zeta^2}</math> と置いた。<math>dR = \frac{\zeta - x}{R}d\zeta</math> となるから、<math>t </math> の微分は<math>dt =-\frac{d\zeta}{\zeta^2}(1-R) - \frac{dR}{\zeta} = \frac{1-R-x\zeta}{\zeta^2R}d\zeta </math> となる。<math>t - x = \frac{1-R-x\zeta}{\zeta} </math> であったから、<math>\frac{dt}{t-x} = \frac{d \zeta}{R\zeta}. </math>
<math>P_n(x) = \frac{1}{2\pi i} \oint_0 \frac{1}{\sqrt{1-2x\zeta + \zeta^2}}\frac{d\zeta}{\zeta^{n+1}}</math>
これは、
<math>\frac{1}{\sqrt{1-2xt + t^2}} = \sum_{n=0}^\infty P_n(x) t^n</math>
ということを意味する。すなわち、これが Legendre 多項式の母函数である。
=== Legendre の陪函数 ===
Legendre の陪微分方程式
<math>(1-x^2)\frac{d^2w}{dx^2} - 2x\frac{dw}{dx} + \left\{n(n+1) - \frac{m^2}{1-x^2}\right\} w = 0</math>
の解を求めたい。
Legendre の微分方程式
<math>(1-x^2)\frac{d^2w}{dx^2} - 2x \frac{dw}{dx} + n(n+1)w = 0</math>
で
<math>w = (1-x^2)^{\frac m 2} v</math>
とおいて、Legendre の陪微分方程式に代入すると、
<math>(1-x^2)v'' - 2(m+1)v' + (n-m)(n+m+1)v = 0</math>
を得る。
次に、Legendre の微分方程式を <math>w</math> の代わりに <math>u</math> とおいて、一回微分すると、
<math>(1-x^2)\frac{d^3u}{dx^3} - 2(1+1)x \frac{d^2u}{dx^2} + \{n(n+1) - 2\}\frac{du}{dx} = 0</math>
もう一回微分すると、
<math>(1-x^2)\frac{d^3u}{dx^3} - 2(1+1+1)x \frac{d^2u}{dx^2} + \{n(n+1) - 2 - 4\}\frac{du}{dx} = 0</math>
すなわち、Legendre の微分方程式を <math>m</math> 階微分すると、<math>2(1+2+\cdots +m) = m(m+1)</math> となるから、
<math>(1-x^2)\frac{d^{m+2}u}{dx^{m+2}} - 2(m+1)x \frac{d^{m+1}u}{dx^{m+1}} + (n-m)(n+m+1)\frac{d^mu}{dx^m} = 0</math>
である。
よって、
<math>v = \frac{d^mu}{dx^m}</math>
の関係があることがわかる。ここで、<math>u</math> は Legendre の微分方程式の解だから、
<math>u = P_n(x),Q_n(x)</math>
を代入して、
Legendre の陪微分方程式の解として、
<math>w = (1-x^2)^{\frac m 2}\frac{d^mP_n}{dx^m},(1-x^2)^{\frac m 2}\frac{d^mQ_n}{dx^m}</math>
を得る。この解をLengendre 陪函数として、
<math>P^m_n(x) = (1-x^2)^{\frac m 2}\frac{d^mP_n}{dx^m},\, Q^m_n(x) = (1-x^2)^{\frac m 2}\frac{d^mQ_n}{dx^m}</math>
と定義する。
=== 球面調和函数 ===
ラプラス方程式
<math>\triangle \Psi = 0</math>
を球座標で表すと、
<math>\frac{1}{r^2}\frac{\partial}{\partial r} \left(r^2 \frac{\partial \Psi}{\partial r} \right) + \frac{1}{r^2} \Lambda \Psi = 0</math>
となる。だたし、
<math>\Lambda = \frac{1}{\sin \theta} \frac{\partial}{\partial \theta} \left(\sin \theta \frac{\partial} {\partial \theta} \right) + \frac{1}{\sin^2\theta}\frac{\partial^2}{\partial \varphi^2}</math>
である。<math>\Psi</math> が
<math>\Psi(r,\theta, \varphi) = r^nY_n(\theta,\varphi)</math>
の形であるとき、<math>Y_n(\theta, \varphi)</math> を <math>n</math> 次の球面調和関数という。
== Bessel 函数 ==
電磁気学や量子力学などで、微分方程式
<math>\frac{d^2w}{dz^2} + \frac 1 z \frac{dw}{dz} + \left(1 - \frac{\nu^2}{z^2}\right)w = 0 </math>
を解く必要が発生する。この微分方程式の解を Bessel 函数という。
<math>w = \sum_{k=0}^\infty c_k z^{\rho + k}</math>
の形の級数展開を仮定する。
このとき、
<math> \frac{d^2w}{dz^2} =\sum_{k=0}^\infty (\rho + k)(\rho + k - 1)c_k z^{\rho + k-2} </math>
<math> \frac 1 z \frac{dw}{dz} =\sum_{k=0}^\infty (\rho + k)c_k z^{\rho + k-2} </math>
であるから、微分方程式は、
<math>\sum_{k=0}^\infty \left[\{(\rho+k)^2 - \nu^2\}c_kz^{\rho+k-2} + c_kz^{\rho + k}\right] = 0</math>
となる。
<math>\frac{1}{z^2}</math> の項は、<math>(\rho^2 - \nu^2)c_0 = 0</math> であるから、<math>\rho = \pm \nu</math>.
<math>\frac{1}{z}</math> の項は、<math>\{(\rho+1) - \nu^2\}c_1 = 0</math> であるから、<math>c_1 = 0</math>.
<math>k \ge 0</math> について、<math>-c_{k-2} = \{(\rho+k)^2 - \nu^2\}c_k</math> を得る。これより、<math>c_{2k+1} = 0</math> がわかる。
<math>\rho = \nu</math> のときは、
<math>c_{2k} = \frac{-c_{2(k-1)}}{2(\nu+k)\cdot 2k}</math>
であるから、
<math>c_{2k} = \frac{(-1)^k}{2^{2k}k!(\nu+k)(\nu+k-1)\cdots(\nu+1)} = \frac{(-1)^k\Gamma(\nu+1)}{2^{2k}k!\Gamma(\nu+k+1)}</math>
である。すなわち、
<math>w = c_0\sum_{k=0}^\infty \frac{(-1)^k\Gamma(\nu+1)}{2^{2k}k!\Gamma(\nu+k+1)} z^{2k}</math>
ここで、<math>c_0 = \frac{1}{2^{\nu} \Gamma(\nu+1)}</math> に選んだものを <math>\nu</math> 次 Bessel 函数 <math>J_\nu(z)</math> とする。
すなわち、
<math>J_\nu(z) = \sum_{k=0}^\infty \frac{(-1)^k}{k!\Gamma(\nu+k+1)} \left(\frac z 2\right)^{2k+\nu} </math>
である。<math>\rho = -\nu</math> のときも同様に計算することで、同じ式になる。
=== 性質 ===
負の整数 <math>-n</math> 次の Bessel 函数について、
<math>J_{-n}(z) = \sum_{k=n}^\infty \frac{(-1)^k}{k!\Gamma(-n+k+1)} \left(\frac z 2\right)^{2k-n} = \sum_{k=0}^\infty \frac{(-1)^{k+n}}{(k+n)!\Gamma(k+1)} \left(\frac z 2\right)^{2k+n} = (-1)^nJ_{n}(z) </math>
Bessel 函数の母函数は、
<math>\begin{align}\sum_{n=-\infty}^\infty J_n(z)t^n &= \sum_{n=0}^\infty J_n(z)t^n + \sum_{n=1}^\infty (-1)^nJ_n(z)t^{-n} \\
&= \sum_{n=0}^\infty \sum_{m=0}^\infty \frac{(-1)^m}{m!(n+m)!} \left(\frac z 2\right)^{2m+n}t^n + \sum_{n=1}^\infty \sum_{l=0}^\infty \frac{(-1)^{l+n}}{l!(n+l)!} \left(\frac z 2\right)^{2l+n}t^{-n}
\end{align}</math>
ここで、第一の総和で、<math>l = m + n</math> 、第二の総和で、<math>m = l + n</math> と置くと、
<math>\begin{align}\sum_{n=-\infty}^\infty J_n(z)t^n &=
\sum_{m=0}^\infty \sum_{l=m}^\infty \frac{(-1)^m}{m!l!} \left(\frac z 2\right)^{m+l}t^{l-m} + \sum_{l=0}^\infty \sum_{m=l+1}^\infty \frac{(-1)^{m}}{l!m!} \left(\frac z 2\right)^{l+m}t^{l-m}\\
&= \sum_{m,l = 0}^{\infty} \frac{1}{m!l!} \left(\frac{zt}{2}\right)^l \left(-\frac{z}{2t}\right)^m \\
&= \sum_{l = 0}^{\infty} \frac{1}{l!} \left(\frac{zt}{2}\right)^l \sum_{m = 0}^{\infty} \frac{1}{m!}\left(-\frac{z}{2t}\right)^m \\
&= e^{\frac z 2 \left(t - \frac 1 t\right)}
\end{align}</math>
となる。
また、母函数を <math>t^{n+1}</math> で割ると、
<math>\frac{e^{\frac z 2 \left(t - \frac 1 t\right)}}{t^{n+1}} = \frac{J_n(z)}{t} + \sum_{k=-\infty,k \neq n}^\infty J_k(z)t^{k-n-1} </math>
となるから、<math>t</math> について原点反時計回りに積分すると、
<math>J_n(z) = \frac{1}{2\pi i} \oint_0 \frac{e^{\frac z 2 \left(t - \frac 1 t\right)}}{t^{n+1}} dt</math>
が得られる。<math>t = e^{i\theta}</math> とすると、
<math>J_n(z) = \frac{1}{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}e^{z\frac{e^{i\theta}- e^{-i\theta}}{2}}e^{-in\theta}d\theta = \frac{1}{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}e^{iz\sin\theta - in\theta}d\theta = \frac{1}{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}[\cos(z\sin\theta - n\theta) + i\sin(z\sin\theta - n\theta)]d\theta</math>
ここで、<math>\sin(z\sin\theta - n\theta)</math> は奇函数だから積分は0。<math>\cos(z\sin\theta - n\theta)</math> は偶函数だから、
<math>J_n(z) = \frac 1 \pi \int_0^\pi\cos(n\theta - z\sin\theta)d\theta</math>
を得る。
母函数に<math>t=1</math> を代入すると、
<math>\sum_{k=-\infty}^{\infty} J_k(z) = 1</math>
あるいは、
<math>J_0(z) + 2\sum_{k=1}^\infty J_{2k}(z) =1</math>
を得る。
<math>e^{\frac{x+y}{2}(t-1/t)} = e^{\frac{x}{2}(t-1/t)}e^{\frac{y}{2}(t-1/t)}</math>
であるから、Bessel 函数の加法定理
<math>J_n(x+y) = \sum_{m=-\infty}^\infty J_{n-m}(x)J_m(y)</math>
を得る。
上昇演算子と <math>\overset{(\nu)}{T} </math> 下降演算子 <math>\underset{(\nu)}{T} </math> を次のように定義する。
<math>\overset{(\nu)}{T} = z^\nu\frac{d}{dz}z^{-\nu} =\frac{d}{dz} -\frac{\nu}{z} </math>
<math>\underset{(\nu)}{T} = z^{-\nu}\frac{d}{dz}z^\nu = \frac{d}{dz} + \frac{\nu}{z} </math>
ここで、右辺は、<math>\overset{(\nu)}{T}f = z^\nu\frac{d}{dz}(z^{-\nu}f) = z^\nu\left(-\nu z^{-\nu-1}f+ z^{-\nu}\frac{df}{dz} \right) =\left(\frac{d}{dz} -\frac{\nu}{z}\right)f </math> から成り立つ。下降演算子についても同様である。
これを Bessel 函数に作用させると、
<math>\begin{align}\overset{(\nu)}{T} J_\nu(z) &= z^\nu \frac{d}{dz} \sum_{k=0}^\infty \frac{(-1)^k z^{2k}}{2^{2k+\nu}k!\Gamma(\nu+k+1)} \\
&= z^\nu \sum_{k=1}^\infty \frac{(-1)^k z^{2k-1}}{2^{2k+\nu-1}(k-1)!\Gamma(\nu+k+1)} \\
&= -\sum_{k=0}^\infty \frac{(-1)^k z^{2k+1+\nu}}{2^{2k+\nu+1}k!\Gamma(\nu+1+k+1)} \\
&= -J_{\nu+1}(z)
\end{align} </math>
となる。また、
<math>\begin{align}\underset{(\nu)}{T} J_\nu(z) &= z^{-\nu} \frac{d}{dz} \sum_{k=0}^\infty \frac{(-1)^k z^{2k+2\nu}}{2^{2k+\nu}k!\Gamma(\nu+k+1)} \\
&= z^{-\nu} \sum_{k=0}^\infty \frac{(-1)^k (k+\nu) z^{2k+2\nu-1}}{2^{2k+\nu-1}k!\Gamma(\nu+k+1)} \\
&= \sum_{k=0}^\infty \frac{(-1)^k z^{2k+\nu-1}}{2^{2k+\nu-1}k!\Gamma(\nu+k)} \\
&= J_{\nu-1}(z)
\end{align} </math>
である。すなわち、
<math>J^'_\nu(z) - \frac{\nu}{z}J_\nu(z) = -J_{\nu+1}(z)</math>
<math>J^'_\nu(z) + \frac{\nu}{z}J_\nu(z) = J_{\nu-1}(z) </math>
二式を辺々加えて、
<math>2J^'_{\nu}(z) = J_{\nu-1}(z) - J_{\nu+1}(z) </math>
または、辺々引いて、
<math>\frac{2\nu}{z}J_\nu(z) = J_{\nu-1}(z) + J_{\nu+1}(z) </math>
を得る。
ところで、明らかに
<math>\underset{(\nu+1)}{T}\overset{(\nu)}{T}J_\nu(z) = - J_\nu(z)</math>
となる。この式は二階の微分方程式であるから、Bessel の微分方程式に帰着するはずである。実際、左辺を展開すると、
<math>\underset{(\nu+1)}{T}\overset{(\nu)}{T} = \left(\frac{d}{dz} +\frac{\nu+1}{z}\right) \left(\frac{d}{dz} -\frac{\nu}{z}\right) = \frac{d^2}{dz^2} +\frac{1}{z}\frac{d}{dz} - \frac{\nu^2}{z^2} </math>
となる。逆に考えると、昇降演算子とは微分方程式を因数分解したものだとも考えられる。
=== 第二種 Bessel 函数 ===
<math>\nu</math> が非整数のときは、<math>J_\nu(z),J_{-\nu}(z)</math> が独立な2解を与えるが、整数のときは、<math>J_{-n}(z) = (-1)^nJ_{n}(z) </math> という関係があるから、独立ではない。そこで、位数 <math>n</math> のときの Bessel の微分方程式の独立なもうひとつの解が存在する。Bessel の微分方程式を <math>\nu </math> で偏微分すれば、
<math>\frac{d^2}{dz^2} \left.\left(\frac{\partial J_\nu(z)} {\partial \nu}\right) \right|_{\nu=n} + \frac 1 z \frac{d}{dz}\left.\left(\frac{\partial J_\nu(z)} {\partial \nu}\right) \right|_{\nu=n} + \left(1 - \frac{n^2}{z^2}\right) \left.\left(\frac{\partial J_\nu(z)} {\partial \nu}\right) \right|_{\nu=n} = 0 </math>
となるから、<math>\left.\left(\frac{\partial J_\nu(z)} {\partial \nu} \right) \right|_{\nu=n} </math> は微分方程式の解である。<math>\left.\left(\frac{\partial J_{-\nu}(z)} {\partial \nu} \right) \right|_{\nu=n} </math> も同じ微分方程式を満たすから、その線形結合として、
<math>Y_n(z) = \frac 1 \pi \left(\left.\left(\frac{\partial J_\nu(z)} {\partial \nu}\right) \right|_{\nu=n} - (-1)^n \left.\left(\frac{\partial J_{-\nu(z)}} {\partial \nu} \right) \right|_{\nu=n} \right) </math>
を定義すると、<math>J_n (z) </math> に独立な解を与える。非整数の <math>\nu </math> に対しては、
<math>Y_\nu (z) = \frac{\cos \nu \pi J_\nu (z) - J_{-\nu} (z)}{\sin \nu \pi} </math>
と定義すると、 <math>\nu \rightarrow n </math> の極限として、 <math>Y_n(z) </math> を得ることができる。
第一種、第二種 Hankel 函数をそれぞれ
<math>H^{(1)}_\nu(z) = J_\nu(z) + i Y_\nu(z)</math>
<math>H^{(2)}_\nu(z) = J_\nu(z) - i Y_\nu(z) </math>
で定義する。
== 楕円積分と楕円函数 ==
第一種完全楕円積分 <math>K(k)</math> と第二種完全楕円積分 <math>E(k)</math> は
<math>K(k) = \int_0^{\frac \pi 2} \frac{d\theta}{\sqrt{1-k^2\sin^2\theta}}</math>
<math>E(k) = \int_0^{\frac \pi 2} {\sqrt{1-k^2\sin^2\theta}}d\theta</math>
で定義される。
Taylor 展開して、
<math>\begin{align}K(k) &= \int_0^{\frac \pi 2} \frac{d\theta}{\sqrt{1-k^2\sin^2\theta}} \\
&= \int_0^{\frac \pi 2} \sum_{n=0}^\infty \binom{-\frac 1 2}{n}(-1)^n k^{2n}\sin^{2n}\theta d\theta \\
&= \sum_{n=0}^\infty \frac{(2n-1)!!}{{(2n)!!}}k^{2n}\int_0^{\frac \pi 2}\sin^{2n}\theta d\theta \\
&= \frac \pi 2 \sum_{n=0}^\infty \left(\frac{(2n-1)!!}{{(2n)!!}}\right)^2 k^{2n} \\
\end{align}</math>
<math>\begin{align}E(k) &= \int_0^{\frac \pi 2} {\sqrt{1-k^2\sin^2\theta}}d\theta \\
&= \int_0^{\frac \pi 2} \sum_{n=0}^\infty \binom{\frac 1 2}{n}(-1)^n k^{2n}\sin^{2n}\theta d\theta \\
&= \sum_{n=0}^\infty \frac{-(2n-1)!!}{{(2n-1)(2n)!!}} k^{2n}\int_0^{\frac \pi 2}\sin^{2n}\theta d\theta \\
&= \frac \pi 2 \sum_{n=0}^\infty \left(\frac{(2n-1)!!}{{(2n)!!}}\right)^2 \frac{k^{2n}}{1-2n} \\
\end{align}</math>
となる。あるいは、超幾何函数を使うと、
<math>K(k) = \frac \pi 2 F\left(\frac 1 2, \frac 1 2; 1; k^2 \right)</math>
<math>E(k) = \frac \pi 2 F\left(\frac 1 2, -\frac 1 2; 1; k^2 \right)</math>
となる。この変形に、
<math>\left(\frac 1 2 \right)_n = \left(\frac{1}{2}\right)\left(\frac{1+2}{2}\right)\cdots \left(\frac{1+2n-2}{2}\right) = \frac{(2n-1)
!!}{2^n}</math>
<math>\left(-\frac 1 2 \right)_n = \left(-\frac{1}{2}\right)\left(\frac{1}{2}\right)\left(\frac{1+2}{2}\right)\cdots \left(\frac{1+2n-4}{2}\right) = -\frac{(2n-3)
!!}{2^n} </math>
を使う。
=== Theta函数 ===
<math>\vartheta(z,\tau) = \sum_{n=-\infty}^{\infty} e^{\pi in^2\tau + 2\pi inz}</math>
<math>\vartheta_{01}(z, \tau) = \sum_{n=-\infty}^{\infty} e^{\pi in^2\tau + 2\pi in\left(z+\frac 1 2\right)} = \vartheta\left(z+\frac 1 2, \tau\right)</math>
<math>\vartheta_{10}(z, \tau) = \sum_{n=-\infty}^{\infty} e^{\pi i\left(n + \frac 1 2 \right)^2\tau + 2\pi i\left(n+\frac 1 2\right)z} = e^{\frac 1 4 \pi i \tau + \pi i z}\vartheta\left(z+\frac 1 2, \tau\right)</math>
<math>\vartheta_{11}(z, \tau) = \sum_{n=-\infty}^{\infty} e^{\pi i\left(n + \frac 1 2 \right)^2\tau + 2\pi i\left(n+\frac 1 2\right)\left(z+\frac 1 2\right)} = e^{\frac 1 4 \pi i \tau + \pi i \left(z + \frac 1 2\right)}\vartheta\left(z+\frac 1 2, \tau\right)</math>
と定義する。<math>\vartheta_{00}(z,\tau) = \vartheta(z,\tau)
</math> とする。
<math>\vartheta(z+1,\tau) = \vartheta(z,\tau)</math>
<math>\vartheta(z+\tau,\tau) = e^{-\pi i (\tau + 2z)}\vartheta(z,\tau)</math>
さらに、
<math>\vartheta_{00}(z+1,\tau) = \vartheta_{00}(z,\tau)</math>
<math>\vartheta_{01}(z+1,\tau) = \vartheta_{01}(z,\tau)</math>
<math>\vartheta_{10}(z+1,\tau) = -\vartheta_{10}(z,\tau)</math>
<math>\vartheta_{11}(z+1,\tau) = -\vartheta_{11}(z,\tau)</math>
また、
<math>\vartheta_{00}(z+\tau,\tau) = e^{-\pi i (\tau + 2z)}\vartheta_{00}(z,\tau)</math>
<math>\vartheta_{01}(z+\tau,\tau) = -e^{-\pi i (\tau + 2z)} \vartheta_{01}(z,\tau)</math>
<math>\vartheta_{10}(z+\tau,\tau) = e^{-\pi i (\tau + 2z)}\vartheta_{10}(z,\tau)</math>
<math>\vartheta_{11}(z+\tau,\tau) = -e^{-\pi i (\tau + 2z)} \vartheta_{11}(z,\tau)</math>
<math>\vartheta_{00}\left(z+\frac 1 2,\tau\right) = \vartheta_{01}(z,\tau)</math>
<math>\vartheta_{01}\left(z+\frac 1 2,\tau\right) = \vartheta_{00}(z,\tau)</math>
<math>\vartheta_{10}\left(z+\frac 1 2,\tau\right) = -\vartheta_{11}(z,\tau)</math>
<math>\vartheta_{11}\left(z+\frac 1 2,\tau\right) = -\vartheta_{10}(z,\tau)</math>
Jacobi の楕円函数を
<math>\operatorname{sn} u = -\frac{\vartheta_{00} \vartheta_{11}(\zeta)}{\vartheta_{10}\vartheta_{01}(\zeta)}</math>
<math>\operatorname{cn} u = \frac{\vartheta_{01} \vartheta_{10}(\zeta)}{\vartheta_{10}\vartheta_{01}(\zeta)}</math>
<math>\operatorname{dn} u = \frac{\vartheta_{01} \vartheta_{00}(\zeta)}{\vartheta_{00}\vartheta_{01}(\zeta)}</math>
で定義する。ただし、<math>k = \left(\frac{\vartheta_{10}}{\vartheta_{00}}\right)^2</math> ,<math>u = \pi \vartheta_{00}^2 \zeta</math> である。
== 参考文献 ==
* 寺沢寛一『自然科学者のための数学概論(増訂版)』岩波書店、1983年。
* 高木貞治『定本 解析概論』岩波書店、2010年。
* 犬井鉄郎『特殊函数』岩波書店、1962年。
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Nermer314
62933
/* Legendre の陪函数 */
263204
wikitext
text/x-wiki
{{substub}}
== 球函数 ==
=== Legendre 函数 ===
Legendre の微分方程式
<math>(1-x^2)\frac{d^2w}{dx^2} - 2x \frac{dw}{dx} + \nu (\nu+1)w = 0</math>
は、<math>z = \frac{1-x}{2}</math> と変換すると、
<math>z(1-z)\frac{d^2w}{dz^2} + (1-2z)\frac{dw}{dz} + \nu(\nu+1)w = 0</math>
となる。これは、Gauss の超幾何微分方程式で、<math>\alpha = \nu+1,\beta = -\nu,\gamma = 1</math> とした場合だから、微分方程式の解は超幾何函数を使って、
<math>w = F(\nu+1,-\nu,1,z) = \sum_{k=0}^\infty \frac{(\nu+1)_k(-\nu)_k}{(k!)^2}\left(\frac{1-x}{2}\right)^k</math>
とかける。これを <math>\nu</math> 次 Legendre 函数 <math>P_\nu(x)</math> という。
次に、<math>P_\nu(x)</math> に線型独立なもう一つの解を定数変化法で求める。
<math>w = P_\nu(x) v(x) </math>
とおいて、Legendre の微分方程式に代入すると、
<math>(1-x^2)P_\nu v'' + \{2(1-x^2)P_\nu' -2xP_\nu \}v' = 0</math>
これは、<math>v'</math> に対する微分方程式として
<math>\frac{dv'}{v'} + \frac{dx\{2(1-x^2)P_\nu'P_\nu-2x{P_\nu}^2 \}}{(1-x^2){P_\nu}^2} = 0</math>
即ち、
<math>\frac{dv'}{v'} + \frac{d[(1-x^2)P_\nu^2]}{(1-x^2){P_\nu}^2} = 0</math>
と変形できる。
これを積分して、
<math>v' = \frac{C}{(1-x^2){P_\nu}^2}</math>
を得る。もう一度積分すると、
<math>v(x) = C\int \frac{dx}{(1-x^2){P_\nu}^2} + C'</math>
となるから、
<math>w(x) = P_\nu(x) v(x) = CP_\nu(x)\int\frac{dx}{(1-x^2){P_\nu}^2} + C' P_\nu(x)</math>
である。今求めているのは、<math>P_\nu(x)</math> に独立な解であるから <math>C' = 0</math> としていい。<math>C = 1</math> とし、積分範囲を <math>\int_\infty^x</math> と取るときの <math>w(x)</math> を第二種 Legendre 函数 <math>Q_\nu(x)</math> と定義する。
すなわち、
<math>Q_\nu(x) = P_\nu(x)\int_\infty^x\frac{dx}{(1-x^2){P_\nu(x)}^2} </math>
である。
=== Legendre 多項式 ===
Legendre 函数 <math>P_\nu(x) </math> は <math>\nu </math> が非負整数 <math>n </math> のとき多項式になる。
<math>P_n(x) = \sum_{k=0}^\infty \frac{(n+1)_k(-n)_k}{(k!)^2}\left(\frac{1-x}{2}\right)^k = \sum_{k=0}^n \frac{(n+1)_k(-n)_k}{(k!)^2}\left(\frac{1-x}{2}\right)^k</math>
Pochhammer 記号について
<math>(n)_k = n(n+1)\cdots (n+k-1) = \frac{(n+k-1)!}{(n-1)!} </math>
<math>(-n)_k = (-n)(-n+1)\cdots(-n+k-1) = (-1)^kn(n-1)\cdots(n-k+1) = (-1)^k \frac{n!}{(n-k)!}</math> (ただし、<math>k \le n </math> のとき)
<math>k > n </math> ならば、<math>(-n)_k = 0 </math>となるから、
<math>P_n(x) = \sum_{k=0}^n \frac{(n+k)!}{(k!)^2(n-k)!}\left(\frac{x-1}{2}\right)^k </math>
を得る。Legendre 多項式は Rodrigues の公式
<math>P_n(x) = \frac{1}{2^n n!} \frac{d^n}{dx^n} (x^2-1)^n</math>
によっても定義される。
実際、
<math>\begin{align}P_n(x) &= \frac{1}{2^n n!} \frac{d^n}{dx^n} \{(x-1)^n(2+x-1)^n\} \\
&= \frac{1}{2^n n!} \frac{d^n}{dx^n}\sum_{k=0}^n \binom{n}{k} 2^{n-k} (x-1)^{n+k} \\
&= \frac{1}{2^n n!} \sum_{k=0}^n \frac{n!}{k!(n-k)!}\frac{(n+k)!}{k!} 2^{n-k} (x-1)^{k} \\
&= \sum_{k=0}^n \frac{(n+k)!}{(k!)^2(n-k)!} \left(\frac{x-1}{2}\right)^k \\
\end{align}</math>
となる。
次に、Legendre 多項式の <math>x</math> の冪での表示を求める。Rodrigues の公式を展開して、
<math>\begin{align}P_n(x) &= \frac{1}{2^n n!} \frac{d^n}{dx^n} (x^2-1)^n \\
&= \frac{1}{2^n n!} \frac{d^n}{dx^n} \sum_{k=0}^n \frac{n!}{k!(n-k)!}(-1)^k x^{2n-2k} \\
&= \frac{1}{2^n} \sum_{k=0}^{\left[\frac n 2 \right]} \frac{(-1)^k}{k!(n-k)!} \frac{(2n-2k)!}{(n-2k)!}x^{n-2k}
\end{align}</math>
ここで、いくつかの項は微分で落ちる。項が残る条件は <math>n - 2k \ge 0</math> で、 <math>k</math> が整数だから、 <math>\left[\frac n 2\right] \ge k</math> である。
さらに、
<math>\begin{align}
P_n(x) &= \frac{1}{2^n} \sum_{k=0}^{\left[\frac n 2 \right]} \frac{(-1)^k(2n-2k)!}{k!(n-k)!(n-2k)!} x^{n-2k} \\
&= \sum_{k=0}^{\left[\frac n 2 \right]} \frac{(-1)^k}{2^k} \frac{(2n-2k)!}{2^{n-k}k!(n-k)!(n-2k)!} x^{n-2k} \\
&= \sum_{k=0}^{\left[\frac n 2 \right]} \frac{(-1)^k}{2^k} \frac{(2n-2k-1)!!}{k!(n-2k)!} x^{n-2k}
\end{align}</math>
として Legendre 多項式の表示が得られる。ここで、<math>(2k)!! = 2^kk!, (2k-1)!! = \frac{(2k)!}{(2k)!!} = \frac{(2k)!}{2^kk!}</math> となることを使った。
Rodrigues の公式に Goursat の公式を使うと、
<math>P_n(x) = \frac{1}{2\pi i} \oint_x \left\{\frac{t^2-1}{2(t-x)}\right\}^n \frac{dt}{t-x}</math>
となる。ここで、<math>\frac{t^2-1}{2(t-x)} = \frac{1}{\zeta}</math> と変換をすると、<math>\zeta t^2 -2t + 2x - \zeta = 0</math> となるから、<math>t</math> について解いて、 <math>t = \frac{1-\sqrt{1-2x\zeta + \zeta^2}}{\zeta} = \frac{1-R}{\zeta}</math> となる。ここで、<math>R = \sqrt{1-2x\zeta + \zeta^2}</math> と置いた。<math>dR = \frac{\zeta - x}{R}d\zeta</math> となるから、<math>t </math> の微分は<math>dt =-\frac{d\zeta}{\zeta^2}(1-R) - \frac{dR}{\zeta} = \frac{1-R-x\zeta}{\zeta^2R}d\zeta </math> となる。<math>t - x = \frac{1-R-x\zeta}{\zeta} </math> であったから、<math>\frac{dt}{t-x} = \frac{d \zeta}{R\zeta}. </math>
<math>P_n(x) = \frac{1}{2\pi i} \oint_0 \frac{1}{\sqrt{1-2x\zeta + \zeta^2}}\frac{d\zeta}{\zeta^{n+1}}</math>
これは、
<math>\frac{1}{\sqrt{1-2xt + t^2}} = \sum_{n=0}^\infty P_n(x) t^n</math>
ということを意味する。すなわち、これが Legendre 多項式の母函数である。
=== Legendre の陪函数 ===
Legendre の陪微分方程式
<math>(1-x^2)\frac{d^2w}{dx^2} - 2x\frac{dw}{dx} + \left\{n(n+1) - \frac{m^2}{1-x^2}\right\} w = 0</math>
の解を求めたい。
Legendre の微分方程式
<math>(1-x^2)\frac{d^2w}{dx^2} - 2x \frac{dw}{dx} + n(n+1)w = 0</math>
で
<math>w = (1-x^2)^{\frac m 2} v</math>
とおいて、Legendre の陪微分方程式に代入すると、
<math>(1-x^2)v'' - 2(m+1)v' + (n-m)(n+m+1)v = 0</math>
を得る。
次に、Legendre の微分方程式を <math>w</math> の代わりに <math>u</math> とおいて、一回微分すると、
<math>(1-x^2)\frac{d^3u}{dx^3} - 2(1+1)x \frac{d^2u}{dx^2} + \{n(n+1) - 2\}\frac{du}{dx} = 0</math>
もう一回微分すると、
<math>(1-x^2)\frac{d^4u}{dx^3} - 2(1+1+1)x \frac{d^3u}{dx^2} + \{n(n+1) - 2 - 4\}\frac{d^2u}{dx^2} = 0</math>
すなわち、Legendre の微分方程式を <math>m</math> 階微分すると、<math>2(1+2+\cdots +m) = m(m+1)</math> となるから、
<math>(1-x^2)\frac{d^{m+2}u}{dx^{m+2}} - 2(m+1)x \frac{d^{m+1}u}{dx^{m+1}} + (n-m)(n+m+1)\frac{d^mu}{dx^m} = 0</math>
である。
よって、
<math>v = \frac{d^mu}{dx^m}</math>
の関係があることがわかる。ここで、<math>u</math> は Legendre の微分方程式の解だから、
<math>u = P_n(x),Q_n(x)</math>
を代入して、
Legendre の陪微分方程式の解として、
<math>w = (1-x^2)^{\frac m 2}\frac{d^mP_n}{dx^m},(1-x^2)^{\frac m 2}\frac{d^mQ_n}{dx^m}</math>
を得る。この解をLengendre 陪函数として、
<math>P^m_n(x) = (1-x^2)^{\frac m 2}\frac{d^mP_n}{dx^m},\, Q^m_n(x) = (1-x^2)^{\frac m 2}\frac{d^mQ_n}{dx^m}</math>
と定義する。
=== 球面調和函数 ===
ラプラス方程式
<math>\triangle \Psi = 0</math>
を球座標で表すと、
<math>\frac{1}{r^2}\frac{\partial}{\partial r} \left(r^2 \frac{\partial \Psi}{\partial r} \right) + \frac{1}{r^2} \Lambda \Psi = 0</math>
となる。だたし、
<math>\Lambda = \frac{1}{\sin \theta} \frac{\partial}{\partial \theta} \left(\sin \theta \frac{\partial} {\partial \theta} \right) + \frac{1}{\sin^2\theta}\frac{\partial^2}{\partial \varphi^2}</math>
である。<math>\Psi</math> が
<math>\Psi(r,\theta, \varphi) = r^nY_n(\theta,\varphi)</math>
の形であるとき、<math>Y_n(\theta, \varphi)</math> を <math>n</math> 次の球面調和関数という。
== Bessel 函数 ==
電磁気学や量子力学などで、微分方程式
<math>\frac{d^2w}{dz^2} + \frac 1 z \frac{dw}{dz} + \left(1 - \frac{\nu^2}{z^2}\right)w = 0 </math>
を解く必要が発生する。この微分方程式の解を Bessel 函数という。
<math>w = \sum_{k=0}^\infty c_k z^{\rho + k}</math>
の形の級数展開を仮定する。
このとき、
<math> \frac{d^2w}{dz^2} =\sum_{k=0}^\infty (\rho + k)(\rho + k - 1)c_k z^{\rho + k-2} </math>
<math> \frac 1 z \frac{dw}{dz} =\sum_{k=0}^\infty (\rho + k)c_k z^{\rho + k-2} </math>
であるから、微分方程式は、
<math>\sum_{k=0}^\infty \left[\{(\rho+k)^2 - \nu^2\}c_kz^{\rho+k-2} + c_kz^{\rho + k}\right] = 0</math>
となる。
<math>\frac{1}{z^2}</math> の項は、<math>(\rho^2 - \nu^2)c_0 = 0</math> であるから、<math>\rho = \pm \nu</math>.
<math>\frac{1}{z}</math> の項は、<math>\{(\rho+1) - \nu^2\}c_1 = 0</math> であるから、<math>c_1 = 0</math>.
<math>k \ge 0</math> について、<math>-c_{k-2} = \{(\rho+k)^2 - \nu^2\}c_k</math> を得る。これより、<math>c_{2k+1} = 0</math> がわかる。
<math>\rho = \nu</math> のときは、
<math>c_{2k} = \frac{-c_{2(k-1)}}{2(\nu+k)\cdot 2k}</math>
であるから、
<math>c_{2k} = \frac{(-1)^k}{2^{2k}k!(\nu+k)(\nu+k-1)\cdots(\nu+1)} = \frac{(-1)^k\Gamma(\nu+1)}{2^{2k}k!\Gamma(\nu+k+1)}</math>
である。すなわち、
<math>w = c_0\sum_{k=0}^\infty \frac{(-1)^k\Gamma(\nu+1)}{2^{2k}k!\Gamma(\nu+k+1)} z^{2k}</math>
ここで、<math>c_0 = \frac{1}{2^{\nu} \Gamma(\nu+1)}</math> に選んだものを <math>\nu</math> 次 Bessel 函数 <math>J_\nu(z)</math> とする。
すなわち、
<math>J_\nu(z) = \sum_{k=0}^\infty \frac{(-1)^k}{k!\Gamma(\nu+k+1)} \left(\frac z 2\right)^{2k+\nu} </math>
である。<math>\rho = -\nu</math> のときも同様に計算することで、同じ式になる。
=== 性質 ===
負の整数 <math>-n</math> 次の Bessel 函数について、
<math>J_{-n}(z) = \sum_{k=n}^\infty \frac{(-1)^k}{k!\Gamma(-n+k+1)} \left(\frac z 2\right)^{2k-n} = \sum_{k=0}^\infty \frac{(-1)^{k+n}}{(k+n)!\Gamma(k+1)} \left(\frac z 2\right)^{2k+n} = (-1)^nJ_{n}(z) </math>
Bessel 函数の母函数は、
<math>\begin{align}\sum_{n=-\infty}^\infty J_n(z)t^n &= \sum_{n=0}^\infty J_n(z)t^n + \sum_{n=1}^\infty (-1)^nJ_n(z)t^{-n} \\
&= \sum_{n=0}^\infty \sum_{m=0}^\infty \frac{(-1)^m}{m!(n+m)!} \left(\frac z 2\right)^{2m+n}t^n + \sum_{n=1}^\infty \sum_{l=0}^\infty \frac{(-1)^{l+n}}{l!(n+l)!} \left(\frac z 2\right)^{2l+n}t^{-n}
\end{align}</math>
ここで、第一の総和で、<math>l = m + n</math> 、第二の総和で、<math>m = l + n</math> と置くと、
<math>\begin{align}\sum_{n=-\infty}^\infty J_n(z)t^n &=
\sum_{m=0}^\infty \sum_{l=m}^\infty \frac{(-1)^m}{m!l!} \left(\frac z 2\right)^{m+l}t^{l-m} + \sum_{l=0}^\infty \sum_{m=l+1}^\infty \frac{(-1)^{m}}{l!m!} \left(\frac z 2\right)^{l+m}t^{l-m}\\
&= \sum_{m,l = 0}^{\infty} \frac{1}{m!l!} \left(\frac{zt}{2}\right)^l \left(-\frac{z}{2t}\right)^m \\
&= \sum_{l = 0}^{\infty} \frac{1}{l!} \left(\frac{zt}{2}\right)^l \sum_{m = 0}^{\infty} \frac{1}{m!}\left(-\frac{z}{2t}\right)^m \\
&= e^{\frac z 2 \left(t - \frac 1 t\right)}
\end{align}</math>
となる。
また、母函数を <math>t^{n+1}</math> で割ると、
<math>\frac{e^{\frac z 2 \left(t - \frac 1 t\right)}}{t^{n+1}} = \frac{J_n(z)}{t} + \sum_{k=-\infty,k \neq n}^\infty J_k(z)t^{k-n-1} </math>
となるから、<math>t</math> について原点反時計回りに積分すると、
<math>J_n(z) = \frac{1}{2\pi i} \oint_0 \frac{e^{\frac z 2 \left(t - \frac 1 t\right)}}{t^{n+1}} dt</math>
が得られる。<math>t = e^{i\theta}</math> とすると、
<math>J_n(z) = \frac{1}{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}e^{z\frac{e^{i\theta}- e^{-i\theta}}{2}}e^{-in\theta}d\theta = \frac{1}{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}e^{iz\sin\theta - in\theta}d\theta = \frac{1}{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}[\cos(z\sin\theta - n\theta) + i\sin(z\sin\theta - n\theta)]d\theta</math>
ここで、<math>\sin(z\sin\theta - n\theta)</math> は奇函数だから積分は0。<math>\cos(z\sin\theta - n\theta)</math> は偶函数だから、
<math>J_n(z) = \frac 1 \pi \int_0^\pi\cos(n\theta - z\sin\theta)d\theta</math>
を得る。
母函数に<math>t=1</math> を代入すると、
<math>\sum_{k=-\infty}^{\infty} J_k(z) = 1</math>
あるいは、
<math>J_0(z) + 2\sum_{k=1}^\infty J_{2k}(z) =1</math>
を得る。
<math>e^{\frac{x+y}{2}(t-1/t)} = e^{\frac{x}{2}(t-1/t)}e^{\frac{y}{2}(t-1/t)}</math>
であるから、Bessel 函数の加法定理
<math>J_n(x+y) = \sum_{m=-\infty}^\infty J_{n-m}(x)J_m(y)</math>
を得る。
上昇演算子と <math>\overset{(\nu)}{T} </math> 下降演算子 <math>\underset{(\nu)}{T} </math> を次のように定義する。
<math>\overset{(\nu)}{T} = z^\nu\frac{d}{dz}z^{-\nu} =\frac{d}{dz} -\frac{\nu}{z} </math>
<math>\underset{(\nu)}{T} = z^{-\nu}\frac{d}{dz}z^\nu = \frac{d}{dz} + \frac{\nu}{z} </math>
ここで、右辺は、<math>\overset{(\nu)}{T}f = z^\nu\frac{d}{dz}(z^{-\nu}f) = z^\nu\left(-\nu z^{-\nu-1}f+ z^{-\nu}\frac{df}{dz} \right) =\left(\frac{d}{dz} -\frac{\nu}{z}\right)f </math> から成り立つ。下降演算子についても同様である。
これを Bessel 函数に作用させると、
<math>\begin{align}\overset{(\nu)}{T} J_\nu(z) &= z^\nu \frac{d}{dz} \sum_{k=0}^\infty \frac{(-1)^k z^{2k}}{2^{2k+\nu}k!\Gamma(\nu+k+1)} \\
&= z^\nu \sum_{k=1}^\infty \frac{(-1)^k z^{2k-1}}{2^{2k+\nu-1}(k-1)!\Gamma(\nu+k+1)} \\
&= -\sum_{k=0}^\infty \frac{(-1)^k z^{2k+1+\nu}}{2^{2k+\nu+1}k!\Gamma(\nu+1+k+1)} \\
&= -J_{\nu+1}(z)
\end{align} </math>
となる。また、
<math>\begin{align}\underset{(\nu)}{T} J_\nu(z) &= z^{-\nu} \frac{d}{dz} \sum_{k=0}^\infty \frac{(-1)^k z^{2k+2\nu}}{2^{2k+\nu}k!\Gamma(\nu+k+1)} \\
&= z^{-\nu} \sum_{k=0}^\infty \frac{(-1)^k (k+\nu) z^{2k+2\nu-1}}{2^{2k+\nu-1}k!\Gamma(\nu+k+1)} \\
&= \sum_{k=0}^\infty \frac{(-1)^k z^{2k+\nu-1}}{2^{2k+\nu-1}k!\Gamma(\nu+k)} \\
&= J_{\nu-1}(z)
\end{align} </math>
である。すなわち、
<math>J^'_\nu(z) - \frac{\nu}{z}J_\nu(z) = -J_{\nu+1}(z)</math>
<math>J^'_\nu(z) + \frac{\nu}{z}J_\nu(z) = J_{\nu-1}(z) </math>
二式を辺々加えて、
<math>2J^'_{\nu}(z) = J_{\nu-1}(z) - J_{\nu+1}(z) </math>
または、辺々引いて、
<math>\frac{2\nu}{z}J_\nu(z) = J_{\nu-1}(z) + J_{\nu+1}(z) </math>
を得る。
ところで、明らかに
<math>\underset{(\nu+1)}{T}\overset{(\nu)}{T}J_\nu(z) = - J_\nu(z)</math>
となる。この式は二階の微分方程式であるから、Bessel の微分方程式に帰着するはずである。実際、左辺を展開すると、
<math>\underset{(\nu+1)}{T}\overset{(\nu)}{T} = \left(\frac{d}{dz} +\frac{\nu+1}{z}\right) \left(\frac{d}{dz} -\frac{\nu}{z}\right) = \frac{d^2}{dz^2} +\frac{1}{z}\frac{d}{dz} - \frac{\nu^2}{z^2} </math>
となる。逆に考えると、昇降演算子とは微分方程式を因数分解したものだとも考えられる。
=== 第二種 Bessel 函数 ===
<math>\nu</math> が非整数のときは、<math>J_\nu(z),J_{-\nu}(z)</math> が独立な2解を与えるが、整数のときは、<math>J_{-n}(z) = (-1)^nJ_{n}(z) </math> という関係があるから、独立ではない。そこで、位数 <math>n</math> のときの Bessel の微分方程式の独立なもうひとつの解が存在する。Bessel の微分方程式を <math>\nu </math> で偏微分すれば、
<math>\frac{d^2}{dz^2} \left.\left(\frac{\partial J_\nu(z)} {\partial \nu}\right) \right|_{\nu=n} + \frac 1 z \frac{d}{dz}\left.\left(\frac{\partial J_\nu(z)} {\partial \nu}\right) \right|_{\nu=n} + \left(1 - \frac{n^2}{z^2}\right) \left.\left(\frac{\partial J_\nu(z)} {\partial \nu}\right) \right|_{\nu=n} = 0 </math>
となるから、<math>\left.\left(\frac{\partial J_\nu(z)} {\partial \nu} \right) \right|_{\nu=n} </math> は微分方程式の解である。<math>\left.\left(\frac{\partial J_{-\nu}(z)} {\partial \nu} \right) \right|_{\nu=n} </math> も同じ微分方程式を満たすから、その線形結合として、
<math>Y_n(z) = \frac 1 \pi \left(\left.\left(\frac{\partial J_\nu(z)} {\partial \nu}\right) \right|_{\nu=n} - (-1)^n \left.\left(\frac{\partial J_{-\nu(z)}} {\partial \nu} \right) \right|_{\nu=n} \right) </math>
を定義すると、<math>J_n (z) </math> に独立な解を与える。非整数の <math>\nu </math> に対しては、
<math>Y_\nu (z) = \frac{\cos \nu \pi J_\nu (z) - J_{-\nu} (z)}{\sin \nu \pi} </math>
と定義すると、 <math>\nu \rightarrow n </math> の極限として、 <math>Y_n(z) </math> を得ることができる。
第一種、第二種 Hankel 函数をそれぞれ
<math>H^{(1)}_\nu(z) = J_\nu(z) + i Y_\nu(z)</math>
<math>H^{(2)}_\nu(z) = J_\nu(z) - i Y_\nu(z) </math>
で定義する。
== 楕円積分と楕円函数 ==
第一種完全楕円積分 <math>K(k)</math> と第二種完全楕円積分 <math>E(k)</math> は
<math>K(k) = \int_0^{\frac \pi 2} \frac{d\theta}{\sqrt{1-k^2\sin^2\theta}}</math>
<math>E(k) = \int_0^{\frac \pi 2} {\sqrt{1-k^2\sin^2\theta}}d\theta</math>
で定義される。
Taylor 展開して、
<math>\begin{align}K(k) &= \int_0^{\frac \pi 2} \frac{d\theta}{\sqrt{1-k^2\sin^2\theta}} \\
&= \int_0^{\frac \pi 2} \sum_{n=0}^\infty \binom{-\frac 1 2}{n}(-1)^n k^{2n}\sin^{2n}\theta d\theta \\
&= \sum_{n=0}^\infty \frac{(2n-1)!!}{{(2n)!!}}k^{2n}\int_0^{\frac \pi 2}\sin^{2n}\theta d\theta \\
&= \frac \pi 2 \sum_{n=0}^\infty \left(\frac{(2n-1)!!}{{(2n)!!}}\right)^2 k^{2n} \\
\end{align}</math>
<math>\begin{align}E(k) &= \int_0^{\frac \pi 2} {\sqrt{1-k^2\sin^2\theta}}d\theta \\
&= \int_0^{\frac \pi 2} \sum_{n=0}^\infty \binom{\frac 1 2}{n}(-1)^n k^{2n}\sin^{2n}\theta d\theta \\
&= \sum_{n=0}^\infty \frac{-(2n-1)!!}{{(2n-1)(2n)!!}} k^{2n}\int_0^{\frac \pi 2}\sin^{2n}\theta d\theta \\
&= \frac \pi 2 \sum_{n=0}^\infty \left(\frac{(2n-1)!!}{{(2n)!!}}\right)^2 \frac{k^{2n}}{1-2n} \\
\end{align}</math>
となる。あるいは、超幾何函数を使うと、
<math>K(k) = \frac \pi 2 F\left(\frac 1 2, \frac 1 2; 1; k^2 \right)</math>
<math>E(k) = \frac \pi 2 F\left(\frac 1 2, -\frac 1 2; 1; k^2 \right)</math>
となる。この変形に、
<math>\left(\frac 1 2 \right)_n = \left(\frac{1}{2}\right)\left(\frac{1+2}{2}\right)\cdots \left(\frac{1+2n-2}{2}\right) = \frac{(2n-1)
!!}{2^n}</math>
<math>\left(-\frac 1 2 \right)_n = \left(-\frac{1}{2}\right)\left(\frac{1}{2}\right)\left(\frac{1+2}{2}\right)\cdots \left(\frac{1+2n-4}{2}\right) = -\frac{(2n-3)
!!}{2^n} </math>
を使う。
=== Theta函数 ===
<math>\vartheta(z,\tau) = \sum_{n=-\infty}^{\infty} e^{\pi in^2\tau + 2\pi inz}</math>
<math>\vartheta_{01}(z, \tau) = \sum_{n=-\infty}^{\infty} e^{\pi in^2\tau + 2\pi in\left(z+\frac 1 2\right)} = \vartheta\left(z+\frac 1 2, \tau\right)</math>
<math>\vartheta_{10}(z, \tau) = \sum_{n=-\infty}^{\infty} e^{\pi i\left(n + \frac 1 2 \right)^2\tau + 2\pi i\left(n+\frac 1 2\right)z} = e^{\frac 1 4 \pi i \tau + \pi i z}\vartheta\left(z+\frac 1 2, \tau\right)</math>
<math>\vartheta_{11}(z, \tau) = \sum_{n=-\infty}^{\infty} e^{\pi i\left(n + \frac 1 2 \right)^2\tau + 2\pi i\left(n+\frac 1 2\right)\left(z+\frac 1 2\right)} = e^{\frac 1 4 \pi i \tau + \pi i \left(z + \frac 1 2\right)}\vartheta\left(z+\frac 1 2, \tau\right)</math>
と定義する。<math>\vartheta_{00}(z,\tau) = \vartheta(z,\tau)
</math> とする。
<math>\vartheta(z+1,\tau) = \vartheta(z,\tau)</math>
<math>\vartheta(z+\tau,\tau) = e^{-\pi i (\tau + 2z)}\vartheta(z,\tau)</math>
さらに、
<math>\vartheta_{00}(z+1,\tau) = \vartheta_{00}(z,\tau)</math>
<math>\vartheta_{01}(z+1,\tau) = \vartheta_{01}(z,\tau)</math>
<math>\vartheta_{10}(z+1,\tau) = -\vartheta_{10}(z,\tau)</math>
<math>\vartheta_{11}(z+1,\tau) = -\vartheta_{11}(z,\tau)</math>
また、
<math>\vartheta_{00}(z+\tau,\tau) = e^{-\pi i (\tau + 2z)}\vartheta_{00}(z,\tau)</math>
<math>\vartheta_{01}(z+\tau,\tau) = -e^{-\pi i (\tau + 2z)} \vartheta_{01}(z,\tau)</math>
<math>\vartheta_{10}(z+\tau,\tau) = e^{-\pi i (\tau + 2z)}\vartheta_{10}(z,\tau)</math>
<math>\vartheta_{11}(z+\tau,\tau) = -e^{-\pi i (\tau + 2z)} \vartheta_{11}(z,\tau)</math>
<math>\vartheta_{00}\left(z+\frac 1 2,\tau\right) = \vartheta_{01}(z,\tau)</math>
<math>\vartheta_{01}\left(z+\frac 1 2,\tau\right) = \vartheta_{00}(z,\tau)</math>
<math>\vartheta_{10}\left(z+\frac 1 2,\tau\right) = -\vartheta_{11}(z,\tau)</math>
<math>\vartheta_{11}\left(z+\frac 1 2,\tau\right) = -\vartheta_{10}(z,\tau)</math>
Jacobi の楕円函数を
<math>\operatorname{sn} u = -\frac{\vartheta_{00} \vartheta_{11}(\zeta)}{\vartheta_{10}\vartheta_{01}(\zeta)}</math>
<math>\operatorname{cn} u = \frac{\vartheta_{01} \vartheta_{10}(\zeta)}{\vartheta_{10}\vartheta_{01}(\zeta)}</math>
<math>\operatorname{dn} u = \frac{\vartheta_{01} \vartheta_{00}(\zeta)}{\vartheta_{00}\vartheta_{01}(\zeta)}</math>
で定義する。ただし、<math>k = \left(\frac{\vartheta_{10}}{\vartheta_{00}}\right)^2</math> ,<math>u = \pi \vartheta_{00}^2 \zeta</math> である。
== 参考文献 ==
* 寺沢寛一『自然科学者のための数学概論(増訂版)』岩波書店、1983年。
* 高木貞治『定本 解析概論』岩波書店、2010年。
* 犬井鉄郎『特殊函数』岩波書店、1962年。
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263212
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wikitext
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== 球函数 ==
=== Legendre 函数 ===
Legendre の微分方程式
<math>(1-x^2)\frac{d^2w}{dx^2} - 2x \frac{dw}{dx} + \nu (\nu+1)w = 0</math>
は、<math>z = \frac{1-x}{2}</math> と変換すると、
<math>z(1-z)\frac{d^2w}{dz^2} + (1-2z)\frac{dw}{dz} + \nu(\nu+1)w = 0</math>
となる。これは、Gauss の超幾何微分方程式で、<math>\alpha = \nu+1,\beta = -\nu,\gamma = 1</math> とした場合だから、微分方程式の解は超幾何函数を使って、
<math>w = F(\nu+1,-\nu,1,z) = \sum_{k=0}^\infty \frac{(\nu+1)_k(-\nu)_k}{(k!)^2}\left(\frac{1-x}{2}\right)^k</math>
とかける。これを <math>\nu</math> 次 Legendre 函数 <math>P_\nu(x)</math> という。
次に、<math>P_\nu(x)</math> に線型独立なもう一つの解を定数変化法で求める。
<math>w = P_\nu(x) v(x) </math>
とおいて、Legendre の微分方程式に代入すると、
<math>(1-x^2)P_\nu v'' + \{2(1-x^2)P_\nu' -2xP_\nu \}v' = 0</math>
これは、<math>v'</math> に対する微分方程式として
<math>\frac{dv'}{v'} + \frac{dx\{2(1-x^2)P_\nu'P_\nu-2x{P_\nu}^2 \}}{(1-x^2){P_\nu}^2} = 0</math>
即ち、
<math>\frac{dv'}{v'} + \frac{d[(1-x^2)P_\nu^2]}{(1-x^2){P_\nu}^2} = 0</math>
と変形できる。
これを積分して、
<math>v' = \frac{C}{(1-x^2){P_\nu}^2}</math>
を得る。もう一度積分すると、
<math>v(x) = C\int \frac{dx}{(1-x^2){P_\nu}^2} + C'</math>
となるから、
<math>w(x) = P_\nu(x) v(x) = CP_\nu(x)\int\frac{dx}{(1-x^2){P_\nu}^2} + C' P_\nu(x)</math>
である。今求めているのは、<math>P_\nu(x)</math> に独立な解であるから <math>C' = 0</math> としていい。<math>C = 1</math> とし、積分範囲を <math>\int_\infty^x</math> と取るときの <math>w(x)</math> を第二種 Legendre 函数 <math>Q_\nu(x)</math> と定義する。
すなわち、
<math>Q_\nu(x) = P_\nu(x)\int_\infty^x\frac{dx}{(1-x^2){P_\nu(x)}^2} </math>
である。
=== Legendre 多項式 ===
Legendre 函数 <math>P_\nu(x) </math> は <math>\nu </math> が非負整数 <math>n </math> のとき多項式になる。
<math>P_n(x) = \sum_{k=0}^\infty \frac{(n+1)_k(-n)_k}{(k!)^2}\left(\frac{1-x}{2}\right)^k = \sum_{k=0}^n \frac{(n+1)_k(-n)_k}{(k!)^2}\left(\frac{1-x}{2}\right)^k</math>
Pochhammer 記号について
<math>(n)_k = n(n+1)\cdots (n+k-1) = \frac{(n+k-1)!}{(n-1)!} </math>
<math>(-n)_k = (-n)(-n+1)\cdots(-n+k-1) = (-1)^kn(n-1)\cdots(n-k+1) = (-1)^k \frac{n!}{(n-k)!}</math> (ただし、<math>k \le n </math> のとき)
<math>k > n </math> ならば、<math>(-n)_k = 0 </math>となるから、
<math>P_n(x) = \sum_{k=0}^n \frac{(n+k)!}{(k!)^2(n-k)!}\left(\frac{x-1}{2}\right)^k </math>
を得る。Legendre 多項式は Rodrigues の公式
<math>P_n(x) = \frac{1}{2^n n!} \frac{d^n}{dx^n} (x^2-1)^n</math>
によっても定義される。
実際、
<math>\begin{align}P_n(x) &= \frac{1}{2^n n!} \frac{d^n}{dx^n} \{(x-1)^n(2+x-1)^n\} \\
&= \frac{1}{2^n n!} \frac{d^n}{dx^n}\sum_{k=0}^n \binom{n}{k} 2^{n-k} (x-1)^{n+k} \\
&= \frac{1}{2^n n!} \sum_{k=0}^n \frac{n!}{k!(n-k)!}\frac{(n+k)!}{k!} 2^{n-k} (x-1)^{k} \\
&= \sum_{k=0}^n \frac{(n+k)!}{(k!)^2(n-k)!} \left(\frac{x-1}{2}\right)^k \\
\end{align}</math>
となる。
次に、Legendre 多項式の <math>x</math> の冪での表示を求める。Rodrigues の公式を展開して、
<math>\begin{align}P_n(x) &= \frac{1}{2^n n!} \frac{d^n}{dx^n} (x^2-1)^n \\
&= \frac{1}{2^n n!} \frac{d^n}{dx^n} \sum_{k=0}^n \frac{n!}{k!(n-k)!}(-1)^k x^{2n-2k} \\
&= \frac{1}{2^n} \sum_{k=0}^{\left[\frac n 2 \right]} \frac{(-1)^k}{k!(n-k)!} \frac{(2n-2k)!}{(n-2k)!}x^{n-2k}
\end{align}</math>
ここで、いくつかの項は微分で落ちる。項が残る条件は <math>n - 2k \ge 0</math> で、 <math>k</math> が整数だから、 <math>\left[\frac n 2\right] \ge k</math> である。
さらに、
<math>\begin{align}
P_n(x) &= \frac{1}{2^n} \sum_{k=0}^{\left[\frac n 2 \right]} \frac{(-1)^k(2n-2k)!}{k!(n-k)!(n-2k)!} x^{n-2k} \\
&= \sum_{k=0}^{\left[\frac n 2 \right]} \frac{(-1)^k}{2^k} \frac{(2n-2k)!}{2^{n-k}k!(n-k)!(n-2k)!} x^{n-2k} \\
&= \sum_{k=0}^{\left[\frac n 2 \right]} \frac{(-1)^k}{2^k} \frac{(2n-2k-1)!!}{k!(n-2k)!} x^{n-2k}
\end{align}</math>
として Legendre 多項式の表示が得られる。ここで、<math>(2k)!! = 2^kk!, (2k-1)!! = \frac{(2k)!}{(2k)!!} = \frac{(2k)!}{2^kk!}</math> となることを使った。
Rodrigues の公式に Goursat の公式を使うと、
<math>P_n(x) = \frac{1}{2\pi i} \oint_x \left\{\frac{t^2-1}{2(t-x)}\right\}^n \frac{dt}{t-x}</math>
となる。ここで、<math>\frac{t^2-1}{2(t-x)} = \frac{1}{\zeta}</math> と変換をすると、<math>\zeta t^2 -2t + 2x - \zeta = 0</math> となるから、<math>t</math> について解いて、 <math>t = \frac{1-\sqrt{1-2x\zeta + \zeta^2}}{\zeta} = \frac{1-R}{\zeta}</math> となる。ここで、<math>R = \sqrt{1-2x\zeta + \zeta^2}</math> と置いた。<math>dR = \frac{\zeta - x}{R}d\zeta</math> となるから、<math>t </math> の微分は<math>dt =-\frac{d\zeta}{\zeta^2}(1-R) - \frac{dR}{\zeta} = \frac{1-R-x\zeta}{\zeta^2R}d\zeta </math> となる。<math>t - x = \frac{1-R-x\zeta}{\zeta} </math> であったから、<math>\frac{dt}{t-x} = \frac{d \zeta}{R\zeta}. </math>
<math>P_n(x) = \frac{1}{2\pi i} \oint_0 \frac{1}{\sqrt{1-2x\zeta + \zeta^2}}\frac{d\zeta}{\zeta^{n+1}}</math>
これは、
<math>\frac{1}{\sqrt{1-2xt + t^2}} = \sum_{n=0}^\infty P_n(x) t^n</math>
ということを意味する。すなわち、これが Legendre 多項式の母函数である。
=== Legendre の陪函数 ===
Legendre の陪微分方程式
<math>(1-x^2)\frac{d^2w}{dx^2} - 2x\frac{dw}{dx} + \left\{n(n+1) - \frac{m^2}{1-x^2}\right\} w = 0</math>
の解を求めたい。
Legendre の微分方程式
<math>(1-x^2)\frac{d^2w}{dx^2} - 2x \frac{dw}{dx} + n(n+1)w = 0</math>
で
<math>w = (1-x^2)^{\frac m 2} v</math>
とおいて、Legendre の陪微分方程式に代入すると、
<math>(1-x^2)v'' - 2(m+1)v' + (n-m)(n+m+1)v = 0</math>
を得る。
次に、Legendre の微分方程式を <math>w</math> の代わりに <math>u</math> とおいて、一回微分すると、
<math>(1-x^2)\frac{d^3u}{dx^3} - 2(1+1)x \frac{d^2u}{dx^2} + \{n(n+1) - 2\}\frac{du}{dx} = 0</math>
もう一回微分すると、
<math>(1-x^2)\frac{d^4u}{dx^3} - 2(1+1+1)x \frac{d^3u}{dx^2} + \{n(n+1) - 2 - 4\}\frac{d^2u}{dx^2} = 0</math>
すなわち、Legendre の微分方程式を <math>m</math> 階微分すると、<math>2(1+2+\cdots +m) = m(m+1)</math> となるから、
<math>(1-x^2)\frac{d^{m+2}u}{dx^{m+2}} - 2(m+1)x \frac{d^{m+1}u}{dx^{m+1}} + (n-m)(n+m+1)\frac{d^mu}{dx^m} = 0</math>
である。
よって、
<math>v = \frac{d^mu}{dx^m}</math>
の関係があることがわかる。ここで、<math>u</math> は Legendre の微分方程式の解だから、
<math>u = P_n(x),Q_n(x)</math>
を代入して、
Legendre の陪微分方程式の解として、
<math>w = (1-x^2)^{\frac m 2}\frac{d^mP_n}{dx^m},(1-x^2)^{\frac m 2}\frac{d^mQ_n}{dx^m}</math>
を得る。この解をLengendre 陪函数として、
<math>P^m_n(x) = (1-x^2)^{\frac m 2}\frac{d^mP_n}{dx^m},\, Q^m_n(x) = (1-x^2)^{\frac m 2}\frac{d^mQ_n}{dx^m}</math>
と定義する。
=== 球面調和函数 ===
Laplace 方程式
<math>\triangle \Psi = 0</math>
を球座標で表すと、
<math>\frac{1}{r^2}\frac{\partial}{\partial r} \left(r^2 \frac{\partial \Psi}{\partial r} \right) + \frac{1}{r^2} \Lambda \Psi = 0</math>
となる。だたし、
<math>\Lambda = \frac{1}{\sin \theta} \frac{\partial}{\partial \theta} \left(\sin \theta \frac{\partial} {\partial \theta} \right) + \frac{1}{\sin^2\theta}\frac{\partial^2}{\partial \varphi^2}</math>
である。<math>\Psi</math> が <math>C^2</math> 級函数で、
<math>\Psi(r,\theta, \varphi) = r^nY_n(\theta,\varphi)</math>
の形であるとき、<math>Y_n(\theta, \varphi)</math> を <math>n</math> 次の球面調和函数という。これを Laplace 方程式に代入すると、<math>Y_n(\theta, \varphi)</math> の方程式として
<math>-\Lambda Y_n = n(n+1)Y_n</math>
すなわち、
<math>\frac{1}{\sin \theta} \frac{\partial}{\partial \theta} \left(\sin \theta \frac{\partial Y_n} {\partial \theta} \right) + \frac{1}{\sin^2\theta}\frac{\partial^2 Y_n}{\partial \varphi^2} + n(n+1)Y_n = 0</math>
を得る。
<math>Y_n(\theta, \varphi) = \Theta(\theta)\Phi(\varphi)</math>
と変数分離を仮定して、
<math>\frac{1}{\Theta \sin \theta} \frac{d}{d\theta}\left(\sin \theta \frac{d\Theta}{d\theta}\right) + n(n+1) = -\frac{1}{\Phi \sin^2\theta}\frac{d^2\Phi}{d\varphi^2}</math>
あるいは、
<math>\frac{\sin \theta}{\Theta} \frac{d}{d\theta}\left(\sin \theta \frac{d\Theta}{d \theta}\right) + n(n+1) \sin^2 \theta = -\frac{1}{\Phi}\frac{d^2 \Phi}{d \varphi^2} = m^2</math>
となる。両辺は <math>\theta ,\varphi</math> のいずれにも依存しないから、定数であるからこれを <math>m^2</math> と置くと、
<math>\frac{d^2 \Phi}{d \varphi^2} = -m^2\Phi</math>
この解は、
<math>\Phi = C_1 \sin m \varphi + C_2 \cos m \varphi</math>
となる。<math>\Phi(\varphi)</math> は一価函数であるから、<math>\Phi(\varphi + 2\pi) = \Phi(\varphi)</math> より、 <math>m</math> は整数である。また、 <math>m,-m</math> は同じ函数を与えるから、<math>m \ge 0</math> とする。
次に、 <math>\Theta</math> に関する微分方程式
<math>\frac{1}{\sin\theta} \frac{d}{d \theta}\left(\sin \theta \frac{d \Theta}{d \theta}\right) + n(n+1)\Theta - \frac{m^2}{\sin^2\theta}\Theta = 0</math>
は、 <math>x = \cos \theta</math> と変換すると、
<math>\frac{d}{dx}\left\{(1-x^2)\frac{d\Theta}{dx}\right\} + \left\{n(n+1)- \frac{m^2}{1-x^2} \right\}\Theta = 0</math>
となる。これは、Legendre の陪微分方程式だから、
<math>\Theta = P^m_n(x)</math>
あるいは、
<math>\Theta(\theta) = P^m_n(\cos \theta)</math>
を得る。ここで、<math>\Theta(\theta) = Q^m_n(\cos \theta)</math> も陪微分方程式の解であるが、<math>\theta = 0</math> で連続ではない。
結局、<math>n</math> 次調和函数として、
<math>Y_n(\theta,\varphi) = P_n(\cos\theta), P^m_n(\cos\theta) \begin{align} \cos m \varphi \\ \sin m \varphi \end{align}</math> (<math>m = 1,2,\cdots , n</math>)
の <math>2n+1</math> 個の解を得る。
== Bessel 函数 ==
電磁気学や量子力学などで、微分方程式
<math>\frac{d^2w}{dz^2} + \frac 1 z \frac{dw}{dz} + \left(1 - \frac{\nu^2}{z^2}\right)w = 0 </math>
を解く必要が発生する。この微分方程式の解を Bessel 函数という。
<math>w = \sum_{k=0}^\infty c_k z^{\rho + k}</math>
の形の級数展開を仮定する。
このとき、
<math> \frac{d^2w}{dz^2} =\sum_{k=0}^\infty (\rho + k)(\rho + k - 1)c_k z^{\rho + k-2} </math>
<math> \frac 1 z \frac{dw}{dz} =\sum_{k=0}^\infty (\rho + k)c_k z^{\rho + k-2} </math>
であるから、微分方程式は、
<math>\sum_{k=0}^\infty \left[\{(\rho+k)^2 - \nu^2\}c_kz^{\rho+k-2} + c_kz^{\rho + k}\right] = 0</math>
となる。
<math>\frac{1}{z^2}</math> の項は、<math>(\rho^2 - \nu^2)c_0 = 0</math> であるから、<math>\rho = \pm \nu</math>.
<math>\frac{1}{z}</math> の項は、<math>\{(\rho+1) - \nu^2\}c_1 = 0</math> であるから、<math>c_1 = 0</math>.
<math>k \ge 0</math> について、<math>-c_{k-2} = \{(\rho+k)^2 - \nu^2\}c_k</math> を得る。これより、<math>c_{2k+1} = 0</math> がわかる。
<math>\rho = \nu</math> のときは、
<math>c_{2k} = \frac{-c_{2(k-1)}}{2(\nu+k)\cdot 2k}</math>
であるから、
<math>c_{2k} = \frac{(-1)^k}{2^{2k}k!(\nu+k)(\nu+k-1)\cdots(\nu+1)} = \frac{(-1)^k\Gamma(\nu+1)}{2^{2k}k!\Gamma(\nu+k+1)}</math>
である。すなわち、
<math>w = c_0\sum_{k=0}^\infty \frac{(-1)^k\Gamma(\nu+1)}{2^{2k}k!\Gamma(\nu+k+1)} z^{2k}</math>
ここで、<math>c_0 = \frac{1}{2^{\nu} \Gamma(\nu+1)}</math> に選んだものを <math>\nu</math> 次 Bessel 函数 <math>J_\nu(z)</math> とする。
すなわち、
<math>J_\nu(z) = \sum_{k=0}^\infty \frac{(-1)^k}{k!\Gamma(\nu+k+1)} \left(\frac z 2\right)^{2k+\nu} </math>
である。<math>\rho = -\nu</math> のときも同様に計算することで、同じ式になる。
=== 性質 ===
負の整数 <math>-n</math> 次の Bessel 函数について、
<math>J_{-n}(z) = \sum_{k=n}^\infty \frac{(-1)^k}{k!\Gamma(-n+k+1)} \left(\frac z 2\right)^{2k-n} = \sum_{k=0}^\infty \frac{(-1)^{k+n}}{(k+n)!\Gamma(k+1)} \left(\frac z 2\right)^{2k+n} = (-1)^nJ_{n}(z) </math>
Bessel 函数の母函数は、
<math>\begin{align}\sum_{n=-\infty}^\infty J_n(z)t^n &= \sum_{n=0}^\infty J_n(z)t^n + \sum_{n=1}^\infty (-1)^nJ_n(z)t^{-n} \\
&= \sum_{n=0}^\infty \sum_{m=0}^\infty \frac{(-1)^m}{m!(n+m)!} \left(\frac z 2\right)^{2m+n}t^n + \sum_{n=1}^\infty \sum_{l=0}^\infty \frac{(-1)^{l+n}}{l!(n+l)!} \left(\frac z 2\right)^{2l+n}t^{-n}
\end{align}</math>
ここで、第一の総和で、<math>l = m + n</math> 、第二の総和で、<math>m = l + n</math> と置くと、
<math>\begin{align}\sum_{n=-\infty}^\infty J_n(z)t^n &=
\sum_{m=0}^\infty \sum_{l=m}^\infty \frac{(-1)^m}{m!l!} \left(\frac z 2\right)^{m+l}t^{l-m} + \sum_{l=0}^\infty \sum_{m=l+1}^\infty \frac{(-1)^{m}}{l!m!} \left(\frac z 2\right)^{l+m}t^{l-m}\\
&= \sum_{m,l = 0}^{\infty} \frac{1}{m!l!} \left(\frac{zt}{2}\right)^l \left(-\frac{z}{2t}\right)^m \\
&= \sum_{l = 0}^{\infty} \frac{1}{l!} \left(\frac{zt}{2}\right)^l \sum_{m = 0}^{\infty} \frac{1}{m!}\left(-\frac{z}{2t}\right)^m \\
&= e^{\frac z 2 \left(t - \frac 1 t\right)}
\end{align}</math>
となる。
また、母函数を <math>t^{n+1}</math> で割ると、
<math>\frac{e^{\frac z 2 \left(t - \frac 1 t\right)}}{t^{n+1}} = \frac{J_n(z)}{t} + \sum_{k=-\infty,k \neq n}^\infty J_k(z)t^{k-n-1} </math>
となるから、<math>t</math> について原点反時計回りに積分すると、
<math>J_n(z) = \frac{1}{2\pi i} \oint_0 \frac{e^{\frac z 2 \left(t - \frac 1 t\right)}}{t^{n+1}} dt</math>
が得られる。<math>t = e^{i\theta}</math> とすると、
<math>J_n(z) = \frac{1}{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}e^{z\frac{e^{i\theta}- e^{-i\theta}}{2}}e^{-in\theta}d\theta = \frac{1}{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}e^{iz\sin\theta - in\theta}d\theta = \frac{1}{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}[\cos(z\sin\theta - n\theta) + i\sin(z\sin\theta - n\theta)]d\theta</math>
ここで、<math>\sin(z\sin\theta - n\theta)</math> は奇函数だから積分は0。<math>\cos(z\sin\theta - n\theta)</math> は偶函数だから、
<math>J_n(z) = \frac 1 \pi \int_0^\pi\cos(n\theta - z\sin\theta)d\theta</math>
を得る。
母函数に<math>t=1</math> を代入すると、
<math>\sum_{k=-\infty}^{\infty} J_k(z) = 1</math>
あるいは、
<math>J_0(z) + 2\sum_{k=1}^\infty J_{2k}(z) =1</math>
を得る。
<math>e^{\frac{x+y}{2}(t-1/t)} = e^{\frac{x}{2}(t-1/t)}e^{\frac{y}{2}(t-1/t)}</math>
であるから、Bessel 函数の加法定理
<math>J_n(x+y) = \sum_{m=-\infty}^\infty J_{n-m}(x)J_m(y)</math>
を得る。
上昇演算子と <math>\overset{(\nu)}{T} </math> 下降演算子 <math>\underset{(\nu)}{T} </math> を次のように定義する。
<math>\overset{(\nu)}{T} = z^\nu\frac{d}{dz}z^{-\nu} =\frac{d}{dz} -\frac{\nu}{z} </math>
<math>\underset{(\nu)}{T} = z^{-\nu}\frac{d}{dz}z^\nu = \frac{d}{dz} + \frac{\nu}{z} </math>
ここで、右辺は、<math>\overset{(\nu)}{T}f = z^\nu\frac{d}{dz}(z^{-\nu}f) = z^\nu\left(-\nu z^{-\nu-1}f+ z^{-\nu}\frac{df}{dz} \right) =\left(\frac{d}{dz} -\frac{\nu}{z}\right)f </math> から成り立つ。下降演算子についても同様である。
これを Bessel 函数に作用させると、
<math>\begin{align}\overset{(\nu)}{T} J_\nu(z) &= z^\nu \frac{d}{dz} \sum_{k=0}^\infty \frac{(-1)^k z^{2k}}{2^{2k+\nu}k!\Gamma(\nu+k+1)} \\
&= z^\nu \sum_{k=1}^\infty \frac{(-1)^k z^{2k-1}}{2^{2k+\nu-1}(k-1)!\Gamma(\nu+k+1)} \\
&= -\sum_{k=0}^\infty \frac{(-1)^k z^{2k+1+\nu}}{2^{2k+\nu+1}k!\Gamma(\nu+1+k+1)} \\
&= -J_{\nu+1}(z)
\end{align} </math>
となる。また、
<math>\begin{align}\underset{(\nu)}{T} J_\nu(z) &= z^{-\nu} \frac{d}{dz} \sum_{k=0}^\infty \frac{(-1)^k z^{2k+2\nu}}{2^{2k+\nu}k!\Gamma(\nu+k+1)} \\
&= z^{-\nu} \sum_{k=0}^\infty \frac{(-1)^k (k+\nu) z^{2k+2\nu-1}}{2^{2k+\nu-1}k!\Gamma(\nu+k+1)} \\
&= \sum_{k=0}^\infty \frac{(-1)^k z^{2k+\nu-1}}{2^{2k+\nu-1}k!\Gamma(\nu+k)} \\
&= J_{\nu-1}(z)
\end{align} </math>
である。すなわち、
<math>J^'_\nu(z) - \frac{\nu}{z}J_\nu(z) = -J_{\nu+1}(z)</math>
<math>J^'_\nu(z) + \frac{\nu}{z}J_\nu(z) = J_{\nu-1}(z) </math>
二式を辺々加えて、
<math>2J^'_{\nu}(z) = J_{\nu-1}(z) - J_{\nu+1}(z) </math>
または、辺々引いて、
<math>\frac{2\nu}{z}J_\nu(z) = J_{\nu-1}(z) + J_{\nu+1}(z) </math>
を得る。
ところで、明らかに
<math>\underset{(\nu+1)}{T}\overset{(\nu)}{T}J_\nu(z) = - J_\nu(z)</math>
となる。この式は二階の微分方程式であるから、Bessel の微分方程式に帰着するはずである。実際、左辺を展開すると、
<math>\underset{(\nu+1)}{T}\overset{(\nu)}{T} = \left(\frac{d}{dz} +\frac{\nu+1}{z}\right) \left(\frac{d}{dz} -\frac{\nu}{z}\right) = \frac{d^2}{dz^2} +\frac{1}{z}\frac{d}{dz} - \frac{\nu^2}{z^2} </math>
となる。逆に考えると、昇降演算子とは微分方程式を因数分解したものだとも考えられる。
=== 第二種 Bessel 函数 ===
<math>\nu</math> が非整数のときは、<math>J_\nu(z),J_{-\nu}(z)</math> が独立な2解を与えるが、整数のときは、<math>J_{-n}(z) = (-1)^nJ_{n}(z) </math> という関係があるから、独立ではない。そこで、位数 <math>n</math> のときの Bessel の微分方程式の独立なもうひとつの解が存在する。Bessel の微分方程式を <math>\nu </math> で偏微分すれば、
<math>\frac{d^2}{dz^2} \left.\left(\frac{\partial J_\nu(z)} {\partial \nu}\right) \right|_{\nu=n} + \frac 1 z \frac{d}{dz}\left.\left(\frac{\partial J_\nu(z)} {\partial \nu}\right) \right|_{\nu=n} + \left(1 - \frac{n^2}{z^2}\right) \left.\left(\frac{\partial J_\nu(z)} {\partial \nu}\right) \right|_{\nu=n} = 0 </math>
となるから、<math>\left.\left(\frac{\partial J_\nu(z)} {\partial \nu} \right) \right|_{\nu=n} </math> は微分方程式の解である。<math>\left.\left(\frac{\partial J_{-\nu}(z)} {\partial \nu} \right) \right|_{\nu=n} </math> も同じ微分方程式を満たすから、その線形結合として、
<math>Y_n(z) = \frac 1 \pi \left(\left.\left(\frac{\partial J_\nu(z)} {\partial \nu}\right) \right|_{\nu=n} - (-1)^n \left.\left(\frac{\partial J_{-\nu(z)}} {\partial \nu} \right) \right|_{\nu=n} \right) </math>
を定義すると、<math>J_n (z) </math> に独立な解を与える。非整数の <math>\nu </math> に対しては、
<math>Y_\nu (z) = \frac{\cos \nu \pi J_\nu (z) - J_{-\nu} (z)}{\sin \nu \pi} </math>
と定義すると、 <math>\nu \rightarrow n </math> の極限として、 <math>Y_n(z) </math> を得ることができる。
第一種、第二種 Hankel 函数をそれぞれ
<math>H^{(1)}_\nu(z) = J_\nu(z) + i Y_\nu(z)</math>
<math>H^{(2)}_\nu(z) = J_\nu(z) - i Y_\nu(z) </math>
で定義する。
== 楕円積分と楕円函数 ==
第一種完全楕円積分 <math>K(k)</math> と第二種完全楕円積分 <math>E(k)</math> は
<math>K(k) = \int_0^{\frac \pi 2} \frac{d\theta}{\sqrt{1-k^2\sin^2\theta}}</math>
<math>E(k) = \int_0^{\frac \pi 2} {\sqrt{1-k^2\sin^2\theta}}d\theta</math>
で定義される。
Taylor 展開して、
<math>\begin{align}K(k) &= \int_0^{\frac \pi 2} \frac{d\theta}{\sqrt{1-k^2\sin^2\theta}} \\
&= \int_0^{\frac \pi 2} \sum_{n=0}^\infty \binom{-\frac 1 2}{n}(-1)^n k^{2n}\sin^{2n}\theta d\theta \\
&= \sum_{n=0}^\infty \frac{(2n-1)!!}{{(2n)!!}}k^{2n}\int_0^{\frac \pi 2}\sin^{2n}\theta d\theta \\
&= \frac \pi 2 \sum_{n=0}^\infty \left(\frac{(2n-1)!!}{{(2n)!!}}\right)^2 k^{2n} \\
\end{align}</math>
<math>\begin{align}E(k) &= \int_0^{\frac \pi 2} {\sqrt{1-k^2\sin^2\theta}}d\theta \\
&= \int_0^{\frac \pi 2} \sum_{n=0}^\infty \binom{\frac 1 2}{n}(-1)^n k^{2n}\sin^{2n}\theta d\theta \\
&= \sum_{n=0}^\infty \frac{-(2n-1)!!}{{(2n-1)(2n)!!}} k^{2n}\int_0^{\frac \pi 2}\sin^{2n}\theta d\theta \\
&= \frac \pi 2 \sum_{n=0}^\infty \left(\frac{(2n-1)!!}{{(2n)!!}}\right)^2 \frac{k^{2n}}{1-2n} \\
\end{align}</math>
となる。あるいは、超幾何函数を使うと、
<math>K(k) = \frac \pi 2 F\left(\frac 1 2, \frac 1 2; 1; k^2 \right)</math>
<math>E(k) = \frac \pi 2 F\left(\frac 1 2, -\frac 1 2; 1; k^2 \right)</math>
となる。この変形に、
<math>\left(\frac 1 2 \right)_n = \left(\frac{1}{2}\right)\left(\frac{1+2}{2}\right)\cdots \left(\frac{1+2n-2}{2}\right) = \frac{(2n-1)
!!}{2^n}</math>
<math>\left(-\frac 1 2 \right)_n = \left(-\frac{1}{2}\right)\left(\frac{1}{2}\right)\left(\frac{1+2}{2}\right)\cdots \left(\frac{1+2n-4}{2}\right) = -\frac{(2n-3)
!!}{2^n} </math>
を使う。
=== Theta函数 ===
<math>\vartheta(z,\tau) = \sum_{n=-\infty}^{\infty} e^{\pi in^2\tau + 2\pi inz}</math>
<math>\vartheta_{01}(z, \tau) = \sum_{n=-\infty}^{\infty} e^{\pi in^2\tau + 2\pi in\left(z+\frac 1 2\right)} = \vartheta\left(z+\frac 1 2, \tau\right)</math>
<math>\vartheta_{10}(z, \tau) = \sum_{n=-\infty}^{\infty} e^{\pi i\left(n + \frac 1 2 \right)^2\tau + 2\pi i\left(n+\frac 1 2\right)z} = e^{\frac 1 4 \pi i \tau + \pi i z}\vartheta\left(z+\frac 1 2, \tau\right)</math>
<math>\vartheta_{11}(z, \tau) = \sum_{n=-\infty}^{\infty} e^{\pi i\left(n + \frac 1 2 \right)^2\tau + 2\pi i\left(n+\frac 1 2\right)\left(z+\frac 1 2\right)} = e^{\frac 1 4 \pi i \tau + \pi i \left(z + \frac 1 2\right)}\vartheta\left(z+\frac 1 2, \tau\right)</math>
と定義する。<math>\vartheta_{00}(z,\tau) = \vartheta(z,\tau)
</math> とする。
<math>\vartheta(z+1,\tau) = \vartheta(z,\tau)</math>
<math>\vartheta(z+\tau,\tau) = e^{-\pi i (\tau + 2z)}\vartheta(z,\tau)</math>
さらに、
<math>\vartheta_{00}(z+1,\tau) = \vartheta_{00}(z,\tau)</math>
<math>\vartheta_{01}(z+1,\tau) = \vartheta_{01}(z,\tau)</math>
<math>\vartheta_{10}(z+1,\tau) = -\vartheta_{10}(z,\tau)</math>
<math>\vartheta_{11}(z+1,\tau) = -\vartheta_{11}(z,\tau)</math>
また、
<math>\vartheta_{00}(z+\tau,\tau) = e^{-\pi i (\tau + 2z)}\vartheta_{00}(z,\tau)</math>
<math>\vartheta_{01}(z+\tau,\tau) = -e^{-\pi i (\tau + 2z)} \vartheta_{01}(z,\tau)</math>
<math>\vartheta_{10}(z+\tau,\tau) = e^{-\pi i (\tau + 2z)}\vartheta_{10}(z,\tau)</math>
<math>\vartheta_{11}(z+\tau,\tau) = -e^{-\pi i (\tau + 2z)} \vartheta_{11}(z,\tau)</math>
<math>\vartheta_{00}\left(z+\frac 1 2,\tau\right) = \vartheta_{01}(z,\tau)</math>
<math>\vartheta_{01}\left(z+\frac 1 2,\tau\right) = \vartheta_{00}(z,\tau)</math>
<math>\vartheta_{10}\left(z+\frac 1 2,\tau\right) = -\vartheta_{11}(z,\tau)</math>
<math>\vartheta_{11}\left(z+\frac 1 2,\tau\right) = -\vartheta_{10}(z,\tau)</math>
Jacobi の楕円函数を
<math>\operatorname{sn} u = -\frac{\vartheta_{00} \vartheta_{11}(\zeta)}{\vartheta_{10}\vartheta_{01}(\zeta)}</math>
<math>\operatorname{cn} u = \frac{\vartheta_{01} \vartheta_{10}(\zeta)}{\vartheta_{10}\vartheta_{01}(\zeta)}</math>
<math>\operatorname{dn} u = \frac{\vartheta_{01} \vartheta_{00}(\zeta)}{\vartheta_{00}\vartheta_{01}(\zeta)}</math>
で定義する。ただし、<math>k = \left(\frac{\vartheta_{10}}{\vartheta_{00}}\right)^2</math> ,<math>u = \pi \vartheta_{00}^2 \zeta</math> である。
== 参考文献 ==
* 寺沢寛一『自然科学者のための数学概論(増訂版)』岩波書店、1983年。
* 高木貞治『定本 解析概論』岩波書店、2010年。
* 犬井鉄郎『特殊函数』岩波書店、1962年。
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Tomzo
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wikitext
text/x-wiki
== 球函数 ==
=== Legendre 函数 ===
Legendre の微分方程式
<math>(1-x^2)\frac{d^2w}{dx^2} - 2x \frac{dw}{dx} + \nu (\nu+1)w = 0</math>
は、<math>z = \frac{1-x}{2}</math> と変換すると、
<math>z(1-z)\frac{d^2w}{dz^2} + (1-2z)\frac{dw}{dz} + \nu(\nu+1)w = 0</math>
となる。これは、Gauss の超幾何微分方程式で、<math>\alpha = \nu+1,\beta = -\nu,\gamma = 1</math> とした場合だから、微分方程式の解は超幾何函数を使って、
<math>w = F(\nu+1,-\nu,1,z) = \sum_{k=0}^\infty \frac{(\nu+1)_k(-\nu)_k}{(k!)^2}\left(\frac{1-x}{2}\right)^k</math>
とかける。これを <math>\nu</math> 次 Legendre 函数 <math>P_\nu(x)</math> という。
次に、<math>P_\nu(x)</math> に線型独立なもう一つの解を定数変化法で求める。
<math>w = P_\nu(x) v(x) </math>
とおいて、Legendre の微分方程式に代入すると、
<math>(1-x^2)P_\nu v'' + \{2(1-x^2)P_\nu' -2xP_\nu \}v' = 0</math>
これは、<math>v'</math> に対する微分方程式として
<math>\frac{dv'}{v'} + \frac{dx\{2(1-x^2)P_\nu'P_\nu-2x{P_\nu}^2 \}}{(1-x^2){P_\nu}^2} = 0</math>
即ち、
<math>\frac{dv'}{v'} + \frac{d[(1-x^2)P_\nu^2]}{(1-x^2){P_\nu}^2} = 0</math>
と変形できる。
これを積分して、
<math>v' = \frac{C}{(1-x^2){P_\nu}^2}</math>
を得る。もう一度積分すると、
<math>v(x) = C\int \frac{dx}{(1-x^2){P_\nu}^2} + C'</math>
となるから、
<math>w(x) = P_\nu(x) v(x) = CP_\nu(x)\int\frac{dx}{(1-x^2){P_\nu}^2} + C' P_\nu(x)</math>
である。今求めているのは、<math>P_\nu(x)</math> に独立な解であるから <math>C' = 0</math> としていい。<math>C = 1</math> とし、積分範囲を <math>\int_\infty^x</math> と取るときの <math>w(x)</math> を第二種 Legendre 函数 <math>Q_\nu(x)</math> と定義する。
すなわち、
<math>Q_\nu(x) = P_\nu(x)\int_\infty^x\frac{dx}{(1-x^2){P_\nu(x)}^2} </math>
である。
=== Legendre 多項式 ===
Legendre 函数 <math>P_\nu(x) </math> は <math>\nu </math> が非負整数 <math>n </math> のとき多項式になる。
<math>P_n(x) = \sum_{k=0}^\infty \frac{(n+1)_k(-n)_k}{(k!)^2}\left(\frac{1-x}{2}\right)^k = \sum_{k=0}^n \frac{(n+1)_k(-n)_k}{(k!)^2}\left(\frac{1-x}{2}\right)^k</math>
Pochhammer 記号について
<math>(n)_k = n(n+1)\cdots (n+k-1) = \frac{(n+k-1)!}{(n-1)!} </math>
<math>(-n)_k = (-n)(-n+1)\cdots(-n+k-1) = (-1)^kn(n-1)\cdots(n-k+1) = (-1)^k \frac{n!}{(n-k)!}</math> (ただし、<math>k \le n </math> のとき)
<math>k > n </math> ならば、<math>(-n)_k = 0 </math>となるから、
<math>P_n(x) = \sum_{k=0}^n \frac{(n+k)!}{(k!)^2(n-k)!}\left(\frac{x-1}{2}\right)^k </math>
を得る。Legendre 多項式は Rodrigues の公式
<math>P_n(x) = \frac{1}{2^n n!} \frac{d^n}{dx^n} (x^2-1)^n</math>
によっても定義される。
実際、
<math>\begin{align}P_n(x) &= \frac{1}{2^n n!} \frac{d^n}{dx^n} \{(x-1)^n(2+x-1)^n\} \\
&= \frac{1}{2^n n!} \frac{d^n}{dx^n}\sum_{k=0}^n \binom{n}{k} 2^{n-k} (x-1)^{n+k} \\
&= \frac{1}{2^n n!} \sum_{k=0}^n \frac{n!}{k!(n-k)!}\frac{(n+k)!}{k!} 2^{n-k} (x-1)^{k} \\
&= \sum_{k=0}^n \frac{(n+k)!}{(k!)^2(n-k)!} \left(\frac{x-1}{2}\right)^k \\
\end{align}</math>
となる。
次に、Legendre 多項式の <math>x</math> の冪での表示を求める。Rodrigues の公式を展開して、
<math>\begin{align}P_n(x) &= \frac{1}{2^n n!} \frac{d^n}{dx^n} (x^2-1)^n \\
&= \frac{1}{2^n n!} \frac{d^n}{dx^n} \sum_{k=0}^n \frac{n!}{k!(n-k)!}(-1)^k x^{2n-2k} \\
&= \frac{1}{2^n} \sum_{k=0}^{\left[\frac n 2 \right]} \frac{(-1)^k}{k!(n-k)!} \frac{(2n-2k)!}{(n-2k)!}x^{n-2k}
\end{align}</math>
ここで、いくつかの項は微分で落ちる。項が残る条件は <math>n - 2k \ge 0</math> で、 <math>k</math> が整数だから、 <math>\left[\frac n 2\right] \ge k</math> である。
さらに、
<math>\begin{align}
P_n(x) &= \frac{1}{2^n} \sum_{k=0}^{\left[\frac n 2 \right]} \frac{(-1)^k(2n-2k)!}{k!(n-k)!(n-2k)!} x^{n-2k} \\
&= \sum_{k=0}^{\left[\frac n 2 \right]} \frac{(-1)^k}{2^k} \frac{(2n-2k)!}{2^{n-k}k!(n-k)!(n-2k)!} x^{n-2k} \\
&= \sum_{k=0}^{\left[\frac n 2 \right]} \frac{(-1)^k}{2^k} \frac{(2n-2k-1)!!}{k!(n-2k)!} x^{n-2k}
\end{align}</math>
として Legendre 多項式の表示が得られる。ここで、<math>(2k)!! = 2^kk!, (2k-1)!! = \frac{(2k)!}{(2k)!!} = \frac{(2k)!}{2^kk!}</math> となることを使った。
Rodrigues の公式に Goursat の公式を使うと、
<math>P_n(x) = \frac{1}{2\pi i} \oint_x \left\{\frac{t^2-1}{2(t-x)}\right\}^n \frac{dt}{t-x}</math>
となる。ここで、<math>\frac{t^2-1}{2(t-x)} = \frac{1}{\zeta}</math> と変換をすると、<math>\zeta t^2 -2t + 2x - \zeta = 0</math> となるから、<math>t</math> について解いて、 <math>t = \frac{1-\sqrt{1-2x\zeta + \zeta^2}}{\zeta} = \frac{1-R}{\zeta}</math> となる。ここで、<math>R = \sqrt{1-2x\zeta + \zeta^2}</math> と置いた。<math>dR = \frac{\zeta - x}{R}d\zeta</math> となるから、<math>t </math> の微分は<math>dt =-\frac{d\zeta}{\zeta^2}(1-R) - \frac{dR}{\zeta} = \frac{1-R-x\zeta}{\zeta^2R}d\zeta </math> となる。<math>t - x = \frac{1-R-x\zeta}{\zeta} </math> であったから、<math>\frac{dt}{t-x} = \frac{d \zeta}{R\zeta}. </math>
<math>P_n(x) = \frac{1}{2\pi i} \oint_0 \frac{1}{\sqrt{1-2x\zeta + \zeta^2}}\frac{d\zeta}{\zeta^{n+1}}</math>
これは、
<math>\frac{1}{\sqrt{1-2xt + t^2}} = \sum_{n=0}^\infty P_n(x) t^n</math>
ということを意味する。すなわち、これが Legendre 多項式の母函数である。
=== Legendre の陪函数 ===
Legendre の陪微分方程式
<math>(1-x^2)\frac{d^2w}{dx^2} - 2x\frac{dw}{dx} + \left\{n(n+1) - \frac{m^2}{1-x^2}\right\} w = 0</math>
の解を求めたい。
Legendre の微分方程式
<math>(1-x^2)\frac{d^2w}{dx^2} - 2x \frac{dw}{dx} + n(n+1)w = 0</math>
で
<math>w = (1-x^2)^{\frac m 2} v</math>
とおいて、Legendre の陪微分方程式に代入すると、
<math>(1-x^2)v'' - 2(m+1)v' + (n-m)(n+m+1)v = 0</math>
を得る。
次に、Legendre の微分方程式を <math>w</math> の代わりに <math>u</math> とおいて、一回微分すると、
<math>(1-x^2)\frac{d^3u}{dx^3} - 2(1+1)x \frac{d^2u}{dx^2} + \{n(n+1) - 2\}\frac{du}{dx} = 0</math>
もう一回微分すると、
<math>(1-x^2)\frac{d^4u}{dx^3} - 2(1+1+1)x \frac{d^3u}{dx^2} + \{n(n+1) - 2 - 4\}\frac{d^2u}{dx^2} = 0</math>
すなわち、Legendre の微分方程式を <math>m</math> 階微分すると、<math>2(1+2+\cdots +m) = m(m+1)</math> となるから、
<math>(1-x^2)\frac{d^{m+2}u}{dx^{m+2}} - 2(m+1)x \frac{d^{m+1}u}{dx^{m+1}} + (n-m)(n+m+1)\frac{d^mu}{dx^m} = 0</math>
である。
よって、
<math>v = \frac{d^mu}{dx^m}</math>
の関係があることがわかる。ここで、<math>u</math> は Legendre の微分方程式の解だから、
<math>u = P_n(x),Q_n(x)</math>
を代入して、
Legendre の陪微分方程式の解として、
<math>w = (1-x^2)^{\frac m 2}\frac{d^mP_n}{dx^m},(1-x^2)^{\frac m 2}\frac{d^mQ_n}{dx^m}</math>
を得る。この解をLengendre 陪函数として、
<math>P^m_n(x) = (1-x^2)^{\frac m 2}\frac{d^mP_n}{dx^m},\, Q^m_n(x) = (1-x^2)^{\frac m 2}\frac{d^mQ_n}{dx^m}</math>
と定義する。
=== 球面調和函数 ===
Laplace 方程式
<math>\triangle \Psi = 0</math>
を球座標で表すと、
<math>\frac{1}{r^2}\frac{\partial}{\partial r} \left(r^2 \frac{\partial \Psi}{\partial r} \right) + \frac{1}{r^2} \Lambda \Psi = 0</math>
となる。だたし、
<math>\Lambda = \frac{1}{\sin \theta} \frac{\partial}{\partial \theta} \left(\sin \theta \frac{\partial} {\partial \theta} \right) + \frac{1}{\sin^2\theta}\frac{\partial^2}{\partial \varphi^2}</math>
である。<math>\Psi</math> が <math>C^2</math> 級函数で、
<math>\Psi(r,\theta, \varphi) = r^nY_n(\theta,\varphi)</math>
の形であるとき、<math>Y_n(\theta, \varphi)</math> を <math>n</math> 次の球面調和函数という。これを Laplace 方程式に代入すると、<math>Y_n(\theta, \varphi)</math> の方程式として
<math>-\Lambda Y_n = n(n+1)Y_n</math>
すなわち、
<math>\frac{1}{\sin \theta} \frac{\partial}{\partial \theta} \left(\sin \theta \frac{\partial Y_n} {\partial \theta} \right) + \frac{1}{\sin^2\theta}\frac{\partial^2 Y_n}{\partial \varphi^2} + n(n+1)Y_n = 0</math>
を得る。
<math>Y_n(\theta, \varphi) = \Theta(\theta)\Phi(\varphi)</math>
と変数分離を仮定して、
<math>\frac{1}{\Theta \sin \theta} \frac{d}{d\theta}\left(\sin \theta \frac{d\Theta}{d\theta}\right) + n(n+1) = -\frac{1}{\Phi \sin^2\theta}\frac{d^2\Phi}{d\varphi^2}</math>
あるいは、
<math>\frac{\sin \theta}{\Theta} \frac{d}{d\theta}\left(\sin \theta \frac{d\Theta}{d \theta}\right) + n(n+1) \sin^2 \theta = -\frac{1}{\Phi}\frac{d^2 \Phi}{d \varphi^2} = m^2</math>
となる。両辺は <math>\theta ,\varphi</math> のいずれにも依存しないから、定数であるからこれを <math>m^2</math> と置くと、
<math>\frac{d^2 \Phi}{d \varphi^2} = -m^2\Phi</math>
この解は、
<math>\Phi = C_1 \sin m \varphi + C_2 \cos m \varphi</math>
となる。<math>\Phi(\varphi)</math> は一価函数であるから、<math>\Phi(\varphi + 2\pi) = \Phi(\varphi)</math> より、 <math>m</math> は整数である。また、 <math>m,-m</math> は同じ函数を与えるから、<math>m \ge 0</math> とする。
次に、 <math>\Theta</math> に関する微分方程式
<math>\frac{1}{\sin\theta} \frac{d}{d \theta}\left(\sin \theta \frac{d \Theta}{d \theta}\right) + n(n+1)\Theta - \frac{m^2}{\sin^2\theta}\Theta = 0</math>
は、 <math>x = \cos \theta</math> と変換すると、
<math>\frac{d}{dx}\left\{(1-x^2)\frac{d\Theta}{dx}\right\} + \left\{n(n+1)- \frac{m^2}{1-x^2} \right\}\Theta = 0</math>
となる。これは、Legendre の陪微分方程式だから、
<math>\Theta = P^m_n(x)</math>
あるいは、
<math>\Theta(\theta) = P^m_n(\cos \theta)</math>
を得る。ここで、<math>\Theta(\theta) = Q^m_n(\cos \theta)</math> も陪微分方程式の解であるが、<math>\theta = 0</math> で連続ではない。
結局、<math>n</math> 次調和函数として、
<math>Y_n(\theta,\varphi) = P_n(\cos\theta), P^m_n(\cos\theta) \begin{align} \cos m \varphi \\ \sin m \varphi \end{align}</math> (<math>m = 1,2,\cdots , n</math>)
の <math>2n+1</math> 個の解を得る。
== Bessel 函数 ==
電磁気学や量子力学などで、微分方程式
<math>\frac{d^2w}{dz^2} + \frac 1 z \frac{dw}{dz} + \left(1 - \frac{\nu^2}{z^2}\right)w = 0 </math>
を解く必要が発生する。この微分方程式の解を Bessel 函数という。
<math>w = \sum_{k=0}^\infty c_k z^{\rho + k}</math>
の形の級数展開を仮定する。
このとき、
<math> \frac{d^2w}{dz^2} =\sum_{k=0}^\infty (\rho + k)(\rho + k - 1)c_k z^{\rho + k-2} </math>
<math> \frac 1 z \frac{dw}{dz} =\sum_{k=0}^\infty (\rho + k)c_k z^{\rho + k-2} </math>
であるから、微分方程式は、
<math>\sum_{k=0}^\infty \left[\{(\rho+k)^2 - \nu^2\}c_kz^{\rho+k-2} + c_kz^{\rho + k}\right] = 0</math>
となる。
<math>\frac{1}{z^2}</math> の項は、<math>(\rho^2 - \nu^2)c_0 = 0</math> であるから、<math>\rho = \pm \nu</math>.
<math>\frac{1}{z}</math> の項は、<math>\{(\rho+1) - \nu^2\}c_1 = 0</math> であるから、<math>c_1 = 0</math>.
<math>k \ge 0</math> について、<math>-c_{k-2} = \{(\rho+k)^2 - \nu^2\}c_k</math> を得る。これより、<math>c_{2k+1} = 0</math> がわかる。
<math>\rho = \nu</math> のときは、
<math>c_{2k} = \frac{-c_{2(k-1)}}{2(\nu+k)\cdot 2k}</math>
であるから、
<math>c_{2k} = \frac{(-1)^k}{2^{2k}k!(\nu+k)(\nu+k-1)\cdots(\nu+1)} = \frac{(-1)^k\Gamma(\nu+1)}{2^{2k}k!\Gamma(\nu+k+1)}</math>
である。すなわち、
<math>w = c_0\sum_{k=0}^\infty \frac{(-1)^k\Gamma(\nu+1)}{2^{2k}k!\Gamma(\nu+k+1)} z^{2k}</math>
ここで、<math>c_0 = \frac{1}{2^{\nu} \Gamma(\nu+1)}</math> に選んだものを <math>\nu</math> 次 Bessel 函数 <math>J_\nu(z)</math> とする。
すなわち、
<math>J_\nu(z) = \sum_{k=0}^\infty \frac{(-1)^k}{k!\Gamma(\nu+k+1)} \left(\frac z 2\right)^{2k+\nu} </math>
である。<math>\rho = -\nu</math> のときも同様に計算することで、同じ式になる。
=== 性質 ===
負の整数 <math>-n</math> 次の Bessel 函数について、
<math>J_{-n}(z) = \sum_{k=n}^\infty \frac{(-1)^k}{k!\Gamma(-n+k+1)} \left(\frac z 2\right)^{2k-n} = \sum_{k=0}^\infty \frac{(-1)^{k+n}}{(k+n)!\Gamma(k+1)} \left(\frac z 2\right)^{2k+n} = (-1)^nJ_{n}(z) </math>
Bessel 函数の母函数は、
<math>\begin{align}\sum_{n=-\infty}^\infty J_n(z)t^n &= \sum_{n=0}^\infty J_n(z)t^n + \sum_{n=1}^\infty (-1)^nJ_n(z)t^{-n} \\
&= \sum_{n=0}^\infty \sum_{m=0}^\infty \frac{(-1)^m}{m!(n+m)!} \left(\frac z 2\right)^{2m+n}t^n + \sum_{n=1}^\infty \sum_{l=0}^\infty \frac{(-1)^{l+n}}{l!(n+l)!} \left(\frac z 2\right)^{2l+n}t^{-n}
\end{align}</math>
ここで、第一の総和で、<math>l = m + n</math> 、第二の総和で、<math>m = l + n</math> と置くと、
<math>\begin{align}\sum_{n=-\infty}^\infty J_n(z)t^n &=
\sum_{m=0}^\infty \sum_{l=m}^\infty \frac{(-1)^m}{m!l!} \left(\frac z 2\right)^{m+l}t^{l-m} + \sum_{l=0}^\infty \sum_{m=l+1}^\infty \frac{(-1)^{m}}{l!m!} \left(\frac z 2\right)^{l+m}t^{l-m}\\
&= \sum_{m,l = 0}^{\infty} \frac{1}{m!l!} \left(\frac{zt}{2}\right)^l \left(-\frac{z}{2t}\right)^m \\
&= \sum_{l = 0}^{\infty} \frac{1}{l!} \left(\frac{zt}{2}\right)^l \sum_{m = 0}^{\infty} \frac{1}{m!}\left(-\frac{z}{2t}\right)^m \\
&= e^{\frac z 2 \left(t - \frac 1 t\right)}
\end{align}</math>
となる。
また、母函数を <math>t^{n+1}</math> で割ると、
<math>\frac{e^{\frac z 2 \left(t - \frac 1 t\right)}}{t^{n+1}} = \frac{J_n(z)}{t} + \sum_{k=-\infty,k \neq n}^\infty J_k(z)t^{k-n-1} </math>
となるから、<math>t</math> について原点反時計回りに積分すると、
<math>J_n(z) = \frac{1}{2\pi i} \oint_0 \frac{e^{\frac z 2 \left(t - \frac 1 t\right)}}{t^{n+1}} dt</math>
が得られる。<math>t = e^{i\theta}</math> とすると、
<math>J_n(z) = \frac{1}{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}e^{z\frac{e^{i\theta}- e^{-i\theta}}{2}}e^{-in\theta}d\theta = \frac{1}{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}e^{iz\sin\theta - in\theta}d\theta = \frac{1}{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}[\cos(z\sin\theta - n\theta) + i\sin(z\sin\theta - n\theta)]d\theta</math>
ここで、<math>\sin(z\sin\theta - n\theta)</math> は奇函数だから積分は0。<math>\cos(z\sin\theta - n\theta)</math> は偶函数だから、
<math>J_n(z) = \frac 1 \pi \int_0^\pi\cos(n\theta - z\sin\theta)d\theta</math>
を得る。
母函数に<math>t=1</math> を代入すると、
<math>\sum_{k=-\infty}^{\infty} J_k(z) = 1</math>
あるいは、
<math>J_0(z) + 2\sum_{k=1}^\infty J_{2k}(z) =1</math>
を得る。
<math>e^{\frac{x+y}{2}(t-1/t)} = e^{\frac{x}{2}(t-1/t)}e^{\frac{y}{2}(t-1/t)}</math>
であるから、Bessel 函数の加法定理
<math>J_n(x+y) = \sum_{m=-\infty}^\infty J_{n-m}(x)J_m(y)</math>
を得る。
上昇演算子と <math>\overset{(\nu)}{T} </math> 下降演算子 <math>\underset{(\nu)}{T} </math> を次のように定義する。
<math>\overset{(\nu)}{T} = z^\nu\frac{d}{dz}z^{-\nu} =\frac{d}{dz} -\frac{\nu}{z} </math>
<math>\underset{(\nu)}{T} = z^{-\nu}\frac{d}{dz}z^\nu = \frac{d}{dz} + \frac{\nu}{z} </math>
ここで、右辺は、<math>\overset{(\nu)}{T}f = z^\nu\frac{d}{dz}(z^{-\nu}f) = z^\nu\left(-\nu z^{-\nu-1}f+ z^{-\nu}\frac{df}{dz} \right) =\left(\frac{d}{dz} -\frac{\nu}{z}\right)f </math> から成り立つ。下降演算子についても同様である。
これを Bessel 函数に作用させると、
<math>\begin{align}\overset{(\nu)}{T} J_\nu(z) &= z^\nu \frac{d}{dz} \sum_{k=0}^\infty \frac{(-1)^k z^{2k}}{2^{2k+\nu}k!\Gamma(\nu+k+1)} \\
&= z^\nu \sum_{k=1}^\infty \frac{(-1)^k z^{2k-1}}{2^{2k+\nu-1}(k-1)!\Gamma(\nu+k+1)} \\
&= -\sum_{k=0}^\infty \frac{(-1)^k z^{2k+1+\nu}}{2^{2k+\nu+1}k!\Gamma(\nu+1+k+1)} \\
&= -J_{\nu+1}(z)
\end{align} </math>
となる。また、
<math>\begin{align}\underset{(\nu)}{T} J_\nu(z) &= z^{-\nu} \frac{d}{dz} \sum_{k=0}^\infty \frac{(-1)^k z^{2k+2\nu}}{2^{2k+\nu}k!\Gamma(\nu+k+1)} \\
&= z^{-\nu} \sum_{k=0}^\infty \frac{(-1)^k (k+\nu) z^{2k+2\nu-1}}{2^{2k+\nu-1}k!\Gamma(\nu+k+1)} \\
&= \sum_{k=0}^\infty \frac{(-1)^k z^{2k+\nu-1}}{2^{2k+\nu-1}k!\Gamma(\nu+k)} \\
&= J_{\nu-1}(z)
\end{align} </math>
である。すなわち、
<math>J^'_\nu(z) - \frac{\nu}{z}J_\nu(z) = -J_{\nu+1}(z)</math>
<math>J^'_\nu(z) + \frac{\nu}{z}J_\nu(z) = J_{\nu-1}(z) </math>
二式を辺々加えて、
<math>2J^'_{\nu}(z) = J_{\nu-1}(z) - J_{\nu+1}(z) </math>
または、辺々引いて、
<math>\frac{2\nu}{z}J_\nu(z) = J_{\nu-1}(z) + J_{\nu+1}(z) </math>
を得る。
ところで、明らかに
<math>\underset{(\nu+1)}{T}\overset{(\nu)}{T}J_\nu(z) = - J_\nu(z)</math>
となる。この式は二階の微分方程式であるから、Bessel の微分方程式に帰着するはずである。実際、左辺を展開すると、
<math>\underset{(\nu+1)}{T}\overset{(\nu)}{T} = \left(\frac{d}{dz} +\frac{\nu+1}{z}\right) \left(\frac{d}{dz} -\frac{\nu}{z}\right) = \frac{d^2}{dz^2} +\frac{1}{z}\frac{d}{dz} - \frac{\nu^2}{z^2} </math>
となる。逆に考えると、昇降演算子とは微分方程式を因数分解したものだとも考えられる。
=== 第二種 Bessel 函数 ===
<math>\nu</math> が非整数のときは、<math>J_\nu(z),J_{-\nu}(z)</math> が独立な2解を与えるが、整数のときは、<math>J_{-n}(z) = (-1)^nJ_{n}(z) </math> という関係があるから、独立ではない。そこで、位数 <math>n</math> のときの Bessel の微分方程式の独立なもうひとつの解が存在する。Bessel の微分方程式を <math>\nu </math> で偏微分すれば、
<math>\frac{d^2}{dz^2} \left.\left(\frac{\partial J_\nu(z)} {\partial \nu}\right) \right|_{\nu=n} + \frac 1 z \frac{d}{dz}\left.\left(\frac{\partial J_\nu(z)} {\partial \nu}\right) \right|_{\nu=n} + \left(1 - \frac{n^2}{z^2}\right) \left.\left(\frac{\partial J_\nu(z)} {\partial \nu}\right) \right|_{\nu=n} = 0 </math>
となるから、<math>\left.\left(\frac{\partial J_\nu(z)} {\partial \nu} \right) \right|_{\nu=n} </math> は微分方程式の解である。<math>\left.\left(\frac{\partial J_{-\nu}(z)} {\partial \nu} \right) \right|_{\nu=n} </math> も同じ微分方程式を満たすから、その線形結合として、
<math>Y_n(z) = \frac 1 \pi \left(\left.\left(\frac{\partial J_\nu(z)} {\partial \nu}\right) \right|_{\nu=n} - (-1)^n \left.\left(\frac{\partial J_{-\nu(z)}} {\partial \nu} \right) \right|_{\nu=n} \right) </math>
を定義すると、<math>J_n (z) </math> に独立な解を与える。非整数の <math>\nu </math> に対しては、
<math>Y_\nu (z) = \frac{\cos \nu \pi J_\nu (z) - J_{-\nu} (z)}{\sin \nu \pi} </math>
と定義すると、 <math>\nu \rightarrow n </math> の極限として、 <math>Y_n(z) </math> を得ることができる。
第一種、第二種 Hankel 函数をそれぞれ
<math>H^{(1)}_\nu(z) = J_\nu(z) + i Y_\nu(z)</math>
<math>H^{(2)}_\nu(z) = J_\nu(z) - i Y_\nu(z) </math>
で定義する。
== 楕円積分と楕円函数 ==
第一種完全楕円積分 <math>K(k)</math> と第二種完全楕円積分 <math>E(k)</math> は
<math>K(k) = \int_0^{\frac \pi 2} \frac{d\theta}{\sqrt{1-k^2\sin^2\theta}}</math>
<math>E(k) = \int_0^{\frac \pi 2} {\sqrt{1-k^2\sin^2\theta}}d\theta</math>
で定義される。
Taylor 展開して、
<math>\begin{align}K(k) &= \int_0^{\frac \pi 2} \frac{d\theta}{\sqrt{1-k^2\sin^2\theta}} \\
&= \int_0^{\frac \pi 2} \sum_{n=0}^\infty \binom{-\frac 1 2}{n}(-1)^n k^{2n}\sin^{2n}\theta d\theta \\
&= \sum_{n=0}^\infty \frac{(2n-1)!!}{{(2n)!!}}k^{2n}\int_0^{\frac \pi 2}\sin^{2n}\theta d\theta \\
&= \frac \pi 2 \sum_{n=0}^\infty \left(\frac{(2n-1)!!}{{(2n)!!}}\right)^2 k^{2n} \\
\end{align}</math>
<math>\begin{align}E(k) &= \int_0^{\frac \pi 2} {\sqrt{1-k^2\sin^2\theta}}d\theta \\
&= \int_0^{\frac \pi 2} \sum_{n=0}^\infty \binom{\frac 1 2}{n}(-1)^n k^{2n}\sin^{2n}\theta d\theta \\
&= \sum_{n=0}^\infty \frac{-(2n-1)!!}{{(2n-1)(2n)!!}} k^{2n}\int_0^{\frac \pi 2}\sin^{2n}\theta d\theta \\
&= \frac \pi 2 \sum_{n=0}^\infty \left(\frac{(2n-1)!!}{{(2n)!!}}\right)^2 \frac{k^{2n}}{1-2n} \\
\end{align}</math>
となる。あるいは、超幾何函数を使うと、
<math>K(k) = \frac \pi 2 F\left(\frac 1 2, \frac 1 2; 1; k^2 \right)</math>
<math>E(k) = \frac \pi 2 F\left(\frac 1 2, -\frac 1 2; 1; k^2 \right)</math>
となる。この変形に、
<math>\left(\frac 1 2 \right)_n = \left(\frac{1}{2}\right)\left(\frac{1+2}{2}\right)\cdots \left(\frac{1+2n-2}{2}\right) = \frac{(2n-1)
!!}{2^n}</math>
<math>\left(-\frac 1 2 \right)_n = \left(-\frac{1}{2}\right)\left(\frac{1}{2}\right)\left(\frac{1+2}{2}\right)\cdots \left(\frac{1+2n-4}{2}\right) = -\frac{(2n-3)
!!}{2^n} </math>
を使う。
=== Theta函数 ===
<math>\vartheta(z,\tau) = \sum_{n=-\infty}^{\infty} e^{\pi in^2\tau + 2\pi inz}</math>
<math>\vartheta_{01}(z, \tau) = \sum_{n=-\infty}^{\infty} e^{\pi in^2\tau + 2\pi in\left(z+\frac 1 2\right)} = \vartheta\left(z+\frac 1 2, \tau\right)</math>
<math>\vartheta_{10}(z, \tau) = \sum_{n=-\infty}^{\infty} e^{\pi i\left(n + \frac 1 2 \right)^2\tau + 2\pi i\left(n+\frac 1 2\right)z} = e^{\frac 1 4 \pi i \tau + \pi i z}\vartheta\left(z+\frac 1 2, \tau\right)</math>
<math>\vartheta_{11}(z, \tau) = \sum_{n=-\infty}^{\infty} e^{\pi i\left(n + \frac 1 2 \right)^2\tau + 2\pi i\left(n+\frac 1 2\right)\left(z+\frac 1 2\right)} = e^{\frac 1 4 \pi i \tau + \pi i \left(z + \frac 1 2\right)}\vartheta\left(z+\frac 1 2, \tau\right)</math>
と定義する。<math>\vartheta_{00}(z,\tau) = \vartheta(z,\tau)
</math> とする。
<math>\vartheta(z+1,\tau) = \vartheta(z,\tau)</math>
<math>\vartheta(z+\tau,\tau) = e^{-\pi i (\tau + 2z)}\vartheta(z,\tau)</math>
さらに、
<math>\vartheta_{00}(z+1,\tau) = \vartheta_{00}(z,\tau)</math>
<math>\vartheta_{01}(z+1,\tau) = \vartheta_{01}(z,\tau)</math>
<math>\vartheta_{10}(z+1,\tau) = -\vartheta_{10}(z,\tau)</math>
<math>\vartheta_{11}(z+1,\tau) = -\vartheta_{11}(z,\tau)</math>
また、
<math>\vartheta_{00}(z+\tau,\tau) = e^{-\pi i (\tau + 2z)}\vartheta_{00}(z,\tau)</math>
<math>\vartheta_{01}(z+\tau,\tau) = -e^{-\pi i (\tau + 2z)} \vartheta_{01}(z,\tau)</math>
<math>\vartheta_{10}(z+\tau,\tau) = e^{-\pi i (\tau + 2z)}\vartheta_{10}(z,\tau)</math>
<math>\vartheta_{11}(z+\tau,\tau) = -e^{-\pi i (\tau + 2z)} \vartheta_{11}(z,\tau)</math>
<math>\vartheta_{00}\left(z+\frac 1 2,\tau\right) = \vartheta_{01}(z,\tau)</math>
<math>\vartheta_{01}\left(z+\frac 1 2,\tau\right) = \vartheta_{00}(z,\tau)</math>
<math>\vartheta_{10}\left(z+\frac 1 2,\tau\right) = -\vartheta_{11}(z,\tau)</math>
<math>\vartheta_{11}\left(z+\frac 1 2,\tau\right) = -\vartheta_{10}(z,\tau)</math>
Jacobi の楕円函数を
<math>\operatorname{sn} u = -\frac{\vartheta_{00} \vartheta_{11}(\zeta)}{\vartheta_{10}\vartheta_{01}(\zeta)}</math>
<math>\operatorname{cn} u = \frac{\vartheta_{01} \vartheta_{10}(\zeta)}{\vartheta_{10}\vartheta_{01}(\zeta)}</math>
<math>\operatorname{dn} u = \frac{\vartheta_{01} \vartheta_{00}(\zeta)}{\vartheta_{00}\vartheta_{01}(\zeta)}</math>
で定義する。ただし、<math>k = \left(\frac{\vartheta_{10}}{\vartheta_{00}}\right)^2</math> ,<math>u = \pi \vartheta_{00}^2 \zeta</math> である。
== 参考文献 ==
* 寺沢寛一『自然科学者のための数学概論(増訂版)』岩波書店、1983年。
* 高木貞治『定本 解析概論』岩波書店、2010年。
* 犬井鉄郎『特殊函数』岩波書店、1962年。
{{stub}}
{{DEFAULTSORT:とくしゆかんすう}}
[[Category:物理数学]]
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Wikijunior:言語/ヌーキ語/入門編/吸着音
0
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263200
262796
2024-11-07T13:18:31Z
Rhanese
84703
/* Mʘ */
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wikitext
text/x-wiki
== 基礎 ==
=== ǀ ===
小文字のLと間違いやすい文字ですが、これは'''{{Ruby|歯吸着音|はきゅうちゃくおん}}'''と呼ばれる音であり、thを{{Ruby|発音|はつおん}}する部位で舌打ちすることを表します。<br>
[[file:Dental click.ogg]]
=== ǁ ===
これは、'''{{Ruby|歯茎側面吸着音|しけいそくめんきゅうちゃくおん}}'''と呼ばれ、Lを発音する場所で舌打ちすることを表します。<br>
[[File:Alveolar lateral click.ogg]]
=== ǂ ===
これは、'''{{Ruby|硬口蓋吸着音|こうこうがいきゅうちゃくおん}}'''と呼ばれ、「キャ」を{{Ruby|発音|はつおん}}する位置に舌で力を入れて、勢いよく舌から力を抜けさせると、{{Ruby|発音|はつおん}}することができます<br>
[[File:Palatoalveolar_click.ogg]]
=== ʘ ===
これは、'''{{Ruby|両唇吸着音|りょうしんきゅうちゃくおん}}'''と呼ばれ、キス音を表します。<br>
[[File:Clic bilabial sourd.ogg]]
=== ǃ ===
これは、'''{{Ruby|歯茎吸着音|しけいきゅうちゃくおん}}'''と呼ばれ、「タ」や「ダ」を{{Ruby|発音|はつおん}}する位置に舌に力を入れ、勢いよく舌を上に上げることで{{Ruby|発音|はつおん}}することができます。<br>
[[File:Postalveolar_click.ogg]]
== 鼻音 ==
=== Mʘ ===
マを{{Ruby|発音|はつおん}}するようにʘを{{Ruby|発音|はつおん}}することで、{{Ruby|発音|はつおん}}できます。<br>
=== N! ===
ナを{{Ruby|発音|はつおん}}を{{Ruby|発音|はつおん}}するようにǃを発音することで、{{Ruby|発音|はつおん}}できます<br>
[[File:Intervocalic_nasal_alveolar_clicks.ogg]]
==外部リンク==
*言語学者Sheena Shah氏が作成した[https://www.sheenashah.co.uk/page85.html 吸着音リスト]
{{スタブ}}
[[Category:執筆中 (ウィキジュニア) ]]
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データ記述言語
0
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Ef3
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/* カテゴリツリー */ {{#Categorytree:{{SUBPAGENAME}}|hideroot="on"|mode=pages}}
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wikitext
text/x-wiki
'''データ記述言語'''は、データを構造化して表現するための形式です。設定ファイルやデータ交換の形式として多く利用されています。このハンドブックでは、代表的なデータ記述言語について、その特徴や用途、構文の例を解説します。
== JSON (JavaScript Object Notation) ==
JSONはシンプルで広く普及しているデータ記述言語です。多くのプログラミング言語でサポートされており、主にWeb APIのデータ交換や設定ファイルとして利用されています。
{{Main|JSON}}
=== 特徴 ===
* シンプルで人間が読みやすい。
* キーと値のペアで構成され、ネスト構造が可能。
* データ型として文字列、数値、真偽値、配列、オブジェクトなどをサポート。
=== 構文例 ===
:<syntaxhighlight lang="json">
{
"name": "Alice",
"age": 25,
"is_student": false,
"skills": ["Python", "JavaScript"]
}
</syntaxhighlight>
=== 用途 ===
* Web APIのデータ交換形式。
* アプリケーションの設定ファイル。
== YAML (YAML Ain't Markup Language) ==
YAMLは直感的で読みやすく、インデントで構造を表現することが特徴です。主に設定ファイルとして利用され、KubernetesやAnsibleなどのツールで使用されます。
{{Main|YAML}}
=== 特徴 ===
* インデントで階層構造を表現する。
* JSONより柔軟で、リストや辞書を直感的に記述できる。
* コメントが使用可能。
=== 構文例 ===
:<syntaxhighlight lang="yaml">
name: Alice
age: 25
is_student: false
skills:
- Python
- JavaScript
</syntaxhighlight>
=== 用途 ===
* 設定ファイルや構成ファイル。
* DevOpsツールの設定。
== XML (eXtensible Markup Language) ==
XMLはタグを使ってデータを表現し、構造を明確に定義できます。広く普及しており、特にドキュメントや構造化データの交換に使われています。
{{Main|XML}}
=== 特徴 ===
* タグによる明確な構造。
* 属性を持てるため、複雑なデータ表現が可能。
* 厳格な構文を持ち、データ検証が容易。
=== 構文例 ===
:<syntaxhighlight lang="xml">
<person>
<name>Alice</name>
<age>25</age>
<is_student>false</is_student>
<skills>
<skill>Python</skill>
<skill>JavaScript</skill>
</skills>
</person>
</syntaxhighlight>
=== 用途 ===
* ドキュメントの構造化。
* Webサービスのデータ交換(例:SOAP)。
== TOML (Tom's Obvious, Minimal Language) ==
TOMLはシンプルで分かりやすい構造を持ち、設定ファイルとしての利用に適しています。Rustなど多くのプロジェクトで使われています。
{{Main|TOML}}
=== 特徴 ===
* 読みやすい構文とエラーの少ない構造。
* 型をサポートし、日付やブール値なども表現可能。
* テーブルと配列により階層構造が簡単に記述できる。
=== 構文例 ===
:<syntaxhighlight lang="toml">
title = "TOML Example"
[database]
server = "192.168.1.1"
ports = [ 8001, 8002 ]
enabled = true
</syntaxhighlight>
=== 用途 ===
* 設定ファイル。
* Rustのパッケージマネージャー(Cargo)で使用。
== その他のデータ記述言語 ==
ここでは、他にも使用されるデータ記述言語を簡単に紹介します。
=== INI ===
INIファイルは主に設定ファイルとして使われ、シンプルな形式で記述されます。
{{Main|INI}}
:<syntaxhighlight lang="ini">
[User]
name=Alice
age=25
is_student=false
</syntaxhighlight>
=== Protocol Buffers (Protobuf) ===
Googleが開発したバイナリ形式のデータ記述言語で、分散システムのデータ交換で使用されます。
{{Main|Protobuf}}
=== HCL (HashiCorp Configuration Language) ===
HashiCorp製ツールの設定で使われるデータ記述言語で、インフラのコード化に特化しています。
{{Main|HCL}}
=== CSV (Comma-Separated Values) ===
CSVはカンマ区切りでデータを表現し、主に表形式のデータ保存に使われます。
{{Main|CSV}}
== まとめ ==
データ記述言語にはそれぞれ独自の特徴と適した用途があります。シンプルさを重視するJSONやTOML、構成の柔軟さが求められる場合のYAML、構造化されたデータの交換に向いたXMLなど、使用する場面や目的に応じて最適な言語を選ぶことが重要です。
== カテゴリツリー ==
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[[Category:データ記述言語|*]]
elb4z934ur15ptrlgy01mg1l15cvvro
コンピュータ言語
0
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2024-11-07T21:45:39Z
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/*カテゴリツリー*/ {{#Categorytree:{{SUBPAGENAME}}|hideroot="on"|mode=pages}}
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wikitext
text/x-wiki
'''コンピュータ言語'''は、プログラムの記述やデータの処理を行うための手段です。このハンドブックでは、代表的なコンピュータ言語の特徴や主な用途、コード例などを紹介します。各言語の特性を理解することで、適切な場面での選択に役立ててください。
== プログラミング言語 ==
'''プログラミング言語'''とは、コンピュータに特定の指示を与えるための人工言語です。人間が理解できるコードや記述をコンピュータが解釈・実行できる形に変換する手段として設計されています。
{{Main|プログラミング言語}}
=== Python ===
[[Python]]は、シンプルで読みやすい構文を持ち、汎用性が高いプログラミング言語です。AIやデータサイエンス、Web開発など、さまざまな分野で広く使われています。
==== 特徴 ====
* 直感的な構文と高い可読性。
* 豊富な標準ライブラリとサードパーティーライブラリ。
* 動的型付けと強力なオブジェクト指向機能をサポート。
==== 用途 ====
* Webアプリケーション(例:Django、Flask)
* データサイエンス・機械学習(例:pandas、NumPy、scikit-learn)
* 自動化スクリプトやツール作成
==== サンプルコード ====
:<syntaxhighlight lang="python">
# Hello World プログラム
print("Hello, World!")
</syntaxhighlight>
=== Ruby ===
[[Ruby]]は、シンプルで効率的なコード記述を目指したオブジェクト指向プログラミング言語で、特にWebアプリケーション開発で広く利用されています。
==== 特徴 ====
* 柔軟な構文と高い生産性。
* すべての要素がオブジェクトで構成される純粋なオブジェクト指向。
* 大規模なWebフレームワーク「Ruby on Rails」で有名。
==== 用途 ====
* Webアプリケーション開発(例:Ruby on Rails)
* 自動化スクリプトやデータ処理
* CLIツールやスクリプト作成
==== サンプルコード ====
:<syntaxhighlight lang="ruby">
# Hello World プログラム
puts "Hello, World!"
</syntaxhighlight>
=== Java ===
[[Java]]は、クロスプラットフォームのオブジェクト指向プログラミング言語で、特にエンタープライズアプリケーションの開発に適しています。
==== 特徴 ====
* "Write Once, Run Anywhere"を目指した仮想マシン(JVM)上で実行。
* 強い型付けとメモリ管理の自動化。
* 豊富なエコシステムと多くのライブラリ。
==== 用途 ====
* エンタープライズアプリケーション(例:金融、保険業界)
* Androidアプリ開発
* サーバーサイドのWebアプリケーション
==== サンプルコード ====
:<syntaxhighlight lang="java">
public class HelloWorld {
public static void main(String[] args) {
System.out.println("Hello, World!");
}
}
</syntaxhighlight>
=== JavaScript ===
[[JavaScript]]は主にWeb開発に使われるスクリプト言語で、動的なWebページやWebアプリケーションのフロントエンド部分を担当します。
==== 特徴 ====
* ブラウザ上で動作し、HTMLやCSSと連携可能。
* 非同期処理(例:Promise、async/await)をサポート。
* 近年ではサーバーサイド(例:Node.js)でも利用可能。
==== 用途 ====
* Webページのインタラクティブな要素の作成
* シングルページアプリケーション(SPA)の開発
* サーバーサイドスクリプト(例:Node.js)
==== サンプルコード ====
:<syntaxhighlight lang="javascript">
// Hello World プログラム
console.log("Hello, World!");
</syntaxhighlight>
=== VBA (Visual Basic for Applications) ===
VBAは、Microsoft Officeアプリケーションに組み込まれたプログラミング言語で、主にExcelやWordの自動化に使われます。
==== 特徴 ====
* Officeアプリケーションとの密接な統合。
* マクロやフォームの作成による操作の自動化。
* 簡易なGUI作成が可能。
==== 用途 ====
* Excelのデータ処理・分析自動化
* WordやOutlookのドキュメント操作
* Accessデータベース操作
==== サンプルコード ====
:<syntaxhighlight lang="basic">
' Hello World プログラム
Sub HelloWorld()
MsgBox "Hello, World!"
End Sub
</syntaxhighlight>
== マークアップ言語 ==
'''マークアップ言語'''とは、文書やデータの構造、外観、意味を定義するためにテキストに「マーク(タグ)」を付けて記述する言語です。マークアップ言語は、文書の内容を構造化し、情報の整理、表示方法の指定、データの意味付けに利用されます。プログラミング言語とは異なり、基本的に処理や計算の指示を行うのではなく、テキストに装飾や意味を持たせるために使われます。
=== HTML (HyperText Markup Language) ===
[[HTML]]はWebページの構造を記述するためのマークアップ言語です。テキスト、画像、リンクなどの要素を定義し、Webブラウザがコンテンツを表示するための基盤を提供します。
==== 特徴 ====
* 静的なコンテンツの記述が可能。
* 要素を階層構造で記述し、DOM(Document Object Model)を形成。
* CSSとJavaScriptで視覚効果や動的操作が可能。
==== 用途 ====
* Webページの基本構造の作成
* テキスト、画像、リンク、フォームなどのレイアウト
==== サンプルコード ====
:<syntaxhighlight lang="html">
<!DOCTYPE html>
<html>
<head>
<title>Hello World</title>
</head>
<body>
<h1>Hello, World!</h1>
</body>
</html>
</syntaxhighlight>
== スクリプト言語 ==
'''スクリプト言語'''とは、主に特定の環境上で簡易的なプログラム(スクリプト)を作成するために設計されたプログラミング言語の一種です。スクリプトは通常、コンパイルせずにインタープリタによって直接実行されるため、コードの記述や実行が迅速で、手軽に操作や自動化を行うのに適しています。
=== Bash ===
Bashは主にUNIX系オペレーティングシステムで使われるスクリプト言語で、シェルスクリプトとしてシステムの自動化や管理に広く利用されます。
==== 特徴 ====
* シェル上でのコマンドをスクリプトとして記述可能。
* 簡易な構文でファイル操作やプロセス管理が行える。
* 条件分岐やループ構文をサポート。
==== 用途 ====
* システム管理や運用自動化スクリプト
* UNIX系OSでのバッチ処理
==== サンプルコード ====
:<syntaxhighlight lang="bash">
#!/bin/bash
# Hello World スクリプト
echo "Hello, World!"
</syntaxhighlight>
== その他のコンピュータ言語 ==
=== SQL (Structured Query Language) ===
SQLはリレーショナルデータベースを操作するための言語で、データの検索、挿入、更新、削除などの処理を行います。
==== 特徴 ====
* データベースへの問い合わせ言語として標準化。
* データ操作(DML)、データ定義(DDL)、アクセス制御(DCL)を含む。
* 多くのリレーショナルデータベースシステムでサポート。
==== 用途 ====
* データベースのデータ管理
* データの検索や分析
==== サンプルコード ====
:<syntaxhighlight lang="sql">
SELECT * FROM users WHERE age > 25;
</syntaxhighlight>
=== R ===
Rは統計解析やデータ処理に特化したプログラミング言語で、データ分析や可視化に適しています。
==== 特徴 ====
* 統計解析用の豊富な関数とパッケージを提供。
* データの可視化や分析に優れた機能。
* 大規模データセットの処理に対応。
==== 用途 ====
* データサイエンスや統計解析
* データ可視化
==== サンプルコード ====
:<syntaxhighlight lang="r">
# Hello World
print("Hello, World!")
</syntaxhighlight>
== まとめ ==
このハンドブックでは、さまざまなコンピュータ言語についての概要、特徴、サンプルコードを紹介しました。各言語にはそれぞれの得意分野があり、適切な場面で使用することでプログラムの効果や効率を高めることができます。
== カテゴリツリー ==
{{#Categorytree:{{SUBPAGENAME}}|hideroot="on"|mode=pages}}
[[Category:コンピュータ言語|*]]
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FreeBSD/ハードウェアサポート
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2024-11-07T23:22:04Z
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本稿では、FreeBSDシステムにおけるハードウェアサポートについて、システムプログラミングおよびドライバ開発の観点から解説します。特に、カーネルレベルでの実装詳細、デバイスドライバアーキテクチャ、および性能最適化の手法について詳述します。
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本稿では、FreeBSDシステムにおけるハードウェアサポートについて、システムプログラミングおよびドライバ開発の観点から解説します。特に、カーネルレベルでの実装詳細、デバイスドライバアーキテクチャ、および性能最適化の手法について詳述します。
== システムバスとデバイス接続 ==
FreeBSDのデバイス管理は、newbusアーキテクチャを中核として実装されております。newbusは、デバイスの階層構造をツリーとして表現し、リソース管理から動的設定までを統一的に扱います。
PCIeサブシステムでは、以下の機能が実装されております:
* MSI-X割り込みベクタの動的割り当てとアフィニティ制御
* PCIe AER(Advanced Error Reporting)による高度なエラー検出
* SR-IOV(Single Root I/O Virtualization)によるデバイス仮想化
* PCIeホットプラグイベントの非同期処理
=== newbusアーキテクチャ ===
FreeBSDのnewbusアーキテクチャは、1998年にWarner Loshによって設計・実装された、デバイス検出・設定のための統一的なフレームワークです。
====開発の経緯====
FreeBSD 3.x以前のシステムでは、デバイスの検出と設定は各ドライバが独自に実装しておりました。この方式では、ISAデバイスの検出における競合や、リソース(IRQ、I/Oポート、メモリ)の重複割り当てが頻発していました。また、プラットフォーム依存コードが各所に散在し、デバイス設定の一貫性も欠如していました。
このような状況を改善するため、開発チームはNetBSDのautoconfigシステムを参考にしながら、より柔軟な新しいアーキテクチャの設計に着手しました。その成果として誕生したのが、newbusアーキテクチャです。
====アーキテクチャ概要====
newbusの中核となる設計思想は、デバイスツリーによる階層的な表現と、バスに依存しない統一的なAPIの提供にあります。また、動的なデバイス追加・削除をサポートし、リソース管理を一元化することで、システム全体の堅牢性を高めています。
具体的な実装では、以下のような基本構造を採用しています。
:<syntaxhighlight lang=c>
/* デバイスインターフェースの基本構造 */
struct device {
TAILQ_ENTRY(device) link; /* デバイスリンクリスト */
TAILQ_HEAD(,device) children;/* 子デバイスリスト */
struct device *parent; /* 親デバイスへのポインタ */
driver_t *driver; /* デバイスドライバ */
void *ivars; /* インスタンス変数 */
device_state_t state; /* デバイス状態 */
};
/* ドライバメソッドテーブル */
typedef struct driver {
const char *name; /* ドライバ名 */
method_t *methods; /* メソッドテーブル */
size_t size; /* デバイスのソフト状態サイズ */
} driver_t;
</syntaxhighlight>
====発展と進化====
FreeBSD 4.x時代(1999-2003年)には、デバイスツリーのXMLエクスポート機能が追加され、電源管理(APM)との統合が進められました。また、SMP対応も大幅に強化されました。
続くFreeBSD 5.x-7.x時代(2003-2009年)には、リソースマネージャが刷新され、デバイス状態管理も改善されました。さらに、各種デバイスクラスに特化した拡張機能も実装されました。
FreeBSD 8.x以降(2009年-現在)では、ACPI統合の強化が進み、マルチドメインサポートや仮想化環境への対応も実現しています。
====現代的な利用====
現代のnewbusアーキテクチャでは、デバイスリソースの定義からPCI設定空間へのアクセス、デバイスプロパティの管理まで、包括的な機能を提供しています。
:<syntaxhighlight lang=c>
/* デバイスリソースの定義例 */
static struct resource_spec pcm_res_spec[] = {
{ SYS_RES_IRQ, 0, RF_ACTIVE },
{ SYS_RES_MEMORY, 0, RF_ACTIVE },
{ SYS_RES_DMA, 0, RF_ACTIVE },
{ -1, 0, 0 }
};
/* PCI設定空間へのアクセス例 */
static int
pci_read_config(device_t dev, int reg, int width)
{
struct pci_devinfo *dinfo = device_get_ivars(dev);
/* 実装詳細 */
}
/* プロパティの設定と取得 */
device_set_property(dev, "clock-frequency", &freq, sizeof(freq));
device_get_property(dev, "clock-frequency", &freq, sizeof(freq));
</syntaxhighlight>
====今後の展望====
newbusアーキテクチャは現在も進化を続けており、PCIe Gen 6.0などの新世代バスへの対応や、ARM64/RISC-Vプラットフォームでの機能拡張が進められています。また、コンテナや仮想化環境での動的再構成、セキュアブートやデバイス認証との統合も検討されています。
====技術的な考察====
newbusを利用したドライバ開発においては、デバイスツリーの走査順序やリソース要求の優先順位に注意を払う必要があります。また、割り込みハンドラの登録タイミングや電源管理状態の遷移処理なども、慎重な実装が求められます。
参考文献:
* "The Design and Implementation of the FreeBSD Operating System" (McKusick, et al.)
* FreeBSD Architecture Handbook
* Warner Losh's presentations at BSDCon/EuroBSDCon
== USB実装とデバイスサポート ==
USBスタックは、NetBSDから派生したコードベースを洗練させ、以下の特徴を実装しております:
* xhciドライバによるUSB 3.0/4.0世代の高速転送最適化
* isochronous転送の低レイテンシ実装
* USBデバイスファームウェアのランタイムローディング
* 電力管理統合によるUSB PDサポート
デバイスクラスドライバは、以下のアーキテクチャで実装されております:
* umassドライバ:CAMミドルレイヤとの非同期I/O統合
* uhidドライバ:evdevバックエンドによる入力デバイス抽象化
* uaudioドライバ:OSS/sndioインターフェースとの統合
== ストレージサブシステム ==
ストレージサブシステムは、CAM(Common Access Method)をベースとした階層型アーキテクチャを採用しております。
NVMeサブシステムの特徴:
* マルチキューI/Oスケジューラの最適化実装
* 名前空間管理とNVMeパススルーのサポート
* ZFS/NVMe統合によるエンドツーエンドのデータ整合性保証
* PCIeトポロジを考慮したキュー割り当て
AHCIサブシステムの実装:
* NCQコマンドのキューイング最適化
* FUA(Force Unit Access)による書き込み保証
* TRIM/UNMAPコマンドの非同期処理
* SAMTAプロトコルによる高度なエラーリカバリ
=== CAM(Common Access Method) ===
FreeBSDにおける'''CAM(Common Access Method)'''は、SCSIデバイスにアクセスするための標準化されたインターフェースです。CAMは、デバイスドライバとシステムの上位層(カーネルやユーザ空間アプリケーション)を結び付ける役割を果たし、ストレージデバイスやその他のSCSI互換デバイスへの共通のアクセス手段を提供します。これにより、ストレージデバイスが物理的に異なっていても、システムからのアクセス方法は統一され、システムの汎用性と互換性が高まります。
CAMはSCSIだけでなく、SATAやNVMeなどの他のストレージプロトコルにも対応可能で、さまざまなストレージインターフェースにアクセスできるよう設計されています。以下は、CAMの主要な特徴とコンポーネントです:
==== CAMの主要コンポーネント ====
; XPT(Transport Layer)
: デバイスドライバとユーザ空間からのリクエストを受け取り、適切なSCSIデバイスにルーティングする役割を担います。XPTはCAMサブシステムの中核部分で、リクエストの送信や転送を効率化します。
; SIM(SCSI Interface Module)
: 物理的なインターフェースを管理するモジュールで、デバイスドライバとCAMサブシステムを接続します。たとえば、SATAやNVMeドライバがSIMとして動作し、各インターフェースの仕様に従ってXPTから受け取ったコマンドを実行します。
; カーネルモジュール
: CAMサブシステムのカーネルモジュールは、デバイスの検出、リソースの割り当て、エラーハンドリングなど、ストレージデバイス管理の主要な機能を提供します。
==== CAMの主な機能 ====
* '''デバイスの検出と管理''': システム起動時にSCSIデバイスを自動的に検出し、管理する機能を提供します。
* '''エラーハンドリング''': ストレージデバイスとの通信中に発生するエラーを処理するメカニズムが組み込まれています。
* '''高レベルの互換性''': SCSI、SATA、NVMeなど異なるプロトコルでも共通のアクセス手段を提供するため、異なる種類のストレージデバイスがシームレスに利用できます。
CAMは、FreeBSDが提供する高い信頼性と柔軟性を支える重要な要素であり、特にサーバーやストレージシステムでの利用が多いです。
=== GEOM ===
'''GEOM'''はFreeBSDの高度なストレージ管理フレームワークで、ディスク管理を抽象化し、柔軟かつモジュール化されたアーキテクチャを提供します。GEOMはディスクのパーティション管理やRAID構成のほか、暗号化やミラーリング、スナップショットなどのさまざまなストレージ機能をサポートし、FreeBSDのストレージシステム全体を管理する要となるコンポーネントです。
==== GEOMの役割と特徴 ====
GEOMは、FreeBSDのストレージ管理において中核的な役割を果たしており、以下のような特徴があります:
# '''モジュール性''':
#: GEOMは「モジュール」(クラス)として機能し、それぞれが特定のタスクを実行します。たとえば、ミラーリング(gmirror)、RAID(graid)、暗号化(geli)など、さまざまなモジュールを組み合わせて複雑な構成を構築できます。
# '''トランスフォーメーションのチェーン''':
#: GEOMは「プロバイダ」と呼ばれる抽象化されたストレージデバイスをチェーン状に組み合わせることが可能です。例えば、物理ディスクの上にRAIDを構成し、そのRAIDの上に暗号化を施す、といった多段構造が構築できます。
# '''トポロジーの柔軟性''':
#: GEOMは階層的なトポロジーを取っており、自由に組み合わせ可能です。たとえば、複数のディスクを一つの論理デバイスとして扱ったり、異なるレイヤーにまたがるトランスフォーメーションを行うことができます。
# '''I/O リクエストのフロー制御''':
#: GEOMは、すべてのI/Oリクエストのフローを統制し、各リクエストがモジュールを経由して適切に処理されるようにします。各GEOMモジュールはI/Oの制御権を持ち、効率的に処理することでパフォーマンスと信頼性を確保します。
==== ストレージサブシステムにおけるGEOMの位置づけ ====
FreeBSDにおけるGEOMの位置づけは、低レベルのデバイスドライバ層と高レベルのファイルシステム層の間にあり、抽象的なストレージ管理を実現します。
* '''ハードウェアデバイスとカーネルインターフェース''':
*: GEOMは、物理ストレージデバイス(ディスクやSSD、その他のデバイス)から受け取ったI/Oリクエストを抽象化し、上位のシステムコンポーネント(ファイルシステムなど)へ提供します。FreeBSDのデバイスドライバ(例えばCAMで制御されるSCSIドライバ)と連携し、効率的にストレージの管理を行います。
* '''ファイルシステムとの協調''':
*: UFSやZFSなどのファイルシステムはGEOMが提供する抽象レイヤーの上に構築されており、ファイルシステムはGEOMから提供される論理デバイスを使ってストレージにアクセスします。これにより、ファイルシステムは物理デバイスの詳細から解放され、GEOMを介して柔軟なストレージ構成が可能となります。
==== 主要なGEOMモジュール ====
GEOMにはさまざまなモジュールがあり、各種ストレージ構成をサポートします。代表的なモジュールには以下のものがあります:
* '''gmirror''': ディスクのミラーリングを提供し、冗長性を確保。
* '''graid''': RAIDのサポートを提供し、RAID0、RAID1、RAID5などを実現。
* '''geli''': ディスクの暗号化を提供し、データ保護を実現。
* '''gstripe''': ストライピングを提供し、複数ディスクを使ったI/O性能の向上を実現。
* '''gconcat''': 複数のディスクを連結し、一つの論理デバイスとして扱う。
==== GEOMとCAMの関係 ====
GEOMとCAMはどちらもストレージ管理において重要な役割を持ちますが、役割が異なります:
* '''CAM'''は主にSCSIプロトコルに基づく低レベルなデバイス管理とインターフェースに焦点を当て、SCSI、SATA、NVMeデバイスへのアクセスを提供します。
* '''GEOM'''は、CAMの上に位置する抽象レイヤーとして機能し、モジュールを用いて高度なストレージ構成と管理を可能にします。
このように、GEOMはFreeBSDのストレージ管理の中心的な役割を担い、さまざまなストレージ構成や機能を提供することで、FreeBSDの柔軟なストレージ管理を支える重要なコンポーネントです。
== ネットワークインターフェース ==
ifnetフレームワークは、以下のネットワークスタック機能を提供しております:
;有線ネットワーク:
:* TSO/LRO(TCP Segmentation/Large Receive Offload)の最適化実装
:* RSS(Receive Side Scaling)によるマルチコア負荷分散
:* VLAN/QinQアクセラレーション
:* DCB(Data Center Bridging)プロトコルスイート
;無線ネットワーク:
:* net80211フレームワークによるIEEE 802.11プロトコルスタック実装
:* MU-MIMO/OFDMAの最適化サポート
:* WPA3/SAEセキュリティプロトコル統合
:* 動的周波数選択(DFS)の規制対応実装
== グラフィックスサブシステム ==
DRMフレームワークは、LinuxのDRMポートを基盤としつつ、FreeBSD固有の最適化を実装しております:
* VT-dパススルーによるGPUの直接割り当て
* GEMメモリマネージャの FreeBSD VMシステムとの統合
* KMSによる解像度/リフレッシュレート動的制御
* GPUスケジューラのUMAアーキテクチャ対応
== システム構築と最適化 ==
システムレベルの最適化には、以下のアプローチが有効です:
カーネルパラメータの最適化:
; /boot/loader.conf
:<syntaxhighlight lang=text>
hw.pci.enable_msix=1
hw.pci.enable_msi=1
hw.nvme.per_cpu_io_queues=1
vfs.zfs.prefetch_disable=0
</syntaxhighlight>
sysctl設定による細粒度の制御:
; /etc/sysctl.conf
:<syntaxhighlight lang=text>
kern.ipc.maxsockbuf=16777216
net.inet.tcp.sendbuf_max=16777216
vm.max_wired=3145728
</syntaxhighlight>
{| class="wikitable"
|+ FreeBSDのバージョンごとのハードウェアサポートアーキテクチャの進化
! バージョン !! リリース日 !! アーキテクチャの主要な変更
|-
| 14.0 - 現在
| 2023年11月 - 現在
|
* Hybrid Thread Schedulerの実装
* PCIe Gen 5.0プロトコルスタック
* Universal Flash Storage (UFS) 4.0対応
* GPU Compute Frameworkの統合
* ARM SMMU/SVAアーキテクチャ
|-
| 13.0 - 13.2
| 2021年4月 - 2023年10月
|
* Enhanced NUMA対応
* NVMe-oF Target/Initiator実装
* GPU Direct RDMA
* Thunderbolt 4 PCIeトンネリング
* RISC-V SBI 1.0実装
|-
| 12.0 - 12.4
| 2018年12月 - 2021年3月
|
* IOMMU Driver Framework
* CAM NVMe拡張アーキテクチャ
* bhyveネットワークスタック刷新
* DRMカーネルモジュール統合
* Power ISA 3.0対応
|}
== デバッグとプロファイリング ==
システム解析には、以下のツールチェーンが有効です:
* dtrace:カーネルレベルの動的トレーシング
* hwpmc:ハードウェアパフォーマンスカウンタの収集
* ktrace/kdump:システムコール追跡
* gdb/lldb:カーネルデバッギング
* flame graphs:システム全体のパフォーマンス可視化
== 参考資料 ==
* [https://www.freebsd.org/doc/handbook/ FreeBSD Handbook]
* [https://wiki.freebsd.org/ FreeBSD Wiki]
* [https://cgit.freebsd.org/ FreeBSD Source Repository]
* [https://papers.freebsd.org/ FreeBSD Technical Papers]
{{DEFAULTSORT:はとうえあさほと}}
[[Category:FreeBSD]]
5l9mhneh75jdluzmjxiohjxto4ujexw
カテゴリ:物理数学
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2024-11-08T03:51:51Z
Tomzo
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新規
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{{DEFAULTSORT:ふつりすうかく2}}
[[カテゴリ:物理学]]
[[カテゴリ:数学]]
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Doas
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<code>doas</code> は、OpenBSDをはじめとするUnix系システムにおいて、ユーザーが管理者権限を一時的に取得するためのツールです。<code>sudo</code> と似たような機能を持ちますが、よりシンプルでセキュアな設計がされています。本書では、<code>doas</code> の設定方法や使用方法について詳しく解説します。
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<code>doas</code> は、OpenBSDをはじめとするUnix系システムにおいて、ユーザーが管理者権限を一時的に取得するためのツールです。<code>sudo</code> と似たような機能を持ちますが、よりシンプルでセキュアな設計がされています。本書では、<code>doas</code> の設定方法や使用方法について詳しく解説します。
== doasの概要 ==
<code>doas</code> は、Unix系オペレーティングシステムで利用可能な、シンプルな権限昇格ツールです。主に管理者権限を一時的に得るために使用され、特定のユーザーに <code>root</code> 権限を一時的に与えることができます。<code>doas</code> は、<code>sudo</code> よりも設定が簡素であり、セキュリティ面で優れているとされています。
== インストール ==
<code>doas</code> は、多くのUnix系システムで利用可能です。OpenBSDには標準でインストールされていますが、他のシステムではインストールが必要です。
=== OpenBSD ===
OpenBSDでは、<code>doas</code> はデフォルトでインストールされています。特別な手順は必要ありません。
=== FreeBSD ===
FreeBSDに <code>doas</code> をインストールするには、以下のコマンドを使用します。
:<syntaxhighlight lang=tcsh>
# pkg install doas
</syntaxhighlight>
または、Portsコレクションを使用してインストールすることも可能です。
:<syntaxhighlight lang=tcsh>
# cd /usr/ports/security/doas && make install clean
</syntaxhighlight>
=== Linuxのディストリビューション ===
Debian/Ubuntu系では、以下のコマンドでインストールできます。
:<syntaxhighlight lang=bash>
sudo apt-get install doas
</syntaxhighlight>
Red Hat系(Fedora、CentOS、RHEL)では、以下のコマンドでインストールできます。
:<syntaxhighlight lang=bash>
sudo dnf install doas
</syntaxhighlight>
== doas.confの設定 ==
<code>doas.conf</code> は、<code>doas</code> の設定ファイルで、ユーザーやグループにどのコマンドの実行を許可するか、またパスワードの要求の有無などを設定するファイルです。
=== 基本的な設定例 ===
<code>doas.conf</code> ファイルは通常 <code>/etc/doas.conf</code> にあります(例外もあります。例えば、FreeBSDでは <code>/usr/local/etc/doas.conf</code> にあります)。以下は基本的な設定例です。
:<syntaxhighlight lang=text>
# ユーザー 'username' に root 権限を付与
permit username as root
# wheel グループに属するユーザーに root 権限を付与
permit :wheel as root
# doas グループに属するユーザーにパスワードなしで root 権限を付与
permit nopass :doas as root
</syntaxhighlight>
=== 設定項目の解説 ===
* <code>permit</code>: 権限を付与するコマンドです。
* <code>nopass</code>: パスワードを求めない設定です。
* <code>:wheel</code>: <code>wheel</code> グループに属するユーザーに対して適用されます。
* <code>as root</code>: コマンドを <code>root</code> 権限で実行できるようにします。
== doasの使用方法 ==
<code>doas</code> を使用してコマンドを実行するには、次のようにします。
:<syntaxhighlight lang=bash>
doas コマンド
</syntaxhighlight>
例えば、<code>doas</code> を使ってシステムの更新を行う場合は次のようにします。
:<syntaxhighlight lang=bash>
doas pkg_add -u
</syntaxhighlight>
このコマンドは、<code>root</code> 権限でシステムのパッケージを更新します。
== セキュリティ設定 ==
<code>doas</code> を適切に設定することは、システムのセキュリティを保つために重要です。次のポイントに留意してください。
* '''グループ制限''': <code>doas</code> で <code>root</code> 権限を与えるユーザーやグループを最小限に絞り、必要なユーザーのみにアクセスを許可しましょう。
* '''パスワード要求''': <code>nopass</code> を設定する際は、慎重に使用しましょう。パスワードなしでの実行はセキュリティリスクを高める場合があります。
== トラブルシューティング ==
<code>doas</code> に関するトラブルシューティングの際は、まず設定ファイル <code>/etc/doas.conf</code> を確認し、以下の点をチェックしましょう。
# '''設定ミス''': 設定ファイルに誤った構文がないか確認してください。
# '''パーミッションエラー''': <code>doas.conf</code> のパーミッションが正しく設定されているか確認します(通常、<code>600</code> が推奨されます)。
設定ファイルを変更した後、<code>doas</code> を使用する前にシステムを再起動するか、設定を再読み込みすることを忘れないでください。
{{DEFAULTSORT:DOAS}}
[[Category:システム管理]]
{{NDC|007.64}}
kck47g8xx9emoykhm6r5874ousbpeo0
システム管理ハンドブック
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2024-11-08T04:23:07Z
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システム管理は、コンピュータシステムやネットワークが正常かつ効率的に稼働するように、設定・監視・メンテナンスを行うプロセスです。本ハンドブックでは、UNIX、Windows、macOS、およびメインフレームを対象に、システム管理の重要なポイントを解説します。
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'''システム管理'''は、コンピュータシステムやネットワークが正常かつ効率的に稼働するように、設定・監視・メンテナンスを行うプロセスです。本ハンドブックでは、UNIX、Windows、macOS、およびメインフレームを対象に、システム管理の重要なポイントを解説します。
== UNIX系(BSD系UNIX)の管理 ==
=== ユーザーと権限管理 ===
* BSD系UNIXのユーザー管理は、主に<code>/etc/passwd</code>、<code>/etc/group</code>、<code>/etc/master.passwd</code>で行われます。
* ユーザー追加例(FreeBSD):
*:<syntaxhighlight lang="bash">
# pw useradd -n username -m -s /bin/csh
</syntaxhighlight>
* グループ設定は、<code>pw groupadd</code>で行います。
=== サービスと起動管理 ===
* FreeBSDでは、<code>/etc/rc.conf</code>を用いてサービスの起動を制御します。
* サービスの有効化例:
*:<syntaxhighlight lang="bash">
# sysrc sshd_enable="YES"
</syntaxhighlight>
* OpenBSDのサービス管理には<code>rcctl</code>が使用されます。
=== パッケージ管理 ===
* 各BSD系システムのパッケージ管理ツール:
** FreeBSD: <code>pkg</code>
** NetBSD: <code>pkgsrc</code>
** OpenBSD: <code>pkg_add</code>
* インストール例(FreeBSD):
*:<syntaxhighlight lang="bash">
# pkg install vim
</syntaxhighlight>
=== ファイルシステム管理 ===
* BSD系UNIXでは、UFSやZFSが一般的です。ZFSはスナップショット機能やRAID-Zをサポートしており、高いデータ保護機能を提供します。
* ZFSプールの作成例:
*:<syntaxhighlight lang="bash">
# zpool create mypool /dev/ada0
</syntaxhighlight>
== Windowsの管理 ==
=== ユーザーとアクセス管理 ===
* Windowsのユーザー管理は「ユーザーアカウント」または<code>net user</code>コマンドで行います。
* ユーザー追加例:
*:<syntaxhighlight lang="ps1">
net user username /add
</syntaxhighlight>
=== サービス管理 ===
* Windowsサービスは「サービス」アプリケーションか<code>sc</code>コマンドで制御します。
* サービスの開始例:
*:<syntaxhighlight lang="ps1">
sc start servicename
</syntaxhighlight>
=== パッチとアップデート管理 ===
* Windows Updateにより、システムのセキュリティパッチやソフトウェア更新を管理します。PowerShellでの自動化も可能です。
== macOSの管理 ==
=== ユーザーとグループ管理 ===
* macOSのユーザーとグループは<code>System Preferences</code>またはコマンドラインの<code>dscl</code>で管理します。
* ユーザー追加例:
*:<syntaxhighlight lang="bash">
sudo dscl . -create /Users/username
</syntaxhighlight>
=== サービス管理 ===
* macOSのサービスは<code>launchctl</code>で管理します。
* サービスの開始例:
*:<syntaxhighlight lang="bash">
sudo launchctl load /Library/LaunchDaemons/com.example.service.plist
</syntaxhighlight>
=== ソフトウェアアップデート管理 ===
* <code>softwareupdate</code>コマンドにより、macOSのアップデートを管理できます。
* アップデートの確認:
*:<syntaxhighlight lang="bash">
softwareupdate -l
</syntaxhighlight>
== メインフレームの管理 ==
=== ユーザーとアクセス権管理 ===
* メインフレーム(例: IBM z/OS)のユーザー管理は、RACF(Resource Access Control Facility)で行われます。
* ユーザー追加例:
*:<syntaxhighlight lang="text">
ADDUSER USERID(USER1) PASSWORD(PASS123)
</syntaxhighlight>
=== ジョブ管理 ===
* メインフレームではジョブスケジューラが用いられます。JCL(Job Control Language)でジョブを作成し、バッチ処理を実行します。
* ジョブ送信例:
*:<syntaxhighlight lang="text">
//JOB1 JOB (ACCT#),'EXAMPLE JOB'
//STEP1 EXEC PGM=MYPROGRAM
</syntaxhighlight>
=== システム監視 ===
* IBMのz/OSには、システムの性能やリソースを監視するツールが備わっています。Tivoli MonitoringなどでCPU使用率、メモリ、ディスクを監視し、システムを保護します。
== システムの監視とバックアップ ==
=== 監視ツール ===
* 各OSに適した監視ツールの選択と導入が重要です。
** FreeBSD/NetBSD/OpenBSD: Zabbix、Nagios
** Windows: Windows Event Viewer、System Center Operations Manager
** macOS: Activity Monitor、sysdiagnose
** メインフレーム: Tivoli Monitoring
=== バックアップ戦略 ===
* 各システムのバックアップ方法:
** UNIX: <code>dump</code>や<code>tar</code>でバックアップを作成。
** Windows: Windows BackupやPowerShellでスクリプトによる自動バックアップ。
** macOS: Time Machineまたはrsyncによるカスタムバックアップ。
** メインフレーム: DFSMShsmを用いたデータ保護。
{{DEFAULTSORT:しすてむかんりはんとふつく}}
[[Category:システム管理|はんとふつく]]
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製造物責任法
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text/x-wiki
#redirect[[w:製造物責任法]]
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