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高校化学 非金属元素
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[[高校化学 ハロゲン]]と[[高校化学 16族元素]]、[[高校化学 15族元素]]、[[高校化学 14族元素]]と統合
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== 水素と貴ガス ==
=== 水素 ===
[[ファイル:周期表-H.png|right]]
[[File:H,1.jpg|150px|right]]
'''水素'''は、単体として宇宙で最も多く存在する元素である。地球上では水 H<sub>2</sub>O として最も多く存在する。単体 H<sub>2</sub> は常温常圧で無色無臭の気体である。
;製法
工業的には、石油や天然ガスを高温水蒸気と反応させて、得られる。他には、純粋な水素を作る場合は、水を電気分解する。
実験室では、塩酸や希硫酸などの強酸に、亜鉛などの金属を加える。水素は水に溶けにくいため、水上置換で捕集する。
;主な性質・反応
* 空気中で容易に燃焼し、水になる。酸素との混合気体は爆発的に燃焼する。
*: 2H<sub>2</sub> + O<sub>2</sub> → 2H<sub>2</sub>O
* 高温では還元性をもち、高温で金属などの酸化物を還元する。
*: CuO + H<sub>2</sub> → Cu + H<sub>2</sub>O
水素は、アンモニア、塩化水素、メタノールなどの原料である。
=== 貴ガス ===
[[File:周期表-希ガス.png|right]]
'''貴ガス'''(noble gas)<ref>希ガス(rare gas)とも</ref>は、18族元素のヘリウム He, ネオン Ne, アルゴン Ar, クリプトン Kr, キセノン Xe, ラドン Rn の総称である<ref>18族元素にはオガネソン Og もあるがこの元素の性質はあまり解明されていない。</ref>。
18族元素は価電子をもたないため、他の原子と結合したり、イオンになることがほとんどない。したがって、化学反応を起こして化合物となることがほとんどない。また、単体の気体として、原子1個で1つの分子を形成している。このような分子を'''単原子分子'''と呼ぶ。
貴ガスには次のような物質がある。これらはいずれも無色無臭で、常温常圧で気体である。また、いずれも融点および沸点が低い。
* '''ヘリウム''' (He): 風船や飛行船を浮かせるために用いられる。また、すべての物質の中で、融点がもっとも低いので、超伝導など極低温の実験のさいの冷媒に液体ヘリウムが用いられる。
* '''ネオン''' (Ne): ネオンサインなどに用いられる。
* '''アルゴン''' (Ar): 溶接するときの酸化防止ガスに用いられる。空気中に0.93%存在する。
* '''クリプトン''' (Kr): 電球などに用いられる。
* '''キセノン'''(Xe): カメラのストロボなどに用いられる。
* ラドン (Rn): 放射能があり、放射線治療などに用いられる。
{|align="center" style="border:solid #aaffaa 1px;"
|[[File:He,2.jpg|100px]]||[[File:Ne,10.jpg|100px]]||[[File:Ar,18.jpg|100px]]||[[File:Kr,36.jpg|100px]]||[[File:Xe,54.jpg|100px]]
|-
|style="text-align:center"|ヘリウム
|style="text-align:center"|ネオン
|style="text-align:center"|アルゴン
|style="text-align:center"|クリプトン
|style="text-align:center"|キセノン
|}
貴ガスは原子単体で安定なため、普通は化合物にならない。貴ガスに圧力を低くしてガラス管に封入し電圧をかけることで、それぞれ異なった色の光を放つ。そのため、電球やネオンサインとして用いられるものが多い。
{|align="center" style="border:solid #aaffaa 1px;"
|[[File:HeTube.jpg|100px]]||[[File:NeTube.jpg|100px]]||[[File:ArTube.jpg|100px]]||[[File:KrTube.jpg|100px]]||[[File:XeTube.jpg|100px]]
|-
|style="text-align:center"|ヘリウム
|style="text-align:center"|ネオン
|style="text-align:center"|アルゴン
|style="text-align:center"|クリプトン
|style="text-align:center"|キセノン
|}
=== エキシマ(発展) ===
アルゴン気体とフッ素気体をつめた放電管に放電をすると、不安定なアルゴンフッ素 ArF (エキシマ)が一時的に生成し、それが分解する際に波長197 nmの紫外線を放出する。
この光は、半導体製造の際の光化学反応の光源に使われている。また、キセノンでもハロゲンとのエキシマによってレーザー光が放出されることが知られている。
=== 貴ガスの化合物 ===
貴ガスは、反応性が低く化合物を作らないと考えられていたが、1960年代に、<chem>XePtF6</chem> や <chem>XeF4</chem> などキセノンの化合物の合成に成功した。その後も貴ガスの化合物は合成されたが、ネオンの化合物は未だ合成に成功していない。
キセノンとフッ素ガスを混合した気体に放電または熱を加えてできた、二フッ化キセノン XeF<sub>2</sub> や四フッ化キセノン XeF<sub>4</sub> や六フッ化キセノン XeF<sub>6</sub> の固体は無色である。
周期表の17族に属する、フッ素 F、塩素 Cl、臭素 Br、ヨウ素 I、アスタチン At を'''ハロゲン'''という。
ハロゲンの原子は最外殻に価電子を7つ持っている。ハロゲンは1価の陰イオンになりやすい。
このためハロゲンは化合物をつくりやすい。そのため、天然では、ハロゲンは鉱物(ホタル石 CaF<sub>2</sub> 、岩塩 NaCl)として存在している場合も多い。または、海水中に陰イオンとしてハロゲンが存在している場合が多い。
== ハロゲン ==
[[ファイル:周期表-ハロゲン.png|右]]
=== ハロゲンの単体の性質 ===
ハロゲンの単体はいずれも'''二原子分子'''で有色、毒性である。
沸点(bp)・融点(mp)は、原子番号の大きいものほど高い。
ハロゲンの単体は酸化力が強い。酸化力の強さは原子番号が小さいほど大きくなる。つまり酸化力の強さは、
<chem>F2 > Cl2 > Br2 > I2</chem>
である。
たとえば、ヨウ化カリウム水溶液に塩素を加えると、ヨウ素は酸化されて単体となる。
<chem>2KI + Cl2 -> 2KCl + I2 </chem>逆に、塩化カリウム水溶液にヨウ素を加えても、ヨウ素よりも塩素のほうが酸化力が強いため、反応は起こらない。
また、ハロゲンの各元素ごとの酸化力の違いは、水や水素との反応にも関わる。
最も酸化力のつよいフッ素は、水と激しく反応し、酸素を発生する。
:2F<sub>2</sub> + 2H<sub>2</sub>O → 4HF + O<sub>2</sub>
{|border=1 cellspacing=0 align=center text-align=center style="text-align:center"
|- style="background:silver"
! !! フッ素 F<sub>2</sub> !! 塩素 Cl<sub>2</sub> !! 臭素 Br<sub>2</sub> !! ヨウ素 I<sub>2</sub>
|-
| rowspan="2" | 色・状態
| [[File:F,9.jpg|180px]] || [[File:Cl,17.jpg|180px]] || [[File:Br,35.jpg|180px]] || [[File:I,53.jpg|170px]]
|-
|| 淡黄色・気体 || 黄緑色・気体 || 赤褐色・液体 || 黒紫色・固体
|-
| 融点 (℃) || -220 || -101 || -7 || 114
|-
| 沸点 (℃) || -138 || -34 || 59 || 184
|-
| 酸化力
| colspan="4" | 大 ←――――――――――――――――――――――――――――――――――→ 小
|-
| rowspan="2" | 水との反応 || 激しく反応して<br>酸素 O<sub>2</sub> が発生 || 一部が反応<br>HCl などを生じる || rowspan="2"| 塩素より反応は弱いが、<br>似た反応をする || rowspan="2" | 水に反応しにくく、<br>水に溶けにくい
|-
|| 2H<sub>2</sub>O + 2F<sub>2</sub><br />→ 4HF + O<sub>2</sub> || 2H<sub>2</sub>O + Cl<sub>2</sub> <br />⇄ HCl + HClO
|-
| rowspan="2" | 水素との反応 || 低温・暗所でも<br />爆発的に反応 || 光を当てることで<br />爆発的に反応 || 高温にすると反応 || 高温にすると一部が反応
|}
==== '''フッ素 F₂''' ====
常温常圧下では淡黄緑色の気体である。
酸化力が非常に強く、様々な物質と激しく反応する。ガラスでさえフッ素を吹き付けると燃えるように反応するため扱いが難しい。
水や水素との反応物であるフッ化水素(HF)が水に溶けたフッ化水素酸(HFaq)はガラスを侵すため、ポリエチレン容器に入れ保管する。
==== 塩素 ====
塩素 Cl<sub>2</sub> は常温常圧で黄緑色の有毒な気体である。
==== 製法 ====
工業的:塩化ナトリウム水溶液の電気分解でつくる。
実験室的:酸化マンガン(IV)に濃塩酸を加え、加熱する。
: <chem>MnO2 + 4HCl -> MnCl2 + 2H2O + Cl2 ^</chem>
:なお、この反応では塩素と同時に水も生成する。さらに、濃塩酸には[[#ハロゲンの化合物|次節]]に見るように揮発性がある。したがって、この反応により得られる気体は純粋な塩素ではなく、水や塩化水素を少量含んでいる。それらを取り除くため、この気体を水と濃硫酸に順番に通す。まず水に通すことで、揮発した塩化水素が吸収される。次いで濃硫酸に通すことで、濃硫酸の吸湿作用により気体中の水が吸収され、純粋な塩素を得ることができる。なお、この水・濃硫酸に通す順番を逆にしてはならない。先に濃硫酸に通した後水に通しても、得られる気体の中には最後に通した水から蒸発した水蒸気が含まれているためである。塩素は空気よりも重いため、濃硫酸を通したあとの塩素を、下方置換で集める。
塩化ナトリウム、酸化マンガン(IV)に濃硫酸を加えて加熱する。
<chem>2NaCl + 3H2SO4 + MnO2 -> MnSO4 + 2NaHSO4 + 2H2O + Cl2 ^</chem>
さらし粉に塩酸を加える。
<chem>CaCl(ClO).H2O + 2HCl -> CaCl2 + 2H2O + Cl2 ^</chem>
==== 性質 ====
塩素は、水に少し溶けて、その一部が'''次亜塩素酸''' <chem>HClO</chem> になる。
:<chem>Cl2 + H2O -> HCl + HClO</chem>
次亜塩素酸は、強い酸化作用がある。塩素 Cl<sub>2</sub> の水溶液を'''塩素水'''(chlorine water)という。
塩素水および次亜塩素酸は、漂白剤や殺菌剤として水道やプールの水の殺菌などに広く用いられている。
: <chem>HClO + H^+ + 2e^- -> H2O + Cl^-</chem>
* さらし粉
水酸化カルシウムと塩素を反応させると、さらし粉(主成分:CaCl(ClO)・H<sub>2</sub>O)ができる。
さらし粉または高度さらし粉(主成分:Ca(ClO)<sub>2</sub>・2H<sub>2</sub>O)に塩酸を加えることによっても塩素の単体を得ることができる。
: CaCl(ClO)・H<sub>2</sub>O + 2HCl → CaCl<sub>2</sub> + 2H<sub>2</sub>O + Cl<sub>2</sub>↑
: Ca(ClO)<sub>2</sub>・2H<sub>2</sub>O + 4HCl → CaCl<sub>2</sub> + 4H<sub>2</sub>O + 2Cl<sub>2</sub>↑
工業的には塩化ナトリウム水溶液の電気分解を用いた、イオン交換膜法により製造される。
高度さらし粉は、漂白剤や殺菌剤として利用される。
:(※ 範囲外: ) いわゆる「カルキ」とは、この、さらし粉のこと。ドイツ語のクロールカルキを略してカルキと読んでいる。
* その他
塩素はさまざまな金属と反応して塩化物となる。たとえば、単体の塩素の中に加熱した銅線を入れると、煙状の塩化銅(II) CuCl<sub>2</sub> を生成する。
: Cu + Cl<sub>2</sub> → CuCl<sub>2</sub>
==== ヨウ素 ====
ヨウ素(I<sub>2</sub>)は常温常圧で黒紫色の固体である。'''昇華性'''があり、加熱すると固体から液体にならず直接気体となる。これを利用して、固体のヨウ素の純度を上げることができる。1リットルビーカーに不純物を含むヨウ素の固体を入れ、ガスバーナーで加熱する。ビーカーの上部には冷水を入れた丸底フラスコを置いておく。加熱によりヨウ素のみが気体となり、上昇してフラスコの底部付近で冷やされて固体に戻る。そのため、フラスコ底部に純度の高いヨウ素の針状結晶が析出する。
ヨウ素は水に溶けにくいが、エーテルなどの有機溶媒にはよく溶ける。また、ヨウ化カリウム水溶液にもよく溶けて褐色の溶液となる。<!--極性は化学IIなのでここでは触れない-->
デンプン水溶液にヨウ素を溶かしたヨウ化カリウム水溶液を加えると、青紫色を呈する。このようにデンプンにヨウ素を作用させて青紫色となる反応を'''ヨウ素デンプン反応'''と呼ぶ。これにより、ヨウ素やデンプンの検出ができる。
ヨウ素デンプン反応を用いた試薬に、ヨウ化カリウムデンプン紙がある。これは、ろ紙にデンプンとヨウ化カリウムを含ませたものであり、酸化力の強い物質の検出に用いられる。酸化力の強い物質がある場合、ヨウ化カリウムは酸化されてヨウ素の単体となる。
: 2I<sup>-</sup> → I<sub>2</sub> + e<sup>-</sup>
このヨウ素がデンプンに作用して紫色から青紫色に変化する。
=== ハロゲンの化合物 ===
==== ハロゲン化水素 ====
ハロゲンは水素と化合して'''ハロゲン化水素'''となる。いずれも無色刺激臭の気体である。
また、ハロゲン化水素の水溶液は酸性を示す。
{|border=1 cellspacing=0 align=center text-align=center style="text-align:center"
|- style="background:silver"
! colspan="2" | 名称 !! フッ化水素 !! 塩化水素 !! 臭化水素 !! ヨウ化水素
|-
| colspan="2" | 組成式 || HF || HCl || HBr || HI
|-
| colspan="2" | 沸点(℃) || 20 || -85 || -67 || -35
|-
| rowspan="2" | 水溶液 || 名称 || フッ化水素酸 || 塩酸 || 臭化水素酸 || ヨウ化水素酸
|-
| 酸の強さ || '''弱酸''' || 強酸 || 強酸 || 強酸
|}
ハロゲン水溶液の酸性は、フッ化水素酸だけが弱酸である。それ以外は強酸である。
==== フッ化水素(HF) ====
<!--沸点の高さ・弱酸となる理由については触れない; 極性・水素結合は化学IIで扱うため-->
フッ化水素は、ホタル石(主成分 CaF<sub>2</sub>)に濃硫酸をくわえて加熱することで、得られる。
: CaF<sub>2</sub> + H<sub>2</sub>SO<sub>4</sub> → 2HF + CaSO<sub>4</sub>
フッ化水素は水によく溶け、弱酸の'''フッ化水素酸'''(hydrofluoric acid)となる。
フッ化水素酸は、ガラスの主成分である二酸化ケイ素 SiO<sub>2</sub>)を溶かすため、保存するときはポリエチレン容器に保存する。
: SiO<sub>2</sub> + 6HF → H<sub>2</sub>SiF<sub>6</sub> + 2H<sub>2</sub>O
工業の用途として、ガラスの表面処理や、くもりガラスの製造に、フッ化水素酸が用いられる。
フッ化水素だけ沸点が他のハロゲン化水素よりも高いが、この原因は、フッ化水素では水素結合が生じるからである。(← ※ 実教出版、数研出版、第一学習社の教科書で紹介。)
フッ化水素酸だけ弱酸である理由も、同様に水素結合によって電離度が低くなっているためである。(← ※ 実教出版、第一学習社の教科書の見解。)
==== 塩化水素(HCl) ====
塩化水素の、実験室での製法は、塩化ナトリウムに濃い硫酸を加え加熱することで得られる。
: NaCl + H<sub>2</sub>SO<sub>4</sub> → NaHSO<sub>4</sub> + HCl↑
[[File:Hydrochloric acid ammonia.jpg|right|200px|thumb|塩化水素とアンモニアの反応 <br> 白煙( NH<sub>4</sub>Cl )を生じる]]
塩化水素は水によく溶け、その水溶液は'''塩酸'''(hydrochloric acid)である。濃度の濃いものは濃塩酸、薄いものは希塩酸と呼ばれる。塩酸は強酸性を示し、多くの金属と反応して水素を発生する。
: 2HCl + Zn → ZnCl<sub>2</sub> + H<sub>2</sub>↑
また、強酸性であることから、弱酸の塩と反応して塩を生じ、弱酸を遊離させる。
: HCl + NaHCO<sub>3</sub> → NaCl + H<sub>2</sub>O + CO<sub>2</sub>
塩酸には揮発性があり、常温で一部が気体となる。そのため、アンモニアのついたガラス棒を近づけると、塩酸の気体とアンモニアとが触れて反応し、塩化アンモニウム NH<sub>4</sub>Cl が生じる。この反応は、塩化水素やアンモニアの検出に用いられる。
: HCl + NH<sub>3</sub> → NH<sub>4</sub>Cl
==== ハロゲン化銀・ハロゲン化鉛 ====
ハロゲン化銀は、フッ化銀を除いて、一般に水に溶けにくい。このため、ハロゲンの化合物の水溶液に、硝酸銀をくわえると、塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀などのハロゲン化銀が沈殿する。
{|border=1 cellspacing=0 align=center text-align=center style="text-align:center"
|- style="background:silver"
! 名称 !! フッ化銀 !! 塩化銀 !! 臭化銀 !! ヨウ化銀 !! !! フッ化鉛(II) !! 塩化鉛(II) !! 臭化鉛(II) !! ヨウ化鉛(II)
|-
| 組成式 || AgF || AgCl || AgBr || AgI || || PbF<sub>2</sub> || PbCl<sub>2</sub> || PbBr<sub>2</sub> || PbI<sub>2</sub>
|-
| 色 || 黄色 || 白色 || 淡黄色 || 黄色 || || 白色 || 白色 || 白色 || 黄色
|-
| 水への溶けやすさ || 溶けやすい || 溶けにくい || 溶けにくい || 溶けにくい || || 溶けにくい || 溶けにくい || 溶けにくい || 溶けにくい
|-
| 熱水への溶けやすさ || 溶けやすい || 溶けにくい || 溶けにくい || 溶けにくい || || || 溶ける || 溶ける || 溶ける
|}塩化水素(HCl)
塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀には感光性があり、生じた沈澱に光を当てると銀が遊離する。また、これらはいずれもチオ硫酸ナトリウム水溶液によく溶ける。アンモニア水への溶けやすさは異なり、塩化銀はよく溶け、臭化銀も一部溶けるが、ヨウ化銀は溶けない。
==== 塩素のオキソ酸 ====
塩素のオキソ酸には、酸化数の異なる次の4つがある。
{|border=1 cellspacing=0 align=center text-align=center style="text-align:center"
|- style="background:silver"
! 名称 !! width=100px | 次亜塩素酸 !! width=100px | 亜塩素酸 !! width=100px | 塩素酸 !! width=100px|過塩素酸
|-
| 化学式 || HClO || HClO<sub>2</sub> || HClO<sub>3</sub> || HClO<sub>4</sub>
|-
| 性質 || 殺菌・漂白作用 || 殺菌・漂白作用 || 強力な酸化剤 || 塩は爆発性
|}
;さらし粉
さらし粉(化学式: CaCl(ClO)・H<sub>2</sub>O または Ca(ClO)<sub>2</sub>)は、次亜塩素酸イオンを含むため、その酸化作用により漂白剤や殺菌剤として広く用いられている。水酸化カルシウムと塩素を反応させることで得られる。
: Ca(OH)<sub>2</sub> + Cl<sub>2</sub> → CaCl(ClO)・H<sub>2</sub>O
;(※ 発展) 塩素酸 および 塩素酸塩
::(※ 検定教科書では「酸素」の単元で習う場合が多い。)
塩素酸HClO<sub>3</sub>は不安定な物質だが、カリウムやナトリウムの塩は安定で、強い酸化剤である。塩素酸カリウムKClO<sub>3</sub>は酸化マンガン(IV)を触媒として用いて加熱すると酸素を発生するため、花火やマッチの火薬中に燃焼を助けるため含まれる。
: 2KClO<sub>3</sub> → 2KCl + 3O<sub>2</sub>↑
==== 範囲外? : ハロゲン化物と日用品 ====
ハロゲンの化合物のなかには、日用品の中に広く用いられている物もある。たとえば、フッ素化合物の一つ、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン)はフライパンの表面に薄く塗られ、焦げ付きを防ぐ役割を果たしている。また、臭化銀はその感光性を利用して、写真のフィルムに用いられている。塩素は多くのビニル・プラスチック製品に含まれている。また、ヨウ素は消毒剤や うがい薬 に用いられている。
==== 範囲外? : 「まぜるな危険」 ====
洗剤の「まぜるな危険」の化学反応については、啓林館の教科書を除いて、検定教科書では書かれてない。
== 16族元素 ==
[[ファイル:周期表-OS.png|右]]
16族に属する'''酸素'''(O)、'''硫黄'''(S)はともに価電子を6つ持ち、2価の陰イオンになる。ともに単体は同素体を持つ。
=== 酸素の単体 ===
酸素の単体には、原子2個で1つの分子を作っている'''酸素'''(O<sub>2</sub>)と、原子3個で1つの分子を作っている'''オゾン'''(O<sub>3</sub>)がある。いずれも常温では気体であるが、大きく異なった性質を示す。
酸素は空気中で約21%ふくまれる。また、酸素は地殻を構成する主な元素でもあり、およそ半分は酸素である。
==== 酸素 ====
[[ファイル:Dioxygen-3D-vdW.png|右|サムネイル|100x100ピクセル|酸素 O<sub>2</sub> 分子]]
'''酸素'''(O<sub>2</sub>)は常温で無色無臭の気体である。
工業的な製法は、液体空気の分留によって酸素を得る。
実験室で酸素を得るには、過酸化水素水に酸化マンガン(IV)を加えればよい。この反応で酸化マンガン(IV)は触媒として働き、過酸化水素が分解して酸素を発生する。
: 2H<sub>2</sub>O<sub>2</sub> → 2H<sub>2</sub>O + O<sub>2</sub>↑
また、塩素酸カリウムと酸化マンガン(IV)を混合して加熱してもよい。この反応でもやはり酸化マンガン(IV)は触媒として働く。
: 2KClO<sub>3</sub> → 2KCl + 3O<sub>2</sub>↑
==== オゾン ====
[[ファイル:Ozone-3D-vdW.png|右|サムネイル|100x100ピクセル|オゾン O<sub>3</sub> 分子]]
'''オゾン'''(O<sub>3</sub>)は、酸素中で無声放電を行うか、強い紫外線を当てることで生成する。
: 3O<sub>2</sub> ⇄ 2O<sub>3</sub>
オゾン O<sub>3</sub> は分解しやすく、分解のさいに強い酸化作用を示す。オゾンは淡青色・特異臭の気体で、人体には有害である。オゾンの分子は、酸素原子が3つ結合して1つの分子を作っている。
また、オゾンの酸化作用は、ヨウ化カリウムデンプン紙を青変する。
: 2KI + O<sub>3</sub> + H<sub>2</sub>O → 2KOH + O<sub>2</sub> + I<sub>2</sub>
このためオゾンの検出法は、水で湿らせたヨウ化カリウムデンプン紙でオゾンを検出できる。
大気中には上空25000mほどにオゾンが豊富に含まれる層があり、オゾン層と呼ばれる。オゾン層は人体に有害な紫外線を吸収する働きがあるが、近年このオゾン層が南極付近で局所的に薄くなっており(オゾンホール)、環境問題として取り上げられることが多くなっている。
=== 酸素の化合物 ===
酸素の化合物は一般に'''酸化物'''と呼ばれる。酸素はあらゆる物質と化合することができ、一般に金属元素とはイオン結合、非金属元素とは共有結合による酸化物を作る。
酸化物は、酸や塩基との反応のしかたから3通りに分類される。
{| class="wikitable" style="float: right;"
|+酸化物の分類
!酸性酸化物
|CO<sub>2</sub> , NO<sub>2</sub> , SiO<sub>2</sub> , SO<sub>2</sub> , SO<sub>3</sub> , Cl<sub>2</sub>O<sub>7</sub> など
|-
!塩基性酸化物
|Na<sub>2</sub>O , MgO , CaO , Fe<sub>2</sub>O<sub>3</sub> , CuO , BaO など
|-
!両性酸化物
|Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub> , ZnO
|-
|}
* '''酸性酸化物''' : 水に溶けて酸性を示したり、塩基と反応して塩を生じる酸化物を、'''酸性酸化物'''という。
* '''塩基性酸化物''' : 水に溶けて塩基性を示したり、酸と反応して塩を生じる酸化物を、'''塩基性酸化物'''という。
* '''両性酸化物''': 酸・塩基のどちらとも反応して塩を生じる酸化物を、'''両性酸化物'''という。
一般に、非金属元素の酸化物は酸性酸化物であり、金属元素の酸化物は塩基性酸化物である。
; 酸性酸化物の例
{| class="wikitable" style="float: right;"
!酸性酸化物
|CO<sub>2</sub> , NO<sub>2</sub> , SiO<sub>2</sub> , SO<sub>2</sub> , SO<sub>3</sub> , Cl<sub>2</sub>O<sub>7</sub> など
|-
|}
二酸化炭素や二酸化硫黄など、非金属元素の酸化物の多くは、酸性酸化物である。
酸性酸化物の定義により、酸性酸化物は水に溶けると、酸性を示す。
: SO<sub>3</sub> + H<sub>2</sub>O → H<sub>2</sub>SO<sub>4</sub>
:: ※ H<sub>2</sub>SO<sub>4</sub>は酸。
また、酸性酸化物は塩基と反応すると、塩をつくる。
: SO<sub>2</sub> + 2NaOH<sub>2</sub>O → Na<sub>2</sub>SO<sub>3</sub> + H<sub>2</sub>O
:: ※ Na<sub>2</sub>SO<sub>3</sub>は塩。
二酸化炭素(CO<sub>2</sub>)は塩基と反応して塩を生じる。
: CO<sub>2</sub> + Ca(OH)<sub>2</sub> → CaCO<sub>3</sub> + H<sub>2</sub>O
:: ※ CaCO<sub>3</sub>は塩。
二酸化窒素(NO<sub>2</sub>)は水に溶けて硝酸(HNO<sub>3</sub>)となる。
: 3NO<sub>2</sub> + H<sub>2</sub>O → 2HNO<sub>3</sub> + NO
; 塩基性酸化物の例
{| class="wikitable" style="float: right;"
!塩基性酸化物
|Na<sub>2</sub>O , MgO , CaO , Fe<sub>2</sub>O<sub>3</sub> , CuO , BaO など
|-
|}
水に溶けて塩基性を示したり、酸と反応して塩を生じる酸化物を、'''塩基性酸化物'''という。
: Na<sub>2</sub>O + H<sub>2</sub>O → 2NaOH
:: ※ NaOHは塩基。
'''金属元素の酸化物の多くは、塩基性酸化物である'''。酸化カルシウムや酸化ナトリウムなどが、塩基性酸化物である。
酸化カルシウム(CaO)は水に溶けて水酸化カルシウム(Ca(OH)<sub>2</sub>)となる。
: CaO + H<sub>2</sub>O → Ca(OH)<sub>2</sub>
また、これは酸と反応して塩を生じる。
: CaO + 2HCl → CaCl<sub>2</sub> + H<sub>2</sub>O
; 両性酸化物の例
{| class="wikitable" style="float: right;"
!両性酸化物
|Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub> , ZnO
|-
|}
酸・塩基のどちらとも反応して塩を生じる酸化物を、両性酸化物という。
酸化アルミニウム(Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub>)や酸化亜鉛は、酸とも塩基とも反応して塩を生じる。
: Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub> + 6HCl → 2AlCl<sub>3</sub> + 3H<sub>2</sub>O
: Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub> + 2NaOH + 3H<sub>2</sub>O → 2Na[Al(OH)<sub>4</sub>]
==== オキソ酸 ====
塩素の酸性酸化物を水に溶かすと、水と反応して酸を生じる。
塩素の酸化物には、いくつかの種類があるが、一例として酸を生じる反応として、下記の化学反応がある。
: Cl<sub>2</sub>O<sub>7</sub> + H2O → HClO<sub>4</sub>
リンの酸性酸化物も、水と反応し、酸を生じる。
: P<sub>4</sub>O<sub>10</sub> + 6H<sub>2</sub>O → 4H<sub>3</sub>PO<sub>4</sub>
また、このように酸性酸化物を水と反応させて得られた酸は、分子中に酸素原子と水素原子を含む場合が多い。 塩素の場合は、過塩素酸 HClO<sub>4</sub> などが得られるし、窒素の場合は、亜硝酸(HNO<sub>2</sub>)と硝酸(HNO<sub>3</sub>)などが得られるし、分子式を見ればわかるように酸素原子と原子が分子中に含まれてる。
{| class="wikitable" style="float: right;"
! style="text-align: center;" |化学式
!名称
!酸の強さ
!Clの酸化数
|-
|HClO<sub>4</sub>
|過塩素酸
|つよい側
|+7
|-
|HClO<sub>3</sub>
|塩素酸
|
|+5
|-
|HClO<sub>2</sub>
|亜鉛素酸
|
|+3
|-
|HClO
|次亜鉛素酸
|よわい側
|+1
|-
|}
一般に、分子中に酸素分子のある構造の酸のことを'''オキソ酸'''(oxoacid)という。(「オキソ酸」といった場合、水素原子は、なくても構わない。 ※ 東京書籍と実教出版の見解。 いっぽう、啓林館などが、「オキソ酸」の定義に水素原子を含ませる定義である。)
オキソ酸の分子構造についての議論のさいには、塩素原子や窒素原子など、由来となった酸性酸化物の元素を「中心原子」と設定して議論するのが一般的である。(つまり、酸素原子や水素原子は、中心ではない。)
中心元素が同じであれば、結合している酸素の数が多いほど、オキソ酸の酸性は強くなる。
たとえば窒素のオキソ酸として亜硝酸(HNO<sub>2</sub>)と硝酸(HNO<sub>3</sub>)があるが、硝酸の方が強い酸である。
また、中心元素が第3周期のリン、硫黄、塩素であるようなオキソ酸は、この順に酸性が強くなる。リン酸(H<sub>3</sub>PO<sub>4</sub>)は弱酸であるが、硫酸(H<sub>2</sub>SO<sub>4</sub>)は強酸であり、過塩素酸(HClO<sub>4</sub>)はさらに強い酸性を示す。
塩素のオキソ酸の酸性の順は、
: (つよい側) HClO<sub>4</sub> > HClO<sub>3</sub> > HClO<sub>2</sub> > HClO (よわい側)
名称は
: HClO<sub>4</sub> 過塩素酸。 HClO<sub>3</sub> 塩素酸。 HClO<sub>2</sub> 亜鉛素酸。HClO 次亜鉛素酸。
である。
: (※ 範囲外:) いまのところ、上記の4つ以外は、塩素のオキソ酸は発見されていない。(※ 参考文献: 化学同人『理工系基礎レクチャー 無機化学』、鵜沼秀郎 ほか 著、2007年第1版、2014年第1版第9刷、73ページ)
=== 硫黄の単体 ===
'''硫黄'''(S)の単体には、斜方硫黄、単斜硫黄、ゴム状硫黄などの同素体がある。単体は火山地帯から多く産出され、また重油の精製過程のひとつである'''脱硫'''(だつりゅう)の工程において多く得られる。
; 斜方硫黄(S<sub>8</sub>)
[[ファイル:Sulfur.jpg|100x100ピクセル]] 斜方硫黄は常温で安定な黄色・塊状の結晶である。硫黄原子が8つ環状に結合して1つの分子を形成している。
; 単斜硫黄(S<sub>8</sub>)
[[ファイル:Cyclooctasulfur-above-3D-balls.png|100x100ピクセル]] 単斜硫黄は高温で安定な黄色・針状の結晶である。硫黄原子が8つ環状に結合して1つの分子を形成している。斜方硫黄を加熱することで得られる。
; ゴム状硫黄(S<sub>x</sub>)
ゴム状硫黄は褐色の無定形固体である。ただし、純粋なものは黄色を示すものがある。数十万の硫黄原子がジグザグに結合しているため、引っ張ると結合角が変わり弾力性がある。
斜方硫黄を加熱するとコハク色の液体となる。これを加熱し続けると次第に暗褐色となり、粘性が増してくる。さらに加熱すると濃青色の液体となり、これを水中に入れ急冷するとゴム状硫黄となる。
* 反応性
硫黄は、高温で反応性が高い。
[[ファイル:Sulfur-burning-at-night.png|右|サムネイル|150x150ピクセル|硫黄の燃焼]]
硫黄は高温では多くの元素と化合して硫化物となる。たとえば鉄粉と硫黄の粉末を混合して加熱すると、硫化鉄(II) FeS が生じる。
: Fe + S → FeS
また、空気中で青白い炎をあげて燃焼し、二酸化硫黄となる。
: S + O<sub>2</sub> → SO<sub>2</sub>
=== 硫黄の化合物 ===
==== 硫化水素 ====
'''硫化水素'''(H{{sub|2}}S)は無色腐卵臭の気体である。人体に有毒であるため、使用時には十分な換気に注意しなければならない。硫化水素は水に溶け、弱酸性を示す。
: H{{sub|2}}S ⇄ HS{{sup|-}} + H{{sup|+}} ⇄ S{{sup|2-}} + 2H{{sup|+}}
火山ガスや温泉に豊富に含まれるが、実験室では硫化鉄(II)に強酸を加えることで得られる。
: FeS + 2HCl → FeCl{{sub|2}} + H{{sub|2}}S↑
: FeS + H{{sub|2}}SO{{sub|4}} → FeSO{{sub|4}} + H{{sub|2}}S↑
硫化水素は、おおくの場合に還元剤として働き、二酸化硫黄を還元して硫黄の単体を生じる。
: 2H{{sub|2}}S + SO{{sub|2}} → 2H{{sub|2}}O + 3S↓
多くの金属イオンと反応して硫化物の沈殿を作るため、金属イオンの分離や検出に多く用いられる。
: Fe{{sup|2+}} + H{{sub|2}}S → 2H{{sup|+}} + FeS↓
==== 二酸化硫黄 ====
'''二酸化硫黄'''(SO<sub>2</sub>)は腐卵臭をもつ無色の有毒な気体で、刺激臭がある。また、火山ガスや温泉などに含まれる。
酸性酸化物であり、水に溶けて弱酸性を示す。
: SO<sub>2</sub> + H<sub>2</sub>O ⇄ HSO<sub>3</sub><sup>-</sup> + H<sup>+</sup>
実験室では、銅を濃硫酸に加えて加熱するか、亜硫酸塩を希硫酸と反応させることにより得られ、下方置換で得る。
: Cu + 2H<sub>2</sub>SO<sub>4</sub> → CuSO<sub>4</sub> + 2H<sub>2</sub>O + SO<sub>2</sub>↑
: NaHSO<sub>3</sub> + H<sub>2</sub>SO<sub>4</sub> → NaHSO<sub>4</sub> + H<sub>2</sub>O + SO<sub>2</sub>↑
: Na<sub>2</sub>SO<sub>3</sub> + H<sub>2</sub>SO<sub>4</sub> → Na<sub>2</sub>SO<sub>4</sub> + H<sub>2</sub>O + SO<sub>2</sub>↑
工業的には、硫黄の燃焼により製造される。
: S + O<sub>2</sub> → SO<sub>2</sub>
二酸化硫黄は還元性があり、漂白作用がある。ただし、硫化水素のような強い還元剤がある場合は、酸化剤として作用する。
硫黄を含む物質は燃焼により二酸化硫黄を生じる。二酸化硫黄の水溶液は、弱い酸性を示す。
硫黄は石油や石炭に多く含まれているため、このような化石燃料を大量に燃焼させると、大気中に多量の二酸化硫黄が放出され、雨水に溶け込み、酸性雨の原因となる。
==== 硫酸 ====
'''硫酸'''(H{{sub|2}}SO{{sub|4}})は工業的に'''接触法'''(contact process)により、酸化バナジウムを主成分として触媒をもちいて、次のような工程で製造されている。
# 硫黄を燃焼させ、二酸化硫黄を作る。
#: S + O{{sub|2}} → SO{{sub|2}}
# 二酸化硫黄と酸素との混合気体を乾燥させ、酸化バナジウム(V{{sub|2}}O{{sub|5}})を触媒として反応させて三酸化硫黄を作る。
#: 2SO{{sub|2}} + O{{sub|2}} → 2SO{{sub|3}}
# 三酸化硫黄を濃硫酸に吸収させ、発煙硫酸とする。
#: SO{{sub|3}} + H{{sub|2}}O → H{{sub|2}}SO{{sub|4}}
# 発煙硫酸を希釈し、濃硫酸とする。
硫酸は、硫黄のオキソ酸である。通常はH{{sub|2}}SO{{sub|4}}の水溶液を硫酸と呼ぶ。硫酸は無色透明で粘性があり、密度の大きい重い液体である。濃度により性質が異なり、濃度の90%以上程度の濃いものを'''濃硫酸'''(concentrated sulfuric acid)といい、薄いものを'''希硫酸'''(diluted sulfuric acid)と呼ぶ。
濃硫酸を水で希釈することで希硫酸が得られる。希釈する際は水を入れたビーカーを水を張った水槽中に入れ、冷却しながら濃硫酸を静かに加えるようにする。これは、硫酸の水への溶解熱が非常に大きいためである。けっして、これを逆にしてはならない。もし、濃硫酸に水を加えるようにすると、溶解熱によって水が蒸発し濃硫酸が跳ねることがあり、たいへん危険である。
硫酸は沸点が高い、不揮発性の酸である。したがって、塩酸や硝酸のような揮発性の酸の塩と反応して塩を作り、揮発性酸が遊離する。
: NaCl + H{{sub|2}}SO{{sub|4}} → NaHSO{{sub|4}} + HCl↑
[[ファイル:Sulfuric_acid_burning_tissue_paper.jpg|右|サムネイル|200x200ピクセル]]
濃硫酸には次のような性質がある。
* 酸化作用: 金属を加え加熱すると、銅などのイオン化傾向の小さい金属を酸化するようになる。加熱した濃硫酸を熱濃硫酸と呼ぶこともある。
*: Cu + 2H{{sub|2}}SO{{sub|4}} → CuSO{{sub|4}} + 2H{{sub|2}}O + SO{{sub|2}}↑
* '''脱水作用'''(だっすいさよう、dehydration): 有機化合物の分子内に含まれている酸素原子や水素原子を、水分子H{{sub|2}}Oとして奪う。たとえば紙に濃硫酸を垂らすと、その部分から酸素と水素が奪われ、炭化する。
* 吸湿作用: 強い吸湿作用があり、乾燥剤として用いられる。
* 不揮発性:
希硫酸は強酸であり、多くの金属と反応して水素を発生する。一方濃硫酸は水をほとんど含まないため電離度が小さく、ほとんど酸性を示さない。
硫酸イオン(SO{{sub|4}}{{sup|2-}})はBa{{sup|2+}}やCa{{sup|2+}}と反応して白色沈殿を生じる。そのため、これらのイオンの検出・分離に用いられる。また日常生活においても、硫酸はカーバッテリーや非常用電源などとして使われる鉛蓄電池の電解液として用いられている。
[[ファイル:周期表-NP.png|右]]
'''窒素'''(N)、'''リン'''(P)はともに15族に属する非金属元素である。価電子を5つ持つ。
=== 窒素 ===
==== 単体 ====
'''窒素'''(N{{sub|2}})は常温常圧で無色無臭の気体である。窒素原子2つが三重結合して1つの分子を作っている、二原子分子の気体である。空気中に体積比でおよそ78%含まれており、工業的には液体空気の分留により生産される。液体の窒素は物質の冷却にしばしば用いられている。
=== アンモニア ===
'''アンモニア'''(NH{{sub|3}})は無色刺激臭の気体である。水に非常に溶けやすく、水溶液はアンモニア水と呼ばれ、弱塩基性を示す。
: <chem>NH3 + H2O -> NH4+ + OH^-</chem>
アンモニアの製法は、工業的には、高温高圧下で触媒を用いて窒素と水素を直接反応させる'''ハーバー・ボッシュ法'''により製造される。
: <chem>N2 + 3 H2 -> 2 NH3</chem>
実験室では、塩化アンモニウムと水酸化カルシウムの粉末を混合して加熱することにより得られる。気体は上方置換で捕集する。
: <chem>2NH4Cl + Ca(OH)2 -> CaCl2 + 2H2O + 2NH3 ^</chem>
アンモニアが生成することを確かめるには、[[高校化学 水素と貴ガス#ハロゲン化水素|濃塩酸]]を近づければよい。アンモニアと濃塩酸が反応して塩化アンモニウムの白煙を生じる。
: <chem>NH3 + HCl -> NH4Cl</chem>
水溶液中のアンモニウムイオン(NH{{sub|4}}{{sup|+}})を検出する際には、ネスラー試薬が用いられる。アンモニウムイオンがあれば黄色~褐色の沈殿を生じる。
アンモニアは、硝酸の原料、あるいは肥料の原料などとしても利用される。
=== 窒素酸化物 ===
窒素の酸化物は数種類あり、それらの総称を'''窒素酸化物'''と呼ぶ。主なものに'''一酸化窒素'''(NO)と'''二酸化窒素'''(NO{{sub|2}})がある。
; 一酸化窒素 (NO)
常温で無色の気体。水に溶けにくい。希硝酸に銅を加えることで発生する。空気中で酸化されやすいため、水上置換で捕集する。
: <chem>3Cu + 8HNO3 -> 3Cu(NO3)2 + 4H2O + 2NO ^</chem>
空気中での酸化の反応式は、
: <chem>2NO + O2 -> 2NO2</chem>
である。
; 二酸化窒素 (NO{{sub|2}})
[[ファイル:CopperReaction.JPG|右|300x300ピクセル]]
常温で褐色の気体。水に溶けやすく、反応して硝酸(<chem>HNO3</chem>)となる。
: <chem>3NO2 + H2O -> 2HNO3 + NO</chem>
実験室では濃硝酸に銅を加えることで発生する。水に溶けやすいので下方置換で捕集する。
: <chem>Cu + 4HNO3 -> Cu(NO3)2 + 2H2O + 2NO2 ^</chem>
空気中では一部で2分子が結合して四酸化二窒素(<chem>N2O4</chem>)となる。
: <chem>2NO2 <=> N2O4</chem>
窒素は常温では燃焼しない。すなわち酸素と反応して酸化物にならない。しかし、高温下では窒素と酸素が直接反応して窒素酸化物を生じる。また化石燃料の燃焼によっても窒素酸化物が生成する。そのため車のエンジンなどから窒素酸化物が発生し、大気中に放出されたものが雨水に吸収され、[[高校化学 水素と貴ガス#二酸化硫黄|硫黄酸化物]]と同様に酸性雨の原因となる。
==== 硝酸 ====
: (※ 範囲外 : ) 硝石(しょうせき)のつくり方がどこにも書いてないのはオカシイので、改革して硝石の作りかたの要点を書く。おおもとの原料は、糞尿である。尿などにふくまれるアンモニアが、土壌中でさまざまな物質と反応して、硝酸イオンを多く含む物質になる。この硝酸イオンを原料に、カリウムをふくむ灰汁(あく)とともに煮ると化学反応をして硝酸カリウムになるが、この硝酸カリウムこそが、自然界のいわゆる「硝石」(しょうせき)の主な原料である。中世や近世では、この硝石を中間材料として、火薬などを作っていた。(以上、範囲外。)
(↓ 以下、高校の範囲)
'''硝酸'''(<chem>HNO3</chem>)は窒素のオキソ酸であり、有名な強酸である。通常は<chem>HNO3</chem>の水溶液を硝酸と呼ぶ。濃度によりやや異なる性質を示し、濃度の濃いものを'''濃硝酸'''、薄いものを'''希硝酸'''と呼ぶ。硝酸は揮発性の酸であるため、実験室では硝酸塩に濃硫酸を加えることにより得られる。
: <chem>NaNO3 + H2SO4 -> NaHSO4 + HNO3</chem>
硝酸の製法は、工業的には、'''オストワルト法'''(Ostwald process)により製造される。次のような工程を経て硝酸が得られる。
# アンモニアと空気の混合気体を、触媒の白金 Pt に触れさせ、800℃〜900℃でアンモニアを酸化させて一酸化窒素とする。
#: <chem>4NH3 + 5O2 -> 4NO + 6H2O</chem>
# 一酸化窒素を空気中でさらに酸化して、二酸化窒素とする。
#: <chem>2NO + O2 -> 2NO2</chem>
# 二酸化窒素を水に吸収させ、硝酸とする。ここで発生する一酸化窒素は回収し、2に戻って再び酸化する。
#: <chem>3NO2 + H2O -> 2HNO3 + NO</chem>
硝酸は無色の水溶液であるが、光や熱により分解して二酸化窒素と酸素を生じる。そのため、保管のさいには、硝酸は褐色びんに入れ冷暗所で保存するようにする。
: <chem>4HNO3 -> 4NO2 + 2H2O + O2</chem>
強い酸化作用を持っており、水素よりイオン化傾向の小さい銅Cuや銀Agなどの金属も酸化して溶かす。また、イオン化傾向の大きい金属と反応して窒素酸化物を生じる。希硝酸からは一酸化窒素が、濃硝酸からは二酸化窒素がそれぞれ発生する。
(希硝酸)<chem>3Cu + 8HNO3 -> 3Cu(NO3)2 + 4H2O + 2NO ^</chem>
(濃硝酸)<chem>Cu + 4HNO3 -> Cu(NO3)2 + 2H2O + 2NO2 ^</chem>
また硝酸は強酸であり、イオン化傾向の大きい金属と反応して水素を発生する。
: <chem>2Al + 6HNO3 -> 2Al(NO3)3 + 3H2 ^</chem>
* 不動態
ただし、鉄 Fe やアルミニウム Al やニッケル Ni は、硝酸とは反応して水素を発生するが、濃硝酸に加えても溶けない。これは、金属の表面が酸化され、水に溶けにくい緻密な酸化被膜を生成して、内部が保護され、反応が内部まで進行しなくなるためである。このような状態を'''不動態'''(ふどうたい、passive state)という。
* その他
硝酸塩はほとんど水に溶ける。そのため、ガラス器具にこびりついた金属類を洗浄する際に用いられることも多い。
硝酸は火薬の製造に用いられる。
==== 窒素の応用 ====
たとえば、ポテトチップスなどのような油で揚げたスナック菓子の酸化防止のため、袋の中に窒素がつめられる。酸素があると、油が酸化してしまうが、代わりに何らかの気体をつめる必要があるので、窒素を袋の中につめているのである。(※ 2017年のセンター試験『化学基礎の』本試験で出題)
=== リン ===
=== 単体 ===
'''リン'''(P)は5種類の同素体を持つ。代表的なものは'''黄リン'''(P{{sub|4}})と'''赤リン''' (P{{sub|x}})の2つである。
'''黄リン'''(P{{sub|4}})は淡黄色のろう状固体であり、人体にきわめて有毒である。空気中で自然発火するため、水中に保存する。二硫化炭素(CS{{sub|2}})に溶ける。
[[ファイル:Red_phosphorus_in_a_tube_-_P_15_.jpg|右|150x150ピクセル]]
'''赤リン'''(P{{sub|x}})は赤褐色の粉末状固体であり、弱い毒性を持つ。二硫化炭素(CS{{sub|2}})に溶けない。赤リンはマッチの箱のすり薬として用いられている。
: ※ マッチでリンが使われてる部分は、マッチ棒'''ではなく'''、マッチ箱のほう。
=== 酸化物 ===
リンを空気中で燃焼させると、'''十酸化四リン'''(<chem>P4O10</chem>)の白煙を生じる。
: <chem>4P + 5O2 -> P4O10</chem>
十酸化四リンは白色の粉末状固体であり、強い吸湿性を示し、乾燥剤として用いられる。この吸湿性から、空気中に放置すると空気中の水蒸気を吸収して自分自身がその水に溶ける。この現象を'''潮解'''という。十酸化四リンは'''潮解性'''(ちょうかいせい、deliquescence)のある物質である。 十酸化四リンは水と反応して'''リン酸'''(<chem>H3PO4</chem>)となる。
: <chem>P4O10 + 6H2O -> 4H3PO4</chem>
リン酸は酢酸のような弱酸よりは強いが、塩酸のような強酸よりは弱い、中程度の強さの酸である。 リンは生物にとって必要不可欠な元素である。生物はリンの化合物であるATP(アデノシン三リン酸)にエネルギーを保存し、利用する。農業においても必要な元素で、リン酸肥料として用いられる。主なものとして、リン鉱石と硫酸と水との反応から得られるリン酸二水素カルシウム(<chem>Ca(H2PO4)2</chem>)と、硫酸カルシウム(<chem>CaSO4</chem>)との混合物である'''過リン酸石灰'''がある。 この過リン酸石灰が、リン肥料の主成分である。 リン酸カルシウム <chem>Ca3(PO4)2</chem> およびヒドロキシアパタイト <chem>Ca5(PO4)3(OH)</chem> は、動物の骨や歯の主成分である。
== 14族元素 ==
[[ファイル:周期表-CSi.png|右]]
'''炭素''' C 、'''ケイ素''' Si はともに14族に属する元素である。価電子を4個持つ。
=== 炭素 ===
'''炭素''' (C) は生物を構成する重要な元素であり、多くの化学製品にも含まれている。炭素を含む物質は一般に'''有機物'''と呼ばれる。有機化合物については別の章で詳しく学ぶ。この節では、炭素の単体、一酸化炭素、二酸化炭素について説明する。
=== 単体 ===
炭素の単体は共有結合の結晶であり、結合の仕方によっていくつかの同素体が存在する。
; ダイヤモンド (C)
[[ファイル:Apollo_synthetic_diamond.jpg|左|サムネイル|150x150ピクセル|ダイヤモンド]]
[[ファイル:DiamantEbene01.png|右|サムネイル|150x150ピクセル|ダイヤモンドの構造]]
'''ダイヤモンド'''は無色の固体で、1つの炭素原子が4つの炭素原子と正四面体の頂点方向に共有結合し、それが多数連結して結晶を形成している。共有結合の結晶であるため、非常に融点・沸点が高く、地球上で最も硬い物質として知られている。電気は通さないが、熱はよく伝える。宝石としての利用のほか、工業的には研磨剤としても使われる。光の屈折率が大きい。
{{-}}
; 黒鉛 (C)
[[ファイル:GraphiteUSGOV.jpg|左|サムネイル|150x150ピクセル|黒鉛]]
[[ファイル:Graphit_gitter.png|右|サムネイル|187x187ピクセル|グラフェン黒鉛(グラファイト)の一層をグラフェンと呼ぶ。上図ではグラフェンが4層描かれている。]]
'''黒鉛'''は金属光沢のある黒色の固体で、炭素原子が正六角形の層状構造を持っている。各層は3つの共有結合によって形成され、残りの価電子は'''自由電子'''として層間を移動する。この自由電子の存在により、黒鉛は電気をよく通し、熱伝導性も高い。層と層の結合は弱いため、黒鉛は柔らかく、鉛筆の芯や電気分解用の電極として使用される。
{{-}}
; フラーレン(C60、C70など)
[[ファイル:C60a.png|右|サムネイル|140x140ピクセル|フラーレン]]
'''フラーレン'''は茶褐色の固体で、多数の炭素原子が球状に結合している。右図はC60フラーレンのモデルで、炭素原子が60個、サッカーボール状に結合している。20世紀後半に発見された物質で、現在も研究が進んでいる。純粋なフラーレンは電気を通さないが、アルカリ金属を添加すると超伝導性を示すことがある。有機溶媒に溶ける性質を持つ。
{{-}}
; グラフェン
'''グラフェン'''は炭素原子が六角形に配列した一層のシート状の物質で、非常に強く柔軟であり、電気や熱を効率よく伝える。
{{-}}
; カーボンナノチューブ
'''カーボンナノチューブ'''(Carbon Nanotube、CNT)は、炭素原子が六角形に結びついたグラフェンシートを丸めて筒状にしたナノ材料。非常に高い強度と優れた電気・熱伝導性を持つ。
{{-}}
; 無定形炭素
[[ファイル:Binchotan_(charcoal).jpg|サムネイル|180x180ピクセル|活性炭]]
炭素の同素体とは異なり、黒鉛や[[高等学校化学I/炭化水素|炭化水素]]が不規則に結合し、結晶構造を明確に持たない固体がある。これを'''無定形炭素'''(amorphous carbon)と呼ぶ。木炭やコークスが代表的で、この中でも'''活性炭'''は多孔質であり、さまざまな物質を吸着する性質があるため、消臭剤などに用いられている。
{{-}}
=== 酸化物 ===
炭素が空気中で燃焼すると、酸化物が生成される。
; 一酸化炭素 (CO)
炭素や有機化合物が空気中で不完全燃焼すると、'''一酸化炭素''' (CO) が生じる。一酸化炭素は無色無臭の気体で、非常に有毒である。吸入すると血液中のヘモグロビンと結合し、酸素の運搬を阻害する。水には溶けにくい。
実験室では、ギ酸を濃硫酸で脱水して一酸化炭素を生成できる。
: <chem>HCOOH -> H2O + CO ^</chem>
空気中では青白い炎を上げて燃焼し、二酸化炭素を生じる。
: <chem>2CO + O2 -> 2CO2</chem>
一酸化炭素は還元性を持ち、金属酸化物を還元して単体にする性質がある。
: <chem>CuO + CO -> Cu + CO2</chem>
; 二酸化炭素 (CO2)
炭素や有機化合物が空気中で完全燃焼すると、'''二酸化炭素''' (CO2) が生じる。実験室では炭酸カルシウムに塩酸を加えて発生させることができる。
: <chem>CaCO3 + 2HCl -> CaCl2 + H2O + CO2 ^</chem>
工業的には、石灰石の熱分解によって二酸化炭素が得られる。
二酸化炭素は無色無臭の気体で、毒性はない。酸性酸化物であり、水に溶けると炭酸水素イオン <chem>HCO3^-</chem> を生成し、弱酸性を示す。
: <chem>CO2 + H2O <=> HCO3^- + H^+</chem>
また、塩基と反応して塩を作る。
: <chem>CO2 + 2NaOH -> Na2CO3 + H2O</chem>
二酸化炭素を'''石灰水'''(水酸化カルシウム水溶液)に通すと、炭酸カルシウムが生成され白濁する。この反応は二酸化炭素の検出に用いられる。
: <chem>Ca(OH)2 + CO2 -> H2O + CaCO3 v</chem>
[[ファイル:Dry_Ice_Pellets_Subliming.jpg|右|サムネイル|150x150ピクセル|ドライアイス]]
二酸化炭素の固体は分子結晶で、'''ドライアイス'''として知られ、冷却剤として使用される。常圧下で'''昇華性'''を持ち、液体にならずに直接気体となる。
二酸化炭素は生物の活動によって放出・吸収される。呼吸では、酸素を吸収して糖類と反応し、エネルギーを取り出す過程で二酸化炭素が生成される。
: <chem>C6H12O6 + 6O2 -> 6H2O + 6CO2</chem>
逆に、植物は光のエネルギーを用いて二酸化炭素を吸収し、糖類を合成する。この過程を光合成という。
: <chem>6CO2 + 6H2O -> C6H12O6 + 6O2</chem>
また、微生物の中には糖類を発酵させ、エネルギーを得るものがあり、その過程で二酸化炭素が生じる。
: <chem>C6H12O6 -> 2C2H5OH + 2CO2</chem>
=== ケイ素 ===
'''ケイ素''' Si は酸素の次に多く地殻中に含まれている元素である。水晶などの鉱物にも含まれている。半導体の主な原料であり、工業的に重要な元素となっている。
=== 単体 ===
[[ファイル:SiliconCroda.jpg|右|サムネイル|200x200ピクセル|ケイ素]]
'''ケイ素''' Si は金属光沢をもつ銀灰色の固体である。ケイ素は金属光沢をもつが、しかし金属ではない。
光や紫外線、赤外線などは電磁波であるが、ケイ素は電磁波の反射率が可視光(波長:780nm〜380nm)のあたりだけ、反射率が高いため、人間の目で見た場合に、ケイ素は金属光沢がるように見える。(※ 東京書籍の教科書で、コラムで紹介されている。)
[[ファイル:Monokristalines_Silizium_für_die_Waferherstellung.jpg|左|サムネイル|294x294ピクセル|ケイ素の単結晶電子部品の製造などに用いられる。これを薄く切断してシリコンウェハーにする。]]
ケイ素は天然には単体として存在せず、酸化物を還元することにより製造される。単体は共有結合の結晶であり、ダイヤモンドと同様の構造でケイ素原子が結合する。そのためダイヤモンド同様融点・沸点は高く、固い結晶を作る。導体と不導体の中間程度の電気抵抗を持つ半導体で、太陽電池やコンピュータ部品に用いられる。
シリコンの結晶に、わずかにリンやホウ素を加えたものは、電気をよく通すものになる。これらの材料(シリコンの結晶に、わずかにリンやホウ素を加えたもの)も「半導体」という。(※ 実教出版、数研出版の教科書などで紹介している。) (※ 『物理II』で詳しく習う。『[[高等学校物理/物理II/電気と磁気]]』などの単元で扱う。)
* その他
[[ファイル:Silicon-unit-cell-3D-balls.png|サムネイル|80x80ピクセル|ケイ素の単体の結晶構造]]
ケイ素の結晶構造は、ダイヤモンドの結晶構造と同じ。(← 高校の範囲。)
{{-}}{{コラム|(※ 範囲外: )シリセン|シリセンは、ケイ素(シリコン)原子が六角形に配列し、グラフェンに似た二次元シート構造を持つ新しい物質である。シリコンは通常、三次元のダイヤモンド構造を取るが、シリセンではケイ素原子が平面状に並び、蜂の巣状の構造を作り出す。このため、シリセンは「シリコン版グラフェン」とも呼ばれることがある。
シリセンは、グラフェンと同様に優れた電子的特性を持ち、次世代のエレクトロニクス材料として注目されている。特に、シリコンベースの既存の半導体技術との互換性が期待されており、ナノテクノロジーやトランジスタ、センサーなどの分野での応用が研究されている。
ただし、シリセンはグラフェンよりも安定性が低く、空気中では速やかに酸化されるため、特定の条件下でしか安定した形で存在できない。一般的には金属基板の上に成長させることで安定させる技術が使われている。
シリセンはその特性を利用して、エレクトロニクスやスピントロニクス、さらにはエネルギー材料などの広い分野で革新的な技術を生み出す可能性があるが、まだ研究段階にあるため、今後の発展が期待される。}}{{-}}
=== 二酸化ケイ素 ===
[[ファイル:Quartz_(USA).jpg|右|サムネイル|180x180ピクセル|水晶]]
'''二酸化ケイ素'''(<chem>SiO2</chem>)は自然界で石英として存在する。透明な石英の結晶は「水晶」と呼ばれ、宝石として用いられる。また、砂状のものはケイ砂と呼ばれ、ガラスの原料となる。
二酸化ケイ素は共有結合の結晶である。ケイ素原子と酸素原子との結合は非常に強く、固く安定な結晶を作る。また、強い結合のためか、融点も高く、塩酸にも溶けない。しかし、フッ化水素酸とは反応して溶ける。
: <chem>SiO2 + 6HF -> H2SiF6 + 2H2O</chem>
[[ファイル:Silica_gel.jpg|右|150x150ピクセル]]
また、二酸化ケイ素は酸性酸化物であり、塩基と反応して塩を生じる。たとえば水酸化ナトリウムと反応して、ケイ酸ナトリウム(<chem>Na2SiO3</chem>)を生じる。
: <chem>SiO2 + 2NaOH -> Na2SiO3 + H2O</chem>
これに水を加えて加熱すると、水あめ状の'''水ガラス'''(water glass)が得られる。また、水ガラスに塩酸を加えると、ゲル状のケイ酸が得られる。
: <chem>Na2SiO3 + 2HCl -> H2SiO3 + 2NaCl</chem>
※ 実際は組成が安定せず、できるのが <chem>H2SiO3</chem> のみとは限らない
このとき塩化ナトリウムが副生成物としてできるので、塩化ナトリウムを水洗して除き、のこったケイ酸を加熱乾燥すると'''シリカゲル'''(silica gel)が得られる。シリカゲルは多孔質で分子を吸着するため、乾燥剤や吸着剤として用いられる。
* 発展: 水晶振動子 (※ ほぼ範囲外)
電子工業における水晶の応用として、'''水晶振動子'''としての利用がある。
水晶に電圧を掛けると、一定の周期で振動することから、時計などの発振器として利用されている。
[[Category:高等学校化学]]
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== 水素と貴ガス ==
=== 水素 ===
[[ファイル:周期表-H.png|right]]
[[File:H,1.jpg|150px|right]]
'''水素'''は、単体として宇宙で最も多く存在する元素である。地球上では水 H<sub>2</sub>O として最も多く存在する。単体 H<sub>2</sub> は常温常圧で無色無臭の気体である。
;製法
工業的には、石油や天然ガスを高温水蒸気と反応させて、得られる。他には、純粋な水素を作る場合は、水を電気分解する。
実験室では、塩酸や希硫酸などの強酸に、亜鉛などの金属を加える。水素は水に溶けにくいため、水上置換で捕集する。
;主な性質・反応
* 空気中で容易に燃焼し、水になる。酸素との混合気体は爆発的に燃焼する。
*: 2H<sub>2</sub> + O<sub>2</sub> → 2H<sub>2</sub>O
* 高温では還元性をもち、高温で金属などの酸化物を還元する。
*: CuO + H<sub>2</sub> → Cu + H<sub>2</sub>O
水素は、アンモニア、塩化水素、メタノールなどの原料である。
=== 貴ガス ===
[[File:周期表-希ガス.png|right]]
'''貴ガス'''(noble gas)<ref>希ガス(rare gas)とも</ref>は、18族元素のヘリウム He, ネオン Ne, アルゴン Ar, クリプトン Kr, キセノン Xe, ラドン Rn の総称である<ref>18族元素にはオガネソン Og もあるがこの元素の性質はあまり解明されていない。</ref>。
18族元素は価電子をもたないため、他の原子と結合したり、イオンになることがほとんどない。したがって、化学反応を起こして化合物となることがほとんどない。また、単体の気体として、原子1個で1つの分子を形成している。このような分子を'''単原子分子'''と呼ぶ。
貴ガスには次のような物質がある。これらはいずれも無色無臭で、常温常圧で気体である。また、いずれも融点および沸点が低い。
* '''ヘリウム''' (He): 風船や飛行船を浮かせるために用いられる。また、すべての物質の中で、融点がもっとも低いので、超伝導など極低温の実験のさいの冷媒に液体ヘリウムが用いられる。
* '''ネオン''' (Ne): ネオンサインなどに用いられる。
* '''アルゴン''' (Ar): 溶接するときの酸化防止ガスに用いられる。空気中に0.93%存在する。
* '''クリプトン''' (Kr): 電球などに用いられる。
* '''キセノン'''(Xe): カメラのストロボなどに用いられる。
* ラドン (Rn): 放射能があり、放射線治療などに用いられる。
{|align="center" style="border:solid #aaffaa 1px;"
|[[File:He,2.jpg|100px]]||[[File:Ne,10.jpg|100px]]||[[File:Ar,18.jpg|100px]]||[[File:Kr,36.jpg|100px]]||[[File:Xe,54.jpg|100px]]
|-
|style="text-align:center"|ヘリウム
|style="text-align:center"|ネオン
|style="text-align:center"|アルゴン
|style="text-align:center"|クリプトン
|style="text-align:center"|キセノン
|}
貴ガスは原子単体で安定なため、普通は化合物にならない。貴ガスに圧力を低くしてガラス管に封入し電圧をかけることで、それぞれ異なった色の光を放つ。そのため、電球やネオンサインとして用いられるものが多い。
{|align="center" style="border:solid #aaffaa 1px;"
|[[File:HeTube.jpg|100px]]||[[File:NeTube.jpg|100px]]||[[File:ArTube.jpg|100px]]||[[File:KrTube.jpg|100px]]||[[File:XeTube.jpg|100px]]
|-
|style="text-align:center"|ヘリウム
|style="text-align:center"|ネオン
|style="text-align:center"|アルゴン
|style="text-align:center"|クリプトン
|style="text-align:center"|キセノン
|}
=== エキシマ(発展) ===
アルゴン気体とフッ素気体をつめた放電管に放電をすると、不安定なアルゴンフッ素 ArF (エキシマ)が一時的に生成し、それが分解する際に波長197 nmの紫外線を放出する。
この光は、半導体製造の際の光化学反応の光源に使われている。また、キセノンでもハロゲンとのエキシマによってレーザー光が放出されることが知られている。
=== 貴ガスの化合物 ===
貴ガスは、反応性が低く化合物を作らないと考えられていたが、1960年代に、<chem>XePtF6</chem> や <chem>XeF4</chem> などキセノンの化合物の合成に成功した。その後も貴ガスの化合物は合成されたが、ネオンの化合物は未だ合成に成功していない。
キセノンとフッ素ガスを混合した気体に放電または熱を加えてできた、二フッ化キセノン XeF<sub>2</sub> や四フッ化キセノン XeF<sub>4</sub> や六フッ化キセノン XeF<sub>6</sub> の固体は無色である。
周期表の17族に属する、フッ素 F、塩素 Cl、臭素 Br、ヨウ素 I、アスタチン At を'''ハロゲン'''という。
ハロゲンの原子は最外殻に価電子を7つ持っている。ハロゲンは1価の陰イオンになりやすい。
このためハロゲンは化合物をつくりやすい。そのため、天然では、ハロゲンは鉱物(ホタル石 CaF<sub>2</sub> 、岩塩 NaCl)として存在している場合も多い。または、海水中に陰イオンとしてハロゲンが存在している場合が多い。
== ハロゲン ==
[[ファイル:周期表-ハロゲン.png|右]]
=== ハロゲンの単体の性質 ===
ハロゲンの単体はいずれも'''二原子分子'''で有色、毒性である。
沸点(bp)・融点(mp)は、原子番号の大きいものほど高い。
ハロゲンの単体は酸化力が強い。酸化力の強さは原子番号が小さいほど大きくなる。つまり酸化力の強さは、
<chem>F2 > Cl2 > Br2 > I2</chem>
である。
たとえば、ヨウ化カリウム水溶液に塩素を加えると、ヨウ素は酸化されて単体となる。
<chem>2KI + Cl2 -> 2KCl + I2 </chem>逆に、塩化カリウム水溶液にヨウ素を加えても、ヨウ素よりも塩素のほうが酸化力が強いため、反応は起こらない。
また、ハロゲンの各元素ごとの酸化力の違いは、水や水素との反応にも関わる。
最も酸化力のつよいフッ素は、水と激しく反応し、酸素を発生する。
:2F<sub>2</sub> + 2H<sub>2</sub>O → 4HF + O<sub>2</sub>
{|border=1 cellspacing=0 align=center text-align=center style="text-align:center"
|- style="background:silver"
! !! フッ素 F<sub>2</sub> !! 塩素 Cl<sub>2</sub> !! 臭素 Br<sub>2</sub> !! ヨウ素 I<sub>2</sub>
|-
| rowspan="2" | 色・状態
| [[File:F,9.jpg|180px]] || [[File:Cl,17.jpg|180px]] || [[File:Br,35.jpg|180px]] || [[File:I,53.jpg|170px]]
|-
|| 淡黄色・気体 || 黄緑色・気体 || 赤褐色・液体 || 黒紫色・固体
|-
| 融点 (℃) || -220 || -101 || -7 || 114
|-
| 沸点 (℃) || -138 || -34 || 59 || 184
|-
| 酸化力
| colspan="4" | 大 ←――――――――――――――――――――――――――――――――――→ 小
|-
| rowspan="2" | 水との反応 || 激しく反応して<br>酸素 O<sub>2</sub> が発生 || 一部が反応<br>HCl などを生じる || rowspan="2"| 塩素より反応は弱いが、<br>似た反応をする || rowspan="2" | 水に反応しにくく、<br>水に溶けにくい
|-
|| 2H<sub>2</sub>O + 2F<sub>2</sub><br />→ 4HF + O<sub>2</sub> || 2H<sub>2</sub>O + Cl<sub>2</sub> <br />⇄ HCl + HClO
|-
| rowspan="2" | 水素との反応 || 低温・暗所でも<br />爆発的に反応 || 光を当てることで<br />爆発的に反応 || 高温にすると反応 || 高温にすると一部が反応
|}
==== '''フッ素 F₂''' ====
常温常圧下では淡黄緑色の気体である。
酸化力が非常に強く、様々な物質と激しく反応する。ガラスでさえフッ素を吹き付けると燃えるように反応するため扱いが難しい。
水や水素との反応物であるフッ化水素(HF)が水に溶けたフッ化水素酸(HFaq)はガラスを侵すため、ポリエチレン容器に入れ保管する。
==== 塩素 ====
塩素 Cl<sub>2</sub> は常温常圧で黄緑色の有毒な気体である。
==== 製法 ====
工業的:塩化ナトリウム水溶液の電気分解でつくる。
実験室的:酸化マンガン(IV)に濃塩酸を加え、加熱する。
: <chem>MnO2 + 4HCl -> MnCl2 + 2H2O + Cl2 ^</chem>
:なお、この反応では塩素と同時に水も生成する。さらに、濃塩酸には[[#ハロゲンの化合物|次節]]に見るように揮発性がある。したがって、この反応により得られる気体は純粋な塩素ではなく、水や塩化水素を少量含んでいる。それらを取り除くため、この気体を水と濃硫酸に順番に通す。まず水に通すことで、揮発した塩化水素が吸収される。次いで濃硫酸に通すことで、濃硫酸の吸湿作用により気体中の水が吸収され、純粋な塩素を得ることができる。なお、この水・濃硫酸に通す順番を逆にしてはならない。先に濃硫酸に通した後水に通しても、得られる気体の中には最後に通した水から蒸発した水蒸気が含まれているためである。塩素は空気よりも重いため、濃硫酸を通したあとの塩素を、下方置換で集める。
塩化ナトリウム、酸化マンガン(IV)に濃硫酸を加えて加熱する。
<chem>2NaCl + 3H2SO4 + MnO2 -> MnSO4 + 2NaHSO4 + 2H2O + Cl2 ^</chem>
さらし粉に塩酸を加える。
<chem>CaCl(ClO).H2O + 2HCl -> CaCl2 + 2H2O + Cl2 ^</chem>
==== 性質 ====
塩素は、水に少し溶けて、その一部が'''次亜塩素酸''' <chem>HClO</chem> になる。
:<chem>Cl2 + H2O -> HCl + HClO</chem>
次亜塩素酸は、強い酸化作用がある。塩素 Cl<sub>2</sub> の水溶液を'''塩素水'''(chlorine water)という。
塩素水および次亜塩素酸は、漂白剤や殺菌剤として水道やプールの水の殺菌などに広く用いられている。
: <chem>HClO + H^+ + 2e^- -> H2O + Cl^-</chem>
* さらし粉
水酸化カルシウムと塩素を反応させると、さらし粉(主成分:CaCl(ClO)・H<sub>2</sub>O)ができる。
さらし粉または高度さらし粉(主成分:Ca(ClO)<sub>2</sub>・2H<sub>2</sub>O)に塩酸を加えることによっても塩素の単体を得ることができる。
: CaCl(ClO)・H<sub>2</sub>O + 2HCl → CaCl<sub>2</sub> + 2H<sub>2</sub>O + Cl<sub>2</sub>↑
: Ca(ClO)<sub>2</sub>・2H<sub>2</sub>O + 4HCl → CaCl<sub>2</sub> + 4H<sub>2</sub>O + 2Cl<sub>2</sub>↑
工業的には塩化ナトリウム水溶液の電気分解を用いた、イオン交換膜法により製造される。
高度さらし粉は、漂白剤や殺菌剤として利用される。
:(※ 範囲外: ) いわゆる「カルキ」とは、この、さらし粉のこと。ドイツ語のクロールカルキを略してカルキと読んでいる。
* その他
塩素はさまざまな金属と反応して塩化物となる。たとえば、単体の塩素の中に加熱した銅線を入れると、煙状の塩化銅(II) CuCl<sub>2</sub> を生成する。
: Cu + Cl<sub>2</sub> → CuCl<sub>2</sub>
==== ヨウ素 ====
ヨウ素(I<sub>2</sub>)は常温常圧で黒紫色の固体である。'''昇華性'''があり、加熱すると固体から液体にならず直接気体となる。これを利用して、固体のヨウ素の純度を上げることができる。1リットルビーカーに不純物を含むヨウ素の固体を入れ、ガスバーナーで加熱する。ビーカーの上部には冷水を入れた丸底フラスコを置いておく。加熱によりヨウ素のみが気体となり、上昇してフラスコの底部付近で冷やされて固体に戻る。そのため、フラスコ底部に純度の高いヨウ素の針状結晶が析出する。
ヨウ素は水に溶けにくいが、エーテルなどの有機溶媒にはよく溶ける。また、ヨウ化カリウム水溶液にもよく溶けて褐色の溶液となる。<!--極性は化学IIなのでここでは触れない-->
デンプン水溶液にヨウ素を溶かしたヨウ化カリウム水溶液を加えると、青紫色を呈する。このようにデンプンにヨウ素を作用させて青紫色となる反応を'''ヨウ素デンプン反応'''と呼ぶ。これにより、ヨウ素やデンプンの検出ができる。
ヨウ素デンプン反応を用いた試薬に、ヨウ化カリウムデンプン紙がある。これは、ろ紙にデンプンとヨウ化カリウムを含ませたものであり、酸化力の強い物質の検出に用いられる。酸化力の強い物質がある場合、ヨウ化カリウムは酸化されてヨウ素の単体となる。
: 2I<sup>-</sup> → I<sub>2</sub> + e<sup>-</sup>
このヨウ素がデンプンに作用して紫色から青紫色に変化する。
=== ハロゲンの化合物 ===
==== ハロゲン化水素 ====
ハロゲンは水素と化合して'''ハロゲン化水素'''となる。いずれも無色刺激臭の気体である。
また、ハロゲン化水素の水溶液は酸性を示す。
{|border=1 cellspacing=0 align=center text-align=center style="text-align:center"
|- style="background:silver"
! colspan="2" | 名称 !! フッ化水素 !! 塩化水素 !! 臭化水素 !! ヨウ化水素
|-
| colspan="2" | 組成式 || HF || HCl || HBr || HI
|-
| colspan="2" | 沸点(℃) || 20 || -85 || -67 || -35
|-
| rowspan="2" | 水溶液 || 名称 || フッ化水素酸 || 塩酸 || 臭化水素酸 || ヨウ化水素酸
|-
| 酸の強さ || '''弱酸''' || 強酸 || 強酸 || 強酸
|}
ハロゲン水溶液の酸性は、フッ化水素酸だけが弱酸である。それ以外は強酸である。
==== フッ化水素(HF) ====
<!--沸点の高さ・弱酸となる理由については触れない; 極性・水素結合は化学IIで扱うため-->
フッ化水素は、ホタル石(主成分 CaF<sub>2</sub>)に濃硫酸をくわえて加熱することで、得られる。
: CaF<sub>2</sub> + H<sub>2</sub>SO<sub>4</sub> → 2HF + CaSO<sub>4</sub>
フッ化水素は水によく溶け、弱酸の'''フッ化水素酸'''(hydrofluoric acid)となる。
フッ化水素酸は、ガラスの主成分である二酸化ケイ素 SiO<sub>2</sub>)を溶かすため、保存するときはポリエチレン容器に保存する。
: SiO<sub>2</sub> + 6HF → H<sub>2</sub>SiF<sub>6</sub> + 2H<sub>2</sub>O
工業の用途として、ガラスの表面処理や、くもりガラスの製造に、フッ化水素酸が用いられる。
フッ化水素だけ沸点が他のハロゲン化水素よりも高いが、この原因は、フッ化水素では水素結合が生じるからである。(← ※ 実教出版、数研出版、第一学習社の教科書で紹介。)
フッ化水素酸だけ弱酸である理由も、同様に水素結合によって電離度が低くなっているためである。(← ※ 実教出版、第一学習社の教科書の見解。)
==== 塩化水素(HCl) ====
塩化水素の、実験室での製法は、塩化ナトリウムに濃い硫酸を加え加熱することで得られる。
: NaCl + H<sub>2</sub>SO<sub>4</sub> → NaHSO<sub>4</sub> + HCl↑
[[File:Hydrochloric acid ammonia.jpg|right|200px|thumb|塩化水素とアンモニアの反応 <br> 白煙( NH<sub>4</sub>Cl )を生じる]]
塩化水素は水によく溶け、その水溶液は'''塩酸'''(hydrochloric acid)である。濃度の濃いものは濃塩酸、薄いものは希塩酸と呼ばれる。塩酸は強酸性を示し、多くの金属と反応して水素を発生する。
: 2HCl + Zn → ZnCl<sub>2</sub> + H<sub>2</sub>↑
また、強酸性であることから、弱酸の塩と反応して塩を生じ、弱酸を遊離させる。
: HCl + NaHCO<sub>3</sub> → NaCl + H<sub>2</sub>O + CO<sub>2</sub>
塩酸には揮発性があり、常温で一部が気体となる。そのため、アンモニアのついたガラス棒を近づけると、塩酸の気体とアンモニアとが触れて反応し、塩化アンモニウム NH<sub>4</sub>Cl が生じる。この反応は、塩化水素やアンモニアの検出に用いられる。
: HCl + NH<sub>3</sub> → NH<sub>4</sub>Cl
==== ハロゲン化銀・ハロゲン化鉛 ====
ハロゲン化銀は、フッ化銀を除いて、一般に水に溶けにくい。このため、ハロゲンの化合物の水溶液に、硝酸銀をくわえると、塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀などのハロゲン化銀が沈殿する。
{|border=1 cellspacing=0 align=center text-align=center style="text-align:center"
|- style="background:silver"
! 名称 !! フッ化銀 !! 塩化銀 !! 臭化銀 !! ヨウ化銀 !! !! フッ化鉛(II) !! 塩化鉛(II) !! 臭化鉛(II) !! ヨウ化鉛(II)
|-
| 組成式 || AgF || AgCl || AgBr || AgI || || PbF<sub>2</sub> || PbCl<sub>2</sub> || PbBr<sub>2</sub> || PbI<sub>2</sub>
|-
| 色 || 黄色 || 白色 || 淡黄色 || 黄色 || || 白色 || 白色 || 白色 || 黄色
|-
| 水への溶けやすさ || 溶けやすい || 溶けにくい || 溶けにくい || 溶けにくい || || 溶けにくい || 溶けにくい || 溶けにくい || 溶けにくい
|-
| 熱水への溶けやすさ || 溶けやすい || 溶けにくい || 溶けにくい || 溶けにくい || || || 溶ける || 溶ける || 溶ける
|}塩化水素(HCl)
塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀には感光性があり、生じた沈澱に光を当てると銀が遊離する。また、これらはいずれもチオ硫酸ナトリウム水溶液によく溶ける。アンモニア水への溶けやすさは異なり、塩化銀はよく溶け、臭化銀も一部溶けるが、ヨウ化銀は溶けない。
==== 塩素のオキソ酸 ====
塩素のオキソ酸には、酸化数の異なる次の4つがある。
{|border=1 cellspacing=0 align=center text-align=center style="text-align:center"
|- style="background:silver"
! 名称 !! width=100px | 次亜塩素酸 !! width=100px | 亜塩素酸 !! width=100px | 塩素酸 !! width=100px|過塩素酸
|-
| 化学式 || HClO || HClO<sub>2</sub> || HClO<sub>3</sub> || HClO<sub>4</sub>
|-
| 性質 || 殺菌・漂白作用 || 殺菌・漂白作用 || 強力な酸化剤 || 塩は爆発性
|}
;さらし粉
さらし粉(化学式: CaCl(ClO)・H<sub>2</sub>O または Ca(ClO)<sub>2</sub>)は、次亜塩素酸イオンを含むため、その酸化作用により漂白剤や殺菌剤として広く用いられている。水酸化カルシウムと塩素を反応させることで得られる。
: Ca(OH)<sub>2</sub> + Cl<sub>2</sub> → CaCl(ClO)・H<sub>2</sub>O
;(※ 発展) 塩素酸 および 塩素酸塩
::(※ 検定教科書では「酸素」の単元で習う場合が多い。)
塩素酸HClO<sub>3</sub>は不安定な物質だが、カリウムやナトリウムの塩は安定で、強い酸化剤である。塩素酸カリウムKClO<sub>3</sub>は酸化マンガン(IV)を触媒として用いて加熱すると酸素を発生するため、花火やマッチの火薬中に燃焼を助けるため含まれる。
: 2KClO<sub>3</sub> → 2KCl + 3O<sub>2</sub>↑
==== 範囲外? : ハロゲン化物と日用品 ====
ハロゲンの化合物のなかには、日用品の中に広く用いられている物もある。たとえば、フッ素化合物の一つ、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン)はフライパンの表面に薄く塗られ、焦げ付きを防ぐ役割を果たしている。また、臭化銀はその感光性を利用して、写真のフィルムに用いられている。塩素は多くのビニル・プラスチック製品に含まれている。また、ヨウ素は消毒剤や うがい薬 に用いられている。
==== 範囲外? : 「まぜるな危険」 ====
洗剤の「まぜるな危険」の化学反応については、啓林館の教科書を除いて、検定教科書では書かれてない。
== 16族元素 ==
[[ファイル:周期表-OS.png|右]]
16族に属する'''酸素'''(O)、'''硫黄'''(S)はともに価電子を6つ持ち、2価の陰イオンになる。ともに単体は同素体を持つ。
=== 酸素の単体 ===
酸素の単体には、原子2個で1つの分子を作っている'''酸素'''(O<sub>2</sub>)と、原子3個で1つの分子を作っている'''オゾン'''(O<sub>3</sub>)がある。いずれも常温では気体であるが、大きく異なった性質を示す。
酸素は空気中で約21%ふくまれる。また、酸素は地殻を構成する主な元素でもあり、およそ半分は酸素である。
==== 酸素 ====
[[ファイル:Dioxygen-3D-vdW.png|右|サムネイル|100x100ピクセル|酸素 O<sub>2</sub> 分子]]
'''酸素'''(O<sub>2</sub>)は常温で無色無臭の気体である。
工業的な製法は、液体空気の分留によって酸素を得る。
実験室で酸素を得るには、過酸化水素水に酸化マンガン(IV)を加えればよい。この反応で酸化マンガン(IV)は触媒として働き、過酸化水素が分解して酸素を発生する。
: 2H<sub>2</sub>O<sub>2</sub> → 2H<sub>2</sub>O + O<sub>2</sub>↑
また、塩素酸カリウムと酸化マンガン(IV)を混合して加熱してもよい。この反応でもやはり酸化マンガン(IV)は触媒として働く。
: 2KClO<sub>3</sub> → 2KCl + 3O<sub>2</sub>↑
==== オゾン ====
[[ファイル:Ozone-3D-vdW.png|右|サムネイル|100x100ピクセル|オゾン O<sub>3</sub> 分子]]
'''オゾン'''(O<sub>3</sub>)は、酸素中で無声放電を行うか、強い紫外線を当てることで生成する。
: 3O<sub>2</sub> ⇄ 2O<sub>3</sub>
オゾン O<sub>3</sub> は分解しやすく、分解のさいに強い酸化作用を示す。オゾンは淡青色・特異臭の気体で、人体には有害である。オゾンの分子は、酸素原子が3つ結合して1つの分子を作っている。
また、オゾンの酸化作用は、ヨウ化カリウムデンプン紙を青変する。
: 2KI + O<sub>3</sub> + H<sub>2</sub>O → 2KOH + O<sub>2</sub> + I<sub>2</sub>
このためオゾンの検出法は、水で湿らせたヨウ化カリウムデンプン紙でオゾンを検出できる。
大気中には上空25000mほどにオゾンが豊富に含まれる層があり、オゾン層と呼ばれる。オゾン層は人体に有害な紫外線を吸収する働きがあるが、近年このオゾン層が南極付近で局所的に薄くなっており(オゾンホール)、環境問題として取り上げられることが多くなっている。
=== 酸素の化合物 ===
酸素の化合物は一般に'''酸化物'''と呼ばれる。酸素はあらゆる物質と化合することができ、一般に金属元素とはイオン結合、非金属元素とは共有結合による酸化物を作る。
酸化物は、酸や塩基との反応のしかたから3通りに分類される。
{| class="wikitable" style="float: right;"
|+酸化物の分類
!酸性酸化物
|CO<sub>2</sub> , NO<sub>2</sub> , SiO<sub>2</sub> , SO<sub>2</sub> , SO<sub>3</sub> , Cl<sub>2</sub>O<sub>7</sub> など
|-
!塩基性酸化物
|Na<sub>2</sub>O , MgO , CaO , Fe<sub>2</sub>O<sub>3</sub> , CuO , BaO など
|-
!両性酸化物
|Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub> , ZnO
|-
|}
* '''酸性酸化物''' : 水に溶けて酸性を示したり、塩基と反応して塩を生じる酸化物を、'''酸性酸化物'''という。
* '''塩基性酸化物''' : 水に溶けて塩基性を示したり、酸と反応して塩を生じる酸化物を、'''塩基性酸化物'''という。
* '''両性酸化物''': 酸・塩基のどちらとも反応して塩を生じる酸化物を、'''両性酸化物'''という。
一般に、非金属元素の酸化物は酸性酸化物であり、金属元素の酸化物は塩基性酸化物である。
; 酸性酸化物の例
{| class="wikitable" style="float: right;"
!酸性酸化物
|CO<sub>2</sub> , NO<sub>2</sub> , SiO<sub>2</sub> , SO<sub>2</sub> , SO<sub>3</sub> , Cl<sub>2</sub>O<sub>7</sub> など
|-
|}
二酸化炭素や二酸化硫黄など、非金属元素の酸化物の多くは、酸性酸化物である。
酸性酸化物の定義により、酸性酸化物は水に溶けると、酸性を示す。
: SO<sub>3</sub> + H<sub>2</sub>O → H<sub>2</sub>SO<sub>4</sub>
:: ※ H<sub>2</sub>SO<sub>4</sub>は酸。
また、酸性酸化物は塩基と反応すると、塩をつくる。
: SO<sub>2</sub> + 2NaOH<sub>2</sub>O → Na<sub>2</sub>SO<sub>3</sub> + H<sub>2</sub>O
:: ※ Na<sub>2</sub>SO<sub>3</sub>は塩。
二酸化炭素(CO<sub>2</sub>)は塩基と反応して塩を生じる。
: CO<sub>2</sub> + Ca(OH)<sub>2</sub> → CaCO<sub>3</sub> + H<sub>2</sub>O
:: ※ CaCO<sub>3</sub>は塩。
二酸化窒素(NO<sub>2</sub>)は水に溶けて硝酸(HNO<sub>3</sub>)となる。
: 3NO<sub>2</sub> + H<sub>2</sub>O → 2HNO<sub>3</sub> + NO
; 塩基性酸化物の例
{| class="wikitable" style="float: right;"
!塩基性酸化物
|Na<sub>2</sub>O , MgO , CaO , Fe<sub>2</sub>O<sub>3</sub> , CuO , BaO など
|-
|}
水に溶けて塩基性を示したり、酸と反応して塩を生じる酸化物を、'''塩基性酸化物'''という。
: Na<sub>2</sub>O + H<sub>2</sub>O → 2NaOH
:: ※ NaOHは塩基。
'''金属元素の酸化物の多くは、塩基性酸化物である'''。酸化カルシウムや酸化ナトリウムなどが、塩基性酸化物である。
酸化カルシウム(CaO)は水に溶けて水酸化カルシウム(Ca(OH)<sub>2</sub>)となる。
: CaO + H<sub>2</sub>O → Ca(OH)<sub>2</sub>
また、これは酸と反応して塩を生じる。
: CaO + 2HCl → CaCl<sub>2</sub> + H<sub>2</sub>O
; 両性酸化物の例
{| class="wikitable" style="float: right;"
!両性酸化物
|Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub> , ZnO
|-
|}
酸・塩基のどちらとも反応して塩を生じる酸化物を、両性酸化物という。
酸化アルミニウム(Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub>)や酸化亜鉛は、酸とも塩基とも反応して塩を生じる。
: Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub> + 6HCl → 2AlCl<sub>3</sub> + 3H<sub>2</sub>O
: Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub> + 2NaOH + 3H<sub>2</sub>O → 2Na[Al(OH)<sub>4</sub>]
==== オキソ酸 ====
塩素の酸性酸化物を水に溶かすと、水と反応して酸を生じる。
塩素の酸化物には、いくつかの種類があるが、一例として酸を生じる反応として、下記の化学反応がある。
: Cl<sub>2</sub>O<sub>7</sub> + H2O → HClO<sub>4</sub>
リンの酸性酸化物も、水と反応し、酸を生じる。
: P<sub>4</sub>O<sub>10</sub> + 6H<sub>2</sub>O → 4H<sub>3</sub>PO<sub>4</sub>
また、このように酸性酸化物を水と反応させて得られた酸は、分子中に酸素原子と水素原子を含む場合が多い。 塩素の場合は、過塩素酸 HClO<sub>4</sub> などが得られるし、窒素の場合は、亜硝酸(HNO<sub>2</sub>)と硝酸(HNO<sub>3</sub>)などが得られるし、分子式を見ればわかるように酸素原子と原子が分子中に含まれてる。
{| class="wikitable" style="float: right;"
! style="text-align: center;" |化学式
!名称
!酸の強さ
!Clの酸化数
|-
|HClO<sub>4</sub>
|過塩素酸
|つよい側
|+7
|-
|HClO<sub>3</sub>
|塩素酸
|
|+5
|-
|HClO<sub>2</sub>
|亜鉛素酸
|
|+3
|-
|HClO
|次亜鉛素酸
|よわい側
|+1
|-
|}
一般に、分子中に酸素分子のある構造の酸のことを'''オキソ酸'''(oxoacid)という。(「オキソ酸」といった場合、水素原子は、なくても構わない。 ※ 東京書籍と実教出版の見解。 いっぽう、啓林館などが、「オキソ酸」の定義に水素原子を含ませる定義である。)
オキソ酸の分子構造についての議論のさいには、塩素原子や窒素原子など、由来となった酸性酸化物の元素を「中心原子」と設定して議論するのが一般的である。(つまり、酸素原子や水素原子は、中心ではない。)
中心元素が同じであれば、結合している酸素の数が多いほど、オキソ酸の酸性は強くなる。
たとえば窒素のオキソ酸として亜硝酸(HNO<sub>2</sub>)と硝酸(HNO<sub>3</sub>)があるが、硝酸の方が強い酸である。
また、中心元素が第3周期のリン、硫黄、塩素であるようなオキソ酸は、この順に酸性が強くなる。リン酸(H<sub>3</sub>PO<sub>4</sub>)は弱酸であるが、硫酸(H<sub>2</sub>SO<sub>4</sub>)は強酸であり、過塩素酸(HClO<sub>4</sub>)はさらに強い酸性を示す。
塩素のオキソ酸の酸性の順は、
: (つよい側) HClO<sub>4</sub> > HClO<sub>3</sub> > HClO<sub>2</sub> > HClO (よわい側)
名称は
: HClO<sub>4</sub> 過塩素酸。 HClO<sub>3</sub> 塩素酸。 HClO<sub>2</sub> 亜鉛素酸。HClO 次亜鉛素酸。
である。
: (※ 範囲外:) いまのところ、上記の4つ以外は、塩素のオキソ酸は発見されていない。(※ 参考文献: 化学同人『理工系基礎レクチャー 無機化学』、鵜沼秀郎 ほか 著、2007年第1版、2014年第1版第9刷、73ページ)
=== 硫黄の単体 ===
'''硫黄'''(S)の単体には、斜方硫黄、単斜硫黄、ゴム状硫黄などの同素体がある。単体は火山地帯から多く産出され、また重油の精製過程のひとつである'''脱硫'''(だつりゅう)の工程において多く得られる。
; 斜方硫黄(S<sub>8</sub>)
[[ファイル:Sulfur.jpg|100x100ピクセル]] 斜方硫黄は常温で安定な黄色・塊状の結晶である。硫黄原子が8つ環状に結合して1つの分子を形成している。
; 単斜硫黄(S<sub>8</sub>)
[[ファイル:Cyclooctasulfur-above-3D-balls.png|100x100ピクセル]] 単斜硫黄は高温で安定な黄色・針状の結晶である。硫黄原子が8つ環状に結合して1つの分子を形成している。斜方硫黄を加熱することで得られる。
; ゴム状硫黄(S<sub>x</sub>)
ゴム状硫黄は褐色の無定形固体である。ただし、純粋なものは黄色を示すものがある。数十万の硫黄原子がジグザグに結合しているため、引っ張ると結合角が変わり弾力性がある。
斜方硫黄を加熱するとコハク色の液体となる。これを加熱し続けると次第に暗褐色となり、粘性が増してくる。さらに加熱すると濃青色の液体となり、これを水中に入れ急冷するとゴム状硫黄となる。
* 反応性
硫黄は、高温で反応性が高い。
[[ファイル:Sulfur-burning-at-night.png|右|サムネイル|150x150ピクセル|硫黄の燃焼]]
硫黄は高温では多くの元素と化合して硫化物となる。たとえば鉄粉と硫黄の粉末を混合して加熱すると、硫化鉄(II) FeS が生じる。
: Fe + S → FeS
また、空気中で青白い炎をあげて燃焼し、二酸化硫黄となる。
: S + O<sub>2</sub> → SO<sub>2</sub>
=== 硫黄の化合物 ===
==== 硫化水素 ====
'''硫化水素'''(H{{sub|2}}S)は無色腐卵臭の気体である。人体に有毒であるため、使用時には十分な換気に注意しなければならない。硫化水素は水に溶け、弱酸性を示す。
: H{{sub|2}}S ⇄ HS{{sup|-}} + H{{sup|+}} ⇄ S{{sup|2-}} + 2H{{sup|+}}
火山ガスや温泉に豊富に含まれるが、実験室では硫化鉄(II)に強酸を加えることで得られる。
: FeS + 2HCl → FeCl{{sub|2}} + H{{sub|2}}S↑
: FeS + H{{sub|2}}SO{{sub|4}} → FeSO{{sub|4}} + H{{sub|2}}S↑
硫化水素は、おおくの場合に還元剤として働き、二酸化硫黄を還元して硫黄の単体を生じる。
: 2H{{sub|2}}S + SO{{sub|2}} → 2H{{sub|2}}O + 3S↓
多くの金属イオンと反応して硫化物の沈殿を作るため、金属イオンの分離や検出に多く用いられる。
: Fe{{sup|2+}} + H{{sub|2}}S → 2H{{sup|+}} + FeS↓
==== 二酸化硫黄 ====
'''二酸化硫黄'''(SO<sub>2</sub>)は腐卵臭をもつ無色の有毒な気体で、刺激臭がある。また、火山ガスや温泉などに含まれる。
酸性酸化物であり、水に溶けて弱酸性を示す。
: SO<sub>2</sub> + H<sub>2</sub>O ⇄ HSO<sub>3</sub><sup>-</sup> + H<sup>+</sup>
実験室では、銅を濃硫酸に加えて加熱するか、亜硫酸塩を希硫酸と反応させることにより得られ、下方置換で得る。
: Cu + 2H<sub>2</sub>SO<sub>4</sub> → CuSO<sub>4</sub> + 2H<sub>2</sub>O + SO<sub>2</sub>↑
: NaHSO<sub>3</sub> + H<sub>2</sub>SO<sub>4</sub> → NaHSO<sub>4</sub> + H<sub>2</sub>O + SO<sub>2</sub>↑
: Na<sub>2</sub>SO<sub>3</sub> + H<sub>2</sub>SO<sub>4</sub> → Na<sub>2</sub>SO<sub>4</sub> + H<sub>2</sub>O + SO<sub>2</sub>↑
工業的には、硫黄の燃焼により製造される。
: S + O<sub>2</sub> → SO<sub>2</sub>
二酸化硫黄は還元性があり、漂白作用がある。ただし、硫化水素のような強い還元剤がある場合は、酸化剤として作用する。
硫黄を含む物質は燃焼により二酸化硫黄を生じる。二酸化硫黄の水溶液は、弱い酸性を示す。
硫黄は石油や石炭に多く含まれているため、このような化石燃料を大量に燃焼させると、大気中に多量の二酸化硫黄が放出され、雨水に溶け込み、酸性雨の原因となる。
==== 硫酸 ====
'''硫酸'''(H{{sub|2}}SO{{sub|4}})は工業的に'''接触法'''(contact process)により、酸化バナジウムを主成分として触媒をもちいて、次のような工程で製造されている。
# 硫黄を燃焼させ、二酸化硫黄を作る。
#: S + O{{sub|2}} → SO{{sub|2}}
# 二酸化硫黄と酸素との混合気体を乾燥させ、酸化バナジウム(V{{sub|2}}O{{sub|5}})を触媒として反応させて三酸化硫黄を作る。
#: 2SO{{sub|2}} + O{{sub|2}} → 2SO{{sub|3}}
# 三酸化硫黄を濃硫酸に吸収させ、発煙硫酸とする。
#: SO{{sub|3}} + H{{sub|2}}O → H{{sub|2}}SO{{sub|4}}
# 発煙硫酸を希釈し、濃硫酸とする。
硫酸は、硫黄のオキソ酸である。通常はH{{sub|2}}SO{{sub|4}}の水溶液を硫酸と呼ぶ。硫酸は無色透明で粘性があり、密度の大きい重い液体である。濃度により性質が異なり、濃度の90%以上程度の濃いものを'''濃硫酸'''(concentrated sulfuric acid)といい、薄いものを'''希硫酸'''(diluted sulfuric acid)と呼ぶ。
濃硫酸を水で希釈することで希硫酸が得られる。希釈する際は水を入れたビーカーを水を張った水槽中に入れ、冷却しながら濃硫酸を静かに加えるようにする。これは、硫酸の水への溶解熱が非常に大きいためである。けっして、これを逆にしてはならない。もし、濃硫酸に水を加えるようにすると、溶解熱によって水が蒸発し濃硫酸が跳ねることがあり、たいへん危険である。
硫酸は沸点が高い、不揮発性の酸である。したがって、塩酸や硝酸のような揮発性の酸の塩と反応して塩を作り、揮発性酸が遊離する。
: NaCl + H{{sub|2}}SO{{sub|4}} → NaHSO{{sub|4}} + HCl↑
[[ファイル:Sulfuric_acid_burning_tissue_paper.jpg|右|サムネイル|200x200ピクセル]]
濃硫酸には次のような性質がある。
* 酸化作用: 金属を加え加熱すると、銅などのイオン化傾向の小さい金属を酸化するようになる。加熱した濃硫酸を熱濃硫酸と呼ぶこともある。
*: Cu + 2H{{sub|2}}SO{{sub|4}} → CuSO{{sub|4}} + 2H{{sub|2}}O + SO{{sub|2}}↑
* '''脱水作用'''(だっすいさよう、dehydration): 有機化合物の分子内に含まれている酸素原子や水素原子を、水分子H{{sub|2}}Oとして奪う。たとえば紙に濃硫酸を垂らすと、その部分から酸素と水素が奪われ、炭化する。
* 吸湿作用: 強い吸湿作用があり、乾燥剤として用いられる。
* 不揮発性:
希硫酸は強酸であり、多くの金属と反応して水素を発生する。一方濃硫酸は水をほとんど含まないため電離度が小さく、ほとんど酸性を示さない。
硫酸イオン(SO{{sub|4}}{{sup|2-}})はBa{{sup|2+}}やCa{{sup|2+}}と反応して白色沈殿を生じる。そのため、これらのイオンの検出・分離に用いられる。また日常生活においても、硫酸はカーバッテリーや非常用電源などとして使われる鉛蓄電池の電解液として用いられている。
[[ファイル:周期表-NP.png|右]]
== 15族元素 ==
'''窒素'''(N)、'''リン'''(P)はともに15族に属する非金属元素である。価電子を5つ持つ。
=== 窒素 ===
==== 単体 ====
'''窒素'''(N{{sub|2}})は常温常圧で無色無臭の気体である。窒素原子2つが三重結合して1つの分子を作っている、二原子分子の気体である。空気中に体積比でおよそ78%含まれており、工業的には液体空気の分留により生産される。液体の窒素は物質の冷却にしばしば用いられている。
=== アンモニア ===
'''アンモニア'''(NH{{sub|3}})は無色刺激臭の気体である。水に非常に溶けやすく、水溶液はアンモニア水と呼ばれ、弱塩基性を示す。
: <chem>NH3 + H2O -> NH4+ + OH^-</chem>
アンモニアの製法は、工業的には、高温高圧下で触媒を用いて窒素と水素を直接反応させる'''ハーバー・ボッシュ法'''により製造される。
: <chem>N2 + 3 H2 -> 2 NH3</chem>
実験室では、塩化アンモニウムと水酸化カルシウムの粉末を混合して加熱することにより得られる。気体は上方置換で捕集する。
: <chem>2NH4Cl + Ca(OH)2 -> CaCl2 + 2H2O + 2NH3 ^</chem>
アンモニアが生成することを確かめるには、[[高校化学 水素と貴ガス#ハロゲン化水素|濃塩酸]]を近づければよい。アンモニアと濃塩酸が反応して塩化アンモニウムの白煙を生じる。
: <chem>NH3 + HCl -> NH4Cl</chem>
水溶液中のアンモニウムイオン(NH{{sub|4}}{{sup|+}})を検出する際には、ネスラー試薬が用いられる。アンモニウムイオンがあれば黄色~褐色の沈殿を生じる。
アンモニアは、硝酸の原料、あるいは肥料の原料などとしても利用される。
=== 窒素酸化物 ===
窒素の酸化物は数種類あり、それらの総称を'''窒素酸化物'''と呼ぶ。主なものに'''一酸化窒素'''(NO)と'''二酸化窒素'''(NO{{sub|2}})がある。
; 一酸化窒素 (NO)
常温で無色の気体。水に溶けにくい。希硝酸に銅を加えることで発生する。空気中で酸化されやすいため、水上置換で捕集する。
: <chem>3Cu + 8HNO3 -> 3Cu(NO3)2 + 4H2O + 2NO ^</chem>
空気中での酸化の反応式は、
: <chem>2NO + O2 -> 2NO2</chem>
である。
; 二酸化窒素 (NO{{sub|2}})
[[ファイル:CopperReaction.JPG|右|300x300ピクセル]]
常温で褐色の気体。水に溶けやすく、反応して硝酸(<chem>HNO3</chem>)となる。
: <chem>3NO2 + H2O -> 2HNO3 + NO</chem>
実験室では濃硝酸に銅を加えることで発生する。水に溶けやすいので下方置換で捕集する。
: <chem>Cu + 4HNO3 -> Cu(NO3)2 + 2H2O + 2NO2 ^</chem>
空気中では一部で2分子が結合して四酸化二窒素(<chem>N2O4</chem>)となる。
: <chem>2NO2 <=> N2O4</chem>
窒素は常温では燃焼しない。すなわち酸素と反応して酸化物にならない。しかし、高温下では窒素と酸素が直接反応して窒素酸化物を生じる。また化石燃料の燃焼によっても窒素酸化物が生成する。そのため車のエンジンなどから窒素酸化物が発生し、大気中に放出されたものが雨水に吸収され、[[高校化学 水素と貴ガス#二酸化硫黄|硫黄酸化物]]と同様に酸性雨の原因となる。
==== 硝酸 ====
: (※ 範囲外 : ) 硝石(しょうせき)のつくり方がどこにも書いてないのはオカシイので、改革して硝石の作りかたの要点を書く。おおもとの原料は、糞尿である。尿などにふくまれるアンモニアが、土壌中でさまざまな物質と反応して、硝酸イオンを多く含む物質になる。この硝酸イオンを原料に、カリウムをふくむ灰汁(あく)とともに煮ると化学反応をして硝酸カリウムになるが、この硝酸カリウムこそが、自然界のいわゆる「硝石」(しょうせき)の主な原料である。中世や近世では、この硝石を中間材料として、火薬などを作っていた。(以上、範囲外。)
(↓ 以下、高校の範囲)
'''硝酸'''(<chem>HNO3</chem>)は窒素のオキソ酸であり、有名な強酸である。通常は<chem>HNO3</chem>の水溶液を硝酸と呼ぶ。濃度によりやや異なる性質を示し、濃度の濃いものを'''濃硝酸'''、薄いものを'''希硝酸'''と呼ぶ。硝酸は揮発性の酸であるため、実験室では硝酸塩に濃硫酸を加えることにより得られる。
: <chem>NaNO3 + H2SO4 -> NaHSO4 + HNO3</chem>
硝酸の製法は、工業的には、'''オストワルト法'''(Ostwald process)により製造される。次のような工程を経て硝酸が得られる。
# アンモニアと空気の混合気体を、触媒の白金 Pt に触れさせ、800℃〜900℃でアンモニアを酸化させて一酸化窒素とする。
#: <chem>4NH3 + 5O2 -> 4NO + 6H2O</chem>
# 一酸化窒素を空気中でさらに酸化して、二酸化窒素とする。
#: <chem>2NO + O2 -> 2NO2</chem>
# 二酸化窒素を水に吸収させ、硝酸とする。ここで発生する一酸化窒素は回収し、2に戻って再び酸化する。
#: <chem>3NO2 + H2O -> 2HNO3 + NO</chem>
硝酸は無色の水溶液であるが、光や熱により分解して二酸化窒素と酸素を生じる。そのため、保管のさいには、硝酸は褐色びんに入れ冷暗所で保存するようにする。
: <chem>4HNO3 -> 4NO2 + 2H2O + O2</chem>
強い酸化作用を持っており、水素よりイオン化傾向の小さい銅Cuや銀Agなどの金属も酸化して溶かす。また、イオン化傾向の大きい金属と反応して窒素酸化物を生じる。希硝酸からは一酸化窒素が、濃硝酸からは二酸化窒素がそれぞれ発生する。
(希硝酸)<chem>3Cu + 8HNO3 -> 3Cu(NO3)2 + 4H2O + 2NO ^</chem>
(濃硝酸)<chem>Cu + 4HNO3 -> Cu(NO3)2 + 2H2O + 2NO2 ^</chem>
また硝酸は強酸であり、イオン化傾向の大きい金属と反応して水素を発生する。
: <chem>2Al + 6HNO3 -> 2Al(NO3)3 + 3H2 ^</chem>
* 不動態
ただし、鉄 Fe やアルミニウム Al やニッケル Ni は、硝酸とは反応して水素を発生するが、濃硝酸に加えても溶けない。これは、金属の表面が酸化され、水に溶けにくい緻密な酸化被膜を生成して、内部が保護され、反応が内部まで進行しなくなるためである。このような状態を'''不動態'''(ふどうたい、passive state)という。
* その他
硝酸塩はほとんど水に溶ける。そのため、ガラス器具にこびりついた金属類を洗浄する際に用いられることも多い。
硝酸は火薬の製造に用いられる。
==== 窒素の応用 ====
たとえば、ポテトチップスなどのような油で揚げたスナック菓子の酸化防止のため、袋の中に窒素がつめられる。酸素があると、油が酸化してしまうが、代わりに何らかの気体をつめる必要があるので、窒素を袋の中につめているのである。(※ 2017年のセンター試験『化学基礎の』本試験で出題)
=== リン ===
=== 単体 ===
'''リン'''(P)は5種類の同素体を持つ。代表的なものは'''黄リン'''(P{{sub|4}})と'''赤リン''' (P{{sub|x}})の2つである。
'''黄リン'''(P{{sub|4}})は淡黄色のろう状固体であり、人体にきわめて有毒である。空気中で自然発火するため、水中に保存する。二硫化炭素(CS{{sub|2}})に溶ける。
[[ファイル:Red_phosphorus_in_a_tube_-_P_15_.jpg|右|150x150ピクセル]]
'''赤リン'''(P{{sub|x}})は赤褐色の粉末状固体であり、弱い毒性を持つ。二硫化炭素(CS{{sub|2}})に溶けない。赤リンはマッチの箱のすり薬として用いられている。
: ※ マッチでリンが使われてる部分は、マッチ棒'''ではなく'''、マッチ箱のほう。
=== 酸化物 ===
リンを空気中で燃焼させると、'''十酸化四リン'''(<chem>P4O10</chem>)の白煙を生じる。
: <chem>4P + 5O2 -> P4O10</chem>
十酸化四リンは白色の粉末状固体であり、強い吸湿性を示し、乾燥剤として用いられる。この吸湿性から、空気中に放置すると空気中の水蒸気を吸収して自分自身がその水に溶ける。この現象を'''潮解'''という。十酸化四リンは'''潮解性'''(ちょうかいせい、deliquescence)のある物質である。 十酸化四リンは水と反応して'''リン酸'''(<chem>H3PO4</chem>)となる。
: <chem>P4O10 + 6H2O -> 4H3PO4</chem>
リン酸は酢酸のような弱酸よりは強いが、塩酸のような強酸よりは弱い、中程度の強さの酸である。 リンは生物にとって必要不可欠な元素である。生物はリンの化合物であるATP(アデノシン三リン酸)にエネルギーを保存し、利用する。農業においても必要な元素で、リン酸肥料として用いられる。主なものとして、リン鉱石と硫酸と水との反応から得られるリン酸二水素カルシウム(<chem>Ca(H2PO4)2</chem>)と、硫酸カルシウム(<chem>CaSO4</chem>)との混合物である'''過リン酸石灰'''がある。 この過リン酸石灰が、リン肥料の主成分である。 リン酸カルシウム <chem>Ca3(PO4)2</chem> およびヒドロキシアパタイト <chem>Ca5(PO4)3(OH)</chem> は、動物の骨や歯の主成分である。
== 14族元素 ==
[[ファイル:周期表-CSi.png|右]]
'''炭素''' C 、'''ケイ素''' Si はともに14族に属する元素である。価電子を4個持つ。
=== 炭素 ===
'''炭素''' (C) は生物を構成する重要な元素であり、多くの化学製品にも含まれている。炭素を含む物質は一般に'''有機物'''と呼ばれる。有機化合物については別の章で詳しく学ぶ。この節では、炭素の単体、一酸化炭素、二酸化炭素について説明する。
=== 単体 ===
炭素の単体は共有結合の結晶であり、結合の仕方によっていくつかの同素体が存在する。
; ダイヤモンド (C)
[[ファイル:Apollo_synthetic_diamond.jpg|左|サムネイル|150x150ピクセル|ダイヤモンド]]
[[ファイル:DiamantEbene01.png|右|サムネイル|150x150ピクセル|ダイヤモンドの構造]]
'''ダイヤモンド'''は無色の固体で、1つの炭素原子が4つの炭素原子と正四面体の頂点方向に共有結合し、それが多数連結して結晶を形成している。共有結合の結晶であるため、非常に融点・沸点が高く、地球上で最も硬い物質として知られている。電気は通さないが、熱はよく伝える。宝石としての利用のほか、工業的には研磨剤としても使われる。光の屈折率が大きい。
{{-}}
; 黒鉛 (C)
[[ファイル:GraphiteUSGOV.jpg|左|サムネイル|150x150ピクセル|黒鉛]]
[[ファイル:Graphit_gitter.png|右|サムネイル|187x187ピクセル|グラフェン黒鉛(グラファイト)の一層をグラフェンと呼ぶ。上図ではグラフェンが4層描かれている。]]
'''黒鉛'''は金属光沢のある黒色の固体で、炭素原子が正六角形の層状構造を持っている。各層は3つの共有結合によって形成され、残りの価電子は'''自由電子'''として層間を移動する。この自由電子の存在により、黒鉛は電気をよく通し、熱伝導性も高い。層と層の結合は弱いため、黒鉛は柔らかく、鉛筆の芯や電気分解用の電極として使用される。
{{-}}
; フラーレン(C60、C70など)
[[ファイル:C60a.png|右|サムネイル|140x140ピクセル|フラーレン]]
'''フラーレン'''は茶褐色の固体で、多数の炭素原子が球状に結合している。右図はC60フラーレンのモデルで、炭素原子が60個、サッカーボール状に結合している。20世紀後半に発見された物質で、現在も研究が進んでいる。純粋なフラーレンは電気を通さないが、アルカリ金属を添加すると超伝導性を示すことがある。有機溶媒に溶ける性質を持つ。
{{-}}
; グラフェン
'''グラフェン'''は炭素原子が六角形に配列した一層のシート状の物質で、非常に強く柔軟であり、電気や熱を効率よく伝える。
{{-}}
; カーボンナノチューブ
'''カーボンナノチューブ'''(Carbon Nanotube、CNT)は、炭素原子が六角形に結びついたグラフェンシートを丸めて筒状にしたナノ材料。非常に高い強度と優れた電気・熱伝導性を持つ。
{{-}}
; 無定形炭素
[[ファイル:Binchotan_(charcoal).jpg|サムネイル|180x180ピクセル|活性炭]]
炭素の同素体とは異なり、黒鉛や[[高等学校化学I/炭化水素|炭化水素]]が不規則に結合し、結晶構造を明確に持たない固体がある。これを'''無定形炭素'''(amorphous carbon)と呼ぶ。木炭やコークスが代表的で、この中でも'''活性炭'''は多孔質であり、さまざまな物質を吸着する性質があるため、消臭剤などに用いられている。
{{-}}
=== 酸化物 ===
炭素が空気中で燃焼すると、酸化物が生成される。
; 一酸化炭素 (CO)
炭素や有機化合物が空気中で不完全燃焼すると、'''一酸化炭素''' (CO) が生じる。一酸化炭素は無色無臭の気体で、非常に有毒である。吸入すると血液中のヘモグロビンと結合し、酸素の運搬を阻害する。水には溶けにくい。
実験室では、ギ酸を濃硫酸で脱水して一酸化炭素を生成できる。
: <chem>HCOOH -> H2O + CO ^</chem>
空気中では青白い炎を上げて燃焼し、二酸化炭素を生じる。
: <chem>2CO + O2 -> 2CO2</chem>
一酸化炭素は還元性を持ち、金属酸化物を還元して単体にする性質がある。
: <chem>CuO + CO -> Cu + CO2</chem>
; 二酸化炭素 (CO2)
炭素や有機化合物が空気中で完全燃焼すると、'''二酸化炭素''' (CO2) が生じる。実験室では炭酸カルシウムに塩酸を加えて発生させることができる。
: <chem>CaCO3 + 2HCl -> CaCl2 + H2O + CO2 ^</chem>
工業的には、石灰石の熱分解によって二酸化炭素が得られる。
二酸化炭素は無色無臭の気体で、毒性はない。酸性酸化物であり、水に溶けると炭酸水素イオン <chem>HCO3^-</chem> を生成し、弱酸性を示す。
: <chem>CO2 + H2O <=> HCO3^- + H^+</chem>
また、塩基と反応して塩を作る。
: <chem>CO2 + 2NaOH -> Na2CO3 + H2O</chem>
二酸化炭素を'''石灰水'''(水酸化カルシウム水溶液)に通すと、炭酸カルシウムが生成され白濁する。この反応は二酸化炭素の検出に用いられる。
: <chem>Ca(OH)2 + CO2 -> H2O + CaCO3 v</chem>
[[ファイル:Dry_Ice_Pellets_Subliming.jpg|右|サムネイル|150x150ピクセル|ドライアイス]]
二酸化炭素の固体は分子結晶で、'''ドライアイス'''として知られ、冷却剤として使用される。常圧下で'''昇華性'''を持ち、液体にならずに直接気体となる。
二酸化炭素は生物の活動によって放出・吸収される。呼吸では、酸素を吸収して糖類と反応し、エネルギーを取り出す過程で二酸化炭素が生成される。
: <chem>C6H12O6 + 6O2 -> 6H2O + 6CO2</chem>
逆に、植物は光のエネルギーを用いて二酸化炭素を吸収し、糖類を合成する。この過程を光合成という。
: <chem>6CO2 + 6H2O -> C6H12O6 + 6O2</chem>
また、微生物の中には糖類を発酵させ、エネルギーを得るものがあり、その過程で二酸化炭素が生じる。
: <chem>C6H12O6 -> 2C2H5OH + 2CO2</chem>
=== ケイ素 ===
'''ケイ素''' Si は酸素の次に多く地殻中に含まれている元素である。水晶などの鉱物にも含まれている。半導体の主な原料であり、工業的に重要な元素となっている。
=== 単体 ===
[[ファイル:SiliconCroda.jpg|右|サムネイル|200x200ピクセル|ケイ素]]
'''ケイ素''' Si は金属光沢をもつ銀灰色の固体である。ケイ素は金属光沢をもつが、しかし金属ではない。
光や紫外線、赤外線などは電磁波であるが、ケイ素は電磁波の反射率が可視光(波長:780nm〜380nm)のあたりだけ、反射率が高いため、人間の目で見た場合に、ケイ素は金属光沢がるように見える。(※ 東京書籍の教科書で、コラムで紹介されている。)
[[ファイル:Monokristalines_Silizium_für_die_Waferherstellung.jpg|左|サムネイル|294x294ピクセル|ケイ素の単結晶電子部品の製造などに用いられる。これを薄く切断してシリコンウェハーにする。]]
ケイ素は天然には単体として存在せず、酸化物を還元することにより製造される。単体は共有結合の結晶であり、ダイヤモンドと同様の構造でケイ素原子が結合する。そのためダイヤモンド同様融点・沸点は高く、固い結晶を作る。導体と不導体の中間程度の電気抵抗を持つ半導体で、太陽電池やコンピュータ部品に用いられる。
シリコンの結晶に、わずかにリンやホウ素を加えたものは、電気をよく通すものになる。これらの材料(シリコンの結晶に、わずかにリンやホウ素を加えたもの)も「半導体」という。(※ 実教出版、数研出版の教科書などで紹介している。) (※ 『物理II』で詳しく習う。『[[高等学校物理/物理II/電気と磁気]]』などの単元で扱う。)
* その他
[[ファイル:Silicon-unit-cell-3D-balls.png|サムネイル|80x80ピクセル|ケイ素の単体の結晶構造]]
ケイ素の結晶構造は、ダイヤモンドの結晶構造と同じ。(← 高校の範囲。)
{{-}}{{コラム|(※ 範囲外: )シリセン|シリセンは、ケイ素(シリコン)原子が六角形に配列し、グラフェンに似た二次元シート構造を持つ新しい物質である。シリコンは通常、三次元のダイヤモンド構造を取るが、シリセンではケイ素原子が平面状に並び、蜂の巣状の構造を作り出す。このため、シリセンは「シリコン版グラフェン」とも呼ばれることがある。
シリセンは、グラフェンと同様に優れた電子的特性を持ち、次世代のエレクトロニクス材料として注目されている。特に、シリコンベースの既存の半導体技術との互換性が期待されており、ナノテクノロジーやトランジスタ、センサーなどの分野での応用が研究されている。
ただし、シリセンはグラフェンよりも安定性が低く、空気中では速やかに酸化されるため、特定の条件下でしか安定した形で存在できない。一般的には金属基板の上に成長させることで安定させる技術が使われている。
シリセンはその特性を利用して、エレクトロニクスやスピントロニクス、さらにはエネルギー材料などの広い分野で革新的な技術を生み出す可能性があるが、まだ研究段階にあるため、今後の発展が期待される。}}{{-}}
=== 二酸化ケイ素 ===
[[ファイル:Quartz_(USA).jpg|右|サムネイル|180x180ピクセル|水晶]]
'''二酸化ケイ素'''(<chem>SiO2</chem>)は自然界で石英として存在する。透明な石英の結晶は「水晶」と呼ばれ、宝石として用いられる。また、砂状のものはケイ砂と呼ばれ、ガラスの原料となる。
二酸化ケイ素は共有結合の結晶である。ケイ素原子と酸素原子との結合は非常に強く、固く安定な結晶を作る。また、強い結合のためか、融点も高く、塩酸にも溶けない。しかし、フッ化水素酸とは反応して溶ける。
: <chem>SiO2 + 6HF -> H2SiF6 + 2H2O</chem>
[[ファイル:Silica_gel.jpg|右|150x150ピクセル]]
また、二酸化ケイ素は酸性酸化物であり、塩基と反応して塩を生じる。たとえば水酸化ナトリウムと反応して、ケイ酸ナトリウム(<chem>Na2SiO3</chem>)を生じる。
: <chem>SiO2 + 2NaOH -> Na2SiO3 + H2O</chem>
これに水を加えて加熱すると、水あめ状の'''水ガラス'''(water glass)が得られる。また、水ガラスに塩酸を加えると、ゲル状のケイ酸が得られる。
: <chem>Na2SiO3 + 2HCl -> H2SiO3 + 2NaCl</chem>
※ 実際は組成が安定せず、できるのが <chem>H2SiO3</chem> のみとは限らない
このとき塩化ナトリウムが副生成物としてできるので、塩化ナトリウムを水洗して除き、のこったケイ酸を加熱乾燥すると'''シリカゲル'''(silica gel)が得られる。シリカゲルは多孔質で分子を吸着するため、乾燥剤や吸着剤として用いられる。
* 発展: 水晶振動子 (※ ほぼ範囲外)
電子工業における水晶の応用として、'''水晶振動子'''としての利用がある。
水晶に電圧を掛けると、一定の周期で振動することから、時計などの発振器として利用されている。
[[Category:高等学校化学]]
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== 水素と貴ガス ==
=== 水素 ===
[[ファイル:周期表-H.png|right]]
[[File:H,1.jpg|150px|right]]
'''水素'''は、単体として宇宙で最も多く存在する元素である。地球上では水 H<sub>2</sub>O として最も多く存在する。単体 H<sub>2</sub> は常温常圧で無色無臭の気体である。
;製法
工業的には、石油や天然ガスを高温水蒸気と反応させて、得られる。他には、純粋な水素を作る場合は、水を電気分解する。
実験室では、塩酸や希硫酸などの強酸に、亜鉛などの金属を加える。水素は水に溶けにくいため、水上置換で捕集する。
;主な性質・反応
* 空気中で容易に燃焼し、水になる。酸素との混合気体は爆発的に燃焼する。
*: 2H<sub>2</sub> + O<sub>2</sub> → 2H<sub>2</sub>O
* 高温では還元性をもち、高温で金属などの酸化物を還元する。
*: CuO + H<sub>2</sub> → Cu + H<sub>2</sub>O
水素は、アンモニア、塩化水素、メタノールなどの原料である。
=== 貴ガス ===
[[File:周期表-希ガス.png|right]]
'''貴ガス'''(noble gas)<ref>希ガス(rare gas)とも</ref>は、18族元素のヘリウム He, ネオン Ne, アルゴン Ar, クリプトン Kr, キセノン Xe, ラドン Rn の総称である<ref>18族元素にはオガネソン Og もあるがこの元素の性質はあまり解明されていない。</ref>。
18族元素は価電子をもたないため、他の原子と結合したり、イオンになることがほとんどない。したがって、化学反応を起こして化合物となることがほとんどない。また、単体の気体として、原子1個で1つの分子を形成している。このような分子を'''単原子分子'''と呼ぶ。
貴ガスには次のような物質がある。これらはいずれも無色無臭で、常温常圧で気体である。また、いずれも融点および沸点が低い。
* '''ヘリウム''' (He): 風船や飛行船を浮かせるために用いられる。また、すべての物質の中で、融点がもっとも低いので、超伝導など極低温の実験のさいの冷媒に液体ヘリウムが用いられる。
* '''ネオン''' (Ne): ネオンサインなどに用いられる。
* '''アルゴン''' (Ar): 溶接するときの酸化防止ガスに用いられる。空気中に0.93%存在する。
* '''クリプトン''' (Kr): 電球などに用いられる。
* '''キセノン'''(Xe): カメラのストロボなどに用いられる。
* ラドン (Rn): 放射能があり、放射線治療などに用いられる。
{|align="center" style="border:solid #aaffaa 1px;"
|[[File:He,2.jpg|100px]]||[[File:Ne,10.jpg|100px]]||[[File:Ar,18.jpg|100px]]||[[File:Kr,36.jpg|100px]]||[[File:Xe,54.jpg|100px]]
|-
|style="text-align:center"|ヘリウム
|style="text-align:center"|ネオン
|style="text-align:center"|アルゴン
|style="text-align:center"|クリプトン
|style="text-align:center"|キセノン
|}
貴ガスは原子単体で安定なため、普通は化合物にならない。貴ガスに圧力を低くしてガラス管に封入し電圧をかけることで、それぞれ異なった色の光を放つ。そのため、電球やネオンサインとして用いられるものが多い。
{|align="center" style="border:solid #aaffaa 1px;"
|[[File:HeTube.jpg|100px]]||[[File:NeTube.jpg|100px]]||[[File:ArTube.jpg|100px]]||[[File:KrTube.jpg|100px]]||[[File:XeTube.jpg|100px]]
|-
|style="text-align:center"|ヘリウム
|style="text-align:center"|ネオン
|style="text-align:center"|アルゴン
|style="text-align:center"|クリプトン
|style="text-align:center"|キセノン
|}
=== エキシマ(発展) ===
アルゴン気体とフッ素気体をつめた放電管に放電をすると、不安定なアルゴンフッ素 ArF (エキシマ)が一時的に生成し、それが分解する際に波長197 nmの紫外線を放出する。
この光は、半導体製造の際の光化学反応の光源に使われている。また、キセノンでもハロゲンとのエキシマによってレーザー光が放出されることが知られている。
=== 貴ガスの化合物 ===
貴ガスは、反応性が低く化合物を作らないと考えられていたが、1960年代に、<chem>XePtF6</chem> や <chem>XeF4</chem> などキセノンの化合物の合成に成功した。その後も貴ガスの化合物は合成されたが、ネオンの化合物は未だ合成に成功していない。
キセノンとフッ素ガスを混合した気体に放電または熱を加えてできた、二フッ化キセノン XeF<sub>2</sub> や四フッ化キセノン XeF<sub>4</sub> や六フッ化キセノン XeF<sub>6</sub> の固体は無色である。
周期表の17族に属する、フッ素 F、塩素 Cl、臭素 Br、ヨウ素 I、アスタチン At を'''ハロゲン'''という。
ハロゲンの原子は最外殻に価電子を7つ持っている。ハロゲンは1価の陰イオンになりやすい。
このためハロゲンは化合物をつくりやすい。そのため、天然では、ハロゲンは鉱物(ホタル石 CaF<sub>2</sub> 、岩塩 NaCl)として存在している場合も多い。または、海水中に陰イオンとしてハロゲンが存在している場合が多い。
== ハロゲン ==
[[ファイル:周期表-ハロゲン.png|右]]
=== ハロゲンの単体の性質 ===
ハロゲンの単体はいずれも'''二原子分子'''で有色、毒性である。
沸点(bp)・融点(mp)は、原子番号の大きいものほど高い。
ハロゲンの単体は酸化力が強い。酸化力の強さは原子番号が小さいほど大きくなる。つまり酸化力の強さは、
<chem>F2 > Cl2 > Br2 > I2</chem>
である。
たとえば、ヨウ化カリウム水溶液に塩素を加えると、ヨウ素は酸化されて単体となる。
<chem>2KI + Cl2 -> 2KCl + I2 </chem>逆に、塩化カリウム水溶液にヨウ素を加えても、ヨウ素よりも塩素のほうが酸化力が強いため、反応は起こらない。
また、ハロゲンの各元素ごとの酸化力の違いは、水や水素との反応にも関わる。
最も酸化力のつよいフッ素は、水と激しく反応し、酸素を発生する。
:2F<sub>2</sub> + 2H<sub>2</sub>O → 4HF + O<sub>2</sub>
{|border=1 cellspacing=0 align=center text-align=center style="text-align:center"
|- style="background:silver"
! !! フッ素 F<sub>2</sub> !! 塩素 Cl<sub>2</sub> !! 臭素 Br<sub>2</sub> !! ヨウ素 I<sub>2</sub>
|-
| rowspan="2" | 色・状態
| [[File:F,9.jpg|180px]] || [[File:Cl,17.jpg|180px]] || [[File:Br,35.jpg|180px]] || [[File:I,53.jpg|170px]]
|-
|| 淡黄色・気体 || 黄緑色・気体 || 赤褐色・液体 || 黒紫色・固体
|-
| 融点 (℃) || -220 || -101 || -7 || 114
|-
| 沸点 (℃) || -138 || -34 || 59 || 184
|-
| 酸化力
| colspan="4" | 大 ←――――――――――――――――――――――――――――――――――→ 小
|-
| rowspan="2" | 水との反応 || 激しく反応して<br>酸素 O<sub>2</sub> が発生 || 一部が反応<br>HCl などを生じる || rowspan="2"| 塩素より反応は弱いが、<br>似た反応をする || rowspan="2" | 水に反応しにくく、<br>水に溶けにくい
|-
|| 2H<sub>2</sub>O + 2F<sub>2</sub><br />→ 4HF + O<sub>2</sub> || 2H<sub>2</sub>O + Cl<sub>2</sub> <br />⇄ HCl + HClO
|-
| rowspan="2" | 水素との反応 || 低温・暗所でも<br />爆発的に反応 || 光を当てることで<br />爆発的に反応 || 高温にすると反応 || 高温にすると一部が反応
|}
==== '''フッ素 F₂''' ====
常温常圧下では淡黄緑色の気体である。
酸化力が非常に強く、様々な物質と激しく反応する。ガラスでさえフッ素を吹き付けると燃えるように反応するため扱いが難しい。
水や水素との反応物であるフッ化水素(HF)が水に溶けたフッ化水素酸(HFaq)はガラスを侵すため、ポリエチレン容器に入れ保管する。
==== 塩素 ====
塩素 Cl<sub>2</sub> は常温常圧で黄緑色の有毒な気体である。
==== 製法 ====
工業的:塩化ナトリウム水溶液の電気分解でつくる。
実験室的:酸化マンガン(IV)に濃塩酸を加え、加熱する。
: <chem>MnO2 + 4HCl -> MnCl2 + 2H2O + Cl2 ^</chem>
:なお、この反応では塩素と同時に水も生成する。さらに、濃塩酸には[[#ハロゲンの化合物|次節]]に見るように揮発性がある。したがって、この反応により得られる気体は純粋な塩素ではなく、水や塩化水素を少量含んでいる。それらを取り除くため、この気体を水と濃硫酸に順番に通す。まず水に通すことで、揮発した塩化水素が吸収される。次いで濃硫酸に通すことで、濃硫酸の吸湿作用により気体中の水が吸収され、純粋な塩素を得ることができる。なお、この水・濃硫酸に通す順番を逆にしてはならない。先に濃硫酸に通した後水に通しても、得られる気体の中には最後に通した水から蒸発した水蒸気が含まれているためである。塩素は空気よりも重いため、濃硫酸を通したあとの塩素を、下方置換で集める。
塩化ナトリウム、酸化マンガン(IV)に濃硫酸を加えて加熱する。
<chem>2NaCl + 3H2SO4 + MnO2 -> MnSO4 + 2NaHSO4 + 2H2O + Cl2 ^</chem>
さらし粉に塩酸を加える。
<chem>CaCl(ClO).H2O + 2HCl -> CaCl2 + 2H2O + Cl2 ^</chem>
==== 性質 ====
塩素は、水に少し溶けて、その一部が'''次亜塩素酸''' <chem>HClO</chem> になる。
:<chem>Cl2 + H2O -> HCl + HClO</chem>
次亜塩素酸は、強い酸化作用がある。塩素 Cl<sub>2</sub> の水溶液を'''塩素水'''(chlorine water)という。
塩素水および次亜塩素酸は、漂白剤や殺菌剤として水道やプールの水の殺菌などに広く用いられている。
: <chem>HClO + H^+ + 2e^- -> H2O + Cl^-</chem>
* さらし粉
水酸化カルシウムと塩素を反応させると、さらし粉(主成分:CaCl(ClO)・H<sub>2</sub>O)ができる。
さらし粉または高度さらし粉(主成分:Ca(ClO)<sub>2</sub>・2H<sub>2</sub>O)に塩酸を加えることによっても塩素の単体を得ることができる。
: CaCl(ClO)・H<sub>2</sub>O + 2HCl → CaCl<sub>2</sub> + 2H<sub>2</sub>O + Cl<sub>2</sub>↑
: Ca(ClO)<sub>2</sub>・2H<sub>2</sub>O + 4HCl → CaCl<sub>2</sub> + 4H<sub>2</sub>O + 2Cl<sub>2</sub>↑
工業的には塩化ナトリウム水溶液の電気分解を用いた、イオン交換膜法により製造される。
高度さらし粉は、漂白剤や殺菌剤として利用される。
:(※ 範囲外: ) いわゆる「カルキ」とは、この、さらし粉のこと。ドイツ語のクロールカルキを略してカルキと読んでいる。
* その他
塩素はさまざまな金属と反応して塩化物となる。たとえば、単体の塩素の中に加熱した銅線を入れると、煙状の塩化銅(II) CuCl<sub>2</sub> を生成する。
: Cu + Cl<sub>2</sub> → CuCl<sub>2</sub>
==== ヨウ素 ====
ヨウ素(I<sub>2</sub>)は常温常圧で黒紫色の固体である。'''昇華性'''があり、加熱すると固体から液体にならず直接気体となる。これを利用して、固体のヨウ素の純度を上げることができる。1リットルビーカーに不純物を含むヨウ素の固体を入れ、ガスバーナーで加熱する。ビーカーの上部には冷水を入れた丸底フラスコを置いておく。加熱によりヨウ素のみが気体となり、上昇してフラスコの底部付近で冷やされて固体に戻る。そのため、フラスコ底部に純度の高いヨウ素の針状結晶が析出する。
ヨウ素は水に溶けにくいが、エーテルなどの有機溶媒にはよく溶ける。また、ヨウ化カリウム水溶液にもよく溶けて褐色の溶液となる。<!--極性は化学IIなのでここでは触れない-->
デンプン水溶液にヨウ素を溶かしたヨウ化カリウム水溶液を加えると、青紫色を呈する。このようにデンプンにヨウ素を作用させて青紫色となる反応を'''ヨウ素デンプン反応'''と呼ぶ。これにより、ヨウ素やデンプンの検出ができる。
ヨウ素デンプン反応を用いた試薬に、ヨウ化カリウムデンプン紙がある。これは、ろ紙にデンプンとヨウ化カリウムを含ませたものであり、酸化力の強い物質の検出に用いられる。酸化力の強い物質がある場合、ヨウ化カリウムは酸化されてヨウ素の単体となる。
: 2I<sup>-</sup> → I<sub>2</sub> + e<sup>-</sup>
このヨウ素がデンプンに作用して紫色から青紫色に変化する。
=== ハロゲンの化合物 ===
==== ハロゲン化水素 ====
ハロゲンは水素と化合して'''ハロゲン化水素'''となる。いずれも無色刺激臭の気体である。
また、ハロゲン化水素の水溶液は酸性を示す。
{|border=1 cellspacing=0 align=center text-align=center style="text-align:center"
|- style="background:silver"
! colspan="2" | 名称 !! フッ化水素 !! 塩化水素 !! 臭化水素 !! ヨウ化水素
|-
| colspan="2" | 組成式 || HF || HCl || HBr || HI
|-
| colspan="2" | 沸点(℃) || 20 || -85 || -67 || -35
|-
| rowspan="2" | 水溶液 || 名称 || フッ化水素酸 || 塩酸 || 臭化水素酸 || ヨウ化水素酸
|-
| 酸の強さ || '''弱酸''' || 強酸 || 強酸 || 強酸
|}
ハロゲン水溶液の酸性は、フッ化水素酸だけが弱酸である。それ以外は強酸である。
==== フッ化水素(HF) ====
<!--沸点の高さ・弱酸となる理由については触れない; 極性・水素結合は化学IIで扱うため-->
フッ化水素は、ホタル石(主成分 CaF<sub>2</sub>)に濃硫酸をくわえて加熱することで、得られる。
: CaF<sub>2</sub> + H<sub>2</sub>SO<sub>4</sub> → 2HF + CaSO<sub>4</sub>
フッ化水素は水によく溶け、弱酸の'''フッ化水素酸'''(hydrofluoric acid)となる。
フッ化水素酸は、ガラスの主成分である二酸化ケイ素 SiO<sub>2</sub>)を溶かすため、保存するときはポリエチレン容器に保存する。
: SiO<sub>2</sub> + 6HF → H<sub>2</sub>SiF<sub>6</sub> + 2H<sub>2</sub>O
工業の用途として、ガラスの表面処理や、くもりガラスの製造に、フッ化水素酸が用いられる。
フッ化水素だけ沸点が他のハロゲン化水素よりも高いが、この原因は、フッ化水素では水素結合が生じるからである。(← ※ 実教出版、数研出版、第一学習社の教科書で紹介。)
フッ化水素酸だけ弱酸である理由も、同様に水素結合によって電離度が低くなっているためである。(← ※ 実教出版、第一学習社の教科書の見解。)
==== 塩化水素(HCl) ====
塩化水素の、実験室での製法は、塩化ナトリウムに濃い硫酸を加え加熱することで得られる。
: NaCl + H<sub>2</sub>SO<sub>4</sub> → NaHSO<sub>4</sub> + HCl↑
[[File:Hydrochloric acid ammonia.jpg|right|200px|thumb|塩化水素とアンモニアの反応 <br> 白煙( NH<sub>4</sub>Cl )を生じる]]
塩化水素は水によく溶け、その水溶液は'''塩酸'''(hydrochloric acid)である。濃度の濃いものは濃塩酸、薄いものは希塩酸と呼ばれる。塩酸は強酸性を示し、多くの金属と反応して水素を発生する。
: 2HCl + Zn → ZnCl<sub>2</sub> + H<sub>2</sub>↑
また、強酸性であることから、弱酸の塩と反応して塩を生じ、弱酸を遊離させる。
: HCl + NaHCO<sub>3</sub> → NaCl + H<sub>2</sub>O + CO<sub>2</sub>
塩酸には揮発性があり、常温で一部が気体となる。そのため、アンモニアのついたガラス棒を近づけると、塩酸の気体とアンモニアとが触れて反応し、塩化アンモニウム NH<sub>4</sub>Cl が生じる。この反応は、塩化水素やアンモニアの検出に用いられる。
: HCl + NH<sub>3</sub> → NH<sub>4</sub>Cl
==== ハロゲン化銀・ハロゲン化鉛 ====
ハロゲン化銀は、フッ化銀を除いて、一般に水に溶けにくい。このため、ハロゲンの化合物の水溶液に、硝酸銀をくわえると、塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀などのハロゲン化銀が沈殿する。
{|border=1 cellspacing=0 align=center text-align=center style="text-align:center"
|- style="background:silver"
! 名称 !! フッ化銀 !! 塩化銀 !! 臭化銀 !! ヨウ化銀 !! !! フッ化鉛(II) !! 塩化鉛(II) !! 臭化鉛(II) !! ヨウ化鉛(II)
|-
| 組成式 || AgF || AgCl || AgBr || AgI || || PbF<sub>2</sub> || PbCl<sub>2</sub> || PbBr<sub>2</sub> || PbI<sub>2</sub>
|-
| 色 || 黄色 || 白色 || 淡黄色 || 黄色 || || 白色 || 白色 || 白色 || 黄色
|-
| 水への溶けやすさ || 溶けやすい || 溶けにくい || 溶けにくい || 溶けにくい || || 溶けにくい || 溶けにくい || 溶けにくい || 溶けにくい
|-
| 熱水への溶けやすさ || 溶けやすい || 溶けにくい || 溶けにくい || 溶けにくい || || || 溶ける || 溶ける || 溶ける
|}塩化水素(HCl)
塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀には感光性があり、生じた沈澱に光を当てると銀が遊離する。また、これらはいずれもチオ硫酸ナトリウム水溶液によく溶ける。アンモニア水への溶けやすさは異なり、塩化銀はよく溶け、臭化銀も一部溶けるが、ヨウ化銀は溶けない。
==== 塩素のオキソ酸 ====
塩素のオキソ酸には、酸化数の異なる次の4つがある。
{|border=1 cellspacing=0 align=center text-align=center style="text-align:center"
|- style="background:silver"
! 名称 !! width=100px | 次亜塩素酸 !! width=100px | 亜塩素酸 !! width=100px | 塩素酸 !! width=100px|過塩素酸
|-
| 化学式 || HClO || HClO<sub>2</sub> || HClO<sub>3</sub> || HClO<sub>4</sub>
|-
| 性質 || 殺菌・漂白作用 || 殺菌・漂白作用 || 強力な酸化剤 || 塩は爆発性
|}
;さらし粉
さらし粉(化学式: CaCl(ClO)・H<sub>2</sub>O または Ca(ClO)<sub>2</sub>)は、次亜塩素酸イオンを含むため、その酸化作用により漂白剤や殺菌剤として広く用いられている。水酸化カルシウムと塩素を反応させることで得られる。
: Ca(OH)<sub>2</sub> + Cl<sub>2</sub> → CaCl(ClO)・H<sub>2</sub>O
;(※ 発展) 塩素酸 および 塩素酸塩
::(※ 検定教科書では「酸素」の単元で習う場合が多い。)
塩素酸HClO<sub>3</sub>は不安定な物質だが、カリウムやナトリウムの塩は安定で、強い酸化剤である。塩素酸カリウムKClO<sub>3</sub>は酸化マンガン(IV)を触媒として用いて加熱すると酸素を発生するため、花火やマッチの火薬中に燃焼を助けるため含まれる。
: 2KClO<sub>3</sub> → 2KCl + 3O<sub>2</sub>↑
==== 範囲外? : ハロゲン化物と日用品 ====
ハロゲンの化合物のなかには、日用品の中に広く用いられている物もある。たとえば、フッ素化合物の一つ、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン)はフライパンの表面に薄く塗られ、焦げ付きを防ぐ役割を果たしている。また、臭化銀はその感光性を利用して、写真のフィルムに用いられている。塩素は多くのビニル・プラスチック製品に含まれている。また、ヨウ素は消毒剤や うがい薬 に用いられている。
==== 範囲外? : 「まぜるな危険」 ====
洗剤の「まぜるな危険」の化学反応については、啓林館の教科書を除いて、検定教科書では書かれてない。
== 16族元素 ==
[[ファイル:周期表-OS.png|右]]
16族に属する'''酸素'''(O)、'''硫黄'''(S)はともに価電子を6つ持ち、2価の陰イオンになる。ともに単体は同素体を持つ。
=== 酸素の単体 ===
酸素の単体には、原子2個で1つの分子を作っている'''酸素'''(O<sub>2</sub>)と、原子3個で1つの分子を作っている'''オゾン'''(O<sub>3</sub>)がある。いずれも常温では気体であるが、大きく異なった性質を示す。
酸素は空気中で約21%ふくまれる。また、酸素は地殻を構成する主な元素でもあり、およそ半分は酸素である。
==== 酸素 ====
[[ファイル:Dioxygen-3D-vdW.png|右|サムネイル|100x100ピクセル|酸素 O<sub>2</sub> 分子]]
'''酸素'''(O<sub>2</sub>)は常温で無色無臭の気体である。
工業的な製法は、液体空気の分留によって酸素を得る。
実験室で酸素を得るには、過酸化水素水に酸化マンガン(IV)を加えればよい。この反応で酸化マンガン(IV)は触媒として働き、過酸化水素が分解して酸素を発生する。
: 2H<sub>2</sub>O<sub>2</sub> → 2H<sub>2</sub>O + O<sub>2</sub>↑
また、塩素酸カリウムと酸化マンガン(IV)を混合して加熱してもよい。この反応でもやはり酸化マンガン(IV)は触媒として働く。
: 2KClO<sub>3</sub> → 2KCl + 3O<sub>2</sub>↑
==== オゾン ====
[[ファイル:Ozone-3D-vdW.png|右|サムネイル|100x100ピクセル|オゾン O<sub>3</sub> 分子]]
'''オゾン'''(O<sub>3</sub>)は、酸素中で無声放電を行うか、強い紫外線を当てることで生成する。
: 3O<sub>2</sub> ⇄ 2O<sub>3</sub>
オゾン O<sub>3</sub> は分解しやすく、分解のさいに強い酸化作用を示す。オゾンは淡青色・特異臭の気体で、人体には有害である。オゾンの分子は、酸素原子が3つ結合して1つの分子を作っている。
また、オゾンの酸化作用は、ヨウ化カリウムデンプン紙を青変する。
: 2KI + O<sub>3</sub> + H<sub>2</sub>O → 2KOH + O<sub>2</sub> + I<sub>2</sub>
このためオゾンの検出法は、水で湿らせたヨウ化カリウムデンプン紙でオゾンを検出できる。
大気中には上空25000mほどにオゾンが豊富に含まれる層があり、オゾン層と呼ばれる。オゾン層は人体に有害な紫外線を吸収する働きがあるが、近年このオゾン層が南極付近で局所的に薄くなっており(オゾンホール)、環境問題として取り上げられることが多くなっている。
=== 酸素の化合物 ===
酸素の化合物は一般に'''酸化物'''と呼ばれる。酸素はあらゆる物質と化合することができ、一般に金属元素とはイオン結合、非金属元素とは共有結合による酸化物を作る。
酸化物は、酸や塩基との反応のしかたから3通りに分類される。
{| class="wikitable" style="float: right;"
|+酸化物の分類
!酸性酸化物
|CO<sub>2</sub> , NO<sub>2</sub> , SiO<sub>2</sub> , SO<sub>2</sub> , SO<sub>3</sub> , Cl<sub>2</sub>O<sub>7</sub> など
|-
!塩基性酸化物
|Na<sub>2</sub>O , MgO , CaO , Fe<sub>2</sub>O<sub>3</sub> , CuO , BaO など
|-
!両性酸化物
|Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub> , ZnO
|-
|}
* '''酸性酸化物''' : 水に溶けて酸性を示したり、塩基と反応して塩を生じる酸化物を、'''酸性酸化物'''という。
* '''塩基性酸化物''' : 水に溶けて塩基性を示したり、酸と反応して塩を生じる酸化物を、'''塩基性酸化物'''という。
* '''両性酸化物''': 酸・塩基のどちらとも反応して塩を生じる酸化物を、'''両性酸化物'''という。
一般に、非金属元素の酸化物は酸性酸化物であり、金属元素の酸化物は塩基性酸化物である。
; 酸性酸化物の例
{| class="wikitable" style="float: right;"
!酸性酸化物
|CO<sub>2</sub> , NO<sub>2</sub> , SiO<sub>2</sub> , SO<sub>2</sub> , SO<sub>3</sub> , Cl<sub>2</sub>O<sub>7</sub> など
|-
|}
二酸化炭素や二酸化硫黄など、非金属元素の酸化物の多くは、酸性酸化物である。
酸性酸化物の定義により、酸性酸化物は水に溶けると、酸性を示す。
: SO<sub>3</sub> + H<sub>2</sub>O → H<sub>2</sub>SO<sub>4</sub>
:: ※ H<sub>2</sub>SO<sub>4</sub>は酸。
また、酸性酸化物は塩基と反応すると、塩をつくる。
: SO<sub>2</sub> + 2NaOH<sub>2</sub>O → Na<sub>2</sub>SO<sub>3</sub> + H<sub>2</sub>O
:: ※ Na<sub>2</sub>SO<sub>3</sub>は塩。
二酸化炭素(CO<sub>2</sub>)は塩基と反応して塩を生じる。
: CO<sub>2</sub> + Ca(OH)<sub>2</sub> → CaCO<sub>3</sub> + H<sub>2</sub>O
:: ※ CaCO<sub>3</sub>は塩。
二酸化窒素(NO<sub>2</sub>)は水に溶けて硝酸(HNO<sub>3</sub>)となる。
: 3NO<sub>2</sub> + H<sub>2</sub>O → 2HNO<sub>3</sub> + NO
; 塩基性酸化物の例
{| class="wikitable" style="float: right;"
!塩基性酸化物
|Na<sub>2</sub>O , MgO , CaO , Fe<sub>2</sub>O<sub>3</sub> , CuO , BaO など
|-
|}
水に溶けて塩基性を示したり、酸と反応して塩を生じる酸化物を、'''塩基性酸化物'''という。
: Na<sub>2</sub>O + H<sub>2</sub>O → 2NaOH
:: ※ NaOHは塩基。
'''金属元素の酸化物の多くは、塩基性酸化物である'''。酸化カルシウムや酸化ナトリウムなどが、塩基性酸化物である。
酸化カルシウム(CaO)は水に溶けて水酸化カルシウム(Ca(OH)<sub>2</sub>)となる。
: CaO + H<sub>2</sub>O → Ca(OH)<sub>2</sub>
また、これは酸と反応して塩を生じる。
: CaO + 2HCl → CaCl<sub>2</sub> + H<sub>2</sub>O
; 両性酸化物の例
{| class="wikitable" style="float: right;"
!両性酸化物
|Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub> , ZnO
|-
|}
酸・塩基のどちらとも反応して塩を生じる酸化物を、両性酸化物という。
酸化アルミニウム(Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub>)や酸化亜鉛は、酸とも塩基とも反応して塩を生じる。
: Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub> + 6HCl → 2AlCl<sub>3</sub> + 3H<sub>2</sub>O
: Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub> + 2NaOH + 3H<sub>2</sub>O → 2Na[Al(OH)<sub>4</sub>]
==== オキソ酸 ====
塩素の酸性酸化物を水に溶かすと、水と反応して酸を生じる。
塩素の酸化物には、いくつかの種類があるが、一例として酸を生じる反応として、下記の化学反応がある。
: Cl<sub>2</sub>O<sub>7</sub> + H2O → HClO<sub>4</sub>
リンの酸性酸化物も、水と反応し、酸を生じる。
: P<sub>4</sub>O<sub>10</sub> + 6H<sub>2</sub>O → 4H<sub>3</sub>PO<sub>4</sub>
また、このように酸性酸化物を水と反応させて得られた酸は、分子中に酸素原子と水素原子を含む場合が多い。 塩素の場合は、過塩素酸 HClO<sub>4</sub> などが得られるし、窒素の場合は、亜硝酸(HNO<sub>2</sub>)と硝酸(HNO<sub>3</sub>)などが得られるし、分子式を見ればわかるように酸素原子と原子が分子中に含まれてる。
{| class="wikitable" style="float: right;"
! style="text-align: center;" |化学式
!名称
!酸の強さ
!Clの酸化数
|-
|HClO<sub>4</sub>
|過塩素酸
|つよい側
|+7
|-
|HClO<sub>3</sub>
|塩素酸
|
|+5
|-
|HClO<sub>2</sub>
|亜鉛素酸
|
|+3
|-
|HClO
|次亜鉛素酸
|よわい側
|+1
|-
|}
一般に、分子中に酸素分子のある構造の酸のことを'''オキソ酸'''(oxoacid)という。(「オキソ酸」といった場合、水素原子は、なくても構わない。 ※ 東京書籍と実教出版の見解。 いっぽう、啓林館などが、「オキソ酸」の定義に水素原子を含ませる定義である。)
オキソ酸の分子構造についての議論のさいには、塩素原子や窒素原子など、由来となった酸性酸化物の元素を「中心原子」と設定して議論するのが一般的である。(つまり、酸素原子や水素原子は、中心ではない。)
中心元素が同じであれば、結合している酸素の数が多いほど、オキソ酸の酸性は強くなる。
たとえば窒素のオキソ酸として亜硝酸(HNO<sub>2</sub>)と硝酸(HNO<sub>3</sub>)があるが、硝酸の方が強い酸である。
また、中心元素が第3周期のリン、硫黄、塩素であるようなオキソ酸は、この順に酸性が強くなる。リン酸(H<sub>3</sub>PO<sub>4</sub>)は弱酸であるが、硫酸(H<sub>2</sub>SO<sub>4</sub>)は強酸であり、過塩素酸(HClO<sub>4</sub>)はさらに強い酸性を示す。
塩素のオキソ酸の酸性の順は、
: (つよい側) HClO<sub>4</sub> > HClO<sub>3</sub> > HClO<sub>2</sub> > HClO (よわい側)
名称は
: HClO<sub>4</sub> 過塩素酸。 HClO<sub>3</sub> 塩素酸。 HClO<sub>2</sub> 亜鉛素酸。HClO 次亜鉛素酸。
である。
: (※ 範囲外:) いまのところ、上記の4つ以外は、塩素のオキソ酸は発見されていない。(※ 参考文献: 化学同人『理工系基礎レクチャー 無機化学』、鵜沼秀郎 ほか 著、2007年第1版、2014年第1版第9刷、73ページ)
=== 硫黄の単体 ===
'''硫黄'''(S)の単体には、斜方硫黄、単斜硫黄、ゴム状硫黄などの同素体がある。単体は火山地帯から多く産出され、また重油の精製過程のひとつである'''脱硫'''(だつりゅう)の工程において多く得られる。
; 斜方硫黄(S<sub>8</sub>)
[[ファイル:Sulfur.jpg|100x100ピクセル]] 斜方硫黄は常温で安定な黄色・塊状の結晶である。硫黄原子が8つ環状に結合して1つの分子を形成している。
; 単斜硫黄(S<sub>8</sub>)
[[ファイル:Cyclooctasulfur-above-3D-balls.png|100x100ピクセル]] 単斜硫黄は高温で安定な黄色・針状の結晶である。硫黄原子が8つ環状に結合して1つの分子を形成している。斜方硫黄を加熱することで得られる。
; ゴム状硫黄(S<sub>x</sub>)
ゴム状硫黄は褐色の無定形固体である。ただし、純粋なものは黄色を示すものがある。数十万の硫黄原子がジグザグに結合しているため、引っ張ると結合角が変わり弾力性がある。
斜方硫黄を加熱するとコハク色の液体となる。これを加熱し続けると次第に暗褐色となり、粘性が増してくる。さらに加熱すると濃青色の液体となり、これを水中に入れ急冷するとゴム状硫黄となる。
* 反応性
硫黄は、高温で反応性が高い。
[[ファイル:Sulfur-burning-at-night.png|右|サムネイル|150x150ピクセル|硫黄の燃焼]]
硫黄は高温では多くの元素と化合して硫化物となる。たとえば鉄粉と硫黄の粉末を混合して加熱すると、硫化鉄(II) FeS が生じる。
: Fe + S → FeS
また、空気中で青白い炎をあげて燃焼し、二酸化硫黄となる。
: S + O<sub>2</sub> → SO<sub>2</sub>
=== 硫黄の化合物 ===
==== 硫化水素 ====
'''硫化水素'''(H{{sub|2}}S)は無色腐卵臭の気体である。人体に有毒であるため、使用時には十分な換気に注意しなければならない。硫化水素は水に溶け、弱酸性を示す。
: H{{sub|2}}S ⇄ HS{{sup|-}} + H{{sup|+}} ⇄ S{{sup|2-}} + 2H{{sup|+}}
火山ガスや温泉に豊富に含まれるが、実験室では硫化鉄(II)に強酸を加えることで得られる。
: FeS + 2HCl → FeCl{{sub|2}} + H{{sub|2}}S↑
: FeS + H{{sub|2}}SO{{sub|4}} → FeSO{{sub|4}} + H{{sub|2}}S↑
硫化水素は、おおくの場合に還元剤として働き、二酸化硫黄を還元して硫黄の単体を生じる。
: 2H{{sub|2}}S + SO{{sub|2}} → 2H{{sub|2}}O + 3S↓
多くの金属イオンと反応して硫化物の沈殿を作るため、金属イオンの分離や検出に多く用いられる。
: Fe{{sup|2+}} + H{{sub|2}}S → 2H{{sup|+}} + FeS↓
==== 二酸化硫黄 ====
'''二酸化硫黄'''(SO<sub>2</sub>)は腐卵臭をもつ無色の有毒な気体で、刺激臭がある。また、火山ガスや温泉などに含まれる。
酸性酸化物であり、水に溶けて弱酸性を示す。
: SO<sub>2</sub> + H<sub>2</sub>O ⇄ HSO<sub>3</sub><sup>-</sup> + H<sup>+</sup>
実験室では、銅を濃硫酸に加えて加熱するか、亜硫酸塩を希硫酸と反応させることにより得られ、下方置換で得る。
: Cu + 2H<sub>2</sub>SO<sub>4</sub> → CuSO<sub>4</sub> + 2H<sub>2</sub>O + SO<sub>2</sub>↑
: NaHSO<sub>3</sub> + H<sub>2</sub>SO<sub>4</sub> → NaHSO<sub>4</sub> + H<sub>2</sub>O + SO<sub>2</sub>↑
: Na<sub>2</sub>SO<sub>3</sub> + H<sub>2</sub>SO<sub>4</sub> → Na<sub>2</sub>SO<sub>4</sub> + H<sub>2</sub>O + SO<sub>2</sub>↑
工業的には、硫黄の燃焼により製造される。
: S + O<sub>2</sub> → SO<sub>2</sub>
二酸化硫黄は還元性があり、漂白作用がある。ただし、硫化水素のような強い還元剤がある場合は、酸化剤として作用する。
硫黄を含む物質は燃焼により二酸化硫黄を生じる。二酸化硫黄の水溶液は、弱い酸性を示す。
硫黄は石油や石炭に多く含まれているため、このような化石燃料を大量に燃焼させると、大気中に多量の二酸化硫黄が放出され、雨水に溶け込み、酸性雨の原因となる。
==== 硫酸 ====
'''硫酸'''(H{{sub|2}}SO{{sub|4}})は工業的に'''接触法'''(contact process)により、酸化バナジウムを主成分として触媒をもちいて、次のような工程で製造されている。
# 硫黄を燃焼させ、二酸化硫黄を作る。
#: S + O{{sub|2}} → SO{{sub|2}}
# 二酸化硫黄と酸素との混合気体を乾燥させ、酸化バナジウム(V{{sub|2}}O{{sub|5}})を触媒として反応させて三酸化硫黄を作る。
#: 2SO{{sub|2}} + O{{sub|2}} → 2SO{{sub|3}}
# 三酸化硫黄を濃硫酸に吸収させ、発煙硫酸とする。
#: SO{{sub|3}} + H{{sub|2}}O → H{{sub|2}}SO{{sub|4}}
# 発煙硫酸を希釈し、濃硫酸とする。
硫酸は、硫黄のオキソ酸である。通常はH{{sub|2}}SO{{sub|4}}の水溶液を硫酸と呼ぶ。硫酸は無色透明で粘性があり、密度の大きい重い液体である。濃度により性質が異なり、濃度の90%以上程度の濃いものを'''濃硫酸'''(concentrated sulfuric acid)といい、薄いものを'''希硫酸'''(diluted sulfuric acid)と呼ぶ。
濃硫酸を水で希釈することで希硫酸が得られる。希釈する際は水を入れたビーカーを水を張った水槽中に入れ、冷却しながら濃硫酸を静かに加えるようにする。これは、硫酸の水への溶解熱が非常に大きいためである。けっして、これを逆にしてはならない。もし、濃硫酸に水を加えるようにすると、溶解熱によって水が蒸発し濃硫酸が跳ねることがあり、たいへん危険である。
硫酸は沸点が高い、不揮発性の酸である。したがって、塩酸や硝酸のような揮発性の酸の塩と反応して塩を作り、揮発性酸が遊離する。
: NaCl + H{{sub|2}}SO{{sub|4}} → NaHSO{{sub|4}} + HCl↑
[[ファイル:Sulfuric_acid_burning_tissue_paper.jpg|右|サムネイル|200x200ピクセル]]
濃硫酸には次のような性質がある。
* 酸化作用: 金属を加え加熱すると、銅などのイオン化傾向の小さい金属を酸化するようになる。加熱した濃硫酸を熱濃硫酸と呼ぶこともある。
*: Cu + 2H{{sub|2}}SO{{sub|4}} → CuSO{{sub|4}} + 2H{{sub|2}}O + SO{{sub|2}}↑
* '''脱水作用'''(だっすいさよう、dehydration): 有機化合物の分子内に含まれている酸素原子や水素原子を、水分子H{{sub|2}}Oとして奪う。たとえば紙に濃硫酸を垂らすと、その部分から酸素と水素が奪われ、炭化する。
* 吸湿作用: 強い吸湿作用があり、乾燥剤として用いられる。
* 不揮発性:
希硫酸は強酸であり、多くの金属と反応して水素を発生する。一方濃硫酸は水をほとんど含まないため電離度が小さく、ほとんど酸性を示さない。
硫酸イオン(SO{{sub|4}}{{sup|2-}})はBa{{sup|2+}}やCa{{sup|2+}}と反応して白色沈殿を生じる。そのため、これらのイオンの検出・分離に用いられる。また日常生活においても、硫酸はカーバッテリーや非常用電源などとして使われる鉛蓄電池の電解液として用いられている。
[[ファイル:周期表-NP.png|右]]
== 15族元素 ==
'''窒素'''(N)、'''リン'''(P)はともに15族に属する非金属元素である。価電子を5つ持つ。
=== 窒素 ===
==== 単体 ====
'''窒素'''(N{{sub|2}})は常温常圧で無色無臭の気体である。窒素原子2つが三重結合して1つの分子を作っている、二原子分子の気体である。空気中に体積比でおよそ78%含まれており、工業的には液体空気の分留により生産される。液体の窒素は物質の冷却にしばしば用いられている。
=== アンモニア ===
'''アンモニア'''(NH{{sub|3}})は無色刺激臭の気体である。水に非常に溶けやすく、水溶液はアンモニア水と呼ばれ、弱塩基性を示す。
: <chem>NH3 + H2O -> NH4+ + OH^-</chem>
アンモニアの製法は、工業的には、高温高圧下で触媒を用いて窒素と水素を直接反応させる'''ハーバー・ボッシュ法'''により製造される。
: <chem>N2 + 3 H2 -> 2 NH3</chem>
実験室では、塩化アンモニウムと水酸化カルシウムの粉末を混合して加熱することにより得られる。気体は上方置換で捕集する。
: <chem>2NH4Cl + Ca(OH)2 -> CaCl2 + 2H2O + 2NH3 ^</chem>
アンモニアが生成することを確かめるには、[[高校化学 水素と貴ガス#ハロゲン化水素|濃塩酸]]を近づければよい。アンモニアと濃塩酸が反応して塩化アンモニウムの白煙を生じる。
: <chem>NH3 + HCl -> NH4Cl</chem>
水溶液中のアンモニウムイオン(NH{{sub|4}}{{sup|+}})を検出する際には、ネスラー試薬が用いられる。アンモニウムイオンがあれば黄色~褐色の沈殿を生じる。
アンモニアは、硝酸の原料、あるいは肥料の原料などとしても利用される。
=== 窒素酸化物 ===
窒素の酸化物は数種類あり、それらの総称を'''窒素酸化物'''と呼ぶ。主なものに'''一酸化窒素'''(NO)と'''二酸化窒素'''(NO{{sub|2}})がある。
; 一酸化窒素 (NO)
常温で無色の気体。水に溶けにくい。希硝酸に銅を加えることで発生する。空気中で酸化されやすいため、水上置換で捕集する。
: <chem>3Cu + 8HNO3 -> 3Cu(NO3)2 + 4H2O + 2NO ^</chem>
空気中での酸化の反応式は、
: <chem>2NO + O2 -> 2NO2</chem>
である。
; 二酸化窒素 (NO{{sub|2}})
[[ファイル:CopperReaction.JPG|右|300x300ピクセル]]
常温で褐色の気体。水に溶けやすく、反応して硝酸(<chem>HNO3</chem>)となる。
: <chem>3NO2 + H2O -> 2HNO3 + NO</chem>
実験室では濃硝酸に銅を加えることで発生する。水に溶けやすいので下方置換で捕集する。
: <chem>Cu + 4HNO3 -> Cu(NO3)2 + 2H2O + 2NO2 ^</chem>
空気中では一部で2分子が結合して四酸化二窒素(<chem>N2O4</chem>)となる。
: <chem>2NO2 <=> N2O4</chem>
窒素は常温では燃焼しない。すなわち酸素と反応して酸化物にならない。しかし、高温下では窒素と酸素が直接反応して窒素酸化物を生じる。また化石燃料の燃焼によっても窒素酸化物が生成する。そのため車のエンジンなどから窒素酸化物が発生し、大気中に放出されたものが雨水に吸収され、[[高校化学 水素と貴ガス#二酸化硫黄|硫黄酸化物]]と同様に酸性雨の原因となる。
==== 硝酸 ====
: (※ 範囲外 : ) 硝石(しょうせき)のつくり方がどこにも書いてないのはオカシイので、改革して硝石の作りかたの要点を書く。おおもとの原料は、糞尿である。尿などにふくまれるアンモニアが、土壌中でさまざまな物質と反応して、硝酸イオンを多く含む物質になる。この硝酸イオンを原料に、カリウムをふくむ灰汁(あく)とともに煮ると化学反応をして硝酸カリウムになるが、この硝酸カリウムこそが、自然界のいわゆる「硝石」(しょうせき)の主な原料である。中世や近世では、この硝石を中間材料として、火薬などを作っていた。(以上、範囲外。)
(↓ 以下、高校の範囲)
'''硝酸'''(<chem>HNO3</chem>)は窒素のオキソ酸であり、有名な強酸である。通常は<chem>HNO3</chem>の水溶液を硝酸と呼ぶ。濃度によりやや異なる性質を示し、濃度の濃いものを'''濃硝酸'''、薄いものを'''希硝酸'''と呼ぶ。硝酸は揮発性の酸であるため、実験室では硝酸塩に濃硫酸を加えることにより得られる。
: <chem>NaNO3 + H2SO4 -> NaHSO4 + HNO3</chem>
硝酸の製法は、工業的には、'''オストワルト法'''(Ostwald process)により製造される。次のような工程を経て硝酸が得られる。
# アンモニアと空気の混合気体を、触媒の白金 Pt に触れさせ、800℃〜900℃でアンモニアを酸化させて一酸化窒素とする。
#: <chem>4NH3 + 5O2 -> 4NO + 6H2O</chem>
# 一酸化窒素を空気中でさらに酸化して、二酸化窒素とする。
#: <chem>2NO + O2 -> 2NO2</chem>
# 二酸化窒素を水に吸収させ、硝酸とする。ここで発生する一酸化窒素は回収し、2に戻って再び酸化する。
#: <chem>3NO2 + H2O -> 2HNO3 + NO</chem>
硝酸は無色の水溶液であるが、光や熱により分解して二酸化窒素と酸素を生じる。そのため、保管のさいには、硝酸は褐色びんに入れ冷暗所で保存するようにする。
: <chem>4HNO3 -> 4NO2 + 2H2O + O2</chem>
強い酸化作用を持っており、水素よりイオン化傾向の小さい銅Cuや銀Agなどの金属も酸化して溶かす。また、イオン化傾向の大きい金属と反応して窒素酸化物を生じる。希硝酸からは一酸化窒素が、濃硝酸からは二酸化窒素がそれぞれ発生する。
(希硝酸)<chem>3Cu + 8HNO3 -> 3Cu(NO3)2 + 4H2O + 2NO ^</chem>
(濃硝酸)<chem>Cu + 4HNO3 -> Cu(NO3)2 + 2H2O + 2NO2 ^</chem>
また硝酸は強酸であり、イオン化傾向の大きい金属と反応して水素を発生する。
: <chem>2Al + 6HNO3 -> 2Al(NO3)3 + 3H2 ^</chem>
* 不動態
ただし、鉄 Fe やアルミニウム Al やニッケル Ni は、硝酸とは反応して水素を発生するが、濃硝酸に加えても溶けない。これは、金属の表面が酸化され、水に溶けにくい緻密な酸化被膜を生成して、内部が保護され、反応が内部まで進行しなくなるためである。このような状態を'''不動態'''(ふどうたい、passive state)という。
* その他
硝酸塩はほとんど水に溶ける。そのため、ガラス器具にこびりついた金属類を洗浄する際に用いられることも多い。
硝酸は火薬の製造に用いられる。
==== 窒素の応用 ====
たとえば、ポテトチップスなどのような油で揚げたスナック菓子の酸化防止のため、袋の中に窒素がつめられる。酸素があると、油が酸化してしまうが、代わりに何らかの気体をつめる必要があるので、窒素を袋の中につめているのである。(※ 2017年のセンター試験『化学基礎の』本試験で出題)
=== リン ===
=== 単体 ===
'''リン'''(P)は5種類の同素体を持つ。代表的なものは'''黄リン'''(P{{sub|4}})と'''赤リン''' (P{{sub|x}})の2つである。
'''黄リン'''(P{{sub|4}})は淡黄色のろう状固体であり、人体にきわめて有毒である。空気中で自然発火するため、水中に保存する。二硫化炭素(CS{{sub|2}})に溶ける。
[[ファイル:Red_phosphorus_in_a_tube_-_P_15_.jpg|右|150x150ピクセル]]
'''赤リン'''(P{{sub|x}})は赤褐色の粉末状固体であり、弱い毒性を持つ。二硫化炭素(CS{{sub|2}})に溶けない。赤リンはマッチの箱のすり薬として用いられている。
: ※ マッチでリンが使われてる部分は、マッチ棒'''ではなく'''、マッチ箱のほう。
=== 酸化物 ===
リンを空気中で燃焼させると、'''十酸化四リン'''(<chem>P4O10</chem>)の白煙を生じる。
: <chem>4P + 5O2 -> P4O10</chem>
十酸化四リンは白色の粉末状固体であり、強い吸湿性を示し、乾燥剤として用いられる。この吸湿性から、空気中に放置すると空気中の水蒸気を吸収して自分自身がその水に溶ける。この現象を'''潮解'''という。十酸化四リンは'''潮解性'''(ちょうかいせい、deliquescence)のある物質である。 十酸化四リンは水と反応して'''リン酸'''(<chem>H3PO4</chem>)となる。
: <chem>P4O10 + 6H2O -> 4H3PO4</chem>
リン酸は酢酸のような弱酸よりは強いが、塩酸のような強酸よりは弱い、中程度の強さの酸である。 リンは生物にとって必要不可欠な元素である。生物はリンの化合物であるATP(アデノシン三リン酸)にエネルギーを保存し、利用する。農業においても必要な元素で、リン酸肥料として用いられる。主なものとして、リン鉱石と硫酸と水との反応から得られるリン酸二水素カルシウム(<chem>Ca(H2PO4)2</chem>)と、硫酸カルシウム(<chem>CaSO4</chem>)との混合物である'''過リン酸石灰'''がある。 この過リン酸石灰が、リン肥料の主成分である。 リン酸カルシウム <chem>Ca3(PO4)2</chem> およびヒドロキシアパタイト <chem>Ca5(PO4)3(OH)</chem> は、動物の骨や歯の主成分である。
== 14族元素 ==
[[ファイル:周期表-CSi.png|右]]
'''炭素''' C 、'''ケイ素''' Si はともに14族に属する元素である。価電子を4個持つ。
=== 炭素 ===
'''炭素''' (C) は生物を構成する重要な元素であり、多くの化学製品にも含まれている。炭素を含む物質は一般に'''有機物'''と呼ばれる。有機化合物については別の章で詳しく学ぶ。この節では、炭素の単体、一酸化炭素、二酸化炭素について説明する。
=== 単体 ===
炭素の単体は共有結合の結晶であり、結合の仕方によっていくつかの同素体が存在する。
; ダイヤモンド (C)
[[ファイル:Apollo_synthetic_diamond.jpg|左|サムネイル|150x150ピクセル|ダイヤモンド]]
[[ファイル:DiamantEbene01.png|右|サムネイル|150x150ピクセル|ダイヤモンドの構造]]
'''ダイヤモンド'''は無色の固体で、1つの炭素原子が4つの炭素原子と正四面体の頂点方向に共有結合し、それが多数連結して結晶を形成している。共有結合の結晶であるため、非常に融点・沸点が高く、地球上で最も硬い物質として知られている。電気は通さないが、熱はよく伝える。宝石としての利用のほか、工業的には研磨剤としても使われる。光の屈折率が大きい。
{{-}}
; 黒鉛 (C)
[[ファイル:GraphiteUSGOV.jpg|左|サムネイル|150x150ピクセル|黒鉛]]
[[ファイル:Graphit_gitter.png|右|サムネイル|187x187ピクセル|グラフェン黒鉛(グラファイト)の一層をグラフェンと呼ぶ。上図ではグラフェンが4層描かれている。]]
'''黒鉛'''は金属光沢のある黒色の固体で、炭素原子が正六角形の層状構造を持っている。各層は3つの共有結合によって形成され、残りの価電子は'''自由電子'''として層間を移動する。この自由電子の存在により、黒鉛は電気をよく通し、熱伝導性も高い。層と層の結合は弱いため、黒鉛は柔らかく、鉛筆の芯や電気分解用の電極として使用される。
{{-}}
; フラーレン(C60、C70など)
[[ファイル:C60a.png|右|サムネイル|140x140ピクセル|フラーレン]]
'''フラーレン'''は茶褐色の固体で、多数の炭素原子が球状に結合している。右図はC60フラーレンのモデルで、炭素原子が60個、サッカーボール状に結合している。20世紀後半に発見された物質で、現在も研究が進んでいる。純粋なフラーレンは電気を通さないが、アルカリ金属を添加すると超伝導性を示すことがある。有機溶媒に溶ける性質を持つ。
{{-}}
; グラフェン
'''グラフェン'''は炭素原子が六角形に配列した一層のシート状の物質で、非常に強く柔軟であり、電気や熱を効率よく伝える。
{{-}}
; カーボンナノチューブ
'''カーボンナノチューブ'''(Carbon Nanotube、CNT)は、炭素原子が六角形に結びついたグラフェンシートを丸めて筒状にしたナノ材料。非常に高い強度と優れた電気・熱伝導性を持つ。
{{-}}
; 無定形炭素
[[ファイル:Binchotan_(charcoal).jpg|サムネイル|180x180ピクセル|活性炭]]
炭素の同素体とは異なり、黒鉛や[[高等学校化学I/炭化水素|炭化水素]]が不規則に結合し、結晶構造を明確に持たない固体がある。これを'''無定形炭素'''(amorphous carbon)と呼ぶ。木炭やコークスが代表的で、この中でも'''活性炭'''は多孔質であり、さまざまな物質を吸着する性質があるため、消臭剤などに用いられている。
{{-}}
=== 酸化物 ===
炭素が空気中で燃焼すると、酸化物が生成される。
; 一酸化炭素 (CO)
炭素や有機化合物が空気中で不完全燃焼すると、'''一酸化炭素''' (CO) が生じる。一酸化炭素は無色無臭の気体で、非常に有毒である。吸入すると血液中のヘモグロビンと結合し、酸素の運搬を阻害する。水には溶けにくい。
実験室では、ギ酸を濃硫酸で脱水して一酸化炭素を生成できる。
: <chem>HCOOH -> H2O + CO ^</chem>
空気中では青白い炎を上げて燃焼し、二酸化炭素を生じる。
: <chem>2CO + O2 -> 2CO2</chem>
一酸化炭素は還元性を持ち、金属酸化物を還元して単体にする性質がある。
: <chem>CuO + CO -> Cu + CO2</chem>
; 二酸化炭素 (CO2)
炭素や有機化合物が空気中で完全燃焼すると、'''二酸化炭素''' (CO2) が生じる。実験室では炭酸カルシウムに塩酸を加えて発生させることができる。
: <chem>CaCO3 + 2HCl -> CaCl2 + H2O + CO2 ^</chem>
工業的には、石灰石の熱分解によって二酸化炭素が得られる。
二酸化炭素は無色無臭の気体で、毒性はない。酸性酸化物であり、水に溶けると炭酸水素イオン <chem>HCO3^-</chem> を生成し、弱酸性を示す。
: <chem>CO2 + H2O <=> HCO3^- + H^+</chem>
また、塩基と反応して塩を作る。
: <chem>CO2 + 2NaOH -> Na2CO3 + H2O</chem>
二酸化炭素を'''石灰水'''(水酸化カルシウム水溶液)に通すと、炭酸カルシウムが生成され白濁する。この反応は二酸化炭素の検出に用いられる。
: <chem>Ca(OH)2 + CO2 -> H2O + CaCO3 v</chem>
[[ファイル:Dry_Ice_Pellets_Subliming.jpg|右|サムネイル|150x150ピクセル|ドライアイス]]
二酸化炭素の固体は分子結晶で、'''ドライアイス'''として知られ、冷却剤として使用される。常圧下で'''昇華性'''を持ち、液体にならずに直接気体となる。
二酸化炭素は生物の活動によって放出・吸収される。呼吸では、酸素を吸収して糖類と反応し、エネルギーを取り出す過程で二酸化炭素が生成される。
: <chem>C6H12O6 + 6O2 -> 6H2O + 6CO2</chem>
逆に、植物は光のエネルギーを用いて二酸化炭素を吸収し、糖類を合成する。この過程を光合成という。
: <chem>6CO2 + 6H2O -> C6H12O6 + 6O2</chem>
また、微生物の中には糖類を発酵させ、エネルギーを得るものがあり、その過程で二酸化炭素が生じる。
: <chem>C6H12O6 -> 2C2H5OH + 2CO2</chem>
=== ケイ素 ===
'''ケイ素''' Si は酸素の次に多く地殻中に含まれている元素である。水晶などの鉱物にも含まれている。半導体の主な原料であり、工業的に重要な元素となっている。
=== 単体 ===
[[ファイル:SiliconCroda.jpg|右|サムネイル|200x200ピクセル|ケイ素]]
'''ケイ素''' Si は金属光沢をもつ銀灰色の固体である。ケイ素は金属光沢をもつが、しかし金属ではない。
光や紫外線、赤外線などは電磁波であるが、ケイ素は電磁波の反射率が可視光(波長:780nm〜380nm)のあたりだけ、反射率が高いため、人間の目で見た場合に、ケイ素は金属光沢がるように見える。(※ 東京書籍の教科書で、コラムで紹介されている。)
[[ファイル:Monokristalines_Silizium_für_die_Waferherstellung.jpg|左|サムネイル|294x294ピクセル|ケイ素の単結晶電子部品の製造などに用いられる。これを薄く切断してシリコンウェハーにする。]]
ケイ素は天然には単体として存在せず、酸化物を還元することにより製造される。単体は共有結合の結晶であり、ダイヤモンドと同様の構造でケイ素原子が結合する。そのためダイヤモンド同様融点・沸点は高く、固い結晶を作る。導体と不導体の中間程度の電気抵抗を持つ半導体で、太陽電池やコンピュータ部品に用いられる。
シリコンの結晶に、わずかにリンやホウ素を加えたものは、電気をよく通すものになる。これらの材料(シリコンの結晶に、わずかにリンやホウ素を加えたもの)も「半導体」という。(※ 実教出版、数研出版の教科書などで紹介している。) (※ 『物理II』で詳しく習う。『[[高等学校物理/物理II/電気と磁気]]』などの単元で扱う。)
* その他
[[ファイル:Silicon-unit-cell-3D-balls.png|サムネイル|80x80ピクセル|ケイ素の単体の結晶構造]]
ケイ素の結晶構造は、ダイヤモンドの結晶構造と同じ。(← 高校の範囲。)
{{-}}{{コラム|(※ 範囲外: )シリセン|シリセンは、ケイ素(シリコン)原子が六角形に配列し、グラフェンに似た二次元シート構造を持つ新しい物質である。シリコンは通常、三次元のダイヤモンド構造を取るが、シリセンではケイ素原子が平面状に並び、蜂の巣状の構造を作り出す。このため、シリセンは「シリコン版グラフェン」とも呼ばれることがある。
シリセンは、グラフェンと同様に優れた電子的特性を持ち、次世代のエレクトロニクス材料として注目されている。特に、シリコンベースの既存の半導体技術との互換性が期待されており、ナノテクノロジーやトランジスタ、センサーなどの分野での応用が研究されている。
ただし、シリセンはグラフェンよりも安定性が低く、空気中では速やかに酸化されるため、特定の条件下でしか安定した形で存在できない。一般的には金属基板の上に成長させることで安定させる技術が使われている。
シリセンはその特性を利用して、エレクトロニクスやスピントロニクス、さらにはエネルギー材料などの広い分野で革新的な技術を生み出す可能性があるが、まだ研究段階にあるため、今後の発展が期待される。}}{{-}}
=== 二酸化ケイ素 ===
[[ファイル:Quartz_(USA).jpg|右|サムネイル|180x180ピクセル|水晶]]
'''二酸化ケイ素'''(<chem>SiO2</chem>)は自然界で石英として存在する。透明な石英の結晶は「水晶」と呼ばれ、宝石として用いられる。また、砂状のものはケイ砂と呼ばれ、ガラスの原料となる。
二酸化ケイ素は共有結合の結晶である。ケイ素原子と酸素原子との結合は非常に強く、固く安定な結晶を作る。また、強い結合のためか、融点も高く、塩酸にも溶けない。しかし、フッ化水素酸とは反応して溶ける。
: <chem>SiO2 + 6HF -> H2SiF6 + 2H2O</chem>
[[ファイル:Silica_gel.jpg|右|150x150ピクセル]]
また、二酸化ケイ素は酸性酸化物であり、塩基と反応して塩を生じる。たとえば水酸化ナトリウムと反応して、ケイ酸ナトリウム(<chem>Na2SiO3</chem>)を生じる。
: <chem>SiO2 + 2NaOH -> Na2SiO3 + H2O</chem>
これに水を加えて加熱すると、水あめ状の'''水ガラス'''(water glass)が得られる。また、水ガラスに塩酸を加えると、ゲル状のケイ酸が得られる。
: <chem>Na2SiO3 + 2HCl -> H2SiO3 + 2NaCl</chem>
※ 実際は組成が安定せず、できるのが <chem>H2SiO3</chem> のみとは限らない
このとき塩化ナトリウムが副生成物としてできるので、塩化ナトリウムを水洗して除き、のこったケイ酸を加熱乾燥すると'''シリカゲル'''(silica gel)が得られる。シリカゲルは多孔質で分子を吸着するため、乾燥剤や吸着剤として用いられる。
* 発展: 水晶振動子 (※ ほぼ範囲外)
電子工業における水晶の応用として、'''水晶振動子'''としての利用がある。
水晶に電圧を掛けると、一定の周期で振動することから、時計などの発振器として利用されている。
[[Category:高等学校化学]]
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== 水素と貴ガス ==
=== 水素 ===
[[ファイル:周期表-H.png|right]]
[[File:H,1.jpg|150px|right]]
'''水素'''は、単体として宇宙で最も多く存在する元素である。地球上では水 H<sub>2</sub>O として最も多く存在する。単体 H<sub>2</sub> は常温常圧で無色無臭の気体である。
;製法
工業的には、石油や天然ガスを高温水蒸気と反応させて、得られる。他には、純粋な水素を作る場合は、水を電気分解する。
実験室では、塩酸や希硫酸などの強酸に、亜鉛などの金属を加える。水素は水に溶けにくいため、水上置換で捕集する。
;主な性質・反応
* 空気中で容易に燃焼し、水になる。酸素との混合気体は爆発的に燃焼する。
*: 2H<sub>2</sub> + O<sub>2</sub> → 2H<sub>2</sub>O
* 高温では還元性をもち、高温で金属などの酸化物を還元する。
*: CuO + H<sub>2</sub> → Cu + H<sub>2</sub>O
水素は、アンモニア、塩化水素、メタノールなどの原料である。
=== 貴ガス ===
[[File:周期表-希ガス.png|right]]
'''貴ガス'''(noble gas)<ref>希ガス(rare gas)とも</ref>は、18族元素のヘリウム He, ネオン Ne, アルゴン Ar, クリプトン Kr, キセノン Xe, ラドン Rn の総称である<ref>18族元素にはオガネソン Og もあるがこの元素の性質はあまり解明されていない。</ref>。
18族元素は価電子をもたないため、他の原子と結合したり、イオンになることがほとんどない。したがって、化学反応を起こして化合物となることがほとんどない。また、単体の気体として、原子1個で1つの分子を形成している。このような分子を'''単原子分子'''と呼ぶ。
貴ガスには次のような物質がある。これらはいずれも無色無臭で、常温常圧で気体である。また、いずれも融点および沸点が低い。
* '''ヘリウム''' (He): 風船や飛行船を浮かせるために用いられる。また、すべての物質の中で、融点がもっとも低いので、超伝導など極低温の実験のさいの冷媒に液体ヘリウムが用いられる。
* '''ネオン''' (Ne): ネオンサインなどに用いられる。
* '''アルゴン''' (Ar): 溶接するときの酸化防止ガスに用いられる。空気中に0.93%存在する。
* '''クリプトン''' (Kr): 電球などに用いられる。
* '''キセノン'''(Xe): カメラのストロボなどに用いられる。
* ラドン (Rn): 放射能があり、放射線治療などに用いられる。
{|align="center" style="border:solid #aaffaa 1px;"
|[[File:He,2.jpg|100px]]||[[File:Ne,10.jpg|100px]]||[[File:Ar,18.jpg|100px]]||[[File:Kr,36.jpg|100px]]||[[File:Xe,54.jpg|100px]]
|-
|style="text-align:center"|ヘリウム
|style="text-align:center"|ネオン
|style="text-align:center"|アルゴン
|style="text-align:center"|クリプトン
|style="text-align:center"|キセノン
|}
貴ガスは原子単体で安定なため、普通は化合物にならない。貴ガスに圧力を低くしてガラス管に封入し電圧をかけることで、それぞれ異なった色の光を放つ。そのため、電球やネオンサインとして用いられるものが多い。
{|align="center" style="border:solid #aaffaa 1px;"
|[[File:HeTube.jpg|100px]]||[[File:NeTube.jpg|100px]]||[[File:ArTube.jpg|100px]]||[[File:KrTube.jpg|100px]]||[[File:XeTube.jpg|100px]]
|-
|style="text-align:center"|ヘリウム
|style="text-align:center"|ネオン
|style="text-align:center"|アルゴン
|style="text-align:center"|クリプトン
|style="text-align:center"|キセノン
|}
=== エキシマ(発展) ===
アルゴン気体とフッ素気体をつめた放電管に放電をすると、不安定なアルゴンフッ素 ArF (エキシマ)が一時的に生成し、それが分解する際に波長197 nmの紫外線を放出する。
この光は、半導体製造の際の光化学反応の光源に使われている。また、キセノンでもハロゲンとのエキシマによってレーザー光が放出されることが知られている。
=== 貴ガスの化合物 ===
貴ガスは、反応性が低く化合物を作らないと考えられていたが、1960年代に、<chem>XePtF6</chem> や <chem>XeF4</chem> などキセノンの化合物の合成に成功した。その後も貴ガスの化合物は合成されたが、ネオンの化合物は未だ合成に成功していない。
キセノンとフッ素ガスを混合した気体に放電または熱を加えてできた、二フッ化キセノン XeF<sub>2</sub> や四フッ化キセノン XeF<sub>4</sub> や六フッ化キセノン XeF<sub>6</sub> の固体は無色である。
周期表の17族に属する、フッ素 F、塩素 Cl、臭素 Br、ヨウ素 I、アスタチン At を'''ハロゲン'''という。
ハロゲンの原子は最外殻に価電子を7つ持っている。ハロゲンは1価の陰イオンになりやすい。
このためハロゲンは化合物をつくりやすい。そのため、天然では、ハロゲンは鉱物(ホタル石 CaF<sub>2</sub> 、岩塩 NaCl)として存在している場合も多い。または、海水中に陰イオンとしてハロゲンが存在している場合が多い。
== ハロゲン ==
[[ファイル:周期表-ハロゲン.png|右]]
=== ハロゲンの単体の性質 ===
ハロゲンの単体はいずれも'''二原子分子'''で有色、毒性である。
沸点(bp)・融点(mp)は、原子番号の大きいものほど高い。
ハロゲンの単体は酸化力が強い。酸化力の強さは原子番号が小さいほど大きくなる。つまり酸化力の強さは、
<chem>F2 > Cl2 > Br2 > I2</chem>
である。
たとえば、ヨウ化カリウム水溶液に塩素を加えると、ヨウ素は酸化されて単体となる。
<chem>2KI + Cl2 -> 2KCl + I2 </chem>逆に、塩化カリウム水溶液にヨウ素を加えても、ヨウ素よりも塩素のほうが酸化力が強いため、反応は起こらない。
また、ハロゲンの各元素ごとの酸化力の違いは、水や水素との反応にも関わる。
最も酸化力のつよいフッ素は、水と激しく反応し、酸素を発生する。
:2F<sub>2</sub> + 2H<sub>2</sub>O → 4HF + O<sub>2</sub>
{|border=1 cellspacing=0 align=center text-align=center style="text-align:center"
|- style="background:silver"
! !! フッ素 F<sub>2</sub> !! 塩素 Cl<sub>2</sub> !! 臭素 Br<sub>2</sub> !! ヨウ素 I<sub>2</sub>
|-
| rowspan="2" | 色・状態
| [[File:F,9.jpg|180px]] || [[File:Cl,17.jpg|180px]] || [[File:Br,35.jpg|180px]] || [[File:I,53.jpg|170px]]
|-
|| 淡黄色・気体 || 黄緑色・気体 || 赤褐色・液体 || 黒紫色・固体
|-
| 融点 (℃) || -220 || -101 || -7 || 114
|-
| 沸点 (℃) || -138 || -34 || 59 || 184
|-
| 酸化力
| colspan="4" | 大 ←――――――――――――――――――――――――――――――――――→ 小
|-
| rowspan="2" | 水との反応 || 激しく反応して<br>酸素 O<sub>2</sub> が発生 || 一部が反応<br>HCl などを生じる || rowspan="2"| 塩素より反応は弱いが、<br>似た反応をする || rowspan="2" | 水に反応しにくく、<br>水に溶けにくい
|-
|| 2H<sub>2</sub>O + 2F<sub>2</sub><br />→ 4HF + O<sub>2</sub> || 2H<sub>2</sub>O + Cl<sub>2</sub> <br />⇄ HCl + HClO
|-
| rowspan="2" | 水素との反応 || 低温・暗所でも<br />爆発的に反応 || 光を当てることで<br />爆発的に反応 || 高温にすると反応 || 高温にすると一部が反応
|}
==== '''フッ素 F₂''' ====
常温常圧下では淡黄緑色の気体である。
酸化力が非常に強く、様々な物質と激しく反応する。ガラスでさえフッ素を吹き付けると燃えるように反応するため扱いが難しい。
水や水素との反応物であるフッ化水素(HF)が水に溶けたフッ化水素酸(HFaq)はガラスを侵すため、ポリエチレン容器に入れ保管する。
==== 塩素 ====
塩素 Cl<sub>2</sub> は常温常圧で黄緑色の有毒な気体である。
==== 製法 ====
工業的:塩化ナトリウム水溶液の電気分解でつくる。
実験室的:酸化マンガン(IV)に濃塩酸を加え、加熱する。
: <chem>MnO2 + 4HCl -> MnCl2 + 2H2O + Cl2 ^</chem>
:なお、この反応では塩素と同時に水も生成する。さらに、濃塩酸には[[#ハロゲンの化合物|次節]]に見るように揮発性がある。したがって、この反応により得られる気体は純粋な塩素ではなく、水や塩化水素を少量含んでいる。それらを取り除くため、この気体を水と濃硫酸に順番に通す。まず水に通すことで、揮発した塩化水素が吸収される。次いで濃硫酸に通すことで、濃硫酸の吸湿作用により気体中の水が吸収され、純粋な塩素を得ることができる。なお、この水・濃硫酸に通す順番を逆にしてはならない。先に濃硫酸に通した後水に通しても、得られる気体の中には最後に通した水から蒸発した水蒸気が含まれているためである。塩素は空気よりも重いため、濃硫酸を通したあとの塩素を、下方置換で集める。
塩化ナトリウム、酸化マンガン(IV)に濃硫酸を加えて加熱する。
<chem>2NaCl + 3H2SO4 + MnO2 -> MnSO4 + 2NaHSO4 + 2H2O + Cl2 ^</chem>
さらし粉に塩酸を加える。
<chem>CaCl(ClO).H2O + 2HCl -> CaCl2 + 2H2O + Cl2 ^</chem>
==== 性質 ====
塩素は、水に少し溶けて、その一部が'''次亜塩素酸''' <chem>HClO</chem> になる。
:<chem>Cl2 + H2O -> HCl + HClO</chem>
次亜塩素酸は、強い酸化作用がある。塩素 Cl<sub>2</sub> の水溶液を'''塩素水'''(chlorine water)という。
塩素水および次亜塩素酸は、漂白剤や殺菌剤として水道やプールの水の殺菌などに広く用いられている。
: <chem>HClO + H^+ + 2e^- -> H2O + Cl^-</chem>
* さらし粉
水酸化カルシウムと塩素を反応させると、さらし粉(主成分:CaCl(ClO)・H<sub>2</sub>O)ができる。
さらし粉または高度さらし粉(主成分:Ca(ClO)<sub>2</sub>・2H<sub>2</sub>O)に塩酸を加えることによっても塩素の単体を得ることができる。
: CaCl(ClO)・H<sub>2</sub>O + 2HCl → CaCl<sub>2</sub> + 2H<sub>2</sub>O + Cl<sub>2</sub>↑
: Ca(ClO)<sub>2</sub>・2H<sub>2</sub>O + 4HCl → CaCl<sub>2</sub> + 4H<sub>2</sub>O + 2Cl<sub>2</sub>↑
工業的には塩化ナトリウム水溶液の電気分解を用いた、イオン交換膜法により製造される。
高度さらし粉は、漂白剤や殺菌剤として利用される。
:(※ 範囲外: ) いわゆる「カルキ」とは、この、さらし粉のこと。ドイツ語のクロールカルキを略してカルキと読んでいる。
* その他
塩素はさまざまな金属と反応して塩化物となる。たとえば、単体の塩素の中に加熱した銅線を入れると、煙状の塩化銅(II) CuCl<sub>2</sub> を生成する。
: Cu + Cl<sub>2</sub> → CuCl<sub>2</sub>
==== ヨウ素 ====
ヨウ素(I<sub>2</sub>)は常温常圧で黒紫色の固体である。'''昇華性'''があり、加熱すると固体から液体にならず直接気体となる。これを利用して、固体のヨウ素の純度を上げることができる。1リットルビーカーに不純物を含むヨウ素の固体を入れ、ガスバーナーで加熱する。ビーカーの上部には冷水を入れた丸底フラスコを置いておく。加熱によりヨウ素のみが気体となり、上昇してフラスコの底部付近で冷やされて固体に戻る。そのため、フラスコ底部に純度の高いヨウ素の針状結晶が析出する。
ヨウ素は水に溶けにくいが、エーテルなどの有機溶媒にはよく溶ける。また、ヨウ化カリウム水溶液にもよく溶けて褐色の溶液となる。<!--極性は化学IIなのでここでは触れない-->
デンプン水溶液にヨウ素を溶かしたヨウ化カリウム水溶液を加えると、青紫色を呈する。このようにデンプンにヨウ素を作用させて青紫色となる反応を'''ヨウ素デンプン反応'''と呼ぶ。これにより、ヨウ素やデンプンの検出ができる。
ヨウ素デンプン反応を用いた試薬に、ヨウ化カリウムデンプン紙がある。これは、ろ紙にデンプンとヨウ化カリウムを含ませたものであり、酸化力の強い物質の検出に用いられる。酸化力の強い物質がある場合、ヨウ化カリウムは酸化されてヨウ素の単体となる。
: 2I<sup>-</sup> → I<sub>2</sub> + e<sup>-</sup>
このヨウ素がデンプンに作用して紫色から青紫色に変化する。
=== ハロゲンの化合物 ===
==== ハロゲン化水素 ====
ハロゲンは水素と化合して'''ハロゲン化水素'''となる。いずれも無色刺激臭の気体である。
また、ハロゲン化水素の水溶液は酸性を示す。
{|border=1 cellspacing=0 align=center text-align=center style="text-align:center"
|- style="background:silver"
! colspan="2" | 名称 !! フッ化水素 !! 塩化水素 !! 臭化水素 !! ヨウ化水素
|-
| colspan="2" | 組成式 || HF || HCl || HBr || HI
|-
| colspan="2" | 沸点(℃) || 20 || -85 || -67 || -35
|-
| rowspan="2" | 水溶液 || 名称 || フッ化水素酸 || 塩酸 || 臭化水素酸 || ヨウ化水素酸
|-
| 酸の強さ || '''弱酸''' || 強酸 || 強酸 || 強酸
|}
ハロゲン水溶液の酸性は、フッ化水素酸だけが弱酸である。それ以外は強酸である。
==== フッ化水素(HF) ====
<!--沸点の高さ・弱酸となる理由については触れない; 極性・水素結合は化学IIで扱うため-->
フッ化水素は、ホタル石(主成分 CaF<sub>2</sub>)に濃硫酸をくわえて加熱することで、得られる。
: CaF<sub>2</sub> + H<sub>2</sub>SO<sub>4</sub> → 2HF + CaSO<sub>4</sub>
フッ化水素は水によく溶け、弱酸の'''フッ化水素酸'''(hydrofluoric acid)となる。
フッ化水素酸は、ガラスの主成分である二酸化ケイ素 SiO<sub>2</sub>)を溶かすため、保存するときはポリエチレン容器に保存する。
: SiO<sub>2</sub> + 6HF → H<sub>2</sub>SiF<sub>6</sub> + 2H<sub>2</sub>O
工業の用途として、ガラスの表面処理や、くもりガラスの製造に、フッ化水素酸が用いられる。
フッ化水素だけ沸点が他のハロゲン化水素よりも高いが、この原因は、フッ化水素では水素結合が生じるからである。(← ※ 実教出版、数研出版、第一学習社の教科書で紹介。)
フッ化水素酸だけ弱酸である理由も、同様に水素結合によって電離度が低くなっているためである。(← ※ 実教出版、第一学習社の教科書の見解。)
==== 塩化水素(HCl) ====
塩化水素の、実験室での製法は、塩化ナトリウムに濃い硫酸を加え加熱することで得られる。
: NaCl + H<sub>2</sub>SO<sub>4</sub> → NaHSO<sub>4</sub> + HCl↑
[[File:Hydrochloric acid ammonia.jpg|right|200px|thumb|塩化水素とアンモニアの反応 <br> 白煙( NH<sub>4</sub>Cl )を生じる]]
塩化水素は水によく溶け、その水溶液は'''塩酸'''(hydrochloric acid)である。濃度の濃いものは濃塩酸、薄いものは希塩酸と呼ばれる。塩酸は強酸性を示し、多くの金属と反応して水素を発生する。
: 2HCl + Zn → ZnCl<sub>2</sub> + H<sub>2</sub>↑
また、強酸性であることから、弱酸の塩と反応して塩を生じ、弱酸を遊離させる。
: HCl + NaHCO<sub>3</sub> → NaCl + H<sub>2</sub>O + CO<sub>2</sub>
塩酸には揮発性があり、常温で一部が気体となる。そのため、アンモニアのついたガラス棒を近づけると、塩酸の気体とアンモニアとが触れて反応し、塩化アンモニウム NH<sub>4</sub>Cl が生じる。この反応は、塩化水素やアンモニアの検出に用いられる。
: HCl + NH<sub>3</sub> → NH<sub>4</sub>Cl
==== ハロゲン化銀・ハロゲン化鉛 ====
ハロゲン化銀は、フッ化銀を除いて、一般に水に溶けにくい。このため、ハロゲンの化合物の水溶液に、硝酸銀をくわえると、塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀などのハロゲン化銀が沈殿する。
{|border=1 cellspacing=0 align=center text-align=center style="text-align:center"
|- style="background:silver"
! 名称 !! フッ化銀 !! 塩化銀 !! 臭化銀 !! ヨウ化銀 !! !! フッ化鉛(II) !! 塩化鉛(II) !! 臭化鉛(II) !! ヨウ化鉛(II)
|-
| 組成式 || AgF || AgCl || AgBr || AgI || || PbF<sub>2</sub> || PbCl<sub>2</sub> || PbBr<sub>2</sub> || PbI<sub>2</sub>
|-
| 色 || 黄色 || 白色 || 淡黄色 || 黄色 || || 白色 || 白色 || 白色 || 黄色
|-
| 水への溶けやすさ || 溶けやすい || 溶けにくい || 溶けにくい || 溶けにくい || || 溶けにくい || 溶けにくい || 溶けにくい || 溶けにくい
|-
| 熱水への溶けやすさ || 溶けやすい || 溶けにくい || 溶けにくい || 溶けにくい || || || 溶ける || 溶ける || 溶ける
|}塩化水素(HCl)
塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀には感光性があり、生じた沈澱に光を当てると銀が遊離する。また、これらはいずれもチオ硫酸ナトリウム水溶液によく溶ける。アンモニア水への溶けやすさは異なり、塩化銀はよく溶け、臭化銀も一部溶けるが、ヨウ化銀は溶けない。
==== 塩素のオキソ酸 ====
塩素のオキソ酸には、酸化数の異なる次の4つがある。
{|border=1 cellspacing=0 align=center text-align=center style="text-align:center"
|- style="background:silver"
! 名称 !! width=100px | 次亜塩素酸 !! width=100px | 亜塩素酸 !! width=100px | 塩素酸 !! width=100px|過塩素酸
|-
| 化学式 || HClO || HClO<sub>2</sub> || HClO<sub>3</sub> || HClO<sub>4</sub>
|-
| 性質 || 殺菌・漂白作用 || 殺菌・漂白作用 || 強力な酸化剤 || 塩は爆発性
|}
;さらし粉
さらし粉(化学式: CaCl(ClO)・H<sub>2</sub>O または Ca(ClO)<sub>2</sub>)は、次亜塩素酸イオンを含むため、その酸化作用により漂白剤や殺菌剤として広く用いられている。水酸化カルシウムと塩素を反応させることで得られる。
: Ca(OH)<sub>2</sub> + Cl<sub>2</sub> → CaCl(ClO)・H<sub>2</sub>O
;(※ 発展) 塩素酸 および 塩素酸塩
::(※ 検定教科書では「酸素」の単元で習う場合が多い。)
塩素酸HClO<sub>3</sub>は不安定な物質だが、カリウムやナトリウムの塩は安定で、強い酸化剤である。塩素酸カリウムKClO<sub>3</sub>は酸化マンガン(IV)を触媒として用いて加熱すると酸素を発生するため、花火やマッチの火薬中に燃焼を助けるため含まれる。
: 2KClO<sub>3</sub> → 2KCl + 3O<sub>2</sub>↑
==== 範囲外? : ハロゲン化物と日用品 ====
ハロゲンの化合物のなかには、日用品の中に広く用いられている物もある。たとえば、フッ素化合物の一つ、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン)はフライパンの表面に薄く塗られ、焦げ付きを防ぐ役割を果たしている。また、臭化銀はその感光性を利用して、写真のフィルムに用いられている。塩素は多くのビニル・プラスチック製品に含まれている。また、ヨウ素は消毒剤や うがい薬 に用いられている。
==== 範囲外? : 「まぜるな危険」 ====
洗剤の「まぜるな危険」の化学反応については、啓林館の教科書を除いて、検定教科書では書かれてない。
== 16族元素 ==
[[ファイル:周期表-OS.png|右]]
16族に属する'''酸素'''(O)、'''硫黄'''(S)はともに価電子を6つ持ち、2価の陰イオンになる。ともに単体は同素体を持つ。
=== 酸素の単体 ===
酸素の単体には、原子2個で1つの分子を作っている'''酸素'''(O<sub>2</sub>)と、原子3個で1つの分子を作っている'''オゾン'''(O<sub>3</sub>)がある。いずれも常温では気体であるが、大きく異なった性質を示す。
酸素は空気中で約21%ふくまれる。また、酸素は地殻を構成する主な元素でもあり、およそ半分は酸素である。
==== 酸素 ====
[[ファイル:Dioxygen-3D-vdW.png|右|サムネイル|100x100ピクセル|酸素 O<sub>2</sub> 分子]]
'''酸素'''(O<sub>2</sub>)は常温で無色無臭の気体である。
工業的な製法は、液体空気の分留によって酸素を得る。
実験室で酸素を得るには、過酸化水素水に酸化マンガン(IV)を加えればよい。この反応で酸化マンガン(IV)は触媒として働き、過酸化水素が分解して酸素を発生する。
: 2H<sub>2</sub>O<sub>2</sub> → 2H<sub>2</sub>O + O<sub>2</sub>↑
また、塩素酸カリウムと酸化マンガン(IV)を混合して加熱してもよい。この反応でもやはり酸化マンガン(IV)は触媒として働く。
: 2KClO<sub>3</sub> → 2KCl + 3O<sub>2</sub>↑
==== オゾン ====
[[ファイル:Ozone-3D-vdW.png|右|サムネイル|100x100ピクセル|オゾン O<sub>3</sub> 分子]]
'''オゾン'''(O<sub>3</sub>)は、酸素中で無声放電を行うか、強い紫外線を当てることで生成する。
: 3O<sub>2</sub> ⇄ 2O<sub>3</sub>
オゾン O<sub>3</sub> は分解しやすく、分解のさいに強い酸化作用を示す。オゾンは淡青色・特異臭の気体で、人体には有害である。オゾンの分子は、酸素原子が3つ結合して1つの分子を作っている。
また、オゾンの酸化作用は、ヨウ化カリウムデンプン紙を青変する。
: 2KI + O<sub>3</sub> + H<sub>2</sub>O → 2KOH + O<sub>2</sub> + I<sub>2</sub>
このためオゾンの検出法は、水で湿らせたヨウ化カリウムデンプン紙でオゾンを検出できる。
大気中には上空25000mほどにオゾンが豊富に含まれる層があり、オゾン層と呼ばれる。オゾン層は人体に有害な紫外線を吸収する働きがあるが、近年このオゾン層が南極付近で局所的に薄くなっており(オゾンホール)、環境問題として取り上げられることが多くなっている。
=== 酸素の化合物 ===
酸素の化合物は一般に'''酸化物'''と呼ばれる。酸素はあらゆる物質と化合することができ、一般に金属元素とはイオン結合、非金属元素とは共有結合による酸化物を作る。
酸化物は、酸や塩基との反応のしかたから3通りに分類される。
{| class="wikitable" style="float: right;"
|+酸化物の分類
!酸性酸化物
|CO<sub>2</sub> , NO<sub>2</sub> , SiO<sub>2</sub> , SO<sub>2</sub> , SO<sub>3</sub> , Cl<sub>2</sub>O<sub>7</sub> など
|-
!塩基性酸化物
|Na<sub>2</sub>O , MgO , CaO , Fe<sub>2</sub>O<sub>3</sub> , CuO , BaO など
|-
!両性酸化物
|Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub> , ZnO
|-
|}
* '''酸性酸化物''' : 水に溶けて酸性を示したり、塩基と反応して塩を生じる酸化物を、'''酸性酸化物'''という。
* '''塩基性酸化物''' : 水に溶けて塩基性を示したり、酸と反応して塩を生じる酸化物を、'''塩基性酸化物'''という。
* '''両性酸化物''': 酸・塩基のどちらとも反応して塩を生じる酸化物を、'''両性酸化物'''という。
一般に、非金属元素の酸化物は酸性酸化物であり、金属元素の酸化物は塩基性酸化物である。
; 酸性酸化物の例
{| class="wikitable" style="float: right;"
!酸性酸化物
|CO<sub>2</sub> , NO<sub>2</sub> , SiO<sub>2</sub> , SO<sub>2</sub> , SO<sub>3</sub> , Cl<sub>2</sub>O<sub>7</sub> など
|-
|}
二酸化炭素や二酸化硫黄など、非金属元素の酸化物の多くは、酸性酸化物である。
酸性酸化物の定義により、酸性酸化物は水に溶けると、酸性を示す。
: SO<sub>3</sub> + H<sub>2</sub>O → H<sub>2</sub>SO<sub>4</sub>
:: ※ H<sub>2</sub>SO<sub>4</sub>は酸。
また、酸性酸化物は塩基と反応すると、塩をつくる。
: SO<sub>2</sub> + 2NaOH<sub>2</sub>O → Na<sub>2</sub>SO<sub>3</sub> + H<sub>2</sub>O
:: ※ Na<sub>2</sub>SO<sub>3</sub>は塩。
二酸化炭素(CO<sub>2</sub>)は塩基と反応して塩を生じる。
: CO<sub>2</sub> + Ca(OH)<sub>2</sub> → CaCO<sub>3</sub> + H<sub>2</sub>O
:: ※ CaCO<sub>3</sub>は塩。
二酸化窒素(NO<sub>2</sub>)は水に溶けて硝酸(HNO<sub>3</sub>)となる。
: 3NO<sub>2</sub> + H<sub>2</sub>O → 2HNO<sub>3</sub> + NO
; 塩基性酸化物の例
{| class="wikitable" style="float: right;"
!塩基性酸化物
|Na<sub>2</sub>O , MgO , CaO , Fe<sub>2</sub>O<sub>3</sub> , CuO , BaO など
|-
|}
水に溶けて塩基性を示したり、酸と反応して塩を生じる酸化物を、'''塩基性酸化物'''という。
: Na<sub>2</sub>O + H<sub>2</sub>O → 2NaOH
:: ※ NaOHは塩基。
'''金属元素の酸化物の多くは、塩基性酸化物である'''。酸化カルシウムや酸化ナトリウムなどが、塩基性酸化物である。
酸化カルシウム(CaO)は水に溶けて水酸化カルシウム(Ca(OH)<sub>2</sub>)となる。
: CaO + H<sub>2</sub>O → Ca(OH)<sub>2</sub>
また、これは酸と反応して塩を生じる。
: CaO + 2HCl → CaCl<sub>2</sub> + H<sub>2</sub>O
; 両性酸化物の例
{| class="wikitable" style="float: right;"
!両性酸化物
|Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub> , ZnO
|-
|}
酸・塩基のどちらとも反応して塩を生じる酸化物を、両性酸化物という。
酸化アルミニウム(Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub>)や酸化亜鉛は、酸とも塩基とも反応して塩を生じる。
: Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub> + 6HCl → 2AlCl<sub>3</sub> + 3H<sub>2</sub>O
: Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub> + 2NaOH + 3H<sub>2</sub>O → 2Na[Al(OH)<sub>4</sub>]
==== オキソ酸 ====
塩素の酸性酸化物を水に溶かすと、水と反応して酸を生じる。
塩素の酸化物には、いくつかの種類があるが、一例として酸を生じる反応として、下記の化学反応がある。
: Cl<sub>2</sub>O<sub>7</sub> + H2O → HClO<sub>4</sub>
リンの酸性酸化物も、水と反応し、酸を生じる。
: P<sub>4</sub>O<sub>10</sub> + 6H<sub>2</sub>O → 4H<sub>3</sub>PO<sub>4</sub>
また、このように酸性酸化物を水と反応させて得られた酸は、分子中に酸素原子と水素原子を含む場合が多い。 塩素の場合は、過塩素酸 HClO<sub>4</sub> などが得られるし、窒素の場合は、亜硝酸(HNO<sub>2</sub>)と硝酸(HNO<sub>3</sub>)などが得られるし、分子式を見ればわかるように酸素原子と原子が分子中に含まれてる。
{| class="wikitable" style="float: right;"
! style="text-align: center;" |化学式
!名称
!酸の強さ
!Clの酸化数
|-
|HClO<sub>4</sub>
|過塩素酸
|つよい側
|+7
|-
|HClO<sub>3</sub>
|塩素酸
|
|+5
|-
|HClO<sub>2</sub>
|亜鉛素酸
|
|+3
|-
|HClO
|次亜鉛素酸
|よわい側
|+1
|-
|}
一般に、分子中に酸素分子のある構造の酸のことを'''オキソ酸'''(oxoacid)という。(「オキソ酸」といった場合、水素原子は、なくても構わない。 ※ 東京書籍と実教出版の見解。 いっぽう、啓林館などが、「オキソ酸」の定義に水素原子を含ませる定義である。)
オキソ酸の分子構造についての議論のさいには、塩素原子や窒素原子など、由来となった酸性酸化物の元素を「中心原子」と設定して議論するのが一般的である。(つまり、酸素原子や水素原子は、中心ではない。)
中心元素が同じであれば、結合している酸素の数が多いほど、オキソ酸の酸性は強くなる。
たとえば窒素のオキソ酸として亜硝酸(HNO<sub>2</sub>)と硝酸(HNO<sub>3</sub>)があるが、硝酸の方が強い酸である。
また、中心元素が第3周期のリン、硫黄、塩素であるようなオキソ酸は、この順に酸性が強くなる。リン酸(H<sub>3</sub>PO<sub>4</sub>)は弱酸であるが、硫酸(H<sub>2</sub>SO<sub>4</sub>)は強酸であり、過塩素酸(HClO<sub>4</sub>)はさらに強い酸性を示す。
塩素のオキソ酸の酸性の順は、
: (つよい側) HClO<sub>4</sub> > HClO<sub>3</sub> > HClO<sub>2</sub> > HClO (よわい側)
名称は
: HClO<sub>4</sub> 過塩素酸。 HClO<sub>3</sub> 塩素酸。 HClO<sub>2</sub> 亜鉛素酸。HClO 次亜鉛素酸。
である。
: (※ 範囲外:) いまのところ、上記の4つ以外は、塩素のオキソ酸は発見されていない。(※ 参考文献: 化学同人『理工系基礎レクチャー 無機化学』、鵜沼秀郎 ほか 著、2007年第1版、2014年第1版第9刷、73ページ)
=== 硫黄の単体 ===
'''硫黄'''(S)の単体には、斜方硫黄、単斜硫黄、ゴム状硫黄などの同素体がある。単体は火山地帯から多く産出され、また重油の精製過程のひとつである'''脱硫'''(だつりゅう)の工程において多く得られる。
; 斜方硫黄(S<sub>8</sub>)
[[ファイル:Sulfur.jpg|100x100ピクセル]] 斜方硫黄は常温で安定な黄色・塊状の結晶である。硫黄原子が8つ環状に結合して1つの分子を形成している。
; 単斜硫黄(S<sub>8</sub>)
[[ファイル:Cyclooctasulfur-above-3D-balls.png|100x100ピクセル]] 単斜硫黄は高温で安定な黄色・針状の結晶である。硫黄原子が8つ環状に結合して1つの分子を形成している。斜方硫黄を加熱することで得られる。
; ゴム状硫黄(S<sub>x</sub>)
ゴム状硫黄は褐色の無定形固体である。ただし、純粋なものは黄色を示すものがある。数十万の硫黄原子がジグザグに結合しているため、引っ張ると結合角が変わり弾力性がある。
斜方硫黄を加熱するとコハク色の液体となる。これを加熱し続けると次第に暗褐色となり、粘性が増してくる。さらに加熱すると濃青色の液体となり、これを水中に入れ急冷するとゴム状硫黄となる。
* 反応性
硫黄は、高温で反応性が高い。
[[ファイル:Sulfur-burning-at-night.png|右|サムネイル|150x150ピクセル|硫黄の燃焼]]
硫黄は高温では多くの元素と化合して硫化物となる。たとえば鉄粉と硫黄の粉末を混合して加熱すると、硫化鉄(II) FeS が生じる。
: Fe + S → FeS
また、空気中で青白い炎をあげて燃焼し、二酸化硫黄となる。
: S + O<sub>2</sub> → SO<sub>2</sub>
=== 硫黄の化合物 ===
==== 硫化水素 ====
'''硫化水素'''(H{{sub|2}}S)は無色腐卵臭の気体である。人体に有毒であるため、使用時には十分な換気に注意しなければならない。硫化水素は水に溶け、弱酸性を示す。
: H{{sub|2}}S ⇄ HS{{sup|-}} + H{{sup|+}} ⇄ S{{sup|2-}} + 2H{{sup|+}}
火山ガスや温泉に豊富に含まれるが、実験室では硫化鉄(II)に強酸を加えることで得られる。
: FeS + 2HCl → FeCl{{sub|2}} + H{{sub|2}}S↑
: FeS + H{{sub|2}}SO{{sub|4}} → FeSO{{sub|4}} + H{{sub|2}}S↑
硫化水素は、おおくの場合に還元剤として働き、二酸化硫黄を還元して硫黄の単体を生じる。
: 2H{{sub|2}}S + SO{{sub|2}} → 2H{{sub|2}}O + 3S↓
多くの金属イオンと反応して硫化物の沈殿を作るため、金属イオンの分離や検出に多く用いられる。
: Fe{{sup|2+}} + H{{sub|2}}S → 2H{{sup|+}} + FeS↓
==== 二酸化硫黄 ====
'''二酸化硫黄'''(SO<sub>2</sub>)は腐卵臭をもつ無色の有毒な気体で、刺激臭がある。また、火山ガスや温泉などに含まれる。
酸性酸化物であり、水に溶けて弱酸性を示す。
: SO<sub>2</sub> + H<sub>2</sub>O ⇄ HSO<sub>3</sub><sup>-</sup> + H<sup>+</sup>
実験室では、銅を濃硫酸に加えて加熱するか、亜硫酸塩を希硫酸と反応させることにより得られ、下方置換で得る。
: Cu + 2H<sub>2</sub>SO<sub>4</sub> → CuSO<sub>4</sub> + 2H<sub>2</sub>O + SO<sub>2</sub>↑
: NaHSO<sub>3</sub> + H<sub>2</sub>SO<sub>4</sub> → NaHSO<sub>4</sub> + H<sub>2</sub>O + SO<sub>2</sub>↑
: Na<sub>2</sub>SO<sub>3</sub> + H<sub>2</sub>SO<sub>4</sub> → Na<sub>2</sub>SO<sub>4</sub> + H<sub>2</sub>O + SO<sub>2</sub>↑
工業的には、硫黄の燃焼により製造される。
: S + O<sub>2</sub> → SO<sub>2</sub>
二酸化硫黄は還元性があり、漂白作用がある。ただし、硫化水素のような強い還元剤がある場合は、酸化剤として作用する。
硫黄を含む物質は燃焼により二酸化硫黄を生じる。二酸化硫黄の水溶液は、弱い酸性を示す。
硫黄は石油や石炭に多く含まれているため、このような化石燃料を大量に燃焼させると、大気中に多量の二酸化硫黄が放出され、雨水に溶け込み、酸性雨の原因となる。
==== 硫酸 ====
'''硫酸'''(H{{sub|2}}SO{{sub|4}})は工業的に'''接触法'''(contact process)により、酸化バナジウムを主成分として触媒をもちいて、次のような工程で製造されている。
# 硫黄を燃焼させ、二酸化硫黄を作る。
#: S + O{{sub|2}} → SO{{sub|2}}
# 二酸化硫黄と酸素との混合気体を乾燥させ、酸化バナジウム(V{{sub|2}}O{{sub|5}})を触媒として反応させて三酸化硫黄を作る。
#: 2SO{{sub|2}} + O{{sub|2}} → 2SO{{sub|3}}
# 三酸化硫黄を濃硫酸に吸収させ、発煙硫酸とする。
#: SO{{sub|3}} + H{{sub|2}}O → H{{sub|2}}SO{{sub|4}}
# 発煙硫酸を希釈し、濃硫酸とする。
硫酸は、硫黄のオキソ酸である。通常はH{{sub|2}}SO{{sub|4}}の水溶液を硫酸と呼ぶ。硫酸は無色透明で粘性があり、密度の大きい重い液体である。濃度により性質が異なり、濃度の90%以上程度の濃いものを'''濃硫酸'''(concentrated sulfuric acid)といい、薄いものを'''希硫酸'''(diluted sulfuric acid)と呼ぶ。
濃硫酸を水で希釈することで希硫酸が得られる。希釈する際は水を入れたビーカーを水を張った水槽中に入れ、冷却しながら濃硫酸を静かに加えるようにする。これは、硫酸の水への溶解熱が非常に大きいためである。けっして、これを逆にしてはならない。もし、濃硫酸に水を加えるようにすると、溶解熱によって水が蒸発し濃硫酸が跳ねることがあり、たいへん危険である。
硫酸は沸点が高い、不揮発性の酸である。したがって、塩酸や硝酸のような揮発性の酸の塩と反応して塩を作り、揮発性酸が遊離する。
: NaCl + H{{sub|2}}SO{{sub|4}} → NaHSO{{sub|4}} + HCl↑
[[ファイル:Sulfuric_acid_burning_tissue_paper.jpg|右|サムネイル|200x200ピクセル]]
濃硫酸には次のような性質がある。
* 酸化作用: 金属を加え加熱すると、銅などのイオン化傾向の小さい金属を酸化するようになる。加熱した濃硫酸を熱濃硫酸と呼ぶこともある。
*: Cu + 2H{{sub|2}}SO{{sub|4}} → CuSO{{sub|4}} + 2H{{sub|2}}O + SO{{sub|2}}↑
* '''脱水作用'''(だっすいさよう、dehydration): 有機化合物の分子内に含まれている酸素原子や水素原子を、水分子H{{sub|2}}Oとして奪う。たとえば紙に濃硫酸を垂らすと、その部分から酸素と水素が奪われ、炭化する。
* 吸湿作用: 強い吸湿作用があり、乾燥剤として用いられる。
* 不揮発性:
希硫酸は強酸であり、多くの金属と反応して水素を発生する。一方濃硫酸は水をほとんど含まないため電離度が小さく、ほとんど酸性を示さない。
硫酸イオン(SO{{sub|4}}{{sup|2-}})はBa{{sup|2+}}やCa{{sup|2+}}と反応して白色沈殿を生じる。そのため、これらのイオンの検出・分離に用いられる。また日常生活においても、硫酸はカーバッテリーや非常用電源などとして使われる鉛蓄電池の電解液として用いられている。
[[ファイル:周期表-NP.png|右]]
== 15族元素 ==
'''窒素'''(N)、'''リン'''(P)はともに15族に属する非金属元素である。価電子を5つ持つ。
=== 窒素 ===
==== 単体 ====
'''窒素'''(N{{sub|2}})は常温常圧で無色無臭の気体である。窒素原子2つが三重結合して1つの分子を作っている、二原子分子の気体である。空気中に体積比でおよそ78%含まれており、工業的には液体空気の分留により生産される。液体の窒素は物質の冷却にしばしば用いられている。
=== アンモニア ===
'''アンモニア'''(NH{{sub|3}})は無色刺激臭の気体である。水に非常に溶けやすく、水溶液はアンモニア水と呼ばれ、弱塩基性を示す。
: <chem>NH3 + H2O -> NH4+ + OH^-</chem>
アンモニアの製法は、工業的には、高温高圧下で触媒を用いて窒素と水素を直接反応させる'''ハーバー・ボッシュ法'''により製造される。
: <chem>N2 + 3 H2 -> 2 NH3</chem>
実験室では、塩化アンモニウムと水酸化カルシウムの粉末を混合して加熱することにより得られる。気体は上方置換で捕集する。
: <chem>2NH4Cl + Ca(OH)2 -> CaCl2 + 2H2O + 2NH3 ^</chem>
アンモニアが生成することを確かめるには、[[高校化学 水素と貴ガス#ハロゲン化水素|濃塩酸]]を近づければよい。アンモニアと濃塩酸が反応して塩化アンモニウムの白煙を生じる。
: <chem>NH3 + HCl -> NH4Cl</chem>
水溶液中のアンモニウムイオン(NH{{sub|4}}{{sup|+}})を検出する際には、ネスラー試薬が用いられる。アンモニウムイオンがあれば黄色~褐色の沈殿を生じる。
アンモニアは、硝酸の原料、あるいは肥料の原料などとしても利用される。
=== 窒素酸化物 ===
窒素の酸化物は数種類あり、それらの総称を'''窒素酸化物'''と呼ぶ。主なものに'''一酸化窒素'''(NO)と'''二酸化窒素'''(NO{{sub|2}})がある。
; 一酸化窒素 (NO)
常温で無色の気体。水に溶けにくい。希硝酸に銅を加えることで発生する。空気中で酸化されやすいため、水上置換で捕集する。
: <chem>3Cu + 8HNO3 -> 3Cu(NO3)2 + 4H2O + 2NO ^</chem>
空気中での酸化の反応式は、
: <chem>2NO + O2 -> 2NO2</chem>
である。
; 二酸化窒素 (NO{{sub|2}})
[[ファイル:CopperReaction.JPG|右|300x300ピクセル]]
常温で褐色の気体。水に溶けやすく、反応して硝酸(<chem>HNO3</chem>)となる。
: <chem>3NO2 + H2O -> 2HNO3 + NO</chem>
実験室では濃硝酸に銅を加えることで発生する。水に溶けやすいので下方置換で捕集する。
: <chem>Cu + 4HNO3 -> Cu(NO3)2 + 2H2O + 2NO2 ^</chem>
空気中では一部で2分子が結合して四酸化二窒素(<chem>N2O4</chem>)となる。
: <chem>2NO2 <=> N2O4</chem>
窒素は常温では燃焼しない。すなわち酸素と反応して酸化物にならない。しかし、高温下では窒素と酸素が直接反応して窒素酸化物を生じる。また化石燃料の燃焼によっても窒素酸化物が生成する。そのため車のエンジンなどから窒素酸化物が発生し、大気中に放出されたものが雨水に吸収され、[[高校化学 水素と貴ガス#二酸化硫黄|硫黄酸化物]]と同様に酸性雨の原因となる。
==== 硝酸 ====
: (※ 範囲外 : ) 硝石(しょうせき)のつくり方がどこにも書いてないのはオカシイので、改革して硝石の作りかたの要点を書く。おおもとの原料は、糞尿である。尿などにふくまれるアンモニアが、土壌中でさまざまな物質と反応して、硝酸イオンを多く含む物質になる。この硝酸イオンを原料に、カリウムをふくむ灰汁(あく)とともに煮ると化学反応をして硝酸カリウムになるが、この硝酸カリウムこそが、自然界のいわゆる「硝石」(しょうせき)の主な原料である。中世や近世では、この硝石を中間材料として、火薬などを作っていた。(以上、範囲外。)
(↓ 以下、高校の範囲)
'''硝酸'''(<chem>HNO3</chem>)は窒素のオキソ酸であり、有名な強酸である。通常は<chem>HNO3</chem>の水溶液を硝酸と呼ぶ。濃度によりやや異なる性質を示し、濃度の濃いものを'''濃硝酸'''、薄いものを'''希硝酸'''と呼ぶ。硝酸は揮発性の酸であるため、実験室では硝酸塩に濃硫酸を加えることにより得られる。
: <chem>NaNO3 + H2SO4 -> NaHSO4 + HNO3</chem>
硝酸の製法は、工業的には、'''オストワルト法'''(Ostwald process)により製造される。次のような工程を経て硝酸が得られる。
# アンモニアと空気の混合気体を、触媒の白金 Pt に触れさせ、800℃〜900℃でアンモニアを酸化させて一酸化窒素とする。
#: <chem>4NH3 + 5O2 -> 4NO + 6H2O</chem>
# 一酸化窒素を空気中でさらに酸化して、二酸化窒素とする。
#: <chem>2NO + O2 -> 2NO2</chem>
# 二酸化窒素を水に吸収させ、硝酸とする。ここで発生する一酸化窒素は回収し、2に戻って再び酸化する。
#: <chem>3NO2 + H2O -> 2HNO3 + NO</chem>
硝酸は無色の水溶液であるが、光や熱により分解して二酸化窒素と酸素を生じる。そのため、保管のさいには、硝酸は褐色びんに入れ冷暗所で保存するようにする。
: <chem>4HNO3 -> 4NO2 + 2H2O + O2</chem>
強い酸化作用を持っており、水素よりイオン化傾向の小さい銅Cuや銀Agなどの金属も酸化して溶かす。また、イオン化傾向の大きい金属と反応して窒素酸化物を生じる。希硝酸からは一酸化窒素が、濃硝酸からは二酸化窒素がそれぞれ発生する。
(希硝酸)<chem>3Cu + 8HNO3 -> 3Cu(NO3)2 + 4H2O + 2NO ^</chem>
(濃硝酸)<chem>Cu + 4HNO3 -> Cu(NO3)2 + 2H2O + 2NO2 ^</chem>
また硝酸は強酸であり、イオン化傾向の大きい金属と反応して水素を発生する。
: <chem>2Al + 6HNO3 -> 2Al(NO3)3 + 3H2 ^</chem>
* 不動態
ただし、鉄 Fe やアルミニウム Al やニッケル Ni は、硝酸とは反応して水素を発生するが、濃硝酸に加えても溶けない。これは、金属の表面が酸化され、水に溶けにくい緻密な酸化被膜を生成して、内部が保護され、反応が内部まで進行しなくなるためである。このような状態を'''不動態'''(ふどうたい、passive state)という。
* その他
硝酸塩はほとんど水に溶ける。そのため、ガラス器具にこびりついた金属類を洗浄する際に用いられることも多い。
硝酸は火薬の製造に用いられる。
==== 窒素の応用 ====
たとえば、ポテトチップスなどのような油で揚げたスナック菓子の酸化防止のため、袋の中に窒素がつめられる。酸素があると、油が酸化してしまうが、代わりに何らかの気体をつめる必要があるので、窒素を袋の中につめているのである。(※ 2017年のセンター試験『化学基礎の』本試験で出題)
=== リン ===
=== 単体 ===
'''リン'''(P)は5種類の同素体を持つ。代表的なものは'''黄リン'''(P{{sub|4}})と'''赤リン''' (P{{sub|x}})の2つである。
'''黄リン'''(P{{sub|4}})は淡黄色のろう状固体であり、人体にきわめて有毒である。空気中で自然発火するため、水中に保存する。二硫化炭素(CS{{sub|2}})に溶ける。
[[ファイル:Red_phosphorus_in_a_tube_-_P_15_.jpg|右|150x150ピクセル]]
'''赤リン'''(P{{sub|x}})は赤褐色の粉末状固体であり、弱い毒性を持つ。二硫化炭素(CS{{sub|2}})に溶けない。赤リンはマッチの箱のすり薬として用いられている。
: ※ マッチでリンが使われてる部分は、マッチ棒'''ではなく'''、マッチ箱のほう。
=== 酸化物 ===
リンを空気中で燃焼させると、'''十酸化四リン'''(<chem>P4O10</chem>)の白煙を生じる。
: <chem>4P + 5O2 -> P4O10</chem>
十酸化四リンは白色の粉末状固体であり、強い吸湿性を示し、乾燥剤として用いられる。この吸湿性から、空気中に放置すると空気中の水蒸気を吸収して自分自身がその水に溶ける。この現象を'''潮解'''という。十酸化四リンは'''潮解性'''(ちょうかいせい、deliquescence)のある物質である。 十酸化四リンは水と反応して'''リン酸'''(<chem>H3PO4</chem>)となる。
: <chem>P4O10 + 6H2O -> 4H3PO4</chem>
リン酸は酢酸のような弱酸よりは強いが、塩酸のような強酸よりは弱い、中程度の強さの酸である。 リンは生物にとって必要不可欠な元素である。生物はリンの化合物であるATP(アデノシン三リン酸)にエネルギーを保存し、利用する。農業においても必要な元素で、リン酸肥料として用いられる。主なものとして、リン鉱石と硫酸と水との反応から得られるリン酸二水素カルシウム(<chem>Ca(H2PO4)2</chem>)と、硫酸カルシウム(<chem>CaSO4</chem>)との混合物である'''過リン酸石灰'''がある。 この過リン酸石灰が、リン肥料の主成分である。 リン酸カルシウム <chem>Ca3(PO4)2</chem> およびヒドロキシアパタイト <chem>Ca5(PO4)3(OH)</chem> は、動物の骨や歯の主成分である。
== 14族元素 ==
[[ファイル:周期表-CSi.png|右]]
'''炭素''' C 、'''ケイ素''' Si はともに14族に属する元素である。価電子を4個持つ。
=== 炭素 ===
'''炭素''' (C) は生物を構成する重要な元素であり、多くの化学製品にも含まれている。炭素を含む物質は一般に'''有機物'''と呼ばれる。有機化合物については別の章で詳しく学ぶ。この節では、炭素の単体、一酸化炭素、二酸化炭素について説明する。
=== 単体 ===
炭素の単体は共有結合の結晶であり、結合の仕方によっていくつかの同素体が存在する。
; ダイヤモンド (C)
[[ファイル:Apollo_synthetic_diamond.jpg|左|サムネイル|150x150ピクセル|ダイヤモンド]]
[[ファイル:DiamantEbene01.png|右|サムネイル|150x150ピクセル|ダイヤモンドの構造]]
'''ダイヤモンド'''は無色の固体で、1つの炭素原子が4つの炭素原子と正四面体の頂点方向に共有結合し、それが多数連結して結晶を形成している。共有結合の結晶であるため、非常に融点・沸点が高く、地球上で最も硬い物質として知られている。電気は通さないが、熱はよく伝える。宝石としての利用のほか、工業的には研磨剤としても使われる。光の屈折率が大きい。
{{-}}
; 黒鉛 (C)
[[ファイル:GraphiteUSGOV.jpg|左|サムネイル|150x150ピクセル|黒鉛]]
[[ファイル:Graphit_gitter.png|右|サムネイル|187x187ピクセル|グラフェン黒鉛(グラファイト)の一層をグラフェンと呼ぶ。上図ではグラフェンが4層描かれている。]]
'''黒鉛'''は金属光沢のある黒色の固体で、炭素原子が正六角形の層状構造を持っている。各層は3つの共有結合によって形成され、残りの価電子は'''自由電子'''として層間を移動する。この自由電子の存在により、黒鉛は電気をよく通し、熱伝導性も高い。層と層の結合は弱いため、黒鉛は柔らかく、鉛筆の芯や電気分解用の電極として使用される。
{{-}}
; フラーレン(C60、C70など)
[[ファイル:C60a.png|右|サムネイル|140x140ピクセル|フラーレン]]
'''フラーレン'''は茶褐色の固体で、多数の炭素原子が球状に結合している。右図はC60フラーレンのモデルで、炭素原子が60個、サッカーボール状に結合している。20世紀後半に発見された物質で、現在も研究が進んでいる。純粋なフラーレンは電気を通さないが、アルカリ金属を添加すると超伝導性を示すことがある。有機溶媒に溶ける性質を持つ。
{{-}}
; グラフェン
'''グラフェン'''は炭素原子が六角形に配列した一層のシート状の物質で、非常に強く柔軟であり、電気や熱を効率よく伝える。
{{-}}
; カーボンナノチューブ
'''カーボンナノチューブ'''(Carbon Nanotube、CNT)は、炭素原子が六角形に結びついたグラフェンシートを丸めて筒状にしたナノ材料。非常に高い強度と優れた電気・熱伝導性を持つ。
{{-}}
; 無定形炭素
[[ファイル:Binchotan_(charcoal).jpg|サムネイル|180x180ピクセル|活性炭]]
炭素の同素体とは異なり、黒鉛や[[高等学校化学I/炭化水素|炭化水素]]が不規則に結合し、結晶構造を明確に持たない固体がある。これを'''無定形炭素'''(amorphous carbon)と呼ぶ。木炭やコークスが代表的で、この中でも'''活性炭'''は多孔質であり、さまざまな物質を吸着する性質があるため、消臭剤などに用いられている。
{{-}}
=== 酸化物 ===
炭素が空気中で燃焼すると、酸化物が生成される。
; 一酸化炭素 (CO)
炭素や有機化合物が空気中で不完全燃焼すると、'''一酸化炭素''' (CO) が生じる。一酸化炭素は無色無臭の気体で、非常に有毒である。吸入すると血液中のヘモグロビンと結合し、酸素の運搬を阻害する。水には溶けにくい。
実験室では、ギ酸を濃硫酸で脱水して一酸化炭素を生成できる。
: <chem>HCOOH -> H2O + CO ^</chem>
空気中では青白い炎を上げて燃焼し、二酸化炭素を生じる。
: <chem>2CO + O2 -> 2CO2</chem>
一酸化炭素は還元性を持ち、金属酸化物を還元して単体にする性質がある。
: <chem>CuO + CO -> Cu + CO2</chem>
; 二酸化炭素 (CO2)
炭素や有機化合物が空気中で完全燃焼すると、'''二酸化炭素''' (CO2) が生じる。実験室では炭酸カルシウムに塩酸を加えて発生させることができる。
: <chem>CaCO3 + 2HCl -> CaCl2 + H2O + CO2 ^</chem>
工業的には、石灰石の熱分解によって二酸化炭素が得られる。
二酸化炭素は無色無臭の気体で、毒性はない。酸性酸化物であり、水に溶けると炭酸水素イオン <chem>HCO3^-</chem> を生成し、弱酸性を示す。
: <chem>CO2 + H2O <=> HCO3^- + H^+</chem>
また、塩基と反応して塩を作る。
: <chem>CO2 + 2NaOH -> Na2CO3 + H2O</chem>
二酸化炭素を'''石灰水'''(水酸化カルシウム水溶液)に通すと、炭酸カルシウムが生成され白濁する。この反応は二酸化炭素の検出に用いられる。
: <chem>Ca(OH)2 + CO2 -> H2O + CaCO3 v</chem>
[[ファイル:Dry_Ice_Pellets_Subliming.jpg|右|サムネイル|150x150ピクセル|ドライアイス]]
二酸化炭素の固体は分子結晶で、'''ドライアイス'''として知られ、冷却剤として使用される。常圧下で'''昇華性'''を持ち、液体にならずに直接気体となる。
二酸化炭素は生物の活動によって放出・吸収される。呼吸では、酸素を吸収して糖類と反応し、エネルギーを取り出す過程で二酸化炭素が生成される。
: <chem>C6H12O6 + 6O2 -> 6H2O + 6CO2</chem>
逆に、植物は光のエネルギーを用いて二酸化炭素を吸収し、糖類を合成する。この過程を光合成という。
: <chem>6CO2 + 6H2O -> C6H12O6 + 6O2</chem>
また、微生物の中には糖類を発酵させ、エネルギーを得るものがあり、その過程で二酸化炭素が生じる。
: <chem>C6H12O6 -> 2C2H5OH + 2CO2</chem>
=== ケイ素 ===
'''ケイ素''' Si は酸素の次に多く地殻中に含まれている元素である。水晶などの鉱物にも含まれている。半導体の主な原料であり、工業的に重要な元素となっている。
=== 単体 ===
[[ファイル:SiliconCroda.jpg|右|サムネイル|200x200ピクセル|ケイ素]]
'''ケイ素''' Si は金属光沢をもつ銀灰色の固体である。ケイ素は金属光沢をもつが、しかし金属ではない。
光や紫外線、赤外線などは電磁波であるが、ケイ素は電磁波の反射率が可視光(波長:780nm〜380nm)のあたりだけ、反射率が高いため、人間の目で見た場合に、ケイ素は金属光沢がるように見える。(※ 東京書籍の教科書で、コラムで紹介されている。)
[[ファイル:Monokristalines_Silizium_für_die_Waferherstellung.jpg|左|サムネイル|294x294ピクセル|ケイ素の単結晶電子部品の製造などに用いられる。これを薄く切断してシリコンウェハーにする。]]
ケイ素は天然には単体として存在せず、酸化物を還元することにより製造される。単体は共有結合の結晶であり、ダイヤモンドと同様の構造でケイ素原子が結合する。そのためダイヤモンド同様融点・沸点は高く、固い結晶を作る。導体と不導体の中間程度の電気抵抗を持つ半導体で、太陽電池やコンピュータ部品に用いられる。
シリコンの結晶に、わずかにリンやホウ素を加えたものは、電気をよく通すものになる。これらの材料(シリコンの結晶に、わずかにリンやホウ素を加えたもの)も「半導体」という。(※ 実教出版、数研出版の教科書などで紹介している。) (※ 『物理II』で詳しく習う。『[[高等学校物理/物理II/電気と磁気]]』などの単元で扱う。)
* その他
[[ファイル:Silicon-unit-cell-3D-balls.png|サムネイル|80x80ピクセル|ケイ素の単体の結晶構造]]
ケイ素の結晶構造は、ダイヤモンドの結晶構造と同じ。(← 高校の範囲。)
{{-}}{{コラム|(※ 範囲外: )シリセン|シリセンは、ケイ素(シリコン)原子が六角形に配列し、グラフェンに似た二次元シート構造を持つ新しい物質である。シリコンは通常、三次元のダイヤモンド構造を取るが、シリセンではケイ素原子が平面状に並び、蜂の巣状の構造を作り出す。このため、シリセンは「シリコン版グラフェン」とも呼ばれることがある。
シリセンは、グラフェンと同様に優れた電子的特性を持ち、次世代のエレクトロニクス材料として注目されている。特に、シリコンベースの既存の半導体技術との互換性が期待されており、ナノテクノロジーやトランジスタ、センサーなどの分野での応用が研究されている。
ただし、シリセンはグラフェンよりも安定性が低く、空気中では速やかに酸化されるため、特定の条件下でしか安定した形で存在できない。一般的には金属基板の上に成長させることで安定させる技術が使われている。
シリセンはその特性を利用して、エレクトロニクスやスピントロニクス、さらにはエネルギー材料などの広い分野で革新的な技術を生み出す可能性があるが、まだ研究段階にあるため、今後の発展が期待される。}}{{-}}
=== 二酸化ケイ素 ===
[[ファイル:Quartz_(USA).jpg|右|サムネイル|180x180ピクセル|水晶]]
'''二酸化ケイ素'''(<chem>SiO2</chem>)は自然界で石英として存在する。透明な石英の結晶は「水晶」と呼ばれ、宝石として用いられる。また、砂状のものはケイ砂と呼ばれ、ガラスの原料となる。
二酸化ケイ素は共有結合の結晶である。ケイ素原子と酸素原子との結合は非常に強く、固く安定な結晶を作る。また、強い結合のためか、融点も高く、塩酸にも溶けない。しかし、フッ化水素酸とは反応して溶ける。
: <chem>SiO2 + 6HF -> H2SiF6 + 2H2O</chem>
[[ファイル:Silica_gel.jpg|右|150x150ピクセル]]
また、二酸化ケイ素は酸性酸化物であり、塩基と反応して塩を生じる。たとえば水酸化ナトリウムと反応して、ケイ酸ナトリウム(<chem>Na2SiO3</chem>)を生じる。
: <chem>SiO2 + 2NaOH -> Na2SiO3 + H2O</chem>
これに水を加えて加熱すると、水あめ状の'''水ガラス'''(water glass)が得られる。また、水ガラスに塩酸を加えると、ゲル状のケイ酸が得られる。
: <chem>Na2SiO3 + 2HCl -> H2SiO3 + 2NaCl</chem>
※ 実際は組成が安定せず、できるのが <chem>H2SiO3</chem> のみとは限らない
このとき塩化ナトリウムが副生成物としてできるので、塩化ナトリウムを水洗して除き、のこったケイ酸を加熱乾燥すると'''シリカゲル'''(silica gel)が得られる。シリカゲルは多孔質で分子を吸着するため、乾燥剤や吸着剤として用いられる。
* 発展: 水晶振動子 (※ ほぼ範囲外)
電子工業における水晶の応用として、'''水晶振動子'''としての利用がある。
水晶に電圧を掛けると、一定の周期で振動することから、時計などの発振器として利用されている。
[[Category:高等学校化学|ひきんそくけんそ]]
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高校化学 ハロゲン
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高校化学 16族元素
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高校化学 典型金属
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== アルカリ金属 ==
=== 金属と水の反応モデル ===
以降の無機化学の単元において、金属と水溶液との反応を考える上では、以下のようなモデルを用いる。※実測はされていない
ある金属元素Mが水中にある。このとき、周りの水と反応することにより金属の表面が水酸化物M(OX){{sub|x}}で覆われる。(皮膜形成)
この水酸化物M(OX){{sub|x}}が水に可溶ならば、水酸化物皮膜が全て水に溶けて金属の表面が露出し、水と反応して水酸化物M(OH){{sub|x}}が生成する。そしてまた水酸化物被膜が全て水に溶けて金属の表面が露出し・・・と反応を繰り返し、最終的には金属が全て水酸化物となって水に溶ける。
水に難溶ならば、水酸化物皮膜が生成した時点で反応が止まり、その金属は水と反応しない。
なお、イオン化傾向がMg以下の金属の水酸化物は水に難溶である。
=== 単体 ===
[[File:Lithium paraffin.jpg|right|200px|thumb|リチウムの保存. <br>リチウムは密度が灯油よりも軽いため、リチウムは灯油に浮く。]]
[[File:Kalium.jpg|right|150px|thumb|切断したカリウム]]
水素を除く1族元素のリチウム Li, ナトリウム Na, カリウム K, ルビジウム Rb, セシウム Cs, フランシウム Fr のことを'''アルカリ金属'''という。
アルカリ金属の単体は、いずれも銀白色の固体である。融点が低くやわらかい金属で、カッターで簡単に切断することができる。
アルカリ金属の原子は価電子を1個もち、1価の陽イオンになりやすい。
このため、アルカリ金属の原子は酸化されやすいので、天然には単体の状態では存在せず、塩として存在する。
単体を得るには、化合物の融解塩電解を行う。加熱して融解させた化合物に炭素電極を入れ、電気分解を行うと、陰極側に金属の単体が析出する。
: <chem>{X+} + {e^-} -> {X} v</chem> (XはLi、Na、Kなど)
アルカリ金属は反応性が高く、イオン化傾向が大きいので還元性も高い。アルカリ金属は常温で空気中の酸素や水、塩素と簡単に反応する。特に水とは、アルカリ金属は常温で水と反応して水素を発生しながら激しく反応し、反応後の溶液は強塩基性の水溶液になる。
: <chem>4X + O2 -> 2X2O</chem>
: <chem>2X + 2H2O -> 2XOH + H2 ^</chem> (XはLi、Na、Kなど)
: <chem>2X + Cl2 -> 2XCl</chem>
そのため、アルカリ金属の単体を保存する際には、空気中の酸素や水との反応をふせぐために'''石油中'''(灯油)に保存する。リチウムは石油よりも軽いため、石油に浮く。また、単体は素手で触れず、必ずピンセットなどを用いて扱う。
<!--
水だけでなく、ヒドロキシル基(-OH)を持つアルコールやフェノールとも水素を発生しながら反応して、アルコキシド、フェノキシドとなる。
: 2R-OH + 2X → 2R-OX + H{{sub|2}} (Rは炭化水素基、XはLi、Na、Kなど)
-->
{| class="wikitable" align=right
|+ アルカリ金属の単体の性質
|-
|- style="background:silver"
! 元素名 !! 元素記号 !! 融点(℃) || 沸点(℃) || 密度(g/cm<sup>3</sup>) || 炎色反応
|-
| リチウム || Li || 180 || 1347 || 0.53 || 赤
|-
| ナトリウム|| Na || 98 || 883 || 0.97 || 黄
|-
| カリウム || K || 64 || 774 || 0.86 || 赤紫
|-
| ルビジウム || Rb || 39 || 688 || 1.53 || 赤
|-
| セシウム || Cs || 28 || 678 || 1.87 || 青
|-
|}
イオンは'''炎色反応'''を示し、白金線にイオン水溶液をつけガスバーナーの炎に入れると、リチウムイオンでは赤色に、ナトリウムイオンでは黄色に、カリウムでは赤紫色にそれぞれ炎が色づく。
{|align="center" style="border:solid #aaffaa 1px; text-align:center;"
|[[File:FlammenfärbungLi.png|52px|リチウムの炎色反応]]||[[File:FlammenfärbungNa.png|50px|ナトリウムの炎色反応]]||[[File:FlammenfärbungK.png|50px|カリウムの炎色反応]]
|-
|Li||Na||K
|}
=== アルカリ金属の化合物 ===
アルカリ金属は様々な化合物を作る。この章ではアルカリ金属の中でも、特にナトリウムの化合物について学ぶ。
==== 水酸化物 ====
アルカリ金属の単体が水と反応すると水酸化物となる。たとえばリチウムは水酸化リチウム(LiOH)に、ナトリウムは水酸化ナトリウム(NaOH)に、カリウムは水酸化カリウム(KOH)になる。
水酸化ナトリウムの工業的な製法については、塩化ナトリウム NaCl 水溶液の電気分解によって製造される。
常温では白色の固体であり、水によく溶けて、いずれの水溶液も強塩基性を示す。このため皮膚を冒す性質があり、取り扱いに注意する。
[[ファイル:Sodium_hydroxide.jpg|右|サムネイル|200x200ピクセル|水酸化ナトリウム]]
水酸化ナトリウムと水酸化カリウムの固体は吸湿性があり、空気中に放置すると水蒸気を吸収してその水に溶けてしまう。この現象を'''潮解'''(ちょうかい、deliquescenece)という。
水溶液も吸湿性があるため、長時間放置すると溶液の濃度が変化する。したがって精密さを要する実験では、直前に水溶液を調整するようにするとともに、中和滴定などにより正確な濃度を測る必要がある。
また水酸化ナトリウムは水分を吸収するだけでなく、空気中の二酸化炭素も吸収して、炭酸塩の炭酸ナトリウム(Na{{sub|2}}CO{{sub|3}})を生じる。
: <chem>2NaOH + CO2 -> Na2CO3 + H2O</chem>
この性質から、二酸化炭素の吸収剤として用いられることがある。
水酸化ナトリウムの産業上の用途は、製紙業でのパルプの製造、石油の精製、繊維の製造、セッケンの製造、などで用いられている。 水酸化ナトリウムは'''苛性ソーダ'''とも呼ばれる。
==== 炭酸塩・炭酸水素塩 ====
'''炭酸水素ナトリウム'''(NaHCO{{sub|3}})と'''炭酸ナトリウム'''(Na{{sub|2}}CO{{sub|3}})は共に白色の粉末である。工業的には'''アンモニアソーダ法'''により製造される。
==== アンモニアソーダ法(ソルベー法) ====
アンモニアソーダ法は炭酸ナトリウムの工業的製法である。
# 塩化ナトリウムの飽和水溶液にアンモニアと二酸化炭素を通す。 <chem>NaCl + NH3 + CO2 + H2O -> NaHCO3 + NH4Cl</chem>
# 炭酸水素ナトリウムを加熱する。 <chem>2NaHCO3 -> Na2CO3 + CO2 ^ + H2O</chem>
[[ファイル:アンモニアソーダ法反応過程.svg|右|サムネイル|550x550ピクセル|アンモニアソーダ法の反応経路図]]
;
反応で生じた生成物は次のように再利用できる。
# 炭酸カルシウムを加熱して酸化カルシウムと二酸化炭素を得る。
#: <chem>CaCO3 -> CaO + CO2</chem>
# 1.で得た酸化カルシウムに水をくわえ、水酸化カルシウムとする。
#: <chem>CaO + H2O -> Ca(OH)2</chem>
# 2.で得た水酸化カルシウムを1.で得た塩化アンモニウムと反応させ、塩化カルシウムとアンモニアを得る。このアンモニアは回収して1.の反応で再利用する。
#: <chem>2NH4Cl + Ca(OH)2 -> CaCl2 + 2NH3 + 2H2O</chem>
アンモニアソーダ法は全体としては、 <chem>2NaCl + CaCO3 -> Na2CO3 + CaCl2</chem> という反応式で表される。
原料がCaCO{{sub|3}}(石灰岩、秩父などで大量に採れる)とNaCl(食塩、買えなくても海水から作れる)とNH{{sub|3}}(アンモニア、ハーバー・ボッシュ法で大量生産できる)のみと非常に安価なので、アンモニアソーダ法は「安く大量生産を目指す」工業的製法としては最も理想形に近いと言われている。
==== 炭酸ナトリウム ====
炭酸水素ナトリウムは、熱分解して炭酸ナトリウム(sodium carbonate)となる。炭酸ナトリウムは白色の粉末で、水に溶け、水溶液は塩基性を示す。
炭酸ナトリウムは加熱しても、分解しない。
炭酸ナトリウムは弱酸と強塩基の塩であり、水に溶けると加水分解して塩基性を示す。
<chem>Na2CO3 -> 2 {Na^+} + CO3^{2-}</chem>
<chem>CO3^{2-} + H2O <=> {HCO3^-} + OH^-</chem>
炭酸ナトリウム水溶液を冷却すると十水和物 <chem>Na2CO3*10H2O</chem> の無色透明の結晶が得られる。この <chem>Na2CO3*10H2O</chem> の結晶は空気中に放置すると水和水の大部分を失って、白色粉末の一水和物 <chem>Na2CO3*H2O</chem> となる。この現象は'''風解'''(ふうかい、efflorescence)と呼ばれる。
炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムは、ともに強酸と反応して二酸化炭素を生じる。(弱酸遊離反応)
<chem>Na2CO3 + 2H2SO4 -> Na2SO4 + H2O + CO2 ^</chem>
炭酸ナトリウムは、ガラスや石鹸の製造などに用いられる。
※ガラスの原料は二酸化珪素 <chem>SiO2</chem> であるが、これを珪酸ナトリウム <chem>Na2SiO3</chem> にする反応において、水酸化ナトリウムよりも炭酸ナトリウムの方がよく用いられる。<chem>SiO2 + NaOH -> Na2SiO3 + H2O</chem>という反応と<chem>SiO + Na2CO3 -> Na2SiO3 + CO2</chem>という反応を比べた時、左の反応は反応性が高いものの、生成された <chem>H2O</chem> が反応の系内に残るので逆反応が起こり、平衡状態となって反応が見かけ上止まってしまう。それに対し、右の反応は生成された <chem>CO2</chem> が反応の系外に脱出するので、ルシャトリエの原理により平衡が正反応の向きに偏って反応がより一層進行する。そのため、通常は炭酸ナトリウムが用いられる。
==== 炭酸水素ナトリウム ====
炭酸水素ナトリウム <chem>NaHCO3</chem> は白色粉末で、水に少し溶け、水溶液は加水分解により弱塩基性を示す。炭酸水素ナトリウムは'''重曹'''(じゅうそう)ともいう。(重曹は「重炭酸曹達」の略である。「重炭酸」は「炭酸水素」の別名であり、「曹達(ソーダ)」はナトリウムの和名である。)
炭酸水素ナトリウムを熱すると、分解して二酸化炭素を発生する。
<chem>2NaHCO3 -> Na2CO3 + H2O + CO2 v</chem>
(上記の反応は、ソルベー法での炭酸水素ナトリウムの分解反応と同じ。)
炭酸水素ナトリウムの用途は、発泡剤やベーキングパウダー(ふくらし粉)、入浴剤の発泡剤成分、などとして用いられている。
また、強酸で、二酸化炭素を発生する。
<chem>NaHCO3 + HCl -> NaCl + H2O + CO2 v</chem>
=== 塩化物 ===
[[ファイル:NaCl-zoutkristallen_op_Schott_Duran_100_ml.JPG|右|サムネイル|200x200ピクセル|塩化ナトリウムの結晶]]
水酸化ナトリウムに塩酸を加えると、中和反応を起こし塩化ナトリウム(NaCl)を生じる。
<chem>NaOH + HCl -> NaCl + H2O</chem>
塩化ナトリウムは天然では岩塩に豊富に含まれており、食塩の主成分としても有名である。工業的には海水を濃縮することにより得られる。
塩化ナトリウムを融解塩電解すると単体のナトリウムが得られる。
<chem>2NaCl -> 2Na v Cl2 ^</chem>
塩化ナトリウム水溶液を電気分解すると、陽極から塩素が発生し、陰極から水素が発生する。このとき陰極側では水の電気分解反応が起こっており、水酸化物イオンが生じている。
<chem>2H2O -> H2 + 2 OH^-</chem>
溶液中にはナトリウムイオンが残るため、陰極付近では水酸化ナトリウムの水溶液が得られる。この原理は工業的な水酸化ナトリウムおよび塩素・水素の製造法として応用されており、陽イオン交換膜を用いることから'''イオン交換膜法'''と呼ばれる。
== 2族元素 ==
周期表の2族の元素は、すべて金属元素である。2価の価電子をもち、2価の陽イオンになりやすい。天然には塩として存在している。
2族元素のことをアルカリ土類金属という<ref>アルカリ土類金属の定義として、「Be,Mgを除く2族元素」と定義しているところもある。これは、後述するようにBe,Mgとその他の2族元素の性質に異なるところがあるからである。</ref>。
=== アルカリ土類金属元素 ===
2族元素の単体はアルカリ金属元素の単体よりも硬い。
[[ファイル:Magburn1.jpg|右|サムネイル|250x250ピクセル|マグネシウムの燃焼]]
2族元素の単体は、いずれも、空気中で激しく燃焼して酸化物を生じる。たとえばマグネシウムは白い強い光を出しながら燃焼して白色の酸化マグネシウム(MgO)を生じる。
: <chem>2Mg + O2 -> 2MgO</chem>
マグネシウムは二酸化炭素とも熱や光を出しながら激しく反応する。
: <chem>2Mg + CO2 -> 2MgO + C</chem>
2族元素の酸化物はいずれも塩基性酸化物であり、酸と反応する。たとえば酸化マグネシウムは塩酸と反応して塩化マグネシウムを生じる。
: <chem>MgO + 2HCl -> MgCl2 + H2O</chem>
[[ファイル:Magnesium_chloride.jpg|右|サムネイル|200x200ピクセル|塩化マグネシウムの潮解]]
塩化マグネシウムは白色の固体であり、潮解性がある。
ベリリウム・マグネシウムとアルカリ土類金属とでは、次のような違いがある。
* '''炎色反応'''
*: ベリリウムとマグネシウムの単体は、炎色反応を示さない。アルカリ土類金属元素は炎色反応を示し、イオンの水溶液を白金線の先につけてガスバーナーの炎に入れると、カルシウムでは橙赤色に、ストロンチウムでは紅色に、バリウムでは黄緑色に、それぞれ炎が色づく。
{| align="center" style="border:solid #aaffaa 1px; text-align:center;"
|[[ファイル:FlammenfärbungCa.png|153x153ピクセル|カルシウムの炎色反応]]
|[[ファイル:FlammenfärbungSr.png|152x152ピクセル|ストロンチウムの炎色反応]]
|-
|Ca
|Sr
|}
{| class="wikitable" align="right"
|+2族元素の単体の性質
|- style="background:silver"
!
!元素名
!元素記号
!融点(℃)
!密度(g/cm<sup>3</sup>)
!炎色反応
|-
| rowspan="2" |
|ベリリウム
|Be
|1282
|1.85
|示さない
|-
|マグネシウム
|Mg
|649
|1.74
|示さない
|-
| rowspan="3" |アルカリ
土類金属
|カルシウム
|Ca
|839
|1.55
|橙赤
|-
|ストロンチウム
|Sr
|769
|2.54
|紅
|-
|バリウム
|Ba
|729
|3.59
|黄緑
|-
|}
* 水との反応性
*: アルカリ土類金属の単体は常温で水と反応し、水素を発生する。
*:: <chem>Ca + 2H2O -> Ca(OH)2 + H2 ^</chem>
*: 一方で、ベリリウムやマグネシウムの単体は常温では水と反応しない。ただし、マグネシウムは熱水と反応して水素を発生しながら水酸化物となる。
*:: <chem>Mg + 2H2O -> Mg(OH)2 + H2 ^</chem>
* 硫酸塩の水への溶けやすさ
*: 例外的に、硫酸ベリリウム、硫酸マグネシウムは水に溶けやすい。だが、それ以外のアルカリ土類金属の硫酸塩は水に溶けにくい。
=== バリウム ===
水酸化バリウムの水溶液などに希硫酸を加えると、硫酸バリウム BaSO<sub>4</sub> の白色沈殿が得られる。
硫酸バリウム BaSO<sub>4</sub> は白色の粉末で、水に溶けず、酸にも反応しない。
硫酸バリウムの実社会の用途として、医療では、この性質(水に溶けにくい、酸に反応しない、など)を利用して、人体のX線撮影の造影剤として、胃や腸など消化器官のようすを撮影するための造影剤として、硫酸バリウムは用いられる。
なおバリウムおよび硫酸バリウムは、X線を透過させにくい。そのため、X線撮影の際、人体内のバリウムのある場所でX線が遮断され、撮影装置にX線が届かなくなるので、胃や腸でのバリウムのようすが見える、という仕組みである。
=== カルシウム ===
[[ファイル:Calcium_unter_Argon_Schutzgasatmosphäre.jpg|右|サムネイル|200x200ピクセル|カルシウムの単体]]
'''カルシウム'''(Ca)はアルカリ土類金属のひとつである。単体は塩化カルシウムの融解塩電解により得られる。
[[ファイル:Big-Calcium-Bubble.ogv|右|サムネイル|250x250ピクセル|二酸化炭素の発生]]
=== 酸化物 ===
単体を空気中で燃焼させると酸化カルシウム(CaO)を生じる。酸化カルシウムは'''生石灰'''(せいせっかい)とも呼ばれる。
: <chem>2Ca + O2 -> 2CaO</chem>
酸化カルシウムに水を加えると熱を出しながら水酸化カルシウム(<chem>Ca(OH)2</chem>)を生じる。水酸化カルシウムは消石灰とも呼ばれる。
: <chem>CaO + H2O -> Ca(OH)2</chem>
酸化カルシウムは水を吸収し、そのさい発熱することから、乾燥剤や発熱材として用いられる。ただし、酸性気体とは反応してしまうため、塩基性・中性気体の乾燥にしか使えない。
=== 水酸化物 ===
酸化カルシウムに水を加えると熱を出しながら水酸化カルシウム(<chem>Ca(OH)2</chem>)を生じる。
: <chem>CaO + H2O -> Ca(OH)2</chem>
逆に、水酸化カルシウムを加熱すると酸化カルシウムが得られる。
: <chem>Ca(OH)2 -> CaO + H2O</chem>
水酸化カルシウムはカルシウムを水と反応させることによっても得られる。
: <chem>Ca + 2H2O -> Ca(OH)2 + H2 ^</chem>
水酸化カルシウムは白色の粉末であり、消石灰とも呼ばれる。水酸化カルシウムの水溶液は塩基性を示し、一般に石灰水(lime water)と呼ばれる。 石灰水に二酸化炭素を通じると、炭酸カルシウムの白色沈殿を生じて白濁する。この反応は二酸化炭素の検出に用いられる。
: <chem>Ca(OH)2 + CO2 -> CaCO3 v + H2O</chem>
しかし、白濁した石灰水にさらに二酸化炭素を通じ続けると、炭酸水素カルシウムとなって沈殿は溶解し、無色の水溶液になる。
: <chem>CaCO3 + CO2 + H2O -> Ca(HCO3)2</chem>
この炭酸水素カルシウム水溶液を加熱すると、再び炭酸カルシウムの沈殿が生じる。
: <chem>Ca(HCO3)2 -> CaCO3 v + CO2 ^ + H2O </chem>
水酸化カルシウム水溶液に塩酸を加えると、塩化カルシウムを生じる。塩化カルシウムは吸湿性があり、乾燥剤としてしばしば用いられる。
: <chem>Ca(OH)2 + 2HCl -> CaCl2 + 2H2O</chem>
水酸化カルシウム水溶液に塩素を通じると、[[高等学校化学I/非金属元素の単体と化合物#塩素のオキソ酸|さらし粉]]を生じる。
: <chem>Ca(OH)2 + Cl2 -> CaCl(ClO)*H2O</chem>
水酸化カルシウムは漆喰に使われている。
=== 塩化物 ===
塩化カルシウム CaCl{{sub|2}}は一般的には「エンカル」という名称で用いられる。
使用用途は乾燥剤と融雪剤である。中性なのであらゆる気体の乾燥に使えるが、唯一アンモニアとは反応してしまうためアンモニアの乾燥はできない。
夏にエンカルをグラウンドに撒くことがある。これは、大気中の水分をエンカルが吸うことにより、地表が湿って砂埃が舞うのが抑えられるためである。
=== 炭酸塩 ===
炭酸カルシウム CaCO{{sub|3}} の固体は、天然には石灰岩や大理石として存在する。
鍾乳洞(しょうにゅうどう)や鍾乳石(しょうにゅうせき)は、炭酸カルシウムが地下水にいったん溶けて、水中で炭酸水素ナトリウムとなり、その後、炭酸カルシウムに戻り、再度、固まったものでる。
炭酸カルシウムは塩酸などの強酸と反応して、二酸化炭素を発生する。
: <chem>CaCO3 + 2HCl -> CaCl2 + H2O + CO2 ^</chem>
炭酸カルシウムは、セメントの原料や、チョークの原料、ガラスの原料、歯みがき粉の原料などとして、使われている。
=== 硫酸塩 ===
水酸化カルシウム水溶液に硫酸を加えると、硫酸カルシウム CaSO{{sub|4}} の白色沈殿を生じる。硫酸カルシウムは天然には二水和物が'''セッコウ'''(石膏)として存在する。セッコウを約130℃で焼くことにより、二分の一水和物である'''焼きセッコウ'''の白色粉末となる。
: <chem>Ca(OH)2 + H2SO4 -> CaSO4 + 2H2O</chem>
焼きセッコウの粉末に水を少量まぜると、硬化して、体積が少し増え、セッコウになる。セッコウ像(塑像)や医療用ギプスは、この性質を利用している。ただし、重量があるせいなのかギプスとしての用途は近年薄れてきている。その代わり、建材としての用途が増えてきた。
カルシウムやバリウムの硫酸塩は水に溶けにくく、この性質は陽イオンの系統分離において重要である。また日常生活においても重要で、硫酸カルシウムは建築材や医療用ギプスに、硫酸バリウムBaSO<sub>4</sub>はX線撮影の造影剤として用いられる。
=== 発展: 硬水と軟水 ===
Ca{{sup|2+}}やMg{{sup|2+}}を多く含む水を'''硬水'''という。それらが少量しか含まれていない水のことを'''軟水'''という。
日本では一般に、地下水には硬水が多い。日本では河川水には軟水が多い。
また、硬水を飲むと、下痢を起こしてしまう。なので、食用には硬水は不適切である。
しかし、農業用水に硬水を使う分には問題がない。
もしボイラーで硬水を使うと、沈殿が残るので、配管の詰まりを起こしやすく、危険であり不適切である。
工業用水や生活用水には、硬水は不適切である。
大陸の河川水では、硬水が多い。その理由は、大陸の河川水は緩流なので、鉱物質が溶けこんでいるので、硬水が多い。
いっぽう、日本では急流が多いことが、日本の河川水に軟水が多い。{{コラム|水の硬度|<chem>Ca^2+</chem> や <chem> Mg^2+</chem> をすべて <chem>CaCO3</chem> と考えたときの <chem>CaCO3</chem> の 1L 当たりの質量(mg)を硬度という。
基本的に水の硬度の数値が低いほど軟水である。いっぽう、水の硬度の数値が高いと硬水である。
::硬度60までが「軟水」。
::硬度120以上は「硬水」。
::硬度60~120は「中硬水」というのに分類する。
::なお、フランスノミネラルウォーターの「エビアン」は硬度が約300であり、硬水である。フランスでも、ボルヴィック(ミネラルウォーターの商品のひとつ)は硬度が約60で、軟水に近い。}}
=== ※ 範囲外: ===
ベリリウムとマグネシウムは、金属に分類されている(高校教科書でも、ベリリウムなどは金属に分類されている。)。しかし、上述のように特殊な性質を示すこともあり、一説には、ベリリウムはやや共有結合よりの金属結合をしている中間的な結合であるかもしれないと解釈する理論も存在する。(※ 参考文献: 東京化学同人『無機化学 - その現代的アプローチ -』、第二版、94ページ )
ベリリウムに他の金属が衝撃的にぶつかっても火花が飛び散りづらい性質があるので、そのため特殊なカナヅチの材料としてベリリウム系の合金(ベリリウムと銅の合金)が使われていることも多い。
またベリリウムはX線および電磁波を透過するので、X線管の材料のうち、X線を透過させたい部分の材料に使われる。
天然では、宝石のエメラルドにベリリウムが含まれる。
なお、化学的には、ベリリウムはアルミニウムに近い反応をすることも多い。(※ 参考文献: 東京化学同人『無機化学 - その現代的アプローチ -』、第二版、94ページ )
エメラルドにも、アルミニウムは含まれる。(エメラルドの主成分は、シリコンとアルミニウムとベリリウムである。)
==== 耐火レンガ ====
酸化マグネシウム MgO は融点が高く(約2800℃)、耐火レンガやるつぼの材料などに用いられている。(※ 数研出版のチャート式にこのように書かれている。)
: ※ 古い版のチャート式では、融点が高いから耐火レンガに使われていると書かれているが、最新の版では訂正されており、これらは別個のこととして説明されている。
: ※ 検定教科書では、啓林館の科目『科学と人間生活』教科書で、組成は書かれてないが、耐火レンガというものが存在する事が書かれている。
; 熱の伝わりやすさの調節
(チャート式などでは範囲外(普通科高校の範囲外)なので触られてないが)、耐火レンガの材料などに酸化マグネシウムや酸化アルミニウムなどが用いられる理由のひとつとして、融点の高さのほかにも、熱の伝わりやすさという、重大な理由がある。(※ 工業高校などの一部の学科で習う。)(※参考文献: 文部科学省著作教科書『セラミック工業』平成15年3月25日 初版発行、平成18年1月25日、実教出版 発行、188ページや203ページなど。)転炉や電気炉で近年、マグネシアカーボンれんが が用いられているという。なお、高炉はアルミナ質れんが や 炭化ケイ素れんが が用いられているという。また、製鉄の溶融スラグは塩基性であると考えられており、酸化マグネシウムは耐塩基性としての耐腐食性が高い(つまり、腐食しにくい)と考えられていることも、各所で酸化マグネシウムが使われる一因である。
もし るつぼ等の使用中に高熱が一箇所に蓄積すると、るつぼ等が溶融してしまい破壊されてしまうので、熱を伝えやすい材料を適切な場所に用いることで、るつぼ等の寿命をのばしているのである。
酸化マグネシウムや酸化アルミニウムなど、いちぶの金属の酸化物は(金属酸化物を含まない単なる粘土レンガと比べれば)比較的に熱を伝えやすい。
名前こそ「耐火」レンガであるが、酸化マグネシウムを含まないからといって、耐熱性が低いわけでもないし、燃えやすいわけでもない。
酸化マグネシウム系レンガなどが必要とされる本当の理由は、熱を分散・拡散しやすいことである。
: ※ 『耐火レンガ』という名称が、あまり適切ではないかもしれないが、社会では、この名前で定着してしまっている。
耐火レンガを作る際、そもそもレンガの母材として粘土が必要であるが、それに酸化マグネシウムや酸化アルミニウムなどを適量に混ぜることで、熱の伝わりやすさを調節して、耐火レンガは設計される。
== アルミニウム ==
'''アルミニウム Al''' は13族の金属元素で、価電子を3個もち、3価の陽イオンになりやすい。
銀白色の軽い金属である。展性や延性が大きく、薄く伸ばしたものはアルミニウム箔(いわゆるアルミホイル)として一般家庭でも用いられている。また、電気伝導性も良く、熱伝導性も良い。熱伝導性が良いことから、鍋などにも用いられる。
アルミニウムの単体を空気中に放置すると、表面に緻密な酸化膜(酸化アルミニウム Al{{sub|2}}O{{sub|3}} )の被膜ができ、内部を保護する。
アルミニウムやマグネシウムを主成分とする合金である'''ジュラルミン'''は軽量かつ強度が高く、航空機に用いられている。アルミニウム自体も、アルミ缶や1円硬貨に用いられている。
=== 製法 ===
==== バイヤー法 ====
アルミニウムの天然の鉱石は'''ボーキサイト'''(bauxite)といい、ボーキサイトの化学式はAl<sub>2</sub>O<sub>3</sub>・nH<sub>2</sub>Oである。ボーキサイトに濃い水酸化ナトリウム溶液NaOHを加えてアルミン酸ナトリウム2Na[Al(OH)<sub>4</sub>]が得られる。正確にはテトラヒドロキソアルミン酸ナトリウムという。
: <math>\mathrm{ Al_2O_3 + 2NaOH + 3H_2O \rightarrow 2Na[Al(OH)_4] } </math>
アルミン酸ナトリウム2Na[Al(OH)_4]の溶液を冷却し、加水分解がおこると水酸化アルミニウムAl(OH)<sub>3</sub> の沈殿が析出する。
: <math>\mathrm{ Na[Al(OH)_4] \rightarrow Al(OH)_3+ NaOH } </math>
生じたAl(OH)<sub>3</sub> を分離して、このAl(OH)3を1200℃に加熱して酸化アルミニウムAl<sub>2</sub>O<sub>3</sub>にする。 これらのボーキサイトからアルミナまでの工程を'''バイヤー法'''という。
Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub> は'''アルミナ'''という。アルミナは融点が高く、約2000℃の融点なので、融点を次の融解塩電解という処理で下げる。
==== 溶融塩電解 ====
[[ファイル:Mineraly.sk_-_bauxit.jpg|代替文=ボーキサイト|サムネイル|200x200ピクセル|ボーキサイト]]
鉱石の'''ボーキサイト'''(bauxite、主成分: 酸化アルミニウム <chem>Al2O3</chem>)を処理して酸化アルミニウム(<chem>Al2O3</chem>)にかえたあと、氷晶石(<chem>Na3AlF6</chem>、ヘキサフルオロアルミン酸ナトリウム)とともに熔融塩電解して製造される。('''エルー・ホール法''')
: <chem>Al^3+ + 3e^- -> Al v</chem>
アルミニウムの電解には、大量の電力が必要となる。
[[ファイル:Cut_Ruby.jpg|代替文=ルビー|サムネイル|150x150ピクセル|ルビー]]
[[ファイル:SaphirSynthetique.jpg|代替文=サファイア|サムネイル|150x150ピクセル|サファイア]]
製造の過程で得られる酸化アルミニウム(Al{{sub|2}}O{{sub|3}})は水に溶けにくい白色の固体である。酸化アルミニウムは'''アルミナ'''とも呼ばれ、融点が非常に高い(アルミナの融点は2054℃)ことから耐熱材の原材料としても用いられるほどである。氷晶石は、このアルミナの融点を降下させるために加えられる。
アルミニウムの粉末は、空気中または酸素中で熱すると、激しく燃える。
* ボーキサイトから酸化アルミニウムを得る方法 (※ 教科書の範囲外。資料集(実教出版など)の範囲内。文献により、方法が若干、違う。)
濃い水酸化ナトリウム水溶液でボーキサイト中の酸化アルミニウムが溶け、ほかの不純物はあまり溶けない。まず、この水酸化ナトリウム水溶液で酸化アルミニウムを溶かして アルミン酸ナトリウム <chem>Na[Al(OH)4]</chem> を得る。
: <chem>Al2O3 + 2NaOH + 3H2O -> 2 Na[Al(OH)4]</chem>
(ここまでは、どの文献でも、ほぼ同じ。) まず、ろ過をして、溶液から、不溶性の <chem>Fe2O3</chem> などの余計な不純物を取り除く。
あとは、このアルミン酸ナトリウム水溶液をうまく処理し、アルミナに変えていく方法が必要なのである。
まず、アルミン酸ナトリウム <chem>Na[Al(OH)4]</chem> 水溶液から、なんらかの方法で、加水分解を起こし、水酸化アルミニウム <chem>Al(OH)3</chem> を沈殿させる。
: <chem>Na[Al(OH)4] -> Al(OH)3 + NaOH</chem>
あとは、この水酸化アルミニウムを高温で焼成すると、純度の高い酸化アルミニウムが得られる。
* テルミット法
また、アルミニウム単体の粉末と、酸化鉄 <chem>Fe2O3</chem> など他の金属酸化物の粉末を混合して、加熱すると、アルミニウムが激しく酸化され、ほかの金属酸化物が還元され、金属単体が得られる。たとえば酸化鉄(Ⅲ)とアルミニウムを混合して加熱すると、鉄が得られる。
: <chem>2Al + Fe2O3 -> Al2O3 + 2Fe v</chem>
これを'''テルミット法'''といい、レールの熔接などに用いられる。
両性元素
アルミニウムは両性元素であり、酸とも塩基とも反応して水素を生じる。たとえば、塩酸と反応して水素を発生しながら塩化アルミニウムを生じる。
: <chem>2Al + 6HCl -> 2AlCl3 + 3H2 ^</chem>
また、水酸化ナトリウム水溶液と反応して、水素を発生しながらテトラヒドロキソアルミン酸イオンを生じる。
: <chem>2Al + 2NaOH + 6H2O -> 2Na+ + 2[Al(OH)4]^- + 3H2 ^</chem>
しかし、アルミニウムは濃硝酸に溶けない。これは、反応開始直後に金属表面に緻密な酸化被膜を形成し、反応が金属内部まで進行しなくなるためである。このように、緻密な酸化皮膜により保護されて、それ以上は反応が進行しない状態を'''不動態'''(ふどうたい)という。
'''アルマイト'''という材料は、アルミニウムの表面を人工的に酸化させることで厚い不動態の膜で保護させ、そのアルミニウムの耐久性を上げた材料であり、日本で開発された。
イオン
アルミニウムイオン(<chem>Al3+</chem>)の水溶液は無色透明である。これに水酸化ナトリウム水溶液を少量加えると、水酸化アルミニウムの白色ゼリー状沈殿を生じる。
: <chem>Al3+ + 3NaOH -> 3 Na+ + Al(OH)3 v</chem>
しかし、水酸化ナトリウム水溶液を過剰に加えると、沈殿は溶解して無色の水溶液となり、テトラヒドロキソアルミン酸イオンを生じる。
: <chem>Al(OH)3 + NaOH -> Na+ + [Al(OH)4]^-</chem>
テトラヒドロキソアルミン酸イオン水溶液に塩酸を加えると、逆に水酸化アルミニウムの白色沈殿を生じ、過剰に加えれば塩化アルミニウムを生じる。塩化アルミニウムは潮解性のある白色の固体であるが、水に溶けやすく、電離してアルミニウムイオンを生じる。
=== 水酸化アルミニウム ===
アルミニウムイオンを含んだ水溶液に、塩基を加えると、水酸化アルミニウム <chem>Al(OH)3</chem> の白色ゲル状の沈殿が生じる。 水酸化アルミニウムを熱すると、酸化アルミニウム <chem>Al2O3</chem> が生じる。
水酸化アルミニウム <chem>Al(OH)3</chem> は酸とも塩基とも反応して溶けることのできる、両性水酸化物である。
: <chem>Al(OH)3 + 3HCl -> AlCl3 + 3H2O</chem>
: <chem>Al(OH)3 + NaOH -> Na[Al(OH)4]</chem>
=== 酸化アルミニウム ===
酸化アルミニウム <chem>Al2O3</chem> は、'''アルミナ'''(alumina)とも呼ばれ、白色の粉末で、水に溶けない。また、融点が高い(融点:2054℃)。 酸化アルミニウム <chem>Al2O3</chem> は、酸にも強塩基にも溶ける両性酸化物であるが、アンモニア水には溶けない。
: <chem>Al2O3 + 6HCl -> 2AlCl3 + 3H2O</chem>
: <chem>Al2O3 + 2NaOH + 3 H2O -> 2Na[Al(OH)4]</chem>
また、たとえば宝石のルビーやサファイアは、酸化アルミニウムが主成分の結晶である。酸化アルミニウムの結晶のうち、ごく微量のクロムやチタンなどの金属が混入したものが、赤いルビーや青いサファイアであり、ともに、かなり硬い。また、酸にも塩基にも、ルビーやサファイアは溶けない。 なお、ルビーにはクロム Cr が、サファイアには鉄 Fe やチタン Ti が含まれている。{{コラム|人工宝石|:※ 『科学と人間生活』(啓林館など)に記述がある。
ルビーやサファイアなどは組成がわかっているので、人工的に作ることもできる。
材料であるアルミナやクロムまたは鉄などに高温や高圧などを加えて熱することで、人工的にルビーやサファイアなどを作ることができる。
このように、人工的につくった宝石のことを人工宝石といい、さまざまな分野に応用されている。
また、アルミナ化合物ではないが、ダイヤモンドや水晶などアルミナ以外の宝石でも、人工的につくることができる。
人工ダイヤや人工水晶も、人工宝石に含める。
なお、人工ダイヤモンドは、その硬さを活用して、工場などの大型の回転カッターなどの切れ味を増すための材料などとして、刃先に人工ダイヤのある刃物が応用されている(いわゆるダイヤモンドカッター)。}}
=== ミョウバン ===
[[ファイル:Alun.jpg|代替文=ミョウバンの結晶|サムネイル|200x200ピクセル|ミョウバンの結晶]]
硫酸カリウム水溶液と硫酸アルミニウム水溶液とを混合して濃縮して得られる結晶は、硫酸カリウムアルミニウム十二水和物 AlK(SO{{sub|4}}){{sub|2}}・12H{{sub|2}}O の結晶であり、この硫酸カリウムアルミニウム十二水和物を'''ミョウバン'''(明礬)という。
ミョウバンの結晶は無色透明で正八面体形をしている。 ミョウバンを水に溶かすと、<chem>Al^3+</chem> 、<chem>K^+</chem> 、<chem>SO4^2-</chem> の各イオンに電離する。 <chem>AlK(SO4)2*12H2O -> {Al^3+} + {K^+} + 2 {SO4^{2-}} + 12 H2O</chem>
ミョウバンのように、2種類以上の塩が結合して物質を'''複塩'''(ふくえん、double salt)という。
ミョウバンを焼くと、無水物である焼きミョウバンが得られる。ミョウバンは温度による溶解度の変化が激しく、低温の水には少量しか溶けないが、温度を上げるとよく溶けるようになる。
=== 補:両性金属の反応モデル ===
[[高校化学 アルカリ金属#金属と水の反応モデル]]において、水酸化物皮膜を用いて金属と水の反応を説明した。
ここでは、同様にして両性金属元素の反応モデルを考える。
水中にある金属Mは水と反応して表面に水酸化物M(OH){{sub|x}}の皮膜を作る。
ここで、酸HXを加えると水酸化物皮膜と反応して塩が生成される。塩は完全に電離するので金属の表面が露出し、水酸化物皮膜が生成される。また水酸化物が酸と反応して金属の表面が露出し・・・と反応が進行し、最終的に全て塩となって水に溶ける。
また、塩基YOHを加えると、水酸化物イオンと水酸化物が反応して錯イオンを形成する。錯イオンは水に可溶なので金属の表面が露出し(以下略)と反応が進行し、最終的に全て錯イオンとなって水に溶ける。
== スズと鉛 ==
スズ Sn と鉛 Pb は、ともに周期表14族であり、原子は価電子を4個もち、ともに酸化数が+2または+4の化合物をつくり、ともに両性元素であり、ともにイオン化傾向は水より大きい。
=== スズ ===
[[ファイル:Metal_cube_tin.jpg|代替文=スズ|サムネイル|200x200ピクセル|スズ]]
スズ(Sn)は銀白色の固体である。展性や延性に富み、また比較的さびにくい金属である。酸とも塩基とも反応して、水素を発生する。
: <chem>Sn + 2HCl -> SnCl2 + H2</chem>
: <chem>Sn + 2NaOH + 2H2O -> [Sn(OH)4]^2- + 2 Na^+ + H2</chem>
スズは、青銅やハンダなど合金の材料でもある。
また、スズはメッキに多用される。鉄にスズをメッキしたものは「'''ブリキ'''」と呼ばれ、缶詰や金属玩具などに用いられる。
{| align="center" style="border:none; text-align:center;"
|[[ファイル:Assorted_bronze_castings.JPG|右|サムネイル|183x183ピクセル|青銅]]
|[[ファイル:HK_Food_Grass_Jelly_Canned_with_Tinplate_a.jpg|右|サムネイル|201x201ピクセル|ブリキの缶詰]]
|}
=== スズの化合物 ===
化合物中でのスズの酸化数には +2 と +4 があるが、スズの場合は 酸化数=+4 のほうが安定である。
スズを塩酸に溶かした溶液から、塩化スズ <chem>SnCl2</chem> が得られる。 塩化スズ(II)二水和物 <chem>SnCl2*2H2O</chem> は無色の結晶。また、水溶液は還元作用がある。
: <chem>SnCl2 + 2Cl^- -> SnCl4 + 2e^-</chem>
=== 鉛 ===
[[ファイル:Metal_cube_lead.jpg|代替文=鉛|サムネイル|200x200ピクセル|鉛]]
'''鉛''' Pb は青白色のやわらかい金属である。鉛とその化合物は有毒である。
鉛は、両性元素であり、硝酸、強塩基の水溶液と反応して溶ける。しかし、塩酸と希薄硫酸には、鉛の表面に難溶性の皮膜(塩化鉛 PbCl<sub>2</sub> や、硫酸鉛 PbSO<sub>4</sub> の皮膜は、水に難溶)が発生するため、溶けない。
<chem>Pb + 2HNO3 -> Pb(NO3)2 + H2</chem> <chem>Pb + 2NaOH + 2H2O -> [Pb(OH)4]^2- + 2Na^+ + H2</chem>
ただし、塩酸と希硫酸には溶けない。また、アンモニア水のような弱塩基にも溶けない。
酸化鉛PbOは黄色く、古くは、黄色の顔料として用いられた。
鉛は放射線の遮蔽材や鉛蓄電池に使われている。
鉛の化合物は水に溶けにくいものが多いが、硝酸鉛 <chem>Pb(NO3)2</chem> や酢酸鉛 <chem>(CH3COO)2Pb</chem> は水によく溶ける。
=== イオン ===
鉛(II)イオン(<chem>Pb^2+</chem>)は様々な沈殿を作る。アンモニア水や少量の水酸化ナトリウム水溶液を加えると、水酸化鉛(II)の白色沈殿を生じる。
: <chem>Pb^2+ + 2OH^- -> Pb(OH)2 v</chem>
ただし、水酸化ナトリウム水溶液を過剰に加えると、テトラヒドロキソ鉛(II)酸イオンを生じて溶ける。
: <chem>Pb(OH)2 + 2NaOH -> 2Na^+ + [Pb(OH)4]2-</chem>
鉛(II)イオン水溶液に塩酸を加えると、塩化鉛(II)の白色沈殿を生じる。
: <chem>Pb^2+ + 2HCl -> 2 H^+ + PbCl2 v</chem>
これを加熱すると、鉛(II)イオンを生じて溶ける。
: <chem>PbCl2 -> Pb^2+ + 2Cl^-</chem>
鉛(II)イオン水溶液に希硫酸を加えると、硫酸鉛(II)の白色沈殿を生じる。
: <chem>Pb^2+ + H2SO4 -> 2H^+ + PbSO4</chem>
鉛(II)イオン水溶液に硫化水素を加えると、硫化鉛(II)の黒色沈殿を生じる。
: <chem>Pb^2+ + H2S -> 2H^+ + PbS v</chem>
鉛(II)イオン水溶液にクロム酸カリウム水溶液を加えると、クロム酸鉛(II)の黄色沈殿を生じる。
: <chem>Pb^2+ + CrO4^2- -> PbCrO4 v</chem>
鉛(II)イオン水溶液にヨウ化カリウム水溶液を加えると、ヨウ化鉛(II)の黄色沈殿を生じる。
: <chem>Pb^2+ + 2I^- -> PbI2</chem>
== セラミックス ==
ガラス、セメント、陶磁器などのように、無機物質に加熱処理などしたものを、'''セラミックス'''という。
また、このようなセラミック製品を製造する産業を、セラミック産業または窯業(ようぎょう)という。 窯は「かま」の事である。
原材料にケイ酸塩化合物を用いることが多いことから、ケイ酸塩工業ともいう。
=== 共通する性質 ===
セラミックスには多くの種類があるが、多くのセラミックス材料に共通する性質として、
: ・ 力をくわえても変形しづらい。延性・展性は無い
: ・ 絶縁体である
: ・ 耐熱性に優れる。しかし、急激な温度変化に対しては弱い
: ・ 錆びない
: がある。 なお、硬いという長所は、加工が難しいという短所でもある。
=== セメント ===
水を加えると硬化するものを'''セメント'''という。建築材料として用いられる'''ポルトランドセメント'''は、石灰石、粘土(SiO<sub>2</sub>, Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub>など)、酸化鉄Fe<sub>2</sub>O<sub>3</sub>などを粉砕して混合したのち、1500 ℃で加熱したものに、少量の石膏(CaSO<sub>4</sub>・2H<sub>2</sub>O)を加えて粉砕したものである。製造のとき、石灰石が高熱で処理され、酸化カルシウム CaO になる。
砂利、砂、水をセメントで固めたものを'''コンクリート'''という。また、セメントに砂を混ぜたものは、'''モルタル'''という。
[[ファイル:Liepaja_Karosta_falochron_polnocny_2.jpg|サムネイル|コンクリートで作られた消波ブロック]]
セメントやコンクリートには、カルシウム Ca が含まれている。 石膏は、硬化を遅らせて調節するために添加されている。
コンクリートは圧縮の力には強いが、引っ張りの力には弱いので、引っ張りに強い鉄筋を入れた鉄筋コンクリート(reinforced concrete, RC)として用いる。
コンクリートは、材料中の水酸化カルシウム Ca(OH)<sub>2</sub> により、塩基性を示す。また、この塩基性により、内部の鉄筋が酸から保護される。空気中の酸性物質などにより、コンクリートはしだいに中性に中和されていき、そのため強度がしだいに低下していく。また、鉄筋を保護していたコンクリートが劣化すると、内部の鉄筋も酸に腐食されやすくなる。
=== ガラス ===
ガラスはケイ酸塩を主成分として、ナトリウム Na、カリウム Kなどを含んでいる。
[[ファイル:Chartres_RosetteNord_121_DSC08241.jpg|サムネイル|503x503ピクセル|ステンドグラスには金属酸化物で着色されたガラスが使用されている。]]
ガラスの結晶構造は不規則であり、一定の融点を持たない。高温にすると、やわらかくなり水あめのように軟らかくなる。冷えると固まる。
ガラスの結晶のように、不規則なまま硬化している結晶構造を、'''アモルファス(非晶質)'''という。
ガラスは無色透明であるが、金属酸化物を加えることで着色することができる。
ほぼ二酸化ケイ素だけで出来ている高純度のガラスを、'''石英ガラス'''といい、紫外線の透過性が高く、また耐熱性も高いので、光学機器や耐熱ガラスや光ファイバーなどに利用されている。
しかし、石英ガラスは耐熱性が高すぎるため融点が高く、製造時の溶融加工が容易でないので、一般のガラス製品には添加物をくわえて融点を下げたソーダ石灰ガラスなどが用いられている。
窓ガラスなどに用いられる一般のガラスは、ソーダ石灰ガラスであり、SiO2のほか、Na2OとCaOを主成分としている。
このソーダ石灰ガラスの製法は、けい砂(主成分 SiO2)に、炭酸ナトリウム(Na2CO3)や石灰石を添加して作る。
[[ファイル:Schott_Duran_glassware.jpg|サムネイル|ホウケイ酸ガラスの実験器具]]
ガラスを高温に熱していったとき、ガラスが軟らかくなり始める軟化点または軟化温度という。ソーダ石灰ガラスの軟化点は630 ℃だが、石英ガラスの軟化点は1650 ℃である。
理科実験などで用いるビーカーやフラスコなど、理科学器具に用いられるガラスの材質には、ホウケイ酸ガラスが用いられている。 ホウケイ酸ガラスは、ホウ砂(主成分 B<sub>2</sub>O<sub>3</sub>)とケイ砂からなるガラスである。ホウケイ酸ガラスは熱膨張率が低く、そのため耐熱性も高く、耐食性も高いことから、理科実験器具用のガラスとして用いられている。
酸化鉛 PbO を含んだ鉛ガラスは密度が大きく、また、X線など放射線の吸収能も大きいため、放射線遮蔽窓として用いられる。 また、鉛ガラスは屈折率が大きいため、光学レンズとしても用いられる。
=== 陶磁器 ===
粘土や砂、岩石の粉などを焼き固めて、陶磁器がつくられる。
[[ファイル:Chinese_-_Dish_with_Flowering_Prunus_-_Walters_492365_-_Interior.jpg|サムネイル|清の磁器]]
陶器は約1000℃で焼き固めてて作られる。磁器は700~900℃で素焼き(釉薬をかけずに焼く)したのち、釉薬を塗り、1100℃~1500℃で本焼きをする。磁器は硬く、白色で吸水性がない。叩くと金属音を発する。
[[ファイル:Covered_Jar,_Imari_ware,_Edo_period,_18th_century,_Chinese_lion_and_phoenix_design_in_underglaze_blue_and_overglaze_enamel_-_Tokyo_National_Museum_-_DSC05337.JPG|サムネイル|伊万里の磁器({{Ruby|色絵獅子鳳凰文有蓋大壺|いろえししほうおうもんゆうがいたいこ}} 東京国立博物館蔵)]]
また、土器は600℃から900℃で素焼きした陶磁器である。
[[ファイル:火焔土器-“Flame-Rimmed”_Cooking_Vessel_(Kaen_doki)_MET_2015_300_258_Burke_website.jpg|サムネイル|縄文時代の土器]]
焼き固めとは、高温にすることで、粒子の表面が部分的に融け、そのあと冷ましていくことで、粒子どうしが接着する。
これらの焼き物の表面には、焼く前に、石英などの粉末からなる{{Ruby|釉薬|ゆうやく}}(うわぐすり)が表面に塗られる。焼く時に、釉薬が融け、ガラスになる。表面がガラスで保護されることで、吸水性がなくなる。
=== アルミナ ===
Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub>は硬くて丈夫なので、さまざまな材料に用いられる。
研磨剤にも、アルミナは用いられている。
* 電気工業への応用
アルミナは絶縁性も高く、そのためICチップなどの絶縁材にも用いられる<ref>『セラミック材料』、工業高校教科書、文部科学省</ref>。 アルミナは熱伝導性も比較的よく、そのため電気回路で生じたジュール熱を外部に放散しやすいので、温度上昇による誤動作を防ぎやすい。
* 医療への応用
また、医療用の人工骨などにアルミナ材料の人工骨を用いてても、拒否反応などを起こさず、生体適合性が良い。なお、自然には人体にアルミナは接着しないので、ボルトなどで人工的に人工骨を既存の骨に固定する必要がる。
=== ニューセラミックス ===
* 酸化ジルコニウム
酸化ジルコニウム ZrO<sub>2</sub> およびそれに添加物を加えた材料では、結晶中に自然に生じた欠陥が、まるでシリコン半導体でいう導電性を高めるための添加物と似た役割を生じて、酸化ジルコニウム中の欠陥が酸化ジルコニウムの導電性に影響を与える。その結果、酸化ジルコニウムは、空気中の酸素濃度により導電性が変わる。このため、酸化ジルコニウムは酸素センサとして用いられる。
* 酸化チタン
酸化チタン TiO<sub>2</sub> は、光が当たると、有機物を分解する。この有機物の分解作用のため、光の当たった酸化チタンは、殺菌や消臭などの効果をもつ。酸化チタンそのものは減らずに残り続けるので、触媒的に働くことから、このような光のあたった酸化チタンによる分解作用が、'''光触媒'''と呼ばれる。
この分解のエネルギー源は、酸化チタンが紫外線を吸収し、そのエネルギーによって酸化チタンの酸化力が高まり、そして有機物を分解する。
さて太陽電池としても、酸化チタンは利用されている。酸化チタンそのものは紫外線しか吸収しないため効率が低いため、色素を添加して、色素に可視光を吸収をさせて、そのエネルギーを酸化チタンが利用できるように工夫した太陽電池が開発されており、色素増感型太陽電池と言われている。
また、色素と光によってエネルギーを得る仕組みが、植物の光合成の仕組みに似ていることから、生物学的にも興味を持たれている。
この他、酸化チタンは白色であり、人体に無害なので、化粧などの白色顔料としても用いられている。
このほか、超親水性という性質があり、水に濡れても水滴にならず、水が全体に広がるので、自動車のフロントガラスなどの添加剤に応用されている。
* 酸化スズ SnO2
酸化スズ SnO2 では、表面に酸素を吸着する性質がある。そして、プロパンガスや一酸化炭素などにさらされると、吸着された酸素が燃焼して、もとの酸化スズに戻る。この吸着と酸素の離脱のさい、導電性が変わるため、プロパンガスなど可燃性ガス濃度を測るセンサーとして用いられる。
* セラミック製コンデンサー
そもそもコンデンサーには、電気を通さない性質が求められる。つまりコンデンサーの材料は、絶縁物質であるべきである。そもそも、コンデンサーは、誘電分極(ゆうでん ぶんきょく)を利用した素子だから。もし、金属のように電気を通してしまうと、そもそもコンデンサーとしての役割を持たない。
セラミックは電気を通さないため、コンデンサーとして適切であり、じっさいにコンデンサーとしてセラミック材料は利用されている。
なお、セラミックは、絶縁材料としても、活用される。
コンデンサー材料としては、チタン酸バリウム BaTiO<sub>3</sub> などがある。
* 圧電性セラミックス
チタン酸ジルコン酸鉛 PbTiO<sub>3</sub> や チタン酸バリウム BaTiO<sub>3</sub> などに圧力をくわえると、電圧が発生する。これを利用して、圧力センサーなどに用いる。なお、チタン酸バリウムは、コンデンサー材料としても用いられている。このように、圧電の仕組みと、コンデンサーの誘電分極の仕組みとは、関連性がある。
なお、このような圧電性の材料に交流電圧をくわえると、振動をすることから、音波や振動の発生源としても用いられる。さらに、振動の共振周波数(その物体が振動しやすい周波数)が、その振動体に加えられた圧力や荷重などの外部の力によって変化することから、圧力センサーなどにも圧電材料が応用されている。
* 生体セラミックス
ハイドロキシアパタイトは、骨の主成分でもある。そのため、ハイドロキシアパタイトでつくった人工骨は、もともとの骨に接着しやすく、拒否反応なども起こりにくいので、医療用の人工骨などに利用される。なお、拒否反応などが無く、生体に接着しやすい性質を、生体親和性という。
* 炭化チタンTiC、炭化ホウ素B<sub>4</sub>C
炭化物のセラミックスの中には、硬度がかなり高く、また適度に靭性もあり、丈夫なものがある。このため、炭化チタン TiC などは切削工具などに用いられる。炭化ケイ素や窒化ケイ素なども、耐熱性が高い。
自動車エンジンやガスタービンなどに、これらの耐熱セラミックスが用いられる。
=== 半導体およびセラミックの温度-電気特性 ===
半導体や、いくつかのセラミックスには、温度の上昇にともなって、電気抵抗が下がるものがある。
なお、金属では、温度が上がると、電気抵抗が上がる。
半導体やセラミックスの、このような、温度上昇にともなって電気抵抗が下がる特性が実用化されており、電子機器での温度変化時の電圧など出力の安定化のための部品に利用したり、あるいは温度センサなどに利用されたりしている。
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== アルカリ金属 ==
=== 金属と水の反応モデル ===
以降の無機化学の単元において、金属と水溶液との反応を考える上では、以下のようなモデルを用いる。※実測はされていない
ある金属元素Mが水中にある。このとき、周りの水と反応することにより金属の表面が水酸化物M(OX){{sub|x}}で覆われる。(皮膜形成)
この水酸化物M(OX){{sub|x}}が水に可溶ならば、水酸化物皮膜が全て水に溶けて金属の表面が露出し、水と反応して水酸化物M(OH){{sub|x}}が生成する。そしてまた水酸化物被膜が全て水に溶けて金属の表面が露出し・・・と反応を繰り返し、最終的には金属が全て水酸化物となって水に溶ける。
水に難溶ならば、水酸化物皮膜が生成した時点で反応が止まり、その金属は水と反応しない。
なお、イオン化傾向がMg以下の金属の水酸化物は水に難溶である。
=== 単体 ===
[[File:Lithium paraffin.jpg|right|200px|thumb|リチウムの保存. <br>リチウムは密度が灯油よりも軽いため、リチウムは灯油に浮く。]]
[[File:Kalium.jpg|right|150px|thumb|切断したカリウム]]
水素を除く1族元素のリチウム Li, ナトリウム Na, カリウム K, ルビジウム Rb, セシウム Cs, フランシウム Fr のことを'''アルカリ金属'''という。
アルカリ金属の単体は、いずれも銀白色の固体である。融点が低くやわらかい金属で、カッターで簡単に切断することができる。
アルカリ金属の原子は価電子を1個もち、1価の陽イオンになりやすい。
このため、アルカリ金属の原子は酸化されやすいので、天然には単体の状態では存在せず、塩として存在する。
単体を得るには、化合物の融解塩電解を行う。加熱して融解させた化合物に炭素電極を入れ、電気分解を行うと、陰極側に金属の単体が析出する。
: <chem>{X+} + {e^-} -> {X} v</chem> (XはLi、Na、Kなど)
アルカリ金属は反応性が高く、イオン化傾向が大きいので還元性も高い。アルカリ金属は常温で空気中の酸素や水、塩素と簡単に反応する。特に水とは、アルカリ金属は常温で水と反応して水素を発生しながら激しく反応し、反応後の溶液は強塩基性の水溶液になる。
: <chem>4X + O2 -> 2X2O</chem>
: <chem>2X + 2H2O -> 2XOH + H2 ^</chem> (XはLi、Na、Kなど)
: <chem>2X + Cl2 -> 2XCl</chem>
そのため、アルカリ金属の単体を保存する際には、空気中の酸素や水との反応をふせぐために'''石油中'''(灯油)に保存する。リチウムは石油よりも軽いため、石油に浮く。また、単体は素手で触れず、必ずピンセットなどを用いて扱う。
<!--
水だけでなく、ヒドロキシル基(-OH)を持つアルコールやフェノールとも水素を発生しながら反応して、アルコキシド、フェノキシドとなる。
: 2R-OH + 2X → 2R-OX + H{{sub|2}} (Rは炭化水素基、XはLi、Na、Kなど)
-->
{| class="wikitable" align=right
|+ アルカリ金属の単体の性質
|-
|- style="background:silver"
! 元素名 !! 元素記号 !! 融点(℃) || 沸点(℃) || 密度(g/cm<sup>3</sup>) || 炎色反応
|-
| リチウム || Li || 180 || 1347 || 0.53 || 赤
|-
| ナトリウム|| Na || 98 || 883 || 0.97 || 黄
|-
| カリウム || K || 64 || 774 || 0.86 || 赤紫
|-
| ルビジウム || Rb || 39 || 688 || 1.53 || 赤
|-
| セシウム || Cs || 28 || 678 || 1.87 || 青
|-
|}
イオンは'''炎色反応'''を示し、白金線にイオン水溶液をつけガスバーナーの炎に入れると、リチウムイオンでは赤色に、ナトリウムイオンでは黄色に、カリウムでは赤紫色にそれぞれ炎が色づく。
{|align="center" style="border:solid #aaffaa 1px; text-align:center;"
|[[File:FlammenfärbungLi.png|52px|リチウムの炎色反応]]||[[File:FlammenfärbungNa.png|50px|ナトリウムの炎色反応]]||[[File:FlammenfärbungK.png|50px|カリウムの炎色反応]]
|-
|Li||Na||K
|}
=== アルカリ金属の化合物 ===
アルカリ金属は様々な化合物を作る。この章ではアルカリ金属の中でも、特にナトリウムの化合物について学ぶ。
==== 水酸化物 ====
アルカリ金属の単体が水と反応すると水酸化物となる。たとえばリチウムは水酸化リチウム(LiOH)に、ナトリウムは水酸化ナトリウム(NaOH)に、カリウムは水酸化カリウム(KOH)になる。
水酸化ナトリウムの工業的な製法については、塩化ナトリウム NaCl 水溶液の電気分解によって製造される。
常温では白色の固体であり、水によく溶けて、いずれの水溶液も強塩基性を示す。このため皮膚を冒す性質があり、取り扱いに注意する。
[[ファイル:Sodium_hydroxide.jpg|右|サムネイル|200x200ピクセル|水酸化ナトリウム]]
水酸化ナトリウムと水酸化カリウムの固体は吸湿性があり、空気中に放置すると水蒸気を吸収してその水に溶けてしまう。この現象を'''潮解'''(ちょうかい、deliquescenece)という。
水溶液も吸湿性があるため、長時間放置すると溶液の濃度が変化する。したがって精密さを要する実験では、直前に水溶液を調整するようにするとともに、中和滴定などにより正確な濃度を測る必要がある。
また水酸化ナトリウムは水分を吸収するだけでなく、空気中の二酸化炭素も吸収して、炭酸塩の炭酸ナトリウム(Na{{sub|2}}CO{{sub|3}})を生じる。
: <chem>2NaOH + CO2 -> Na2CO3 + H2O</chem>
この性質から、二酸化炭素の吸収剤として用いられることがある。
水酸化ナトリウムの産業上の用途は、製紙業でのパルプの製造、石油の精製、繊維の製造、セッケンの製造、などで用いられている。 水酸化ナトリウムは'''苛性ソーダ'''とも呼ばれる。
==== 炭酸塩・炭酸水素塩 ====
'''炭酸水素ナトリウム'''(NaHCO{{sub|3}})と'''炭酸ナトリウム'''(Na{{sub|2}}CO{{sub|3}})は共に白色の粉末である。工業的には'''アンモニアソーダ法'''により製造される。
==== アンモニアソーダ法(ソルベー法) ====
アンモニアソーダ法は炭酸ナトリウムの工業的製法である。
# 塩化ナトリウムの飽和水溶液にアンモニアと二酸化炭素を通す。 <chem>NaCl + NH3 + CO2 + H2O -> NaHCO3 + NH4Cl</chem>
# 炭酸水素ナトリウムを加熱する。 <chem>2NaHCO3 -> Na2CO3 + CO2 ^ + H2O</chem>
[[ファイル:アンモニアソーダ法反応過程.svg|右|サムネイル|550x550ピクセル|アンモニアソーダ法の反応経路図]]
;
反応で生じた生成物は次のように再利用できる。
# 炭酸カルシウムを加熱して酸化カルシウムと二酸化炭素を得る。
#: <chem>CaCO3 -> CaO + CO2</chem>
# 1.で得た酸化カルシウムに水をくわえ、水酸化カルシウムとする。
#: <chem>CaO + H2O -> Ca(OH)2</chem>
# 2.で得た水酸化カルシウムを1.で得た塩化アンモニウムと反応させ、塩化カルシウムとアンモニアを得る。このアンモニアは回収して1.の反応で再利用する。
#: <chem>2NH4Cl + Ca(OH)2 -> CaCl2 + 2NH3 + 2H2O</chem>
アンモニアソーダ法は全体としては、 <chem>2NaCl + CaCO3 -> Na2CO3 + CaCl2</chem> という反応式で表される。
原料がCaCO{{sub|3}}(石灰岩、秩父などで大量に採れる)とNaCl(食塩、買えなくても海水から作れる)とNH{{sub|3}}(アンモニア、ハーバー・ボッシュ法で大量生産できる)のみと非常に安価なので、アンモニアソーダ法は「安く大量生産を目指す」工業的製法としては最も理想形に近いと言われている。
==== 炭酸ナトリウム ====
炭酸水素ナトリウムは、熱分解して炭酸ナトリウム(sodium carbonate)となる。炭酸ナトリウムは白色の粉末で、水に溶け、水溶液は塩基性を示す。
炭酸ナトリウムは加熱しても、分解しない。
炭酸ナトリウムは弱酸と強塩基の塩であり、水に溶けると加水分解して塩基性を示す。
<chem>Na2CO3 -> 2 {Na^+} + CO3^{2-}</chem>
<chem>CO3^{2-} + H2O <=> {HCO3^-} + OH^-</chem>
炭酸ナトリウム水溶液を冷却すると十水和物 <chem>Na2CO3*10H2O</chem> の無色透明の結晶が得られる。この <chem>Na2CO3*10H2O</chem> の結晶は空気中に放置すると水和水の大部分を失って、白色粉末の一水和物 <chem>Na2CO3*H2O</chem> となる。この現象は'''風解'''(ふうかい、efflorescence)と呼ばれる。
炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムは、ともに強酸と反応して二酸化炭素を生じる。(弱酸遊離反応)
<chem>Na2CO3 + 2H2SO4 -> Na2SO4 + H2O + CO2 ^</chem>
炭酸ナトリウムは、ガラスや石鹸の製造などに用いられる。
※ガラスの原料は二酸化珪素 <chem>SiO2</chem> であるが、これを珪酸ナトリウム <chem>Na2SiO3</chem> にする反応において、水酸化ナトリウムよりも炭酸ナトリウムの方がよく用いられる。<chem>SiO2 + NaOH -> Na2SiO3 + H2O</chem>という反応と<chem>SiO + Na2CO3 -> Na2SiO3 + CO2</chem>という反応を比べた時、左の反応は反応性が高いものの、生成された <chem>H2O</chem> が反応の系内に残るので逆反応が起こり、平衡状態となって反応が見かけ上止まってしまう。それに対し、右の反応は生成された <chem>CO2</chem> が反応の系外に脱出するので、ルシャトリエの原理により平衡が正反応の向きに偏って反応がより一層進行する。そのため、通常は炭酸ナトリウムが用いられる。
==== 炭酸水素ナトリウム ====
炭酸水素ナトリウム <chem>NaHCO3</chem> は白色粉末で、水に少し溶け、水溶液は加水分解により弱塩基性を示す。炭酸水素ナトリウムは'''重曹'''(じゅうそう)ともいう。(重曹は「重炭酸曹達」の略である。「重炭酸」は「炭酸水素」の別名であり、「曹達(ソーダ)」はナトリウムの和名である。)
炭酸水素ナトリウムを熱すると、分解して二酸化炭素を発生する。
<chem>2NaHCO3 -> Na2CO3 + H2O + CO2 v</chem>
(上記の反応は、ソルベー法での炭酸水素ナトリウムの分解反応と同じ。)
炭酸水素ナトリウムの用途は、発泡剤やベーキングパウダー(ふくらし粉)、入浴剤の発泡剤成分、などとして用いられている。
また、強酸で、二酸化炭素を発生する。
<chem>NaHCO3 + HCl -> NaCl + H2O + CO2 v</chem>
=== 塩化物 ===
[[ファイル:NaCl-zoutkristallen_op_Schott_Duran_100_ml.JPG|右|サムネイル|200x200ピクセル|塩化ナトリウムの結晶]]
水酸化ナトリウムに塩酸を加えると、中和反応を起こし塩化ナトリウム(NaCl)を生じる。
<chem>NaOH + HCl -> NaCl + H2O</chem>
塩化ナトリウムは天然では岩塩に豊富に含まれており、食塩の主成分としても有名である。工業的には海水を濃縮することにより得られる。
塩化ナトリウムを融解塩電解すると単体のナトリウムが得られる。
<chem>2NaCl -> 2Na v Cl2 ^</chem>
塩化ナトリウム水溶液を電気分解すると、陽極から塩素が発生し、陰極から水素が発生する。このとき陰極側では水の電気分解反応が起こっており、水酸化物イオンが生じている。
<chem>2H2O -> H2 + 2 OH^-</chem>
溶液中にはナトリウムイオンが残るため、陰極付近では水酸化ナトリウムの水溶液が得られる。この原理は工業的な水酸化ナトリウムおよび塩素・水素の製造法として応用されており、陽イオン交換膜を用いることから'''イオン交換膜法'''と呼ばれる。
== 2族元素 ==
周期表の2族の元素は、すべて金属元素である。2価の価電子をもち、2価の陽イオンになりやすい。天然には塩として存在している。
2族元素のことをアルカリ土類金属という<ref>アルカリ土類金属の定義として、「Be,Mgを除く2族元素」と定義しているところもある。これは、後述するようにBe,Mgとその他の2族元素の性質に異なるところがあるからである。</ref>。
=== アルカリ土類金属元素 ===
2族元素の単体はアルカリ金属元素の単体よりも硬い。
[[ファイル:Magburn1.jpg|右|サムネイル|250x250ピクセル|マグネシウムの燃焼]]
2族元素の単体は、いずれも、空気中で激しく燃焼して酸化物を生じる。たとえばマグネシウムは白い強い光を出しながら燃焼して白色の酸化マグネシウム(MgO)を生じる。
: <chem>2Mg + O2 -> 2MgO</chem>
マグネシウムは二酸化炭素とも熱や光を出しながら激しく反応する。
: <chem>2Mg + CO2 -> 2MgO + C</chem>
2族元素の酸化物はいずれも塩基性酸化物であり、酸と反応する。たとえば酸化マグネシウムは塩酸と反応して塩化マグネシウムを生じる。
: <chem>MgO + 2HCl -> MgCl2 + H2O</chem>
[[ファイル:Magnesium_chloride.jpg|右|サムネイル|200x200ピクセル|塩化マグネシウムの潮解]]
塩化マグネシウムは白色の固体であり、潮解性がある。
ベリリウム・マグネシウムとアルカリ土類金属とでは、次のような違いがある。
* '''炎色反応'''
*: ベリリウムとマグネシウムの単体は、炎色反応を示さない。アルカリ土類金属元素は炎色反応を示し、イオンの水溶液を白金線の先につけてガスバーナーの炎に入れると、カルシウムでは橙赤色に、ストロンチウムでは紅色に、バリウムでは黄緑色に、それぞれ炎が色づく。
{| align="center" style="border:solid #aaffaa 1px; text-align:center;"
|[[ファイル:FlammenfärbungCa.png|153x153ピクセル|カルシウムの炎色反応]]
|[[ファイル:FlammenfärbungSr.png|152x152ピクセル|ストロンチウムの炎色反応]]
|-
|Ca
|Sr
|}
{| class="wikitable" align="right"
|+2族元素の単体の性質
|- style="background:silver"
!
!元素名
!元素記号
!融点(℃)
!密度(g/cm<sup>3</sup>)
!炎色反応
|-
| rowspan="2" |
|ベリリウム
|Be
|1282
|1.85
|示さない
|-
|マグネシウム
|Mg
|649
|1.74
|示さない
|-
| rowspan="3" |アルカリ
土類金属
|カルシウム
|Ca
|839
|1.55
|橙赤
|-
|ストロンチウム
|Sr
|769
|2.54
|紅
|-
|バリウム
|Ba
|729
|3.59
|黄緑
|-
|}
* 水との反応性
*: アルカリ土類金属の単体は常温で水と反応し、水素を発生する。
*:: <chem>Ca + 2H2O -> Ca(OH)2 + H2 ^</chem>
*: 一方で、ベリリウムやマグネシウムの単体は常温では水と反応しない。ただし、マグネシウムは熱水と反応して水素を発生しながら水酸化物となる。
*:: <chem>Mg + 2H2O -> Mg(OH)2 + H2 ^</chem>
* 硫酸塩の水への溶けやすさ
*: 例外的に、硫酸ベリリウム、硫酸マグネシウムは水に溶けやすい。だが、それ以外のアルカリ土類金属の硫酸塩は水に溶けにくい。
=== バリウム ===
水酸化バリウムの水溶液などに希硫酸を加えると、硫酸バリウム BaSO<sub>4</sub> の白色沈殿が得られる。
硫酸バリウム BaSO<sub>4</sub> は白色の粉末で、水に溶けず、酸にも反応しない。
硫酸バリウムの実社会の用途として、医療では、この性質(水に溶けにくい、酸に反応しない、など)を利用して、人体のX線撮影の造影剤として、胃や腸など消化器官のようすを撮影するための造影剤として、硫酸バリウムは用いられる。
なおバリウムおよび硫酸バリウムは、X線を透過させにくい。そのため、X線撮影の際、人体内のバリウムのある場所でX線が遮断され、撮影装置にX線が届かなくなるので、胃や腸でのバリウムのようすが見える、という仕組みである。
=== カルシウム ===
[[ファイル:Calcium_unter_Argon_Schutzgasatmosphäre.jpg|右|サムネイル|200x200ピクセル|カルシウムの単体]]
'''カルシウム'''(Ca)はアルカリ土類金属のひとつである。単体は塩化カルシウムの融解塩電解により得られる。
[[ファイル:Big-Calcium-Bubble.ogv|右|サムネイル|250x250ピクセル|二酸化炭素の発生]]
=== 酸化物 ===
単体を空気中で燃焼させると酸化カルシウム(CaO)を生じる。酸化カルシウムは'''生石灰'''(せいせっかい)とも呼ばれる。
: <chem>2Ca + O2 -> 2CaO</chem>
酸化カルシウムに水を加えると熱を出しながら水酸化カルシウム(<chem>Ca(OH)2</chem>)を生じる。水酸化カルシウムは消石灰とも呼ばれる。
: <chem>CaO + H2O -> Ca(OH)2</chem>
酸化カルシウムは水を吸収し、そのさい発熱することから、乾燥剤や発熱材として用いられる。ただし、酸性気体とは反応してしまうため、塩基性・中性気体の乾燥にしか使えない。
=== 水酸化物 ===
酸化カルシウムに水を加えると熱を出しながら水酸化カルシウム(<chem>Ca(OH)2</chem>)を生じる。
: <chem>CaO + H2O -> Ca(OH)2</chem>
逆に、水酸化カルシウムを加熱すると酸化カルシウムが得られる。
: <chem>Ca(OH)2 -> CaO + H2O</chem>
水酸化カルシウムはカルシウムを水と反応させることによっても得られる。
: <chem>Ca + 2H2O -> Ca(OH)2 + H2 ^</chem>
水酸化カルシウムは白色の粉末であり、消石灰とも呼ばれる。水酸化カルシウムの水溶液は塩基性を示し、一般に石灰水(lime water)と呼ばれる。 石灰水に二酸化炭素を通じると、炭酸カルシウムの白色沈殿を生じて白濁する。この反応は二酸化炭素の検出に用いられる。
: <chem>Ca(OH)2 + CO2 -> CaCO3 v + H2O</chem>
しかし、白濁した石灰水にさらに二酸化炭素を通じ続けると、炭酸水素カルシウムとなって沈殿は溶解し、無色の水溶液になる。
: <chem>CaCO3 + CO2 + H2O -> Ca(HCO3)2</chem>
この炭酸水素カルシウム水溶液を加熱すると、再び炭酸カルシウムの沈殿が生じる。
: <chem>Ca(HCO3)2 -> CaCO3 v + CO2 ^ + H2O </chem>
水酸化カルシウム水溶液に塩酸を加えると、塩化カルシウムを生じる。塩化カルシウムは吸湿性があり、乾燥剤としてしばしば用いられる。
: <chem>Ca(OH)2 + 2HCl -> CaCl2 + 2H2O</chem>
水酸化カルシウム水溶液に塩素を通じると、[[高等学校化学I/非金属元素の単体と化合物#塩素のオキソ酸|さらし粉]]を生じる。
: <chem>Ca(OH)2 + Cl2 -> CaCl(ClO)*H2O</chem>
水酸化カルシウムは漆喰に使われている。
=== 塩化物 ===
塩化カルシウム CaCl{{sub|2}}は一般的には「エンカル」という名称で用いられる。
使用用途は乾燥剤と融雪剤である。中性なのであらゆる気体の乾燥に使えるが、唯一アンモニアとは反応してしまうためアンモニアの乾燥はできない。
夏にエンカルをグラウンドに撒くことがある。これは、大気中の水分をエンカルが吸うことにより、地表が湿って砂埃が舞うのが抑えられるためである。
=== 炭酸塩 ===
炭酸カルシウム CaCO{{sub|3}} の固体は、天然には石灰岩や大理石として存在する。
鍾乳洞(しょうにゅうどう)や鍾乳石(しょうにゅうせき)は、炭酸カルシウムが地下水にいったん溶けて、水中で炭酸水素ナトリウムとなり、その後、炭酸カルシウムに戻り、再度、固まったものでる。
炭酸カルシウムは塩酸などの強酸と反応して、二酸化炭素を発生する。
: <chem>CaCO3 + 2HCl -> CaCl2 + H2O + CO2 ^</chem>
炭酸カルシウムは、セメントの原料や、チョークの原料、ガラスの原料、歯みがき粉の原料などとして、使われている。
=== 硫酸塩 ===
水酸化カルシウム水溶液に硫酸を加えると、硫酸カルシウム CaSO{{sub|4}} の白色沈殿を生じる。硫酸カルシウムは天然には二水和物が'''セッコウ'''(石膏)として存在する。セッコウを約130℃で焼くことにより、二分の一水和物である'''焼きセッコウ'''の白色粉末となる。
: <chem>Ca(OH)2 + H2SO4 -> CaSO4 + 2H2O</chem>
焼きセッコウの粉末に水を少量まぜると、硬化して、体積が少し増え、セッコウになる。セッコウ像(塑像)や医療用ギプスは、この性質を利用している。ただし、重量があるせいなのかギプスとしての用途は近年薄れてきている。その代わり、建材としての用途が増えてきた。
カルシウムやバリウムの硫酸塩は水に溶けにくく、この性質は陽イオンの系統分離において重要である。また日常生活においても重要で、硫酸カルシウムは建築材や医療用ギプスに、硫酸バリウムBaSO<sub>4</sub>はX線撮影の造影剤として用いられる。
=== 発展: 硬水と軟水 ===
Ca{{sup|2+}}やMg{{sup|2+}}を多く含む水を'''硬水'''という。それらが少量しか含まれていない水のことを'''軟水'''という。
日本では一般に、地下水には硬水が多い。日本では河川水には軟水が多い。
また、硬水を飲むと、下痢を起こしてしまう。なので、食用には硬水は不適切である。
しかし、農業用水に硬水を使う分には問題がない。
もしボイラーで硬水を使うと、沈殿が残るので、配管の詰まりを起こしやすく、危険であり不適切である。
工業用水や生活用水には、硬水は不適切である。
大陸の河川水では、硬水が多い。その理由は、大陸の河川水は緩流なので、鉱物質が溶けこんでいるので、硬水が多い。
いっぽう、日本では急流が多いことが、日本の河川水に軟水が多い。{{コラム|水の硬度|<chem>Ca^2+</chem> や <chem> Mg^2+</chem> をすべて <chem>CaCO3</chem> と考えたときの <chem>CaCO3</chem> の 1L 当たりの質量(mg)を硬度という。
基本的に水の硬度の数値が低いほど軟水である。いっぽう、水の硬度の数値が高いと硬水である。
::硬度60までが「軟水」。
::硬度120以上は「硬水」。
::硬度60~120は「中硬水」というのに分類する。
::なお、フランスノミネラルウォーターの「エビアン」は硬度が約300であり、硬水である。フランスでも、ボルヴィック(ミネラルウォーターの商品のひとつ)は硬度が約60で、軟水に近い。}}
=== ※ 範囲外: ===
ベリリウムとマグネシウムは、金属に分類されている(高校教科書でも、ベリリウムなどは金属に分類されている。)。しかし、上述のように特殊な性質を示すこともあり、一説には、ベリリウムはやや共有結合よりの金属結合をしている中間的な結合であるかもしれないと解釈する理論も存在する。(※ 参考文献: 東京化学同人『無機化学 - その現代的アプローチ -』、第二版、94ページ )
ベリリウムに他の金属が衝撃的にぶつかっても火花が飛び散りづらい性質があるので、そのため特殊なカナヅチの材料としてベリリウム系の合金(ベリリウムと銅の合金)が使われていることも多い。
またベリリウムはX線および電磁波を透過するので、X線管の材料のうち、X線を透過させたい部分の材料に使われる。
天然では、宝石のエメラルドにベリリウムが含まれる。
なお、化学的には、ベリリウムはアルミニウムに近い反応をすることも多い。(※ 参考文献: 東京化学同人『無機化学 - その現代的アプローチ -』、第二版、94ページ )
エメラルドにも、アルミニウムは含まれる。(エメラルドの主成分は、シリコンとアルミニウムとベリリウムである。)
==== 耐火レンガ ====
酸化マグネシウム MgO は融点が高く(約2800℃)、耐火レンガやるつぼの材料などに用いられている。(※ 数研出版のチャート式にこのように書かれている。)
: ※ 古い版のチャート式では、融点が高いから耐火レンガに使われていると書かれているが、最新の版では訂正されており、これらは別個のこととして説明されている。
: ※ 検定教科書では、啓林館の科目『科学と人間生活』教科書で、組成は書かれてないが、耐火レンガというものが存在する事が書かれている。
; 熱の伝わりやすさの調節
(チャート式などでは範囲外(普通科高校の範囲外)なので触られてないが)、耐火レンガの材料などに酸化マグネシウムや酸化アルミニウムなどが用いられる理由のひとつとして、融点の高さのほかにも、熱の伝わりやすさという、重大な理由がある。(※ 工業高校などの一部の学科で習う。)(※参考文献: 文部科学省著作教科書『セラミック工業』平成15年3月25日 初版発行、平成18年1月25日、実教出版 発行、188ページや203ページなど。)転炉や電気炉で近年、マグネシアカーボンれんが が用いられているという。なお、高炉はアルミナ質れんが や 炭化ケイ素れんが が用いられているという。また、製鉄の溶融スラグは塩基性であると考えられており、酸化マグネシウムは耐塩基性としての耐腐食性が高い(つまり、腐食しにくい)と考えられていることも、各所で酸化マグネシウムが使われる一因である。
もし るつぼ等の使用中に高熱が一箇所に蓄積すると、るつぼ等が溶融してしまい破壊されてしまうので、熱を伝えやすい材料を適切な場所に用いることで、るつぼ等の寿命をのばしているのである。
酸化マグネシウムや酸化アルミニウムなど、いちぶの金属の酸化物は(金属酸化物を含まない単なる粘土レンガと比べれば)比較的に熱を伝えやすい。
名前こそ「耐火」レンガであるが、酸化マグネシウムを含まないからといって、耐熱性が低いわけでもないし、燃えやすいわけでもない。
酸化マグネシウム系レンガなどが必要とされる本当の理由は、熱を分散・拡散しやすいことである。
: ※ 『耐火レンガ』という名称が、あまり適切ではないかもしれないが、社会では、この名前で定着してしまっている。
耐火レンガを作る際、そもそもレンガの母材として粘土が必要であるが、それに酸化マグネシウムや酸化アルミニウムなどを適量に混ぜることで、熱の伝わりやすさを調節して、耐火レンガは設計される。
== アルミニウム ==
'''アルミニウム Al''' は13族の金属元素で、価電子を3個もち、3価の陽イオンになりやすい。
銀白色の軽い金属である。展性や延性が大きく、薄く伸ばしたものはアルミニウム箔(いわゆるアルミホイル)として一般家庭でも用いられている。また、電気伝導性も良く、熱伝導性も良い。熱伝導性が良いことから、鍋などにも用いられる。
アルミニウムの単体を空気中に放置すると、表面に緻密な酸化膜(酸化アルミニウム Al{{sub|2}}O{{sub|3}} )の被膜ができ、内部を保護する。
アルミニウムやマグネシウムを主成分とする合金である'''ジュラルミン'''は軽量かつ強度が高く、航空機に用いられている。アルミニウム自体も、アルミ缶や1円硬貨に用いられている。
=== 製法 ===
==== バイヤー法 ====
アルミニウムの天然の鉱石は'''ボーキサイト'''(bauxite)といい、ボーキサイトの化学式はAl<sub>2</sub>O<sub>3</sub>・nH<sub>2</sub>Oである。ボーキサイトに濃い水酸化ナトリウム溶液NaOHを加えてアルミン酸ナトリウム2Na[Al(OH)<sub>4</sub>]が得られる。正確にはテトラヒドロキソアルミン酸ナトリウムという。
: <math>\mathrm{ Al_2O_3 + 2NaOH + 3H_2O \rightarrow 2Na[Al(OH)_4] } </math>
アルミン酸ナトリウム2Na[Al(OH)_4]の溶液を冷却し、加水分解がおこると水酸化アルミニウムAl(OH)<sub>3</sub> の沈殿が析出する。
: <math>\mathrm{ Na[Al(OH)_4] \rightarrow Al(OH)_3+ NaOH } </math>
生じたAl(OH)<sub>3</sub> を分離して、このAl(OH)3を1200℃に加熱して酸化アルミニウムAl<sub>2</sub>O<sub>3</sub>にする。 これらのボーキサイトからアルミナまでの工程を'''バイヤー法'''という。
Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub> は'''アルミナ'''という。アルミナは融点が高く、約2000℃の融点なので、融点を次の融解塩電解という処理で下げる。
==== 溶融塩電解 ====
[[ファイル:Mineraly.sk_-_bauxit.jpg|代替文=ボーキサイト|サムネイル|200x200ピクセル|ボーキサイト]]
鉱石の'''ボーキサイト'''(bauxite、主成分: 酸化アルミニウム <chem>Al2O3</chem>)を処理して酸化アルミニウム(<chem>Al2O3</chem>)にかえたあと、氷晶石(<chem>Na3AlF6</chem>、ヘキサフルオロアルミン酸ナトリウム)とともに熔融塩電解して製造される。('''エルー・ホール法''')
: <chem>Al^3+ + 3e^- -> Al v</chem>
アルミニウムの電解には、大量の電力が必要となる。
[[ファイル:Cut_Ruby.jpg|代替文=ルビー|サムネイル|150x150ピクセル|ルビー]]
[[ファイル:SaphirSynthetique.jpg|代替文=サファイア|サムネイル|150x150ピクセル|サファイア]]
製造の過程で得られる酸化アルミニウム(Al{{sub|2}}O{{sub|3}})は水に溶けにくい白色の固体である。酸化アルミニウムは'''アルミナ'''とも呼ばれ、融点が非常に高い(アルミナの融点は2054℃)ことから耐熱材の原材料としても用いられるほどである。氷晶石は、このアルミナの融点を降下させるために加えられる。
アルミニウムの粉末は、空気中または酸素中で熱すると、激しく燃える。
* ボーキサイトから酸化アルミニウムを得る方法 (※ 教科書の範囲外。資料集(実教出版など)の範囲内。文献により、方法が若干、違う。)
濃い水酸化ナトリウム水溶液でボーキサイト中の酸化アルミニウムが溶け、ほかの不純物はあまり溶けない。まず、この水酸化ナトリウム水溶液で酸化アルミニウムを溶かして アルミン酸ナトリウム <chem>Na[Al(OH)4]</chem> を得る。
: <chem>Al2O3 + 2NaOH + 3H2O -> 2 Na[Al(OH)4]</chem>
(ここまでは、どの文献でも、ほぼ同じ。) まず、ろ過をして、溶液から、不溶性の <chem>Fe2O3</chem> などの余計な不純物を取り除く。
あとは、このアルミン酸ナトリウム水溶液をうまく処理し、アルミナに変えていく方法が必要なのである。
まず、アルミン酸ナトリウム <chem>Na[Al(OH)4]</chem> 水溶液から、なんらかの方法で、加水分解を起こし、水酸化アルミニウム <chem>Al(OH)3</chem> を沈殿させる。
: <chem>Na[Al(OH)4] -> Al(OH)3 + NaOH</chem>
あとは、この水酸化アルミニウムを高温で焼成すると、純度の高い酸化アルミニウムが得られる。
* テルミット法
また、アルミニウム単体の粉末と、酸化鉄 <chem>Fe2O3</chem> など他の金属酸化物の粉末を混合して、加熱すると、アルミニウムが激しく酸化され、ほかの金属酸化物が還元され、金属単体が得られる。たとえば酸化鉄(Ⅲ)とアルミニウムを混合して加熱すると、鉄が得られる。
: <chem>2Al + Fe2O3 -> Al2O3 + 2Fe v</chem>
これを'''テルミット法'''といい、レールの熔接などに用いられる。
両性元素
アルミニウムは両性元素であり、酸とも塩基とも反応して水素を生じる。たとえば、塩酸と反応して水素を発生しながら塩化アルミニウムを生じる。
: <chem>2Al + 6HCl -> 2AlCl3 + 3H2 ^</chem>
また、水酸化ナトリウム水溶液と反応して、水素を発生しながらテトラヒドロキソアルミン酸イオンを生じる。
: <chem>2Al + 2NaOH + 6H2O -> 2Na+ + 2[Al(OH)4]^- + 3H2 ^</chem>
しかし、アルミニウムは濃硝酸に溶けない。これは、反応開始直後に金属表面に緻密な酸化被膜を形成し、反応が金属内部まで進行しなくなるためである。このように、緻密な酸化皮膜により保護されて、それ以上は反応が進行しない状態を'''不動態'''(ふどうたい)という。
'''アルマイト'''という材料は、アルミニウムの表面を人工的に酸化させることで厚い不動態の膜で保護させ、そのアルミニウムの耐久性を上げた材料であり、日本で開発された。
イオン
アルミニウムイオン(<chem>Al3+</chem>)の水溶液は無色透明である。これに水酸化ナトリウム水溶液を少量加えると、水酸化アルミニウムの白色ゼリー状沈殿を生じる。
: <chem>Al3+ + 3NaOH -> 3 Na+ + Al(OH)3 v</chem>
しかし、水酸化ナトリウム水溶液を過剰に加えると、沈殿は溶解して無色の水溶液となり、テトラヒドロキソアルミン酸イオンを生じる。
: <chem>Al(OH)3 + NaOH -> Na+ + [Al(OH)4]^-</chem>
テトラヒドロキソアルミン酸イオン水溶液に塩酸を加えると、逆に水酸化アルミニウムの白色沈殿を生じ、過剰に加えれば塩化アルミニウムを生じる。塩化アルミニウムは潮解性のある白色の固体であるが、水に溶けやすく、電離してアルミニウムイオンを生じる。
=== 水酸化アルミニウム ===
アルミニウムイオンを含んだ水溶液に、塩基を加えると、水酸化アルミニウム <chem>Al(OH)3</chem> の白色ゲル状の沈殿が生じる。 水酸化アルミニウムを熱すると、酸化アルミニウム <chem>Al2O3</chem> が生じる。
水酸化アルミニウム <chem>Al(OH)3</chem> は酸とも塩基とも反応して溶けることのできる、両性水酸化物である。
: <chem>Al(OH)3 + 3HCl -> AlCl3 + 3H2O</chem>
: <chem>Al(OH)3 + NaOH -> Na[Al(OH)4]</chem>
=== 酸化アルミニウム ===
酸化アルミニウム <chem>Al2O3</chem> は、'''アルミナ'''(alumina)とも呼ばれ、白色の粉末で、水に溶けない。また、融点が高い(融点:2054℃)。 酸化アルミニウム <chem>Al2O3</chem> は、酸にも強塩基にも溶ける両性酸化物であるが、アンモニア水には溶けない。
: <chem>Al2O3 + 6HCl -> 2AlCl3 + 3H2O</chem>
: <chem>Al2O3 + 2NaOH + 3 H2O -> 2Na[Al(OH)4]</chem>
また、たとえば宝石のルビーやサファイアは、酸化アルミニウムが主成分の結晶である。酸化アルミニウムの結晶のうち、ごく微量のクロムやチタンなどの金属が混入したものが、赤いルビーや青いサファイアであり、ともに、かなり硬い。また、酸にも塩基にも、ルビーやサファイアは溶けない。 なお、ルビーにはクロム Cr が、サファイアには鉄 Fe やチタン Ti が含まれている。{{コラム|人工宝石|:※ 『科学と人間生活』(啓林館など)に記述がある。
ルビーやサファイアなどは組成がわかっているので、人工的に作ることもできる。
材料であるアルミナやクロムまたは鉄などに高温や高圧などを加えて熱することで、人工的にルビーやサファイアなどを作ることができる。
このように、人工的につくった宝石のことを人工宝石といい、さまざまな分野に応用されている。
また、アルミナ化合物ではないが、ダイヤモンドや水晶などアルミナ以外の宝石でも、人工的につくることができる。
人工ダイヤや人工水晶も、人工宝石に含める。
なお、人工ダイヤモンドは、その硬さを活用して、工場などの大型の回転カッターなどの切れ味を増すための材料などとして、刃先に人工ダイヤのある刃物が応用されている(いわゆるダイヤモンドカッター)。}}
=== ミョウバン ===
[[ファイル:Alun.jpg|代替文=ミョウバンの結晶|サムネイル|200x200ピクセル|ミョウバンの結晶]]
硫酸カリウム水溶液と硫酸アルミニウム水溶液とを混合して濃縮して得られる結晶は、硫酸カリウムアルミニウム十二水和物 AlK(SO{{sub|4}}){{sub|2}}・12H{{sub|2}}O の結晶であり、この硫酸カリウムアルミニウム十二水和物を'''ミョウバン'''(明礬)という。
ミョウバンの結晶は無色透明で正八面体形をしている。 ミョウバンを水に溶かすと、<chem>Al^3+</chem> 、<chem>K^+</chem> 、<chem>SO4^2-</chem> の各イオンに電離する。 <chem>AlK(SO4)2*12H2O -> {Al^3+} + {K^+} + 2 {SO4^{2-}} + 12 H2O</chem>
ミョウバンのように、2種類以上の塩が結合して物質を'''複塩'''(ふくえん、double salt)という。
ミョウバンを焼くと、無水物である焼きミョウバンが得られる。ミョウバンは温度による溶解度の変化が激しく、低温の水には少量しか溶けないが、温度を上げるとよく溶けるようになる。
=== 補:両性金属の反応モデル ===
[[高校化学 アルカリ金属#金属と水の反応モデル]]において、水酸化物皮膜を用いて金属と水の反応を説明した。
ここでは、同様にして両性金属元素の反応モデルを考える。
水中にある金属Mは水と反応して表面に水酸化物M(OH){{sub|x}}の皮膜を作る。
ここで、酸HXを加えると水酸化物皮膜と反応して塩が生成される。塩は完全に電離するので金属の表面が露出し、水酸化物皮膜が生成される。また水酸化物が酸と反応して金属の表面が露出し・・・と反応が進行し、最終的に全て塩となって水に溶ける。
また、塩基YOHを加えると、水酸化物イオンと水酸化物が反応して錯イオンを形成する。錯イオンは水に可溶なので金属の表面が露出し(以下略)と反応が進行し、最終的に全て錯イオンとなって水に溶ける。
== スズと鉛 ==
スズ Sn と鉛 Pb は、ともに周期表14族であり、原子は価電子を4個もち、ともに酸化数が+2または+4の化合物をつくり、ともに両性元素であり、ともにイオン化傾向は水より大きい。
=== スズ ===
[[ファイル:Metal_cube_tin.jpg|代替文=スズ|サムネイル|200x200ピクセル|スズ]]
スズ(Sn)は銀白色の固体である。展性や延性に富み、また比較的さびにくい金属である。酸とも塩基とも反応して、水素を発生する。
: <chem>Sn + 2HCl -> SnCl2 + H2</chem>
: <chem>Sn + 2NaOH + 2H2O -> [Sn(OH)4]^2- + 2 Na^+ + H2</chem>
スズは、青銅やハンダなど合金の材料でもある。
また、スズはメッキに多用される。鉄にスズをメッキしたものは「'''ブリキ'''」と呼ばれ、缶詰や金属玩具などに用いられる。
{| align="center" style="border:none; text-align:center;"
|[[ファイル:Assorted_bronze_castings.JPG|右|サムネイル|183x183ピクセル|青銅]]
|[[ファイル:HK_Food_Grass_Jelly_Canned_with_Tinplate_a.jpg|右|サムネイル|201x201ピクセル|ブリキの缶詰]]
|}
=== スズの化合物 ===
化合物中でのスズの酸化数には +2 と +4 があるが、スズの場合は 酸化数=+4 のほうが安定である。
スズを塩酸に溶かした溶液から、塩化スズ <chem>SnCl2</chem> が得られる。 塩化スズ(II)二水和物 <chem>SnCl2*2H2O</chem> は無色の結晶。また、水溶液は還元作用がある。
: <chem>SnCl2 + 2Cl^- -> SnCl4 + 2e^-</chem>
=== 鉛 ===
[[ファイル:Metal_cube_lead.jpg|代替文=鉛|サムネイル|200x200ピクセル|鉛]]
'''鉛''' Pb は青白色のやわらかい金属である。鉛とその化合物は有毒である。
鉛は、両性元素であり、硝酸、強塩基の水溶液と反応して溶ける。しかし、塩酸と希薄硫酸には、鉛の表面に難溶性の皮膜(塩化鉛 PbCl<sub>2</sub> や、硫酸鉛 PbSO<sub>4</sub> の皮膜は、水に難溶)が発生するため、溶けない。
<chem>Pb + 2HNO3 -> Pb(NO3)2 + H2</chem> <chem>Pb + 2NaOH + 2H2O -> [Pb(OH)4]^2- + 2Na^+ + H2</chem>
ただし、塩酸と希硫酸には溶けない。また、アンモニア水のような弱塩基にも溶けない。
酸化鉛PbOは黄色く、古くは、黄色の顔料として用いられた。
鉛は放射線の遮蔽材や鉛蓄電池に使われている。
鉛の化合物は水に溶けにくいものが多いが、硝酸鉛 <chem>Pb(NO3)2</chem> や酢酸鉛 <chem>(CH3COO)2Pb</chem> は水によく溶ける。
=== イオン ===
鉛(II)イオン(<chem>Pb^2+</chem>)は様々な沈殿を作る。アンモニア水や少量の水酸化ナトリウム水溶液を加えると、水酸化鉛(II)の白色沈殿を生じる。
: <chem>Pb^2+ + 2OH^- -> Pb(OH)2 v</chem>
ただし、水酸化ナトリウム水溶液を過剰に加えると、テトラヒドロキソ鉛(II)酸イオンを生じて溶ける。
: <chem>Pb(OH)2 + 2NaOH -> 2Na^+ + [Pb(OH)4]2-</chem>
鉛(II)イオン水溶液に塩酸を加えると、塩化鉛(II)の白色沈殿を生じる。
: <chem>Pb^2+ + 2HCl -> 2 H^+ + PbCl2 v</chem>
これを加熱すると、鉛(II)イオンを生じて溶ける。
: <chem>PbCl2 -> Pb^2+ + 2Cl^-</chem>
鉛(II)イオン水溶液に希硫酸を加えると、硫酸鉛(II)の白色沈殿を生じる。
: <chem>Pb^2+ + H2SO4 -> 2H^+ + PbSO4</chem>
鉛(II)イオン水溶液に硫化水素を加えると、硫化鉛(II)の黒色沈殿を生じる。
: <chem>Pb^2+ + H2S -> 2H^+ + PbS v</chem>
鉛(II)イオン水溶液にクロム酸カリウム水溶液を加えると、クロム酸鉛(II)の黄色沈殿を生じる。
: <chem>Pb^2+ + CrO4^2- -> PbCrO4 v</chem>
鉛(II)イオン水溶液にヨウ化カリウム水溶液を加えると、ヨウ化鉛(II)の黄色沈殿を生じる。
: <chem>Pb^2+ + 2I^- -> PbI2</chem>
== セラミックス ==
ガラス、セメント、陶磁器などのように、無機物質に加熱処理などしたものを、'''セラミックス'''という。
また、このようなセラミック製品を製造する産業を、セラミック産業または窯業(ようぎょう)という。 窯は「かま」の事である。
原材料にケイ酸塩化合物を用いることが多いことから、ケイ酸塩工業ともいう。
=== 共通する性質 ===
セラミックスには多くの種類があるが、多くのセラミックス材料に共通する性質として、
: ・ 力をくわえても変形しづらい。延性・展性は無い
: ・ 絶縁体である
: ・ 耐熱性に優れる。しかし、急激な温度変化に対しては弱い
: ・ 錆びない
: がある。 なお、硬いという長所は、加工が難しいという短所でもある。
=== セメント ===
水を加えると硬化するものを'''セメント'''という。建築材料として用いられる'''ポルトランドセメント'''は、石灰石、粘土(SiO<sub>2</sub>, Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub>など)、酸化鉄Fe<sub>2</sub>O<sub>3</sub>などを粉砕して混合したのち、1500 ℃で加熱したものに、少量の石膏(CaSO<sub>4</sub>・2H<sub>2</sub>O)を加えて粉砕したものである。製造のとき、石灰石が高熱で処理され、酸化カルシウム CaO になる。
砂利、砂、水をセメントで固めたものを'''コンクリート'''という。また、セメントに砂を混ぜたものは、'''モルタル'''という。
[[ファイル:Liepaja_Karosta_falochron_polnocny_2.jpg|サムネイル|コンクリートで作られた消波ブロック]]
セメントやコンクリートには、カルシウム Ca が含まれている。 石膏は、硬化を遅らせて調節するために添加されている。
コンクリートは圧縮の力には強いが、引っ張りの力には弱いので、引っ張りに強い鉄筋を入れた鉄筋コンクリート(reinforced concrete, RC)として用いる。
コンクリートは、材料中の水酸化カルシウム Ca(OH)<sub>2</sub> により、塩基性を示す。また、この塩基性により、内部の鉄筋が酸から保護される。空気中の酸性物質などにより、コンクリートはしだいに中性に中和されていき、そのため強度がしだいに低下していく。また、鉄筋を保護していたコンクリートが劣化すると、内部の鉄筋も酸に腐食されやすくなる。
=== ガラス ===
ガラスはケイ酸塩を主成分として、ナトリウム Na、カリウム Kなどを含んでいる。
[[ファイル:Chartres_RosetteNord_121_DSC08241.jpg|サムネイル|503x503ピクセル|ステンドグラスには金属酸化物で着色されたガラスが使用されている。]]
ガラスの結晶構造は不規則であり、一定の融点を持たない。高温にすると、やわらかくなり水あめのように軟らかくなる。冷えると固まる。
ガラスの結晶のように、不規則なまま硬化している結晶構造を、'''アモルファス(非晶質)'''という。
ガラスは無色透明であるが、金属酸化物を加えることで着色することができる。
ほぼ二酸化ケイ素だけで出来ている高純度のガラスを、'''石英ガラス'''といい、紫外線の透過性が高く、また耐熱性も高いので、光学機器や耐熱ガラスや光ファイバーなどに利用されている。
しかし、石英ガラスは耐熱性が高すぎるため融点が高く、製造時の溶融加工が容易でないので、一般のガラス製品には添加物をくわえて融点を下げたソーダ石灰ガラスなどが用いられている。
窓ガラスなどに用いられる一般のガラスは、ソーダ石灰ガラスであり、SiO2のほか、Na2OとCaOを主成分としている。
このソーダ石灰ガラスの製法は、けい砂(主成分 SiO2)に、炭酸ナトリウム(Na2CO3)や石灰石を添加して作る。
[[ファイル:Schott_Duran_glassware.jpg|サムネイル|ホウケイ酸ガラスの実験器具]]
ガラスを高温に熱していったとき、ガラスが軟らかくなり始める軟化点または軟化温度という。ソーダ石灰ガラスの軟化点は630 ℃だが、石英ガラスの軟化点は1650 ℃である。
理科実験などで用いるビーカーやフラスコなど、理科学器具に用いられるガラスの材質には、ホウケイ酸ガラスが用いられている。 ホウケイ酸ガラスは、ホウ砂(主成分 B<sub>2</sub>O<sub>3</sub>)とケイ砂からなるガラスである。ホウケイ酸ガラスは熱膨張率が低く、そのため耐熱性も高く、耐食性も高いことから、理科実験器具用のガラスとして用いられている。
酸化鉛 PbO を含んだ鉛ガラスは密度が大きく、また、X線など放射線の吸収能も大きいため、放射線遮蔽窓として用いられる。 また、鉛ガラスは屈折率が大きいため、光学レンズとしても用いられる。
=== 陶磁器 ===
粘土や砂、岩石の粉などを焼き固めて、陶磁器がつくられる。
[[ファイル:Chinese_-_Dish_with_Flowering_Prunus_-_Walters_492365_-_Interior.jpg|サムネイル|清の磁器]]
陶器は約1000℃で焼き固めてて作られる。磁器は700~900℃で素焼き(釉薬をかけずに焼く)したのち、釉薬を塗り、1100℃~1500℃で本焼きをする。磁器は硬く、白色で吸水性がない。叩くと金属音を発する。
[[ファイル:Covered_Jar,_Imari_ware,_Edo_period,_18th_century,_Chinese_lion_and_phoenix_design_in_underglaze_blue_and_overglaze_enamel_-_Tokyo_National_Museum_-_DSC05337.JPG|サムネイル|伊万里の磁器({{Ruby|色絵獅子鳳凰文有蓋大壺|いろえししほうおうもんゆうがいたいこ}} 東京国立博物館蔵)]]
また、土器は600℃から900℃で素焼きした陶磁器である。
[[ファイル:火焔土器-“Flame-Rimmed”_Cooking_Vessel_(Kaen_doki)_MET_2015_300_258_Burke_website.jpg|サムネイル|縄文時代の土器]]
焼き固めとは、高温にすることで、粒子の表面が部分的に融け、そのあと冷ましていくことで、粒子どうしが接着する。
これらの焼き物の表面には、焼く前に、石英などの粉末からなる{{Ruby|釉薬|ゆうやく}}(うわぐすり)が表面に塗られる。焼く時に、釉薬が融け、ガラスになる。表面がガラスで保護されることで、吸水性がなくなる。
=== アルミナ ===
Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub>は硬くて丈夫なので、さまざまな材料に用いられる。
研磨剤にも、アルミナは用いられている。
* 電気工業への応用
アルミナは絶縁性も高く、そのためICチップなどの絶縁材にも用いられる<ref>『セラミック材料』、工業高校教科書、文部科学省</ref>。 アルミナは熱伝導性も比較的よく、そのため電気回路で生じたジュール熱を外部に放散しやすいので、温度上昇による誤動作を防ぎやすい。
* 医療への応用
また、医療用の人工骨などにアルミナ材料の人工骨を用いてても、拒否反応などを起こさず、生体適合性が良い。なお、自然には人体にアルミナは接着しないので、ボルトなどで人工的に人工骨を既存の骨に固定する必要がる。
=== ニューセラミックス ===
* 酸化ジルコニウム
酸化ジルコニウム ZrO<sub>2</sub> およびそれに添加物を加えた材料では、結晶中に自然に生じた欠陥が、まるでシリコン半導体でいう導電性を高めるための添加物と似た役割を生じて、酸化ジルコニウム中の欠陥が酸化ジルコニウムの導電性に影響を与える。その結果、酸化ジルコニウムは、空気中の酸素濃度により導電性が変わる。このため、酸化ジルコニウムは酸素センサとして用いられる。
* 酸化チタン
酸化チタン TiO<sub>2</sub> は、光が当たると、有機物を分解する。この有機物の分解作用のため、光の当たった酸化チタンは、殺菌や消臭などの効果をもつ。酸化チタンそのものは減らずに残り続けるので、触媒的に働くことから、このような光のあたった酸化チタンによる分解作用が、'''光触媒'''と呼ばれる。
この分解のエネルギー源は、酸化チタンが紫外線を吸収し、そのエネルギーによって酸化チタンの酸化力が高まり、そして有機物を分解する。
さて太陽電池としても、酸化チタンは利用されている。酸化チタンそのものは紫外線しか吸収しないため効率が低いため、色素を添加して、色素に可視光を吸収をさせて、そのエネルギーを酸化チタンが利用できるように工夫した太陽電池が開発されており、色素増感型太陽電池と言われている。
また、色素と光によってエネルギーを得る仕組みが、植物の光合成の仕組みに似ていることから、生物学的にも興味を持たれている。
この他、酸化チタンは白色であり、人体に無害なので、化粧などの白色顔料としても用いられている。
このほか、超親水性という性質があり、水に濡れても水滴にならず、水が全体に広がるので、自動車のフロントガラスなどの添加剤に応用されている。
* 酸化スズ SnO2
酸化スズ SnO2 では、表面に酸素を吸着する性質がある。そして、プロパンガスや一酸化炭素などにさらされると、吸着された酸素が燃焼して、もとの酸化スズに戻る。この吸着と酸素の離脱のさい、導電性が変わるため、プロパンガスなど可燃性ガス濃度を測るセンサーとして用いられる。
* セラミック製コンデンサー
そもそもコンデンサーには、電気を通さない性質が求められる。つまりコンデンサーの材料は、絶縁物質であるべきである。そもそも、コンデンサーは、誘電分極(ゆうでん ぶんきょく)を利用した素子だから。もし、金属のように電気を通してしまうと、そもそもコンデンサーとしての役割を持たない。
セラミックは電気を通さないため、コンデンサーとして適切であり、じっさいにコンデンサーとしてセラミック材料は利用されている。
なお、セラミックは、絶縁材料としても、活用される。
コンデンサー材料としては、チタン酸バリウム BaTiO<sub>3</sub> などがある。
* 圧電性セラミックス
チタン酸ジルコン酸鉛 PbTiO<sub>3</sub> や チタン酸バリウム BaTiO<sub>3</sub> などに圧力をくわえると、電圧が発生する。これを利用して、圧力センサーなどに用いる。なお、チタン酸バリウムは、コンデンサー材料としても用いられている。このように、圧電の仕組みと、コンデンサーの誘電分極の仕組みとは、関連性がある。
なお、このような圧電性の材料に交流電圧をくわえると、振動をすることから、音波や振動の発生源としても用いられる。さらに、振動の共振周波数(その物体が振動しやすい周波数)が、その振動体に加えられた圧力や荷重などの外部の力によって変化することから、圧力センサーなどにも圧電材料が応用されている。
* 生体セラミックス
ハイドロキシアパタイトは、骨の主成分でもある。そのため、ハイドロキシアパタイトでつくった人工骨は、もともとの骨に接着しやすく、拒否反応なども起こりにくいので、医療用の人工骨などに利用される。なお、拒否反応などが無く、生体に接着しやすい性質を、生体親和性という。
* 炭化チタンTiC、炭化ホウ素B<sub>4</sub>C
炭化物のセラミックスの中には、硬度がかなり高く、また適度に靭性もあり、丈夫なものがある。このため、炭化チタン TiC などは切削工具などに用いられる。炭化ケイ素や窒化ケイ素なども、耐熱性が高い。
自動車エンジンやガスタービンなどに、これらの耐熱セラミックスが用いられる。
=== 半導体およびセラミックの温度-電気特性 ===
半導体や、いくつかのセラミックスには、温度の上昇にともなって、電気抵抗が下がるものがある。
なお、金属では、温度が上がると、電気抵抗が上がる。
半導体やセラミックスの、このような、温度上昇にともなって電気抵抗が下がる特性が実用化されており、電子機器での温度変化時の電圧など出力の安定化のための部品に利用したり、あるいは温度センサなどに利用されたりしている。
[[カテゴリ:高等学校化学|てんけいきんそく]]
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== アルカリ金属 ==
=== 金属と水の反応モデル ===
以降の無機化学の単元において、金属と水溶液との反応を考える上では、以下のようなモデルを用いる。※実測はされていない
ある金属元素Mが水中にある。このとき、周りの水と反応することにより金属の表面が水酸化物M(OX){{sub|x}}で覆われる。(皮膜形成)
この水酸化物M(OX){{sub|x}}が水に可溶ならば、水酸化物皮膜が全て水に溶けて金属の表面が露出し、水と反応して水酸化物M(OH){{sub|x}}が生成する。そしてまた水酸化物被膜が全て水に溶けて金属の表面が露出し・・・と反応を繰り返し、最終的には金属が全て水酸化物となって水に溶ける。
水に難溶ならば、水酸化物皮膜が生成した時点で反応が止まり、その金属は水と反応しない。
なお、イオン化傾向がMg以下の金属の水酸化物は水に難溶である。
=== 単体 ===
[[File:Lithium paraffin.jpg|right|200px|thumb|リチウムの保存. <br>リチウムは密度が灯油よりも軽いため、リチウムは灯油に浮く。]]
[[File:Kalium.jpg|right|150px|thumb|切断したカリウム]]
水素を除く1族元素のリチウム Li, ナトリウム Na, カリウム K, ルビジウム Rb, セシウム Cs, フランシウム Fr のことを'''アルカリ金属'''という。
アルカリ金属の単体は、いずれも銀白色の固体である。融点が低くやわらかい金属で、カッターで簡単に切断することができる。
アルカリ金属の原子は価電子を1個もち、1価の陽イオンになりやすい。
このため、アルカリ金属の原子は酸化されやすいので、天然には単体の状態では存在せず、塩として存在する。
単体を得るには、化合物の融解塩電解を行う。加熱して融解させた化合物に炭素電極を入れ、電気分解を行うと、陰極側に金属の単体が析出する。
: <chem>{X+} + {e^-} -> {X} v</chem> (XはLi、Na、Kなど)
アルカリ金属は反応性が高く、イオン化傾向が大きいので還元性も高い。アルカリ金属は常温で空気中の酸素や水、塩素と簡単に反応する。特に水とは、アルカリ金属は常温で水と反応して水素を発生しながら激しく反応し、反応後の溶液は強塩基性の水溶液になる。
: <chem>4X + O2 -> 2X2O</chem>
: <chem>2X + 2H2O -> 2XOH + H2 ^</chem> (XはLi、Na、Kなど)
: <chem>2X + Cl2 -> 2XCl</chem>
そのため、アルカリ金属の単体を保存する際には、空気中の酸素や水との反応をふせぐために'''石油中'''(灯油)に保存する。リチウムは石油よりも軽いため、石油に浮く。また、単体は素手で触れず、必ずピンセットなどを用いて扱う。
<!--
水だけでなく、ヒドロキシル基(-OH)を持つアルコールやフェノールとも水素を発生しながら反応して、アルコキシド、フェノキシドとなる。
: 2R-OH + 2X → 2R-OX + H{{sub|2}} (Rは炭化水素基、XはLi、Na、Kなど)
-->
{| class="wikitable" align=right
|+ アルカリ金属の単体の性質
|-
|- style="background:silver"
! 元素名 !! 元素記号 !! 融点(℃) || 沸点(℃) || 密度(g/cm<sup>3</sup>) || 炎色反応
|-
| リチウム || Li || 180 || 1347 || 0.53 || 赤
|-
| ナトリウム|| Na || 98 || 883 || 0.97 || 黄
|-
| カリウム || K || 64 || 774 || 0.86 || 赤紫
|-
| ルビジウム || Rb || 39 || 688 || 1.53 || 赤
|-
| セシウム || Cs || 28 || 678 || 1.87 || 青
|-
|}
イオンは'''炎色反応'''を示し、白金線にイオン水溶液をつけガスバーナーの炎に入れると、リチウムイオンでは赤色に、ナトリウムイオンでは黄色に、カリウムでは赤紫色にそれぞれ炎が色づく。
{|align="center" style="border:solid #aaffaa 1px; text-align:center;"
|[[File:FlammenfärbungLi.png|52px|リチウムの炎色反応]]||[[File:FlammenfärbungNa.png|50px|ナトリウムの炎色反応]]||[[File:FlammenfärbungK.png|50px|カリウムの炎色反応]]
|-
|Li||Na||K
|}
=== アルカリ金属の化合物 ===
アルカリ金属は様々な化合物を作る。この章ではアルカリ金属の中でも、特にナトリウムの化合物について学ぶ。
==== 水酸化物 ====
アルカリ金属の単体が水と反応すると水酸化物となる。たとえばリチウムは水酸化リチウム(LiOH)に、ナトリウムは水酸化ナトリウム(NaOH)に、カリウムは水酸化カリウム(KOH)になる。
水酸化ナトリウムの工業的な製法については、塩化ナトリウム NaCl 水溶液の電気分解によって製造される。
常温では白色の固体であり、水によく溶けて、いずれの水溶液も強塩基性を示す。このため皮膚を冒す性質があり、取り扱いに注意する。
[[ファイル:Sodium_hydroxide.jpg|右|サムネイル|200x200ピクセル|水酸化ナトリウム]]
水酸化ナトリウムと水酸化カリウムの固体は吸湿性があり、空気中に放置すると水蒸気を吸収してその水に溶けてしまう。この現象を'''潮解'''(ちょうかい、deliquescenece)という。
水溶液も吸湿性があるため、長時間放置すると溶液の濃度が変化する。したがって精密さを要する実験では、直前に水溶液を調整するようにするとともに、中和滴定などにより正確な濃度を測る必要がある。
また水酸化ナトリウムは水分を吸収するだけでなく、空気中の二酸化炭素も吸収して、炭酸塩の炭酸ナトリウム(Na{{sub|2}}CO{{sub|3}})を生じる。
: <chem>2NaOH + CO2 -> Na2CO3 + H2O</chem>
この性質から、二酸化炭素の吸収剤として用いられることがある。
水酸化ナトリウムの産業上の用途は、製紙業でのパルプの製造、石油の精製、繊維の製造、セッケンの製造、などで用いられている。 水酸化ナトリウムは'''苛性ソーダ'''とも呼ばれる。
==== 炭酸塩・炭酸水素塩 ====
'''炭酸水素ナトリウム'''(NaHCO{{sub|3}})と'''炭酸ナトリウム'''(Na{{sub|2}}CO{{sub|3}})は共に白色の粉末である。工業的には'''アンモニアソーダ法'''により製造される。
==== アンモニアソーダ法(ソルベー法) ====
アンモニアソーダ法は炭酸ナトリウムの工業的製法である。
# 塩化ナトリウムの飽和水溶液にアンモニアと二酸化炭素を通す。 <chem>NaCl + NH3 + CO2 + H2O -> NaHCO3 + NH4Cl</chem>
# 炭酸水素ナトリウムを加熱する。 <chem>2NaHCO3 -> Na2CO3 + CO2 ^ + H2O</chem>
[[ファイル:アンモニアソーダ法反応過程.svg|右|サムネイル|550x550ピクセル|アンモニアソーダ法の反応経路図]]
;
反応で生じた生成物は次のように再利用できる。
# 炭酸カルシウムを加熱して酸化カルシウムと二酸化炭素を得る。
#: <chem>CaCO3 -> CaO + CO2</chem>
# 1.で得た酸化カルシウムに水をくわえ、水酸化カルシウムとする。
#: <chem>CaO + H2O -> Ca(OH)2</chem>
# 2.で得た水酸化カルシウムを1.で得た塩化アンモニウムと反応させ、塩化カルシウムとアンモニアを得る。このアンモニアは回収して1.の反応で再利用する。
#: <chem>2NH4Cl + Ca(OH)2 -> CaCl2 + 2NH3 + 2H2O</chem>
アンモニアソーダ法は全体としては、 <chem>2NaCl + CaCO3 -> Na2CO3 + CaCl2</chem> という反応式で表される。
原料がCaCO{{sub|3}}(石灰岩、秩父などで大量に採れる)とNaCl(食塩、買えなくても海水から作れる)とNH{{sub|3}}(アンモニア、ハーバー・ボッシュ法で大量生産できる)のみと非常に安価なので、アンモニアソーダ法は「安く大量生産を目指す」工業的製法としては最も理想形に近いと言われている。
==== 炭酸ナトリウム ====
炭酸水素ナトリウムは、熱分解して炭酸ナトリウム(sodium carbonate)となる。炭酸ナトリウムは白色の粉末で、水に溶け、水溶液は塩基性を示す。
炭酸ナトリウムは加熱しても、分解しない。
炭酸ナトリウムは弱酸と強塩基の塩であり、水に溶けると加水分解して塩基性を示す。
<chem>Na2CO3 -> 2 {Na^+} + CO3^{2-}</chem>
<chem>CO3^{2-} + H2O <=> {HCO3^-} + OH^-</chem>
炭酸ナトリウム水溶液を冷却すると十水和物 <chem>Na2CO3*10H2O</chem> の無色透明の結晶が得られる。この <chem>Na2CO3*10H2O</chem> の結晶は空気中に放置すると水和水の大部分を失って、白色粉末の一水和物 <chem>Na2CO3*H2O</chem> となる。この現象は'''風解'''(ふうかい、efflorescence)と呼ばれる。
炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムは、ともに強酸と反応して二酸化炭素を生じる。(弱酸遊離反応)
<chem>Na2CO3 + 2H2SO4 -> Na2SO4 + H2O + CO2 ^</chem>
炭酸ナトリウムは、ガラスや石鹸の製造などに用いられる。
※ガラスの原料は二酸化珪素 <chem>SiO2</chem> であるが、これを珪酸ナトリウム <chem>Na2SiO3</chem> にする反応において、水酸化ナトリウムよりも炭酸ナトリウムの方がよく用いられる。<chem>SiO2 + NaOH -> Na2SiO3 + H2O</chem>という反応と<chem>SiO + Na2CO3 -> Na2SiO3 + CO2</chem>という反応を比べた時、左の反応は反応性が高いものの、生成された <chem>H2O</chem> が反応の系内に残るので逆反応が起こり、平衡状態となって反応が見かけ上止まってしまう。それに対し、右の反応は生成された <chem>CO2</chem> が反応の系外に脱出するので、ルシャトリエの原理により平衡が正反応の向きに偏って反応がより一層進行する。そのため、通常は炭酸ナトリウムが用いられる。
==== 炭酸水素ナトリウム ====
炭酸水素ナトリウム <chem>NaHCO3</chem> は白色粉末で、水に少し溶け、水溶液は加水分解により弱塩基性を示す。炭酸水素ナトリウムは'''重曹'''(じゅうそう)ともいう。(重曹は「重炭酸曹達」の略である。「重炭酸」は「炭酸水素」の別名であり、「曹達(ソーダ)」はナトリウムの和名である。)
炭酸水素ナトリウムを熱すると、分解して二酸化炭素を発生する。
<chem>2NaHCO3 -> Na2CO3 + H2O + CO2 v</chem>
(上記の反応は、ソルベー法での炭酸水素ナトリウムの分解反応と同じ。)
炭酸水素ナトリウムの用途は、発泡剤やベーキングパウダー(ふくらし粉)、入浴剤の発泡剤成分、などとして用いられている。
また、強酸で、二酸化炭素を発生する。
<chem>NaHCO3 + HCl -> NaCl + H2O + CO2 v</chem>
=== 塩化物 ===
[[ファイル:NaCl-zoutkristallen_op_Schott_Duran_100_ml.JPG|右|サムネイル|200x200ピクセル|塩化ナトリウムの結晶]]
水酸化ナトリウムに塩酸を加えると、中和反応を起こし塩化ナトリウム(NaCl)を生じる。
<chem>NaOH + HCl -> NaCl + H2O</chem>
塩化ナトリウムは天然では岩塩に豊富に含まれており、食塩の主成分としても有名である。工業的には海水を濃縮することにより得られる。
塩化ナトリウムを融解塩電解すると単体のナトリウムが得られる。
<chem>2NaCl -> 2Na v Cl2 ^</chem>
塩化ナトリウム水溶液を電気分解すると、陽極から塩素が発生し、陰極から水素が発生する。このとき陰極側では水の電気分解反応が起こっており、水酸化物イオンが生じている。
<chem>2H2O -> H2 + 2 OH^-</chem>
溶液中にはナトリウムイオンが残るため、陰極付近では水酸化ナトリウムの水溶液が得られる。この原理は工業的な水酸化ナトリウムおよび塩素・水素の製造法として応用されており、陽イオン交換膜を用いることから'''イオン交換膜法'''と呼ばれる。
== 2族元素 ==
周期表の2族の元素は、すべて金属元素である。2価の価電子をもち、2価の陽イオンになりやすい。天然には塩として存在している。
2族元素のことをアルカリ土類金属という<ref>アルカリ土類金属の定義として、「Be,Mgを除く2族元素」と定義しているところもある。これは、後述するようにBe,Mgとその他の2族元素の性質に異なるところがあるからである。</ref>。
=== アルカリ土類金属元素 ===
2族元素の単体はアルカリ金属元素の単体よりも硬い。
[[ファイル:Magburn1.jpg|右|サムネイル|250x250ピクセル|マグネシウムの燃焼]]
2族元素の単体は、いずれも、空気中で激しく燃焼して酸化物を生じる。たとえばマグネシウムは白い強い光を出しながら燃焼して白色の酸化マグネシウム(MgO)を生じる。
: <chem>2Mg + O2 -> 2MgO</chem>
マグネシウムは二酸化炭素とも熱や光を出しながら激しく反応する。
: <chem>2Mg + CO2 -> 2MgO + C</chem>
2族元素の酸化物はいずれも塩基性酸化物であり、酸と反応する。たとえば酸化マグネシウムは塩酸と反応して塩化マグネシウムを生じる。
: <chem>MgO + 2HCl -> MgCl2 + H2O</chem>
[[ファイル:Magnesium_chloride.jpg|右|サムネイル|200x200ピクセル|塩化マグネシウムの潮解]]
塩化マグネシウムは白色の固体であり、潮解性がある。
ベリリウム・マグネシウムとアルカリ土類金属とでは、次のような違いがある。
* '''炎色反応'''
*: ベリリウムとマグネシウムの単体は、炎色反応を示さない。アルカリ土類金属元素は炎色反応を示し、イオンの水溶液を白金線の先につけてガスバーナーの炎に入れると、カルシウムでは橙赤色に、ストロンチウムでは紅色に、バリウムでは黄緑色に、それぞれ炎が色づく。
{| align="center" style="border:solid #aaffaa 1px; text-align:center;"
|[[ファイル:FlammenfärbungCa.png|153x153ピクセル|カルシウムの炎色反応]]
|[[ファイル:FlammenfärbungSr.png|152x152ピクセル|ストロンチウムの炎色反応]]
|-
|Ca
|Sr
|}
{| class="wikitable" align="right"
|+2族元素の単体の性質
|- style="background:silver"
!
!元素名
!元素記号
!融点(℃)
!密度(g/cm<sup>3</sup>)
!炎色反応
|-
| rowspan="2" |
|ベリリウム
|Be
|1282
|1.85
|示さない
|-
|マグネシウム
|Mg
|649
|1.74
|示さない
|-
| rowspan="3" |アルカリ
土類金属
|カルシウム
|Ca
|839
|1.55
|橙赤
|-
|ストロンチウム
|Sr
|769
|2.54
|紅
|-
|バリウム
|Ba
|729
|3.59
|黄緑
|-
|}
* 水との反応性
*: アルカリ土類金属の単体は常温で水と反応し、水素を発生する。
*:: <chem>Ca + 2H2O -> Ca(OH)2 + H2 ^</chem>
*: 一方で、ベリリウムやマグネシウムの単体は常温では水と反応しない。ただし、マグネシウムは熱水と反応して水素を発生しながら水酸化物となる。
*:: <chem>Mg + 2H2O -> Mg(OH)2 + H2 ^</chem>
* 硫酸塩の水への溶けやすさ
*: 例外的に、硫酸ベリリウム、硫酸マグネシウムは水に溶けやすい。だが、それ以外のアルカリ土類金属の硫酸塩は水に溶けにくい。
=== バリウム ===
水酸化バリウムの水溶液などに希硫酸を加えると、硫酸バリウム BaSO<sub>4</sub> の白色沈殿が得られる。
硫酸バリウム BaSO<sub>4</sub> は白色の粉末で、水に溶けず、酸にも反応しない。
硫酸バリウムの実社会の用途として、医療では、この性質(水に溶けにくい、酸に反応しない、など)を利用して、人体のX線撮影の造影剤として、胃や腸など消化器官のようすを撮影するための造影剤として、硫酸バリウムは用いられる。
なおバリウムおよび硫酸バリウムは、X線を透過させにくい。そのため、X線撮影の際、人体内のバリウムのある場所でX線が遮断され、撮影装置にX線が届かなくなるので、胃や腸でのバリウムのようすが見える、という仕組みである。
=== カルシウム ===
[[ファイル:Calcium_unter_Argon_Schutzgasatmosphäre.jpg|右|サムネイル|200x200ピクセル|カルシウムの単体]]
'''カルシウム'''(Ca)はアルカリ土類金属のひとつである。単体は塩化カルシウムの融解塩電解により得られる。
[[ファイル:Big-Calcium-Bubble.ogv|右|サムネイル|250x250ピクセル|二酸化炭素の発生]]
=== 酸化物 ===
単体を空気中で燃焼させると酸化カルシウム(CaO)を生じる。酸化カルシウムは'''生石灰'''(せいせっかい)とも呼ばれる。
: <chem>2Ca + O2 -> 2CaO</chem>
酸化カルシウムに水を加えると熱を出しながら水酸化カルシウム(<chem>Ca(OH)2</chem>)を生じる。水酸化カルシウムは消石灰とも呼ばれる。
: <chem>CaO + H2O -> Ca(OH)2</chem>
酸化カルシウムは水を吸収し、そのさい発熱することから、乾燥剤や発熱材として用いられる。ただし、酸性気体とは反応してしまうため、塩基性・中性気体の乾燥にしか使えない。
=== 水酸化物 ===
酸化カルシウムに水を加えると熱を出しながら水酸化カルシウム(<chem>Ca(OH)2</chem>)を生じる。
: <chem>CaO + H2O -> Ca(OH)2</chem>
逆に、水酸化カルシウムを加熱すると酸化カルシウムが得られる。
: <chem>Ca(OH)2 -> CaO + H2O</chem>
水酸化カルシウムはカルシウムを水と反応させることによっても得られる。
: <chem>Ca + 2H2O -> Ca(OH)2 + H2 ^</chem>
水酸化カルシウムは白色の粉末であり、消石灰とも呼ばれる。水酸化カルシウムの水溶液は塩基性を示し、一般に石灰水(lime water)と呼ばれる。 石灰水に二酸化炭素を通じると、炭酸カルシウムの白色沈殿を生じて白濁する。この反応は二酸化炭素の検出に用いられる。
: <chem>Ca(OH)2 + CO2 -> CaCO3 v + H2O</chem>
しかし、白濁した石灰水にさらに二酸化炭素を通じ続けると、炭酸水素カルシウムとなって沈殿は溶解し、無色の水溶液になる。
: <chem>CaCO3 + CO2 + H2O -> Ca(HCO3)2</chem>
この炭酸水素カルシウム水溶液を加熱すると、再び炭酸カルシウムの沈殿が生じる。
: <chem>Ca(HCO3)2 -> CaCO3 v + CO2 ^ + H2O </chem>
水酸化カルシウム水溶液に塩酸を加えると、塩化カルシウムを生じる。塩化カルシウムは吸湿性があり、乾燥剤としてしばしば用いられる。
: <chem>Ca(OH)2 + 2HCl -> CaCl2 + 2H2O</chem>
水酸化カルシウム水溶液に塩素を通じると、[[高等学校化学I/非金属元素の単体と化合物#塩素のオキソ酸|さらし粉]]を生じる。
: <chem>Ca(OH)2 + Cl2 -> CaCl(ClO)*H2O</chem>
水酸化カルシウムは漆喰に使われている。
=== 塩化物 ===
塩化カルシウム CaCl{{sub|2}}は一般的には「エンカル」という名称で用いられる。
使用用途は乾燥剤と融雪剤である。中性なのであらゆる気体の乾燥に使えるが、唯一アンモニアとは反応してしまうためアンモニアの乾燥はできない。
夏にエンカルをグラウンドに撒くことがある。これは、大気中の水分をエンカルが吸うことにより、地表が湿って砂埃が舞うのが抑えられるためである。
=== 炭酸塩 ===
炭酸カルシウム CaCO{{sub|3}} の固体は、天然には石灰岩や大理石として存在する。
鍾乳洞(しょうにゅうどう)や鍾乳石(しょうにゅうせき)は、炭酸カルシウムが地下水にいったん溶けて、水中で炭酸水素ナトリウムとなり、その後、炭酸カルシウムに戻り、再度、固まったものでる。
炭酸カルシウムは塩酸などの強酸と反応して、二酸化炭素を発生する。
: <chem>CaCO3 + 2HCl -> CaCl2 + H2O + CO2 ^</chem>
炭酸カルシウムは、セメントの原料や、チョークの原料、ガラスの原料、歯みがき粉の原料などとして、使われている。
=== 硫酸塩 ===
水酸化カルシウム水溶液に硫酸を加えると、硫酸カルシウム CaSO{{sub|4}} の白色沈殿を生じる。硫酸カルシウムは天然には二水和物が'''セッコウ'''(石膏)として存在する。セッコウを約130℃で焼くことにより、二分の一水和物である'''焼きセッコウ'''の白色粉末となる。
: <chem>Ca(OH)2 + H2SO4 -> CaSO4 + 2H2O</chem>
焼きセッコウの粉末に水を少量まぜると、硬化して、体積が少し増え、セッコウになる。セッコウ像(塑像)や医療用ギプスは、この性質を利用している。ただし、重量があるせいなのかギプスとしての用途は近年薄れてきている。その代わり、建材としての用途が増えてきた。
カルシウムやバリウムの硫酸塩は水に溶けにくく、この性質は陽イオンの系統分離において重要である。また日常生活においても重要で、硫酸カルシウムは建築材や医療用ギプスに、硫酸バリウムBaSO<sub>4</sub>はX線撮影の造影剤として用いられる。
=== 発展: 硬水と軟水 ===
Ca{{sup|2+}}やMg{{sup|2+}}を多く含む水を'''硬水'''という。それらが少量しか含まれていない水のことを'''軟水'''という。
日本では一般に、地下水には硬水が多い。日本では河川水には軟水が多い。
また、硬水を飲むと、下痢を起こしてしまう。なので、食用には硬水は不適切である。
しかし、農業用水に硬水を使う分には問題がない。
もしボイラーで硬水を使うと、沈殿が残るので、配管の詰まりを起こしやすく、危険であり不適切である。
工業用水や生活用水には、硬水は不適切である。
大陸の河川水では、硬水が多い。その理由は、大陸の河川水は緩流なので、鉱物質が溶けこんでいるので、硬水が多い。
いっぽう、日本では急流が多いことが、日本の河川水に軟水が多い。{{コラム|水の硬度|<chem>Ca^2+</chem> や <chem> Mg^2+</chem> をすべて <chem>CaCO3</chem> と考えたときの <chem>CaCO3</chem> の 1L 当たりの質量(mg)を硬度という。
基本的に水の硬度の数値が低いほど軟水である。いっぽう、水の硬度の数値が高いと硬水である。
::硬度60までが「軟水」。
::硬度120以上は「硬水」。
::硬度60~120は「中硬水」というのに分類する。
::なお、フランスノミネラルウォーターの「エビアン」は硬度が約300であり、硬水である。フランスでも、ボルヴィック(ミネラルウォーターの商品のひとつ)は硬度が約60で、軟水に近い。}}
=== ※ 範囲外: ===
ベリリウムとマグネシウムは、金属に分類されている(高校教科書でも、ベリリウムなどは金属に分類されている。)。しかし、上述のように特殊な性質を示すこともあり、一説には、ベリリウムはやや共有結合よりの金属結合をしている中間的な結合であるかもしれないと解釈する理論も存在する。(※ 参考文献: 東京化学同人『無機化学 - その現代的アプローチ -』、第二版、94ページ )
ベリリウムに他の金属が衝撃的にぶつかっても火花が飛び散りづらい性質があるので、そのため特殊なカナヅチの材料としてベリリウム系の合金(ベリリウムと銅の合金)が使われていることも多い。
またベリリウムはX線および電磁波を透過するので、X線管の材料のうち、X線を透過させたい部分の材料に使われる。
天然では、宝石のエメラルドにベリリウムが含まれる。
なお、化学的には、ベリリウムはアルミニウムに近い反応をすることも多い。(※ 参考文献: 東京化学同人『無機化学 - その現代的アプローチ -』、第二版、94ページ )
エメラルドにも、アルミニウムは含まれる。(エメラルドの主成分は、シリコンとアルミニウムとベリリウムである。)
==== 耐火レンガ ====
酸化マグネシウム MgO は融点が高く(約2800℃)、耐火レンガやるつぼの材料などに用いられている。(※ 数研出版のチャート式にこのように書かれている。)
: ※ 古い版のチャート式では、融点が高いから耐火レンガに使われていると書かれているが、最新の版では訂正されており、これらは別個のこととして説明されている。
: ※ 検定教科書では、啓林館の科目『科学と人間生活』教科書で、組成は書かれてないが、耐火レンガというものが存在する事が書かれている。
; 熱の伝わりやすさの調節
(チャート式などでは範囲外(普通科高校の範囲外)なので触られてないが)、耐火レンガの材料などに酸化マグネシウムや酸化アルミニウムなどが用いられる理由のひとつとして、融点の高さのほかにも、熱の伝わりやすさという、重大な理由がある。(※ 工業高校などの一部の学科で習う。)(※参考文献: 文部科学省著作教科書『セラミック工業』平成15年3月25日 初版発行、平成18年1月25日、実教出版 発行、188ページや203ページなど。)転炉や電気炉で近年、マグネシアカーボンれんが が用いられているという。なお、高炉はアルミナ質れんが や 炭化ケイ素れんが が用いられているという。また、製鉄の溶融スラグは塩基性であると考えられており、酸化マグネシウムは耐塩基性としての耐腐食性が高い(つまり、腐食しにくい)と考えられていることも、各所で酸化マグネシウムが使われる一因である。
もし るつぼ等の使用中に高熱が一箇所に蓄積すると、るつぼ等が溶融してしまい破壊されてしまうので、熱を伝えやすい材料を適切な場所に用いることで、るつぼ等の寿命をのばしているのである。
酸化マグネシウムや酸化アルミニウムなど、いちぶの金属の酸化物は(金属酸化物を含まない単なる粘土レンガと比べれば)比較的に熱を伝えやすい。
名前こそ「耐火」レンガであるが、酸化マグネシウムを含まないからといって、耐熱性が低いわけでもないし、燃えやすいわけでもない。
酸化マグネシウム系レンガなどが必要とされる本当の理由は、熱を分散・拡散しやすいことである。
: ※ 『耐火レンガ』という名称が、あまり適切ではないかもしれないが、社会では、この名前で定着してしまっている。
耐火レンガを作る際、そもそもレンガの母材として粘土が必要であるが、それに酸化マグネシウムや酸化アルミニウムなどを適量に混ぜることで、熱の伝わりやすさを調節して、耐火レンガは設計される。
== アルミニウム ==
'''アルミニウム Al''' は13族の金属元素で、価電子を3個もち、3価の陽イオンになりやすい。
銀白色の軽い金属である。展性や延性が大きく、薄く伸ばしたものはアルミニウム箔(いわゆるアルミホイル)として一般家庭でも用いられている。また、電気伝導性も良く、熱伝導性も良い。熱伝導性が良いことから、鍋などにも用いられる。
アルミニウムの単体を空気中に放置すると、表面に緻密な酸化膜(酸化アルミニウム Al{{sub|2}}O{{sub|3}} )の被膜ができ、内部を保護する。
アルミニウムやマグネシウムを主成分とする合金である'''ジュラルミン'''は軽量かつ強度が高く、航空機に用いられている。アルミニウム自体も、アルミ缶や1円硬貨に用いられている。
=== 製法 ===
==== バイヤー法 ====
アルミニウムの天然の鉱石は'''ボーキサイト'''(bauxite)といい、ボーキサイトの化学式はAl<sub>2</sub>O<sub>3</sub>・nH<sub>2</sub>Oである。ボーキサイトに濃い水酸化ナトリウム溶液NaOHを加えてアルミン酸ナトリウム2Na[Al(OH)<sub>4</sub>]が得られる。正確にはテトラヒドロキソアルミン酸ナトリウムという。
: <math>\mathrm{ Al_2O_3 + 2NaOH + 3H_2O \rightarrow 2Na[Al(OH)_4] } </math>
アルミン酸ナトリウム2Na[Al(OH)_4]の溶液を冷却し、加水分解がおこると水酸化アルミニウムAl(OH)<sub>3</sub> の沈殿が析出する。
: <math>\mathrm{ Na[Al(OH)_4] \rightarrow Al(OH)_3+ NaOH } </math>
生じたAl(OH)<sub>3</sub> を分離して、このAl(OH)3を1200℃に加熱して酸化アルミニウムAl<sub>2</sub>O<sub>3</sub>にする。 これらのボーキサイトからアルミナまでの工程を'''バイヤー法'''という。
Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub> は'''アルミナ'''という。アルミナは融点が高く、約2000℃の融点なので、融点を次の融解塩電解という処理で下げる。
==== 溶融塩電解 ====
[[ファイル:Mineraly.sk_-_bauxit.jpg|代替文=ボーキサイト|サムネイル|200x200ピクセル|ボーキサイト]]
鉱石の'''ボーキサイト'''(bauxite、主成分: 酸化アルミニウム <chem>Al2O3</chem>)を処理して酸化アルミニウム(<chem>Al2O3</chem>)にかえたあと、氷晶石(<chem>Na3AlF6</chem>、ヘキサフルオロアルミン酸ナトリウム)とともに熔融塩電解して製造される。('''エルー・ホール法''')
: <chem>Al^3+ + 3e^- -> Al v</chem>
アルミニウムの電解には、大量の電力が必要となる。
[[ファイル:Cut_Ruby.jpg|代替文=ルビー|サムネイル|150x150ピクセル|ルビー]]
[[ファイル:SaphirSynthetique.jpg|代替文=サファイア|サムネイル|150x150ピクセル|サファイア]]
製造の過程で得られる酸化アルミニウム(Al{{sub|2}}O{{sub|3}})は水に溶けにくい白色の固体である。酸化アルミニウムは'''アルミナ'''とも呼ばれ、融点が非常に高い(アルミナの融点は2054℃)ことから耐熱材の原材料としても用いられるほどである。氷晶石は、このアルミナの融点を降下させるために加えられる。
アルミニウムの粉末は、空気中または酸素中で熱すると、激しく燃える。
* ボーキサイトから酸化アルミニウムを得る方法 (※ 教科書の範囲外。資料集(実教出版など)の範囲内。文献により、方法が若干、違う。)
濃い水酸化ナトリウム水溶液でボーキサイト中の酸化アルミニウムが溶け、ほかの不純物はあまり溶けない。まず、この水酸化ナトリウム水溶液で酸化アルミニウムを溶かして アルミン酸ナトリウム <chem>Na[Al(OH)4]</chem> を得る。
: <chem>Al2O3 + 2NaOH + 3H2O -> 2 Na[Al(OH)4]</chem>
(ここまでは、どの文献でも、ほぼ同じ。) まず、ろ過をして、溶液から、不溶性の <chem>Fe2O3</chem> などの余計な不純物を取り除く。
あとは、このアルミン酸ナトリウム水溶液をうまく処理し、アルミナに変えていく方法が必要なのである。
まず、アルミン酸ナトリウム <chem>Na[Al(OH)4]</chem> 水溶液から、なんらかの方法で、加水分解を起こし、水酸化アルミニウム <chem>Al(OH)3</chem> を沈殿させる。
: <chem>Na[Al(OH)4] -> Al(OH)3 + NaOH</chem>
あとは、この水酸化アルミニウムを高温で焼成すると、純度の高い酸化アルミニウムが得られる。
* テルミット法
また、アルミニウム単体の粉末と、酸化鉄 <chem>Fe2O3</chem> など他の金属酸化物の粉末を混合して、加熱すると、アルミニウムが激しく酸化され、ほかの金属酸化物が還元され、金属単体が得られる。たとえば酸化鉄(Ⅲ)とアルミニウムを混合して加熱すると、鉄が得られる。
: <chem>2Al + Fe2O3 -> Al2O3 + 2Fe v</chem>
これを'''テルミット法'''といい、レールの熔接などに用いられる。
両性元素
アルミニウムは両性元素であり、酸とも塩基とも反応して水素を生じる。たとえば、塩酸と反応して水素を発生しながら塩化アルミニウムを生じる。
: <chem>2Al + 6HCl -> 2AlCl3 + 3H2 ^</chem>
また、水酸化ナトリウム水溶液と反応して、水素を発生しながらテトラヒドロキソアルミン酸イオンを生じる。
: <chem>2Al + 2NaOH + 6H2O -> 2Na+ + 2[Al(OH)4]^- + 3H2 ^</chem>
しかし、アルミニウムは濃硝酸に溶けない。これは、反応開始直後に金属表面に緻密な酸化被膜を形成し、反応が金属内部まで進行しなくなるためである。このように、緻密な酸化皮膜により保護されて、それ以上は反応が進行しない状態を'''不動態'''(ふどうたい)という。
'''アルマイト'''という材料は、アルミニウムの表面を人工的に酸化させることで厚い不動態の膜で保護させ、そのアルミニウムの耐久性を上げた材料であり、日本で開発された。
イオン
アルミニウムイオン(<chem>Al3+</chem>)の水溶液は無色透明である。これに水酸化ナトリウム水溶液を少量加えると、水酸化アルミニウムの白色ゼリー状沈殿を生じる。
: <chem>Al3+ + 3NaOH -> 3 Na+ + Al(OH)3 v</chem>
しかし、水酸化ナトリウム水溶液を過剰に加えると、沈殿は溶解して無色の水溶液となり、テトラヒドロキソアルミン酸イオンを生じる。
: <chem>Al(OH)3 + NaOH -> Na+ + [Al(OH)4]^-</chem>
テトラヒドロキソアルミン酸イオン水溶液に塩酸を加えると、逆に水酸化アルミニウムの白色沈殿を生じ、過剰に加えれば塩化アルミニウムを生じる。塩化アルミニウムは潮解性のある白色の固体であるが、水に溶けやすく、電離してアルミニウムイオンを生じる。
=== 水酸化アルミニウム ===
アルミニウムイオンを含んだ水溶液に、塩基を加えると、水酸化アルミニウム <chem>Al(OH)3</chem> の白色ゲル状の沈殿が生じる。 水酸化アルミニウムを熱すると、酸化アルミニウム <chem>Al2O3</chem> が生じる。
水酸化アルミニウム <chem>Al(OH)3</chem> は酸とも塩基とも反応して溶けることのできる、両性水酸化物である。
: <chem>Al(OH)3 + 3HCl -> AlCl3 + 3H2O</chem>
: <chem>Al(OH)3 + NaOH -> Na[Al(OH)4]</chem>
=== 酸化アルミニウム ===
酸化アルミニウム <chem>Al2O3</chem> は、'''アルミナ'''(alumina)とも呼ばれ、白色の粉末で、水に溶けない。また、融点が高い(融点:2054℃)。 酸化アルミニウム <chem>Al2O3</chem> は、酸にも強塩基にも溶ける両性酸化物であるが、アンモニア水には溶けない。
: <chem>Al2O3 + 6HCl -> 2AlCl3 + 3H2O</chem>
: <chem>Al2O3 + 2NaOH + 3 H2O -> 2Na[Al(OH)4]</chem>
また、たとえば宝石のルビーやサファイアは、酸化アルミニウムが主成分の結晶である。酸化アルミニウムの結晶のうち、ごく微量のクロムやチタンなどの金属が混入したものが、赤いルビーや青いサファイアであり、ともに、かなり硬い。また、酸にも塩基にも、ルビーやサファイアは溶けない。 なお、ルビーにはクロム Cr が、サファイアには鉄 Fe やチタン Ti が含まれている。{{コラム|人工宝石|:※ 『科学と人間生活』(啓林館など)に記述がある。
ルビーやサファイアなどは組成がわかっているので、人工的に作ることもできる。
材料であるアルミナやクロムまたは鉄などに高温や高圧などを加えて熱することで、人工的にルビーやサファイアなどを作ることができる。
このように、人工的につくった宝石のことを人工宝石といい、さまざまな分野に応用されている。
また、アルミナ化合物ではないが、ダイヤモンドや水晶などアルミナ以外の宝石でも、人工的につくることができる。
人工ダイヤや人工水晶も、人工宝石に含める。
なお、人工ダイヤモンドは、その硬さを活用して、工場などの大型の回転カッターなどの切れ味を増すための材料などとして、刃先に人工ダイヤのある刃物が応用されている(いわゆるダイヤモンドカッター)。}}
=== ミョウバン ===
[[ファイル:Alun.jpg|代替文=ミョウバンの結晶|サムネイル|200x200ピクセル|ミョウバンの結晶]]
硫酸カリウム水溶液と硫酸アルミニウム水溶液とを混合して濃縮して得られる結晶は、硫酸カリウムアルミニウム十二水和物 AlK(SO{{sub|4}}){{sub|2}}・12H{{sub|2}}O の結晶であり、この硫酸カリウムアルミニウム十二水和物を'''ミョウバン'''(明礬)という。
ミョウバンの結晶は無色透明で正八面体形をしている。 ミョウバンを水に溶かすと、<chem>Al^3+</chem> 、<chem>K^+</chem> 、<chem>SO4^2-</chem> の各イオンに電離する。 <chem>AlK(SO4)2*12H2O -> {Al^3+} + {K^+} + 2 {SO4^{2-}} + 12 H2O</chem>
ミョウバンのように、2種類以上の塩が結合して物質を'''複塩'''(ふくえん、double salt)という。
ミョウバンを焼くと、無水物である焼きミョウバンが得られる。ミョウバンは温度による溶解度の変化が激しく、低温の水には少量しか溶けないが、温度を上げるとよく溶けるようになる。
=== 補:両性金属の反応モデル ===
[[高校化学 典型金属#金属と水の反応モデル]]において、水酸化物皮膜を用いて金属と水の反応を説明した。
ここでは、同様にして両性金属元素の反応モデルを考える。
水中にある金属Mは水と反応して表面に水酸化物M(OH){{sub|x}}の皮膜を作る。
ここで、酸HXを加えると水酸化物皮膜と反応して塩が生成される。塩は完全に電離するので金属の表面が露出し、水酸化物皮膜が生成される。また水酸化物が酸と反応して金属の表面が露出し・・・と反応が進行し、最終的に全て塩となって水に溶ける。
また、塩基YOHを加えると、水酸化物イオンと水酸化物が反応して錯イオンを形成する。錯イオンは水に可溶なので金属の表面が露出し(以下略)と反応が進行し、最終的に全て錯イオンとなって水に溶ける。
== スズと鉛 ==
スズ Sn と鉛 Pb は、ともに周期表14族であり、原子は価電子を4個もち、ともに酸化数が+2または+4の化合物をつくり、ともに両性元素であり、ともにイオン化傾向は水より大きい。
=== スズ ===
[[ファイル:Metal_cube_tin.jpg|代替文=スズ|サムネイル|200x200ピクセル|スズ]]
スズ(Sn)は銀白色の固体である。展性や延性に富み、また比較的さびにくい金属である。酸とも塩基とも反応して、水素を発生する。
: <chem>Sn + 2HCl -> SnCl2 + H2</chem>
: <chem>Sn + 2NaOH + 2H2O -> [Sn(OH)4]^2- + 2 Na^+ + H2</chem>
スズは、青銅やハンダなど合金の材料でもある。
また、スズはメッキに多用される。鉄にスズをメッキしたものは「'''ブリキ'''」と呼ばれ、缶詰や金属玩具などに用いられる。
{| align="center" style="border:none; text-align:center;"
|[[ファイル:Assorted_bronze_castings.JPG|右|サムネイル|183x183ピクセル|青銅]]
|[[ファイル:HK_Food_Grass_Jelly_Canned_with_Tinplate_a.jpg|右|サムネイル|201x201ピクセル|ブリキの缶詰]]
|}
=== スズの化合物 ===
化合物中でのスズの酸化数には +2 と +4 があるが、スズの場合は 酸化数=+4 のほうが安定である。
スズを塩酸に溶かした溶液から、塩化スズ <chem>SnCl2</chem> が得られる。 塩化スズ(II)二水和物 <chem>SnCl2*2H2O</chem> は無色の結晶。また、水溶液は還元作用がある。
: <chem>SnCl2 + 2Cl^- -> SnCl4 + 2e^-</chem>
=== 鉛 ===
[[ファイル:Metal_cube_lead.jpg|代替文=鉛|サムネイル|200x200ピクセル|鉛]]
'''鉛''' Pb は青白色のやわらかい金属である。鉛とその化合物は有毒である。
鉛は、両性元素であり、硝酸、強塩基の水溶液と反応して溶ける。しかし、塩酸と希薄硫酸には、鉛の表面に難溶性の皮膜(塩化鉛 PbCl<sub>2</sub> や、硫酸鉛 PbSO<sub>4</sub> の皮膜は、水に難溶)が発生するため、溶けない。
<chem>Pb + 2HNO3 -> Pb(NO3)2 + H2</chem> <chem>Pb + 2NaOH + 2H2O -> [Pb(OH)4]^2- + 2Na^+ + H2</chem>
ただし、塩酸と希硫酸には溶けない。また、アンモニア水のような弱塩基にも溶けない。
酸化鉛PbOは黄色く、古くは、黄色の顔料として用いられた。
鉛は放射線の遮蔽材や鉛蓄電池に使われている。
鉛の化合物は水に溶けにくいものが多いが、硝酸鉛 <chem>Pb(NO3)2</chem> や酢酸鉛 <chem>(CH3COO)2Pb</chem> は水によく溶ける。
=== イオン ===
鉛(II)イオン(<chem>Pb^2+</chem>)は様々な沈殿を作る。アンモニア水や少量の水酸化ナトリウム水溶液を加えると、水酸化鉛(II)の白色沈殿を生じる。
: <chem>Pb^2+ + 2OH^- -> Pb(OH)2 v</chem>
ただし、水酸化ナトリウム水溶液を過剰に加えると、テトラヒドロキソ鉛(II)酸イオンを生じて溶ける。
: <chem>Pb(OH)2 + 2NaOH -> 2Na^+ + [Pb(OH)4]2-</chem>
鉛(II)イオン水溶液に塩酸を加えると、塩化鉛(II)の白色沈殿を生じる。
: <chem>Pb^2+ + 2HCl -> 2 H^+ + PbCl2 v</chem>
これを加熱すると、鉛(II)イオンを生じて溶ける。
: <chem>PbCl2 -> Pb^2+ + 2Cl^-</chem>
鉛(II)イオン水溶液に希硫酸を加えると、硫酸鉛(II)の白色沈殿を生じる。
: <chem>Pb^2+ + H2SO4 -> 2H^+ + PbSO4</chem>
鉛(II)イオン水溶液に硫化水素を加えると、硫化鉛(II)の黒色沈殿を生じる。
: <chem>Pb^2+ + H2S -> 2H^+ + PbS v</chem>
鉛(II)イオン水溶液にクロム酸カリウム水溶液を加えると、クロム酸鉛(II)の黄色沈殿を生じる。
: <chem>Pb^2+ + CrO4^2- -> PbCrO4 v</chem>
鉛(II)イオン水溶液にヨウ化カリウム水溶液を加えると、ヨウ化鉛(II)の黄色沈殿を生じる。
: <chem>Pb^2+ + 2I^- -> PbI2</chem>
== セラミックス ==
ガラス、セメント、陶磁器などのように、無機物質に加熱処理などしたものを、'''セラミックス'''という。
また、このようなセラミック製品を製造する産業を、セラミック産業または窯業(ようぎょう)という。 窯は「かま」の事である。
原材料にケイ酸塩化合物を用いることが多いことから、ケイ酸塩工業ともいう。
=== 共通する性質 ===
セラミックスには多くの種類があるが、多くのセラミックス材料に共通する性質として、
: ・ 力をくわえても変形しづらい。延性・展性は無い
: ・ 絶縁体である
: ・ 耐熱性に優れる。しかし、急激な温度変化に対しては弱い
: ・ 錆びない
: がある。 なお、硬いという長所は、加工が難しいという短所でもある。
=== セメント ===
水を加えると硬化するものを'''セメント'''という。建築材料として用いられる'''ポルトランドセメント'''は、石灰石、粘土(SiO<sub>2</sub>, Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub>など)、酸化鉄Fe<sub>2</sub>O<sub>3</sub>などを粉砕して混合したのち、1500 ℃で加熱したものに、少量の石膏(CaSO<sub>4</sub>・2H<sub>2</sub>O)を加えて粉砕したものである。製造のとき、石灰石が高熱で処理され、酸化カルシウム CaO になる。
砂利、砂、水をセメントで固めたものを'''コンクリート'''という。また、セメントに砂を混ぜたものは、'''モルタル'''という。
[[ファイル:Liepaja_Karosta_falochron_polnocny_2.jpg|サムネイル|コンクリートで作られた消波ブロック]]
セメントやコンクリートには、カルシウム Ca が含まれている。 石膏は、硬化を遅らせて調節するために添加されている。
コンクリートは圧縮の力には強いが、引っ張りの力には弱いので、引っ張りに強い鉄筋を入れた鉄筋コンクリート(reinforced concrete, RC)として用いる。
コンクリートは、材料中の水酸化カルシウム Ca(OH)<sub>2</sub> により、塩基性を示す。また、この塩基性により、内部の鉄筋が酸から保護される。空気中の酸性物質などにより、コンクリートはしだいに中性に中和されていき、そのため強度がしだいに低下していく。また、鉄筋を保護していたコンクリートが劣化すると、内部の鉄筋も酸に腐食されやすくなる。
=== ガラス ===
ガラスはケイ酸塩を主成分として、ナトリウム Na、カリウム Kなどを含んでいる。
[[ファイル:Chartres_RosetteNord_121_DSC08241.jpg|サムネイル|503x503ピクセル|ステンドグラスには金属酸化物で着色されたガラスが使用されている。]]
ガラスの結晶構造は不規則であり、一定の融点を持たない。高温にすると、やわらかくなり水あめのように軟らかくなる。冷えると固まる。
ガラスの結晶のように、不規則なまま硬化している結晶構造を、'''アモルファス(非晶質)'''という。
ガラスは無色透明であるが、金属酸化物を加えることで着色することができる。
ほぼ二酸化ケイ素だけで出来ている高純度のガラスを、'''石英ガラス'''といい、紫外線の透過性が高く、また耐熱性も高いので、光学機器や耐熱ガラスや光ファイバーなどに利用されている。
しかし、石英ガラスは耐熱性が高すぎるため融点が高く、製造時の溶融加工が容易でないので、一般のガラス製品には添加物をくわえて融点を下げたソーダ石灰ガラスなどが用いられている。
窓ガラスなどに用いられる一般のガラスは、ソーダ石灰ガラスであり、SiO2のほか、Na2OとCaOを主成分としている。
このソーダ石灰ガラスの製法は、けい砂(主成分 SiO2)に、炭酸ナトリウム(Na2CO3)や石灰石を添加して作る。
[[ファイル:Schott_Duran_glassware.jpg|サムネイル|ホウケイ酸ガラスの実験器具]]
ガラスを高温に熱していったとき、ガラスが軟らかくなり始める軟化点または軟化温度という。ソーダ石灰ガラスの軟化点は630 ℃だが、石英ガラスの軟化点は1650 ℃である。
理科実験などで用いるビーカーやフラスコなど、理科学器具に用いられるガラスの材質には、ホウケイ酸ガラスが用いられている。 ホウケイ酸ガラスは、ホウ砂(主成分 B<sub>2</sub>O<sub>3</sub>)とケイ砂からなるガラスである。ホウケイ酸ガラスは熱膨張率が低く、そのため耐熱性も高く、耐食性も高いことから、理科実験器具用のガラスとして用いられている。
酸化鉛 PbO を含んだ鉛ガラスは密度が大きく、また、X線など放射線の吸収能も大きいため、放射線遮蔽窓として用いられる。 また、鉛ガラスは屈折率が大きいため、光学レンズとしても用いられる。
=== 陶磁器 ===
粘土や砂、岩石の粉などを焼き固めて、陶磁器がつくられる。
[[ファイル:Chinese_-_Dish_with_Flowering_Prunus_-_Walters_492365_-_Interior.jpg|サムネイル|清の磁器]]
陶器は約1000℃で焼き固めてて作られる。磁器は700~900℃で素焼き(釉薬をかけずに焼く)したのち、釉薬を塗り、1100℃~1500℃で本焼きをする。磁器は硬く、白色で吸水性がない。叩くと金属音を発する。
[[ファイル:Covered_Jar,_Imari_ware,_Edo_period,_18th_century,_Chinese_lion_and_phoenix_design_in_underglaze_blue_and_overglaze_enamel_-_Tokyo_National_Museum_-_DSC05337.JPG|サムネイル|伊万里の磁器({{Ruby|色絵獅子鳳凰文有蓋大壺|いろえししほうおうもんゆうがいたいこ}} 東京国立博物館蔵)]]
また、土器は600℃から900℃で素焼きした陶磁器である。
[[ファイル:火焔土器-“Flame-Rimmed”_Cooking_Vessel_(Kaen_doki)_MET_2015_300_258_Burke_website.jpg|サムネイル|縄文時代の土器]]
焼き固めとは、高温にすることで、粒子の表面が部分的に融け、そのあと冷ましていくことで、粒子どうしが接着する。
これらの焼き物の表面には、焼く前に、石英などの粉末からなる{{Ruby|釉薬|ゆうやく}}(うわぐすり)が表面に塗られる。焼く時に、釉薬が融け、ガラスになる。表面がガラスで保護されることで、吸水性がなくなる。
=== アルミナ ===
Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub>は硬くて丈夫なので、さまざまな材料に用いられる。
研磨剤にも、アルミナは用いられている。
* 電気工業への応用
アルミナは絶縁性も高く、そのためICチップなどの絶縁材にも用いられる<ref>『セラミック材料』、工業高校教科書、文部科学省</ref>。 アルミナは熱伝導性も比較的よく、そのため電気回路で生じたジュール熱を外部に放散しやすいので、温度上昇による誤動作を防ぎやすい。
* 医療への応用
また、医療用の人工骨などにアルミナ材料の人工骨を用いてても、拒否反応などを起こさず、生体適合性が良い。なお、自然には人体にアルミナは接着しないので、ボルトなどで人工的に人工骨を既存の骨に固定する必要がる。
=== ニューセラミックス ===
* 酸化ジルコニウム
酸化ジルコニウム ZrO<sub>2</sub> およびそれに添加物を加えた材料では、結晶中に自然に生じた欠陥が、まるでシリコン半導体でいう導電性を高めるための添加物と似た役割を生じて、酸化ジルコニウム中の欠陥が酸化ジルコニウムの導電性に影響を与える。その結果、酸化ジルコニウムは、空気中の酸素濃度により導電性が変わる。このため、酸化ジルコニウムは酸素センサとして用いられる。
* 酸化チタン
酸化チタン TiO<sub>2</sub> は、光が当たると、有機物を分解する。この有機物の分解作用のため、光の当たった酸化チタンは、殺菌や消臭などの効果をもつ。酸化チタンそのものは減らずに残り続けるので、触媒的に働くことから、このような光のあたった酸化チタンによる分解作用が、'''光触媒'''と呼ばれる。
この分解のエネルギー源は、酸化チタンが紫外線を吸収し、そのエネルギーによって酸化チタンの酸化力が高まり、そして有機物を分解する。
さて太陽電池としても、酸化チタンは利用されている。酸化チタンそのものは紫外線しか吸収しないため効率が低いため、色素を添加して、色素に可視光を吸収をさせて、そのエネルギーを酸化チタンが利用できるように工夫した太陽電池が開発されており、色素増感型太陽電池と言われている。
また、色素と光によってエネルギーを得る仕組みが、植物の光合成の仕組みに似ていることから、生物学的にも興味を持たれている。
この他、酸化チタンは白色であり、人体に無害なので、化粧などの白色顔料としても用いられている。
このほか、超親水性という性質があり、水に濡れても水滴にならず、水が全体に広がるので、自動車のフロントガラスなどの添加剤に応用されている。
* 酸化スズ SnO2
酸化スズ SnO2 では、表面に酸素を吸着する性質がある。そして、プロパンガスや一酸化炭素などにさらされると、吸着された酸素が燃焼して、もとの酸化スズに戻る。この吸着と酸素の離脱のさい、導電性が変わるため、プロパンガスなど可燃性ガス濃度を測るセンサーとして用いられる。
* セラミック製コンデンサー
そもそもコンデンサーには、電気を通さない性質が求められる。つまりコンデンサーの材料は、絶縁物質であるべきである。そもそも、コンデンサーは、誘電分極(ゆうでん ぶんきょく)を利用した素子だから。もし、金属のように電気を通してしまうと、そもそもコンデンサーとしての役割を持たない。
セラミックは電気を通さないため、コンデンサーとして適切であり、じっさいにコンデンサーとしてセラミック材料は利用されている。
なお、セラミックは、絶縁材料としても、活用される。
コンデンサー材料としては、チタン酸バリウム BaTiO<sub>3</sub> などがある。
* 圧電性セラミックス
チタン酸ジルコン酸鉛 PbTiO<sub>3</sub> や チタン酸バリウム BaTiO<sub>3</sub> などに圧力をくわえると、電圧が発生する。これを利用して、圧力センサーなどに用いる。なお、チタン酸バリウムは、コンデンサー材料としても用いられている。このように、圧電の仕組みと、コンデンサーの誘電分極の仕組みとは、関連性がある。
なお、このような圧電性の材料に交流電圧をくわえると、振動をすることから、音波や振動の発生源としても用いられる。さらに、振動の共振周波数(その物体が振動しやすい周波数)が、その振動体に加えられた圧力や荷重などの外部の力によって変化することから、圧力センサーなどにも圧電材料が応用されている。
* 生体セラミックス
ハイドロキシアパタイトは、骨の主成分でもある。そのため、ハイドロキシアパタイトでつくった人工骨は、もともとの骨に接着しやすく、拒否反応なども起こりにくいので、医療用の人工骨などに利用される。なお、拒否反応などが無く、生体に接着しやすい性質を、生体親和性という。
* 炭化チタンTiC、炭化ホウ素B<sub>4</sub>C
炭化物のセラミックスの中には、硬度がかなり高く、また適度に靭性もあり、丈夫なものがある。このため、炭化チタン TiC などは切削工具などに用いられる。炭化ケイ素や窒化ケイ素なども、耐熱性が高い。
自動車エンジンやガスタービンなどに、これらの耐熱セラミックスが用いられる。
=== 半導体およびセラミックの温度-電気特性 ===
半導体や、いくつかのセラミックスには、温度の上昇にともなって、電気抵抗が下がるものがある。
なお、金属では、温度が上がると、電気抵抗が上がる。
半導体やセラミックスの、このような、温度上昇にともなって電気抵抗が下がる特性が実用化されており、電子機器での温度変化時の電圧など出力の安定化のための部品に利用したり、あるいは温度センサなどに利用されたりしている。
[[カテゴリ:高等学校化学|てんけいきんそく]]
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== アルカリ金属 ==
=== 金属と水の反応モデル ===
以降の無機化学の単元において、金属と水溶液との反応を考える上では、以下のようなモデルを用いる。※実測はされていない
ある金属元素Mが水中にある。このとき、周りの水と反応することにより金属の表面が水酸化物M(OX){{sub|x}}で覆われる。(皮膜形成)
この水酸化物M(OX){{sub|x}}が水に可溶ならば、水酸化物皮膜が全て水に溶けて金属の表面が露出し、水と反応して水酸化物M(OH){{sub|x}}が生成する。そしてまた水酸化物被膜が全て水に溶けて金属の表面が露出し・・・と反応を繰り返し、最終的には金属が全て水酸化物となって水に溶ける。
水に難溶ならば、水酸化物皮膜が生成した時点で反応が止まり、その金属は水と反応しない。
なお、イオン化傾向がMg以下の金属の水酸化物は水に難溶である。
=== 単体 ===
[[File:Lithium paraffin.jpg|right|200px|thumb|リチウムの保存. <br>リチウムは密度が灯油よりも軽いため、リチウムは灯油に浮く。]]
[[File:Kalium.jpg|right|150px|thumb|切断したカリウム]]
水素を除く1族元素のリチウム Li, ナトリウム Na, カリウム K, ルビジウム Rb, セシウム Cs, フランシウム Fr のことを'''アルカリ金属'''という。
アルカリ金属の単体は、いずれも銀白色の固体である。融点が低くやわらかい金属で、カッターで簡単に切断することができる。
アルカリ金属の原子は価電子を1個もち、1価の陽イオンになりやすい。
このため、アルカリ金属の原子は酸化されやすいので、天然には単体の状態では存在せず、塩として存在する。
単体を得るには、化合物の融解塩電解を行う。加熱して融解させた化合物に炭素電極を入れ、電気分解を行うと、陰極側に金属の単体が析出する。
: <chem>{X+} + {e^-} -> {X} v</chem> (XはLi、Na、Kなど)
アルカリ金属は反応性が高く、イオン化傾向が大きいので還元性も高い。アルカリ金属は常温で空気中の酸素や水、塩素と簡単に反応する。特に水とは、アルカリ金属は常温で水と反応して水素を発生しながら激しく反応し、反応後の溶液は強塩基性の水溶液になる。
: <chem>4X + O2 -> 2X2O</chem>
: <chem>2X + 2H2O -> 2XOH + H2 ^</chem> (XはLi、Na、Kなど)
: <chem>2X + Cl2 -> 2XCl</chem>
そのため、アルカリ金属の単体を保存する際には、空気中の酸素や水との反応をふせぐために'''石油中'''(灯油)に保存する。リチウムは石油よりも軽いため、石油に浮く。また、単体は素手で触れず、必ずピンセットなどを用いて扱う。
<!--
水だけでなく、ヒドロキシル基(-OH)を持つアルコールやフェノールとも水素を発生しながら反応して、アルコキシド、フェノキシドとなる。
: 2R-OH + 2X → 2R-OX + H{{sub|2}} (Rは炭化水素基、XはLi、Na、Kなど)
-->
{| class="wikitable" align=right
|+ アルカリ金属の単体の性質
|-
|- style="background:silver"
! 元素名 !! 元素記号 !! 融点(℃) || 沸点(℃) || 密度(g/cm<sup>3</sup>) || 炎色反応
|-
| リチウム || Li || 180 || 1347 || 0.53 || 赤
|-
| ナトリウム|| Na || 98 || 883 || 0.97 || 黄
|-
| カリウム || K || 64 || 774 || 0.86 || 赤紫
|-
| ルビジウム || Rb || 39 || 688 || 1.53 || 赤
|-
| セシウム || Cs || 28 || 678 || 1.87 || 青
|-
|}
イオンは'''炎色反応'''を示し、白金線にイオン水溶液をつけガスバーナーの炎に入れると、リチウムイオンでは赤色に、ナトリウムイオンでは黄色に、カリウムでは赤紫色にそれぞれ炎が色づく。
{|align="center" style="border:solid #aaffaa 1px; text-align:center;"
|[[File:FlammenfärbungLi.png|52px|リチウムの炎色反応]]||[[File:FlammenfärbungNa.png|50px|ナトリウムの炎色反応]]||[[File:FlammenfärbungK.png|50px|カリウムの炎色反応]]
|-
|Li||Na||K
|}
=== アルカリ金属の化合物 ===
アルカリ金属は様々な化合物を作る。この章ではアルカリ金属の中でも、特にナトリウムの化合物について学ぶ。
==== 水酸化物 ====
アルカリ金属の単体が水と反応すると水酸化物となる。たとえばリチウムは水酸化リチウム(LiOH)に、ナトリウムは水酸化ナトリウム(NaOH)に、カリウムは水酸化カリウム(KOH)になる。
水酸化ナトリウムの工業的な製法については、塩化ナトリウム NaCl 水溶液の電気分解によって製造される。
常温では白色の固体であり、水によく溶けて、いずれの水溶液も強塩基性を示す。このため皮膚を冒す性質があり、取り扱いに注意する。
[[ファイル:Sodium_hydroxide.jpg|右|サムネイル|200x200ピクセル|水酸化ナトリウム]]
水酸化ナトリウムと水酸化カリウムの固体は吸湿性があり、空気中に放置すると水蒸気を吸収してその水に溶けてしまう。この現象を'''潮解'''(ちょうかい、deliquescenece)という。
水溶液も吸湿性があるため、長時間放置すると溶液の濃度が変化する。したがって精密さを要する実験では、直前に水溶液を調整するようにするとともに、中和滴定などにより正確な濃度を測る必要がある。
また水酸化ナトリウムは水分を吸収するだけでなく、空気中の二酸化炭素も吸収して、炭酸塩の炭酸ナトリウム(Na{{sub|2}}CO{{sub|3}})を生じる。
: <chem>2NaOH + CO2 -> Na2CO3 + H2O</chem>
この性質から、二酸化炭素の吸収剤として用いられることがある。
水酸化ナトリウムの産業上の用途は、製紙業でのパルプの製造、石油の精製、繊維の製造、セッケンの製造、などで用いられている。 水酸化ナトリウムは'''苛性ソーダ'''とも呼ばれる。
==== 炭酸塩・炭酸水素塩 ====
'''炭酸水素ナトリウム'''(NaHCO{{sub|3}})と'''炭酸ナトリウム'''(Na{{sub|2}}CO{{sub|3}})は共に白色の粉末である。工業的には'''アンモニアソーダ法'''により製造される。
==== アンモニアソーダ法(ソルベー法) ====
アンモニアソーダ法は炭酸ナトリウムの工業的製法である。
# 塩化ナトリウムの飽和水溶液にアンモニアと二酸化炭素を通す。 <chem>NaCl + NH3 + CO2 + H2O -> NaHCO3 + NH4Cl</chem>
# 炭酸水素ナトリウムを加熱する。 <chem>2NaHCO3 -> Na2CO3 + CO2 ^ + H2O</chem>
[[ファイル:アンモニアソーダ法反応過程.svg|右|サムネイル|550x550ピクセル|アンモニアソーダ法の反応経路図]]
;
反応で生じた生成物は次のように再利用できる。
# 炭酸カルシウムを加熱して酸化カルシウムと二酸化炭素を得る。
#: <chem>CaCO3 -> CaO + CO2</chem>
# 1.で得た酸化カルシウムに水をくわえ、水酸化カルシウムとする。
#: <chem>CaO + H2O -> Ca(OH)2</chem>
# 2.で得た水酸化カルシウムを1.で得た塩化アンモニウムと反応させ、塩化カルシウムとアンモニアを得る。このアンモニアは回収して1.の反応で再利用する。
#: <chem>2NH4Cl + Ca(OH)2 -> CaCl2 + 2NH3 + 2H2O</chem>
アンモニアソーダ法は全体としては、 <chem>2NaCl + CaCO3 -> Na2CO3 + CaCl2</chem> という反応式で表される。
原料がCaCO{{sub|3}}(石灰岩、秩父などで大量に採れる)とNaCl(食塩、買えなくても海水から作れる)とNH{{sub|3}}(アンモニア、ハーバー・ボッシュ法で大量生産できる)のみと非常に安価なので、アンモニアソーダ法は「安く大量生産を目指す」工業的製法としては最も理想形に近いと言われている。
==== 炭酸ナトリウム ====
炭酸水素ナトリウムは、熱分解して炭酸ナトリウム(sodium carbonate)となる。炭酸ナトリウムは白色の粉末で、水に溶け、水溶液は塩基性を示す。
炭酸ナトリウムは加熱しても、分解しない。
炭酸ナトリウムは弱酸と強塩基の塩であり、水に溶けると加水分解して塩基性を示す。
<chem>Na2CO3 -> 2 {Na^+} + CO3^{2-}</chem>
<chem>CO3^{2-} + H2O <=> {HCO3^-} + OH^-</chem>
炭酸ナトリウム水溶液を冷却すると十水和物 <chem>Na2CO3*10H2O</chem> の無色透明の結晶が得られる。この <chem>Na2CO3*10H2O</chem> の結晶は空気中に放置すると水和水の大部分を失って、白色粉末の一水和物 <chem>Na2CO3*H2O</chem> となる。この現象は'''風解'''(ふうかい、efflorescence)と呼ばれる。
炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムは、ともに強酸と反応して二酸化炭素を生じる。(弱酸遊離反応)
<chem>Na2CO3 + 2H2SO4 -> Na2SO4 + H2O + CO2 ^</chem>
炭酸ナトリウムは、ガラスや石鹸の製造などに用いられる。
※ガラスの原料は二酸化珪素 <chem>SiO2</chem> であるが、これを珪酸ナトリウム <chem>Na2SiO3</chem> にする反応において、水酸化ナトリウムよりも炭酸ナトリウムの方がよく用いられる。<chem>SiO2 + NaOH -> Na2SiO3 + H2O</chem>という反応と<chem>SiO + Na2CO3 -> Na2SiO3 + CO2</chem>という反応を比べた時、左の反応は反応性が高いものの、生成された <chem>H2O</chem> が反応の系内に残るので逆反応が起こり、平衡状態となって反応が見かけ上止まってしまう。それに対し、右の反応は生成された <chem>CO2</chem> が反応の系外に脱出するので、ルシャトリエの原理により平衡が正反応の向きに偏って反応がより一層進行する。そのため、通常は炭酸ナトリウムが用いられる。
==== 炭酸水素ナトリウム ====
炭酸水素ナトリウム <chem>NaHCO3</chem> は白色粉末で、水に少し溶け、水溶液は加水分解により弱塩基性を示す。炭酸水素ナトリウムは'''重曹'''(じゅうそう)ともいう。(重曹は「重炭酸曹達」の略である。「重炭酸」は「炭酸水素」の別名であり、「曹達(ソーダ)」はナトリウムの和名である。)
炭酸水素ナトリウムを熱すると、分解して二酸化炭素を発生する。
<chem>2NaHCO3 -> Na2CO3 + H2O + CO2 v</chem>
(上記の反応は、ソルベー法での炭酸水素ナトリウムの分解反応と同じ。)
炭酸水素ナトリウムの用途は、発泡剤やベーキングパウダー(ふくらし粉)、入浴剤の発泡剤成分、などとして用いられている。
また、強酸で、二酸化炭素を発生する。
<chem>NaHCO3 + HCl -> NaCl + H2O + CO2 v</chem>
=== 塩化物 ===
[[ファイル:NaCl-zoutkristallen_op_Schott_Duran_100_ml.JPG|右|サムネイル|200x200ピクセル|塩化ナトリウムの結晶]]
水酸化ナトリウムに塩酸を加えると、中和反応を起こし塩化ナトリウム(NaCl)を生じる。
<chem>NaOH + HCl -> NaCl + H2O</chem>
塩化ナトリウムは天然では岩塩に豊富に含まれており、食塩の主成分としても有名である。工業的には海水を濃縮することにより得られる。
塩化ナトリウムを融解塩電解すると単体のナトリウムが得られる。
<chem>2NaCl -> 2Na v Cl2 ^</chem>
塩化ナトリウム水溶液を電気分解すると、陽極から塩素が発生し、陰極から水素が発生する。このとき陰極側では水の電気分解反応が起こっており、水酸化物イオンが生じている。
<chem>2H2O -> H2 + 2 OH^-</chem>
溶液中にはナトリウムイオンが残るため、陰極付近では水酸化ナトリウムの水溶液が得られる。この原理は工業的な水酸化ナトリウムおよび塩素・水素の製造法として応用されており、陽イオン交換膜を用いることから'''イオン交換膜法'''と呼ばれる。
== 2族元素 ==
周期表の2族の元素は、すべて金属元素である。2価の価電子をもち、2価の陽イオンになりやすい。天然には塩として存在している。
2族元素のことをアルカリ土類金属という<ref>アルカリ土類金属の定義として、「Be,Mgを除く2族元素」と定義しているところもある。これは、後述するようにBe,Mgとその他の2族元素の性質に異なるところがあるからである。</ref>。
=== アルカリ土類金属元素 ===
2族元素の単体はアルカリ金属元素の単体よりも硬い。
[[ファイル:Magburn1.jpg|右|サムネイル|250x250ピクセル|マグネシウムの燃焼]]
2族元素の単体は、いずれも、空気中で激しく燃焼して酸化物を生じる。たとえばマグネシウムは白い強い光を出しながら燃焼して白色の酸化マグネシウム(MgO)を生じる。
: <chem>2Mg + O2 -> 2MgO</chem>
マグネシウムは二酸化炭素とも熱や光を出しながら激しく反応する。
: <chem>2Mg + CO2 -> 2MgO + C</chem>
2族元素の酸化物はいずれも塩基性酸化物であり、酸と反応する。たとえば酸化マグネシウムは塩酸と反応して塩化マグネシウムを生じる。
: <chem>MgO + 2HCl -> MgCl2 + H2O</chem>
[[ファイル:Magnesium_chloride.jpg|右|サムネイル|200x200ピクセル|塩化マグネシウムの潮解]]
塩化マグネシウムは白色の固体であり、潮解性がある。
ベリリウム・マグネシウムとアルカリ土類金属とでは、次のような違いがある。
* '''炎色反応'''
*: ベリリウムとマグネシウムの単体は、炎色反応を示さない。アルカリ土類金属元素は炎色反応を示し、イオンの水溶液を白金線の先につけてガスバーナーの炎に入れると、カルシウムでは橙赤色に、ストロンチウムでは紅色に、バリウムでは黄緑色に、それぞれ炎が色づく。
{| align="center" style="border:solid #aaffaa 1px; text-align:center;"
|[[ファイル:FlammenfärbungCa.png|153x153ピクセル|カルシウムの炎色反応]]
|[[ファイル:FlammenfärbungSr.png|152x152ピクセル|ストロンチウムの炎色反応]]
|-
|Ca
|Sr
|}
{| class="wikitable" align="right"
|+2族元素の単体の性質
|- style="background:silver"
!
!元素名
!元素記号
!融点(℃)
!密度(g/cm<sup>3</sup>)
!炎色反応
|-
| rowspan="2" |
|ベリリウム
|Be
|1282
|1.85
|示さない
|-
|マグネシウム
|Mg
|649
|1.74
|示さない
|-
| rowspan="3" |アルカリ
土類金属
|カルシウム
|Ca
|839
|1.55
|橙赤
|-
|ストロンチウム
|Sr
|769
|2.54
|紅
|-
|バリウム
|Ba
|729
|3.59
|黄緑
|-
|}
* 水との反応性
*: アルカリ土類金属の単体は常温で水と反応し、水素を発生する。
*:: <chem>Ca + 2H2O -> Ca(OH)2 + H2 ^</chem>
*: 一方で、ベリリウムやマグネシウムの単体は常温では水と反応しない。ただし、マグネシウムは熱水と反応して水素を発生しながら水酸化物となる。
*:: <chem>Mg + 2H2O -> Mg(OH)2 + H2 ^</chem>
* 硫酸塩の水への溶けやすさ
*: 例外的に、硫酸ベリリウム、硫酸マグネシウムは水に溶けやすい。だが、それ以外のアルカリ土類金属の硫酸塩は水に溶けにくい。
=== バリウム ===
水酸化バリウムの水溶液などに希硫酸を加えると、硫酸バリウム BaSO<sub>4</sub> の白色沈殿が得られる。
硫酸バリウム BaSO<sub>4</sub> は白色の粉末で、水に溶けず、酸にも反応しない。
硫酸バリウムの実社会の用途として、医療では、この性質(水に溶けにくい、酸に反応しない、など)を利用して、人体のX線撮影の造影剤として、胃や腸など消化器官のようすを撮影するための造影剤として、硫酸バリウムは用いられる。
なおバリウムおよび硫酸バリウムは、X線を透過させにくい。そのため、X線撮影の際、人体内のバリウムのある場所でX線が遮断され、撮影装置にX線が届かなくなるので、胃や腸でのバリウムのようすが見える、という仕組みである。
=== カルシウム ===
[[ファイル:Calcium_unter_Argon_Schutzgasatmosphäre.jpg|右|サムネイル|200x200ピクセル|カルシウムの単体]]
'''カルシウム'''(Ca)はアルカリ土類金属のひとつである。単体は塩化カルシウムの融解塩電解により得られる。
[[ファイル:Big-Calcium-Bubble.ogv|右|サムネイル|250x250ピクセル|二酸化炭素の発生]]
=== 酸化物 ===
単体を空気中で燃焼させると酸化カルシウム(CaO)を生じる。酸化カルシウムは'''生石灰'''(せいせっかい)とも呼ばれる。
: <chem>2Ca + O2 -> 2CaO</chem>
酸化カルシウムに水を加えると熱を出しながら水酸化カルシウム(<chem>Ca(OH)2</chem>)を生じる。水酸化カルシウムは消石灰とも呼ばれる。
: <chem>CaO + H2O -> Ca(OH)2</chem>
酸化カルシウムは水を吸収し、そのさい発熱することから、乾燥剤や発熱材として用いられる。ただし、酸性気体とは反応してしまうため、塩基性・中性気体の乾燥にしか使えない。
=== 水酸化物 ===
酸化カルシウムに水を加えると熱を出しながら水酸化カルシウム(<chem>Ca(OH)2</chem>)を生じる。
: <chem>CaO + H2O -> Ca(OH)2</chem>
逆に、水酸化カルシウムを加熱すると酸化カルシウムが得られる。
: <chem>Ca(OH)2 -> CaO + H2O</chem>
水酸化カルシウムはカルシウムを水と反応させることによっても得られる。
: <chem>Ca + 2H2O -> Ca(OH)2 + H2 ^</chem>
水酸化カルシウムは白色の粉末であり、消石灰とも呼ばれる。水酸化カルシウムの水溶液は塩基性を示し、一般に石灰水(lime water)と呼ばれる。 石灰水に二酸化炭素を通じると、炭酸カルシウムの白色沈殿を生じて白濁する。この反応は二酸化炭素の検出に用いられる。
: <chem>Ca(OH)2 + CO2 -> CaCO3 v + H2O</chem>
しかし、白濁した石灰水にさらに二酸化炭素を通じ続けると、炭酸水素カルシウムとなって沈殿は溶解し、無色の水溶液になる。
: <chem>CaCO3 + CO2 + H2O -> Ca(HCO3)2</chem>
この炭酸水素カルシウム水溶液を加熱すると、再び炭酸カルシウムの沈殿が生じる。
: <chem>Ca(HCO3)2 -> CaCO3 v + CO2 ^ + H2O </chem>
水酸化カルシウム水溶液に塩酸を加えると、塩化カルシウムを生じる。塩化カルシウムは吸湿性があり、乾燥剤としてしばしば用いられる。
: <chem>Ca(OH)2 + 2HCl -> CaCl2 + 2H2O</chem>
水酸化カルシウム水溶液に塩素を通じると、[[高等学校化学I/非金属元素の単体と化合物#塩素のオキソ酸|さらし粉]]を生じる。
: <chem>Ca(OH)2 + Cl2 -> CaCl(ClO)*H2O</chem>
水酸化カルシウムは漆喰に使われている。
=== 塩化物 ===
塩化カルシウム CaCl{{sub|2}}は一般的には「エンカル」という名称で用いられる。
使用用途は乾燥剤と融雪剤である。中性なのであらゆる気体の乾燥に使えるが、唯一アンモニアとは反応してしまうためアンモニアの乾燥はできない。
夏にエンカルをグラウンドに撒くことがある。これは、大気中の水分をエンカルが吸うことにより、地表が湿って砂埃が舞うのが抑えられるためである。
=== 炭酸塩 ===
炭酸カルシウム CaCO{{sub|3}} の固体は、天然には石灰岩や大理石として存在する。
鍾乳洞(しょうにゅうどう)や鍾乳石(しょうにゅうせき)は、炭酸カルシウムが地下水にいったん溶けて、水中で炭酸水素ナトリウムとなり、その後、炭酸カルシウムに戻り、再度、固まったものでる。
炭酸カルシウムは塩酸などの強酸と反応して、二酸化炭素を発生する。
: <chem>CaCO3 + 2HCl -> CaCl2 + H2O + CO2 ^</chem>
炭酸カルシウムは、セメントの原料や、チョークの原料、ガラスの原料、歯みがき粉の原料などとして、使われている。
=== 硫酸塩 ===
水酸化カルシウム水溶液に硫酸を加えると、硫酸カルシウム CaSO{{sub|4}} の白色沈殿を生じる。硫酸カルシウムは天然には二水和物が'''セッコウ'''(石膏)として存在する。セッコウを約130℃で焼くことにより、二分の一水和物である'''焼きセッコウ'''の白色粉末となる。
: <chem>Ca(OH)2 + H2SO4 -> CaSO4 + 2H2O</chem>
焼きセッコウの粉末に水を少量まぜると、硬化して、体積が少し増え、セッコウになる。セッコウ像(塑像)や医療用ギプスは、この性質を利用している。ただし、重量があるせいなのかギプスとしての用途は近年薄れてきている。その代わり、建材としての用途が増えてきた。
カルシウムやバリウムの硫酸塩は水に溶けにくく、この性質は陽イオンの系統分離において重要である。また日常生活においても重要で、硫酸カルシウムは建築材や医療用ギプスに、硫酸バリウムBaSO<sub>4</sub>はX線撮影の造影剤として用いられる。
=== 発展: 硬水と軟水 ===
Ca{{sup|2+}}やMg{{sup|2+}}を多く含む水を'''硬水'''という。それらが少量しか含まれていない水のことを'''軟水'''という。
日本では一般に、地下水には硬水が多い。日本では河川水には軟水が多い。
また、硬水を飲むと、下痢を起こしてしまう。なので、食用には硬水は不適切である。
しかし、農業用水に硬水を使う分には問題がない。
もしボイラーで硬水を使うと、沈殿が残るので、配管の詰まりを起こしやすく、危険であり不適切である。
工業用水や生活用水には、硬水は不適切である。
大陸の河川水では、硬水が多い。その理由は、大陸の河川水は緩流なので、鉱物質が溶けこんでいるので、硬水が多い。
いっぽう、日本では急流が多いことが、日本の河川水に軟水が多い。{{コラム|水の硬度|<chem>Ca^2+</chem> や <chem> Mg^2+</chem> をすべて <chem>CaCO3</chem> と考えたときの <chem>CaCO3</chem> の 1L 当たりの質量(mg)を硬度という。
基本的に水の硬度の数値が低いほど軟水である。いっぽう、水の硬度の数値が高いと硬水である。
::硬度60までが「軟水」。
::硬度120以上は「硬水」。
::硬度60~120は「中硬水」というのに分類する。
::なお、フランスノミネラルウォーターの「エビアン」は硬度が約300であり、硬水である。フランスでも、ボルヴィック(ミネラルウォーターの商品のひとつ)は硬度が約60で、軟水に近い。}}
=== ※ 範囲外: ===
ベリリウムとマグネシウムは、金属に分類されている(高校教科書でも、ベリリウムなどは金属に分類されている。)。しかし、上述のように特殊な性質を示すこともあり、一説には、ベリリウムはやや共有結合よりの金属結合をしている中間的な結合であるかもしれないと解釈する理論も存在する。(※ 参考文献: 東京化学同人『無機化学 - その現代的アプローチ -』、第二版、94ページ )
ベリリウムに他の金属が衝撃的にぶつかっても火花が飛び散りづらい性質があるので、そのため特殊なカナヅチの材料としてベリリウム系の合金(ベリリウムと銅の合金)が使われていることも多い。
またベリリウムはX線および電磁波を透過するので、X線管の材料のうち、X線を透過させたい部分の材料に使われる。
天然では、宝石のエメラルドにベリリウムが含まれる。
なお、化学的には、ベリリウムはアルミニウムに近い反応をすることも多い。(※ 参考文献: 東京化学同人『無機化学 - その現代的アプローチ -』、第二版、94ページ )
エメラルドにも、アルミニウムは含まれる。(エメラルドの主成分は、シリコンとアルミニウムとベリリウムである。)
==== 耐火レンガ ====
酸化マグネシウム MgO は融点が高く(約2800℃)、耐火レンガやるつぼの材料などに用いられている。(※ 数研出版のチャート式にこのように書かれている。)
: ※ 古い版のチャート式では、融点が高いから耐火レンガに使われていると書かれているが、最新の版では訂正されており、これらは別個のこととして説明されている。
: ※ 検定教科書では、啓林館の科目『科学と人間生活』教科書で、組成は書かれてないが、耐火レンガというものが存在する事が書かれている。
; 熱の伝わりやすさの調節
(チャート式などでは範囲外(普通科高校の範囲外)なので触られてないが)、耐火レンガの材料などに酸化マグネシウムや酸化アルミニウムなどが用いられる理由のひとつとして、融点の高さのほかにも、熱の伝わりやすさという、重大な理由がある。(※ 工業高校などの一部の学科で習う。)(※参考文献: 文部科学省著作教科書『セラミック工業』平成15年3月25日 初版発行、平成18年1月25日、実教出版 発行、188ページや203ページなど。)転炉や電気炉で近年、マグネシアカーボンれんが が用いられているという。なお、高炉はアルミナ質れんが や 炭化ケイ素れんが が用いられているという。また、製鉄の溶融スラグは塩基性であると考えられており、酸化マグネシウムは耐塩基性としての耐腐食性が高い(つまり、腐食しにくい)と考えられていることも、各所で酸化マグネシウムが使われる一因である。
もし るつぼ等の使用中に高熱が一箇所に蓄積すると、るつぼ等が溶融してしまい破壊されてしまうので、熱を伝えやすい材料を適切な場所に用いることで、るつぼ等の寿命をのばしているのである。
酸化マグネシウムや酸化アルミニウムなど、いちぶの金属の酸化物は(金属酸化物を含まない単なる粘土レンガと比べれば)比較的に熱を伝えやすい。
名前こそ「耐火」レンガであるが、酸化マグネシウムを含まないからといって、耐熱性が低いわけでもないし、燃えやすいわけでもない。
酸化マグネシウム系レンガなどが必要とされる本当の理由は、熱を分散・拡散しやすいことである。
: ※ 『耐火レンガ』という名称が、あまり適切ではないかもしれないが、社会では、この名前で定着してしまっている。
耐火レンガを作る際、そもそもレンガの母材として粘土が必要であるが、それに酸化マグネシウムや酸化アルミニウムなどを適量に混ぜることで、熱の伝わりやすさを調節して、耐火レンガは設計される。
== アルミニウム ==
'''アルミニウム Al''' は13族の金属元素で、価電子を3個もち、3価の陽イオンになりやすい。
銀白色の軽い金属である。展性や延性が大きく、薄く伸ばしたものはアルミニウム箔(いわゆるアルミホイル)として一般家庭でも用いられている。また、電気伝導性も良く、熱伝導性も良い。熱伝導性が良いことから、鍋などにも用いられる。
アルミニウムの単体を空気中に放置すると、表面に緻密な酸化膜(酸化アルミニウム Al{{sub|2}}O{{sub|3}} )の被膜ができ、内部を保護する。
アルミニウムやマグネシウムを主成分とする合金である'''ジュラルミン'''は軽量かつ強度が高く、航空機に用いられている。アルミニウム自体も、アルミ缶や1円硬貨に用いられている。
=== 製法 ===
==== バイヤー法 ====
アルミニウムの天然の鉱石は'''ボーキサイト'''(bauxite)といい、ボーキサイトの化学式はAl<sub>2</sub>O<sub>3</sub>・nH<sub>2</sub>Oである。ボーキサイトに濃い水酸化ナトリウム溶液NaOHを加えてアルミン酸ナトリウム2Na[Al(OH)<sub>4</sub>]が得られる。正確にはテトラヒドロキソアルミン酸ナトリウムという。
: <math>\mathrm{ Al_2O_3 + 2NaOH + 3H_2O \rightarrow 2Na[Al(OH)_4] } </math>
アルミン酸ナトリウム2Na[Al(OH)_4]の溶液を冷却し、加水分解がおこると水酸化アルミニウムAl(OH)<sub>3</sub> の沈殿が析出する。
: <math>\mathrm{ Na[Al(OH)_4] \rightarrow Al(OH)_3+ NaOH } </math>
生じたAl(OH)<sub>3</sub> を分離して、このAl(OH)3を1200℃に加熱して酸化アルミニウムAl<sub>2</sub>O<sub>3</sub>にする。 これらのボーキサイトからアルミナまでの工程を'''バイヤー法'''という。
Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub> は'''アルミナ'''という。アルミナは融点が高く、約2000℃の融点なので、融点を次の融解塩電解という処理で下げる。
==== 溶融塩電解 ====
[[ファイル:Mineraly.sk_-_bauxit.jpg|代替文=ボーキサイト|サムネイル|200x200ピクセル|ボーキサイト]]
鉱石の'''ボーキサイト'''(bauxite、主成分: 酸化アルミニウム <chem>Al2O3</chem>)を処理して酸化アルミニウム(<chem>Al2O3</chem>)にかえたあと、氷晶石(<chem>Na3AlF6</chem>、ヘキサフルオロアルミン酸ナトリウム)とともに熔融塩電解して製造される。('''エルー・ホール法''')
: <chem>Al^3+ + 3e^- -> Al v</chem>
アルミニウムの電解には、大量の電力が必要となる。
[[ファイル:Cut_Ruby.jpg|代替文=ルビー|サムネイル|150x150ピクセル|ルビー]]
[[ファイル:SaphirSynthetique.jpg|代替文=サファイア|サムネイル|150x150ピクセル|サファイア]]
製造の過程で得られる酸化アルミニウム(Al{{sub|2}}O{{sub|3}})は水に溶けにくい白色の固体である。酸化アルミニウムは'''アルミナ'''とも呼ばれ、融点が非常に高い(アルミナの融点は2054℃)ことから耐熱材の原材料としても用いられるほどである。氷晶石は、このアルミナの融点を降下させるために加えられる。
アルミニウムの粉末は、空気中または酸素中で熱すると、激しく燃える。
* ボーキサイトから酸化アルミニウムを得る方法 (※ 教科書の範囲外。資料集(実教出版など)の範囲内。文献により、方法が若干、違う。)
濃い水酸化ナトリウム水溶液でボーキサイト中の酸化アルミニウムが溶け、ほかの不純物はあまり溶けない。まず、この水酸化ナトリウム水溶液で酸化アルミニウムを溶かして アルミン酸ナトリウム <chem>Na[Al(OH)4]</chem> を得る。
: <chem>Al2O3 + 2NaOH + 3H2O -> 2 Na[Al(OH)4]</chem>
(ここまでは、どの文献でも、ほぼ同じ。) まず、ろ過をして、溶液から、不溶性の <chem>Fe2O3</chem> などの余計な不純物を取り除く。
あとは、このアルミン酸ナトリウム水溶液をうまく処理し、アルミナに変えていく方法が必要なのである。
まず、アルミン酸ナトリウム <chem>Na[Al(OH)4]</chem> 水溶液から、なんらかの方法で、加水分解を起こし、水酸化アルミニウム <chem>Al(OH)3</chem> を沈殿させる。
: <chem>Na[Al(OH)4] -> Al(OH)3 + NaOH</chem>
あとは、この水酸化アルミニウムを高温で焼成すると、純度の高い酸化アルミニウムが得られる。
* テルミット法
また、アルミニウム単体の粉末と、酸化鉄 <chem>Fe2O3</chem> など他の金属酸化物の粉末を混合して、加熱すると、アルミニウムが激しく酸化され、ほかの金属酸化物が還元され、金属単体が得られる。たとえば酸化鉄(Ⅲ)とアルミニウムを混合して加熱すると、鉄が得られる。
: <chem>2Al + Fe2O3 -> Al2O3 + 2Fe v</chem>
これを'''テルミット法'''といい、レールの熔接などに用いられる。
両性元素
アルミニウムは両性元素であり、酸とも塩基とも反応して水素を生じる。たとえば、塩酸と反応して水素を発生しながら塩化アルミニウムを生じる。
: <chem>2Al + 6HCl -> 2AlCl3 + 3H2 ^</chem>
また、水酸化ナトリウム水溶液と反応して、水素を発生しながらテトラヒドロキソアルミン酸イオンを生じる。
: <chem>2Al + 2NaOH + 6H2O -> 2Na+ + 2[Al(OH)4]^- + 3H2 ^</chem>
しかし、アルミニウムは濃硝酸に溶けない。これは、反応開始直後に金属表面に緻密な酸化被膜を形成し、反応が金属内部まで進行しなくなるためである。このように、緻密な酸化皮膜により保護されて、それ以上は反応が進行しない状態を'''不動態'''(ふどうたい)という。
'''アルマイト'''という材料は、アルミニウムの表面を人工的に酸化させることで厚い不動態の膜で保護させ、そのアルミニウムの耐久性を上げた材料であり、日本で開発された。
イオン
アルミニウムイオン <chem>Al^3+</chem> の水溶液は無色透明である。これに水酸化ナトリウム水溶液を少量加えると、水酸化アルミニウムの白色ゼリー状沈殿を生じる。
: <chem>Al^3+ + 3 NaOH -> 3 Na+ + Al(OH)3 v</chem>
しかし、水酸化ナトリウム水溶液を過剰に加えると、沈殿は溶解して無色の水溶液となり、テトラヒドロキソアルミン酸イオンを生じる。
: <chem>Al(OH)3 + NaOH -> Na+ + [Al(OH)4]^-</chem>
テトラヒドロキソアルミン酸イオン水溶液に塩酸を加えると、逆に水酸化アルミニウムの白色沈殿を生じ、過剰に加えれば塩化アルミニウムを生じる。塩化アルミニウムは潮解性のある白色の固体であるが、水に溶けやすく、電離してアルミニウムイオンを生じる。
=== 水酸化アルミニウム ===
アルミニウムイオンを含んだ水溶液に、塩基を加えると、水酸化アルミニウム <chem>Al(OH)3</chem> の白色ゲル状の沈殿が生じる。 水酸化アルミニウムを熱すると、酸化アルミニウム <chem>Al2O3</chem> が生じる。
水酸化アルミニウム <chem>Al(OH)3</chem> は酸とも塩基とも反応して溶けることのできる、両性水酸化物である。
: <chem>Al(OH)3 + 3HCl -> AlCl3 + 3H2O</chem>
: <chem>Al(OH)3 + NaOH -> Na[Al(OH)4]</chem>
=== 酸化アルミニウム ===
酸化アルミニウム <chem>Al2O3</chem> は、'''アルミナ'''(alumina)とも呼ばれ、白色の粉末で、水に溶けない。また、融点が高い(融点:2054℃)。 酸化アルミニウム <chem>Al2O3</chem> は、酸にも強塩基にも溶ける両性酸化物であるが、アンモニア水には溶けない。
: <chem>Al2O3 + 6HCl -> 2AlCl3 + 3H2O</chem>
: <chem>Al2O3 + 2NaOH + 3 H2O -> 2Na[Al(OH)4]</chem>
また、たとえば宝石のルビーやサファイアは、酸化アルミニウムが主成分の結晶である。酸化アルミニウムの結晶のうち、ごく微量のクロムやチタンなどの金属が混入したものが、赤いルビーや青いサファイアであり、ともに、かなり硬い。また、酸にも塩基にも、ルビーやサファイアは溶けない。 なお、ルビーにはクロム Cr が、サファイアには鉄 Fe やチタン Ti が含まれている。{{コラム|人工宝石|:※ 『科学と人間生活』(啓林館など)に記述がある。
ルビーやサファイアなどは組成がわかっているので、人工的に作ることもできる。
材料であるアルミナやクロムまたは鉄などに高温や高圧などを加えて熱することで、人工的にルビーやサファイアなどを作ることができる。
このように、人工的につくった宝石のことを人工宝石といい、さまざまな分野に応用されている。
また、アルミナ化合物ではないが、ダイヤモンドや水晶などアルミナ以外の宝石でも、人工的につくることができる。
人工ダイヤや人工水晶も、人工宝石に含める。
なお、人工ダイヤモンドは、その硬さを活用して、工場などの大型の回転カッターなどの切れ味を増すための材料などとして、刃先に人工ダイヤのある刃物が応用されている(いわゆるダイヤモンドカッター)。}}
=== ミョウバン ===
[[ファイル:Alun.jpg|代替文=ミョウバンの結晶|サムネイル|200x200ピクセル|ミョウバンの結晶]]
硫酸カリウム水溶液と硫酸アルミニウム水溶液とを混合して濃縮して得られる結晶は、硫酸カリウムアルミニウム十二水和物 AlK(SO{{sub|4}}){{sub|2}}・12H{{sub|2}}O の結晶であり、この硫酸カリウムアルミニウム十二水和物を'''ミョウバン'''(明礬)という。
ミョウバンの結晶は無色透明で正八面体形をしている。 ミョウバンを水に溶かすと、<chem>Al^3+</chem> 、<chem>K^+</chem> 、<chem>SO4^2-</chem> の各イオンに電離する。 <chem>AlK(SO4)2*12H2O -> {Al^3+} + {K^+} + 2 {SO4^{2-}} + 12 H2O</chem>
ミョウバンのように、2種類以上の塩が結合して物質を'''複塩'''(ふくえん、double salt)という。
ミョウバンを焼くと、無水物である焼きミョウバンが得られる。ミョウバンは温度による溶解度の変化が激しく、低温の水には少量しか溶けないが、温度を上げるとよく溶けるようになる。
=== 補:両性金属の反応モデル ===
[[高校化学 典型金属#金属と水の反応モデル]]において、水酸化物皮膜を用いて金属と水の反応を説明した。
ここでは、同様にして両性金属元素の反応モデルを考える。
水中にある金属Mは水と反応して表面に水酸化物M(OH){{sub|x}}の皮膜を作る。
ここで、酸HXを加えると水酸化物皮膜と反応して塩が生成される。塩は完全に電離するので金属の表面が露出し、水酸化物皮膜が生成される。また水酸化物が酸と反応して金属の表面が露出し・・・と反応が進行し、最終的に全て塩となって水に溶ける。
また、塩基YOHを加えると、水酸化物イオンと水酸化物が反応して錯イオンを形成する。錯イオンは水に可溶なので金属の表面が露出し(以下略)と反応が進行し、最終的に全て錯イオンとなって水に溶ける。
== スズと鉛 ==
スズ Sn と鉛 Pb は、ともに周期表14族であり、原子は価電子を4個もち、ともに酸化数が+2または+4の化合物をつくり、ともに両性元素であり、ともにイオン化傾向は水より大きい。
=== スズ ===
[[ファイル:Metal_cube_tin.jpg|代替文=スズ|サムネイル|200x200ピクセル|スズ]]
スズ(Sn)は銀白色の固体である。展性や延性に富み、また比較的さびにくい金属である。酸とも塩基とも反応して、水素を発生する。
: <chem>Sn + 2HCl -> SnCl2 + H2</chem>
: <chem>Sn + 2NaOH + 2H2O -> [Sn(OH)4]^2- + 2 Na^+ + H2</chem>
スズは、青銅やハンダなど合金の材料でもある。
また、スズはメッキに多用される。鉄にスズをメッキしたものは「'''ブリキ'''」と呼ばれ、缶詰や金属玩具などに用いられる。
{| align="center" style="border:none; text-align:center;"
|[[ファイル:Assorted_bronze_castings.JPG|右|サムネイル|183x183ピクセル|青銅]]
|[[ファイル:HK_Food_Grass_Jelly_Canned_with_Tinplate_a.jpg|右|サムネイル|201x201ピクセル|ブリキの缶詰]]
|}
=== スズの化合物 ===
化合物中でのスズの酸化数には +2 と +4 があるが、スズの場合は 酸化数=+4 のほうが安定である。
スズを塩酸に溶かした溶液から、塩化スズ <chem>SnCl2</chem> が得られる。 塩化スズ(II)二水和物 <chem>SnCl2*2H2O</chem> は無色の結晶。また、水溶液は還元作用がある。
: <chem>SnCl2 + 2Cl^- -> SnCl4 + 2e^-</chem>
=== 鉛 ===
[[ファイル:Metal_cube_lead.jpg|代替文=鉛|サムネイル|200x200ピクセル|鉛]]
'''鉛''' Pb は青白色のやわらかい金属である。鉛とその化合物は有毒である。
鉛は、両性元素であり、硝酸、強塩基の水溶液と反応して溶ける。しかし、塩酸と希薄硫酸には、鉛の表面に難溶性の皮膜(塩化鉛 PbCl<sub>2</sub> や、硫酸鉛 PbSO<sub>4</sub> の皮膜は、水に難溶)が発生するため、溶けない。
<chem>Pb + 2HNO3 -> Pb(NO3)2 + H2</chem> <chem>Pb + 2NaOH + 2H2O -> [Pb(OH)4]^2- + 2Na^+ + H2</chem>
ただし、塩酸と希硫酸には溶けない。また、アンモニア水のような弱塩基にも溶けない。
酸化鉛PbOは黄色く、古くは、黄色の顔料として用いられた。
鉛は放射線の遮蔽材や鉛蓄電池に使われている。
鉛の化合物は水に溶けにくいものが多いが、硝酸鉛 <chem>Pb(NO3)2</chem> や酢酸鉛 <chem>(CH3COO)2Pb</chem> は水によく溶ける。
=== イオン ===
鉛(II)イオン(<chem>Pb^2+</chem>)は様々な沈殿を作る。アンモニア水や少量の水酸化ナトリウム水溶液を加えると、水酸化鉛(II)の白色沈殿を生じる。
: <chem>Pb^2+ + 2OH^- -> Pb(OH)2 v</chem>
ただし、水酸化ナトリウム水溶液を過剰に加えると、テトラヒドロキソ鉛(II)酸イオンを生じて溶ける。
: <chem>Pb(OH)2 + 2NaOH -> 2Na^+ + [Pb(OH)4]2-</chem>
鉛(II)イオン水溶液に塩酸を加えると、塩化鉛(II)の白色沈殿を生じる。
: <chem>Pb^2+ + 2HCl -> 2 H^+ + PbCl2 v</chem>
これを加熱すると、鉛(II)イオンを生じて溶ける。
: <chem>PbCl2 -> Pb^2+ + 2Cl^-</chem>
鉛(II)イオン水溶液に希硫酸を加えると、硫酸鉛(II)の白色沈殿を生じる。
: <chem>Pb^2+ + H2SO4 -> 2H^+ + PbSO4</chem>
鉛(II)イオン水溶液に硫化水素を加えると、硫化鉛(II)の黒色沈殿を生じる。
: <chem>Pb^2+ + H2S -> 2H^+ + PbS v</chem>
鉛(II)イオン水溶液にクロム酸カリウム水溶液を加えると、クロム酸鉛(II)の黄色沈殿を生じる。
: <chem>Pb^2+ + CrO4^2- -> PbCrO4 v</chem>
鉛(II)イオン水溶液にヨウ化カリウム水溶液を加えると、ヨウ化鉛(II)の黄色沈殿を生じる。
: <chem>Pb^2+ + 2I^- -> PbI2</chem>
== セラミックス ==
ガラス、セメント、陶磁器などのように、無機物質に加熱処理などしたものを、'''セラミックス'''という。
また、このようなセラミック製品を製造する産業を、セラミック産業または窯業(ようぎょう)という。 窯は「かま」の事である。
原材料にケイ酸塩化合物を用いることが多いことから、ケイ酸塩工業ともいう。
=== 共通する性質 ===
セラミックスには多くの種類があるが、多くのセラミックス材料に共通する性質として、
: ・ 力をくわえても変形しづらい。延性・展性は無い
: ・ 絶縁体である
: ・ 耐熱性に優れる。しかし、急激な温度変化に対しては弱い
: ・ 錆びない
: がある。 なお、硬いという長所は、加工が難しいという短所でもある。
=== セメント ===
水を加えると硬化するものを'''セメント'''という。建築材料として用いられる'''ポルトランドセメント'''は、石灰石、粘土(SiO<sub>2</sub>, Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub>など)、酸化鉄Fe<sub>2</sub>O<sub>3</sub>などを粉砕して混合したのち、1500 ℃で加熱したものに、少量の石膏(CaSO<sub>4</sub>・2H<sub>2</sub>O)を加えて粉砕したものである。製造のとき、石灰石が高熱で処理され、酸化カルシウム CaO になる。
砂利、砂、水をセメントで固めたものを'''コンクリート'''という。また、セメントに砂を混ぜたものは、'''モルタル'''という。
[[ファイル:Liepaja_Karosta_falochron_polnocny_2.jpg|サムネイル|コンクリートで作られた消波ブロック]]
セメントやコンクリートには、カルシウム Ca が含まれている。 石膏は、硬化を遅らせて調節するために添加されている。
コンクリートは圧縮の力には強いが、引っ張りの力には弱いので、引っ張りに強い鉄筋を入れた鉄筋コンクリート(reinforced concrete, RC)として用いる。
コンクリートは、材料中の水酸化カルシウム Ca(OH)<sub>2</sub> により、塩基性を示す。また、この塩基性により、内部の鉄筋が酸から保護される。空気中の酸性物質などにより、コンクリートはしだいに中性に中和されていき、そのため強度がしだいに低下していく。また、鉄筋を保護していたコンクリートが劣化すると、内部の鉄筋も酸に腐食されやすくなる。
=== ガラス ===
ガラスはケイ酸塩を主成分として、ナトリウム Na、カリウム Kなどを含んでいる。
[[ファイル:Chartres_RosetteNord_121_DSC08241.jpg|サムネイル|503x503ピクセル|ステンドグラスには金属酸化物で着色されたガラスが使用されている。]]
ガラスの結晶構造は不規則であり、一定の融点を持たない。高温にすると、やわらかくなり水あめのように軟らかくなる。冷えると固まる。
ガラスの結晶のように、不規則なまま硬化している結晶構造を、'''アモルファス(非晶質)'''という。
ガラスは無色透明であるが、金属酸化物を加えることで着色することができる。
ほぼ二酸化ケイ素だけで出来ている高純度のガラスを、'''石英ガラス'''といい、紫外線の透過性が高く、また耐熱性も高いので、光学機器や耐熱ガラスや光ファイバーなどに利用されている。
しかし、石英ガラスは耐熱性が高すぎるため融点が高く、製造時の溶融加工が容易でないので、一般のガラス製品には添加物をくわえて融点を下げたソーダ石灰ガラスなどが用いられている。
窓ガラスなどに用いられる一般のガラスは、ソーダ石灰ガラスであり、SiO2のほか、Na2OとCaOを主成分としている。
このソーダ石灰ガラスの製法は、けい砂(主成分 SiO2)に、炭酸ナトリウム(Na2CO3)や石灰石を添加して作る。
[[ファイル:Schott_Duran_glassware.jpg|サムネイル|ホウケイ酸ガラスの実験器具]]
ガラスを高温に熱していったとき、ガラスが軟らかくなり始める軟化点または軟化温度という。ソーダ石灰ガラスの軟化点は630 ℃だが、石英ガラスの軟化点は1650 ℃である。
理科実験などで用いるビーカーやフラスコなど、理科学器具に用いられるガラスの材質には、ホウケイ酸ガラスが用いられている。 ホウケイ酸ガラスは、ホウ砂(主成分 B<sub>2</sub>O<sub>3</sub>)とケイ砂からなるガラスである。ホウケイ酸ガラスは熱膨張率が低く、そのため耐熱性も高く、耐食性も高いことから、理科実験器具用のガラスとして用いられている。
酸化鉛 PbO を含んだ鉛ガラスは密度が大きく、また、X線など放射線の吸収能も大きいため、放射線遮蔽窓として用いられる。 また、鉛ガラスは屈折率が大きいため、光学レンズとしても用いられる。
=== 陶磁器 ===
粘土や砂、岩石の粉などを焼き固めて、陶磁器がつくられる。
[[ファイル:Chinese_-_Dish_with_Flowering_Prunus_-_Walters_492365_-_Interior.jpg|サムネイル|清の磁器]]
陶器は約1000℃で焼き固めてて作られる。磁器は700~900℃で素焼き(釉薬をかけずに焼く)したのち、釉薬を塗り、1100℃~1500℃で本焼きをする。磁器は硬く、白色で吸水性がない。叩くと金属音を発する。
[[ファイル:Covered_Jar,_Imari_ware,_Edo_period,_18th_century,_Chinese_lion_and_phoenix_design_in_underglaze_blue_and_overglaze_enamel_-_Tokyo_National_Museum_-_DSC05337.JPG|サムネイル|伊万里の磁器({{Ruby|色絵獅子鳳凰文有蓋大壺|いろえししほうおうもんゆうがいたいこ}} 東京国立博物館蔵)]]
また、土器は600℃から900℃で素焼きした陶磁器である。
[[ファイル:火焔土器-“Flame-Rimmed”_Cooking_Vessel_(Kaen_doki)_MET_2015_300_258_Burke_website.jpg|サムネイル|縄文時代の土器]]
焼き固めとは、高温にすることで、粒子の表面が部分的に融け、そのあと冷ましていくことで、粒子どうしが接着する。
これらの焼き物の表面には、焼く前に、石英などの粉末からなる{{Ruby|釉薬|ゆうやく}}(うわぐすり)が表面に塗られる。焼く時に、釉薬が融け、ガラスになる。表面がガラスで保護されることで、吸水性がなくなる。
=== アルミナ ===
Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub>は硬くて丈夫なので、さまざまな材料に用いられる。
研磨剤にも、アルミナは用いられている。
* 電気工業への応用
アルミナは絶縁性も高く、そのためICチップなどの絶縁材にも用いられる<ref>『セラミック材料』、工業高校教科書、文部科学省</ref>。 アルミナは熱伝導性も比較的よく、そのため電気回路で生じたジュール熱を外部に放散しやすいので、温度上昇による誤動作を防ぎやすい。
* 医療への応用
また、医療用の人工骨などにアルミナ材料の人工骨を用いてても、拒否反応などを起こさず、生体適合性が良い。なお、自然には人体にアルミナは接着しないので、ボルトなどで人工的に人工骨を既存の骨に固定する必要がる。
=== ニューセラミックス ===
* 酸化ジルコニウム
酸化ジルコニウム ZrO<sub>2</sub> およびそれに添加物を加えた材料では、結晶中に自然に生じた欠陥が、まるでシリコン半導体でいう導電性を高めるための添加物と似た役割を生じて、酸化ジルコニウム中の欠陥が酸化ジルコニウムの導電性に影響を与える。その結果、酸化ジルコニウムは、空気中の酸素濃度により導電性が変わる。このため、酸化ジルコニウムは酸素センサとして用いられる。
* 酸化チタン
酸化チタン TiO<sub>2</sub> は、光が当たると、有機物を分解する。この有機物の分解作用のため、光の当たった酸化チタンは、殺菌や消臭などの効果をもつ。酸化チタンそのものは減らずに残り続けるので、触媒的に働くことから、このような光のあたった酸化チタンによる分解作用が、'''光触媒'''と呼ばれる。
この分解のエネルギー源は、酸化チタンが紫外線を吸収し、そのエネルギーによって酸化チタンの酸化力が高まり、そして有機物を分解する。
さて太陽電池としても、酸化チタンは利用されている。酸化チタンそのものは紫外線しか吸収しないため効率が低いため、色素を添加して、色素に可視光を吸収をさせて、そのエネルギーを酸化チタンが利用できるように工夫した太陽電池が開発されており、色素増感型太陽電池と言われている。
また、色素と光によってエネルギーを得る仕組みが、植物の光合成の仕組みに似ていることから、生物学的にも興味を持たれている。
この他、酸化チタンは白色であり、人体に無害なので、化粧などの白色顔料としても用いられている。
このほか、超親水性という性質があり、水に濡れても水滴にならず、水が全体に広がるので、自動車のフロントガラスなどの添加剤に応用されている。
* 酸化スズ SnO2
酸化スズ SnO2 では、表面に酸素を吸着する性質がある。そして、プロパンガスや一酸化炭素などにさらされると、吸着された酸素が燃焼して、もとの酸化スズに戻る。この吸着と酸素の離脱のさい、導電性が変わるため、プロパンガスなど可燃性ガス濃度を測るセンサーとして用いられる。
* セラミック製コンデンサー
そもそもコンデンサーには、電気を通さない性質が求められる。つまりコンデンサーの材料は、絶縁物質であるべきである。そもそも、コンデンサーは、誘電分極(ゆうでん ぶんきょく)を利用した素子だから。もし、金属のように電気を通してしまうと、そもそもコンデンサーとしての役割を持たない。
セラミックは電気を通さないため、コンデンサーとして適切であり、じっさいにコンデンサーとしてセラミック材料は利用されている。
なお、セラミックは、絶縁材料としても、活用される。
コンデンサー材料としては、チタン酸バリウム BaTiO<sub>3</sub> などがある。
* 圧電性セラミックス
チタン酸ジルコン酸鉛 PbTiO<sub>3</sub> や チタン酸バリウム BaTiO<sub>3</sub> などに圧力をくわえると、電圧が発生する。これを利用して、圧力センサーなどに用いる。なお、チタン酸バリウムは、コンデンサー材料としても用いられている。このように、圧電の仕組みと、コンデンサーの誘電分極の仕組みとは、関連性がある。
なお、このような圧電性の材料に交流電圧をくわえると、振動をすることから、音波や振動の発生源としても用いられる。さらに、振動の共振周波数(その物体が振動しやすい周波数)が、その振動体に加えられた圧力や荷重などの外部の力によって変化することから、圧力センサーなどにも圧電材料が応用されている。
* 生体セラミックス
ハイドロキシアパタイトは、骨の主成分でもある。そのため、ハイドロキシアパタイトでつくった人工骨は、もともとの骨に接着しやすく、拒否反応なども起こりにくいので、医療用の人工骨などに利用される。なお、拒否反応などが無く、生体に接着しやすい性質を、生体親和性という。
* 炭化チタンTiC、炭化ホウ素B<sub>4</sub>C
炭化物のセラミックスの中には、硬度がかなり高く、また適度に靭性もあり、丈夫なものがある。このため、炭化チタン TiC などは切削工具などに用いられる。炭化ケイ素や窒化ケイ素なども、耐熱性が高い。
自動車エンジンやガスタービンなどに、これらの耐熱セラミックスが用いられる。
=== 半導体およびセラミックの温度-電気特性 ===
半導体や、いくつかのセラミックスには、温度の上昇にともなって、電気抵抗が下がるものがある。
なお、金属では、温度が上がると、電気抵抗が上がる。
半導体やセラミックスの、このような、温度上昇にともなって電気抵抗が下がる特性が実用化されており、電子機器での温度変化時の電圧など出力の安定化のための部品に利用したり、あるいは温度センサなどに利用されたりしている。
[[カテゴリ:高等学校化学|てんけいきんそく]]
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== アルカリ金属 ==
=== 金属と水の反応モデル ===
以降の無機化学の単元において、金属と水溶液との反応を考える上では、以下のようなモデルを用いる。※実測はされていない
ある金属元素Mが水中にある。このとき、周りの水と反応することにより金属の表面が水酸化物M(OX){{sub|x}}で覆われる。(皮膜形成)
この水酸化物M(OX){{sub|x}}が水に可溶ならば、水酸化物皮膜が全て水に溶けて金属の表面が露出し、水と反応して水酸化物M(OH){{sub|x}}が生成する。そしてまた水酸化物被膜が全て水に溶けて金属の表面が露出し・・・と反応を繰り返し、最終的には金属が全て水酸化物となって水に溶ける。
水に難溶ならば、水酸化物皮膜が生成した時点で反応が止まり、その金属は水と反応しない。
なお、イオン化傾向がMg以下の金属の水酸化物は水に難溶である。
=== 単体 ===
[[File:Lithium paraffin.jpg|right|200px|thumb|リチウムの保存. <br>リチウムは密度が灯油よりも軽いため、リチウムは灯油に浮く。]]
[[File:Kalium.jpg|right|150px|thumb|切断したカリウム]]
水素を除く1族元素のリチウム Li, ナトリウム Na, カリウム K, ルビジウム Rb, セシウム Cs, フランシウム Fr のことを'''アルカリ金属'''という。
アルカリ金属の単体は、いずれも銀白色の固体である。融点が低くやわらかい金属で、カッターで簡単に切断することができる。
アルカリ金属の原子は価電子を1個もち、1価の陽イオンになりやすい。
このため、アルカリ金属の原子は酸化されやすいので、天然には単体の状態では存在せず、塩として存在する。
単体を得るには、化合物の融解塩電解を行う。加熱して融解させた化合物に炭素電極を入れ、電気分解を行うと、陰極側に金属の単体が析出する。
: <chem>{X+} + {e^-} -> {X} v</chem> (XはLi、Na、Kなど)
アルカリ金属は反応性が高く、イオン化傾向が大きいので還元性も高い。アルカリ金属は常温で空気中の酸素や水、塩素と簡単に反応する。特に水とは、アルカリ金属は常温で水と反応して水素を発生しながら激しく反応し、反応後の溶液は強塩基性の水溶液になる。
: <chem>4X + O2 -> 2X2O</chem>
: <chem>2X + 2H2O -> 2XOH + H2 ^</chem> (XはLi、Na、Kなど)
: <chem>2X + Cl2 -> 2XCl</chem>
そのため、アルカリ金属の単体を保存する際には、空気中の酸素や水との反応をふせぐために'''石油中'''(灯油)に保存する。リチウムは石油よりも軽いため、石油に浮く。また、単体は素手で触れず、必ずピンセットなどを用いて扱う。
<!--
水だけでなく、ヒドロキシル基(-OH)を持つアルコールやフェノールとも水素を発生しながら反応して、アルコキシド、フェノキシドとなる。
: 2R-OH + 2X → 2R-OX + H{{sub|2}} (Rは炭化水素基、XはLi、Na、Kなど)
-->
{| class="wikitable" align=right
|+ アルカリ金属の単体の性質
|-
|- style="background:silver"
! 元素名 !! 元素記号 !! 融点(℃) || 沸点(℃) || 密度(g/cm<sup>3</sup>) || 炎色反応
|-
| リチウム || Li || 180 || 1347 || 0.53 || 赤
|-
| ナトリウム|| Na || 98 || 883 || 0.97 || 黄
|-
| カリウム || K || 64 || 774 || 0.86 || 赤紫
|-
| ルビジウム || Rb || 39 || 688 || 1.53 || 赤
|-
| セシウム || Cs || 28 || 678 || 1.87 || 青
|-
|}
イオンは'''炎色反応'''を示し、白金線にイオン水溶液をつけガスバーナーの炎に入れると、リチウムイオンでは赤色に、ナトリウムイオンでは黄色に、カリウムでは赤紫色にそれぞれ炎が色づく。
{|align="center" style="border:solid #aaffaa 1px; text-align:center;"
|[[File:FlammenfärbungLi.png|52px|リチウムの炎色反応]]||[[File:FlammenfärbungNa.png|50px|ナトリウムの炎色反応]]||[[File:FlammenfärbungK.png|50px|カリウムの炎色反応]]
|-
|Li||Na||K
|}
=== アルカリ金属の化合物 ===
アルカリ金属は様々な化合物を作る。この章ではアルカリ金属の中でも、特にナトリウムの化合物について学ぶ。
==== 水酸化物 ====
アルカリ金属の単体が水と反応すると水酸化物となる。たとえばリチウムは水酸化リチウム(LiOH)に、ナトリウムは水酸化ナトリウム(NaOH)に、カリウムは水酸化カリウム(KOH)になる。
水酸化ナトリウムの工業的な製法については、塩化ナトリウム NaCl 水溶液の電気分解によって製造される。
常温では白色の固体であり、水によく溶けて、いずれの水溶液も強塩基性を示す。このため皮膚を冒す性質があり、取り扱いに注意する。
[[ファイル:Sodium_hydroxide.jpg|右|サムネイル|200x200ピクセル|水酸化ナトリウム]]
水酸化ナトリウムと水酸化カリウムの固体は吸湿性があり、空気中に放置すると水蒸気を吸収してその水に溶けてしまう。この現象を'''潮解'''(ちょうかい、deliquescenece)という。
水溶液も吸湿性があるため、長時間放置すると溶液の濃度が変化する。したがって精密さを要する実験では、直前に水溶液を調整するようにするとともに、中和滴定などにより正確な濃度を測る必要がある。
また水酸化ナトリウムは水分を吸収するだけでなく、空気中の二酸化炭素も吸収して、炭酸塩の炭酸ナトリウム(Na{{sub|2}}CO{{sub|3}})を生じる。
: <chem>2NaOH + CO2 -> Na2CO3 + H2O</chem>
この性質から、二酸化炭素の吸収剤として用いられることがある。
水酸化ナトリウムの産業上の用途は、製紙業でのパルプの製造、石油の精製、繊維の製造、セッケンの製造、などで用いられている。 水酸化ナトリウムは'''苛性ソーダ'''とも呼ばれる。
==== 炭酸塩・炭酸水素塩 ====
'''炭酸水素ナトリウム'''(NaHCO{{sub|3}})と'''炭酸ナトリウム'''(Na{{sub|2}}CO{{sub|3}})は共に白色の粉末である。工業的には'''アンモニアソーダ法'''により製造される。
==== アンモニアソーダ法(ソルベー法) ====
アンモニアソーダ法は炭酸ナトリウムの工業的製法である。
# 塩化ナトリウムの飽和水溶液にアンモニアと二酸化炭素を通す。 <chem>NaCl + NH3 + CO2 + H2O -> NaHCO3 + NH4Cl</chem>
# 炭酸水素ナトリウムを加熱する。 <chem>2NaHCO3 -> Na2CO3 + CO2 ^ + H2O</chem>
[[ファイル:アンモニアソーダ法反応過程.svg|右|サムネイル|550x550ピクセル|アンモニアソーダ法の反応経路図]]
;
反応で生じた生成物は次のように再利用できる。
# 炭酸カルシウムを加熱して酸化カルシウムと二酸化炭素を得る。
#: <chem>CaCO3 -> CaO + CO2</chem>
# 1.で得た酸化カルシウムに水をくわえ、水酸化カルシウムとする。
#: <chem>CaO + H2O -> Ca(OH)2</chem>
# 2.で得た水酸化カルシウムを1.で得た塩化アンモニウムと反応させ、塩化カルシウムとアンモニアを得る。このアンモニアは回収して1.の反応で再利用する。
#: <chem>2NH4Cl + Ca(OH)2 -> CaCl2 + 2NH3 + 2H2O</chem>
アンモニアソーダ法は全体としては、 <chem>2NaCl + CaCO3 -> Na2CO3 + CaCl2</chem> という反応式で表される。
原料がCaCO{{sub|3}}(石灰岩、秩父などで大量に採れる)とNaCl(食塩、買えなくても海水から作れる)とNH{{sub|3}}(アンモニア、ハーバー・ボッシュ法で大量生産できる)のみと非常に安価なので、アンモニアソーダ法は「安く大量生産を目指す」工業的製法としては最も理想形に近いと言われている。
==== 炭酸ナトリウム ====
炭酸水素ナトリウムは、熱分解して炭酸ナトリウム(sodium carbonate)となる。炭酸ナトリウムは白色の粉末で、水に溶け、水溶液は塩基性を示す。
炭酸ナトリウムは加熱しても、分解しない。
炭酸ナトリウムは弱酸と強塩基の塩であり、水に溶けると加水分解して塩基性を示す。
<chem>Na2CO3 -> 2 {Na^+} + CO3^{2-}</chem>
<chem>CO3^{2-} + H2O <=> {HCO3^-} + OH^-</chem>
炭酸ナトリウム水溶液を冷却すると十水和物 <chem>Na2CO3*10H2O</chem> の無色透明の結晶が得られる。この <chem>Na2CO3*10H2O</chem> の結晶は空気中に放置すると水和水の大部分を失って、白色粉末の一水和物 <chem>Na2CO3*H2O</chem> となる。この現象は'''風解'''(ふうかい、efflorescence)と呼ばれる。
炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムは、ともに強酸と反応して二酸化炭素を生じる。(弱酸遊離反応)
<chem>Na2CO3 + 2H2SO4 -> Na2SO4 + H2O + CO2 ^</chem>
炭酸ナトリウムは、ガラスや石鹸の製造などに用いられる。
※ガラスの原料は二酸化珪素 <chem>SiO2</chem> であるが、これを珪酸ナトリウム <chem>Na2SiO3</chem> にする反応において、水酸化ナトリウムよりも炭酸ナトリウムの方がよく用いられる。<chem>SiO2 + NaOH -> Na2SiO3 + H2O</chem>という反応と<chem>SiO + Na2CO3 -> Na2SiO3 + CO2</chem>という反応を比べた時、左の反応は反応性が高いものの、生成された <chem>H2O</chem> が反応の系内に残るので逆反応が起こり、平衡状態となって反応が見かけ上止まってしまう。それに対し、右の反応は生成された <chem>CO2</chem> が反応の系外に脱出するので、ルシャトリエの原理により平衡が正反応の向きに偏って反応がより一層進行する。そのため、通常は炭酸ナトリウムが用いられる。
==== 炭酸水素ナトリウム ====
炭酸水素ナトリウム <chem>NaHCO3</chem> は白色粉末で、水に少し溶け、水溶液は加水分解により弱塩基性を示す。炭酸水素ナトリウムは'''重曹'''(じゅうそう)ともいう。(重曹は「重炭酸曹達」の略である。「重炭酸」は「炭酸水素」の別名であり、「曹達(ソーダ)」はナトリウムの和名である。)
炭酸水素ナトリウムを熱すると、分解して二酸化炭素を発生する。
<chem>2NaHCO3 -> Na2CO3 + H2O + CO2 v</chem>
(上記の反応は、ソルベー法での炭酸水素ナトリウムの分解反応と同じ。)
炭酸水素ナトリウムの用途は、発泡剤やベーキングパウダー(ふくらし粉)、入浴剤の発泡剤成分、などとして用いられている。
また、強酸で、二酸化炭素を発生する。
<chem>NaHCO3 + HCl -> NaCl + H2O + CO2 v</chem>
=== 塩化物 ===
[[ファイル:NaCl-zoutkristallen_op_Schott_Duran_100_ml.JPG|右|サムネイル|200x200ピクセル|塩化ナトリウムの結晶]]
水酸化ナトリウムに塩酸を加えると、中和反応を起こし塩化ナトリウム(NaCl)を生じる。
<chem>NaOH + HCl -> NaCl + H2O</chem>
塩化ナトリウムは天然では岩塩に豊富に含まれており、食塩の主成分としても有名である。工業的には海水を濃縮することにより得られる。
塩化ナトリウムを融解塩電解すると単体のナトリウムが得られる。
<chem>2NaCl -> 2Na v Cl2 ^</chem>
塩化ナトリウム水溶液を電気分解すると、陽極から塩素が発生し、陰極から水素が発生する。このとき陰極側では水の電気分解反応が起こっており、水酸化物イオンが生じている。
<chem>2H2O -> H2 + 2 OH^-</chem>
溶液中にはナトリウムイオンが残るため、陰極付近では水酸化ナトリウムの水溶液が得られる。この原理は工業的な水酸化ナトリウムおよび塩素・水素の製造法として応用されており、陽イオン交換膜を用いることから'''イオン交換膜法'''と呼ばれる。
== 2族元素 ==
周期表の2族の元素は、すべて金属元素である。2価の価電子をもち、2価の陽イオンになりやすい。天然には塩として存在している。
2族元素のことをアルカリ土類金属という<ref>アルカリ土類金属の定義として、「Be,Mgを除く2族元素」と定義しているところもある。これは、後述するようにBe,Mgとその他の2族元素の性質に異なるところがあるからである。</ref>。
=== アルカリ土類金属元素 ===
2族元素の単体はアルカリ金属元素の単体よりも硬い。
[[ファイル:Magburn1.jpg|右|サムネイル|250x250ピクセル|マグネシウムの燃焼]]
2族元素の単体は、いずれも、空気中で激しく燃焼して酸化物を生じる。たとえばマグネシウムは白い強い光を出しながら燃焼して白色の酸化マグネシウム(MgO)を生じる。
: <chem>2Mg + O2 -> 2MgO</chem>
マグネシウムは二酸化炭素とも熱や光を出しながら激しく反応する。
: <chem>2Mg + CO2 -> 2MgO + C</chem>
2族元素の酸化物はいずれも塩基性酸化物であり、酸と反応する。たとえば酸化マグネシウムは塩酸と反応して塩化マグネシウムを生じる。
: <chem>MgO + 2HCl -> MgCl2 + H2O</chem>
[[ファイル:Magnesium_chloride.jpg|右|サムネイル|200x200ピクセル|塩化マグネシウムの潮解]]
塩化マグネシウムは白色の固体であり、潮解性がある。
ベリリウム・マグネシウムとアルカリ土類金属とでは、次のような違いがある。
* '''炎色反応'''
*: ベリリウムとマグネシウムの単体は、炎色反応を示さない。アルカリ土類金属元素は炎色反応を示し、イオンの水溶液を白金線の先につけてガスバーナーの炎に入れると、カルシウムでは橙赤色に、ストロンチウムでは紅色に、バリウムでは黄緑色に、それぞれ炎が色づく。
{| align="center" style="border:solid #aaffaa 1px; text-align:center;"
|[[ファイル:FlammenfärbungCa.png|153x153ピクセル|カルシウムの炎色反応]]
|[[ファイル:FlammenfärbungSr.png|152x152ピクセル|ストロンチウムの炎色反応]]
|-
|Ca
|Sr
|}
{| class="wikitable" align="right"
|+2族元素の単体の性質
|- style="background:silver"
!
!元素名
!元素記号
!融点(℃)
!密度(g/cm<sup>3</sup>)
!炎色反応
|-
| rowspan="2" |
|ベリリウム
|Be
|1282
|1.85
|示さない
|-
|マグネシウム
|Mg
|649
|1.74
|示さない
|-
| rowspan="3" |アルカリ
土類金属
|カルシウム
|Ca
|839
|1.55
|橙赤
|-
|ストロンチウム
|Sr
|769
|2.54
|紅
|-
|バリウム
|Ba
|729
|3.59
|黄緑
|-
|}
* 水との反応性
*: アルカリ土類金属の単体は常温で水と反応し、水素を発生する。
*:: <chem>Ca + 2H2O -> Ca(OH)2 + H2 ^</chem>
*: 一方で、ベリリウムやマグネシウムの単体は常温では水と反応しない。ただし、マグネシウムは熱水と反応して水素を発生しながら水酸化物となる。
*:: <chem>Mg + 2H2O -> Mg(OH)2 + H2 ^</chem>
* 硫酸塩の水への溶けやすさ
*: 例外的に、硫酸ベリリウム、硫酸マグネシウムは水に溶けやすい。だが、それ以外のアルカリ土類金属の硫酸塩は水に溶けにくい。
=== バリウム ===
水酸化バリウムの水溶液などに希硫酸を加えると、硫酸バリウム BaSO<sub>4</sub> の白色沈殿が得られる。
硫酸バリウム BaSO<sub>4</sub> は白色の粉末で、水に溶けず、酸にも反応しない。
硫酸バリウムの実社会の用途として、医療では、この性質(水に溶けにくい、酸に反応しない、など)を利用して、人体のX線撮影の造影剤として、胃や腸など消化器官のようすを撮影するための造影剤として、硫酸バリウムは用いられる。
なおバリウムおよび硫酸バリウムは、X線を透過させにくい。そのため、X線撮影の際、人体内のバリウムのある場所でX線が遮断され、撮影装置にX線が届かなくなるので、胃や腸でのバリウムのようすが見える、という仕組みである。
=== カルシウム ===
[[ファイル:Calcium_unter_Argon_Schutzgasatmosphäre.jpg|右|サムネイル|200x200ピクセル|カルシウムの単体]]
'''カルシウム'''(Ca)はアルカリ土類金属のひとつである。単体は塩化カルシウムの融解塩電解により得られる。
[[ファイル:Big-Calcium-Bubble.ogv|右|サムネイル|250x250ピクセル|二酸化炭素の発生]]
=== 酸化物 ===
単体を空気中で燃焼させると酸化カルシウム(CaO)を生じる。酸化カルシウムは'''生石灰'''(せいせっかい)とも呼ばれる。
: <chem>2Ca + O2 -> 2CaO</chem>
酸化カルシウムに水を加えると熱を出しながら水酸化カルシウム(<chem>Ca(OH)2</chem>)を生じる。水酸化カルシウムは消石灰とも呼ばれる。
: <chem>CaO + H2O -> Ca(OH)2</chem>
酸化カルシウムは水を吸収し、そのさい発熱することから、乾燥剤や発熱材として用いられる。ただし、酸性気体とは反応してしまうため、塩基性・中性気体の乾燥にしか使えない。
=== 水酸化物 ===
酸化カルシウムに水を加えると熱を出しながら水酸化カルシウム(<chem>Ca(OH)2</chem>)を生じる。
: <chem>CaO + H2O -> Ca(OH)2</chem>
逆に、水酸化カルシウムを加熱すると酸化カルシウムが得られる。
: <chem>Ca(OH)2 -> CaO + H2O</chem>
水酸化カルシウムはカルシウムを水と反応させることによっても得られる。
: <chem>Ca + 2H2O -> Ca(OH)2 + H2 ^</chem>
水酸化カルシウムは白色の粉末であり、消石灰とも呼ばれる。水酸化カルシウムの水溶液は塩基性を示し、一般に石灰水(lime water)と呼ばれる。 石灰水に二酸化炭素を通じると、炭酸カルシウムの白色沈殿を生じて白濁する。この反応は二酸化炭素の検出に用いられる。
: <chem>Ca(OH)2 + CO2 -> CaCO3 v + H2O</chem>
しかし、白濁した石灰水にさらに二酸化炭素を通じ続けると、炭酸水素カルシウムとなって沈殿は溶解し、無色の水溶液になる。
: <chem>CaCO3 + CO2 + H2O -> Ca(HCO3)2</chem>
この炭酸水素カルシウム水溶液を加熱すると、再び炭酸カルシウムの沈殿が生じる。
: <chem>Ca(HCO3)2 -> CaCO3 v + CO2 ^ + H2O </chem>
水酸化カルシウム水溶液に塩酸を加えると、塩化カルシウムを生じる。塩化カルシウムは吸湿性があり、乾燥剤としてしばしば用いられる。
: <chem>Ca(OH)2 + 2HCl -> CaCl2 + 2H2O</chem>
水酸化カルシウム水溶液に塩素を通じると、[[高等学校化学I/非金属元素の単体と化合物#塩素のオキソ酸|さらし粉]]を生じる。
: <chem>Ca(OH)2 + Cl2 -> CaCl(ClO)*H2O</chem>
水酸化カルシウムは漆喰に使われている。
=== 塩化物 ===
塩化カルシウム CaCl{{sub|2}}は一般的には「エンカル」という名称で用いられる。
使用用途は乾燥剤と融雪剤である。中性なのであらゆる気体の乾燥に使えるが、唯一アンモニアとは反応してしまうためアンモニアの乾燥はできない。
夏にエンカルをグラウンドに撒くことがある。これは、大気中の水分をエンカルが吸うことにより、地表が湿って砂埃が舞うのが抑えられるためである。
=== 炭酸塩 ===
炭酸カルシウム CaCO{{sub|3}} の固体は、天然には石灰岩や大理石として存在する。
鍾乳洞(しょうにゅうどう)や鍾乳石(しょうにゅうせき)は、炭酸カルシウムが地下水にいったん溶けて、水中で炭酸水素ナトリウムとなり、その後、炭酸カルシウムに戻り、再度、固まったものでる。
炭酸カルシウムは塩酸などの強酸と反応して、二酸化炭素を発生する。
: <chem>CaCO3 + 2HCl -> CaCl2 + H2O + CO2 ^</chem>
炭酸カルシウムは、セメントの原料や、チョークの原料、ガラスの原料、歯みがき粉の原料などとして、使われている。
=== 硫酸塩 ===
水酸化カルシウム水溶液に硫酸を加えると、硫酸カルシウム CaSO{{sub|4}} の白色沈殿を生じる。硫酸カルシウムは天然には二水和物が'''セッコウ'''(石膏)として存在する。セッコウを約130℃で焼くことにより、二分の一水和物である'''焼きセッコウ'''の白色粉末となる。
: <chem>Ca(OH)2 + H2SO4 -> CaSO4 + 2H2O</chem>
焼きセッコウの粉末に水を少量まぜると、硬化して、体積が少し増え、セッコウになる。セッコウ像(塑像)や医療用ギプスは、この性質を利用している。ただし、重量があるせいなのかギプスとしての用途は近年薄れてきている。その代わり、建材としての用途が増えてきた。
カルシウムやバリウムの硫酸塩は水に溶けにくく、この性質は陽イオンの系統分離において重要である。また日常生活においても重要で、硫酸カルシウムは建築材や医療用ギプスに、硫酸バリウムBaSO<sub>4</sub>はX線撮影の造影剤として用いられる。
=== 発展: 硬水と軟水 ===
Ca{{sup|2+}}やMg{{sup|2+}}を多く含む水を'''硬水'''という。それらが少量しか含まれていない水のことを'''軟水'''という。
日本では一般に、地下水には硬水が多い。日本では河川水には軟水が多い。
また、硬水を飲むと、下痢を起こしてしまう。なので、食用には硬水は不適切である。
しかし、農業用水に硬水を使う分には問題がない。
もしボイラーで硬水を使うと、沈殿が残るので、配管の詰まりを起こしやすく、危険であり不適切である。
工業用水や生活用水には、硬水は不適切である。
大陸の河川水では、硬水が多い。その理由は、大陸の河川水は緩流なので、鉱物質が溶けこんでいるので、硬水が多い。
いっぽう、日本では急流が多いことが、日本の河川水に軟水が多い。{{コラム|水の硬度|<chem>Ca^2+</chem> や <chem> Mg^2+</chem> をすべて <chem>CaCO3</chem> と考えたときの <chem>CaCO3</chem> の 1L 当たりの質量(mg)を硬度という。
基本的に水の硬度の数値が低いほど軟水である。いっぽう、水の硬度の数値が高いと硬水である。
::硬度60までが「軟水」。
::硬度120以上は「硬水」。
::硬度60~120は「中硬水」というのに分類する。
::なお、フランスノミネラルウォーターの「エビアン」は硬度が約300であり、硬水である。フランスでも、ボルヴィック(ミネラルウォーターの商品のひとつ)は硬度が約60で、軟水に近い。}}
=== ※ 範囲外: ===
ベリリウムとマグネシウムは、金属に分類されている(高校教科書でも、ベリリウムなどは金属に分類されている。)。しかし、上述のように特殊な性質を示すこともあり、一説には、ベリリウムはやや共有結合よりの金属結合をしている中間的な結合であるかもしれないと解釈する理論も存在する。(※ 参考文献: 東京化学同人『無機化学 - その現代的アプローチ -』、第二版、94ページ )
ベリリウムに他の金属が衝撃的にぶつかっても火花が飛び散りづらい性質があるので、そのため特殊なカナヅチの材料としてベリリウム系の合金(ベリリウムと銅の合金)が使われていることも多い。
またベリリウムはX線および電磁波を透過するので、X線管の材料のうち、X線を透過させたい部分の材料に使われる。
天然では、宝石のエメラルドにベリリウムが含まれる。
なお、化学的には、ベリリウムはアルミニウムに近い反応をすることも多い。(※ 参考文献: 東京化学同人『無機化学 - その現代的アプローチ -』、第二版、94ページ )
エメラルドにも、アルミニウムは含まれる。(エメラルドの主成分は、シリコンとアルミニウムとベリリウムである。)
==== 耐火レンガ ====
酸化マグネシウム MgO は融点が高く(約2800℃)、耐火レンガやるつぼの材料などに用いられている。(※ 数研出版のチャート式にこのように書かれている。)
: ※ 古い版のチャート式では、融点が高いから耐火レンガに使われていると書かれているが、最新の版では訂正されており、これらは別個のこととして説明されている。
: ※ 検定教科書では、啓林館の科目『科学と人間生活』教科書で、組成は書かれてないが、耐火レンガというものが存在する事が書かれている。
; 熱の伝わりやすさの調節
(チャート式などでは範囲外(普通科高校の範囲外)なので触られてないが)、耐火レンガの材料などに酸化マグネシウムや酸化アルミニウムなどが用いられる理由のひとつとして、融点の高さのほかにも、熱の伝わりやすさという、重大な理由がある。(※ 工業高校などの一部の学科で習う。)(※参考文献: 文部科学省著作教科書『セラミック工業』平成15年3月25日 初版発行、平成18年1月25日、実教出版 発行、188ページや203ページなど。)転炉や電気炉で近年、マグネシアカーボンれんが が用いられているという。なお、高炉はアルミナ質れんが や 炭化ケイ素れんが が用いられているという。また、製鉄の溶融スラグは塩基性であると考えられており、酸化マグネシウムは耐塩基性としての耐腐食性が高い(つまり、腐食しにくい)と考えられていることも、各所で酸化マグネシウムが使われる一因である。
もし るつぼ等の使用中に高熱が一箇所に蓄積すると、るつぼ等が溶融してしまい破壊されてしまうので、熱を伝えやすい材料を適切な場所に用いることで、るつぼ等の寿命をのばしているのである。
酸化マグネシウムや酸化アルミニウムなど、いちぶの金属の酸化物は(金属酸化物を含まない単なる粘土レンガと比べれば)比較的に熱を伝えやすい。
名前こそ「耐火」レンガであるが、酸化マグネシウムを含まないからといって、耐熱性が低いわけでもないし、燃えやすいわけでもない。
酸化マグネシウム系レンガなどが必要とされる本当の理由は、熱を分散・拡散しやすいことである。
: ※ 『耐火レンガ』という名称が、あまり適切ではないかもしれないが、社会では、この名前で定着してしまっている。
耐火レンガを作る際、そもそもレンガの母材として粘土が必要であるが、それに酸化マグネシウムや酸化アルミニウムなどを適量に混ぜることで、熱の伝わりやすさを調節して、耐火レンガは設計される。
== アルミニウム ==
'''アルミニウム Al''' は13族の金属元素で、価電子を3個もち、3価の陽イオンになりやすい。
銀白色の軽い金属である。展性や延性が大きく、薄く伸ばしたものはアルミニウム箔(いわゆるアルミホイル)として一般家庭でも用いられている。また、電気伝導性も良く、熱伝導性も良い。熱伝導性が良いことから、鍋などにも用いられる。
アルミニウムの単体を空気中に放置すると、表面に緻密な酸化膜(酸化アルミニウム Al{{sub|2}}O{{sub|3}} )の被膜ができ、内部を保護する。
アルミニウムやマグネシウムを主成分とする合金である'''ジュラルミン'''は軽量かつ強度が高く、航空機に用いられている。アルミニウム自体も、アルミ缶や1円硬貨に用いられている。
=== 製法 ===
==== バイヤー法 ====
アルミニウムの天然の鉱石は'''ボーキサイト'''(bauxite)といい、ボーキサイトの化学式はAl<sub>2</sub>O<sub>3</sub>・nH<sub>2</sub>Oである。ボーキサイトに濃い水酸化ナトリウム溶液NaOHを加えてアルミン酸ナトリウム2Na[Al(OH)<sub>4</sub>]が得られる。正確にはテトラヒドロキソアルミン酸ナトリウムという。
: <math>\mathrm{ Al_2O_3 + 2NaOH + 3H_2O \rightarrow 2Na[Al(OH)_4] } </math>
アルミン酸ナトリウム2Na[Al(OH)_4]の溶液を冷却し、加水分解がおこると水酸化アルミニウムAl(OH)<sub>3</sub> の沈殿が析出する。
: <math>\mathrm{ Na[Al(OH)_4] \rightarrow Al(OH)_3+ NaOH } </math>
生じたAl(OH)<sub>3</sub> を分離して、このAl(OH)3を1200 ℃に加熱して酸化アルミニウム <chem>Al2O3</chem> にする。 これらのボーキサイトからアルミナまでの工程を'''バイヤー法'''という。
Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub> は'''アルミナ'''という。アルミナは融点が 2027 ℃ と高いので、融点を次の融解塩電解という処理で下げる。
==== 溶融塩電解 ====
[[ファイル:Mineraly.sk_-_bauxit.jpg|代替文=ボーキサイト|サムネイル|200x200ピクセル|ボーキサイト]]
鉱石の'''ボーキサイト'''(bauxite、主成分: 酸化アルミニウム <chem>Al2O3</chem>)を処理して酸化アルミニウム(<chem>Al2O3</chem>)にかえたあと、氷晶石(<chem>Na3AlF6</chem>、ヘキサフルオロアルミン酸ナトリウム)とともに熔融塩電解して製造される。('''エルー・ホール法''')
: <chem>Al^3+ + 3e^- -> Al v</chem>
アルミニウムの電解には、大量の電力が必要となる。
[[ファイル:Cut_Ruby.jpg|代替文=ルビー|サムネイル|150x150ピクセル|ルビー]]
[[ファイル:SaphirSynthetique.jpg|代替文=サファイア|サムネイル|150x150ピクセル|サファイア]]
製造の過程で得られる酸化アルミニウム(<chem>Al2O3</chem>)は水に溶けにくい白色の固体である。酸化アルミニウムは'''アルミナ'''とも呼ばれ、融点が非常に高い(アルミナの融点は2054℃)ことから耐熱材の原材料としても用いられるほどである。氷晶石は、このアルミナの融点を降下させるために加えられる。
アルミニウムの粉末は、空気中または酸素中で熱すると、激しく燃える。
* ボーキサイトから酸化アルミニウムを得る方法 (※ 教科書の範囲外。資料集(実教出版など)の範囲内。文献により、方法が若干、違う。)
濃い水酸化ナトリウム水溶液でボーキサイト中の酸化アルミニウムが溶け、ほかの不純物はあまり溶けない。まず、この水酸化ナトリウム水溶液で酸化アルミニウムを溶かして アルミン酸ナトリウム <chem>Na[Al(OH)4]</chem> を得る。
: <chem>Al2O3 + 2NaOH + 3H2O -> 2 Na[Al(OH)4]</chem>
(ここまでは、どの文献でも、ほぼ同じ。) まず、ろ過をして、溶液から、不溶性の <chem>Fe2O3</chem> などの余計な不純物を取り除く。
あとは、このアルミン酸ナトリウム水溶液をうまく処理し、アルミナに変えていく方法が必要なのである。
まず、アルミン酸ナトリウム <chem>Na[Al(OH)4]</chem> 水溶液から、なんらかの方法で、加水分解を起こし、水酸化アルミニウム <chem>Al(OH)3</chem> を沈殿させる。
: <chem>Na[Al(OH)4] -> Al(OH)3 + NaOH</chem>
あとは、この水酸化アルミニウムを高温で焼成すると、純度の高い酸化アルミニウムが得られる。
* テルミット法
また、アルミニウム単体の粉末と、酸化鉄 <chem>Fe2O3</chem> など他の金属酸化物の粉末を混合して、加熱すると、アルミニウムが激しく酸化され、ほかの金属酸化物が還元され、金属単体が得られる。たとえば酸化鉄(Ⅲ)とアルミニウムを混合して加熱すると、鉄が得られる。
: <chem>2Al + Fe2O3 -> Al2O3 + 2Fe v</chem>
これを'''テルミット法'''といい、レールの熔接などに用いられる。
両性元素
アルミニウムは両性元素であり、酸とも塩基とも反応して水素を生じる。たとえば、塩酸と反応して水素を発生しながら塩化アルミニウムを生じる。
: <chem>2Al + 6HCl -> 2AlCl3 + 3H2 ^</chem>
また、水酸化ナトリウム水溶液と反応して、水素を発生しながらテトラヒドロキソアルミン酸イオンを生じる。
: <chem>2Al + 2NaOH + 6H2O -> 2Na+ + 2[Al(OH)4]^- + 3H2 ^</chem>
しかし、アルミニウムは濃硝酸に溶けない。これは、反応開始直後に金属表面に緻密な酸化被膜を形成し、反応が金属内部まで進行しなくなるためである。このように、緻密な酸化皮膜により保護されて、それ以上は反応が進行しない状態を'''不動態'''(ふどうたい)という。
'''アルマイト'''という材料は、アルミニウムの表面を人工的に酸化させることで厚い不動態の膜で保護させ、そのアルミニウムの耐久性を上げた材料であり、日本で開発された。
イオン
アルミニウムイオン <chem>Al^3+</chem> の水溶液は無色透明である。これに水酸化ナトリウム水溶液を少量加えると、水酸化アルミニウムの白色ゼリー状沈殿を生じる。
: <chem>Al^3+ + 3 NaOH -> 3 Na+ + Al(OH)3 v</chem>
しかし、水酸化ナトリウム水溶液を過剰に加えると、沈殿は溶解して無色の水溶液となり、テトラヒドロキソアルミン酸イオンを生じる。
: <chem>Al(OH)3 + NaOH -> Na+ + [Al(OH)4]^-</chem>
テトラヒドロキソアルミン酸イオン水溶液に塩酸を加えると、逆に水酸化アルミニウムの白色沈殿を生じ、過剰に加えれば塩化アルミニウムを生じる。塩化アルミニウムは潮解性のある白色の固体であるが、水に溶けやすく、電離してアルミニウムイオンを生じる。
=== 水酸化アルミニウム ===
アルミニウムイオンを含んだ水溶液に、塩基を加えると、水酸化アルミニウム <chem>Al(OH)3</chem> の白色ゲル状の沈殿が生じる。 水酸化アルミニウムを熱すると、酸化アルミニウム <chem>Al2O3</chem> が生じる。
水酸化アルミニウム <chem>Al(OH)3</chem> は酸とも塩基とも反応して溶けることのできる、両性水酸化物である。
: <chem>Al(OH)3 + 3HCl -> AlCl3 + 3H2O</chem>
: <chem>Al(OH)3 + NaOH -> Na[Al(OH)4]</chem>
=== 酸化アルミニウム ===
酸化アルミニウム <chem>Al2O3</chem> は、'''アルミナ'''(alumina)とも呼ばれ、白色の粉末で、水に溶けない。また、融点が高い(融点:2054℃)。 酸化アルミニウム <chem>Al2O3</chem> は、酸にも強塩基にも溶ける両性酸化物であるが、アンモニア水には溶けない。
: <chem>Al2O3 + 6HCl -> 2AlCl3 + 3H2O</chem>
: <chem>Al2O3 + 2NaOH + 3 H2O -> 2Na[Al(OH)4]</chem>
また、たとえば宝石のルビーやサファイアは、酸化アルミニウムが主成分の結晶である。酸化アルミニウムの結晶のうち、ごく微量のクロムやチタンなどの金属が混入したものが、赤いルビーや青いサファイアであり、ともに、かなり硬い。また、酸にも塩基にも、ルビーやサファイアは溶けない。 なお、ルビーにはクロム Cr が、サファイアには鉄 Fe やチタン Ti が含まれている。{{コラム|人工宝石|:※ 『科学と人間生活』(啓林館など)に記述がある。
ルビーやサファイアなどは組成がわかっているので、人工的に作ることもできる。
材料であるアルミナやクロムまたは鉄などに高温や高圧などを加えて熱することで、人工的にルビーやサファイアなどを作ることができる。
このように、人工的につくった宝石のことを人工宝石といい、さまざまな分野に応用されている。
また、アルミナ化合物ではないが、ダイヤモンドや水晶などアルミナ以外の宝石でも、人工的につくることができる。
人工ダイヤや人工水晶も、人工宝石に含める。
なお、人工ダイヤモンドは、その硬さを活用して、工場などの大型の回転カッターなどの切れ味を増すための材料などとして、刃先に人工ダイヤのある刃物が応用されている(いわゆるダイヤモンドカッター)。}}
=== ミョウバン ===
[[ファイル:Alun.jpg|代替文=ミョウバンの結晶|サムネイル|200x200ピクセル|ミョウバンの結晶]]
硫酸カリウム水溶液と硫酸アルミニウム水溶液とを混合して濃縮して得られる結晶は、硫酸カリウムアルミニウム十二水和物 AlK(SO{{sub|4}}){{sub|2}}・12H{{sub|2}}O の結晶であり、この硫酸カリウムアルミニウム十二水和物を'''ミョウバン'''(明礬)という。
ミョウバンの結晶は無色透明で正八面体形をしている。 ミョウバンを水に溶かすと、<chem>Al^3+</chem> 、<chem>K^+</chem> 、<chem>SO4^2-</chem> の各イオンに電離する。 <chem>AlK(SO4)2*12H2O -> {Al^3+} + {K^+} + 2 {SO4^{2-}} + 12 H2O</chem>
ミョウバンのように、2種類以上の塩が結合して物質を'''複塩'''(ふくえん、double salt)という。
ミョウバンを焼くと、無水物である焼きミョウバンが得られる。ミョウバンは温度による溶解度の変化が激しく、低温の水には少量しか溶けないが、温度を上げるとよく溶けるようになる。
=== 補:両性金属の反応モデル ===
[[高校化学 典型金属#金属と水の反応モデル]]において、水酸化物皮膜を用いて金属と水の反応を説明した。
ここでは、同様にして両性金属元素の反応モデルを考える。
水中にある金属Mは水と反応して表面に水酸化物M(OH){{sub|x}}の皮膜を作る。
ここで、酸HXを加えると水酸化物皮膜と反応して塩が生成される。塩は完全に電離するので金属の表面が露出し、水酸化物皮膜が生成される。また水酸化物が酸と反応して金属の表面が露出し・・・と反応が進行し、最終的に全て塩となって水に溶ける。
また、塩基YOHを加えると、水酸化物イオンと水酸化物が反応して錯イオンを形成する。錯イオンは水に可溶なので金属の表面が露出し(以下略)と反応が進行し、最終的に全て錯イオンとなって水に溶ける。
== スズと鉛 ==
スズ Sn と鉛 Pb は、ともに周期表14族であり、原子は価電子を4個もち、ともに酸化数が+2または+4の化合物をつくり、ともに両性元素であり、ともにイオン化傾向は水より大きい。
=== スズ ===
[[ファイル:Metal_cube_tin.jpg|代替文=スズ|サムネイル|200x200ピクセル|スズ]]
スズ(Sn)は銀白色の固体である。展性や延性に富み、また比較的さびにくい金属である。酸とも塩基とも反応して、水素を発生する。
: <chem>Sn + 2HCl -> SnCl2 + H2</chem>
: <chem>Sn + 2NaOH + 2H2O -> [Sn(OH)4]^2- + 2 Na^+ + H2</chem>
スズは、青銅やハンダなど合金の材料でもある。
また、スズはメッキに多用される。鉄にスズをメッキしたものは'''ブリキ'''と呼ばれ、缶詰や金属玩具などに用いられる。
{| align="center" style="border:none; text-align:center;"
|[[ファイル:Assorted_bronze_castings.JPG|右|サムネイル|183x183ピクセル|青銅]]
|[[ファイル:HK_Food_Grass_Jelly_Canned_with_Tinplate_a.jpg|右|サムネイル|201x201ピクセル|ブリキの缶詰]]
|}
=== スズの化合物 ===
化合物中でのスズの酸化数には +2 と +4 があるが、酸化数+4 のほうが安定である。
スズを塩酸に溶かした溶液から、塩化スズ <chem>SnCl2</chem> が得られる。 塩化スズ(II)二水和物 <chem>SnCl2*2H2O</chem> は無色の結晶。また、水溶液は還元作用がある。
: <chem>SnCl2 + 2Cl^- -> SnCl4 + 2e^-</chem>
=== 鉛 ===
[[ファイル:Metal_cube_lead.jpg|代替文=鉛|サムネイル|200x200ピクセル|鉛]]
'''鉛''' Pb は青白色のやわらかい金属である。鉛とその化合物は有毒である。
鉛は、両性元素であり、硝酸、強塩基の水溶液と反応して溶ける。しかし、塩酸と希薄硫酸には、鉛の表面に難溶性の皮膜(塩化鉛 PbCl<sub>2</sub> や、硫酸鉛 PbSO<sub>4</sub> の皮膜は、水に難溶)が発生するため、溶けない。
<chem>Pb + 2HNO3 -> Pb(NO3)2 + H2</chem> <chem>Pb + 2NaOH + 2H2O -> [Pb(OH)4]^2- + 2Na^+ + H2</chem>
ただし、塩酸と希硫酸には溶けない。また、アンモニア水のような弱塩基にも溶けない。
酸化鉛PbOは黄色く、古くは、黄色の顔料として用いられた。
鉛は放射線の遮蔽材や鉛蓄電池に使われている。
鉛の化合物は水に溶けにくいものが多いが、硝酸鉛 <chem>Pb(NO3)2</chem> や酢酸鉛 <chem>(CH3COO)2Pb</chem> は水によく溶ける。
=== イオン ===
鉛(II)イオン(<chem>Pb^2+</chem>)は様々な沈殿を作る。アンモニア水や少量の水酸化ナトリウム水溶液を加えると、水酸化鉛(II)の白色沈殿を生じる。
: <chem>Pb^2+ + 2OH^- -> Pb(OH)2 v</chem>
ただし、水酸化ナトリウム水溶液を過剰に加えると、テトラヒドロキソ鉛(II)酸イオンを生じて溶ける。
: <chem>Pb(OH)2 + 2NaOH -> 2Na^+ + [Pb(OH)4]2-</chem>
鉛(II)イオン水溶液に塩酸を加えると、塩化鉛(II)の白色沈殿を生じる。
: <chem>Pb^2+ + 2HCl -> 2 H^+ + PbCl2 v</chem>
これを加熱すると、鉛(II)イオンを生じて溶ける。
: <chem>PbCl2 -> Pb^2+ + 2Cl^-</chem>
鉛(II)イオン水溶液に希硫酸を加えると、硫酸鉛(II)の白色沈殿を生じる。
: <chem>Pb^2+ + H2SO4 -> 2H^+ + PbSO4</chem>
鉛(II)イオン水溶液に硫化水素を加えると、硫化鉛(II)の黒色沈殿を生じる。
: <chem>Pb^2+ + H2S -> 2H^+ + PbS v</chem>
鉛(II)イオン水溶液にクロム酸カリウム水溶液を加えると、クロム酸鉛(II)の黄色沈殿を生じる。
: <chem>Pb^2+ + CrO4^2- -> PbCrO4 v</chem>
鉛(II)イオン水溶液にヨウ化カリウム水溶液を加えると、ヨウ化鉛(II)の黄色沈殿を生じる。
: <chem>Pb^2+ + 2I^- -> PbI2</chem>
== セラミックス ==
ガラス、セメント、陶磁器などのように、無機物質に加熱処理などしたものを、'''セラミックス'''という。
また、このようなセラミック製品を製造する産業を、セラミック産業または窯業(ようぎょう)という。 窯は「かま」の事である。
原材料にケイ酸塩化合物を用いることが多いことから、ケイ酸塩工業ともいう。
=== 共通する性質 ===
セラミックスには多くの種類があるが、多くのセラミックス材料に共通する性質として、
: ・ 力をくわえても変形しづらい。延性・展性は無い
: ・ 絶縁体である
: ・ 耐熱性に優れる。しかし、急激な温度変化に対しては弱い
: ・ 錆びない
: がある。 なお、硬いという長所は、加工が難しいという短所でもある。
=== セメント ===
水を加えると硬化するものを'''セメント'''という。建築材料として用いられる'''ポルトランドセメント'''は、石灰石、粘土(SiO<sub>2</sub>, Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub>など)、酸化鉄Fe<sub>2</sub>O<sub>3</sub>などを粉砕して混合したのち、1500 ℃で加熱したものに、少量の石膏(CaSO<sub>4</sub>・2H<sub>2</sub>O)を加えて粉砕したものである。製造のとき、石灰石が高熱で処理され、酸化カルシウム <chem>CaO</chem> になる。
砂利、砂、水をセメントで固めたものを'''コンクリート'''という。また、セメントに砂を混ぜたものは、'''モルタル'''という。
[[ファイル:Liepaja_Karosta_falochron_polnocny_2.jpg|サムネイル|コンクリートで作られた消波ブロック]]
セメントやコンクリートには、カルシウム Ca が含まれている。 石膏は、硬化を遅らせて調節するために添加されている。
コンクリートは圧縮の力には強いが、引っ張りの力には弱いので、引っ張りに強い鉄筋を入れた鉄筋コンクリート(reinforced concrete, RC)として用いる。
コンクリートは、材料中の水酸化カルシウム Ca(OH)<sub>2</sub> により、塩基性を示す。また、この塩基性により、内部の鉄筋が酸から保護される。空気中の酸性物質などにより、コンクリートはしだいに中性に中和されていき、そのため強度がしだいに低下していく。また、鉄筋を保護していたコンクリートが劣化すると、内部の鉄筋も酸に腐食されやすくなる。
=== ガラス ===
ガラスはケイ酸塩を主成分として、ナトリウム Na、カリウム Kなどを含んでいる。
[[ファイル:Chartres_RosetteNord_121_DSC08241.jpg|サムネイル|503x503ピクセル|ステンドグラスには金属酸化物で着色されたガラスが使用されている。]]
ガラスの結晶構造は不規則であり、一定の融点を持たない。高温にすると、やわらかくなり水あめのように軟らかくなる。冷えると固まる。
ガラスの結晶のように、不規則なまま硬化している結晶構造を、'''アモルファス(非晶質)'''という。
ガラスは無色透明であるが、金属酸化物を加えることで着色することができる。
ほぼ二酸化ケイ素だけで出来ている高純度のガラスを、'''石英ガラス'''といい、紫外線の透過性が高く、また耐熱性も高いので、光学機器や耐熱ガラスや光ファイバーなどに利用されている。
しかし、石英ガラスは耐熱性が高すぎるため融点が高く、製造時の溶融加工が容易でないので、一般のガラス製品には添加物をくわえて融点を下げたソーダ石灰ガラスなどが用いられている。
窓ガラスなどに用いられる一般のガラスは、ソーダ石灰ガラスであり、<chem>SiO2</chem> のほか、<chem>Na2O</chem> と<chem>CaO</chem> を主成分としている。
このソーダ石灰ガラスの製法は、珪砂(主成分 <chem>SiO2</chem>)に、炭酸ナトリウム(<chem>Na2CO3</chem>)や石灰石を添加して作る。
[[ファイル:Schott_Duran_glassware.jpg|サムネイル|ホウケイ酸ガラスの実験器具]]
ガラスを高温に熱していったとき、ガラスが軟らかくなり始める軟化点または軟化温度という。ソーダ石灰ガラスの軟化点は630 ℃だが、石英ガラスの軟化点は1650 ℃である。
理科実験などで用いるビーカーやフラスコなど、理科学器具に用いられるガラスの材質には、ホウケイ酸ガラスが用いられている。 ホウケイ酸ガラスは、ホウ砂(主成分 B<sub>2</sub>O<sub>3</sub>)とケイ砂からなるガラスである。ホウケイ酸ガラスは熱膨張率が低く、そのため耐熱性も高く、耐食性も高いことから、理科実験器具用のガラスとして用いられている。
酸化鉛 PbO を含んだ鉛ガラスは密度が大きく、また、X線など放射線の吸収能も大きいため、放射線遮蔽窓として用いられる。 また、鉛ガラスは屈折率が大きいため、光学レンズとしても用いられる。
=== 陶磁器 ===
粘土や砂、岩石の粉などを焼き固めて、陶磁器がつくられる。
[[ファイル:Chinese_-_Dish_with_Flowering_Prunus_-_Walters_492365_-_Interior.jpg|サムネイル|清の磁器]]
陶器は約1000℃で焼き固めてて作られる。磁器は700~900℃で素焼き(釉薬をかけずに焼く)したのち、釉薬を塗り、1100℃~1500℃で本焼きをする。磁器は硬く、白色で吸水性がない。叩くと金属音を発する。
[[ファイル:Covered_Jar,_Imari_ware,_Edo_period,_18th_century,_Chinese_lion_and_phoenix_design_in_underglaze_blue_and_overglaze_enamel_-_Tokyo_National_Museum_-_DSC05337.JPG|サムネイル|伊万里の磁器({{Ruby|色絵獅子鳳凰文有蓋大壺|いろえししほうおうもんゆうがいたいこ}} 東京国立博物館蔵)]]
また、土器は600℃から900℃で素焼きした陶磁器である。
[[ファイル:火焔土器-“Flame-Rimmed”_Cooking_Vessel_(Kaen_doki)_MET_2015_300_258_Burke_website.jpg|サムネイル|縄文時代の土器]]
焼き固めとは、高温にすることで、粒子の表面が部分的に融け、そのあと冷ましていくことで、粒子どうしが接着する。
これらの焼き物の表面には、焼く前に、石英などの粉末からなる{{Ruby|釉薬|ゆうやく}}(うわぐすり)が表面に塗られる。焼く時に、釉薬が融け、ガラスになる。表面がガラスで保護されることで、吸水性がなくなる。
=== アルミナ ===
Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub>は硬くて丈夫なので、さまざまな材料に用いられる。
研磨剤にも、アルミナは用いられている。
* 電気工業への応用
アルミナは絶縁性も高く、そのためICチップなどの絶縁材にも用いられる<ref>『セラミック材料』、工業高校教科書、文部科学省</ref>。 アルミナは熱伝導性も比較的よく、そのため電気回路で生じたジュール熱を外部に放散しやすいので、温度上昇による誤動作を防ぎやすい。
* 医療への応用
また、医療用の人工骨などにアルミナ材料の人工骨を用いてても、拒否反応などを起こさず、生体適合性が良い。なお、自然には人体にアルミナは接着しないので、ボルトなどで人工的に人工骨を既存の骨に固定する必要がる。
=== ニューセラミックス ===
* 酸化ジルコニウム
酸化ジルコニウム ZrO<sub>2</sub> およびそれに添加物を加えた材料では、結晶中に自然に生じた欠陥が、まるでシリコン半導体でいう導電性を高めるための添加物と似た役割を生じて、酸化ジルコニウム中の欠陥が酸化ジルコニウムの導電性に影響を与える。その結果、酸化ジルコニウムは、空気中の酸素濃度により導電性が変わる。このため、酸化ジルコニウムは酸素センサとして用いられる。
* 酸化チタン
酸化チタン TiO<sub>2</sub> は、光が当たると、有機物を分解する。この有機物の分解作用のため、光の当たった酸化チタンは、殺菌や消臭などの効果をもつ。酸化チタンそのものは減らずに残り続けるので、触媒的に働くことから、このような光のあたった酸化チタンによる分解作用が、'''光触媒'''と呼ばれる。
この分解のエネルギー源は、酸化チタンが紫外線を吸収し、そのエネルギーによって酸化チタンの酸化力が高まり、そして有機物を分解する。
さて太陽電池としても、酸化チタンは利用されている。酸化チタンそのものは紫外線しか吸収しないため効率が低いため、色素を添加して、色素に可視光を吸収をさせて、そのエネルギーを酸化チタンが利用できるように工夫した太陽電池が開発されており、色素増感型太陽電池と言われている。
また、色素と光によってエネルギーを得る仕組みが、植物の光合成の仕組みに似ていることから、生物学的にも興味を持たれている。
この他、酸化チタンは白色であり、人体に無害なので、化粧などの白色顔料としても用いられている。
このほか、超親水性という性質があり、水に濡れても水滴にならず、水が全体に広がるので、自動車のフロントガラスなどの添加剤に応用されている。
* 酸化スズ SnO2
酸化スズ SnO2 では、表面に酸素を吸着する性質がある。そして、プロパンガスや一酸化炭素などにさらされると、吸着された酸素が燃焼して、もとの酸化スズに戻る。この吸着と酸素の離脱のさい、導電性が変わるため、プロパンガスなど可燃性ガス濃度を測るセンサーとして用いられる。
* セラミック製コンデンサー
そもそもコンデンサーには、電気を通さない性質が求められる。つまりコンデンサーの材料は、絶縁物質であるべきである。そもそも、コンデンサーは、誘電分極(ゆうでん ぶんきょく)を利用した素子だから。もし、金属のように電気を通してしまうと、そもそもコンデンサーとしての役割を持たない。
セラミックは電気を通さないため、コンデンサーとして利用されている。
なお、セラミックは、絶縁材料としても、活用される。
コンデンサー材料としては、チタン酸バリウム BaTiO<sub>3</sub> などがある。
* 圧電性セラミックス
チタン酸ジルコン酸鉛 PbTiO<sub>3</sub> や チタン酸バリウム BaTiO<sub>3</sub> などに圧力をくわえると、電圧が発生する。これを利用して、圧力センサーなどに用いる。なお、チタン酸バリウムは、コンデンサー材料としても用いられている。このように、圧電の仕組みと、コンデンサーの誘電分極の仕組みとは、関連性がある。
なお、このような圧電性の材料に交流電圧をくわえると、振動をすることから、音波や振動の発生源としても用いられる。さらに、振動の共振周波数(その物体が振動しやすい周波数)が、その振動体に加えられた圧力や荷重などの外部の力によって変化することから、圧力センサーなどにも圧電材料が応用されている。
* 生体セラミックス
ハイドロキシアパタイトは、骨の主成分でもある。そのため、ハイドロキシアパタイトでつくった人工骨は、もともとの骨に接着しやすく、拒否反応なども起こりにくいので、医療用の人工骨などに利用される。なお、拒否反応などが無く、生体に接着しやすい性質を、生体親和性という。
* 炭化チタンTiC、炭化ホウ素B<sub>4</sub>C
炭化物のセラミックスの中には、硬度がかなり高く、また適度に靭性もあり、丈夫なものがある。このため、炭化チタン TiC などは切削工具などに用いられる。炭化ケイ素や窒化ケイ素なども、耐熱性が高い。
自動車エンジンやガスタービンなどに、これらの耐熱セラミックスが用いられる。
=== 半導体およびセラミックの温度-電気特性 ===
半導体や、いくつかのセラミックスには、温度の上昇にともなって、電気抵抗が下がるものがある。
なお、金属では、温度が上がると、電気抵抗が上がる。
半導体やセラミックスの、このような、温度上昇にともなって電気抵抗が下がる特性が実用化されており、電子機器での温度変化時の電圧など出力の安定化のための部品に利用したり、あるいは温度センサなどに利用されたりしている。
[[カテゴリ:高等学校化学|てんけいきんそく]]
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高校化学 アルミニウム
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高校化学 亜鉛
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高校化学 スズ
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高校化学 鉛
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高校化学 水銀とカドミウム
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高校化学 銅
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高校化学 金と白金
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{{pathnav|高等学校の学習|高等学校理科|高等学校 化学|frame=1|small=1}}[[File:Eisen 1.jpg|100px|鉄|代替文=鉄|サムネイル]]
== 鉄 ==
=== 性質 ===
'''鉄'''(Fe)の単体は灰白色で比較的やわらかい。また、合金にして、鉄道のレール、流し台や窓枠のステンレス鋼、建築材の鉄骨など、さまざまなものに鉄が用いられている。
鉄は磁石に引き寄せられる。[[File:Castingiron.jpg|100px|鉄製品の鋳|代替文=鉄製品の鋳造|サムネイル]]
=== 製法 ===
鉄鉱石からの鉄の精錬では、赤鉄鉱 <chem>Fe2O3</chem> や磁鉄鉱 <chem>Fe3O4</chem> などの鉄鉱石を溶鉱炉で溶かし、コークス <chem>C</chem> 、石灰石 <chem>CaCO3</chem> を加えて発生する一酸化炭素 <chem>CO</chem> で還元して、鉄をつくる。
[[ファイル:Hochofenprozess.PNG|サムネイル|477x477ピクセル|高炉プロセスの概略図。Trocken -und Vorwärmzone:乾燥および予熱Reductionzone :還元の領域 。 Kohlungzone :浸炭の領域
Schmelzzone :融解の領域 。 Roheisen :銑鉄schlacke :スラグ
Erz :鉱石 。 koks :コークス 。 zuschläge :追加物Gichtgas :高炉ガス
]]
: <chem>CO</chem> の生成: <chem>C + O2 -> CO2</chem>
: <chem>CO2 + C -> 2CO</chem>
鉄鉱石は段階的に次のように還元される。
<math>\mathrm{ Fe_2O_3 \rightarrow Fe_3O_4 \rightarrow FeO \rightarrow Fe } </math>
それぞれの反応式は
[450℃] <chem>3Fe2O3 + CO -> 2Fe3O4 + CO2</chem>
[800℃] <chem>Fe3O4 + CO -> 3FeO + CO2</chem>
[1200℃] <chem>FeO + CO -> Fe + CO2</chem>
全体での反応は次の反応式で表される。
<chem>Fe2O3 + 3CO -> 2Fe + 3CO2 </chem>
また、不純物を取り除くため'''石灰石''' CaCO<sub>3</sub> を加える。石灰石によりシリカSiO<sub>2</sub>やアルミナAl<sub>2</sub>O<sub>3</sub>などの脈石(岩石を構成する成分のこと。)が分離される。 このようにして高炉で得られた鉄を'''銑鉄'''(せんてつ、pig iron)という。
なお、高炉の内側の耐火性のレンガにより、高炉は高温に耐えられるようになっている。
石灰石は、鉱石中のケイ酸塩と反応し'''スラグ''' CaSiO<sub>3</sub> を形成する。スラグは密度が銑鉄より軽いため、スラグは銑鉄に浮かぶ。スラグはセメントの原料になるため、スラグは廃棄せず分離して回収する。
また、炭素や石灰石の添加は、融点を下げる役割も有る。凝固点降下と同じ原理である。一般に混合物は融点が下がる。
銑鉄は炭素を質量比4%ほど含む。鉄中の炭素が多いと、粘りが無くなり、衝撃などに対して脆く、硬いが割れやすくなる。 このような鉄は、割れやすいが混合物のため融点が低く、また流動性も良いため鋳造に用いられる。そのため、炭素含有量の多い鉄は鋳鉄(ちゅうてつ) と呼ばれる。
鋳鉄は割れやすいため、建築材などには不便である。 丈夫な鉄を得るには銑鉄の炭素量を適量に減らす必要があり、転炉で酸素を加えて燃焼させて取り除く。転炉には、酸素吹き込み転炉などを用いる。この酸素吹き込みの酸化熱が、鉄を溶かし続ける熱源に使える。
炭素を0.02%~2%ほど含む鉄を'''鋼'''(こう、steel)という。
建築材などの構造材に用いられるのは、十分な硬さと強さをもたせた鋼である。
:
添加物のため融点は下がり、およそ1400℃で融解し、溶鉱炉の底に溶けた鉄がたまる。 なお、1200℃での反応の式について、温度が高くなりすぎると、逆方向に反応が進んでしまいCO<sub>2</sub>によるFeの酸化が起きるので、1200℃程度を保つ必要がある。
鉄の化学的性質として、鉄の単体および銑鉄や鋳鉄は、湿った空気中で酸化されやすく、さびやすい。 さびを防ぐため、合金として、鋼にクロム Cr やニッケル Ni などを混ぜた合金が'''ステンレス鋼'''である。このステンレス鋼は化学的な耐食性が高く、さびにくいため、建築材や台所部材として用いられる。
=== 鉄の化学的性質 ===
純度の高い鉄(てつ)の単体は、灰白色であり、比較的やわらかい。
鉄には酸化数+2または酸化数+3の化合物がある。
鉄の酸化物には、黒色の酸化鉄(II) FeO 、赤褐色の酸化鉄(III)Fe<sub>2</sub>O<sub>3</sub> 、黒色の四酸化三鉄 Fe<sub>3</sub>O<sub>4</sub> などがある。
鉄は、湿った空気中で酸化されやすい、よって鉄は、さびやすい。 鉄の赤さびは、 酸化鉄(III)Fe<sub>2</sub>O<sub>3</sub> である。
鉄は希硫酸に加えると、水素を発生して溶け、淡緑色の溶液になる。この水溶液から水を蒸発させて濃縮すると、硫酸鉄(II)七水和物FeSO<sub>4</sub>・7H<sub>2</sub>Oが得られる。
いっぽう、濃硝酸では、不動態となり、鉄の表面に皮膜ができて、それ以上は反応が進行しない。
=== 強磁性体 ===
鉄 Fe 、ニッケル Ni 、コバルト Co は、単体で磁性を帯びることができる金属である。
一方、銅やアルミニウムは、磁化されない。
鉄、ニッケル、コバルトのように、磁石になることができる物質を'''強磁性体'''という。
銅の特徴として、銅は電気の伝導性が良く、また熱の伝導性も良い。なお、一般に純金属の熱伝導性と電気伝導性は比例する。このため、自由電子が、その金属内で熱を伝える作用があるという説が、定説である。
=== 化学的な性質 ===
鉄は、酸に溶けて、水素を生じる。
: Fe + 2HCl → FeCl{{sub|2}} + H{{sub|2}}↑
ただし、濃硝酸では、表面に皮膜ができる不動態となり、それ以上は反応が進行しない。
=== 鉄イオンの水溶液 ===
鉄イオンは陽イオンであるが2価と3価のものがある。価数により異なる性質をもつ。
=== 鉄(Ⅱ)イオン ===
鉄(Ⅱ)イオン(Fe{{sup|2+}})は淡緑色をしている。アンモニア水や水酸化ナトリウム水溶液のような塩基と反応して水酸化鉄(Ⅱ)の緑白色沈殿を生じる。
: Fe{{sup|2+}} + 2OH{{sup|-}} → Fe(OH){{sub|2}}↓
この沈殿は空気中で酸化されて水酸化鉄(Ⅲ)になる。
: 4Fe(OH){{sub|2}} + O{{sub|2}} + 2H{{sub|2}}O → 4Fe(OH){{sub|3}}
硫化水素とは塩基性条件下で反応して、硫化鉄(Ⅱ)の黒色沈殿を生じる。酸性条件下では反応しない。
: Fe{{sup|2+}} + S{{sup|2-}} → FeS↓
酸化剤である過酸化水素水を加えると、イオンが酸化されてFe{{sup|3+}}となり、黄褐色の水溶液となる。
* ヘキサシアノ鉄(Ⅲ)酸カリウム水溶液(K{{sub|3}}[Fe(CN){{sub|6}}])をFe{{sup|2+}}水溶液に加えると、'''ターンブル青'''と呼ばれる濃青色の沈殿を生じる。一方、Fe{{sup|3+}}水溶液に加えると暗褐色の水溶液となる。
このヘキサシアノ鉄(Ⅲ)酸カリウム水溶液の反応は、鉄イオンの検出に用いられる。
=== 鉄(Ⅲ)イオン ===
一方、鉄(Ⅲ)イオン(Fe{{sup|3+}})は黄褐色をしている。アンモニア水や水酸化ナトリウム水溶液のような塩基と反応して水酸化鉄(Ⅲ)の赤褐色沈殿を生じる。
: Fe{{sup|3+}} + 3OH{{sup|-}} → Fe(OH){{sub|3}}↓
硫化水素とは塩基性条件下で反応して、一度イオンを還元してFe{{sup|2+}}とした後、硫化鉄(Ⅱ)の黒色沈殿を生じる。酸性条件下ではイオンを還元してFe{{sup|2+}}とするのみで、沈殿を生じない。
: Fe{{sup|2+}} + S{{sup|2-}} → FeS↓
鉄(Ⅲ)イオンの塩として、塩化鉄(Ⅲ)六水和物(FeCl{{sub|3}}・6H{{sub|2}}O)がある。黄褐色の固体であるが、潮解性がある。
[[File:Chlorid železitý.JPG|center|200px|塩化鉄(Ⅲ)六水和物の潮解|代替文=塩化鉄(Ⅲ)六水和物の潮解|サムネイル]]
鉄イオンは上記の他にも次のような反応をする。これらは、鉄イオンの検出・分離に有用である。
[[File:Eisen(III)-Ionen und Thiocyanat.JPG|150px|鉄(Ⅲ)イオン水溶液(左)にチオシアン酸カリウム水溶液を加える(右)|代替文=鉄(Ⅲ)イオン水溶液(左)にチオシアン酸カリウム水溶液を加える(右)|サムネイル]]
* チオシアン酸カリウム水溶液(KSCN)をFe{{sup|3+}}水溶液に加えると、血赤色の水溶液となる。なお、Fe{{sup|2+}}水溶液とは反応しない。
*: Fe{{sup|3+}} + SCN{{sup|-}} → [FeSCN]{{sup|2+}}
* ヘキサシアノ鉄(Ⅱ)酸カリウム水溶液(K{{sub|4}}[Fe(CN){{sub|6}}])をFe{{sup|3+}}水溶液に加えると、'''ベルリン青'''と呼ばれる濃青色の沈殿を生じる。
これらのチオシアン酸カリウム水溶液(KSCN)やヘキサシアノ鉄(Ⅲ)酸カリウム水溶液の反応は、鉄イオンの検出に用いられる。
[[File:Eisen(II),(III).JPG|center|250px|左から、鉄(Ⅱ)イオン、ターンブルブルー、鉄(Ⅲ)イオン、ベルリンブルー|代替文=左から、鉄(Ⅱ)イオン、ターンブルブルー、鉄(Ⅲ)イオン、ベルリンブルー|サムネイル]]
なお、ベルリン青とターンブル青は、色調は異なるが、同一の化合物である。
== 銅 ==
[[ファイル:Cu,29.jpg|代替文=|サムネイル|200x200ピクセル|銅]]
'''銅'''(Cu)は赤色の金属光沢をもつ金属である。展性・延性に富み、電気伝導性・熱伝導性が大きいことから、電線、調理器具、装飾品等、幅広く用いられている。
[[ファイル:StatueOfLiberty01.jpg|代替文=緑青に覆われた自由の女神|サムネイル|220x220ピクセル|緑青に覆われた自由の女神]]
銅は空気中で風雨にさらされると'''緑青'''(ろくしょう)と呼ばれる青緑色のさびを生じる。たとえば名古屋城の屋根や、アメリカの自由の女神などは緑色をしているが、これは緑青によるものである。
: <chem>2Cu + CO2 + H2O + O2 -> CuCO3*Cu(OH)2</chem>
日本では、昭和後期まで、緑青は毒性が強いと考えられていた。しかし、動物実験による検証で、毒性はほとんど無いことが分かった。
=== 製法 ===
銅の鉱産資源は、化合してない単体が産出することもあるが、ほとんどは黄銅鉱(<chem>CuFeS2</chem>)などの鉱石として産出する。 銅の鉱石を加熱してニッケルや金などの不純物を含む粗銅(そどう)を作り、これを電解精錬することにより純度の高い銅(99.97%程度)が得られる。電気精錬では、硫酸銅(Ⅱ)水溶液を電解液として、陽極には粗銅板を、陰極は純銅版として電気分解をすると、陽極の粗銅が溶解して銅(Ⅱ)イオンを生じ、陰極には銅が析出する。
: '''陽極''': <chem>Cu -> {Cu^{2+}} + 2e-</chem>
: '''陰極''': <chem>{Cu^{2+}} + 2{e^-} -> Cu</chem>
陽極の下には溶液に解けなかった金や銀などの不純物がたまる。これを陽極泥という。
=== 銅の精錬 ===
銅の精錬には、まず、黄銅鉱など銅鉱石を溶鉱炉で溶かす。溶鉱炉にはコークスCおよびケイ砂SiO<sub>2</sub>を加える。
: <math>\mathrm{ 2CuFeS_2 + 4O_2 + 2SiO_2 \rightarrow Cu_2S + FeSiO_3 + 3SO_2 }</math>
硫化銅Cu<sub>2</sub>Sは「かわ」とよばれる。この硫化銅は炉の下層に沈む。FeSiO<sub>3</sub> は上層に分離する。溶鉱で発生したFeSiO3<sub>3</sub>は「からみ」という。なおFeSiO<sub>3</sub> の式をFeOSiO<sub>2</sub>と書く場合もある。
この硫化銅を転炉で空気を吹き込むと、銅が遊離する。
: <math>\mathrm{ Cu_2S + O_2 \rightarrow 2Cu + SO_2 } </math>
こうして転炉で作った銅を'''粗銅'''(そどう)という。粗銅の純度は98.5%程度である。
=== 化学的な性質 ===
銅は塩素と激しく反応して、塩化銅(Ⅱ)を生じる。
: <chem>Cu + Cl2 -> CuCl2</chem>
銅はイオン化傾向が小さく、希硫酸や塩酸には溶けない。しかし、硝酸や熱濃硫酸(濃硫酸に加え加熱したもの)といった酸化力の強い酸には溶けて、銅(Ⅱ)イオンを生じる。
: '''希硝酸''': <chem>3Cu + 8HNO3 -> 3Cu(NO3)2 + 4H2O + 2NO ^</chem>
: '''濃硝酸''': <chem>Cu + 4HNO3 -> Cu(NO3)2 + 2H2O + 2NO2 ^</chem>
: '''熱濃硫酸''': <chem>Cu + 2H2SO4 -> CuSO4 + 2H2O + SO2 ^</chem>
=== 水溶液の性質 ===
[[ファイル:CopperSulphate.JPG|代替文=銅(Ⅱ)イオン水溶液|サムネイル|銅(Ⅱ)イオン水溶液]]
銅(Ⅱ)イオン(<chem>Cu^{2+}</chem>)水溶液は青色をしている。これに水酸化ナトリウム水溶液、またはアンモニア水を少量加えると、水酸化銅(Ⅱ)(<chem>Cu(OH)2</chem>)の青白色沈殿を生じる。
: <chem>{Cu^{2+}} + 2OH^- -> Cu(OH)2 v</chem>
これに、さらにアンモニア水を過剰に加えると、テトラアンミン銅(Ⅱ)イオン <chem>[Cu(NH3)4]^{2+}</chem> を生じて溶け、深青色の水溶液となる。
: <chem>Cu(OH)2 + 4NH3 -> {[Cu(NH3)4]^{2+}} + 2OH-</chem>
=== 酸化物 ===
水酸化銅(Ⅱ)を加熱すると、黒色の酸化銅(Ⅱ)(<chem>CuO</chem>)を生じる。
: <chem>Cu(OH)2 -> CuO + H2O</chem>
酸化銅(Ⅱ)は黒色であるが、高温で加熱すると赤色の酸化銅(Ⅰ)(<chem>Cu2O</chem>)となる。
{| align="center" style="border:solid #aaffaa 1px; text-align:center;"
|[[ファイル:CopperIIoxide.jpg|192x192ピクセル|酸化銅(Ⅱ)]]
|[[ファイル:CopperIoxide.jpg|251x251ピクセル|酸化銅(Ⅰ)]]
|-
|酸化銅(Ⅱ)
|酸化銅(Ⅰ)
|}
=== 硫化物 ===
銅(Ⅱ)イオン水溶液に硫化水素 <chem>H2S</chem> を通じると、硫化銅(Ⅱ) <chem>CuS</chem> の黒色沈殿を生じる。
: <chem>{Cu^2+} + H2S -> 2 {H+} + {CuS} v</chem>
[[ファイル:Copper_sulfate.jpg|代替文=硫酸銅(Ⅱ)五水和物|サムネイル|102x102ピクセル|硫酸銅(Ⅱ)五水和物]]
銅と硫酸の化合物である硫酸銅(Ⅱ)五水和物(<chem>CuSO4*5H2O</chem>)は青色の結晶である。水に溶かすと青色の水溶液となる。これを加熱すると白色の硫酸銅(Ⅱ)無水物 <chem>CuSO4</chem> の粉末となるが、水を加えると再び青色となる。この反応は水の検出に用いられる。
[[ファイル:Hydrating-copper(II)-sulfate.jpg|代替文=水の検出|中央|サムネイル|250x250ピクセル|水の検出]]
=== 銅の合金 ===
銅は、さまざまな合金の原料である。
: 黄銅(おうどう、ブラス)とは、銅と亜鉛との合金である。
: 青銅(せいどう、ブロンズ)とは、銅とスズとの合金である。
: 白銅(はくどう)とは、銅とニッケルとの合金である。
: 洋銀とは、銅と亜鉛とニッケルの合金である。
{| align="center" style="border:solid #aaffaa 1px; text-align:center;"
|[[ファイル:Trombone_CG_Bach42AG.jpg|200x200ピクセル|黄銅]]
|[[ファイル:Baltesspannarna_Gbg_-_J_P_Molin.jpg|200x200ピクセル|青銅]]
|[[ファイル:100JPY.JPG|300x300ピクセル|白銅]]
|-
|黄銅(金管楽器)
|青銅(ブロンズ像)
|白銅(100円玉)
|}
: 十円硬貨は銅に、亜鉛3%と錫2%を含む青銅である。
: 五円硬貨は黄銅である。五円硬貨の質量は 3.75 g であり、これは一{{Ruby|匁|もんめ}}に等しい。
: 五百円硬貨には洋銀が使われている。
== 銀 ==
銀 '''Ag''' は白色の金属光沢をもつ金属である。すべての金属の中で、熱伝導性と電気伝導性が最も高い。
銀イオンの水溶液は無色であるが、水酸化ナトリウム水溶液、または少量のアンモニア水を加えると、酸化銀(I) <chem>Ag2O</chem> の褐色沈殿を生じる。
: <chem>2Ag+ + 2OH- -> Ag2O v + H2O</chem>
この沈殿に、さらに過剰のアンモニア水を加えると、沈殿が溶けてジアンミン銀(I)イオン <chem>[Ag(NH3)2]+</chem> を生じ、無色の水溶液となる。
: <chem>Ag2O + 4NH3 + H2O -> 2[Ag(NH3)2]+ + 2OH-</chem>
銀イオン水溶液にクロム酸水溶液を加えると、クロム酸銀の赤褐色沈殿を生じる。
: <chem>{2Ag+} + CrO4^{2-} -> Ag2CrO4 v</chem>
銀イオン水溶液に硫化水素を通じると、硫化銀の黒色沈殿を生じる。
: <chem>2Ag+ + H2S -> Ag2S v + 2H+</chem>
* ハロゲン化物イオンとの反応
銀イオン水溶液に塩酸<chem>HCl</chem>を加えると、塩化銀の白色沈殿を生じる。塩酸に限らず、ハロゲン化水素の水溶液を加えると、ハロゲン化銀の沈殿を生じる。
: <chem>Ag+ + Cl- -> AgCl v</chem>(白色)
: <chem>Ag+ + Br- -> AgBr v</chem>(淡黄色)
: <chem>Ag+ + I- -> AgI v</chem>(黄色)
* ハロゲン化銀
フッ化銀 <chem>AgF</chem> 以外は、水に溶けにくい。塩化銀、臭化銀は、アンモニア水、チオ硫酸ナトリウム水溶液、シアン化カリウム水溶液全てに、錯イオンを形成して溶ける。水溶液はいずれも無色。ヨウ化銀はそもそも溶解度が非常に小さく、いずれにも溶けない。(水に対する溶解度 は<math>10^{-8}\, \mathrm{mol/L}</math> 、アンモニア水に対する溶解度も <math>10^{-5} \, \mathrm{mol/L}</math> 程度と、非常に小さい。) また、ハロゲン化銀は、光を当てると、分解して、銀が遊離する。この性質を感光性(かんこうせい)という。カメラ(アナログカメラ)の写真は、この性質を利用している。カメラのフィルムには臭化銀などが感光剤として含まれており、その感光性から写真を撮影することができる。 塩化銀の沈殿にチオ硫酸ナトリウム <chem>Na2S2O3</chem> 水溶液を加えると、ビス(チオスルファト)銀(I)酸イオンを生じ、無色の水溶液となる。
: <chem>AgCl + 2Na2S2O3 -> [Ag(S2O3)2]^3- + 3 Na+ + NaCl</chem>
=== イオン化傾向 ===
銀はイオン化傾向の小さい金属であり、塩酸や希硫酸には溶けない。しかし、熱濃硫酸や硝酸といった酸化力の強い酸には溶けて気体を発生する。
: 熱濃硫酸: <chem>2Ag + 2H2SO4 -> Ag2SO4 + 2H2O + SO2 ^</chem>
: 濃硝酸: <chem>Ag + 2HNO3 -> AgNO3 + H2O + NO2 ^</chem>
: 希硝酸: <chem>3Ag + 4HNO3 -> 3AgNO3 + 2H2O + NO ^</chem>
== 金と白金 ==
=== 金 ===
[[ファイル:Achaemenid_coin_daric_420BC_front.jpg|サムネイル|アケメネス朝ペルシアの金貨。紀元前5世紀ごろ]]
'''金''' Au は金属光沢のある黄橙色の金属である。イオン化傾向が低く、反応性が低いことから単体として天然に存在する。純粋な金は柔らかく、展性・延性は全金属中最大である。密度は 19.3 g/cm<sup>3</sup> で、融点は1064 ℃である。金は通常の酸とは反応しないが、濃塩酸と濃硝酸を3:1で混合した'''王水'''(aqua regia)には溶ける。
王水では、塩酸と硝酸が反応し塩化ニトロシル <chem>NOCl</chem> となって金と反応する。
<chem>HNO3 + 3HCl <=> 2HO + NOCl + Cl2</chem>
<chem>Au + NOCl + Cl2 + HCl <=> H[AuCl4] + NO</chem>
{{multiple image|align=center|direction=horizontal|total_width=760|caption_align=center|image1=Dissolution of gold in aqua regia (I).JPG|alt1=|caption1=初期の状態|image2=Dissolution of gold in aqua regia (II).JPG|alt2=|caption2=中間の状態|image3=Dissolution of gold in aqua regia (III).JPG|alt3=|caption3=最終の状態|header_align=center|header='''王水に溶ける金'''}}
=== 白金 ===
[[ファイル:Platin_1.jpg|代替文=白金|左|サムネイル|152x152ピクセル|白金]]
[[ファイル:Sponsored_lantern_at_temple.jpg|代替文=金の利用|サムネイル|150x150ピクセル|金の利用]]
'''白金''' Pt は金属光沢のある白色の金属である。金と同様イオン化傾向が低く、反応性が低い。
金や白金は多く産出しないため、貴金属(レアメタル)と呼ばれ、古くから硬貨や装飾品などに用いられてきた。しかしこれらは近年工業的に重要な物質となってきている。たとえば金は精密電子部品の配線に用いられ、また白金は化学反応を速める触媒として用いられる。かつて、メートル原器の材質として用いられていた。
白金も金と同様に王水に溶ける。
{{multiple image|align=center|direction=horizontal|total_width=760|caption_align=center|image1=Plaatina reageerimine kuningveega 01.JPG|alt1=|caption1=王水の中にある[[:en:Wikipedia:Commemorative coins of the Soviet Union#Platinum coins|ソビエトの白金記念硬貨]]|image2=Plaatina reageerimine kuningveega 02.JPG|alt2=|caption2=中間の状態|image3=Plaatina reageerimine kuningveega 03.JPG|alt3=|caption3=四日後の状態|header_align=center|header='''王水に溶ける白金'''}}
== 亜鉛 ==
'''亜鉛''' '''Zn''' は周期表12族の元素であり、原子は価電子を2個もち、2価の陽イオンになりやすい。
亜鉛の単体は、銀白色の金属である。 亜鉛は両性元素であり、酸とも塩基とも反応して水素を発生する。たとえば塩酸と水素を発生しながら反応して塩化亜鉛になる。
: <chem>Zn + 2HCl -> ZnCl2 + H2 ^</chem>
また、強塩基の水酸化ナトリウムと反応し、水素を発生してテトラヒドロキソ亜鉛(Ⅱ)酸イオンを生じる。
: <chem>Zn + 2NaOH + 2H2O -> 2Na^+ + [Zn(OH)4]^2- + H2 ^</chem>
[[ファイル:Zinc_oxide.jpg|代替文=酸化亜鉛|サムネイル|200x200ピクセル|酸化亜鉛]]
* 用途
たとえば、一般的な乾電池の負極は亜鉛板でできている。 また、鉄板に亜鉛をメッキした板は'''トタン'''と呼ばれ、屋根やバケツなどに用いられる。
==== 亜鉛の化合物とイオン ====
亜鉛に塩酸を加えると先に見たように、水素を発生しながら溶け、塩化亜鉛 (<chem>ZnCl2</chem>) を生じる。塩化亜鉛は水に溶ける物質で、水溶液中では亜鉛イオン (<chem>Zn^2+</chem>) として存在している。 この亜鉛イオン水溶液に水酸化ナトリウム水溶液またはアンモニア水を少量加えると、水酸化亜鉛 (<chem>Zn(OH)2</chem>) の白色ゼリー状沈殿を生じる。
: <chem>Zn^2+ + 2OH^- -> Zn(OH)2 v</chem>
しかし、これに水酸化ナトリウム水溶液またはアンモニア水を過剰量加えると、沈殿は溶けて無色透明の水溶液となる。水酸化ナトリウム水溶液ではテトラヒドロキソ亜鉛(Ⅱ)酸イオン (<chem>[Zn(OH)4]^2-</chem>) を生じ、アンモニア水ではテトラアンミン亜鉛(Ⅱ)イオン (<chem>[Zn(NH3)4]^2+</chem>) を生じる。
: <chem>Zn(OH)2 + 2NaOH -> 2Na^+ + [Zn(OH)4]^2-</chem>
: <chem>Zn(OH)2 + 4NH3 -> [Zn(NH3)4]^2+ + 2OH^-</chem>
アンモニア水を過剰に加えて弱塩基性とした亜鉛イオン水溶液に硫化水素を通じると、硫化亜鉛 (<chem>ZnS</chem>) の白色沈殿を生じる。
: <chem>Zn^2+ + S^2- -> ZnS v</chem>
=== 酸化亜鉛 ===
酸化亜鉛 <chem>ZnO</chem> は白色の粉末で、水に溶けにくく、白色絵の具の顔料として用いられる。 <chem>ZnO</chem> は両性酸化物であり、塩酸にも水酸化ナトリウムにも溶ける。
: <chem>ZnO + 2HCl -> ZnCl2 + H2O</chem>
: <chem>ZnO + 2NaOH + H2O -> Na2[Zn(OH)4]</chem>
酸化亜鉛は亜鉛華(あえんか)とも呼ばれ、白色顔料などに用いられる。
=== 硫化亜鉛 ===
亜鉛イオン <chem>Zn^2+</chem> を含む水溶液を中性または塩基性にして、硫化水素を通じると、硫化亜鉛 <chem>ZnS</chem> の白色沈殿が生じる。
: <chem>Zn^2+ + S^2- -> ZnS v</chem>
硫化亜鉛は夜光塗料などに用いられる。
== 水銀とカドミウム ==
=== カドミウム ===
'''カドミウム'''(Cd)はニッケルとともにニッケル-カドミウム電池として用いられる。
カドミウムイオンは硫化物イオンと結合して黄色の沈殿である硫化カドミウムを生じる。
: <chem>Cd^2+ + S^2- -> CdS v</chem>
硫化カドミウムは黄色絵の具の顔料として用いられる。
[[ファイル:Cadmium_sulfide.jpg|サムネイル]]
=== 水銀 ===
[[ファイル:Hg_Mercury.jpg|右|サムネイル|200x200ピクセル|水銀]]
'''水銀'''(Hg)は常温常圧で液体として存在する唯一の単体金属<ref>単体金属では、ガリウムの融点が 29.76 ℃ であり、室温でも液体になり得る。常温や室温という語には明確な定義がないものの、一般的には29℃は常温と呼ぶにはやや高いだろう。なお、合金ではガリンスタン(ガリウム、インジウム、錫の合金)が常温で液体となる。</ref>である。水銀は他の金属と合金をつくりやすく、水銀の合金を'''アマルガム'''という。
水銀イオンは硫化物イオンと結合して黒色の沈殿を生じる。
: <chem>Hg^2+ + S^2- -> HgS v</chem>
水銀の原料は、天然には辰砂(しんしゃ、主成分:HgS)などとして産出する。
水銀は、蛍光灯にも用いられる(いわゆる「水銀灯」)。
また、水銀は密度が、他の液体と比べて高く、そのため水銀は圧力計にも用いられた。
カドミウムや水銀などの重金属類は、工業でよく用いられるが、しばしば公害を引き起こした。たとえば水銀の化合物は水俣病の原因物質であり、カドミウムはイタイイタイ病の原因物質である。
== クロムとマンガン ==
=== クロム ===
[[ファイル:Chrom.PNG|右|200x200ピクセル|クロム]]
'''クロム'''(Cr)は空気中でも水中でも常温で安定な金属である。クロムは、銀白色の光沢を持つ。
化合物中での酸化数は、おもに+6または+3を取る。
クロムは、空気中では表面に酸化物の緻密な皮膜ができるので(不動態)、それ以上は酸化されず、安定である。
鉄の表面に施す クロムめっき は、この不動態の性質を利用して、さびを防ぐものである。
クロムは、ステンレス鋼の材料でもある。
=== イオン ===
酸化数が+6のクロムの多原子イオンの主なものに、水溶液の黄色いクロム酸イオン(<chem>CrO4^2-</chem>)がある。この水溶液は黄色であるが、酸を加えて液を酸性にすると、同じく酸化数が+6の二クロム酸イオン(<chem>Cr2O7^2-</chem>)となり、橙色の水溶液となる。
逆に、橙色の二クロム酸イオン水溶液に塩基を加えると、クロム酸イオンの黄色水溶液となる。
{| align="center"
|[[ファイル:Kaliumchromat.jpg|315x315ピクセル|クロム酸カリウム水溶液]]
|[[ファイル:Kaliumdichromat.jpg|318x318ピクセル|二クロム酸カリウム水溶液]]
|- align="center"
|K{{sub|2}}CrO{{sub|4}}(黄色)
|K{{sub|2}}Cr{{sub|2}}O{{sub|7}}(橙色)
|}
クロム酸イオンは、さまざまな金属イオンと反応して沈殿となる。たとえば、クロム酸イオン水溶液に銀イオンを加えると、クロム酸銀の赤褐色沈殿が生成する。
: <chem>CrO4^2- + 2 Ag^+ -> Ag2CrO4 v</chem>
また、クロム酸イオン水溶液に鉛(Ⅱ)イオンやバリウムイオンを加えると、ともに黄色の沈殿を生じる。
: <chem>CrO4^2- + Pb^2+ -> PbCrO4 v</chem>(クロム酸鉛(Ⅱ))
: <chem>CrO4^{2-} {+} Ba^2+ -> BaCrO4 v</chem>(クロム酸バリウム)
* 酸化作用
希硫酸を加えて酸性とした赤橙色の二クロム酸イオン水溶液は強い酸化剤であり、自身は還元されてクロム(Ⅲ)イオン(<chem>Cr^3+</chem>)の緑色水溶液となる。
: <chem>Cr2O7^2- + 14H^+ + 6e^- -> 2Cr^3+ + 7H2O</chem>
=== マンガン ===
[[ファイル:Mangan_1.jpg|右|100x100ピクセル|マンガン]]
'''マンガン'''(Mn)は銀白色の金属である。空気中で簡単に酸化されるので、単体では用いない。合金の材料として、マンガンは利用されることがある。 イオン化傾向が鉄より大きく、また、酸にマンガンは溶ける。
=== 過マンガン酸カリウム ===
過マンガン酸カリウム(<chem>KMnO4</chem>)は酸化剤として有名で、過マンガン酸カリウム水溶液は赤紫色であるが、自身は還元されてマンガン(Ⅱ)イオン(<chem>Mn2+</chem>)の淡桃色水溶液となる。
: <chem>MnO4- + 8 H+ + 5 e- -> Mn^2+ + 4H2O</chem>
この<chem>Mn2+</chem>水溶液にアンモニア水を加えて塩基性とした後、硫化水素を通じると、硫化マンガン(Ⅱ)の淡桃色沈殿を生じる。
: <chem>Mn^2+ + S^2- -> MnS v</chem>
二酸化マンガンから過マンガン酸イオン水溶液を得ることができる。二酸化マンガンに水酸化カリウム水溶液を加えて加熱すると、緑色のマンガン酸イオン水溶液(<chem>MnO4^2-</chem>)となる。これに希硫酸を加えると過マンガン酸イオンの赤紫色水溶液となる。
=== 二酸化マンガン ===
二酸化マンガン <chem>MnO2</chem> は、黒色の粉末をしている。 過酸化水素水の分解を早める触媒として作用する。
: <chem>2H2O2 -> 2H2O + O2</chem> (触媒:<chem>MnO2</chem>)
また、酸化剤でもあり、たとえば塩酸を酸化して塩素とする。
: <chem>4HCl + MnO2 -> MnCl2 + 2H2O + Cl2</chem>
二酸化マンガンは、日常的にもマンガン乾電池で原料の一つとして用いられている。
=== タングステン ===
タングステン W は融点がきわめて高く(融点3400℃)、耐熱性が大きいので、電球のフィラメントなどに用いられる。 金属では、タングステンが、もっとも融点が高い。
また、炭化タングステン WC は、かなり硬い。
== 合金 ==
[[ファイル:Sauce_boat.jpg|右|サムネイル|ステンレス鋼のソースボート(肉汁ボート)]]
[[ファイル:Dewoitine_D.333_Cassiopée_F-ANQB_Algérie_1938.jpg|サムネイル|200x200ピクセル|ジュラルミンが航空機に用いられた例。画像は旅客機 D.333 。フランス国 Dewoitine社。]]
[[ファイル:Jug_Egypt_Louvre_OA7436.jpg|サムネイル|250x250ピクセル|真鍮(黄銅)の水差し。この画像の水差しは14世紀のエジプトで用いられていた。]]
2種類以上の金属を溶融して混合したあとに凝固させたものを'''合金'''(alloy)という。
一般に合金では、元の金属単体よりも硬さが増す。ここでいう「硬い」とは「やわらかくない」「変形しづらい」というような意味であり、必ずしも割れにくいとは限らないので注意。また一般に合金の電気抵抗は、もとの金属よりも合金の電気抵抗が上がる。その仕組みの説明として、合金元素によって結晶配列が乱れるから、というのが定説である。
主要な合金の例を示す。
* 黄銅
: 銅60%~70%と亜鉛10%~40%の合金。
: 銅Cuが60%程度で亜鉛Znが40%程度の黄銅を六四黄銅(ろくよんおうどう)という。銅Cuが70%程度で、亜鉛Znが30%程度の黄銅を七三黄銅(しちさんおうどう)という。
: 合金化により硬くなり、強度が高まる。色は黄色い。[[w:ブラスバンド]]のブラスとは黄銅(brass)のことである。真鍮(しんちゅう)ともいう。
* 青銅
: 銅とスズの合金。
: ブロンズ(bronze)ともいう。亜鉛などが加えられる場合もある。銅とスズのみを主成分とする青銅を、すず青銅という。
: 合金化により硬くなり、強度が高まる。鏡として用いられる場合もある(青銅鏡)。
* 白銅
: 銅80%とニッケル20%の合金。
: 組成中のNiの増加とともに、色が銅の赤色からニッケルの白色に変わっていく。
: 腐食しづらく耐食性が良い。日本の貨幣の50円硬貨100円硬貨の材料。
* 洋銀
: 組成:Cuに,Ni=5%~30%,Zn=5%~30%
: ニッケルシルバともいう。
* ステンレス鋼
: 組成:Fe=70%,Cr=20%,Ni=10%
: 鉄にクロムとニッケルなどを混ぜたもの。錆びにくい。
* ジュラルミン
: 組成:Al 95 %,Cu,Mg,Mn
: 軽くて強度が大きいので航空機材料や自動車材料などに用いられる。
* はんだ
: 鉛とスズの合金。融点が低い。はんだは電気回路部品の接合などに用いられたが、鉛の有害性が指摘され、最近では無鉛はんだが用いられる。
* ニクロム
: ニッケル60%~80%とクロム20%の合金。ニッケルとクロムだからニクロムという。
: 電気抵抗が大きい。電気抵抗材料に用いられるニクロム線の材料である。
=== ブリキとトタン ===
[[ファイル:Fe_corrosion.svg|サムネイル]]
酸素や水と接触した金属は表面で酸化還元反応を起こし、金属がイオン化し脱落する。この反応を腐食という。イオン化した金属が酸化物や水酸化物となって表面に堆積したものを錆という。
鋼板にスズをメッキしたものを'''ブリキ'''、亜鉛をメッキしたものを'''トタン'''という。イオン化傾向が <chem>Zn > Fe > Sn</chem> のため、ブリキはスズが鉄の腐食を防いでいる。しかし、メッキが傷つき鉄が露出した箇所に水がつくと、イオン傾向の大きい鉄がスズよりもイオン化しやすいため、鉄が腐食しやすい。トタンは、亜鉛が鉄より腐食しやすいが、鉄が露出した箇所があってもイオン化傾向の大きい亜鉛が鉄よりイオン化しやすいため、内部の鉄の腐食が防がれる。
つまり、傷がなく鉄が露出していない場合はブリキの方が錆びにくいが、傷がついた場合はトタンの方が錆びにくい。このため、ブリキは缶詰や金属玩具などに用いられ、トタンは屋根やバケツなどに用いられる。
=== その他の合金 ===
'''水素吸蔵合金'''
ランタン-ニッケル合金やチタン-鉄合金などは、常温で合金の結晶間に水素を吸蔵する性質を持つ。加熱などによって水素を放出することができる。これらの合金は、自身の体積の1000倍以上の水素を吸蔵できるものもある。
ランタン-ニッケル合金を使用したニッケル水素電池は実用化されており、ハイブリッド自動車で使用されている。今後は水素自動車や燃料電池自動車の燃料タンクとしても期待され、さらに開発が進められている。チタン-鉄合金系の水素吸蔵合金も存在する。
'''形状記憶合金'''
チタンとニッケルの合金には、特定の高温で成形した形状を記憶し、常温で変形しても加熱することで元の形に戻る特性を持つものがある。これを形状記憶合金(shape memory alloy)という。眼鏡フレームなどで利用されている。
'''超伝導合金'''
ある物質は、非常に低温(絶対零度に近い温度)で電気抵抗がゼロになる。この現象を利用した超伝導合金として、スズとニオブの合金が代表例である。超伝導合金は、強い電磁石を作る際や医療用MRI(磁力を利用して人体の断層写真を撮影する装置)などに使用されている。
スズ-ニオブ系のほかにも、さまざまな超伝導合金が知られている。
'''アモルファス合金'''
アモルファス合金は、結晶構造を持たない非晶質の合金である。製法としては、高温状態で柔らかくなった金属を急冷することで、原子が通常の結晶構造での位置に配置される前に固化する。このため、結晶構造を持たず、異なる特性を示すことが多い。
アモルファス合金は、磁気記録用ヘッドなどに利用されており、鉄系のアモルファス合金は耐腐食性が必要な環境で使われることがある。ただし、高温で加工すると結晶化してしまうため、高温での加工ができないという短所がある。
[[カテゴリ:高等学校化学|てつ]]
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264394
264393
2024-11-27T14:57:34Z
Nermer314
62933
[[高校化学 亜鉛]]と統合
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wikitext
text/x-wiki
{{pathnav|高等学校の学習|高等学校理科|高等学校 化学|frame=1|small=1}}[[File:Eisen 1.jpg|100px|鉄|代替文=鉄|サムネイル]]
== 鉄 ==
=== 性質 ===
'''鉄'''(Fe)の単体は灰白色で比較的やわらかい。また、合金にして、鉄道のレール、流し台や窓枠のステンレス鋼、建築材の鉄骨など、さまざまなものに鉄が用いられている。
鉄は磁石に引き寄せられる。[[File:Castingiron.jpg|100px|鉄製品の鋳|代替文=鉄製品の鋳造|サムネイル]]
=== 製法 ===
鉄鉱石からの鉄の精錬では、赤鉄鉱 <chem>Fe2O3</chem> や磁鉄鉱 <chem>Fe3O4</chem> などの鉄鉱石を溶鉱炉で溶かし、コークス <chem>C</chem> 、石灰石 <chem>CaCO3</chem> を加えて発生する一酸化炭素 <chem>CO</chem> で還元して、鉄をつくる。
[[ファイル:Hochofenprozess.PNG|サムネイル|477x477ピクセル|高炉プロセスの概略図。Trocken -und Vorwärmzone:乾燥および予熱Reductionzone :還元の領域 。 Kohlungzone :浸炭の領域
Schmelzzone :融解の領域 。 Roheisen :銑鉄schlacke :スラグ
Erz :鉱石 。 koks :コークス 。 zuschläge :追加物Gichtgas :高炉ガス
]]
: <chem>CO</chem> の生成: <chem>C + O2 -> CO2</chem>
: <chem>CO2 + C -> 2CO</chem>
鉄鉱石は段階的に次のように還元される。
<math>\mathrm{ Fe_2O_3 \rightarrow Fe_3O_4 \rightarrow FeO \rightarrow Fe } </math>
それぞれの反応式は
[450℃] <chem>3Fe2O3 + CO -> 2Fe3O4 + CO2</chem>
[800℃] <chem>Fe3O4 + CO -> 3FeO + CO2</chem>
[1200℃] <chem>FeO + CO -> Fe + CO2</chem>
全体での反応は次の反応式で表される。
<chem>Fe2O3 + 3CO -> 2Fe + 3CO2 </chem>
また、不純物を取り除くため'''石灰石''' CaCO<sub>3</sub> を加える。石灰石によりシリカSiO<sub>2</sub>やアルミナAl<sub>2</sub>O<sub>3</sub>などの脈石(岩石を構成する成分のこと。)が分離される。 このようにして高炉で得られた鉄を'''銑鉄'''(せんてつ、pig iron)という。
なお、高炉の内側の耐火性のレンガにより、高炉は高温に耐えられるようになっている。
石灰石は、鉱石中のケイ酸塩と反応し'''スラグ''' CaSiO<sub>3</sub> を形成する。スラグは密度が銑鉄より軽いため、スラグは銑鉄に浮かぶ。スラグはセメントの原料になるため、スラグは廃棄せず分離して回収する。
また、炭素や石灰石の添加は、融点を下げる役割も有る。凝固点降下と同じ原理である。一般に混合物は融点が下がる。
銑鉄は炭素を質量比4%ほど含む。鉄中の炭素が多いと、粘りが無くなり、衝撃などに対して脆く、硬いが割れやすくなる。 このような鉄は、割れやすいが混合物のため融点が低く、また流動性も良いため鋳造に用いられる。そのため、炭素含有量の多い鉄は鋳鉄(ちゅうてつ) と呼ばれる。
鋳鉄は割れやすいため、建築材などには不便である。 丈夫な鉄を得るには銑鉄の炭素量を適量に減らす必要があり、転炉で酸素を加えて燃焼させて取り除く。転炉には、酸素吹き込み転炉などを用いる。この酸素吹き込みの酸化熱が、鉄を溶かし続ける熱源に使える。
炭素を0.02%~2%ほど含む鉄を'''鋼'''(こう、steel)という。
建築材などの構造材に用いられるのは、十分な硬さと強さをもたせた鋼である。
:
添加物のため融点は下がり、およそ1400℃で融解し、溶鉱炉の底に溶けた鉄がたまる。 なお、1200℃での反応の式について、温度が高くなりすぎると、逆方向に反応が進んでしまいCO<sub>2</sub>によるFeの酸化が起きるので、1200℃程度を保つ必要がある。
鉄の化学的性質として、鉄の単体および銑鉄や鋳鉄は、湿った空気中で酸化されやすく、さびやすい。 さびを防ぐため、合金として、鋼にクロム Cr やニッケル Ni などを混ぜた合金が'''ステンレス鋼'''である。このステンレス鋼は化学的な耐食性が高く、さびにくいため、建築材や台所部材として用いられる。
=== 鉄の化学的性質 ===
純度の高い鉄(てつ)の単体は、灰白色であり、比較的やわらかい。
鉄には酸化数+2または酸化数+3の化合物がある。
鉄の酸化物には、黒色の酸化鉄(II) FeO 、赤褐色の酸化鉄(III)Fe<sub>2</sub>O<sub>3</sub> 、黒色の四酸化三鉄 Fe<sub>3</sub>O<sub>4</sub> などがある。
鉄は、湿った空気中で酸化されやすい、よって鉄は、さびやすい。 鉄の赤さびは、 酸化鉄(III)Fe<sub>2</sub>O<sub>3</sub> である。
鉄は希硫酸に加えると、水素を発生して溶け、淡緑色の溶液になる。この水溶液から水を蒸発させて濃縮すると、硫酸鉄(II)七水和物FeSO<sub>4</sub>・7H<sub>2</sub>Oが得られる。
いっぽう、濃硝酸では、不動態となり、鉄の表面に皮膜ができて、それ以上は反応が進行しない。
=== 強磁性体 ===
鉄 Fe 、ニッケル Ni 、コバルト Co は、単体で磁性を帯びることができる金属である。
一方、銅やアルミニウムは、磁化されない。
鉄、ニッケル、コバルトのように、磁石になることができる物質を'''強磁性体'''という。
銅の特徴として、銅は電気の伝導性が良く、また熱の伝導性も良い。なお、一般に純金属の熱伝導性と電気伝導性は比例する。このため、自由電子が、その金属内で熱を伝える作用があるという説が、定説である。
=== 化学的な性質 ===
鉄は、酸に溶けて、水素を生じる。
: Fe + 2HCl → FeCl{{sub|2}} + H{{sub|2}}↑
ただし、濃硝酸では、表面に皮膜ができる不動態となり、それ以上は反応が進行しない。
=== 鉄イオンの水溶液 ===
鉄イオンは陽イオンであるが2価と3価のものがある。価数により異なる性質をもつ。
=== 鉄(Ⅱ)イオン ===
鉄(Ⅱ)イオン(Fe{{sup|2+}})は淡緑色をしている。アンモニア水や水酸化ナトリウム水溶液のような塩基と反応して水酸化鉄(Ⅱ)の緑白色沈殿を生じる。
: Fe{{sup|2+}} + 2OH{{sup|-}} → Fe(OH){{sub|2}}↓
この沈殿は空気中で酸化されて水酸化鉄(Ⅲ)になる。
: 4Fe(OH){{sub|2}} + O{{sub|2}} + 2H{{sub|2}}O → 4Fe(OH){{sub|3}}
硫化水素とは塩基性条件下で反応して、硫化鉄(Ⅱ)の黒色沈殿を生じる。酸性条件下では反応しない。
: Fe{{sup|2+}} + S{{sup|2-}} → FeS↓
酸化剤である過酸化水素水を加えると、イオンが酸化されてFe{{sup|3+}}となり、黄褐色の水溶液となる。
* ヘキサシアノ鉄(Ⅲ)酸カリウム水溶液(K{{sub|3}}[Fe(CN){{sub|6}}])をFe{{sup|2+}}水溶液に加えると、'''ターンブル青'''と呼ばれる濃青色の沈殿を生じる。一方、Fe{{sup|3+}}水溶液に加えると暗褐色の水溶液となる。
このヘキサシアノ鉄(Ⅲ)酸カリウム水溶液の反応は、鉄イオンの検出に用いられる。
=== 鉄(Ⅲ)イオン ===
一方、鉄(Ⅲ)イオン(Fe{{sup|3+}})は黄褐色をしている。アンモニア水や水酸化ナトリウム水溶液のような塩基と反応して水酸化鉄(Ⅲ)の赤褐色沈殿を生じる。
: Fe{{sup|3+}} + 3OH{{sup|-}} → Fe(OH){{sub|3}}↓
硫化水素とは塩基性条件下で反応して、一度イオンを還元してFe{{sup|2+}}とした後、硫化鉄(Ⅱ)の黒色沈殿を生じる。酸性条件下ではイオンを還元してFe{{sup|2+}}とするのみで、沈殿を生じない。
: Fe{{sup|2+}} + S{{sup|2-}} → FeS↓
鉄(Ⅲ)イオンの塩として、塩化鉄(Ⅲ)六水和物(FeCl{{sub|3}}・6H{{sub|2}}O)がある。黄褐色の固体であるが、潮解性がある。
[[File:Chlorid železitý.JPG|center|200px|塩化鉄(Ⅲ)六水和物の潮解|代替文=塩化鉄(Ⅲ)六水和物の潮解|サムネイル]]
鉄イオンは上記の他にも次のような反応をする。これらは、鉄イオンの検出・分離に有用である。
[[File:Eisen(III)-Ionen und Thiocyanat.JPG|150px|鉄(Ⅲ)イオン水溶液(左)にチオシアン酸カリウム水溶液を加える(右)|代替文=鉄(Ⅲ)イオン水溶液(左)にチオシアン酸カリウム水溶液を加える(右)|サムネイル]]
* チオシアン酸カリウム水溶液(KSCN)をFe{{sup|3+}}水溶液に加えると、血赤色の水溶液となる。なお、Fe{{sup|2+}}水溶液とは反応しない。
*: Fe{{sup|3+}} + SCN{{sup|-}} → [FeSCN]{{sup|2+}}
* ヘキサシアノ鉄(Ⅱ)酸カリウム水溶液(K{{sub|4}}[Fe(CN){{sub|6}}])をFe{{sup|3+}}水溶液に加えると、'''ベルリン青'''と呼ばれる濃青色の沈殿を生じる。
これらのチオシアン酸カリウム水溶液(KSCN)やヘキサシアノ鉄(Ⅲ)酸カリウム水溶液の反応は、鉄イオンの検出に用いられる。
[[File:Eisen(II),(III).JPG|center|250px|左から、鉄(Ⅱ)イオン、ターンブルブルー、鉄(Ⅲ)イオン、ベルリンブルー|代替文=左から、鉄(Ⅱ)イオン、ターンブルブルー、鉄(Ⅲ)イオン、ベルリンブルー|サムネイル]]
なお、ベルリン青とターンブル青は、色調は異なるが、同一の化合物である。
== 銅 ==
[[ファイル:Cu,29.jpg|代替文=|サムネイル|200x200ピクセル|銅]]
'''銅'''(Cu)は赤色の金属光沢をもつ金属である。展性・延性に富み、電気伝導性・熱伝導性が大きいことから、電線、調理器具、装飾品等、幅広く用いられている。
[[ファイル:StatueOfLiberty01.jpg|代替文=緑青に覆われた自由の女神|サムネイル|220x220ピクセル|緑青に覆われた自由の女神]]
銅は空気中で風雨にさらされると'''緑青'''(ろくしょう)と呼ばれる青緑色のさびを生じる。たとえば名古屋城の屋根や、アメリカの自由の女神などは緑色をしているが、これは緑青によるものである。
: <chem>2Cu + CO2 + H2O + O2 -> CuCO3*Cu(OH)2</chem>
日本では、昭和後期まで、緑青は毒性が強いと考えられていた。しかし、動物実験による検証で、毒性はほとんど無いことが分かった。
=== 製法 ===
銅の鉱産資源は、化合してない単体が産出することもあるが、ほとんどは黄銅鉱(<chem>CuFeS2</chem>)などの鉱石として産出する。 銅の鉱石を加熱してニッケルや金などの不純物を含む粗銅(そどう)を作り、これを電解精錬することにより純度の高い銅(99.97%程度)が得られる。電気精錬では、硫酸銅(Ⅱ)水溶液を電解液として、陽極には粗銅板を、陰極は純銅版として電気分解をすると、陽極の粗銅が溶解して銅(Ⅱ)イオンを生じ、陰極には銅が析出する。
: '''陽極''': <chem>Cu -> {Cu^{2+}} + 2e-</chem>
: '''陰極''': <chem>{Cu^{2+}} + 2{e^-} -> Cu</chem>
陽極の下には溶液に解けなかった金や銀などの不純物がたまる。これを陽極泥という。
=== 銅の精錬 ===
銅の精錬には、まず、黄銅鉱など銅鉱石を溶鉱炉で溶かす。溶鉱炉にはコークスCおよびケイ砂SiO<sub>2</sub>を加える。
: <math>\mathrm{ 2CuFeS_2 + 4O_2 + 2SiO_2 \rightarrow Cu_2S + FeSiO_3 + 3SO_2 }</math>
硫化銅Cu<sub>2</sub>Sは「かわ」とよばれる。この硫化銅は炉の下層に沈む。FeSiO<sub>3</sub> は上層に分離する。溶鉱で発生したFeSiO3<sub>3</sub>は「からみ」という。なおFeSiO<sub>3</sub> の式をFeOSiO<sub>2</sub>と書く場合もある。
この硫化銅を転炉で空気を吹き込むと、銅が遊離する。
: <math>\mathrm{ Cu_2S + O_2 \rightarrow 2Cu + SO_2 } </math>
こうして転炉で作った銅を'''粗銅'''(そどう)という。粗銅の純度は98.5%程度である。
=== 化学的な性質 ===
銅は塩素と激しく反応して、塩化銅(Ⅱ)を生じる。
: <chem>Cu + Cl2 -> CuCl2</chem>
銅はイオン化傾向が小さく、希硫酸や塩酸には溶けない。しかし、硝酸や熱濃硫酸(濃硫酸に加え加熱したもの)といった酸化力の強い酸には溶けて、銅(Ⅱ)イオンを生じる。
: '''希硝酸''': <chem>3Cu + 8HNO3 -> 3Cu(NO3)2 + 4H2O + 2NO ^</chem>
: '''濃硝酸''': <chem>Cu + 4HNO3 -> Cu(NO3)2 + 2H2O + 2NO2 ^</chem>
: '''熱濃硫酸''': <chem>Cu + 2H2SO4 -> CuSO4 + 2H2O + SO2 ^</chem>
=== 水溶液の性質 ===
[[ファイル:CopperSulphate.JPG|代替文=銅(Ⅱ)イオン水溶液|サムネイル|銅(Ⅱ)イオン水溶液]]
銅(Ⅱ)イオン(<chem>Cu^{2+}</chem>)水溶液は青色をしている。これに水酸化ナトリウム水溶液、またはアンモニア水を少量加えると、水酸化銅(Ⅱ)(<chem>Cu(OH)2</chem>)の青白色沈殿を生じる。
: <chem>{Cu^{2+}} + 2OH^- -> Cu(OH)2 v</chem>
これに、さらにアンモニア水を過剰に加えると、テトラアンミン銅(Ⅱ)イオン <chem>[Cu(NH3)4]^{2+}</chem> を生じて溶け、深青色の水溶液となる。
: <chem>Cu(OH)2 + 4NH3 -> {[Cu(NH3)4]^{2+}} + 2OH-</chem>
=== 酸化物 ===
水酸化銅(Ⅱ)を加熱すると、黒色の酸化銅(Ⅱ)(<chem>CuO</chem>)を生じる。
: <chem>Cu(OH)2 -> CuO + H2O</chem>
酸化銅(Ⅱ)は黒色であるが、高温で加熱すると赤色の酸化銅(Ⅰ)(<chem>Cu2O</chem>)となる。
{| align="center" style="border:solid #aaffaa 1px; text-align:center;"
|[[ファイル:CopperIIoxide.jpg|192x192ピクセル|酸化銅(Ⅱ)]]
|[[ファイル:CopperIoxide.jpg|251x251ピクセル|酸化銅(Ⅰ)]]
|-
|酸化銅(Ⅱ)
|酸化銅(Ⅰ)
|}
=== 硫化物 ===
銅(Ⅱ)イオン水溶液に硫化水素 <chem>H2S</chem> を通じると、硫化銅(Ⅱ) <chem>CuS</chem> の黒色沈殿を生じる。
: <chem>{Cu^2+} + H2S -> 2 {H+} + {CuS} v</chem>
[[ファイル:Copper_sulfate.jpg|代替文=硫酸銅(Ⅱ)五水和物|サムネイル|102x102ピクセル|硫酸銅(Ⅱ)五水和物]]
銅と硫酸の化合物である硫酸銅(Ⅱ)五水和物(<chem>CuSO4*5H2O</chem>)は青色の結晶である。水に溶かすと青色の水溶液となる。これを加熱すると白色の硫酸銅(Ⅱ)無水物 <chem>CuSO4</chem> の粉末となるが、水を加えると再び青色となる。この反応は水の検出に用いられる。
[[ファイル:Hydrating-copper(II)-sulfate.jpg|代替文=水の検出|中央|サムネイル|250x250ピクセル|水の検出]]
=== 銅の合金 ===
銅は、さまざまな合金の原料である。
: 黄銅(おうどう、ブラス)とは、銅と亜鉛との合金である。
: 青銅(せいどう、ブロンズ)とは、銅とスズとの合金である。
: 白銅(はくどう)とは、銅とニッケルとの合金である。
: 洋銀とは、銅と亜鉛とニッケルの合金である。
{| align="center" style="border:solid #aaffaa 1px; text-align:center;"
|[[ファイル:Trombone_CG_Bach42AG.jpg|200x200ピクセル|黄銅]]
|[[ファイル:Baltesspannarna_Gbg_-_J_P_Molin.jpg|200x200ピクセル|青銅]]
|[[ファイル:100JPY.JPG|300x300ピクセル|白銅]]
|-
|黄銅(金管楽器)
|青銅(ブロンズ像)
|白銅(100円玉)
|}
: 十円硬貨は銅に、亜鉛3%と錫2%を含む青銅である。
: 五円硬貨は黄銅である。五円硬貨の質量は 3.75 g であり、これは一{{Ruby|匁|もんめ}}に等しい。
: 五百円硬貨には洋銀が使われている。
== 銀 ==
銀 '''Ag''' は白色の金属光沢をもつ金属である。すべての金属の中で、熱伝導性と電気伝導性が最も高い。
銀イオンの水溶液は無色であるが、水酸化ナトリウム水溶液、または少量のアンモニア水を加えると、酸化銀(I) <chem>Ag2O</chem> の褐色沈殿を生じる。
: <chem>2Ag+ + 2OH- -> Ag2O v + H2O</chem>
この沈殿に、さらに過剰のアンモニア水を加えると、沈殿が溶けてジアンミン銀(I)イオン <chem>[Ag(NH3)2]+</chem> を生じ、無色の水溶液となる。
: <chem>Ag2O + 4NH3 + H2O -> 2[Ag(NH3)2]+ + 2OH-</chem>
銀イオン水溶液にクロム酸水溶液を加えると、クロム酸銀の赤褐色沈殿を生じる。
: <chem>{2Ag+} + CrO4^{2-} -> Ag2CrO4 v</chem>
銀イオン水溶液に硫化水素を通じると、硫化銀の黒色沈殿を生じる。
: <chem>2Ag+ + H2S -> Ag2S v + 2H+</chem>
* ハロゲン化物イオンとの反応
銀イオン水溶液に塩酸<chem>HCl</chem>を加えると、塩化銀の白色沈殿を生じる。塩酸に限らず、ハロゲン化水素の水溶液を加えると、ハロゲン化銀の沈殿を生じる。
: <chem>Ag+ + Cl- -> AgCl v</chem>(白色)
: <chem>Ag+ + Br- -> AgBr v</chem>(淡黄色)
: <chem>Ag+ + I- -> AgI v</chem>(黄色)
* ハロゲン化銀
フッ化銀 <chem>AgF</chem> 以外は、水に溶けにくい。塩化銀、臭化銀は、アンモニア水、チオ硫酸ナトリウム水溶液、シアン化カリウム水溶液全てに、錯イオンを形成して溶ける。水溶液はいずれも無色。ヨウ化銀はそもそも溶解度が非常に小さく、いずれにも溶けない。(水に対する溶解度 は<math>10^{-8}\, \mathrm{mol/L}</math> 、アンモニア水に対する溶解度も <math>10^{-5} \, \mathrm{mol/L}</math> 程度と、非常に小さい。) また、ハロゲン化銀は、光を当てると、分解して、銀が遊離する。この性質を感光性(かんこうせい)という。カメラ(アナログカメラ)の写真は、この性質を利用している。カメラのフィルムには臭化銀などが感光剤として含まれており、その感光性から写真を撮影することができる。 塩化銀の沈殿にチオ硫酸ナトリウム <chem>Na2S2O3</chem> 水溶液を加えると、ビス(チオスルファト)銀(I)酸イオンを生じ、無色の水溶液となる。
: <chem>AgCl + 2Na2S2O3 -> [Ag(S2O3)2]^3- + 3 Na+ + NaCl</chem>
=== イオン化傾向 ===
銀はイオン化傾向の小さい金属であり、塩酸や希硫酸には溶けない。しかし、熱濃硫酸や硝酸といった酸化力の強い酸には溶けて気体を発生する。
: 熱濃硫酸: <chem>2Ag + 2H2SO4 -> Ag2SO4 + 2H2O + SO2 ^</chem>
: 濃硝酸: <chem>Ag + 2HNO3 -> AgNO3 + H2O + NO2 ^</chem>
: 希硝酸: <chem>3Ag + 4HNO3 -> 3AgNO3 + 2H2O + NO ^</chem>
== 金と白金 ==
=== 金 ===
[[ファイル:Achaemenid_coin_daric_420BC_front.jpg|サムネイル|アケメネス朝ペルシアの金貨。紀元前5世紀ごろ]]
'''金''' Au は金属光沢のある黄橙色の金属である。イオン化傾向が低く、反応性が低いことから単体として天然に存在する。純粋な金は柔らかく、展性・延性は全金属中最大である。密度は 19.3 g/cm<sup>3</sup> で、融点は1064 ℃である。金は通常の酸とは反応しないが、濃塩酸と濃硝酸を3:1で混合した'''王水'''(aqua regia)には溶ける。
王水では、塩酸と硝酸が反応し塩化ニトロシル <chem>NOCl</chem> となって金と反応する。
<chem>HNO3 + 3HCl <=> 2HO + NOCl + Cl2</chem>
<chem>Au + NOCl + Cl2 + HCl <=> H[AuCl4] + NO</chem>
{{multiple image|align=center|direction=horizontal|total_width=760|caption_align=center|image1=Dissolution of gold in aqua regia (I).JPG|alt1=|caption1=初期の状態|image2=Dissolution of gold in aqua regia (II).JPG|alt2=|caption2=中間の状態|image3=Dissolution of gold in aqua regia (III).JPG|alt3=|caption3=最終の状態|header_align=center|header='''王水に溶ける金'''}}
=== 白金 ===
[[ファイル:Platin_1.jpg|代替文=白金|左|サムネイル|152x152ピクセル|白金]]
[[ファイル:Sponsored_lantern_at_temple.jpg|代替文=金の利用|サムネイル|150x150ピクセル|金の利用]]
'''白金''' Pt は金属光沢のある白色の金属である。金と同様イオン化傾向が低く、反応性が低い。
金や白金は多く産出しないため、貴金属(レアメタル)と呼ばれ、古くから硬貨や装飾品などに用いられてきた。しかしこれらは近年工業的に重要な物質となってきている。たとえば金は精密電子部品の配線に用いられ、また白金は化学反応を速める触媒として用いられる。かつて、メートル原器の材質として用いられていた。
白金も金と同様に王水に溶ける。
{{multiple image|align=center|direction=horizontal|total_width=760|caption_align=center|image1=Plaatina reageerimine kuningveega 01.JPG|alt1=|caption1=王水の中にある[[:en:Wikipedia:Commemorative coins of the Soviet Union#Platinum coins|ソビエトの白金記念硬貨]]|image2=Plaatina reageerimine kuningveega 02.JPG|alt2=|caption2=中間の状態|image3=Plaatina reageerimine kuningveega 03.JPG|alt3=|caption3=四日後の状態|header_align=center|header='''王水に溶ける白金'''}}
== 亜鉛 ==
'''亜鉛''' '''Zn''' は周期表12族の元素であり、原子は価電子を2個もち、2価の陽イオンになりやすい。
亜鉛の単体は、銀白色の金属である。 亜鉛は両性元素であり、酸とも塩基とも反応して水素を発生する。たとえば塩酸と水素を発生しながら反応して塩化亜鉛になる。
: <chem>Zn + 2HCl -> ZnCl2 + H2 ^</chem>
また、強塩基の水酸化ナトリウムと反応し、水素を発生してテトラヒドロキソ亜鉛(Ⅱ)酸イオンを生じる。
: <chem>Zn + 2NaOH + 2H2O -> 2Na^+ + [Zn(OH)4]^2- + H2 ^</chem>
[[ファイル:Zinc_oxide.jpg|代替文=酸化亜鉛|サムネイル|200x200ピクセル|酸化亜鉛]]
* 用途
たとえば、一般的な乾電池の負極は亜鉛板でできている。 また、鉄板に亜鉛をメッキした板は'''トタン'''と呼ばれ、屋根やバケツなどに用いられる。
==== 亜鉛の化合物とイオン ====
亜鉛に塩酸を加えると先に見たように、水素を発生しながら溶け、塩化亜鉛 (<chem>ZnCl2</chem>) を生じる。塩化亜鉛は水に溶ける物質で、水溶液中では亜鉛イオン (<chem>Zn^2+</chem>) として存在している。 この亜鉛イオン水溶液に水酸化ナトリウム水溶液またはアンモニア水を少量加えると、水酸化亜鉛 (<chem>Zn(OH)2</chem>) の白色ゼリー状沈殿を生じる。
: <chem>Zn^2+ + 2OH^- -> Zn(OH)2 v</chem>
しかし、これに水酸化ナトリウム水溶液またはアンモニア水を過剰量加えると、沈殿は溶けて無色透明の水溶液となる。水酸化ナトリウム水溶液ではテトラヒドロキソ亜鉛(Ⅱ)酸イオン (<chem>[Zn(OH)4]^2-</chem>) を生じ、アンモニア水ではテトラアンミン亜鉛(Ⅱ)イオン (<chem>[Zn(NH3)4]^2+</chem>) を生じる。
: <chem>Zn(OH)2 + 2NaOH -> 2Na^+ + [Zn(OH)4]^2-</chem>
: <chem>Zn(OH)2 + 4NH3 -> [Zn(NH3)4]^2+ + 2OH^-</chem>
アンモニア水を過剰に加えて弱塩基性とした亜鉛イオン水溶液に硫化水素を通じると、硫化亜鉛 (<chem>ZnS</chem>) の白色沈殿を生じる。
: <chem>Zn^2+ + S^2- -> ZnS v</chem>
=== 酸化亜鉛 ===
酸化亜鉛 <chem>ZnO</chem> は白色の粉末で、水に溶けにくく、白色絵の具の顔料として用いられる。 <chem>ZnO</chem> は両性酸化物であり、塩酸にも水酸化ナトリウムにも溶ける。
: <chem>ZnO + 2HCl -> ZnCl2 + H2O</chem>
: <chem>ZnO + 2NaOH + H2O -> Na2[Zn(OH)4]</chem>
酸化亜鉛は亜鉛華(あえんか)とも呼ばれ、白色顔料などに用いられる。
=== 硫化亜鉛 ===
亜鉛イオン <chem>Zn^2+</chem> を含む水溶液を中性または塩基性にして、硫化水素を通じると、硫化亜鉛 <chem>ZnS</chem> の白色沈殿が生じる。
: <chem>Zn^2+ + S^2- -> ZnS v</chem>
硫化亜鉛は夜光塗料などに用いられる。
== 水銀とカドミウム ==
=== カドミウム ===
'''カドミウム'''(Cd)はニッケルとともにニッケル-カドミウム電池として用いられる。
カドミウムイオンは硫化物イオンと結合して黄色の沈殿である硫化カドミウムを生じる。
: <chem>Cd^2+ + S^2- -> CdS v</chem>
硫化カドミウムは黄色絵の具の顔料として用いられる。
[[ファイル:Cadmium_sulfide.jpg|サムネイル]]
=== 水銀 ===
[[ファイル:Hg_Mercury.jpg|右|サムネイル|200x200ピクセル|水銀]]
'''水銀'''(Hg)は常温常圧で液体として存在する唯一の単体金属<ref>単体金属では、ガリウムの融点が 29.76 ℃ であり、室温でも液体になり得る。常温や室温という語には明確な定義がないものの、一般的には29℃は常温と呼ぶにはやや高いだろう。なお、合金ではガリンスタン(ガリウム、インジウム、錫の合金)が常温で液体となる。</ref>である。水銀は他の金属と合金をつくりやすく、水銀の合金を'''アマルガム'''という。
水銀イオンは硫化物イオンと結合して黒色の沈殿を生じる。
: <chem>Hg^2+ + S^2- -> HgS v</chem>
水銀の原料は、天然には辰砂(しんしゃ、主成分:HgS)などとして産出する。
水銀は、蛍光灯にも用いられる(いわゆる「水銀灯」)。
また、水銀は密度が、他の液体と比べて高く、そのため水銀は圧力計にも用いられた。
カドミウムや水銀などの重金属類は、工業でよく用いられるが、しばしば公害を引き起こした。たとえば水銀の化合物は水俣病の原因物質であり、カドミウムはイタイイタイ病の原因物質である。
== クロムとマンガン ==
=== クロム ===
[[ファイル:Chrom.PNG|右|200x200ピクセル|クロム]]
'''クロム'''(Cr)は空気中でも水中でも常温で安定な金属である。クロムは、銀白色の光沢を持つ。
化合物中での酸化数は、おもに+6または+3を取る。
クロムは、空気中では表面に酸化物の緻密な皮膜ができるので(不動態)、それ以上は酸化されず、安定である。
鉄の表面に施す クロムめっき は、この不動態の性質を利用して、さびを防ぐものである。
クロムは、ステンレス鋼の材料でもある。
=== イオン ===
酸化数が+6のクロムの多原子イオンの主なものに、水溶液の黄色いクロム酸イオン(<chem>CrO4^2-</chem>)がある。この水溶液は黄色であるが、酸を加えて液を酸性にすると、同じく酸化数が+6の二クロム酸イオン(<chem>Cr2O7^2-</chem>)となり、橙色の水溶液となる。
逆に、橙色の二クロム酸イオン水溶液に塩基を加えると、クロム酸イオンの黄色水溶液となる。
{| align="center"
|[[ファイル:Kaliumchromat.jpg|315x315ピクセル|クロム酸カリウム水溶液]]
|[[ファイル:Kaliumdichromat.jpg|318x318ピクセル|二クロム酸カリウム水溶液]]
|- align="center"
|K{{sub|2}}CrO{{sub|4}}(黄色)
|K{{sub|2}}Cr{{sub|2}}O{{sub|7}}(橙色)
|}
クロム酸イオンは、さまざまな金属イオンと反応して沈殿となる。たとえば、クロム酸イオン水溶液に銀イオンを加えると、クロム酸銀の赤褐色沈殿が生成する。
: <chem>CrO4^2- + 2 Ag^+ -> Ag2CrO4 v</chem>
また、クロム酸イオン水溶液に鉛(Ⅱ)イオンやバリウムイオンを加えると、ともに黄色の沈殿を生じる。
: <chem>CrO4^2- + Pb^2+ -> PbCrO4 v</chem>(クロム酸鉛(Ⅱ))
: <chem>CrO4^{2-} {+} Ba^2+ -> BaCrO4 v</chem>(クロム酸バリウム)
* 酸化作用
希硫酸を加えて酸性とした赤橙色の二クロム酸イオン水溶液は強い酸化剤であり、自身は還元されてクロム(Ⅲ)イオン(<chem>Cr^3+</chem>)の緑色水溶液となる。
: <chem>Cr2O7^2- + 14H^+ + 6e^- -> 2Cr^3+ + 7H2O</chem>
=== マンガン ===
[[ファイル:Mangan_1.jpg|右|100x100ピクセル|マンガン]]
'''マンガン'''(Mn)は銀白色の金属である。空気中で簡単に酸化されるので、単体では用いない。合金の材料として、マンガンは利用されることがある。 イオン化傾向が鉄より大きく、また、酸にマンガンは溶ける。
=== 過マンガン酸カリウム ===
過マンガン酸カリウム(<chem>KMnO4</chem>)は酸化剤として有名で、過マンガン酸カリウム水溶液は赤紫色であるが、自身は還元されてマンガン(Ⅱ)イオン(<chem>Mn2+</chem>)の淡桃色水溶液となる。
: <chem>MnO4- + 8 H+ + 5 e- -> Mn^2+ + 4H2O</chem>
この<chem>Mn2+</chem>水溶液にアンモニア水を加えて塩基性とした後、硫化水素を通じると、硫化マンガン(Ⅱ)の淡桃色沈殿を生じる。
: <chem>Mn^2+ + S^2- -> MnS v</chem>
二酸化マンガンから過マンガン酸イオン水溶液を得ることができる。二酸化マンガンに水酸化カリウム水溶液を加えて加熱すると、緑色のマンガン酸イオン水溶液(<chem>MnO4^2-</chem>)となる。これに希硫酸を加えると過マンガン酸イオンの赤紫色水溶液となる。
=== 二酸化マンガン ===
二酸化マンガン <chem>MnO2</chem> は、黒色の粉末をしている。 過酸化水素水の分解を早める触媒として作用する。
: <chem>2H2O2 -> 2H2O + O2</chem> (触媒:<chem>MnO2</chem>)
また、酸化剤でもあり、たとえば塩酸を酸化して塩素とする。
: <chem>4HCl + MnO2 -> MnCl2 + 2H2O + Cl2</chem>
二酸化マンガンは、日常的にもマンガン乾電池で原料の一つとして用いられている。
=== タングステン ===
タングステン W は融点がきわめて高く(融点3400℃)、耐熱性が大きいので、電球のフィラメントなどに用いられる。 金属では、タングステンが、もっとも融点が高い。
また、炭化タングステン WC は、かなり硬い。
== 合金 ==
[[ファイル:Sauce_boat.jpg|右|サムネイル|ステンレス鋼のソースボート(肉汁ボート)]]
[[ファイル:Dewoitine_D.333_Cassiopée_F-ANQB_Algérie_1938.jpg|サムネイル|200x200ピクセル|ジュラルミンが航空機に用いられた例。画像は旅客機 D.333 。フランス国 Dewoitine社。]]
[[ファイル:Jug_Egypt_Louvre_OA7436.jpg|サムネイル|250x250ピクセル|真鍮(黄銅)の水差し。この画像の水差しは14世紀のエジプトで用いられていた。]]
2種類以上の金属を溶融して混合したあとに凝固させたものを'''合金'''(alloy)という。
一般に合金では、元の金属単体よりも硬さが増す。ここでいう「硬い」とは「やわらかくない」「変形しづらい」というような意味であり、必ずしも割れにくいとは限らないので注意。また一般に合金の電気抵抗は、もとの金属よりも合金の電気抵抗が上がる。その仕組みの説明として、合金元素によって結晶配列が乱れるから、というのが定説である。
主要な合金の例を示す。
* 黄銅
: 銅60%~70%と亜鉛10%~40%の合金。
: 銅Cuが60%程度で亜鉛Znが40%程度の黄銅を六四黄銅(ろくよんおうどう)という。銅Cuが70%程度で、亜鉛Znが30%程度の黄銅を七三黄銅(しちさんおうどう)という。
: 合金化により硬くなり、強度が高まる。色は黄色い。[[w:ブラスバンド]]のブラスとは黄銅(brass)のことである。真鍮(しんちゅう)ともいう。
* 青銅
: 銅とスズの合金。
: ブロンズ(bronze)ともいう。亜鉛などが加えられる場合もある。銅とスズのみを主成分とする青銅を、すず青銅という。
: 合金化により硬くなり、強度が高まる。鏡として用いられる場合もある(青銅鏡)。
* 白銅
: 銅80%とニッケル20%の合金。
: 組成中のNiの増加とともに、色が銅の赤色からニッケルの白色に変わっていく。
: 腐食しづらく耐食性が良い。日本の貨幣の50円硬貨100円硬貨の材料。
* 洋銀
: 組成:Cuに,Ni=5%~30%,Zn=5%~30%
: ニッケルシルバともいう。
* ステンレス鋼
: 組成:Fe=70%,Cr=20%,Ni=10%
: 鉄にクロムとニッケルなどを混ぜたもの。錆びにくい。
* ジュラルミン
: 組成:Al 95 %,Cu,Mg,Mn
: 軽くて強度が大きいので航空機材料や自動車材料などに用いられる。
* はんだ
: 鉛とスズの合金。融点が低い。はんだは電気回路部品の接合などに用いられたが、鉛の有害性が指摘され、最近では無鉛はんだが用いられる。
* ニクロム
: ニッケル60%~80%とクロム20%の合金。ニッケルとクロムだからニクロムという。
: 電気抵抗が大きい。電気抵抗材料に用いられるニクロム線の材料である。
=== ブリキとトタン ===
[[ファイル:Fe_corrosion.svg|サムネイル]]
酸素や水と接触した金属は表面で酸化還元反応を起こし、金属がイオン化し脱落する。この反応を腐食という。イオン化した金属が酸化物や水酸化物となって表面に堆積したものを錆という。
鋼板にスズをメッキしたものを'''ブリキ'''、亜鉛をメッキしたものを'''トタン'''という。イオン化傾向が <chem>Zn > Fe > Sn</chem> のため、ブリキはスズが鉄の腐食を防いでいる。しかし、メッキが傷つき鉄が露出した箇所に水がつくと、イオン傾向の大きい鉄がスズよりもイオン化しやすいため、鉄が腐食しやすい。トタンは、亜鉛が鉄より腐食しやすいが、鉄が露出した箇所があってもイオン化傾向の大きい亜鉛が鉄よりイオン化しやすいため、内部の鉄の腐食が防がれる。
つまり、傷がなく鉄が露出していない場合はブリキの方が錆びにくいが、傷がついた場合はトタンの方が錆びにくい。このため、ブリキは缶詰や金属玩具などに用いられ、トタンは屋根やバケツなどに用いられる。
=== その他の合金 ===
'''水素吸蔵合金'''
ランタン-ニッケル合金やチタン-鉄合金などは、常温で合金の結晶間に水素を吸蔵する性質を持つ。加熱などによって水素を放出することができる。これらの合金は、自身の体積の1000倍以上の水素を吸蔵できるものもある。
ランタン-ニッケル合金を使用したニッケル水素電池は実用化されており、ハイブリッド自動車で使用されている。今後は水素自動車や燃料電池自動車の燃料タンクとしても期待され、さらに開発が進められている。チタン-鉄合金系の水素吸蔵合金も存在する。
'''形状記憶合金'''
チタンとニッケルの合金には、特定の高温で成形した形状を記憶し、常温で変形しても加熱することで元の形に戻る特性を持つものがある。これを形状記憶合金(shape memory alloy)という。眼鏡フレームなどで利用されている。
'''超伝導合金'''
ある物質は、非常に低温(絶対零度に近い温度)で電気抵抗がゼロになる。この現象を利用した超伝導合金として、スズとニオブの合金が代表例である。超伝導合金は、強い電磁石を作る際や医療用MRI(磁力を利用して人体の断層写真を撮影する装置)などに使用されている。
スズ-ニオブ系のほかにも、さまざまな超伝導合金が知られている。
'''アモルファス合金'''
アモルファス合金は、結晶構造を持たない非晶質の合金である。製法としては、高温状態で柔らかくなった金属を急冷することで、原子が通常の結晶構造での位置に配置される前に固化する。このため、結晶構造を持たず、異なる特性を示すことが多い。
アモルファス合金は、磁気記録用ヘッドなどに利用されており、鉄系のアモルファス合金は耐腐食性が必要な環境で使われることがある。ただし、高温で加工すると結晶化してしまうため、高温での加工ができないという短所がある。
[[カテゴリ:高等学校化学|せんいきんそく]]
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{{pathnav|高等学校の学習|高等学校理科|高等学校 化学|frame=1|small=1}}[[File:Eisen 1.jpg|100px|鉄|代替文=鉄|サムネイル]]
== 鉄 ==
=== 性質 ===
'''鉄'''(Fe)の単体は灰白色で比較的やわらかい。また、合金にして、鉄道のレール、流し台や窓枠のステンレス鋼、建築材の鉄骨など、さまざまなものに鉄が用いられている。
鉄は磁石に引き寄せられる。[[File:Castingiron.jpg|100px|鉄製品の鋳|代替文=鉄製品の鋳造|サムネイル]]
=== 製法 ===
鉄鉱石からの鉄の精錬では、赤鉄鉱 <chem>Fe2O3</chem> や磁鉄鉱 <chem>Fe3O4</chem> などの鉄鉱石を溶鉱炉で溶かし、コークス <chem>C</chem> 、石灰石 <chem>CaCO3</chem> を加えて発生する一酸化炭素 <chem>CO</chem> で還元して、鉄をつくる。
[[ファイル:Hochofenprozess.PNG|サムネイル|477x477ピクセル|高炉プロセスの概略図。Trocken -und Vorwärmzone:乾燥および予熱Reductionzone :還元の領域 。 Kohlungzone :浸炭の領域
Schmelzzone :融解の領域 。 Roheisen :銑鉄schlacke :スラグ
Erz :鉱石 。 koks :コークス 。 zuschläge :追加物Gichtgas :高炉ガス
]]
: <chem>CO</chem> の生成: <chem>C + O2 -> CO2</chem>
: <chem>CO2 + C -> 2CO</chem>
鉄鉱石は段階的に次のように還元される。
<math>\mathrm{ Fe_2O_3 \rightarrow Fe_3O_4 \rightarrow FeO \rightarrow Fe } </math>
それぞれの反応式は
[450℃] <chem>3Fe2O3 + CO -> 2Fe3O4 + CO2</chem>
[800℃] <chem>Fe3O4 + CO -> 3FeO + CO2</chem>
[1200℃] <chem>FeO + CO -> Fe + CO2</chem>
全体での反応は次の反応式で表される。
<chem>Fe2O3 + 3CO -> 2Fe + 3CO2 </chem>
また、不純物を取り除くため'''石灰石''' CaCO<sub>3</sub> を加える。石灰石によりシリカSiO<sub>2</sub>やアルミナAl<sub>2</sub>O<sub>3</sub>などの脈石(岩石を構成する成分のこと。)が分離される。 このようにして高炉で得られた鉄を'''銑鉄'''(せんてつ、pig iron)という。
なお、高炉の内側の耐火性のレンガにより、高炉は高温に耐えられるようになっている。
石灰石は、鉱石中のケイ酸塩と反応し'''スラグ''' CaSiO<sub>3</sub> を形成する。スラグは密度が銑鉄より軽いため、スラグは銑鉄に浮かぶ。スラグはセメントの原料になるため、スラグは廃棄せず分離して回収する。
また、炭素や石灰石の添加は、融点を下げる役割も有る。凝固点降下と同じ原理である。一般に混合物は融点が下がる。
銑鉄は炭素を質量比4%ほど含む。鉄中の炭素が多いと、粘りが無くなり、衝撃などに対して脆く、硬いが割れやすくなる。 このような鉄は、割れやすいが混合物のため融点が低く、また流動性も良いため鋳造に用いられる。そのため、炭素含有量の多い鉄は鋳鉄(ちゅうてつ) と呼ばれる。
鋳鉄は割れやすいため、建築材などには不便である。 丈夫な鉄を得るには銑鉄の炭素量を適量に減らす必要があり、転炉で酸素を加えて燃焼させて取り除く。転炉には、酸素吹き込み転炉などを用いる。この酸素吹き込みの酸化熱が、鉄を溶かし続ける熱源に使える。
炭素を0.02%~2%ほど含む鉄を'''鋼'''(こう、steel)という。
建築材などの構造材に用いられるのは、十分な硬さと強さをもたせた鋼である。
:
添加物のため融点は下がり、およそ1400℃で融解し、溶鉱炉の底に溶けた鉄がたまる。 なお、1200℃での反応の式について、温度が高くなりすぎると、逆方向に反応が進んでしまいCO<sub>2</sub>によるFeの酸化が起きるので、1200℃程度を保つ必要がある。
鉄の化学的性質として、鉄の単体および銑鉄や鋳鉄は、湿った空気中で酸化されやすく、さびやすい。 さびを防ぐため、合金として、鋼にクロム Cr やニッケル Ni などを混ぜた合金が'''ステンレス鋼'''である。このステンレス鋼は化学的な耐食性が高く、さびにくいため、建築材や台所部材として用いられる。
=== 鉄の化学的性質 ===
純度の高い鉄(てつ)の単体は、灰白色であり、比較的やわらかい。
鉄には酸化数+2または酸化数+3の化合物がある。
鉄の酸化物には、黒色の酸化鉄(II) FeO 、赤褐色の酸化鉄(III)Fe<sub>2</sub>O<sub>3</sub> 、黒色の四酸化三鉄 Fe<sub>3</sub>O<sub>4</sub> などがある。
鉄は、湿った空気中で酸化されやすい、よって鉄は、さびやすい。 鉄の赤さびは、 酸化鉄(III)Fe<sub>2</sub>O<sub>3</sub> である。
鉄は希硫酸に加えると、水素を発生して溶け、淡緑色の溶液になる。この水溶液から水を蒸発させて濃縮すると、硫酸鉄(II)七水和物FeSO<sub>4</sub>・7H<sub>2</sub>Oが得られる。
いっぽう、濃硝酸では、不動態となり、鉄の表面に皮膜ができて、それ以上は反応が進行しない。
=== 強磁性体 ===
鉄 Fe 、ニッケル Ni 、コバルト Co は、単体で磁性を帯びることができる金属である。
一方、銅やアルミニウムは、磁化されない。
鉄、ニッケル、コバルトのように、磁石になることができる物質を'''強磁性体'''という。
銅の特徴として、銅は電気の伝導性が良く、また熱の伝導性も良い。なお、一般に純金属の熱伝導性と電気伝導性は比例する。このため、自由電子が、その金属内で熱を伝える作用があるという説が、定説である。
=== 化学的な性質 ===
鉄は、酸に溶けて、水素を生じる。
: Fe + 2HCl → FeCl{{sub|2}} + H{{sub|2}}↑
ただし、濃硝酸では、表面に皮膜ができる不動態となり、それ以上は反応が進行しない。
=== 鉄イオンの水溶液 ===
鉄イオンは陽イオンであるが2価と3価のものがある。価数により異なる性質をもつ。
=== 鉄(Ⅱ)イオン ===
鉄(Ⅱ)イオン(Fe{{sup|2+}})は淡緑色をしている。アンモニア水や水酸化ナトリウム水溶液のような塩基と反応して水酸化鉄(Ⅱ)の緑白色沈殿を生じる。
: Fe{{sup|2+}} + 2OH{{sup|-}} → Fe(OH){{sub|2}}↓
この沈殿は空気中で酸化されて水酸化鉄(Ⅲ)になる。
: 4Fe(OH){{sub|2}} + O{{sub|2}} + 2H{{sub|2}}O → 4Fe(OH){{sub|3}}
硫化水素とは塩基性条件下で反応して、硫化鉄(Ⅱ)の黒色沈殿を生じる。酸性条件下では反応しない。
: Fe{{sup|2+}} + S{{sup|2-}} → FeS↓
酸化剤である過酸化水素水を加えると、イオンが酸化されてFe{{sup|3+}}となり、黄褐色の水溶液となる。
* ヘキサシアノ鉄(Ⅲ)酸カリウム水溶液(K{{sub|3}}[Fe(CN){{sub|6}}])をFe{{sup|2+}}水溶液に加えると、'''ターンブル青'''と呼ばれる濃青色の沈殿を生じる。一方、Fe{{sup|3+}}水溶液に加えると暗褐色の水溶液となる。
このヘキサシアノ鉄(Ⅲ)酸カリウム水溶液の反応は、鉄イオンの検出に用いられる。
=== 鉄(Ⅲ)イオン ===
一方、鉄(Ⅲ)イオン(Fe{{sup|3+}})は黄褐色をしている。アンモニア水や水酸化ナトリウム水溶液のような塩基と反応して水酸化鉄(Ⅲ)の赤褐色沈殿を生じる。
: Fe{{sup|3+}} + 3OH{{sup|-}} → Fe(OH){{sub|3}}↓
硫化水素とは塩基性条件下で反応して、一度イオンを還元してFe{{sup|2+}}とした後、硫化鉄(Ⅱ)の黒色沈殿を生じる。酸性条件下ではイオンを還元してFe{{sup|2+}}とするのみで、沈殿を生じない。
: Fe{{sup|2+}} + S{{sup|2-}} → FeS↓
鉄(Ⅲ)イオンの塩として、塩化鉄(Ⅲ)六水和物(FeCl{{sub|3}}・6H{{sub|2}}O)がある。黄褐色の固体であるが、潮解性がある。
[[File:Chlorid železitý.JPG|center|200px|塩化鉄(Ⅲ)六水和物の潮解|代替文=塩化鉄(Ⅲ)六水和物の潮解|サムネイル]]
鉄イオンは上記の他にも次のような反応をする。これらは、鉄イオンの検出・分離に有用である。
[[File:Eisen(III)-Ionen und Thiocyanat.JPG|150px|鉄(Ⅲ)イオン水溶液(左)にチオシアン酸カリウム水溶液を加える(右)|代替文=鉄(Ⅲ)イオン水溶液(左)にチオシアン酸カリウム水溶液を加える(右)|サムネイル]]
* チオシアン酸カリウム水溶液(KSCN)をFe{{sup|3+}}水溶液に加えると、血赤色の水溶液となる。なお、Fe{{sup|2+}}水溶液とは反応しない。
*: Fe{{sup|3+}} + SCN{{sup|-}} → [FeSCN]{{sup|2+}}
* ヘキサシアノ鉄(Ⅱ)酸カリウム水溶液(K{{sub|4}}[Fe(CN){{sub|6}}])をFe{{sup|3+}}水溶液に加えると、'''ベルリン青'''と呼ばれる濃青色の沈殿を生じる。
これらのチオシアン酸カリウム水溶液(KSCN)やヘキサシアノ鉄(Ⅲ)酸カリウム水溶液の反応は、鉄イオンの検出に用いられる。
[[File:Eisen(II),(III).JPG|center|250px|左から、鉄(Ⅱ)イオン、ターンブルブルー、鉄(Ⅲ)イオン、ベルリンブルー|代替文=左から、鉄(Ⅱ)イオン、ターンブルブルー、鉄(Ⅲ)イオン、ベルリンブルー|サムネイル]]
なお、ベルリン青とターンブル青は、色調は異なるが、同一の化合物である。
== 銅 ==
[[ファイル:Cu,29.jpg|代替文=|サムネイル|200x200ピクセル|銅]]
'''銅'''(Cu)は赤色の金属光沢をもつ金属である。展性・延性に富み、電気伝導性・熱伝導性が大きいことから、電線、調理器具、装飾品等、幅広く用いられている。
[[ファイル:StatueOfLiberty01.jpg|代替文=緑青に覆われた自由の女神|サムネイル|220x220ピクセル|緑青に覆われた自由の女神]]
銅は空気中で風雨にさらされると'''緑青'''(ろくしょう)と呼ばれる青緑色のさびを生じる。たとえば名古屋城の屋根や、アメリカの自由の女神などは緑色をしているが、これは緑青によるものである。
: <chem>2Cu + CO2 + H2O + O2 -> CuCO3*Cu(OH)2</chem>
日本では、昭和後期まで、緑青は毒性が強いと考えられていた。しかし、動物実験による検証で、毒性はほとんど無いことが分かった。
=== 製法 ===
銅の鉱産資源は、化合してない単体が産出することもあるが、ほとんどは黄銅鉱(<chem>CuFeS2</chem>)などの鉱石として産出する。 銅の鉱石を加熱してニッケルや金などの不純物を含む粗銅(そどう)を作り、これを電解精錬することにより純度の高い銅(99.97%程度)が得られる。電気精錬では、硫酸銅(Ⅱ)水溶液を電解液として、陽極には粗銅板を、陰極は純銅版として電気分解をすると、陽極の粗銅が溶解して銅(Ⅱ)イオンを生じ、陰極には銅が析出する。
: '''陽極''': <chem>Cu -> {Cu^{2+}} + 2e-</chem>
: '''陰極''': <chem>{Cu^{2+}} + 2{e^-} -> Cu</chem>
陽極の下には溶液に解けなかった金や銀などの不純物がたまる。これを陽極泥という。
=== 銅の精錬 ===
銅の精錬には、まず、黄銅鉱など銅鉱石を溶鉱炉で溶かす。溶鉱炉にはコークスCおよびケイ砂SiO<sub>2</sub>を加える。
: <math>\mathrm{ 2CuFeS_2 + 4O_2 + 2SiO_2 \rightarrow Cu_2S + FeSiO_3 + 3SO_2 }</math>
硫化銅Cu<sub>2</sub>Sは「かわ」とよばれる。この硫化銅は炉の下層に沈む。FeSiO<sub>3</sub> は上層に分離する。溶鉱で発生したFeSiO3<sub>3</sub>は「からみ」という。なおFeSiO<sub>3</sub> の式をFeOSiO<sub>2</sub>と書く場合もある。
この硫化銅を転炉で空気を吹き込むと、銅が遊離する。
: <math>\mathrm{ Cu_2S + O_2 \rightarrow 2Cu + SO_2 } </math>
こうして転炉で作った銅を'''粗銅'''(そどう)という。粗銅の純度は98.5%程度である。
=== 化学的な性質 ===
銅は塩素と激しく反応して、塩化銅(Ⅱ)を生じる。
: <chem>Cu + Cl2 -> CuCl2</chem>
銅はイオン化傾向が小さく、希硫酸や塩酸には溶けない。しかし、硝酸や熱濃硫酸(濃硫酸に加え加熱したもの)といった酸化力の強い酸には溶けて、銅(Ⅱ)イオンを生じる。
: '''希硝酸''': <chem>3Cu + 8HNO3 -> 3Cu(NO3)2 + 4H2O + 2NO ^</chem>
: '''濃硝酸''': <chem>Cu + 4HNO3 -> Cu(NO3)2 + 2H2O + 2NO2 ^</chem>
: '''熱濃硫酸''': <chem>Cu + 2H2SO4 -> CuSO4 + 2H2O + SO2 ^</chem>
=== 水溶液の性質 ===
[[ファイル:CopperSulphate.JPG|代替文=銅(Ⅱ)イオン水溶液|サムネイル|銅(Ⅱ)イオン水溶液]]
銅(Ⅱ)イオン(<chem>Cu^{2+}</chem>)水溶液は青色をしている。これに水酸化ナトリウム水溶液、またはアンモニア水を少量加えると、水酸化銅(Ⅱ)(<chem>Cu(OH)2</chem>)の青白色沈殿を生じる。
: <chem>{Cu^{2+}} + 2OH^- -> Cu(OH)2 v</chem>
これに、さらにアンモニア水を過剰に加えると、テトラアンミン銅(Ⅱ)イオン <chem>[Cu(NH3)4]^{2+}</chem> を生じて溶け、深青色の水溶液となる。
: <chem>Cu(OH)2 + 4NH3 -> {[Cu(NH3)4]^{2+}} + 2OH-</chem>
=== 酸化物 ===
水酸化銅(Ⅱ)を加熱すると、黒色の酸化銅(Ⅱ)(<chem>CuO</chem>)を生じる。
: <chem>Cu(OH)2 -> CuO + H2O</chem>
酸化銅(Ⅱ)は黒色であるが、高温で加熱すると赤色の酸化銅(Ⅰ)(<chem>Cu2O</chem>)となる。
{| align="center" style="border:solid #aaffaa 1px; text-align:center;"
|[[ファイル:CopperIIoxide.jpg|192x192ピクセル|酸化銅(Ⅱ)]]
|[[ファイル:CopperIoxide.jpg|251x251ピクセル|酸化銅(Ⅰ)]]
|-
|酸化銅(Ⅱ)
|酸化銅(Ⅰ)
|}
=== 硫化物 ===
銅(Ⅱ)イオン水溶液に硫化水素 <chem>H2S</chem> を通じると、硫化銅(Ⅱ) <chem>CuS</chem> の黒色沈殿を生じる。
: <chem>{Cu^2+} + H2S -> 2 {H+} + {CuS} v</chem>
[[ファイル:Copper_sulfate.jpg|代替文=硫酸銅(Ⅱ)五水和物|サムネイル|102x102ピクセル|硫酸銅(Ⅱ)五水和物]]
銅と硫酸の化合物である硫酸銅(Ⅱ)五水和物(<chem>CuSO4*5H2O</chem>)は青色の結晶である。水に溶かすと青色の水溶液となる。これを加熱すると白色の硫酸銅(Ⅱ)無水物 <chem>CuSO4</chem> の粉末となるが、水を加えると再び青色となる。この反応は水の検出に用いられる。
[[ファイル:Hydrating-copper(II)-sulfate.jpg|代替文=水の検出|中央|サムネイル|250x250ピクセル|水の検出]]
=== 銅の合金 ===
銅は、さまざまな合金の原料である。
: 黄銅(おうどう、ブラス)とは、銅と亜鉛との合金である。
: 青銅(せいどう、ブロンズ)とは、銅とスズとの合金である。
: 白銅(はくどう)とは、銅とニッケルとの合金である。
: 洋銀とは、銅と亜鉛とニッケルの合金である。
{| align="center" style="border:solid #aaffaa 1px; text-align:center;"
|[[ファイル:Trombone_CG_Bach42AG.jpg|200x200ピクセル|黄銅]]
|[[ファイル:Baltesspannarna_Gbg_-_J_P_Molin.jpg|200x200ピクセル|青銅]]
|[[ファイル:100JPY.JPG|300x300ピクセル|白銅]]
|-
|黄銅(金管楽器)
|青銅(ブロンズ像)
|白銅(100円玉)
|}
: 十円硬貨は銅に、亜鉛3%と錫2%を含む青銅である。
: 五円硬貨は黄銅である。五円硬貨の質量は 3.75 g であり、これは一{{Ruby|匁|もんめ}}に等しい。
: 五百円硬貨には洋銀が使われている。
== 銀 ==
銀 '''Ag''' は白色の金属光沢をもつ金属である。すべての金属の中で、熱伝導性と電気伝導性が最も高い。
銀イオンの水溶液は無色であるが、水酸化ナトリウム水溶液、または少量のアンモニア水を加えると、酸化銀(I) <chem>Ag2O</chem> の褐色沈殿を生じる。
: <chem>2Ag+ + 2OH- -> Ag2O v + H2O</chem>
この沈殿に、さらに過剰のアンモニア水を加えると、沈殿が溶けてジアンミン銀(I)イオン <chem>[Ag(NH3)2]+</chem> を生じ、無色の水溶液となる。
: <chem>Ag2O + 4NH3 + H2O -> 2[Ag(NH3)2]+ + 2OH-</chem>
銀イオン水溶液にクロム酸水溶液を加えると、クロム酸銀の赤褐色沈殿を生じる。
: <chem>{2Ag+} + CrO4^{2-} -> Ag2CrO4 v</chem>
銀イオン水溶液に硫化水素を通じると、硫化銀の黒色沈殿を生じる。
: <chem>2Ag+ + H2S -> Ag2S v + 2H+</chem>
* ハロゲン化物イオンとの反応
銀イオン水溶液に塩酸<chem>HCl</chem>を加えると、塩化銀の白色沈殿を生じる。塩酸に限らず、ハロゲン化水素の水溶液を加えると、ハロゲン化銀の沈殿を生じる。
: <chem>Ag+ + Cl- -> AgCl v</chem>(白色)
: <chem>Ag+ + Br- -> AgBr v</chem>(淡黄色)
: <chem>Ag+ + I- -> AgI v</chem>(黄色)
* ハロゲン化銀
フッ化銀 <chem>AgF</chem> 以外は、水に溶けにくい。塩化銀、臭化銀は、アンモニア水、チオ硫酸ナトリウム水溶液、シアン化カリウム水溶液全てに、錯イオンを形成して溶ける。水溶液はいずれも無色。ヨウ化銀はそもそも溶解度が非常に小さく、いずれにも溶けない。(水に対する溶解度 は<math>10^{-8}\, \mathrm{mol/L}</math> 、アンモニア水に対する溶解度も <math>10^{-5} \, \mathrm{mol/L}</math> 程度と、非常に小さい。) また、ハロゲン化銀は、光を当てると、分解して、銀が遊離する。この性質を感光性(かんこうせい)という。カメラ(アナログカメラ)の写真は、この性質を利用している。カメラのフィルムには臭化銀などが感光剤として含まれており、その感光性から写真を撮影することができる。 塩化銀の沈殿にチオ硫酸ナトリウム <chem>Na2S2O3</chem> 水溶液を加えると、ビス(チオスルファト)銀(I)酸イオンを生じ、無色の水溶液となる。
: <chem>AgCl + 2Na2S2O3 -> [Ag(S2O3)2]^3- + 3 Na+ + NaCl</chem>
=== イオン化傾向 ===
銀はイオン化傾向の小さい金属であり、塩酸や希硫酸には溶けない。しかし、熱濃硫酸や硝酸といった酸化力の強い酸には溶けて気体を発生する。
: 熱濃硫酸: <chem>2Ag + 2H2SO4 -> Ag2SO4 + 2H2O + SO2 ^</chem>
: 濃硝酸: <chem>Ag + 2HNO3 -> AgNO3 + H2O + NO2 ^</chem>
: 希硝酸: <chem>3Ag + 4HNO3 -> 3AgNO3 + 2H2O + NO ^</chem>
== 金と白金 ==
=== 金 ===
[[ファイル:Achaemenid_coin_daric_420BC_front.jpg|サムネイル|アケメネス朝ペルシアの金貨。紀元前5世紀ごろ]]
'''金''' Au は金属光沢のある黄橙色の金属である。イオン化傾向が低く、反応性が低いことから単体として天然に存在する。純粋な金は柔らかく、展性・延性は全金属中最大である。密度は 19.3 g/cm<sup>3</sup> で、融点は1064 ℃である。金は通常の酸とは反応しないが、濃塩酸と濃硝酸を3:1で混合した'''王水'''(aqua regia)には溶ける。
王水では、塩酸と硝酸が反応し塩化ニトロシル <chem>NOCl</chem> となって金と反応する。
<chem>HNO3 + 3HCl <=> 2HO + NOCl + Cl2</chem>
<chem>Au + NOCl + Cl2 + HCl <=> H[AuCl4] + NO</chem>
{{multiple image|align=center|direction=horizontal|total_width=760|caption_align=center|image1=Dissolution of gold in aqua regia (I).JPG|alt1=|caption1=初期の状態|image2=Dissolution of gold in aqua regia (II).JPG|alt2=|caption2=中間の状態|image3=Dissolution of gold in aqua regia (III).JPG|alt3=|caption3=最終の状態|header_align=center|header='''王水に溶ける金'''}}
=== 白金 ===
[[ファイル:Platin_1.jpg|代替文=白金|左|サムネイル|152x152ピクセル|白金]]
[[ファイル:Sponsored_lantern_at_temple.jpg|代替文=金の利用|サムネイル|150x150ピクセル|金の利用]]
'''白金''' Pt は金属光沢のある白色の金属である。金と同様イオン化傾向が低く、反応性が低い。
金や白金は多く産出しないため、貴金属(レアメタル)と呼ばれ、古くから硬貨や装飾品などに用いられてきた。しかしこれらは近年工業的に重要な物質となってきている。たとえば金は精密電子部品の配線に用いられ、また白金は化学反応を速める触媒として用いられる。かつて、メートル原器の材質として用いられていた。
白金も金と同様に王水に溶ける。
{{multiple image|align=center|direction=horizontal|total_width=760|caption_align=center|image1=Plaatina reageerimine kuningveega 01.JPG|alt1=|caption1=王水の中にある[[:en:Wikipedia:Commemorative coins of the Soviet Union#Platinum coins|ソビエトの白金記念硬貨]]|image2=Plaatina reageerimine kuningveega 02.JPG|alt2=|caption2=中間の状態|image3=Plaatina reageerimine kuningveega 03.JPG|alt3=|caption3=四日後の状態|header_align=center|header='''王水に溶ける白金'''}}
== 亜鉛 ==
'''亜鉛''' '''Zn''' は周期表12族の元素であり、原子は価電子を2個もち、2価の陽イオンになりやすい。
亜鉛の単体は、銀白色の金属である。 亜鉛は両性元素であり、酸とも塩基とも反応して水素を発生する。たとえば塩酸と水素を発生しながら反応して塩化亜鉛になる。
: <chem>Zn + 2HCl -> ZnCl2 + H2 ^</chem>
また、強塩基の水酸化ナトリウムと反応し、水素を発生してテトラヒドロキソ亜鉛(Ⅱ)酸イオンを生じる。
: <chem>Zn + 2NaOH + 2H2O -> 2Na^+ + [Zn(OH)4]^2- + H2 ^</chem>
[[ファイル:Zinc_oxide.jpg|代替文=酸化亜鉛|サムネイル|200x200ピクセル|酸化亜鉛]]
* 用途
たとえば、一般的な乾電池の負極は亜鉛板でできている。 また、鉄板に亜鉛をメッキした板は'''トタン'''と呼ばれ、屋根やバケツなどに用いられる。
==== 亜鉛の化合物とイオン ====
亜鉛に塩酸を加えると先に見たように、水素を発生しながら溶け、塩化亜鉛 (<chem>ZnCl2</chem>) を生じる。塩化亜鉛は水に溶ける物質で、水溶液中では亜鉛イオン (<chem>Zn^2+</chem>) として存在している。 この亜鉛イオン水溶液に水酸化ナトリウム水溶液またはアンモニア水を少量加えると、水酸化亜鉛 (<chem>Zn(OH)2</chem>) の白色ゼリー状沈殿を生じる。
: <chem>Zn^2+ + 2OH^- -> Zn(OH)2 v</chem>
しかし、これに水酸化ナトリウム水溶液またはアンモニア水を過剰量加えると、沈殿は溶けて無色透明の水溶液となる。水酸化ナトリウム水溶液ではテトラヒドロキソ亜鉛(Ⅱ)酸イオン (<chem>[Zn(OH)4]^2-</chem>) を生じ、アンモニア水ではテトラアンミン亜鉛(Ⅱ)イオン (<chem>[Zn(NH3)4]^2+</chem>) を生じる。
: <chem>Zn(OH)2 + 2NaOH -> 2Na^+ + [Zn(OH)4]^2-</chem>
: <chem>Zn(OH)2 + 4NH3 -> [Zn(NH3)4]^2+ + 2OH^-</chem>
アンモニア水を過剰に加えて弱塩基性とした亜鉛イオン水溶液に硫化水素を通じると、硫化亜鉛 (<chem>ZnS</chem>) の白色沈殿を生じる。
: <chem>Zn^2+ + S^2- -> ZnS v</chem>
=== 酸化亜鉛 ===
酸化亜鉛 <chem>ZnO</chem> は白色の粉末で、水に溶けにくく、白色絵の具の顔料として用いられる。 <chem>ZnO</chem> は両性酸化物であり、塩酸にも水酸化ナトリウムにも溶ける。
: <chem>ZnO + 2HCl -> ZnCl2 + H2O</chem>
: <chem>ZnO + 2NaOH + H2O -> Na2[Zn(OH)4]</chem>
酸化亜鉛は亜鉛華(あえんか)とも呼ばれ、白色顔料などに用いられる。
=== 硫化亜鉛 ===
亜鉛イオン <chem>Zn^2+</chem> を含む水溶液を中性または塩基性にして、硫化水素を通じると、硫化亜鉛 <chem>ZnS</chem> の白色沈殿が生じる。
: <chem>Zn^2+ + S^2- -> ZnS v</chem>
硫化亜鉛は夜光塗料などに用いられる。
== 水銀とカドミウム ==
=== カドミウム ===
'''カドミウム'''(Cd)はニッケルとともにニッケル-カドミウム電池として用いられる。
カドミウムイオンは硫化物イオンと結合して黄色の沈殿である硫化カドミウムを生じる。
: <chem>Cd^2+ + S^2- -> CdS v</chem>
硫化カドミウムは黄色絵の具の顔料として用いられる。
[[ファイル:Cadmium_sulfide.jpg|サムネイル]]
=== 水銀 ===
[[ファイル:Hg_Mercury.jpg|右|サムネイル|200x200ピクセル|水銀]]
'''水銀'''(Hg)は常温常圧で液体として存在する唯一の単体金属<ref>単体金属では、ガリウムの融点が 29.76 ℃ であり、室温でも液体になり得る。常温や室温という語には明確な定義がないものの、一般的には29℃は常温と呼ぶにはやや高いだろう。なお、合金ではガリンスタン(ガリウム、インジウム、錫の合金)が常温で液体となる。</ref>である。水銀は他の金属と合金をつくりやすく、水銀の合金を'''アマルガム'''という。
水銀イオンは硫化物イオンと結合して黒色の沈殿を生じる。
: <chem>Hg^2+ + S^2- -> HgS v</chem>
水銀の原料は、天然には辰砂(しんしゃ、主成分:HgS)などとして産出する。
水銀は、蛍光灯にも用いられる(いわゆる「水銀灯」)。
また、水銀は密度が、他の液体と比べて高く、そのため水銀は圧力計にも用いられた。
カドミウムや水銀などの重金属類は、工業でよく用いられるが、しばしば公害を引き起こした。たとえば水銀の化合物は水俣病の原因物質であり、カドミウムはイタイイタイ病の原因物質である。
== クロムとマンガン ==
=== クロム ===
[[ファイル:Chrom.PNG|右|200x200ピクセル|クロム]]
'''クロム'''(Cr)は空気中でも水中でも常温で安定な金属である。クロムは、銀白色の光沢を持つ。
化合物中での酸化数は、おもに+6または+3を取る。
クロムは、空気中では表面に酸化物の緻密な皮膜ができるので(不動態)、それ以上は酸化されず、安定である。
鉄の表面に施す クロムめっき は、この不動態の性質を利用して、さびを防ぐものである。
クロムは、ステンレス鋼の材料でもある。
=== イオン ===
酸化数が+6のクロムの多原子イオンの主なものに、水溶液の黄色いクロム酸イオン(<chem>CrO4^2-</chem>)がある。この水溶液は黄色であるが、酸を加えて液を酸性にすると、同じく酸化数が+6の二クロム酸イオン(<chem>Cr2O7^2-</chem>)となり、橙色の水溶液となる。
逆に、橙色の二クロム酸イオン水溶液に塩基を加えると、クロム酸イオンの黄色水溶液となる。
{| align="center"
|[[ファイル:Kaliumchromat.jpg|315x315ピクセル|クロム酸カリウム水溶液]]
|[[ファイル:Kaliumdichromat.jpg|318x318ピクセル|二クロム酸カリウム水溶液]]
|- align="center"
|K{{sub|2}}CrO{{sub|4}}(黄色)
|K{{sub|2}}Cr{{sub|2}}O{{sub|7}}(橙色)
|}
クロム酸イオンは、さまざまな金属イオンと反応して沈殿となる。たとえば、クロム酸イオン水溶液に銀イオンを加えると、クロム酸銀の赤褐色沈殿が生成する。
: <chem>CrO4^2- + 2 Ag^+ -> Ag2CrO4 v</chem>
また、クロム酸イオン水溶液に鉛(Ⅱ)イオンやバリウムイオンを加えると、ともに黄色の沈殿を生じる。
: <chem>CrO4^2- + Pb^2+ -> PbCrO4 v</chem>(クロム酸鉛(Ⅱ))
: <chem>CrO4^{2-} {+} Ba^2+ -> BaCrO4 v</chem>(クロム酸バリウム)
* 酸化作用
希硫酸を加えて酸性とした赤橙色の二クロム酸イオン水溶液は強い酸化剤であり、自身は還元されてクロム(Ⅲ)イオン(<chem>Cr^3+</chem>)の緑色水溶液となる。
: <chem>Cr2O7^2- + 14H^+ + 6e^- -> 2Cr^3+ + 7H2O</chem>
=== マンガン ===
[[ファイル:Mangan_1.jpg|右|100x100ピクセル|マンガン]]
'''マンガン'''(Mn)は銀白色の金属である。空気中で簡単に酸化されるので、単体では用いない。合金の材料として、マンガンは利用されることがある。 イオン化傾向が鉄より大きく、また、酸にマンガンは溶ける。
=== 過マンガン酸カリウム ===
過マンガン酸カリウム(<chem>KMnO4</chem>)は酸化剤として有名で、過マンガン酸カリウム水溶液は赤紫色であるが、自身は還元されてマンガン(Ⅱ)イオン(<chem>Mn2+</chem>)の淡桃色水溶液となる。
: <chem>MnO4- + 8 H+ + 5 e- -> Mn^2+ + 4H2O</chem>
この<chem>Mn2+</chem>水溶液にアンモニア水を加えて塩基性とした後、硫化水素を通じると、硫化マンガン(Ⅱ)の淡桃色沈殿を生じる。
: <chem>Mn^2+ + S^2- -> MnS v</chem>
二酸化マンガンから過マンガン酸イオン水溶液を得ることができる。二酸化マンガンに水酸化カリウム水溶液を加えて加熱すると、緑色のマンガン酸イオン水溶液(<chem>MnO4^2-</chem>)となる。これに希硫酸を加えると過マンガン酸イオンの赤紫色水溶液となる。
=== 二酸化マンガン ===
二酸化マンガン <chem>MnO2</chem> は、黒色の粉末をしている。 過酸化水素水の分解を早める触媒として作用する。
: <chem>2H2O2 -> 2H2O + O2</chem> (触媒:<chem>MnO2</chem>)
また、酸化剤でもあり、たとえば塩酸を酸化して塩素とする。
: <chem>4HCl + MnO2 -> MnCl2 + 2H2O + Cl2</chem>
二酸化マンガンは、日常的にもマンガン乾電池で原料の一つとして用いられている。
=== タングステン ===
タングステン W は融点がきわめて高く(融点3400℃)、耐熱性が大きいので、電球のフィラメントなどに用いられる。 金属では、タングステンが、もっとも融点が高い。
また、炭化タングステン WC は、かなり硬い。
== 合金 ==
[[ファイル:Sauce_boat.jpg|右|サムネイル|ステンレス鋼のソースボート(肉汁ボート)]]
[[ファイル:Dewoitine_D.333_Cassiopée_F-ANQB_Algérie_1938.jpg|サムネイル|200x200ピクセル|ジュラルミンが航空機に用いられた例。画像は旅客機 D.333 。フランス国 Dewoitine社。]]
[[ファイル:Jug_Egypt_Louvre_OA7436.jpg|サムネイル|250x250ピクセル|真鍮(黄銅)の水差し。この画像の水差しは14世紀のエジプトで用いられていた。]]
2種類以上の金属を溶融して混合したあとに凝固させたものを'''合金'''(alloy)という。
一般に合金では、元の金属単体よりも硬さが増す。ここでいう「硬い」とは「やわらかくない」「変形しづらい」というような意味であり、必ずしも割れにくいとは限らないので注意。また一般に合金の電気抵抗は、もとの金属よりも合金の電気抵抗が上がる。その仕組みの説明として、合金元素によって結晶配列が乱れるから、というのが定説である。
主要な合金の例を示す。
* 黄銅
: 銅60%~70%と亜鉛10%~40%の合金。
: 銅Cuが60%程度で亜鉛Znが40%程度の黄銅を六四黄銅(ろくよんおうどう)という。銅Cuが70%程度で、亜鉛Znが30%程度の黄銅を七三黄銅(しちさんおうどう)という。
: 合金化により硬くなり、強度が高まる。色は黄色い。[[w:ブラスバンド]]のブラスとは黄銅(brass)のことである。真鍮(しんちゅう)ともいう。
* 青銅
: 銅とスズの合金。
: ブロンズ(bronze)ともいう。亜鉛などが加えられる場合もある。銅とスズのみを主成分とする青銅を、すず青銅という。
: 合金化により硬くなり、強度が高まる。鏡として用いられる場合もある(青銅鏡)。
* 白銅
: 銅80%とニッケル20%の合金。
: 組成中のNiの増加とともに、色が銅の赤色からニッケルの白色に変わっていく。
: 腐食しづらく耐食性が良い。日本の貨幣の50円硬貨100円硬貨の材料。
* 洋銀
: 組成:Cuに,Ni=5%~30%,Zn=5%~30%
: ニッケルシルバともいう。
* ステンレス鋼
: 組成:Fe=70%,Cr=20%,Ni=10%
: 鉄にクロムとニッケルなどを混ぜたもの。錆びにくい。
* ジュラルミン
: 組成:Al 95 %,Cu,Mg,Mn
: 軽くて強度が大きいので航空機材料や自動車材料などに用いられる。
* はんだ
: 鉛とスズの合金。融点が低い。はんだは電気回路部品の接合などに用いられたが、鉛の有害性が指摘され、最近では無鉛はんだが用いられる。
* ニクロム
: ニッケル60%~80%とクロム20%の合金。ニッケルとクロムだからニクロムという。
: 電気抵抗が大きい。電気抵抗材料に用いられるニクロム線の材料である。
=== ブリキとトタン ===
[[ファイル:Fe_corrosion.svg|サムネイル]]
酸素や水と接触した金属は表面で酸化還元反応を起こし、金属がイオン化し脱落する。この反応を腐食という。イオン化した金属が酸化物や水酸化物となって表面に堆積したものを錆という。
鋼板にスズをメッキしたものを'''ブリキ'''、亜鉛をメッキしたものを'''トタン'''という。イオン化傾向が <chem>Zn > Fe > Sn</chem> のため、ブリキはスズが鉄の腐食を防いでいる。しかし、メッキが傷つき鉄が露出した箇所に水がつくと、イオン傾向の大きい鉄がスズよりもイオン化しやすいため、鉄が腐食しやすい。トタンは、亜鉛が鉄より腐食しやすいが、鉄が露出した箇所があってもイオン化傾向の大きい亜鉛が鉄よりイオン化しやすいため、内部の鉄の腐食が防がれる。
つまり、傷がなく鉄が露出していない場合はブリキの方が錆びにくいが、傷がついた場合はトタンの方が錆びにくい。このため、ブリキは缶詰や金属玩具などに用いられ、トタンは屋根やバケツなどに用いられる。
=== その他の合金 ===
'''水素吸蔵合金'''
ランタン-ニッケル合金やチタン-鉄合金などは、常温で合金の結晶間に水素を吸蔵する性質を持つ。加熱などによって水素を放出することができる。これらの合金は、自身の体積の1000倍以上の水素を吸蔵できるものもある。
ランタン-ニッケル合金を使用したニッケル水素電池は実用化されており、ハイブリッド自動車で使用されている。今後は水素自動車や燃料電池自動車の燃料タンクとしても期待され、さらに開発が進められている。チタン-鉄合金系の水素吸蔵合金も存在する。
'''形状記憶合金'''
チタンとニッケルの合金には、特定の高温で成形した形状を記憶し、常温で変形しても加熱することで元の形に戻る特性を持つものがある。これを形状記憶合金(shape memory alloy)という。眼鏡フレームなどで利用されている。
'''超伝導合金'''
ある物質は、非常に低温(絶対零度に近い温度)で電気抵抗がゼロになる。この現象を利用した超伝導合金として、スズとニオブの合金が代表例である。超伝導合金は、強い電磁石を作る際や医療用MRI(磁力を利用して人体の断層写真を撮影する装置)などに使用されている。
スズ-ニオブ系のほかにも、さまざまな超伝導合金が知られている。
'''アモルファス合金'''
アモルファス合金は、結晶構造を持たない非晶質の合金である。製法としては、高温状態で柔らかくなった金属を急冷することで、原子が通常の結晶構造での位置に配置される前に固化する。このため、結晶構造を持たず、異なる特性を示すことが多い。
アモルファス合金は、磁気記録用ヘッドなどに利用されており、鉄系のアモルファス合金は耐腐食性が必要な環境で使われることがある。ただし、高温で加工すると結晶化してしまうため、高温での加工ができないという短所がある。
[[カテゴリ:高等学校化学|せんいきんそく]]
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高校化学 クロムとマンガン
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高校化学 2族元素
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ガリア戦記 第6巻
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[[Category:ガリア戦記|6]]
[[ガリア戦記]]> '''第6巻''' >[[ガリア戦記 第6巻/注解|注解]]
<div style="text-align:center">
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[[画像:Gaule_-53.png|thumb|right|150px|ガリア戦記 第6巻の情勢図(BC53年)。<br>黄色の領域がローマ領。桃色が同盟部族領。]]
{| id="toc" style="align:left;clear:all;" align="left" cellpadding="5"
! style="background:#ccccff; text-align:left;" colspan="2" | ガリア戦記 第6巻 目次
|-
| style="text-align:right; font-size: 0.86em;"|
'''[[#ガッリア北部の平定|ガッリア北部の平定]]''':<br />
'''[[#第二次ゲルマーニア遠征|第二次ゲルマーニア遠征]]''':<br />
'''[[#ガッリア人の社会と風習について|ガッリア人の社会と風習について]]''':<br />
'''[[#ゲルマーニアの風習と自然について|ゲルマーニアの風習と自然について]]''':<br />
'''[[#対エブロネス族追討戦(1)|対エブロネス族追討戦(1)]]''':<br />
'''[[#スガンブリー族のアドゥアトゥカ攻略戦|スガンブリー族のアドゥアトゥカ攻略戦]]''':<br />
'''[[#対エブロネス族追討戦(2)|対エブロネス族追討戦(2)]]''':<br />
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| style="text-align:left; font-size: 0.86em;"|
[[#1節|01節]] |
[[#2節|02節]] |
[[#3節|03節]] |
[[#4節|04節]] |
[[#5節|05節]] |
[[#6節|06節]] |
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[[#18節|18節]] |
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[[#26節|26節]] |
[[#27節|27節]] |
[[#28節|28節]] <br />
[[#29節|29節]] |
[[#30節|30節]] |
[[#31節|31節]] |
[[#32節|32節]] |
[[#33節|33節]] |
[[#34節|34節]] <br />
[[#35節|35節]] |
[[#36節|36節]] |
[[#37節|37節]] |
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[[#40節|40節]] |
[[#41節|41節]] |
[[#42節|42節]] <br/>
[[#43節|43節]] |
[[#44節|44節]] <br/>
1節 [[#コラム「カエサルの軍団」|コラム「カエサルの軍団」]]<br>
10節 [[#コラム「スエービー族とカッティー族・ケールスキー族・ウビイー族について」|コラム「スエービー族とカッティー族・ケールスキー族・ウビイー族について」]]<br>10節 [[#コラム「ガッリア・ゲルマーニアの地誌・民族誌について」|コラム「ガッリア・ゲルマーニアの地誌・民族誌について」]]<br />
[[#脚注|脚注]]<br />
[[#参考リンク|参考リンク]]<br />
|}
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<div style="background-color:#dfffdf;">
==<span style="color:#009900;">はじめに</span>==
:<div style="color:#009900;width:85%;">カエサルは、第1巻の年([[w:紀元前58年|紀元前58年]])から<ruby><rb>[[w:プロコンスル|前執政官]]</rb><rp>(</rp><rt>プロコンスル</rt><rp>)</rp></ruby>として属州総督に赴任した。が、これは[[w:ガリア・キサルピナ|ガッリア・キサルピーナ]]、[[w:イリュリクム|イッリュリクム]]および[[w:ガリア・ナルボネンシス|ガッリア・トラーンサルピーナ]]の三属州の統治、および4個軍団を5年間にもわたって任されるというローマ史上前代未聞のものであった。これはカエサルが[[w:マルクス・リキニウス・クラッスス|クラッスス]]、[[w:グナエウス・ポンペイウス|ポンペイウス]]と非公式な盟約を結んだ[[w:三頭政治#第一回三頭政治|三頭政治]]の成果であった。カエサルには属州の行政に従事する気持ちははじめからなく、任期のほとんどを夏季は[[w:ガリア戦争|ガッリア侵攻]]に、冬季は首都ローマへの政界工作に費やした。[[ガリア戦記_第3巻#はじめに|第3巻]]の年([[w:紀元前56年|紀元前56年]])に3人は[[w:ルッカ|ルカ]]([[w:la:Luca|Luca]])の会談を行い、カエサルはクラッススとポンペイウスが翌年に執政官になること、カエサルの総督の任期をさらに5年間延長されることを求めた。会談の結果、任期が大幅に延長されることになったカエサルは、もはや軍事的征服の野望を隠そうとせず、ガッリアに止まらず、[[w:ゲルマニア|ゲルマーニア]]や[[w:ブリタンニア|ブリタンニア]]の征服へと向かっていく。一方、第4巻の年([[w:紀元前55年|前55年]])に再び執政官になった二人は、[[w:パルティア|パルティア]]を攻略するためにクラッススが[[w:シリア属州|シュリア]]総督になること、ポンペイウスがカエサルと同様に[[w:ヒスパニア|両ヒスパーニア]]と[[w:アフリカ属州|アフリカ]]の三属州の総督になって4個軍団を任されることを決める。</div>
<div style="text-align:center">
{|
|-
|[[画像:First Triumvirate of Caesar, Crassius and Pompey.jpg|thumb|right|500px|後に[[w:三頭政治#第一回三頭政治|三頭政治]](<span style="font-family:Times New Roman;">[[w:la:Triumviratus|Triumviratus]]</span>)と呼ばれることになる非公式な盟約を結んでいた、左から[[w:ガイウス・ユリウス・カエサル|カエサル]]、[[w:マルクス・リキニウス・クラッスス|クラッスス]]、[[w:グナエウス・ポンペイウス|ポンペイウス]]。<br>3人の同盟はついに破綻の時を迎える。]]
|}
</div>
:<div style="color:#009900;width:85%;">[[w:ガリア戦記 第5巻|第5巻]]の年([[w:紀元前54年|前54年]])、カエサルは満を持して二回目の[[w:ローマによるブリタンニア侵攻 (紀元前55年-紀元前54年)|ブリタンニア侵攻]]を敢行するが、大した戦果は得られず、背後のガッリア情勢を気にしながら帰還する。ついに[[w:アンビオリクス|アンビオリークス]]率いる[[w:エブロネス族|エブローネース族]]、ついで[[w:ネルウィイ族|ネルウィイー族]]が反乱を起こし、カエサルは何とか動乱を鎮めるが、ガッリア諸部族の動きは不穏であり、カエサルは諸軍団とともに越冬することを決める。</div>
:<div style="color:#009900;width:85%;">カエサルがブリタンニア遠征で不在の間に、ポンペイウスに嫁していたカエサルの一人娘[[w:ユリア (ガイウス・ユリウス・カエサルの娘)|ユーリア]]が[[w:産褥|産褥]]で命を落とす。一方、クラッススは属州[[w:シリア属州|シュリア]]に向かうが、これはクラッススの命運とともに三頭政治の瓦解、カエサルとポンペイウスの関係悪化を招来することになる。</div>
:<div style="color:#009900;width:85%;">本巻の年([[w:紀元前53年|前53年]])、カエサルは[[w:エブロネス族|エブローネース族]]追討戦に向かうが、これは大きな嵐の前の出来事に過ぎない。</div>
</div>
<!--
**:<span style="color:#009900;">(訳注:
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:
-->
==ガッリア北部の平定==
===1節===
*<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/1節]] {{進捗|00%|2024-09-18}}</span>
;カエサルがポンペイウスの助けにより新兵を徴募する
*<!--❶-->Multis de causis Caesar maiorem Galliae [[wikt:en:motus#Noun_2|motum]] [[wikt:en:exspectans|exspectans]]
**多くの理由から、カエサルは、ガッリアのより大きな動乱を予期しており、
*per [[wikt:en:Marcus#Latin|Marcum]] [[wikt:en:Silanus#Latin|Silanum]], [[wikt:en:Gaius#Latin|Gaium]] [[wikt:en:Antistius#Latin|Antistium]] Reginum, [[wikt:en:Titus#Latin|Titum]] [[wikt:en:Sextius#Latin|Sextium]], legatos,
**<ruby><rb>[[w:レガトゥス|総督副官]]</rb><rp>(</rp><rt>レガトゥス</rt><rp>)</rp></ruby>の[[w:マルクス・ユニウス・シラヌス (紀元前25年の執政官)|マールクス・スィーラーヌス]]、ガーイウス・アンティスティウス・レーギーヌス、ティトゥス・セクスティウスを介して
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[w:en:Marcus Junius Silanus (consul 25 BC)|Mārcus Iūnius Sīlānus]] はこの年([[w:紀元前53年|前53年]])からカエサルの副官、[[w:紀元前25年|前25年]]に執政官。<br> ''[[w:fr:Caius Antistius Reginus|Gaius Antistius Reginus]]'' は副官として[[ガリア戦記_第7巻#83節|第7巻83節]]と[[ガリア戦記_第7巻#90節|90節]]でも後出。<br> [[w:en:Titus Sextius|Titus Sextius]] はこの年からカエサルの副官、[[ガリア戦記_第7巻#83節|第7巻83節]]でも後出、<br> [[w:三頭政治#第二回三頭政治|第二回三頭政治]]では[[w:アフリカ属州|アフリカ属州]]の総督を務め、[[w:マルクス・アエミリウス・レピドゥス|レピドゥス]]に引き継ぐ。)</span>
*[[wikt:en:dilectus#Noun|dilectum]] habere [[wikt:en:instituo#Latin|instituit]];
**<small>(兵士の)</small>徴募を行なうことを決める。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:dilectus#Noun|dīlēctus]] = [[wikt:en:delectus#Noun_2|dēlēctus]]「選択、徴募」)</span>
:
*<!--❷-->simul ab [[wikt:en:Gnaeus#Latin|Gnaeo]] [[wikt:en:Pompeius#Proper_noun|Pompeio]] [[wikt:en:proconsul#Latin|proconsule]] [[wikt:en:peto#Latin|petit]],
**同時に、<ruby><rb>[[w:プロコンスル|前執政官]]</rb><rp>(</rp><rt>プロコンスル</rt><rp>)</rp></ruby>の[[w:グナエウス・ポンペイウス|グナエウス・ポンペイウス]]に<small>(以下のことを)</small>求める。
*[[wikt:en:quoniam#Latin|quoniam]] ipse ad <u>urbem</u> cum imperio rei publicae causa [[wikt:en:remaneo#Latin|remaneret]],
**<small>(ポンペイウス)</small>自身は<u>首都</u><small>〔[[w:ローマ|ローマ市]]〕</small>の辺りに、<ruby><rb>[[w:インペリウム|軍隊司令権]]</rb><rp>(</rp><rt>インペリウム</rt><rp>)</rp></ruby>を伴って、国務のために留まっていたので、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:urbs#Latin|urbs (urbem)]] は普通名詞として「都市・街」を意味するが、特に首都'''[[w:ローマ|ローマ市]]'''を指す。)</span>
**:<span style="color:#009900;">(訳注:ポンペイウスは、第4巻の年([[w:紀元前55年|前55年]])に[[w:マルクス・リキニウス・クラッスス|クラッスス]]とともに[[w:執政官|執政官]]を務め、<br> 第5巻の年(昨年=[[w:紀元前54年|前54年]])には[[w:ヒスパニア|両ヒスパーニア]]と[[w:アフリカ属州|アフリカ]]の属州総督となったが、<br> 首都ローマの政局が気がかりであったため、任地には副官を派遣して、<br> 自らはローマ郊外に滞在していた。ただ彼は属州総督であったため、<br> [[w:ポメリウム|ポメリウム]]と呼ばれるローマ市中心部に立ち入ることは禁じられていた。)</span>
*quos ex [[wikt:en:cisalpinus#Latin|Cisalpina]] Gallia <u>consulis</u> [[wikt:en:sacramentum#Latin|sacramento]] [[wikt:en:rogo#Latin|rogavisset]],
**[[w:ガリア・キサルピナ|ガッリア・キサルピーナ]]の内から、<ruby><rb>[[w:執政官|執政官]]</rb><rp>(</rp><rt>コンスル</rt><rp>)</rp></ruby>のための宣誓を求めていた者たちに、
**:<span style="color:#009900;">(訳注:ポンペイウスは執政官のときに元老院の許可を得て、<br> カエサルの属州で、自らの属州に派遣するための4個軍団の徴募を行った。<br> 徴集された新兵たちは執政官に宣誓したようである。)</span>
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、主要写本ω では [[wikt:en:consulis#Noun|consulis]]「執政官の」だが、<br> [[ガリア戦記/注解編/写本と校訂版#Ciacconius|Ciacconius]]は [[wikt:en:consul#Latin|consul]]「執政官が」と修正提案している。)</span>
*ad signa [[wikt:en:convenio#Latin|convenire]] et ad se [[wikt:en:proficiscor#Latin|proficisci]] [[wikt:en:iubeo#Latin|iuberet]],
**軍旗のもとに集まって、自分<small>〔カエサル〕</small>のもとへ進発することを命じるようにと。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:カエサルは、ポンペイウスに軍団兵の融通を求めたわけだ。<br> ポンペイウスが執政官のときに徴募していたうちの1個軍団がカエサルに貸し出された。<br> ところがその後、<u>第8巻54節の記述</u>によれば <ref>ラテン語文は、[[s:la:Commentarii_de_bello_Gallico/Liber_VIII#54]] などを参照。</ref><ref>英訳は、[[s:en:Commentaries_on_the_Gallic_War/Book_8#54]] などを参照。</ref>、[[w:マルクス・リキニウス・クラッスス|クラッスス]]の死後に、[[w:元老院|元老院]]は、<br> 対[[w:パルティア|パルティア]]戦争のために、カエサルとポンペイウスがそれぞれ1個軍団を供出することを可決したが、<br> ポンペイウスはカエサルに1個軍団の返還を求めたので、<br> カエサルは計2個軍団の引き渡しを求められることになる。<br> このことは、[[内乱記_第1巻#2節|『内乱記』第1巻2節]]以降でも言及される。)</span>
:
*<!--❸-->magni [[wikt:en:intersum#Latin|interesse]] etiam in reliquum tempus ad [[wikt:en:opinio#Latin|opinionem]] Galliae [[wikt:en:existimans#Latin|existimans]]
**ガッリアの世論に対して、これから後の時期にさえも、(カエサルが)大いに重要であると考えていたのは、
*tantas videri Italiae [[wikt:en:facultas#Latin|facultates]]
**(以下の程度に)イタリアの(動員)能力が豊富であると見えることである。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:Italiaという語は多義的でさまざまに解釈できるが、<br> 本書ではガッリア・キサルピーナを指すことが多い。)</span>
*ut, si [[wikt:en:aliquid#Etymology_2|quid]] esset in bello [[wikt:en:detrimentum#Latin|detrimenti]] acceptum,
**もし、戦争において何がしかの(兵員の)損害を蒙ったとしても、
*non modo id [[wikt:en:brevis#Latin|brevi]] tempore [[wikt:en:sarcio#Latin|sarciri]],
**それが短期間で修復(できる)だけでなく、
*sed etiam [[wikt:en:maior#Adjective_2|maioribus]] [[wikt:en:augeo#Latin|augeri]] copiis posset.
**より多く軍勢で増されることが可能だ<br>(とガッリアの世論に思われることが重要であるとカエサルは考えたのである)。
:
*<!--❹-->Quod cum [[wikt:en:Pompeius#Proper_noun|Pompeius]] et rei publicae et amicitiae [[wikt:en:tribuo#Latin|tribuisset]],
**そのことを、ポンペイウスは公儀<small>〔ローマ国家〕</small>のためにも(三頭政治の)盟約のためにも認めたので、
*celeriter [[wikt:en:confectus#Latin|confecto]] per suos [[wikt:en:dilectus#Noun|dilectu]]
**(カエサルの)配下の者たちを介して速やかに徴募が成し遂げられて
*tribus ante [[wikt:en:exactus#Latin|exactam]] [[wikt:en:hiems#Latin|hiemem]] et [[wikt:en:constitutus#Participle|constitutis]] et [[wikt:en:adductus#Latin|adductis]] legionibus
**冬が過ぎ去る前に、3個[[w:ローマ軍団|軍団]]が組織されて<small>(カエサルのもとへ)</small>もたらされ、
*[[wikt:en:duplicatus#Latin|duplicato]]<nowiki>que</nowiki> earum [[wikt:en:cohors#Latin|cohortium]] numero, quas cum [[wikt:en:Quintus#Latin|Quinto]] [[wikt:en:Titurius#Latin|Titurio]] [[wikt:en:amitto#Latin|amiserat]],
**それらの<ruby><rb>[[w:コホルス|歩兵大隊]]</rb><rp>(</rp><rt>コホルス</rt><rp>)</rp></ruby>の数は、[[w:クィントゥス・ティトゥリウス・サビヌス|クィーントゥス・ティトゥーリウス(・サビーヌス)]]とともに失っていたものの倍にされた。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:前巻でサビーヌスとコッタは1個軍団と5個[[w:コホルス|歩兵大隊]](=15個歩兵大隊)を失ったが、<br> 代わりに3個軍団(=30個歩兵大隊)を得たということ。)</span>
*et [[wikt:en:celeritas#Latin|celeritate]] et copiis [[wikt:en:doceo#Latin|docuit]],
**<small>(徴兵の)</small>迅速さと軍勢<small>(の多さ)</small>において<small>(ガッリア人たちに)</small>示したのは、
*quid populi Romani [[wikt:en:disciplina#Latin|disciplina]] atque [[wikt:en:ops#Noun_4|opes]] possent.
**ローマ国民の規律と能力がいかに有力であるかということである。
{| class="wikitable"
|-
| style="vertical-align:top; text-align:left;" |[[画像:Hw-pompey.jpg|thumb|right|250px|[[w:グナエウス・ポンペイウス|グナエウス・ポンペイウス]]の胸像。カエサルおよび[[w:マルクス・リキニウス・クラッスス|マルクス・クラッスス]]とともに[[w:三頭政治|三頭政治]]を行ない、[[w:共和政ローマ|共和政末期のローマ]]を支配した。この巻の年にクラッススが戦死し、ポンペイウスに嫁いでいたカエサルの娘[[w:ユリア (ガイウス・ユリウス・カエサルの娘)|ユーリア]]が前年に病没、三頭政治は瓦解して、やがて[[w:ローマ内戦 (紀元前49年-紀元前45年)|内戦]]へ向かう。]]
| style="vertical-align:top; text-align:left;" |[[画像:Theatre of Pompey 3D cut out.png|thumb|left|400px|'''[[w:ポンペイウス劇場|ポンペイウス劇場]]'''の復元図。[[w:グナエウス・ポンペイウス|ポンペイウス]]の名を冠したこの劇場は、彼が執政官であった[[w:紀元前55年|紀元前55年]]頃に竣工し、当時最大の劇場であった。<br> 伝記作家[[w:プルタルコス|プルータルコス]]は以下のように伝えている<ref>[[s:en:Plutarch%27s_Lives_(Clough)/Life_of_Pompey]] より</ref>:「クラッススは執政官の任期が切れるとすぐに属州へと出発したが、ポンペイウスはローマで劇場の開館式や奉献式に出席し、その式にはあらゆる競技・ショー・運動・体操・音楽などで人々を楽しませた。野獣の狩猟や餌付け、野獣との闘いもあり、500頭のライオンが殺された。しかし何よりも、象の闘いは、恐怖と驚きに満ちた見世物であった」と。<br><br> カエサルの最期の場所でもあり、血みどろのカエサルはポンペイウスの胸像の前で絶命したとされている。]]
|}
<!--
<span style="color:#009900;"></span>
**:<span style="color:#009900;">(訳注:
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:
-->
<div style="background-color:#dfffdf;">
===<span style="color:#009900;">コラム「カエサルの軍団」</span>===
:<div style="color:#009900;width:75%;">カエサルは第1巻の年([[w:紀元前58年|紀元前58年]])に三属州の総督に任官するとともに4個軍団(VI・VII・[[w:en:Legio VIII Augusta|VIII]]・[[w:en:Legio IX Hispana|IX]])を任された。[[w:ヘルウェティイ族|ヘルウェーティイー族]]([[w:la:Helvetii|Helvetii]])と対峙するうちに、元老院に諮らずに独断で2個軍団([[w:en:Legio X Equestris|X]]・[[w:en:Legio XI Claudia|XI]])を徴募する(1巻10節)。<br> 第2巻の年([[w:紀元前57年|紀元前57年]])に3個軍団([[w:en:Legio XII Fulminata|XII]]・[[w:en:Legio XIII Gemina|XIII]]・[[w:en:Legio XIV Gemina|XIV]])を徴募して、計9個軍団。<br><br> [[ガリア戦記_第5巻#24節|『第5巻』24節]]の時点で、カエサルは8個軍団と5個[[w:コホルス|歩兵大隊]]を保持していると記されている。最古参の第6軍団が半減していると考えると、[[w:アドゥアトゥカの戦い|アドゥアトゥカの戦い]]で[[w:アンビオリクス|アンビオリークス]]によって、[[w:クィントゥス・ティトゥリウス・サビヌス|サビーヌス]]やコッタらとともに滅ぼされたのは、第14軍団([[w:en:Legio XIV Gemina|XIV]])と古い第6軍団(VI)の生き残りの5個[[w:コホルス|歩兵大隊]]と考えることができる。<br><br> 本巻の年([[w:紀元前53年|紀元前53年]])では、ポンペイウスの第1軍団がカエサルに譲られ、後にカエサルの軍団の番号系列に合わせて第6軍団(VI)と改称されたようだ。「第14軍団」は全滅させられたので通常は欠番にするところだが、カエサルはあえて再建して第14軍団と第15軍団が徴募され、これら3個軍団を加えると、カエサルが保持するのは計10個軍団となる。<br> もっとも本巻ではカエサルは明瞭な記述をしておらず、上述のように後に2個軍団を引き渡すことになるためか、伝記作家[[w:プルタルコス|プルータルコス]]は、ポンペイウスがカエサルに2個軍団を貸し出した、と説明している。
</div>
</div>
===2節===
*<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/2節]] {{進捗|00%|2024-09-29}}</span>
;ガッリア北部の不穏な情勢、トレーウェリー族がライン川東岸のゲルマーニア人を勧誘
*<!--❶-->[[wikt:en:interfectus#Latin|Interfecto]] [[wikt:en:Indutiomarus#Latin|Indutiomaro]], ut [[wikt:en:doceo#Latin|docuimus]],
**<small>([[ガリア戦記 第5巻#58節|第5巻58節]]で)</small>述べたように、インドゥーティオマールスが殺害されると、
*ad eius propinquos a [[wikt:en:Treveri#Latin|Treveris]] imperium [[wikt:en:defero#Latin|defertur]].
**トレーウェリー族の者たちにより彼の縁者たちへ支配権がもたらされる。
*Illi finitimos [[wikt:en:Germanus#Noun|Germanos]] [[wikt:en:sollicito#Latin|sollicitare]] et [[wikt:en:pecunia#Latin|pecuniam]] [[wikt:en:polliceor#Latin|polliceri]] non [[wikt:en:desisto#Latin|desistunt]].
**彼らは隣接する[[w:ゲルマニア|ゲルマーニア]]人たちをそそのかすこと、および金銭を約束することをやめない。
*Cum ab proximis [[wikt:en:impetro#Latin|impetrare]] non possent, [[wikt:en:ulterior#Latin|ulteriores]] [[wikt:en:tempto#Latin|temptant]].
**たとえ隣人たちによって(盟約を)成し遂げることができなくても、より向こう側の者たちに試みる。
:
*<!--❷-->[[wikt:en:inventus#Latin|Inventis]] [[wikt:en:nonnullus#Latin|non nullis]] civitatibus
**少なからぬ部族国家を見出して
*[[wikt:en:ius_iurandum#Latin|iure iurando]] inter se [[wikt:en:confirmo#Latin|confirmant]]
**互いに誓約し合って(支持を)固め、
*obsidibusque de pecunia [[wikt:en:caveo#Latin|cavent]];
**金銭(の保証)のために人質たちを提供する。
*[[wikt:en:Ambiorix#Latin|Ambiorigem]] sibi [[wikt:en:societas#Latin|societate]] et [[wikt:en:foedus#Latin|foedere]] [[wikt:en:adiungo#Latin|adiungunt]].
**[[w:アンビオリクス|アンビオリークス]]を自分たちにとっての連合や同盟に加盟させる。
:
*<!--❸-->Quibus rebus [[wikt:en:cognitus#Participle|cognitis]] Caesar,
**それらの事情を知るや、カエサルは、
*cum undique bellum [[wikt:en:paro#Latin|parari]] videret,
**至る所で戦争が準備されていることを見ていたので、
*[[wikt:en:Nervii#Latin|Nervios]], [[wikt:en:Aduatuci#Latin|Atuatucos]] ac [[wikt:en:Menapii#Latin|Menapios]] [[wikt:en:adiunctus#Participle|adiunctis]]
**(すなわち)[[w:ネルウィイ族|ネルウィイー族]]、アトゥアトゥキー族とメナピイー族を加盟させたうえに
*<u>Cisrhenanis</u> omnibus <u>[[wikt:en:Germanus#Noun|Germanis]]</u> esse in armis,
**レーヌス<small>〔[[w:ライン川|ライン川]]〕</small>のこちら側のすべてのゲルマーニア人たちが武装していて、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:''[[w:en:Germani cisrhenani|Germani Cisrhenani]]''「レーヌスのこちら側のゲルマーニア人」(西岸の諸部族) は西岸部族の総称。<br> ''Germani Transrhenani'' 「レーヌスの向こう側のゲルマーニア人」(東岸の諸部族) の対義語で、<br> 西岸の諸部族が東岸の諸部族を招き寄せているというのが『ガリア戦記』の主張である。)</span>
*[[wikt:en:Senones#Latin|Senones]] ad [[wikt:en:imperatum#Latin|imperatum]] non venire
**セノネース族は<small>(カエサルから)</small>命令されたことに従わずに
*et cum [[wikt:en:Carnutes#Latin|Carnutibus]] finitimisque civitatibus consilia [[wikt:en:communico#Latin|communicare]],
**カルヌーテース族および隣接する諸部族とともに謀計を共有しており、
*a [[wikt:en:Treveri#Latin|Treveris]] [[wikt:en:Germanus#Noun|Germanos]] crebris [[wikt:en:legatio#Latin|legationibus]] [[wikt:en:sollicito#Latin|sollicitari]],
**ゲルマーニア人たちがたびたびトレーウェリー族の使節団によってそそのかされていたので、
*[[wikt:en:mature#Adverb|maturius]] sibi de bello [[wikt:en:cogitandus#Latin|cogitandum]] [[wikt:en:puto#Latin|putavit]].
**<small>(カエサルは)</small>自分にとって<small>(例年)</small>より早めに戦争を計画するべきだと見なした。
<!--
<span style="color:#009900;"></span>
**:<span style="color:#009900;">(訳注:
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:
-->
===3節===
*<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/3節]] {{進捗|00%|2024-10-06}}</span>
;カエサルがネルウィイー族を降し、ガッリアの領袖たちの会合を召集する
*<!--❶-->Itaque [[wikt:en:nondum#Latin|nondum]] [[wikt:en:hiems#Latin|hieme]] [[wikt:en:confectus#Latin|confecta]]
**<small>(カエサルは)</small>こうして、まだ冬が終わらないうちに、
*proximis quattuor [[wikt:en:coactus#Latin|coactis]] legionibus
**近隣の4個[[w:ローマ軍団|軍団]]を集めて、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[ガリア戦記_第5巻#52節|第5巻52節]]で言及されたように、カエサルは、本営を置いていた<br> サマロブリーウァ(現在の[[w:アミアン|アミアン]])周辺の冬営に3個軍団、<br> およびファビウスの軍団を配置していたと思われる。)</span>
*[[wikt:en:de_improviso#Latin|de improviso]] in fines [[wikt:en:Nervii#Latin|Nerviorum]] [[wikt:en:contendo#Latin|contendit]]
**不意に[[w:ネルウィイ族|ネルウィイー族]]の領土に急いだ。
:
*<!--❷-->et, [[wikt:en:priusquam#Latin|prius quam]] illi aut [[wikt:en:convenio#Latin|convenire]] aut [[wikt:en:profugio#Latin|profugere]] possent,
**そして、彼ら<small>(の軍勢)</small>は、集結したり、あるいは逃亡したりできるより前に、
*magno [[wikt:en:pecus#Latin|pecoris]] atque hominum numero [[wikt:en:captus#Latin|capto]]
**家畜たちおよび人間たちの多数を捕らえて、
*atque ea [[wikt:en:praeda#Latin|praeda]] militibus [[wikt:en:concessus#Participle|concessa]]
**それらの戦利品を兵士たちに譲り、
*[[wikt:en:vastatus#Latin|vastatis]]<nowiki>que</nowiki> agris
**耕地を荒らして、
*in [[wikt:en:deditio#Latin|deditionem]] venire atque obsides sibi dare [[wikt:en:cogo#Latin|coegit]].
**<small>(ネルウィイー族に、ローマ勢へ)</small>降伏すること、人質たちを自分<small>〔カエサル〕</small>に供出することを強いた。
:
*<!--❸-->Eo celeriter [[wikt:en:confectus#Latin|confecto]] [[wikt:en:negotium#Latin|negotio]]
**その戦役は速やかに成し遂げられたので、
*rursus in [[wikt:en:hibernum#Latin|hiberna]] legiones [[wikt:en:reduco#Latin|reduxit]].
**再び諸軍団を冬営に連れ戻した。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:本営を置いていたサマロブリーウァ周辺の冬営。)</span>
:
*'''ガッリアの領袖たちの会合'''
*<!--❹-->[[wikt:en:concilium#Latin|Concilio]] Galliae primo [[wikt:en:ver#Latin|vere]], ut [[wikt:en:instituo#Latin|instituerat]], [[wikt:en:indictus#Participle|indicto]],
**ガッリアの<small>(領袖たちの)</small>会合を、定めていたように、春の初めに通告すると、
**:<span style="color:#009900;">(訳注:会合の集合場所は、当初は本営のあるサマロブリーウァだったであろう。)</span>
*cum reliqui praeter [[wikt:en:Senones#Latin|Senones]], [[wikt:en:Carnutes#Latin|Carnutes]] [[wikt:en:Treveri#Latin|Treveros]]<nowiki>que</nowiki> venissent,
**[[w:セノネス族|セノネース族]]、カルヌーテース族とトレーウェリー族を除いて、ほかの者たちは(会合に)現われていたので、
**:<span style="color:#009900;">(訳注:ガッリア北部では、このほかエブローネース族とメナピイー族が参加していないはずである。)</span>
*initium belli ac [[wikt:en:defectio#Latin|defectionis]] hoc esse [[wikt:en:arbitratus#Latin|arbitratus]],
**このこと<span style="color:#009900;">〔3部族の不参加〕</span>は戦争と背反の始まりであると思われて、
*ut omnia [[wikt:en:postpono#Latin|postponere]] videretur,
**<small>(他の)</small>すべて<small>(の事柄)</small>を後回しにすることと見なされるように、
*[[wikt:en:concilium#Latin|concilium]] [[wikt:en:Lutetia#Latin|Lutetiam]] [[wikt:en:Parisii#Latin|Parisiorum]] [[wikt:en:transfero#Latin|transfert]].
**会合を[[w:パリシイ族|パリースィイー族]]の(城塞都市である)[[w:ルテティア|ルーテーティア]]に移す。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:ルーテーティア Lutetia は、写本によってはルーテーキア Lutecia とも表記されている。<br> ラテン語では Lutetia Parisiorum「パリースィイー族の泥土」と呼ばれ、現在の[[w:パリ|パリ市]]である。<br> [[w:ストラボン|ストラボーン]]などによれば[[w:ケルト語|ケルト語]]でルコテキア Lukotekia と呼ばれていたらしい。)</span>
:
; セノネース族について
[[画像:Plan_de_Paris_Lutece2_BNF07710745.png|thumb|right|200px|ルテティア周辺の地図(18世紀頃)]]
*<!--❺-->[[wikt:en:confinis#Latin|Confines]] erant hi [[wikt:en:Senones#Latin|Senonibus]]
**彼ら<small>〔パリースィイー族〕</small>はセノネース族に隣接していて、
*civitatemque patrum memoria [[wikt:en:coniungo#Latin|coniunxerant]],
**父祖の伝承では<small>(セノネース族と一つの)</small>部族として結びついていた。
*sed ab hoc consilio [[wikt:en:absum#Latin|afuisse]] [[wikt:en:existimo#Latin|existimabantur]].
**しかし<small>(パリースィイー族は)</small>これらの謀計には関与していなかったと考えられていた。
:
*<!--❻-->Hac re pro [[wikt:en:suggestus#Latin|suggestu]] [[wikt:en:pronuntiatus#Latin|pronuntiata]]
**<small>(カエサルは)</small>この事を演壇の前で宣言すると、
*eodem die cum legionibus in [[wikt:en:Senones#Latin|Senones]] [[wikt:en:proficiscor#Latin|proficiscitur]]
**同日に諸軍団とともにセノネース族のところに出発して、
*magnisque itineribus eo [[wikt:en:pervenio#Latin|pervenit]].
**強行軍でもってそこに到着した。
<!--
<span style="color:#009900;"></span>
**:<span style="color:#009900;">(訳注:
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:
-->
===4節===
*<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/4節]] {{進捗|00%|2024-10-09}}</span>
;セノネース族のアッコーが造反するが、カエサルはセノネース族とカルヌーテース族を降伏させる
*<!--❶-->[[wikt:en:cognitus#Participle|Cognito]] eius [[wikt:en:adventus#Latin|adventu]],
**彼<small>〔カエサル〕</small>の到来を知ると、
*[[wikt:en:Acco#Latin|Acco]], qui princeps eius consilii fuerat,
**その画策の首謀者であった<small>(セノネース族の)</small>'''アッコー''' は、
*[[wikt:en:iubeo#Latin|iubet]] in oppida multitudinem [[wikt:en:convenio#Latin|convenire]].
**群衆に諸[[w:オッピドゥム|城塞都市]]に集結することを命じる。
:
*[[wikt:en:conans#Latin|Conantibus]], [[wikt:en:priusquam|prius quam]] id [[wikt:en:effici|effici]] posset, [[wikt:en:adsum#Latin|adesse]] Romanos [[wikt:en:nuntio#Verb|nuntiatur]].
**そのことが遂行され得るより前に、ローマ人が接近していることが、企てている者たちに報告される。
:
*<!--❷-->Necessario [[wikt:en:sententia#Latin|sententia]] [[wikt:en:desisto#Latin|desistunt]]
**<small>(セノネース族は)</small>やむなく<small>(カエサルへの謀反の)</small>意図を思いとどまって、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:necessario#Adverb|necessāriō]] = [[wikt:en:necessarie#Adverb|necessāriē]]「やむを得ず」)</span>
*legatosque [[wikt:en:deprecor#Latin|deprecandi]] causa ad Caesarem mittunt;
**<small>(恩赦を)</small>嘆願するために、使節たちをカエサルのもとへ遣わして、
*<u>adeunt</u> per [[wikt:en:Aedui#Latin|Haeduos]], quorum [[wikt:en:antiquitus|antiquitus]] erat in fide civitas.
**部族国家が昔から<small>(ローマ人に対して)</small>忠実であった[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]を介して、頼み込む。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:この部分は、セノネース族がハエドゥイー族の庇護下にあったように訳されることも多いが、<br> [[ガリア戦記 第5巻#54節|第5巻54節]]における両部族とローマ人の関係の記述を考慮して、上のように訳した<ref>[[s:en:Commentaries_on_the_Gallic_War/Book_6#4|英語版ウィキソース]]では「they make advances to him through the Aedui, whose state was from ancient times under the protection of Rome.」と英訳されている。</ref>。)</span>
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:de:adire|adeō]]「(誰かに)アプローチする」「(誰かに)頼る、頼む、懇願する」<ref>[https://www.frag-caesar.de/lateinwoerterbuch/adeo-uebersetzung-1.html adeo-Übersetzung im Latein Wörterbuch]</ref>)</span>
:
*<!--❸-->Libenter Caesar [[wikt:en:petens#Latin|petentibus]] [[wikt:en:Aedui#Latin|Haeduis]] dat [[wikt:en:venia#Latin|veniam]]
**カエサルは、懇願するハエドゥイー族に対して、喜んで<small>(セノネース族への)</small>恩赦を与え、
*[[wikt:en:excusatio#Latin|excusationem]]<nowiki>que</nowiki> accipit,
**<small>(セノネース族の)</small>弁解を受け入れる。
*quod [[wikt:en:aestivus#Latin|aestivum]] tempus [[wikt:en:instans#Latin|instantis]] belli,
**というのは、夏の時季は差し迫っている<small>(エブローネース族らとの)</small>戦争のためのものであり、
*non [[wikt:en:quaestio#Latin|quaestionis]] esse [[wikt:en:arbitror#Latin|arbitrabatur]].
**<small>(謀反人に対する)</small>尋問のためのものではないと<small>(カエサルが)</small>判断していたからである。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:エブローネース族との戦争が終わった後に、謀反人への尋問が行なわれることになる。[[#44節|44節]]参照。)</span>
:
*<!--❹-->Obsidibus [[wikt:en:imperatus#Latin|imperatis]] centum,
**<small>(カエサルは)</small>100人の人質<small>(の供出)</small>を命令すると、
*hos Haeduis [[wikt:en:custodiendus#Latin|custodiendos]] [[wikt:en:trado#Latin|tradit]].
**彼ら<small>〔人質たち〕</small>を監視するべく[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]に引き渡す。
:
*<!--❺-->[[wikt:en:eodem#Adverb|Eodem]] [[wikt:en:Carnutes#Latin|Carnutes]] legatos obsidesque [[wikt:en:mitto#Latin|mittunt]],
**ちょうどそこに、カルヌーテース族が使節たちと人質たちを遣わして、
*[[wikt:en:usus#Participle|usi]] [[wikt:en:deprecator#Latin|deprecatoribus]] [[wikt:en:Remi#Proper_noun_3|Remis]], quorum erant in [[wikt:en:clientela#Latin|clientela]];
**<small>(カルヌーテース族が)</small><ruby><rb>[[w:クリエンテス|庇護]]</rb><rp>(</rp><rt>クリエンテーラ</rt><rp>)</rp></ruby>を受ける関係にあったレーミー族を<ruby><rb>助命仲介者</rb><rp>(</rp><rt>デープレカートル</rt><rp>)</rp></ruby>として利用して、
*eadem ferunt [[wikt:en:responsum#Latin|responsa]].
**<small>(セノネース族のときと)</small>同じ返答を獲得する。
:
*<!--❻-->[[wikt:en:perago#Latin|Peragit]] [[wikt:en:concilium#Noun|concilium]] Caesar
**カエサルは<small>(ガッリア諸部族の領袖たちの)</small>会合を完了して、
*equitesque [[wikt:en:impero#Latin|imperat]] civitatibus.
**[[w:騎兵|騎兵]]たち<small>(の供出)</small>を諸部族に命令する。
<!--
<span style="color:#009900;"></span>
**:<span style="color:#009900;">(訳注:
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:
-->
===5節===
*<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/5節]] {{進捗|00%|2024-10-10}}</span>
;アンビオリークスへの策を練り、メナピイー族へ向かう
*<!--❶-->Hac parte Galliae [[wikt:en:pacatus#Latin|pacata]],
**ガッリアのこの方面が平定されたので、
**:<span style="color:#009900;">(訳注:[[#3節|3節]]~[[#4節|4節]]でネルウィイー族、セノネース族とカルヌーテース族がカエサルに降伏したことを指す。)</span>
*totus et mente et animo in bellum [[wikt:en:Treveri#Latin|Treverorum]] et [[wikt:en:Ambiorix#Latin|Ambiorigis]] [[wikt:en:insisto#Latin|insistit]].
**<small>(カエサルは)</small>全身全霊をかけて、トレーウェリー族と[[w:アンビオリクス|アンビオリークス]]との戦争に着手する。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:totus et [[wikt:en:mens#Latin|mente]] et [[wikt:en:animus#Latin|animo]] 「全身全霊をかけて」''with all his heart and soul'' )</span>
:
*<!--❷-->[[wikt:en:Cavarinus#Latin|Cavarinum]] cum equitatu [[wikt:en:Senones#Latin|Senonum]] [[wikt:en:secum#Latin|secum]] [[wikt:en:proficiscor#Latin|proficisci]] [[wikt:en:iubeo#Latin|iubet]],
**カウァリーヌスに、セノネース族の[[w:騎兵|騎兵]]隊を伴って、自分<small>〔カエサル〕</small>とともに出発することを命じる。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:''[[w:de:Cavarinus|Cavarinus]]'' は、[[ガリア戦記 第5巻#54節|第5巻54節]]で前述のように、<br> カエサルにより王位に据えられていたが、独立主義勢力により追放された。)</span>
*ne [[wikt:en:aliquis#Latin|quis]] <u>aut</u> ex huius [[wikt:en:iracundia#Latin|iracundia]] <u>aut</u> ex eo, quod [[wikt:en:mereo#Latin|meruerat]], [[wikt:en:odium#Latin|odio]] civitatis [[wikt:en:motus#Noun_2|motus]] [[wikt:en:exsistat|exsistat]].
**彼の激しやすさから、<u>あるいは</u>彼が招来していた反感から、部族国家の何らかの動乱が起こらないようにである。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:前節でアッコーら独立主義者たちがカエサルに降伏して、<br> カウァリーヌスが王位に戻されたために、<br> 部族内で反感をかっていたのであろう。)</span>
:
*<!--❸-->His rebus [[wikt:en:constitutus#Participle|constitutis]],
**これらの事柄が取り決められると、
*quod pro explorato habebat, [[wikt:en:Ambiorix#Latin|Ambiorigem]] [[wikt:en:proelium#Latin|proelio]] non esse <u>concertaturum</u>,
**<small>(カエサルは)</small>[[w:アンビオリクス|アンビオリークス]]が戦闘で激しく争うつもりではないことを、確実と見なしていたので、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:pro#Latin|pro]] [[wikt:en:exploratus#Latin|explorato]] = [[wikt:en:exploratus#Latin|exploratum]]「確かなものとして(''as certain'')」)</span>
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、χ系(A・Q)およびL・N写本では non esse <u>[[wikt:en:concertaturum|concertaturum]]</u>「激しくつもりではないこと」だが、<br> β系写本では non esse <u>[[wikt:en:contenturum|contenturum]]</u><br> B・M・S写本では non esse <u>concertaturum [[wikt:en:tenturum|tenturum]]</u> となっている。)</span>
*reliqua eius [[wikt:en:consilium#Latin|consilia]] animo [[wikt:en:circumspicio#Latin|circumspiciebat]].
**彼<small>〔アンビオリークス〕</small>のほかの計略に思いをめぐらせていた。
:
; カエサルがメナピイー族の攻略を決意
*<!--❹-->Erant [[wikt:en:Menapii#Latin|Menapii]] propinqui [[wikt:en:Eburones#Latin|Eburonum]] finibus,
**メナピイー族は[[w:エブロネス族|エブローネース族]]の領土に隣り合っていて、
*[[wikt:en:perpetuus#Latin|perpetuis]] [[wikt:en:palus#Latin|paludibus]] [[wikt:en:silva#Latin|silvis]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:munitus#Latin|muniti]],
**絶え間ない沼地と森林によって守られており、
*qui uni ex Gallia de pace ad Caesarem legatos [[wikt:en:numquam#Latin|numquam]] [[wikt:en:mitto#Latin|miserant]].
**彼らは[[w:ガリア|ガッリア]]のうちでカエサルのもとへ講和の使節たちを決して遣わさなかった唯一の者たちであった。
:
*Cum his esse [[wikt:en:hospitium#Latin|hospitium]] [[wikt:en:Ambiorix#Latin|Ambiorigi]] [[wikt:en:scio#Latin|sciebat]];
**<small>(カエサルは)</small>[[w:アンビオリクス|アンビオリークス]]が彼らのもとで歓待されていることを知っていたし、
*item per [[wikt:en:Treveri#Latin|Treveros]] venisse Germanis in [[wikt:en:amicitia#Latin|amicitiam]] [[wikt:en:cognosco#Latin|cognoverat]].
**同様にトレーウェリー族を通じて[[w:ゲルマニア|ゲルマーニア]]人と盟約を結んだことも探知していた。
:
*<!--❺-->Haec <u>prius</u> illi [[wikt:en:detrahendus#Latin|detrahenda]] auxilia [[wikt:en:existimo#Latin|existimabat]] <u>quam</u> ipsum bello [[wikt:en:lacesso#Latin|lacesseret]],
**<ruby><rb>彼奴</rb><rp>(</rp><rt>あやつ</rt><rp>)</rp></ruby><small>〔アンビオリークス〕</small>へのこれらの支援は、彼奴自身に戦争で挑みかかる<u>より前に</u>引き離されるべきだと考えていた。
*ne [[wikt:en:desperatus#Latin|desperata]] [[wikt:en:salus#Latin|salute]]
**<small>(アンビオリークスが)</small>身の安全に絶望して、
*<u>aut</u> se in [[wikt:en:Menapii#Latin|Menapios]] [[wikt:en:abdo#Latin|abderet]],
**<u>あるいは</u>メナピイー族のところに身を隠したりしないように、
*<u>aut</u> cum [[wikt:en:Transrhenanus#Latin|Transrhenanis]] [[wikt:en:congredior#Latin|congredi]] [[wikt:en:cogo#Latin|cogeretur]].
**<u>あるいは</u>レーヌス<small>〔[[w:ライン川|ライン川]]〕</small>の向こう側の者たちと合同することを強いられないように、である。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:''Germani Transrhenani'' 「レーヌスの向こう側のゲルマーニア人」(東岸の諸部族)を<br> ''[[w:en:Germani cisrhenani|Germani Cisrhenani]]''「レーヌスのこちら側のゲルマーニア人」(西岸の諸部族) が<br> 招き寄せているというのが『ガリア戦記』の主張である。)</span>
:
*<!--❻-->Hoc [[wikt:en:initus#Participle|inito]] consilio,
**この計略を決断すると、
*[[wikt:en:totus#Etymology_1|totius]] exercitus [[wikt:en:impedimentum#Latin|impedimenta]] ad [[wikt:en:Labienus#Latin|Labienum]] in [[wikt:en:Treveri#Latin|Treveros]] [[wikt:en:mitto#Latin|mittit]]
**<small>(カエサルは)</small>全軍の[[w:輜重|輜重]]を、トレーウェリー族のところにいる[[w:ティトゥス・ラビエヌス|ラビエーヌス]]のもとへ送り、
*duasque ad eum legiones [[wikt:en:proficiscor#Latin|proficisci]] [[wikt:en:iubeo#Latin|iubet]];
**2個[[w:ローマ軍団|軍団]]に彼<small>〔ラビエーヌス〕</small>のもとへ出発することを命じる。
:
*ipse cum legionibus [[wikt:en:expeditus#Participle|expeditis]] quinque in [[wikt:en:Menapii#Latin|Menapios]] [[wikt:en:proficiscor#Latin|proficiscitur]].
**<small>(カエサル)</small>自身は軽装の5個軍団とともにメナピイー族のところに出発する。
:
*<!--❼-->Illi, [[wikt:en:nullus#Adjective|nulla]] [[wikt:en:coactus#Latin|coacta]] [[wikt:en:manus#Latin|manu]],
**あの者らは、何ら手勢を集めず、
*loci [[wikt:en:praesidium#Latin|praesidio]] [[wikt:en:fretus#Adjective|freti]],
**地勢の要害を信頼して、
*in [[wikt:en:silva#Latin|silvas]] [[wikt:en:palus#Latin|paludes]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:confugio#Latin|confugiunt]]
**森林や沼地に避難して、
*[[wikt:en:suus#Latin|sua]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:eodem#Adverb|eodem]] [[wikt:en:confero#Latin|conferunt]].
**自分たちの家財を同じところに運び集める。
<!--
<span style="color:#009900;"></span>
<small></small>
**:<span style="color:#009900;">(訳注:
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:
-->
===6節===
*<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/6節]] {{進捗|00%|2024-10-20}}</span>
;メナピイー族がついにカエサルの軍門に降る
*<!--❶-->Caesar,
**カエサルは、
*[[wikt:en:partitus#Latin|partitis]] copiis cum [[wikt:en:Gaius#Latin|Gaio]] [[wikt:en:Fabius#Latin|Fabio]] legato et [[wikt:en:Marcus#Latin|Marco]] [[wikt:en:Crassus#Latin|Crasso]] [[wikt:en:quaestor#Latin|quaestore]]
**[[w:レガトゥス|副官]]である[[w:ガイウス・ファビウス|ガーイウス・ファビウス]]と[[w:クァエストル|財務官]]である[[w:マルクス・リキニウス・クラッスス (財務官)|マールクス・クラッスス]]とともに軍勢を分配して、
*celeriterque [[wikt:en:effectus#Participle|effectis]] [[wikt:en:pons#Latin|pontibus]]
**速やかに橋梁を造って、
**:<span style="color:#009900;">(訳注:橋梁は軽装の軍団兵が沼地を渡るためのものなので、丸太道のようなものであろうか。)</span>
*[[wikt:en:adeo#Verb|adit]] [[wikt:en:tripertito|tripertito]],
**三方面から<small>(メナピイー族の領土に)</small>接近して、
[[画像:GallischeHoeve.jpg|thumb|right|200px|復元されたメナピイー族の住居(再掲)]]
*[[wikt:en:aedificium#Latin|aedificia]] [[wikt:en:vicus#Latin|vicos]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:incendo#Latin|incendit]],
**建物や村々を焼き討ちして、
*magno [[wikt:en:pecus#Latin|pecoris]] atque hominum numero [[wikt:en:potior#Latin|potitur]].
**家畜や人間の多数を<small>(戦利品として)</small>獲得する。
:
*<!--❷-->Quibus rebus [[wikt:en:coactus#Participle|coacti]]
**そのような事態に強いられて、
*[[wikt:en:Menapii#Latin|Menapii]] legatos ad eum [[wikt:en:pax#Latin|pacis]] [[wikt:en:petendus#Latin|petendae]] causa [[wikt:en:mitto#Latin|mittunt]].
**メナピイー族は和平を求めるための使節たちを彼<small>〔カエサル〕</small>のもとへ遣わす。
:
*<!--❸-->Ille [[wikt:en:obses#Latin|obsidibus]] [[wikt:en:acceptus#Latin|acceptis]],
**彼<small>〔カエサル〕</small>は人質たちを受け取ると、
*hostium se [[wikt:en:habiturus#Latin|habiturum]] numero [[wikt:en:confirmo#Latin|confirmat]], si aut [[wikt:en:Ambiorix#Latin|Ambiorigem]] aut eius legatos finibus suis [[wikt:en:recipio#Latin|recepissent]].
**もし[[w:アンビオリクス|アンビオリークス]]か彼の使節を自領に迎え入れたら、自分は<small>(メナピイー族を)</small>敵として見なすだろうと断言する。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:属格の名詞 + numero「〜として」)
:
*<!--❹-->His [[wikt:en:confirmatus#Latin|confirmatis]] rebus,
**これらの事柄を確立すると、
*[[wikt:en:Commius#Latin|Commium]] [[wikt:en:Atrebas#Latin|Atrebatem]] cum [[wikt:en:equitatus#Latin|equitatu]] [[wikt:en:custos#Latin|custodis]] loco in [[wikt:en:Menapii#Latin|Menapiis]] [[wikt:en:relinquo#Latin|relinquit]];
**アトレバーテース族である[[w:コンミウス|コンミウス]]を[[w:騎兵|騎兵]]隊とともに、目付け役として、メナピイー族のところに残す。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:コンミウスは、カエサルがアトレバテース族の王にすえて、ブリタンニア遠征の先導役として遣わし、<br> カッスィウェッラウヌスの降伏の仲介を</span>果たしていた。[[ガリア戦記 第4巻#21節|第4巻21節]]・27節や[[ガリア戦記 第5巻#22節|第5巻22節]]などを参照。)
*ipse in [[wikt:en:Treveri#Latin|Treveros]] [[wikt:en:proficiscor#Latin|proficiscitur]].
**<small>(カエサル)</small>自身はトレーウェリー族のところに出発する。
<!--
<span style="color:#009900;"></span>
<small></small>
**:<span style="color:#009900;">(訳注:
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:
-->
===7節===
*<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/7節]] {{進捗|00%|2024-10-27}}</span>
[[画像:Titelberg_01.jpg|thumb|right|200px|トレーウェリー族の城砦跡(再掲)]]
;トレーウェリー族の開戦準備、ラビエーヌスの計略
*<!--❶-->Dum haec a Caesare [[wikt:en:gero#Latin|geruntur]],
**これらのことがカエサルによって遂行されている間に、
*[[wikt:en:Treveri#Latin|Treveri]] magnis [[wikt:en:coactus#Participle|coactis]] [[wikt:en:peditatus#Latin|peditatus]] [[wikt:en:equitatus#Etymology_1|equitatus]]<nowiki>que</nowiki> copiis
**トレーウェリー族は、[[w:歩兵|歩兵]]隊と[[w:騎兵|騎兵]]隊の大軍勢を徴集して、
*[[wikt:en:Labienus#Latin|Labienum]] cum una legione, quae in eorum finibus <u>[[wikt:en:hiemo#Latin|hiemaverat]]</u>,
**彼らの領土において越冬していた1個[[w:ローマ軍団|軍団]]とともに[[w:ティトゥス・ラビエヌス|ラビエーヌス]]を、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、α系写本では [[wikt:en:hiemaverat|hiemaverat]] <small>(過去完了形)</small> だが、<br> β系写本では [[wikt:en:hiemabat|hiemabat]] <small>(未完了過去形)</small> などとなっている。)</span>
*[[wikt:en:adorior#Latin|adoriri]] [[wikt:en:paro#Latin|parabant]],
**襲撃することを準備していた。
:
*<!--❷-->iamque ab eo non longius [[wikt:en:biduum#Latin|bidui]] via [[wikt:en:absum#Verb|aberant]],
**すでに、そこ<small>〔ラビエーヌスの冬営〕</small>から2日間の道のりより遠く離れていなかったが、
*cum duas venisse legiones [[wikt:en:missus#Noun_2|missu]] Caesaris [[wikt:en:cognosco#Latin|cognoscunt]].
**そのときに、カエサルが派遣した2個軍団が到着したことを知る。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[#5節|5節]]で既述のように、カエサルはラビエーヌスのところへ全軍の輜重と2個軍団を派遣していた。<br> こうして、ラビエーヌスはローマ全軍の輜重と3個軍団を任されることになった。)
:
*<!--❸-->[[wikt:en:positus#Latin|Positis]] <u>castris</u> a milibus passuum [[wikt:en:quindecim#Latin|quindecim]](XV)
**<small>(トレーウェリー勢は、ラビエーヌスの冬営から)</small>15ローママイルのところに<u>野営地</u>を設置して、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:1[[ガイウス・ユリウス・カエサルの著作/通貨・計量単位#ミーッレ・パッスーム、ミーリア(ローママイル)|ローママイル]]は約1.48 kmで、15マイルは約22 km)</span>
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[w:カストラ|カストラ]] [[wikt:en:castra#Latin|castra]] という語はローマ勢の行軍中の野営地や常設の宿営地に用いられ、<br> 非ローマ系部族の野営地に用いられることは稀である。)</span>
*auxilia [[wikt:en:Germani#Latin|Germanorum]] [[wikt:en:exspecto#Latin|exspectare]] [[wikt:en:constituo#Latin|constituunt]].
**[[w:ゲルマニア|ゲルマーニア]]人の援軍を待つことを決める。
:
*<!--❹-->[[wikt:en:Labienus#Latin|Labienus]] hostium [[wikt:en:cognitus#Participle|cognito]] consilio
**ラビエーヌスは、敵勢<small>〔トレーウェリー族〕</small>の計略を知ると、
*[[wikt:en:sperans#Latin|sperans]] [[wikt:en:temeritas#Latin|temeritate]] eorum [[wikt:en:fore#Etymology_2_2|fore]] [[wikt:en:aliqui#Latin|aliquam]] [[wikt:en:dimico#Latin|dimicandi]] facultatem,
**彼らの無謀さにより何らかの争闘する機会が生ずるであろうと期待して、
*[[wikt:en:praesidium#Latin|praesidio]] quinque(V) cohortium [[wikt:en:impedimentum#Latin|impedimentis]] [[wikt:en:relictus#Latin|relicto]]
**5個<ruby><rb>[[w:コホルス|歩兵大隊]]</rb><rp>(</rp><rt>コホルス</rt><rp>)</rp></ruby>の守備隊を[[w:輜重|輜重]]のために残し、
*cum XXV(viginti quinque) cohortibus magnoque [[wikt:en:equitatus#Etymology_1|equitatu]] contra hostem [[wikt:en:proficiscor#Latin|proficiscitur]]
**25個<ruby><rb>[[w:コホルス|歩兵大隊]]</rb><rp>(</rp><rt>コホルス</rt><rp>)</rp></ruby>および多勢の騎兵隊とともに、敵に抗して進発する。
*et mille passuum [[wikt:en:intermissus#Latin|intermisso]] spatio castra [[wikt:en:communio#Latin|communit]].
**<small>(トレーウェリー勢から)</small>1ローママイルの間隔を置いて、[[w:カストラ|陣営]]<small>〔野営地〕</small>を固める。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:1[[ガイウス・ユリウス・カエサルの著作/通貨・計量単位#ミーッレ・パッスーム、ミーリア(ローママイル)|ローママイル]]は約1.48 km)</span>
:
*<!--❺-->Erat inter [[wikt:en:Labienus#Latin|Labienum]] atque hostem [[wikt:en:difficilis#Latin|difficili]] [[wikt:en:transitus#Latin|transitu]] flumen [[wikt:en:ripa#Latin|ripis]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:praeruptus#Adjective|praeruptis]].
**ラビエーヌスと敵の間には、渡ることが困難な川が、急峻な岸とともにあった。
*Hoc <u>neque</u> ipse [[wikt:en:transeo#Latin|transire]] habebat in animo
**これを<small>(ラビエーヌス)</small>自身は渡河するつもりではなかったし、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:~ habeo in animo「~するつもりである」)</span>
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:neque ~, neque …「~でもないし、…でもない」)</span>
*<u>neque</u> hostes [[wikt:en:transiturus#Latin|transituros]] [[wikt:en:existimo#Latin|existimabat]].
**敵勢も渡河して来ないであろうと<small>(ラビエーヌスは)</small>考えていた。
:
*<!--❻-->[[wikt:en:augeo#Latin|Augebatur]] auxiliorum [[wikt:en:cotidie#Latin|cotidie]] spes.
**<small>(トレーウェリー勢にとって、ゲルマーニア人の)</small>援軍への期待は日ごとに増されるばかりであった。
*[[wikt:en:loquor#Latin|Loquitur]] <u>in consilio</u> [[wikt:en:palam#Adverb|palam]]:
**<small>(ラビエーヌスは)</small>会議において公然と<small>(以下のように)</small>述べる。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、主要写本ωでは in [[wikt:en:consilio|consilio]] だが、<br> [[ガリア戦記/注解編/写本と校訂版#Aldus|Aldus]] は in [[wikt:en:concilium#Latin|concilio]] と修正提案し、<br> Hecker は [[wikt:en:consulto#Adverb|consulto]] と修正提案している。)</span>
*[[wikt:en:quoniam#Latin|quoniam]] [[wikt:en:Germani#Latin|Germani]] [[wikt:en:adpropinquo#Latin|adpropinquare]] [[wikt:en:dico#Latin|dicantur]],
**ゲルマーニア人<small>(の軍勢)</small>が近づいていることが言われているので、
*sese suas exercitusque fortunas in [[wikt:en:dubium#Noun|dubium]] non [[wikt:en:devocaturus#Latin|devocaturum]]
**自分は自らと軍隊の命運を不確実さの中に引きずり込むことはないであろうし、
*et postero die prima luce castra [[wikt:en:moturus#Latin|moturum]].
**翌日の夜明けには陣営を引き払うであろう。
:
*<!--❼-->Celeriter haec ad hostes [[wikt:en:defero#Latin|deferuntur]],
**これら<small>(のラビエーヌスの発言)</small>は速やかに敵勢<small>〔トレーウェリー族〕</small>のもとへ報じられたので、
*ut ex magno Gallorum equitum numero [[wikt:en:nonnullus#Latin|non nullos]] <u>Gallos</u> [[wikt:en:gallicus#Latin|Gallicis]] rebus [[wikt:en:faveo#Latin|favere]] natura [[wikt:en:cogo#Latin|cogebat]].
**ガッリア人の境遇を想う気質が、<small>(ローマ側)</small>ガッリア人騎兵の多数のうちの若干名を励ましていたほどである。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部の [[wikt:en:Gallus#Noun|Gallos]] は α系写本の記述で、β系写本では欠く。)</span>
:
*<!--❽-->[[wikt:en:Labienus#Latin|Labienus]], noctu tribunis militum primisque ordinibus <u>convocatis</u>,
**ラビエーヌスは、夜間に<ruby><rb>[[w:トリブヌス・ミリトゥム|兵士長官]]</rb><rp>(</rp><rt>トリブヌス・ミリトゥム</rt><rp>)</rp></ruby>たちと第一序列(の[[w:ケントゥリオ|百人隊長]])たちを召集すると、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:1個軍団当たりの<ruby><rb>[[w:トリブヌス・ミリトゥム|兵士長官]]</rb><rp>(</rp><rt>トリブヌス・ミリトゥム</rt><rp>)</rp></ruby> の定員は計6名。<br> 第一序列の<ruby><rb>[[w:ケントゥリオ|百人隊長]]</rb><rp>(</rp><rt>ケントゥリオー</rt><rp>)</rp></ruby>たち primorum ordinum centuriones は、軍団内における[[w:下士官|下士官]]のトップであり、<br> 第一<ruby><rb>[[w:コホルス|歩兵大隊]]</rb><rp>(</rp><rt>コホルス</rt><rp>)</rp></ruby> においては定員5名だが、<br> ほかの歩兵大隊においては定員6名であった。)</span>
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、α系写本では [[wikt:en:convocatus#Latin|convocatis]] だが、<br> β系写本では [[wikt:en:coactus#Participle|coactis]] などとなっている。)</span>
*quid sui sit consilii, [[wikt:en:propono#Latin|proponit]]
**自分の計略がいかなるものであるかを呈示して、
*et, quo facilius hostibus [[wikt:en:timor#Latin|timoris]] [[wikt:en:det#Latin|det]] [[wikt:en:suspicio#Noun|suspicionem]],
**それ<small>〔計略〕</small>によって、よりたやすく敵勢に<small>(ローマ勢の)</small>恐怖心という推測を起こすべく、
*maiore [[wikt:en:strepitus#Latin|strepitu]] et [[wikt:en:tumultus#Latin|tumultu]], quam populi Romani fert [[wikt:en:consuetudo#Latin|consuetudo]]
**ローマ国民の習慣が引き起こすよりもより大きな騒音や喧騒をもって
*castra [[wikt:en:moveo#Latin|moveri]] [[wikt:en:iubeo#Latin|iubet]].
**陣営を引き払うことを命じる。
*His rebus fugae [[wikt:en:similis#Latin|similem]] [[wikt:en:profectio#Latin|profectionem]] [[wikt:en:efficio#Latin|effecit]].
**<small>(ラビエーヌスは)</small>これらの事によって、逃亡に似た進発を実現した。
:
*<!--❾-->Haec quoque per [[wikt:en:explorator#Latin|exploratores]]
**これらのこともまた、<small>(トレーウェリー勢の)</small>斥候たちを通じて、
*ante [[wikt:en:lux#Latin|lucem]] in tanta [[wikt:en:propinquitas#Latin|propinquitate]] castrorum ad hostes [[wikt:en:defero#Latin|deferuntur]].
**夜明け前には、陣営のこれほどの近さにより、敵勢へ報じられる。
<!--
<span style="color:#009900;"></span>
<small></small>
**:<span style="color:#009900;">(訳注:
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:
-->
===8節===
*<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/8節]] {{進捗|00%|2024-10-28}}</span>
;ラビエーヌスがトレーウェリー族を降す
:
; トレーウェリー勢が、渡河してラビエーヌスの軍勢に攻めかかろうとする
*<!--❶-->[[wikt:en:vix#Latin|Vix]] [[wikt:en:agmen#Latin|agmen]] [[wikt:en:novissimus#Latin|novissimum]] extra [[wikt:en:munitio#Latin|munitiones]] [[wikt:en:procedo#Latin|processerat]],
**<small>(ローマ勢の)</small>行軍隊列の最後尾が防塁の外側にほぼ進み出ようとしていた、
*cum Galli [[wikt:en:cohortatus#Latin|cohortati]] inter se, ne [[wikt:en:speratus#Latin|speratam]] [[wikt:en:praeda#Latin|praedam]] ex manibus [[wikt:en:dimitto#Latin|dimitterent]]
**そのときにガッリア人たちは、期待していた戦利品を<small>(彼らの)</small>手から逸しないように、互いに鼓舞し合って、
*── longum esse, [[wikt:en:perterritus#Latin|perterritis]] Romanis [[wikt:en:Germani#Proper_noun|Germanorum]] auxilium [[wikt:en:exspecto#Latin|exspectare]];
**── ローマ人が<ruby><rb>怖気</rb><rp>(</rp><rt>おじけ</rt><rp>)</rp></ruby>ているのに、[[w:ゲルマニア|ゲルマーニア]]人の支援を待つことは悠長なものである。
*neque suam [[wikt:en:patior#Latin|pati]] [[wikt:en:dignitas#Latin|dignitatem]],
**<small>(以下のことは)</small>自分たちの尊厳が耐えられない。
*ut [[wikt:en:tantus#Latin|tantis]] copiis [[wikt:en:tam#Latin|tam]] [[wikt:en:exiguus#Latin|exiguam]] manum, praesertim [[wikt:en:fugiens#Latin|fugientem]] atque [[wikt:en:impeditus#Latin|impeditam]],
**これほどの大軍勢で<small>(ローマの)</small>それほどの貧弱な手勢を、特に逃げ出して<small>(荷物で)</small>妨げられている者たちを
*[[wikt:en:adorior#Latin|adoriri]] non [[wikt:en:audeo#Latin|audeant]] ──
**あえて襲撃しないとは──<small>(と鼓舞し合って)</small>
*flumen [[wikt:en:transeo#Latin|transire]] et iniquo loco [[wikt:en:committo#Latin|committere]] proelium non [[wikt:en:dubito#Latin|dubitant]].
**川を渡って<small>(切り立った岸を登りながら)</small>不利な場所で交戦することをためらわない。
:
; ラビエーヌス勢が怖気を装いながら、そろりそろりと進む
*<!--❷-->Quae fore [[wikt:en:suspicatus#Latin|suspicatus]] [[wikt:en:Labienus#Latin|Labienus]],
**こうしたことが生じるであろうと想像していた[[w:ティトゥス・ラビエヌス|ラビエーヌス]]は、
*ut omnes citra flumen [[wikt:en:elicio#Latin|eliceret]],
**<small>(敵の)</small>総勢を川のこちら側に誘い出すように、
*[[wikt:en:idem#Latin|eadem]] [[wikt:en:usus#Participle|usus]] [[wikt:en:simulatio#Latin|simulatione]] itineris
**行軍の同じ見せかけを用いて、
**:<span style="color:#009900;">(訳注:前節で語られたように、<ruby><rb>怖気</rb><rp>(</rp><rt>おじけ</rt><rp>)</rp></ruby>て今にも逃げ出しそうな風に装いながらの行軍。)</span>
*[[wikt:en:placide#Adverb|placide]] [[wikt:en:progredior#Latin|progrediebatur]].
**穏やかに前進していた。
:
; ラビエーヌスが全軍の兵を叱咤激励する
*<!--❸-->Tum [[wikt:en:praemissus#Latin|praemissis]] paulum impedimentis
**それから、[[w:輜重|輜重]]<small>(の隊列)</small>を少し先に遣わして、
*atque in [[wikt:en:tumulus#Latin|tumulo]] [[wikt:en:quidam#Adjective|quodam]] [[wikt:en:collocatus#Latin|conlocatis]],
**とある高台に配置すると、
*<!--▲直接話法--><span style="background-color:#e8e8ff;"><span style="color:#009900;">«</span> [[wikt:en:habetis|Habetis]],<span style="color:#009900;">»</span></span> [[wikt:en:inquam#Latin|inquit]], <!--▲直接話法--><span style="background-color:#e8e8ff;"><span style="color:#009900;">«</span>milites, quam [[wikt:en:petistis|petistis]], [[wikt:en:facultas#Latin|facultatem]]; </span>
**<small>(ラビエーヌスは)</small>「兵士らよ、<small>(諸君は)</small>求めていた機会を得たぞ」と言った。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:以下、<!--▲直接話法--><span style="background-color:#e8e8ff;"> <span style="color:#009900;">«</span> ~ <span style="color:#009900;">»</span> </span> の箇所は、直接話法で記されている。)</span>
*<!--▲直接話法--><span style="background-color:#e8e8ff;">hostem [[wikt:en:impeditus#Latin|impedito]] atque [[wikt:en:iniquus#Latin|iniquo]] loco [[wikt:en:tenetis|tenetis]]: </span>
**「<small>(諸君は)</small>敵を<small>(川岸で)</small>妨げられた不利な場所に追いやった。」
*<!--❹--><!--▲直接話法--><span style="background-color:#e8e8ff;">[[wikt:en:praestate|praestate]] eandem nobis [[wikt:en:dux#Latin|ducibus]] [[wikt:en:virtus#Latin|virtutem]], quam saepe numero [[wikt:en:imperator#Latin|imperatori]] [[wikt:en:praestitistis|praestitistis]], </span>
**「我々<ruby><rb>将帥</rb><rp>(</rp><rt>ドゥクス</rt><rp>)</rp></ruby>らに、<small>(諸君が)</small>しばしば<ruby><rb>将軍</rb><rp>(</rp><rt>インペラートル</rt><rp>)</rp></ruby><small>〔カエサル〕</small>に見せて来たのと同じ武勇を見せてくれ。」
*<!--▲直接話法--><span style="background-color:#e8e8ff;">atque illum adesse et haec [[wikt:en:coram#Adverb|coram]] [[wikt:en:cerno#Latin|cernere]] [[wikt:en:existimate|existimate]].<span style="color:#009900;">»</span></span>
**「彼<small>〔カエサル〕</small>が訪れて、これ<small>〔武勇〕</small>を目の前で見ていると思ってくれ。」
:
; ラビエーヌスが軍を反転させて攻撃態勢を整える
*<!--❺-->Simul signa ad hostem [[wikt:en:converto#Latin|converti]] aciemque [[wikt:en:dirigo#Latin|dirigi]] [[wikt:en:iubeo#Latin|iubet]],
**同時に、軍旗が敵の方へ向きを変えられることと、戦列が整えられること、を命じる。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:軍勢が敵側へ向けて反転して、戦列を整えること、を命じた。)</span>
[[画像:Pilensalve.jpg|thumb|right|250px|[[w:ピルム|ピールム]](投槍)を投げるローマ軍兵士(帝政期)の再演]]
*et paucis [[wikt:en:turma#Latin|turmis]] praesidio ad impedimenta [[wikt:en:dimissus#Latin|dimissis]],
**かつ若干の<ruby><rb>[[w:トゥルマ|騎兵小隊]]</rb><rp>(</rp><rt>トゥルマ</rt><rp>)</rp></ruby>を輜重のための守備隊として送り出して、
**:<span style="color:#009900;">(訳注:騎兵小隊 turma はローマ軍の<br> [[w:アウクシリア|支援軍]]における中規模の編成単位で、<br> 各30騎ほどと考えられている。)</span>
*reliquos equites ad latera [[wikt:en:dispono#Latin|disponit]].
**残りの[[w:騎兵|騎兵]]たちを<small>(軍勢の)</small>両側面へ分置する。
:
; ラビエーヌス勢が喊声を上げて、投げ槍を投げ始める
*<!--❻-->Celeriter nostri, clamore [[wikt:en:sublatus#Latin|sublato]], [[wikt:en:pilum#Latin|pila]] in hostes [[wikt:en:inmitto#Latin|inmittunt]].
**我が方<small>〔ローマ勢〕</small>は、雄叫びを上げると、速やかに<ruby><rb>[[w:ピルム|投げ槍]]</rb><rp>(</rp><rt>ピールム</rt><rp>)</rp></ruby>を敵勢へ放り入れる。
:
; 不意を突かれたトレーウェリー勢が、一目散に逃げ出して、最寄りの森林を目指す
*Illi, ubi [[wikt:en:praeter#Latin|praeter]] spem, quos <span style="color:#009900;"><modo></span> [[wikt:en:fugio#Latin|fugere]] [[wikt:en:credo#Latin|credebant]], [[wikt:en:infestus#Latin|infestis]] signis ad se ire viderunt,
**<span style="font-size:11pt;">彼らは、期待に反して、<span style="color:#009900;"><ただ></span>逃げていると信じていた者たちが、軍旗を攻勢にして自分らの方へ来るのを見るや否や、</span>
*[[wikt:en:impetus#Latin|impetum]] <u>modo</u> ferre non potuerunt
**<small>(ローマ勢の)</small>突撃を持ちこたえることができずに、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部 modo は主要写本ωではこの位置にあるが、<br> 上記の <modo> に移す修正提案がある。)</span>
*ac primo [[wikt:en:concursus#Noun|concursu]] in fugam [[wikt:en:coniectus#Participle|coniecti]]
**最初の猛攻で敗走に追い込まれて、
*proximas silvas [[wikt:en:peto#Latin|petierunt]].
**近隣の森を目指した。
:
; ラビエーヌス勢が、トレーウェリー勢の多数を死傷させ、部族国家を奪回する
*<!--❼-->Quos [[wikt:en:Labienus#Latin|Labienus]] equitatu [[wikt:en:consectatus#Latin|consectatus]],
**<small>(敗走した)</small>その者たちを、ラビエーヌスは騎兵隊で追撃して、
*magno numero [[wikt:en:interfectus#Latin|interfecto]],
**多数の者を<ruby><rb>殺戮</rb><rp>(</rp><rt>さつりく</rt><rp>)</rp></ruby>して、
*compluribus [[wikt:en:captus#Latin|captis]],
**かなりの者たちを捕らえて、
*paucis post diebus civitatem recepit.
**数日後に<small>(トレーウェリーの)</small>部族国家を<small>(蜂起の前の状態に)</small>戻した。
:
[[画像:Bund-ro-altburg.jpg|thumb|right|180px|トレーウェリー族の再現された住居(再掲)]]
[[画像:Trier_Kaiserthermen_BW_1.JPG|thumb|right|180px|トレーウェリー族(Treveri)の名を現代に伝えるドイツの[[w:トリーア|トリーア市]](Trier)に残るローマ時代の浴場跡]]
; ゲルマーニア人の援軍が故国へ引き返す
*Nam [[wikt:en:Germani#Latin|Germani]], qui auxilio veniebant,
**なぜなら、援軍として来ようとしていたゲルマーニア人たちは、
*[[wikt:en:perceptus#Latin|percepta]] [[wikt:en:Treveri#Latin|Treverorum]] fuga
**トレーウェリー族の敗走を把握したので、
*sese [[wikt:en:domus#Latin|domum]] <u>receperunt</u>.
**故国に撤退していった。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、α系写本では [[wikt:en:receperunt|receperunt]] だが、<br> β系写本では [[wikt:en:contulerunt|contulerunt]] となっている。)</span>
:
; インドゥーティオマールスの残党がゲルマーニアへ出奔する
*<!--❽-->Cum his [[wikt:en:propinquus#Latin|propinqui]] [[wikt:en:Indutiomarus#Latin|Indutiomari]],
**彼ら<small>〔ゲルマーニア人〕</small>とともに、インドゥーティオマールスの縁者たちは、
*qui [[wikt:en:defectio#Latin|defectionis]] [[wikt:en:auctor#Latin|auctores]] fuerant,
**その者らは<small>(トレーウェリー族におけるカエサルへの)</small>謀反の張本人であったが、
*[[wikt:en:comitatus#Participle|comitati]] eos ex civitate [[wikt:en:excedo#Latin|excesserunt]].
**彼ら<small>〔ゲルマーニア人〕</small>を伴って、部族国家から出て行った。
:
; カエサルとローマに忠節なキンゲトリークスに、部族の統治権が託される
*<!--❾-->[[wikt:en:Cingetorix#Latin|Cingetorigi]],
**キンゲトリークスに対しては、
*quem ab initio [[wikt:en:permaneo#Latin|permansisse]] in [[wikt:en:officium#Latin|officio]] [[wikt:en:demonstravimus|demonstravimus]],
**──その者が当初から<small>(ローマへの)</small>忠義に留まり続けたことは前述したが──
**:<span style="color:#009900;">(訳注:キンゲトリークスについては、[[ガリア戦記 第5巻#3節|第5巻3節]]~4節・[[ガリア戦記 第5巻#56節|56節]]~57節で述べられている。)</span>
*[[wikt:en:principatus#Latin|principatus]] atque [[wikt:en:imperium#Latin|imperium]] est traditum.
**首長の地位と支配権が託された。
<!--
<span style="color:#009900;"></span>
<span style="font-size:11pt;"></span>
<small></small>
**:<span style="color:#009900;">(訳注:
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:
-->
==第二次ゲルマーニア遠征==
===9節===
*<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/9節]] {{進捗|00%|2024-11-06}}</span>
;再びレーヌスを渡河、ウビイー族を調べる
*<!--❶-->Caesar, [[wikt:en:postquam#Latin|postquam]] ex [[wikt:en:Menapii#Latin|Menapiis]] in [[wikt:en:Treveri#Latin|Treveros]] venit,
**カエサルは、メナピイー族のところからトレーウェリー族のところに来た後で、
*duabus de causis [[wikt:en:Rhenus#Latin|Rhenum]] [[wikt:en:transeo#Latin|transire]] [[wikt:en:constituo#Latin|constituit]];
**二つの理由からレーヌス<small>〔[[w:ライン川|ライン川]]〕</small>を渡ることを決めた。
:
*<!--❷-->quarum una erat, quod <span style="color:#009900;"><Germani></span> auxilia contra se [[wikt:en:Treveri#Latin|Treveris]] [[wikt:en:mitto#Latin|miserant]];
**その<small>(理由の)</small>一つは、<span style="color:#009900;"><ゲルマーニア人が></span>自分<small>〔カエサル〕</small>に対抗して、トレーウェリー族に援軍を派遣していたことであった。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:<[[wikt:en:Germani#Latin|Germani]]> は、主要写本ωにはなく、[[ガリア戦記/注解編/写本と校訂版#Hotomanus|Hotomanus]] による挿入提案。)</span>
*<span style="color:#009900;">(quarum)</span> altera <span style="color:#009900;">(erat)</span>, ne ad eos [[wikt:en:|Ambiorix]] [[wikt:en:receptus#Noun|receptum]] haberet.
**もう一つ<small>(の理由)</small>は、彼らのもとへ[[w:アンビオリクス|アンビオリークス]]が避難所を持たないように、ということであった。
:
[[画像:Caesar's Rhine Crossing.jpg|thumb|right|250px|カエサルがライン川に橋を架けたとされる有力な地点の図示。ライン川と[[w:モーゼル川|モーゼル川]]の合流点にある[[w:コブレンツ|コブレンツ]]([[w:en:Koblenz|Koblenz]])と下流の[[w:アンダーナッハ|アンダーナッハ]]([[w:en:Andernach|Andernach]])との間の[[w:ノイヴィート|ノイヴィート]]([[w:en:Neuwied|Neuwied]])辺りが有力な地点の一つとされる。'''([[ガリア戦記_第4巻#17節|第4巻17節]]の図を再掲)''']]
*<!--❸-->His [[wikt:en:constitutus#Participle|constitutis]] rebus,
**これらの事柄を決定すると、
*[[wikt:en:paulum#Adverb|paulum]] supra eum locum, [[wikt:en:quo#Adverb|quo]] ante exercitum [[wikt:en:traduco#Latin|traduxerat]],
**<u>以前に軍隊を渡らせていた場所</u>の少し上流に、
*facere [[wikt:en:pons#Latin|pontem]] [[wikt:en:instituo#Latin|instituit]].
**橋を造ることを決意する。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:[[ガリア戦記_第4巻#17節|第4巻17節]] でカエサルが[[w:ライン川|ライン川]]に架橋した場所のこと。<br> 第4巻の'''[[ガリア戦記_第4巻#コラム「ゲルマーニア両部族が虐殺された場所はどこか?」|コラム]]''' や [[ガリア戦記_第4巻#17節|第4巻17節]]の図で説明したように、<br> カエサルの最初の架橋地点には異論もあるが、<br> 今回の架橋地点がトレーウェリー族領であった<br> [[w:モーゼル川|モーゼル川]]渓谷から近かったであろうことから有力視される。)</span>
:
*<!--❹-->[[wikt:en:notus#Latin|Nota]] atque [[wikt:en:institutus#Latin|instituta]] ratione,
**経験しかつ建造していた方法で、
*magno militum [[wikt:en:studium#Latin|studio]]
**兵士たちの大きな熱意により
*paucis diebus [[wikt:en:opus#Latin|opus]] [[wikt:en:efficio#Latin|efficitur]].
**わずかな日数で作業が完遂される。
:
*<!--❺-->[[wikt:en:firmus#Latin|Firmo]] in [[wikt:en:Treveri#Latin|Treveris]] ad pontem praesidio [[wikt:en:relictus#Latin|relicto]],
**トレーウェリー族領内の橋のたもとへ強力な守備隊を残して、
*ne [[wikt:en:aliquis#Latin|quis]] ab his subito [[wikt:en:motus#Noun_2|motus]] <u>oreretur</u>,
**──彼ら<small>〔トレーウェリー族〕</small>による何らかの動乱が不意に起こされないためであるが、──
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、χ系・B・ρ系写本では [[wikt:en:oreretur|oreretur]]、<br> φ系・π系写本では [[wikt:en:oriretur|oriretur]] だが、語形の相異。)</span>
*reliquas copias [[wikt:en:equitatus#Noun|equitatum]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:traduco#Latin|traducit]].
**残りの軍勢と騎兵隊を<small>(レーヌス川の東岸へ)</small>渡らせる。
:
*<!--❻-->[[wikt:en:Ubii#Latin|Ubii]], qui ante obsides [[wikt:en:dederant|dederant]] atque in [[wikt:en:deditio#Latin|deditionem]] venerant,
**ウビイー族は、以前に<small>(カエサルに対して)</small>人質たちを供出していて、降伏していたが、
**:<span style="color:#009900;">(訳注:この事はすでに[[ガリア戦記 第4巻#16節|第4巻16節]]で述べられている。)</span>
*<u>[[wikt:en:purgandus#Latin|purgandi]] sui</u> causa ad eum legatos mittunt,
**自分たちの申し開きをすることのために、彼<small>〔カエサル〕</small>のもとへ使節たちを遣わして、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、α系写本では [[wikt:en:purgandi|purgandi]] [[wikt:en:sui#Pronoun|sui]] だが、<br> β系写本では purgandi のみ。)</span>
*qui [[wikt:en:doceant|doceant]],
**<small>(以下のように)</small>説かせた。
*neque <u>auxilia ex sua civitate</u> in [[wikt:en:Treveri#Latin|Treveros]] [[wikt:en:missus#Participle|missa]]
**自分たちの部族から援軍をトレーウェリー族のところに派遣してもいないし、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、χ系・B・M・S写本では [[wikt:en:auxilia#Latin|auxilia]] ex sua [[wikt:en:civitate|civitate]]、<br> L・N・β系写本では ex sua civitate auxilia の語順になっている。)</span>
*neque ab se [[wikt:en:fides#Latin|fidem]] [[wikt:en:laesus#Latin|laesam]]:
**自分らにより<small>(ローマへの)</small>信義を傷つけてもいない、と。
:
*<!--❼-->[[wikt:en:peto#Latin|petunt]] atque [[wikt:en:oro#Latin|orant]],
**<small>(ウビイー族の使節たちは、以下のように)</small>求め、かつ願った。
*ut sibi [[wikt:en:parco#Latin|parcat]],
**自分たちを容赦し、
*ne [[wikt:en:communis#Latin|communi]] [[wikt:en:odium#Latin|odio]] [[wikt:en:Germani#Latin|Germanorum]] [[wikt:en:innocens#Latin|innocentes]] pro [[wikt:en:nocens#Latin|nocentibus]] poenas [[wikt:en:pendo#Latin|pendant]];
**[[w:ゲルマニア|ゲルマーニア]]人一般への憎しみから、潔白な者たちが加害者たちのために罰を償うことがないように、と。
*si [[wikt:en:amplius|amplius]] obsidum <u>vellet, dare</u> [[wikt:en:polliceor#Latin|pollicentur]].
**もし、より多くの人質を欲するのなら、供出することを約束する、と。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、α系写本では [[wikt:en:vellet#Latin|vellet]] <small>(未完了過去・接続法)</small> [[wikt:en:dare#Latin|dare]] <small>(現在・能動・不定)</small> だが、<br> β系写本では [[wikt:en:velit#Latin|velit]] <small>(現在・接続法)</small> [[wikt:en:dari#Latin|dari]] <small>(現在・受動・不定法)</small> となっている。)</span>
:
*<!--❽-->Cognita Caesar causa
**カエサルは事情を調査して、
*<u>repperit</u> ab [[wikt:en:Suebi#Latin|Suebis]] auxilia [[wikt:en:missus#Participle|missa]] esse;
**スエービー族により<small>(トレーウェリー族に)</small>援軍が派遣されていたことを見出した。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、主要写本 ω では [[wikt:en:repperit|repperit]] <small>(完了形)</small> だが、<br> 近世以降の印刷本 [[ガリア戦記/注解編/写本と校訂版#クリティカル・アパラトゥスとその略号|edd.]] では [[wikt:en:reperit|reperit]] <small>(現在形)</small> となっている。)</span>
:
*[[wikt:en:Ubii#Latin|Ubiorum]] [[wikt:en:satisfactio#Latin|satisfactionem]] <u>accepit</u>,
**ウビイー族の弁解を受け入れて、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、主要写本 ω では [[wikt:en:accepit|accepit]] <small>(完了形)</small> だが、<br> [[ガリア戦記/注解編/写本と校訂版#Davisius|Davisius]] の修正提案では [[wikt:en:accipit|accipit]] <small>(現在形)</small> となっている。)</span>
*[[wikt:en:aditus#Noun_2|aditus]] viasque in [[wikt:en:Suebi#Latin|Suebos]] [[wikt:en:perquiro#Latin|perquirit]].
**スエービー族のところに出入りする道筋を問い質す。
<!--
<span style="color:#009900;"></span>
<small></small>
**:<span style="color:#009900;">(訳注:
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:
-->
===10節===
*<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/10節]] {{進捗|00%|2024-11-16}}</span>
;ウビイー族を通じてスエービー族の動静を探る
*<!--❶-->Interim paucis post diebus fit ab [[wikt:en:Ubii#Latin|Ubiis]] certior,
**数日後の間に、ウビイー族によって報告されたことには、
*[[wikt:en:Suebi#Latin|Suebos]] omnes in unum locum copias [[wikt:en:cogo#Latin|cogere]]
**スエービー族は、すべての軍勢を一か所に集めて、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:後述するように、これはカッティー族 [[w:en:Chatti|Chatti]] のことであろう。)</span>
*atque iis [[wikt:en:natio#Latin|nationibus]], quae sub eorum sint imperio,
**彼らの支配下にある種族たちに
*[[wikt:en:denuntio#Latin|denuntiare]], ut auxilia [[wikt:en:peditatus#Latin|peditatus]] [[wikt:en:equitatus#Noun|equitatus]]<nowiki>que</nowiki> mittant.
**[[w:歩兵|歩兵]]隊と[[w:騎兵|騎兵]]隊の援軍を派遣するように布告する。
:
*<!--❷-->His [[wikt:en:cognitus#Participle|cognitis]] rebus,
**<small>(カエサルは)</small>これらの事情を知ると、
*rem [[wikt:en:frumentarius#Latin|frumentariam]] [[wikt:en:provideo#Latin|providet]],
**糧食調達を手配して、
*castris idoneum locum [[wikt:en:deligo#Latin|deligit]];
**[[w:カストラ|陣営]]<small>(を設置するために)</small>に適切な場所を選ぶ。
:
*[[wikt:en:Ubii#Latin|Ubiis]] [[wikt:en:impero#Latin|imperat]], ut [[wikt:en:pecus#Latin|pecora]] [[wikt:en:deduco#Latin|deducant]] suaque omnia ex agris in oppida [[wikt:en:confero#Latin|conferant]],
**ウビイー族には、家畜を連れ去り、自分らの一切合財を農村地帯から<ruby><rb>[[w:オッピドゥム|城塞都市]]</rb><rp>(</rp><rt>オッピドゥム</rt><rp>)</rp></ruby>に運び集めるように命令する。
*[[wikt:en:sperans#Latin|sperans]] [[wikt:en:barbarus#Adjective|barbaros]] atque [[wikt:en:imperitus#Latin|imperitos]] homines
**<small>(カエサルが)</small>期待したのは、野蛮で未熟な連中が
*[[wikt:en:inopia#Noun_2|inopia]] [[wikt:en:cibaria#Latin|cibariorum]] [[wikt:en:adductus#Latin|adductos]]
**食糧の欠乏に動かされて、
*ad [[wikt:en:iniquus#Latin|iniquam]] [[wikt:en:pugno#Latin|pugnandi]] [[wikt:en:condicio#Latin|condicionem]] posse [[wikt:en:dēdūcō|deduci]];
**不利な条件のもとで戦うことにミスリードされ得ることであった。
:
; ウビイー族の間者たちを通じて、スエービー族の奥地への撤収が報じられる
*<!--❸-->[[wikt:en:mando#Latin|mandat]], ut [[wikt:en:creber#Latin|crebros]] [[wikt:en:explorator#Latin|exploratores]] in [[wikt:en:Suebi#Latin|Suebos]] [[wikt:en:mitto#Latin|mittant]] [[wikt:en:quis#Pronoun|quae]]<nowiki>que</nowiki> apud eos [[wikt:en:gero#Latin|gerantur]] [[wikt:en:cognosco#Latin|cognoscant]].
**多数の斥候をスエービー族領に遣わして、彼らのもとで遂行されていることを探知するように<small>(ウビイー族に)</small>委ねる。
:
*<!--❹-->Illi [[wikt:en:imperatum#Latin|imperata]] faciunt
**彼ら<small>〔ウビイー族〕</small>は、命令されたことを実行して、
*et paucis diebus [[wikt:en:intermissus#Latin|intermissis]] [[wikt:en:refero#Latin|referunt]]:
**わずかな日々を間に置いて(以下のことを)報告する。
*[[wikt:en:Suebi#Latin|Suebos]] omnes, posteaquam [[wikt:en:certior#Latin|certiores]] [[wikt:en:nuntius#Latin|nuntii]] de exercitu Romanorum venerint,
**スエービー族総勢は、ローマ人の軍隊についてより確実な報告がもたらされた後で、
*cum omnibus suis [[wikt:en:socius#Noun_2|sociorum]]<nowiki>que</nowiki> copiis, quas [[wikt:en:coegissent|coegissent]],
**自分たちの総勢と、集結していた同盟者の軍勢とともに、
*[[wikt:en:penitus#Adverb|penitus]] ad [[wikt:en:extremus#Adjective|extremos]] fines se [[wikt:en:recepisse#Latin|recepisse]];
**領土の最も遠い奥深くまで撤退した、ということだった。。
:
*<!--❺-->silvam esse ibi [[wikt:en:infinitus#Latin|infinita]] magnitudine, quae [[wikt:en:appellatur|appellatur]] <u>Bacenis</u>;
**そこには、'''バケーニス'''と呼ばれている限りない大きさの森林がある。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:バケーニス [[wikt:en:Bacenis#Latin|Băcēnis]] は、ギリシア語で Βακέννη とも表記されるが、どこなのかは諸説ある。<br> ①ドイツ西部[[w:ヘッセン州|ヘッセン州]]にあったブコニアの森 ''[[w:de:Buchonia|Buchonia]]; [[w:fr:Forêt de Buconia|Buconia]]'' は有力。<br> ②ドイツの奥地・中東部の[[w:テューリンゲン州|テューリンゲン州]]にある[[w:テューリンゲンの森|テューリンゲンの森]]という説<ref>[[s:de:RE:Bacenis silva]], [[wikt:de:Bacenis]] 等を参照。</ref><br> ③ドイツ西部[[w:ラインラント=プファルツ州|ラインラント=プファルツ州]]ライン川沿岸のニールシュタイン [[w:en:Nierstein|Nierstein]] 説、<br> などがある。史実としてスエービーという部族連合が居住していたのはテューリンゲンであろうが、<br> ライン川からはあまりにも遠すぎる。)</span>
*hanc longe <u>introrsus</u> [[wikt:en:pertineo#Latin|pertinere]]
**これ<small>〔森林〕</small>は、はるか内陸に及んでいて、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:introrsus|introrsus]] = [[wikt:en: introrsum#Latin|introrsum]]「内部へ」)</span>
*et pro [[wikt:en:nativus#Latin|nativo]] [[wikt:en:murus#Latin|muro]] [[wikt:en:obiectus#Participle|obiectam]]
**天然の防壁として横たわっており、
*[[wikt:en:Cheruscos|Cheruscos]] ab [[wikt:en:Suebi#Latin|Suebis]] [[wikt:en:Suebi#Latin|Suebosque]] ab [[wikt:en:Cheruscis|Cheruscis]] [[wikt:en:iniuria#Latin|iniuriis]] [[wikt:en:incursio#Latin|incursionibus]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:prohibeo#Latin|prohibere]]:
**ケールスキー族をスエービー族から、スエービー族をケールスキー族から、無法行為や襲撃から防いでいる。
*ad eius [[wikt:en:initium#Latin|initium]] silvae [[wikt:en:Suebi#Latin|Suebos]] [[wikt:en:adventus#Latin|adventum]] Romanorum [[wikt:en:exspecto#Latin|exspectare]] [[wikt:en:constituo#Latin|constituisse]].
**その森の始まりのところで、スエービー族はローマ人の到来を待ち構えることを決定した。
<!--
<span style="color:#009900;"></span>
<small></small>
**:<span style="color:#009900;">(訳注:
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:
-->
<div style="border:solid #999 1px;background:#feedff;max-width:80%;padding:0.25em 1em;margin:0.5em auto;align:left;overflow:auto;text-align:justify;">
===コラム「スエービー族とカッティー族・ケールスキー族・ウビイー族について」===
[[画像:Hermann (Arminius) at the battle of the Teutoburg Forest in 9 CE by Peter Jannsen, 1873, with painting creases and damage removed.jpg|thumb|right|250px|ウァルスの戦い([[w:de:Varusschlacht|Varusschlacht]])こと[[w:トイトブルク森の戦い|トイトブルク森の戦い]](AD9年)で戦う、ゲルマーニア軍とローマ軍(Johann Peter Theodor Janssen画、1870~1873年頃)。中央上の人物はケールスキー族の名将[[w:アルミニウス (ゲルマン人)|アルミニウス]]。<br>アルミニウスが率いるケールスキー族・カッティー族らゲルマーニア諸部族同盟軍は、P.クィン(ク)ティリウス・ウァルス麾下ローマ3個軍団を壊滅させ、アウグストゥスに「ウァルスよ諸軍団を返せ([[w:la:Publius_Quinctilius_Varus|Quintili Vare]], legiones redde!)」と嘆かせた。]]
<br>
<div style="background:#ecf;"> '''スエービー族とカッティー族'''</div>
:『ガリア戦記』では、第1巻・第4巻および第6巻でたびたび[[w:スエビ族|スエービー族]]の名が言及される。タキトゥス<ref>『ゲルマーニア』タキトゥス著、泉井久之助訳注、岩波文庫の38章「スエービー」などを参照。</ref>など多くの史家が伝えるようにスエービー族 [[wikt:en:Suebi#Latin|Suēbī]] またはスエウィ族 Suēvī とは、単一の部族名ではなく、多くの独立した部族国家から構成される連合体の総称とされる。
:19世紀のローマ史家[[w:テオドール・モムゼン|テオドール・モムゼン]]によれば<ref>『モムゼン ローマの歴史Ⅳ』長谷川博隆訳、名古屋大学出版会、のp.201, p.224, p.232などを参照。</ref>、カエサルの時代のローマ人には
「スエービー」とは遊牧民を指す一般的な呼称で、カエサルがスエービーと呼ぶのはカッティー族だという。
:カッティー族とスエービー系諸部族の異同は明確ではないが、多くの史家は両者を区別して伝えている。
: 第1巻37節・51節・53節~54節、第4巻1節~4節・7節などで言及され、「百の郷を持つ」と
されている「スエービー族」は、スエービー系諸部族の総称、あるいは遊牧系の部族を指すのであろう。
: 他方、第4巻16節・19節・第6巻9節~10節・29節で、ウビイー族を圧迫する存在として言及される
:「スエービー族」はモムゼンの指摘のように、カッティー族 [[w:en:Chatti|Chatti]] であることが考えられる。
:タキトゥス著『ゲルマーニア』<ref>『ゲルマーニア』タキトゥス著、泉井久之助訳注、岩波文庫の36章「ケルスキー」などを参照。</ref>でも、カッティー族はケールスキー族と隣接する宿敵として描写され、本節の説明に合致する。
<div style="background:#ecf;"> '''ケールスキー族'''</div>
:ケールスキー族は、『ガリア戦記』では[[#10節|本節]]でカッティー族と隣接する部族として名を挙げられる
:のみである。しかしながら、本巻の年(BC53年)から61年後(AD9年)には、帝政ローマの
:[[w:アウグストゥス|アウグストゥス帝]]がゲルマーニアに派遣していたプブリウス・クィンクティリウス・ウァルス
:([[w:la:Publius_Quinctilius_Varus|Publius Quinctilius Varus]])が率いるローマ軍3個軍団に対して、名将[[w:アルミニウス (ゲルマン人)|アルミニウス]]を
:指導者とするケールスキー族は、カッティー族ら諸部族の同盟軍を組織して、ウァルスの3個軍団を
:[[w:トイトブルク森の戦い|トイトブルク森の戦い]]において壊滅させ、老帝アウグストゥスを嘆かせたという。
<div style="background:#ecf;"> '''ウビイー族'''</div>
:ウビイー族は『ガリア戦記』の第4巻・第6巻でも説明されているように、ローマ人への忠節を
:認められていた。そのため、タキトゥスによれば<ref>『ゲルマーニア』タキトゥス著、泉井久之助訳注、岩波文庫の28章などを参照。</ref>、ゲルマニアへのローマ人の守りとして
:BC38年頃にレヌス(ライン川)左岸のコロニア([[w:la:Colonia_Agrippina|Colonia]];植民市)すなわち現在の[[w:ケルン|ケルン市]]に移された。)
</div>
==ガッリア人の社会と風習について==
<div style="border:solid #999 1px;background:#feedff;max-width:80%;padding:0.25em 1em;margin:0.5em auto;align:left;overflow:auto;text-align:justify;">
===コラム「ガッリア・ゲルマーニアの地誌・民族誌について」===
[[画像:Testa di saggio o principe, forse il filosofo poseidonio, 50 ac. ca 01.JPG|thumb|right|200px|アパメアの[[w:ポセイドニオス|ポセイドニオス]]の胸像。地中海世界やガッリアなどを広く訪れて、膨大な著作を残した。<br>『ガリア戦記』の地誌・民族誌的な説明も、その多くを彼の著作に依拠していると考えられている。]]
:これ以降、11節~20節の10節にわたってガッリアの地誌・民族誌的な説明が展開され、さらには、ゲルマーニアの地誌・民族誌的な説明などが21節~28節の8節にわたって続く。ガッリア戦争の背景説明となるこのような地誌・民族誌は、本来ならば第1巻の冒頭に置かれてもおかしくはない。しかしながら、この第6巻の年(BC53年)は、カエサル指揮下のローマ勢にとってはよほど書かれるべき戦果が上がらなかったためか、ガッリア北部の平定とエブロネス族の追討戦だけでは非常に短い巻となってしまうため、このような位置に置いたとも考えられる。ゲルマーニアの森にどんな獣が住んでいるかなど、本筋にほとんど影響のないと思われる記述も見られる。
:『ガリア戦記』におけるガッリアの地誌・民族誌的な説明、特にこの11節以降の部分は、文化史的に重要なものと見なされ、考古学やケルトの伝承などからも裏付けられる。しかし、これらの記述はカエサル自身が見聞したというよりも、むしろ先人の記述、とりわけBC2~1世紀のギリシア哲学ストア派の哲学者・地理学者・歴史学者であった[[w:ポセイドニオス|ポセイドニオス]]([[w:la:Posidonius Apameus|Posidonius Apameus]])の著作に依拠していたと考えられている<ref>『ケルト事典』ベルンハルト・マイヤー著、鶴岡真弓監修、創元社の「ポセイドニオス」「カエサル」の項を参照。</ref> <ref>『ケルト人』ヴァンセスラス・クルータ([[w:fr:Venceslas Kruta|Venceslas Kruta]])著、鶴岡真弓訳、白水社 のp.20-21を参照。</ref>。ポセイドニオスは、ローマが支配する地中海世界やガッリア地域などを広く旅行した。彼の52巻からなる膨大な歴史書は現存しないが、その第23巻にガッリアに関する詳細な記述があったとされ、[[w:シケリアのディオドロス|ディオドロス]]、[[w:ストラボン|ストラボン]]、[[w:アテナイオス|アテナイオス]]らによって引用され、同時代および近代のケルト人観に多大な影響を与えたと考えられている。
:現存するガッリアの地誌・民族誌は、ストラボン<ref>『ギリシア・ローマ世界地誌Ⅰ』ストラボン著、飯尾都人訳、龍溪書舎を参照。</ref>、ディオドロス<ref>『神代地誌』ディオドロス著、飯尾都人訳、龍溪書舎を参照。</ref>、ポンポニウス・メラ<ref>『世界地理』ポンポニウス・メラ著、飯尾都人訳(上掲『神代地誌』に所収)</ref>のものなどがある。現存するゲルマーニアの地誌・民族誌は、ストラボン、タキトゥス<ref>『ゲルマーニア』タキトゥス著、泉井久之助訳注、岩波文庫などを参照。</ref>、ポンポニウス・メラなどのものがある。
</div>
===11節===
*<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/11節]] {{進捗|00%|2024-11-25}}</span>
;ガッリア人の派閥性
*<!--❶-->Quoniam ad hunc locum perventum est,
**この地<small>〔ゲルマーニア〕</small>にまで到達したので、
*non alienum esse videtur, de Galliae Germaniaeque moribus et, quo differant hae nationes inter sese, proponere.
**[[w:ガリア|ガッリア]]と[[w:ゲルマニア|ゲルマーニア]]の風習について、これらの種族が互いにどのように異なるか述べることは不適切でないと思われる。
:
*<!--❷-->In Gallia non solum in omnibus civitatibus atque in omnibus <u>pagis</u> partibusque,
**ガッリアにおいては、すべての部族において、さらにすべての<u>郷</u>や地方においてのみならず、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:''[[wikt:en:pagus#Latin|pagus]]'' (郷) はここでは、部族の領土の農村区画を指す行政用語<ref name="pagus">''[[w:en:Pagus]]'' 等を参照。</ref>。)</span>
*sed paene etiam in singulis domibus factiones sunt,
**ほとんどの個々の氏族においてさえも、派閥があり、
*earumque factionum principes sunt,
**それらの派閥には、領袖たちがいる。
:
*<!--❸-->qui summam auctoritatem eorum iudicio habere existimantur,
**その者<small>〔領袖〕</small>らは、彼ら<small>〔派閥〕</small>の判断に対して、最高の影響力を持っていると考えられている。
*quorum ad arbitrium iudiciumque summa omnium rerum consiliorumque redeat.
**すべての事柄と協議は結局のところ、その者<small>〔領袖〕</small>らの裁量や判断へ帰する。
:
*<!--❹--><u>Id</u>que eius rei causa antiquitus institutum videtur,
**それは、それらの事柄のために昔から取り決められたものと見られ、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は β系写本の記述で、α系写本では <u>ita</u>que となっている。)</span>
*ne quis ex plebe contra potentiorem auxilii egeret:
**平民のある者が、より権力のある者に対して、援助を欠くことがないように、ということである。
*suos enim quisque opprimi et circumveniri non patitur,
**すなわち<small>(領袖たちの)</small>誰も、身内の者たちが抑圧されたり欺かれたりすることを容認しない。
*neque, aliter si faciat, ullam inter suos habet auctoritatem.
**もし<small>(領袖が)</small>そうでなくふるまったならば、身内の者たちの間で何ら影響力を持てない。
:
*<!--❺-->Haec eadem ratio est in summa totius Galliae;
**これと同じ理屈が、ガッリア全体の究極において存在する。
*namque omnes civitates <u>in partes divisae sunt duas</u>.
**すなわち、すべての部族が二つの党派に分けられているのである。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、α系写本の語順で、β系写本では divisae sunt in duas partes となっている。)</span>
<!--
<span style="color:#009900;"></span>
<small></small>
**:<span style="color:#009900;">(訳注:
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:
-->
===12節===
'''ハエドゥイ族、セクァニ族、レミ族の覇権争い'''
*① Cum Caesar in Galliam venit,
**カエサルがガッリアに来たときに、
*alterius factionis principes erant Haedui, alterius Sequani.
**(二つの)派閥の一方の盟主は[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイ族]]であり、他方は[[w:セクァニ族|セクァニ族]]であった。
**:(訳注:第1巻31節の記述によれば、ハエドゥイ族と[[w:アルウェルニ族|アルウェルニ族]]がそれぞれの盟主であった。
**:カエサルが本節でアルウェルニ族の名を伏せている理由は不明である。
**:また、[[w:ストラボン|ストラボン]]によれば<ref>ストラボン『ギリシア・ローマ世界地誌Ⅰ』(前掲、p.330)</ref>、ハエドゥイ族とセクァニ族の敵対関係においては、
**:両部族を隔てるアラル川の水利権(川舟の通行税)をめぐる争いが敵意を助長していたという。)
*② Hi cum per se minus valerent,
**後者(セクァニ族)は自力ではあまり優勢ではなかったので、
*quod summa auctoritas antiquitus erat in Haeduis
**というのは、昔から最大の影響力はハエドゥイ族にあって、
*magnaeque eorum erant clientelae,
**彼ら(ハエドゥイ族)には多くの庇護民があったからであるが、
*Germanos atque Ariovistum sibi adiunxerant
**[[w:ゲルマニア|ゲルマニア]]人と[[w:アリオウィストゥス|アリオウィストゥス]]を自分たちに会盟させ、
*eosque ad se magnis iacturis pollicitationibusque perduxerant.
**多くの負担と約束で 彼らを自分たちのところに引き入れた。
*③ Proeliis vero compluribus factis secundis
**実にいくつもの戦闘を順調に行なって、
*atque omni nobilitate Haeduorum interfecta
**ハエドゥイ族のすべての高貴な者たちを殺害して、
*tantum potentia antecesserant,
**かなりの勢力で抜きん出たので、
*④ ut magnam partem clientium ab Haeduis ad se traducerent
**結果として、ハエドゥイ族から庇護民の大部分を自分たちへ味方に付けて、
*obsidesque ab iis principum filios acciperent
**彼らから領袖の息子たちを人質として受け取り、
*et publice iurare cogerent nihil se contra Sequanos consilii inituros,
**自分たち(ハエドゥイ族)がセクァニ族に対して何ら謀計を始めるつもりではない、と公に誓うことを強いて、
*et partem finitimi agri per vim occupatam possiderent
**近隣の土地の一部を力ずくで占領して所有地とした。
*Galliaeque totius principatum obtinerent.
**ガッリア全体の指導権を手に入れた。
*⑤ Qua necessitate adductus
**それにより、やむを得ずに動かされて、
*Diviciacus auxilii petendi causa Romam ad senatum profectus infecta re redierat.
**[[w:ディウィキアクス|ディウィキアクス]]は支援を求めるために[[w:ローマ|ローマ市]]に元老院のところへ赴いたが、事を成就せずに帰った。
*⑥ Adventu Caesaris facta commutatione rerum,
**カエサルの到来で事態の変化がなされて、
*obsidibus Haeduis redditis,
**ハエドゥイ族の人質たちは戻されて、
*veteribus clientelis restitutis,
**昔からの庇護民が復帰して、
*novis per Caesarem comparatis,
**カエサルを通じて新参者たちを仲間にした。
*quod ii qui se ad eorum amicitiam adgregaverant,
**というのは、彼ら(ハエドゥイ族)の友好のもとに仲間となっていた者たちが、
*⑦ meliore condicione atque aequiore imperio se uti videbant,
**(セクァニ族)より良い条件とより公平な支配を享受しているように見えて、
*reliquis rebus eorum gratia dignitateque amplificata
**ほかの事柄においても彼ら(ハエドゥイ族)の信望と品格がより増されて、
*Sequani principatum dimiserant.
**セクァニ族は指導権を放棄したのだ。
*In eorum locum Remi successerant:
**彼ら(セクァニ族)の地位において、[[w:レミ族|レミ族]]が取って代わった。
*quos quod adaequare apud Caesarem gratia intellegebatur,
**その者ら(レミ族)はカエサルのもとで信望において(ハエドゥイ族と)同等であると認識されたので、
*ii qui propter veteres inimicitias nullo modo cum Haeduis coniungi poterant,
**昔からの敵対関係のためにハエドゥイ族とどのようなやり方でも結ぶことができなかった者たちは、
*se Remis in clientelam dicabant.
**レミ族との庇護関係に自らを委ねたのだ。
*⑧ Hos illi diligenter tuebantur;
**この者ら(レミ族)はあの者ら(庇護民)を誠実に保護して、
*ita et novam et repente collectam auctoritatem tenebant.
**このようにして、最近に得られた新しい影響力を保持した。
*⑨ Eo tum statu res erat, ut longe principes haberentur Haedui,
**当時、ハエドゥイ族の位置付けは、まったく盟主と見なされるような状態であって、
*secundum locum dignitatis Remi obtinerent.
**レミ族の品格は第二の地位を占めたのだ。
===13節===
'''ガッリア人の社会階級、平民およびドルイドについて(1)'''
*① In omni Gallia eorum hominum, qui aliquo sunt numero atque honore, genera sunt duo.
**全ガッリアにおいて、何らかの地位や顕職にある人々の階級は二つである。
'''平民について'''
*Nam plebes paene servorum habetur loco,
**これに対して、平民はほとんど奴隷の地位として扱われており、
*quae nihil audet per se, nullo adhibetur consilio.
**自分たちを通じては何らあえてすることはないし、誰も相談をされることもない。
*② Plerique, cum aut aere alieno aut magnitudine tributorum aut iniuria potentiorum premuntur,
**多くの者は、あるいは負債、あるいは貢納の多さ、あるいはより権力のある者に抑圧されているので、
*sese in servitutem dicant.
**自らを奴隷身分に差し出している。
*Nobilibus in hos eadem omnia sunt iura, quae dominis in servos.
**高貴な者たちには彼ら(平民)において、奴隷において主人にあるのと同様なすべての権利がある。
'''ドルイドについて'''
*③ Sed de his duobus generibus alterum est druidum, alterum equitum.
**ともかく、これら二つの階級について、一方は[[w:ドルイド|ドルイド]](神官)であり、他方は[[w:騎士|騎士]]である。
*④ Illi rebus divinis intersunt, sacrificia publica ac privata procurant, religiones interpretantur:
**前者(ドルイド)は神事に介在し、公・私の<ruby><rb>[[w:供犠|供犠]]</rb><rp>(</rp><rt>くぎ</rt><rp>)</rp></ruby>を司り、信仰のことを講釈する。
**:(訳注:供犠とは、人や獣を生け贄として神前に捧げることである。<ruby><rb>[[w:人身御供|人身御供]]</rb><rp>(</rp><rt>ひとみごくう</rt><rp>)</rp></ruby>とも。)
[[画像:Two_Druids.PNG|thumb|right|200px|二人のドルイド。フランスの[[w:オータン|オータン]]、すなわちガッリア中部のビブラクテ辺りで発見された[[w:レリーフ|レリーフ]]。]]
*ad hos magnus adulescentium numerus disciplinae causa concurrit,
**この者ら(ドルイド)のもとへ、若者の多数が教えのために群り集まり、
*magnoque hi sunt apud eos honore.
**この者ら(ドルイド)は、彼ら(ガッリア人)のもとで大いなる地位にある。
*⑤ Nam fere de omnibus controversiis publicis privatisque constituunt,
**なぜなら(ドルイドは)ほとんどすべての公・私の訴訟ごとに判決をするのである。
*et, si quod est admissum facinus, si caedes facta,
**もし何らかの罪悪が犯されれば、もし殺害がなされれば、
*si de hereditate, de finibus controversia est,
**もし、遺産について、地所について、訴訟ごとがあれば、
*idem decernunt, praemia poenasque constituunt;
**同じ人たち(ドルイド)が裁決し、補償や懲罰を判決するのである。
*⑥ si qui aut privatus aut populus eorum decreto non stetit, sacrificiis interdicunt.
**もし何らかの個人あるいは集団が彼ら(ドルイド)の裁決を遵守しなければ、(その者らに)供犠を禁じる。
*Haec poena apud eos est gravissima.
**これは、彼ら(ガッリア人)のもとでは、非常に重い懲罰である。
*⑦ Quibus ita est interdictum,
**このように(供犠を)禁じられた者たちは、
*hi numero impiorum ac sceleratorum habentur,
**彼らは、不信心で不浄な輩と見なされて、
*his omnes decedunt, aditum sermonemque defugiunt,
**皆が彼らを忌避して、近づくことや会話を避ける。
*ne quid ex contagione incommodi accipiant,
**(彼らとの)接触から、何らかの災厄を負うことがないようにである。
*neque his petentibus ius redditur
**彼らが請願しても(元通りの)権利は戻されないし、
*neque honos ullus communicatur.
**いかなる地位(に就くこと)も許されない。
*⑧ His autem omnibus druidibus praeest unus,
**ところで、これらすべてのドルイドを一人が指導しており、
*qui summam inter eos habet auctoritatem.
**その者は彼ら(ドルイドたち)の間に最高の影響力を持っている。
*⑨ Hoc mortuo
**この者が死んだならば、
*aut, si qui ex reliquis excellit dignitate, succedit,
**あるいは、もし残りの者たちの中から品格に秀でた者がおれば、継承して、
*aut, si sunt plures pares, suffragio druidum {adlegitur}<ref>adlegitur はβ系写本の記述で、α系写本にはない。</ref>;
**あるいは、もしより多くの者たちが同等であれば、ドルイドの投票で{選ばれる}。
*nonnumquam etiam armis de principatu contendunt.
**ときどきは、武力でさえも首座を争うことがある。
*⑩ Hi certo anni tempore
**彼ら(ドルイド)は年間の定められた時期に
*in finibus Carnutum, quae regio totius Galliae media habetur, considunt in loco consecrato.
**ガッリア全体の中心地方と見なされている[[w:カルヌテス族|カルヌテス族]]の領土において、[[w:聖地|聖地]]に集合する。
**:(訳注:これはカエサルが支配する「ガッリア全体」の話で、他の地方には別の中心地があったようである。)
*Huc omnes undique, qui controversias habent, conveniunt
**ここへ、至る所から訴訟などを持つあらゆる者たちが集まって、
*eorumque decretis iudiciisque parent.
**彼ら(ドルイド)の裁決や判断に服従する。
*⑪ Disciplina in Britannia reperta atque inde in Galliam translata esse existimatur,
**(ドルイドの)教えは[[w:ブリタンニア|ブリタンニア]]で見出され、そこからガッリアにもたらされたと考えられている。
**:(訳注:これに対して、[[w:シケリアのディオドロス|ディオドロス]]は、ガッリア人の信仰は[[w:ピュタゴラス教団|ピュタゴラスの教説]]であると伝えている<ref>ディオドロス『神代地誌』(前掲、p.408)</ref>。
**:[[w:ストラボン|ストラボン]]によれば、これは東方のゲタエ人([[w:en:Getae|Getae]];[[w:トラキア|トラキア]]系ないし[[w:ダキア|ダキア]]系)を通じて取り入れたものだという<ref>ストラボン『ギリシア・ローマ世界地誌Ⅰ』(前掲、第7巻 第3章 第5節)</ref>。)
*⑫ et nunc, qui diligentius eam rem cognoscere volunt,
**今でも、その事柄をより入念に探究することを欲する者たちは、
*plerumque illo discendi causa proficiscuntur.
**たいてい、かの地に研究するために旅立つ。
===14節===
'''ドルイドについて(2)'''
*① Druides a bello abesse consuerunt
**[[w:ドルイド|ドルイド]]たちは、戦争に関与しない習慣であり、
*neque tributa una cum reliquis pendunt;
**ほかの者と一緒に貢納(租税)を支払うこともない。
*militiae vacationem omniumque rerum habent immunitatem.
**[[w:徴兵制度|兵役]]の免除や、すべての事柄において免除特権を持っているのである。
[[画像:Druids,_in_the_early_morning_glow_of_the_sun.jpg|thumb|right|200px|現代イギリスのドルイド教復興主義者たち]]
*② Tantis excitati praemiis
**このような特典に駆り立てられて
*et sua sponte multi in disciplinam conveniunt
**自らの意思で多くの者が教え(の場)に集まっても来るし、
*et a parentibus propinquisque mittuntur.
**親たちや縁者たちによって送られても来る。
*③ Magnum ibi numerum versuum ediscere dicuntur.
**(彼らは)そこで詩句の多数を習得すると言われている。
*Itaque annos nonnulli vicenos in disciplina permanent.
**こうして、少なからぬ者たちが、20年にもわたって教え(の場)に残留する。
[[画像:Dédicace_de_Segomaros_(inscription gallo-grecque).png|thumb|right|200px|ギリシア文字で刻まれたガッリアの碑文]]
*Neque fas esse existimant ea litteris mandare,
**それら(の詩句)を文字で刻み込むことは、神意に背くと考えている。
*cum in reliquis fere rebus, publicis privatisque rationibus, Graecis litteris utantur.
**もっとも、ほかの事柄においては、公・私の用件に[[w:ギリシア文字|ギリシア文字]]を用いる。
*④ Id mihi duabus de causis instituisse videntur,
**それは、私(カエサル)には、二つの理由で(ドルイドが)定めたことと思われる。
**:(訳注:これは、カエサルが自らを一人称で示している珍しい個所である。)
*quod neque in vulgum disciplinam efferri velint
**というのは、教えが一般大衆にもたらされることは欲していないし、
*neque eos, qui discunt, litteris confisos minus memoriae studere:
**(教えを)学ぶ者が、文字を頼りにして、あまり暗記することに努めなくならないようにである。
[[画像:Dying_gaul.jpg|thumb|right|200px|『[[w:瀕死のガリア人|瀕死のガリア人]]』([[w:en:Dying_Gaul|Dying Gaul]])像(ローマ市の[[w:カピトリーノ美術館|カピトリーノ美術館]])]]
*quod fere plerisque accidit, ut
**というのも、ほとんど多くの場合に起こることには、
*praesidio litterarum diligentiam in perdiscendo ac memoriam remittant.
**文字の助けによって、入念に猛勉強することや暗記することを放棄してしまうのである。
*⑤ In primis hoc volunt persuadere,
**とりわけ、彼ら(ドルイド)が説くことを欲しているのは、
*non interire animas, sed ab aliis post mortem transire ad alios,
**霊魂は滅びることがないのみならず、死後にある者から別のある者へ乗り移るということである。
**:(訳注:ガッリア人の[[w:輪廻転生|転生信仰]]は、[[w:ピュタゴラス教団|ピュタゴラスの教説]]であると、[[w:シケリアのディオドロス|ディオドロス]]が伝えている<ref>ディオドロス『神代地誌』(前掲、p.408)</ref>。)
*atque hoc maxime ad virtutem excitari putant metu mortis neglecto.
**これによって(ガッリア人は)死の恐怖に無頓着になって最も武勇へ駆り立てられると(ドルイドは)思っている。
[[画像:Universum.jpg|thumb|right|200px|古代以来の伝統的な世界観における天空と平らな大地。カルデアやギリシアを除けば、丸い地球という観念は知られていなかった。]]
*Multa praeterea de sideribus atque eorum motu,
**さらに多く、星々とその動きについて、
*de mundi ac terrarum magnitudine, de rerum natura,
**天空と大地の大きさについて、物事の本質について、
*de deorum immortalium vi ac potestate
**不死の神々の力と支配について、
*disputant et iuventuti tradunt.
**研究して、青年たちに教示するのである。
<br>
<br>
*('''訳注:ドルイドについて'''
:ケルト社会の神官・祭司・僧などとされるドルイドについては、おそらくは[[w:ポセイドニオス|ポセイドニオス]]、そしてカエサル、
:および[[w:シケリアのディオドロス|ディオドロス]]<ref>ディオドロス『神代地誌』(前掲、p.410-p.411)</ref>、[[w:ストラボン|ストラボン]]<ref>ストラボン『ギリシア・ローマ世界地誌Ⅰ』(前掲、p.341-p.342)</ref>、ポンポニウス・メラ<ref>ポンポニウス・メラ『世界地理』(前掲、p.549)</ref>などのギリシア人・ローマ人の著述家たちがそれぞれ
:書き残しているために同時代や現代に知られている。しかし、本節にもあるように、その秘密主義からか、
:古代ギリシア・ローマの著作にあるほかには、その詳細については不明である。)
===15節===
[[画像:BIATEC_pri_NBS_1.jpg|thumb|right|200px|ケルト系の王ビアテック([[w:en:Biatec|Biatec]])の騎馬像([[w:スロバキア国立銀行|スロバキア国立銀行]])。彼はBC1世紀のケルトの硬貨に刻まれた人物で、現代[[w:スロバキア・コルナ|スロバキアの5コルナ]]硬貨にも刻まれている。]]
[[画像:Bige_Musée_de_Laon_050208.jpg|thumb|right|200px|二頭立て二輪馬車([[w:チャリオット|戦車]])に乗るガリア人像(仏・ラン博物館)]]
'''ガッリア人の騎士階級について'''
*① Alterum genus est equitum.
**(ドルイドと並ぶ)もう一つの階級は、[[w:騎士|騎士]]である。
*Hi, cum est usus atque aliquod bellum incidit
**彼らは、必要とされ、かつ何らかの戦争が勃発したときには、
*─ quod fere ante Caesaris adventum quotannis accidere solebat,
**─ それ(戦争)はカエサルの到来以前にはほとんど毎年のように起こるのが常であり、
*uti aut ipsi iniurias inferrent aut inlatas propulsarent ─,
**自身が侵犯行為を引き起こすためか、あるいは引き起こされて撃退するためであったが、─
*omnes in bello versantur,
**総勢が戦争に従事した。
*② atque eorum ut quisque est genere copiisque amplissimus,
**さらに彼らは、高貴な生まれで財産が非常に大きければ大きいほど、
**:(訳注:ut quisque ~ ita;おのおのが~であればあるほどますます)
*ita plurimos circum se ambactos clientesque habet.
**自らの周囲に非常に多くの臣下や庇護民たちを侍らせる。
*Hanc unam gratiam potentiamque noverunt.
**(騎士たちは)これが信望や権勢(を示すこと)の一つであると認識しているのである。
===16節===
'''ガッリア人の信仰と生け贄、ウィッカーマン'''
*① Natio est omnis Gallorum admodum dedita religionibus,
**ガッリア人のすべての部族民は、まったく信仰行為に身を捧げている。
*② atque ob eam causam,
**その理由のために、
*qui sunt adfecti gravioribus morbis
**非常に重い病気を患った者たち
*quique in proeliis periculisque versantur,
**および戦闘において危険に苦しめられる者たちは、
*aut pro victimis homines immolant
**あるいは<ruby><rb>[[w:生贄|生け贄]]</rb><rp>(</rp><rt>いけにえ</rt><rp>)</rp></ruby>の獣(犠牲獣)の代わりに人間を供えたり、
*aut se immolaturos vovent,
**あるいは自らを犠牲にするつもりであると誓願し、
*administrisque ad ea sacrificia druidibus utuntur,
**その<ruby><rb>[[w:供犠|供犠]]</rb><rp>(</rp><rt>くぎ</rt><rp>)</rp></ruby>を執り行う者として[[w:ドルイド|ドルイド]]を利用するのである。
*③ quod, pro vita hominis nisi hominis vita reddatur,
**というのは(一人の)人間の生命のためには、(もう一人の)人間の生命が償われない限り、
*non posse deorum immortalium numen placari arbitrantur,
**不死の神々の<ruby><rb>御霊</rb><rp>(</rp><rt>みたま</rt><rp>)</rp></ruby>がなだめられることができないと思われているからである。
*publiceque eiusdem generis habent instituta sacrificia.
**同じような類いの供儀が公けに定められているのである。
[[画像:WickerManIllustration.jpg|thumb|right|310px|柳の枝で編んだ巨人[[w:ウィッカーマン|ウィッカーマン]]([[w:en:Wicker_Man|Wicker Man]])の想像画(18世紀)。この特異な風習は、近代になって人々の興味をかき立て、いくつもの想像画が描かれた<ref>例えば『ケルト人─蘇るヨーロッパ<幻の民>』C.エリュエール著、鶴岡真弓監修、創元社、p.130の挿絵などを参照。</ref>。1973年にはイギリスで映画化され<ref>“[[w:en:The Wicker Man (1973 film)|The Wicker Man]]”はウィッカーマンを題材にした1973年のイギリスのカルト映画作品。</ref>、2006年にはアメリカなどでも映画化された<ref>“[[w:en:The Wicker Man (2006 film)|The Wicker Man]]”は上記作品をリメイクした2006年のアメリカ・カナダ・ドイツの映画作品。</ref>。]]
[[画像:Burning_wicker_man_by_Bruce_McAdam.jpg|thumb|right|100px|スコットランドの野外博物館で燃やされるウィッカーマン(2008年)]]
'''ウィッカーマン'''
*④ Alii immani magnitudine simulacra habent,
**ある者たちは、恐ろしく大規模な像を持って、
*quorum contexta viminibus membra vivis hominibus complent;
**その柳の枝で編み込まれた肢体を人間たちで満杯にして、
*quibus succensis
**それらを燃やして、
*circumventi flamma exanimantur homines.
**人々は炎に取り巻かれて息絶えさせられるのである。
*⑤ Supplicia eorum qui in furto aut in latrocinio
**窃盗あるいは追い剥ぎに関わった者たちを処刑することにより、
*aut aliqua noxia sint comprehensi,
**あるいは何らかの罪状により捕らわれた者たち(の処刑)により、
*gratiora dis immortalibus esse arbitrantur;
**不死の神々に感謝されると思っている。
*sed, cum eius generis copia defecit,
**しかしながら、その類いの量が欠けたときには、
*etiam ad innocentium supplicia descendunt.
**潔白な者たちさえも犠牲にすることに頼るのである。
<br><br>
:('''訳注''':このような'''[[w:ウィッカーマン|ウィッカーマン]]'''の供犠については[[w:ストラボン|ストラボン]]も伝えており<ref>ストラボン『ギリシア・ローマ世界地誌Ⅰ』(前掲、p.343)</ref>、
:[[w:人身御供|人身御供]]の種類の一つとして、干し草やたきぎで巨像を作り、その中へあらゆる
:家畜・野生動物や人間たちを投げ込んで丸焼きにする習慣があったという。
: また、[[w:シケリアのディオドロス|ディオドロス]]<ref>ディオドロス『神代地誌』(前掲、p.410~p.411)</ref>やストラボンによれば、ドルイドはむしろ'''[[w:予言|予言者]]・[[w:占い|占い師]]'''
:であるという。ドルイドが重要な問題について占うときには、供犠される人間の
:腹または背中を剣などで刺して、犠牲者の倒れ方、肢体のけいれん、出血の様子
:などを観察して、将来の出来事を占うのだという。)
===17節===
'''ガッリアの神々(ローマ風解釈)'''
*① Deum maxime [[w:la:Mercurius_(deus)|Mercurium]] colunt.
**(ガッリア人は)神々のうちでとりわけ[[w:メルクリウス|メルクリウス]]を崇拝する。
**:(訳注:メルクリウスは[[w:ローマ神話|ローマ神話]]の神名であり、本節の神名はすべてローマ風解釈である。)
*Huius sunt plurima simulacra:
**彼の偶像が最も多い。
*hunc omnium inventorem artium ferunt,
**(ガッリア人は)彼をすべての技芸の発明者であると言い伝えており、
*hunc viarum atque itinerum ducem,
**彼を道および旅の案内者として、
*hunc ad quaestus pecuniae mercaturasque habere vim maximam arbitrantur.
**彼が金銭の利得や商取引で絶大な力を持つと思われている。
[[画像:Taranis_Jupiter_with_wheel_and_thunderbolt_Le_Chatelet_Gourzon_Haute_Marne.jpg|thumb|right|200px|ガッリアの雷神タラニス([[w:en:Taranis|Taranis]])の神像([[w:en:National_Archaeological_Museum_(France)|フランス国立考古学博物館]])。雷を司ることからローマ神話のユピテルと同一視された。左手に車輪、右手に稲妻を持っている。]]
[[画像:God_of_Etang_sur_Arroux_possible_depiction_of_Cernunnos.jpg|thumb|right|200px|ガッリアの神ケルヌンノス([[w:en:Cernunnos|Cernunnos]])の神像(フランス国立考古学博物館)。]]
*Post hunc [[w:la:Apollo|Apollinem]] et [[w:la:Minerva|Martem]] et [[w:la:Iuppiter|Iovem]] et [[w:la:Mars_(deus)|Minervam]].
**彼に続いて、[[w:アポローン|アポロ]]と[[w:マルス (ローマ神話)|マルス]]と[[w:ユーピテル|ユピテル]]と[[w:ミネルウァ|ミネルウァ]]を(ガッリア人は崇拝する)。
*② De his eandem fere, quam reliquae gentes, habent opinionem:
**これら(の神々)について、ほかの種族とほぼ同じ見解を持っている。
*Apollinem morbos depellere,
**アポロは病気を追い払い、
*Minervam operum atque artificiorum initia tradere,
**ミネルウァは工芸や技術の初歩を教示し、
*Iovem imperium caelestium tenere,
**ユピテルは天界の統治を司り、
*Martem bella regere.
**マルスは戦争を支配する。
*③ Huic, cum proelio dimicare constituerunt,
**彼(マルス)には、(ガッリア人が)戦闘で干戈を交えることを決心したときに、
*ea quae bello ceperint, plerumque devovent:
**戦争で捕獲したものを、たいていは奉納するものである。
*cum superaverunt, animalia capta immolant
**(戦闘で)打ち勝ったときには、捕獲された獣を生け贄に供えて、
*reliquasque res in unum locum conferunt.
**残りの物を1か所に運び集める。
*④ Multis in civitatibus harum rerum ex(s)tructos tumulos locis consecratis conspicari licet;
**多くの部族において、これらの物が積み上げられた塚を、神聖な地で見ることができる。
*⑤ neque saepe accidit, ut neglecta quispiam religione
**何らかの者が信仰を軽視するようなことが、しばしば起こることはない。
*aut capta apud se occultare aut posita tollere auderet,
**捕獲されたものを自分のもとに隠すこと、あるいは(塚に)置かれたものをあえて運び去ることは。
*gravissimumque ei rei supplicium cum cruciatu constitutum est.
**そんな事には、拷問を伴う最も重い刑罰が決められている。
**:(訳注:最も重い刑罰とは、処刑であると思われる。)
<br>
:(訳注:'''ローマ風解釈について'''
:ガッリアなどケルト文化の社会においては、非常に多くの神々が信仰されており、
:ケルト語による多くの神名が知られており、考古学的にも多くの神像が遺されている。
:しかしながら、これらの神々がどのような性格や権能を持っていたのか、詳しくは判っていない。
:ローマ人は、数多くのケルトの神々をローマ神話の神々の型に当てはめて解釈した。
:[[w:タキトゥス|タキトゥス]]はこれを「[[w:ローマ風解釈|ローマ風解釈]]」[[w:en:Interpretatio_Romana#Roman_version|Interpretatio Romana]] <ref>タキトゥス『ゲルマーニア』43章([[s:la:De_origine_et_situ_Germanorum_(Germania)#XLIII|ラテン語原文]])を参照。</ref>と呼んでいる<ref>『ケルト事典』(前掲)「ローマ風解釈」の項を参照。</ref>。)
===18節===
[[画像:Gaul_god_Sucellus.jpg|thumb|right|200px|ガッリアの神スケッルス([[w:en:Sucellus|Sucellus]])の神像。[[w:冥界|冥界]]の神とされ、ディス・パテルと同一視されたと考えられている。]]
'''ガッリア人の時間や子供についての観念'''
*① Galli se omnes ab Dite patre prognatos praedicant
**ガッリア人は、自分たちは皆、ディス・パテルの末裔であると公言しており、
**:(訳注:ディス・パテル [[w:en:Dis_Pater|Dis Pater]] も前節と同様にローマ神話の神名である。)
*idque ab druidibus proditum dicunt.
**それは[[w:ドルイド|ドルイド]]たちにより伝えられたと言う。
;時間の観念
*② Ob eam causam spatia omnis temporis non numero dierum, sed noctium finiunt;
**その理由のために、すべての[[w:時間|時間]]の間隔を、[[w:昼|昼間]]の数ではなく、[[w:夜|夜間]](の数)で区切る。
*dies natales et mensum et annorum initia sic observant, ut noctem dies subsequatur.
**誕生日も、月や年の初めも、夜間に昼間が続くように注意を払っている。
;子供についての観念
*③ In reliquis vitae institutis hoc fere ab reliquis differunt,
**人生のほかの風習において、以下の点でほかの者たち(種族)からほぼ異なっている。
*quod suos liberos, nisi cum adoleverunt, ut munus militiae sustinere possint,
**自分の子供たちが、[[w:徴兵制度|兵役の義務]]を果たすことができるように成長したときでない限り、
*palam ad se adire non patiuntur
**公然と自分のところへ近づくことは許されないし、
*filiumque puerili aetate in publico in conspectu patris adsistere turpe ducunt.
**少年期の息子が公けに父親の見ているところでそばに立つことは恥ずべきと見なしている。
===19節===
'''ガッリア人の婚姻と財産・葬儀の制度'''
*① Viri, quantas pecunias ab uxoribus dotis nomine acceperunt,
**夫は、妻から[[w:持参金|持参金]]の名目で受け取った金銭の分だけ、
*tantas ex suis bonis aestimatione facta cum dotibus communicant.
**自分の財産のうちから見積もられた分を、持参金とともに一つにする。
*② Huius omnis pecuniae coniunctim ratio habetur fructusque servantur:
**これらのすべての金銭は共同に算定が行なわれて、[[w:利子|利子]]が貯蓄される。
*uter eorum vita superarit,
**彼ら2人のいずれかが、人生において生き残ったら、
*ad eum pars utriusque cum fructibus superiorum temporum pervenit.
**双方の分がかつての期間の利子とともに(生き残った)その者(の所有)に帰する。
[[画像:Hallstatt_culture_ramsauer.jpg|thumb|right|200px|[[w:ハルシュタット文化|ハルシュタット文化]]の[[w:墳丘墓|墳丘墓]]から発掘された遺骸と[[w:副葬品|副葬品]](19世紀の模写)。ガッリアなどではハルシュタット文化後期から[[w:土葬|土葬]]が普及したが、[[w:ラ・テーヌ文化|ラ・テーヌ文化]]中期から再び[[w:火葬|火葬]]が主流になったと考えられている。]]
*③ Viri in uxores, sicuti in liberos, vitae necisque habent potestatem;
**夫は、妻において、子供におけるのと同様に、生かすも殺すも勝手である。
*et cum pater familiae inllustriore loco natus decessit, eius propinqui conveniunt
**上流身分に生まれた家族の父親が死去したとき、彼の近縁の者たちが集まって、
*et de morte, si res in suspicionem venit, de uxoribus in servilem modum quaestionem habent,
**死について、もし疑念が出来したならば、妻について、[[w:奴隷|奴隷]]におけるようなやり方で審問して、
*et si compertum est, igni atque omnibus tormentis excruciatas interficiunt.
**もし(疑念が)確認されたならば、火やあらゆる責め道具によって[[w:拷問|拷問]]にかけて誅殺する。
*④ Funera sunt pro cultu Gallorum magnifica et sumptuosa;
**[[w:葬儀|葬儀]]は、ガッリア人の生活習慣の割には派手でぜいたくなものである。
*omniaque quae vivis cordi fuisse arbitrantur in ignem inferunt, etiam animalia,
**生前に大切であったと思われるもの一切合財を、獣でさえも、火の中に投げ入れる。
*ac paulo supra hanc memoriam servi et clientes, quos ab his dilectos esse constabat,
**さらに、より以前のこの記憶では、彼ら(亡者)により寵愛されていたことが知られていた奴隷や庇護民をも、
*iustis funeribus confectis una cremabantur.
**慣習による葬儀が成し遂げられたら、一緒に火葬されていたのである。
===20節===
'''ガッリア部族国家の情報統制'''
*① Quae civitates commodius suam rem publicam administrare existimantur,
**より適切に自分たちの公儀(=国家体制)を治めると考えられているような部族は、
*habent legibus sanctum,
**(以下のように)定められた法度を持つ。
*si quis quid de re publica a finitimis rumore aut fama acceperit,
**もし、ある者が公儀に関して近隣の者たちから何らかの噂や風聞を受け取ったならば、
*uti ad magistratum deferat neve cum quo alio communicet,
**官吏に報告して、他の者と伝え合ってはならないと。
*② quod saepe homines temerarios atque imperitos falsis rumoribus terreri
**というのは、無分別で無知な人間たちはしばしば虚偽の噂に恐れて、
*et ad facinus impelli et de summis rebus consilium capere cognitum est.
**罪業に駆り立てられ、重大な事態についての考えを企てると認識されているからである。
*③ Magistratus quae visa sunt occultant,
**官吏は、(隠すことが)良いと思われることを隠して、
*quaeque esse ex usu iudicaverunt, multitudini produnt.
**有益と判断していたことを、民衆に明らかにする。
*De re publica nisi per concilium loqui non conceditur.
**公儀について、集会を通じてでない限り、語ることは認められていない。
==ゲルマーニアの風習と自然について==
===21節===
'''ゲルマーニア人の信仰と性'''
*① Germani multum ab hac consuetudine differunt.
**[[w:ゲルマニア|ゲルマーニア]]人はこれに対し、風習が大いに異なっている。
*Nam neque druides habent, qui rebus divinis praesint, neque sacrificiis student.
**すなわち、神事を司る[[w:ドルイド|ドルイド]]も持たないし、供犠に熱心でもない。
*② Deorum numero
**神々に数えるものとして、
*eos solos ducunt, quos cernunt et quorum aperte opibus iuvantur, Solem et Vulcanum et Lunam,
**(彼らが)見分けるものや明らかにその力で助けられるもの、[[w:太陽|太陽]]と[[w:ウォルカヌス|ウォルカヌス]](火の神)と[[w:月|月]]だけを信仰して、
*reliquos ne fama quidem acceperunt.
**ほかのものは風聞によってさえも受け入れていない。
**:(訳注:これに対して、[[w:タキトゥス|タキトゥス]]は、ゲルマーニア人はメルクリウスやマルスなどを信仰すると伝えている<ref>タキトゥス『ゲルマーニア』2章・9章を参照</ref>。)
*③ Vita omnis in venationibus atque in studiis rei militaris consistit:
**すべての人生は、[[w:狩猟|狩猟]]に、および[[w:軍事|軍事]]への執心に依拠しており、
*ab parvulis labori ac duritiae student.
**幼時より労役や負担に努める。
*④ Qui diutissime impuberes permanserunt, maximam inter suos ferunt laudem:
**最も長く純潔に留まった者は、自分たちの間で最大の賞賛を得る。
*hoc ali staturam, ali vires nervosque confirmari putant.
**これによって、ある者には背の高さが、ある者には力と筋肉が強化されると、思っている。
*⑤ Intra annum vero vicesimum feminae notitiam habuisse in turpissimis habent rebus;
**20歳にならない内に女を知ってしまうことは、とても恥ずべきことであると見なしている。
*cuius rei nulla est occultatio,
**その(性の)事を何ら隠すことはない。
*quod et promiscue in fluminibus perluuntur
**というのは、川の中で(男女が)混じって入浴しても、
*et pellibus aut parvis renonum tegimentis utuntur, magna corporis parte nuda.
**なめし皮や、小さな毛皮の覆いを用いるが、体の大部分は裸なのである。
===22節===
'''ゲルマーニア人の土地制度'''
*① Agri culturae non student,
**(ゲルマーニア人は)[[w:農耕|土地を耕すこと]]に熱心ではなく、
*maiorque pars eorum victus in lacte, caseo, carne consistit.
**彼らの大部分は、生活の糧が[[w:乳|乳]]、[[w:チーズ|チーズ]]、[[w:肉|肉]]で成り立っている。
*② Neque quisquam agri modum certum aut fines habet proprios;
**何者も、土地を確定した境界で、しかも持続的な領地として、持ってはいない。
*sed magistratus ac principes in annos singulos
**けれども、官吏や領袖たちは、各年ごとに、
*gentibus cognationibusque hominum, quique una coierunt,
**一緒に集住していた種族や血縁の人々に、
*quantum et quo loco visum est agri adtribuunt
**適切と思われる土地の規模と場所を割り当てて、
*atque anno post alio transire cogunt.
**翌年には他(の土地)へ移ることを強いるのである。
**:(訳注:[[ガリア戦記 第4巻#1節|第4巻1節]]には、スエービー族の説明として同様の記述がある。)
*③ Eius rei multas adferunt causas:
**(官吏たちは)その事の多くの理由を説明する。
*ne adsidua consuetudine capti studium belli gerendi agricultura commutent;
**(部族民が)[[w:居住|定住]]する習慣にとらわれて、戦争遂行の熱意を土地を耕すことに変えてしまわないように。
*ne latos fines parare studeant, potentioresque humiliores possessionibus expellant;
**広大な領地を獲得することに熱心になって、有力者たちが弱者たちを地所から追い出さないように。
*ne accuratius ad frigora atque aestus vitandos aedificent;
**寒さや暑さを避けるために(住居を)非常な入念さで建築することがないように。
*ne qua oriatur pecuniae cupiditas, qua ex re factiones dissensionesque nascuntur;
**金銭への欲望が増して、その事から派閥や不和が生ずることのないように。
*ut animi aequitate plebem contineant, cum suas quisque opes cum potentissimis aequari videat.
**おのおのが自分の財産も最有力者のも同列に置かれていると見ることで、心の平静により民衆を抑えるように。
<br>
:(訳注:[[w:ストラボン|ストラボン]]<ref>ストラボン『ギリシア・ローマ世界地誌Ⅰ』(前掲、p.510)</ref>や[[w:タキトゥス|タキトゥス]]<ref>タキトゥス『ゲルマーニア』23章・16章などを参照。26章では農耕についても解説されている。</ref>などの著述家たちも、ゲルマーニアの住民が農耕をせず、
:遊牧民のように移動しながら暮らし、小さな住居に住み、食料を家畜に頼っていると記述している。)
===23節===
'''ゲルマーニア諸部族のあり方'''
*① Civitatibus maxima laus est
**諸部族にとって、最も称賛されることは、
*quam latissime circum se vastatis finibus solitudines habere.
**できる限り広く自分たちの周辺で領土を荒らして荒野に保っておくことである。
*② Hoc proprium virtutis existimant,
**以下のことを(自分たちの)武勇の特質と考えている。
*expulsos agris finitimos cedere,
**近隣の者たちが土地から追い払われて立ち去ること、
*neque quemquam prope {se} audere consistere;
**および、何者も自分たちの近くにあえて定住しないこと、である。
*③ simul hoc se fore tutiores arbitrantur, repentinae incursionis timore sublato.
**他方、これにより、予期せぬ襲撃の恐れを取り除いて、自分たちはより安全であろうと思われた。
*④ Cum bellum civitas aut inlatum defendit aut infert,
**部族に戦争がしかけられて防戦したり、あるいはしかけたりしたときには、
*magistratus, qui ei bello praesint, ut vitae necisque habeant potestatem, deliguntur.
**その戦争を指揮して、生かすも殺すも勝手な権力を持つ将官が選び出される。
*⑤ In pace nullus est communis magistratus,
**平時においては、(部族に)共通の将官は誰もいないが、
*sed principes regionum atque <u>[[wikt:en:pagus#Latin|pagorum]]</u> inter suos ius dicunt controversiasque minuunt.
**地域や<u>郷</u>の領袖たちが、身内の間で判決を下して、訴訟ごとを減らす。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:''pagus'' (郷) はここでは、部族の領土の農村区画を指す行政用語<ref name="pagus"/>。)</span>
*⑥ Latrocinia nullam habent infamiam, quae extra fines cuiusque civitatis fiunt,
**それぞれの部族の領土の外で行なう略奪のことは、何ら恥辱とは見なしていない。
*atque ea iuventutis exercendae ac desidiae minuendae causa fieri praedicant.
**さらに、それ(略奪)は、青年たちを訓練することや、怠惰を減らすことのために行なわれる、と公言している。
*⑦ Atque ubi quis ex principibus in concilio dixit
**そして、領袖たちのうちのある者が(次のように)言うや否や、
*se ducem fore, qui sequi velint, profiteantur,
**《自分が(略奪の)引率者となるから、追随したい者は申し出るように》と(言うや否や)、
*consurgunt ii qui et causam et hominem probant, suumque auxilium pollicentur
**(略奪の)口実にも(引率する)人物にも賛同する者は立ち上がって、自らの支援を約束して、
*atque ab multitudine conlaudantur:
**群衆から大いに誉められる。
*⑧ qui ex his secuti non sunt,
**これら(約束した者)のうちで(略奪に)追随しない者は、
*in desertorum ac proditorum numero ducuntur,
**逃亡兵や裏切り者と見なされて、
*omniumque his rerum postea fides derogatur.
**その後は、彼らにとってあらゆる事の信頼が(皆から)拒まれる。
*⑨ Hospitem violare fas non putant;
**客人に暴行することは道理に適うとは思ってはいない。
*qui quacumque de causa ad eos venerunt,
**彼ら(ゲルマーニア人)のところへ理由があって来た者(=客人)は誰であれ、
*ab iniuria prohibent, sanctos habent,
**無法行為から防ぎ、尊ぶべきであると思っている。
*hisque omnium domus patent victusque communicatur.
**彼ら(客人)にとってすべての者の家は開放されており、生活用品は共有される。
**:(訳注:客人への接待ぶりについては、[[w:タキトゥス|タキトゥス]]<ref>タキトゥス『ゲルマーニア』21章を参照。</ref>も伝えている。)
===24節===
[[画像:Celts.svg|thumb|right|200px|ケルト文化の広がり(BC800年~BC400年頃)。ケルト系部族の優越は、[[w:鉄器|鉄器]]文化の発達などによると考えられている。]]
[[画像:Mappa_di_Eratostene.jpg|thumb|right|200px|[[w:エラトステネス|エラトステネス]]の地理観を再現した世界地図(19世紀)。左上に「Orcynia Silva(オルキュニアの森)」とある。]]
[[画像:Hallstatt_LaTene.png|thumb|right|200px|[[w:ハルシュタット文化|ハルシュタット文化]]期と[[w:ラ・テーヌ文化|ラ・テーヌ文化]]期におけるケルト系部族の分布。右上にウォルカエ族(Volcae)やボイイ族(Boii)の名が見える。ボイイ族が居住していた地域はボイオハエムム(Boihaemum)と呼ばれ、[[w:ボヘミア|ボヘミア]](Bohemia)として現在に残る。]]
'''ゲルマーニア人とガッリア人'''
*① Ac fuit antea tempus,
**かつてある時代があって、
*cum Germanos Galli virtute superarent,
**そのとき、[[w:ゲルマニア|ゲルマーニア]]人を[[w:ガリア|ガッリア]]人が武勇で優っており、
*ultro bella inferrent, propter hominum multitudinem agrique inopiam
**人間の多さと土地の欠乏のために(ガッリア人は)自発的に戦争をしかけて、
*trans Rhenum colonias mitterent.
**レーヌス(=[[w:ライン川|ライン川]])の向こう側へ入植者たちを送り込んでいた。
*② Itaque ea quae fertilissima Germaniae sunt loca circum Hercyniam silvam,
**[[w:ヘルキュニア|ヘルキュニア]]の森の周辺のゲルマーニアで最も肥沃な地を、
*quam Eratostheni et quibusdam Graecis fama notam esse video,
**それを[[w:エラトステネス|エラトステネス]]や[[w:ギリシア人|ギリシア人]]のある者たちも風聞により知っていたと私は見出して、
*quam illi Orcyniam appellant,
**それを彼らはオルキュニアと呼んでいるが、
*Volcae Tectosages occupaverunt atque ibi consederunt;
**(その地を)ウォルカエ族系のテクトサゲス族が占領して、そこに定住していた。
*③ quae gens ad hoc tempus his sedibus sese continet
**その種族は、この時代までこの居場所に留まっており、
*summamque habet iustitiae et bellicae laudis opinionem.
**公正さと戦いの称賛で最高の評判を得ている。
*④ Nunc quod in eadem inopia, egestate, patientia qua Germani permanent,
**今も、窮乏や貧困を、ゲルマーニア人が持ちこたえているのと同じ忍耐をもって、
*eodem victu et cultu corporis utuntur;
**同じ食物および体の衣服を用いている。
*⑤ Gallis autem provinciarum propinquitas et transmarinarum rerum notitia
**これに対して、ガッリア人にとって(ローマの)属州に近接していること、および海外のものを知っていることは、
*multa ad copiam atque usus largitur,
**富や用品の多くが供給されている。
*paulatim adsuefacti superari multisque victi proeliis
**(ガッリア人は)しだいに圧倒されることや多くの戦闘で打ち負かされることに慣らされて、
*ne se quidem ipsi cum illis virtute comparant.
**(ガッリア人)自身でさえも彼ら(ゲルマーニア人)と武勇で肩を並べようとはしないのである。
<br>
:('''訳注''':本節の①項については、[[w:タキトゥス|タキトゥス]]が著書『[[w:ゲルマニア (書物)|ゲルマーニア]]』28章([[s:la:De_origine_et_situ_Germanorum_(Germania)#XXVIII|原文]])において、次のように言及している。
:''Validiores olim Gallorum res fuisse summus auctorum divus Iulius tradit; ''
:かつてガッリア人の勢力がより強力であったことは、最高の証言者である神君ユリウス(・カエサル)も伝えている。
:''eoque credibile est etiam Gallos in Germaniam transgressos:''
:それゆえに、ガッリア人でさえもゲルマーニアに渡って行ったと信ずるに値するのである。)
===25節===
'''ヘルキュニアの森林地帯'''
*① Huius Hercyniae silvae, quae supra demonstrata est, latitudo
**前に述べたヘルキュニアの森の幅は、
*novem dierum iter expedito patet:
**軽装の旅で9日間(かかるだけ)広がっている。
*non enim aliter finiri potest,
**なぜなら(ゲルマーニア人は)他に境界を定めることができないし、
*neque mensuras itinerum noverunt.
**道のりの測量というものを知っていないのである。
[[画像:FeldbergPanorama.jpg|thumb|center|1000px|ヘルキュニアの森林地帯(ドイツ南西部、[[w:シュヴァルツヴァルト|シュヴァルツヴァルトの森]]の最高峰フェルドベルク山 [[w:en:Feldberg_(Black Forest)|Feldberg]] の眺望)]]
*② Oritur ab Helvetiorum et Nemetum et Rauracorum finibus
**(その森は)[[w:ヘルウェティイ族|ヘルウェティイ族]]とネメテス族とラウラキ族の領土から発しており、
**:(訳注:これはライン川東岸に沿って南北に長い現在の[[w:シュヴァルツヴァルト|シュヴァルツヴァルトの森]]のことである。)
*rectaque fluminis [[w:la:Danubius|Danubii]] regione
**ダヌビウス川に沿って真っ直ぐに(流れ)、
**:(訳注:ダヌビウス Danubius はダヌウィウス Danuvius とも呼ばれ、現在の[[w:ドナウ川|ドナウ川]]である。)
*pertinet ad fines Dacorum et Anartium;
**[[w:ダキア人|ダキ族]]やアナルテス族の領土へ至る。
**:(訳注:これは[[w:ダキア|ダキア]] [[w:la:Dacia|Dacia]] すなわち現在の[[w:ルーマニア|ルーマニア]]辺りの地域である。)
*③ hinc se flectit sinistrorsus diversis ab flumine regionibus
**ここ(ダヌビウス川)から(森は)左方へ向きを変えて、川の地域からそれて、
**:(訳注:川が南へ折れるのとは逆に、森は北へそれて[[w:エルツ山地|エルツ山地]]を通って[[w:カルパティア山脈|カルパティア山脈]]に至ると考えられている<ref>タキトゥス『ゲルマーニア』泉井久之助訳注、岩波文庫、p.131-132の注などを参照</ref>。)
*multarumque gentium fines propter magnitudinem attingit;
**(森の)大きさのために、多くの種族の領土に接しているのである。
*④ neque quisquam est huius Germaniae, qui se aut adisse ad initium eius silvae dicat,
**その森の(東の)端緒へ訪れたと言う者は、こちら(西側)の[[w:ゲルマニア|ゲルマーニア]]に属する者では誰もいないし、
*cum dierum iter LX processerit,
**60日間の旅で進んでも(いないのであるが)、
*aut, quo ex loco oriatur, acceperit:
**あるいは(森が)どの場所から生じているか把握した(者もいないのである)。
*⑤ multaque in ea genera ferarum nasci constat, quae reliquis in locis visa non sint;
**それ(=森)の中には、ほかの地では見られない野獣の多くの種類が生息していることが知られている。
*ex quibus quae maxime differant ab ceteris et memoriae prodenda videantur,
**それらのうちで、ほかの(地の)ものと大きく異なったものは、記録で伝えるべきものであり、
*haec sunt.
**以下のものである。
===26節===
[[画像:Rentier fws 1.jpg|thumb|right|200px|[[w:トナカイ|トナカイ]]([[w:la:Tarandrus|Rangifer tarandus]])。発達した枝角を持ち、雌雄ともに角があるという特徴は本節の説明に合致している。が、角が一本ということはないし、野生のトナカイは少なくとも現在では極北の地にしか住まない。]]
'''ヘルキュニアの野獣①'''
*① Est [[w:la:Bos|bos]] [[w:la:Cervus|cervi]] figura,
**雄[[w:シカ|鹿]]の姿形をした[[w:ウシ|牛]]がいる。
*cuius a media fronte inter aures unum [[w:la:Cornu|cornu]] existit
**それの両耳の間の額の真ん中から一つの角が出ており、
*excelsius magisque derectum his, quae nobis nota sunt, cornibus;
**我々(ローマ人)に知られている角よりも非常に高くて真っ直ぐである。
*ab eius summo sicut palmae ramique late diffunduntur.
**その先端部から、手のひらや枝のように幅広く広がっている。
*Eadem est feminae marisque natura,
**雌と雄の特徴は同じであり、
*eadem forma magnitudoque cornuum.
**角の形や大きさも同じである。
<br>
:('''訳注''':カエサルによる本節の記述は[[w:ユニコーン|ユニコーン]](一角獣)の伝説に
:結び付けられている。しかし本節における発達した枝角の説明は、むしろ
:[[w:トナカイ|トナカイ]]や[[w:ヘラジカ|ヘラジカ]]のような獣を想起させる。)
===27節===
[[画像:Bigbullmoose.jpg|thumb|right|250px|[[w:ヘラジカ|ヘラジカ]](Alces alces)。<br>発達した枝角と大きな体を持ち、名称以外は本節の説明とまったく合致しない。<br>しかしながら、[[w:ガイウス・プリニウス・セクンドゥス|大プリニウス]]の『[[w:博物誌|博物誌]]』第8巻(16章・39節)には、[[w:アクリス|アクリス]]([[w:en:Achlis|achlis]])という一見ヘラジカ(alces)のような奇獣が紹介され、その特徴は本節②項以下のカエサルの説明とほぼ同じであることが知られている。]]
[[画像:Gressoney-Saint-Jean-Museo-IMG 1824.JPG|thumb|right|250px|[[w:ノロジカ|ノロジカ]](Capreolus capreolus)。<br>ヨーロッパに広く分布する小鹿で、まだら模様で山羊にも似ているので、本節①項の説明と合致する。しかし、関節はあるし、腹ばいにもなる。]]
'''ヘルキュニアの野獣②'''
*① Sunt item, quae appellantur [[w:la:Alces|alces]].
**アルケスと呼ばれるものもいる。
**:(訳注:アルケス alces とは[[w:ヘラジカ|ヘラジカ]](オオシカ)を指す単語であるが本節の説明と矛盾する。)
*Harum est consimilis [[w:la:Capra|capris]] figura et varietas pellium,
**これらの姿形や毛皮のまだらは雄[[w:ヤギ|山羊]]に似ている。
*sed magnitudine paulo antecedunt
**が、(山羊を)大きさで少し優っており、
*mutilaeque sunt cornibus
**角は欠けていて、
*et crura sine nodis articulisque habent.
**脚部には関節の類いがない。
**:(訳注:nodus も articulus も関節の類いを意味する)
*② Neque quietis causa procumbunt
**休息のために横たわらないし、
*neque, si quo adflictae casu conciderunt,
**もし何か不幸なことで偶然にも倒れたならば、
*erigere sese aut sublevare possunt.
**自らを起こすことも立ち上げることもできない。
*③ His sunt arbores pro cubilibus;
**これらにとって木々は寝床の代わりである。
*ad eas se adplicant
**それら(の木々)へ自らを寄りかからせて、
*atque ita paulum modo reclinatae quietem capiunt.
**こうして少しだけもたれかかって休息を取るのである。
*④ Quarum ex vestigiis
**それらの足跡から
*cum est animadversum a venatoribus, quo se recipere consuerint,
**(鹿が)どこへ戻ることを常としているかを狩人によって気付かれたときには、
*omnes eo loco aut ab radicibus subruunt aut accidunt arbores,
**その地のすべての木々を(狩人は)根から倒すか、あるいは傷つけて、
*tantum ut summa species earum stantium relinquatur.
**それらの(木々の)いちばん(外側)の見かけが、立っているかのように残して置かれる。
*⑤ Huc cum se consuetudine reclinaverunt,
**そこに(鹿が)習性によってもたれかかったとき、
*infirmas arbores pondere adfligunt atque una ipsae concidunt.
**弱った木々を重みで倒してしまい、自身も一緒に倒れるのである。
===28節===
[[画像:Wisent.jpg|thumb|right|250px|[[w:ヨーロッパバイソン|ヨーロッパバイソン]]([[w:la:Bison|Bison bonasus]])。<br>かつてヨーロッパに多数生息していた野牛で、相次ぐ乱獲により野生のものは20世紀初頭にいったん絶滅したが、動物園で繁殖させたものを再び野生に戻す試みが行なわれている。]]
[[画像:Muybridge Buffalo galloping.gif|thumb|right|200px|疾走するバイソン]]
[[画像:Drinkhoorn_roordahuizum.JPG|thumb|right|200px|酒杯として用いられた野獣の角。銀で縁取りされている。]]
'''ヘルキュニアの野獣③'''
*③ Tertium est genus eorum, qui uri appellantur.
**第3のものは、野牛と呼ばれる種類である。
*Hi sunt magnitudine paulo infra [[w:la:Elephantidae|elephantos]],
**これらは、大きさで少し[[w:ゾウ|象]]に劣るが、
*specie et colore et figura [[w:la:Taurus|tauri]].
**見かけと色と姿形は雄[[w:ウシ|牛]]である。
*② Magna vis eorum est et magna velocitas,
**それらの力は大きく、(動きも)とても速く、
*neque homini neque ferae, quam conspexerunt, parcunt.
**人間でも野獣でも、見かけたものには容赦しない。
*Hos studiose foveis captos interficiunt.
**(ゲルマーニア人は)これらを熱心に落とし穴で捕らえたものとして殺す。
*③ Hoc se labore durant adulescentes
**この労苦により青年たちを鍛え、
*atque hoc genere venationis exercent,
**[[w:狩猟|狩猟]]のこの類いで鍛錬するのであり、
*et qui plurimos ex his interfecerunt,
**これら(の野牛)のうちから最も多くを殺した者は、
*relatis in publicum [[w:la:Cornu|cornibus]], quae sint testimonio,
**証拠になるための[[w:角|角]]を公の場に持参して、
*magnam ferunt laudem.
**大きな賞賛を得るのである。
*④ Sed adsuescere ad homines et mansuefieri ne parvuli quidem excepti possunt.
**けれども(野牛は)幼くして捕らえられてさえも、人間に慣れ親しんで飼い慣らされることはできない。
*⑤ Amplitudo cornuum et figura et species multum a nostrorum boum cornibus differt.
**角の大きさや形や見かけは、我々(ローマ人)の牛の角とは大いに異なる。
*⑥ Haec studiose conquisita ab labris argento circumcludunt
**これらは熱心に探し求められて、縁を[[w:銀|銀]]で囲って、
*atque in amplissimis epulis pro poculis utuntur.
**とても贅沢な祝宴において[[w:盃|杯]]として用いられるのである。
==対エブロネス族追討戦(1)==
===29節===
'''ゲルマーニアから撤兵、対アンビオリクス戦へ出発'''
*① Caesar, postquam per Ubios exploratores comperit Suebos sese in silvas recepisse,
**カエサルは、ウビイー族の偵察者たちを通じてスエービー族が森に撤退したことを確報を受けた後で、
**:(訳注:[[#10節|10節]]によれば、バケニス Bacenis の森。[[#コラム「スエービー族とカッティー族・ケールスキー族・ウビイー族について|既述]]のように、スエービー族とはカッティー族 [[w:en:Chatti|Chatti]] と考えられる。)
*inopiam frumenti veritus,
**糧食の欠乏を恐れて、
*quod, ut supra demonstravimus, minime omnes Germani agri culturae student,
**というのは、前に説明したように、ゲルマーニア人は皆が土地を耕すことに決して熱心でないので、
**:(訳注:[[#22節|22節]]を参照。耕地がなければ、ローマ軍は穀物の現地調達ができない。)
*constituit non progredi longius;
**より遠くへ前進しないことを決めた。
*② sed, ne omnino metum reditus sui barbaris tolleret
**けれども、自分たち(ローマ軍)が戻って来る恐れを蛮族からまったく取り去ってしまわないように、
*atque ut eorum auxilia tardaret,
**かつ、彼ら(ゲルマーニア人)の(ガッリア人への)支援を遅らせるように、
*reducto exercitu partem ultimam pontis, quae ripas Ubiorum contingebat,
**ウビイー族側の岸(=レーヌス川東岸)につなげていた橋の最後の部分に軍隊を連れ戻して、
*in longitudinem pedum ducentorum rescindit
**(橋を)長さ200[[w:ペース (長さ)|ペース]](=約60m)切り裂いて、
*③ atque in extremo ponte turrim tabulatorum quattuor constituit
**橋の先端のところに4層の櫓を建てて、
*praesidiumque cohortium duodecim pontis tuendi causa ponit
**12個[[w:コホルス|歩兵大隊]]の守備隊を橋を防護するために配置して、
*magnisque eum locum munitionibus firmat.
**その場所を大きな城砦で固めた。
*Ei loco praesidioque C.(Gaium) Volcacium Tullum adulescentem praeficit.
**その場所と守備隊を青年ガイウス・ウォルカキウス・トゥッルスに指揮させた。
**:(訳注:元執政官 [[w:en:Lucius_Volcatius_Tullus_(consul_66_BC)|Lucius Volcatius Tullus]] に対して、青年 adulescentem と区別したのであろう。
**:ウォルカキウス Volcacium の綴りは、写本により相異する。)
*④ Ipse, cum maturescere frumenta inciperent,
**(カエサル)自身は、穀物が熟し始めたので、
*ad bellum [[w:la:Ambiorix|Ambiorigis]] profectus per Arduennam silvam,
**[[w:アンビオリクス|アンビオリクス]]との戦争へ、アルドゥエンナの森を通って進発した。
**:(訳注:アルドゥエンナの森については、[[ガリア戦記 第5巻#3節|第5巻3節]]ですでに説明されている。)
*quae est totius Galliae maxima
**それ(=森)は全ガッリアで最も大きく、
*atque ab ripis Rheni finibusque Treverorum ad Nervios pertinet
**レヌス(=[[w:ライン川|ライン川]])の岸およびトレーウェリー族の境界から、[[w:ネルウィイ族|ネルウィイ族]](の領土)へ及んでおり、
*milibusque amplius quingentis in longitudinem patet,
**長さは500ローママイル(=約740km)より大きく広がっている。
*L.(Lucium) Minucium Basilum cum omni equitatu praemittit,
**ルキウス・ミヌキウス・バスィルスをすべての騎兵隊とともに先遣した。
*si quid celeritate itineris atque opportunitate temporis proficere possit;
**行軍の迅速さと時間の有利さによって、何かを得られるかどうかということである。
*⑤ monet, ut ignes in castris fieri prohibeat, ne qua eius adventus procul significatio fiat:
**野営において火を生じることを禁じるように、何事かにより遠くから彼の到来の予兆を生じないように、戒めた。
*sese confestim subsequi dicit.
**(カエサル)自らは、ただちに後から続くと言った。
===30節===
'''アンビオリクスがバスィリスのローマ騎兵から逃れる'''
*① Basilus, ut imperatum est, facit.
**バスィルスは、命令されたように、行なった。
*Celeriter contraque omnium opinionem confecto itinere
**速やかに、かつ皆の予想に反して、行軍を成し遂げて、
*multos in agris inopinantes deprehendit:
**(城市でない)土地にいた気付かないでいる多くの者を捕らえた。
*eorum indicio ad ipsum Ambiorigem contendit, quo in loco cum paucis equitibus esse dicebatur.
**彼らの申し立てにより、[[w:アンビオリクス|アンビオリクス]]その人がわずかな騎兵たちとともにいると言われていた場所に急いだ。
*② Multum cum in omnibus rebus, tum in re militari potest Fortuna.
**あらゆる事柄においても、とりわけ軍事においても、運命(の女神)が大いに力がある。
*Nam magno accidit casu,
**実際のところ、大きな偶然により生じたのは、
*ut in ipsum incautum etiam atque imparatum incideret,
**(アンビオリクス)自身でさえも油断していて不用意なところに(バスィルスが)遭遇したが、
*priusque eius adventus ab omnibus videretur, quam fama ac nuntius adferretur:
**彼の到来が(ガッリア勢の)皆により見られたのが、風聞や報告により知らされるよりも早かったのである。
*sic magnae fuit fortunae
**同様に(アンビオリクスにとって)大きな幸運に属したのは、
*omni militari instrumento, quod circum se habebat, erepto,
**自らの周りに持っていたすべての武具を奪われて、
*raedis equisque comprehensis
**四輪馬車や馬を差し押さえられても、
*ipsum effugere mortem.
**(アンビオリクス)自身は死を逃れたことである。
*③ Sed hoc quoque factum est,
**しかし、以下のこともまた起こった。
*quod aedificio circumdato silva,
**(アンビオリクスの)館が森で取り巻かれており、
*─ ut sunt fere domicilia Gallorum, qui vitandi aestus causa
**─ ガッリア人の住居はほぼ、暑さを避けることのために、
*plerumque silvarum atque fluminum petunt propinquitates ─,
**たいてい森や川の近接したところに求めるのであるが ─
*comites familiaresque eius angusto in loco paulisper equitum nostrorum vim sustinuerunt.
**彼の従者や郎党どもが、狭い場所でしばらく、我が方(ローマ勢)の騎兵の力を持ちこたえたのだ。
*④ His pugnantibus illum in equum quidam ex suis intulit:
**彼らが戦っているときに、彼(アンビオリクス)を配下のある者が馬に押し上げて、
*fugientem silvae texerunt.
**逃げて行く者(アンビオリクス)を森が覆い隠した。
*Sic et ad subeundum periculum et ad vitandum multum Fortuna valuit.
**このように(アンビオリクスが)危険に突き進んだことや避けられたことに対して、運命(の女神)が力をもったのである。
===31節===
'''エブロネス族の退避、カトゥウォルクスの最期'''
*① [[w:la:Ambiorix|Ambiorix]] copias suas iudicione non conduxerit, quod proelio dimicandum non existimarit,
**[[w:アンビオリクス|アンビオリクス]]は、戦闘で争闘するべきとは考えていなかったので、自らの判断で軍勢を集めなかったのか、
*an tempore exclusus et repentino equitum adventu prohibitus,
**あるいは、時間に阻まれ、予期せぬ[[w:騎兵|騎兵]]の到来に妨げられて、
*cum reliquum exercitum subsequi crederet,
**(ローマ勢の)残りの軍隊(=軍団兵)が後続して来ることを信じたためなのか、
*dubium est.
**不確かなことである。
*② Sed certe dimissis per agros nuntiis sibi quemque consulere iussit.
**けれども、確かに領地を通じて伝令を四方に遣わして、おのおのに自らを助けることを命じた。
*Quorum pars in Arduennam silvam, pars in continentes paludes profugit;
**それらの者たち(領民)のある一部はアルドゥエンナの森に、一部は絶え間ない沼地に退避した。
*③ qui proximi Oceano fuerunt,
**<ruby><rb>大洋<span style="color:#009900;">〔[[w:大西洋|大西洋]]〕</span></rb><rp>(</rp><rt>オーケアヌス</rt><rp>)</rp></ruby>にとても近いところにいた者たちは、
*hi insulis sese occultaverunt, quas aestus efficere consuerunt:
**[[w:潮汐|満潮]]が形成するのが常であった島々に身を隠した。
[[画像:Taxus baccata MHNT.jpg|thumb|right|300px|[[w:ヨーロッパイチイ|ヨーロッパイチイ]]([[w:en:Taxus baccata|Taxus baccata]])<br>欧州などに広く自生するイチイ科の[[w:針葉樹|針葉樹]]。赤い果実は食用で甘い味だが、種子には[[w:タキシン|タキシン]](taxine)という[[w:アルカロイド|アルカロイド]]系の毒物が含まれており、種子を多量に摂れば[[w:痙攣|けいれん]]を起こして[[w:呼吸困難|呼吸困難]]で死に至る。<br>他方、[[w:タキサン|タキサン]](taxane)という成分は[[w:抗がん剤|抗がん剤]]などの[[w:医薬品|医薬品]]に用いられる。]]
*④ multi ex suis finibus egressi
**多くの者たちは、自分たちの領土から出て行って、
*se suaque omnia alienissimis crediderunt.
**自分たちとその一切合財をまったく異邦の者たちに委ねた。
*⑤Catuvolcus, rex dimidiae partis Eburonum,
**[[w:カトゥウォルクス|カトゥウォルクス]]は、[[w:エブロネス族|エブロネス族]]の半分の地方の王であり、
*qui una cum Ambiorige consilium inierat,
**アンビオリクスと一緒に(カエサルに造反する)企てに取りかかった者であるが、
**:(訳注:[[ガリア戦記 第5巻#26節|第5巻26節]]を参照。)
*aetate iam confectus, cum laborem aut belli aut fugae ferre non posset,
**もはや老衰していたので、戦争の労苦、あるいは逃亡の労苦に耐えることができなかったので、
**:(訳注:aetate confectus 老衰した)
*omnibus precibus detestatus Ambiorigem, qui eius consilii auctor fuisset,
**その企ての張本人であったアンビオリクスをあらゆる呪詛のことばで呪って、
*taxo, cuius magna in Gallia Germaniaque copia est, se exanimavit.
**[[w:ガリア|ガッリア]]や[[w:ゲルマニア|ゲルマーニア]]に大量にあった[[w:イチイ属|イチイ]]によって、息絶えたのであった。
===32節===
'''ゲルマーニア部族の弁明、アドゥアトゥカに輜重を集める'''
*① Segni Condrusique, ex gente et numero Germanorum,
**[[w:ゲルマニア|ゲルマーニア]]人の種族や集団のうち、[[w:セグニ族|セグニ族]]と[[w:コンドルスィ族|コンドルスィ族]]は、
*qui sunt inter Eburones Treverosque,
**[[w:エブロネス族|エブロネス族]]とトレーウェリー族の間にいたが、
*legatos ad Caesarem miserunt oratum,
**カエサルのところへ嘆願するために使節たちを遣わした。
*ne se in hostium numero duceret
**自分たちを敵として見なさないように、と。
*neve omnium Germanorum, qui essent citra Rhenum, unam esse causam iudicaret;
**しかも、レーヌス(=[[w:ライン川|ライン川]])のこちら側にいるゲルマーニア人すべての事情は1つであると裁断しないように、と。
*nihil se de bello cogitavisse, nulla Ambiorigi auxilia misisse.
**自分たちは、戦争についてまったく考えたことはないし、[[w:アンビオリクス|アンビオリクス]]に何ら援軍を派遣したことはない、と。
*② Caesar explorata re quaestione captivorum,
**カエサルは捕虜を審問することによってその事を探り出すと、
*si qui ad eos Eburones ex fuga convenissent,
**もし彼らのところへ逃亡しているエブロネス族の者たちの誰かが訪れたならば、
*ad se ut reducerentur, imperavit;
**自分(カエサル)のところへ連れ戻されるようにと、命令した。
*si ita fecissent, fines eorum se violaturum negavit.
**もしそのように行なったならば、彼らの領土を自分(カエサル)が侵害することはないであろうと主張した。
*③ Tum copiis in tres partes distributis
**それから、軍勢を3方面に分散して、
*impedimenta omnium legionum Aduatucam contulit.
**すべての軍団の[[w:輜重|輜重]]を[[w:アドゥアトゥカ|アドゥアトゥカ]]に運び集めた。
**:(訳注:アドゥアトゥカ Aduatuca の表記は、写本によってはアトゥアトゥカ Atuatuca となっている。現在の[[w:トンゲレン|トンゲレン市]]。)
*④ Id castelli nomen est.
**それは、城砦の名前である。
*Hoc fere est in mediis Eburonum finibus,
**これは、エブロネス族の領土のほぼ真ん中にあり、
*ubi Titurius atque Aurunculeius hiemandi causa consederant.
**そこには、[[w:クィントゥス・ティトゥリウス・サビヌス|ティトゥリウス(・サビヌス)]]と[[w:ルキウス・アウルンクレイウス・コッタ|アウルンクレイウス(・コッタ)]]が越冬するために陣取っていた。
*⑤ Hunc cum reliquis rebus locum probabat,
**(カエサルは)この場所を、ほかの事柄によっても是認したし、
*tum quod superioris anni munitiones integrae manebant, ut militum laborem sublevaret.
**またとりわけ前年の防備が損なわれずに存続していたので、兵士の労苦を軽減するためでもある。
*Praesidio impedimentis legionem quartamdecimam reliquit,
**(全軍の)輜重の守備隊として第14軍団を(そこに)残した。
*unam ex his tribus, quas proxime conscriptas ex Italia traduxerat.
**(それは)最近にイタリアから徴集されたものとして連れて来られた3個(軍団)のうちの1個である。
**:(訳注:[[#1節|1節]]を参照。イタリア Italia とはカエサルが総督であった[[w:ガリア・キサルピナ|ガッリア・キサルピーナ]]のことであろう。)
*Ei legioni castrisque Q.(Quintum) Tullium Ciceronem praeficit ducentosque equites ei attribuit.
**その[[w:ローマ軍団|軍団]]と陣営には[[w:クィントゥス・トゥッリウス・キケロ|クィントゥス・トゥッリウス・キケロ]]を指揮者として、200騎の騎兵を彼に割り当てた。
===33節===
'''軍勢をカエサル、ラビエヌス、トレボニウスの三隊に分散'''
*① Partito exercitu
**軍隊を分配して、
*T.(Titum) Labienum cum legionibus tribus ad Oceanum versus
**[[w:ティトゥス・ラビエヌス|ティトゥス・ラビエヌス]]には、3個[[w:ローマ軍団|軍団]]とともに、<ruby><rb>大洋<span style="color:#009900;">〔[[w:大西洋|大西洋]]〕</span></rb><rp>(</rp><rt>オーケアヌス</rt><rp>)</rp></ruby>の方へ向けて、
*in eas partes, quae Menapios attingunt, proficisci iubet;
**[[w:メナピイ族|メナピイ族]]に接する地方に出発することを命じた。
*② C.(Gaium) Trebonium cum pari legionum numero
**[[w:ガイウス・トレボニウス|ガイウス・トレボニウス]]には、軍団の同数とともに、
*ad eam regionem, quae Aduatucis adiacet, depopulandam mittit;
**[[w:アドゥアトゥキ族|アドゥアトゥキ族]]に隣接する領域へ、荒らすために派遣した。
[[画像:Locatie-Maas-3.png|thumb|right|200px|[[w:ベルギー|ベルギー]]周辺の地図。図の左側を[[w:スヘルデ川|スヘルデ川]]が、右側を[[w:マース川|マース川]]が流れているため、両河川は離れており、カエサルがどの地に言及しているのかはわからない。]]
[[画像:Schelde_4.25121E_51.26519N.jpg|thumb|right|200px|ベルギーの[[w:アントウェルペン|アントウェルペン]]周辺を流れる[[w:スヘルデ川|スヘルデ川]]河口付近の[[w:衛星画像|衛星画像]]。ラビエヌスが向かったメナピイ族に接する地方である。]]
*③ ipse cum reliquis tribus ad flumen [[w:la:Scaldis|Scaldim]], quod influit in [[w:la:Mosa|Mosam]],
**(カエサル)自身は、残りの3個(軍団)とともに、モサ(川)に流れ込むスカルディス川のところへ、
**:(訳注:スカルディス Scaldis は現在の[[w:スヘルデ川|スヘルデ川]] Schelde で、フランス北部からベルギー、オランダへ流れている。
**:モサ川 Mosa すなわち現在の[[w:マース川|マース川]] Maas とは運河でつながるが、当時の関係およびカエサルの目的地は不詳。)
*extremasque Arduennae partes ire constituit,
**かつ[[w:アルデンヌ|アルドゥエンナ]](の森林)の外縁の地方へ行軍することを決めた。
*quo cum paucis equitibus profectum Ambiorigem audiebat.
**そこへは、アンビオリクスがわずかな騎兵たちとともに出発したと聞いていたのだ。
*④ Discedens post diem septimum sese reversurum confirmat;
**(カエサルは陣営を)離れるに当たって、7日目の後(=6日後)に自分は引き返して来るであろうと断言した。
*quam ad diem ei legioni, quae in praesidio relinquebatur, deberi frumentum sciebat.
**その当日には、守備に残される軍団にとって糧食が必要とされることを(カエサルは)知っていたのだ。
*⑤ Labienum Treboniumque hortatur,
**(カエサルは)ラビエヌスとトレボニウスを(以下のように)鼓舞した。
*si rei publicae commodo facere possint,
**もし(ローマ軍全体の)公務のために都合良く行動することができるならば、
*ad eum diem revertantur,
**その日には戻って、
*ut rursus communicato consilio exploratisque hostium rationibus
**再び(互いの)考えを伝達して、敵たちの作戦を探り出し、
*aliud initium belli capere possint.
**次なる戦争の端緒を捉えようではないか、と。
<br>
:('''訳注:カエサル麾下の軍団配分について'''
:[[ガリア戦記 第5巻#8節|第5巻8節]]の記述によれば、ブリタンニアへ2度目の遠征をする前(BC54年)のカエサルは少なくとも8個軍団と騎兵4000騎を
:指揮していた。[[ガリア戦記 第5巻#24節|第5巻24節]]によれば、帰還後は8個軍団および軍団から離れた5個[[w:コホルス|歩兵大隊]]を指揮していたが、
:アンビオリクスによる[[w:アドゥアトゥカの戦い|アドゥアトゥカの戦い]]で[[w:クィントゥス・ティトゥリウス・サビヌス|サビヌス]]らとともに1個軍団と5個大隊が壊滅したので、残りは7個軍団となる。
:[[#1節|本巻1節]]によれば、この年(BC53年)には3個軍団を新たに徴集したので、計10個軍団となったはずである。
:[[#29節|29節]]では、このうちから12個大隊をライン川に架かる橋の守備に残し、[[#32節|32節]]では輜重の守備としてアドゥアトゥカに1個軍団を残した。
:本節の記述通りにラビエヌス、トレボニウス、カエサルがそれぞれ3個軍団(計9個)を受け持ったとすると、あわせて10個軍団と12個大隊という勘定になる。
:したがって、この勘定が正しいのであれば、ライン川に残した12個大隊は各軍団から引き抜いたものであり、各軍団は定員を割っていると考えられる。)
===34節===
'''夷を以って夷を制す対エブロネス族包囲網'''
*① Erat, ut supra demonstravimus, manus certa nulla,
**前に説明したように、(エブロネス族には)決まった手勢がなかったし、
**:(訳注:[[#31節|31節]]を参照。)
*non oppidum, non praesidium, quod se armis defenderet,
**自分たちが武器で防衛するような[[w:オッピドゥム|城市]]も、防塁もなかった。
*sed in omnes partes dispersa multitudo.
**けれども、あらゆる方面に大勢が分散されていた。
*② Ubi cuique aut valles abdita aut locus silvestris aut palus impedita
**おのおのが、密かな峡谷、あるいは森に覆われた土地といったところに、
*spem praesidi aut salutis aliquam offerebat, consederat.
**守備あるいは身の安全の何らかの希望を提供するところに、陣取っていた。
*③ Haec loca vicinitatibus erant nota,
**これらの場所は、近隣の者たちは知っていたので、
**:(訳注:すなわち、近隣のガッリア人には地の利があり、ローマ人には地の利がなかったので)
*magnamque res diligentiam requirebat
**事態はたいへんな注意深さを必要としていた。
*non in summa exercitus tuenda
**(ローマ人の)軍隊全体を守るためではなく、
*─ nullum enim poterat universis <a> perterritis ac dispersis periculum accidere ─,
**─なぜなら、脅かされ分散されている者たちにより(ローマ軍)総勢が危険を生じることはありえなかったので─
*sed in singulis militibus conservandis;
**けれども、個々の(ローマ人の)兵士たちを守ることのために(注意深さを必要としていた)。
*quae tamen ex parte res ad salutem exercitus pertinebat.
**少なくとも、ある面では、そういう事態は軍隊の安全に及んでいた。
*④ Nam et praedae cupiditas multos longius evocabat,
**すなわち、略奪品への欲望が多くの者たちをより遠くへ呼び寄せていたし、
*et silvae incertis occultisque itineribus confertos adire prohibebant.
**森林の不確かで隠された道のりによって密集した行軍を妨げていた。
*⑤ Si negotium confici stirpemque hominum sceleratorum interfici vellent,
**もし、戦役が完遂されること、および非道な連中(=エブロネス族)の血筋が滅ぼされることを欲するならば、
*dimittendae plures manus diducendique erant milites;
**いくつもの部隊が分遣され、兵士たちが展開されるべきである。
*⑥ si continere ad signa manipulos vellent, ut instituta ratio et consuetudo exercitus Romani postulabat,
**もし、ローマ軍が決められた流儀や慣行を要求するように、[[w:マニプルス|中隊]]が軍旗のもとにとどまることを欲するならば、
*locus ipse erat praesidio barbaris,
**その場所が蛮族にとって守りとなるであろう。
*neque ex occulto insidiandi et dispersos circumveniendi
**隠れたところから待ち伏せするため、分散した者たち(=ローマ兵)を包囲するために、
*singulis deerat audacia.
**(エブロネス族の)おのおのにとって勇敢さには事欠かなかった。
*⑦ Ut in eiusmodi difficultatibus, quantum diligentia provideri poterat providebatur,
**そのような困難さにおいては、できるかぎりの注意深さで用心されるほどに、用心されるものであるが、
*ut potius in nocendo aliquid praetermitteretur,
**結果として、むしろ(敵勢への)何らかの加害は差し控えられることになった。
*etsi omnium animi ad ulciscendum ardebant,
**たとえ、皆の心が(エブロネス族に)報復するために燃え立っていたとしても、
*quam cum aliquo militum detrimento noceretur.
**兵士たちの何らかの損失を伴って(敵に)加害がなされるよりも。
**:(訳注:伏兵によって被害をこうむるよりは、ローマ人の安全のために、ローマ兵による攻撃は避けられた。)
*⑧ Dimittit ad finitimas civitates nuntios Caesar;
**カエサルは、近隣の諸部族のところへ伝令たちを分遣した。
*omnes ad se vocat spe praedae ad diripiendos Eburones,
**[[w:エブロネス族|エブロネス族]]に対して戦利品を略奪することの望みを呼びかけた。
*ut potius in silvis Gallorum vita quam legionarius miles periclitetur,
**森の中で、軍団の兵士たちよりも、むしろガッリア人たちの生命が危険にさらされるように、
*simul ut magna multitudine circumfusa
**同時にまた、たいへんな大勢で取り囲むことによって、
*pro tali facinore stirps ac nomen civitatis tollatur.
**(サビヌスらを滅ぼした)あれほどの罪業の報いとして、部族の血筋と名前が抹殺されるように、と。
*Magnus undique numerus celeriter convenit.
**至る所から多数の者が速やかに集結した。
==スガンブリー族のアドゥアトゥカ攻略戦==
===35節===
'''スガンブリー族が略奪に駆り立てられてアドゥアトゥカへ向かう'''
*① Haec in omnibus Eburonum partibus gerebantur,
**これらのこと(=追討戦)が[[w:エブロネス族|エブロネス族]]のすべての地方で遂行されていたが、
*diesque adpetebat septimus, quem ad diem Caesar ad impedimenta legionemque reverti constituerat.
**カエサルがその日に[[w:輜重|輜重]]と(キケロの)[[w:ローマ軍団|軍団]]のところへ引き返すと決めていた7日目が近づいていた。
*② Hic quantum in bello Fortuna possit et quantos adferat casus, cognosci potuit.
**ここに、戦争では運命(の女神)がどれほどのことに力を持ち、どれほどの結末を引き起こすかを知ることができた。
**:(訳注:[[#30節|30節]]でもそうだが、カエサルは戦況が芳しくないと運命 Fortuna を持ち出すようである。[[#42節|42節]]も参照。)
*③ Dissipatis ac perterritis hostibus, ut demonstravimus,
**(前節で)説明したように、追い散らされて、脅かされている敵たちには、
*manus erat nulla quae parvam modo causam timoris adferret.
**(ローマ勢に敵を)恐れる理由を少しの程度も引き起こすようないかなる手勢もなかった。
*④ Trans Rhenum ad Germanos
**レーヌス(=[[w:ライン川|ライン川]])の向こう側の[[w:ゲルマニア|ゲルマーニア]]人のところへ、
*pervenit fama, diripi Eburones atque ultro omnes ad praedam evocari.
**エブロネス族が収奪され、(近隣部族の)皆が略奪品へ向けて自発的に誘惑されているという風評が達した。
*⑤ Cogunt equitum duo milia Sugambri, qui sunt proximi Rheno,
**レーヌスの近隣にいたスガンブリ族は、騎兵2000騎を徴集した。
*a quibus receptos ex fuga Tenctheros atque Usipetes supra docuimus.
**前に説明したように、彼らによって[[w:テンクテリ族|テンクテリ族]]と[[w:ウスィペテス族|ウスィペテス族]]が逃亡から迎え入れられたのだ。
**:(訳注:[[ガリア戦記 第4巻#16節|第4巻16節]]および[[ガリア戦記 第4巻#18節|18~19節]]を参照。)
*⑥ Transeunt Rhenum navibus ratibusque
**(スガンブリー族は)レーヌスを船団や筏で渡河した。
*triginta milibus passuum infra eum locum, ubi pons erat perfectus praesidiumque ab Caesare relictum.
**カエサルにより橋が造り上げられて守備隊が残された地点よりも下流に30ローママイル(約44km)のところを。
*Primos Eburonum fines adeunt;
**手始めとしてエブロネス族の領土に殺到して、
*multos ex fuga dispersos excipiunt,
**逃亡からちりぢりにさせられた多くの者たちを追い捕らえて、
*magno pecoris numero, cuius sunt cupidissimi barbari, potiuntur.
**蛮族たちが最も熱望している家畜の多数をわがものにした。
*⑦ Invitati praeda longius procedunt.
**(スガンブリー族の軍勢は)略奪品に誘われて、より遠くに進み出た。
*Non hos palus ─ in bello latrociniisque natos ─, non silvae morantur.
**戦争や追いはぎに生まれついていたので、沼地も森林も彼らを妨げることがなかった。
*Quibus in locis sit Caesar, ex captivis quaerunt;
**カエサルがどの場所にいるのか、捕虜から問い質した。
*profectum longius reperiunt omnemque exercitum discessisse cognoscunt.
**(彼が)より遠くに旅立って、軍隊の総勢が立ち去ったことを、知った。
*⑧ Atque unus ex captivis "Quid vos," inquit,
**なおかつ、捕虜たちのうちの一人が「なぜ、あんたたちは」と言い出した。
*"hanc miseram ac tenuem sectamini praedam,
**「この取るに足らない、ちっぽけな略奪品を追い求めるのか。
**:(訳注:sectamini はデポネンティア動詞 sector の直説法・2人称複数・現在形)
*quibus licet iam esse fortunatissimos?
**(あんたたちは)今や、最も富裕な者に成り得るのに。
*⑨ Tribus horis Aduatucam venire potestis:
**(この場所から)3時間で[[w:アドゥアトゥカ|アドゥアトゥカ]]に到達できる。
**:(訳注:古代ローマの時間は、不定時法であり、当地の緯度や季節により長さは異なる。)
*huc omnes suas fortunas exercitus Romanorum contulit;
**ここへ、ローマ軍がすべての財産を運び集めたのだ。
*praesidii tantum est, ut ne murus quidem cingi possit,
**守備隊は、城壁が取り巻かれることさえできないほどの(貧弱な)ものでしかない。
*neque quisquam egredi extra munitiones audeat."
**何者も防備の外側へあえて出て行こうとはしないのだ。」
*⑩ Oblata spe Germani,
**ゲルマーニア人たちは(ローマ軍の財産という)望みを提示されて、
*quam nacti erant praedam, in occulto relinquunt;
**(すでにエブロネス族の者たちから)獲得していた略奪品を秘されたところに残しておいて、
*ipsi Aduatucam contendunt usi eodem duce, cuius haec indicio cognoverant.
**自身は、このことを申告により知ったところの同じ(捕虜の)案内人を使役して、アドゥアトゥカに急いだ。
<br>
:('''訳注:部族名・地名の表記について'''
:スガンブリー族 Sugambri:α系写本では Sugambri、T・U写本では Sygambri、V・R写本では Sigambri
:テンクテリ族 Tenctheri:β系写本では Tenctheri、α系写本では Thenctheri
:アドゥアトゥカ Aduatuca:α系・T写本では Aduatuca、V・ρ系写本では Atuatuca)
===36節===
'''アドゥアトゥカのキケロが糧秣徴発に派兵する'''
*① [[w:la:Quintus_Tullius_Cicero|Cicero]], qui omnes superiores dies
**[[w:クィントゥス・トゥッリウス・キケロ|キケロ]]は(期日の7日目)より以前の日々すべてを
*praeceptis Caesaris cum summa diligentia milites in castris continuisset
**カエサルの指図により、最高の入念さとともに、兵士たちを陣営の中に留めておき、
*ac ne calonem quidem quemquam extra munitionem egredi passus esset,
**<ruby><rb>[[w:カロネス|軍属奴隷]]</rb><rp>(</rp><rt>カロネス</rt><rp>)</rp></ruby> でさえも、何者も防備の外側に出て行くことを許されなかった。
*septimo die diffidens de numero dierum Caesarem fidem servaturum,
**(期日の)7日目に、カエサルが日数についての約束を守るであろうか、という不信を抱いた。
*quod longius eum<ref>eum はβ系写本の記述で、α系写本にはない。</ref> progressum audiebat,
**というのは、彼(カエサル)は、はるか遠くに前進したと聞いていたのだし、
*neque ulla de reditu eius fama adferebatur,
**彼の帰還については何ら伝言を届けられていなかったからである。
*② simul eorum permotus vocibus,
**同時に(キケロは)以下のような者たちの声に揺り動かされた。
*qui illius patientiam paene obsessionem appellabant, siquidem ex castris egredi non liceret,
**もし本当に陣営から出て行くことが許されないならば、彼の忍耐はほぼ攻囲(籠城)であるというのだ。
*nullum eiusmodi casum exspectans,
**以下のような事態を予期してもいなかった。
*quo novem oppositis legionibus maximoque equitatu,
**9個[[w:ローマ軍団|軍団]]と最大限の[[w:騎兵|騎兵]]隊が(敵と)対峙して、
*dispersis ac paene deletis hostibus
**敵たちは散らばらされて、ほとんど抹殺されたのに、
*in milibus passuum tribus offendi posset,
**(自陣から)3ローママイルの内で(敵対勢力から)襲撃され得るとは。
[[画像:PraetorianVexillifer_1.jpg|thumb|right|200px|帝政期に用いられた軍旗(ウェクスィッルム)の一種を再現したもの。]]
*quinque cohortes frumentatum in proximas segetes mittit,
**5個<ruby><rb>[[w:コホルス|歩兵大隊]]</rb><rp>(</rp><rt>コホルス</rt><rp>)</rp></ruby>を糧秣徴発するために、近隣の耕地に派遣した。
*quas inter et castra unus omnino collis intererat.
**それら(の耕地)と陣営の間には、ただ一つの丘陵が介在するだけであった。
*③ Complures erant in castris<ref>in castris はβ系写本の記述で、α系写本にはない。</ref> ex legionibus aegri relicti;
**陣営の中には、諸軍団のうちから少なからぬ傷病者たちが残留していた。
*ex quibus qui hoc spatio dierum convaluerant, circiter trecenti(CCC),
**その者たちのうちから、この日々の間に回復していた約300名が、
*sub vexillo una mittuntur;
**<ruby><rb>[[w:ウェクスィッルム|軍旗]]</rb><rp>(</rp><rt>ウェクスィッルム</rt><rp>)</rp></ruby>のもとで一緒に派遣された。
*magna praeterea multitudo calonum, magna vis iumentorum quae in castris subsederant,
**そのうえに、軍属奴隷の大多数、陣営の中に残留していた(ロバなどの)役畜の多数が、
*facta potestate sequitur.
**機会を与えられて、随行した。
===37節===
[[画像:Castra1.png|thumb|right|200px|ローマ式[[w:カストラ|陣営]]([[w:la:Castra_Romana|castra Romana]])の概略図(再掲)。'''7'''が第10大隊の門(porta decumana)で、陣営の裏門に当たる。]]
'''スガンブリー族がキケロの陣営に襲来'''
*① Hoc ipso tempore et casu Germani equites interveniunt
**このまさにその時と状況に、[[w:ゲルマニア|ゲルマーニア]]人の[[w:騎兵|騎兵]]たちが出現して、
*protinusque eodem illo, quo venerant, cursu
**さらに前方へ(彼らが)やって来たのと同じ突進でもって、
*ab decumana porta in castra inrumpere conantur,
**第10大隊の門(=裏門)から陣営の中に突入することを試みた。
**:(訳注:decumana porta は[[ガリア戦記 第2巻#24節|第2巻24節]]で既出、図を参照。)
*② nec prius sunt visi obiectis ab ea parte silvis, quam [[wikt:la:castrum|castris]] adpropinquarent,
**その方面については森林がじゃま立てしていたので(彼らは)陣営に接近するまでは視認されなかったのだ。
*usque eo ut qui sub [[w:la:Vallum|vallo]] tenderent mercatores, recipiendi sui facultatem non haberent.
**そこまで(敵が急に来たので)、防柵の下に宿営していた商人たちが退避する機会を持たなかったほどであった。
*③ Inopinantes nostri re nova perturbantur,
**予感していなかった我が方は、新しい事態に混乱させられて、
*ac vix primum impetum cohors in statione sustinet.
**やっとのことで[[w:歩哨|歩哨]]に就いていた[[w:コホルス|歩兵大隊]]が(敵の)最初の突撃を持ちこたえた。
*④ Circumfunduntur ex reliquis hostes partibus, si quem aditum reperire possent.
**敵たちは、何らかの入口を探り出せないかと、ほかの方面から取り囲んだ。
*⑤ Aegre portas nostri tuentur;
**我が方(=ローマ勢)は辛うじて(四方の)諸門を固守して、
*reliquos aditus locus ipse per se munitioque defendit.
**ほかの入口を、その位置そのものと防備が(敵の突入から)防護した。
*⑥ Totis trepidatur castris,
**陣営の全体が震撼させられて、
*atque alius ex alio causam tumultus quaerit;
**各人がほかの者に騒乱の原因を尋ね合った。
**:(訳注:エブロネス族を追討している最中に、スガンブリー族が来襲するとは予想だにしなかったからである。)
*neque quo signa ferantur, neque quam in partem quisque conveniat provident.
**が、どこへ軍旗が運ばれるのか、どの方面におのおのが集結するのか、判らなかった。
*⑦ Alius iam castra capta pronuntiat,
**ある者は、すでに陣営は占拠されたと公言し、
*alius deleto exercitu atque imperatore victores barbaros venisse contendit;
**別のある者は、軍隊も将軍(カエサル)も滅びて蛮族が勝利者としてやって来たのだ、と断言した。
*⑧ plerique novas sibi ex loco religiones fingunt
**たいていの者たちは、その場所から、新奇な迷信的感情を創り上げ、
*Cottaeque et Tituri calamitatem, qui in eodem occiderint castello,
**同じ砦のところで斃れた[[w:ルキウス・アウルンクレイウス・コッタ|コッタ]]と[[w:クィントゥス・ティトゥリウス・サビヌス|ティトゥリウス(・サビヌス)]]の敗亡を
*ante oculos ponunt.
**眼前に想い描いた。
*⑨ Tali timore omnibus perterritis
**このような怖れによって(陣営内部の)皆が脅えており、
*confirmatur opinio barbaris, ut ex captivo audierant, nullum esse intus praesidium.
**蛮族にとっては、捕虜から聞いていたように、内部に守備隊が存在していないという見解が強められた。
*⑩ Perrumpere nituntur
**(スガンブリー勢は、陣営の防備を)突破することに努め、
*seque ipsi adhortantur, ne tantam fortunam ex manibus dimittant.
**これほどの幸運を手から取りこぼさないように、自分たちが自身を鼓舞した。
===38節===
'''バクルスと百人隊長たちが防戦する'''
*① Erat aeger cum<ref>cum はα系写本の記述で、β系写本では in となっている。</ref> praesidio relictus P.(Publius) Sextius Baculus,
**(キケロの陣営には)プーブリウス・セクスティウス・バクルスが傷病者として、守備兵とともに残されていた。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:[[w:la:Publius Sextius Baculus|Publius Sextius Baculus]] などの記事を参照。)</span>
*qui primum pilum ad<ref>ad はα系写本の記述で、β系写本では apud となっている。</ref> Caesarem duxerat,
**その者はカエサルのもとで<ruby><rb>[[w:プリムス・ピルス|首位百人隊長]]</rb><rp>(</rp><rt>プリムス・ピルス</rt><rp>)</rp></ruby> の座に就いていたことがあり、
*cuius mentionem superioribus proeliis fecimus,
**かつての戦闘で彼に言及したが、
**:<span style="color:#009900;">(訳注:[[ガリア戦記 第2巻#25節|第2巻25節]] および [[ガリア戦記 第3巻#5節|第3巻5節]]を参照。)</span>
*ac diem iam quintum cibo caruerat.
**(このとき)食物を欠いてすでに5日目であった。
*② Hic diffisus suae atque omnium saluti inermis ex tabernaculo prodit;
**彼は、自らと皆の身の安全に疑念を抱いて、非武装のまま天幕小屋から出て来て、
*videt imminere hostes atque in summo esse rem discrimine;
**敵たちが迫って来ていること、および事態が重大な危急にあることを目の当たりにして、
*capit arma a proximis atque in porta consistit.
**すぐ近くの者から武器を取って、門のところに陣取った。
*③ Consequuntur hunc centuriones eius cohortis quae in statione erat;
**歩哨に立っていた(1個)<ruby><rb>[[w:コホルス|歩兵大隊]]</rb><rp>(</rp><rt>コホルス</rt><rp>)</rp></ruby> の<ruby><rb>[[w:ケントゥリオ|百人隊長]]</rb><rp>(</rp><rt>ケントゥリオ</rt><rp>)</rp></ruby> たちが彼に追随して、
**:(訳注:1個歩兵大隊の百人隊長は、定員通りであれば、6名いた。)
*paulisper una proelium sustinent.
**しばらく一緒に戦闘を持ちこたえた。
*④ Relinquit animus Sextium gravibus acceptis vulneribus;
**セクスティウス(・バクルス)は重い傷を受けて、気を失った。
*Deficiens<ref>deficiens はβ系写本の記述で、α系写本にはない。</ref> aegre per manus tractus servatur.
**(彼は)衰弱して、(味方の)手から手に運ばれて辛うじて救助された。
*⑤ Hoc spatio interposito reliqui sese confirmant
**こうしてしばらくした後で、ほかの者たちは意を強くした。
*tantum, ut in munitionibus consistere audeant speciemque defensorum praebeant.
**(それは)防壁にあえて陣取って、防戦者たちの姿を示したほどであった。
===39節===
'''スガンブリー族が糧秣徴発部隊をも襲う'''
*① Interim confecta frumentatione milites nostri clamorem exaudiunt;
**その間に、糧秣徴発を成し遂げると、我が方の兵士たち(=ローマ軍団兵)は叫び声を聞きつけて、
*praecurrunt equites;
**[[w:騎兵|騎兵]]たちが先駆けして、
*quanto res sit in periculo cognoscunt.
**事態がどれほどの危険にあるかを認識した。
*② Hic vero nulla munitio est quae perterritos recipiat;
**そこには、まさに、脅え上がった者たちを受け入れるような、いかなる防備もなかったのである。
*modo conscripti atque usus militaris imperiti
**やっと徴集されたばかりの者たち、なおかつ兵役の経験に通じていない者たちは、
*ad tribunum militum centurionesque ora convertunt;
**<ruby><rb>[[w:トリブヌス・ミリトゥム|兵士長官]]</rb><rp>(</rp><rt>トリブヌス・ミリトゥム</rt><rp>)</rp></ruby>や<ruby><rb>[[w:ケントゥリオ|百人隊長]]</rb><rp>(</rp><rt>ケントゥリオ</rt><rp>)</rp></ruby>たちの方へ顔を向けた。
*quid ab his praecipiatur exspectant.
**彼ら(上官たち)によって何を指図されるか、待っていたのである。
*③ Nemo est tam fortis, quin rei novitate perturbetur.
**新奇な事態に不安にさせられないほど勇敢な者は、誰もいなかった。
*④ Barbari signa procul conspicati oppugnatione desistunt,
**蛮族たちは、(糧秣徴発隊の)軍旗を遠くから視認すると、(陣営への)攻囲を停止した。
*redisse primo legiones credunt, quas longius discessisse ex captivis cognoverant;
**(彼らは)当初は、より遠くに立ち去ったことを捕虜から知っていた(ローマの)諸軍団が戻って来たと思ったが、
*postea despecta paucitate ex omnibus partibus impetum faciunt.
**後には、(糧秣徴発隊の)寡勢ぶりを侮って、あらゆる方向から突撃して来た。
===40節===
'''敵中突破して陣営へ戻る糧秣徴発部隊の明暗'''
*① Calones in proximum tumulum procurrunt.
**[[w:カロネス|軍属奴隷]]たちは、近隣の丘に先駆けした。
*Hinc celeriter deiecti
**(彼らは)ここから、(突撃して来る敵の軍勢を眺めて)たちまち当てが外れて、
*se in signa manipulosque coniciunt;
**(後方にいた)軍旗と[[w:マニプルス|歩兵中隊]]のところに身を投じた。
*eo magis timidos perterrent milites.
**それゆえに、臆病な兵士たちを大いに脅かした。
[[画像:Wedge-diagram.svg|thumb|right|200px|[[w:くさび|楔(くさび)]]の図。本節で述べられているのは、ローマ勢が楔(図の黒い部分)のように突撃することにより、敵を中央突破しようという戦術であろう。]]
*② Alii cuneo facto ut celeriter perrumpant, censent
**(ローマ兵の)ある者たちは、速やかに(敵中を)突破するように、<ruby><rb>[[w:くさび|楔形]]</rb><rp>(</rp><rt>くさびがた</rt><rp>)</rp></ruby>隊列を形成しようと考慮した。
*─ quoniam tam propinqua sint castra,
**─ 陣営がこれほどまで近隣にあるので、
*etsi pars aliqua circumventa ceciderit, at reliquos servari posse confidunt ─,
**たとえ、一部の誰かが包囲されて斃れたとしても、残りの者たちは救われることが可能だと確信したのだ ─。
*③ alii ut in iugo consistant atque eundem omnes ferant casum.
**別のある者たちは、(丘の)尾根に陣取って、皆が同じ命運に耐え忍ぼうと(考えた)。
*④ Hoc veteres non probant milites, quos sub vexillo una profectos docuimus.
**既述したように軍旗のもとで一緒に発って来た古参兵たちは、後者(の案)を承認しなかった。
**:(訳注:[[#36節|36節]]③項で既述のように、回復した傷病兵たちが同行してきていた。)
*Itaque inter se cohortati
**こうして、(古参の傷病兵たちは)互いに激励し合って、
*duce C.(Gaio) Trebonio equite Romano, qui iis erat praepositus,
**彼らの指揮を委ねられていたローマ人[[w:騎士|騎士階級]]のガイウス・トレボニウスを統率者として、
**:(訳注:[[#33節|33節]]で3個軍団を率いて出発した副官の[[w:ガイウス・トレボニウス|ガイウス・トレボニウス]]とは明らかに同名の別人である。)
*per medios hostes perrumpunt incolumesque ad unum omnes in castra perveniunt.
**敵たちの中央を突破して、一人に至るまで皆が無傷で陣営に到着した。
*⑤ Hos subsecuti calones equitesque eodem impetu militum virtute servantur.
**彼らに追随して、軍属奴隷と[[w:騎兵|騎兵]]たちが同様の突撃をして、兵士たちの武勇により救われた。
*⑥ At ii qui in iugo constiterant,
**それに対して(丘の)尾根に陣取った者たちは、
*nullo etiam nunc usu rei militaris percepto
**今になってさえも、軍事的行動というものを把握しておらず、
*neque in eo quod probaverant consilio permanere, ut se loco superiore defenderent,
**より高い場所で身を守るという、彼らが承認していた考えに留まりもせず、
*neque eam quam prodesse aliis vim celeritatemque viderant, imitari potuerunt,
**(彼らが)別の者たち(=古参兵)に役立ったのを見ていたところの力と迅速さを真似することもできなかった。
*sed se in castra recipere conati iniquum in locum demiserunt.
**けれども、陣営に退却することを試みたが、不利な場所に落ち込んで行った。
*⑦ Centuriones, quorum nonnulli ex inferioribus ordinibus reliquarum legionum
**[[w:ケントゥリオ|百人隊長]]たちといえば、彼らの少なからぬ者たちは、ほかの[[w:ローマ軍団|軍団]]のより低い序列から、
*virtutis causa in superiores erant ordines huius legionis traducti,
**武勇のおかげで、この軍団のより高い序列に異動させられていたが、
*ne ante partam rei militaris laudem amitterent, fortissime pugnantes conciderunt.
**かつて獲得した軍事的な賞賛を失わないように、とても果敢に奮戦して斃れた。
*⑧ Militum pars horum virtute
**兵士たちの一部は、これら(討ち死にした百人隊長たち)の武勇により、
*submotis hostibus praeter spem incolumis in castra pervenit,
**予想に反して敵たちが撃退されたので、無傷で陣営に到着した。
*pars a barbaris circumventa periit.
**別の一部は、蛮族によって包囲されて、討ち死にした。
===41節===
'''スガンブリー族の撤退、カエサルの帰還'''
*① Germani desperata expugnatione castrorum,
**[[w:ゲルマニア|ゲルマーニア]]人たちは(キケロの)[[w:カストラ|陣営]]の攻略に絶望して、
*quod nostros iam constitisse in munitionibus videbant,
**というのは、我が方(ローマ勢)が防備のところに立っているのを見たからであるが、
*cum ea praeda quam in silvis deposuerant, trans Rhenum sese receperunt.
**森の中にしまい込んでいた略奪品とともに、レヌス(=[[w:ライン川|ライン川]])の向こう側に撤退した。
*② Ac tantus fuit etiam post discessum hostium terror,
**敵たちの立ち去った後でさえ(ローマ勢の)畏怖はたいへんなものであったので、
*ut ea nocte, cum C.(Gaius) Volusenus missus cum equitatu ad castra venisset,
**その夜に、(追討戦に)派遣されていたガーイウス・ウォルセーヌスが騎兵隊とともに陣営へ帰着したときに
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:''[[w:en:Gaius Volusenus|Gaius Volusenus]]'' は、[[ガリア戦記_第3巻#5節|第3巻5節]]のアルプス・オクトードゥールスの戦い、<br> [[ガリア戦記_第4巻#21節|第4巻21節]]・[[ガリア戦記_第4巻#23節|23節]]のブリタンニアへの先遣で既述。<br> この後、さらに第8巻23節<sub>([[s:la:Commentarii_de_bello_Gallico/Liber_VIII#23|s]])</sub>、48節<sub>([[s:la:Commentarii_de_bello_Gallico/Liber_VIII#48|s]])</sub>でも活躍する。)</span>
*fidem non faceret adesse cum incolumi Caesarem exercitu.
**カエサルが無傷の軍隊とともに近くに来ていることを(陣営の残留組に)信用させなかったほどである。
*③ Sic omnino animos timor praeoccupaverat, ut paene alienata mente
**ほとんど気でも違ったかのように、皆の心を怖れが占めていた。
**:(訳注:sic … ut ~ の構文;「~と同様に…である」)
*deletis omnibus copiis equitatum se ex fuga recepisse dicerent
**(残留者たちは、カエサルら)全軍勢が滅ぼされて、[[w:騎兵|騎兵隊]]が敗走から退いて来たのだ、と言った。
*neque incolumi exercitu Germanos castra oppugnaturos fuisse contenderent.
**(カエサルら)軍隊が無傷であれば、ゲルマーニア人が陣営を襲撃しなかっただろう、と断言した。
**:(訳注:oppugnaturos fuisse ;間接話法では非現実な[[w:条件法|条件文]]の帰結は「未来分詞+fuisse」で表される。)
*④ Quem timorem Caesaris adventus sustulit.
**その怖れをカエサルの到着が取り除いた。
**:(訳注:sustulit は tollō の完了・能動3人称単数形)
===42節===
'''カエサルがスガンブリー族の襲来と撤退を運命に帰する'''
*① Reversus ille, eventus belli non ignorans,
**引き返して来た彼(カエサル)は、戦争の成り行きというものを知らないはずがないので、
*unum quod cohortes ex statione et praesidio essent emissae,
**ひとつ(だけ)、<ruby><rb>[[w:コホルス|諸大隊]]</rb><rp>(</rp><rt>コホルス</rt><rp>)</rp></ruby> が[[w:歩哨|歩哨]]や守備から(糧秣徴発に)派遣されたことを
*questus ─ ne minimo quidem casu locum relinqui debuisse ─
**不慮の事態に対して最小限のいかなる余地も残されるべきではなかった、と嘆いた。
*multum Fortunam in repentino hostium adventu potuisse iudicavit,
**不意の敵たちの到来においては運命(の女神)が大いに力を持つ、と断じた。
*② multo etiam amplius, quod paene ab ipso vallo portisque castrorum barbaros avertisset.
**さらに、より一層大きかったのは、(運命が)ほとんど蛮族をその陣営の防柵と諸門から追い返してしまったことである。
*③ Quarum omnium rerum maxime admirandum videbatur,
**それらのすべての事態でとりわけ驚くべきと思われたのは、
*quod Germani, qui eo consilio Rhenum transierant, ut Ambiorigis fines depopularentur,
**その意図で[[w:アンビオリクス|アンビオリクス]]の領土を荒らすようにレヌス(=[[w:ライン川|ライン川]])を渡河していた[[w:ゲルマニア|ゲルマーニア]]人が、
*ad castra Romanorum delati
**ローマ人の陣営の方へそらされて、
*optatissimum Ambiorigi beneficium obtulerunt.
**アンビオリクスに最も望ましい恩恵を施してしまったことである。
==対エブロネス族追討戦(2)==
===43節===
'''アンビオリクスが辛うじて追討を逃れる'''
*① Caesar rursus ad vexandos hostes profectus
**カエサルは再び敵たちを苦しめるために出発して、
*magno coacto <equitum> numero ex finitimis civitatibus in omnes partes dimittit.
**[[w:騎兵|騎兵]]の多数を隣接する諸部族から徴集して、あらゆる方面に派遣した。
**:(訳注:<equitum> 「騎兵の」は近代の校訂者による挿入である。)
*② Omnes vici atque omnia aedificia quae quisque conspexerat incendebantur,
**おのおのが目にしたすべての村々およびすべての建物が焼き打ちされた。
*pecora interficiebantur<ref>pecora interficiebantur はβ系写本の記述で、α系写本にはない。</ref>, praeda ex omnibus locis agebatur;
**家畜は屠殺され、あらゆる場所から略奪品が奪い去られた。
*③ frumenta non solum tanta multitudine iumentorum atque hominum consumebantur,
**役畜および人間たちのこれほど大勢により穀物が消費され尽くしたのみならず、
*sed etiam anni tempore atque imbribus procubuerant,
**季節と豪雨によってさえも(穀物が)倒れた。
*ut si qui etiam in praesentia se occultassent,
**その結果、もし(エブロネス族の)何者かが現状では身を隠しているとしても、
*tamen his deducto exercitu rerum omnium inopia pereundum videretur.
**それでも彼らは(ローマ人の)軍隊が引き揚げれば、あらゆるものの欠乏により死滅するはずと思われた。
*④ Ac saepe in eum locum ventum est tanto in omnes partes diviso equitatu,
**たいへん多くの騎兵隊があらゆる方面に分遣されて、しばしば以下のような状態に出くわした。
*ut non modo visum ab se Ambiorigem in fuga circumspicerent captivi
**捕虜たちが、自分たちによって逃亡中の[[w:アンビオリクス|アンビオリクス]]が目撃されたと見回しただけでなく、
*nec plane etiam abisse ex conspectu contenderent,
**(アンビオリクスが)視界からまったく消え去ってはいないとさえ主張した。
*⑤ ut spe consequendi inlata atque infinito labore suscepto,
**その結果、(アンビオリクスを)追跡する希望がもたらされて、さらに限りない労苦が従事された。
*qui se summam ab Caesare gratiam inituros putarent,
**カエサルから最高の恩恵を得ようと思った者たちは、
*paene naturam studio vincerent,
**熱意により(身体的な)資質にほとんど打ち克ったが、
*semperque paulum ad summam felicitatem defuisse videretur,
**いつも最高の恵みにあと少しで足りなかったと思われる。
*⑥ atque ille latebris aut silvis<ref>aut silvis はβ系写本の記述で、α系写本にはない。</ref> aut saltibus se eriperet
**かつ彼(アンビオリクス)は隠れ処、あるいは森林、あるいは峡谷によって自らを救い、
*et noctu occultatus alias regiones partesque peteret
**夜に秘されて、別の地方や方面をめざした。
*non maiore equitum praesidio quam quattuor,
**4名より多くない騎兵の護衛によって、
*quibus solis vitam suam committere audebat.
**自らの生命をその者たちだけにあえて委ねたのだ。
===44節===
'''カエサルが撤退し、造反者アッコを処刑する'''
*① Tali modo vastatis regionibus
**このようなやり方で(エブロネス族の)諸地域を荒廃させて、
[[画像:Porte_Mars_01.jpg|thumb|right|200px|ドゥロコルトルム(現在の[[w:ランス (マルヌ県)|ランス]])に建てられた帝政ローマ時代(3世紀)の[[w:凱旋門|凱旋門]]。]]
*exercitum Caesar duarum cohortium damno [[w:la:Remi|Durocortorum]] Remorum reducit
**カエサルは、2個<ruby><rb>[[w:コホルス|歩兵大隊]]</rb><rp>(</rp><rt>コホルス</rt><rp>)</rp></ruby> の損失(だけ)で、軍隊を[[w:レミ族|レミ族]]の[[w:ドゥロコルトルム|ドゥロコルトルム]]に連れ戻して、
**:(訳注:ドゥロコルトルムはレミ族の首邑で、現在の[[w:ランス (マルヌ県)|ランス]] Reims である。)
*concilioque in eum locum Galliae indicto
**その地においてガッリアの(領袖たちの)会合を公示して、
*de coniuratione Senonum et Carnutum quaestionem habere instituit
**[[w:セノネス族|セノネス族]]と[[w:カルヌテス族|カルヌテス族]]の共謀について詮議することを決定した。
*② et de Accone, qui princeps eius consilii fuerat,
**その謀計の首謀者であった[[w:アッコ (セノネス族)|アッコ]]については
*graviore sententia pronuntiata more maiorum supplicium sumpsit.
**より重い判決が布告され、(ローマ人の)先祖の習慣により極刑に処した。
**:(訳注:ローマ史家[[w:テオドール・モムゼン|モムゼン]]は、アッコはローマの<ruby><rb>[[w:リクトル|先導吏]]</rb><rp>(</rp><rt>リクトル</rt><rp>)</rp></ruby> により[[w:斬首刑|斬首]]されたと言及している<ref>『モムゼン ローマの歴史Ⅳ』長谷川博隆訳、名古屋大学出版会、p.233 を参照。</ref>。
**:外国から来た侵略者カエサルがこのような刑罰を下したことに、ガッリア人たちは憤激した。[[ガリア戦記 第7巻#1節|第7巻1節]]を参照。)
*③ Nonnulli iudicium veriti profugerunt.
**少なからぬ者たちは、裁判を恐れて逃走した。
*Quibus cum aqua atque igni interdixisset,
**その者たちには水と火が禁じられたうえで、
**:(訳注:「水と火を禁じる」とは追放処分のことで、居住権や財産の没収などを指す。)
*duas legiones ad fines Treverorum, duas in Lingonibus,
**2個[[w:ローマ軍団|軍団]]をトレーウェリー族の領土へ、2個(軍団)を[[w:リンゴネス族|リンゴネス族]](の領土)に、
*sex reliquas in Senonum finibus [[w:la:Agedincum|Agedinci]] in hibernis conlocavit
**残りの6個(軍団)を[[w:セノネス族|セノネス族]]の領土の[[w:アゲディンクム|アゲディンクム]]に、冬営地に宿営させた。
**:(訳注:アゲディンクムは、現在の[[w:サン (ヨンヌ県)|サン]] Sens である。)
*frumentoque exercitui proviso,
**軍隊の糧秣を調達してから、
*ut instituerat, in Italiam ad conventus agendos profectus est.
**定めていたように、イタリアに開廷(巡回裁判)を行なうために出発した。
**:(訳注:ここで「イタリア」とはカエサルが総督を務める[[w:ガリア・キサルピナ|ガッリア・キサルピーナ]]のことと思われる。)
----
*<span style="background-color:#99ff99;">「ガリア戦記 第6巻」了。「[[ガリア戦記 第7巻]]」へ続く。</span>
==脚注==
<references />
==参考リンク==
*ウィキペディア英語版・日本語版
**[[w:en:Category:Tribes of ancient Gaul|Category:Tribes of ancient Gaul]]([[w:Category:ガリアの部族|Category:ガッリアの部族]])
***[[w:en:Eburones|Eburones]]([[w:エブロネス族|エブロネス族]])
***[[w:en:Nervii|Nervii]]([[w:ネルウィイ族|ネルウィイ族]])
***[[w:en:Senones|Senones]](セノネス族)- [[w:la:Senones|la:Senones]]
***[[w:en:Carnutes|Carnutes]](カルヌテス族)
***[[w:en:Parisii (Gaul)|Parisii (Gaul)]]([[w:パリシイ族|パリスィ族]])
****[[w:en:Lutetia|Lutetia]]([[w:ルテティア|ルテティア]])
***[[w:en:Menapii|Menapii]](メナピイ族)
***[[w:en:Treveri|Treveri]](トレーウェリー族)
***[[w:en:Aedui|Aedui]]([[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイ族]])
***[[w:en:Sequani|Sequani]](セクアニ族)
***[[w:en:Remi|Remi]](レーミー族)
**[[w:en:Category:Germanic peoples|Category:Germanic peoples]](ゲルマーニア人のカテゴリ)
***[[w:en:Category:Ancient Germanic peoples|Category:Ancient Germanic peoples]](古代ゲルマーニア人)
***[[w:en:Germanic peoples|Germanic peoples]](ゲルマーニア人)
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***[[w:en:Suebi|Suebi]]([[w:スエビ族|スエービー族]])
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***[[w:en:Cherusci|Cherusci]](ケールスキー族)
***[[w:en:Sicambri|Sicambri]](スガンブリー族)
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**地理学者・史家
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****〔ウィキソース ギリシア語版:[[s:el:Διόδωρος Σικελιώτης|Διόδωρος Σικελιώτης]](シケリアのディオドロス)- [[s:el:Ιστορική Βιβλιοθήκη|Ιστορική Βιβλιοθήκη]](歴史叢書)〕
***[[w:en:Strabo|Strabo]]([[w:ストラボン|ストラボン]];BC63年頃–AD24年頃)- [[w:la:Strabo|la:Strabo]]
****〔ウィキソース ギリシア語版:[[s:el:Στράβων|Στράβων]](ストラボン) - [[s:el:Γεωγραφία|Γεωγραφία]](世界地誌)〕
***[[w:en:Tacitus|Tacitus]]([[w:タキトゥス|タキトゥス]];56年頃–117年頃)- [[w:la:Cornelius Tacitus|la:Cornelius Tacitus]]
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***[[w:en:Sucellus|Sucellus]](スケッルス)
**カエサルの副官たち
***[[w:en:Titus_Labienus|Titus Labienus]]([[w:ティトゥス・ラビエヌス|ティトゥス・ラビエヌス]])- [[w:la:Titus_Labienus|la:Titus Labienus]]
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***[[w:en:|en:]]([[w:|w:]])
***[[w:en:|en:]]([[w:|w:]])
*ウィクショナリー フランス語版
**[[wikt:fr:calo]](カーロー、軍属奴隷)
151rrm3e7yta17wtdbbdmq20e8p4hkr
264384
264357
2024-11-27T14:17:08Z
Linguae
449
/* 12節 */ 修整
264384
wikitext
text/x-wiki
[[Category:ガリア戦記|6]]
[[ガリア戦記]]> '''第6巻''' >[[ガリア戦記 第6巻/注解|注解]]
<div style="text-align:center">
<span style="font-size:20px; font-weight:bold; font-variant-caps: petite-caps; color:white; background: rgb(47,94,255);background: linear-gradient(180deg, rgba(47,94,255,1) 0%, rgba(24,56,255,1) 50%, rgba(0,8,255,1) 100%);"> C IVLII CAESARIS COMMENTARIORVM BELLI GALLICI </span>
<span style="font-size:40px; font-weight:bold; color:white; background: rgb(47,94,255);background: linear-gradient(180deg, rgba(47,94,255,1) 0%, rgba(24,56,255,1) 50%, rgba(0,8,255,1) 100%);"> LIBER SEXTVS </span>
</div>
[[画像:Gaule_-53.png|thumb|right|150px|ガリア戦記 第6巻の情勢図(BC53年)。<br>黄色の領域がローマ領。桃色が同盟部族領。]]
{| id="toc" style="align:left;clear:all;" align="left" cellpadding="5"
! style="background:#ccccff; text-align:left;" colspan="2" | ガリア戦記 第6巻 目次
|-
| style="text-align:right; font-size: 0.86em;"|
'''[[#ガッリア北部の平定|ガッリア北部の平定]]''':<br />
'''[[#第二次ゲルマーニア遠征|第二次ゲルマーニア遠征]]''':<br />
'''[[#ガッリア人の社会と風習について|ガッリア人の社会と風習について]]''':<br />
'''[[#ゲルマーニアの風習と自然について|ゲルマーニアの風習と自然について]]''':<br />
'''[[#対エブロネス族追討戦(1)|対エブロネス族追討戦(1)]]''':<br />
'''[[#スガンブリー族のアドゥアトゥカ攻略戦|スガンブリー族のアドゥアトゥカ攻略戦]]''':<br />
'''[[#対エブロネス族追討戦(2)|対エブロネス族追討戦(2)]]''':<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
| style="text-align:left; font-size: 0.86em;"|
[[#1節|01節]] |
[[#2節|02節]] |
[[#3節|03節]] |
[[#4節|04節]] |
[[#5節|05節]] |
[[#6節|06節]] |
[[#7節|07節]] |
[[#8節|08節]] <br />
[[#9節|09節]] |
[[#10節|10節]] <br />
[[#11節|11節]] |
[[#12節|12節]] |
[[#13節|13節]] |
[[#14節|14節]] |
[[#15節|15節]] |
[[#16節|16節]] |
[[#17節|17節]] |
[[#18節|18節]] |
[[#19節|19節]] |
[[#20節|20節]] <br />
[[#21節|21節]] |
[[#22節|22節]] |
[[#23節|23節]] |
[[#24節|24節]] |
[[#25節|25節]] |
[[#26節|26節]] |
[[#27節|27節]] |
[[#28節|28節]] <br />
[[#29節|29節]] |
[[#30節|30節]] |
[[#31節|31節]] |
[[#32節|32節]] |
[[#33節|33節]] |
[[#34節|34節]] <br />
[[#35節|35節]] |
[[#36節|36節]] |
[[#37節|37節]] |
[[#38節|38節]] |
[[#39節|39節]] |
[[#40節|40節]] |
[[#41節|41節]] |
[[#42節|42節]] <br/>
[[#43節|43節]] |
[[#44節|44節]] <br/>
1節 [[#コラム「カエサルの軍団」|コラム「カエサルの軍団」]]<br>
10節 [[#コラム「スエービー族とカッティー族・ケールスキー族・ウビイー族について」|コラム「スエービー族とカッティー族・ケールスキー族・ウビイー族について」]]<br>10節 [[#コラム「ガッリア・ゲルマーニアの地誌・民族誌について」|コラム「ガッリア・ゲルマーニアの地誌・民族誌について」]]<br />
[[#脚注|脚注]]<br />
[[#参考リンク|参考リンク]]<br />
|}
<br style="clear:both;" />
__notoc__
<div style="background-color:#dfffdf;">
==<span style="color:#009900;">はじめに</span>==
:<div style="color:#009900;width:85%;">カエサルは、第1巻の年([[w:紀元前58年|紀元前58年]])から<ruby><rb>[[w:プロコンスル|前執政官]]</rb><rp>(</rp><rt>プロコンスル</rt><rp>)</rp></ruby>として属州総督に赴任した。が、これは[[w:ガリア・キサルピナ|ガッリア・キサルピーナ]]、[[w:イリュリクム|イッリュリクム]]および[[w:ガリア・ナルボネンシス|ガッリア・トラーンサルピーナ]]の三属州の統治、および4個軍団を5年間にもわたって任されるというローマ史上前代未聞のものであった。これはカエサルが[[w:マルクス・リキニウス・クラッスス|クラッスス]]、[[w:グナエウス・ポンペイウス|ポンペイウス]]と非公式な盟約を結んだ[[w:三頭政治#第一回三頭政治|三頭政治]]の成果であった。カエサルには属州の行政に従事する気持ちははじめからなく、任期のほとんどを夏季は[[w:ガリア戦争|ガッリア侵攻]]に、冬季は首都ローマへの政界工作に費やした。[[ガリア戦記_第3巻#はじめに|第3巻]]の年([[w:紀元前56年|紀元前56年]])に3人は[[w:ルッカ|ルカ]]([[w:la:Luca|Luca]])の会談を行い、カエサルはクラッススとポンペイウスが翌年に執政官になること、カエサルの総督の任期をさらに5年間延長されることを求めた。会談の結果、任期が大幅に延長されることになったカエサルは、もはや軍事的征服の野望を隠そうとせず、ガッリアに止まらず、[[w:ゲルマニア|ゲルマーニア]]や[[w:ブリタンニア|ブリタンニア]]の征服へと向かっていく。一方、第4巻の年([[w:紀元前55年|前55年]])に再び執政官になった二人は、[[w:パルティア|パルティア]]を攻略するためにクラッススが[[w:シリア属州|シュリア]]総督になること、ポンペイウスがカエサルと同様に[[w:ヒスパニア|両ヒスパーニア]]と[[w:アフリカ属州|アフリカ]]の三属州の総督になって4個軍団を任されることを決める。</div>
<div style="text-align:center">
{|
|-
|[[画像:First Triumvirate of Caesar, Crassius and Pompey.jpg|thumb|right|500px|後に[[w:三頭政治#第一回三頭政治|三頭政治]](<span style="font-family:Times New Roman;">[[w:la:Triumviratus|Triumviratus]]</span>)と呼ばれることになる非公式な盟約を結んでいた、左から[[w:ガイウス・ユリウス・カエサル|カエサル]]、[[w:マルクス・リキニウス・クラッスス|クラッスス]]、[[w:グナエウス・ポンペイウス|ポンペイウス]]。<br>3人の同盟はついに破綻の時を迎える。]]
|}
</div>
:<div style="color:#009900;width:85%;">[[w:ガリア戦記 第5巻|第5巻]]の年([[w:紀元前54年|前54年]])、カエサルは満を持して二回目の[[w:ローマによるブリタンニア侵攻 (紀元前55年-紀元前54年)|ブリタンニア侵攻]]を敢行するが、大した戦果は得られず、背後のガッリア情勢を気にしながら帰還する。ついに[[w:アンビオリクス|アンビオリークス]]率いる[[w:エブロネス族|エブローネース族]]、ついで[[w:ネルウィイ族|ネルウィイー族]]が反乱を起こし、カエサルは何とか動乱を鎮めるが、ガッリア諸部族の動きは不穏であり、カエサルは諸軍団とともに越冬することを決める。</div>
:<div style="color:#009900;width:85%;">カエサルがブリタンニア遠征で不在の間に、ポンペイウスに嫁していたカエサルの一人娘[[w:ユリア (ガイウス・ユリウス・カエサルの娘)|ユーリア]]が[[w:産褥|産褥]]で命を落とす。一方、クラッススは属州[[w:シリア属州|シュリア]]に向かうが、これはクラッススの命運とともに三頭政治の瓦解、カエサルとポンペイウスの関係悪化を招来することになる。</div>
:<div style="color:#009900;width:85%;">本巻の年([[w:紀元前53年|前53年]])、カエサルは[[w:エブロネス族|エブローネース族]]追討戦に向かうが、これは大きな嵐の前の出来事に過ぎない。</div>
</div>
<!--
**:<span style="color:#009900;">(訳注:
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:
-->
==ガッリア北部の平定==
===1節===
*<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/1節]] {{進捗|00%|2024-09-18}}</span>
;カエサルがポンペイウスの助けにより新兵を徴募する
*<!--❶-->Multis de causis Caesar maiorem Galliae [[wikt:en:motus#Noun_2|motum]] [[wikt:en:exspectans|exspectans]]
**多くの理由から、カエサルは、ガッリアのより大きな動乱を予期しており、
*per [[wikt:en:Marcus#Latin|Marcum]] [[wikt:en:Silanus#Latin|Silanum]], [[wikt:en:Gaius#Latin|Gaium]] [[wikt:en:Antistius#Latin|Antistium]] Reginum, [[wikt:en:Titus#Latin|Titum]] [[wikt:en:Sextius#Latin|Sextium]], legatos,
**<ruby><rb>[[w:レガトゥス|総督副官]]</rb><rp>(</rp><rt>レガトゥス</rt><rp>)</rp></ruby>の[[w:マルクス・ユニウス・シラヌス (紀元前25年の執政官)|マールクス・スィーラーヌス]]、ガーイウス・アンティスティウス・レーギーヌス、ティトゥス・セクスティウスを介して
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[w:en:Marcus Junius Silanus (consul 25 BC)|Mārcus Iūnius Sīlānus]] はこの年([[w:紀元前53年|前53年]])からカエサルの副官、[[w:紀元前25年|前25年]]に執政官。<br> ''[[w:fr:Caius Antistius Reginus|Gaius Antistius Reginus]]'' は副官として[[ガリア戦記_第7巻#83節|第7巻83節]]と[[ガリア戦記_第7巻#90節|90節]]でも後出。<br> [[w:en:Titus Sextius|Titus Sextius]] はこの年からカエサルの副官、[[ガリア戦記_第7巻#83節|第7巻83節]]でも後出、<br> [[w:三頭政治#第二回三頭政治|第二回三頭政治]]では[[w:アフリカ属州|アフリカ属州]]の総督を務め、[[w:マルクス・アエミリウス・レピドゥス|レピドゥス]]に引き継ぐ。)</span>
*[[wikt:en:dilectus#Noun|dilectum]] habere [[wikt:en:instituo#Latin|instituit]];
**<small>(兵士の)</small>徴募を行なうことを決める。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:dilectus#Noun|dīlēctus]] = [[wikt:en:delectus#Noun_2|dēlēctus]]「選択、徴募」)</span>
:
*<!--❷-->simul ab [[wikt:en:Gnaeus#Latin|Gnaeo]] [[wikt:en:Pompeius#Proper_noun|Pompeio]] [[wikt:en:proconsul#Latin|proconsule]] [[wikt:en:peto#Latin|petit]],
**同時に、<ruby><rb>[[w:プロコンスル|前執政官]]</rb><rp>(</rp><rt>プロコンスル</rt><rp>)</rp></ruby>の[[w:グナエウス・ポンペイウス|グナエウス・ポンペイウス]]に<small>(以下のことを)</small>求める。
*[[wikt:en:quoniam#Latin|quoniam]] ipse ad <u>urbem</u> cum imperio rei publicae causa [[wikt:en:remaneo#Latin|remaneret]],
**<small>(ポンペイウス)</small>自身は<u>首都</u><small>〔[[w:ローマ|ローマ市]]〕</small>の辺りに、<ruby><rb>[[w:インペリウム|軍隊司令権]]</rb><rp>(</rp><rt>インペリウム</rt><rp>)</rp></ruby>を伴って、国務のために留まっていたので、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:urbs#Latin|urbs (urbem)]] は普通名詞として「都市・街」を意味するが、特に首都'''[[w:ローマ|ローマ市]]'''を指す。)</span>
**:<span style="color:#009900;">(訳注:ポンペイウスは、第4巻の年([[w:紀元前55年|前55年]])に[[w:マルクス・リキニウス・クラッスス|クラッスス]]とともに[[w:執政官|執政官]]を務め、<br> 第5巻の年(昨年=[[w:紀元前54年|前54年]])には[[w:ヒスパニア|両ヒスパーニア]]と[[w:アフリカ属州|アフリカ]]の属州総督となったが、<br> 首都ローマの政局が気がかりであったため、任地には副官を派遣して、<br> 自らはローマ郊外に滞在していた。ただ彼は属州総督であったため、<br> [[w:ポメリウム|ポメリウム]]と呼ばれるローマ市中心部に立ち入ることは禁じられていた。)</span>
*quos ex [[wikt:en:cisalpinus#Latin|Cisalpina]] Gallia <u>consulis</u> [[wikt:en:sacramentum#Latin|sacramento]] [[wikt:en:rogo#Latin|rogavisset]],
**[[w:ガリア・キサルピナ|ガッリア・キサルピーナ]]の内から、<ruby><rb>[[w:執政官|執政官]]</rb><rp>(</rp><rt>コンスル</rt><rp>)</rp></ruby>のための宣誓を求めていた者たちに、
**:<span style="color:#009900;">(訳注:ポンペイウスは執政官のときに元老院の許可を得て、<br> カエサルの属州で、自らの属州に派遣するための4個軍団の徴募を行った。<br> 徴集された新兵たちは執政官に宣誓したようである。)</span>
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、主要写本ω では [[wikt:en:consulis#Noun|consulis]]「執政官の」だが、<br> [[ガリア戦記/注解編/写本と校訂版#Ciacconius|Ciacconius]]は [[wikt:en:consul#Latin|consul]]「執政官が」と修正提案している。)</span>
*ad signa [[wikt:en:convenio#Latin|convenire]] et ad se [[wikt:en:proficiscor#Latin|proficisci]] [[wikt:en:iubeo#Latin|iuberet]],
**軍旗のもとに集まって、自分<small>〔カエサル〕</small>のもとへ進発することを命じるようにと。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:カエサルは、ポンペイウスに軍団兵の融通を求めたわけだ。<br> ポンペイウスが執政官のときに徴募していたうちの1個軍団がカエサルに貸し出された。<br> ところがその後、<u>第8巻54節の記述</u>によれば <ref>ラテン語文は、[[s:la:Commentarii_de_bello_Gallico/Liber_VIII#54]] などを参照。</ref><ref>英訳は、[[s:en:Commentaries_on_the_Gallic_War/Book_8#54]] などを参照。</ref>、[[w:マルクス・リキニウス・クラッスス|クラッスス]]の死後に、[[w:元老院|元老院]]は、<br> 対[[w:パルティア|パルティア]]戦争のために、カエサルとポンペイウスがそれぞれ1個軍団を供出することを可決したが、<br> ポンペイウスはカエサルに1個軍団の返還を求めたので、<br> カエサルは計2個軍団の引き渡しを求められることになる。<br> このことは、[[内乱記_第1巻#2節|『内乱記』第1巻2節]]以降でも言及される。)</span>
:
*<!--❸-->magni [[wikt:en:intersum#Latin|interesse]] etiam in reliquum tempus ad [[wikt:en:opinio#Latin|opinionem]] Galliae [[wikt:en:existimans#Latin|existimans]]
**ガッリアの世論に対して、これから後の時期にさえも、(カエサルが)大いに重要であると考えていたのは、
*tantas videri Italiae [[wikt:en:facultas#Latin|facultates]]
**(以下の程度に)イタリアの(動員)能力が豊富であると見えることである。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:Italiaという語は多義的でさまざまに解釈できるが、<br> 本書ではガッリア・キサルピーナを指すことが多い。)</span>
*ut, si [[wikt:en:aliquid#Etymology_2|quid]] esset in bello [[wikt:en:detrimentum#Latin|detrimenti]] acceptum,
**もし、戦争において何がしかの(兵員の)損害を蒙ったとしても、
*non modo id [[wikt:en:brevis#Latin|brevi]] tempore [[wikt:en:sarcio#Latin|sarciri]],
**それが短期間で修復(できる)だけでなく、
*sed etiam [[wikt:en:maior#Adjective_2|maioribus]] [[wikt:en:augeo#Latin|augeri]] copiis posset.
**より多く軍勢で増されることが可能だ<br>(とガッリアの世論に思われることが重要であるとカエサルは考えたのである)。
:
*<!--❹-->Quod cum [[wikt:en:Pompeius#Proper_noun|Pompeius]] et rei publicae et amicitiae [[wikt:en:tribuo#Latin|tribuisset]],
**そのことを、ポンペイウスは公儀<small>〔ローマ国家〕</small>のためにも(三頭政治の)盟約のためにも認めたので、
*celeriter [[wikt:en:confectus#Latin|confecto]] per suos [[wikt:en:dilectus#Noun|dilectu]]
**(カエサルの)配下の者たちを介して速やかに徴募が成し遂げられて
*tribus ante [[wikt:en:exactus#Latin|exactam]] [[wikt:en:hiems#Latin|hiemem]] et [[wikt:en:constitutus#Participle|constitutis]] et [[wikt:en:adductus#Latin|adductis]] legionibus
**冬が過ぎ去る前に、3個[[w:ローマ軍団|軍団]]が組織されて<small>(カエサルのもとへ)</small>もたらされ、
*[[wikt:en:duplicatus#Latin|duplicato]]<nowiki>que</nowiki> earum [[wikt:en:cohors#Latin|cohortium]] numero, quas cum [[wikt:en:Quintus#Latin|Quinto]] [[wikt:en:Titurius#Latin|Titurio]] [[wikt:en:amitto#Latin|amiserat]],
**それらの<ruby><rb>[[w:コホルス|歩兵大隊]]</rb><rp>(</rp><rt>コホルス</rt><rp>)</rp></ruby>の数は、[[w:クィントゥス・ティトゥリウス・サビヌス|クィーントゥス・ティトゥーリウス(・サビーヌス)]]とともに失っていたものの倍にされた。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:前巻でサビーヌスとコッタは1個軍団と5個[[w:コホルス|歩兵大隊]](=15個歩兵大隊)を失ったが、<br> 代わりに3個軍団(=30個歩兵大隊)を得たということ。)</span>
*et [[wikt:en:celeritas#Latin|celeritate]] et copiis [[wikt:en:doceo#Latin|docuit]],
**<small>(徴兵の)</small>迅速さと軍勢<small>(の多さ)</small>において<small>(ガッリア人たちに)</small>示したのは、
*quid populi Romani [[wikt:en:disciplina#Latin|disciplina]] atque [[wikt:en:ops#Noun_4|opes]] possent.
**ローマ国民の規律と能力がいかに有力であるかということである。
{| class="wikitable"
|-
| style="vertical-align:top; text-align:left;" |[[画像:Hw-pompey.jpg|thumb|right|250px|[[w:グナエウス・ポンペイウス|グナエウス・ポンペイウス]]の胸像。カエサルおよび[[w:マルクス・リキニウス・クラッスス|マルクス・クラッスス]]とともに[[w:三頭政治|三頭政治]]を行ない、[[w:共和政ローマ|共和政末期のローマ]]を支配した。この巻の年にクラッススが戦死し、ポンペイウスに嫁いでいたカエサルの娘[[w:ユリア (ガイウス・ユリウス・カエサルの娘)|ユーリア]]が前年に病没、三頭政治は瓦解して、やがて[[w:ローマ内戦 (紀元前49年-紀元前45年)|内戦]]へ向かう。]]
| style="vertical-align:top; text-align:left;" |[[画像:Theatre of Pompey 3D cut out.png|thumb|left|400px|'''[[w:ポンペイウス劇場|ポンペイウス劇場]]'''の復元図。[[w:グナエウス・ポンペイウス|ポンペイウス]]の名を冠したこの劇場は、彼が執政官であった[[w:紀元前55年|紀元前55年]]頃に竣工し、当時最大の劇場であった。<br> 伝記作家[[w:プルタルコス|プルータルコス]]は以下のように伝えている<ref>[[s:en:Plutarch%27s_Lives_(Clough)/Life_of_Pompey]] より</ref>:「クラッススは執政官の任期が切れるとすぐに属州へと出発したが、ポンペイウスはローマで劇場の開館式や奉献式に出席し、その式にはあらゆる競技・ショー・運動・体操・音楽などで人々を楽しませた。野獣の狩猟や餌付け、野獣との闘いもあり、500頭のライオンが殺された。しかし何よりも、象の闘いは、恐怖と驚きに満ちた見世物であった」と。<br><br> カエサルの最期の場所でもあり、血みどろのカエサルはポンペイウスの胸像の前で絶命したとされている。]]
|}
<!--
<span style="color:#009900;"></span>
**:<span style="color:#009900;">(訳注:
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:
-->
<div style="background-color:#dfffdf;">
===<span style="color:#009900;">コラム「カエサルの軍団」</span>===
:<div style="color:#009900;width:75%;">カエサルは第1巻の年([[w:紀元前58年|紀元前58年]])に三属州の総督に任官するとともに4個軍団(VI・VII・[[w:en:Legio VIII Augusta|VIII]]・[[w:en:Legio IX Hispana|IX]])を任された。[[w:ヘルウェティイ族|ヘルウェーティイー族]]([[w:la:Helvetii|Helvetii]])と対峙するうちに、元老院に諮らずに独断で2個軍団([[w:en:Legio X Equestris|X]]・[[w:en:Legio XI Claudia|XI]])を徴募する(1巻10節)。<br> 第2巻の年([[w:紀元前57年|紀元前57年]])に3個軍団([[w:en:Legio XII Fulminata|XII]]・[[w:en:Legio XIII Gemina|XIII]]・[[w:en:Legio XIV Gemina|XIV]])を徴募して、計9個軍団。<br><br> [[ガリア戦記_第5巻#24節|『第5巻』24節]]の時点で、カエサルは8個軍団と5個[[w:コホルス|歩兵大隊]]を保持していると記されている。最古参の第6軍団が半減していると考えると、[[w:アドゥアトゥカの戦い|アドゥアトゥカの戦い]]で[[w:アンビオリクス|アンビオリークス]]によって、[[w:クィントゥス・ティトゥリウス・サビヌス|サビーヌス]]やコッタらとともに滅ぼされたのは、第14軍団([[w:en:Legio XIV Gemina|XIV]])と古い第6軍団(VI)の生き残りの5個[[w:コホルス|歩兵大隊]]と考えることができる。<br><br> 本巻の年([[w:紀元前53年|紀元前53年]])では、ポンペイウスの第1軍団がカエサルに譲られ、後にカエサルの軍団の番号系列に合わせて第6軍団(VI)と改称されたようだ。「第14軍団」は全滅させられたので通常は欠番にするところだが、カエサルはあえて再建して第14軍団と第15軍団が徴募され、これら3個軍団を加えると、カエサルが保持するのは計10個軍団となる。<br> もっとも本巻ではカエサルは明瞭な記述をしておらず、上述のように後に2個軍団を引き渡すことになるためか、伝記作家[[w:プルタルコス|プルータルコス]]は、ポンペイウスがカエサルに2個軍団を貸し出した、と説明している。
</div>
</div>
===2節===
*<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/2節]] {{進捗|00%|2024-09-29}}</span>
;ガッリア北部の不穏な情勢、トレーウェリー族がライン川東岸のゲルマーニア人を勧誘
*<!--❶-->[[wikt:en:interfectus#Latin|Interfecto]] [[wikt:en:Indutiomarus#Latin|Indutiomaro]], ut [[wikt:en:doceo#Latin|docuimus]],
**<small>([[ガリア戦記 第5巻#58節|第5巻58節]]で)</small>述べたように、インドゥーティオマールスが殺害されると、
*ad eius propinquos a [[wikt:en:Treveri#Latin|Treveris]] imperium [[wikt:en:defero#Latin|defertur]].
**トレーウェリー族の者たちにより彼の縁者たちへ支配権がもたらされる。
*Illi finitimos [[wikt:en:Germanus#Noun|Germanos]] [[wikt:en:sollicito#Latin|sollicitare]] et [[wikt:en:pecunia#Latin|pecuniam]] [[wikt:en:polliceor#Latin|polliceri]] non [[wikt:en:desisto#Latin|desistunt]].
**彼らは隣接する[[w:ゲルマニア|ゲルマーニア]]人たちをそそのかすこと、および金銭を約束することをやめない。
*Cum ab proximis [[wikt:en:impetro#Latin|impetrare]] non possent, [[wikt:en:ulterior#Latin|ulteriores]] [[wikt:en:tempto#Latin|temptant]].
**たとえ隣人たちによって(盟約を)成し遂げることができなくても、より向こう側の者たちに試みる。
:
*<!--❷-->[[wikt:en:inventus#Latin|Inventis]] [[wikt:en:nonnullus#Latin|non nullis]] civitatibus
**少なからぬ部族国家を見出して
*[[wikt:en:ius_iurandum#Latin|iure iurando]] inter se [[wikt:en:confirmo#Latin|confirmant]]
**互いに誓約し合って(支持を)固め、
*obsidibusque de pecunia [[wikt:en:caveo#Latin|cavent]];
**金銭(の保証)のために人質たちを提供する。
*[[wikt:en:Ambiorix#Latin|Ambiorigem]] sibi [[wikt:en:societas#Latin|societate]] et [[wikt:en:foedus#Latin|foedere]] [[wikt:en:adiungo#Latin|adiungunt]].
**[[w:アンビオリクス|アンビオリークス]]を自分たちにとっての連合や同盟に加盟させる。
:
*<!--❸-->Quibus rebus [[wikt:en:cognitus#Participle|cognitis]] Caesar,
**それらの事情を知るや、カエサルは、
*cum undique bellum [[wikt:en:paro#Latin|parari]] videret,
**至る所で戦争が準備されていることを見ていたので、
*[[wikt:en:Nervii#Latin|Nervios]], [[wikt:en:Aduatuci#Latin|Atuatucos]] ac [[wikt:en:Menapii#Latin|Menapios]] [[wikt:en:adiunctus#Participle|adiunctis]]
**(すなわち)[[w:ネルウィイ族|ネルウィイー族]]、アトゥアトゥキー族とメナピイー族を加盟させたうえに
*<u>Cisrhenanis</u> omnibus <u>[[wikt:en:Germanus#Noun|Germanis]]</u> esse in armis,
**レーヌス<small>〔[[w:ライン川|ライン川]]〕</small>のこちら側のすべてのゲルマーニア人たちが武装していて、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:''[[w:en:Germani cisrhenani|Germani Cisrhenani]]''「レーヌスのこちら側のゲルマーニア人」(西岸の諸部族) は西岸部族の総称。<br> ''Germani Transrhenani'' 「レーヌスの向こう側のゲルマーニア人」(東岸の諸部族) の対義語で、<br> 西岸の諸部族が東岸の諸部族を招き寄せているというのが『ガリア戦記』の主張である。)</span>
*[[wikt:en:Senones#Latin|Senones]] ad [[wikt:en:imperatum#Latin|imperatum]] non venire
**セノネース族は<small>(カエサルから)</small>命令されたことに従わずに
*et cum [[wikt:en:Carnutes#Latin|Carnutibus]] finitimisque civitatibus consilia [[wikt:en:communico#Latin|communicare]],
**カルヌーテース族および隣接する諸部族とともに謀計を共有しており、
*a [[wikt:en:Treveri#Latin|Treveris]] [[wikt:en:Germanus#Noun|Germanos]] crebris [[wikt:en:legatio#Latin|legationibus]] [[wikt:en:sollicito#Latin|sollicitari]],
**ゲルマーニア人たちがたびたびトレーウェリー族の使節団によってそそのかされていたので、
*[[wikt:en:mature#Adverb|maturius]] sibi de bello [[wikt:en:cogitandus#Latin|cogitandum]] [[wikt:en:puto#Latin|putavit]].
**<small>(カエサルは)</small>自分にとって<small>(例年)</small>より早めに戦争を計画するべきだと見なした。
<!--
<span style="color:#009900;"></span>
**:<span style="color:#009900;">(訳注:
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:
-->
===3節===
*<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/3節]] {{進捗|00%|2024-10-06}}</span>
;カエサルがネルウィイー族を降し、ガッリアの領袖たちの会合を召集する
*<!--❶-->Itaque [[wikt:en:nondum#Latin|nondum]] [[wikt:en:hiems#Latin|hieme]] [[wikt:en:confectus#Latin|confecta]]
**<small>(カエサルは)</small>こうして、まだ冬が終わらないうちに、
*proximis quattuor [[wikt:en:coactus#Latin|coactis]] legionibus
**近隣の4個[[w:ローマ軍団|軍団]]を集めて、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[ガリア戦記_第5巻#52節|第5巻52節]]で言及されたように、カエサルは、本営を置いていた<br> サマロブリーウァ(現在の[[w:アミアン|アミアン]])周辺の冬営に3個軍団、<br> およびファビウスの軍団を配置していたと思われる。)</span>
*[[wikt:en:de_improviso#Latin|de improviso]] in fines [[wikt:en:Nervii#Latin|Nerviorum]] [[wikt:en:contendo#Latin|contendit]]
**不意に[[w:ネルウィイ族|ネルウィイー族]]の領土に急いだ。
:
*<!--❷-->et, [[wikt:en:priusquam#Latin|prius quam]] illi aut [[wikt:en:convenio#Latin|convenire]] aut [[wikt:en:profugio#Latin|profugere]] possent,
**そして、彼ら<small>(の軍勢)</small>は、集結したり、あるいは逃亡したりできるより前に、
*magno [[wikt:en:pecus#Latin|pecoris]] atque hominum numero [[wikt:en:captus#Latin|capto]]
**家畜たちおよび人間たちの多数を捕らえて、
*atque ea [[wikt:en:praeda#Latin|praeda]] militibus [[wikt:en:concessus#Participle|concessa]]
**それらの戦利品を兵士たちに譲り、
*[[wikt:en:vastatus#Latin|vastatis]]<nowiki>que</nowiki> agris
**耕地を荒らして、
*in [[wikt:en:deditio#Latin|deditionem]] venire atque obsides sibi dare [[wikt:en:cogo#Latin|coegit]].
**<small>(ネルウィイー族に、ローマ勢へ)</small>降伏すること、人質たちを自分<small>〔カエサル〕</small>に供出することを強いた。
:
*<!--❸-->Eo celeriter [[wikt:en:confectus#Latin|confecto]] [[wikt:en:negotium#Latin|negotio]]
**その戦役は速やかに成し遂げられたので、
*rursus in [[wikt:en:hibernum#Latin|hiberna]] legiones [[wikt:en:reduco#Latin|reduxit]].
**再び諸軍団を冬営に連れ戻した。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:本営を置いていたサマロブリーウァ周辺の冬営。)</span>
:
*'''ガッリアの領袖たちの会合'''
*<!--❹-->[[wikt:en:concilium#Latin|Concilio]] Galliae primo [[wikt:en:ver#Latin|vere]], ut [[wikt:en:instituo#Latin|instituerat]], [[wikt:en:indictus#Participle|indicto]],
**ガッリアの<small>(領袖たちの)</small>会合を、定めていたように、春の初めに通告すると、
**:<span style="color:#009900;">(訳注:会合の集合場所は、当初は本営のあるサマロブリーウァだったであろう。)</span>
*cum reliqui praeter [[wikt:en:Senones#Latin|Senones]], [[wikt:en:Carnutes#Latin|Carnutes]] [[wikt:en:Treveri#Latin|Treveros]]<nowiki>que</nowiki> venissent,
**[[w:セノネス族|セノネース族]]、カルヌーテース族とトレーウェリー族を除いて、ほかの者たちは(会合に)現われていたので、
**:<span style="color:#009900;">(訳注:ガッリア北部では、このほかエブローネース族とメナピイー族が参加していないはずである。)</span>
*initium belli ac [[wikt:en:defectio#Latin|defectionis]] hoc esse [[wikt:en:arbitratus#Latin|arbitratus]],
**このこと<span style="color:#009900;">〔3部族の不参加〕</span>は戦争と背反の始まりであると思われて、
*ut omnia [[wikt:en:postpono#Latin|postponere]] videretur,
**<small>(他の)</small>すべて<small>(の事柄)</small>を後回しにすることと見なされるように、
*[[wikt:en:concilium#Latin|concilium]] [[wikt:en:Lutetia#Latin|Lutetiam]] [[wikt:en:Parisii#Latin|Parisiorum]] [[wikt:en:transfero#Latin|transfert]].
**会合を[[w:パリシイ族|パリースィイー族]]の(城塞都市である)[[w:ルテティア|ルーテーティア]]に移す。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:ルーテーティア Lutetia は、写本によってはルーテーキア Lutecia とも表記されている。<br> ラテン語では Lutetia Parisiorum「パリースィイー族の泥土」と呼ばれ、現在の[[w:パリ|パリ市]]である。<br> [[w:ストラボン|ストラボーン]]などによれば[[w:ケルト語|ケルト語]]でルコテキア Lukotekia と呼ばれていたらしい。)</span>
:
; セノネース族について
[[画像:Plan_de_Paris_Lutece2_BNF07710745.png|thumb|right|200px|ルテティア周辺の地図(18世紀頃)]]
*<!--❺-->[[wikt:en:confinis#Latin|Confines]] erant hi [[wikt:en:Senones#Latin|Senonibus]]
**彼ら<small>〔パリースィイー族〕</small>はセノネース族に隣接していて、
*civitatemque patrum memoria [[wikt:en:coniungo#Latin|coniunxerant]],
**父祖の伝承では<small>(セノネース族と一つの)</small>部族として結びついていた。
*sed ab hoc consilio [[wikt:en:absum#Latin|afuisse]] [[wikt:en:existimo#Latin|existimabantur]].
**しかし<small>(パリースィイー族は)</small>これらの謀計には関与していなかったと考えられていた。
:
*<!--❻-->Hac re pro [[wikt:en:suggestus#Latin|suggestu]] [[wikt:en:pronuntiatus#Latin|pronuntiata]]
**<small>(カエサルは)</small>この事を演壇の前で宣言すると、
*eodem die cum legionibus in [[wikt:en:Senones#Latin|Senones]] [[wikt:en:proficiscor#Latin|proficiscitur]]
**同日に諸軍団とともにセノネース族のところに出発して、
*magnisque itineribus eo [[wikt:en:pervenio#Latin|pervenit]].
**強行軍でもってそこに到着した。
<!--
<span style="color:#009900;"></span>
**:<span style="color:#009900;">(訳注:
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:
-->
===4節===
*<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/4節]] {{進捗|00%|2024-10-09}}</span>
;セノネース族のアッコーが造反するが、カエサルはセノネース族とカルヌーテース族を降伏させる
*<!--❶-->[[wikt:en:cognitus#Participle|Cognito]] eius [[wikt:en:adventus#Latin|adventu]],
**彼<small>〔カエサル〕</small>の到来を知ると、
*[[wikt:en:Acco#Latin|Acco]], qui princeps eius consilii fuerat,
**その画策の首謀者であった<small>(セノネース族の)</small>'''アッコー''' は、
*[[wikt:en:iubeo#Latin|iubet]] in oppida multitudinem [[wikt:en:convenio#Latin|convenire]].
**群衆に諸[[w:オッピドゥム|城塞都市]]に集結することを命じる。
:
*[[wikt:en:conans#Latin|Conantibus]], [[wikt:en:priusquam|prius quam]] id [[wikt:en:effici|effici]] posset, [[wikt:en:adsum#Latin|adesse]] Romanos [[wikt:en:nuntio#Verb|nuntiatur]].
**そのことが遂行され得るより前に、ローマ人が接近していることが、企てている者たちに報告される。
:
*<!--❷-->Necessario [[wikt:en:sententia#Latin|sententia]] [[wikt:en:desisto#Latin|desistunt]]
**<small>(セノネース族は)</small>やむなく<small>(カエサルへの謀反の)</small>意図を思いとどまって、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:necessario#Adverb|necessāriō]] = [[wikt:en:necessarie#Adverb|necessāriē]]「やむを得ず」)</span>
*legatosque [[wikt:en:deprecor#Latin|deprecandi]] causa ad Caesarem mittunt;
**<small>(恩赦を)</small>嘆願するために、使節たちをカエサルのもとへ遣わして、
*<u>adeunt</u> per [[wikt:en:Aedui#Latin|Haeduos]], quorum [[wikt:en:antiquitus|antiquitus]] erat in fide civitas.
**部族国家が昔から<small>(ローマ人に対して)</small>忠実であった[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]を介して、頼み込む。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:この部分は、セノネース族がハエドゥイー族の庇護下にあったように訳されることも多いが、<br> [[ガリア戦記 第5巻#54節|第5巻54節]]における両部族とローマ人の関係の記述を考慮して、上のように訳した<ref>[[s:en:Commentaries_on_the_Gallic_War/Book_6#4|英語版ウィキソース]]では「they make advances to him through the Aedui, whose state was from ancient times under the protection of Rome.」と英訳されている。</ref>。)</span>
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:de:adire|adeō]]「(誰かに)アプローチする」「(誰かに)頼る、頼む、懇願する」<ref>[https://www.frag-caesar.de/lateinwoerterbuch/adeo-uebersetzung-1.html adeo-Übersetzung im Latein Wörterbuch]</ref>)</span>
:
*<!--❸-->Libenter Caesar [[wikt:en:petens#Latin|petentibus]] [[wikt:en:Aedui#Latin|Haeduis]] dat [[wikt:en:venia#Latin|veniam]]
**カエサルは、懇願するハエドゥイー族に対して、喜んで<small>(セノネース族への)</small>恩赦を与え、
*[[wikt:en:excusatio#Latin|excusationem]]<nowiki>que</nowiki> accipit,
**<small>(セノネース族の)</small>弁解を受け入れる。
*quod [[wikt:en:aestivus#Latin|aestivum]] tempus [[wikt:en:instans#Latin|instantis]] belli,
**というのは、夏の時季は差し迫っている<small>(エブローネース族らとの)</small>戦争のためのものであり、
*non [[wikt:en:quaestio#Latin|quaestionis]] esse [[wikt:en:arbitror#Latin|arbitrabatur]].
**<small>(謀反人に対する)</small>尋問のためのものではないと<small>(カエサルが)</small>判断していたからである。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:エブローネース族との戦争が終わった後に、謀反人への尋問が行なわれることになる。[[#44節|44節]]参照。)</span>
:
*<!--❹-->Obsidibus [[wikt:en:imperatus#Latin|imperatis]] centum,
**<small>(カエサルは)</small>100人の人質<small>(の供出)</small>を命令すると、
*hos Haeduis [[wikt:en:custodiendus#Latin|custodiendos]] [[wikt:en:trado#Latin|tradit]].
**彼ら<small>〔人質たち〕</small>を監視するべく[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]に引き渡す。
:
*<!--❺-->[[wikt:en:eodem#Adverb|Eodem]] [[wikt:en:Carnutes#Latin|Carnutes]] legatos obsidesque [[wikt:en:mitto#Latin|mittunt]],
**ちょうどそこに、カルヌーテース族が使節たちと人質たちを遣わして、
*[[wikt:en:usus#Participle|usi]] [[wikt:en:deprecator#Latin|deprecatoribus]] [[wikt:en:Remi#Proper_noun_3|Remis]], quorum erant in [[wikt:en:clientela#Latin|clientela]];
**<small>(カルヌーテース族が)</small><ruby><rb>[[w:クリエンテス|庇護]]</rb><rp>(</rp><rt>クリエンテーラ</rt><rp>)</rp></ruby>を受ける関係にあったレーミー族を<ruby><rb>助命仲介者</rb><rp>(</rp><rt>デープレカートル</rt><rp>)</rp></ruby>として利用して、
*eadem ferunt [[wikt:en:responsum#Latin|responsa]].
**<small>(セノネース族のときと)</small>同じ返答を獲得する。
:
*<!--❻-->[[wikt:en:perago#Latin|Peragit]] [[wikt:en:concilium#Noun|concilium]] Caesar
**カエサルは<small>(ガッリア諸部族の領袖たちの)</small>会合を完了して、
*equitesque [[wikt:en:impero#Latin|imperat]] civitatibus.
**[[w:騎兵|騎兵]]たち<small>(の供出)</small>を諸部族に命令する。
<!--
<span style="color:#009900;"></span>
**:<span style="color:#009900;">(訳注:
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:
-->
===5節===
*<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/5節]] {{進捗|00%|2024-10-10}}</span>
;アンビオリークスへの策を練り、メナピイー族へ向かう
*<!--❶-->Hac parte Galliae [[wikt:en:pacatus#Latin|pacata]],
**ガッリアのこの方面が平定されたので、
**:<span style="color:#009900;">(訳注:[[#3節|3節]]~[[#4節|4節]]でネルウィイー族、セノネース族とカルヌーテース族がカエサルに降伏したことを指す。)</span>
*totus et mente et animo in bellum [[wikt:en:Treveri#Latin|Treverorum]] et [[wikt:en:Ambiorix#Latin|Ambiorigis]] [[wikt:en:insisto#Latin|insistit]].
**<small>(カエサルは)</small>全身全霊をかけて、トレーウェリー族と[[w:アンビオリクス|アンビオリークス]]との戦争に着手する。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:totus et [[wikt:en:mens#Latin|mente]] et [[wikt:en:animus#Latin|animo]] 「全身全霊をかけて」''with all his heart and soul'' )</span>
:
*<!--❷-->[[wikt:en:Cavarinus#Latin|Cavarinum]] cum equitatu [[wikt:en:Senones#Latin|Senonum]] [[wikt:en:secum#Latin|secum]] [[wikt:en:proficiscor#Latin|proficisci]] [[wikt:en:iubeo#Latin|iubet]],
**カウァリーヌスに、セノネース族の[[w:騎兵|騎兵]]隊を伴って、自分<small>〔カエサル〕</small>とともに出発することを命じる。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:''[[w:de:Cavarinus|Cavarinus]]'' は、[[ガリア戦記 第5巻#54節|第5巻54節]]で前述のように、<br> カエサルにより王位に据えられていたが、独立主義勢力により追放された。)</span>
*ne [[wikt:en:aliquis#Latin|quis]] <u>aut</u> ex huius [[wikt:en:iracundia#Latin|iracundia]] <u>aut</u> ex eo, quod [[wikt:en:mereo#Latin|meruerat]], [[wikt:en:odium#Latin|odio]] civitatis [[wikt:en:motus#Noun_2|motus]] [[wikt:en:exsistat|exsistat]].
**彼の激しやすさから、<u>あるいは</u>彼が招来していた反感から、部族国家の何らかの動乱が起こらないようにである。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:前節でアッコーら独立主義者たちがカエサルに降伏して、<br> カウァリーヌスが王位に戻されたために、<br> 部族内で反感をかっていたのであろう。)</span>
:
*<!--❸-->His rebus [[wikt:en:constitutus#Participle|constitutis]],
**これらの事柄が取り決められると、
*quod pro explorato habebat, [[wikt:en:Ambiorix#Latin|Ambiorigem]] [[wikt:en:proelium#Latin|proelio]] non esse <u>concertaturum</u>,
**<small>(カエサルは)</small>[[w:アンビオリクス|アンビオリークス]]が戦闘で激しく争うつもりではないことを、確実と見なしていたので、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:pro#Latin|pro]] [[wikt:en:exploratus#Latin|explorato]] = [[wikt:en:exploratus#Latin|exploratum]]「確かなものとして(''as certain'')」)</span>
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、χ系(A・Q)およびL・N写本では non esse <u>[[wikt:en:concertaturum|concertaturum]]</u>「激しくつもりではないこと」だが、<br> β系写本では non esse <u>[[wikt:en:contenturum|contenturum]]</u><br> B・M・S写本では non esse <u>concertaturum [[wikt:en:tenturum|tenturum]]</u> となっている。)</span>
*reliqua eius [[wikt:en:consilium#Latin|consilia]] animo [[wikt:en:circumspicio#Latin|circumspiciebat]].
**彼<small>〔アンビオリークス〕</small>のほかの計略に思いをめぐらせていた。
:
; カエサルがメナピイー族の攻略を決意
*<!--❹-->Erant [[wikt:en:Menapii#Latin|Menapii]] propinqui [[wikt:en:Eburones#Latin|Eburonum]] finibus,
**メナピイー族は[[w:エブロネス族|エブローネース族]]の領土に隣り合っていて、
*[[wikt:en:perpetuus#Latin|perpetuis]] [[wikt:en:palus#Latin|paludibus]] [[wikt:en:silva#Latin|silvis]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:munitus#Latin|muniti]],
**絶え間ない沼地と森林によって守られており、
*qui uni ex Gallia de pace ad Caesarem legatos [[wikt:en:numquam#Latin|numquam]] [[wikt:en:mitto#Latin|miserant]].
**彼らは[[w:ガリア|ガッリア]]のうちでカエサルのもとへ講和の使節たちを決して遣わさなかった唯一の者たちであった。
:
*Cum his esse [[wikt:en:hospitium#Latin|hospitium]] [[wikt:en:Ambiorix#Latin|Ambiorigi]] [[wikt:en:scio#Latin|sciebat]];
**<small>(カエサルは)</small>[[w:アンビオリクス|アンビオリークス]]が彼らのもとで歓待されていることを知っていたし、
*item per [[wikt:en:Treveri#Latin|Treveros]] venisse Germanis in [[wikt:en:amicitia#Latin|amicitiam]] [[wikt:en:cognosco#Latin|cognoverat]].
**同様にトレーウェリー族を通じて[[w:ゲルマニア|ゲルマーニア]]人と盟約を結んだことも探知していた。
:
*<!--❺-->Haec <u>prius</u> illi [[wikt:en:detrahendus#Latin|detrahenda]] auxilia [[wikt:en:existimo#Latin|existimabat]] <u>quam</u> ipsum bello [[wikt:en:lacesso#Latin|lacesseret]],
**<ruby><rb>彼奴</rb><rp>(</rp><rt>あやつ</rt><rp>)</rp></ruby><small>〔アンビオリークス〕</small>へのこれらの支援は、彼奴自身に戦争で挑みかかる<u>より前に</u>引き離されるべきだと考えていた。
*ne [[wikt:en:desperatus#Latin|desperata]] [[wikt:en:salus#Latin|salute]]
**<small>(アンビオリークスが)</small>身の安全に絶望して、
*<u>aut</u> se in [[wikt:en:Menapii#Latin|Menapios]] [[wikt:en:abdo#Latin|abderet]],
**<u>あるいは</u>メナピイー族のところに身を隠したりしないように、
*<u>aut</u> cum [[wikt:en:Transrhenanus#Latin|Transrhenanis]] [[wikt:en:congredior#Latin|congredi]] [[wikt:en:cogo#Latin|cogeretur]].
**<u>あるいは</u>レーヌス<small>〔[[w:ライン川|ライン川]]〕</small>の向こう側の者たちと合同することを強いられないように、である。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:''Germani Transrhenani'' 「レーヌスの向こう側のゲルマーニア人」(東岸の諸部族)を<br> ''[[w:en:Germani cisrhenani|Germani Cisrhenani]]''「レーヌスのこちら側のゲルマーニア人」(西岸の諸部族) が<br> 招き寄せているというのが『ガリア戦記』の主張である。)</span>
:
*<!--❻-->Hoc [[wikt:en:initus#Participle|inito]] consilio,
**この計略を決断すると、
*[[wikt:en:totus#Etymology_1|totius]] exercitus [[wikt:en:impedimentum#Latin|impedimenta]] ad [[wikt:en:Labienus#Latin|Labienum]] in [[wikt:en:Treveri#Latin|Treveros]] [[wikt:en:mitto#Latin|mittit]]
**<small>(カエサルは)</small>全軍の[[w:輜重|輜重]]を、トレーウェリー族のところにいる[[w:ティトゥス・ラビエヌス|ラビエーヌス]]のもとへ送り、
*duasque ad eum legiones [[wikt:en:proficiscor#Latin|proficisci]] [[wikt:en:iubeo#Latin|iubet]];
**2個[[w:ローマ軍団|軍団]]に彼<small>〔ラビエーヌス〕</small>のもとへ出発することを命じる。
:
*ipse cum legionibus [[wikt:en:expeditus#Participle|expeditis]] quinque in [[wikt:en:Menapii#Latin|Menapios]] [[wikt:en:proficiscor#Latin|proficiscitur]].
**<small>(カエサル)</small>自身は軽装の5個軍団とともにメナピイー族のところに出発する。
:
*<!--❼-->Illi, [[wikt:en:nullus#Adjective|nulla]] [[wikt:en:coactus#Latin|coacta]] [[wikt:en:manus#Latin|manu]],
**あの者らは、何ら手勢を集めず、
*loci [[wikt:en:praesidium#Latin|praesidio]] [[wikt:en:fretus#Adjective|freti]],
**地勢の要害を信頼して、
*in [[wikt:en:silva#Latin|silvas]] [[wikt:en:palus#Latin|paludes]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:confugio#Latin|confugiunt]]
**森林や沼地に避難して、
*[[wikt:en:suus#Latin|sua]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:eodem#Adverb|eodem]] [[wikt:en:confero#Latin|conferunt]].
**自分たちの家財を同じところに運び集める。
<!--
<span style="color:#009900;"></span>
<small></small>
**:<span style="color:#009900;">(訳注:
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:
-->
===6節===
*<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/6節]] {{進捗|00%|2024-10-20}}</span>
;メナピイー族がついにカエサルの軍門に降る
*<!--❶-->Caesar,
**カエサルは、
*[[wikt:en:partitus#Latin|partitis]] copiis cum [[wikt:en:Gaius#Latin|Gaio]] [[wikt:en:Fabius#Latin|Fabio]] legato et [[wikt:en:Marcus#Latin|Marco]] [[wikt:en:Crassus#Latin|Crasso]] [[wikt:en:quaestor#Latin|quaestore]]
**[[w:レガトゥス|副官]]である[[w:ガイウス・ファビウス|ガーイウス・ファビウス]]と[[w:クァエストル|財務官]]である[[w:マルクス・リキニウス・クラッスス (財務官)|マールクス・クラッスス]]とともに軍勢を分配して、
*celeriterque [[wikt:en:effectus#Participle|effectis]] [[wikt:en:pons#Latin|pontibus]]
**速やかに橋梁を造って、
**:<span style="color:#009900;">(訳注:橋梁は軽装の軍団兵が沼地を渡るためのものなので、丸太道のようなものであろうか。)</span>
*[[wikt:en:adeo#Verb|adit]] [[wikt:en:tripertito|tripertito]],
**三方面から<small>(メナピイー族の領土に)</small>接近して、
[[画像:GallischeHoeve.jpg|thumb|right|200px|復元されたメナピイー族の住居(再掲)]]
*[[wikt:en:aedificium#Latin|aedificia]] [[wikt:en:vicus#Latin|vicos]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:incendo#Latin|incendit]],
**建物や村々を焼き討ちして、
*magno [[wikt:en:pecus#Latin|pecoris]] atque hominum numero [[wikt:en:potior#Latin|potitur]].
**家畜や人間の多数を<small>(戦利品として)</small>獲得する。
:
*<!--❷-->Quibus rebus [[wikt:en:coactus#Participle|coacti]]
**そのような事態に強いられて、
*[[wikt:en:Menapii#Latin|Menapii]] legatos ad eum [[wikt:en:pax#Latin|pacis]] [[wikt:en:petendus#Latin|petendae]] causa [[wikt:en:mitto#Latin|mittunt]].
**メナピイー族は和平を求めるための使節たちを彼<small>〔カエサル〕</small>のもとへ遣わす。
:
*<!--❸-->Ille [[wikt:en:obses#Latin|obsidibus]] [[wikt:en:acceptus#Latin|acceptis]],
**彼<small>〔カエサル〕</small>は人質たちを受け取ると、
*hostium se [[wikt:en:habiturus#Latin|habiturum]] numero [[wikt:en:confirmo#Latin|confirmat]], si aut [[wikt:en:Ambiorix#Latin|Ambiorigem]] aut eius legatos finibus suis [[wikt:en:recipio#Latin|recepissent]].
**もし[[w:アンビオリクス|アンビオリークス]]か彼の使節を自領に迎え入れたら、自分は<small>(メナピイー族を)</small>敵として見なすだろうと断言する。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:属格の名詞 + numero「〜として」)
:
*<!--❹-->His [[wikt:en:confirmatus#Latin|confirmatis]] rebus,
**これらの事柄を確立すると、
*[[wikt:en:Commius#Latin|Commium]] [[wikt:en:Atrebas#Latin|Atrebatem]] cum [[wikt:en:equitatus#Latin|equitatu]] [[wikt:en:custos#Latin|custodis]] loco in [[wikt:en:Menapii#Latin|Menapiis]] [[wikt:en:relinquo#Latin|relinquit]];
**アトレバーテース族である[[w:コンミウス|コンミウス]]を[[w:騎兵|騎兵]]隊とともに、目付け役として、メナピイー族のところに残す。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:コンミウスは、カエサルがアトレバテース族の王にすえて、ブリタンニア遠征の先導役として遣わし、<br> カッスィウェッラウヌスの降伏の仲介を</span>果たしていた。[[ガリア戦記 第4巻#21節|第4巻21節]]・27節や[[ガリア戦記 第5巻#22節|第5巻22節]]などを参照。)
*ipse in [[wikt:en:Treveri#Latin|Treveros]] [[wikt:en:proficiscor#Latin|proficiscitur]].
**<small>(カエサル)</small>自身はトレーウェリー族のところに出発する。
<!--
<span style="color:#009900;"></span>
<small></small>
**:<span style="color:#009900;">(訳注:
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:
-->
===7節===
*<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/7節]] {{進捗|00%|2024-10-27}}</span>
[[画像:Titelberg_01.jpg|thumb|right|200px|トレーウェリー族の城砦跡(再掲)]]
;トレーウェリー族の開戦準備、ラビエーヌスの計略
*<!--❶-->Dum haec a Caesare [[wikt:en:gero#Latin|geruntur]],
**これらのことがカエサルによって遂行されている間に、
*[[wikt:en:Treveri#Latin|Treveri]] magnis [[wikt:en:coactus#Participle|coactis]] [[wikt:en:peditatus#Latin|peditatus]] [[wikt:en:equitatus#Etymology_1|equitatus]]<nowiki>que</nowiki> copiis
**トレーウェリー族は、[[w:歩兵|歩兵]]隊と[[w:騎兵|騎兵]]隊の大軍勢を徴集して、
*[[wikt:en:Labienus#Latin|Labienum]] cum una legione, quae in eorum finibus <u>[[wikt:en:hiemo#Latin|hiemaverat]]</u>,
**彼らの領土において越冬していた1個[[w:ローマ軍団|軍団]]とともに[[w:ティトゥス・ラビエヌス|ラビエーヌス]]を、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、α系写本では [[wikt:en:hiemaverat|hiemaverat]] <small>(過去完了形)</small> だが、<br> β系写本では [[wikt:en:hiemabat|hiemabat]] <small>(未完了過去形)</small> などとなっている。)</span>
*[[wikt:en:adorior#Latin|adoriri]] [[wikt:en:paro#Latin|parabant]],
**襲撃することを準備していた。
:
*<!--❷-->iamque ab eo non longius [[wikt:en:biduum#Latin|bidui]] via [[wikt:en:absum#Verb|aberant]],
**すでに、そこ<small>〔ラビエーヌスの冬営〕</small>から2日間の道のりより遠く離れていなかったが、
*cum duas venisse legiones [[wikt:en:missus#Noun_2|missu]] Caesaris [[wikt:en:cognosco#Latin|cognoscunt]].
**そのときに、カエサルが派遣した2個軍団が到着したことを知る。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[#5節|5節]]で既述のように、カエサルはラビエーヌスのところへ全軍の輜重と2個軍団を派遣していた。<br> こうして、ラビエーヌスはローマ全軍の輜重と3個軍団を任されることになった。)
:
*<!--❸-->[[wikt:en:positus#Latin|Positis]] <u>castris</u> a milibus passuum [[wikt:en:quindecim#Latin|quindecim]](XV)
**<small>(トレーウェリー勢は、ラビエーヌスの冬営から)</small>15ローママイルのところに<u>野営地</u>を設置して、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:1[[ガイウス・ユリウス・カエサルの著作/通貨・計量単位#ミーッレ・パッスーム、ミーリア(ローママイル)|ローママイル]]は約1.48 kmで、15マイルは約22 km)</span>
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[w:カストラ|カストラ]] [[wikt:en:castra#Latin|castra]] という語はローマ勢の行軍中の野営地や常設の宿営地に用いられ、<br> 非ローマ系部族の野営地に用いられることは稀である。)</span>
*auxilia [[wikt:en:Germani#Latin|Germanorum]] [[wikt:en:exspecto#Latin|exspectare]] [[wikt:en:constituo#Latin|constituunt]].
**[[w:ゲルマニア|ゲルマーニア]]人の援軍を待つことを決める。
:
*<!--❹-->[[wikt:en:Labienus#Latin|Labienus]] hostium [[wikt:en:cognitus#Participle|cognito]] consilio
**ラビエーヌスは、敵勢<small>〔トレーウェリー族〕</small>の計略を知ると、
*[[wikt:en:sperans#Latin|sperans]] [[wikt:en:temeritas#Latin|temeritate]] eorum [[wikt:en:fore#Etymology_2_2|fore]] [[wikt:en:aliqui#Latin|aliquam]] [[wikt:en:dimico#Latin|dimicandi]] facultatem,
**彼らの無謀さにより何らかの争闘する機会が生ずるであろうと期待して、
*[[wikt:en:praesidium#Latin|praesidio]] quinque(V) cohortium [[wikt:en:impedimentum#Latin|impedimentis]] [[wikt:en:relictus#Latin|relicto]]
**5個<ruby><rb>[[w:コホルス|歩兵大隊]]</rb><rp>(</rp><rt>コホルス</rt><rp>)</rp></ruby>の守備隊を[[w:輜重|輜重]]のために残し、
*cum XXV(viginti quinque) cohortibus magnoque [[wikt:en:equitatus#Etymology_1|equitatu]] contra hostem [[wikt:en:proficiscor#Latin|proficiscitur]]
**25個<ruby><rb>[[w:コホルス|歩兵大隊]]</rb><rp>(</rp><rt>コホルス</rt><rp>)</rp></ruby>および多勢の騎兵隊とともに、敵に抗して進発する。
*et mille passuum [[wikt:en:intermissus#Latin|intermisso]] spatio castra [[wikt:en:communio#Latin|communit]].
**<small>(トレーウェリー勢から)</small>1ローママイルの間隔を置いて、[[w:カストラ|陣営]]<small>〔野営地〕</small>を固める。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:1[[ガイウス・ユリウス・カエサルの著作/通貨・計量単位#ミーッレ・パッスーム、ミーリア(ローママイル)|ローママイル]]は約1.48 km)</span>
:
*<!--❺-->Erat inter [[wikt:en:Labienus#Latin|Labienum]] atque hostem [[wikt:en:difficilis#Latin|difficili]] [[wikt:en:transitus#Latin|transitu]] flumen [[wikt:en:ripa#Latin|ripis]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:praeruptus#Adjective|praeruptis]].
**ラビエーヌスと敵の間には、渡ることが困難な川が、急峻な岸とともにあった。
*Hoc <u>neque</u> ipse [[wikt:en:transeo#Latin|transire]] habebat in animo
**これを<small>(ラビエーヌス)</small>自身は渡河するつもりではなかったし、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:~ habeo in animo「~するつもりである」)</span>
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:neque ~, neque …「~でもないし、…でもない」)</span>
*<u>neque</u> hostes [[wikt:en:transiturus#Latin|transituros]] [[wikt:en:existimo#Latin|existimabat]].
**敵勢も渡河して来ないであろうと<small>(ラビエーヌスは)</small>考えていた。
:
*<!--❻-->[[wikt:en:augeo#Latin|Augebatur]] auxiliorum [[wikt:en:cotidie#Latin|cotidie]] spes.
**<small>(トレーウェリー勢にとって、ゲルマーニア人の)</small>援軍への期待は日ごとに増されるばかりであった。
*[[wikt:en:loquor#Latin|Loquitur]] <u>in consilio</u> [[wikt:en:palam#Adverb|palam]]:
**<small>(ラビエーヌスは)</small>会議において公然と<small>(以下のように)</small>述べる。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、主要写本ωでは in [[wikt:en:consilio|consilio]] だが、<br> [[ガリア戦記/注解編/写本と校訂版#Aldus|Aldus]] は in [[wikt:en:concilium#Latin|concilio]] と修正提案し、<br> Hecker は [[wikt:en:consulto#Adverb|consulto]] と修正提案している。)</span>
*[[wikt:en:quoniam#Latin|quoniam]] [[wikt:en:Germani#Latin|Germani]] [[wikt:en:adpropinquo#Latin|adpropinquare]] [[wikt:en:dico#Latin|dicantur]],
**ゲルマーニア人<small>(の軍勢)</small>が近づいていることが言われているので、
*sese suas exercitusque fortunas in [[wikt:en:dubium#Noun|dubium]] non [[wikt:en:devocaturus#Latin|devocaturum]]
**自分は自らと軍隊の命運を不確実さの中に引きずり込むことはないであろうし、
*et postero die prima luce castra [[wikt:en:moturus#Latin|moturum]].
**翌日の夜明けには陣営を引き払うであろう。
:
*<!--❼-->Celeriter haec ad hostes [[wikt:en:defero#Latin|deferuntur]],
**これら<small>(のラビエーヌスの発言)</small>は速やかに敵勢<small>〔トレーウェリー族〕</small>のもとへ報じられたので、
*ut ex magno Gallorum equitum numero [[wikt:en:nonnullus#Latin|non nullos]] <u>Gallos</u> [[wikt:en:gallicus#Latin|Gallicis]] rebus [[wikt:en:faveo#Latin|favere]] natura [[wikt:en:cogo#Latin|cogebat]].
**ガッリア人の境遇を想う気質が、<small>(ローマ側)</small>ガッリア人騎兵の多数のうちの若干名を励ましていたほどである。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部の [[wikt:en:Gallus#Noun|Gallos]] は α系写本の記述で、β系写本では欠く。)</span>
:
*<!--❽-->[[wikt:en:Labienus#Latin|Labienus]], noctu tribunis militum primisque ordinibus <u>convocatis</u>,
**ラビエーヌスは、夜間に<ruby><rb>[[w:トリブヌス・ミリトゥム|兵士長官]]</rb><rp>(</rp><rt>トリブヌス・ミリトゥム</rt><rp>)</rp></ruby>たちと第一序列(の[[w:ケントゥリオ|百人隊長]])たちを召集すると、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:1個軍団当たりの<ruby><rb>[[w:トリブヌス・ミリトゥム|兵士長官]]</rb><rp>(</rp><rt>トリブヌス・ミリトゥム</rt><rp>)</rp></ruby> の定員は計6名。<br> 第一序列の<ruby><rb>[[w:ケントゥリオ|百人隊長]]</rb><rp>(</rp><rt>ケントゥリオー</rt><rp>)</rp></ruby>たち primorum ordinum centuriones は、軍団内における[[w:下士官|下士官]]のトップであり、<br> 第一<ruby><rb>[[w:コホルス|歩兵大隊]]</rb><rp>(</rp><rt>コホルス</rt><rp>)</rp></ruby> においては定員5名だが、<br> ほかの歩兵大隊においては定員6名であった。)</span>
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、α系写本では [[wikt:en:convocatus#Latin|convocatis]] だが、<br> β系写本では [[wikt:en:coactus#Participle|coactis]] などとなっている。)</span>
*quid sui sit consilii, [[wikt:en:propono#Latin|proponit]]
**自分の計略がいかなるものであるかを呈示して、
*et, quo facilius hostibus [[wikt:en:timor#Latin|timoris]] [[wikt:en:det#Latin|det]] [[wikt:en:suspicio#Noun|suspicionem]],
**それ<small>〔計略〕</small>によって、よりたやすく敵勢に<small>(ローマ勢の)</small>恐怖心という推測を起こすべく、
*maiore [[wikt:en:strepitus#Latin|strepitu]] et [[wikt:en:tumultus#Latin|tumultu]], quam populi Romani fert [[wikt:en:consuetudo#Latin|consuetudo]]
**ローマ国民の習慣が引き起こすよりもより大きな騒音や喧騒をもって
*castra [[wikt:en:moveo#Latin|moveri]] [[wikt:en:iubeo#Latin|iubet]].
**陣営を引き払うことを命じる。
*His rebus fugae [[wikt:en:similis#Latin|similem]] [[wikt:en:profectio#Latin|profectionem]] [[wikt:en:efficio#Latin|effecit]].
**<small>(ラビエーヌスは)</small>これらの事によって、逃亡に似た進発を実現した。
:
*<!--❾-->Haec quoque per [[wikt:en:explorator#Latin|exploratores]]
**これらのこともまた、<small>(トレーウェリー勢の)</small>斥候たちを通じて、
*ante [[wikt:en:lux#Latin|lucem]] in tanta [[wikt:en:propinquitas#Latin|propinquitate]] castrorum ad hostes [[wikt:en:defero#Latin|deferuntur]].
**夜明け前には、陣営のこれほどの近さにより、敵勢へ報じられる。
<!--
<span style="color:#009900;"></span>
<small></small>
**:<span style="color:#009900;">(訳注:
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:
-->
===8節===
*<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/8節]] {{進捗|00%|2024-10-28}}</span>
;ラビエーヌスがトレーウェリー族を降す
:
; トレーウェリー勢が、渡河してラビエーヌスの軍勢に攻めかかろうとする
*<!--❶-->[[wikt:en:vix#Latin|Vix]] [[wikt:en:agmen#Latin|agmen]] [[wikt:en:novissimus#Latin|novissimum]] extra [[wikt:en:munitio#Latin|munitiones]] [[wikt:en:procedo#Latin|processerat]],
**<small>(ローマ勢の)</small>行軍隊列の最後尾が防塁の外側にほぼ進み出ようとしていた、
*cum Galli [[wikt:en:cohortatus#Latin|cohortati]] inter se, ne [[wikt:en:speratus#Latin|speratam]] [[wikt:en:praeda#Latin|praedam]] ex manibus [[wikt:en:dimitto#Latin|dimitterent]]
**そのときにガッリア人たちは、期待していた戦利品を<small>(彼らの)</small>手から逸しないように、互いに鼓舞し合って、
*── longum esse, [[wikt:en:perterritus#Latin|perterritis]] Romanis [[wikt:en:Germani#Proper_noun|Germanorum]] auxilium [[wikt:en:exspecto#Latin|exspectare]];
**── ローマ人が<ruby><rb>怖気</rb><rp>(</rp><rt>おじけ</rt><rp>)</rp></ruby>ているのに、[[w:ゲルマニア|ゲルマーニア]]人の支援を待つことは悠長なものである。
*neque suam [[wikt:en:patior#Latin|pati]] [[wikt:en:dignitas#Latin|dignitatem]],
**<small>(以下のことは)</small>自分たちの尊厳が耐えられない。
*ut [[wikt:en:tantus#Latin|tantis]] copiis [[wikt:en:tam#Latin|tam]] [[wikt:en:exiguus#Latin|exiguam]] manum, praesertim [[wikt:en:fugiens#Latin|fugientem]] atque [[wikt:en:impeditus#Latin|impeditam]],
**これほどの大軍勢で<small>(ローマの)</small>それほどの貧弱な手勢を、特に逃げ出して<small>(荷物で)</small>妨げられている者たちを
*[[wikt:en:adorior#Latin|adoriri]] non [[wikt:en:audeo#Latin|audeant]] ──
**あえて襲撃しないとは──<small>(と鼓舞し合って)</small>
*flumen [[wikt:en:transeo#Latin|transire]] et iniquo loco [[wikt:en:committo#Latin|committere]] proelium non [[wikt:en:dubito#Latin|dubitant]].
**川を渡って<small>(切り立った岸を登りながら)</small>不利な場所で交戦することをためらわない。
:
; ラビエーヌス勢が怖気を装いながら、そろりそろりと進む
*<!--❷-->Quae fore [[wikt:en:suspicatus#Latin|suspicatus]] [[wikt:en:Labienus#Latin|Labienus]],
**こうしたことが生じるであろうと想像していた[[w:ティトゥス・ラビエヌス|ラビエーヌス]]は、
*ut omnes citra flumen [[wikt:en:elicio#Latin|eliceret]],
**<small>(敵の)</small>総勢を川のこちら側に誘い出すように、
*[[wikt:en:idem#Latin|eadem]] [[wikt:en:usus#Participle|usus]] [[wikt:en:simulatio#Latin|simulatione]] itineris
**行軍の同じ見せかけを用いて、
**:<span style="color:#009900;">(訳注:前節で語られたように、<ruby><rb>怖気</rb><rp>(</rp><rt>おじけ</rt><rp>)</rp></ruby>て今にも逃げ出しそうな風に装いながらの行軍。)</span>
*[[wikt:en:placide#Adverb|placide]] [[wikt:en:progredior#Latin|progrediebatur]].
**穏やかに前進していた。
:
; ラビエーヌスが全軍の兵を叱咤激励する
*<!--❸-->Tum [[wikt:en:praemissus#Latin|praemissis]] paulum impedimentis
**それから、[[w:輜重|輜重]]<small>(の隊列)</small>を少し先に遣わして、
*atque in [[wikt:en:tumulus#Latin|tumulo]] [[wikt:en:quidam#Adjective|quodam]] [[wikt:en:collocatus#Latin|conlocatis]],
**とある高台に配置すると、
*<!--▲直接話法--><span style="background-color:#e8e8ff;"><span style="color:#009900;">«</span> [[wikt:en:habetis|Habetis]],<span style="color:#009900;">»</span></span> [[wikt:en:inquam#Latin|inquit]], <!--▲直接話法--><span style="background-color:#e8e8ff;"><span style="color:#009900;">«</span>milites, quam [[wikt:en:petistis|petistis]], [[wikt:en:facultas#Latin|facultatem]]; </span>
**<small>(ラビエーヌスは)</small>「兵士らよ、<small>(諸君は)</small>求めていた機会を得たぞ」と言った。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:以下、<!--▲直接話法--><span style="background-color:#e8e8ff;"> <span style="color:#009900;">«</span> ~ <span style="color:#009900;">»</span> </span> の箇所は、直接話法で記されている。)</span>
*<!--▲直接話法--><span style="background-color:#e8e8ff;">hostem [[wikt:en:impeditus#Latin|impedito]] atque [[wikt:en:iniquus#Latin|iniquo]] loco [[wikt:en:tenetis|tenetis]]: </span>
**「<small>(諸君は)</small>敵を<small>(川岸で)</small>妨げられた不利な場所に追いやった。」
*<!--❹--><!--▲直接話法--><span style="background-color:#e8e8ff;">[[wikt:en:praestate|praestate]] eandem nobis [[wikt:en:dux#Latin|ducibus]] [[wikt:en:virtus#Latin|virtutem]], quam saepe numero [[wikt:en:imperator#Latin|imperatori]] [[wikt:en:praestitistis|praestitistis]], </span>
**「我々<ruby><rb>将帥</rb><rp>(</rp><rt>ドゥクス</rt><rp>)</rp></ruby>らに、<small>(諸君が)</small>しばしば<ruby><rb>将軍</rb><rp>(</rp><rt>インペラートル</rt><rp>)</rp></ruby><small>〔カエサル〕</small>に見せて来たのと同じ武勇を見せてくれ。」
*<!--▲直接話法--><span style="background-color:#e8e8ff;">atque illum adesse et haec [[wikt:en:coram#Adverb|coram]] [[wikt:en:cerno#Latin|cernere]] [[wikt:en:existimate|existimate]].<span style="color:#009900;">»</span></span>
**「彼<small>〔カエサル〕</small>が訪れて、これ<small>〔武勇〕</small>を目の前で見ていると思ってくれ。」
:
; ラビエーヌスが軍を反転させて攻撃態勢を整える
*<!--❺-->Simul signa ad hostem [[wikt:en:converto#Latin|converti]] aciemque [[wikt:en:dirigo#Latin|dirigi]] [[wikt:en:iubeo#Latin|iubet]],
**同時に、軍旗が敵の方へ向きを変えられることと、戦列が整えられること、を命じる。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:軍勢が敵側へ向けて反転して、戦列を整えること、を命じた。)</span>
[[画像:Pilensalve.jpg|thumb|right|250px|[[w:ピルム|ピールム]](投槍)を投げるローマ軍兵士(帝政期)の再演]]
*et paucis [[wikt:en:turma#Latin|turmis]] praesidio ad impedimenta [[wikt:en:dimissus#Latin|dimissis]],
**かつ若干の<ruby><rb>[[w:トゥルマ|騎兵小隊]]</rb><rp>(</rp><rt>トゥルマ</rt><rp>)</rp></ruby>を輜重のための守備隊として送り出して、
**:<span style="color:#009900;">(訳注:騎兵小隊 turma はローマ軍の<br> [[w:アウクシリア|支援軍]]における中規模の編成単位で、<br> 各30騎ほどと考えられている。)</span>
*reliquos equites ad latera [[wikt:en:dispono#Latin|disponit]].
**残りの[[w:騎兵|騎兵]]たちを<small>(軍勢の)</small>両側面へ分置する。
:
; ラビエーヌス勢が喊声を上げて、投げ槍を投げ始める
*<!--❻-->Celeriter nostri, clamore [[wikt:en:sublatus#Latin|sublato]], [[wikt:en:pilum#Latin|pila]] in hostes [[wikt:en:inmitto#Latin|inmittunt]].
**我が方<small>〔ローマ勢〕</small>は、雄叫びを上げると、速やかに<ruby><rb>[[w:ピルム|投げ槍]]</rb><rp>(</rp><rt>ピールム</rt><rp>)</rp></ruby>を敵勢へ放り入れる。
:
; 不意を突かれたトレーウェリー勢が、一目散に逃げ出して、最寄りの森林を目指す
*Illi, ubi [[wikt:en:praeter#Latin|praeter]] spem, quos <span style="color:#009900;"><modo></span> [[wikt:en:fugio#Latin|fugere]] [[wikt:en:credo#Latin|credebant]], [[wikt:en:infestus#Latin|infestis]] signis ad se ire viderunt,
**<span style="font-size:11pt;">彼らは、期待に反して、<span style="color:#009900;"><ただ></span>逃げていると信じていた者たちが、軍旗を攻勢にして自分らの方へ来るのを見るや否や、</span>
*[[wikt:en:impetus#Latin|impetum]] <u>modo</u> ferre non potuerunt
**<small>(ローマ勢の)</small>突撃を持ちこたえることができずに、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部 modo は主要写本ωではこの位置にあるが、<br> 上記の <modo> に移す修正提案がある。)</span>
*ac primo [[wikt:en:concursus#Noun|concursu]] in fugam [[wikt:en:coniectus#Participle|coniecti]]
**最初の猛攻で敗走に追い込まれて、
*proximas silvas [[wikt:en:peto#Latin|petierunt]].
**近隣の森を目指した。
:
; ラビエーヌス勢が、トレーウェリー勢の多数を死傷させ、部族国家を奪回する
*<!--❼-->Quos [[wikt:en:Labienus#Latin|Labienus]] equitatu [[wikt:en:consectatus#Latin|consectatus]],
**<small>(敗走した)</small>その者たちを、ラビエーヌスは騎兵隊で追撃して、
*magno numero [[wikt:en:interfectus#Latin|interfecto]],
**多数の者を<ruby><rb>殺戮</rb><rp>(</rp><rt>さつりく</rt><rp>)</rp></ruby>して、
*compluribus [[wikt:en:captus#Latin|captis]],
**かなりの者たちを捕らえて、
*paucis post diebus civitatem recepit.
**数日後に<small>(トレーウェリーの)</small>部族国家を<small>(蜂起の前の状態に)</small>戻した。
:
[[画像:Bund-ro-altburg.jpg|thumb|right|180px|トレーウェリー族の再現された住居(再掲)]]
[[画像:Trier_Kaiserthermen_BW_1.JPG|thumb|right|180px|トレーウェリー族(Treveri)の名を現代に伝えるドイツの[[w:トリーア|トリーア市]](Trier)に残るローマ時代の浴場跡]]
; ゲルマーニア人の援軍が故国へ引き返す
*Nam [[wikt:en:Germani#Latin|Germani]], qui auxilio veniebant,
**なぜなら、援軍として来ようとしていたゲルマーニア人たちは、
*[[wikt:en:perceptus#Latin|percepta]] [[wikt:en:Treveri#Latin|Treverorum]] fuga
**トレーウェリー族の敗走を把握したので、
*sese [[wikt:en:domus#Latin|domum]] <u>receperunt</u>.
**故国に撤退していった。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、α系写本では [[wikt:en:receperunt|receperunt]] だが、<br> β系写本では [[wikt:en:contulerunt|contulerunt]] となっている。)</span>
:
; インドゥーティオマールスの残党がゲルマーニアへ出奔する
*<!--❽-->Cum his [[wikt:en:propinquus#Latin|propinqui]] [[wikt:en:Indutiomarus#Latin|Indutiomari]],
**彼ら<small>〔ゲルマーニア人〕</small>とともに、インドゥーティオマールスの縁者たちは、
*qui [[wikt:en:defectio#Latin|defectionis]] [[wikt:en:auctor#Latin|auctores]] fuerant,
**その者らは<small>(トレーウェリー族におけるカエサルへの)</small>謀反の張本人であったが、
*[[wikt:en:comitatus#Participle|comitati]] eos ex civitate [[wikt:en:excedo#Latin|excesserunt]].
**彼ら<small>〔ゲルマーニア人〕</small>を伴って、部族国家から出て行った。
:
; カエサルとローマに忠節なキンゲトリークスに、部族の統治権が託される
*<!--❾-->[[wikt:en:Cingetorix#Latin|Cingetorigi]],
**キンゲトリークスに対しては、
*quem ab initio [[wikt:en:permaneo#Latin|permansisse]] in [[wikt:en:officium#Latin|officio]] [[wikt:en:demonstravimus|demonstravimus]],
**──その者が当初から<small>(ローマへの)</small>忠義に留まり続けたことは前述したが──
**:<span style="color:#009900;">(訳注:キンゲトリークスについては、[[ガリア戦記 第5巻#3節|第5巻3節]]~4節・[[ガリア戦記 第5巻#56節|56節]]~57節で述べられている。)</span>
*[[wikt:en:principatus#Latin|principatus]] atque [[wikt:en:imperium#Latin|imperium]] est traditum.
**首長の地位と支配権が託された。
<!--
<span style="color:#009900;"></span>
<span style="font-size:11pt;"></span>
<small></small>
**:<span style="color:#009900;">(訳注:
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:
-->
==第二次ゲルマーニア遠征==
===9節===
*<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/9節]] {{進捗|00%|2024-11-06}}</span>
;再びレーヌスを渡河、ウビイー族を調べる
*<!--❶-->Caesar, [[wikt:en:postquam#Latin|postquam]] ex [[wikt:en:Menapii#Latin|Menapiis]] in [[wikt:en:Treveri#Latin|Treveros]] venit,
**カエサルは、メナピイー族のところからトレーウェリー族のところに来た後で、
*duabus de causis [[wikt:en:Rhenus#Latin|Rhenum]] [[wikt:en:transeo#Latin|transire]] [[wikt:en:constituo#Latin|constituit]];
**二つの理由からレーヌス<small>〔[[w:ライン川|ライン川]]〕</small>を渡ることを決めた。
:
*<!--❷-->quarum una erat, quod <span style="color:#009900;"><Germani></span> auxilia contra se [[wikt:en:Treveri#Latin|Treveris]] [[wikt:en:mitto#Latin|miserant]];
**その<small>(理由の)</small>一つは、<span style="color:#009900;"><ゲルマーニア人が></span>自分<small>〔カエサル〕</small>に対抗して、トレーウェリー族に援軍を派遣していたことであった。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:<[[wikt:en:Germani#Latin|Germani]]> は、主要写本ωにはなく、[[ガリア戦記/注解編/写本と校訂版#Hotomanus|Hotomanus]] による挿入提案。)</span>
*<span style="color:#009900;">(quarum)</span> altera <span style="color:#009900;">(erat)</span>, ne ad eos [[wikt:en:|Ambiorix]] [[wikt:en:receptus#Noun|receptum]] haberet.
**もう一つ<small>(の理由)</small>は、彼らのもとへ[[w:アンビオリクス|アンビオリークス]]が避難所を持たないように、ということであった。
:
[[画像:Caesar's Rhine Crossing.jpg|thumb|right|250px|カエサルがライン川に橋を架けたとされる有力な地点の図示。ライン川と[[w:モーゼル川|モーゼル川]]の合流点にある[[w:コブレンツ|コブレンツ]]([[w:en:Koblenz|Koblenz]])と下流の[[w:アンダーナッハ|アンダーナッハ]]([[w:en:Andernach|Andernach]])との間の[[w:ノイヴィート|ノイヴィート]]([[w:en:Neuwied|Neuwied]])辺りが有力な地点の一つとされる。'''([[ガリア戦記_第4巻#17節|第4巻17節]]の図を再掲)''']]
*<!--❸-->His [[wikt:en:constitutus#Participle|constitutis]] rebus,
**これらの事柄を決定すると、
*[[wikt:en:paulum#Adverb|paulum]] supra eum locum, [[wikt:en:quo#Adverb|quo]] ante exercitum [[wikt:en:traduco#Latin|traduxerat]],
**<u>以前に軍隊を渡らせていた場所</u>の少し上流に、
*facere [[wikt:en:pons#Latin|pontem]] [[wikt:en:instituo#Latin|instituit]].
**橋を造ることを決意する。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:[[ガリア戦記_第4巻#17節|第4巻17節]] でカエサルが[[w:ライン川|ライン川]]に架橋した場所のこと。<br> 第4巻の'''[[ガリア戦記_第4巻#コラム「ゲルマーニア両部族が虐殺された場所はどこか?」|コラム]]''' や [[ガリア戦記_第4巻#17節|第4巻17節]]の図で説明したように、<br> カエサルの最初の架橋地点には異論もあるが、<br> 今回の架橋地点がトレーウェリー族領であった<br> [[w:モーゼル川|モーゼル川]]渓谷から近かったであろうことから有力視される。)</span>
:
*<!--❹-->[[wikt:en:notus#Latin|Nota]] atque [[wikt:en:institutus#Latin|instituta]] ratione,
**経験しかつ建造していた方法で、
*magno militum [[wikt:en:studium#Latin|studio]]
**兵士たちの大きな熱意により
*paucis diebus [[wikt:en:opus#Latin|opus]] [[wikt:en:efficio#Latin|efficitur]].
**わずかな日数で作業が完遂される。
:
*<!--❺-->[[wikt:en:firmus#Latin|Firmo]] in [[wikt:en:Treveri#Latin|Treveris]] ad pontem praesidio [[wikt:en:relictus#Latin|relicto]],
**トレーウェリー族領内の橋のたもとへ強力な守備隊を残して、
*ne [[wikt:en:aliquis#Latin|quis]] ab his subito [[wikt:en:motus#Noun_2|motus]] <u>oreretur</u>,
**──彼ら<small>〔トレーウェリー族〕</small>による何らかの動乱が不意に起こされないためであるが、──
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、χ系・B・ρ系写本では [[wikt:en:oreretur|oreretur]]、<br> φ系・π系写本では [[wikt:en:oriretur|oriretur]] だが、語形の相異。)</span>
*reliquas copias [[wikt:en:equitatus#Noun|equitatum]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:traduco#Latin|traducit]].
**残りの軍勢と騎兵隊を<small>(レーヌス川の東岸へ)</small>渡らせる。
:
*<!--❻-->[[wikt:en:Ubii#Latin|Ubii]], qui ante obsides [[wikt:en:dederant|dederant]] atque in [[wikt:en:deditio#Latin|deditionem]] venerant,
**ウビイー族は、以前に<small>(カエサルに対して)</small>人質たちを供出していて、降伏していたが、
**:<span style="color:#009900;">(訳注:この事はすでに[[ガリア戦記 第4巻#16節|第4巻16節]]で述べられている。)</span>
*<u>[[wikt:en:purgandus#Latin|purgandi]] sui</u> causa ad eum legatos mittunt,
**自分たちの申し開きをすることのために、彼<small>〔カエサル〕</small>のもとへ使節たちを遣わして、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、α系写本では [[wikt:en:purgandi|purgandi]] [[wikt:en:sui#Pronoun|sui]] だが、<br> β系写本では purgandi のみ。)</span>
*qui [[wikt:en:doceant|doceant]],
**<small>(以下のように)</small>説かせた。
*neque <u>auxilia ex sua civitate</u> in [[wikt:en:Treveri#Latin|Treveros]] [[wikt:en:missus#Participle|missa]]
**自分たちの部族から援軍をトレーウェリー族のところに派遣してもいないし、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、χ系・B・M・S写本では [[wikt:en:auxilia#Latin|auxilia]] ex sua [[wikt:en:civitate|civitate]]、<br> L・N・β系写本では ex sua civitate auxilia の語順になっている。)</span>
*neque ab se [[wikt:en:fides#Latin|fidem]] [[wikt:en:laesus#Latin|laesam]]:
**自分らにより<small>(ローマへの)</small>信義を傷つけてもいない、と。
:
*<!--❼-->[[wikt:en:peto#Latin|petunt]] atque [[wikt:en:oro#Latin|orant]],
**<small>(ウビイー族の使節たちは、以下のように)</small>求め、かつ願った。
*ut sibi [[wikt:en:parco#Latin|parcat]],
**自分たちを容赦し、
*ne [[wikt:en:communis#Latin|communi]] [[wikt:en:odium#Latin|odio]] [[wikt:en:Germani#Latin|Germanorum]] [[wikt:en:innocens#Latin|innocentes]] pro [[wikt:en:nocens#Latin|nocentibus]] poenas [[wikt:en:pendo#Latin|pendant]];
**[[w:ゲルマニア|ゲルマーニア]]人一般への憎しみから、潔白な者たちが加害者たちのために罰を償うことがないように、と。
*si [[wikt:en:amplius|amplius]] obsidum <u>vellet, dare</u> [[wikt:en:polliceor#Latin|pollicentur]].
**もし、より多くの人質を欲するのなら、供出することを約束する、と。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、α系写本では [[wikt:en:vellet#Latin|vellet]] <small>(未完了過去・接続法)</small> [[wikt:en:dare#Latin|dare]] <small>(現在・能動・不定)</small> だが、<br> β系写本では [[wikt:en:velit#Latin|velit]] <small>(現在・接続法)</small> [[wikt:en:dari#Latin|dari]] <small>(現在・受動・不定法)</small> となっている。)</span>
:
*<!--❽-->Cognita Caesar causa
**カエサルは事情を調査して、
*<u>repperit</u> ab [[wikt:en:Suebi#Latin|Suebis]] auxilia [[wikt:en:missus#Participle|missa]] esse;
**スエービー族により<small>(トレーウェリー族に)</small>援軍が派遣されていたことを見出した。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、主要写本 ω では [[wikt:en:repperit|repperit]] <small>(完了形)</small> だが、<br> 近世以降の印刷本 [[ガリア戦記/注解編/写本と校訂版#クリティカル・アパラトゥスとその略号|edd.]] では [[wikt:en:reperit|reperit]] <small>(現在形)</small> となっている。)</span>
:
*[[wikt:en:Ubii#Latin|Ubiorum]] [[wikt:en:satisfactio#Latin|satisfactionem]] <u>accepit</u>,
**ウビイー族の弁解を受け入れて、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、主要写本 ω では [[wikt:en:accepit|accepit]] <small>(完了形)</small> だが、<br> [[ガリア戦記/注解編/写本と校訂版#Davisius|Davisius]] の修正提案では [[wikt:en:accipit|accipit]] <small>(現在形)</small> となっている。)</span>
*[[wikt:en:aditus#Noun_2|aditus]] viasque in [[wikt:en:Suebi#Latin|Suebos]] [[wikt:en:perquiro#Latin|perquirit]].
**スエービー族のところに出入りする道筋を問い質す。
<!--
<span style="color:#009900;"></span>
<small></small>
**:<span style="color:#009900;">(訳注:
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:
-->
===10節===
*<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/10節]] {{進捗|00%|2024-11-16}}</span>
;ウビイー族を通じてスエービー族の動静を探る
*<!--❶-->Interim paucis post diebus fit ab [[wikt:en:Ubii#Latin|Ubiis]] certior,
**数日後の間に、ウビイー族によって報告されたことには、
*[[wikt:en:Suebi#Latin|Suebos]] omnes in unum locum copias [[wikt:en:cogo#Latin|cogere]]
**スエービー族は、すべての軍勢を一か所に集めて、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:後述するように、これはカッティー族 [[w:en:Chatti|Chatti]] のことであろう。)</span>
*atque iis [[wikt:en:natio#Latin|nationibus]], quae sub eorum sint imperio,
**彼らの支配下にある種族たちに
*[[wikt:en:denuntio#Latin|denuntiare]], ut auxilia [[wikt:en:peditatus#Latin|peditatus]] [[wikt:en:equitatus#Noun|equitatus]]<nowiki>que</nowiki> mittant.
**[[w:歩兵|歩兵]]隊と[[w:騎兵|騎兵]]隊の援軍を派遣するように布告する。
:
*<!--❷-->His [[wikt:en:cognitus#Participle|cognitis]] rebus,
**<small>(カエサルは)</small>これらの事情を知ると、
*rem [[wikt:en:frumentarius#Latin|frumentariam]] [[wikt:en:provideo#Latin|providet]],
**糧食調達を手配して、
*castris idoneum locum [[wikt:en:deligo#Latin|deligit]];
**[[w:カストラ|陣営]]<small>(を設置するために)</small>に適切な場所を選ぶ。
:
*[[wikt:en:Ubii#Latin|Ubiis]] [[wikt:en:impero#Latin|imperat]], ut [[wikt:en:pecus#Latin|pecora]] [[wikt:en:deduco#Latin|deducant]] suaque omnia ex agris in oppida [[wikt:en:confero#Latin|conferant]],
**ウビイー族には、家畜を連れ去り、自分らの一切合財を農村地帯から<ruby><rb>[[w:オッピドゥム|城塞都市]]</rb><rp>(</rp><rt>オッピドゥム</rt><rp>)</rp></ruby>に運び集めるように命令する。
*[[wikt:en:sperans#Latin|sperans]] [[wikt:en:barbarus#Adjective|barbaros]] atque [[wikt:en:imperitus#Latin|imperitos]] homines
**<small>(カエサルが)</small>期待したのは、野蛮で未熟な連中が
*[[wikt:en:inopia#Noun_2|inopia]] [[wikt:en:cibaria#Latin|cibariorum]] [[wikt:en:adductus#Latin|adductos]]
**食糧の欠乏に動かされて、
*ad [[wikt:en:iniquus#Latin|iniquam]] [[wikt:en:pugno#Latin|pugnandi]] [[wikt:en:condicio#Latin|condicionem]] posse [[wikt:en:dēdūcō|deduci]];
**不利な条件のもとで戦うことにミスリードされ得ることであった。
:
; ウビイー族の間者たちを通じて、スエービー族の奥地への撤収が報じられる
*<!--❸-->[[wikt:en:mando#Latin|mandat]], ut [[wikt:en:creber#Latin|crebros]] [[wikt:en:explorator#Latin|exploratores]] in [[wikt:en:Suebi#Latin|Suebos]] [[wikt:en:mitto#Latin|mittant]] [[wikt:en:quis#Pronoun|quae]]<nowiki>que</nowiki> apud eos [[wikt:en:gero#Latin|gerantur]] [[wikt:en:cognosco#Latin|cognoscant]].
**多数の斥候をスエービー族領に遣わして、彼らのもとで遂行されていることを探知するように<small>(ウビイー族に)</small>委ねる。
:
*<!--❹-->Illi [[wikt:en:imperatum#Latin|imperata]] faciunt
**彼ら<small>〔ウビイー族〕</small>は、命令されたことを実行して、
*et paucis diebus [[wikt:en:intermissus#Latin|intermissis]] [[wikt:en:refero#Latin|referunt]]:
**わずかな日々を間に置いて(以下のことを)報告する。
*[[wikt:en:Suebi#Latin|Suebos]] omnes, posteaquam [[wikt:en:certior#Latin|certiores]] [[wikt:en:nuntius#Latin|nuntii]] de exercitu Romanorum venerint,
**スエービー族総勢は、ローマ人の軍隊についてより確実な報告がもたらされた後で、
*cum omnibus suis [[wikt:en:socius#Noun_2|sociorum]]<nowiki>que</nowiki> copiis, quas [[wikt:en:coegissent|coegissent]],
**自分たちの総勢と、集結していた同盟者の軍勢とともに、
*[[wikt:en:penitus#Adverb|penitus]] ad [[wikt:en:extremus#Adjective|extremos]] fines se [[wikt:en:recepisse#Latin|recepisse]];
**領土の最も遠い奥深くまで撤退した、ということだった。。
:
*<!--❺-->silvam esse ibi [[wikt:en:infinitus#Latin|infinita]] magnitudine, quae [[wikt:en:appellatur|appellatur]] <u>Bacenis</u>;
**そこには、'''バケーニス'''と呼ばれている限りない大きさの森林がある。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:バケーニス [[wikt:en:Bacenis#Latin|Băcēnis]] は、ギリシア語で Βακέννη とも表記されるが、どこなのかは諸説ある。<br> ①ドイツ西部[[w:ヘッセン州|ヘッセン州]]にあったブコニアの森 ''[[w:de:Buchonia|Buchonia]]; [[w:fr:Forêt de Buconia|Buconia]]'' は有力。<br> ②ドイツの奥地・中東部の[[w:テューリンゲン州|テューリンゲン州]]にある[[w:テューリンゲンの森|テューリンゲンの森]]という説<ref>[[s:de:RE:Bacenis silva]], [[wikt:de:Bacenis]] 等を参照。</ref><br> ③ドイツ西部[[w:ラインラント=プファルツ州|ラインラント=プファルツ州]]ライン川沿岸のニールシュタイン [[w:en:Nierstein|Nierstein]] 説、<br> などがある。史実としてスエービーという部族連合が居住していたのはテューリンゲンであろうが、<br> ライン川からはあまりにも遠すぎる。)</span>
*hanc longe <u>introrsus</u> [[wikt:en:pertineo#Latin|pertinere]]
**これ<small>〔森林〕</small>は、はるか内陸に及んでいて、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:[[wikt:en:introrsus|introrsus]] = [[wikt:en: introrsum#Latin|introrsum]]「内部へ」)</span>
*et pro [[wikt:en:nativus#Latin|nativo]] [[wikt:en:murus#Latin|muro]] [[wikt:en:obiectus#Participle|obiectam]]
**天然の防壁として横たわっており、
*[[wikt:en:Cheruscos|Cheruscos]] ab [[wikt:en:Suebi#Latin|Suebis]] [[wikt:en:Suebi#Latin|Suebosque]] ab [[wikt:en:Cheruscis|Cheruscis]] [[wikt:en:iniuria#Latin|iniuriis]] [[wikt:en:incursio#Latin|incursionibus]]<nowiki>que</nowiki> [[wikt:en:prohibeo#Latin|prohibere]]:
**ケールスキー族をスエービー族から、スエービー族をケールスキー族から、無法行為や襲撃から防いでいる。
*ad eius [[wikt:en:initium#Latin|initium]] silvae [[wikt:en:Suebi#Latin|Suebos]] [[wikt:en:adventus#Latin|adventum]] Romanorum [[wikt:en:exspecto#Latin|exspectare]] [[wikt:en:constituo#Latin|constituisse]].
**その森の始まりのところで、スエービー族はローマ人の到来を待ち構えることを決定した。
<!--
<span style="color:#009900;"></span>
<small></small>
**:<span style="color:#009900;">(訳注:
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:
-->
<div style="border:solid #999 1px;background:#feedff;max-width:80%;padding:0.25em 1em;margin:0.5em auto;align:left;overflow:auto;text-align:justify;">
===コラム「スエービー族とカッティー族・ケールスキー族・ウビイー族について」===
[[画像:Hermann (Arminius) at the battle of the Teutoburg Forest in 9 CE by Peter Jannsen, 1873, with painting creases and damage removed.jpg|thumb|right|250px|ウァルスの戦い([[w:de:Varusschlacht|Varusschlacht]])こと[[w:トイトブルク森の戦い|トイトブルク森の戦い]](AD9年)で戦う、ゲルマーニア軍とローマ軍(Johann Peter Theodor Janssen画、1870~1873年頃)。中央上の人物はケールスキー族の名将[[w:アルミニウス (ゲルマン人)|アルミニウス]]。<br>アルミニウスが率いるケールスキー族・カッティー族らゲルマーニア諸部族同盟軍は、P.クィン(ク)ティリウス・ウァルス麾下ローマ3個軍団を壊滅させ、アウグストゥスに「ウァルスよ諸軍団を返せ([[w:la:Publius_Quinctilius_Varus|Quintili Vare]], legiones redde!)」と嘆かせた。]]
<br>
<div style="background:#ecf;"> '''スエービー族とカッティー族'''</div>
:『ガリア戦記』では、第1巻・第4巻および第6巻でたびたび[[w:スエビ族|スエービー族]]の名が言及される。タキトゥス<ref>『ゲルマーニア』タキトゥス著、泉井久之助訳注、岩波文庫の38章「スエービー」などを参照。</ref>など多くの史家が伝えるようにスエービー族 [[wikt:en:Suebi#Latin|Suēbī]] またはスエウィ族 Suēvī とは、単一の部族名ではなく、多くの独立した部族国家から構成される連合体の総称とされる。
:19世紀のローマ史家[[w:テオドール・モムゼン|テオドール・モムゼン]]によれば<ref>『モムゼン ローマの歴史Ⅳ』長谷川博隆訳、名古屋大学出版会、のp.201, p.224, p.232などを参照。</ref>、カエサルの時代のローマ人には
「スエービー」とは遊牧民を指す一般的な呼称で、カエサルがスエービーと呼ぶのはカッティー族だという。
:カッティー族とスエービー系諸部族の異同は明確ではないが、多くの史家は両者を区別して伝えている。
: 第1巻37節・51節・53節~54節、第4巻1節~4節・7節などで言及され、「百の郷を持つ」と
されている「スエービー族」は、スエービー系諸部族の総称、あるいは遊牧系の部族を指すのであろう。
: 他方、第4巻16節・19節・第6巻9節~10節・29節で、ウビイー族を圧迫する存在として言及される
:「スエービー族」はモムゼンの指摘のように、カッティー族 [[w:en:Chatti|Chatti]] であることが考えられる。
:タキトゥス著『ゲルマーニア』<ref>『ゲルマーニア』タキトゥス著、泉井久之助訳注、岩波文庫の36章「ケルスキー」などを参照。</ref>でも、カッティー族はケールスキー族と隣接する宿敵として描写され、本節の説明に合致する。
<div style="background:#ecf;"> '''ケールスキー族'''</div>
:ケールスキー族は、『ガリア戦記』では[[#10節|本節]]でカッティー族と隣接する部族として名を挙げられる
:のみである。しかしながら、本巻の年(BC53年)から61年後(AD9年)には、帝政ローマの
:[[w:アウグストゥス|アウグストゥス帝]]がゲルマーニアに派遣していたプブリウス・クィンクティリウス・ウァルス
:([[w:la:Publius_Quinctilius_Varus|Publius Quinctilius Varus]])が率いるローマ軍3個軍団に対して、名将[[w:アルミニウス (ゲルマン人)|アルミニウス]]を
:指導者とするケールスキー族は、カッティー族ら諸部族の同盟軍を組織して、ウァルスの3個軍団を
:[[w:トイトブルク森の戦い|トイトブルク森の戦い]]において壊滅させ、老帝アウグストゥスを嘆かせたという。
<div style="background:#ecf;"> '''ウビイー族'''</div>
:ウビイー族は『ガリア戦記』の第4巻・第6巻でも説明されているように、ローマ人への忠節を
:認められていた。そのため、タキトゥスによれば<ref>『ゲルマーニア』タキトゥス著、泉井久之助訳注、岩波文庫の28章などを参照。</ref>、ゲルマニアへのローマ人の守りとして
:BC38年頃にレヌス(ライン川)左岸のコロニア([[w:la:Colonia_Agrippina|Colonia]];植民市)すなわち現在の[[w:ケルン|ケルン市]]に移された。)
</div>
==ガッリア人の社会と風習について==
<div style="border:solid #999 1px;background:#feedff;max-width:80%;padding:0.25em 1em;margin:0.5em auto;align:left;overflow:auto;text-align:justify;">
===コラム「ガッリア・ゲルマーニアの地誌・民族誌について」===
[[画像:Testa di saggio o principe, forse il filosofo poseidonio, 50 ac. ca 01.JPG|thumb|right|200px|アパメアの[[w:ポセイドニオス|ポセイドニオス]]の胸像。地中海世界やガッリアなどを広く訪れて、膨大な著作を残した。<br>『ガリア戦記』の地誌・民族誌的な説明も、その多くを彼の著作に依拠していると考えられている。]]
:これ以降、11節~20節の10節にわたってガッリアの地誌・民族誌的な説明が展開され、さらには、ゲルマーニアの地誌・民族誌的な説明などが21節~28節の8節にわたって続く。ガッリア戦争の背景説明となるこのような地誌・民族誌は、本来ならば第1巻の冒頭に置かれてもおかしくはない。しかしながら、この第6巻の年(BC53年)は、カエサル指揮下のローマ勢にとってはよほど書かれるべき戦果が上がらなかったためか、ガッリア北部の平定とエブロネス族の追討戦だけでは非常に短い巻となってしまうため、このような位置に置いたとも考えられる。ゲルマーニアの森にどんな獣が住んでいるかなど、本筋にほとんど影響のないと思われる記述も見られる。
:『ガリア戦記』におけるガッリアの地誌・民族誌的な説明、特にこの11節以降の部分は、文化史的に重要なものと見なされ、考古学やケルトの伝承などからも裏付けられる。しかし、これらの記述はカエサル自身が見聞したというよりも、むしろ先人の記述、とりわけBC2~1世紀のギリシア哲学ストア派の哲学者・地理学者・歴史学者であった[[w:ポセイドニオス|ポセイドニオス]]([[w:la:Posidonius Apameus|Posidonius Apameus]])の著作に依拠していたと考えられている<ref>『ケルト事典』ベルンハルト・マイヤー著、鶴岡真弓監修、創元社の「ポセイドニオス」「カエサル」の項を参照。</ref> <ref>『ケルト人』ヴァンセスラス・クルータ([[w:fr:Venceslas Kruta|Venceslas Kruta]])著、鶴岡真弓訳、白水社 のp.20-21を参照。</ref>。ポセイドニオスは、ローマが支配する地中海世界やガッリア地域などを広く旅行した。彼の52巻からなる膨大な歴史書は現存しないが、その第23巻にガッリアに関する詳細な記述があったとされ、[[w:シケリアのディオドロス|ディオドロス]]、[[w:ストラボン|ストラボン]]、[[w:アテナイオス|アテナイオス]]らによって引用され、同時代および近代のケルト人観に多大な影響を与えたと考えられている。
:現存するガッリアの地誌・民族誌は、ストラボン<ref>『ギリシア・ローマ世界地誌Ⅰ』ストラボン著、飯尾都人訳、龍溪書舎を参照。</ref>、ディオドロス<ref>『神代地誌』ディオドロス著、飯尾都人訳、龍溪書舎を参照。</ref>、ポンポニウス・メラ<ref>『世界地理』ポンポニウス・メラ著、飯尾都人訳(上掲『神代地誌』に所収)</ref>のものなどがある。現存するゲルマーニアの地誌・民族誌は、ストラボン、タキトゥス<ref>『ゲルマーニア』タキトゥス著、泉井久之助訳注、岩波文庫などを参照。</ref>、ポンポニウス・メラなどのものがある。
</div>
===11節===
*<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/11節]] {{進捗|00%|2024-11-25}}</span>
;ガッリア人の派閥性
*<!--❶-->Quoniam ad hunc locum perventum est,
**この地<small>〔ゲルマーニア〕</small>にまで到達したので、
*non alienum esse videtur, de Galliae Germaniaeque moribus et, quo differant hae nationes inter sese, proponere.
**[[w:ガリア|ガッリア]]と[[w:ゲルマニア|ゲルマーニア]]の風習について、これらの種族が互いにどのように異なるか述べることは不適切でないと思われる。
:
*<!--❷-->In Gallia non solum in omnibus civitatibus atque in omnibus <u>pagis</u> partibusque,
**ガッリアにおいては、すべての部族において、さらにすべての<u>郷</u>や地方においてのみならず、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:''[[wikt:en:pagus#Latin|pagus]]'' (郷) はここでは、部族の領土の農村区画を指す行政用語<ref name="pagus">''[[w:en:Pagus]]'' 等を参照。</ref>。)</span>
*sed paene etiam in singulis domibus factiones sunt,
**ほとんどの個々の氏族においてさえも、派閥があり、
*earumque factionum principes sunt,
**それらの派閥には、領袖たちがいる。
:
*<!--❸-->qui summam auctoritatem eorum iudicio habere existimantur,
**その者<small>〔領袖〕</small>らは、彼ら<small>〔派閥〕</small>の判断に対して、最高の影響力を持っていると考えられている。
*quorum ad arbitrium iudiciumque summa omnium rerum consiliorumque redeat.
**すべての事柄と協議は結局のところ、その者<small>〔領袖〕</small>らの裁量や判断へ帰する。
:
*<!--❹--><u>Id</u>que eius rei causa antiquitus institutum videtur,
**それは、それらの事柄のために昔から取り決められたものと見られ、
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は β系写本の記述で、α系写本では <u>ita</u>que となっている。)</span>
*ne quis ex plebe contra potentiorem auxilii egeret:
**平民のある者が、より権力のある者に対して、援助を欠くことがないように、ということである。
*suos enim quisque opprimi et circumveniri non patitur,
**すなわち<small>(領袖たちの)</small>誰も、身内の者たちが抑圧されたり欺かれたりすることを容認しない。
*neque, aliter si faciat, ullam inter suos habet auctoritatem.
**もし<small>(領袖が)</small>そうでなくふるまったならば、身内の者たちの間で何ら影響力を持てない。
:
*<!--❺-->Haec eadem ratio est in summa totius Galliae;
**これと同じ理屈が、ガッリア全体の究極において存在する。
*namque omnes civitates <u>in partes divisae sunt duas</u>.
**すなわち、すべての部族が二つの党派に分けられているのである。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:下線部は、α系写本の語順で、β系写本では divisae sunt in duas partes となっている。)</span>
<!--
<span style="color:#009900;"></span>
<small></small>
**:<span style="color:#009900;">(訳注:
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:
-->
===12節===
'''ハエドゥイー族、セークァニー族、レーミー族の覇権争い'''
*① Cum Caesar in Galliam venit,
**カエサルがガッリアに来たときに、
*alterius factionis principes erant [[wikt:en:Aedui#Latin|Haedui]], alterius [[wikt:en:Sequani#Latin|Sequani]].
**(二つの)派閥の一方の盟主は[[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイー族]]であり、他方はセークァニー族であった。
**:(訳注:第1巻31節の記述によれば、ハエドゥイー族と[[w:アルウェルニ族|アルウェルニー族]]がそれぞれの盟主であった。
**:カエサルが本節でアルウェルニー族の名を伏せている理由は不明である。
**:また、[[w:ストラボン|ストラボン]]によれば<ref>ストラボン『ギリシア・ローマ世界地誌Ⅰ』(前掲、p.330)</ref>、ハエドゥイー族とセークァニー族の敵対関係においては、
**:両部族を隔てるアラル川の水利権(川舟の通行税)をめぐる争いが敵意を助長していたという。)
*② Hi cum per se minus valerent,
**後者(セークァニー族)は自力ではあまり優勢ではなかったので、
*quod summa auctoritas antiquitus erat in [[wikt:en:Aedui#Latin|Haeduis]]
**というのは、昔から最大の影響力はハエドゥイー族にあって、
*magnaeque eorum erant clientelae,
**彼ら(ハエドゥイー族)には多くの庇護民があったからであるが、
*[[wikt:en:Germani#Latin|Germanos]] atque Ariovistum sibi adiunxerant
**[[w:ゲルマニア|ゲルマーニア]]人と[[w:アリオウィストゥス|アリオウィストゥス]]を自分たちに会盟させ、
*eosque ad se magnis iacturis pollicitationibusque perduxerant.
**多くの負担と約束で 彼らを自分たちのところに引き入れた。
*③ Proeliis vero compluribus factis secundis
**実にいくつもの戦闘を順調に行なって、
*atque omni nobilitate [[wikt:en:Aedui#Latin|Haeduorum]] interfecta
**ハエドゥイー族のすべての高貴な者たちを殺害して、
*tantum potentia antecesserant,
**かなりの勢力で抜きん出たので、
*④ ut magnam partem clientium ab [[wikt:en:Aedui#Latin|Haeduis]] ad se traducerent
**結果として、ハエドゥイー族から庇護民の大部分を自分たちへ味方に付けて、
*obsidesque ab iis principum filios acciperent
**彼らから領袖の息子たちを人質として受け取り、
*et publice iurare cogerent nihil se contra [[wikt:en:Sequani#Latin|Sequanos]] consilii inituros,
**自分たち(ハエドゥイー族)がセークァニー族に対して何ら謀計を始めるつもりではない、と公に誓うことを強いて、
*et partem finitimi agri per vim occupatam possiderent
**近隣の土地の一部を力ずくで占領して所有地とした。
*Galliaeque totius principatum obtinerent.
**ガッリア全体の指導権を手に入れた。
*⑤ Qua necessitate adductus
**それにより、やむを得ずに動かされて、
*Diviciacus auxilii petendi causa Romam ad senatum profectus infecta re redierat.
**[[w:ディウィキアクス|ディウィキアクス]]は支援を求めるために[[w:ローマ|ローマ市]]に元老院のところへ赴いたが、事を成就せずに帰った。
*⑥ Adventu Caesaris facta commutatione rerum,
**カエサルの到来で事態の変化がなされて、
*obsidibus [[wikt:en:Aedui#Latin|Haeduis]] redditis,
**ハエドゥイー族の人質たちは戻されて、
*veteribus clientelis restitutis,
**昔からの庇護民が復帰して、
*novis per Caesarem comparatis,
**カエサルを通じて新参者たちを仲間にした。
*quod ii qui se ad eorum amicitiam adgregaverant,
**というのは、彼ら(ハエドゥイー族)の友好のもとに仲間となっていた者たちが、
*⑦ meliore condicione atque aequiore imperio se uti videbant,
**(セークァニー族)より良い条件とより公平な支配を享受しているように見えて、
*reliquis rebus eorum gratia dignitateque amplificata
**ほかの事柄においても彼ら(ハエドゥイー族)の信望と品格がより増されて、
*[[wikt:en:Sequani#Latin|Sequani]] principatum dimiserant.
**セークァニー族は指導権を放棄したのだ。
*In eorum locum [[wikt:en:Remi#Latin|Remi]] successerant:
**彼ら(セークァニー族)の地位において、レーミー族が取って代わった。
*quos quod adaequare apud Caesarem gratia intellegebatur,
**その者ら(レーミー族)はカエサルのもとで信望において(ハエドゥイー族と)同等であると認識されたので、
*ii qui propter veteres inimicitias nullo modo cum [[wikt:en:Aedui#Latin|Haeduis]] coniungi poterant,
**昔からの敵対関係のためにハエドゥイー族とどのようなやり方でも結ぶことができなかった者たちは、
*se [[wikt:en:Remi#Latin|Remis]] in clientelam dicabant.
**レーミー族との庇護関係に自らを委ねたのだ。
*⑧ Hos illi diligenter tuebantur;
**この者ら(レーミー族)はあの者ら(庇護民)を誠実に保護して、
*ita et novam et repente collectam auctoritatem tenebant.
**このようにして、最近に得られた新しい影響力を保持した。
*⑨ Eo tum statu res erat, ut longe principes haberentur Haedui,
**当時、ハエドゥイー族の位置付けは、まったく盟主と見なされるような状態であって、
*secundum locum dignitatis [[wikt:en:Remi#Latin|Remi]] obtinerent.
**レーミー族の品格は第二の地位を占めたのだ。
===13節===
'''ガッリア人の社会階級、平民およびドルイドについて(1)'''
*① In omni Gallia eorum hominum, qui aliquo sunt numero atque honore, genera sunt duo.
**全ガッリアにおいて、何らかの地位や顕職にある人々の階級は二つである。
'''平民について'''
*Nam plebes paene servorum habetur loco,
**これに対して、平民はほとんど奴隷の地位として扱われており、
*quae nihil audet per se, nullo adhibetur consilio.
**自分たちを通じては何らあえてすることはないし、誰も相談をされることもない。
*② Plerique, cum aut aere alieno aut magnitudine tributorum aut iniuria potentiorum premuntur,
**多くの者は、あるいは負債、あるいは貢納の多さ、あるいはより権力のある者に抑圧されているので、
*sese in servitutem dicant.
**自らを奴隷身分に差し出している。
*Nobilibus in hos eadem omnia sunt iura, quae dominis in servos.
**高貴な者たちには彼ら(平民)において、奴隷において主人にあるのと同様なすべての権利がある。
'''ドルイドについて'''
*③ Sed de his duobus generibus alterum est druidum, alterum equitum.
**ともかく、これら二つの階級について、一方は[[w:ドルイド|ドルイド]](神官)であり、他方は[[w:騎士|騎士]]である。
*④ Illi rebus divinis intersunt, sacrificia publica ac privata procurant, religiones interpretantur:
**前者(ドルイド)は神事に介在し、公・私の<ruby><rb>[[w:供犠|供犠]]</rb><rp>(</rp><rt>くぎ</rt><rp>)</rp></ruby>を司り、信仰のことを講釈する。
**:(訳注:供犠とは、人や獣を生け贄として神前に捧げることである。<ruby><rb>[[w:人身御供|人身御供]]</rb><rp>(</rp><rt>ひとみごくう</rt><rp>)</rp></ruby>とも。)
[[画像:Two_Druids.PNG|thumb|right|200px|二人のドルイド。フランスの[[w:オータン|オータン]]、すなわちガッリア中部のビブラクテ辺りで発見された[[w:レリーフ|レリーフ]]。]]
*ad hos magnus adulescentium numerus disciplinae causa concurrit,
**この者ら(ドルイド)のもとへ、若者の多数が教えのために群り集まり、
*magnoque hi sunt apud eos honore.
**この者ら(ドルイド)は、彼ら(ガッリア人)のもとで大いなる地位にある。
*⑤ Nam fere de omnibus controversiis publicis privatisque constituunt,
**なぜなら(ドルイドは)ほとんどすべての公・私の訴訟ごとに判決をするのである。
*et, si quod est admissum facinus, si caedes facta,
**もし何らかの罪悪が犯されれば、もし殺害がなされれば、
*si de hereditate, de finibus controversia est,
**もし、遺産について、地所について、訴訟ごとがあれば、
*idem decernunt, praemia poenasque constituunt;
**同じ人たち(ドルイド)が裁決し、補償や懲罰を判決するのである。
*⑥ si qui aut privatus aut populus eorum decreto non stetit, sacrificiis interdicunt.
**もし何らかの個人あるいは集団が彼ら(ドルイド)の裁決を遵守しなければ、(その者らに)供犠を禁じる。
*Haec poena apud eos est gravissima.
**これは、彼ら(ガッリア人)のもとでは、非常に重い懲罰である。
*⑦ Quibus ita est interdictum,
**このように(供犠を)禁じられた者たちは、
*hi numero impiorum ac sceleratorum habentur,
**彼らは、不信心で不浄な輩と見なされて、
*his omnes decedunt, aditum sermonemque defugiunt,
**皆が彼らを忌避して、近づくことや会話を避ける。
*ne quid ex contagione incommodi accipiant,
**(彼らとの)接触から、何らかの災厄を負うことがないようにである。
*neque his petentibus ius redditur
**彼らが請願しても(元通りの)権利は戻されないし、
*neque honos ullus communicatur.
**いかなる地位(に就くこと)も許されない。
*⑧ His autem omnibus druidibus praeest unus,
**ところで、これらすべてのドルイドを一人が指導しており、
*qui summam inter eos habet auctoritatem.
**その者は彼ら(ドルイドたち)の間に最高の影響力を持っている。
*⑨ Hoc mortuo
**この者が死んだならば、
*aut, si qui ex reliquis excellit dignitate, succedit,
**あるいは、もし残りの者たちの中から品格に秀でた者がおれば、継承して、
*aut, si sunt plures pares, suffragio druidum {adlegitur}<ref>adlegitur はβ系写本の記述で、α系写本にはない。</ref>;
**あるいは、もしより多くの者たちが同等であれば、ドルイドの投票で{選ばれる}。
*nonnumquam etiam armis de principatu contendunt.
**ときどきは、武力でさえも首座を争うことがある。
*⑩ Hi certo anni tempore
**彼ら(ドルイド)は年間の定められた時期に
*in finibus Carnutum, quae regio totius Galliae media habetur, considunt in loco consecrato.
**ガッリア全体の中心地方と見なされている[[w:カルヌテス族|カルヌテス族]]の領土において、[[w:聖地|聖地]]に集合する。
**:(訳注:これはカエサルが支配する「ガッリア全体」の話で、他の地方には別の中心地があったようである。)
*Huc omnes undique, qui controversias habent, conveniunt
**ここへ、至る所から訴訟などを持つあらゆる者たちが集まって、
*eorumque decretis iudiciisque parent.
**彼ら(ドルイド)の裁決や判断に服従する。
*⑪ Disciplina in Britannia reperta atque inde in Galliam translata esse existimatur,
**(ドルイドの)教えは[[w:ブリタンニア|ブリタンニア]]で見出され、そこからガッリアにもたらされたと考えられている。
**:(訳注:これに対して、[[w:シケリアのディオドロス|ディオドロス]]は、ガッリア人の信仰は[[w:ピュタゴラス教団|ピュタゴラスの教説]]であると伝えている<ref>ディオドロス『神代地誌』(前掲、p.408)</ref>。
**:[[w:ストラボン|ストラボン]]によれば、これは東方のゲタエ人([[w:en:Getae|Getae]];[[w:トラキア|トラキア]]系ないし[[w:ダキア|ダキア]]系)を通じて取り入れたものだという<ref>ストラボン『ギリシア・ローマ世界地誌Ⅰ』(前掲、第7巻 第3章 第5節)</ref>。)
*⑫ et nunc, qui diligentius eam rem cognoscere volunt,
**今でも、その事柄をより入念に探究することを欲する者たちは、
*plerumque illo discendi causa proficiscuntur.
**たいてい、かの地に研究するために旅立つ。
===14節===
'''ドルイドについて(2)'''
*① Druides a bello abesse consuerunt
**[[w:ドルイド|ドルイド]]たちは、戦争に関与しない習慣であり、
*neque tributa una cum reliquis pendunt;
**ほかの者と一緒に貢納(租税)を支払うこともない。
*militiae vacationem omniumque rerum habent immunitatem.
**[[w:徴兵制度|兵役]]の免除や、すべての事柄において免除特権を持っているのである。
[[画像:Druids,_in_the_early_morning_glow_of_the_sun.jpg|thumb|right|200px|現代イギリスのドルイド教復興主義者たち]]
*② Tantis excitati praemiis
**このような特典に駆り立てられて
*et sua sponte multi in disciplinam conveniunt
**自らの意思で多くの者が教え(の場)に集まっても来るし、
*et a parentibus propinquisque mittuntur.
**親たちや縁者たちによって送られても来る。
*③ Magnum ibi numerum versuum ediscere dicuntur.
**(彼らは)そこで詩句の多数を習得すると言われている。
*Itaque annos nonnulli vicenos in disciplina permanent.
**こうして、少なからぬ者たちが、20年にもわたって教え(の場)に残留する。
[[画像:Dédicace_de_Segomaros_(inscription gallo-grecque).png|thumb|right|200px|ギリシア文字で刻まれたガッリアの碑文]]
*Neque fas esse existimant ea litteris mandare,
**それら(の詩句)を文字で刻み込むことは、神意に背くと考えている。
*cum in reliquis fere rebus, publicis privatisque rationibus, Graecis litteris utantur.
**もっとも、ほかの事柄においては、公・私の用件に[[w:ギリシア文字|ギリシア文字]]を用いる。
*④ Id mihi duabus de causis instituisse videntur,
**それは、私(カエサル)には、二つの理由で(ドルイドが)定めたことと思われる。
**:(訳注:これは、カエサルが自らを一人称で示している珍しい個所である。)
*quod neque in vulgum disciplinam efferri velint
**というのは、教えが一般大衆にもたらされることは欲していないし、
*neque eos, qui discunt, litteris confisos minus memoriae studere:
**(教えを)学ぶ者が、文字を頼りにして、あまり暗記することに努めなくならないようにである。
[[画像:Dying_gaul.jpg|thumb|right|200px|『[[w:瀕死のガリア人|瀕死のガリア人]]』([[w:en:Dying_Gaul|Dying Gaul]])像(ローマ市の[[w:カピトリーノ美術館|カピトリーノ美術館]])]]
*quod fere plerisque accidit, ut
**というのも、ほとんど多くの場合に起こることには、
*praesidio litterarum diligentiam in perdiscendo ac memoriam remittant.
**文字の助けによって、入念に猛勉強することや暗記することを放棄してしまうのである。
*⑤ In primis hoc volunt persuadere,
**とりわけ、彼ら(ドルイド)が説くことを欲しているのは、
*non interire animas, sed ab aliis post mortem transire ad alios,
**霊魂は滅びることがないのみならず、死後にある者から別のある者へ乗り移るということである。
**:(訳注:ガッリア人の[[w:輪廻転生|転生信仰]]は、[[w:ピュタゴラス教団|ピュタゴラスの教説]]であると、[[w:シケリアのディオドロス|ディオドロス]]が伝えている<ref>ディオドロス『神代地誌』(前掲、p.408)</ref>。)
*atque hoc maxime ad virtutem excitari putant metu mortis neglecto.
**これによって(ガッリア人は)死の恐怖に無頓着になって最も武勇へ駆り立てられると(ドルイドは)思っている。
[[画像:Universum.jpg|thumb|right|200px|古代以来の伝統的な世界観における天空と平らな大地。カルデアやギリシアを除けば、丸い地球という観念は知られていなかった。]]
*Multa praeterea de sideribus atque eorum motu,
**さらに多く、星々とその動きについて、
*de mundi ac terrarum magnitudine, de rerum natura,
**天空と大地の大きさについて、物事の本質について、
*de deorum immortalium vi ac potestate
**不死の神々の力と支配について、
*disputant et iuventuti tradunt.
**研究して、青年たちに教示するのである。
<br>
<br>
*('''訳注:ドルイドについて'''
:ケルト社会の神官・祭司・僧などとされるドルイドについては、おそらくは[[w:ポセイドニオス|ポセイドニオス]]、そしてカエサル、
:および[[w:シケリアのディオドロス|ディオドロス]]<ref>ディオドロス『神代地誌』(前掲、p.410-p.411)</ref>、[[w:ストラボン|ストラボン]]<ref>ストラボン『ギリシア・ローマ世界地誌Ⅰ』(前掲、p.341-p.342)</ref>、ポンポニウス・メラ<ref>ポンポニウス・メラ『世界地理』(前掲、p.549)</ref>などのギリシア人・ローマ人の著述家たちがそれぞれ
:書き残しているために同時代や現代に知られている。しかし、本節にもあるように、その秘密主義からか、
:古代ギリシア・ローマの著作にあるほかには、その詳細については不明である。)
===15節===
[[画像:BIATEC_pri_NBS_1.jpg|thumb|right|200px|ケルト系の王ビアテック([[w:en:Biatec|Biatec]])の騎馬像([[w:スロバキア国立銀行|スロバキア国立銀行]])。彼はBC1世紀のケルトの硬貨に刻まれた人物で、現代[[w:スロバキア・コルナ|スロバキアの5コルナ]]硬貨にも刻まれている。]]
[[画像:Bige_Musée_de_Laon_050208.jpg|thumb|right|200px|二頭立て二輪馬車([[w:チャリオット|戦車]])に乗るガリア人像(仏・ラン博物館)]]
'''ガッリア人の騎士階級について'''
*① Alterum genus est equitum.
**(ドルイドと並ぶ)もう一つの階級は、[[w:騎士|騎士]]である。
*Hi, cum est usus atque aliquod bellum incidit
**彼らは、必要とされ、かつ何らかの戦争が勃発したときには、
*─ quod fere ante Caesaris adventum quotannis accidere solebat,
**─ それ(戦争)はカエサルの到来以前にはほとんど毎年のように起こるのが常であり、
*uti aut ipsi iniurias inferrent aut inlatas propulsarent ─,
**自身が侵犯行為を引き起こすためか、あるいは引き起こされて撃退するためであったが、─
*omnes in bello versantur,
**総勢が戦争に従事した。
*② atque eorum ut quisque est genere copiisque amplissimus,
**さらに彼らは、高貴な生まれで財産が非常に大きければ大きいほど、
**:(訳注:ut quisque ~ ita;おのおのが~であればあるほどますます)
*ita plurimos circum se ambactos clientesque habet.
**自らの周囲に非常に多くの臣下や庇護民たちを侍らせる。
*Hanc unam gratiam potentiamque noverunt.
**(騎士たちは)これが信望や権勢(を示すこと)の一つであると認識しているのである。
===16節===
'''ガッリア人の信仰と生け贄、ウィッカーマン'''
*① Natio est omnis Gallorum admodum dedita religionibus,
**ガッリア人のすべての部族民は、まったく信仰行為に身を捧げている。
*② atque ob eam causam,
**その理由のために、
*qui sunt adfecti gravioribus morbis
**非常に重い病気を患った者たち
*quique in proeliis periculisque versantur,
**および戦闘において危険に苦しめられる者たちは、
*aut pro victimis homines immolant
**あるいは<ruby><rb>[[w:生贄|生け贄]]</rb><rp>(</rp><rt>いけにえ</rt><rp>)</rp></ruby>の獣(犠牲獣)の代わりに人間を供えたり、
*aut se immolaturos vovent,
**あるいは自らを犠牲にするつもりであると誓願し、
*administrisque ad ea sacrificia druidibus utuntur,
**その<ruby><rb>[[w:供犠|供犠]]</rb><rp>(</rp><rt>くぎ</rt><rp>)</rp></ruby>を執り行う者として[[w:ドルイド|ドルイド]]を利用するのである。
*③ quod, pro vita hominis nisi hominis vita reddatur,
**というのは(一人の)人間の生命のためには、(もう一人の)人間の生命が償われない限り、
*non posse deorum immortalium numen placari arbitrantur,
**不死の神々の<ruby><rb>御霊</rb><rp>(</rp><rt>みたま</rt><rp>)</rp></ruby>がなだめられることができないと思われているからである。
*publiceque eiusdem generis habent instituta sacrificia.
**同じような類いの供儀が公けに定められているのである。
[[画像:WickerManIllustration.jpg|thumb|right|310px|柳の枝で編んだ巨人[[w:ウィッカーマン|ウィッカーマン]]([[w:en:Wicker_Man|Wicker Man]])の想像画(18世紀)。この特異な風習は、近代になって人々の興味をかき立て、いくつもの想像画が描かれた<ref>例えば『ケルト人─蘇るヨーロッパ<幻の民>』C.エリュエール著、鶴岡真弓監修、創元社、p.130の挿絵などを参照。</ref>。1973年にはイギリスで映画化され<ref>“[[w:en:The Wicker Man (1973 film)|The Wicker Man]]”はウィッカーマンを題材にした1973年のイギリスのカルト映画作品。</ref>、2006年にはアメリカなどでも映画化された<ref>“[[w:en:The Wicker Man (2006 film)|The Wicker Man]]”は上記作品をリメイクした2006年のアメリカ・カナダ・ドイツの映画作品。</ref>。]]
[[画像:Burning_wicker_man_by_Bruce_McAdam.jpg|thumb|right|100px|スコットランドの野外博物館で燃やされるウィッカーマン(2008年)]]
'''ウィッカーマン'''
*④ Alii immani magnitudine simulacra habent,
**ある者たちは、恐ろしく大規模な像を持って、
*quorum contexta viminibus membra vivis hominibus complent;
**その柳の枝で編み込まれた肢体を人間たちで満杯にして、
*quibus succensis
**それらを燃やして、
*circumventi flamma exanimantur homines.
**人々は炎に取り巻かれて息絶えさせられるのである。
*⑤ Supplicia eorum qui in furto aut in latrocinio
**窃盗あるいは追い剥ぎに関わった者たちを処刑することにより、
*aut aliqua noxia sint comprehensi,
**あるいは何らかの罪状により捕らわれた者たち(の処刑)により、
*gratiora dis immortalibus esse arbitrantur;
**不死の神々に感謝されると思っている。
*sed, cum eius generis copia defecit,
**しかしながら、その類いの量が欠けたときには、
*etiam ad innocentium supplicia descendunt.
**潔白な者たちさえも犠牲にすることに頼るのである。
<br><br>
:('''訳注''':このような'''[[w:ウィッカーマン|ウィッカーマン]]'''の供犠については[[w:ストラボン|ストラボン]]も伝えており<ref>ストラボン『ギリシア・ローマ世界地誌Ⅰ』(前掲、p.343)</ref>、
:[[w:人身御供|人身御供]]の種類の一つとして、干し草やたきぎで巨像を作り、その中へあらゆる
:家畜・野生動物や人間たちを投げ込んで丸焼きにする習慣があったという。
: また、[[w:シケリアのディオドロス|ディオドロス]]<ref>ディオドロス『神代地誌』(前掲、p.410~p.411)</ref>やストラボンによれば、ドルイドはむしろ'''[[w:予言|予言者]]・[[w:占い|占い師]]'''
:であるという。ドルイドが重要な問題について占うときには、供犠される人間の
:腹または背中を剣などで刺して、犠牲者の倒れ方、肢体のけいれん、出血の様子
:などを観察して、将来の出来事を占うのだという。)
===17節===
'''ガッリアの神々(ローマ風解釈)'''
*① Deum maxime [[w:la:Mercurius_(deus)|Mercurium]] colunt.
**(ガッリア人は)神々のうちでとりわけ[[w:メルクリウス|メルクリウス]]を崇拝する。
**:(訳注:メルクリウスは[[w:ローマ神話|ローマ神話]]の神名であり、本節の神名はすべてローマ風解釈である。)
*Huius sunt plurima simulacra:
**彼の偶像が最も多い。
*hunc omnium inventorem artium ferunt,
**(ガッリア人は)彼をすべての技芸の発明者であると言い伝えており、
*hunc viarum atque itinerum ducem,
**彼を道および旅の案内者として、
*hunc ad quaestus pecuniae mercaturasque habere vim maximam arbitrantur.
**彼が金銭の利得や商取引で絶大な力を持つと思われている。
[[画像:Taranis_Jupiter_with_wheel_and_thunderbolt_Le_Chatelet_Gourzon_Haute_Marne.jpg|thumb|right|200px|ガッリアの雷神タラニス([[w:en:Taranis|Taranis]])の神像([[w:en:National_Archaeological_Museum_(France)|フランス国立考古学博物館]])。雷を司ることからローマ神話のユピテルと同一視された。左手に車輪、右手に稲妻を持っている。]]
[[画像:God_of_Etang_sur_Arroux_possible_depiction_of_Cernunnos.jpg|thumb|right|200px|ガッリアの神ケルヌンノス([[w:en:Cernunnos|Cernunnos]])の神像(フランス国立考古学博物館)。]]
*Post hunc [[w:la:Apollo|Apollinem]] et [[w:la:Minerva|Martem]] et [[w:la:Iuppiter|Iovem]] et [[w:la:Mars_(deus)|Minervam]].
**彼に続いて、[[w:アポローン|アポロ]]と[[w:マルス (ローマ神話)|マルス]]と[[w:ユーピテル|ユピテル]]と[[w:ミネルウァ|ミネルウァ]]を(ガッリア人は崇拝する)。
*② De his eandem fere, quam reliquae gentes, habent opinionem:
**これら(の神々)について、ほかの種族とほぼ同じ見解を持っている。
*Apollinem morbos depellere,
**アポロは病気を追い払い、
*Minervam operum atque artificiorum initia tradere,
**ミネルウァは工芸や技術の初歩を教示し、
*Iovem imperium caelestium tenere,
**ユピテルは天界の統治を司り、
*Martem bella regere.
**マルスは戦争を支配する。
*③ Huic, cum proelio dimicare constituerunt,
**彼(マルス)には、(ガッリア人が)戦闘で干戈を交えることを決心したときに、
*ea quae bello ceperint, plerumque devovent:
**戦争で捕獲したものを、たいていは奉納するものである。
*cum superaverunt, animalia capta immolant
**(戦闘で)打ち勝ったときには、捕獲された獣を生け贄に供えて、
*reliquasque res in unum locum conferunt.
**残りの物を1か所に運び集める。
*④ Multis in civitatibus harum rerum ex(s)tructos tumulos locis consecratis conspicari licet;
**多くの部族において、これらの物が積み上げられた塚を、神聖な地で見ることができる。
*⑤ neque saepe accidit, ut neglecta quispiam religione
**何らかの者が信仰を軽視するようなことが、しばしば起こることはない。
*aut capta apud se occultare aut posita tollere auderet,
**捕獲されたものを自分のもとに隠すこと、あるいは(塚に)置かれたものをあえて運び去ることは。
*gravissimumque ei rei supplicium cum cruciatu constitutum est.
**そんな事には、拷問を伴う最も重い刑罰が決められている。
**:(訳注:最も重い刑罰とは、処刑であると思われる。)
<br>
:(訳注:'''ローマ風解釈について'''
:ガッリアなどケルト文化の社会においては、非常に多くの神々が信仰されており、
:ケルト語による多くの神名が知られており、考古学的にも多くの神像が遺されている。
:しかしながら、これらの神々がどのような性格や権能を持っていたのか、詳しくは判っていない。
:ローマ人は、数多くのケルトの神々をローマ神話の神々の型に当てはめて解釈した。
:[[w:タキトゥス|タキトゥス]]はこれを「[[w:ローマ風解釈|ローマ風解釈]]」[[w:en:Interpretatio_Romana#Roman_version|Interpretatio Romana]] <ref>タキトゥス『ゲルマーニア』43章([[s:la:De_origine_et_situ_Germanorum_(Germania)#XLIII|ラテン語原文]])を参照。</ref>と呼んでいる<ref>『ケルト事典』(前掲)「ローマ風解釈」の項を参照。</ref>。)
===18節===
[[画像:Gaul_god_Sucellus.jpg|thumb|right|200px|ガッリアの神スケッルス([[w:en:Sucellus|Sucellus]])の神像。[[w:冥界|冥界]]の神とされ、ディス・パテルと同一視されたと考えられている。]]
'''ガッリア人の時間や子供についての観念'''
*① Galli se omnes ab Dite patre prognatos praedicant
**ガッリア人は、自分たちは皆、ディス・パテルの末裔であると公言しており、
**:(訳注:ディス・パテル [[w:en:Dis_Pater|Dis Pater]] も前節と同様にローマ神話の神名である。)
*idque ab druidibus proditum dicunt.
**それは[[w:ドルイド|ドルイド]]たちにより伝えられたと言う。
;時間の観念
*② Ob eam causam spatia omnis temporis non numero dierum, sed noctium finiunt;
**その理由のために、すべての[[w:時間|時間]]の間隔を、[[w:昼|昼間]]の数ではなく、[[w:夜|夜間]](の数)で区切る。
*dies natales et mensum et annorum initia sic observant, ut noctem dies subsequatur.
**誕生日も、月や年の初めも、夜間に昼間が続くように注意を払っている。
;子供についての観念
*③ In reliquis vitae institutis hoc fere ab reliquis differunt,
**人生のほかの風習において、以下の点でほかの者たち(種族)からほぼ異なっている。
*quod suos liberos, nisi cum adoleverunt, ut munus militiae sustinere possint,
**自分の子供たちが、[[w:徴兵制度|兵役の義務]]を果たすことができるように成長したときでない限り、
*palam ad se adire non patiuntur
**公然と自分のところへ近づくことは許されないし、
*filiumque puerili aetate in publico in conspectu patris adsistere turpe ducunt.
**少年期の息子が公けに父親の見ているところでそばに立つことは恥ずべきと見なしている。
===19節===
'''ガッリア人の婚姻と財産・葬儀の制度'''
*① Viri, quantas pecunias ab uxoribus dotis nomine acceperunt,
**夫は、妻から[[w:持参金|持参金]]の名目で受け取った金銭の分だけ、
*tantas ex suis bonis aestimatione facta cum dotibus communicant.
**自分の財産のうちから見積もられた分を、持参金とともに一つにする。
*② Huius omnis pecuniae coniunctim ratio habetur fructusque servantur:
**これらのすべての金銭は共同に算定が行なわれて、[[w:利子|利子]]が貯蓄される。
*uter eorum vita superarit,
**彼ら2人のいずれかが、人生において生き残ったら、
*ad eum pars utriusque cum fructibus superiorum temporum pervenit.
**双方の分がかつての期間の利子とともに(生き残った)その者(の所有)に帰する。
[[画像:Hallstatt_culture_ramsauer.jpg|thumb|right|200px|[[w:ハルシュタット文化|ハルシュタット文化]]の[[w:墳丘墓|墳丘墓]]から発掘された遺骸と[[w:副葬品|副葬品]](19世紀の模写)。ガッリアなどではハルシュタット文化後期から[[w:土葬|土葬]]が普及したが、[[w:ラ・テーヌ文化|ラ・テーヌ文化]]中期から再び[[w:火葬|火葬]]が主流になったと考えられている。]]
*③ Viri in uxores, sicuti in liberos, vitae necisque habent potestatem;
**夫は、妻において、子供におけるのと同様に、生かすも殺すも勝手である。
*et cum pater familiae inllustriore loco natus decessit, eius propinqui conveniunt
**上流身分に生まれた家族の父親が死去したとき、彼の近縁の者たちが集まって、
*et de morte, si res in suspicionem venit, de uxoribus in servilem modum quaestionem habent,
**死について、もし疑念が出来したならば、妻について、[[w:奴隷|奴隷]]におけるようなやり方で審問して、
*et si compertum est, igni atque omnibus tormentis excruciatas interficiunt.
**もし(疑念が)確認されたならば、火やあらゆる責め道具によって[[w:拷問|拷問]]にかけて誅殺する。
*④ Funera sunt pro cultu Gallorum magnifica et sumptuosa;
**[[w:葬儀|葬儀]]は、ガッリア人の生活習慣の割には派手でぜいたくなものである。
*omniaque quae vivis cordi fuisse arbitrantur in ignem inferunt, etiam animalia,
**生前に大切であったと思われるもの一切合財を、獣でさえも、火の中に投げ入れる。
*ac paulo supra hanc memoriam servi et clientes, quos ab his dilectos esse constabat,
**さらに、より以前のこの記憶では、彼ら(亡者)により寵愛されていたことが知られていた奴隷や庇護民をも、
*iustis funeribus confectis una cremabantur.
**慣習による葬儀が成し遂げられたら、一緒に火葬されていたのである。
===20節===
'''ガッリア部族国家の情報統制'''
*① Quae civitates commodius suam rem publicam administrare existimantur,
**より適切に自分たちの公儀(=国家体制)を治めると考えられているような部族は、
*habent legibus sanctum,
**(以下のように)定められた法度を持つ。
*si quis quid de re publica a finitimis rumore aut fama acceperit,
**もし、ある者が公儀に関して近隣の者たちから何らかの噂や風聞を受け取ったならば、
*uti ad magistratum deferat neve cum quo alio communicet,
**官吏に報告して、他の者と伝え合ってはならないと。
*② quod saepe homines temerarios atque imperitos falsis rumoribus terreri
**というのは、無分別で無知な人間たちはしばしば虚偽の噂に恐れて、
*et ad facinus impelli et de summis rebus consilium capere cognitum est.
**罪業に駆り立てられ、重大な事態についての考えを企てると認識されているからである。
*③ Magistratus quae visa sunt occultant,
**官吏は、(隠すことが)良いと思われることを隠して、
*quaeque esse ex usu iudicaverunt, multitudini produnt.
**有益と判断していたことを、民衆に明らかにする。
*De re publica nisi per concilium loqui non conceditur.
**公儀について、集会を通じてでない限り、語ることは認められていない。
==ゲルマーニアの風習と自然について==
===21節===
'''ゲルマーニア人の信仰と性'''
*① Germani multum ab hac consuetudine differunt.
**[[w:ゲルマニア|ゲルマーニア]]人はこれに対し、風習が大いに異なっている。
*Nam neque druides habent, qui rebus divinis praesint, neque sacrificiis student.
**すなわち、神事を司る[[w:ドルイド|ドルイド]]も持たないし、供犠に熱心でもない。
*② Deorum numero
**神々に数えるものとして、
*eos solos ducunt, quos cernunt et quorum aperte opibus iuvantur, Solem et Vulcanum et Lunam,
**(彼らが)見分けるものや明らかにその力で助けられるもの、[[w:太陽|太陽]]と[[w:ウォルカヌス|ウォルカヌス]](火の神)と[[w:月|月]]だけを信仰して、
*reliquos ne fama quidem acceperunt.
**ほかのものは風聞によってさえも受け入れていない。
**:(訳注:これに対して、[[w:タキトゥス|タキトゥス]]は、ゲルマーニア人はメルクリウスやマルスなどを信仰すると伝えている<ref>タキトゥス『ゲルマーニア』2章・9章を参照</ref>。)
*③ Vita omnis in venationibus atque in studiis rei militaris consistit:
**すべての人生は、[[w:狩猟|狩猟]]に、および[[w:軍事|軍事]]への執心に依拠しており、
*ab parvulis labori ac duritiae student.
**幼時より労役や負担に努める。
*④ Qui diutissime impuberes permanserunt, maximam inter suos ferunt laudem:
**最も長く純潔に留まった者は、自分たちの間で最大の賞賛を得る。
*hoc ali staturam, ali vires nervosque confirmari putant.
**これによって、ある者には背の高さが、ある者には力と筋肉が強化されると、思っている。
*⑤ Intra annum vero vicesimum feminae notitiam habuisse in turpissimis habent rebus;
**20歳にならない内に女を知ってしまうことは、とても恥ずべきことであると見なしている。
*cuius rei nulla est occultatio,
**その(性の)事を何ら隠すことはない。
*quod et promiscue in fluminibus perluuntur
**というのは、川の中で(男女が)混じって入浴しても、
*et pellibus aut parvis renonum tegimentis utuntur, magna corporis parte nuda.
**なめし皮や、小さな毛皮の覆いを用いるが、体の大部分は裸なのである。
===22節===
'''ゲルマーニア人の土地制度'''
*① Agri culturae non student,
**(ゲルマーニア人は)[[w:農耕|土地を耕すこと]]に熱心ではなく、
*maiorque pars eorum victus in lacte, caseo, carne consistit.
**彼らの大部分は、生活の糧が[[w:乳|乳]]、[[w:チーズ|チーズ]]、[[w:肉|肉]]で成り立っている。
*② Neque quisquam agri modum certum aut fines habet proprios;
**何者も、土地を確定した境界で、しかも持続的な領地として、持ってはいない。
*sed magistratus ac principes in annos singulos
**けれども、官吏や領袖たちは、各年ごとに、
*gentibus cognationibusque hominum, quique una coierunt,
**一緒に集住していた種族や血縁の人々に、
*quantum et quo loco visum est agri adtribuunt
**適切と思われる土地の規模と場所を割り当てて、
*atque anno post alio transire cogunt.
**翌年には他(の土地)へ移ることを強いるのである。
**:(訳注:[[ガリア戦記 第4巻#1節|第4巻1節]]には、スエービー族の説明として同様の記述がある。)
*③ Eius rei multas adferunt causas:
**(官吏たちは)その事の多くの理由を説明する。
*ne adsidua consuetudine capti studium belli gerendi agricultura commutent;
**(部族民が)[[w:居住|定住]]する習慣にとらわれて、戦争遂行の熱意を土地を耕すことに変えてしまわないように。
*ne latos fines parare studeant, potentioresque humiliores possessionibus expellant;
**広大な領地を獲得することに熱心になって、有力者たちが弱者たちを地所から追い出さないように。
*ne accuratius ad frigora atque aestus vitandos aedificent;
**寒さや暑さを避けるために(住居を)非常な入念さで建築することがないように。
*ne qua oriatur pecuniae cupiditas, qua ex re factiones dissensionesque nascuntur;
**金銭への欲望が増して、その事から派閥や不和が生ずることのないように。
*ut animi aequitate plebem contineant, cum suas quisque opes cum potentissimis aequari videat.
**おのおのが自分の財産も最有力者のも同列に置かれていると見ることで、心の平静により民衆を抑えるように。
<br>
:(訳注:[[w:ストラボン|ストラボン]]<ref>ストラボン『ギリシア・ローマ世界地誌Ⅰ』(前掲、p.510)</ref>や[[w:タキトゥス|タキトゥス]]<ref>タキトゥス『ゲルマーニア』23章・16章などを参照。26章では農耕についても解説されている。</ref>などの著述家たちも、ゲルマーニアの住民が農耕をせず、
:遊牧民のように移動しながら暮らし、小さな住居に住み、食料を家畜に頼っていると記述している。)
===23節===
'''ゲルマーニア諸部族のあり方'''
*① Civitatibus maxima laus est
**諸部族にとって、最も称賛されることは、
*quam latissime circum se vastatis finibus solitudines habere.
**できる限り広く自分たちの周辺で領土を荒らして荒野に保っておくことである。
*② Hoc proprium virtutis existimant,
**以下のことを(自分たちの)武勇の特質と考えている。
*expulsos agris finitimos cedere,
**近隣の者たちが土地から追い払われて立ち去ること、
*neque quemquam prope {se} audere consistere;
**および、何者も自分たちの近くにあえて定住しないこと、である。
*③ simul hoc se fore tutiores arbitrantur, repentinae incursionis timore sublato.
**他方、これにより、予期せぬ襲撃の恐れを取り除いて、自分たちはより安全であろうと思われた。
*④ Cum bellum civitas aut inlatum defendit aut infert,
**部族に戦争がしかけられて防戦したり、あるいはしかけたりしたときには、
*magistratus, qui ei bello praesint, ut vitae necisque habeant potestatem, deliguntur.
**その戦争を指揮して、生かすも殺すも勝手な権力を持つ将官が選び出される。
*⑤ In pace nullus est communis magistratus,
**平時においては、(部族に)共通の将官は誰もいないが、
*sed principes regionum atque <u>[[wikt:en:pagus#Latin|pagorum]]</u> inter suos ius dicunt controversiasque minuunt.
**地域や<u>郷</u>の領袖たちが、身内の間で判決を下して、訴訟ごとを減らす。
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:''pagus'' (郷) はここでは、部族の領土の農村区画を指す行政用語<ref name="pagus"/>。)</span>
*⑥ Latrocinia nullam habent infamiam, quae extra fines cuiusque civitatis fiunt,
**それぞれの部族の領土の外で行なう略奪のことは、何ら恥辱とは見なしていない。
*atque ea iuventutis exercendae ac desidiae minuendae causa fieri praedicant.
**さらに、それ(略奪)は、青年たちを訓練することや、怠惰を減らすことのために行なわれる、と公言している。
*⑦ Atque ubi quis ex principibus in concilio dixit
**そして、領袖たちのうちのある者が(次のように)言うや否や、
*se ducem fore, qui sequi velint, profiteantur,
**《自分が(略奪の)引率者となるから、追随したい者は申し出るように》と(言うや否や)、
*consurgunt ii qui et causam et hominem probant, suumque auxilium pollicentur
**(略奪の)口実にも(引率する)人物にも賛同する者は立ち上がって、自らの支援を約束して、
*atque ab multitudine conlaudantur:
**群衆から大いに誉められる。
*⑧ qui ex his secuti non sunt,
**これら(約束した者)のうちで(略奪に)追随しない者は、
*in desertorum ac proditorum numero ducuntur,
**逃亡兵や裏切り者と見なされて、
*omniumque his rerum postea fides derogatur.
**その後は、彼らにとってあらゆる事の信頼が(皆から)拒まれる。
*⑨ Hospitem violare fas non putant;
**客人に暴行することは道理に適うとは思ってはいない。
*qui quacumque de causa ad eos venerunt,
**彼ら(ゲルマーニア人)のところへ理由があって来た者(=客人)は誰であれ、
*ab iniuria prohibent, sanctos habent,
**無法行為から防ぎ、尊ぶべきであると思っている。
*hisque omnium domus patent victusque communicatur.
**彼ら(客人)にとってすべての者の家は開放されており、生活用品は共有される。
**:(訳注:客人への接待ぶりについては、[[w:タキトゥス|タキトゥス]]<ref>タキトゥス『ゲルマーニア』21章を参照。</ref>も伝えている。)
===24節===
[[画像:Celts.svg|thumb|right|200px|ケルト文化の広がり(BC800年~BC400年頃)。ケルト系部族の優越は、[[w:鉄器|鉄器]]文化の発達などによると考えられている。]]
[[画像:Mappa_di_Eratostene.jpg|thumb|right|200px|[[w:エラトステネス|エラトステネス]]の地理観を再現した世界地図(19世紀)。左上に「Orcynia Silva(オルキュニアの森)」とある。]]
[[画像:Hallstatt_LaTene.png|thumb|right|200px|[[w:ハルシュタット文化|ハルシュタット文化]]期と[[w:ラ・テーヌ文化|ラ・テーヌ文化]]期におけるケルト系部族の分布。右上にウォルカエ族(Volcae)やボイイ族(Boii)の名が見える。ボイイ族が居住していた地域はボイオハエムム(Boihaemum)と呼ばれ、[[w:ボヘミア|ボヘミア]](Bohemia)として現在に残る。]]
'''ゲルマーニア人とガッリア人'''
*① Ac fuit antea tempus,
**かつてある時代があって、
*cum Germanos Galli virtute superarent,
**そのとき、[[w:ゲルマニア|ゲルマーニア]]人を[[w:ガリア|ガッリア]]人が武勇で優っており、
*ultro bella inferrent, propter hominum multitudinem agrique inopiam
**人間の多さと土地の欠乏のために(ガッリア人は)自発的に戦争をしかけて、
*trans Rhenum colonias mitterent.
**レーヌス(=[[w:ライン川|ライン川]])の向こう側へ入植者たちを送り込んでいた。
*② Itaque ea quae fertilissima Germaniae sunt loca circum Hercyniam silvam,
**[[w:ヘルキュニア|ヘルキュニア]]の森の周辺のゲルマーニアで最も肥沃な地を、
*quam Eratostheni et quibusdam Graecis fama notam esse video,
**それを[[w:エラトステネス|エラトステネス]]や[[w:ギリシア人|ギリシア人]]のある者たちも風聞により知っていたと私は見出して、
*quam illi Orcyniam appellant,
**それを彼らはオルキュニアと呼んでいるが、
*Volcae Tectosages occupaverunt atque ibi consederunt;
**(その地を)ウォルカエ族系のテクトサゲス族が占領して、そこに定住していた。
*③ quae gens ad hoc tempus his sedibus sese continet
**その種族は、この時代までこの居場所に留まっており、
*summamque habet iustitiae et bellicae laudis opinionem.
**公正さと戦いの称賛で最高の評判を得ている。
*④ Nunc quod in eadem inopia, egestate, patientia qua Germani permanent,
**今も、窮乏や貧困を、ゲルマーニア人が持ちこたえているのと同じ忍耐をもって、
*eodem victu et cultu corporis utuntur;
**同じ食物および体の衣服を用いている。
*⑤ Gallis autem provinciarum propinquitas et transmarinarum rerum notitia
**これに対して、ガッリア人にとって(ローマの)属州に近接していること、および海外のものを知っていることは、
*multa ad copiam atque usus largitur,
**富や用品の多くが供給されている。
*paulatim adsuefacti superari multisque victi proeliis
**(ガッリア人は)しだいに圧倒されることや多くの戦闘で打ち負かされることに慣らされて、
*ne se quidem ipsi cum illis virtute comparant.
**(ガッリア人)自身でさえも彼ら(ゲルマーニア人)と武勇で肩を並べようとはしないのである。
<br>
:('''訳注''':本節の①項については、[[w:タキトゥス|タキトゥス]]が著書『[[w:ゲルマニア (書物)|ゲルマーニア]]』28章([[s:la:De_origine_et_situ_Germanorum_(Germania)#XXVIII|原文]])において、次のように言及している。
:''Validiores olim Gallorum res fuisse summus auctorum divus Iulius tradit; ''
:かつてガッリア人の勢力がより強力であったことは、最高の証言者である神君ユリウス(・カエサル)も伝えている。
:''eoque credibile est etiam Gallos in Germaniam transgressos:''
:それゆえに、ガッリア人でさえもゲルマーニアに渡って行ったと信ずるに値するのである。)
===25節===
'''ヘルキュニアの森林地帯'''
*① Huius Hercyniae silvae, quae supra demonstrata est, latitudo
**前に述べたヘルキュニアの森の幅は、
*novem dierum iter expedito patet:
**軽装の旅で9日間(かかるだけ)広がっている。
*non enim aliter finiri potest,
**なぜなら(ゲルマーニア人は)他に境界を定めることができないし、
*neque mensuras itinerum noverunt.
**道のりの測量というものを知っていないのである。
[[画像:FeldbergPanorama.jpg|thumb|center|1000px|ヘルキュニアの森林地帯(ドイツ南西部、[[w:シュヴァルツヴァルト|シュヴァルツヴァルトの森]]の最高峰フェルドベルク山 [[w:en:Feldberg_(Black Forest)|Feldberg]] の眺望)]]
*② Oritur ab Helvetiorum et Nemetum et Rauracorum finibus
**(その森は)[[w:ヘルウェティイ族|ヘルウェティイ族]]とネメテス族とラウラキ族の領土から発しており、
**:(訳注:これはライン川東岸に沿って南北に長い現在の[[w:シュヴァルツヴァルト|シュヴァルツヴァルトの森]]のことである。)
*rectaque fluminis [[w:la:Danubius|Danubii]] regione
**ダヌビウス川に沿って真っ直ぐに(流れ)、
**:(訳注:ダヌビウス Danubius はダヌウィウス Danuvius とも呼ばれ、現在の[[w:ドナウ川|ドナウ川]]である。)
*pertinet ad fines Dacorum et Anartium;
**[[w:ダキア人|ダキ族]]やアナルテス族の領土へ至る。
**:(訳注:これは[[w:ダキア|ダキア]] [[w:la:Dacia|Dacia]] すなわち現在の[[w:ルーマニア|ルーマニア]]辺りの地域である。)
*③ hinc se flectit sinistrorsus diversis ab flumine regionibus
**ここ(ダヌビウス川)から(森は)左方へ向きを変えて、川の地域からそれて、
**:(訳注:川が南へ折れるのとは逆に、森は北へそれて[[w:エルツ山地|エルツ山地]]を通って[[w:カルパティア山脈|カルパティア山脈]]に至ると考えられている<ref>タキトゥス『ゲルマーニア』泉井久之助訳注、岩波文庫、p.131-132の注などを参照</ref>。)
*multarumque gentium fines propter magnitudinem attingit;
**(森の)大きさのために、多くの種族の領土に接しているのである。
*④ neque quisquam est huius Germaniae, qui se aut adisse ad initium eius silvae dicat,
**その森の(東の)端緒へ訪れたと言う者は、こちら(西側)の[[w:ゲルマニア|ゲルマーニア]]に属する者では誰もいないし、
*cum dierum iter LX processerit,
**60日間の旅で進んでも(いないのであるが)、
*aut, quo ex loco oriatur, acceperit:
**あるいは(森が)どの場所から生じているか把握した(者もいないのである)。
*⑤ multaque in ea genera ferarum nasci constat, quae reliquis in locis visa non sint;
**それ(=森)の中には、ほかの地では見られない野獣の多くの種類が生息していることが知られている。
*ex quibus quae maxime differant ab ceteris et memoriae prodenda videantur,
**それらのうちで、ほかの(地の)ものと大きく異なったものは、記録で伝えるべきものであり、
*haec sunt.
**以下のものである。
===26節===
[[画像:Rentier fws 1.jpg|thumb|right|200px|[[w:トナカイ|トナカイ]]([[w:la:Tarandrus|Rangifer tarandus]])。発達した枝角を持ち、雌雄ともに角があるという特徴は本節の説明に合致している。が、角が一本ということはないし、野生のトナカイは少なくとも現在では極北の地にしか住まない。]]
'''ヘルキュニアの野獣①'''
*① Est [[w:la:Bos|bos]] [[w:la:Cervus|cervi]] figura,
**雄[[w:シカ|鹿]]の姿形をした[[w:ウシ|牛]]がいる。
*cuius a media fronte inter aures unum [[w:la:Cornu|cornu]] existit
**それの両耳の間の額の真ん中から一つの角が出ており、
*excelsius magisque derectum his, quae nobis nota sunt, cornibus;
**我々(ローマ人)に知られている角よりも非常に高くて真っ直ぐである。
*ab eius summo sicut palmae ramique late diffunduntur.
**その先端部から、手のひらや枝のように幅広く広がっている。
*Eadem est feminae marisque natura,
**雌と雄の特徴は同じであり、
*eadem forma magnitudoque cornuum.
**角の形や大きさも同じである。
<br>
:('''訳注''':カエサルによる本節の記述は[[w:ユニコーン|ユニコーン]](一角獣)の伝説に
:結び付けられている。しかし本節における発達した枝角の説明は、むしろ
:[[w:トナカイ|トナカイ]]や[[w:ヘラジカ|ヘラジカ]]のような獣を想起させる。)
===27節===
[[画像:Bigbullmoose.jpg|thumb|right|250px|[[w:ヘラジカ|ヘラジカ]](Alces alces)。<br>発達した枝角と大きな体を持ち、名称以外は本節の説明とまったく合致しない。<br>しかしながら、[[w:ガイウス・プリニウス・セクンドゥス|大プリニウス]]の『[[w:博物誌|博物誌]]』第8巻(16章・39節)には、[[w:アクリス|アクリス]]([[w:en:Achlis|achlis]])という一見ヘラジカ(alces)のような奇獣が紹介され、その特徴は本節②項以下のカエサルの説明とほぼ同じであることが知られている。]]
[[画像:Gressoney-Saint-Jean-Museo-IMG 1824.JPG|thumb|right|250px|[[w:ノロジカ|ノロジカ]](Capreolus capreolus)。<br>ヨーロッパに広く分布する小鹿で、まだら模様で山羊にも似ているので、本節①項の説明と合致する。しかし、関節はあるし、腹ばいにもなる。]]
'''ヘルキュニアの野獣②'''
*① Sunt item, quae appellantur [[w:la:Alces|alces]].
**アルケスと呼ばれるものもいる。
**:(訳注:アルケス alces とは[[w:ヘラジカ|ヘラジカ]](オオシカ)を指す単語であるが本節の説明と矛盾する。)
*Harum est consimilis [[w:la:Capra|capris]] figura et varietas pellium,
**これらの姿形や毛皮のまだらは雄[[w:ヤギ|山羊]]に似ている。
*sed magnitudine paulo antecedunt
**が、(山羊を)大きさで少し優っており、
*mutilaeque sunt cornibus
**角は欠けていて、
*et crura sine nodis articulisque habent.
**脚部には関節の類いがない。
**:(訳注:nodus も articulus も関節の類いを意味する)
*② Neque quietis causa procumbunt
**休息のために横たわらないし、
*neque, si quo adflictae casu conciderunt,
**もし何か不幸なことで偶然にも倒れたならば、
*erigere sese aut sublevare possunt.
**自らを起こすことも立ち上げることもできない。
*③ His sunt arbores pro cubilibus;
**これらにとって木々は寝床の代わりである。
*ad eas se adplicant
**それら(の木々)へ自らを寄りかからせて、
*atque ita paulum modo reclinatae quietem capiunt.
**こうして少しだけもたれかかって休息を取るのである。
*④ Quarum ex vestigiis
**それらの足跡から
*cum est animadversum a venatoribus, quo se recipere consuerint,
**(鹿が)どこへ戻ることを常としているかを狩人によって気付かれたときには、
*omnes eo loco aut ab radicibus subruunt aut accidunt arbores,
**その地のすべての木々を(狩人は)根から倒すか、あるいは傷つけて、
*tantum ut summa species earum stantium relinquatur.
**それらの(木々の)いちばん(外側)の見かけが、立っているかのように残して置かれる。
*⑤ Huc cum se consuetudine reclinaverunt,
**そこに(鹿が)習性によってもたれかかったとき、
*infirmas arbores pondere adfligunt atque una ipsae concidunt.
**弱った木々を重みで倒してしまい、自身も一緒に倒れるのである。
===28節===
[[画像:Wisent.jpg|thumb|right|250px|[[w:ヨーロッパバイソン|ヨーロッパバイソン]]([[w:la:Bison|Bison bonasus]])。<br>かつてヨーロッパに多数生息していた野牛で、相次ぐ乱獲により野生のものは20世紀初頭にいったん絶滅したが、動物園で繁殖させたものを再び野生に戻す試みが行なわれている。]]
[[画像:Muybridge Buffalo galloping.gif|thumb|right|200px|疾走するバイソン]]
[[画像:Drinkhoorn_roordahuizum.JPG|thumb|right|200px|酒杯として用いられた野獣の角。銀で縁取りされている。]]
'''ヘルキュニアの野獣③'''
*③ Tertium est genus eorum, qui uri appellantur.
**第3のものは、野牛と呼ばれる種類である。
*Hi sunt magnitudine paulo infra [[w:la:Elephantidae|elephantos]],
**これらは、大きさで少し[[w:ゾウ|象]]に劣るが、
*specie et colore et figura [[w:la:Taurus|tauri]].
**見かけと色と姿形は雄[[w:ウシ|牛]]である。
*② Magna vis eorum est et magna velocitas,
**それらの力は大きく、(動きも)とても速く、
*neque homini neque ferae, quam conspexerunt, parcunt.
**人間でも野獣でも、見かけたものには容赦しない。
*Hos studiose foveis captos interficiunt.
**(ゲルマーニア人は)これらを熱心に落とし穴で捕らえたものとして殺す。
*③ Hoc se labore durant adulescentes
**この労苦により青年たちを鍛え、
*atque hoc genere venationis exercent,
**[[w:狩猟|狩猟]]のこの類いで鍛錬するのであり、
*et qui plurimos ex his interfecerunt,
**これら(の野牛)のうちから最も多くを殺した者は、
*relatis in publicum [[w:la:Cornu|cornibus]], quae sint testimonio,
**証拠になるための[[w:角|角]]を公の場に持参して、
*magnam ferunt laudem.
**大きな賞賛を得るのである。
*④ Sed adsuescere ad homines et mansuefieri ne parvuli quidem excepti possunt.
**けれども(野牛は)幼くして捕らえられてさえも、人間に慣れ親しんで飼い慣らされることはできない。
*⑤ Amplitudo cornuum et figura et species multum a nostrorum boum cornibus differt.
**角の大きさや形や見かけは、我々(ローマ人)の牛の角とは大いに異なる。
*⑥ Haec studiose conquisita ab labris argento circumcludunt
**これらは熱心に探し求められて、縁を[[w:銀|銀]]で囲って、
*atque in amplissimis epulis pro poculis utuntur.
**とても贅沢な祝宴において[[w:盃|杯]]として用いられるのである。
==対エブロネス族追討戦(1)==
===29節===
'''ゲルマーニアから撤兵、対アンビオリクス戦へ出発'''
*① Caesar, postquam per Ubios exploratores comperit Suebos sese in silvas recepisse,
**カエサルは、ウビイー族の偵察者たちを通じてスエービー族が森に撤退したことを確報を受けた後で、
**:(訳注:[[#10節|10節]]によれば、バケニス Bacenis の森。[[#コラム「スエービー族とカッティー族・ケールスキー族・ウビイー族について|既述]]のように、スエービー族とはカッティー族 [[w:en:Chatti|Chatti]] と考えられる。)
*inopiam frumenti veritus,
**糧食の欠乏を恐れて、
*quod, ut supra demonstravimus, minime omnes Germani agri culturae student,
**というのは、前に説明したように、ゲルマーニア人は皆が土地を耕すことに決して熱心でないので、
**:(訳注:[[#22節|22節]]を参照。耕地がなければ、ローマ軍は穀物の現地調達ができない。)
*constituit non progredi longius;
**より遠くへ前進しないことを決めた。
*② sed, ne omnino metum reditus sui barbaris tolleret
**けれども、自分たち(ローマ軍)が戻って来る恐れを蛮族からまったく取り去ってしまわないように、
*atque ut eorum auxilia tardaret,
**かつ、彼ら(ゲルマーニア人)の(ガッリア人への)支援を遅らせるように、
*reducto exercitu partem ultimam pontis, quae ripas Ubiorum contingebat,
**ウビイー族側の岸(=レーヌス川東岸)につなげていた橋の最後の部分に軍隊を連れ戻して、
*in longitudinem pedum ducentorum rescindit
**(橋を)長さ200[[w:ペース (長さ)|ペース]](=約60m)切り裂いて、
*③ atque in extremo ponte turrim tabulatorum quattuor constituit
**橋の先端のところに4層の櫓を建てて、
*praesidiumque cohortium duodecim pontis tuendi causa ponit
**12個[[w:コホルス|歩兵大隊]]の守備隊を橋を防護するために配置して、
*magnisque eum locum munitionibus firmat.
**その場所を大きな城砦で固めた。
*Ei loco praesidioque C.(Gaium) Volcacium Tullum adulescentem praeficit.
**その場所と守備隊を青年ガイウス・ウォルカキウス・トゥッルスに指揮させた。
**:(訳注:元執政官 [[w:en:Lucius_Volcatius_Tullus_(consul_66_BC)|Lucius Volcatius Tullus]] に対して、青年 adulescentem と区別したのであろう。
**:ウォルカキウス Volcacium の綴りは、写本により相異する。)
*④ Ipse, cum maturescere frumenta inciperent,
**(カエサル)自身は、穀物が熟し始めたので、
*ad bellum [[w:la:Ambiorix|Ambiorigis]] profectus per Arduennam silvam,
**[[w:アンビオリクス|アンビオリクス]]との戦争へ、アルドゥエンナの森を通って進発した。
**:(訳注:アルドゥエンナの森については、[[ガリア戦記 第5巻#3節|第5巻3節]]ですでに説明されている。)
*quae est totius Galliae maxima
**それ(=森)は全ガッリアで最も大きく、
*atque ab ripis Rheni finibusque Treverorum ad Nervios pertinet
**レヌス(=[[w:ライン川|ライン川]])の岸およびトレーウェリー族の境界から、[[w:ネルウィイ族|ネルウィイ族]](の領土)へ及んでおり、
*milibusque amplius quingentis in longitudinem patet,
**長さは500ローママイル(=約740km)より大きく広がっている。
*L.(Lucium) Minucium Basilum cum omni equitatu praemittit,
**ルキウス・ミヌキウス・バスィルスをすべての騎兵隊とともに先遣した。
*si quid celeritate itineris atque opportunitate temporis proficere possit;
**行軍の迅速さと時間の有利さによって、何かを得られるかどうかということである。
*⑤ monet, ut ignes in castris fieri prohibeat, ne qua eius adventus procul significatio fiat:
**野営において火を生じることを禁じるように、何事かにより遠くから彼の到来の予兆を生じないように、戒めた。
*sese confestim subsequi dicit.
**(カエサル)自らは、ただちに後から続くと言った。
===30節===
'''アンビオリクスがバスィリスのローマ騎兵から逃れる'''
*① Basilus, ut imperatum est, facit.
**バスィルスは、命令されたように、行なった。
*Celeriter contraque omnium opinionem confecto itinere
**速やかに、かつ皆の予想に反して、行軍を成し遂げて、
*multos in agris inopinantes deprehendit:
**(城市でない)土地にいた気付かないでいる多くの者を捕らえた。
*eorum indicio ad ipsum Ambiorigem contendit, quo in loco cum paucis equitibus esse dicebatur.
**彼らの申し立てにより、[[w:アンビオリクス|アンビオリクス]]その人がわずかな騎兵たちとともにいると言われていた場所に急いだ。
*② Multum cum in omnibus rebus, tum in re militari potest Fortuna.
**あらゆる事柄においても、とりわけ軍事においても、運命(の女神)が大いに力がある。
*Nam magno accidit casu,
**実際のところ、大きな偶然により生じたのは、
*ut in ipsum incautum etiam atque imparatum incideret,
**(アンビオリクス)自身でさえも油断していて不用意なところに(バスィルスが)遭遇したが、
*priusque eius adventus ab omnibus videretur, quam fama ac nuntius adferretur:
**彼の到来が(ガッリア勢の)皆により見られたのが、風聞や報告により知らされるよりも早かったのである。
*sic magnae fuit fortunae
**同様に(アンビオリクスにとって)大きな幸運に属したのは、
*omni militari instrumento, quod circum se habebat, erepto,
**自らの周りに持っていたすべての武具を奪われて、
*raedis equisque comprehensis
**四輪馬車や馬を差し押さえられても、
*ipsum effugere mortem.
**(アンビオリクス)自身は死を逃れたことである。
*③ Sed hoc quoque factum est,
**しかし、以下のこともまた起こった。
*quod aedificio circumdato silva,
**(アンビオリクスの)館が森で取り巻かれており、
*─ ut sunt fere domicilia Gallorum, qui vitandi aestus causa
**─ ガッリア人の住居はほぼ、暑さを避けることのために、
*plerumque silvarum atque fluminum petunt propinquitates ─,
**たいてい森や川の近接したところに求めるのであるが ─
*comites familiaresque eius angusto in loco paulisper equitum nostrorum vim sustinuerunt.
**彼の従者や郎党どもが、狭い場所でしばらく、我が方(ローマ勢)の騎兵の力を持ちこたえたのだ。
*④ His pugnantibus illum in equum quidam ex suis intulit:
**彼らが戦っているときに、彼(アンビオリクス)を配下のある者が馬に押し上げて、
*fugientem silvae texerunt.
**逃げて行く者(アンビオリクス)を森が覆い隠した。
*Sic et ad subeundum periculum et ad vitandum multum Fortuna valuit.
**このように(アンビオリクスが)危険に突き進んだことや避けられたことに対して、運命(の女神)が力をもったのである。
===31節===
'''エブロネス族の退避、カトゥウォルクスの最期'''
*① [[w:la:Ambiorix|Ambiorix]] copias suas iudicione non conduxerit, quod proelio dimicandum non existimarit,
**[[w:アンビオリクス|アンビオリクス]]は、戦闘で争闘するべきとは考えていなかったので、自らの判断で軍勢を集めなかったのか、
*an tempore exclusus et repentino equitum adventu prohibitus,
**あるいは、時間に阻まれ、予期せぬ[[w:騎兵|騎兵]]の到来に妨げられて、
*cum reliquum exercitum subsequi crederet,
**(ローマ勢の)残りの軍隊(=軍団兵)が後続して来ることを信じたためなのか、
*dubium est.
**不確かなことである。
*② Sed certe dimissis per agros nuntiis sibi quemque consulere iussit.
**けれども、確かに領地を通じて伝令を四方に遣わして、おのおのに自らを助けることを命じた。
*Quorum pars in Arduennam silvam, pars in continentes paludes profugit;
**それらの者たち(領民)のある一部はアルドゥエンナの森に、一部は絶え間ない沼地に退避した。
*③ qui proximi Oceano fuerunt,
**<ruby><rb>大洋<span style="color:#009900;">〔[[w:大西洋|大西洋]]〕</span></rb><rp>(</rp><rt>オーケアヌス</rt><rp>)</rp></ruby>にとても近いところにいた者たちは、
*hi insulis sese occultaverunt, quas aestus efficere consuerunt:
**[[w:潮汐|満潮]]が形成するのが常であった島々に身を隠した。
[[画像:Taxus baccata MHNT.jpg|thumb|right|300px|[[w:ヨーロッパイチイ|ヨーロッパイチイ]]([[w:en:Taxus baccata|Taxus baccata]])<br>欧州などに広く自生するイチイ科の[[w:針葉樹|針葉樹]]。赤い果実は食用で甘い味だが、種子には[[w:タキシン|タキシン]](taxine)という[[w:アルカロイド|アルカロイド]]系の毒物が含まれており、種子を多量に摂れば[[w:痙攣|けいれん]]を起こして[[w:呼吸困難|呼吸困難]]で死に至る。<br>他方、[[w:タキサン|タキサン]](taxane)という成分は[[w:抗がん剤|抗がん剤]]などの[[w:医薬品|医薬品]]に用いられる。]]
*④ multi ex suis finibus egressi
**多くの者たちは、自分たちの領土から出て行って、
*se suaque omnia alienissimis crediderunt.
**自分たちとその一切合財をまったく異邦の者たちに委ねた。
*⑤Catuvolcus, rex dimidiae partis Eburonum,
**[[w:カトゥウォルクス|カトゥウォルクス]]は、[[w:エブロネス族|エブロネス族]]の半分の地方の王であり、
*qui una cum Ambiorige consilium inierat,
**アンビオリクスと一緒に(カエサルに造反する)企てに取りかかった者であるが、
**:(訳注:[[ガリア戦記 第5巻#26節|第5巻26節]]を参照。)
*aetate iam confectus, cum laborem aut belli aut fugae ferre non posset,
**もはや老衰していたので、戦争の労苦、あるいは逃亡の労苦に耐えることができなかったので、
**:(訳注:aetate confectus 老衰した)
*omnibus precibus detestatus Ambiorigem, qui eius consilii auctor fuisset,
**その企ての張本人であったアンビオリクスをあらゆる呪詛のことばで呪って、
*taxo, cuius magna in Gallia Germaniaque copia est, se exanimavit.
**[[w:ガリア|ガッリア]]や[[w:ゲルマニア|ゲルマーニア]]に大量にあった[[w:イチイ属|イチイ]]によって、息絶えたのであった。
===32節===
'''ゲルマーニア部族の弁明、アドゥアトゥカに輜重を集める'''
*① Segni Condrusique, ex gente et numero Germanorum,
**[[w:ゲルマニア|ゲルマーニア]]人の種族や集団のうち、[[w:セグニ族|セグニ族]]と[[w:コンドルスィ族|コンドルスィ族]]は、
*qui sunt inter Eburones Treverosque,
**[[w:エブロネス族|エブロネス族]]とトレーウェリー族の間にいたが、
*legatos ad Caesarem miserunt oratum,
**カエサルのところへ嘆願するために使節たちを遣わした。
*ne se in hostium numero duceret
**自分たちを敵として見なさないように、と。
*neve omnium Germanorum, qui essent citra Rhenum, unam esse causam iudicaret;
**しかも、レーヌス(=[[w:ライン川|ライン川]])のこちら側にいるゲルマーニア人すべての事情は1つであると裁断しないように、と。
*nihil se de bello cogitavisse, nulla Ambiorigi auxilia misisse.
**自分たちは、戦争についてまったく考えたことはないし、[[w:アンビオリクス|アンビオリクス]]に何ら援軍を派遣したことはない、と。
*② Caesar explorata re quaestione captivorum,
**カエサルは捕虜を審問することによってその事を探り出すと、
*si qui ad eos Eburones ex fuga convenissent,
**もし彼らのところへ逃亡しているエブロネス族の者たちの誰かが訪れたならば、
*ad se ut reducerentur, imperavit;
**自分(カエサル)のところへ連れ戻されるようにと、命令した。
*si ita fecissent, fines eorum se violaturum negavit.
**もしそのように行なったならば、彼らの領土を自分(カエサル)が侵害することはないであろうと主張した。
*③ Tum copiis in tres partes distributis
**それから、軍勢を3方面に分散して、
*impedimenta omnium legionum Aduatucam contulit.
**すべての軍団の[[w:輜重|輜重]]を[[w:アドゥアトゥカ|アドゥアトゥカ]]に運び集めた。
**:(訳注:アドゥアトゥカ Aduatuca の表記は、写本によってはアトゥアトゥカ Atuatuca となっている。現在の[[w:トンゲレン|トンゲレン市]]。)
*④ Id castelli nomen est.
**それは、城砦の名前である。
*Hoc fere est in mediis Eburonum finibus,
**これは、エブロネス族の領土のほぼ真ん中にあり、
*ubi Titurius atque Aurunculeius hiemandi causa consederant.
**そこには、[[w:クィントゥス・ティトゥリウス・サビヌス|ティトゥリウス(・サビヌス)]]と[[w:ルキウス・アウルンクレイウス・コッタ|アウルンクレイウス(・コッタ)]]が越冬するために陣取っていた。
*⑤ Hunc cum reliquis rebus locum probabat,
**(カエサルは)この場所を、ほかの事柄によっても是認したし、
*tum quod superioris anni munitiones integrae manebant, ut militum laborem sublevaret.
**またとりわけ前年の防備が損なわれずに存続していたので、兵士の労苦を軽減するためでもある。
*Praesidio impedimentis legionem quartamdecimam reliquit,
**(全軍の)輜重の守備隊として第14軍団を(そこに)残した。
*unam ex his tribus, quas proxime conscriptas ex Italia traduxerat.
**(それは)最近にイタリアから徴集されたものとして連れて来られた3個(軍団)のうちの1個である。
**:(訳注:[[#1節|1節]]を参照。イタリア Italia とはカエサルが総督であった[[w:ガリア・キサルピナ|ガッリア・キサルピーナ]]のことであろう。)
*Ei legioni castrisque Q.(Quintum) Tullium Ciceronem praeficit ducentosque equites ei attribuit.
**その[[w:ローマ軍団|軍団]]と陣営には[[w:クィントゥス・トゥッリウス・キケロ|クィントゥス・トゥッリウス・キケロ]]を指揮者として、200騎の騎兵を彼に割り当てた。
===33節===
'''軍勢をカエサル、ラビエヌス、トレボニウスの三隊に分散'''
*① Partito exercitu
**軍隊を分配して、
*T.(Titum) Labienum cum legionibus tribus ad Oceanum versus
**[[w:ティトゥス・ラビエヌス|ティトゥス・ラビエヌス]]には、3個[[w:ローマ軍団|軍団]]とともに、<ruby><rb>大洋<span style="color:#009900;">〔[[w:大西洋|大西洋]]〕</span></rb><rp>(</rp><rt>オーケアヌス</rt><rp>)</rp></ruby>の方へ向けて、
*in eas partes, quae Menapios attingunt, proficisci iubet;
**[[w:メナピイ族|メナピイ族]]に接する地方に出発することを命じた。
*② C.(Gaium) Trebonium cum pari legionum numero
**[[w:ガイウス・トレボニウス|ガイウス・トレボニウス]]には、軍団の同数とともに、
*ad eam regionem, quae Aduatucis adiacet, depopulandam mittit;
**[[w:アドゥアトゥキ族|アドゥアトゥキ族]]に隣接する領域へ、荒らすために派遣した。
[[画像:Locatie-Maas-3.png|thumb|right|200px|[[w:ベルギー|ベルギー]]周辺の地図。図の左側を[[w:スヘルデ川|スヘルデ川]]が、右側を[[w:マース川|マース川]]が流れているため、両河川は離れており、カエサルがどの地に言及しているのかはわからない。]]
[[画像:Schelde_4.25121E_51.26519N.jpg|thumb|right|200px|ベルギーの[[w:アントウェルペン|アントウェルペン]]周辺を流れる[[w:スヘルデ川|スヘルデ川]]河口付近の[[w:衛星画像|衛星画像]]。ラビエヌスが向かったメナピイ族に接する地方である。]]
*③ ipse cum reliquis tribus ad flumen [[w:la:Scaldis|Scaldim]], quod influit in [[w:la:Mosa|Mosam]],
**(カエサル)自身は、残りの3個(軍団)とともに、モサ(川)に流れ込むスカルディス川のところへ、
**:(訳注:スカルディス Scaldis は現在の[[w:スヘルデ川|スヘルデ川]] Schelde で、フランス北部からベルギー、オランダへ流れている。
**:モサ川 Mosa すなわち現在の[[w:マース川|マース川]] Maas とは運河でつながるが、当時の関係およびカエサルの目的地は不詳。)
*extremasque Arduennae partes ire constituit,
**かつ[[w:アルデンヌ|アルドゥエンナ]](の森林)の外縁の地方へ行軍することを決めた。
*quo cum paucis equitibus profectum Ambiorigem audiebat.
**そこへは、アンビオリクスがわずかな騎兵たちとともに出発したと聞いていたのだ。
*④ Discedens post diem septimum sese reversurum confirmat;
**(カエサルは陣営を)離れるに当たって、7日目の後(=6日後)に自分は引き返して来るであろうと断言した。
*quam ad diem ei legioni, quae in praesidio relinquebatur, deberi frumentum sciebat.
**その当日には、守備に残される軍団にとって糧食が必要とされることを(カエサルは)知っていたのだ。
*⑤ Labienum Treboniumque hortatur,
**(カエサルは)ラビエヌスとトレボニウスを(以下のように)鼓舞した。
*si rei publicae commodo facere possint,
**もし(ローマ軍全体の)公務のために都合良く行動することができるならば、
*ad eum diem revertantur,
**その日には戻って、
*ut rursus communicato consilio exploratisque hostium rationibus
**再び(互いの)考えを伝達して、敵たちの作戦を探り出し、
*aliud initium belli capere possint.
**次なる戦争の端緒を捉えようではないか、と。
<br>
:('''訳注:カエサル麾下の軍団配分について'''
:[[ガリア戦記 第5巻#8節|第5巻8節]]の記述によれば、ブリタンニアへ2度目の遠征をする前(BC54年)のカエサルは少なくとも8個軍団と騎兵4000騎を
:指揮していた。[[ガリア戦記 第5巻#24節|第5巻24節]]によれば、帰還後は8個軍団および軍団から離れた5個[[w:コホルス|歩兵大隊]]を指揮していたが、
:アンビオリクスによる[[w:アドゥアトゥカの戦い|アドゥアトゥカの戦い]]で[[w:クィントゥス・ティトゥリウス・サビヌス|サビヌス]]らとともに1個軍団と5個大隊が壊滅したので、残りは7個軍団となる。
:[[#1節|本巻1節]]によれば、この年(BC53年)には3個軍団を新たに徴集したので、計10個軍団となったはずである。
:[[#29節|29節]]では、このうちから12個大隊をライン川に架かる橋の守備に残し、[[#32節|32節]]では輜重の守備としてアドゥアトゥカに1個軍団を残した。
:本節の記述通りにラビエヌス、トレボニウス、カエサルがそれぞれ3個軍団(計9個)を受け持ったとすると、あわせて10個軍団と12個大隊という勘定になる。
:したがって、この勘定が正しいのであれば、ライン川に残した12個大隊は各軍団から引き抜いたものであり、各軍団は定員を割っていると考えられる。)
===34節===
'''夷を以って夷を制す対エブロネス族包囲網'''
*① Erat, ut supra demonstravimus, manus certa nulla,
**前に説明したように、(エブロネス族には)決まった手勢がなかったし、
**:(訳注:[[#31節|31節]]を参照。)
*non oppidum, non praesidium, quod se armis defenderet,
**自分たちが武器で防衛するような[[w:オッピドゥム|城市]]も、防塁もなかった。
*sed in omnes partes dispersa multitudo.
**けれども、あらゆる方面に大勢が分散されていた。
*② Ubi cuique aut valles abdita aut locus silvestris aut palus impedita
**おのおのが、密かな峡谷、あるいは森に覆われた土地といったところに、
*spem praesidi aut salutis aliquam offerebat, consederat.
**守備あるいは身の安全の何らかの希望を提供するところに、陣取っていた。
*③ Haec loca vicinitatibus erant nota,
**これらの場所は、近隣の者たちは知っていたので、
**:(訳注:すなわち、近隣のガッリア人には地の利があり、ローマ人には地の利がなかったので)
*magnamque res diligentiam requirebat
**事態はたいへんな注意深さを必要としていた。
*non in summa exercitus tuenda
**(ローマ人の)軍隊全体を守るためではなく、
*─ nullum enim poterat universis <a> perterritis ac dispersis periculum accidere ─,
**─なぜなら、脅かされ分散されている者たちにより(ローマ軍)総勢が危険を生じることはありえなかったので─
*sed in singulis militibus conservandis;
**けれども、個々の(ローマ人の)兵士たちを守ることのために(注意深さを必要としていた)。
*quae tamen ex parte res ad salutem exercitus pertinebat.
**少なくとも、ある面では、そういう事態は軍隊の安全に及んでいた。
*④ Nam et praedae cupiditas multos longius evocabat,
**すなわち、略奪品への欲望が多くの者たちをより遠くへ呼び寄せていたし、
*et silvae incertis occultisque itineribus confertos adire prohibebant.
**森林の不確かで隠された道のりによって密集した行軍を妨げていた。
*⑤ Si negotium confici stirpemque hominum sceleratorum interfici vellent,
**もし、戦役が完遂されること、および非道な連中(=エブロネス族)の血筋が滅ぼされることを欲するならば、
*dimittendae plures manus diducendique erant milites;
**いくつもの部隊が分遣され、兵士たちが展開されるべきである。
*⑥ si continere ad signa manipulos vellent, ut instituta ratio et consuetudo exercitus Romani postulabat,
**もし、ローマ軍が決められた流儀や慣行を要求するように、[[w:マニプルス|中隊]]が軍旗のもとにとどまることを欲するならば、
*locus ipse erat praesidio barbaris,
**その場所が蛮族にとって守りとなるであろう。
*neque ex occulto insidiandi et dispersos circumveniendi
**隠れたところから待ち伏せするため、分散した者たち(=ローマ兵)を包囲するために、
*singulis deerat audacia.
**(エブロネス族の)おのおのにとって勇敢さには事欠かなかった。
*⑦ Ut in eiusmodi difficultatibus, quantum diligentia provideri poterat providebatur,
**そのような困難さにおいては、できるかぎりの注意深さで用心されるほどに、用心されるものであるが、
*ut potius in nocendo aliquid praetermitteretur,
**結果として、むしろ(敵勢への)何らかの加害は差し控えられることになった。
*etsi omnium animi ad ulciscendum ardebant,
**たとえ、皆の心が(エブロネス族に)報復するために燃え立っていたとしても、
*quam cum aliquo militum detrimento noceretur.
**兵士たちの何らかの損失を伴って(敵に)加害がなされるよりも。
**:(訳注:伏兵によって被害をこうむるよりは、ローマ人の安全のために、ローマ兵による攻撃は避けられた。)
*⑧ Dimittit ad finitimas civitates nuntios Caesar;
**カエサルは、近隣の諸部族のところへ伝令たちを分遣した。
*omnes ad se vocat spe praedae ad diripiendos Eburones,
**[[w:エブロネス族|エブロネス族]]に対して戦利品を略奪することの望みを呼びかけた。
*ut potius in silvis Gallorum vita quam legionarius miles periclitetur,
**森の中で、軍団の兵士たちよりも、むしろガッリア人たちの生命が危険にさらされるように、
*simul ut magna multitudine circumfusa
**同時にまた、たいへんな大勢で取り囲むことによって、
*pro tali facinore stirps ac nomen civitatis tollatur.
**(サビヌスらを滅ぼした)あれほどの罪業の報いとして、部族の血筋と名前が抹殺されるように、と。
*Magnus undique numerus celeriter convenit.
**至る所から多数の者が速やかに集結した。
==スガンブリー族のアドゥアトゥカ攻略戦==
===35節===
'''スガンブリー族が略奪に駆り立てられてアドゥアトゥカへ向かう'''
*① Haec in omnibus Eburonum partibus gerebantur,
**これらのこと(=追討戦)が[[w:エブロネス族|エブロネス族]]のすべての地方で遂行されていたが、
*diesque adpetebat septimus, quem ad diem Caesar ad impedimenta legionemque reverti constituerat.
**カエサルがその日に[[w:輜重|輜重]]と(キケロの)[[w:ローマ軍団|軍団]]のところへ引き返すと決めていた7日目が近づいていた。
*② Hic quantum in bello Fortuna possit et quantos adferat casus, cognosci potuit.
**ここに、戦争では運命(の女神)がどれほどのことに力を持ち、どれほどの結末を引き起こすかを知ることができた。
**:(訳注:[[#30節|30節]]でもそうだが、カエサルは戦況が芳しくないと運命 Fortuna を持ち出すようである。[[#42節|42節]]も参照。)
*③ Dissipatis ac perterritis hostibus, ut demonstravimus,
**(前節で)説明したように、追い散らされて、脅かされている敵たちには、
*manus erat nulla quae parvam modo causam timoris adferret.
**(ローマ勢に敵を)恐れる理由を少しの程度も引き起こすようないかなる手勢もなかった。
*④ Trans Rhenum ad Germanos
**レーヌス(=[[w:ライン川|ライン川]])の向こう側の[[w:ゲルマニア|ゲルマーニア]]人のところへ、
*pervenit fama, diripi Eburones atque ultro omnes ad praedam evocari.
**エブロネス族が収奪され、(近隣部族の)皆が略奪品へ向けて自発的に誘惑されているという風評が達した。
*⑤ Cogunt equitum duo milia Sugambri, qui sunt proximi Rheno,
**レーヌスの近隣にいたスガンブリ族は、騎兵2000騎を徴集した。
*a quibus receptos ex fuga Tenctheros atque Usipetes supra docuimus.
**前に説明したように、彼らによって[[w:テンクテリ族|テンクテリ族]]と[[w:ウスィペテス族|ウスィペテス族]]が逃亡から迎え入れられたのだ。
**:(訳注:[[ガリア戦記 第4巻#16節|第4巻16節]]および[[ガリア戦記 第4巻#18節|18~19節]]を参照。)
*⑥ Transeunt Rhenum navibus ratibusque
**(スガンブリー族は)レーヌスを船団や筏で渡河した。
*triginta milibus passuum infra eum locum, ubi pons erat perfectus praesidiumque ab Caesare relictum.
**カエサルにより橋が造り上げられて守備隊が残された地点よりも下流に30ローママイル(約44km)のところを。
*Primos Eburonum fines adeunt;
**手始めとしてエブロネス族の領土に殺到して、
*multos ex fuga dispersos excipiunt,
**逃亡からちりぢりにさせられた多くの者たちを追い捕らえて、
*magno pecoris numero, cuius sunt cupidissimi barbari, potiuntur.
**蛮族たちが最も熱望している家畜の多数をわがものにした。
*⑦ Invitati praeda longius procedunt.
**(スガンブリー族の軍勢は)略奪品に誘われて、より遠くに進み出た。
*Non hos palus ─ in bello latrociniisque natos ─, non silvae morantur.
**戦争や追いはぎに生まれついていたので、沼地も森林も彼らを妨げることがなかった。
*Quibus in locis sit Caesar, ex captivis quaerunt;
**カエサルがどの場所にいるのか、捕虜から問い質した。
*profectum longius reperiunt omnemque exercitum discessisse cognoscunt.
**(彼が)より遠くに旅立って、軍隊の総勢が立ち去ったことを、知った。
*⑧ Atque unus ex captivis "Quid vos," inquit,
**なおかつ、捕虜たちのうちの一人が「なぜ、あんたたちは」と言い出した。
*"hanc miseram ac tenuem sectamini praedam,
**「この取るに足らない、ちっぽけな略奪品を追い求めるのか。
**:(訳注:sectamini はデポネンティア動詞 sector の直説法・2人称複数・現在形)
*quibus licet iam esse fortunatissimos?
**(あんたたちは)今や、最も富裕な者に成り得るのに。
*⑨ Tribus horis Aduatucam venire potestis:
**(この場所から)3時間で[[w:アドゥアトゥカ|アドゥアトゥカ]]に到達できる。
**:(訳注:古代ローマの時間は、不定時法であり、当地の緯度や季節により長さは異なる。)
*huc omnes suas fortunas exercitus Romanorum contulit;
**ここへ、ローマ軍がすべての財産を運び集めたのだ。
*praesidii tantum est, ut ne murus quidem cingi possit,
**守備隊は、城壁が取り巻かれることさえできないほどの(貧弱な)ものでしかない。
*neque quisquam egredi extra munitiones audeat."
**何者も防備の外側へあえて出て行こうとはしないのだ。」
*⑩ Oblata spe Germani,
**ゲルマーニア人たちは(ローマ軍の財産という)望みを提示されて、
*quam nacti erant praedam, in occulto relinquunt;
**(すでにエブロネス族の者たちから)獲得していた略奪品を秘されたところに残しておいて、
*ipsi Aduatucam contendunt usi eodem duce, cuius haec indicio cognoverant.
**自身は、このことを申告により知ったところの同じ(捕虜の)案内人を使役して、アドゥアトゥカに急いだ。
<br>
:('''訳注:部族名・地名の表記について'''
:スガンブリー族 Sugambri:α系写本では Sugambri、T・U写本では Sygambri、V・R写本では Sigambri
:テンクテリ族 Tenctheri:β系写本では Tenctheri、α系写本では Thenctheri
:アドゥアトゥカ Aduatuca:α系・T写本では Aduatuca、V・ρ系写本では Atuatuca)
===36節===
'''アドゥアトゥカのキケロが糧秣徴発に派兵する'''
*① [[w:la:Quintus_Tullius_Cicero|Cicero]], qui omnes superiores dies
**[[w:クィントゥス・トゥッリウス・キケロ|キケロ]]は(期日の7日目)より以前の日々すべてを
*praeceptis Caesaris cum summa diligentia milites in castris continuisset
**カエサルの指図により、最高の入念さとともに、兵士たちを陣営の中に留めておき、
*ac ne calonem quidem quemquam extra munitionem egredi passus esset,
**<ruby><rb>[[w:カロネス|軍属奴隷]]</rb><rp>(</rp><rt>カロネス</rt><rp>)</rp></ruby> でさえも、何者も防備の外側に出て行くことを許されなかった。
*septimo die diffidens de numero dierum Caesarem fidem servaturum,
**(期日の)7日目に、カエサルが日数についての約束を守るであろうか、という不信を抱いた。
*quod longius eum<ref>eum はβ系写本の記述で、α系写本にはない。</ref> progressum audiebat,
**というのは、彼(カエサル)は、はるか遠くに前進したと聞いていたのだし、
*neque ulla de reditu eius fama adferebatur,
**彼の帰還については何ら伝言を届けられていなかったからである。
*② simul eorum permotus vocibus,
**同時に(キケロは)以下のような者たちの声に揺り動かされた。
*qui illius patientiam paene obsessionem appellabant, siquidem ex castris egredi non liceret,
**もし本当に陣営から出て行くことが許されないならば、彼の忍耐はほぼ攻囲(籠城)であるというのだ。
*nullum eiusmodi casum exspectans,
**以下のような事態を予期してもいなかった。
*quo novem oppositis legionibus maximoque equitatu,
**9個[[w:ローマ軍団|軍団]]と最大限の[[w:騎兵|騎兵]]隊が(敵と)対峙して、
*dispersis ac paene deletis hostibus
**敵たちは散らばらされて、ほとんど抹殺されたのに、
*in milibus passuum tribus offendi posset,
**(自陣から)3ローママイルの内で(敵対勢力から)襲撃され得るとは。
[[画像:PraetorianVexillifer_1.jpg|thumb|right|200px|帝政期に用いられた軍旗(ウェクスィッルム)の一種を再現したもの。]]
*quinque cohortes frumentatum in proximas segetes mittit,
**5個<ruby><rb>[[w:コホルス|歩兵大隊]]</rb><rp>(</rp><rt>コホルス</rt><rp>)</rp></ruby>を糧秣徴発するために、近隣の耕地に派遣した。
*quas inter et castra unus omnino collis intererat.
**それら(の耕地)と陣営の間には、ただ一つの丘陵が介在するだけであった。
*③ Complures erant in castris<ref>in castris はβ系写本の記述で、α系写本にはない。</ref> ex legionibus aegri relicti;
**陣営の中には、諸軍団のうちから少なからぬ傷病者たちが残留していた。
*ex quibus qui hoc spatio dierum convaluerant, circiter trecenti(CCC),
**その者たちのうちから、この日々の間に回復していた約300名が、
*sub vexillo una mittuntur;
**<ruby><rb>[[w:ウェクスィッルム|軍旗]]</rb><rp>(</rp><rt>ウェクスィッルム</rt><rp>)</rp></ruby>のもとで一緒に派遣された。
*magna praeterea multitudo calonum, magna vis iumentorum quae in castris subsederant,
**そのうえに、軍属奴隷の大多数、陣営の中に残留していた(ロバなどの)役畜の多数が、
*facta potestate sequitur.
**機会を与えられて、随行した。
===37節===
[[画像:Castra1.png|thumb|right|200px|ローマ式[[w:カストラ|陣営]]([[w:la:Castra_Romana|castra Romana]])の概略図(再掲)。'''7'''が第10大隊の門(porta decumana)で、陣営の裏門に当たる。]]
'''スガンブリー族がキケロの陣営に襲来'''
*① Hoc ipso tempore et casu Germani equites interveniunt
**このまさにその時と状況に、[[w:ゲルマニア|ゲルマーニア]]人の[[w:騎兵|騎兵]]たちが出現して、
*protinusque eodem illo, quo venerant, cursu
**さらに前方へ(彼らが)やって来たのと同じ突進でもって、
*ab decumana porta in castra inrumpere conantur,
**第10大隊の門(=裏門)から陣営の中に突入することを試みた。
**:(訳注:decumana porta は[[ガリア戦記 第2巻#24節|第2巻24節]]で既出、図を参照。)
*② nec prius sunt visi obiectis ab ea parte silvis, quam [[wikt:la:castrum|castris]] adpropinquarent,
**その方面については森林がじゃま立てしていたので(彼らは)陣営に接近するまでは視認されなかったのだ。
*usque eo ut qui sub [[w:la:Vallum|vallo]] tenderent mercatores, recipiendi sui facultatem non haberent.
**そこまで(敵が急に来たので)、防柵の下に宿営していた商人たちが退避する機会を持たなかったほどであった。
*③ Inopinantes nostri re nova perturbantur,
**予感していなかった我が方は、新しい事態に混乱させられて、
*ac vix primum impetum cohors in statione sustinet.
**やっとのことで[[w:歩哨|歩哨]]に就いていた[[w:コホルス|歩兵大隊]]が(敵の)最初の突撃を持ちこたえた。
*④ Circumfunduntur ex reliquis hostes partibus, si quem aditum reperire possent.
**敵たちは、何らかの入口を探り出せないかと、ほかの方面から取り囲んだ。
*⑤ Aegre portas nostri tuentur;
**我が方(=ローマ勢)は辛うじて(四方の)諸門を固守して、
*reliquos aditus locus ipse per se munitioque defendit.
**ほかの入口を、その位置そのものと防備が(敵の突入から)防護した。
*⑥ Totis trepidatur castris,
**陣営の全体が震撼させられて、
*atque alius ex alio causam tumultus quaerit;
**各人がほかの者に騒乱の原因を尋ね合った。
**:(訳注:エブロネス族を追討している最中に、スガンブリー族が来襲するとは予想だにしなかったからである。)
*neque quo signa ferantur, neque quam in partem quisque conveniat provident.
**が、どこへ軍旗が運ばれるのか、どの方面におのおのが集結するのか、判らなかった。
*⑦ Alius iam castra capta pronuntiat,
**ある者は、すでに陣営は占拠されたと公言し、
*alius deleto exercitu atque imperatore victores barbaros venisse contendit;
**別のある者は、軍隊も将軍(カエサル)も滅びて蛮族が勝利者としてやって来たのだ、と断言した。
*⑧ plerique novas sibi ex loco religiones fingunt
**たいていの者たちは、その場所から、新奇な迷信的感情を創り上げ、
*Cottaeque et Tituri calamitatem, qui in eodem occiderint castello,
**同じ砦のところで斃れた[[w:ルキウス・アウルンクレイウス・コッタ|コッタ]]と[[w:クィントゥス・ティトゥリウス・サビヌス|ティトゥリウス(・サビヌス)]]の敗亡を
*ante oculos ponunt.
**眼前に想い描いた。
*⑨ Tali timore omnibus perterritis
**このような怖れによって(陣営内部の)皆が脅えており、
*confirmatur opinio barbaris, ut ex captivo audierant, nullum esse intus praesidium.
**蛮族にとっては、捕虜から聞いていたように、内部に守備隊が存在していないという見解が強められた。
*⑩ Perrumpere nituntur
**(スガンブリー勢は、陣営の防備を)突破することに努め、
*seque ipsi adhortantur, ne tantam fortunam ex manibus dimittant.
**これほどの幸運を手から取りこぼさないように、自分たちが自身を鼓舞した。
===38節===
'''バクルスと百人隊長たちが防戦する'''
*① Erat aeger cum<ref>cum はα系写本の記述で、β系写本では in となっている。</ref> praesidio relictus P.(Publius) Sextius Baculus,
**(キケロの陣営には)プーブリウス・セクスティウス・バクルスが傷病者として、守備兵とともに残されていた。
**:<span style="color:#009900;">(訳注:[[w:la:Publius Sextius Baculus|Publius Sextius Baculus]] などの記事を参照。)</span>
*qui primum pilum ad<ref>ad はα系写本の記述で、β系写本では apud となっている。</ref> Caesarem duxerat,
**その者はカエサルのもとで<ruby><rb>[[w:プリムス・ピルス|首位百人隊長]]</rb><rp>(</rp><rt>プリムス・ピルス</rt><rp>)</rp></ruby> の座に就いていたことがあり、
*cuius mentionem superioribus proeliis fecimus,
**かつての戦闘で彼に言及したが、
**:<span style="color:#009900;">(訳注:[[ガリア戦記 第2巻#25節|第2巻25節]] および [[ガリア戦記 第3巻#5節|第3巻5節]]を参照。)</span>
*ac diem iam quintum cibo caruerat.
**(このとき)食物を欠いてすでに5日目であった。
*② Hic diffisus suae atque omnium saluti inermis ex tabernaculo prodit;
**彼は、自らと皆の身の安全に疑念を抱いて、非武装のまま天幕小屋から出て来て、
*videt imminere hostes atque in summo esse rem discrimine;
**敵たちが迫って来ていること、および事態が重大な危急にあることを目の当たりにして、
*capit arma a proximis atque in porta consistit.
**すぐ近くの者から武器を取って、門のところに陣取った。
*③ Consequuntur hunc centuriones eius cohortis quae in statione erat;
**歩哨に立っていた(1個)<ruby><rb>[[w:コホルス|歩兵大隊]]</rb><rp>(</rp><rt>コホルス</rt><rp>)</rp></ruby> の<ruby><rb>[[w:ケントゥリオ|百人隊長]]</rb><rp>(</rp><rt>ケントゥリオ</rt><rp>)</rp></ruby> たちが彼に追随して、
**:(訳注:1個歩兵大隊の百人隊長は、定員通りであれば、6名いた。)
*paulisper una proelium sustinent.
**しばらく一緒に戦闘を持ちこたえた。
*④ Relinquit animus Sextium gravibus acceptis vulneribus;
**セクスティウス(・バクルス)は重い傷を受けて、気を失った。
*Deficiens<ref>deficiens はβ系写本の記述で、α系写本にはない。</ref> aegre per manus tractus servatur.
**(彼は)衰弱して、(味方の)手から手に運ばれて辛うじて救助された。
*⑤ Hoc spatio interposito reliqui sese confirmant
**こうしてしばらくした後で、ほかの者たちは意を強くした。
*tantum, ut in munitionibus consistere audeant speciemque defensorum praebeant.
**(それは)防壁にあえて陣取って、防戦者たちの姿を示したほどであった。
===39節===
'''スガンブリー族が糧秣徴発部隊をも襲う'''
*① Interim confecta frumentatione milites nostri clamorem exaudiunt;
**その間に、糧秣徴発を成し遂げると、我が方の兵士たち(=ローマ軍団兵)は叫び声を聞きつけて、
*praecurrunt equites;
**[[w:騎兵|騎兵]]たちが先駆けして、
*quanto res sit in periculo cognoscunt.
**事態がどれほどの危険にあるかを認識した。
*② Hic vero nulla munitio est quae perterritos recipiat;
**そこには、まさに、脅え上がった者たちを受け入れるような、いかなる防備もなかったのである。
*modo conscripti atque usus militaris imperiti
**やっと徴集されたばかりの者たち、なおかつ兵役の経験に通じていない者たちは、
*ad tribunum militum centurionesque ora convertunt;
**<ruby><rb>[[w:トリブヌス・ミリトゥム|兵士長官]]</rb><rp>(</rp><rt>トリブヌス・ミリトゥム</rt><rp>)</rp></ruby>や<ruby><rb>[[w:ケントゥリオ|百人隊長]]</rb><rp>(</rp><rt>ケントゥリオ</rt><rp>)</rp></ruby>たちの方へ顔を向けた。
*quid ab his praecipiatur exspectant.
**彼ら(上官たち)によって何を指図されるか、待っていたのである。
*③ Nemo est tam fortis, quin rei novitate perturbetur.
**新奇な事態に不安にさせられないほど勇敢な者は、誰もいなかった。
*④ Barbari signa procul conspicati oppugnatione desistunt,
**蛮族たちは、(糧秣徴発隊の)軍旗を遠くから視認すると、(陣営への)攻囲を停止した。
*redisse primo legiones credunt, quas longius discessisse ex captivis cognoverant;
**(彼らは)当初は、より遠くに立ち去ったことを捕虜から知っていた(ローマの)諸軍団が戻って来たと思ったが、
*postea despecta paucitate ex omnibus partibus impetum faciunt.
**後には、(糧秣徴発隊の)寡勢ぶりを侮って、あらゆる方向から突撃して来た。
===40節===
'''敵中突破して陣営へ戻る糧秣徴発部隊の明暗'''
*① Calones in proximum tumulum procurrunt.
**[[w:カロネス|軍属奴隷]]たちは、近隣の丘に先駆けした。
*Hinc celeriter deiecti
**(彼らは)ここから、(突撃して来る敵の軍勢を眺めて)たちまち当てが外れて、
*se in signa manipulosque coniciunt;
**(後方にいた)軍旗と[[w:マニプルス|歩兵中隊]]のところに身を投じた。
*eo magis timidos perterrent milites.
**それゆえに、臆病な兵士たちを大いに脅かした。
[[画像:Wedge-diagram.svg|thumb|right|200px|[[w:くさび|楔(くさび)]]の図。本節で述べられているのは、ローマ勢が楔(図の黒い部分)のように突撃することにより、敵を中央突破しようという戦術であろう。]]
*② Alii cuneo facto ut celeriter perrumpant, censent
**(ローマ兵の)ある者たちは、速やかに(敵中を)突破するように、<ruby><rb>[[w:くさび|楔形]]</rb><rp>(</rp><rt>くさびがた</rt><rp>)</rp></ruby>隊列を形成しようと考慮した。
*─ quoniam tam propinqua sint castra,
**─ 陣営がこれほどまで近隣にあるので、
*etsi pars aliqua circumventa ceciderit, at reliquos servari posse confidunt ─,
**たとえ、一部の誰かが包囲されて斃れたとしても、残りの者たちは救われることが可能だと確信したのだ ─。
*③ alii ut in iugo consistant atque eundem omnes ferant casum.
**別のある者たちは、(丘の)尾根に陣取って、皆が同じ命運に耐え忍ぼうと(考えた)。
*④ Hoc veteres non probant milites, quos sub vexillo una profectos docuimus.
**既述したように軍旗のもとで一緒に発って来た古参兵たちは、後者(の案)を承認しなかった。
**:(訳注:[[#36節|36節]]③項で既述のように、回復した傷病兵たちが同行してきていた。)
*Itaque inter se cohortati
**こうして、(古参の傷病兵たちは)互いに激励し合って、
*duce C.(Gaio) Trebonio equite Romano, qui iis erat praepositus,
**彼らの指揮を委ねられていたローマ人[[w:騎士|騎士階級]]のガイウス・トレボニウスを統率者として、
**:(訳注:[[#33節|33節]]で3個軍団を率いて出発した副官の[[w:ガイウス・トレボニウス|ガイウス・トレボニウス]]とは明らかに同名の別人である。)
*per medios hostes perrumpunt incolumesque ad unum omnes in castra perveniunt.
**敵たちの中央を突破して、一人に至るまで皆が無傷で陣営に到着した。
*⑤ Hos subsecuti calones equitesque eodem impetu militum virtute servantur.
**彼らに追随して、軍属奴隷と[[w:騎兵|騎兵]]たちが同様の突撃をして、兵士たちの武勇により救われた。
*⑥ At ii qui in iugo constiterant,
**それに対して(丘の)尾根に陣取った者たちは、
*nullo etiam nunc usu rei militaris percepto
**今になってさえも、軍事的行動というものを把握しておらず、
*neque in eo quod probaverant consilio permanere, ut se loco superiore defenderent,
**より高い場所で身を守るという、彼らが承認していた考えに留まりもせず、
*neque eam quam prodesse aliis vim celeritatemque viderant, imitari potuerunt,
**(彼らが)別の者たち(=古参兵)に役立ったのを見ていたところの力と迅速さを真似することもできなかった。
*sed se in castra recipere conati iniquum in locum demiserunt.
**けれども、陣営に退却することを試みたが、不利な場所に落ち込んで行った。
*⑦ Centuriones, quorum nonnulli ex inferioribus ordinibus reliquarum legionum
**[[w:ケントゥリオ|百人隊長]]たちといえば、彼らの少なからぬ者たちは、ほかの[[w:ローマ軍団|軍団]]のより低い序列から、
*virtutis causa in superiores erant ordines huius legionis traducti,
**武勇のおかげで、この軍団のより高い序列に異動させられていたが、
*ne ante partam rei militaris laudem amitterent, fortissime pugnantes conciderunt.
**かつて獲得した軍事的な賞賛を失わないように、とても果敢に奮戦して斃れた。
*⑧ Militum pars horum virtute
**兵士たちの一部は、これら(討ち死にした百人隊長たち)の武勇により、
*submotis hostibus praeter spem incolumis in castra pervenit,
**予想に反して敵たちが撃退されたので、無傷で陣営に到着した。
*pars a barbaris circumventa periit.
**別の一部は、蛮族によって包囲されて、討ち死にした。
===41節===
'''スガンブリー族の撤退、カエサルの帰還'''
*① Germani desperata expugnatione castrorum,
**[[w:ゲルマニア|ゲルマーニア]]人たちは(キケロの)[[w:カストラ|陣営]]の攻略に絶望して、
*quod nostros iam constitisse in munitionibus videbant,
**というのは、我が方(ローマ勢)が防備のところに立っているのを見たからであるが、
*cum ea praeda quam in silvis deposuerant, trans Rhenum sese receperunt.
**森の中にしまい込んでいた略奪品とともに、レヌス(=[[w:ライン川|ライン川]])の向こう側に撤退した。
*② Ac tantus fuit etiam post discessum hostium terror,
**敵たちの立ち去った後でさえ(ローマ勢の)畏怖はたいへんなものであったので、
*ut ea nocte, cum C.(Gaius) Volusenus missus cum equitatu ad castra venisset,
**その夜に、(追討戦に)派遣されていたガーイウス・ウォルセーヌスが騎兵隊とともに陣営へ帰着したときに
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:''[[w:en:Gaius Volusenus|Gaius Volusenus]]'' は、[[ガリア戦記_第3巻#5節|第3巻5節]]のアルプス・オクトードゥールスの戦い、<br> [[ガリア戦記_第4巻#21節|第4巻21節]]・[[ガリア戦記_第4巻#23節|23節]]のブリタンニアへの先遣で既述。<br> この後、さらに第8巻23節<sub>([[s:la:Commentarii_de_bello_Gallico/Liber_VIII#23|s]])</sub>、48節<sub>([[s:la:Commentarii_de_bello_Gallico/Liber_VIII#48|s]])</sub>でも活躍する。)</span>
*fidem non faceret adesse cum incolumi Caesarem exercitu.
**カエサルが無傷の軍隊とともに近くに来ていることを(陣営の残留組に)信用させなかったほどである。
*③ Sic omnino animos timor praeoccupaverat, ut paene alienata mente
**ほとんど気でも違ったかのように、皆の心を怖れが占めていた。
**:(訳注:sic … ut ~ の構文;「~と同様に…である」)
*deletis omnibus copiis equitatum se ex fuga recepisse dicerent
**(残留者たちは、カエサルら)全軍勢が滅ぼされて、[[w:騎兵|騎兵隊]]が敗走から退いて来たのだ、と言った。
*neque incolumi exercitu Germanos castra oppugnaturos fuisse contenderent.
**(カエサルら)軍隊が無傷であれば、ゲルマーニア人が陣営を襲撃しなかっただろう、と断言した。
**:(訳注:oppugnaturos fuisse ;間接話法では非現実な[[w:条件法|条件文]]の帰結は「未来分詞+fuisse」で表される。)
*④ Quem timorem Caesaris adventus sustulit.
**その怖れをカエサルの到着が取り除いた。
**:(訳注:sustulit は tollō の完了・能動3人称単数形)
===42節===
'''カエサルがスガンブリー族の襲来と撤退を運命に帰する'''
*① Reversus ille, eventus belli non ignorans,
**引き返して来た彼(カエサル)は、戦争の成り行きというものを知らないはずがないので、
*unum quod cohortes ex statione et praesidio essent emissae,
**ひとつ(だけ)、<ruby><rb>[[w:コホルス|諸大隊]]</rb><rp>(</rp><rt>コホルス</rt><rp>)</rp></ruby> が[[w:歩哨|歩哨]]や守備から(糧秣徴発に)派遣されたことを
*questus ─ ne minimo quidem casu locum relinqui debuisse ─
**不慮の事態に対して最小限のいかなる余地も残されるべきではなかった、と嘆いた。
*multum Fortunam in repentino hostium adventu potuisse iudicavit,
**不意の敵たちの到来においては運命(の女神)が大いに力を持つ、と断じた。
*② multo etiam amplius, quod paene ab ipso vallo portisque castrorum barbaros avertisset.
**さらに、より一層大きかったのは、(運命が)ほとんど蛮族をその陣営の防柵と諸門から追い返してしまったことである。
*③ Quarum omnium rerum maxime admirandum videbatur,
**それらのすべての事態でとりわけ驚くべきと思われたのは、
*quod Germani, qui eo consilio Rhenum transierant, ut Ambiorigis fines depopularentur,
**その意図で[[w:アンビオリクス|アンビオリクス]]の領土を荒らすようにレヌス(=[[w:ライン川|ライン川]])を渡河していた[[w:ゲルマニア|ゲルマーニア]]人が、
*ad castra Romanorum delati
**ローマ人の陣営の方へそらされて、
*optatissimum Ambiorigi beneficium obtulerunt.
**アンビオリクスに最も望ましい恩恵を施してしまったことである。
==対エブロネス族追討戦(2)==
===43節===
'''アンビオリクスが辛うじて追討を逃れる'''
*① Caesar rursus ad vexandos hostes profectus
**カエサルは再び敵たちを苦しめるために出発して、
*magno coacto <equitum> numero ex finitimis civitatibus in omnes partes dimittit.
**[[w:騎兵|騎兵]]の多数を隣接する諸部族から徴集して、あらゆる方面に派遣した。
**:(訳注:<equitum> 「騎兵の」は近代の校訂者による挿入である。)
*② Omnes vici atque omnia aedificia quae quisque conspexerat incendebantur,
**おのおのが目にしたすべての村々およびすべての建物が焼き打ちされた。
*pecora interficiebantur<ref>pecora interficiebantur はβ系写本の記述で、α系写本にはない。</ref>, praeda ex omnibus locis agebatur;
**家畜は屠殺され、あらゆる場所から略奪品が奪い去られた。
*③ frumenta non solum tanta multitudine iumentorum atque hominum consumebantur,
**役畜および人間たちのこれほど大勢により穀物が消費され尽くしたのみならず、
*sed etiam anni tempore atque imbribus procubuerant,
**季節と豪雨によってさえも(穀物が)倒れた。
*ut si qui etiam in praesentia se occultassent,
**その結果、もし(エブロネス族の)何者かが現状では身を隠しているとしても、
*tamen his deducto exercitu rerum omnium inopia pereundum videretur.
**それでも彼らは(ローマ人の)軍隊が引き揚げれば、あらゆるものの欠乏により死滅するはずと思われた。
*④ Ac saepe in eum locum ventum est tanto in omnes partes diviso equitatu,
**たいへん多くの騎兵隊があらゆる方面に分遣されて、しばしば以下のような状態に出くわした。
*ut non modo visum ab se Ambiorigem in fuga circumspicerent captivi
**捕虜たちが、自分たちによって逃亡中の[[w:アンビオリクス|アンビオリクス]]が目撃されたと見回しただけでなく、
*nec plane etiam abisse ex conspectu contenderent,
**(アンビオリクスが)視界からまったく消え去ってはいないとさえ主張した。
*⑤ ut spe consequendi inlata atque infinito labore suscepto,
**その結果、(アンビオリクスを)追跡する希望がもたらされて、さらに限りない労苦が従事された。
*qui se summam ab Caesare gratiam inituros putarent,
**カエサルから最高の恩恵を得ようと思った者たちは、
*paene naturam studio vincerent,
**熱意により(身体的な)資質にほとんど打ち克ったが、
*semperque paulum ad summam felicitatem defuisse videretur,
**いつも最高の恵みにあと少しで足りなかったと思われる。
*⑥ atque ille latebris aut silvis<ref>aut silvis はβ系写本の記述で、α系写本にはない。</ref> aut saltibus se eriperet
**かつ彼(アンビオリクス)は隠れ処、あるいは森林、あるいは峡谷によって自らを救い、
*et noctu occultatus alias regiones partesque peteret
**夜に秘されて、別の地方や方面をめざした。
*non maiore equitum praesidio quam quattuor,
**4名より多くない騎兵の護衛によって、
*quibus solis vitam suam committere audebat.
**自らの生命をその者たちだけにあえて委ねたのだ。
===44節===
'''カエサルが撤退し、造反者アッコを処刑する'''
*① Tali modo vastatis regionibus
**このようなやり方で(エブロネス族の)諸地域を荒廃させて、
[[画像:Porte_Mars_01.jpg|thumb|right|200px|ドゥロコルトルム(現在の[[w:ランス (マルヌ県)|ランス]])に建てられた帝政ローマ時代(3世紀)の[[w:凱旋門|凱旋門]]。]]
*exercitum Caesar duarum cohortium damno [[w:la:Remi|Durocortorum]] Remorum reducit
**カエサルは、2個<ruby><rb>[[w:コホルス|歩兵大隊]]</rb><rp>(</rp><rt>コホルス</rt><rp>)</rp></ruby> の損失(だけ)で、軍隊を[[w:レミ族|レミ族]]の[[w:ドゥロコルトルム|ドゥロコルトルム]]に連れ戻して、
**:(訳注:ドゥロコルトルムはレミ族の首邑で、現在の[[w:ランス (マルヌ県)|ランス]] Reims である。)
*concilioque in eum locum Galliae indicto
**その地においてガッリアの(領袖たちの)会合を公示して、
*de coniuratione Senonum et Carnutum quaestionem habere instituit
**[[w:セノネス族|セノネス族]]と[[w:カルヌテス族|カルヌテス族]]の共謀について詮議することを決定した。
*② et de Accone, qui princeps eius consilii fuerat,
**その謀計の首謀者であった[[w:アッコ (セノネス族)|アッコ]]については
*graviore sententia pronuntiata more maiorum supplicium sumpsit.
**より重い判決が布告され、(ローマ人の)先祖の習慣により極刑に処した。
**:(訳注:ローマ史家[[w:テオドール・モムゼン|モムゼン]]は、アッコはローマの<ruby><rb>[[w:リクトル|先導吏]]</rb><rp>(</rp><rt>リクトル</rt><rp>)</rp></ruby> により[[w:斬首刑|斬首]]されたと言及している<ref>『モムゼン ローマの歴史Ⅳ』長谷川博隆訳、名古屋大学出版会、p.233 を参照。</ref>。
**:外国から来た侵略者カエサルがこのような刑罰を下したことに、ガッリア人たちは憤激した。[[ガリア戦記 第7巻#1節|第7巻1節]]を参照。)
*③ Nonnulli iudicium veriti profugerunt.
**少なからぬ者たちは、裁判を恐れて逃走した。
*Quibus cum aqua atque igni interdixisset,
**その者たちには水と火が禁じられたうえで、
**:(訳注:「水と火を禁じる」とは追放処分のことで、居住権や財産の没収などを指す。)
*duas legiones ad fines Treverorum, duas in Lingonibus,
**2個[[w:ローマ軍団|軍団]]をトレーウェリー族の領土へ、2個(軍団)を[[w:リンゴネス族|リンゴネス族]](の領土)に、
*sex reliquas in Senonum finibus [[w:la:Agedincum|Agedinci]] in hibernis conlocavit
**残りの6個(軍団)を[[w:セノネス族|セノネス族]]の領土の[[w:アゲディンクム|アゲディンクム]]に、冬営地に宿営させた。
**:(訳注:アゲディンクムは、現在の[[w:サン (ヨンヌ県)|サン]] Sens である。)
*frumentoque exercitui proviso,
**軍隊の糧秣を調達してから、
*ut instituerat, in Italiam ad conventus agendos profectus est.
**定めていたように、イタリアに開廷(巡回裁判)を行なうために出発した。
**:(訳注:ここで「イタリア」とはカエサルが総督を務める[[w:ガリア・キサルピナ|ガッリア・キサルピーナ]]のことと思われる。)
----
*<span style="background-color:#99ff99;">「ガリア戦記 第6巻」了。「[[ガリア戦記 第7巻]]」へ続く。</span>
==脚注==
<references />
==参考リンク==
*ウィキペディア英語版・日本語版
**[[w:en:Category:Tribes of ancient Gaul|Category:Tribes of ancient Gaul]]([[w:Category:ガリアの部族|Category:ガッリアの部族]])
***[[w:en:Eburones|Eburones]]([[w:エブロネス族|エブロネス族]])
***[[w:en:Nervii|Nervii]]([[w:ネルウィイ族|ネルウィイ族]])
***[[w:en:Senones|Senones]](セノネス族)- [[w:la:Senones|la:Senones]]
***[[w:en:Carnutes|Carnutes]](カルヌテス族)
***[[w:en:Parisii (Gaul)|Parisii (Gaul)]]([[w:パリシイ族|パリスィ族]])
****[[w:en:Lutetia|Lutetia]]([[w:ルテティア|ルテティア]])
***[[w:en:Menapii|Menapii]](メナピイ族)
***[[w:en:Treveri|Treveri]](トレーウェリー族)
***[[w:en:Aedui|Aedui]]([[w:ハエドゥイ族|ハエドゥイ族]])
***[[w:en:Sequani|Sequani]](セクアニ族)
***[[w:en:Remi|Remi]](レーミー族)
**[[w:en:Category:Germanic peoples|Category:Germanic peoples]](ゲルマーニア人のカテゴリ)
***[[w:en:Category:Ancient Germanic peoples|Category:Ancient Germanic peoples]](古代ゲルマーニア人)
***[[w:en:Germanic peoples|Germanic peoples]](ゲルマーニア人)
***[[w:en:Ubii|Ubii]](ウビイー族)
***[[w:en:Suebi|Suebi]]([[w:スエビ族|スエービー族]])
***[[w:en:Chatti|Chatti]](カッティー族)
***[[w:en:Cherusci|Cherusci]](ケールスキー族)
***[[w:en:Sicambri|Sicambri]](スガンブリー族)
***[[w:en:Hercynian Forest|Hercynian Forest]](ヘルキュニアの森)
**地理学者・史家
***[[w:en:Posidonius|Posidonius]]([[w:ポセイドニオス|ポセイドニオス]];BC135-51年頃)- [[w:la:Posidonius Apameus|la:Posidonius Apameus]]
***[[w:en:Diodorus Siculus|Diodorus Siculus]]([[w:シケリアのディオドロス|シケリアのディオドロス]];BC1世紀) - [[w:la:Diodorus Siculus|la:Diodorus Siculus]]
****〔ウィキソース ギリシア語版:[[s:el:Διόδωρος Σικελιώτης|Διόδωρος Σικελιώτης]](シケリアのディオドロス)- [[s:el:Ιστορική Βιβλιοθήκη|Ιστορική Βιβλιοθήκη]](歴史叢書)〕
***[[w:en:Strabo|Strabo]]([[w:ストラボン|ストラボン]];BC63年頃–AD24年頃)- [[w:la:Strabo|la:Strabo]]
****〔ウィキソース ギリシア語版:[[s:el:Στράβων|Στράβων]](ストラボン) - [[s:el:Γεωγραφία|Γεωγραφία]](世界地誌)〕
***[[w:en:Tacitus|Tacitus]]([[w:タキトゥス|タキトゥス]];56年頃–117年頃)- [[w:la:Cornelius Tacitus|la:Cornelius Tacitus]]
****[[w:en:Germania (book)|Germania (book)]]([[w:ゲルマニア (書物)|ゲルマーニア (書物)]])- [[w:la:Germania (opus Taciti)|la:Germania (opus Taciti)]]
***[[w:en:Pomponius Mela|Pomponius Mela]](ポンポニウス・メラ;1世紀)- [[w:la:Pomponius Mela|Pomponius Mela]]
***[[w:en:Athenaeus|Athenaeus]]([[w:アテナイオス|アテナイオス]];2世紀頃)- [[w:la:Athenaeus Naucratita|la:Athenaeus Naucratita]]
***[[w:en:Theodor Mommsen|Theodor Mommsen]]([[w:テオドール・モムゼン|テオドール・モムゼン]];19世紀)- [[w:la:Theodorus Mommsen|la:Theodorus Mommsen]]
**[[w:en:Category:Celtic culture|Category:Celtic culture]](ケルト文化)
**[[w:en:Category:Celtic mythology|Category:Celtic mythology]]([[w:Category:ケルト神話|Category:ケルト神話]])
***[[w:en:Druid|Druid]]([[w:ドルイド|ドルイド]]) - [[w:la:Druis|la:Druis]]
***[[w:en:Wicker Man|Wicker Man]]([[w:ウィッカーマン|ウィッカーマン]])
**[[w:en:Category::Celtic_gods|Category::Celtic_gods]](ケルトの神々)
**[[w:en:Category:Ancient Gaulish and British gods|Category:Ancient Gaulish and British gods]](古代ガッリアとブリタニアの神々)
***[[w:en:Taranis|Taranis]](タラニス)
***[[w:en:Cernunnos|Cernunnos]](ケルヌンノス)
***[[w:en:Dis Pater|Dis Pater]](ディス・パテル)
***[[w:en:Sucellus|Sucellus]](スケッルス)
**カエサルの副官たち
***[[w:en:Titus_Labienus|Titus Labienus]]([[w:ティトゥス・ラビエヌス|ティトゥス・ラビエヌス]])- [[w:la:Titus_Labienus|la:Titus Labienus]]
***[[w:en:Trebonius|Gaius Trebonius]]([[w:ガイウス・トレボニウス|ガイウス・トレボニウス]])- [[w:la:Gaius Trebonius|la:Gaius Trebonius]]
***[[w:en:Quintus_Tullius_Cicero|Quintus Tullius Cicero]]([[w:クィントゥス・トゥッリウス・キケロ|クィントゥス・トゥッリウス・キケロ]])- [[w:la:Quintus_Tullius_Cicero|la:Quintus Tullius Cicero]]
***[[w:en:|en:]]([[w:|w:]])
***[[w:en:|en:]]([[w:|w:]])
*ウィクショナリー フランス語版
**[[wikt:fr:calo]](カーロー、軍属奴隷)
6vjvpu1bt2ld56wawm2d9cnb2c9tav4
コンメンタール国籍法
0
11006
264375
186569
2024-11-27T13:01:52Z
Fukupow
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/* 外部リンク */
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text/x-wiki
[[法学]]>[[コンメンタール]]>[[コンメンタール国籍法]]>[[コンメンタール国籍法施行規則]]
国籍法(昭和25年5月4日法律第147号、最終改正:平成26年6月13日法律第70号<!-- 平成30年6月20日法律第59号(令和4年4月1日施行) -->)の逐条解説書。
== 本則 ==
: [[国籍法第1条|第1条]](この法律の目的)
: [[国籍法第2条|第2条]](出生による国籍の取得)
: [[国籍法第3条|第3条]](認知された子の国籍の取得)
: [[国籍法第4条|第4条]](帰化)
: [[国籍法第5条|第5条]]
: [[国籍法第6条|第6条]]
: [[国籍法第7条|第7条]]
: [[国籍法第8条|第8条]]
: [[国籍法第9条|第9条]]
: [[国籍法第10条|第10条]]
: [[国籍法第11条|第11条]](国籍の喪失)
: [[国籍法第12条|第12条]]
: [[国籍法第13条|第13条]]
: [[国籍法第14条|第14条]](国籍の選択)
: [[国籍法第15条|第15条]]
: [[国籍法第16条|第16条]]
: [[国籍法第17条|第17条]](国籍の再取得)
: [[国籍法第18条|第18条]](法定代理人がする届出等)
: [[国籍法第18条の2|第18条の2]](行政手続法の適用除外)
: [[国籍法第19条|第19条]](省令への委任)
: [[国籍法第20条|第20条]](罰則)
== 外部リンク ==
* [https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=325AC0000000147 国籍法 | e-Gov法令検索]
* [http://www.moj.go.jp/MINJI/kokusekiho.html 法務省:国籍法]
* [https://www.japaneselawtranslation.go.jp/ja/laws/view/4713 国籍法 - 日本語/英語 - 日本法令外国語訳DBシステム]
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高等学校歴史総合
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[[小学校・中学校・高等学校の学習]]>[[高等学校の学習]]>[[高等学校地理歴史]]>高等学校歴史総合
{{進捗状況}} 「'''歴史総合'''」は標準単位数2単位で'''必修科目'''です。
=== 注意事項 ===
# 目次の項目、本文内容ともに[https://www.shimizushoin.co.jp/info_kyo/rekishisougou/index.html 清水書院『私たちの歴史総合』]【歴総705】に合わせています。
# なお、古代と中世に関しては、当科目では扱っていないので、[[高等学校世界史探究|世界史探究]]と[[高等学校日本史探究|日本史探究]]の学習内容を見てください。
== 第1編 歴史の扉 ==
=== 第1章 歴史と私たち ===
* [[高等学校歴史総合/日本とスポーツの歴史|日本とスポーツの歴史]]{{進捗|100%|2024-11-22}}(スポーツ史)
=== 第2章 歴史の特質と資料 ===
* 8月15日とそれぞれの「終戦」{{進捗|00%|2022-12-18}}(玉音放送)
== 第2編 近代化と私たち ==
=== 第1章 生活や社会の変化を読み取ってみよう(未記述) ===
=== 第2章 結びつく世界と日本 ===
==== 18世紀までの世界 ====
* [[高等学校歴史総合/近世の日本と世界|近世の日本と世界]]{{進捗|100%|2024-11-23}}(日本の「鎖国」と東アジアの交易、近世東アジアの国際秩序)
* [[高等学校歴史総合/18世紀の中国とアジア貿易|18世紀の中国とアジア貿易]]{{進捗|00%|2023-02-12}}(清の繁栄、清と近隣諸国とのつながり)
* [[高等学校歴史総合/18世紀のイギリス・アジア・アフリカ|18世紀のイギリス・アジア・アフリカ]]{{進捗|00%|2023-02-12}}(ヨーロッパの世界進出と大西洋三角貿易、世界経済の覇権を握ったイギリス)
* もっと知りたい 海を渡った日本産陶磁器{{進捗|00%|2023-12-24}}(陶磁器の歴史)
* もっと知りたい 琉球と蝦夷地{{進捗|00%|2022-12-25}}(琉球王国、蝦夷地)
==== 工業化と世界市場の形成 ====
* 産業革命による経済発展と社会の変化{{進捗|00%|2022-11-25}}(産業革命、資本主義社会)
* 世界市場の形成とイギリスによるアジア進出{{進捗|00%|2023-02-25}}(イギリスによる世界市場の形成、イギリスのアジア進出 )
* [[高等学校歴史総合/日本の開国とその影響|日本の開国とその影響]]{{進捗|00%|2022-11-21}}(日本の開国・開港、交通革命の進展と東アジア)
* 歴史のなかの16歳 工女と工場法{{進捗|00%|2022-12-25}}(工場法など)
* [[高等学校歴史総合/もっと知りたい 産業革命とブラスバンド|もっと知りたい 産業革命とブラスバンド]]{{進捗|100%|2024-11-23}}(金管楽器の歴史)
=== 第3章 国民国家と明治維新 ===
==== 国民国家と立憲体制 ====
* 二つの市民革命と近代民主主義社会の成立{{進捗|00%|2022-11-22}}(アメリカ独立革命、フランス革命、ナポレオン)
* 国民統合とナショナリズム{{進捗|00%|2022-11-23}}(19世紀前半のヨーロッパ諸国、ドイツ統一、南北戦争など)
* 明治維新期の日本と世界{{進捗|100%|2023-02-19}}(明治新政府の成立、近代化と東アジア)
* 近代国家への移行と憲法の制定{{進捗|00%|2022-11-24}}(大日本帝国憲法、条約改正の実現)
* もっと知りたい 国境の過去・現在・未来{{進捗|00%|2022-12-26}}(近代国家と領土画定など)
* もっと知りたい 女王と天皇 理想の家族{{進捗|00%|2022-02-12}}(近代の天皇史)
==== 帝国主義とアジア・アフリカの変容 ====
* 列強による帝国主義{{進捗|00%|2023-02-17}}(第2次産業革命と帝国主義、欧米諸国の帝国主義政策)
* 帝国主義がアジア・アフリカにもたらしたもの{{進捗|00%|2023-02-18}}(列強のアフリカ分割、西アジア諸国の改革など)
* 日清戦争とその影響{{進捗|00%|2023-02-15}}(日清戦争、東アジアの構造変動)
* 日露戦争{{進捗|00%|2022-11-22}}(義和団事件、日露戦争、朝鮮の植民地化、辛亥革命)
* もっと知りたい 近代の博覧会{{進捗|00%|2022-12-24}}(万国博覧会の歴史)
* [[高等学校歴史総合/もっと知りたい ペストと感染症|もっと知りたい ペストと感染症]]{{進捗|75%|2024-11-24}}(ペストの大流行ほか)
=== 第4章 近代化と現代的な諸課題 ===
* 鉄道建設{{進捗|00%|2023-03-02}}
== 第3編 国際秩序の変化や大衆化と私たち ==
=== 第1章 生活や社会の変化を読み取ってみよう(未記述) ===
=== 第2章 第一次世界大戦と大衆社会 ===
==== 第一次世界大戦と国際社会 ====
* [[高等学校歴史総合/第一次世界大戦|第一次世界大戦]]{{進捗|100%|2024-11-25}}(第一次世界大戦)
* [[高等学校歴史総合/社会主義革命|社会主義革命]]{{進捗|75%|2024-11-27}}(ロシア革命、コミンテルン、ソビエト社会主義共和国連邦)
* [[高等学校歴史総合/国際協調体制|国際協調体制]]{{進捗|100%|2024-11-23}}(ヴェルサイユ体制とワシントン体制、国際協調の高まり)
* [[高等学校歴史総合/アジアの民族運動|アジアの民族運動]]{{進捗|00%|2023-01-27}}(アジアの経済成長、東アジアの民族運動、インド・東南アジア・西アジアの民族運動)
* もっと知りたい ユダヤ人のパレスチナ移住とパレスチナ分割{{進捗|00%|2022-12-30}}(パレスチナの歴史、シオニズム運動)
* もっと知りたい 浅川巧 朝鮮の人々とともに生きた日本人{{進捗|00%|2022-12-30}}(浅川兄弟)
==== 1920年代の世界と大衆の時代の到来 ====
* [[高等学校歴史総合/大衆の政治参加|大衆の政治参加]]{{進捗|00%|2023-01-08}}(世界史上の民衆運動、大正デモクラシーと大衆の政治参加)
* [[高等学校歴史総合/女性の社会参加|女性の社会参加]]{{進捗|00%|2023-02-23}}(女性の社会進出、日本の大正期の女性)
* [[高等学校歴史総合/大衆社会の形成|大衆社会の形成]]{{進捗|100%|2024-11-27}}(大衆社会の出現、1920年代のアメリカ、日本の大衆社会)
* もっと知りたい 映画と「大衆化」{{進捗|00%|2022-12-28}}(映画の歴史)
* もっと知りたい オリンピックの歩み{{進捗|00%|2022-12-28}}(オリンピックの歴史)
=== 第3章 経済危機と第二次世界大戦 ===
==== 国際協調の挫折と2度目の世界大戦 ====
* 世界恐慌{{進捗|00%|2022-11-24}}(昭和恐慌、ブロック経済圏)
* ファシズムの台頭{{進捗|00%|2022-12-31}}(ファシズム、ナチ党の政権掌握)
* 日本の大陸進出{{進捗|00%|2022-12-08}}(満州事変、日中戦争)
* 第二次世界大戦{{進捗|00%|2022-11-16}}(ドイツの拡大、第二次世界大戦、大量殺戮と民衆の抵抗)
* もっと知りたい リンゲルブルム・アーカイヴと『アンネの日記』{{進捗|00%|2022-12-25}}(アンネ・フランク)
* 歴史のなかの16歳 満蒙開拓青少年義勇軍{{進捗|100%|2022-11-21}}(満州農業移民、満蒙開拓青少年義勇軍、「鍬の戦士」)
==== 世界大戦がもたらしたもの ====
* アジア太平洋戦争{{進捗|100%|2023-01-29}}(日米交渉の挫折と開戦、日本のアジア支配、戦争の被害と加害)
* 戦争が変えた人々のくらし{{進捗|00%|2023-02-19}}(マス・メディアの普及と情報や生活の画一化、国民の組織化と戦時動員ほか)
* 戦後世界の新たな枠組み{{進捗|00%|2023-01-29}}(戦後構想と大戦の終結、冷戦の開始とドイツの分断、国際連合の成立)
* 敗戦後の日本とアジア{{進捗|00%|2023-02-19}}(日本の戦後改革、大衆は敗戦をどう生きたか、冷戦と日本の独立)
* 冷戦下の東アジア{{進捗|00%|2023-02-19}}(戦後の中国、朝鮮半島の南北分断、現代の朝鮮半島と台湾)
* もっと知りたい 戦争を「記憶」するということ{{進捗|00%|2022-12-24}}(明日の神話ほか)
* もっと知りたい 核と原子力エネルギー{{進捗|00%|2023-02-09}}(原子力の平和利用、原子力エネルギーの普及と課題)
=== 第4章 国際秩序の変化や大衆化と現代的な諸課題 ===
* ナショナリズム{{進捗|00%|2022-03-08}}[発展講義]
== 第4編 グローバル化と私たち ==
=== 第1章 生活や社会の変化を読み取ってみよう(未記述) ===
=== 第2章 冷戦と世界経済 ===
==== 冷戦と国際政治 ====
* 脱植民地化とアジア・アフリカ諸国{{進捗|00%|2023-01-25}}(アジア・アフリカ諸国の独立、第三世界の形成と連帯)
* 冷戦下の地域紛争{{進捗|00%|2023-01-26}}(ベトナム戦争、中東戦争)
* 先進国の政治と社会運動{{進捗|00%|2023-01-29}}(西側諸国と福祉国家政策、国境をこえる社会運動)
* 核兵器の脅威と核軍縮{{進捗|00%|2023-01-29}}(核拡散と核兵器反対運動、核軍縮の取り組みと課題)
==== 世界経済の拡大と日本 ====
* [[高等学校歴史総合/西ヨーロッパ・東南アジアの地域連携|西ヨーロッパ・東南アジアの地域連携]]{{進捗|00%|2022-12-31}}(西ヨーロッパ統合への動き、東南アジア諸国の動き)
* 戦後の日本とアジア諸国との関係{{進捗|00%|2023-01-01}}(日本の国連加盟、アジア諸国との国交回復、沖縄の本土復帰)
* 高度経済成長{{進捗|00%|2023-01-01}}(日本と西ドイツの経済成長、高度経済成長と人々の生活、成長のもたらした課題)
* もっと知りたい グローバリゼーションとストリートダンス{{進捗|00%|2022-12-27}}(ダンスの歴史)
* 歴史のなかの16歳 集団就職 「金の卵」たちの時代{{進捗|00%|2023-02-09}}(集団就職列車など)
=== 第3章 世界秩序の変容と日本 ===
==== 市場経済の変容と冷戦の終結 ====
* 石油危機と価値観の転換{{進捗|00%|2023-02-09}}(戦後経済の転換、石油危機と日本、価値観の転換)
* アジアの成長{{進捗|00%|2023-02-13}}(アジア諸国の成長、第三世界の多様化、日本の経済大国化)
* 冷戦の終結{{進捗|00%|2023-02-12}}(社会主義世界の変容、冷戦の終結とソ連の崩壊、冷戦後の地域紛争と日本)
==== 冷戦終結後の世界 ====
* 民主化の進展と冷戦終結後の日本{{進捗|00%|2022-12-31}}(民主化の進展と課題、日本の政治の展開)
* [[高等学校歴史総合/市場開放と経済の自由化|市場開放と経済の自由化]]{{進捗|00%|2022-12-31}}(新自由主義の台頭、経済のグローバル化と新たな国際経済組織)
* [[高等学校歴史総合/地域統合の進展と課題|地域統合の進展と課題]]{{進捗|00%|2022-12-31}}(地域統合の拡大、地域統合の課題)
* [[高等学校歴史総合/情報通信技術の発達|情報通信技術の発達]]{{進捗|00%|2022-12-30}}(情報通信技術の発達と社会の変化、情報化社会とその課題)
* [[高等学校歴史総合/冷戦終結後の紛争と平和への取り組み|冷戦終結後の紛争と平和への取り組み]]{{進捗|00%|2023-01-01}}(冷戦終結後の紛争、紛争の解決と国際社会の役割)
* もっと知りたい 災害と私たち{{進捗|00%|2022-11-21}}(阪神淡路大震災、東日本大震災)
* もっと知りたい 中東の少数派クルド人{{進捗|00%|2022-12-27}}(国民国家の中の少数派、クルド人問題の展開)
=== 第4章 現代的な諸課題の形成と展望 ===
* 移民{{進捗|00%|2023-02-22}}(近代の移民史)
== 近現代史関連用語解説・参考 ==
* 近現代史関連用語解説{{進捗|00%|2023-02-22}}
* 途上国から見た国際関係理論{{進捗|00%|2023-03-05}}[発展講義(イマニュエル・ウォーラースティンなど)]
[[カテゴリ:歴史|こうとうかつこうれきしそうこう]]
[[カテゴリ:高等学校歴史総合|*]]
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/* 冷戦終結後の世界 */
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wikitext
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[[小学校・中学校・高等学校の学習]]>[[高等学校の学習]]>[[高等学校地理歴史]]>高等学校歴史総合
{{進捗状況}} 「'''歴史総合'''」は標準単位数2単位で'''必修科目'''です。
=== 注意事項 ===
# 目次の項目、本文内容ともに[https://www.shimizushoin.co.jp/info_kyo/rekishisougou/index.html 清水書院『私たちの歴史総合』]【歴総705】に合わせています。
# なお、古代と中世に関しては、当科目では扱っていないので、[[高等学校世界史探究|世界史探究]]と[[高等学校日本史探究|日本史探究]]の学習内容を見てください。
== 第1編 歴史の扉 ==
=== 第1章 歴史と私たち ===
* [[高等学校歴史総合/日本とスポーツの歴史|日本とスポーツの歴史]]{{進捗|100%|2024-11-22}}(スポーツ史)
=== 第2章 歴史の特質と資料 ===
* 8月15日とそれぞれの「終戦」{{進捗|00%|2022-12-18}}(玉音放送)
== 第2編 近代化と私たち ==
=== 第1章 生活や社会の変化を読み取ってみよう(未記述) ===
=== 第2章 結びつく世界と日本 ===
==== 18世紀までの世界 ====
* [[高等学校歴史総合/近世の日本と世界|近世の日本と世界]]{{進捗|100%|2024-11-23}}(日本の「鎖国」と東アジアの交易、近世東アジアの国際秩序)
* [[高等学校歴史総合/18世紀の中国とアジア貿易|18世紀の中国とアジア貿易]]{{進捗|00%|2023-02-12}}(清の繁栄、清と近隣諸国とのつながり)
* [[高等学校歴史総合/18世紀のイギリス・アジア・アフリカ|18世紀のイギリス・アジア・アフリカ]]{{進捗|00%|2023-02-12}}(ヨーロッパの世界進出と大西洋三角貿易、世界経済の覇権を握ったイギリス)
* もっと知りたい 海を渡った日本産陶磁器{{進捗|00%|2023-12-24}}(陶磁器の歴史)
* もっと知りたい 琉球と蝦夷地{{進捗|00%|2022-12-25}}(琉球王国、蝦夷地)
==== 工業化と世界市場の形成 ====
* 産業革命による経済発展と社会の変化{{進捗|00%|2022-11-25}}(産業革命、資本主義社会)
* 世界市場の形成とイギリスによるアジア進出{{進捗|00%|2023-02-25}}(イギリスによる世界市場の形成、イギリスのアジア進出 )
* [[高等学校歴史総合/日本の開国とその影響|日本の開国とその影響]]{{進捗|00%|2022-11-21}}(日本の開国・開港、交通革命の進展と東アジア)
* 歴史のなかの16歳 工女と工場法{{進捗|00%|2022-12-25}}(工場法など)
* [[高等学校歴史総合/もっと知りたい 産業革命とブラスバンド|もっと知りたい 産業革命とブラスバンド]]{{進捗|100%|2024-11-23}}(金管楽器の歴史)
=== 第3章 国民国家と明治維新 ===
==== 国民国家と立憲体制 ====
* 二つの市民革命と近代民主主義社会の成立{{進捗|00%|2022-11-22}}(アメリカ独立革命、フランス革命、ナポレオン)
* 国民統合とナショナリズム{{進捗|00%|2022-11-23}}(19世紀前半のヨーロッパ諸国、ドイツ統一、南北戦争など)
* 明治維新期の日本と世界{{進捗|100%|2023-02-19}}(明治新政府の成立、近代化と東アジア)
* 近代国家への移行と憲法の制定{{進捗|00%|2022-11-24}}(大日本帝国憲法、条約改正の実現)
* もっと知りたい 国境の過去・現在・未来{{進捗|00%|2022-12-26}}(近代国家と領土画定など)
* もっと知りたい 女王と天皇 理想の家族{{進捗|00%|2022-02-12}}(近代の天皇史)
==== 帝国主義とアジア・アフリカの変容 ====
* 列強による帝国主義{{進捗|00%|2023-02-17}}(第2次産業革命と帝国主義、欧米諸国の帝国主義政策)
* 帝国主義がアジア・アフリカにもたらしたもの{{進捗|00%|2023-02-18}}(列強のアフリカ分割、西アジア諸国の改革など)
* 日清戦争とその影響{{進捗|00%|2023-02-15}}(日清戦争、東アジアの構造変動)
* 日露戦争{{進捗|00%|2022-11-22}}(義和団事件、日露戦争、朝鮮の植民地化、辛亥革命)
* もっと知りたい 近代の博覧会{{進捗|00%|2022-12-24}}(万国博覧会の歴史)
* [[高等学校歴史総合/もっと知りたい ペストと感染症|もっと知りたい ペストと感染症]]{{進捗|75%|2024-11-24}}(ペストの大流行ほか)
=== 第4章 近代化と現代的な諸課題 ===
* 鉄道建設{{進捗|00%|2023-03-02}}
== 第3編 国際秩序の変化や大衆化と私たち ==
=== 第1章 生活や社会の変化を読み取ってみよう(未記述) ===
=== 第2章 第一次世界大戦と大衆社会 ===
==== 第一次世界大戦と国際社会 ====
* [[高等学校歴史総合/第一次世界大戦|第一次世界大戦]]{{進捗|100%|2024-11-25}}(第一次世界大戦)
* [[高等学校歴史総合/社会主義革命|社会主義革命]]{{進捗|75%|2024-11-27}}(ロシア革命、コミンテルン、ソビエト社会主義共和国連邦)
* [[高等学校歴史総合/国際協調体制|国際協調体制]]{{進捗|100%|2024-11-23}}(ヴェルサイユ体制とワシントン体制、国際協調の高まり)
* [[高等学校歴史総合/アジアの民族運動|アジアの民族運動]]{{進捗|00%|2023-01-27}}(アジアの経済成長、東アジアの民族運動、インド・東南アジア・西アジアの民族運動)
* もっと知りたい ユダヤ人のパレスチナ移住とパレスチナ分割{{進捗|00%|2022-12-30}}(パレスチナの歴史、シオニズム運動)
* もっと知りたい 浅川巧 朝鮮の人々とともに生きた日本人{{進捗|00%|2022-12-30}}(浅川兄弟)
==== 1920年代の世界と大衆の時代の到来 ====
* [[高等学校歴史総合/大衆の政治参加|大衆の政治参加]]{{進捗|00%|2023-01-08}}(世界史上の民衆運動、大正デモクラシーと大衆の政治参加)
* [[高等学校歴史総合/女性の社会参加|女性の社会参加]]{{進捗|00%|2023-02-23}}(女性の社会進出、日本の大正期の女性)
* [[高等学校歴史総合/大衆社会の形成|大衆社会の形成]]{{進捗|100%|2024-11-27}}(大衆社会の出現、1920年代のアメリカ、日本の大衆社会)
* もっと知りたい 映画と「大衆化」{{進捗|00%|2022-12-28}}(映画の歴史)
* もっと知りたい オリンピックの歩み{{進捗|00%|2022-12-28}}(オリンピックの歴史)
=== 第3章 経済危機と第二次世界大戦 ===
==== 国際協調の挫折と2度目の世界大戦 ====
* 世界恐慌{{進捗|00%|2022-11-24}}(昭和恐慌、ブロック経済圏)
* ファシズムの台頭{{進捗|00%|2022-12-31}}(ファシズム、ナチ党の政権掌握)
* 日本の大陸進出{{進捗|00%|2022-12-08}}(満州事変、日中戦争)
* 第二次世界大戦{{進捗|00%|2022-11-16}}(ドイツの拡大、第二次世界大戦、大量殺戮と民衆の抵抗)
* もっと知りたい リンゲルブルム・アーカイヴと『アンネの日記』{{進捗|00%|2022-12-25}}(アンネ・フランク)
* 歴史のなかの16歳 満蒙開拓青少年義勇軍{{進捗|100%|2022-11-21}}(満州農業移民、満蒙開拓青少年義勇軍、「鍬の戦士」)
==== 世界大戦がもたらしたもの ====
* アジア太平洋戦争{{進捗|100%|2023-01-29}}(日米交渉の挫折と開戦、日本のアジア支配、戦争の被害と加害)
* 戦争が変えた人々のくらし{{進捗|00%|2023-02-19}}(マス・メディアの普及と情報や生活の画一化、国民の組織化と戦時動員ほか)
* 戦後世界の新たな枠組み{{進捗|00%|2023-01-29}}(戦後構想と大戦の終結、冷戦の開始とドイツの分断、国際連合の成立)
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* 冷戦下の東アジア{{進捗|00%|2023-02-19}}(戦後の中国、朝鮮半島の南北分断、現代の朝鮮半島と台湾)
* もっと知りたい 戦争を「記憶」するということ{{進捗|00%|2022-12-24}}(明日の神話ほか)
* もっと知りたい 核と原子力エネルギー{{進捗|00%|2023-02-09}}(原子力の平和利用、原子力エネルギーの普及と課題)
=== 第4章 国際秩序の変化や大衆化と現代的な諸課題 ===
* ナショナリズム{{進捗|00%|2022-03-08}}[発展講義]
== 第4編 グローバル化と私たち ==
=== 第1章 生活や社会の変化を読み取ってみよう(未記述) ===
=== 第2章 冷戦と世界経済 ===
==== 冷戦と国際政治 ====
* 脱植民地化とアジア・アフリカ諸国{{進捗|00%|2023-01-25}}(アジア・アフリカ諸国の独立、第三世界の形成と連帯)
* 冷戦下の地域紛争{{進捗|00%|2023-01-26}}(ベトナム戦争、中東戦争)
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==== 世界経済の拡大と日本 ====
* [[高等学校歴史総合/西ヨーロッパ・東南アジアの地域連携|西ヨーロッパ・東南アジアの地域連携]]{{進捗|00%|2022-12-31}}(西ヨーロッパ統合への動き、東南アジア諸国の動き)
* 戦後の日本とアジア諸国との関係{{進捗|00%|2023-01-01}}(日本の国連加盟、アジア諸国との国交回復、沖縄の本土復帰)
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* もっと知りたい グローバリゼーションとストリートダンス{{進捗|00%|2022-12-27}}(ダンスの歴史)
* 歴史のなかの16歳 集団就職 「金の卵」たちの時代{{進捗|00%|2023-02-09}}(集団就職列車など)
=== 第3章 世界秩序の変容と日本 ===
==== 市場経済の変容と冷戦の終結 ====
* 石油危機と価値観の転換{{進捗|00%|2023-02-09}}(戦後経済の転換、石油危機と日本、価値観の転換)
* アジアの成長{{進捗|00%|2023-02-13}}(アジア諸国の成長、第三世界の多様化、日本の経済大国化)
* 冷戦の終結{{進捗|00%|2023-02-12}}(社会主義世界の変容、冷戦の終結とソ連の崩壊、冷戦後の地域紛争と日本)
==== 冷戦終結後の世界 ====
* 民主化の進展と冷戦終結後の日本{{進捗|00%|2022-12-31}}(民主化の進展と課題、日本の政治の展開)
* [[高等学校歴史総合/市場開放と経済の自由化|市場開放と経済の自由化]]{{進捗|00%|2022-12-31}}(新自由主義の台頭、経済のグローバル化と新たな国際経済組織)
* [[高等学校歴史総合/地域統合の進展と課題|地域統合の進展と課題]]{{進捗|00%|2022-12-31}}(地域統合の拡大、地域統合の課題)
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=== 第4章 現代的な諸課題の形成と展望 ===
* 移民{{進捗|00%|2023-02-22}}(近代の移民史)
== 近現代史関連用語解説・参考 ==
* 近現代史関連用語解説{{進捗|00%|2023-02-22}}
* 途上国から見た国際関係理論{{進捗|00%|2023-03-05}}[発展講義(イマニュエル・ウォーラースティンなど)]
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[[小学校・中学校・高等学校の学習]]>[[高等学校の学習]]>[[高等学校地理歴史]]>高等学校歴史総合
{{進捗状況}} 「'''歴史総合'''」は標準単位数2単位で'''必修科目'''です。
=== 注意事項 ===
# 目次の項目、本文内容ともに[https://www.shimizushoin.co.jp/info_kyo/rekishisougou/index.html 清水書院『私たちの歴史総合』]【歴総705】に合わせています。
# なお、古代と中世に関しては、当科目では扱っていないので、[[高等学校世界史探究|世界史探究]]と[[高等学校日本史探究|日本史探究]]の学習内容を見てください。
== 第1編 歴史の扉 ==
=== 第1章 歴史と私たち ===
* [[高等学校歴史総合/日本とスポーツの歴史|日本とスポーツの歴史]]{{進捗|100%|2024-11-22}}(スポーツ史)
=== 第2章 歴史の特質と資料 ===
* 8月15日とそれぞれの「終戦」{{進捗|00%|2022-12-18}}(玉音放送)
== 第2編 近代化と私たち ==
=== 第1章 生活や社会の変化を読み取ってみよう(未記述) ===
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==== 18世紀までの世界 ====
* [[高等学校歴史総合/近世の日本と世界|近世の日本と世界]]{{進捗|100%|2024-11-23}}(日本の「鎖国」と東アジアの交易、近世東アジアの国際秩序)
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* もっと知りたい 海を渡った日本産陶磁器{{進捗|00%|2023-12-24}}(陶磁器の歴史)
* もっと知りたい 琉球と蝦夷地{{進捗|00%|2022-12-25}}(琉球王国、蝦夷地)
==== 工業化と世界市場の形成 ====
* 産業革命による経済発展と社会の変化{{進捗|00%|2022-11-25}}(産業革命、資本主義社会)
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=== 第3章 国民国家と明治維新 ===
==== 国民国家と立憲体制 ====
* 二つの市民革命と近代民主主義社会の成立{{進捗|00%|2022-11-22}}(アメリカ独立革命、フランス革命、ナポレオン)
* 国民統合とナショナリズム{{進捗|00%|2022-11-23}}(19世紀前半のヨーロッパ諸国、ドイツ統一、南北戦争など)
* 明治維新期の日本と世界{{進捗|100%|2023-02-19}}(明治新政府の成立、近代化と東アジア)
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==== 帝国主義とアジア・アフリカの変容 ====
* 列強による帝国主義{{進捗|00%|2023-02-17}}(第2次産業革命と帝国主義、欧米諸国の帝国主義政策)
* 帝国主義がアジア・アフリカにもたらしたもの{{進捗|00%|2023-02-18}}(列強のアフリカ分割、西アジア諸国の改革など)
* 日清戦争とその影響{{進捗|00%|2023-02-15}}(日清戦争、東アジアの構造変動)
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=== 第4章 近代化と現代的な諸課題 ===
* 鉄道建設{{進捗|00%|2023-03-02}}
== 第3編 国際秩序の変化や大衆化と私たち ==
=== 第1章 生活や社会の変化を読み取ってみよう(未記述) ===
=== 第2章 第一次世界大戦と大衆社会 ===
==== 第一次世界大戦と国際社会 ====
* [[高等学校歴史総合/第一次世界大戦|第一次世界大戦]]{{進捗|100%|2024-11-25}}(第一次世界大戦)
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* もっと知りたい 浅川巧 朝鮮の人々とともに生きた日本人{{進捗|00%|2022-12-30}}(浅川兄弟)
==== 1920年代の世界と大衆の時代の到来 ====
* [[高等学校歴史総合/大衆の政治参加|大衆の政治参加]]{{進捗|00%|2023-01-08}}(世界史上の民衆運動、大正デモクラシーと大衆の政治参加)
* [[高等学校歴史総合/女性の社会参加|女性の社会参加]]{{進捗|00%|2023-02-23}}(女性の社会進出、日本の大正期の女性)
* [[高等学校歴史総合/大衆社会の形成|大衆社会の形成]]{{進捗|100%|2024-11-27}}(大衆社会の出現、1920年代のアメリカ、日本の大衆社会)
* もっと知りたい 映画と「大衆化」{{進捗|00%|2022-12-28}}(映画の歴史)
* もっと知りたい オリンピックの歩み{{進捗|00%|2022-12-28}}(オリンピックの歴史)
=== 第3章 経済危機と第二次世界大戦 ===
==== 国際協調の挫折と2度目の世界大戦 ====
* 世界恐慌{{進捗|00%|2022-11-24}}(昭和恐慌、ブロック経済圏)
* ファシズムの台頭{{進捗|00%|2022-12-31}}(ファシズム、ナチ党の政権掌握)
* 日本の大陸進出{{進捗|00%|2022-12-08}}(満州事変、日中戦争)
* 第二次世界大戦{{進捗|00%|2022-11-16}}(ドイツの拡大、第二次世界大戦、大量殺戮と民衆の抵抗)
* もっと知りたい リンゲルブルム・アーカイヴと『アンネの日記』{{進捗|00%|2022-12-25}}(アンネ・フランク)
* 歴史のなかの16歳 満蒙開拓青少年義勇軍{{進捗|100%|2022-11-21}}(満州農業移民、満蒙開拓青少年義勇軍、「鍬の戦士」)
==== 世界大戦がもたらしたもの ====
* アジア太平洋戦争{{進捗|100%|2023-01-29}}(日米交渉の挫折と開戦、日本のアジア支配、戦争の被害と加害)
* 戦争が変えた人々のくらし{{進捗|00%|2023-02-19}}(マス・メディアの普及と情報や生活の画一化、国民の組織化と戦時動員ほか)
* 戦後世界の新たな枠組み{{進捗|00%|2023-01-29}}(戦後構想と大戦の終結、冷戦の開始とドイツの分断、国際連合の成立)
* 敗戦後の日本とアジア{{進捗|00%|2023-02-19}}(日本の戦後改革、大衆は敗戦をどう生きたか、冷戦と日本の独立)
* 冷戦下の東アジア{{進捗|00%|2023-02-19}}(戦後の中国、朝鮮半島の南北分断、現代の朝鮮半島と台湾)
* もっと知りたい 戦争を「記憶」するということ{{進捗|00%|2022-12-24}}(明日の神話ほか)
* もっと知りたい 核と原子力エネルギー{{進捗|00%|2023-02-09}}(原子力の平和利用、原子力エネルギーの普及と課題)
=== 第4章 国際秩序の変化や大衆化と現代的な諸課題 ===
* ナショナリズム{{進捗|00%|2022-03-08}}[発展講義]
== 第4編 グローバル化と私たち ==
=== 第1章 生活や社会の変化を読み取ってみよう(未記述) ===
=== 第2章 冷戦と世界経済 ===
==== 冷戦と国際政治 ====
* 脱植民地化とアジア・アフリカ諸国{{進捗|00%|2023-01-25}}(アジア・アフリカ諸国の独立、第三世界の形成と連帯)
* 冷戦下の地域紛争{{進捗|00%|2023-01-26}}(ベトナム戦争、中東戦争)
* 先進国の政治と社会運動{{進捗|00%|2023-01-29}}(西側諸国と福祉国家政策、国境をこえる社会運動)
* 核兵器の脅威と核軍縮{{進捗|00%|2023-01-29}}(核拡散と核兵器反対運動、核軍縮の取り組みと課題)
==== 世界経済の拡大と日本 ====
* [[高等学校歴史総合/西ヨーロッパ・東南アジアの地域連携|西ヨーロッパ・東南アジアの地域連携]]{{進捗|00%|2022-12-31}}(西ヨーロッパ統合への動き、東南アジア諸国の動き)
* 戦後の日本とアジア諸国との関係{{進捗|00%|2023-01-01}}(日本の国連加盟、アジア諸国との国交回復、沖縄の本土復帰)
* 高度経済成長{{進捗|00%|2023-01-01}}(日本と西ドイツの経済成長、高度経済成長と人々の生活、成長のもたらした課題)
* もっと知りたい グローバリゼーションとストリートダンス{{進捗|00%|2022-12-27}}(ダンスの歴史)
* 歴史のなかの16歳 集団就職 「金の卵」たちの時代{{進捗|00%|2023-02-09}}(集団就職列車など)
=== 第3章 世界秩序の変容と日本 ===
==== 市場経済の変容と冷戦の終結 ====
* 石油危機と価値観の転換{{進捗|00%|2023-02-09}}(戦後経済の転換、石油危機と日本、価値観の転換)
* アジアの成長{{進捗|00%|2023-02-13}}(アジア諸国の成長、第三世界の多様化、日本の経済大国化)
* 冷戦の終結{{進捗|00%|2023-02-12}}(社会主義世界の変容、冷戦の終結とソ連の崩壊、冷戦後の地域紛争と日本)
==== 冷戦終結後の世界 ====
* 民主化の進展と冷戦終結後の日本{{進捗|00%|2022-12-31}}(民主化の進展と課題、日本の政治の展開)
* [[高等学校歴史総合/市場開放と経済の自由化|市場開放と経済の自由化]]{{進捗|00%|2022-12-31}}(新自由主義の台頭、経済のグローバル化と新たな国際経済組織)
* [[高等学校歴史総合/地域統合の進展と課題|地域統合の進展と課題]]{{進捗|00%|2022-12-31}}(地域統合の拡大、地域統合の課題)
* [[高等学校歴史総合/情報通信技術の発達|情報通信技術の発達]]{{進捗|100%|2024-11-27}}(情報通信技術の発達と社会の変化、情報化社会とその課題)
* [[高等学校歴史総合/冷戦終結後の紛争と平和への取り組み|冷戦終結後の紛争と平和への取り組み]]{{進捗|00%|2023-01-01}}(冷戦終結後の紛争、紛争の解決と国際社会の役割)
* もっと知りたい 災害と私たち{{進捗|00%|2022-11-21}}(阪神淡路大震災、東日本大震災)
* もっと知りたい 中東の少数派クルド人{{進捗|00%|2022-12-27}}(国民国家の中の少数派、クルド人問題の展開)
=== 第4章 現代的な諸課題の形成と展望 ===
* 移民{{進捗|00%|2023-02-22}}(近代の移民史)
== 近現代史関連用語解説・参考 ==
* 近現代史関連用語解説{{進捗|00%|2023-02-22}}
* 途上国から見た国際関係理論{{進捗|00%|2023-03-05}}[発展講義(イマニュエル・ウォーラースティンなど)]
[[カテゴリ:歴史|こうとうかつこうれきしそうこう]]
[[カテゴリ:高等学校歴史総合|*]]
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/* 世界大戦がもたらしたもの */
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wikitext
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[[小学校・中学校・高等学校の学習]]>[[高等学校の学習]]>[[高等学校地理歴史]]>高等学校歴史総合
{{進捗状況}} 「'''歴史総合'''」は標準単位数2単位で'''必修科目'''です。
=== 注意事項 ===
# 目次の項目、本文内容ともに[https://www.shimizushoin.co.jp/info_kyo/rekishisougou/index.html 清水書院『私たちの歴史総合』]【歴総705】に合わせています。
# なお、古代と中世に関しては、当科目では扱っていないので、[[高等学校世界史探究|世界史探究]]と[[高等学校日本史探究|日本史探究]]の学習内容を見てください。
== 第1編 歴史の扉 ==
=== 第1章 歴史と私たち ===
* [[高等学校歴史総合/日本とスポーツの歴史|日本とスポーツの歴史]]{{進捗|100%|2024-11-22}}(スポーツ史)
=== 第2章 歴史の特質と資料 ===
* 8月15日とそれぞれの「終戦」{{進捗|00%|2022-12-18}}(玉音放送)
== 第2編 近代化と私たち ==
=== 第1章 生活や社会の変化を読み取ってみよう(未記述) ===
=== 第2章 結びつく世界と日本 ===
==== 18世紀までの世界 ====
* [[高等学校歴史総合/近世の日本と世界|近世の日本と世界]]{{進捗|100%|2024-11-23}}(日本の「鎖国」と東アジアの交易、近世東アジアの国際秩序)
* [[高等学校歴史総合/18世紀の中国とアジア貿易|18世紀の中国とアジア貿易]]{{進捗|00%|2023-02-12}}(清の繁栄、清と近隣諸国とのつながり)
* [[高等学校歴史総合/18世紀のイギリス・アジア・アフリカ|18世紀のイギリス・アジア・アフリカ]]{{進捗|00%|2023-02-12}}(ヨーロッパの世界進出と大西洋三角貿易、世界経済の覇権を握ったイギリス)
* もっと知りたい 海を渡った日本産陶磁器{{進捗|00%|2023-12-24}}(陶磁器の歴史)
* もっと知りたい 琉球と蝦夷地{{進捗|00%|2022-12-25}}(琉球王国、蝦夷地)
==== 工業化と世界市場の形成 ====
* 産業革命による経済発展と社会の変化{{進捗|00%|2022-11-25}}(産業革命、資本主義社会)
* 世界市場の形成とイギリスによるアジア進出{{進捗|00%|2023-02-25}}(イギリスによる世界市場の形成、イギリスのアジア進出 )
* [[高等学校歴史総合/日本の開国とその影響|日本の開国とその影響]]{{進捗|00%|2022-11-21}}(日本の開国・開港、交通革命の進展と東アジア)
* 歴史のなかの16歳 工女と工場法{{進捗|00%|2022-12-25}}(工場法など)
* [[高等学校歴史総合/もっと知りたい 産業革命とブラスバンド|もっと知りたい 産業革命とブラスバンド]]{{進捗|100%|2024-11-23}}(金管楽器の歴史)
=== 第3章 国民国家と明治維新 ===
==== 国民国家と立憲体制 ====
* 二つの市民革命と近代民主主義社会の成立{{進捗|00%|2022-11-22}}(アメリカ独立革命、フランス革命、ナポレオン)
* 国民統合とナショナリズム{{進捗|00%|2022-11-23}}(19世紀前半のヨーロッパ諸国、ドイツ統一、南北戦争など)
* 明治維新期の日本と世界{{進捗|100%|2023-02-19}}(明治新政府の成立、近代化と東アジア)
* 近代国家への移行と憲法の制定{{進捗|00%|2022-11-24}}(大日本帝国憲法、条約改正の実現)
* もっと知りたい 国境の過去・現在・未来{{進捗|00%|2022-12-26}}(近代国家と領土画定など)
* もっと知りたい 女王と天皇 理想の家族{{進捗|00%|2022-02-12}}(近代の天皇史)
==== 帝国主義とアジア・アフリカの変容 ====
* 列強による帝国主義{{進捗|00%|2023-02-17}}(第2次産業革命と帝国主義、欧米諸国の帝国主義政策)
* 帝国主義がアジア・アフリカにもたらしたもの{{進捗|00%|2023-02-18}}(列強のアフリカ分割、西アジア諸国の改革など)
* 日清戦争とその影響{{進捗|00%|2023-02-15}}(日清戦争、東アジアの構造変動)
* 日露戦争{{進捗|00%|2022-11-22}}(義和団事件、日露戦争、朝鮮の植民地化、辛亥革命)
* もっと知りたい 近代の博覧会{{進捗|00%|2022-12-24}}(万国博覧会の歴史)
* [[高等学校歴史総合/もっと知りたい ペストと感染症|もっと知りたい ペストと感染症]]{{進捗|75%|2024-11-24}}(ペストの大流行ほか)
=== 第4章 近代化と現代的な諸課題 ===
* 鉄道建設{{進捗|00%|2023-03-02}}
== 第3編 国際秩序の変化や大衆化と私たち ==
=== 第1章 生活や社会の変化を読み取ってみよう(未記述) ===
=== 第2章 第一次世界大戦と大衆社会 ===
==== 第一次世界大戦と国際社会 ====
* [[高等学校歴史総合/第一次世界大戦|第一次世界大戦]]{{進捗|100%|2024-11-25}}(第一次世界大戦)
* [[高等学校歴史総合/社会主義革命|社会主義革命]]{{進捗|75%|2024-11-27}}(ロシア革命、コミンテルン、ソビエト社会主義共和国連邦)
* [[高等学校歴史総合/国際協調体制|国際協調体制]]{{進捗|100%|2024-11-23}}(ヴェルサイユ体制とワシントン体制、国際協調の高まり)
* [[高等学校歴史総合/アジアの民族運動|アジアの民族運動]]{{進捗|00%|2023-01-27}}(アジアの経済成長、東アジアの民族運動、インド・東南アジア・西アジアの民族運動)
* もっと知りたい ユダヤ人のパレスチナ移住とパレスチナ分割{{進捗|00%|2022-12-30}}(パレスチナの歴史、シオニズム運動)
* もっと知りたい 浅川巧 朝鮮の人々とともに生きた日本人{{進捗|00%|2022-12-30}}(浅川兄弟)
==== 1920年代の世界と大衆の時代の到来 ====
* [[高等学校歴史総合/大衆の政治参加|大衆の政治参加]]{{進捗|00%|2023-01-08}}(世界史上の民衆運動、大正デモクラシーと大衆の政治参加)
* [[高等学校歴史総合/女性の社会参加|女性の社会参加]]{{進捗|00%|2023-02-23}}(女性の社会進出、日本の大正期の女性)
* [[高等学校歴史総合/大衆社会の形成|大衆社会の形成]]{{進捗|100%|2024-11-27}}(大衆社会の出現、1920年代のアメリカ、日本の大衆社会)
* もっと知りたい 映画と「大衆化」{{進捗|00%|2022-12-28}}(映画の歴史)
* もっと知りたい オリンピックの歩み{{進捗|00%|2022-12-28}}(オリンピックの歴史)
=== 第3章 経済危機と第二次世界大戦 ===
==== 国際協調の挫折と2度目の世界大戦 ====
* 世界恐慌{{進捗|00%|2022-11-24}}(昭和恐慌、ブロック経済圏)
* ファシズムの台頭{{進捗|00%|2022-12-31}}(ファシズム、ナチ党の政権掌握)
* 日本の大陸進出{{進捗|00%|2022-12-08}}(満州事変、日中戦争)
* 第二次世界大戦{{進捗|00%|2022-11-16}}(ドイツの拡大、第二次世界大戦、大量殺戮と民衆の抵抗)
* もっと知りたい リンゲルブルム・アーカイヴと『アンネの日記』{{進捗|00%|2022-12-25}}(アンネ・フランク)
* 歴史のなかの16歳 満蒙開拓青少年義勇軍{{進捗|100%|2022-11-21}}(満州農業移民、満蒙開拓青少年義勇軍、「鍬の戦士」)
==== 世界大戦がもたらしたもの ====
* アジア太平洋戦争{{進捗|100%|2023-01-29}}(日米交渉の挫折と開戦、日本のアジア支配、戦争の被害と加害)
* [[高等学校歴史総合/戦争が変えた人々のくらし|戦争が変えた人々のくらし]]{{進捗|00%|2023-02-19}}(マス・メディアの普及と情報や生活の画一化、国民の組織化と戦時動員ほか)
* 戦後世界の新たな枠組み{{進捗|00%|2023-01-29}}(戦後構想と大戦の終結、冷戦の開始とドイツの分断、国際連合の成立)
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* もっと知りたい 戦争を「記憶」するということ{{進捗|00%|2022-12-24}}(明日の神話ほか)
* もっと知りたい 核と原子力エネルギー{{進捗|00%|2023-02-09}}(原子力の平和利用、原子力エネルギーの普及と課題)
=== 第4章 国際秩序の変化や大衆化と現代的な諸課題 ===
* ナショナリズム{{進捗|00%|2022-03-08}}[発展講義]
== 第4編 グローバル化と私たち ==
=== 第1章 生活や社会の変化を読み取ってみよう(未記述) ===
=== 第2章 冷戦と世界経済 ===
==== 冷戦と国際政治 ====
* 脱植民地化とアジア・アフリカ諸国{{進捗|00%|2023-01-25}}(アジア・アフリカ諸国の独立、第三世界の形成と連帯)
* 冷戦下の地域紛争{{進捗|00%|2023-01-26}}(ベトナム戦争、中東戦争)
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* 核兵器の脅威と核軍縮{{進捗|00%|2023-01-29}}(核拡散と核兵器反対運動、核軍縮の取り組みと課題)
==== 世界経済の拡大と日本 ====
* [[高等学校歴史総合/西ヨーロッパ・東南アジアの地域連携|西ヨーロッパ・東南アジアの地域連携]]{{進捗|00%|2022-12-31}}(西ヨーロッパ統合への動き、東南アジア諸国の動き)
* 戦後の日本とアジア諸国との関係{{進捗|00%|2023-01-01}}(日本の国連加盟、アジア諸国との国交回復、沖縄の本土復帰)
* 高度経済成長{{進捗|00%|2023-01-01}}(日本と西ドイツの経済成長、高度経済成長と人々の生活、成長のもたらした課題)
* もっと知りたい グローバリゼーションとストリートダンス{{進捗|00%|2022-12-27}}(ダンスの歴史)
* 歴史のなかの16歳 集団就職 「金の卵」たちの時代{{進捗|00%|2023-02-09}}(集団就職列車など)
=== 第3章 世界秩序の変容と日本 ===
==== 市場経済の変容と冷戦の終結 ====
* 石油危機と価値観の転換{{進捗|00%|2023-02-09}}(戦後経済の転換、石油危機と日本、価値観の転換)
* アジアの成長{{進捗|00%|2023-02-13}}(アジア諸国の成長、第三世界の多様化、日本の経済大国化)
* 冷戦の終結{{進捗|00%|2023-02-12}}(社会主義世界の変容、冷戦の終結とソ連の崩壊、冷戦後の地域紛争と日本)
==== 冷戦終結後の世界 ====
* 民主化の進展と冷戦終結後の日本{{進捗|00%|2022-12-31}}(民主化の進展と課題、日本の政治の展開)
* [[高等学校歴史総合/市場開放と経済の自由化|市場開放と経済の自由化]]{{進捗|00%|2022-12-31}}(新自由主義の台頭、経済のグローバル化と新たな国際経済組織)
* [[高等学校歴史総合/地域統合の進展と課題|地域統合の進展と課題]]{{進捗|00%|2022-12-31}}(地域統合の拡大、地域統合の課題)
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=== 第4章 現代的な諸課題の形成と展望 ===
* 移民{{進捗|00%|2023-02-22}}(近代の移民史)
== 近現代史関連用語解説・参考 ==
* 近現代史関連用語解説{{進捗|00%|2023-02-22}}
* 途上国から見た国際関係理論{{進捗|00%|2023-03-05}}[発展講義(イマニュエル・ウォーラースティンなど)]
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/* 冷戦終結後の世界 */
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[[小学校・中学校・高等学校の学習]]>[[高等学校の学習]]>[[高等学校地理歴史]]>高等学校歴史総合
{{進捗状況}} 「'''歴史総合'''」は標準単位数2単位で'''必修科目'''です。
=== 注意事項 ===
# 目次の項目、本文内容ともに[https://www.shimizushoin.co.jp/info_kyo/rekishisougou/index.html 清水書院『私たちの歴史総合』]【歴総705】に合わせています。
# なお、古代と中世に関しては、当科目では扱っていないので、[[高等学校世界史探究|世界史探究]]と[[高等学校日本史探究|日本史探究]]の学習内容を見てください。
== 第1編 歴史の扉 ==
=== 第1章 歴史と私たち ===
* [[高等学校歴史総合/日本とスポーツの歴史|日本とスポーツの歴史]]{{進捗|100%|2024-11-22}}(スポーツ史)
=== 第2章 歴史の特質と資料 ===
* 8月15日とそれぞれの「終戦」{{進捗|00%|2022-12-18}}(玉音放送)
== 第2編 近代化と私たち ==
=== 第1章 生活や社会の変化を読み取ってみよう(未記述) ===
=== 第2章 結びつく世界と日本 ===
==== 18世紀までの世界 ====
* [[高等学校歴史総合/近世の日本と世界|近世の日本と世界]]{{進捗|100%|2024-11-23}}(日本の「鎖国」と東アジアの交易、近世東アジアの国際秩序)
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* もっと知りたい 海を渡った日本産陶磁器{{進捗|00%|2023-12-24}}(陶磁器の歴史)
* もっと知りたい 琉球と蝦夷地{{進捗|00%|2022-12-25}}(琉球王国、蝦夷地)
==== 工業化と世界市場の形成 ====
* 産業革命による経済発展と社会の変化{{進捗|00%|2022-11-25}}(産業革命、資本主義社会)
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=== 第3章 国民国家と明治維新 ===
==== 国民国家と立憲体制 ====
* 二つの市民革命と近代民主主義社会の成立{{進捗|00%|2022-11-22}}(アメリカ独立革命、フランス革命、ナポレオン)
* 国民統合とナショナリズム{{進捗|00%|2022-11-23}}(19世紀前半のヨーロッパ諸国、ドイツ統一、南北戦争など)
* 明治維新期の日本と世界{{進捗|100%|2023-02-19}}(明治新政府の成立、近代化と東アジア)
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==== 帝国主義とアジア・アフリカの変容 ====
* 列強による帝国主義{{進捗|00%|2023-02-17}}(第2次産業革命と帝国主義、欧米諸国の帝国主義政策)
* 帝国主義がアジア・アフリカにもたらしたもの{{進捗|00%|2023-02-18}}(列強のアフリカ分割、西アジア諸国の改革など)
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* [[高等学校歴史総合/もっと知りたい ペストと感染症|もっと知りたい ペストと感染症]]{{進捗|75%|2024-11-24}}(ペストの大流行ほか)
=== 第4章 近代化と現代的な諸課題 ===
* 鉄道建設{{進捗|00%|2023-03-02}}
== 第3編 国際秩序の変化や大衆化と私たち ==
=== 第1章 生活や社会の変化を読み取ってみよう(未記述) ===
=== 第2章 第一次世界大戦と大衆社会 ===
==== 第一次世界大戦と国際社会 ====
* [[高等学校歴史総合/第一次世界大戦|第一次世界大戦]]{{進捗|100%|2024-11-25}}(第一次世界大戦)
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* もっと知りたい 浅川巧 朝鮮の人々とともに生きた日本人{{進捗|00%|2022-12-30}}(浅川兄弟)
==== 1920年代の世界と大衆の時代の到来 ====
* [[高等学校歴史総合/大衆の政治参加|大衆の政治参加]]{{進捗|00%|2023-01-08}}(世界史上の民衆運動、大正デモクラシーと大衆の政治参加)
* [[高等学校歴史総合/女性の社会参加|女性の社会参加]]{{進捗|00%|2023-02-23}}(女性の社会進出、日本の大正期の女性)
* [[高等学校歴史総合/大衆社会の形成|大衆社会の形成]]{{進捗|100%|2024-11-27}}(大衆社会の出現、1920年代のアメリカ、日本の大衆社会)
* もっと知りたい 映画と「大衆化」{{進捗|00%|2022-12-28}}(映画の歴史)
* もっと知りたい オリンピックの歩み{{進捗|00%|2022-12-28}}(オリンピックの歴史)
=== 第3章 経済危機と第二次世界大戦 ===
==== 国際協調の挫折と2度目の世界大戦 ====
* 世界恐慌{{進捗|00%|2022-11-24}}(昭和恐慌、ブロック経済圏)
* ファシズムの台頭{{進捗|00%|2022-12-31}}(ファシズム、ナチ党の政権掌握)
* 日本の大陸進出{{進捗|00%|2022-12-08}}(満州事変、日中戦争)
* 第二次世界大戦{{進捗|00%|2022-11-16}}(ドイツの拡大、第二次世界大戦、大量殺戮と民衆の抵抗)
* もっと知りたい リンゲルブルム・アーカイヴと『アンネの日記』{{進捗|00%|2022-12-25}}(アンネ・フランク)
* 歴史のなかの16歳 満蒙開拓青少年義勇軍{{進捗|100%|2022-11-21}}(満州農業移民、満蒙開拓青少年義勇軍、「鍬の戦士」)
==== 世界大戦がもたらしたもの ====
* アジア太平洋戦争{{進捗|100%|2023-01-29}}(日米交渉の挫折と開戦、日本のアジア支配、戦争の被害と加害)
* [[高等学校歴史総合/戦争が変えた人々のくらし|戦争が変えた人々のくらし]]{{進捗|00%|2023-02-19}}(マス・メディアの普及と情報や生活の画一化、国民の組織化と戦時動員ほか)
* 戦後世界の新たな枠組み{{進捗|00%|2023-01-29}}(戦後構想と大戦の終結、冷戦の開始とドイツの分断、国際連合の成立)
* 敗戦後の日本とアジア{{進捗|00%|2023-02-19}}(日本の戦後改革、大衆は敗戦をどう生きたか、冷戦と日本の独立)
* 冷戦下の東アジア{{進捗|00%|2023-02-19}}(戦後の中国、朝鮮半島の南北分断、現代の朝鮮半島と台湾)
* もっと知りたい 戦争を「記憶」するということ{{進捗|00%|2022-12-24}}(明日の神話ほか)
* もっと知りたい 核と原子力エネルギー{{進捗|00%|2023-02-09}}(原子力の平和利用、原子力エネルギーの普及と課題)
=== 第4章 国際秩序の変化や大衆化と現代的な諸課題 ===
* ナショナリズム{{進捗|00%|2022-03-08}}[発展講義]
== 第4編 グローバル化と私たち ==
=== 第1章 生活や社会の変化を読み取ってみよう(未記述) ===
=== 第2章 冷戦と世界経済 ===
==== 冷戦と国際政治 ====
* 脱植民地化とアジア・アフリカ諸国{{進捗|00%|2023-01-25}}(アジア・アフリカ諸国の独立、第三世界の形成と連帯)
* 冷戦下の地域紛争{{進捗|00%|2023-01-26}}(ベトナム戦争、中東戦争)
* 先進国の政治と社会運動{{進捗|00%|2023-01-29}}(西側諸国と福祉国家政策、国境をこえる社会運動)
* 核兵器の脅威と核軍縮{{進捗|00%|2023-01-29}}(核拡散と核兵器反対運動、核軍縮の取り組みと課題)
==== 世界経済の拡大と日本 ====
* [[高等学校歴史総合/西ヨーロッパ・東南アジアの地域連携|西ヨーロッパ・東南アジアの地域連携]]{{進捗|00%|2022-12-31}}(西ヨーロッパ統合への動き、東南アジア諸国の動き)
* 戦後の日本とアジア諸国との関係{{進捗|00%|2023-01-01}}(日本の国連加盟、アジア諸国との国交回復、沖縄の本土復帰)
* 高度経済成長{{進捗|00%|2023-01-01}}(日本と西ドイツの経済成長、高度経済成長と人々の生活、成長のもたらした課題)
* もっと知りたい グローバリゼーションとストリートダンス{{進捗|00%|2022-12-27}}(ダンスの歴史)
* 歴史のなかの16歳 集団就職 「金の卵」たちの時代{{進捗|00%|2023-02-09}}(集団就職列車など)
=== 第3章 世界秩序の変容と日本 ===
==== 市場経済の変容と冷戦の終結 ====
* 石油危機と価値観の転換{{進捗|00%|2023-02-09}}(戦後経済の転換、石油危機と日本、価値観の転換)
* アジアの成長{{進捗|00%|2023-02-13}}(アジア諸国の成長、第三世界の多様化、日本の経済大国化)
* 冷戦の終結{{進捗|00%|2023-02-12}}(社会主義世界の変容、冷戦の終結とソ連の崩壊、冷戦後の地域紛争と日本)
==== 冷戦終結後の世界 ====
* 民主化の進展と冷戦終結後の日本{{進捗|00%|2022-12-31}}(民主化の進展と課題、日本の政治の展開)
* [[高等学校歴史総合/市場開放と経済の自由化|市場開放と経済の自由化]]{{進捗|50%|2024-11-27}}(新自由主義の台頭、経済のグローバル化と新たな国際経済組織)
* [[高等学校歴史総合/地域統合の進展と課題|地域統合の進展と課題]]{{進捗|00%|2022-12-31}}(地域統合の拡大、地域統合の課題)
* [[高等学校歴史総合/情報通信技術の発達|情報通信技術の発達]]{{進捗|100%|2024-11-27}}(情報通信技術の発達と社会の変化、情報化社会とその課題)
* [[高等学校歴史総合/冷戦終結後の紛争と平和への取り組み|冷戦終結後の紛争と平和への取り組み]]{{進捗|00%|2023-01-01}}(冷戦終結後の紛争、紛争の解決と国際社会の役割)
* もっと知りたい 災害と私たち{{進捗|00%|2022-11-21}}(阪神淡路大震災、東日本大震災)
* もっと知りたい 中東の少数派クルド人{{進捗|00%|2022-12-27}}(国民国家の中の少数派、クルド人問題の展開)
=== 第4章 現代的な諸課題の形成と展望 ===
* 移民{{進捗|00%|2023-02-22}}(近代の移民史)
== 近現代史関連用語解説・参考 ==
* 近現代史関連用語解説{{進捗|00%|2023-02-22}}
* 途上国から見た国際関係理論{{進捗|00%|2023-03-05}}[発展講義(イマニュエル・ウォーラースティンなど)]
[[カテゴリ:歴史|こうとうかつこうれきしそうこう]]
[[カテゴリ:高等学校歴史総合|*]]
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/* 第一次世界大戦と国際社会 */
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wikitext
text/x-wiki
[[小学校・中学校・高等学校の学習]]>[[高等学校の学習]]>[[高等学校地理歴史]]>高等学校歴史総合
{{進捗状況}} 「'''歴史総合'''」は標準単位数2単位で'''必修科目'''です。
=== 注意事項 ===
# 目次の項目、本文内容ともに[https://www.shimizushoin.co.jp/info_kyo/rekishisougou/index.html 清水書院『私たちの歴史総合』]【歴総705】に合わせています。
# なお、古代と中世に関しては、当科目では扱っていないので、[[高等学校世界史探究|世界史探究]]と[[高等学校日本史探究|日本史探究]]の学習内容を見てください。
== 第1編 歴史の扉 ==
=== 第1章 歴史と私たち ===
* [[高等学校歴史総合/日本とスポーツの歴史|日本とスポーツの歴史]]{{進捗|100%|2024-11-22}}(スポーツ史)
=== 第2章 歴史の特質と資料 ===
* 8月15日とそれぞれの「終戦」{{進捗|00%|2022-12-18}}(玉音放送)
== 第2編 近代化と私たち ==
=== 第1章 生活や社会の変化を読み取ってみよう(未記述) ===
=== 第2章 結びつく世界と日本 ===
==== 18世紀までの世界 ====
* [[高等学校歴史総合/近世の日本と世界|近世の日本と世界]]{{進捗|100%|2024-11-23}}(日本の「鎖国」と東アジアの交易、近世東アジアの国際秩序)
* [[高等学校歴史総合/18世紀の中国とアジア貿易|18世紀の中国とアジア貿易]]{{進捗|00%|2023-02-12}}(清の繁栄、清と近隣諸国とのつながり)
* [[高等学校歴史総合/18世紀のイギリス・アジア・アフリカ|18世紀のイギリス・アジア・アフリカ]]{{進捗|00%|2023-02-12}}(ヨーロッパの世界進出と大西洋三角貿易、世界経済の覇権を握ったイギリス)
* もっと知りたい 海を渡った日本産陶磁器{{進捗|00%|2023-12-24}}(陶磁器の歴史)
* もっと知りたい 琉球と蝦夷地{{進捗|00%|2022-12-25}}(琉球王国、蝦夷地)
==== 工業化と世界市場の形成 ====
* 産業革命による経済発展と社会の変化{{進捗|00%|2022-11-25}}(産業革命、資本主義社会)
* 世界市場の形成とイギリスによるアジア進出{{進捗|00%|2023-02-25}}(イギリスによる世界市場の形成、イギリスのアジア進出 )
* [[高等学校歴史総合/日本の開国とその影響|日本の開国とその影響]]{{進捗|00%|2022-11-21}}(日本の開国・開港、交通革命の進展と東アジア)
* 歴史のなかの16歳 工女と工場法{{進捗|00%|2022-12-25}}(工場法など)
* [[高等学校歴史総合/もっと知りたい 産業革命とブラスバンド|もっと知りたい 産業革命とブラスバンド]]{{進捗|100%|2024-11-23}}(金管楽器の歴史)
=== 第3章 国民国家と明治維新 ===
==== 国民国家と立憲体制 ====
* 二つの市民革命と近代民主主義社会の成立{{進捗|00%|2022-11-22}}(アメリカ独立革命、フランス革命、ナポレオン)
* 国民統合とナショナリズム{{進捗|00%|2022-11-23}}(19世紀前半のヨーロッパ諸国、ドイツ統一、南北戦争など)
* 明治維新期の日本と世界{{進捗|100%|2023-02-19}}(明治新政府の成立、近代化と東アジア)
* 近代国家への移行と憲法の制定{{進捗|00%|2022-11-24}}(大日本帝国憲法、条約改正の実現)
* もっと知りたい 国境の過去・現在・未来{{進捗|00%|2022-12-26}}(近代国家と領土画定など)
* もっと知りたい 女王と天皇 理想の家族{{進捗|00%|2022-02-12}}(近代の天皇史)
==== 帝国主義とアジア・アフリカの変容 ====
* 列強による帝国主義{{進捗|00%|2023-02-17}}(第2次産業革命と帝国主義、欧米諸国の帝国主義政策)
* 帝国主義がアジア・アフリカにもたらしたもの{{進捗|00%|2023-02-18}}(列強のアフリカ分割、西アジア諸国の改革など)
* 日清戦争とその影響{{進捗|00%|2023-02-15}}(日清戦争、東アジアの構造変動)
* 日露戦争{{進捗|00%|2022-11-22}}(義和団事件、日露戦争、朝鮮の植民地化、辛亥革命)
* もっと知りたい 近代の博覧会{{進捗|00%|2022-12-24}}(万国博覧会の歴史)
* [[高等学校歴史総合/もっと知りたい ペストと感染症|もっと知りたい ペストと感染症]]{{進捗|75%|2024-11-24}}(ペストの大流行ほか)
=== 第4章 近代化と現代的な諸課題 ===
* 鉄道建設{{進捗|00%|2023-03-02}}
== 第3編 国際秩序の変化や大衆化と私たち ==
=== 第1章 生活や社会の変化を読み取ってみよう(未記述) ===
=== 第2章 第一次世界大戦と大衆社会 ===
==== 第一次世界大戦と国際社会 ====
* [[高等学校歴史総合/第一次世界大戦|第一次世界大戦]]{{進捗|100%|2024-11-25}}(第一次世界大戦)
* [[高等学校歴史総合/社会主義革命|社会主義革命]]{{進捗|100%|2024-11-27}}(ロシア革命、コミンテルン、ソビエト社会主義共和国連邦)
* [[高等学校歴史総合/国際協調体制|国際協調体制]]{{進捗|100%|2024-11-23}}(ヴェルサイユ体制とワシントン体制、国際協調の高まり)
* [[高等学校歴史総合/アジアの民族運動|アジアの民族運動]]{{進捗|00%|2023-01-27}}(アジアの経済成長、東アジアの民族運動、インド・東南アジア・西アジアの民族運動)
* もっと知りたい ユダヤ人のパレスチナ移住とパレスチナ分割{{進捗|00%|2022-12-30}}(パレスチナの歴史、シオニズム運動)
* もっと知りたい 浅川巧 朝鮮の人々とともに生きた日本人{{進捗|00%|2022-12-30}}(浅川兄弟)
==== 1920年代の世界と大衆の時代の到来 ====
* [[高等学校歴史総合/大衆の政治参加|大衆の政治参加]]{{進捗|00%|2023-01-08}}(世界史上の民衆運動、大正デモクラシーと大衆の政治参加)
* [[高等学校歴史総合/女性の社会参加|女性の社会参加]]{{進捗|00%|2023-02-23}}(女性の社会進出、日本の大正期の女性)
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* もっと知りたい 映画と「大衆化」{{進捗|00%|2022-12-28}}(映画の歴史)
* もっと知りたい オリンピックの歩み{{進捗|00%|2022-12-28}}(オリンピックの歴史)
=== 第3章 経済危機と第二次世界大戦 ===
==== 国際協調の挫折と2度目の世界大戦 ====
* 世界恐慌{{進捗|00%|2022-11-24}}(昭和恐慌、ブロック経済圏)
* ファシズムの台頭{{進捗|00%|2022-12-31}}(ファシズム、ナチ党の政権掌握)
* 日本の大陸進出{{進捗|00%|2022-12-08}}(満州事変、日中戦争)
* 第二次世界大戦{{進捗|00%|2022-11-16}}(ドイツの拡大、第二次世界大戦、大量殺戮と民衆の抵抗)
* もっと知りたい リンゲルブルム・アーカイヴと『アンネの日記』{{進捗|00%|2022-12-25}}(アンネ・フランク)
* 歴史のなかの16歳 満蒙開拓青少年義勇軍{{進捗|100%|2022-11-21}}(満州農業移民、満蒙開拓青少年義勇軍、「鍬の戦士」)
==== 世界大戦がもたらしたもの ====
* アジア太平洋戦争{{進捗|100%|2023-01-29}}(日米交渉の挫折と開戦、日本のアジア支配、戦争の被害と加害)
* [[高等学校歴史総合/戦争が変えた人々のくらし|戦争が変えた人々のくらし]]{{進捗|00%|2023-02-19}}(マス・メディアの普及と情報や生活の画一化、国民の組織化と戦時動員ほか)
* 戦後世界の新たな枠組み{{進捗|00%|2023-01-29}}(戦後構想と大戦の終結、冷戦の開始とドイツの分断、国際連合の成立)
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* もっと知りたい 戦争を「記憶」するということ{{進捗|00%|2022-12-24}}(明日の神話ほか)
* もっと知りたい 核と原子力エネルギー{{進捗|00%|2023-02-09}}(原子力の平和利用、原子力エネルギーの普及と課題)
=== 第4章 国際秩序の変化や大衆化と現代的な諸課題 ===
* ナショナリズム{{進捗|00%|2022-03-08}}[発展講義]
== 第4編 グローバル化と私たち ==
=== 第1章 生活や社会の変化を読み取ってみよう(未記述) ===
=== 第2章 冷戦と世界経済 ===
==== 冷戦と国際政治 ====
* 脱植民地化とアジア・アフリカ諸国{{進捗|00%|2023-01-25}}(アジア・アフリカ諸国の独立、第三世界の形成と連帯)
* 冷戦下の地域紛争{{進捗|00%|2023-01-26}}(ベトナム戦争、中東戦争)
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* 核兵器の脅威と核軍縮{{進捗|00%|2023-01-29}}(核拡散と核兵器反対運動、核軍縮の取り組みと課題)
==== 世界経済の拡大と日本 ====
* [[高等学校歴史総合/西ヨーロッパ・東南アジアの地域連携|西ヨーロッパ・東南アジアの地域連携]]{{進捗|00%|2022-12-31}}(西ヨーロッパ統合への動き、東南アジア諸国の動き)
* 戦後の日本とアジア諸国との関係{{進捗|00%|2023-01-01}}(日本の国連加盟、アジア諸国との国交回復、沖縄の本土復帰)
* 高度経済成長{{進捗|00%|2023-01-01}}(日本と西ドイツの経済成長、高度経済成長と人々の生活、成長のもたらした課題)
* もっと知りたい グローバリゼーションとストリートダンス{{進捗|00%|2022-12-27}}(ダンスの歴史)
* 歴史のなかの16歳 集団就職 「金の卵」たちの時代{{進捗|00%|2023-02-09}}(集団就職列車など)
=== 第3章 世界秩序の変容と日本 ===
==== 市場経済の変容と冷戦の終結 ====
* 石油危機と価値観の転換{{進捗|00%|2023-02-09}}(戦後経済の転換、石油危機と日本、価値観の転換)
* アジアの成長{{進捗|00%|2023-02-13}}(アジア諸国の成長、第三世界の多様化、日本の経済大国化)
* 冷戦の終結{{進捗|00%|2023-02-12}}(社会主義世界の変容、冷戦の終結とソ連の崩壊、冷戦後の地域紛争と日本)
==== 冷戦終結後の世界 ====
* 民主化の進展と冷戦終結後の日本{{進捗|00%|2022-12-31}}(民主化の進展と課題、日本の政治の展開)
* [[高等学校歴史総合/市場開放と経済の自由化|市場開放と経済の自由化]]{{進捗|50%|2024-11-27}}(新自由主義の台頭、経済のグローバル化と新たな国際経済組織)
* [[高等学校歴史総合/地域統合の進展と課題|地域統合の進展と課題]]{{進捗|00%|2022-12-31}}(地域統合の拡大、地域統合の課題)
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=== 第4章 現代的な諸課題の形成と展望 ===
* 移民{{進捗|00%|2023-02-22}}(近代の移民史)
== 近現代史関連用語解説・参考 ==
* 近現代史関連用語解説{{進捗|00%|2023-02-22}}
* 途上国から見た国際関係理論{{進捗|00%|2023-03-05}}[発展講義(イマニュエル・ウォーラースティンなど)]
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/* 冷戦終結後の世界 */
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[[小学校・中学校・高等学校の学習]]>[[高等学校の学習]]>[[高等学校地理歴史]]>高等学校歴史総合
{{進捗状況}} 「'''歴史総合'''」は標準単位数2単位で'''必修科目'''です。
=== 注意事項 ===
# 目次の項目、本文内容ともに[https://www.shimizushoin.co.jp/info_kyo/rekishisougou/index.html 清水書院『私たちの歴史総合』]【歴総705】に合わせています。
# なお、古代と中世に関しては、当科目では扱っていないので、[[高等学校世界史探究|世界史探究]]と[[高等学校日本史探究|日本史探究]]の学習内容を見てください。
== 第1編 歴史の扉 ==
=== 第1章 歴史と私たち ===
* [[高等学校歴史総合/日本とスポーツの歴史|日本とスポーツの歴史]]{{進捗|100%|2024-11-22}}(スポーツ史)
=== 第2章 歴史の特質と資料 ===
* 8月15日とそれぞれの「終戦」{{進捗|00%|2022-12-18}}(玉音放送)
== 第2編 近代化と私たち ==
=== 第1章 生活や社会の変化を読み取ってみよう(未記述) ===
=== 第2章 結びつく世界と日本 ===
==== 18世紀までの世界 ====
* [[高等学校歴史総合/近世の日本と世界|近世の日本と世界]]{{進捗|100%|2024-11-23}}(日本の「鎖国」と東アジアの交易、近世東アジアの国際秩序)
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* もっと知りたい 海を渡った日本産陶磁器{{進捗|00%|2023-12-24}}(陶磁器の歴史)
* もっと知りたい 琉球と蝦夷地{{進捗|00%|2022-12-25}}(琉球王国、蝦夷地)
==== 工業化と世界市場の形成 ====
* 産業革命による経済発展と社会の変化{{進捗|00%|2022-11-25}}(産業革命、資本主義社会)
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=== 第3章 国民国家と明治維新 ===
==== 国民国家と立憲体制 ====
* 二つの市民革命と近代民主主義社会の成立{{進捗|00%|2022-11-22}}(アメリカ独立革命、フランス革命、ナポレオン)
* 国民統合とナショナリズム{{進捗|00%|2022-11-23}}(19世紀前半のヨーロッパ諸国、ドイツ統一、南北戦争など)
* 明治維新期の日本と世界{{進捗|100%|2023-02-19}}(明治新政府の成立、近代化と東アジア)
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==== 帝国主義とアジア・アフリカの変容 ====
* 列強による帝国主義{{進捗|00%|2023-02-17}}(第2次産業革命と帝国主義、欧米諸国の帝国主義政策)
* 帝国主義がアジア・アフリカにもたらしたもの{{進捗|00%|2023-02-18}}(列強のアフリカ分割、西アジア諸国の改革など)
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* もっと知りたい 近代の博覧会{{進捗|00%|2022-12-24}}(万国博覧会の歴史)
* [[高等学校歴史総合/もっと知りたい ペストと感染症|もっと知りたい ペストと感染症]]{{進捗|75%|2024-11-24}}(ペストの大流行ほか)
=== 第4章 近代化と現代的な諸課題 ===
* 鉄道建設{{進捗|00%|2023-03-02}}
== 第3編 国際秩序の変化や大衆化と私たち ==
=== 第1章 生活や社会の変化を読み取ってみよう(未記述) ===
=== 第2章 第一次世界大戦と大衆社会 ===
==== 第一次世界大戦と国際社会 ====
* [[高等学校歴史総合/第一次世界大戦|第一次世界大戦]]{{進捗|100%|2024-11-25}}(第一次世界大戦)
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* もっと知りたい 浅川巧 朝鮮の人々とともに生きた日本人{{進捗|00%|2022-12-30}}(浅川兄弟)
==== 1920年代の世界と大衆の時代の到来 ====
* [[高等学校歴史総合/大衆の政治参加|大衆の政治参加]]{{進捗|00%|2023-01-08}}(世界史上の民衆運動、大正デモクラシーと大衆の政治参加)
* [[高等学校歴史総合/女性の社会参加|女性の社会参加]]{{進捗|00%|2023-02-23}}(女性の社会進出、日本の大正期の女性)
* [[高等学校歴史総合/大衆社会の形成|大衆社会の形成]]{{進捗|100%|2024-11-27}}(大衆社会の出現、1920年代のアメリカ、日本の大衆社会)
* もっと知りたい 映画と「大衆化」{{進捗|00%|2022-12-28}}(映画の歴史)
* もっと知りたい オリンピックの歩み{{進捗|00%|2022-12-28}}(オリンピックの歴史)
=== 第3章 経済危機と第二次世界大戦 ===
==== 国際協調の挫折と2度目の世界大戦 ====
* 世界恐慌{{進捗|00%|2022-11-24}}(昭和恐慌、ブロック経済圏)
* ファシズムの台頭{{進捗|00%|2022-12-31}}(ファシズム、ナチ党の政権掌握)
* 日本の大陸進出{{進捗|00%|2022-12-08}}(満州事変、日中戦争)
* 第二次世界大戦{{進捗|00%|2022-11-16}}(ドイツの拡大、第二次世界大戦、大量殺戮と民衆の抵抗)
* もっと知りたい リンゲルブルム・アーカイヴと『アンネの日記』{{進捗|00%|2022-12-25}}(アンネ・フランク)
* 歴史のなかの16歳 満蒙開拓青少年義勇軍{{進捗|100%|2022-11-21}}(満州農業移民、満蒙開拓青少年義勇軍、「鍬の戦士」)
==== 世界大戦がもたらしたもの ====
* アジア太平洋戦争{{進捗|100%|2023-01-29}}(日米交渉の挫折と開戦、日本のアジア支配、戦争の被害と加害)
* [[高等学校歴史総合/戦争が変えた人々のくらし|戦争が変えた人々のくらし]]{{進捗|00%|2023-02-19}}(マス・メディアの普及と情報や生活の画一化、国民の組織化と戦時動員ほか)
* 戦後世界の新たな枠組み{{進捗|00%|2023-01-29}}(戦後構想と大戦の終結、冷戦の開始とドイツの分断、国際連合の成立)
* 敗戦後の日本とアジア{{進捗|00%|2023-02-19}}(日本の戦後改革、大衆は敗戦をどう生きたか、冷戦と日本の独立)
* 冷戦下の東アジア{{進捗|00%|2023-02-19}}(戦後の中国、朝鮮半島の南北分断、現代の朝鮮半島と台湾)
* もっと知りたい 戦争を「記憶」するということ{{進捗|00%|2022-12-24}}(明日の神話ほか)
* もっと知りたい 核と原子力エネルギー{{進捗|00%|2023-02-09}}(原子力の平和利用、原子力エネルギーの普及と課題)
=== 第4章 国際秩序の変化や大衆化と現代的な諸課題 ===
* ナショナリズム{{進捗|00%|2022-03-08}}[発展講義]
== 第4編 グローバル化と私たち ==
=== 第1章 生活や社会の変化を読み取ってみよう(未記述) ===
=== 第2章 冷戦と世界経済 ===
==== 冷戦と国際政治 ====
* 脱植民地化とアジア・アフリカ諸国{{進捗|00%|2023-01-25}}(アジア・アフリカ諸国の独立、第三世界の形成と連帯)
* 冷戦下の地域紛争{{進捗|00%|2023-01-26}}(ベトナム戦争、中東戦争)
* 先進国の政治と社会運動{{進捗|00%|2023-01-29}}(西側諸国と福祉国家政策、国境をこえる社会運動)
* 核兵器の脅威と核軍縮{{進捗|00%|2023-01-29}}(核拡散と核兵器反対運動、核軍縮の取り組みと課題)
==== 世界経済の拡大と日本 ====
* [[高等学校歴史総合/西ヨーロッパ・東南アジアの地域連携|西ヨーロッパ・東南アジアの地域連携]]{{進捗|00%|2022-12-31}}(西ヨーロッパ統合への動き、東南アジア諸国の動き)
* 戦後の日本とアジア諸国との関係{{進捗|00%|2023-01-01}}(日本の国連加盟、アジア諸国との国交回復、沖縄の本土復帰)
* 高度経済成長{{進捗|00%|2023-01-01}}(日本と西ドイツの経済成長、高度経済成長と人々の生活、成長のもたらした課題)
* もっと知りたい グローバリゼーションとストリートダンス{{進捗|00%|2022-12-27}}(ダンスの歴史)
* 歴史のなかの16歳 集団就職 「金の卵」たちの時代{{進捗|00%|2023-02-09}}(集団就職列車など)
=== 第3章 世界秩序の変容と日本 ===
==== 市場経済の変容と冷戦の終結 ====
* 石油危機と価値観の転換{{進捗|00%|2023-02-09}}(戦後経済の転換、石油危機と日本、価値観の転換)
* アジアの成長{{進捗|00%|2023-02-13}}(アジア諸国の成長、第三世界の多様化、日本の経済大国化)
* 冷戦の終結{{進捗|00%|2023-02-12}}(社会主義世界の変容、冷戦の終結とソ連の崩壊、冷戦後の地域紛争と日本)
==== 冷戦終結後の世界 ====
* 民主化の進展と冷戦終結後の日本{{進捗|00%|2022-12-31}}(民主化の進展と課題、日本の政治の展開)
* [[高等学校歴史総合/市場開放と経済の自由化|市場開放と経済の自由化]]{{進捗|75%|2024-11-28}}(新自由主義の台頭、経済のグローバル化と新たな国際経済組織)
* [[高等学校歴史総合/地域統合の進展と課題|地域統合の進展と課題]]{{進捗|00%|2022-12-31}}(地域統合の拡大、地域統合の課題)
* [[高等学校歴史総合/情報通信技術の発達|情報通信技術の発達]]{{進捗|100%|2024-11-27}}(情報通信技術の発達と社会の変化、情報化社会とその課題)
* [[高等学校歴史総合/冷戦終結後の紛争と平和への取り組み|冷戦終結後の紛争と平和への取り組み]]{{進捗|00%|2023-01-01}}(冷戦終結後の紛争、紛争の解決と国際社会の役割)
* もっと知りたい 災害と私たち{{進捗|00%|2022-11-21}}(阪神淡路大震災、東日本大震災)
* もっと知りたい 中東の少数派クルド人{{進捗|00%|2022-12-27}}(国民国家の中の少数派、クルド人問題の展開)
=== 第4章 現代的な諸課題の形成と展望 ===
* 移民{{進捗|00%|2023-02-22}}(近代の移民史)
== 近現代史関連用語解説・参考 ==
* 近現代史関連用語解説{{進捗|00%|2023-02-22}}
* 途上国から見た国際関係理論{{進捗|00%|2023-03-05}}[発展講義(イマニュエル・ウォーラースティンなど)]
[[カテゴリ:歴史|こうとうかつこうれきしそうこう]]
[[カテゴリ:高等学校歴史総合|*]]
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2024-11-28T09:24:02Z
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/* 第4編 グローバル化と私たち */
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wikitext
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[[小学校・中学校・高等学校の学習]]>[[高等学校の学習]]>[[高等学校地理歴史]]>高等学校歴史総合
{{進捗状況}} 「'''歴史総合'''」は標準単位数2単位で'''必修科目'''です。
=== 注意事項 ===
# 目次の項目、本文内容ともに[https://www.shimizushoin.co.jp/info_kyo/rekishisougou/index.html 清水書院『私たちの歴史総合』]【歴総705】に合わせています。
# なお、古代と中世に関しては、当科目では扱っていないので、[[高等学校世界史探究|世界史探究]]と[[高等学校日本史探究|日本史探究]]の学習内容を見てください。
== 第1編 歴史の扉 ==
=== 第1章 歴史と私たち ===
* [[高等学校歴史総合/日本とスポーツの歴史|日本とスポーツの歴史]]{{進捗|100%|2024-11-22}}(スポーツ史)
=== 第2章 歴史の特質と資料 ===
* 8月15日とそれぞれの「終戦」{{進捗|00%|2022-12-18}}(玉音放送)
== 第2編 近代化と私たち ==
=== 第1章 生活や社会の変化を読み取ってみよう(未記述) ===
=== 第2章 結びつく世界と日本 ===
==== 18世紀までの世界 ====
* [[高等学校歴史総合/近世の日本と世界|近世の日本と世界]]{{進捗|100%|2024-11-23}}(日本の「鎖国」と東アジアの交易、近世東アジアの国際秩序)
* [[高等学校歴史総合/18世紀の中国とアジア貿易|18世紀の中国とアジア貿易]]{{進捗|00%|2023-02-12}}(清の繁栄、清と近隣諸国とのつながり)
* [[高等学校歴史総合/18世紀のイギリス・アジア・アフリカ|18世紀のイギリス・アジア・アフリカ]]{{進捗|00%|2023-02-12}}(ヨーロッパの世界進出と大西洋三角貿易、世界経済の覇権を握ったイギリス)
* もっと知りたい 海を渡った日本産陶磁器{{進捗|00%|2023-12-24}}(陶磁器の歴史)
* もっと知りたい 琉球と蝦夷地{{進捗|00%|2022-12-25}}(琉球王国、蝦夷地)
==== 工業化と世界市場の形成 ====
* 産業革命による経済発展と社会の変化{{進捗|00%|2022-11-25}}(産業革命、資本主義社会)
* 世界市場の形成とイギリスによるアジア進出{{進捗|00%|2023-02-25}}(イギリスによる世界市場の形成、イギリスのアジア進出 )
* [[高等学校歴史総合/日本の開国とその影響|日本の開国とその影響]]{{進捗|00%|2022-11-21}}(日本の開国・開港、交通革命の進展と東アジア)
* 歴史のなかの16歳 工女と工場法{{進捗|00%|2022-12-25}}(工場法など)
* [[高等学校歴史総合/もっと知りたい 産業革命とブラスバンド|もっと知りたい 産業革命とブラスバンド]]{{進捗|100%|2024-11-23}}(金管楽器の歴史)
=== 第3章 国民国家と明治維新 ===
==== 国民国家と立憲体制 ====
* 二つの市民革命と近代民主主義社会の成立{{進捗|00%|2022-11-22}}(アメリカ独立革命、フランス革命、ナポレオン)
* 国民統合とナショナリズム{{進捗|00%|2022-11-23}}(19世紀前半のヨーロッパ諸国、ドイツ統一、南北戦争など)
* 明治維新期の日本と世界{{進捗|100%|2023-02-19}}(明治新政府の成立、近代化と東アジア)
* 近代国家への移行と憲法の制定{{進捗|00%|2022-11-24}}(大日本帝国憲法、条約改正の実現)
* もっと知りたい 国境の過去・現在・未来{{進捗|00%|2022-12-26}}(近代国家と領土画定など)
* もっと知りたい 女王と天皇 理想の家族{{進捗|00%|2022-02-12}}(近代の天皇史)
==== 帝国主義とアジア・アフリカの変容 ====
* 列強による帝国主義{{進捗|00%|2023-02-17}}(第2次産業革命と帝国主義、欧米諸国の帝国主義政策)
* 帝国主義がアジア・アフリカにもたらしたもの{{進捗|00%|2023-02-18}}(列強のアフリカ分割、西アジア諸国の改革など)
* 日清戦争とその影響{{進捗|00%|2023-02-15}}(日清戦争、東アジアの構造変動)
* 日露戦争{{進捗|00%|2022-11-22}}(義和団事件、日露戦争、朝鮮の植民地化、辛亥革命)
* もっと知りたい 近代の博覧会{{進捗|00%|2022-12-24}}(万国博覧会の歴史)
* [[高等学校歴史総合/もっと知りたい ペストと感染症|もっと知りたい ペストと感染症]]{{進捗|75%|2024-11-24}}(ペストの大流行ほか)
=== 第4章 近代化と現代的な諸課題 ===
* 鉄道建設{{進捗|00%|2023-03-02}}
== 第3編 国際秩序の変化や大衆化と私たち ==
=== 第1章 生活や社会の変化を読み取ってみよう(未記述) ===
=== 第2章 第一次世界大戦と大衆社会 ===
==== 第一次世界大戦と国際社会 ====
* [[高等学校歴史総合/第一次世界大戦|第一次世界大戦]]{{進捗|100%|2024-11-25}}(第一次世界大戦)
* [[高等学校歴史総合/社会主義革命|社会主義革命]]{{進捗|100%|2024-11-27}}(ロシア革命、コミンテルン、ソビエト社会主義共和国連邦)
* [[高等学校歴史総合/国際協調体制|国際協調体制]]{{進捗|100%|2024-11-23}}(ヴェルサイユ体制とワシントン体制、国際協調の高まり)
* [[高等学校歴史総合/アジアの民族運動|アジアの民族運動]]{{進捗|00%|2023-01-27}}(アジアの経済成長、東アジアの民族運動、インド・東南アジア・西アジアの民族運動)
* もっと知りたい ユダヤ人のパレスチナ移住とパレスチナ分割{{進捗|00%|2022-12-30}}(パレスチナの歴史、シオニズム運動)
* もっと知りたい 浅川巧 朝鮮の人々とともに生きた日本人{{進捗|00%|2022-12-30}}(浅川兄弟)
==== 1920年代の世界と大衆の時代の到来 ====
* [[高等学校歴史総合/大衆の政治参加|大衆の政治参加]]{{進捗|00%|2023-01-08}}(世界史上の民衆運動、大正デモクラシーと大衆の政治参加)
* [[高等学校歴史総合/女性の社会参加|女性の社会参加]]{{進捗|00%|2023-02-23}}(女性の社会進出、日本の大正期の女性)
* [[高等学校歴史総合/大衆社会の形成|大衆社会の形成]]{{進捗|100%|2024-11-27}}(大衆社会の出現、1920年代のアメリカ、日本の大衆社会)
* もっと知りたい 映画と「大衆化」{{進捗|00%|2022-12-28}}(映画の歴史)
* もっと知りたい オリンピックの歩み{{進捗|00%|2022-12-28}}(オリンピックの歴史)
=== 第3章 経済危機と第二次世界大戦 ===
==== 国際協調の挫折と2度目の世界大戦 ====
* 世界恐慌{{進捗|00%|2022-11-24}}(昭和恐慌、ブロック経済圏)
* ファシズムの台頭{{進捗|00%|2022-12-31}}(ファシズム、ナチ党の政権掌握)
* 日本の大陸進出{{進捗|00%|2022-12-08}}(満州事変、日中戦争)
* 第二次世界大戦{{進捗|00%|2022-11-16}}(ドイツの拡大、第二次世界大戦、大量殺戮と民衆の抵抗)
* もっと知りたい リンゲルブルム・アーカイヴと『アンネの日記』{{進捗|00%|2022-12-25}}(アンネ・フランク)
* 歴史のなかの16歳 満蒙開拓青少年義勇軍{{進捗|100%|2022-11-21}}(満州農業移民、満蒙開拓青少年義勇軍、「鍬の戦士」)
==== 世界大戦がもたらしたもの ====
* アジア太平洋戦争{{進捗|100%|2023-01-29}}(日米交渉の挫折と開戦、日本のアジア支配、戦争の被害と加害)
* [[高等学校歴史総合/戦争が変えた人々のくらし|戦争が変えた人々のくらし]]{{進捗|00%|2023-02-19}}(マス・メディアの普及と情報や生活の画一化、国民の組織化と戦時動員ほか)
* 戦後世界の新たな枠組み{{進捗|00%|2023-01-29}}(戦後構想と大戦の終結、冷戦の開始とドイツの分断、国際連合の成立)
* 敗戦後の日本とアジア{{進捗|00%|2023-02-19}}(日本の戦後改革、大衆は敗戦をどう生きたか、冷戦と日本の独立)
* 冷戦下の東アジア{{進捗|00%|2023-02-19}}(戦後の中国、朝鮮半島の南北分断、現代の朝鮮半島と台湾)
* もっと知りたい 戦争を「記憶」するということ{{進捗|00%|2022-12-24}}(明日の神話ほか)
* もっと知りたい 核と原子力エネルギー{{進捗|00%|2023-02-09}}(原子力の平和利用、原子力エネルギーの普及と課題)
=== 第4章 国際秩序の変化や大衆化と現代的な諸課題 ===
* ナショナリズム{{進捗|00%|2022-03-08}}[発展講義]
== 第4編 グローバル化と私たち ==
=== 第1章 生活や社会の変化を読み取ってみよう(未記述) ===
=== 第2章 冷戦と世界経済 ===
==== 冷戦と国際政治 ====
* 脱植民地化とアジア・アフリカ諸国{{進捗|00%|2023-01-25}}(アジア・アフリカ諸国の独立、第三世界の形成と連帯)
* 冷戦下の地域紛争{{進捗|00%|2023-01-26}}(ベトナム戦争、中東戦争)
* 先進国の政治と社会運動{{進捗|00%|2023-01-29}}(西側諸国と福祉国家政策、国境をこえる社会運動)
* 核兵器の脅威と核軍縮{{進捗|00%|2023-01-29}}(核拡散と核兵器反対運動、核軍縮の取り組みと課題)
==== 世界経済の拡大と日本 ====
* [[高等学校歴史総合/西ヨーロッパ・東南アジアの地域連携|西ヨーロッパ・東南アジアの地域連携]]{{進捗|00%|2022-12-31}}(西ヨーロッパ統合への動き、東南アジア諸国の動き)
* [[高等学校歴史総合/戦後の日本とアジア諸国との関係|戦後の日本とアジア諸国との関係]]{{進捗|00%|2023-01-01}}(日本の国連加盟、アジア諸国との国交回復、沖縄の本土復帰)
* [[高等学校歴史総合/高度経済成長|高度経済成長]]{{進捗|00%|2023-01-01}}(日本と西ドイツの経済成長、高度経済成長と人々の生活、成長のもたらした課題)
* もっと知りたい グローバリゼーションとストリートダンス{{進捗|00%|2022-12-27}}(ダンスの歴史)
* 歴史のなかの16歳 集団就職 「金の卵」たちの時代{{進捗|00%|2023-02-09}}(集団就職列車など)
=== 第3章 世界秩序の変容と日本 ===
==== 市場経済の変容と冷戦の終結 ====
* 石油危機と価値観の転換{{進捗|00%|2023-02-09}}(戦後経済の転換、石油危機と日本、価値観の転換)
* [[高等学校歴史総合/アジアの成長|アジアの成長]]{{進捗|00%|2023-02-13}}(アジア諸国の成長、第三世界の多様化、日本の経済大国化)
* 冷戦の終結{{進捗|00%|2023-02-12}}(社会主義世界の変容、冷戦の終結とソ連の崩壊、冷戦後の地域紛争と日本)
==== 冷戦終結後の世界 ====
* 民主化の進展と冷戦終結後の日本{{進捗|00%|2022-12-31}}(民主化の進展と課題、日本の政治の展開)
* [[高等学校歴史総合/市場開放と経済の自由化|市場開放と経済の自由化]]{{進捗|75%|2024-11-28}}(新自由主義の台頭、経済のグローバル化と新たな国際経済組織)
* [[高等学校歴史総合/地域統合の進展と課題|地域統合の進展と課題]]{{進捗|00%|2022-12-31}}(地域統合の拡大、地域統合の課題)
* [[高等学校歴史総合/情報通信技術の発達|情報通信技術の発達]]{{進捗|100%|2024-11-27}}(情報通信技術の発達と社会の変化、情報化社会とその課題)
* [[高等学校歴史総合/冷戦終結後の紛争と平和への取り組み|冷戦終結後の紛争と平和への取り組み]]{{進捗|00%|2023-01-01}}(冷戦終結後の紛争、紛争の解決と国際社会の役割)
* もっと知りたい 災害と私たち{{進捗|00%|2022-11-21}}(阪神淡路大震災、東日本大震災)
* もっと知りたい 中東の少数派クルド人{{進捗|00%|2022-12-27}}(国民国家の中の少数派、クルド人問題の展開)
=== 第4章 現代的な諸課題の形成と展望 ===
* 移民{{進捗|00%|2023-02-22}}(近代の移民史)
== 近現代史関連用語解説・参考 ==
* 近現代史関連用語解説{{進捗|00%|2023-02-22}}
* 途上国から見た国際関係理論{{進捗|00%|2023-03-05}}[発展講義(イマニュエル・ウォーラースティンなど)]
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[[カテゴリ:高等学校歴史総合|*]]
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高校化学 セラミックス
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Kotlin
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校閲と推敲と加筆
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'''Kotlin'''は、[[w:JetBrains|JetBrains]]社によって開発された静的型付けされたオブジェクト指向のプログラミング言語で、[[W:Java仮想マシン|Java仮想マシン]](JVM)上で動作します。[[JavaScript]]や、[[W:LLVM|LLVMフレームワーク]]を介して多くのプラットフォームで実行可能なコードにもコンパイルできます。
Kotlinは、複数のコンパイルターゲットをサポートしています。Kotlin/JVMは従来のJava仮想マシン上でアプリケーションを実行し、Kotlin/JSはJavaScriptへのコンパイルを可能にします。Kotlin/Nativeはネイティブコードへのコンパイルを実現し、LLVMを活用してさまざまなプラットフォームに対応します。
特に'''Kotlin/Wasm'''は、Kotlinの新しいコンパイルターゲットであり、[[WebAssembly]]をサポートする環境やデバイス上で実行可能なアプリケーションを作成することができます。これにより、Kotlinの強力な機能と柔軟性を活用して、Webアプリケーションやクライアントサイドのプログラミングにも取り組むことができます。
Kotlinは[[Java]]よりも簡潔で型安全性が高く、[[Scala]]よりもシンプルな言語を目指して開発されました。Scalaと比較して、簡略化された結果、コンパイルが高速化され、IDEでの言語サポートも充実しています。また、KotlinはJavaと完全な互換性があり、Java開発者は徐々に導入することができます。
完全なJava互換性により、既存のJavaライブラリや既存のコードベースとシームレスに連携できます。[[プログラミング/Null安全性|null安全性]]は言語に組み込まれており、開発者は実行時のNullPointerExceptionのリスクを軽減できます。簡潔で表現力の高い文法は、コードの可読性と生産性を向上させ、関数型プログラミングのサポートにより、より柔軟なプログラミングスタイルを可能にします。拡張関数の機能により、既存のクラスに追加のメソッドを定義できます。
特に、KotlinはAndroidアプリケーション開発において重要な役割を果たしており、2019年にGoogleはKotlinをAndroidの推奨プログラミング言語として指定しました。既存のAndroidアプリケーションは、アプリケーション全体を書き換えることなくKotlinで新機能を実装することができます。
2024年現在、KotlinはGitHub上でのオープンソースプロジェクトとして継続的に発展しており、[[w:JetBrains|JetBrains]]とGoogle、そしてKotlin Foundationによってサポートされています。Kotlin Foundationが商標「Kotlin」を管理しています。
モバイルアプリケーション開発、特にAndroidにおいて非常に強力です。サーバーサイドアプリケーションの開発、クロスプラットフォーム開発、Web開発、さらにはデータサイエンスの分野でも利用されており、幅広いプログラミングニーズに対応できる汎用的な言語となっています。
== はじめに ==
=== 予備知識 ===
Kotlinは多様なプラットフォームで利用できるモダンで柔軟なプログラミング言語です。
このチュートリアルに取り組む前に、以下の予備知識が役立ちます。
;プログラミング基礎:
: 変数、制御構造(条件分岐、ループ)、関数など、プログラミングの基本的な概念を理解していることが望ましいです。これらの概念はKotlinを含む多くのプログラミング言語で共通しています。
;オブジェクト指向プログラミング(OOP):
:Kotlinはオブジェクト指向の概念を採用しており、クラス、オブジェクト、継承、ポリモーフィズムなどのOOPの基本的な理解が重要です。
;Javaの基本知識(Kotlin/JVMの場合):
:KotlinはJavaとの高い互換性を有しています。Javaの基本的な概念やJavaの標準ライブラリについての基本的な知識があると、Kotlin/JVMの理解がより深まります。
;Web開発基礎(Kotlin/JSの場合):
:Kotlin/JSはJavaScriptに変換され、Web開発に利用されます。HTMLやCSS、基本的なWeb開発の知識があると、Kotlin/JSを使用したWebアプリケーションの開発がスムーズに進みます。
;ネイティブ開発基礎(Kotlin/Nativeの場合):
:Kotlin/Nativeはネイティブな実行コードを生成し、組み込みシステムやiOSアプリケーションなどで利用されます。ネイティブ開発の基本的な知識があると、Kotlin/Nativeを活用した開発がしやすくなります。
以上の予備知識を持っていると、Kotlinをより効果的に学習し、異なるプラットフォームでの利用に対応することができます。各プラットフォームにおけるKotlinの特徴や最適な利用法を理解することで、幅広い開発環境で柔軟かつ効率的なプログラミングが可能になります。
==== プログラミング経験者へ ====
Kotlinを学ぶ際に他の言語のプログラミング経験がある場合、以下のアドバイスが役立つかもしれません。
;Java経験者へのアドバイス:
:KotlinはJavaとの互換性が高いため、既存のJavaコードとの統合がスムーズに行えます。JavaのコードをKotlinに変換することも可能です。
:Kotlinの拡張関数やラムダ式など、新しい機能を積極的に試してみましょう。これにより、コードの簡潔性と可読性が向上します。
;他の静的型付け言語経験者へのアドバイス:
:Kotlinも静的型付け言語であり、型推論が強力です。しかし、null安全性や拡張関数など、他の言語にはない独自の機能にも焦点を当てて学習しましょう。
:Kotlinのコルーチンを利用して非同期処理を書くことで、他の言語での非同期コードよりもシンプルで効率的なコードを書けます。
;関数型プログラミング経験者へのアドバイス:
:Kotlinは関数型プログラミングの概念をサポートしています。ラムダ式や高階関数を駆使して、より宣言的で簡潔なコードを書く方法を探求してみてください。
:Kotlinの拡張関数やパターンマッチングを利用することで、関数型プログラミングの手法をさらに発展させることができます。
;Android開発者へのアドバイス:
:KotlinはAndroidの公式開発言語として広く採用されています。既存のJavaベースのAndroidプロジェクトでもKotlinへの移行が可能です。Android Studioとの統合を利用して、Androidアプリケーションの開発にKotlinを組み込んでみましょう。
総じて、Kotlinは他のプログラミング言語において得た経験を活かしやすい言語です。適応期間は短く、生産性を高めるために積極的に新しい機能や手法を試してみることが重要です。また、公式のドキュメントやサンプルコードを利用して、Kotlinの言語仕様やベストプラクティスに精通することもおすすめです。
==== プログラミング未経験者へ ====
プログラミング未経験者がKotlinやプログラミング全般に取り組む際のアドバイスは以下の通りです:
;基本的なプログラミング概念の理解:
:プログラミングの基本概念(変数、条件分岐、ループなど)を理解することから始めましょう。これらの基本的な概念はほぼ全てのプログラミング言語で共通しています。
;Kotlinの特徴を理解:
:KotlinがJavaとの互換性が高く、Androidアプリケーション開発で広く使われていることを知りましょう。Kotlinはコードの簡潔性や可読性を向上させるための多くの機能を提供しています。
;オンライン教材やチュートリアルを活用:
:オンライン上には多くの無料または低コストでプログラミングを学べる教材やチュートリアルがあります。これらのリソースを活用して基礎から学び、実際に手を動かしながら進めてみましょう。
;実践を重視:
:理論だけでなく、実際にコードを書いてみることが非常に重要です。小さなプログラムから始め、段階的に難易度を上げながら進めていくと良いでしょう。
;エラーを恐れず、デバッグの練習:
:プログラムでエラーが発生することはよくあることです。エラーを見つけて修正することはプログラミングの一部であり、そのプロセスを恐れずに経験してみましょう。
;プロジェクトを通じた学習:
:実際のプロジェクトに取り組むことで、プログラミングの実践的な側面を理解しやすくなります。小さなプロジェクトから始め、徐々に複雑性を増していくと良いでしょう。
;コミュニティへの参加:
:Kotlinやプログラミングに関するコミュニティやフォーラムに参加すると、他の学習者や経験者からのアドバイスやサポートを得ることができます。質問をしてコミュニケーションをとることも大切です。
;継続的な学習と興味を持つ:
プログラミングは絶え間ない学習が求められる分野です。新しい技術やツールに興味を持ち、継続的に学び続けることでスキルを向上させることができます。
プログラミングはスキルの向上に時間がかかるものですが、継続的な努力と実践を通じて着実に成長していきます。最初は小さなステップから始め、徐々に進んでいくことが大切です。
=== Hello world ===
{{先頭に戻る|style=border-top:1px solid gray;}}
他の多くのチュートリアルがそうであるように、 私たちもまずはKotlinの世界にあいさつすることから始めましょう。hello.ktというファイルを作り、次のように書いて保存して下さい(Kotlinのソースファイルの拡張子は .kt です)。
;[https://pl.kotl.in/JCCTJjX4_ hello.kt]:<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
fun main() = println("Hello, World!")
</syntaxhighlight>
それでは、ソースプログラムをコンパイルして実行してみましょう。
:<syntaxhighlight lang="console">
% kotlinc hello.kt -include-runtime -d hello.jar
% java -jar hello.jar
Hello, World!
% _
</syntaxhighlight>
# <code>fun main()</code> :
#* <code>fun</code>は関数(function)を宣言するためのキーワードです。
#* <code>main</code>はプログラムのエントリーポイントとなる特別な関数の名前です。通常、プログラムの実行が始まるところです。
# <code>=</code> :
#* このイコール記号は、関数の本体が始まることを示します。Kotlinでは、単一の式の関数を記述する際に、本体とイコールを省略して1行で記述できます。
# <code>println("Hello, World!")</code> :
#* <code>println</code>はコンソールに文字列を表示するための関数です。<code>("Hello, World!")</code>は引数として渡される文字列です。
#* この行全体は、関数の呼び出しとして、文字列 "Hello, World!" をコンソールに表示するものです。
これにより、この一行のコードは「<code>main</code>という関数を宣言し、その中で 'Hello, World!' という文字列をコンソールに表示する」という単純なプログラムを実現しています。Kotlinはこのようにシンプルかつ読みやすい構文を持っており、初学者にも優れた学習言語となっています。
<br style="clear:both">
=== クイックツアー ===
Kotlinのクイックツアーでは、基本的な構文や機能に焦点を当て、簡単なコード例を通じて言語の特徴を理解していきます。
# 変数と基本的なデータ型
#:<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
fun main() {
// 変数の宣言
val message: String = "Hello, Kotlin!"
// 自動型推論も可能
val number = 42
// 文字列テンプレート
println("$message The answer is $number")
}
</syntaxhighlight>
# 条件分岐とループ
#:<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
fun main() {
val score = 75
// 条件分岐
if (score >= 80) {
println("Great job!")
} else if (score >= 60) {
println("Good job!")
} else {
println("You can do better.")
}
// ループ
for (i in 1..5) {
println("Count: $i")
}
}
</syntaxhighlight>
# 関数の定義と呼び出し
#:<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
fun main() {
// 関数の呼び出し
greet("Alice")
// 関数の定義
fun greet(name: String) {
println("Hello, $name!")
}
}
</syntaxhighlight>
# クラスとオブジェクト
#:<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
fun main() {
// クラスの定義
class Person(val name: String, val age: Int)
// オブジェクトの作成
val person = Person("John", 25)
// プロパティへのアクセス
println("${person.name} is ${person.age} years old.")
}
</syntaxhighlight>
# Null安全性
#:<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
fun main() {
// Null許容型
var name: String? = "Bob"
// 安全呼び出し演算子
val length: Int? = name?.length
// Elvis演算子
val result = name ?: "Guest"
println("Name length: $length")
println("Result: $result")
}
</syntaxhighlight>
# 拡張関数
#:<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
fun main() {
// 拡張関数の定義
fun String.addExclamation(): String {
return "$this!"
}
// 拡張関数の呼び出し
val greeting = "Hello".addExclamation()
println(greeting)
}
</syntaxhighlight>
# コルーチン
#:<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
import kotlinx.coroutines.*
fun main() {
// コルーチンの起動
GlobalScope.launch {
delay(1000) // 1秒待つ
println("World!")
}
println("Hello, ")
// プログラムを待機して終了しないようにする
Thread.sleep(2000) // 2秒待つ
}
</syntaxhighlight>
# Kotlin DSL
#:<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
data class Person(val name: String, val age: Int)
fun buildPerson(block: PersonBuilder.() -> Unit): Person {
val builder = PersonBuilder()
builder.block()
return builder.build()
}
class PersonBuilder {
var name: String = ""
var age: Int = 0
fun build(): Person {
return Person(name, age)
}
}
fun main() {
val person = buildPerson {
name = "Alice"
age = 30
}
println("Built person: $person") // => Built person: Person(name=Alice, age=30)
}
</syntaxhighlight>
#: この例では、Kotlin DSLを使用して、特定のドメイン(ここでは<code>Person</code>オブジェクトの構築)に特化した言語拡張を行っています。
# Smart cast
#: Kotlinは型の安全性を高めるためにスマートキャストを提供しています。これにより、条件分岐やインスタンスのチェック後に自動的にキャストが行われ、冗長なキャストを省略できます。
#:<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
fun processValue(value: Any) {
if (value is String) {
// valueはString型として扱われる
println(value.length) // ここでlengthプロパティにアクセスできる
}
if (value is Int) {
// valueはInt型として扱われる
println(value * 2) // ここでvalueをIntとして使用できる
}
// スマートキャストを利用することで、valueがどの型であるかを明示的にキャストする必要がない
}
fun main() {
processValue("Hello") // 出力: 5 (Stringの長さ)
processValue(10) // 出力: 20 (Intを2倍にした値)
}
</syntaxhighlight>
これらの例はKotlinの基本を紹介するものであり、より高度な概念や機能も学ぶことができます。
{{:Kotlin/インストール方法}}
{{:Kotlin/実行方法}}
== 特徴 ==
{{先頭に戻る}}
; [[W:コンパイル型言語|コンパイル型言語]] : Kotlinはコンパイラーとして実装されています。REPLやスクリプティングエンジンもあります。
:; Kotlin/JVM: 1つまたは複数のソースコードをコンパイルしてJavaバイトコードを生成し、生成したJavaバイトコードを実行します。
:; Kotlin/JS: 1つまたは複数のソースコードをコンパイルしてJavaScriptを生成し、生成したJavaScriptを実行します。
:; Kotlin/Native: 1つまたは複数のソースコードをコンパイルしてLLVMインフラストラクチャーをバックエンドに実行形式を生成し、生成した実行形式を実行します。
:; Kotlin/Wasm: 1つまたは複数のソースコードをコンパイルしてWebAssembly(Wasm)バイナリを生成し、WebAssembly仮想マシン上で実行します。
; [[W:静的型付け|静的型付け]] : 値・変数・関数のパラメーター・関数の戻値などの型はコンパイル時に検証され、[[W:型安全性|型安全性]]が担保されます。
; [[W:例外#コンピュータと例外|例外]] : try-catch-finally 形の例外処理をサポートします。
; [[W:多重定義#演算子の多重定義|演算子オーバーロード]]: サポートします。<code>a + b</code> は、メソッド形式 <code>a.plus(b)</code> と同義です。
; [[W:多義定義|関数オーバーロード]] : 同じ名前で引数の数が異なる関数を定義することが可能です。
; [[#ラムダ式|ラムダ式]]: サポートします。<code>{ a: Int, b: Int -> a + b }</code>
; [[#無名関数|無名関数]]: サポートします。<code>fun(a: Int, b: int) = a + b</code>
; [[#拡張関数|拡張関数]]: 既存のクラスに新しいメソッドを生やすことができます。これは Java のクラスライブラリーのクラスも例外ではありません。
; 宣言や定義にはキーワードを伴う: 関数定義なら <code>fun</code>、定数宣言なら <code>val</code>、変数宣言なら <code>var</code>、クラス定義なら <code>class</code> など、明示的にキーワードを使い宣言するので grep フレンドリーです。また、列挙型は <code>enum</code> ではなく、<code>enum class</code> で列挙だと知らなくても '''class''' で検索すれば見落としません。C/C++は、<code>int f(int ch){...}, int i = 9;</code>のように、よく読まないと関数定義なのか変数宣言かわからないのとは対照的です。特にC++は、<code>int a(3)</code>が関数定義なのか変数宣言なのかに曖昧さがあり、パースの時点では確定せずコンパイラーもプログラマーも悩まされます。
; [[W:型推論|型推論]] : サポートします。
; [[W:ガベージコレクション|ガベージコレクション]] : サポートします。
; [[W:クラス (コンピュータ)|クラス]] : クラスベースのオブジェクト指向言語です。
:; 全てがオブジェクト : Javaで言うプリミティブもオブジェクトで、メソッドを持ちます。
:; 祖先クラス : Any
:; [[#コンストラクタ|コンストラクター]] : [[#プライマリーコンストラクター|プライマリーコンストラクター]]・[[#セカンダリコンストラクター|セカンダリコンストラクター]]・[[#init|init]] の3つのメソッドがインスタンス化の機能が割振られます。
:; [[#デストラクタ|デストラクター]] : ありません。
:; [[W:継承 (プログラミング)|継承]] : 単一継承をサポートします。
:; 抽象クラス : [[Java]] や [[Go]] の interface や [[Swift]] の protocol はありませんが、abstract class があります。
; Mix-in : サポートします。
; [[#名前空間|名前空間]] : [[#パッケージ|パッケージ]]が名前空間を持ちます。
; defer : ありません。
; 分岐構造は式 : [[#if|if]], [[#when|when]]は式です。
; 文末の<code>;</code>(セミコロン): 必要ありません。
== コード・ギャラリー ==
{{先頭に戻る}}
=== エラトステネスの篩 ===
{{先頭に戻る|title=コード・ギャラリーに戻る|label=コード・ギャラリー}}
エラトステネスの篩を、若干 Kotlin らしく書いてみました。
;[https://pl.kotl.in/YOo5wiNi3 エラトステネスの篩]:<syntaxhighlight lang=kotlin line copy>
fun eratosthenes(n: Int) {
var sieve = BooleanArray(n + 1){ it >= 2 }
for (i in 2..<sieve.size) {
if (!sieve[i])
continue;
for (j in i * i until sieve.size step i)
sieve[j] = false
if (i * i >= sieve.size)
break;
}
for (i in 2..<sieve.size) {
if (!sieve[i])
continue;
print("$i ")
}
}
fun main() {
eratosthenes(100);
}
</syntaxhighlight>
;実行結果:<syntaxhighlight lang=text>
2 3 5 7 11 13 17 19 23 29 31 37 41 43 47 53 59 61 67 71 73 79 83 89 97
</syntaxhighlight>
: 使用頻度の高い sieve は、実行効率の良いプリミティブ型配列の BooleanArray として、初期化式を it >= 2 として宣言と同時に素数候補をマークしました。
: <var>i</var> のループはオーソドックスな IntRange をコレクションにした for ですが、<var>j</var> のループは少し変則的で until は制御構造に見えますが、メソッド <code>infix Int.until(to: Int) : IntProgression</code> で、infix 修飾による中置構文です。
=== 最大公約数と最小公倍数 ===
{{先頭に戻る|title=コード・ギャラリーに戻る|label=コード・ギャラリー}}
最大公約数と最小公倍数を、若干 Kotlin らしく書いてみました。
;[https://pl.kotl.in/eumYGumM7 最大公約数と最小公倍数]:<syntaxhighlight lang=kotlin line copy>
tailrec fun gcd2(a: Int, b: Int): Int = if (b == 0) a else gcd2(b, a % b)
fun gcd(vararg numbers: Int): Int = numbers.reduce(::gcd2)
fun lcm2(a: Int, b: Int): Int = a * b / gcd2(a, b)
fun lcm(vararg numbers: Int): Int = numbers.reduce(::lcm2)
fun main() {
println("gcd2(30, 45) => ${gcd2(30, 45)}")
println("gcd(30, 72, 12) => ${gcd(30, 72, 12)}")
println("lcm2(30, 72) => ${lcm2(30, 72)}")
println("lcm(30,42,72) => ${lcm(30,42,72)}")
}
</syntaxhighlight>
;実行結果:<syntaxhighlight lang=text>
gcd2(30, 45) => 15
gcd(30, 72, 12) => 6
lcm2(30, 72) => 360
lcm(30,42,72) => 2520
</syntaxhighlight>
: 関数 gcd2() は、2つの整数の最大公約数を[[W:ユークリッドの互除法|ユークリッドの互除法]]で求めています。
:: gcd2() の修飾子 <code>tailrec</code> は、コンパイラーに末尾再帰が行なわれていることを教え、再帰をループにするヒントを与えています。
: 関数 gcd() は可変引数関数で、全ての引数に gcd2() を適用し最大公約数を返します。
: 関数 lcm2() は、2つの整数の最小公倍数を、<math>GCD(m,n) \cdot LCM(m,n)=m \cdot n</math>を利用して求めています。
: 関数 lcm() は可変引数関数で、全ての引数に lcm2 を適用し最小公倍数を返します。
それぞれの関数定義は式形式で1行なので拍子抜けですが、概念を簡素にかけていると思います。
=== 二分法 ===
{{先頭に戻る|title=コード・ギャラリーに戻る|label=コード・ギャラリー}}
[[W:二分法|二分法]]を、若干 Kotlin らしく書いてみました。
;[https://paiza.io/projects/HwIg-40sBXp5GOFWFTLKMA?language=kotlin 二分法]:<syntaxhighlight lang=kotlin line copy>
import kotlin.math.abs
tailrec fun bisection(low_: Number, high_: Number, f: (Double) -> Double) : Double {
var low = low_.toDouble()
var high = high_.toDouble()
val x = (low + high) / 2;
val fx = f(x);
if (abs(fx) < +1.0e-10)
return x;
if (fx < 0.0)
low = x;
else
high = x;
return bisection(low, high, f);
}
fun main() {
println(bisection(0, 3){x : Double -> x - 1})
println(bisection(0, 3){x : Double -> x * x - 1})
}
</syntaxhighlight>
;実行結果:<syntaxhighlight lang=text>
0.9999999999417923
1.0000000000291038
</syntaxhighlight>
: [[旧課程(-2012年度)高等学校数学B/数値計算とコンピューター#2分法]]の例を Kotlin に移植しました。
: 命題の式をラムダで渡すのが肝ですが、Kotrinは関数の最後パラメーターが関数型の場合括弧の外に追い出せるので
:: <code>bisection(0, 3){x : Double -> x - 1}</code>のような表現ができます。
: 引数で受取った範囲を一旦varに移替えているのは、関数の引数がイミュータブルなためです。
: また、どうせローカル変数に移すならパラメータは Number 型としてIntなども受け入れるようにし、.toDouble()で型を揃えています。
: このコードはまた、<code>[[#tailrec|tailrec]]</code> の好例にもなっています。
=== 複素数型 ===
{{先頭に戻る|title=コード・ギャラリーに戻る|label=コード・ギャラリー}}
オーソドックスな複素数型の実装(Kotlinの標準ライブラリーには複素数型が見当たらなかったので)
{{:Kotlin/Complex.kt}}
=== クラス定義とインスタンス化とメンバー関数 ===
;[https://paiza.io/projects/9XyNAIQyFNLCewZO020A6Q?language=kotlin シンプルなクラス定義]:<syntaxhighlight lang=kotlin line highlight="1-4,7,11" copy>
class Hello(val s : String = "world") {
override fun toString() = "Hello $s!"
fun print() = println(s)
}
fun main() {
val hello1 = Hello()
println(hello1)
hello1.print()
val hello2 = Hello("my friend")
println(hello2);
hello2.print()
print(
"""
Hello::class.simpleName => ${Hello::class.simpleName}
hello1 => $hello1
hello2.s => ${hello2.s}
"""
)
}
</syntaxhighlight>
;実行結果:<syntaxhighlight lang=text>
Hello world!
world
Hello my friend!
my friend
Hello::class.simpleName => Hello
hello1 => Hello world!
hello2.s => my friend
</syntaxhighlight>
: [[Ruby#クラス]]の例を、Kotlin に移植しました。
: 冒頭4行がクラス定義です。
: クラス定義に、他のオブジェクト指向言語ならコンストラクタに渡すような引数が渡されています。
: メンバーを公開するケースなら、この様に宣言的な引数リストを使うとメンバー定義と暗黙の初期値を与えられます。
: toString は、オブジェクトを文字列化するメンバー関数で、Anyの同名のメンバー関数をオーバーライドしています。
: print は、このクラスに独自なメンバー関数で、println() の戻値型(= Unit)を戻値型としています。
=== ファイルの読出し ===
{{先頭に戻る|title=コード・ギャラリーに戻る|label=コード・ギャラリー}}
;[https://paiza.io/projects/C2zvgreLywbWQvIGSzHGug?language=kotlin JavaのI/Oシステムを使いファイルを読込む]:<syntaxhighlight lang=kotlin line copy>
import java.nio.file.Files
import java.nio.file.Paths
import java.nio.charset.Charset
import java.io.IOException
fun main() {
try {
for (s in Files.readAllLines(Paths.get("/etc/hosts"), Charset.forName("UTF-8"))) {
println(s)
}
} catch (e: IOException) {
e.printStackTrace()
}
}
</syntaxhighlight>
;[https://paiza.io/projects/cfZOI-b1YK5S36_bao5Isw?language=kotlin readText版]:<syntaxhighlight lang=kotlin line copy>
import java.io.File
fun main(args: Array<String>) {
print(File("/etc/hosts").readText())
}
</syntaxhighlight>
==チートシート ==
{{先頭に戻る}}
;[[#エントリーポイント|エントリーポイント]]
:;コマンドライン引数を受取らない場合
::<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
fun main() {
// ...
}
</syntaxhighlight>
:;コマンドライン引数を受取る場合
::<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
fun main(args: Array<String>) {
println(args.contentToString())
}
</syntaxhighlight>
;[[#コメント|コメント]]:<syntaxhighlight lang=kotlin style="width: fit-content" copy>
// Kotlinには、行末で終わるコメントと
fun main() { /*
* 複数行に渡ることと
* /*
* 入れ子にすることができる
* コメントがあります
*/
*/
println("Hello, World!")
}
</syntaxhighlight>
;プリミティブデータ型
:{| class=wikitable style="text-align: center"
!データ型!!サイズ<hr>(ビット)!!初期値
|-
|Boolean||1||false
|-
|Byte||8||0
|-
|Short||16||0
|-
|Int||32||0
|-
|Long||64||0L
|-
|Float||32||0.0f
|-
|Double||64||0.0
|}
;[[#変数|変数宣言]]
:;[[#val|イミュータブル]]:<syntaxhighlight lang=kotlin inline>val 識別子 : 型 = 初期化式 ;</syntaxhighlight>
::;[[#型推論|型推論版]]:<syntaxhighlight lang=kotlin inline>val 識別子 = 初期化式 ;</syntaxhighlight>
:;[[#var|ミュータブル]]:<syntaxhighlight lang=kotlin inline>var 識別子 : 型 = 初期化式 ;</syntaxhighlight>
; リテラル
:; 整数リテラル:<syntaxhighlight lang=kotlin inline>123, 0b11010, 0o177, 0xbadbeef</syntaxhighlight>
:; 浮動小数点数リテラル:<syntaxhighlight lang=kotlin inline>3.14, 1.2e-9</syntaxhighlight>
:; 文字リテラル:<syntaxhighlight lang=kotlin inline>'a', '漢', '¥t'</syntaxhighlight>
:; 文字列リテラル:<syntaxhighlight lang=kotlin inline>”abc”, "了解🏝👅"</syntaxhighlight>
::; 複数行に渡る文字列リテラル
::: <syntaxhighlight lang=kotlin style="width: fit-content" copy>
"""
複数行に渡る場合は
この様に
3つの"(ダブルクオーテーションマーク)で囲むことで記述できます。
"""
</syntaxhighlight>
:; 配列の生成:<syntaxhighlight lang=kotlin inline>arrayOf(2,3,5,7), Array(5){1+it)</syntaxhighlight>
; [[#制御構造|制御構造]]
:; [[#分岐|分岐]]
::; [[#if|if]]
:::;else節のないif
::::<syntaxhighlight lang=zig inline>if ( 条件式 ) 式</syntaxhighlight>
::::else節のないifは、値を取ろうとするとコンパイルエラーになります。
:::;ifの値
::::<syntaxhighlight lang=zig inline>if ( 条件式 ) 式1 else 式2</syntaxhighlight>
::::条件式が false でなければifの値は 式1
::::false ならば 式2
::; [[#when|when]]
:::;式で分岐:<syntaxhighlight lang=kotlin style="width: fit-content" copy>
when ( 式 ) {
値0 -> 式0
値1, 値2... , 値n -> 式1
in 範囲式 -> 式2
!in 範囲式 -> 式3
is 型 -> 式4
!is 型 -> 式5
elase -> 式x
}
</syntaxhighlight>
:::;式を省略すると true が仮定されます:<syntaxhighlight lang=kotlin style="width: fit-content" copy>
when {
式0 -> 式0x
式1, 式2... , 式n -> 式1x
elase -> 式x
}
</syntaxhighlight>
:::;値を返すwhen(による再帰):<syntaxhighlight lang=kotlin style="width: fit-content" copy>
fun power(n: Int, i: Int) = when {
i < 0 -> throw Exception("Negative powers of integers cannot be obtained.")
i == 0 -> 1
i == 1 -> n
else -> n * power(n, i - 1)
}
</syntaxhighlight>
:; [[#繰返し処理|繰返し処理]]
::; [[#while|while]]
:::<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
var i = 0
while (i < 5) {
println(i)
i++
}
</syntaxhighlight>
::; [[#do-while|do-while]]
:::<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
var i = 0
do {
println(i)
i++
} while (i < 5)
</syntaxhighlight>
::; [[#for|for]]
:::<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
for (i in 0 until 5) {
println(i)
}
</syntaxhighlight>
; コレクション
:;リストの生成
:;マップの生成
:;リストへのアクセス
:;マップへのアクセス
:;フィルタリング
:;マップへの変換
; クラス
:;enum class
:;abstract class
; 関数
:; 関数呼出し
:; 関数定義
== KotlinとJavaの比較 ==
{{先頭に戻る}}
KotlinとJavaは、どちらもJava Virtual Machine(JVM)上で動作するプログラミング言語です。以下は、KotlinとJavaの主な比較ポイントです。
# Null Safety(null安全性)
#; Kotlin: Kotlinはnull安全性を重視しており、デフォルトで変数がnullになる可能性がある場合、その変数をnullableとして扱います。これにより、nullによる実行時のエラーを減少させます。
#; Java: 近年のJavaバージョンでは、<code>Optional</code>や<code>Nullable</code>などの概念が導入され、nullの扱いが改善されました。しかし、Kotlinのnull安全性はより厳格であり、コンパイル時の警告やエラーが発生しやすくなっています。
# コードの簡潔性
#; Kotlin: KotlinはJavaに比べてコードが簡潔で読みやすくなっています。これは、Kotlinがnullチェックや型推論などを自動的に処理し、冗長なコードを排除できるからです。
#; Java: Javaも近年ではラムダ式やストリームAPIなど、コードの簡潔性を向上させる機能が導入されていますが、依然として冗長なコードが残ることがあります。
# 関数型プログラミング
#; Kotlin: Kotlinは関数型プログラミングをサポートしており、ラムダ式や高階関数の使用が簡単です。
#; Java: Javaも関数型プログラミングをサポートしていますが、Kotlinの方がよりシンプルになっています。
# 互換性
#; Kotlin: KotlinはJavaのライブラリやフレームワークを使用することができ、Javaとの相互運用性が高いです。また、JavaからKotlinに変換することも可能です。
#; Java: JavaはKotlinのコードを直接使用することはできませんが、既存のJavaコードとの連携がスムーズです。
# パフォーマンス
#; Kotlin: KotlinはJavaに比べて少し遅いとされていますが、実際のアプリケーションではその違いがほとんど実感できないことが多いです。KotlinはJavaのバイトコードに変換されるため、ほとんど同じパフォーマンスを実現できます。
# ツールのサポート
#; Kotlin: KotlinはJavaと同じツールを使用できるため、Javaエコシステムのメリットを享受しながら、より現代的な言語機能を利用できます。
総合的に見ると、KotlinはJavaよりも簡潔で読みやすく、より現代的な言語機能を備えています。ただし、Javaのライブラリやフレームワークを使用する場合は、Javaを使用することが必要な場合があります。
== KotlinとScalaの比較 ==
{{先頭に戻る}}
KotlinとScalaは、どちらもJVM(Java Virtual Machine)上で動作する静的型付け言語であり、それぞれ異なる特徴を持っています。以下に、KotlinとScalaをいくつかの側面で比較してみます。
# パフォーマンス
#; Kotlin: Kotlinは、Javaと同等のパフォーマンスを提供し、メモリ使用量が比較的少ないです。Androidアプリケーションの開発においては特に優れた性能を発揮します。
#; Scala: Scalaは一般的にはJavaよりも高速であるとされていますが、同時に多くのメモリを使用します。複雑なシステムの開発において、高いパフォーマンスが求められる場面で利用されます。
# 文法
#; Kotlin: Kotlinの文法はJavaに似ており、より簡素であり、Javaからの移行が容易です。これにより、Java開発者にとっては理解しやすいものです。
#; Scala: Scalaの文法は高度であり、関数型プログラミングの概念を強力にサポートしています。初めてのユーザーにとっては学習コストが高いかもしれませんが、高度な機能を提供しています。
# 開発用途
#; Kotlin: Kotlinは主にAndroidアプリケーションの開発に最適化されています。Android Studioでのサポートが強力であり、Androidエコシステムとの統合がスムーズです。
#; Scala: Scalaは複雑なシステムや大規模なプロジェクトの開発に適しています。特に関数型プログラミングの特徴を生かした開発に向いています。
# 可読性
#; Kotlin: KotlinはJavaと同じように、シンプルで読みやすいコードを書くことができます。文法がシンプルであるため、可読性が高いです。
#; Scala: Scalaは高度な機能を提供するが故に、可読性が低下する可能性があります。特に初心者にとっては、学習コストが高いと感じることがあります。
# 拡張性
#; Kotlin: Kotlinはよりシンプルでクラスベースのプログラミングスタイルを提供しており、拡張性があります。拡張関数や拡張プロパティなどが利用できます。
#; Scala: Scalaは関数型プログラミングの特徴を強調しており、高度な拡張性を提供しています。パターンマッチングや型クラスなどが利用できます。
総合的に見ると、KotlinはJavaからの移行が容易であり、Androidアプリケーションの開発に特に適しています。一方で、Scalaは関数型プログラミングの特徴を生かして複雑なシステムの開発に向いており、高度な拡張性を提供しています。選択する言語は、開発の目的や開発者のスキルセットによって異なることがあります。
== KotlinとSwiftの比較 ==
{{先頭に戻る}}
KotlinとSwiftは、それぞれAndroidとiOSのアプリ開発で主に使用されるプログラミング言語です。以下に、両言語の類似点と相違点をいくつか挙げてみます。
;類似点:
:;静的型付け:
::KotlinとSwiftは両方とも静的型付け言語であり、コンパイル時に型の確認が行われます。これにより、実行時エラーを事前に把握しやすくなり、安全性が向上します。
:;モダンな構文:
::どちらの言語もモダンで読みやすい構文を採用しており、コードの記述が簡潔になっています。これにより、開発者は効率的かつ迅速にコードを書くことができます。
:;ヌル安全性:
::KotlinとSwiftはヌル安全性の考え方を取り入れており、ヌルポインターによるエラーを防ぐための手段を提供しています。これにより、安定したアプリケーションの開発が可能です。
;相違点:
:;ターゲットプラットフォーム:
::Kotlinは主にAndroidアプリ開発に焦点を当てていますが、JetBrainsによって開発・サポートされているため、マルチプラットフォーム開発にも利用されています。
::SwiftはAppleが開発し、iOS、macOS、watchOS、tvOSなどのApple製品向けのアプリ開発に特化しています。
:;開発元とサポート:
::KotlinはJetBrainsによって開発・サポートされています。JetBrainsはプロの開発者向けのツールを提供しており、Kotlinの統合も図られています。
::SwiftはAppleによって開発され、iOSや関連プラットフォーム向けに積極的にサポートされています。Xcodeなどの開発ツールも提供されています。
:;言語機能の違い:
::KotlinはJavaとの相互運用性が高く、既存のJavaコードとの統合が容易です。これにより、Android開発においても既存のJavaライブラリを利用することができます。
::SwiftはObjective-Cとの相互運用性があり、iOS開発においてはObjective-Cコードとの統合が可能です。SwiftはObjective-Cよりもシンプルであり、関数型プログラミングの機能も強化されています。
:;構文と特徴:
::KotlinはJavaに似た構文を持ちつつ、いくつかの新しい機能や改善を提供しています。Javaからの移行が容易であり、Androidアプリケーション開発に適しています。
::SwiftはObjective-Cよりもシンプルで読みやすい構文を持っており、関数型プログラミングの機能が強化されています。iOSアプリケーション開発において使用されます。
どちらの言語も優れた特性を持っており、選択はプロジェクトのニーズや開発者の好みによって異なります。
== エントリーポイント ==
{{先頭に戻る}}
Kotlinでは、関数 mainがエントリーポイントです。
;noop.kt:<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
fun main() {}
</syntaxhighlight>
なにもしないプログラムはこの様になります。
=== コマンドライン引数を受取る場合 ===
;use-args.kt:<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
fun main(args: Array<String>) {
println(args.contentToString())
}
</syntaxhighlight>
;Shell:<syntaxhighlight lang=text>
% kotlinc use-args.kt -include-runtime -d use-args.jar
% java -jar use-args.jar 123 abc 漢字
[123, abc, 漢字]
% _
</syntaxhighlight>
== パッケージ ==
{{先頭に戻る}}
パッケージの指定は、ソースファイルの冒頭(shebang!の次)で行ってください<ref>[https://kotlinlang.org/docs/basic-syntax.html#package-definition-and-imports Package definition and imports]</ref>。
:<syntaxhighlight lang="Kotlin">
package my.demo
import kotlin.text.*
// Imprementation
</syntaxhighlight>
ディレクトリとパッケージの一致は必須ではなく、ソースファイルはファイルシステム上に任意に配置することができます。
=== ディフォルトインポート ===
Kotlinでは、特定のパッケージやクラスを明示的にインポートすることなく、いくつかのデフォルトのインポートが提供されています。これにより、コードをより簡潔にし、冗長性を減少させることができます。以下は、デフォルトでインポートされる主要なパッケージです。
;kotlin.*: Kotlinの基本的な機能や標準ライブラリが含まれています。これにより、Kotlinの核となる機能を利用するための基本的な道具が提供されます。
;kotlin.annotation.*: アノテーション関連の機能が含まれています。アノテーションは、プログラムにメタデータを追加するための重要な手段です。
;kotlin.collections.*: コレクション関連のクラスや関数が含まれています。これにより、リスト、セット、マップなどのデータ構造を効果的に扱うための機能が提供されます。
;kotlin.comparisons.*: 比較関連の機能が含まれています。ソートや比較などの操作をより容易に行うことができます。
;kotlin.io.*: 入出力関連の機能が含まれています。例えば、ファイルの読み書きや標準出力への出力などが簡単に行えます。
;kotlin.ranges.*: 範囲関連の機能が含まれています。これを使用することで、特定の範囲内の要素を操作する際に便利なメソッドが提供されます。
;kotlin.sequences.*: シーケンス処理関連の機能が含まれています。シーケンスを使用することで、遅延評価を活用して効率的なデータ処理が可能です。
;kotlin.text.*: テキスト処理関連の機能が含まれています。文字列の操作やフォーマットなどが簡単に行えます。
また、ターゲットプラットフォームに応じて、追加のデフォルトインポートが行われます。
;JVM:
:;java.lang.*: Javaの基本的なクラスや機能が含まれています。これにより、Javaとの互換性が確保されます。
:;kotlin.jvm.*: JVM関連の機能が含まれています。
;JS:
:;kotlin.js.*: JavaScript関連の機能が含まれています。
上記のパッケージは、明示的にインポートすることなく既にインポートされています<ref>[https://kotlinlang.org/docs/packages.html#default-imports Default imports]</ref>。
このようなデフォルトのインポートにより、開発者は冗長なコードを書かずに済み、効率的にKotlinの機能を利用することができます。
----
以下は、デフォルトでインポートされる主要なパッケージの概要を表形式でまとめたものです。
:{| class=wikitable
|+ デフォルトでインポートされる主要なパッケージ
!パッケージ!!内容の概要
|-
!kotlin.*
|Kotlinの基本的な機能や標準ライブラリ
|-
!kotlin.annotation.*
|アノテーション関連の機能
|-
!kotlin.collections.*
|コレクション関連のクラスや関数
|-
!kotlin.comparisons.*
|比較関連の機能
|-
!kotlin.io.*
|入出力関連の機能
|-
!kotlin.ranges.*
|範囲関連の機能
|-
!kotlin.sequences.*
|シーケンス処理関連の機能
|-
!kotlin.text.*
|テキスト処理関連の機能
|}
また、ターゲットプラットフォームによっては、追加のデフォルトインポートが行われます。
:{| class=wikitable
|+ ターゲットプラットフォーム別の追加のデフォルトインポート
!ターゲットプラットフォーム!!追加されるパッケージの概要
|-
!JVM
|java.lang.*: Javaの基本的なクラスや機能
|kotlin.jvm.*: JVM関連の機能
|-
!JS
|kotlin.js.*: JavaScript関連の機能
|}
これらのデフォルトインポートは、通常のKotlinプロジェクトで基本的な操作や機能を利用するための便利な手段となります。
=== インポート ===
デフォルトインポートとは別に、各ファイルは独自の <code>[[#import|import]]</code> ディレクティブを含むことができます。
単一の名前でインポートすることができます。
import org.example.Message // Message は無条件にアクセスできます。
または、パッケージ、クラス、オブジェクトなどのスコープのすべてのアクセス可能なコンテンツをインポートすることができます。
import org.example.* // 'org.example' に含まれるすべてのコンテンツにアクセスできるようになります。
名前の衝突がある場合、as キーワードを使用して、衝突するエンティティの名前をローカルに変更することで、曖昧さをなくすことができます。
import org.example.Message // Message にアクセスできるようになります。
import org.test.Message as testMessage // testMessage は 'org.test.Message' を表しています。
import キーワードは、クラスのインポートに限定されません。他の宣言をインポートするためにも使用することができます。
* トップレベルの関数およびプロパティ
* オブジェクト宣言の中で宣言された関数やプロパティ
* enum 定数
=== トップレベル宣言の可視性 ===
トップレベル宣言が private とマークされている場合、その宣言が行われたファイルに対してプライベートとなります。
{{See also|[[#可視性修飾子|可視性修飾子]]}}
== トップレベルオブジェクト ==
{{先頭に戻る}}
いかなる関数スコープにも属さないオブジェクトのことを、トップレベルオブジェクト( ''top level object'' )と言います<ref>[https://kotlinlang.org/spec/syntax-and-grammar.html#grammar-rule-topLevelObject topLevelObject]</ref>。
;[https://paiza.io/projects/jKQiCwDXdUOhVY7dIoDmKg?language=kotlin トップレベルオブジェクトの前方参照は許される]:<syntaxhighlight lang="Kotlin">
val a = 10
fun main() {
println("a =$a, b = $b")
}
val b = 32
</syntaxhighlight>
;実行結果:<syntaxhighlight lang="text">
a = 10, b = 32
</syntaxhighlight>
:この例では変数 <var>b</var> の参照が前方参照になっていますが、<var>b</var> はトップレベルオブジェクトなので参照解決されます。
== コメント ==
{{先頭に戻る}}
Kotlinには、行末で終わるコメントと、複数行に渡ることと、入れ子にすることができるコメントがあります。
;[https://pl.kotl.in/F-bmww7Bt comments.kt]:<syntaxhighlight lang="Kotlin">
// Kotlinには、行末で終わるコメントと
fun main() { /*
* 複数行に渡ることと
* /*
* 入れ子にすることができる
* コメントがあります
*/
*/
println("Hello, World!")
}
</syntaxhighlight>
: <code>/* ... */</code>タイプのコメントは、入れ子にできるのが多くのプログラミング言語と異なります。
:: Kotlinの他には、[[Scala]]と[[D言語]]がコメントを入れ子にできます。
== 基本型 ==
{{先頭に戻る}}
Kotlinでは、任意のインスタンスに対してプロパティーを参照したりメンバー関数を呼出すことができるという意味で、すべてのインスタンスがクラスに属しています。
いくつかの型は特別な内部表現を持つことができます。例えば、数字、文字、ブール値は実行時にプリミティブ値として表現できますが、ユーザーからは参照されるときに自動的にボックス化されるので普通のクラスのインスタンスのように見えます。
これらの型は基本的にJavaのプリミティブに一対一に対応しますが、Stringだけはjava.lang.Stringクラスに対応しています。
基本型は Package kotlin で定義されています。
; Kotlinの基本型
:;[[#論理型|論理型]]:<code>[[#Boolean|Boolean]]</code> {{---}} true, false
:;[[#数値型|数値型]]
::;符号付き整数型:<code>[[#Byte|Byte]]</code> <code>[[#Short|Short]]</code> <code>[[#Int|Int]]</code> <code>[[#Long|Long]]</code>
::;符号無し整数型:<code>[[#UByte|UByte]]</code> <code>[[#UShort|UShort]]</code> <code>[[#UInt|UInt]]</code> <code>[[#ULong|ULong]]</code>
:;[[#浮動小数点数型|浮動小数点数型]]:<code>[[#Float|Float]]</code><code>[[#Double|Double]]</code>
:;[[#文字型|文字型]]: <code>[[#Char|Char]]</code>
:;[[#文字列型|文字列型]]:<code>[[#String|String]]</code>
;[https://pl.kotl.in/sePeMiW1A primitive.kt]:<syntaxhighlight lang="Kotlin">
fun main() {
println("値 : simpleName")
println("----------------")
arrayOf(true, 2.toByte(), 3.toUByte(), 5.toShort(), 7.toUShort(),
11, 13U, 17L, 19UL,
1.23, 3.14F, 'C', "abc").forEach {
println("$it : ${it::class.simpleName}")
}
}
</syntaxhighlight>
;実行結果:<syntaxhighlight lang=text>
値 : simpleName
----------------
true : Boolean
2 : Byte
3 : UByte
5 : Short
7 : UShort
11 : Int
13 : UInt
17 : Long
19 : ULong
1.23 : Double
3.14 : Float
C : Char
abc : String
</syntaxhighlight>
:{| class="wikitable"
|+ 基本型<ref>[https://kotlinlang.org/docs/basic-types.html Basic types]</ref>
|-
! 型
! Javaの型
! リテラル表現
|-
! <syntaxhighlight lang=kotlin inline>Boolean</syntaxhighlight>
! <syntaxhighlight lang=java inline>boolean</syntaxhighlight>
| <syntaxhighlight lang=kotlin inline>false, true</syntaxhighlight>
|-
! <syntaxhighlight lang=kotlin inline>Byte</syntaxhighlight>
! <syntaxhighlight lang=java inline>byte</syntaxhighlight>
| <syntaxhighlight lang=kotlin inline></syntaxhighlight>
|-
! <syntaxhighlight lang=kotlin inline>Short</syntaxhighlight>
! <syntaxhighlight lang=java inline>short</syntaxhighlight>
| <syntaxhighlight lang=kotlin inline></syntaxhighlight>
|-
! <syntaxhighlight lang=kotlin inline>Int</syntaxhighlight>
! <syntaxhighlight lang=java inline>int</syntaxhighlight>
| <syntaxhighlight lang=kotlin inline>123, 0x17, 0b10110110</syntaxhighlight>
|-
! <syntaxhighlight lang=kotlin inline>Long</syntaxhighlight>
! <syntaxhighlight lang=java inline>long</syntaxhighlight>
| <syntaxhighlight lang=kotlin inline>123L, 0x17L, 0b10110110L</syntaxhighlight>
|-
! <syntaxhighlight lang=kotlin inline>Double</syntaxhighlight>
! <syntaxhighlight lang=java inline>double</syntaxhighlight>
| <syntaxhighlight lang=kotlin inline>1.73205080757,6.62607015e-34</syntaxhighlight>
|-
! <syntaxhighlight lang=kotlin inline>Float</syntaxhighlight>
! <syntaxhighlight lang=java inline>float</syntaxhighlight>
| <syntaxhighlight lang=kotlin inline>1.73205080757f</syntaxhighlight>
|-
! <syntaxhighlight lang=kotlin inline>String</syntaxhighlight>
! <syntaxhighlight lang=java inline>java.lang.String</syntaxhighlight>
| <syntaxhighlight lang=kotlin inline>"Simple sample text."</syntaxhighlight>
|-
! <syntaxhighlight lang=kotlin inline>Char</syntaxhighlight>
! <syntaxhighlight lang=java inline>char</syntaxhighlight>
| <syntaxhighlight lang=kotlin inline>'Q'</syntaxhighlight>
|}
=== 論理型 ===
Kotlinの論理型は <code>{{Anchor|Boolean}}</code> で
;偽: <code>{{Anchor|false}}</code>
;真: <code>{{Anchor|true}}</code>
の2つの値以外は取りえません。
JVMでは、この型の非[[#Nullable|Nullable]]値は、プリミティブ型のbooleanの値として表現されます。
論理型と数値型は可換ではないので、制御構造の条件式などでもゼロとの比較を行う必要があります。
{{See also|[[#Nullable|Nullable]]}}
=== 数値型 ===
Kotlinの数値型は、[[#整数型|整数型]]と[[#浮動小数点数型|浮動小数点数型]]に分かれています。
これらの型は、抽象クラスである <code>{{Anchor|Number}}</code> クラスから派生しており、具象クラスとして利用されます。
なお、[[#文字型|文字型]]は数値型と可換ではありません。
==== 整数型 ====
Kotlinの整数型には、符号付き整数型と符号なし整数型があります。
符号なし整数型の名前は、対応する符号付き整数型の名前の先頭に <code>U</code> を補ったものになります。以下が主な整数型です:
:{| class=wikitable
|+ 整数型
|-
! <code>{{Anchor|Byte}}</code>
| 符号付き1バイト整数
|-
! <code>{{Anchor|Short}}</code>
| 符号付き2バイト整数
|-
! <code>{{Anchor|Int}}</code>
| 符号付き4バイト整数
|-
! <code>{{Anchor|Long}}</code>
| 符号付き8バイト整数
|-
! <code>{{Anchor|UByte}}</code>
| 符号なし1バイト整数
|-
! <code>{{Anchor|UShort}}</code>
| 符号なし2バイト整数
|-
! <code>{{Anchor|UInt}}</code>
| 符号なし4バイト整数
|-
! <code>{{Anchor|ULong}}</code>
| 符号なし8バイト整数
|}
==== 浮動小数点数型 ====
Kotlinの浮動小数点数型には、以下の2つがあります:
:{| class=wikitable
|+ 浮動小数点数型
|-
! <code>{{Anchor|Float}}</code>
| 単精度浮動小数点数;ISO/IEC/IEEE 60559:2011-06 のbinary32
|-
! <code>{{Anchor|Double}}</code>
| 倍精度浮動小数点数;ISO/IEC/IEEE 60559:2011-06 のbinary64
|}
これらの数値型は、数学的な演算や精密な計算に利用され、Kotlin言語において数値処理をサポートする基本的な要素となっています。
=== 文字型 ===
{{先頭に戻る}}
{{Anchor|Char}}クラスは文字を表すクラスです。'a' のようなKotlinプログラム内の文字リテラルはすべてこのクラスのインスタンスとして実装されています<ref>[https://kotlinlang.org/docs/characters.html Characters]</ref><ref name=char>[https://kotlinlang.org/api/latest/jvm/stdlib/kotlin/-char/ Char]</ref>。
<code>Char</code>は、16ビットのUnicode文字を表します。これは、Charがすべての文字をユニコード文字を表すことが'''出来ない'''事をしめしています。
;[https://pl.kotl.in/KRFm8vVVb Charで表現できない文字]:<syntaxhighlight lang="Kotlin" highlight=4>
fun main() {
val ascii = 'A'
val kanji = '漢'
val emoji = '🏝'
}
</syntaxhighlight>
;コンパイル結果:<syntaxhighlight lang=text>
Too many characters in a character literal ''🏝''
</syntaxhighlight>
: 🏝のUnicodeはU+1F3DDと16ビットを超えているので Char には収容できません。
: 絵文字以外にもサロゲートペアはあり、サロゲートペア以外にも合成文字も16ビットを超えるものがあります。
Kotlinは、Javaの文字エンコーディングシステムを引継いだので、Charの収まらない文字の問題に限らずUnicodeを内部エンコーディングに使っていることに起因する厄介ごとと付き合い続ければなりません。
==== 演算子 ====
Charでは、いくつかの演算子が定義されています<ref name=char/>。
;[https://pl.kotl.in/pQ82wUEc_ Charクラスの演算子]:<syntaxhighlight lang="Kotlin" line>
fun main() {
var a = 'K'
println("var a = 'K'")
a--
println("a-- ⇒ $a")
a++
println("a++ ⇒ $a")
println("'C' - 'A' ⇒ ${'C' - 'A'}")
println("'C' - 2 ⇒ ${'C' - 2}")
println("'A' + 2 ⇒ ${'A' + 2}")
println("'A'..'C' ⇒ ${'A' .. 'C'}")
println("'A'..<'C' ⇒ ${'A' ..< 'C'}")
println("'A' + \"BCD\" ⇒ ${'A' + "BCD"}")
}
</syntaxhighlight>
;実行結果:<syntaxhighlight lang=text>
var a = 'K'
a-- ⇒ J
a++ ⇒ K
'C' - 'A' ⇒ 2
'C' - 2 ⇒ A
'A' + 2 ⇒ C
'A'..'C' ⇒ A..C
'A'..<'C' ⇒ A..B
'A' + "BCD" ⇒ ABCD
</syntaxhighlight>
==== エスケープシーケンス ====
特殊文字は、エスケープする \(バックスラッシュ)から始まります。以下のエスケープシーケンスに対応しています。
:{| class="sortable wikitable"
|+ エスケープシーケンス
|-
!表現!!意味
|-
!\t
|水平tab
|-
!\b
|バックスペース
|-
!\n
|改行(LF)
|-
!\r
|キャリッジリターン(CR)
|-
!\'
| シングルクォーテーション
|-
!\"
|ダブルクオーテーションマーク
|-
!\\
|バックスラッシュ
|-
!\$
|ドル記号
|}
その他の文字をエンコードする場合は、Unicodeエスケープシーケンス構文を使用します。'\uFF00' を使用します。
=== 文字列型 ===
{{先頭に戻る}}
{{Anchor|String}}
クラスは文字列を表すクラスです。"abc" のようなKotlinプログラム内の文字列リテラルはすべてこのクラスのインスタンスとして実装されています<ref>[https://kotlinlang.org/api/latest/jvm/stdlib/kotlin/-string/ String]</ref>。
Kotlinでは、文字列( <code>String</code> )と文字( <code>Char</code> )とは直接の関係はありません(StringはCharの配列ではありません)。
==== 演算子 ====
Stringでは、加算演算子を連結として定義されています<ref>[https://github.com/JetBrains/kotlin/blob/f3385fbdcb8b9dc29661a8a4973c855cdcf73767/core/builtins/native/kotlin/String.kt#L30 kotlin/core/builtins/native/kotlin/String.kt]</ref>。
:<syntaxhighlight lang="Kotlin">
public operator fun plus(other: Any?): String
</syntaxhighlight>
加算演算子( <code>+</code> )は、文字列( this )と与えられた他のオブジェクトの文字列表現を連結して得られる文字列を返します<ref>[https://kotlinlang.org/api/latest/jvm/stdlib/kotlin/-string/plus.html plus - Kotlin Programming Language]</ref>。
;[https://pl.kotl.in/1KlKcFKGs 文字列の+演算子]:<syntaxhighlight lang="Kotlin">
fun main() {
val str = "ABC" + 12
println(str + true + listOf(1,2,3))
}
</syntaxhighlight>
;実行結果:<syntaxhighlight lang=text>
ABC12true[1, 2, 3]
</syntaxhighlight>
==== テンプレートリテラル ====
既に紹介したように、Stringクラスのリテラルは "(ダブルクオーテーション)で括った文字列です。
Stringリテラルには変数や式を埋込むことが出来ます。
このように、変数や式が埋込まれたStringリテラルのことを{{Anchor|テンプレートリテラル}}といいます。
;[https://pl.kotl.in/uBCbpW7Mc テンプレートリテラル]:<syntaxhighlight lang="Kotlin">
fun main() {
var n = 10
println("変数 n の値は $n です。")
println("式 n + 13 の値は ${n + 13} です。")
println("${'$'} 自体を書きたいときは、 \\\$ と \$ の直前に \\ を置きエスケープします(\$\$ではありません)。")
}
</syntaxhighlight>
;実行結果:<syntaxhighlight lang=text>
変数 n の値は 10 です。 式 n + 13 の値は 23 です。
$ 自体を書きたいときは、 \$ と $ の直前に \ を置きエスケープします($$ではありません)。
</syntaxhighlight>
==== 生文字列 ====
生文字列( ''Raw strings'' )は、改行や任意のテキストを含むことができます。トリプルクォート(”””; ''triple quote'' )で区切られ、エスケープを含まず、改行や他の任意の文字を含むことができます<ref>[https://kotlinlang.org/docs/strings.html#raw-strings Raw strings]</ref>。
;[https://pl.kotl.in/7Pqk1IwPo 生文字列]:<syntaxhighlight lang="Kotlin">
fun main() {
var n = 10
print(
"""
変数 n の値は $n です。
式 n + 13 の値は ${n + 13} です。
${'$'} 自体を書きたいときは、 \$ と $ の直前に \ を置きエスケープします($$ ではありません)。
"""
)
}
</syntaxhighlight>
;実行結果:<syntaxhighlight lang=text>
変数 n の値は 10 です。 式 n + 13 の値は 23 です。
$ 自体を書きたいときは、 \$ と $ の直前に \ を置きエスケープします($$ ではありません)。
</syntaxhighlight>
==== エスケープシーケンス ====
{{See|[[#エスケープシーケンス|文字型のエスケープシーケンス]]}}
==== コードポイント ====
;[https://pl.kotl.in/7Pqk1IwPo 文字列のn番目のコードポイント]:<syntaxhighlight lang="Kotlin">
fun main() {
val str = "ABC漢字🏝𠮷"
var i = 0
while (i < str.length) {
println(Integer.toHexString(str.codePointAt(i)))
i++
}
}
</syntaxhighlight>
;実行結果:<syntaxhighlight lang=text highlight="7,9">
41
42
43
6f22
5b57
1f3dd
dfdd
20bb7
dfb7
</syntaxhighlight>
: codePointAt()でサロゲートペアの2ワード目を読むと…
=== Array ===
Kotlinで配列型は Array で、main() の引数でも使われています<ref>[https://kotlinlang.org/docs/arrays.html Array]</ref><ref>[https://kotlinlang.org/api/latest/jvm/stdlib/kotlin/-array/ Array]</ref>。
[[#Array()|Array()]], [[#arrayOf()|arrayOf()]], arrayOfNulls() や emptyArray() で生成します。
==== Array() ====
;[https://paiza.io/projects/sywOsCKIuSuu8x2BrbdfwQ?language=kotlin Array()を使ったArrayの生成]:<syntaxhighlight lang=Kotlin highlight=2 line>
fun main() {
val ary = Array(5){it}
println("ary::class.simpleName ⇒ ${ary::class.simpleName}")
println("ary[0]::class.simpleName ⇒ ${ary[0]::class.simpleName}")
ary.forEach{print("$it ")}
println("")
val ary2 = Array(5){(it*it).toString()}
println("ary2[0]::class.simpleName ⇒ ${ary2[0]::class.simpleName}")
ary2.forEach{print("$it ")}
println("")
}
</syntaxhighlight>
;実行結果:<syntaxhighlight lang=text>
ary::class.simpleName ⇒ Array
ary[0]::class.simpleName ⇒ Int
0 1 2 3 4
ary2[0]::class.simpleName ⇒ String
0 1 4 9 16
</syntaxhighlight>
: Array()はArrayのコンストラクターで、引数として要素数をとり、ブロックが初期化式になります。
==== プリミティブ型配列 ====
Kotlinには、IntArray、DoubleArray、BooleanArray、CharArrayなどのプリミティブ型を要素とする配列のクラスが用意されています。
これらを総称してプリミティブ型配列( Primitive type arrays )と呼びます<ref>[https://kotlinlang.org/docs/arrays.html#primitive-type-arrays Primitive type arrays]</ref>。
プリミティブ型配列は、機能的にはArray<T>のTにプリミティブ型を与えたものと変わりありませんが、ボックス化されないので性能向上とフットプリントの削減が期待できます。
このため、プリミティブ型配列はArrayを継承していません。
StringArray はありません。
;[https://paiza.io/projects/tgs7lwP0-La0B-TUJ--kug?language=kotlin IntArray()を使ったIntArrayの生成]:<syntaxhighlight lang=Kotlin highlight=2 line>
fun main() {
val ary = IntArray(5){it}
println(
"""
ary::class.simpleName ⇒ ${ary::class.simpleName}
ary[0]::class.simpleName ⇒ ${ary[0]::class.simpleName}
ary => $ary
ary.joinToString() ⇒ ${ary.joinToString()}
ary.contentToString() => ${ary.contentToString()}
"""
)
}
</syntaxhighlight>
;実行結果:<syntaxhighlight lang=text>
ary::class.simpleName ⇒ IntArray
ary[0]::class.simpleName ⇒ Int
ary => [I@1c6b6478
ary.joinToString() ⇒ 0, 1, 2, 3, 4
ary.contentToString() => [0, 1, 2, 3, 4]
</syntaxhighlight>
==== arrayOf() ====
;[https://paiza.io/projects/avmXjK5ilEp1Xl-_CSnMfw?language=kotlin arrayOf()を使ったArrayの生成]:<syntaxhighlight lang=Kotlin highlight=2 line>
fun main() {
val ary = arrayOf(1, 9, 3, 5, 23, 1)
println("${ary::class.simpleName}")
println("${ary[0]::class.simpleName}")
for (s in ary)
if (s > 10)
break
else
print("$s ")
println("")
run {
ary.forEach{
if (it > 10)
return@run
else
print("$it ")
}
}
println("")
var i = 0
while (i < ary.size)
ary[i] = i++
ary.forEach{print("$it ")}
}
</syntaxhighlight>
;実行結果:<syntaxhighlight lang=text>
Array
Int
1 9 3 5
1 9 3 5
</syntaxhighlight>
: arrayOf()は可変長引数の関数で、引数が生成されるArrayの要素になります。
: Arrayの要素の型は、型強制できる最小公倍数的な方になります(例えば Int と Long が混在していたら Long)。
== 特別な型 ==
{{先頭に戻る}}
基本型の他にも幾つかの特別な型があります。
これらは、基本型同様 Package kotlin で定義されています。
; 特別な型
:;Kotlinのクラス階層のルート:<code>[[#Any|Any]]</code>
:;戻値型未指定な関数の型:<code>[[#Unit|Unit]]</code>
:;存在しない値を表す型:<code>[[#Nothing|Nothing]]</code>
=== Any ===
AnyはKotlinのクラス階層のルートです。すべてのKotlinクラスはAnyをスーパークラスとして持っています。
クラス定義で継承元を指定しないと Any が暗黙の継承元になります。
また、Anyクラスのオブジェクトは、あらゆるオブジェクトを代入できます。
;[https://pl.kotl.in/k-36Q8gd6 AnyのArray]:<syntaxhighlight lang="Kotlin">
fun main() {
arrayOf(4, "abc", 'a', listOf(2,5,6)).forEach{ println("$it(${it::class.simpleName})") }
}
</syntaxhighlight>
;実行結果:<syntaxhighlight lang=text>
4(Int)
abc(String)
a(Char)
[2, 5, 6](ArrayList)
</syntaxhighlight>
=== Unit ===
Unitは、何も返さない関数の戻値の型です。JVMでは、Javaのvoid型に相当します。
:<code>pub main() : Unit {}</code>
は
:<code>pub main() {}</code>
と等価です。
=== Nothing ===
Nothingはインスタンスを持ちません。例えば、ある関数の戻り値がNothingであれば、それは決して戻らない(常に例外を投げる)ことを意味します<ref>[https://kotlinlang.org/api/latest/jvm/stdlib/kotlin/-nothing.html Nothing]</ref>。
== Null安全 ==
KotlinのNULL安全性(Null safety)とNullableに関して、以下のポイントが重要です。
# Null安全性: Kotlinの目標の一つは、null参照によるエラー(The Billion Dollar Mistakeとも呼ばれる)の危険性を排除することです。Javaを含む多くのプログラミング言語で見られる最も一般的な落とし穴の一つは、null参照のメンバーにアクセスすると、null参照例外が発生することです(JavaではNullPointerException、NPEと呼ばれます)。
# Nullable型と非Nullable型: Kotlinの型システムでは、nullを保持できる参照(Nullable型)と、保持できない参照(非Nullable型)とを区別します。たとえば、String型の通常の変数はnullを保持できませんが、NullableなString型はnullを保持できます。
# Nullable型の宣言: nullを許容する型を宣言するには、型名の後ろに「?」を付けます。例えば、String型のNullableな変数を宣言する場合は、<code>String?</code>とします。
# Nullable型の安全な操作: Nullableな変数やプロパティに安全にアクセスする方法として、以下のような手法があります。
#* <code>?.</code>演算子: セーフコール演算子は、nullチェックを行い、nullでない場合にのみメンバーにアクセスします。
#* <code>?:</code>演算子: Elvis演算子は、nullでない場合には左側の値を、nullの場合には右側の値を返します。
#* <code>!!</code>演算子: null許容型の値を非Nullable型として扱い、nullの場合にはNullPointerExceptionをスローします。
# Null安全性の確認: null安全性の確認は、条件式で明示的に行うことができます。<code>if (variable != null)</code>のような形で、nullチェックを行い、それに応じた処理を行います。
# Safe casts: 安全なキャスト演算子<code>as?</code>を使用すると、通常のキャストでClassCastExceptionが発生する可能性がある場合でも、nullを返すことができます。
KotlinのNull安全性とNullable型は、プログラミングにおける安全性と信頼性を向上させるための重要な機能です。これらの機能を適切に理解し、利用することで、Nullによるエラーを最小限に抑えることができます。
Javaを含む多くのプログラミング言語における最も一般的な落とし穴の1つは、Null参照のメンバーにアクセスするとNull参照例外が発生することです。Javaでは、これはNullPointerException、略してNPEと呼ばれるものに相当します<ref>[https://kotlinlang.org/docs/null-safety.html#nullable-types-and-non-null-types Nullable types and non-null types]</ref>。
KotlinでNPEが発生する原因として考えられるのは、以下の通りです。
* NullPointerException()を明示的に呼び出した場合。
* 後述する !! 演算子の使用。
* 初期化に関するデータの不整合(以下のような場合)。
** コンストラクターで使用可能な未初期化の this がどこかで渡され使用されている (「リーキング this」)。
** スーパークラスのコンストラクターが、派生クラスの実装で未初期化の状態を使用しているオープンメンバーを呼出す場合。
* Java との相互運用。
** プラットフォーム型のNull参照のメンバにアクセスしようとする。
** Java との相互運用に使用される汎用型の Nullability の問題。例えば、ある Java コードが Kotlin の MutableList<String> に null を追加し、それを操作するために MutableList<String?> が必要になることがあります。
** その他、外部のJavaコードによって引き起こされる問題。
=== Nullable ===
Kotlinの型システムでは、nullを保持できる参照(Null可能参照; ''nullable references'' )とそうでない参照(非Null参照; ''non-null references'' )を区別しています。例えば、String型の通常の変数はnullを保持できません。
:<syntaxhighlight lang=kotlin line highlight=2 copy>
var a: String = "abc" // 通常の初期化ではデフォルトで非nullを意味します
// a = null // コンパイルエラー!
</syntaxhighlight>
nullを許容するには、<code>String?</code>と書いて変数をnull可能な文字列として宣言します。
:<syntaxhighlight lang=kotlin line highlight="1,2" copy>
var b: String? = "abc" // nullに設定可能
b = null // OK
prinlnt(b)
</syntaxhighlight>
さて、<var>a</var>のメンバー関数を呼び出したり、プロパティーにアクセスしたりしても、NPEが発生しないことが保証されています。
:<syntaxhighlight lang=kotlin line copy>
val l = a.length
</syntaxhighlight>
しかし、<var>b</var>のメンバー関数を呼び出したり、プロパティーにアクセスしたりすると、それは安全ではなく、コンパイラはエラーを報告します。
:<syntaxhighlight lang=kotlin line copy>
val l = b.length
</syntaxhighlight>
それでもそのプロパティにアクセスする必要がありますよね?そのためには、いくつかの方法があります。
=== 条件におけるnullのチェック ===
まず、bがnullかどうかを明示的にチェックし、2つの選択肢を別々に処理することができます。
:<syntaxhighlight lang=kotlin line copy>
val l = if (b != null) b.length else -1
</syntaxhighlight>
コンパイラーは実行したチェックの情報を記録し、ifの内部でlengthの呼出しを可能にする。より複雑な条件もサポートされています。
:<syntaxhighlight lang=kotlin line copy>
val b: String? = "Kotlin"
if (b != null && b.length > 0) {
print("文字列の長さは ${b.length}")
} else {
print("空文字列")
}
</syntaxhighlight>
註:b が immutable な場合 (つまり、チェックから使用までの間に変更されないローカル変数か、 バッキングフィールドを持つオーバーライド不可のメンバー変数) にのみ有効です。
=== !!演算子 ===
Not-Null断定演算子(!!)で任意の値をnullでない型に変換し、値がnullの場合は例外をスローします。<code>b!!</code>と書くと、<var>b</var>の非null値(例えばこの例ではString)を返し、<var>b</var>がnullの場合はNPEを投げます。
:<syntaxhighlight lang=kotlin line copy>
val l = b!!.length
</syntaxhighlight>
このように、NPEを発生させたい場合は、明示的に要求する必要があり、突然発生することはありません。
=== ?.演算子 ===
:<syntaxhighlight lang=kotlin line highlight=5 copy>
fun main() {
var str: String? = "Hello" // ?を使ってnullを許容する
str = null // 問題なくnullを代入できる
val length = str?.length // 安全呼び出し演算子でnullチェックしつつプロパティにアクセス
println("Length: $length")
}
</syntaxhighlight>
<code>?.</code> 演算子は、null安全性を保証しつつ、<code>str</code> 変数がnullでない場合に <code>length</code> プロパティにアクセスします。<code>str</code> がnullの場合、<code>length</code> には <code>null</code> が代入されます。
このように、<code>?.</code> 演算子はnull値を安全に処理するために使用されます。例えば、Javaの場合、nullチェックを行わないとNullPointerExceptionが発生しますが、Kotlinでは <code>?.</code> 演算子を使用することで、nullに対する操作を安全に行うことができます。
== 識別子 ==
{{先頭に戻る}}
変数の名前のような名前を識別子( ''identifiers'' )と呼びます<ref>[https://kotlinlang.org/spec/syntax-and-grammar.html#identifiers Identifiers]</ref>。
変数ほかに、関数、クラス、クラスのメンバー、クラスのメンバー関数、enum、ラベルなどの名前も識別子です。
* 同じ名前空間の中では識別子は重複できません。
* 識別子に使える文字は、英数字・_(アンダーバー)・Unicode文字です。
* 識別子の最初に数字を使うことはできません。
* 識別子の大文字小文字は区別されます。
* キーワードの使用には制限があります。
* キーワードや空白を含む文字列など上のルールに従わない文字列は、`(バッククオーテーション)で囲むと識別子として使うことができます。
{{See also|[[#キーワード|キーワード]]}}
== 変数 ==
{{先頭に戻る}}
Kotlinでは、変数は使う前にかならず宣言する必要があります。
=== val と var ===
==== val ====
;[https://pl.kotl.in/8PE1c8KR3 変数を使った単純なコード]:<syntaxhighlight lang=kotlin line highlight="2,3" copy>
fun main() {
val hello = "Hello, World!"
println(hello)
}
</syntaxhighlight>
;実行結果:<syntaxhighlight lang=text>
Hello, World!
</syntaxhighlight>
:[[#Hello world|Hello world]]の例と結果は同じですが、変数<var>hello</var>を導入しています。
:;変数 hello の宣言:<syntaxhighlight lang=kotlin line start=2 copy>
val hello = "Hello, World!"
</syntaxhighlight>
:イミュータブル変数の宣言は、この様に:<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
val 識別子 = 初期化式
</syntaxhighlight>
:の形式をとります。
:;変数 hello の値の参照:<syntaxhighlight lang=kotlin line start=3 copy>
println(hello)
</syntaxhighlight>
:の様に識別子をそのまま書くことで、値(この場合は "Hello, World!")を参照できます。
:キーワード <code>val</code> を使って宣言された変数はイミュータブル( ''Immutable'' )です。
:: イミュータブルというのは、一度値が決めたら変更できないという意味です。
:イミュータブルな変数を「定数」ということがありますが、リテラルのことを定数ということもあるので、ここでは「イミュータブルな変数」と呼びます。
==== var ====
;[https://pl.kotl.in/8z57OJeNL ミュータブルな変数を使ったコード]:<syntaxhighlight lang=kotlin line highlight="2,4" copy>
fun main() {
var hello = "Hello, World!"
println(hello)
hello = "Hello, Kotlin!"
println(hello)
}
</syntaxhighlight>
;実行結果:<syntaxhighlight lang=text>
Hello, World!
Hello, Kotlin!
</syntaxhighlight>
:;変数 hello の宣言:<syntaxhighlight lang=kotlin line start=2 copy>
var hello = "Hello, World!"
</syntaxhighlight>
:ミュータブルな変数の宣言は、この様に:<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
var 識別子 = 初期化式
</syntaxhighlight>
:の形式をとります。
:キーワード <code>var</code> を使って宣言された変数はイミュータブル( ''Immutable'' )です。
:: ミュータブルというのは、変数の値を何度でも変更できるという意味です。
:;変数 hello に新しい値を代入:<syntaxhighlight lang=kotlin line start=4 copy>
hello = "Hello, Kotlin!"
</syntaxhighlight>
:Kotlinでは <code>=</code> が代入演算子です。
:: 代入の前の <var>hello</var> の値は <code>"Hello, World!"</code> でしたが、代入の後は <code>"Hello, Kotlin!"</code> になります。
==== 型推論 ====
いままでの例で既に型推論( ''type inference'' ) は使われています。
変数を宣言するときに、特に型を明示しませんでしたが、初期化式の型から変数の型を特定していたのです。
===== 型アノテーション =====
初期化式は省略可能です。
その場合は変数の型がわからないので型アノテーション( ''type annotation'' )が必要になります。
;[https://pl.kotl.in/EW6hk7OkA 型アノテーションを伴った変数宣言]:<syntaxhighlight lang=kotlin line highlight="2" copy>
fun main() {
var hello : String
hello = "Hello, World!"
println(hello)
hello = "Hello, Kotlin!"
println(hello)
}
</syntaxhighlight>
;実行結果:<syntaxhighlight lang=text>
Hello, World!
Hello, Kotlin!
</syntaxhighlight>
:;型アノテーションを伴った変数 hello の宣言:<syntaxhighlight lang=kotlin line start=2 copy>
var hello : String
</syntaxhighlight>
::<code>: String</code>が型アノテーションで
:型アノテーションを伴った変数の宣言は、この様に:<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
var 識別子 : 型
</syntaxhighlight>
:の形式をとります。
::型アノテーションをイミュータブルな変数の宣言でも行えますが、事実上初期化式が必須なのでドキュメント性を高める以外の意味は希薄です。
{{See also|[[#基本型|基本型]]}}
===== シャドーイング =====
シャドーイング( ''Shadowing'' )とは、スコープ内の2つの宣言が同じ名前になり、より内側の識別子が外側の識別子を隠すことです。
;[https://paiza.io/projects/etUJhoaySpr4RcwO9VwO-g?language=kotlin コード例]:<syntaxhighlight lang="Kotlin" line highlight="2,4">
fun main() {
var i = 10
for (i in 1..3)
println("for内: i = $i")
println("for外: i = $i")
}
</syntaxhighlight>
;コンパイラーの警告:<syntaxhighlight lang=text>
Main.kt:4:10: warning: name shadowed: i
for (i in 1..3)
^
</syntaxhighlight>
;実行結果:<syntaxhighlight lang=text>
for内: i = 1
for内: i = 2
for内: i = 3
for外: i = 10
</syntaxhighlight>
: ループ変数 <var>i</var> と、2行目で宣言された変数 <var>i</var> の名前が衝突しいています。
: この様に名前が衝突した場合、スコープの内側のオブジェクトが参照されます。
: コンパイラーはシャドーイングを発見すると<code>warning: name shadowed: 識別子</code>と(エラーでなく)警告します。
多くのシャドーイングは無害ですが…
;ありがちな間違え:<syntaxhighlight lang="Kotlin" line highlight="2,3">
fun main() {
for (i in 1..3)
for (i in 1..4)
println("(i, i) = ($i, $i)")
}
</syntaxhighlight>
;コンパイラーのエラー出力:<syntaxhighlight lang=text>
Main.kt:3:14: warning: name shadowed: i
for (i in 1..4)
^
</syntaxhighlight>
;修正例:<syntaxhighlight lang="Kotlin" line highlight="3,4">
fun main() {
for (i in 1..3)
for (j in 1..4)
println("(i, j) = ($i, $j)")
}
</syntaxhighlight>
: 行列式を扱っていると、よくやらかします。
===== 分解宣言 =====
オブジェクトを複数の変数に分解して初期化する宣言する方法があり、分解宣言( ''Destructuring declarations'' )と呼ばれます<ref>[https://kotlinlang.org/docs/destructuring-declarations.html Destructuring declarations]</ref>。
;分解宣言の例:<syntaxhighlight lang="Kotlin" line highlight="2,4">
fun main() {
val (a, b) = Pair(3, 4)
val (c, d) = Pair("abc", 3.14)
val (e, f) = 'C' to null
val (g, h, i) = Triple(1,2,3)
val (j, k, l, m) = List(4){it*2}
print(
"""
a = $a, b = $b
c = $c, d = $d
e = $e, f = $f
g = $g, h = $h, i = $i
j = $j, k = $k, l = $l, m = $m
"""
)
}
</syntaxhighlight>
;実行結果:<syntaxhighlight lang=text>
a = 3, b = 4
c = abc, d = 3.14
e = C, f = null
g = 1, h = 2, i = 3
j = 0, k = 2, l = 4, m = 6
</syntaxhighlight>
: to は infix 宣言された関数です。
== 演算子 ==
{{先頭に戻る}}
=== 演算子の優先順位 ===
:{| class="wikitable"
|+ 演算子の優先順位<ref>[https://kotlinlang.org/docs/reference/grammar.html#expressions Expressions]</ref>
!優先順位
!種類
!記号
|-
|高い
|後置
|<code>++</code>, <code>--</code>, <code>.</code>, <code>?.</code>, <code>?</code>
|-
|
|前置
|<code>-</code>, <code>+</code>, <code>++</code>, <code>--</code>, <code>!</code>, label
|-
|
|型
|<code>:</code>, <code>as</code>, <code>as?</code>
|-
|
|乗除算
|<code>*</code>, <code>/</code>, <code>%</code>
|-
|
|加減算
|<code>+</code>, <code>-</code>
|-
|
|範囲
|<code>..</code>, <code>..<</code>
|-
|
|中置関数(Infix function)
|simpleIdentifier
|-
|
|エルビス
|<code>?:</code>
|-
|
|Named checks
|<code>in</code>, <code>!in</code>, <code>is</code>, <code>!is</code>
|-
|
|比較
|<code><</code>, <code>></code>, <code><=</code>, <code>>=</code>
|-
|
|一致不一致
|<code>==</code>, <code>!=</code>, <code>===</code>, <code>!==</code>
|-
|
|Conjunction
|<code>&&</code>
|-
|
|Disjunction
|<code><nowiki>||</nowiki></code>
|-
|
|スプレッド演算子
|<code>*</code>
|-
|低い
|代入演算
|<code>=</code>, <code>+=</code>, <code>-=</code>, <code>*=</code>, <code>/=</code>, <code>%=</code>
|}
{{See also|[[#演算子と特殊シンボル|演算子と特殊シンボル]]}}
=== 演算子オーバーロード ===
{{先頭に戻る|style=border-top:1px solid gray;}}
Kotlinでは、演算子はメソッド形式の別名を持ちます。
例えば、<code>a + b</code> は <code>a.plus(b)</code> とも書けます。
この plus メンバー関数を再定義すると、演算子オーバーロードができます<ref>[https://kotlinlang.org/docs/operator-overloading.html Operator overloading]</ref>。
;[https://paiza.io/projects/mhnZrTY0BmuFApKNAy3oNw?language=kotlin コード例]:<syntaxhighlight lang=Kotlin highlight="4,22-25" line>
fun main() {
class Point(val x : Int = 0, val y : Int = 0) {
override fun toString() ="Point(x=$x, y=$y)"
operator fun plus (other: Point) = Point(x + other.x, y + other.y)
operator fun minus(other: Point) = Point(x - other.x, y - other.y)
operator fun unaryMinus() = Point(-x, -y)
override fun equals(other: Any?) = when {
this === other -> true
other !is Point -> false
x != other.x -> false
else -> y == other.y
}
}
val p = Point(15, 25)
val q = Point(20, 30)
print(
"""
p => $p
p.x => ${p.x}, p.y => ${p.y}
q => $q
p.plus(q) => ${p.plus(q)}
p + q => ${p + q}
12 + 5 => ${12 + 5}
12.plus(5) => ${12.plus(5)}
----
p - q => ${p - q}
-p => ${-p}
p == q => ${p == q}
p != q => ${p != q}
p == Point(15,25) => ${p == Point(15,25)}
p != Point(15,25) => ${p != Point(15,25)}
"""
)
}
</syntaxhighlight>
;実行結果:<syntaxhighlight lang=text>
p => Point(x=15, y=25)
p.x => 15, p.y => 25
q => Point(x=20, y=30)
p.plus(q) => Point(x=35, y=55)
p + q => Point(x=35, y=55)
12 + 5 => 17
12.plus(5) => 17
----
p - q => Point(x=-5, y=-5)
-p => Point(x=-15, y=-25)
p == q => false
p != q => true
p == Point(15,25) => true
p != Point(15,25) => false
</syntaxhighlight>
演算子は、もちろん加算だけではありません。
:{| class="wikitable" style="float:left"
|+ 単項演算子
! 式
! メソッド形式
|-
|<code>+a</code>
|<code>a.unaryPlus()</code>
|-
|<code>-a</code>
|<code>a.unaryMinus()</code>
|-
|<code>!a</code>
|<code>a.not()</code>
|-
|<code>a++</code>
|<code>a.inc()</code>
|-
|<code>a--</code>
|<code>a.dec()</code>
|}
:{| class="wikitable" style="float:left"
|+ 算術演算
! 式
! メソッド形式
|-
|<code>a + b</code>
|<code>a.plus(b)</code>
|-
|<code>a - b</code>
|<code>a.minus(b)</code>
|-
|<code>a * b</code>
|<code>a.times(b)</code>
|-
|<code>a / b</code>
|<code>a.div(b)</code>
|-
|<code>a % b</code>
|<code>a.rem(b)</code>
|-
|<code>a..b</code>
|<code>a.rangeTo(b)</code>
|-
|<code>a..<b</code>
|<code>a.rangeUntil(b)</code>
|}
:{| class="wikitable" style="float:left"
|+ 包含
! 式
! メソッド形式
|-
|<code>a in b</code>
|<code>b.contains(a)</code>
|-
|<code>a !in b</code>
|<code>!b.contains(a)</code>
|}
:{| class="wikitable" style="float:left"
|+ インデックスによる要素参照
! 式
! メソッド形式
|-
|<code>a[i]</code>
|<code>a.get(i)</code>
|-
|<code>a[i, j]</code>
|<code>a.get(i, j)</code>
|-
|<code>a[i_1, ..., i_n]</code>
|<code>a.get(i_1, ..., i_n)</code>
|-
|<code>a[i] = b</code>
|<code>a.set(i, b)</code>
|-
|<code>a[i, j] = b</code>
|<code>a.set(i, j, b)</code>
|-
|<code>a[i_1, ..., i_n] = b</code>
|<code>a.set(i_1, ..., i_n, b)</code>
|}
:{| class="wikitable" style="float:left"
|+ 関数的な呼出し
! 式
! メソッド形式
|-
|<code>a()</code>
|<code>a.invoke()</code>
|-
|<code>a(i)</code>
|<code>a.invoke(i)</code>
|-
|<code>a(i, j)</code>
|<code>a.invoke(i, j)</code>
|-
|<code>a(i_1, ..., i_n)</code>
|<code>a.invoke(i_1, ..., i_n)</code>
|}
:{| class="wikitable" style="float:left"
|+ 代入演算
! 式
! メソッド形式
|-
|<code>a += b</code>
|<code>a.plusAssign(b)</code>
|-
|<code>a -= b</code>
|<code>a.minusAssign(b)</code>
|-
|<code>a *= b</code>
|<code>a.timesAssign(b)</code>
|-
|<code>a /= b</code>
|<code>a.divAssign(b)</code>
|-
|<code>a %= b</code>
|<code>a.remAssign(b)</code>
|}
:{| class="wikitable" style="float:left"
|+ 一致・不一致
! 式
! メソッド形式
|-
|<code>a == b</code>
|<code>a?.equals(b) ?: (b === null)</code>
|-
|<code>a != b</code>
|<code>!(a?.equals(b) ?: (b === null))</code>
|}
:{| class="wikitable" style="float:left"
|+ 比較演算
! 式
! メソッド形式
|-
|<code>a > b</code>
|<code>a.compareTo(b) > 0</code>
|-
|<code>a < b</code>
|<code>a.compareTo(b) < 0</code>
|-
|<code>a >= b</code>
|<code>a.compareTo(b) >= 0</code>
|-
|<code>a <= b</code>
|<code>a.compareTo(b) <= 0</code>
|}
<br style="clear:both">
{{:Kotlin/制御構造}}
{{:Kotlin/関数}}
== 拡張 ==
Kotlinでは、クラスやインターフェースを継承したり、Decoratorのようなデザインパターンを使わずに、新しい機能を拡張することができます。これは、拡張( ''extensions'' )と呼ばれる特別な宣言によって実現されます<ref>[https://kotlinlang.org/docs/extensions.html Extensions]</ref>。
=== 拡張関数 ===
拡張関数( ''Extension functions'' )を宣言するには、その名前の前に拡張される型を示すレシーバー型をつけます<ref>[https://kotlinlang.org/docs/extensions.html#extension-functions Extension functions]</ref>。以下は、Array<Int>にrotate関数を追加したものです。
;[https://pl.kotl.in/FiS-uHjPC Array<Int>にrotate()を定義]:<syntaxhighlight lang=kotlin line highlight=2 copy>
fun main() {
fun Array<Int>.rotate() {
val t = this[0]
var i = 1
while (i < this.size) {
this[i - 1] = this[i]
i++
}
this[this.size - 1] = t
}
var ary = arrayOf(2, 3, 5, 7, 11)
println("ary = ${ary.map{it.toString()}.joinToString(" ")}")
ary.rotate()
println("ary = ${ary.map{it.toString()}.joinToString(" ")}")
}
</syntaxhighlight>
;実行結果:<syntaxhighlight lang=text>
ary = 2 3 5 7 11
ary = 3 5 7 11 2
</syntaxhighlight>
=== ジェネリックスと拡張関数 ===
拡張関数でも[[#ジェネリックス|ジェネリックス]](型パラメーター)が使用可能です。
先の例は、Array<Int>とIntのアレイ専用でしたが、任意の型 T のアレイ Array<T> に拡張関数を拡張してみましょう。
;[https://pl.kotl.in/P4tm3lb8h <T>Array<T>にrotate()を定義]:<syntaxhighlight lang=kotlin line highlight=2 copy>
fun main() {
fun <T> Array<T>.rotate() {
val t = this[0]
var i = 1
while (i < this.size) {
this[i - 1] = this[i]
i++
}
this[this.size - 1] = t
}
var ary = arrayOf(2, 3, 5, 7, 11)
println("ary = ${ary.map{it.toString()}.joinToString(" ")}")
ary.rotate()
println("ary = ${ary.map{it.toString()}.joinToString(" ")}")
var fary = Array(8){ val x = 1.0 * it; x * x }
println("fary = ${fary.map{it.toString()}.joinToString(" ")}")
fary.rotate()
println("fary = ${fary.map{it.toString()}.joinToString(" ")}")
var sary = arrayOf("A", "B", "C", "D", "E", "F")
println("sary = ${sary.map{it.toString()}.joinToString(" ")}")
sary.rotate()
println("sary = ${sary.map{it.toString()}.joinToString(" ")}")
}
</syntaxhighlight>
;実行結果:<syntaxhighlight lang=text>
ary = 2 3 5 7 11
ary = 3 5 7 11 2
fary = 0.0 1.0 4.0 9.0 16.0 25.0 36.0 49.0
fary = 1.0 4.0 9.0 16.0 25.0 36.0 49.0 0.0
sary = A B C D E F
sary = B C D E F A
</syntaxhighlight>
=== 拡張は静的に解決されます ===
拡張は、一見するとクラスの中に後からメンバー関数を追加しているように見えるかもしれませんが、<code>インスタンス.メソッド(実引数リスト)</code> のパターンに合致する拡張定義があるかを静的に調べ、該当する拡張関数があればそれを呼出すことで実現しています。
このため拡張関数でメンバー関数をオーバーライドすることはできません。
== クラス ==
{{先頭に戻る}}
Kotlinは関数型プログラミング言語であると同時に、クラスベースのオブジェクト指向プログラミング言語です。
クラス( ''class'' )はオブジェクトの設計図であり、インスタンスはその設計図に基づいて作成されます。
=== クラス定義 ===
クラスは、キーワード <code>{{Anchor|class}}</code>を使って定義します。
;[https://pl.kotl.in/WSxMHFtzA 空のクラスの定義とインスタンス化]:<syntaxhighlight lang=kotlin line highlight="1,4" copy>
class X // クラス定義
fun main() {
val x = X() // インスタンス化
println("${x::class.simpleName}") // クラス名を表示
}
</syntaxhighlight>
;実行結果:<syntaxhighlight lang=text>
X
</syntaxhighlight>
;[https://pl.kotl.in/WlVaRbKmX private なプロパティ s を持つクラスの定義]:<syntaxhighlight lang=kotlin line highlight="1,4" copy>
class X constructor(s: String) // クラス定義
fun main() {
val x = X("abc") // インスタンス化
println("${x::class.simpleName}") // クラス名を表示
// x.s --- Unresolved reference: s ;; s は private なので、ここでは参照できません
}
</syntaxhighlight>
;実行結果:<syntaxhighlight lang=text>
X
</syntaxhighlight>
: <syntaxhighlight lang=kotlin inline>class X constructor(s: String)</syntaxhighlight>
: この文脈での[[#ソフト・キーワード|ソフト・キーワード]] {{Anchor|constructor}} は、以下のように省略可能です。
: <syntaxhighlight lang=kotlin inline>class X(s: String)</syntaxhighlight>
;[https://pl.kotl.in/R7Fzx9K3G public でイミュータブルなプロパティ s を持つクラスの定義]:<syntaxhighlight lang=kotlin line highlight="1,4" copy>
class X(val s: String) // クラス定義
fun main() {
val x = X("abc") // インスタンス化
println("${x::class.simpleName}") // クラス名を表示
println("x.s = ${x.s}") // プロパティーの値を表示
// x.s = "xyz" --- Val cannot be reassigned ;; イミュータブルなプロパティーは書換え不可
}
</syntaxhighlight>
;実行結果:<syntaxhighlight lang=text>
X
x.s = abc
</syntaxhighlight>
: プロパティーの値の参照はできますが、<code>val</code> なので書換えはできません。
;[https://pl.kotl.in/sAHYBVMIM public でミュータブルなプロパティ s を持つクラスの定義]:<syntaxhighlight lang=kotlin line highlight="1,4" copy>
class X(var s: String) // クラス定義
fun main() {
val x = X("abc") // インスタンス化
println("${x::class.simpleName}") // クラス名を表示
println("x.s = ${x.s}") // プロパティーの値を表示
x.s = "xyz" // イミュータブルなプロパティーは値の書換えが可能
println("x.s = ${x.s}") // プロパティーの値を表示
}
</syntaxhighlight>
;実行結果:<syntaxhighlight lang=text>
X
x.s = abc
x.s = xyz
</syntaxhighlight>
: コンストラクターのパラメーターを <code>val</code> から <code>val</code> に変更したので、ミュータブルとなりプロパティーの値を変更できるようになりました。
;[https://pl.kotl.in/IODi_0xMo init はコンストラクターの後に呼出されるブロック]:<syntaxhighlight lang=kotlin line highlight="1-3" copy>
class X(var s: String) { // クラス定義
init {
println("init: s = ${s}")
}
}
fun main() {
val x = X("abc") // インスタンス化
println("${x::class.simpleName}") // クラス名を表示
println("x.s = ${x.s}") // プロパティーの値を表示
x.s = "xyz" // イミュータブルなプロパティーは値の書換えが可能
println("x.s = ${x.s}") // プロパティーの値を表示
}
</syntaxhighlight>
;実行結果:<syntaxhighlight lang=text>
init: s = abc
X
x.s = abc
x.s = xyz
</syntaxhighlight>
: クラス定義冒頭のコンストラクターにはコードをかけないので init ブロックに書きます
=== クラスのメンバー ===
* [[#コンストラクター|コンストラクター]]( ''constructor'' )
* [[#メンバー関数|メンバー関数]]
* [[#プロパティー|プロパティー]]
* [[#インナークラス|インナークラス]]( ''inner class'' )
* [[#オブジェクト|オブジェクト]]の宣言
==== コンストラクター ====
Kotlinのクラスはプライマリーコンストラクターと1つまたは複数のセカンダリーコンストラクターを持つことができます。プライマリーコンストラクターはクラスヘッダの一部で、クラス名とオプションの型パラメターの後に続きます。
{{See also|クラス定義}}
==== メンバー関数 ====
メンバー関数は、クラス定義の中で定義された関数です<ref>[https://kotlinlang.org/docs/functions.html#member-functions Member functions]</ref>。
メンバー関数の呼出はドット記法で行います。
メンバー関数からは、プライベートなクラスのメンバーにアクセスできます。
==== プロパティ ====
==== オブジェクト ====
オブジェクトは、匿名クラスの定義とインスタンス化を同時に行うものです。
;[https://paiza.io/projects/HRaRjZqiJz8DxWz3gh_mEg?language=kotlin オブジェクトの例]:<syntaxhighlight lang=kotlin line copy>
fun main() {
var obj = object {
var a = 3
var b = 4
override fun toString() = "($a, $b)"
}
println(
"""
obj => $obj
obj.a => ${obj.a}, obj.b => ${obj.b}
obj::class.simpleName => ${obj::class.simpleName}
"""
)
}
</syntaxhighlight>
;実行結果:<syntaxhighlight lang=text>
obj => (3, 4)
obj.a => 3, obj.b => 4
obj::class.simpleName => null
</syntaxhighlight>
=== 継承 ===
クラスは、明示的に継承元を指定しない場合は <code>Any</code> を継承します。
=== 継承モディファイア ===
継承モディファイア( ''inheritance modifier'' )には、次のような種類があり、これらのトークンは[[#モディファイア・キーワード|モディファイア・キーワード]]です。
==== abstract ====
[[#抽象クラス|抽象クラス]]( ''abstract class'' )は、抽象メンバー関数( ''abstract method'' )だけを持つクラスです。
モディファイア・キーワード <code>abstract</code> は、抽象メンバー関数の定義でも使われます。
==== final ====
[[#ファイナルクラス|ファイナルクラス]]( ''final class'' )は、継承を禁止したクラスです。
KotlinのクラスはJavaと異なり、ディフォルトで継承禁止なので、継承禁止を強調する意味しかありません。
モディファイア・キーワード <code>final</code> は、オーバーライド禁止メンバーの宣言でも使われます。
==== open ====
[[#オープンクラス|オープンクラス]]( ''open class'' )は、継承を許可したクラスです。
KotlinのクラスはJavaと異なり、ディフォルトで継承禁止なので、継承を行う可能性がある場合は明示的に許可する必要があります。
モディファイア・キーワード <code>open</code> は、メンバー関数のオーバーライド許可でも使われます。
{{コラム|Kotlinのクラスはディフォルトでfinal|2=
Javaと異なり、Kotlinのクラスはディフォルトでfinal(継承禁止)です。
これは、主にセキュリティー上の理由からで、クラスを継承することによりprotectedでの隠蔽に綻びが生じプログラムが「ハイジャック」されることの重要さに配慮したもので、
クラス設計に於いてのトレードオフ、「拡張性と頑強性」のディフォルトを頑強に振った言語設計になっています。
{{See also|[https://www.jpcert.or.jp/java-rules/obj00-j.html OBJ00-J. 不変条件を持つクラスやメソッドの拡張は信頼できるサブクラスのみに許す]}}
}}
=== this ===
クラスのメンバー関数が、プロパティやメンバー関数を参照するとき、クラスの外の変数や関数との間で曖昧さが生じる事があります。
このようなときには、インスタンスを表すキーワード <code>{{Anchor|this}}</code> を使います<ref>[https://kotlinlang.org/docs/this-expressions.html This expressions]</ref>。
<code>this</code> はこのほか、2 次コンストラクタから同じクラスの別のコンストラクタを呼出すときにもつかわれます。
;[https://paiza.io/projects/a6IABje1M-ZOPH4asPyCpQ?language=kotlin thisを使ったメンバー関数の限定]:<syntaxhighlight lang=kotlin line copy>
fun main() {
fun printLine() = println("Function")
class Simple {
fun printLine() = println("Method")
fun printLineNone() = printLine()
fun printLineThis() = this.printLine()
}
val s = Simple()
s.printLine()
s.printLineNone()
s.printLineThis()
}
</syntaxhighlight>
;実行結果:<syntaxhighlight lang=text>
Method
Function
Method
</syntaxhighlight>
: メンバー関数から同じクラスのメンバー関数を呼出すとき、同名の関数があると関数が呼出されます。
: メンバー関数から同じクラスのメンバー関数を呼出すときには、同名の関数があると関数が呼出されます。
=== クラスモディファイア ===
クラスモディファイア( ''class modifier'' )には、次のような種類があり、これらのトークンは[[#モディファイア・キーワード|モディファイア・キーワード]]です。
==== enum ====
[[#列挙型クラス|列挙型クラス]]( ''Enum class'' )は、有限個の識別子の集合を表現するために使用されます。
:<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
enum class DayOfWeek {
MONDAY,
TUESDAY,
WEDNESDAY,
THURSDAY,
FRIDAY,
SATURDAY,
SUNDAY
}
fun main() {
val today = DayOfWeek.MONDAY
println("Today is $today")
}
</syntaxhighlight>
;特性と用途
* 特定の値の集合を表現するために使用されます(例: 曜日、状態など)。
* 定数のような振る舞いを持ち、列挙型の各要素は固定された値として使用されます。
==== sealed ====
シールドクラス( ''Sealed class'' )は、制限されたクラス階層を表現するために使用されます。
:<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
sealed class Result {
data class Success(val data: String) : Result()
data class Error(val message: String) : Result()
}
fun handleResult(result: Result) {
when (result) {
is Result.Success -> println("Success: ${result.data}")
is Result.Error -> println("Error: ${result.message}")
}
}
fun main() {
val successResult = Result.Success("Data")
val errorResult = Result.Error("An error occurred")
handleResult(successResult)
handleResult(errorResult)
}
</syntaxhighlight>
;特性と用途
* 制限されたクラス階層を定義するために使用されます。サブクラスは通常、シールドクラス内にネストされます。
* シールドクラスのサブクラスは通常、特定の型の状態や結果を表現するために使用されます。
==== annotation ====
[[#アノテーションクラス|アノテーションクラス]]( ''annotation class'' )は、コードにメタデータを付加するための手段を提供します。
:<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
annotation class Author(val name: String)
@Author("John Doe")
class Book {
// ブックの定義
}
fun main() {
val book = Book::class.java
val authorAnnotation = book.getAnnotation(Author::class.java)
val authorName = authorAnnotation?.name
println("Author: $authorName")
}
</syntaxhighlight>
;特性と用途
* コードに追加情報や設定を提供するために使用されます。
* ランタイムやコンパイル時にアノテーションを処理することで、特定の動作やコード生成をトリガーすることができます。
==== data ====
[[#データクラス|データクラス]]( ''Data class'' )は、データを保持するためのクラスで、copy() などのメンバー関数がクラスを定義しただけで生えてきます。
:<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
data class Person(val name: String, val age: Int)
fun main() {
val person = Person("Alice", 25)
val copyPerson = person.copy(age = 30)
println(person)
println(copyPerson)
}
</syntaxhighlight>
;特性と用途
* データのコンテナとして使用され、自動的にequals()、hashCode()、toString()、copy()メソッドが生成されます。
* イミュータブルなデータオブジェクトを簡潔に表現するために使用されます。
==== inner ====
[[#インナークラス|インナークラス]]( ''Inner class'' )は、入れ子になった内側になったクラスが外側のクラスのメンバーにアクセスすることを可能にします。
:<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
class Outer {
private val outerProperty = "Outer Property"
inner class Inner {
fun printOuterProperty() {
println(outerProperty)
}
}
}
fun main() {
val outer = Outer()
val inner = outer.Inner()
inner.printOuterProperty()
}
</syntaxhighlight>
;特性と用途
* 外側のクラスのインスタンスに紐づく内側のクラスを定義するために使用されます。
* 内側のクラスは外側のクラスの非公開メンバーやプロパティにアクセスすることができます。
==== value ====
[[#値クラス|値クラス]]( ''Value class'' )は、イミュータブルなスカラー値の型を定義します。プロポーザル段階では inline class と呼ばれていました。
:<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
inline class Password(val value: String)
fun main() {
val password = Password("secret")
println("Password: ${password.value}")
}
</syntaxhighlight>
;特性と用途
* 単一の値を表すために使用されます。プリミティブ型のように振る舞い、ボックス化のオーバーヘッドを回避します。
+ ラッパークラスとして機能し、型安全性やコードの表現力を向上させます。
==== object ====
[[#オブジェクト|オブジェクト]]( ''object'' )は、モディファイア・キーワードではありませんが、特殊なクラスの一種なので併せて紹介します。
オブジェクトは一過的な匿名クラスを定義し、そのインスタンスの生成を行います。
:<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
object Logger {
fun log(message: String) {
println("Log: $message")
}
}
fun main() {
Logger.log("Hello, World!")
}
</syntaxhighlight>
;特性と用途
* シングルトンパターンを実装するために使用されます。クラスの単一のインスタンスを表現し、グローバルなアクセスポイントとして機能します。
* 関連するメソッドやプロパティを含めることができ、特定の目的に特化したオブジェクトを表現することができます。
;まとめ
各クラスモディファイアは、異なる用途や特性を持っており、柔軟なクラス定義を可能にします。
適切なモディファイアを選択することで、コードの意図を明確に表現し、保守性や可読性を向上させることができます。
=== 可視性モディファイア ===
[[#クラス|クラス]]、[[#オブジェクト|オブジェクト]]、[[#インターフェース|インターフェース]]、[[#コンストラクター|コンストラクター]]、[[#関数|関数]]、および[[#プロパティ|プロパティ]]とその[[#セッター|セッター]]は、可視性モディファイア( ''Visibility modifiers'' )を持つことができます。ゲッターは常にそのプロパティと同じ可視性を持っています<ref>[https://kotlinlang.org/docs/visibility-modifiers.html Visibility modifiers]</ref>。
可視性モディファイアには、次のような4種類があり、これらのトークンは[[#モディファイア・キーワード|モディファイア・キーワード]]です。
* [[#private|private]]
* [[#protected|protected]]
* [[#internal|internal]]
* [[#public|public]]
デフォルトの可視性はpublicです。
==== パッケージ ====
関数、プロパティ、クラス、オブジェクト、およびインタフェースは、パッケージの中で直接「トップレベル」で宣言することができます。
* 可視性モディファイアを使用しない場合、デフォルトではpublicが使用され、宣言はどこでも見えるようになります。
* 宣言に private を指定すると、その宣言を含むファイル内でのみ可視化されます。
* internalと指定した場合は、同じモジュール内であればどこでも見えるようになります。
* protected修飾子は、トップレベルの宣言には使えません。
==== クラスのメンバー ====
クラス内部で宣言されたメンバー。
* private は、そのメンバーがこのクラスの内部でのみ可視であることを意味します(そのクラスのすべてのメンバーを含む)。
* protected は、private とマークされたメンバーと同じ可視性を持ちますが、サブクラスでも可視化されることを意味します。
* internal は、宣言したクラスを見たこのモジュール内のクライアントが、その内部のメンバーを見ることができることを意味します。
* public は、宣言クラスを見たすべてのクライアントがその public メンバを見ることができることを意味します。
protectedまたはinternalメンバーをオーバーライド( ''override'' )し、可視性を明示的に指定しない場合、オーバーライドしたメンバーも元のメンバーと同じ可視性を持つことになります。
===== コンストラクター =====
クラスの一次コンストラクタの可視性を指定するには、次の構文を使用します。
:<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
class C private constructor(a: Int) { ... }
</syntaxhighlight>
:ここでは、コンストラクターは private です。デフォルトでは、すべてのコンストラクターは public です。これは、クラスが見えるところならどこでもコンストラクターが見えるということです(裏を返せば、内部クラスのコンストラクターは同じモジュール内でしか見えないということです)。
===== ローカル宣言 =====
ローカル変数、関数、クラスは可視性モディファイアを持つことができません。
==== モジュール ====
internal 可視性モディファイアは、そのメンバーが同じモジュール内で可視であることを意味します。具体的にモジュールとは、例えば、一緒にコンパイルされたKotlinファイルの集合のことです。
* IntelliJ IDEAモジュール。
* Mavenプロジェクト
* Gradleのソースセット(ただし、testのソースセットはmainの内部宣言にアクセスできる)。
* ''kotlinc'' Antタスクの1回の呼び出しでコンパイルされるファイル群。
=== 抽象クラス ===
抽象クラス( ''abstract class'' )は、抽象メソッド( ''abstract method'' )だけを持つクラスであり、直接のインスタンス化ができません。抽象メソッドは本体を持たず、具体的な実装はそのサブクラスに委ねられます。Kotlinでは、<code>abstract</code> キーワードを使用して抽象クラスと抽象メソッドを宣言します。
==== 抽象クラスの宣言 ====
:<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
abstract class Shape {
abstract fun draw()
}
class Circle : Shape() {
override fun draw() {
println("Drawing a circle")
}
}
class Rectangle : Shape() {
override fun draw() {
println("Drawing a rectangle")
}
}
</syntaxhighlight>
上記の例では、<code>Shape</code> という抽象クラスがあります。このクラスは抽象メソッド <code>draw</code> を宣言しています。サブクラスである <code>Circle</code> と <code>Rectangle</code> は、それぞれ <code>draw</code> メソッドをオーバーライドして具体的な実装を提供します。
==== 抽象クラスのインスタンス化 ====
:<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
fun main() {
// コンパイルエラー: Cannot create an instance of an abstract class
// val shape = Shape()
val circle = Circle()
circle.draw()
val rectangle = Rectangle()
rectangle.draw()
}
</syntaxhighlight>
抽象クラスは直接インスタンス化できないため、<code>Shape</code> クラスのインスタンスを作成しようとするとコンパイルエラーが発生します。代わりに、具象サブクラスである <code>Circle</code> や <code>Rectangle</code> のインスタンスを作成して使用します。
==== 抽象プロパティとコンストラクタ ====
抽象クラスは抽象プロパティを持つこともできます。また、抽象クラス自体はコンストラクタを持つことができます。
:<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
abstract class Shape(val name: String) {
abstract fun draw()
}
class Circle(name: String) : Shape(name) {
override fun draw() {
println("Drawing a circle named $name")
}
}
class Rectangle(name: String) : Shape(name) {
override fun draw() {
println("Drawing a rectangle named $name")
}
}
</syntaxhighlight>
この例では、<code>Shape</code> クラスはコンストラクタを持ち、<code>name</code> という抽象プロパティを宣言しています。サブクラスである <code>Circle</code> と <code>Rectangle</code> は、コンストラクタで <code>name</code> を渡し、<code>draw</code> メソッドをオーバーライドしています。
抽象クラスは、クラス階層の一部として柔軟で再利用可能なコードを設計する際に役立ちます。
==== ユースケースとベストプラクティス ====
抽象クラスは、以下のようなユースケースやベストプラクティスに適しています。
;部分的な実装の提供: 抽象クラスは、一部のメソッドやプロパティの実装を提供することができます。これにより、サブクラスは抽象メソッドだけでなく、既存の実装を再利用できます。
:<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
abstract class Shape {
fun commonMethod() {
// 共通の実装
}
abstract fun draw()
}
</syntaxhighlight>
;メソッドの強制: 抽象クラスには抽象メソッドが含まれており、これをサブクラスで実装することが義務付けられます。これにより、サブクラスが特定のメソッドを実装することが保証されます。
:<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
abstract class Printer {
abstract fun print()
}
class LaserPrinter : Printer() {
override fun print() {
// レーザープリンターの実装
}
}
</syntaxhighlight>
;継承と拡張: 抽象クラスを使用すると、クラス階層を構築し、新しい機能を追加していくことができます。これは、将来的に変更や拡張が発生する可能性がある場合に特に役立ちます。
:<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
abstract class Animal {
abstract fun makeSound()
}
class Dog : Animal() {
override fun makeSound() {
println("Woof!")
}
}
class Cat : Animal() {
override fun makeSound() {
println("Meow!")
}
</syntaxhighlight>
;コンストラクタとプロパティ: 抽象クラスはコンストラクタを持ち、抽象プロパティを宣言できます。これにより、サブクラスが特定のプロパティを持つことが保証され、コンストラクタで初期化できます。
:<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
abstract class Vehicle(val model: String) {
abstract fun start()
abstract fun stop()
}
class Car(model: String) : Vehicle(model) {
override fun start() {
println("Starting the car")
}
override fun stop() {
println("Stopping the car")
}
}
</syntaxhighlight>
;複数のインターフェースの代替: 抽象クラスは複数のメソッドやプロパティをまとめて提供できるため、インターフェースが多すぎる場合に、抽象クラスを使用して階層を整理することができます。
:<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
abstract class UIControl {
abstract fun render()
abstract fun onClick()
}
class Button : UIControl() {
override fun render() {
println("Rendering button")
}
override fun onClick() {
println("Button clicked")
}
}
</syntaxhighlight>
抽象クラスは、柔軟性と再利用性を向上させるために使われますが、適切に設計される必要があります。必要以上に多くの機能を含めると、過度な依存関係が生まれる可能性があるため、慎重な設計が求められます。
=== ファイナルクラス ===
ファイナルクラス(<code>final class</code>)は、Kotlinにおいて継承を禁止したクラスを指します。Kotlinでは、デフォルトでクラスが継承不可(<code>final</code>)となっており、継承可能にするためには明示的に<code>open</code>修飾子を使用する必要があります。そのため、<code>final</code>キーワードは主にオーバーライド禁止メンバーの宣言で使用され、クラス自体に適用することは少ないです。
==== ファイナルクラスの宣言 ====
:<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
final class MyFinalClass {
// クラスの定義
}
</syntaxhighlight>
上記の例では、<code>MyFinalClass</code> はファイナルクラスとして宣言されています。このクラスは他のクラスから継承できません。
==== オーバーライド禁止メンバーの宣言 ====
:<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
open class MyBaseClass {
final fun myFinalMethod() {
// オーバーライド禁止のメソッド
}
}
</syntaxhighlight>
上記の例では、<code>MyBaseClass</code> の <code>myFinalMethod</code> は <code>final</code> 修飾子が付いており、このメソッドはオーバーライドできません。
==== ファイナルクラスの利用例 ====
:<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
final class Configuration {
// クラスの定義
}
class ApplicationSettings(config: Configuration) {
// FinalClass を利用したクラスの定義
}
</syntaxhighlight>
上記の例では、<code>Configuration</code> クラスがファイナルクラスとして定義されています。このクラスは他のクラスから継承できないため、設定情報の不正な変更や上書きを防ぐことが期待されます。<code>ApplicationSettings</code> クラスは <code>Configuration</code> を利用してアプリケーションの設定を管理しています。
ファイナルクラスは特定の状況で利用され、継承を禁止してクラスの拡張を制御するために使用されます。
=== オープンクラス ===
オープンクラス(<code>open class</code>)は、Kotlinにおいて継承を許可したクラスを指します。
Kotlinのクラスはデフォルトで継承不可(<code>final</code>)となっているため、クラスを継承可能にするには明示的に<code>open</code>修飾子を使用する必要があります。
==== オープンクラスの宣言 ====
:<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
open class MyOpenClass {
// クラスの定義
}
</syntaxhighlight>
上記の例では、<code>MyOpenClass</code> はオープンクラスとして宣言されています。このクラスは他のクラスから継承できます。
==== メソッドのオーバーライド許可 ====
:<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
open class MyBaseClass {
open fun myMethod() {
// オーバーライド可能なメソッド
}
}
</syntaxhighlight>
上記の例では、<code>MyBaseClass</code> の <code>myMethod</code> は <code>open</code> 修飾子が付いており、このメソッドはオーバーライド可能です。
==== オープンクラスの利用例 ====
:<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
open class Shape {
open fun draw() {
println("Drawing a shape")
}
}
class Circle : Shape() {
override fun draw() {
println("Drawing a circle")
}
}
class Square : Shape() {
override fun draw() {
println("Drawing a square")
}
}
</syntaxhighlight>
上記の例では、<code>Shape</code> クラスがオープンクラスとして定義されています。<code>Circle</code> と <code>Square</code> クラスが <code>Shape</code> を継承し、<code>draw</code> メソッドをオーバーライドしています。これにより、各図形クラスは自身の特定の描画方法を持つことができます。
オープンクラスは継承を許可し、クラスの拡張やカスタマイズが可能となります。ただし、使用する際には慎重に設計し、必要なメソッドやプロパティに対してのみ<code>open</code>修飾子を使用することが推奨されます。
=== 列挙型クラス ===
{{先頭に戻る}}
列挙型クラス( ''Enum classes'' )は、キーワード <code>enum</code> を <code>class</code> に前置して定義します<ref>[https://kotlinlang.org/docs/enum-classes.html Enum classes]</ref>。
[[Swift/オブジェクト指向#列挙型]]の例を Kotlin 向けにモディファイしました。
;[https://paiza.io/projects/lW6ghepnPWyQnctPdyX6Zw?language=kotlin 列挙型クラスとメソッド]:<syntaxhighlight lang=kotlin line copy>
enum class Azimuth {
North,
South,
East,
West;
override fun toString() = when (this) {
Azimuth.North -> "北"
Azimuth.South -> "南"
Azimuth.East -> "東"
Azimuth.West -> "西"
}
fun deg() = when (this) {
Azimuth.North -> 0 * 90
Azimuth.South -> 2 * 90
Azimuth.East -> 1 * 90
Azimuth.West -> 3 * 90
}
}
fun main() {
val n = Azimuth.North
println("n => $n, az.deg() => ${n.deg()}")
println("------------------------------------")
for (az in Azimuth.values()) {
println("as.name =>${az.name}, as => $az, az.deg() => ${az.deg()}")
}
println(enumValues<Azimuth>().joinToString{it.name})
}
</syntaxhighlight>
;実行結果:<syntaxhighlight lang=text>
n => 北, az.deg() => 0
------------------------------------
as.name =>North, as => 北, az.deg() => 0
as.name =>South, as => 南, az.deg() => 180
as.name =>East, as => 東, az.deg() => 90
as.name =>West, as => 西, az.deg() => 270
North, South, East, West
</syntaxhighlight>
: override fun toString() でEnumのディフォルトの文字列化メソッドをオーバーライドしています。
=== シールドクラス ===
シールドクラス(<code>Sealed class</code>)は、制限されたクラス階層を表現するために使用される Kotlin 特有の機能です。シールドクラスは、特定のサブクラスのみを許容し、新しいサブクラスの追加を防ぎます。これにより、特定の型に対するパターンマッチングが容易になります。
==== シールドクラスの宣言 ====
:<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
sealed class Result {
data class Success(val data: String) : Result()
data class Error(val message: String) : Result()
object Loading : Result()
}
</syntaxhighlight>
上記の例では、<code>Result</code> クラスはシールドクラスとして宣言されています。このクラスには3つのサブクラスがあります:<code>Success</code>、<code>Error</code>、および <code>Loading</code>。<code>Success</code> と <code>Error</code> はデータクラスで、それぞれデータを保持します。<code>Loading</code> はオブジェクトクラスで、データを保持しません。
==== シールドクラスの利用例 ====
:<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
fun processResult(result: Result) {
when (result) {
is Result.Success -> println("Success: ${result.data}")
is Result.Error -> println("Error: ${result.message}")
Result.Loading -> println("Loading...")
}
}
</syntaxhighlight>
上記の例では、<code>Result</code> クラスのサブクラスごとに異なる処理を行う <code>processResult</code> 関数があります。<code>when</code> 式を使用して、特定のサブクラスに対するパターンマッチングを行っています。
==== 利点 ====
* コンパイラがすべてのサブクラスを知っているため、<code>when</code> 式などのパターンマッチングが網羅的であることを確認できます。
* 新しいサブクラスが追加された場合、コンパイラは未処理のケースがあるかどうかを検知し、警告を発生させます。
==== 制限 ====
* シールドクラスは同じファイル内で宣言されたクラスに対してしか有効ではありません。
シールドクラスは、特に固定されたクラス階層を表現する場合や、特定の型に対する安全なパターンマッチングを行う場合に便利です。
=== アノテーションクラス ===
アノテーションクラス(<code>annotation class</code>)は、Kotlinにおいてコードにメタデータを付加するための手段を提供します。これにより、コンパイラや実行時の処理で追加の情報を提供することが可能となります。
==== アノテーションクラスの宣言 ====
アノテーションクラスは、<code>@</code>シンボルを使って宣言されます。アノテーションクラスの主な目的は、アノテーションを作成し、それをコードの要素に適用することです。
:<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
annotation class MyAnnotation(val name: String, val version: Int)
</syntaxhighlight>
上記の例では、<code>MyAnnotation</code> というアノテーションクラスが宣言されています。このアノテーションは、<code>name</code> と <code>version</code> というパラメータを持っています。
==== アノテーションの利用 ====
アノテーションは、クラスや関数、プロパティなど、さまざまな要素に適用できます。
:<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
@MyAnnotation(name = "MyApp", version = 1)
class MyClass {
@MyAnnotation(name = "MyFunction", version = 2)
fun myFunction() {
// 関数の本体
}
}
</syntaxhighlight>
上記の例では、<code>MyClass</code> クラスとその中の <code>myFunction</code> 関数に <code>MyAnnotation</code> が適用されています。これにより、このクラスや関数に対する追加のメタデータが提供されます。
==== アノテーションのプロセッシング ====
アノテーションをプロセッシングするためには、リフレクションやKotlinのアノテーションプロセッサを使用することがあります。これにより、アノテーションに関連する処理を行うカスタムロジックを実装できます。
:<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
// アノテーションプロセッサの例
fun processMyAnnotation(element: AnnotatedElement) {
val myAnnotation = element.getAnnotation(MyAnnotation::class.java)
if (myAnnotation != null) {
println("Name: ${myAnnotation.name}, Version: ${myAnnotation.version}")
}
}
</syntaxhighlight>
上記の例では、<code>AnnotatedElement</code>を受け取り、その要素に <code>MyAnnotation</code> が適用されているかを調べ、情報を取得しています。
アノテーションクラスは、コードにメタデータを追加し、プロセッシングや設定などの目的で使用されます。
=== データクラス ===
データクラス(<code>Data class</code>)は、Kotlinにおいてデータの保持や操作を目的としたクラスで、<code>copy()</code> メソッドなどがクラスを定義するだけで自動的に生成されます。これにより、不変性やイミュータビリティ(immutable)を維持しながら、簡潔で効果的なデータクラスを作成できます。
==== データクラスの宣言 ====
:<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
data class Person(val name: String, val age: Int)
</syntaxhighlight>
上記の例では、<code>Person</code> クラスがデータクラスとして宣言されています。コンストラクタで定義されたプロパティ(<code>name</code> と <code>age</code>)に対して、<code>equals()</code>、<code>hashCode()</code>、<code>toString()</code> などの標準メソッドが自動的に生成されます。
==== データクラスの利用 ====
:<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
val person1 = Person("Alice", 30)
val person2 = Person("Alice", 30)
// equals() メソッドにより、プロパティの内容が一致するか比較
println(person1 == person2) // true
// toString() メソッドにより、クラスの内容を文字列として表示
println(person1.toString()) // Person(name=Alice, age=30)
// copy() メソッドにより、一部のプロパティを変更した新しいインスタンスを作成
val modifiedPerson = person1.copy(age = 31)
println(modifiedPerson) // Person(name=Alice, age=31)
</syntaxhighlight>
上記の例では、<code>equals()</code> メソッドにより <code>person1</code> と <code>person2</code> の内容が一致するか比較され、<code>toString()</code> メソッドによりクラスの内容が文字列として表示されます。また、<code>copy()</code> メソッドを使って一部のプロパティを変更した新しいインスタンスを作成しています。
==== データクラスの生成されるメソッド ====
データクラスが生成される主なメソッドは以下の通りです。
* <code>equals()</code>: プロパティごとの内容比較を行います。
* <code>hashCode()</code>: プロパティごとにハッシュコードを生成します。
* <code>toString()</code>: クラスの内容を文字列として返します。
* <code>copy()</code>: インスタンスのコピーを作成します。一部のプロパティを変更できます。
データクラスは、イミュータブルでありながら効果的にデータを操作するための便利な手段を提供します。
=== インターフェース ===
Kotlinのインターフェース(<code>interface</code>)は、抽象的なメソッドの宣言と、メソッドの実装を含むことができます。インターフェースは、抽象クラスと異なり状態を保持することができません。プロパティを持つ場合、これらは抽象クラスであるか、アクセサーの実装を提供する必要があります<ref>[https://kotlinlang.org/docs/interfaces.html Interfaces]</ref>。
==== インターフェースの宣言 ====
:<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
interface MyInterface {
fun doSomething() // 抽象メソッドの宣言
fun doSomethingElse() {
// デフォルトのメソッド実装
println("Default implementation of doSomethingElse")
}
val property: Int // 抽象プロパティの宣言
}
</syntaxhighlight>
上記の例では、<code>MyInterface</code> インターフェースが、抽象メソッド <code>doSomething()</code> とデフォルトのメソッド <code>doSomethingElse()</code>、抽象プロパティ <code>property</code> を宣言しています。
==== インターフェースの実装 ====
:<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
class MyClass : MyInterface {
override fun doSomething() {
// メソッドの実装
println("Implementation of doSomething")
}
override val property: Int
get() = 42 // プロパティの実装
}
</syntaxhighlight>
上記の例では、<code>MyClass</code> クラスが <code>MyInterface</code> インターフェースを実装しています。<code>doSomething()</code> メソッドと <code>property</code> プロパティをオーバーライドしています。
==== インターフェースの複数準拠 ====
:<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
interface A {
fun methodA()
}
interface B {
fun methodB()
}
class C : A, B {
override fun methodA() {
// A インターフェースの実装
}
override fun methodB() {
// B インターフェースの実装
}
}
</syntaxhighlight>
上記の例では、<code>C</code> クラスが <code>A</code> インターフェースと <code>B</code> インターフェースの両方を実装しています。複数のインターフェースをカンマで区切って指定することができます。
==== インターフェースの継承 ====
:<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
interface D : A, B {
fun methodD()
}
</syntaxhighlight>
上記の例では、<code>D</code> インターフェースが <code>A</code> インターフェースと <code>B</code> インターフェースを継承しています。これにより、<code>D</code> インターフェースは <code>A</code> と <code>B</code> のメソッドを含むことになります。
Kotlinのインターフェースは、クラスが異なる振る舞いを持つ場合に簡潔で柔軟な解決策を提供します。異なるインターフェースを実装することで、複数の振る舞いを同じクラスで組み合わせることができます。
=== インナークラス ===
インナークラス(<code>Inner class</code>)は、入れ子になった内側のクラスが外側のクラスのメンバーにアクセスすることを可能にします。これにより、外側のクラスと強い結びつきを持ちながら、内部で独自の振る舞いやデータを持つクラスを定義できます。
==== インナークラスの宣言 ====
<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
class OuterClass {
private val outerProperty: Int = 10
inner class InnerClass {
fun printOuterProperty() {
// OuterClass のプロパティにアクセス
println("Outer property: $outerProperty")
}
}
}
</syntaxhighlight>
上記の例では、<code>OuterClass</code> という外側のクラスがあり、その中に <code>InnerClass</code> というインナークラスが定義されています。<code>InnerClass</code> は <code>OuterClass</code> のプロパティにアクセスすることができます。
==== インナークラスの利用 ====
<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
fun main() {
val outerInstance = OuterClass()
val innerInstance = outerInstance.InnerClass()
innerInstance.printOuterProperty()
}
</syntaxhighlight>
上記の例では、<code>OuterClass</code> のインスタンスを作成し、そのインナークラスである <code>InnerClass</code> のインスタンスを取得しています。そして、<code>InnerClass</code> のメソッドを呼び出して外側のクラスのプロパティにアクセスしています。
==== インナークラスの特徴 ====
# 外部クラスへのアクセス: インナークラスは、外部クラスのメンバーにアクセスできます。外部クラスのプロパティやメソッドに直接アクセスできるため、疎結合な設計が可能です。
# thisキーワードの挙動: インナークラスでは、外部クラスのインスタンスにアクセスするために <code>this@OuterClass</code> のように明示的な指定ができます。これにより、外部クラスのメンバーと同じ名前のメンバーがインナークラス内にある場合に区別できます。
# 非静的なクラス: インナークラスは外部クラスのインスタンスに依存しており、非静的なクラスです。したがって、外部クラスのインスタンスが存在しないとインナークラスも存在しません。
インナークラスは、外部クラスとの緊密な連携が必要な場合や、外部クラスのプライベートなメンバーにアクセスする必要がある場合に有用です。
=== 値クラス ===
値クラス(<code>data class</code>)は、イミュータブルでスカラーな値の型を定義するための概念です。プロポーザル段階では <code>inline class</code> と呼ばれていました。値クラスは、プリミティブ型のように振る舞い、同時に型安全性を提供します。
==== 値クラスの宣言 ====
<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
data class Email(val value: String)
</syntaxhighlight>
上記の例では、<code>Email</code> という値クラスが宣言されています。この値クラスは、イミュータブルであり、<code>value</code> というプロパティを持っています。
==== 値クラスの利用 ====
<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
fun main() {
val email1 = Email("john@example.com")
val email2 = Email("jane@example.com")
println(email1 == email2) // 値クラスの比較
}
</syntaxhighlight>
上記の例では、異なるインスタンスの <code>Email</code> クラスを作成し、その値が等しいかを比較しています。値クラスでは、プライマリコンストラクタの引数で値が確定し、その値に基づいて等価性が判定されます。
==== 値クラスの特徴 ====
# イミュータブル性: 値クラスは不変(イミュータブル)であるため、一度生成されたインスタンスの値は変更されません。これにより、安全で予測可能なコードを実現します。
# 型安全性: 値クラスは型安全性を提供します。異なる値クラス間は厳密に区別され、混同されることがありません。
# 自動生成メソッド: 値クラスは <code>equals()</code> や <code>hashCode()</code> などのメソッドを自動生成します。これにより、等価性の確認やコレクションの利用が容易になります。
# ボクシングの回避: 値クラスはプリミティブ型のように振る舞い、一部のボクシングを回避します。これにより、メモリ効率が向上します。
値クラスは、ドメインモデリングや特定のデータ型を表現する際に有用であり、プロジェクト全体でのコードの理解性や保守性を向上させる役割を果たします。
=== オブジェクト ===
オブジェクト(<code>object</code>)は、モディファイア・キーワードではありませんが、特殊なクラスの一種であり、一過的な匿名クラスを定義し、その唯一のインスタンスを生成します。オブジェクトはシングルトンのような振る舞いを持ち、一般的には特定の目的に使用されます。
==== オブジェクトの宣言 ====
<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
object Logger {
fun log(message: String) {
println("Log: $message")
}
}
</syntaxhighlight>
上記の例では、<code>Logger</code> という名前のオブジェクトが宣言されています。このオブジェクトはシングルトンであり、<code>log</code> メソッドを持っています。
==== オブジェクトの利用 ====
<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
fun main() {
Logger.log("This is a log message.")
}
</syntaxhighlight>
上記の例では、<code>Logger</code> オブジェクトの唯一のインスタンスにアクセスし、その <code>log</code> メソッドを呼び出しています。オブジェクトは初回のアクセス時に遅延初期化され、以降は同じインスタンスが再利用されます。
==== オブジェクトの特徴 ====
# シングルトンパターン: オブジェクトはシングルトンとして振る舞います。クラスの唯一のインスタンスを持ち、それにアクセスするために新たなインスタンスを生成することはありません。
# 遅延初期化: オブジェクトは初回のアクセス時に初期化されます。これにより、プログラムが実際に必要なときに初期化処理が行われます。
# クラスメンバー: オブジェクトはメソッドやプロパティを持つことができます。これらは通常のクラスメンバーと同じようにアクセスできます。
# 継承不可: オブジェクトは継承できません。そのため、他のクラスがこのオブジェクトを継承することはできません。
オブジェクトは特定のタスクや目的に対して唯一のインスタンスを提供する場合に利用され、例えばロギングや設定の管理などに適しています。
== ジェネリックス ==
{{先頭に戻る}}
ジェネリックス( ''Generics'' )とは、汎用的なクラス・関数やメソッドを特定の型に対応づける機能のことです<ref>[https://kotlinlang.org/docs/generics.html Generics: in, out, where]</ref>。
== キーワード一覧 ==
{{先頭に戻る}}
Kotlinの{{Anchor|キーワード}}( ''Keywords'' )は
* [[#ハード・キーワード|ハード・キーワード]]
* [[#ソフト・キーワード|ソフト・キーワード]]
* [[#モディファイア・キーワード|モディファイア・キーワード]]
* [[#特殊識別子|特殊識別子]]
* [[#演算子と特殊シンボル|演算子と特殊シンボル]]
に分類されます<ref>[https://kotlinlang.org/docs/keyword-reference.html Keywords and operators]</ref>。
=== ハード・キーワード ===
{{先頭に戻る|style=border-top:1px solid gray;}}
以下のトークンは、常にキーワードとして解釈され、識別子として使用することはできません<ref>[https://kotlinlang.org/docs/keyword-reference.html#hard-keywords Hard keywords]</ref>。
このようなキーワードをハード・キーワード( ''Hard keywords'' )と呼びます。
* <code>[[#as|as]]</code>
*# 型キャスト( ''type casts'' )に使用されます。
*# インポートの別名の指定に使用されます。
* <code>[[#as?|as?]]</code> 安全なタイプキャスト( ''safe type casts'' )に使用されます。
* <code>[[#break|break]]</code> ループの実行を終了させます。
* <code>[[#class|class]]</code> クラスを宣言します。
* <code>[[#continue|continue]]</code> 最も近いループの次のステップに進みます。
* <code>[[#do|do]]</code> do/whileループ(条件式を後置するつループ)を開始します。
* <code>[[#else|else]]</code> 条件が偽のときに実行されるif式の分岐を定義します。
* <code>[[#false|false]]</code> Boolean型の「偽」の値を表します。
* <code>[[#for|for]]</code> forループを開始します。
* <code>[[#fun|fun]]</code> 関数を宣言します。
* <code>[[#if|if]]</code> if式の先頭です。
* <code>[[#in|in]]</code>
*# forループで反復されるオブジェクトを指定します。
*# 値が範囲、コレクション、または「contains」メソッドを定義している他のエンティティに属しているかどうかを確認するための中置演算子として使用されます。
*# 同じ目的のためにwhen式で使用されます。
*# 型パラメータをcontravariantとしてマークします。
* <code>[[#!in|!in]]</code>
*# 値が範囲、コレクション、または 'contains' メソッドを定義する他のエンティティに'''属さない'''ことを確認する演算子として使用されます。
*# 同じ目的のためにwhen式で使用されます。
*: <code>!in</code>で1つのトークンなので、! と in の間に空白を挟むことはできません。
* <code>[[#interface|interface]]</code> インターフェース( ''interfaces'' )を宣言します。
* <code>[[#is|is]]</code>
*# 値が特定の型を持つかどうかをチェックします。
*# 同じ目的のwhen式で使用されます。
* <code>[[#!is|!is]]</code>
*# 値が特定の型を持って'''いない'''かどうかをチェックします。
*# 同じ目的のwhen式で使用されます。
*: <code>!is</code>で1つのトークンなので、! と is の間に空白を挟むことはできません。
* <code>[[#null|null]]</code> どのオブジェクトも指していないオブジェクト参照を表す定数です。
* <code>[[#object|object]]</code> クラスとそのインスタンスを同時に宣言します。
* <code>[[#package|package]]</code> 現在のファイルのパッケージを指定します。
* <code>[[#return|return]]</code> 最も近い包含関数または無名関数からの呼出し元に戻ります。
* <code>[[#super|super]]</code>
*# メソッドやプロパティのスーパークラス実装を参照します。
*# 二次コンストラクタ( ''secondary constructor'' )からスーパークラスのコンストラクタを呼び出します。
* <code>[[#this|this]]</code>
*# 現在のレシーバを指します。
*# 2 次コンストラクタから同じクラスの別のコンストラクタを呼び出します。
* <code>[[#throw|throw]]</code> 例外を投げます。
* <code>[[#true|true]]</code> Boolean型の「真」の値を表します。
* <code>[[#try|try]]</code> 例外処理ブロックを開始します。
* <code>[[#typealias|typealias]]</code> 型の別名を宣言します。
* <code>[[#typeof|typeof]]</code> 将来の使用のために予約されています。
* <code>[[#val|val]]</code> 読取り専用のプロパティまたはローカル変数を宣言します。
* <code>[[#var|var]]</code> 変更可能なプロパティまたはローカル変数を宣言します。
* <code>[[#when|when]]</code> when式を開始します(与えられた分岐のうち1つを実行します)。
* <code>[[#while|while]]</code> while ループ(条件式を前置するループ)を開始します。
=== ソフト・キーワード ===
{{先頭に戻る|style=border-top:1px solid gray;}}
以下のトークンは、それが適用される文脈( ''context'' )ではキーワードとして機能し、他の文脈では[[#識別子|識別子]]として使用することができます<ref>[https://kotlinlang.org/docs/keyword-reference.html#soft-keywords Soft keywords]</ref>。
このようなキーワードをソフト・キーワード( ''Soft keywords'' )と呼びます。
* <code>[[#by|by]]</code>
*# インターフェース( ''interface'' )の実装( ''implementation'' )を別のオブジェクトに委譲( ''delegates'' )します。
*# プロパティーのアクセッサー( ''accessors'' )の実装を別のオブジェクトに委譲します。
* <code>[[#catch|catch]]</code> 特定の例外タイプ( ''specific exception type'' )を処理( ''handles'' )するブロックを開始します。
* <code>[[#constructor|constructor]]</code> 一次または二次コンストラクタを宣言します。
* <code>[[#delegate|delegate]]</code> [[#アノテーション使用側ターゲット|アノテーション使用側ターゲット]]<sup>[仮訳]</sup>( ''annotation use-site target'' )として使用されます。
* <code>[[#dynamic|dynamic]]</code> Kotlin/JS コードで動的な型を参照します。
* <code>[[#field|field]]</code> [[#アノテーション使用側ターゲット|アノテーション使用側ターゲット]]<sup>[仮訳]</sup>として使用されます。
* <code>[[#file|file]]</code> [[#アノテーション使用側ターゲット|アノテーション使用側ターゲット]]<sup>[仮訳]</sup>として使用されます。
* <code>[[#finally|finally]]</code> tryブロックが終了したときに必ず実行されるブロックを開始します。
* <code>[[#get|get]]</code>
*# プロパティのゲッター( ''getter'' )を宣言します。
*# [[#アノテーション使用側ターゲット|アノテーション使用側ターゲット]]<sup>[仮訳]</sup>として使用されます。
* <code>[[#import|import]]</code> 他のパッケージから現在のファイルに宣言をインポートします。
* <code>[[#init|init]]</code> イニシャライザーブロックを開始します。
* <code>[[#param|param]]</code> [[#アノテーション使用側ターゲット|アノテーション使用側ターゲット]]<sup>[仮訳]</sup>として使用されます。
* <code>[[#property|property]]</code> [[#アノテーション使用側ターゲット|アノテーション使用側ターゲット]]<sup>[仮訳]</sup>として使用されます。
* <code>[[#receiver|receiver]]</code> [[#アノテーション使用側ターゲット|アノテーション使用側ターゲット]]<sup>[仮訳]</sup>として使用されます。
* <code>[[#set|set]]</code>
*# プロパティのセッター( ''setter'' )を宣言します。
*# [[#アノテーション使用側ターゲット|アノテーション使用側ターゲット]]<sup>[仮訳]</sup>として使用されます。
* <code>[[#setparam|setparam]]</code> [[#アノテーション使用側ターゲット|アノテーション使用側ターゲット]]<sup>[仮訳]</sup>として使用されます。
* <code>[[#value|value]]</code> キーワード <code>class</code> を付けてインラインクラス( ''inline class'' )を宣言します。
* <code>[[#where|where]]</code> 汎用型パラメーター( ''a generic type parameter'' )の制約( ''constraints'' )を指定します。
==== アノテーション使用側ターゲット ====
アノテーション使用側ターゲット( ''Annotation use-site target'' )は、Kotlinにおいてアノテーションが特定の要素に対して適用される位置を指定する構文です。これにより、生成されるJavaバイトコードにおいてアノテーションがどの要素に適用されるかを正確に指定できます<ref>[https://kotlinlang.org/docs/annotations.html#annotation-use-site-targets Annotation use-site targets]</ref>。
==== アノテーション使用側ターゲットの指定 ====
以下は、一般的なアノテーション使用側ターゲットの指定方法です。
# プロパティにアノテーションを指定する場合:
#:<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
class Example {
@get:MyAnnotation
val myProperty: Int = 42
}
</syntaxhighlight>
#:この例では、<code>@get:MyAnnotation</code> と指定することで、プロパティのgetterメソッドに対してアノテーションを指定しています。
# 1次コンストラクタのパラメータにアノテーションを指定する場合:
#:<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
class Example(@param:MyAnnotation val value: String)
</syntaxhighlight>
#:この例では、<code>@param:MyAnnotation</code> と指定することで、1次コンストラクタのパラメータに対してアノテーションを指定しています。
==== よく使われるアノテーション使用側ターゲット ====
# <code>@get</code>: プロパティのgetterメソッドに対してアノテーションを指定する。
# <code>@set</code>: プロパティのsetterメソッドに対してアノテーションを指定する。
# <code>@field</code>: プロパティ自体に対してアノテーションを指定する。
これらの使用側ターゲットを使うことで、アノテーションが生成される場所を明確に指定することができ、柔軟性を保ちつつ、正確な挙動を得ることができます。
=== モディファイア・キーワード ===
{{先頭に戻る|style=border-top:1px solid gray;}}
以下のトークンは、宣言の修飾語リスト( ''modifier lists of declarations'' )のキーワードとして機能し、他のコンテキストでは識別子として使用することができます<ref>[https://kotlinlang.org/docs/keyword-reference.html#modifier-keywords Modifier keywords]</ref>。
このようなキーワードをモディファイア・キーワード( ''Modifier keywords'' )と呼びます。
* <code>[[#abstract|abstract]]</code> クラスやメンバが抽象的( ''as abstract'' )であることを表します。
* <code>[[#actual|actual]]</code> マルチプラットフォーム・プロジェクト( ''multiplatform projects'' )におけるプラットフォーム固有の実装( ''platform-specific implementation'' )を意味します。
* <code>[[#annotation|annotation]]</code> アノテーションクラス( ''an annotation class'' )を宣言します。
* <code>[[#companion|companion]]</code> コンパニオンオブジェクト( ''a companion object'' )を宣言します。
* <code>[[#const|const]]</code> プロパティをコンパイル時の定数( ''a compile-time constant'' )としてマークします。
* <code>[[#crossinline|crossinline]]</code> インライン関数に渡されるラムダで、ローカルでない返り値を禁止します。
* <code>[[#data|data]]</code> クラスの正規メンバー( ''canonical members'' )を生成するようにコンパイラーに指示します。
* <code>[[#enum|enum]]</code> 列挙型( ''an enumeration'' )を宣言します。
* <code>[[#expect|expect]]</code> 宣言がプラットフォーム固有( ''as platform-specific'' )のものであり、プラットフォーム・モジュール(platform modules )で実装されることを期待するものとしてマークします。
* <code>[[#external|external]]</code> Kotlin の外部で実装される宣言であることを示します(JNI または JavaScript でアクセス可能)。
* <code>[[#final|final]]</code> メンバーのオーバーライドを禁止します。
* <code>[[#infix|infix]]</code> 中置記法( ''infix notation'' )で関数を呼び出すことを許可します。
* <code>[[#inline|inline]]</code> 関数とその関数に渡されたラムダを呼出し先でインライン化することをコンパイラに指示します。
* <code>[[#inner|inner]]</code> ネストされたクラスから外側のクラスのインスタンスを参照できるようにします。
* <code>[[#internal|internal]]</code> 現在のモジュールで可視( ''as visible'' )となる宣言をマークします。
* <code>[[#lateinit|lateinit]]</code> コンストラクターの外部で非 null プロパティを初期化します。
* <code>[[#noinline|noinline]]</code> インライン関数に渡されたラムダをインライン化しないようにします。
* <code>[[#open|open]]</code> クラスのサブクラス化またはメンバーのオーバーライドを許可します。
* <code>[[#operator|operator]]</code> 関数が演算子をオーバーロードしているか、または規約を実装( ''implementing a convention'' )しているかをマークします。
* <code>[[#out|out]]</code> 型パラメータを共変( ''covariant'' )としてマークします。
* <code>[[#override|override]]</code> スーパークラスのメンバーのオーバーライドとしてメンバーにマークを付けます。
* <code>[[#private|private]]</code> 現在のクラスまたはファイル内で宣言が可視化( as visible )されるようにマークします。
* <code>[[#protected|protected]]</code> 現在のクラスとそのサブクラスで宣言が可視化されるようにマークします。
* <code>[[#public|public]]</code> 宣言がどこでも可視化されるようにマークします。
* <code>[[#reified|reified]]</code> インライン関数の型パラメーター( ''type parameter'' )を、実行時にアクセス可能なものとしてマークします。
* <code>[[#sealed|sealed]]</code> シールされたクラス( ''sealed class'' ; サブクラス化が制限されたクラス)を宣言します。
* <code>[[#suspend|suspend]]</code> 関数やラムダをサスペンド(コルーチンとして使用可能)するようにマークします。
* <code>[[#tailrec|tailrec]]</code> 関数を末尾再帰としてマークします (コンパイラーが再帰を反復に置換えることができます)。
* <code>[[#vararg|vararg]]</code> パラメーターに可変数の引数を渡せるようにします。
=== 特殊識別子 ===
{{先頭に戻る|style=border-top:1px solid gray;}}
以下の識別子は,コンパイラーが特定の文脈で定義したもので、他の文脈では通常の識別子として使用することができます<ref>[https://kotlinlang.org/docs/keyword-reference.html#special-identifiers Special identifiers]</ref>。
このような識別子を特殊識別子( ''Special identifiers'' )と呼びます。
* <code>[[#field|field]]</code> プロパティーアクセサー( ''a property accessor'' )の内部で、プロパティーのバッキングフィールドを参照するために使用します。
* <code>[[#it|it]]</code> ラムダの内部で暗黙のうちにパラメーターを参照するために使用されます。
=== 演算子と特殊シンボル ===
{{先頭に戻る|style=border-top:1px solid gray;}}
Kotlinは以下の演算子( ''Operators'' )や特殊特殊シンボル( ''special symbols'' )をサポートしています<ref>[https://kotlinlang.org/docs/keyword-reference.html#operators-and-special-symbols Operators and special symbols]</ref>。
* <code>+</code>, <code>-</code>, <code>*</code>, <code>/</code>, <code>%</code> {{---}} 算術演算子
*# <code>*</code> は、vararg パラメーターに配列を渡す場合にも使用されます。
* <code>=</code>
*# 代入演算子
*# パラメーターのデフォルト値を指定するために使用されます。
* <code>+=</code>, <code>-=</code>, <code>*=</code>, <code>/=</code>, <code>%=</code> {{---}} 拡張された代入演算子。
* <code>++</code>, <code>--</code> {{---}} インクリメントおよびデクリメント演算子
* <code>&&</code>, <code>||</code>, <code>!</code> {{---}} 論理 'and', 'or', 'not' 演算子 (ビット演算には、対応する infix 関数を使用してください)。
* <code>==</code>, <code>!=</code> {{---}} 等号演算子 (非プリミティブ型では equals() に変換される)。
* <code>===</code>, <code>!==</code> {{---}} 参照系等号演算子( ''referential equality operators'' )
* <code><</code>, <code>></code>, <code><=</code>, <code>>=</code> {{---}} 比較演算子 (非プリミティブ型に対する compareTo() の呼出しに変換されます)
* <code>[</code>, <code>]</code> {{---}} インデックス付きアクセス演算子(getとsetの呼び出しに変換されます)
* <code>!!</code> 式が非nullであることを保証します。
* <code>?.</code> 安全な呼び出しを行います(レシーバーが非NULLの場合、メソッドを呼び出したり、プロパティにアクセスしたりします)。
* <code>?:</code> 左辺の値がNULLの場合、右辺の値を取ります(エルビス演算子)。
* <code>::</code> メンバー参照またはクラス参照を作成します。
* <code>..</code> 範囲( ''a range'' )を生成します。
* <code>:</code> 宣言の中で、名前と型を分離します。
* <code>?</code> 型をnull可能( ''as nullable'' )であるとマークします。
* <code>-></code>
*# ラムダ式のパラメーターと本体を分離します。
*# 関数型のパラメーターと戻値の型宣言を分離します。
*# when式の条件分岐と本体を分離します。
* <code>@</code>
*# アノテーションを導入します。
*# ループラベルを導入または参照します。
*# ラムダ・ラベルを導入または参照します。
*# 外部スコープから 'this' 式を参照します。
*# 外部のスーパークラスを参照します。
* <code>;</code> 同じ行にある複数のステートメントを区切ります。
* <code>$</code> 文字列テンプレート内で変数または式を参照します。
* <code>_</code>
*# ラムダ式で使用しないパラメーターを置換えます。
*# 構造化宣言の未使用のパラメーターを代入します。
{{See also|[[#演算子の優先順位|演算子の優先順位]]}}
== Kotlin標準ライブラリー ==
{{先頭に戻る}}
Kotlin標準ライブラリー( ''Kotlin Standard Library'' )は、以下のような機能を提供します<ref>[https://kotlinlang.org/api/latest/jvm/stdlib/ Kotlin Standard Library]</ref>。
* 慣用的なパターン(let、apply、use、synchronizedなど)を実装した高階関数。
* コレクション(eager)やシーケンス(lazy)に対するクエリ操作を提供する拡張関数。
* 文字列や文字列列を扱うための各種ユーティリティ
* ファイル、IO、スレッドを便利に扱うための JDK クラスの拡張。
Kotlin標準ライブラリーはKotlin自身で書かれています。
;[[ディフォルトインポート]]されるパッケージ
* kotlin.*
* [[#アノテーション|アノテーション]]
* [[#コレクション|コレクション]]
* [[#比較|比較]]
* [[#入出力|入出力]]
* [[#範囲|範囲]]
* [[#シーケンス|シーケンス]]
* [[#テキスト|テキスト]]
=== アノテーション ===
{{先頭に戻る|title=Kotlin標準ライブラリーに戻る|label=Kotlin標準ライブラリー}}
kotlin.annotation.*
=== コレクション ===
{{先頭に戻る|title=Kotlin標準ライブラリーに戻る|label=Kotlin標準ライブラリー}}
Kotlinには、Arrayから始まり、Iterable, Collection, List, Set, Mapなどのコレクション型が豊富に用意されています。これらは主に <code>kotlin.collections</code> パッケージで提供されており、[[#ディフォルトインポート|ディフォルトインポート]]なので追加のインポートなしで利用できます<ref>[https://kotlinlang.org/api/latest/jvm/stdlib/kotlin.collections/ Package kotlin.collections]</ref>。
:{| class=wikitable
|+ 主要なパッケージとその機能の一覧
!パッケージ!!機能
|-
!Iterable
|要素の反復処理をサポート
|-
!Collection
|要素のコレクションを表現
|-
!List
|要素数が固定で、要素の値を変更不可
|-
!ArrayList
|可変長の動的な配列
|-
!MutableList
|要素の変更が可能なリスト
|-
!Set
|要素の重複を許さない
|-
!Map
|キーと値のペアを保持する
|-
!MutableMap
|要素の変更が可能なMap
|-
!LinkedHashSet
|要素の挿入順を保持するSet
|-
!LinkedHashMap
|要素の挿入順を保持するMap
|}
==== Iterable ====
<code>Iterable</code> インターフェースは、Kotlinの標準ライブラリで使用される反復可能なコレクションの基本的なインターフェースです。このインターフェースは、コレクションが要素の反復処理を可能にするために必要な機能を提供します。
以下に、<code>Iterable</code> インターフェースの主な要素と使用法を示します:
# <code>iterator()</code> メソッド:
#* <code>iterator</code> メソッドは、コレクション内の要素を反復処理するためのイテレータを返します。
#* イテレータは、<code>hasNext()</code> メソッドで次の要素の有無を確認し、<code>next()</code> メソッドで次の要素を取得します。
#* 通常、<code>for</code> ループや <code>forEach</code> 関数を使用して、このメソッドを呼び出すことなくコレクションを反復処理できます。
#:<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
val iterable: Iterable<Int> = listOf(1, 2, 3, 4, 5)
// for ループを使用した反復処理
for (element in iterable) {
println(element)
}
// forEach 関数を使用した反復処理
iterable.forEach { element ->
println(element)
}
</syntaxhighlight>
# <code>forEach</code> 拡張関数:
#* <code>Iterable</code> インターフェースには、<code>forEach</code> という拡張関数があります。これはラムダ式を使用して各要素に対する処理を行います。
#:<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
val iterable: Iterable<Int> = listOf(1, 2, 3, 4, 5)
// forEach 関数を使用した反復処理
iterable.forEach { element ->
println(element)
}
</syntaxhighlight>
#使用例:
#* <code>Iterable</code> は多くの Kotlin のコレクションで使用されます。例えば、<code>List</code>、<code>Set</code>、<code>Map</code> などが <code>Iterable</code> インターフェースを実装しています。
#* <code>Iterable</code> を実装することで、コレクションが要素の反復処理をサポートし、<code>for</code> ループや <code>forEach</code> 関数などで簡単に使用できます。
#:<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
// List は Iterable インターフェースを実装している
val list: Iterable<Int> = listOf(1, 2, 3, 4, 5)
// for ループを使用した反復処理
for (element in list) {
println(element)
}
</syntaxhighlight>
<code>Iterable</code> インターフェースは、Kotlinでコレクションを扱う際に非常に重要であり、様々な反復処理操作を可能にします。
==== Collection ====
<code>Collection</code> インターフェースは、Kotlinの標準ライブラリで提供されるコレクション型の基本インターフェースの一つです。このインターフェースは、複数の要素を保持するデータ構造を表現し、それらの要素に対する基本的な操作を提供します。
以下に、<code>Collection</code> インターフェースの主な特徴と使用法を示します:
# 要素の追加と削除:
#* <code>Collection</code> インターフェースは、要素の追加や削除といった基本的な操作を提供します。
#* <code>add(element: E)</code> メソッドを使用して要素を追加し、<code>remove(element: E)</code> メソッドを使用して指定した要素を削除します。
#:<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
val collection: Collection<Int> = listOf(1, 2, 3, 4, 5)
// 要素の追加はサポートされない
// collection.add(6) // エラー
// 要素の削除
val modifiedCollection = collection - 3
println(modifiedCollection) // [1, 2, 4, 5]
</syntaxhighlight>
# 要素の存在確認:
#* <code>contains(element: E)</code> メソッドを使用して、指定した要素がコレクション内に存在するかどうかを確認できます。
#:<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
val collection: Collection<Int> = listOf(1, 2, 3, 4, 5)
// 要素の存在確認
val containsThree = collection.contains(3)
println(containsThree) // true
</syntaxhighlight>
# サイズの取得:
#* <code>size</code> プロパティを使用して、コレクション内の要素の総数を取得できます。
#:<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
val collection: Collection<Int> = listOf(1, 2, 3, 4, 5)
// コレクションのサイズ取得
val size = collection.size
println(size) // 5
</syntaxhighlight>
# 反復処理:
#* <code>Iterable</code> インターフェースを継承しているため、<code>forEach</code> 関数などを使用してコレクション内の要素を反復処理できます。
#:<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
val collection: Collection<Int> = listOf(1, 2, 3, 4, 5)
// forEach 関数を使用した反復処理
collection.forEach { element ->
println(element)
}
</syntaxhighlight>
# 他のコレクションとの操作:
#* <code>Collection</code> インターフェースを実装するコレクションは、他のコレクションとの操作を行うための便利な関数を提供します。例えば、和集合、差集合、共通要素などを計算できます。
#:<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
val collection1: Collection<Int> = listOf(1, 2, 3, 4, 5)
val collection2: Collection<Int> = listOf(4, 5, 6, 7, 8)
// 和集合
val unionResult = collection1 union collection2
println(unionResult) // [1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8]
// 差集合
val subtractResult = collection1 subtract collection2
println(subtractResult) // [1, 2, 3]
// 共通要素
val intersectResult = collection1 intersect collection2
println(intersectResult) // [4, 5]
</syntaxhighlight>
<code>Collection</code> インターフェースは、Kotlinのコレクションの基本的な機能を提供し、様々な種類のコレクションがこれを実装しています。これにより、異なる種類のコレクションを一貫して扱うことができます。
==== List ====
Listは、要素数が固定で要素の値を変更できないコレクションです。
===== List() =====
;[https://paiza.io/projects/vmrFKnU_3qj5d04hJPmuWA?language=kotlin List()を使ったListの生成]:<syntaxhighlight lang=Kotlin highlight=2 line>
fun main() {
val list = List(5){it}
println("list::class.simpleName ⇒ ${list::class.simpleName}")
println("list[0]::class.simpleName ⇒ ${list[0]::class.simpleName}")
list.forEach{print("$it ")}
println("")
val list2 = List(5){(it*it).toString()}
println("list2[0]::class.simpleName ⇒ ${list2[0]::class.simpleName}")
list2.forEach{print("$it ")}
println("")
}
</syntaxhighlight>
;実行結果:<syntaxhighlight lang=text>
list::class.simpleName ⇒ ArrayList
list[0]::class.simpleName ⇒ Int
0 1 2 3 4
list2[0]::class.simpleName ⇒ String
0 1 4 9 16
</syntaxhighlight>
: List()はListのコンストラクターで、引数として要素数をとり、ブロックが初期化式になります。
===== listOf =====
;[https://paiza.io/projects/D17B4n-k7dGdKdxlrw5m2Q?language=kotlin listOf()を使ったListの生成]
:<syntaxhighlight lang=Kotlin highlight=2 line>
fun main() {
val list = listOf(1, 9, 3, 5, 23, 1)
println("${list::class.simpleName}")
println("${list[0]::class.simpleName}")
for (s in list)
if (s > 10)
break
else
print("$s ")
println("")
run {
list.forEach{
if (it > 10)
return@run
else
print("$it ")
}
}
println("")
}
</syntaxhighlight>
;実行結果:<syntaxhighlight lang=text>
ArrayList
Int
1 9 3 5
1 9 3 5
</syntaxhighlight>
: ListOf()は可変長引数の関数で、引数が生成されるListの要素になります。
: Listの要素の型は、型強制できる最小公倍数的な方になります(例えば Int と Long が混在していたら Long)。
==== ArrayList ====
:<syntaxhighlight lang=Kotlin line>
fun main() {
// ArrayListを使ったListの生成
val arrayList = ArrayList<String>()
arrayList.add("Kotlin")
arrayList.add("Java")
arrayList.add("Python")
println("${arrayList::class.simpleName}")
for (lang in arrayList) {
println(lang)
}
}
</syntaxhighlight>
;実行結果:<syntaxhighlight lang=text>
ArrayList
Kotlin
Java
Python
</syntaxhighlight>
上記の例では、<code>ArrayList</code> を使ってListを生成しています。ArrayListは要素の順序が保持され、可変長の動的な配列を表現します。<code>add</code> メソッドを使用して要素を追加することができます。
==== MutableList ====
<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
fun main() {
// MutableListを使ったListの生成
val mutableList = mutableListOf(1, 2, 3, 4, 5)
mutableList.add(6)
println("${mutableList::class.simpleName}")
for (num in mutableList) {
print("$num ")
}
println("")
}
</syntaxhighlight>
;実行結果
:<syntaxhighlight lang=text>
ArrayList
1 2 3 4 5 6
</syntaxhighlight>
<code>mutableListOf()</code> を使って <code>MutableList</code> を生成し、<code>add</code> メソッドを使用して要素を追加しています。MutableListは要素の変更が可能なListです。
これらの例から分かるように、Kotlinのコレクションは型安全で、読み取り専用と可変なコレクションの違いが明確になっています。リストの他にも、SetやMapも用意されており、それぞれの特徴に応じて適切なものを選択できます。
==== ユースケース ====
<code>kotlin.collections</code> パッケージのコレクションクラスや関連機能は、さまざまなプログラミングシナリオで利用されます。以下は、<code>kotlin.collections</code> の主なユースケースのいくつかです:
# データの格納と操作: List、Set、Mapなどのコレクションは、データを効果的に格納し、操作するために使用されます。例えば、リストは順序つきのデータの集合を表現し、セットは一意な要素の集合を表現します。
# 反復処理とフィルタリング: Iterable インターフェースを使用してコレクションを反復処理し、必要なデータを抽出することができます。これは、フィルタリングや変換などの操作に役立ちます。
# 不変性と可変性の管理: List と MutableList、Set と MutableSet、Map と MutableMap など、各コレクションには不変なバージョンと可変なバージョンがあります。これにより、不変性を保ちながら必要に応じてデータを変更できます。
# 関数型プログラミング: コレクション操作には関数型プログラミングのアプローチがあり、<code>filter</code>、<code>map</code>、<code>reduce</code> などの関数を使用してデータを処理できます。
以下は、これらのユースケースの簡単な例です:
<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
// データの格納と操作
val list = listOf(1, 2, 3, 4, 5)
val set = setOf(1, 2, 3, 4, 5)
val map = mapOf(1 to "one", 2 to "two", 3 to "three")
// 反復処理とフィルタリング
val filteredList = list.filter { it > 2 }
// 不変性と可変性の管理
val mutableList = mutableListOf(1, 2, 3)
mutableList.add(4)
// 関数型プログラミング
val squaredValues = list.map { it * it }
val sum = list.reduce { acc, value -> acc + value }
</syntaxhighlight>
これらの例は一部の機能を示すものであり、<code>kotlin.collections</code> のコレクションは、さまざまなプログラミングニーズに対応する強力なツールセットを提供します。
==== ベストプラクティス ====
<code>kotlin.collections</code> を使用する際のベストプラクティスはいくつかあります。以下にいくつか挙げてみましょう:
# 不変性の推奨: 不変なコレクション(<code>List</code>、<code>Set</code>、<code>Map</code>など)を使用することを検討してください。不変なコレクションは変更不可能でスレッドセーフであり、プログラムの安全性を向上させるのに役立ちます。
#:<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
// 不変なリスト
val immutableList = listOf(1, 2, 3)
// 不変なセット
val immutableSet = setOf("apple", "orange", "banana")
// 不変なマップ
val immutableMap = mapOf(1 to "one", 2 to "two", 3 to "three")
</syntaxhighlight>
# Nullableなコレクションの適切な扱い: コレクション内の要素が <code>null</code> になりうる場合、Nullableなコレクション(<code>List?</code>、<code>Set?</code>、<code>Map?</code>など)を使用して適切にハンドリングしましょう。
#:<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
// Nullableなリスト
val nullableList: List<Int>? = // ...
// Nullableなセット
val nullableSet: Set<String>? = // ...
// Nullableなマップ
val nullableMap: Map<Int, String>? = // ...
</syntaxhighlight>
# 関数型プログラミングの活用: <code>filter</code>、<code>map</code>、<code>reduce</code>、<code>fold</code> などの関数型プログラミングの機能を活用して、コードを簡潔で読みやすくしましょう。
#:<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
val numbers = listOf(1, 2, 3, 4, 5)
val evenSquared = numbers
.filter { it % 2 == 0 }
.map { it * it }
.sum()
</syntaxhighlight>
# 適切なコレクションの選択: 使用ケースによって適切なコレクションを選択しましょう。例えば、要素の順序が重要な場合は <code>List</code>、一意性が必要な場合は <code>Set</code>、キーと値のペアが必要な場合は <code>Map</code> を使用します。
#:<syntaxhighlight lang=kotlin copy>
// 要素の順序が重要
val orderedList = listOf(1, 2, 3, 4, 5)
// 一意性が必要
val uniqueSet = setOf("apple", "orange", "banana")
// キーと値のペアが必要
val keyValueMap = mapOf(1 to "one", 2 to "two", 3 to "three")
</syntaxhighlight>
これらのベストプラクティスは、コードの品質、パフォーマンス、保守性を向上させるのに役立ちます。使用ケースによって最適なアプローチを選択することが重要です。
=== 比較 ===
{{先頭に戻る|title=Kotlin標準ライブラリーに戻る|label=Kotlin標準ライブラリー}}
kotlin.comparisons.*
=== 入出力 ===
{{先頭に戻る|title=Kotlin標準ライブラリーに戻る|label=Kotlin標準ライブラリー}}
kotlin.io.*
=== 範囲 ===
{{先頭に戻る|title=Kotlin標準ライブラリーに戻る|label=Kotlin標準ライブラリー}}
kotlin.ranges.*
=== シーケンス ===
{{先頭に戻る|title=Kotlin標準ライブラリーに戻る|label=Kotlin標準ライブラリー}}
kotlin.sequences.*
=== テキスト ===
{{先頭に戻る|title=Kotlin標準ライブラリーに戻る|label=Kotlin標準ライブラリー}}
kotlin.text.*
----
=== コレクション類似クラス ===
{{先頭に戻る}}
[TODO:Rangeはコレクションではないので再分類が必要]
<code>println((1..5).javaClass.kotlin)</code>の結果が示す通り、範囲リテラル<code>1..5</code>は<code>class kotlin.ranges.IntRange</code>です。
コレクションは、Ranges以外にも、Sequences・Ranges・Lists・Arrays・Sets・Mapsなどがあります。これは網羅していませんし、上記の forプロトコルに従ったクラスを作れば、ユーザー定義のコレクションも作成できます。
;[https://paiza.io/projects/zw6faeOmsjuZVF3D3WY_-g?language=kotlin 様々なコレクション]:<syntaxhighlight lang="Kotlin">
fun main(args: Array<String>) {
val collections = arrayOf(
1..5,
1..8 step 2,
5 downTo 1,
8 downTo 1 step 2,
'A'..'Z',
listOf(2,3,5),
setOf(7,11,13))
println("$collections(${collections.javaClass.kotlin})")
for (collection in collections) {
print(collection)
print(": ")
for (x in collection) {
print(x)
print(" ")
}
print(": ")
println(collection.javaClass.kotlin)
}
}
</syntaxhighlight>
;実行結果:<syntaxhighlight lang=text>
class kotlin.Array
1..5: 1 2 3 4 5 : class kotlin.ranges.IntRange
1..7 step 2: 1 3 5 7 : class kotlin.ranges.IntProgression
5 downTo 1 step 1: 5 4 3 2 1 : class kotlin.ranges.IntProgression
8 downTo 2 step 2: 8 6 4 2 : class kotlin.ranges.IntProgression
A..Z: A B C D E F G H I J K L M N O P Q R S T U V W X Y Z : class kotlin.ranges.CharRange
[2, 3, 5]: 2 3 5 : class java.util.Arrays$ArrayList
[7, 11, 13]: 7 11 13 : class java.util.LinkedHashSet
</syntaxhighlight>
: 二重のforループで、外周はコレクションのコレクションで、内周は個々のコレクションの要素をイテレーションしています。
=== スコープ関数 ===
{{先頭に戻る|style=border-top:1px solid gray;}}
==== repeat関数 ====
Kotlinの標準ライブラリーにあるrepeat関数は、定数回の繰返しが必要な時に便利です<ref>[https://kotlinlang.org/api/latest/jvm/stdlib/kotlin/repeat.html repeat - Kotlin Programming Language]</ref>。
;[https://paiza.io/projects/LHnnORcAjUhvb_qW9ysIvw?language=kotlin repeat関数]:<syntaxhighlight lang="kotlin">
fun main() {
repeat(5) {
println("it = $it")
}
run {
repeat(3) { i ->
repeat(4) { j ->
println("(i, j) = ($i, $j)")
if (i == 1 && j == 2) {
return@run
}
}
}
}
}
</syntaxhighlight>
;実行結果:<syntaxhighlight lang=text>
it = 0
it = 1
it = 2
it = 3
it = 4
(i, j) = (0, 0)
(i, j) = (0, 1)
(i, j) = (0, 2)
(i, j) = (0, 3)
(i, j) = (1, 0)
(i, j) = (1, 1)
(i, j) = (1, 2)
</syntaxhighlight>
:<var>it</var>は、暗黙のループ変数です。
:多重ループでは、ループ変数の名前が固定では都合が悪いので、ブロックの先頭で<code>識別子名 -></code> とすることで明示的に名前をつけることができます。
:多重ループを run 関数で括ることで多重ループからの大域脱出を実現しています。
==== ブロックを受取る関数 ====
repeat関数もそうですが、Kotlinにはブロックを受取る関数(やメソッド)があります。
;[https://paiza.io/projects/AZT2juUGcUnyjqgDx4G85g?language=kotlin ブロックを受取る関数]:<syntaxhighlight lang="kotlin">
fun main(args: Array<String>) {
val ary = Array(5) { 2 * it + 1 }
ary.forEach{ println(it) }
println(ary.map{ it.toString() }.joinToString(" "))
println(ary.reduce{ sum, el -> sum + el })
}
</syntaxhighlight>
;実行結果:<syntaxhighlight lang=text>
1
3
5
7
9
1 3 5 7 9
25
</syntaxhighlight>
:ブロックで配列の初期化を行う場合、<var>it</var>は順位になります。
:コレクションのforEachメソッドもブロックを取ります。
:コレクションのreduceメソッドもブロックを取りますが、累算値と要素の2つを取るので、名付けが必要です。
このように、ブロックを取るメソッドを使うとコレクションに関する操作を簡素に書けます。
== Coroutine ==
{{先頭に戻る}}
Kotlinは、言語レベルでコルーチンをサポートし、機能の大部分をライブラリに委ねることで、この問題を柔軟に解決しています。
;Shell:<syntaxhighlight lang=console>
$ cat coroutine.kt
import kotlinx.coroutines.*
fun main() = runBlocking {
launch {
delay(500L)
for (ch in "World!\n") {
print(ch)
delay(100L)
}
}
print("Hello ")
}
$ locate /kotlinx-coroutines
/usr/local/share/kotlin/lib/kotlinx-coroutines-core-jvm.jar
$ kotlinc -cp /usr/local/share/kotlin/lib/kotlinx-coroutines-core-jvm.jar coroutine.kt -include-runtime -d coroutine.jar
$ java -cp ./coroutine.jar:/usr/local/share/kotlin/lib/kotlinx-coroutines-core-jvm.jar CoroutineKt
Hello World!
</syntaxhighlight>
== Kotlin Script ==
{{先頭に戻る}}
Kotlin Script では、.jar を生成せず、そのままコードが実行されます。
また、main 関数をエントリーポイントはぜず、スクリプトの書かれた順に評価します。
;Shell:<syntaxhighlight lang=console>
% cat hello.kts
println("Hello, World!")
% kotlinc -script hello.kts
Hello, World!
% _
</syntaxhighlight>
ビルドツールの Gradle では、従来は Groovy がビルド構成ファイルに使われていましたが、Kotlin Script への移行が進んでいます。
;ワンライナー:<syntaxhighlight lang=console>
% kotlin -e 'repeat(3){println("Hello!($it)")}'
Hello!(0)
Hello!(1)
Hello!(2)
% _
</syntaxhighlight>
== 改廃された技術 ==
Kotlinの改廃された技術や利用が推奨されない技術は、言語やエコシステムの進化、新しい要求、セキュリティ上の懸念などにより置き換えられます。以下に、代表的な技術を示します。
=== Kotlin Android Extensions ===
* '''サポート開始年:''' 2015年
* '''サポート終了年:''' 2021年(Kotlin 1.6.20で非推奨化)
; 廃止または衰退の理由 : View BindingやJetpack Composeなど、より安全で効率的なUI開発ツールが普及したため、利用が非推奨化されました。
; 代替技術 : View BindingやJetpack Composeを使用することが推奨されます。
=== Synthetic Properties for Views ===
* '''サポート開始年:''' 2015年
* '''サポート終了年:''' 2021年(非推奨化)
; 廃止または衰退の理由 : Null安全性やビルドプロセスの問題から、公式に非推奨となりました。
; 代替技術 : View Bindingを使用することで、同様の機能を安全に実現できます。
=== Kotlin Scripting旧形式 (kotlin.script.experimental) ===
* '''対象:''' kotlin.script.experimental APIの旧バージョン
; 利用推奨されない理由 : 新しいAPI(kotlin.script.experimental.jvmなど)がより柔軟で強力であるため、旧形式は非推奨となりました。
; 代替技術 : 最新のKotlin Scripting APIを使用してください。
=== Kotlin Coroutinesの旧形式 ===
* '''対象:''' kotlinx.coroutinesの旧バージョン(0.x系)
; 利用推奨されない理由 : 古いバージョンではAPIが安定しておらず、最新の1.x系バージョンでは大幅な改善と安定化が図られています。
; 推奨バージョン : 最新の1.x系またはそれ以降を使用してください。
=== Experimental API ===
* '''対象:''' <code>@Experimental</code>や<code>@UseExperimental</code>アノテーションでラベル付けされたAPI
; 利用推奨されない理由 : 将来のリリースで仕様変更や削除が行われる可能性があるため、慎重に利用する必要があります。
; 代替技術 : 安定版APIがリリースされた場合、それに切り替えることが推奨されます。
=== Kotlin/NativeのC Interop旧形式 ===
* '''対象:''' Kotlin/NativeにおけるC Interopの旧形式
; 利用推奨されない理由 : 最新のKotlin/NativeバージョンでInteropが改善され、旧形式は非推奨となりました。
; 代替技術 : 最新のC Interop形式や公式ドキュメントに基づいた方法を使用してください。
=== Kotlin Multiplatform Pluginの旧形式 ===
* '''対象:''' Kotlin Multiplatform Pluginの旧バージョン
; 利用推奨されない理由 : 最新バージョンではモジュール分割や依存関係管理の改善が行われ、旧バージョンの利用は推奨されなくなりました。
; 代替技術 : 最新のKotlin Multiplatform Pluginを利用してください。
=== Java 6および7向けのサポート ===
* '''サポート開始年:''' 2011年(初期Kotlin)
* '''サポート終了年:''' 2020年(Kotlin 1.6以降で非推奨化)
; 廃止または衰退の理由 : 古いJavaバージョンの市場シェアが低下したため、KotlinチームはJava 8以降に焦点を当てています。
; 代替技術 : Java 8以降を対象にKotlinを使用することが推奨されます。
== 脚註 ==
<references />
== 外部リンク ==
{{Wikipedia}}
* [https://kotlinlang.org/ Kotlin Programming Language] - 公式サイト
** [https://kotlinlang.org/spec/introduction.html Kotlin language specification]
** [https://play.kotlinlang.org/ Kotlin Playground: Edit, Run, Share Kotlin Code Online]
[[Category:Kotlin|*]]
[[Category:プログラミング言語]]
{{NDC|007.64}}
bhlq6rjfj7pmv93nivf7v24lqfufeni
Swift
0
27789
264428
263478
2024-11-27T23:08:44Z
Ef3
694
校閲と推敲と加筆
264428
wikitext
text/x-wiki
{{Pathnav|メインページ|工学|情報技術|プログラミング}}
Swiftは、Appleが開発したプログラミング言語で、iOS、macOS、watchOS、tvOSアプリケーションの開発に主に使用されます。2014年に発表され、モダンな構文、安全性、パフォーマンスを重視して設計されています。オープンソースで、初心者にも学びやすく、Objective-Cの代替として広く採用されています。
== 目次 ==
* Swift/
* [[Swift/文法]] - 主に制御構造、関数定義について
* [[Swift/オブジェクト指向]] - 主に列挙体、クラス、構造体について
* [[Swift/非同期処理]] - 主にGrand Central Dispatchによる非同期処理について
== 環境準備 ==
{{先頭に戻る}}
=== オンラインコンパイル実行 ===
ローカルにコンパイル実行環境を作るのが困難、すぐにコンパイルと実行を試してみたい。そんな場合には、オンラインコンパイル実行環境を使うことも検討に値します。
; [https://www.apple.com/jp/swift/playgrounds/ Swift Playgrounds]
: 公式のオンラインコンパイル実行環境です。
; [https://paiza.io/ja/projects/new?language=swift paiza.io]
: 複数のプログラミン言語に対応しており、Swiftにも対応しています。
=== ビルド済みバイナリーの導入 ===
公式サイトの、[https://www.swift.org/install/ Install Swift]からインストーラーを入手するのが基本です。
==== iPadOS ====
Appleから、「[[W:Swift Playgrounds|Swift Playgrounds]]」が学生を対象に公開されています。
Swift Playgroundsは開発環境であるとともに、Swiftの基本を習得するためのチュートリアルを含んでいます。
==== macOS ====
Swiftを開発したAppleのプラットフォームです。
Xcodeに統合されています。
複数のツールチェインがSwiftをサポートしているので、目的に応じて切り替えて使用します。
==== Windows ====
Windows10以降をサポートしています(Windows8.1以前はサポート対象外)。[https://www.swift.org/install/windows/ swift公式サイト]では[[Windowsパッケージマネージャー|winget]]などパッケージマネージャを用いてインストールすることを推奨している。
==== GNU/Linuxのディストリビューション ====
公式サイトの、[https://www.swift.org/install/ Install Swift]からインストールします。
公式サイトが対応している Linux platform:
* Amazon Linux
* Debian
* Fedora
* Red Hat
* Ubuntu
=== ソースコードからのビルド ===
最新のあるいはリリース前のバージョンのSwiftをインストールしたい場合は、ソースコードを入手しビルドします。
# ソースコードの入手
#: https://github.com/apple/swift から clone します。
# ビルド環境の構築
#: ビルド環境の構築のために build-toolchain スクリプトが用意されています。--help で全てのオプションの説明を見ることが出来ます。
# コンフィギュレーション
# ビルド
# テスト
# インストール
=== バージョン確認コマンド ===
インストールに成功したと思ったら、バージョン確認など簡単なコマンドを実行してみましょう。
<pre>
swift --version
</pre>
で確認できます。
実行結果の一例(WindowsのPowershellから実行)
<pre>
PS C:\Users\ユーザー名> swift -version
compnerd.org Swift version 5.8.1 (swift-5.8.1-RELEASE)
Target: x86_64-unknown-windows-msvc
</pre>
== 実行方法 ==
{{先頭に戻る}}
=== Hello World ===
コードは
;[https://paiza.io/projects/jQf1nn3WevpSPxGi3wtxww?language=swift hello.swift]:<syntaxhighlight lang=swift copy>
print( "Hello, World!" )
</syntaxhighlight>
の1行です。これをテキストエディターでコードを書き、ファイル名 <code>hello.swift</code> 保存します。swiftのソースファイルの拡張子には <code>.swift</code> が使われます。
=== コンパイルする場合 ===
実行方法は、まずコンパイルのために
:<syntaxhighlight lang=bash>
$ swiftc ファイル名.swift
</syntaxhighlight>
を実行します。
すると、標準設定ならカレントディレクトリなどシステム標準の場所に ''ファイル名'' の実行ファイルが出来るので、あとはそれを通常の実行ファイルと同じ方法で実行します。
MS-DOSやWindowsでは、PATHが通っていなくてもカレントフォルダのファイルを名前を打つだけで実行できますが、他のプラットフォームの場合は
:<syntaxhighlight lang=bash>
$ ./ファイル名
</syntaxhighlight>
のようなに <code>./</code> を前置してカレントディレクトのファイルであることを明示して実行します。
=== インタプリタの場合 ===
コマンド
:<syntaxhighlight lang=bash>
$ swift ファイル名.swift
</syntaxhighlight>
で、コンパイルと実行を行えます。
かつては「swift run ファイル名.swift」というコマンドでしたが、いまでは廃止され、上のようなコマンドになっています。
=== 対話モードの場合 ===
:<syntaxhighlight lang=bash>
$ swift
</syntaxhighlight>
で対話モードになります。
終了したい場合、Ctrl + D ボタンで終了します。
== 定数と変数 ==
{{先頭に戻る}}
=== 変数 ===
変数は、値と結びついた識別子で初期化や代入によって結びつく値を変えることが出来ます。
変数は、キーワード <code>var</code> を使って宣言します。
;変数の宣言:<syntaxhighlight lang=swift copy>
var 変数名: 型 = 式
</syntaxhighlight>
=== 定数 ===
定数は、一度しか値を初期化あるいは代入できない変数です。
定数は、キーワード <code>let</code> を使って宣言します。
;定数の宣言:<syntaxhighlight lang=swift copy>
let 定数名: 型 = 式
</syntaxhighlight>
;[https://paiza.io/projects/sImpqWxj8ncj3fETs6oc5w?language=swift 変数の値を参照]:<syntaxhighlight lang=swift copy>
var a: Int = 47
print( a )
</syntaxhighlight>
;実行結果:<syntaxhighlight lang="text">
47
</syntaxhighlight>
型 <code>Int</code> は冒頭が大文字でなければなりません。Swiftでは大文字と小文字は区別されます。
=== 識別子 ===
定数や変数の名前のことを識別子( ''identifier'' )と言います(他にも関数・メソッド・クラス・クラスのメンバーなどの名前も識別子で、同じ名前空間の中では識別子は重複できません)。
* 識別子には以下の文字セットが使えます。
** 英数字(a-z, A-Z, 0-9)
** アンダースコア(_)
** $ 記号
** Unicode文字
* 識別子の先頭に数字(0-9)を使うことは出来ません。
* <code>var</code> のようなSwiftのキーワードは識別子に使用できません。
* <code>print</code> のような標準ライブラリー関数は識別子に使用すべきではありません。
この規則に違反したコードはコンパイルエラーになります。
;[https://paiza.io/projects/MEqayjud3SgpX4oyMzN8hQ?language=swift 標準ライブラリー関数の名前を定数の名前に使った]:<syntaxhighlight lang=swift copy>
let print = 0
print(print)
</syntaxhighlight>
;コンパイル結果:<syntaxhighlight lang="text">
main.swift:2:1: error: cannot call value of non-function type 'Int'
print(print)
</syntaxhighlight>
ただし、識別子を `(バッククオーテーション)で括るとキーワードも識別子に使うことができます。
;[https://paiza.io/projects/cnnl6j6eVBxpSEY2VHU2Qw?language=swift `(バッククオーテーション)で括りキーワードを識別子に使う]:<syntaxhighlight lang=swift copy>
let `var` = 42
print(`var`)
</syntaxhighlight>
;実行結果:<syntaxhighlight lang="text">
42
</syntaxhighlight>
=== 初期化と参照 ===
;[https://paiza.io/projects/twUAZ8qPyXnS7Tf5Bf4IOQ?language=swift 定数と変数は宣言時の初期化を省略できます]:<syntaxhighlight lang=swift copy>
var a: Int
a = 31
print( a )
let b: Int
b = 42
print( b )
</syntaxhighlight>
;実行結果:<syntaxhighlight lang="text">
31
42
</syntaxhighlight>
定数と変数は宣言時に初期化を省略できますが、初期化を省略した変数の値を参照するとコンパイル時にエラーになります。
;[https://paiza.io/projects/XztA-lHHfU7rMUOG6ixdOA?language=swift 宣言時に初期化を省略した変数の値を参照(コンパイル時にエラーになります)]:<syntaxhighlight lang=swift copy>
var a: Int
print( a )
</syntaxhighlight>
;コンパイル結果:<syntaxhighlight lang="text">
main.swift:2:8: error: variable 'a' used before being initialized
print( a )
^
</syntaxhighlight>
=== 型推論 ===
初期値を伴って変数か定数が宣言された場合、型アノテーション(''type annotation''; <code>: 型名</code>の部分)を省略することができます。
これを[[型推論]]( ''type inference'' )と呼びます。
;[https://paiza.io/projects/Hj4gcLxMdsNMQPR2gGlmlQ?language=swift 型推論]:<syntaxhighlight lang=swift copy>
let a = 31
print( a, String(describing: type(of: a)) )
let b = "abc"
print( b, String(describing: type(of: b)) )
let c = 3.1415926536
print( c, String(describing: type(of: c)) )
</syntaxhighlight>
;実行結果:<syntaxhighlight lang="text">
31 Int
abc String
3.1415926536 Double
</syntaxhighlight>
: <code>String(describing: type(of: 式)</code>は、式の型を文字列で返します。
一般に定数と変数は宣言に初期化することは良い習慣だと考えられています。このため、多くのシチュエーションで型推定が可能となり型アノテーションが省略できます。
型アノテーションを省略すると、『コードの意図が読みにくくなる』とコードレビューで指摘されることがありますが、全部の宣言に型アノテーションを追加すると、『型アノテーションが冗長』とコードレビュー指摘されます。「どのような場合に、型アノテーションを書くべきか」一般則はありませんが <code>let str = "abc"</code> に型アノテーションを書くべきだと主張する人はまれなので、定数と変数の名前えらびは重要で、単に <var>a</var> や <var>b</var> の様な「色のない」 名前は選ぶべきではありません。
=== 暗黙の型変換は行われない ===
なお、いかなる数値型の変数についても'''暗黙の型変換'''( ''implicit conversion'' )が行われることはなく、型の違う数値同士の演算、右辺と左辺で型の異なる代入は全てコンパイルエラーとなります。
;符号の有無の違う定数による初期化:<syntaxhighlight lang=swift copy>
let signed: Int = 1
let unsigned: UInt = signed
</syntaxhighlight>
;コンパイル結果:<syntaxhighlight lang="text">
main.swift:2:22: error: cannot convert value of type 'Int' to specified type 'UInt'
let unsigned: UInt = signed
^~~~~~
UInt( )
</syntaxhighlight>
: 数値リテラル<code>1</code>は、UIntの範囲内ですが swift は型の不整合を理由にエラーにします。
;型の異なる定数と数値リテラルからなる式:<syntaxhighlight lang=swift copy>
let signed: Int = 1
let number = signed + 1.0
</syntaxhighlight>
;コンパイル結果:<syntaxhighlight lang="text">
main.swift:2:8: error: binary operator '+' cannot be applied to operands of type 'Int' and 'Double'
signed + 1.0
~~~~~~ ^ ~~~
main.swift:2:8: note: overloads for '+' exist with these partially matching parameter lists: (Double, Double), (Int, Int)
signed + 1.0
^
</syntaxhighlight>
;型の異なる数値リテラル同士からなる式:<syntaxhighlight lang=swift copy>
let number = 1 + 1.0
print( number, String(describing: type(of: number)) )
</syntaxhighlight>
;実行結果:<syntaxhighlight lang="text">
2.0 Double
</syntaxhighlight>
: これは暗黙の型変換に似ていますが、数値リテラルのみからなる式(=コンパイル時定数式)で、コンパイル時に静的に評価されます。
;Double.piは数値リテラル扱い?:<syntaxhighlight lang=swift copy>
let rad_to_deg_factor = Double.pi / 180
print( rad_to_deg_factor, String(describing: type(of: rad_to_deg_factor)) )
</syntaxhighlight>
;実行結果:<syntaxhighlight lang="text">
0.017453292519943295 Double
</syntaxhighlight>
: なぜ?
== 基本データ型 ==
Swiftには、整数、浮動小数点数、真理値型、文字列型などの基本的なデータ型があります。これらのデータ型は、Swiftのプログラミングにおいて非常に重要な役割を果たします。本稿では、Swiftの基本データ型について、その特徴や使い方について解説していきます。
=== 整数 ===
以下はSwiftにおける整数とそのバリエーションとリテラルに関する表です。
:{| class="wikitable"
!タイプ
!範囲
!大きさ
!リテラルの例
|-
|Int8
(符号付き)
| -128 〜 127
|8ビット
|<code>let myInt8: Int8 = -12</code>
|-
|UInt8
(符号なし)
|0 〜 255
|8ビット
|<code>let myUInt8: UInt8 = 42</code>
|-
|Int16
(符号付き)
| -32,768 〜 32,767
|16ビット
|<code>let myInt16: Int16 = -1234</code>
|-
|UInt16
(符号なし)
|0 〜 65,535
|16ビット
|<code>let myUInt16: UInt16 = 5678</code>
|-
|Int32
(符号付き)
| -2,147,483,648 〜 2,147,483,647
|32ビット
|<code>let myInt32: Int32 = -123456</code>
|-
|UInt32
(符号なし)
|0 〜 4,294,967,295
|32ビット
|<code>let myUInt32: UInt32 = 123456</code>
|-
|Int64
(符号付き)
| -9,223,372,036,854,775,808 〜 9,223,372,036,854,775,807
|64ビット
|<code>let myInt64: Int64 = -1234567890</code>
|-
|UInt64
(符号なし)
|0 〜 18,446,744,073,709,551,615
|64ビット
|<code>let myUInt64: UInt64 = 1234567890</code>
|-
|Int
(符号付き)
| -2,147,483,648 〜 2,147,483,647
(32ビット
または
64ビット)
|32ビットまたは64ビット
(環境による)
|<code>let myInt: Int = -1234567890</code>
|-
|UInt
(符号なし)
|0 〜 4,294,967,295
(32ビット
または
64ビット)
|32ビットまたは64ビット
(環境による)
|<code>let myUInt: UInt = 1234567890</code>
|}
Swiftには、整数のリテラルに使用できる多くのオプションがあります。以下に、Swiftで使用できる整数のリテラル構文の例を示します。
:<syntaxhighlight lang=swift copy>
let decimalInt = 17 // 10進数
let binaryInt = 0b10001 // 2進数
let octalInt = 0o21 // 8進数
let hexInt = 0x11 // 16進数
</syntaxhighlight>
これらのリテラルの前には、マイナス記号を使用して、負の整数を表すことができます。また、アンダースコア(_)を使用して、リテラルの読みやすさを向上させることができます。
=== 浮動小数点数 ===
以下はSwiftの浮動小数点数とそのバリエーション、およびリテラルの表です。
:{| class="wikitable"
!データ型
!ビット
!最小値
!最大値
!リテラル
|-
|<code>Float</code>
|32
|1.175494e-38
|3.402823e+38
|<code>3.14</code>, <code>0.1e2</code>, <code>1.25E-2</code>
|-
|<code>Double</code>
|64
|2.2250738585072014e-308
|1.7976931348623157e+308
|<code>3.14</code>, <code>0.1e2</code>, <code>1.25E-2</code>
|-
|<code>Float80</code>
|80
|3.36210314311209350626e-4932
|1.18973149535723176505e+4932
|<code>3.14</code>, <code>0.1e2</code>, <code>1.25E-2</code>
|}
以下はSwiftのコード例です。
:<syntaxhighlight lang=swift copy>
let a: Float = 3.14
let b: Double = 0.1e2
let c: Float80 = 1.25E-2
print(a) // 3.14
print(b) // 10.0
print(c) // 0.0125
</syntaxhighlight>
=== 真理値 ===
Swiftでは、真を表すのにtrue、偽を表すのにfalseを使用します。これらは、Boolというデータ型の値です。例えば、以下のように使用します。
:<syntaxhighlight lang=swift copy>
let happy: Bool = true
let hungry = false
print(happy) // true
print(hungry) // false
</syntaxhighlight>
=== 文字と文字列 ===
以下はSwiftで使用可能な文字型、バリエーション、およびリテラルの表です:
:{| class="wikitable"
!型
!バリエーション
!リテラルの例
|-
|Character
|Unicodeスカラー値
|<code>"A"</code>
|-
|String
|Unicodeスカラー値または文字列
|<code>"Hello, world!"</code>
|}
こちらはSwiftでの文字型の実際のコード例です:
:<syntaxhighlight lang=swift copy>
let letterA: Character = "A"
let message: String = "Hello, world!"
</syntaxhighlight>
==== 文字列と文字列の連結 ====
以下はSwiftの文字列と文字列の連結の方法です。まず、+演算子を使用して文字列を連結することができます。
:<syntaxhighlight lang=swift copy>
let str1 = "Hello"
let str2 = "world"
let str3 = str1 + " " + str2
print(str3) // "Hello world"
</syntaxhighlight>
また、+=演算子を使用して文字列を更新することもできます。
:<syntaxhighlight lang=swift copy>
var str4 = "Hello"
str4 += " world"
print(str4) // "Hello world"
var str4 = "Hello"
str4 += " world"
print(str4) // "Hello world"
</syntaxhighlight>
==== 文字列に値を埋め込む方法 ====
以下は、Swiftで文字列に値を埋め込む方法の例です。\(value)のように、文字列内に変数を\( )で囲んで埋め込みます。
:<syntaxhighlight lang=swift copy>
var name = "John"
var age = 25
var message = "\(name) is \(age) years old."
print(message)
</syntaxhighlight>
;実行結果:<syntaxhighlight lang=text>
John is 25 years old.
</syntaxhighlight>
また、String(format: "%@", value)のように、Stringクラスのformatメソッドを使用することもできます。以下は例です。
:<syntaxhighlight lang=swift copy>
var name = "John"
var age = 25
var message = String(format: "%@ is %d years old.", name, age)
print(message)
</syntaxhighlight>
;実行結果:<syntaxhighlight lang=text>
John is 25 years old.
</syntaxhighlight>
どちらの方法でも同じ結果が得られます。
==== サロゲートペア ====
このSwiftのコードは、文字列をUTF-8形式およびUTF-16形式でそれぞれカウントする方法と、文字列長を計算する方法を示しています。
:<syntaxhighlight lang=swift copy>
import Foundation // Foundationフレームワークをインポート
let str = "aαあ𪚲" // 文字列を定義(ASCII, ギリシャ文字, ひらがな, 片仮名, および漢字等を含む)
print(str.utf8.count) // UTF-8形式での文字列の長さをカウント(バイト単位):10
print(str.utf16.count) // UTF-16形式での文字列の長さをカウント(16ビット単位):5
print((str as NSString).length) // UTF-16形式での文字列の長さを計算:5
print(str._bridgeToObjectiveC().length) // 上と同様にUTF-16形式での文字列の長さを計算:5
let char = str.character(at:3) // 4番目の文字のUnicode scalarを見つける
print(type(of: char)) // UInt16(16ビット符号なし整数型)
print(String(format:"%x", char)) // d869(4番目の文字のUnicode scalarを16進数表記で出力)
</syntaxhighlight>
このコードでは、<code>Foundation</code>フレームワークがインポートされているため、<code>NSString</code>のメソッドである<code>length</code>メソッドにアクセスできます。
また、<code>character(at:)</code>は<code>NSString</code>にも実装されていますが、<code>Swift</code>の組み込みの<code>String</code>型でも提供されています。
=== 配列 ===
Swiftにおける配列は、複数の値を一箇所に保持することができるデータ構造です。Swiftでは、配列を宣言するために2つの方法があります。以下の表では、それぞれの方法について解説します。
:{| class="wikitable"
!配列の宣言方法
!説明
|-
|<code>Array<要素の型>()</code>
|空の配列を定義する方法です。
|-
|<code>[要素の型]()</code>
|空の配列を定義する省略形です。
|}
以下は、Swiftにおける配列のバリエーションとリテラルのコード例です。
空の配列を定義する場合
:<syntaxhighlight lang=swift copy>
var emptyArray: Array<Int> = Array<Int>()
var emptyArray2: [Int] = [Int]()
var emptyArray3: [Int] = []
</syntaxhighlight>
ここで、<code>Array<Int>()</code>と<code>[Int]()</code>は、空の配列を宣言するための方法で、それぞれ<code>emptyArray</code>と<code>emptyArray2</code>に割り当てられます。同様に、<code>[]</code>は空の配列を宣言する省略形で、<code>emptyArray3</code>に割り当てられます。
配列のリテラルを使用する場合
:<syntaxhighlight lang=swift copy>
var arrayWithLiteral1: [Int] = [1, 2, 3]
var arrayWithLiteral2 = [4, 5, 6]
</syntaxhighlight>
ここで、<code>[1, 2, 3]</code>と<code>[4, 5, 6]</code>は、配列のリテラルと呼ばれるもので、それぞれ<code>arrayWithLiteral1</code>と<code>arrayWithLiteral2</code>に割り当てられます。
配列にアクセスする方法
:<syntaxhighlight lang=swift copy>
var fruits = ["apple", "banana", "orange"]
print(fruits[0]) // "apple"
print(fruits[1]) // "banana"
print(fruits[2]) // "orange"
</syntaxhighlight>
配列には、各要素に対応するインデックスがあります。上の例では、<code>fruits</code>の最初の要素にアクセスするには、<code>fruits[0]</code>と書きます。インデックスは0から始まり、配列の最後の要素にアクセスするインデックスは<code>(配列の要素数 - 1)</code>となります。
==== 配列の結合 ====
===== <code>+</code>演算子を使った配列の結合 =====
<code>+</code>演算子を使うと、2つの配列を結合することができます。例えば、以下のように書くことができます。
:<syntaxhighlight lang=swift copy>
let array1 = [1, 2, 3]
let array2 = [4, 5, 6]
let joinedArray = array1 + array2
print(joinedArray) // => [1, 2, 3, 4, 5, 6]</syntaxhighlight>
===== <code>+=</code>演算子を使った配列の結合 =====
<code>+=</code>演算子を使うと、配列自身を変更して結合することができます。例えば、以下のように書くことができます。
:<syntaxhighlight lang=swift copy>
var array3 = [7, 8, 9]
array3 += [10, 11, 12]
print(array3) // => [7, 8, 9, 10, 11, 12]
</syntaxhighlight>
==== 配列の代入 ====
Swiftの配列は値型であるため、代入する場合にはコピーが作成されます。つまり、元の配列に影響を与えずに別の配列に代入することができます。例えば、以下のように書くことができます。
:<syntaxhighlight lang=swift copy>
var array4 = [13, 14, 15]
var array5 = array4
array5.append(16)
print(array4) // => [13, 14, 15]
print(array5) // => [13, 14, 15, 16]
</syntaxhighlight>
ただし、配列内の要素が参照型である場合は、代入先の配列でも同じオブジェクトが参照されるため、元の配列の要素に変更を加えた場合には代入先の配列にも同じ変更が反映されます。
==== 基本操作 ====
:<syntaxhighlight lang=swift copy>
var arr = [0, 1, 2, 3, 4, 5, 6]
arr.append(7)
print(arr) // [0, 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7]
arr += [8, 9, 10]
print(arr) // [0, 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10]
arr.insert(11, at:2)
print(arr) // [0, 1, 11, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10]
arr[2] = 12
print(arr) // [0, 1, 12, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10]
arr[2...2] = [11, 12, 13]
print(arr) // [0, 1, 11, 12, 13, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10]
arr.remove(at:0)
print(arr) // [1, 11, 12, 13, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10]
arr.removeLast()
print(arr) // [1, 11, 12, 13, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9]
arr[5...] = [99]
print(arr) // [1, 11, 12, 13, 2, 99]
let index13 = arr.index(of: 13)
print(index13) // Optional(3)
let squared = arr.map{ i in i * i }
print(squared) // [1, 121, 144, 169, 4, 9801]
let filtered = arr.filter{ n in n > 3 }
print(filtered) // [11, 12, 13, 99]
let sorted = arr.sorted{ (a, b) in a > b }
print(sorted) // [99, 13, 12, 11, 2, 1]
let sum = arr.reduce(0){ (s, n) in s + n }
print(sum) // 138
arr.forEach{ n in print(n) } // 1↵121↵144↵169↵4↵9801
let arr1 = [[1, 2, 3], [4, 5, 6], [7, 8, 9]]
let arr1_1 = arr1.map{ a -> [Int] in a.reversed() }
print(arr1_1) // [[3, 2, 1], [6, 5, 4], [9, 8, 7]]
let arr1_2 = arr1.flatMap{ a -> [Int] in a.reversed() }
print(arr1_2) // [3, 2, 1, 6, 5, 4, 9, 8, 7]
let arr2 = [1, 2, nil, 4]
let arr2_1 = arr2.map{ n -> Int? in n }
print(arr2_1) // [Optional(1), Optional(2), nil, Optional(4)]
let arr2_2 = arr2.flatMap{ n -> Int? in n }
print(arr2_2) // [1, 2, 4]
</syntaxhighlight>
このコードは、Swift言語で配列に対して行うことができるいくつかの操作を示しています。
最初に、配列の要素を追加する方法が示されています。<code>append()</code>メソッドは、配列の末尾に要素を追加します。<code>+=</code>演算子は、別の配列を末尾に追加することもできます。
次に、配列内の要素を挿入したり、置き換えたり、削除したりする方法が示されています。<code>insert()</code>メソッドは、特定の位置に要素を挿入します。要素を置き換えるには、要素のインデックスを指定して値を割り当てます。<code>remove()</code>メソッドは、指定したインデックスの要素を削除します。<code>removeLast()</code>メソッドは、配列の末尾の要素を削除します。また、配列スライスを使用して、複数の要素を一度に置き換えることもできます。
次に、配列を操作して新しい配列を作成する方法が示されています。<code>map()</code>メソッドは、配列内のすべての要素に対して関数を適用し、新しい配列を返します。<code>filter()</code>メソッドは、配列内の要素をフィルタリングし、指定した条件を満たす要素だけを含む新しい配列を返します。<code>sorted()</code>メソッドは、配列内の要素をソートし、新しい配列を返します。<code>reduce()</code>メソッドは、配列内の要素を畳み込んで単一の値を返します。<code>forEach()</code>メソッドは、配列内のすべての要素に対して、指定されたクロージャを実行します。
最後に、多次元配列に対して操作を行う方法が示されています。<code>map()</code>メソッドは、多次元配列内のすべての配列に対して、それぞれの要素の順序を反転した新しい配列を返します。<code>flatMap()</code>メソッドは、多次元配列内のすべての要素を1つの配列に平坦化します。また、オプショナル型の値を含む配列に対しても動作します。<code>map()</code>メソッドはオプショナル型の値を含む配列に対しては動作しますが、<code>flatMap()</code>メソッドは<code>nil</code>値を削除して新しい配列を返します。
=== 集合 ===
Swiftの集合(Set)は、ユニークで順序がない要素のコレクションです。それぞれの要素は同じ型でなければなりません。重複した要素は1つの要素として扱われます。
以下は、Swiftの集合に関する基本的な機能の例です。
:<syntaxhighlight lang=swift copy>
// 空の集合を作成する
var setA = Set<Int>()
print(setA) // []
// 初期値を指定して集合を作成する
var setB: Set<Int> = [1, 2, 3]
print(setB) // [1, 2, 3]
// 集合に要素を追加する
setA.insert(1)
setA.insert(2)
setA.insert(3)
setA.insert(4)
print(setA) // [1, 2, 3, 4]
// 集合から要素を削除する
setA.remove(3)
print(setA) // [1, 2, 4]
// 集合の要素数を取得する
print(setA.count) // 3
// 集合に要素が含まれているかを調べる
print(setA.contains(1)) // true
print(setA.contains(3)) // false
// 集合を空にする
setA.removeAll()
print(setA) // []
// 集合の演算
let set1: Set<Int> = [1, 2, 3, 4]
let set2: Set<Int> = [3, 4, 5, 6]
// 和集合を取得する
let unionSet = set1.union(set2)
print(unionSet) // [1, 2, 3, 4, 5, 6]
// 積集合を取得する
let intersectionSet = set1.intersection(set2)
print(intersectionSet) // [3, 4]
// 差集合を取得する
let subtractingSet = set1.subtracting(set2)
print(subtractingSet) // [1, 2]
// 対称差集合を取得する
let symmetricDifferenceSet = set1.symmetricDifference(set2)
print(symmetricDifferenceSet) // [1, 2, 5, 6]
</syntaxhighlight>
Swiftの集合(Set)には、forループや高階関数を使用して要素を処理することができます。
まず、forループを使用する場合は、次のように記述します。
:<syntaxhighlight lang=swift copy>
let set: Set = ["apple", "orange", "banana"]
for element in set {
print(element)
}
// apple
// orange
// banana
</syntaxhighlight>
この例では、<code>Set</code>の要素を<code>for-in</code>ループで1つずつ取り出し、それぞれの要素を処理しています。
次に、高階関数を使用する場合は、<code>map()</code>、<code>filter()</code>、<code>reduce()</code>のような関数が使用できます。
例えば、<code>map()</code>関数を使用して、<code>Set</code>の各要素に対して操作を行い、新しい<code>Set</code>を作成することができます。
:<syntaxhighlight lang=swift copy>
let set: Set = [1, 2, 3, 4, 5]
let mappedSet = set.map { $0 * 2 }
print(mappedSet) // [2, 4, 10, 8, 6]
</syntaxhighlight>
この例では、<code>Set</code>の各要素を2倍して、新しい<code>Set</code>を作成しています。<code>map()</code>関数は、クロージャーを引数として受け取り、そのクロージャーで<code>Set</code>の各要素を操作しています。
また、<code>filter()</code>関数を使用して、<code>Set</code>の要素をフィルタリングすることができます。
:<syntaxhighlight lang=swift copy>
let set: Set = [1, 2, 3, 4, 5]
let filteredSet = set.filter { $0 % 2 == 0 }
print(filteredSet) // [4, 2]
</syntaxhighlight>
この例では、<code>Set</code>の要素を2で割った余りが0のものだけを取り出し、新しい<code>Set</code>を作成しています。
最後に、<code>reduce()</code>関数を使用して、<code>Set</code>の要素を畳み込むことができます。
:<syntaxhighlight lang=swift copy>
let set: Set = [1, 2, 3, 4, 5]
let sum = set.reduce(0) { $0 + $1 }
print(sum) // 15
</syntaxhighlight>
この例では、<code>Set</code>の各要素を合計しています。<code>reduce()</code>関数は、初期値とクロージャーを引数として受け取り、<code>Set</code>の各要素を畳み込んで、1つの値を生成しています。
=== 辞書 ===
Swiftの辞書(Dictionary)は、キーと値のペアを保存するためのコレクションです。キーと値はそれぞれ異なるデータ型である必要があります。辞書は、値を取得するためのキーを使用してアクセスできます。
辞書は、以下のように宣言されます。
:<syntaxhighlight lang=swift copy>
var dict: [KeyType: ValueType] = [KeyType: ValueType]()
</syntaxhighlight>
ここで、KeyTypeはキーのデータ型を表し、ValueTypeは値のデータ型を表します。例えば、文字列をキーに持ち整数を値に持つ辞書は以下のように宣言できます。
:<syntaxhighlight lang=swift copy>
var numberDict: [String: Int] = ["one": 1, "two": 2, "three": 3]
</syntaxhighlight>
辞書の要素にアクセスするには、キーを使用します。
:<syntaxhighlight lang=swift copy>
print(numberDict["one"]) // Optional(1)
print(numberDict["four"]) // nil
</syntaxhighlight>
存在しないキーにアクセスすると、nilが返されます。辞書にキーが存在するかどうかを確認するには、<code>contains</code>メソッドを使用します。
:<syntaxhighlight lang=swift copy>
if numberDict.contains(where: { $0.key == "one" }) {
print("Key exists")
} else {
print("Key does not exist")
}
</syntaxhighlight>
辞書に要素を追加するには、新しいキーと値のペアを辞書に追加します。
:<syntaxhighlight lang=swift copy>
numberDict["four"] = 4
</syntaxhighlight>
辞書から要素を削除するには、キーを指定して<code>removeValue(forKey:)</code>メソッドを使用します。
:<syntaxhighlight lang=swift copy>
numberDict.removeValue(forKey: "four")
</syntaxhighlight>
辞書の要素を変更するには、新しい値をキーに割り当てます。
:<syntaxhighlight lang=swift copy>
numberDict["one"] = 10
</syntaxhighlight>
辞書のキーと値を反復処理するには、<code>for-in</code>ループを使用します。
:<syntaxhighlight lang=swift copy>
for (key, value) in numberDict {
print("\(key): \(value)")
}
</syntaxhighlight>
辞書のキーを反復処理するには、<code>keys</code>プロパティを使用します。
:<syntaxhighlight lang=swift copy>
for key in numberDict.keys {
print(key)
}
</syntaxhighlight>
辞書の値を反復処理するには、<code>values</code>プロパティを使用します。
:<syntaxhighlight lang=swift copy>
for value in numberDict.values {
print(value)
}
</syntaxhighlight>
辞書にも、配列や集合と同様に <code>map</code>、<code>filter</code>、<code>reduce</code> などの高階関数が使用できます。
<code>map</code> は辞書の各要素に対して、変換処理を適用し、新しい辞書を作成するメソッドです。変換処理は、クロージャーの引数として、各要素の <code>(key, value)</code> のタプルを取ります。以下は、辞書 <code>dict</code> の各要素の値を2倍にした新しい辞書を作成する例です。
:<syntaxhighlight lang=swift copy>
let dict = ["a": 1, "b": 2, "c": 3]
let doubled = dict.map { (key, value) in (key, value * 2) }
print(doubled) // ["a": 2, "b": 4, "c": 6]
</syntaxhighlight>
<code>filter</code> は辞書の各要素に対して、指定した条件を満たす要素だけを抽出して、新しい辞書を作成するメソッドです。条件は、クロージャーの引数として、各要素の <code>(key, value)</code> のタプルを取り、条件式を返します。以下は、値が奇数の要素だけを抽出した新しい辞書を作成する例です。
:<syntaxhighlight lang=swift copy>
let dict = ["a": 1, "b": 2, "c": 3]
let oddValues = dict.filter { (key, value) in value % 2 != 0 }
print(oddValues) // ["a": 1, "c": 3]
</syntaxhighlight>
<code>reduce</code> は辞書の各要素を畳み込んで、1つの値を生成するメソッドです。初期値と、畳み込み処理をクロージャーの引数として渡します。畳み込み処理は、初期値と各要素の <code>(key, value)</code> のタプルを引数として受け取り、新しい値を返します。以下は、辞書 <code>dict</code> の全要素の値の和を求める例です。
:<syntaxhighlight lang=swift copy>
let dict = ["a": 1, "b": 2, "c": 3]
let sum = dict.reduce(0) { (result, keyValue) in
let (_, value) = keyValue
return result + value
}
print(sum) // 6
</syntaxhighlight>
=== タプル ===
Swiftのタプルは、複数の異なるデータ型を一つのグループにまとめることができます。タプルは、複数の値を返すときにも便利です。
以下は、タプルの例です。
:<syntaxhighlight lang=swift copy>
let myTuple = ("apple", 3.14, true)
print(myTuple) // 出力: ("apple", 3.14, true)
</syntaxhighlight>
タプルには、複数の要素をカンマ区切りで指定し、丸括弧で囲みます。
タプルの各要素は、インデックスを指定してアクセスすることができます。
:<syntaxhighlight lang=swift copy>
let myTuple = ("apple", 3.14, true)
print(myTuple.0) // 出力: apple
print(myTuple.1) // 出力: 3.14
print(myTuple.2) // 出力: true
</syntaxhighlight>
また、タプルの各要素に名前を付けることもできます。
:<syntaxhighlight lang=swift copy>
let myTuple = (name: "apple", price: 100, isOnSale: true)
print(myTuple.name) // 出力: apple
print(myTuple.price) // 出力: 100
print(myTuple.isOnSale) // 出力: true
</syntaxhighlight>
タプルは、関数の戻り値としても利用できます。複数の値を返す場合、タプルを使うとコードを簡潔に記述することができます。
:<syntaxhighlight lang=swift copy>
func findMinMax(array: [Int]) -> (min: Int, max: Int) {
var min = array[0]
var max = array[0]
for value in array {
if value < min {
min = value
}
if value > max {
max = value
}
}
return (min, max)
}
let result = findMinMax(array: [3, 5, 2, 8, 1])
print("最小値: \(result.min), 最大値: \(result.max)") // 出力: 最小値: 1, 最大値: 8
</syntaxhighlight>
この例では、<code>findMinMax</code>関数がタプルを返し、そのタプルには、最小値と最大値の値が含まれます。戻り値を受け取った<code>result</code>は、タプルであるため、<code>.min</code>と<code>.max</code>を使って値を取得することができます。
=== オプショナル型 ===
Swiftにおけるオプショナル(Optional)は、値が存在する場合にはその値を持ち、存在しない場合には<code>nil</code>という値を持つ特殊な型です。つまり、オプショナルは存在しない値を表現するための型です。
例えば、<code>Int</code>型の変数<code>x</code>を宣言したとき、その初期値は<code>nil</code>となります。
:<syntaxhighlight lang=swift copy>
var x: Int?
</syntaxhighlight>
このようにオプショナルを使うことで、変数に値が入るまで型を決めずに宣言することができます。
オプショナルの値にアクセスするには、アンラップ(unwrapping)が必要です。アンラップとは、オプショナルの値が<code>nil</code>でないことを確認してから、値にアクセスすることです。
以下は、オプショナルの値にアクセスする方法の例です。
:<syntaxhighlight lang=swift copy>
var optionalInt: Int? = 10
// optionalIntがnilでないことを確認してからアクセスする
if let unwrappedInt = optionalInt {
print(unwrappedInt)
}
// 強制的にアンラップする
let unwrappedInt2 = optionalInt!
print(unwrappedInt2)
</syntaxhighlight>
上記の例では、オプショナル型の変数<code>optionalInt</code>に値<code>10</code>を代入しています。その後、<code>if let</code>文で<code>optionalInt</code>が<code>nil</code>でないことを確認し、<code>unwrappedInt</code>にアンラップした値を代入しています。また、<code>!</code>演算子を使って強制的にアンラップすることもできます。ただし、<code>optionalInt</code>が<code>nil</code>である場合にはランタイムエラーが発生します。
また、オプショナル型には、<code>guard let</code>文を使ってもアンラップすることができます。
:<syntaxhighlight lang=swift copy>
func foo(optionalStr: String?) {
guard let unwrappedStr = optionalStr else {
print("optionalStr is nil")
return
}
print(unwrappedStr)
}
foo(optionalStr: "Hello, world!") // Hello, world!
foo(optionalStr: nil) // optionalStr is nil
</syntaxhighlight>
この例では、<code>foo</code>関数の引数<code>optionalStr</code>が<code>nil</code>でない場合には、<code>unwrappedStr</code>にアンラップされた値を使って処理を行い、<code>nil</code>である場合には<code>guard</code>文の中の処理を行っています。
オプショナル型には、Null合体演算子( Nil-Coalescing Operator )<code>??</code> を使用して、オプショナルの値がnilである場合に、デフォルト値を返すこともできます。
:<syntaxhighlight lang=swift copy>
var optionalStr: String? = nil
let unwrappedStr = optionalStr ?? ""
</syntaxhighlight>
; オプショナル連鎖
Swiftにおいて、オプショナルの値に対して簡潔かつ安全にアクセスする方法の1つに、「オプショナル連鎖 (Optional chaining)」があります。
オプショナル連鎖は、オプショナルのプロパティにアクセスする際に使用する「?」を使って、プロパティの存在を確認しながらアクセスを行うことができます。オプショナル連鎖が適用された式の値は、オプショナル値として評価されます。
以下は、オプショナル連鎖の例です。
:<syntaxhighlight lang=swift copy>
struct Person {
var name: String
var age: Int?
}
let person: Person? = Person(name: "John", age: 30)
// オプショナル連鎖を使用せずにageにアクセスすると、コンパイルエラーになる
// let age = person.age
// オプショナル連鎖を使用してageにアクセスする
let age = person?.age
print(age) // Optional(30)
</syntaxhighlight>
上記の例では、<code>person</code>は<code>Person</code>型のオプショナル値であり、その<code>age</code>プロパティもオプショナルです。<code>let age = person?.age</code>とすることで、<code>person</code>が<code>nil</code>でない場合に限り、<code>age</code>にアクセスされます。<code>age</code>の型は、<code>Int?</code>となります。
また、オプショナル連鎖は、プロパティだけでなくメソッドやサブスクリプトにも適用することができます。以下は、オプショナル連鎖を使用したメソッドの例です。
:<syntaxhighlight lang=swift copy>
struct Car {
var name: String
func drive() {
print("\(name) is driving.")
}
}
var car: Car? = Car(name: "Tesla")
// オプショナル連鎖を使用してdriveメソッドにアクセスする
car?.drive() // "Tesla is driving."
car = nil
// オプショナル連鎖を使用してdriveメソッドにアクセスする
car?.drive() // 何も出力されない
</syntaxhighlight>
上記の例では、<code>car</code>は<code>Car</code>型のオプショナル値です。<code>car?.drive()</code>とすることで、<code>car</code>が<code>nil</code>でない場合に限り、<code>drive</code>メソッドが実行されます。
オプショナル連鎖の利用により、アンラップ処理を簡潔かつ安全に行うことができます。
ただし、オプショナル値を使用する場合は、値が存在しない場合に備えたハンドリングを行うことが重要です。
== 演算子 ==
Swiftにおいて、式はプログラムで何かしらの値を生成するための構成要素です。式は、変数やリテラル、関数呼び出し、演算子、そしてそれらを組み合わせたものから構成されます。
演算子は、式内で値を操作するために使用されます。
Swiftには、算術演算子、比較演算子、論理演算子、代入演算子、範囲演算子、ビット演算子など、さまざまな種類の演算子があります。演算子は、変数や定数、リテラル値などのオペランドに対して、特定の操作を実行するために使用されます。
演算子は、一般的に、単項演算子(1つのオペランドを取る)、二項演算子(2つのオペランドを取る)または三項演算子(3つのオペランドを取る)に分類されます。Swiftでは、いくつかの演算子は、オプショナルや範囲、タプルなどの機能に特化しています。
このセクションでは、Swiftで使用できる演算子について詳しく説明します。演算子の優先順位、結合性、および使用例を示し、適切な演算子を使用して式を組み立てる方法を紹介します。
=== 算術演算子 ===
{| class="wikitable"
|+ 二項演算子
|-
! 文法 !! 意味
|-
| <code>+</code> || 加算
|-
| <code>-</code> || 減算
|-
| <code>*</code> || 乗算
|-
| <code>/</code> || 除算(整数型のゼロ除算はエラーとなります)
|-
| <code>%</code> || 剰余(整数型のゼロでの剰余演算はエラーとなります)
|-
| <code>&+</code> || 加算(オーバーフローを無視します)
|-
| <code>&-</code> || 減算(オーバーフローを無視します)
|-
| <code>&*</code> || 乗算(オーバーフローを無視します)
|-
| <code>&/</code> || 除算(オーバーフローを無視し、ゼロ除算の結果は<code>0</code>となります)(※廃止済み)
|-
| <code>&%</code> || 剰余(オーバーフローを無視し、ゼロでの剰余演算の結果は<code>0</code>となります)(※廃止済み)
|}
{| class="wikitable"
|+ 単項演算子(前置)
|-
! 文法 !! 意味
|-
| <code>+</code> || 単項プラス
|-
| <code>-</code> || 単項マイナス(符号反転)
|-
| <code>++</code> || インクリメント(式はインクリメントされた'''後'''の値を返す)※Swift 3.0で廃止<ref name="SE-0004">[https://github.com/apple/swift-evolution#accepted-proposals-for-swift-30 Accepted proposals for Swift 3.0]</ref>
|-
| <code>--</code> || デクリメント(式はデクリメントされた'''後'''の値を返す)※Swift 3.0で廃止<ref name="SE-0004">[https://github.com/apple/swift-evolution#accepted-proposals-for-swift-30 Accepted proposals for Swift 3.0]</ref>
|}
{| class="wikitable"
|+ 単項演算子(後置)
|-
! 文法 !! 意味
|-
| <code>++</code> || インクリメント(式はインクリメントされる'''前'''の値を返す)※Swift 3.0で廃止<ref name="SE-0004">[https://github.com/apple/swift-evolution#accepted-proposals-for-swift-30 Accepted proposals for Swift 3.0]</ref>
|-
| <code>--</code> || デクリメント(式はデクリメントされる'''前'''の値を返す)※Swift 3.0で廃止<ref name="SE-0004">[https://github.com/apple/swift-evolution#accepted-proposals-for-swift-30 Accepted proposals for Swift 3.0]</ref>
|}
=== 比較演算子 ===
{|
|+ 比較演算
|-
| valign="top" |
{| class="wikitable"
|-
! 文法 !! 意味
|-
| <code><</code> || より小さい
|-
| <code><=</code> || 以下
|-
| <code>></code> || より大きい
|-
| <code>>=</code> || 以上
|-
|}
|
| valign="top" |
{| class="wikitable"
|-
! 文法 !! 意味
|-
| <code>==</code> || 等しい
|-
| <code>!=</code> || 等しくない
|-
| <code>===</code> || 同じオブジェクトへの参照
|-
| <code>!==</code> || 別のオブジェクトへの参照
|-
|}
|
| valign="top" |
{| class="wikitable"
|-
! 文法 !! 意味
|-
| <code>~=</code> || パターンマッチ(左辺の範囲内に右辺が有ればtrue)
|}
|}
:<syntaxhighlight lang=swift copy>
print(1...5 ~= 3) // true
</syntaxhighlight>
:<syntaxhighlight lang=swift copy>
var str = "mission control"
print(str.range(of: "control")! ~= str.index(of: "c")!) // true
</syntaxhighlight>
=== 論理演算子 ===
{| class="wikitable"
|+ 論理演算子
|-
! 文法 !! 意味
|-
| <code>&&</code> || 論理AND
|-
| <code>||</code> || 論理OR
|-
| <code>!</code> || 論理NOT
|}
=== 三項演算子 ===
{| class="wikitable"
|+ 三項演算子
|-
! 文法 !! 意味
|-
| <code>''条件'' ? ''式1'' : ''式2''</code> || ''条件''が真のとき''式1''の値を、偽のとき''式2''の値を返す
|}
=== nil結合演算子 ===
{| class="wikitable"
|+ nil結合演算子( ''Nil Coalescing Operator'' )
|-
! 文法 !! 意味
|-
| <code>??</code> || 左オペランドには<code>T?</code>型、右オペランドには<code>T</code>型の値をとり、<br />左オペランドに値が存在していればアンラップしてその値を返し、左オペランドが<code>nil</code>であれば右オペランドの値を返す
|}
:<syntaxhighlight lang=swift copy>
"x".toInt() ?? 0 // 0
"5".toInt() ?? 0 // 5
</syntaxhighlight>
=== ビット演算子 ===
{| class="wikitable"
|+ ビット演算子
|-
! 文法 !! 意味
|-
| <code><<</code> || 左シフト
|-
| <code>>></code> || 右シフト(左オペランドが符号付き整数の場合は算術シフト、符号無し整数の場合は論理シフト)
|-
| <code>&</code> ||AND
|-
| <code>|</code> ||OR
|-
| <code>^</code> || XOR
|-
| <code>~</code> || NOT(ビット反転)
|}
=== 代入演算子 ===
{|
|+ 代入演算子
|-
| valign="top" |
{| class="wikitable"
|-
! 文法 !! 意味
|-
| <code>=</code> || 代入
|-
| <code>+=</code> || 加算と代入
|-
| <code>-=</code> || 減算と代入
|-
| <code>*=</code> || 乗算と代入
|-
| <code>%=</code> || 剰余演算と代入
|-
| <code>/=</code> || 除算と代入
|}
| valign="top" |
{| class="wikitable"
|-
! 文法 !! 意味
|-
| <code><<=</code> || 左ビットシフトと代入
|-
| <code>>>=</code> || 右ビットシフトと代入
|-
| <code>&=</code> || ビット演算ANDと代入
|-
| <code>^=</code> || ビット演算XORと代入
|-
| <code>|=</code> || ビット演算ORと代入
|-
| <code>&&=</code> || 論理ANDと代入
|-
| <code>||=</code> || 論理ORと代入
|}
|}
=== 範囲演算子 ===
{| class="wikitable"
|+ 範囲演算子( ''Range operators'' )
|-
! 文法 !! 意味
|-
| <code>..<</code> || 半分開いた範囲(終端を'''含まない'''):半開区間
|-
| <code>...</code> || 閉じた範囲(終端を'''含む'''):閉区間
|}
=== キャスト演算子 ===
{| class="wikitable"
|+ キャスト演算子
|-
! 文法 !! 意味
|-
| <code>is</code> || 型検査
|-
| <code>as</code> || 型キャスト
|-
| <code>as?</code> || オプショナル型へのキャスト キャストできない場合はnilとなる
|-
| <code>as!</code> || 強制型キャスト キャストできない場合は実行時エラーとなる
|}
;キャスト演算子:<syntaxhighlight lang=swift copy>
var arr:[Any] = [1, 2.0, "3", -4]
for item in arr {
let intItem = item as? Int
print(intItem)
}
</syntaxhighlight>
;実行結果:<syntaxhighlight lang="text">
Optional(1)
nil
nil
Optional(-4)
</syntaxhighlight>
:<syntaxhighlight lang=swift copy>
import Foundation
var array1 = [1, 2, 3, 4] as NSArray
var mutableArray1 = array1 as? NSMutableArray // ダウンキャストできないので、nilになる
// ※補足: 上記の例の場合、Mutableな状態で取得したければ array1.mutableCopy() を行うべき。
var mutableArray2 = [1, 2, 3, 4] as NSMutableArray
var array2 = mutableArray2 as NSArray
var mutableArray2_2 = array2 as? NSMutableArray // 元々mutableArray2の型はNSMutableArrayなので、キャストに成功する
</syntaxhighlight>
== その他 ==
{{先頭に戻る}}
識別子にはUnicode文字を用いることができます。
:<syntaxhighlight lang=swift copy>
let リンゴの数 = 3
let みかんの数 = 5
</syntaxhighlight>
文字列リテラルの中にある<code>\(...)</code>には、式の結果が展開される
:<syntaxhighlight lang=swift copy>
let リンゴ説明 = "私は\(リンゴの数)個のリンゴを持っています。" // ”私は3個のリンゴを持っています。"
let 果物説明 = "私は\(リンゴの数 + みかんの数)個の果物を持っています。" //"私は8個の果物を持っています。"
</syntaxhighlight>
'''ヒアドキュメント'''には、ダブルクォーテーション3つを使用します。ヒアドキュメント内の行頭の空白は自動的にトリミングされます。
:<syntaxhighlight lang=swift copy>
let tanka = """
田子の浦に
うち出でてみれば
白妙の
富士の高嶺に
雪は降りつつ
"""
print(tanka)
</syntaxhighlight>
'''数値リテラル'''のプレフィックスは"<code>0b</code>"で2進数、"<code>0o</code>"で8進数、"<code>0x</code>"で16進数を表す。
:<syntaxhighlight lang=swift copy>
let dec = 29
let bin = 0b11101 // 2進数で29
let oct = 0o35 // 8進数で29
let hex = 0x1D // 16進数で29
</syntaxhighlight>
'''浮動小数点リテラル'''は、通常の十進数表記に加え16進数表記もサポートしています。
:<syntaxhighlight lang=swift copy>
let π = 3.1415926535897931
let pi = 0x1.921fb54442d18p+1 // NSString(format:"%a", π) の出力と同様
</syntaxhighlight>
整数型と浮動小数点型のどちらでも、コードの見やすさのためにアンダースコア '''_''' を桁の区切りとして挿入できます。
:<syntaxhighlight lang=swift copy>
let threeHundledMillion = 300_000_000
let bitMask: UInt8 = 0b0010_0000
</syntaxhighlight>
アンダースコアは、代入文で代入する値を無視したいときに、仮の代入先として使用できます。
:<syntaxhighlight lang=swift copy>
var s:String? = "String"
if let _ = s {
print("sはnilではありません。")
}
</syntaxhighlight>
:<syntaxhighlight lang=swift copy>
for _ in 0..<5 {
print("repeat")
}
</syntaxhighlight>
:<syntaxhighlight lang=swift copy>
let result = (404, "Not Found", false)
let (_, message, _) = result
</syntaxhighlight>
== 他言語との比較 ==
{{先頭に戻る}}
=== C言語との類似点 ===
* ほとんどのC言語の演算子はSwiftでも使用できます。
** ただし、Swiftではオーバーフローを伴う数値演算のサポートのための演算子が追加されています。
* 中括弧は、文をグループ化するために使用されます。
* 等号1つ<code>=</code>は代入、2つ<code>==</code>は等価比較を意味します。
** この他に、Swiftでは等号3つ<code>===</code>は同じオブジェクトを参照しているかどうかを確認するための演算子を意味します。
* <code>while</code>、<code>if</code>、<code>for</code>等の制御文が類似しています。
** ただし、Swiftでは拡張機能を有します。例えば、<code>while</code>、<code>if</code>文はパターンマッチングや条件付きOptionalアンラップをサポートします。
* 角括弧は、配列の宣言と配列の要素取得の両方で使用されます。
=== Objective-Cとの類似点 ===
* 基本的な数値型<code>Int</code>、<code>UInt</code>、<code>Float</code>、<code>Double</code>等のサポート。
* クラスメソッドは、インスタンスメソッドと同様に継承されます。クラスメソッド内の<code>self</code>は、メソッドが呼び出されたクラスを意味します。
* <code>for</code>...<code>in</code>列挙構文のサポート。
=== Objective-Cとの相違点 ===
* 文はセミコロン(<code>;</code>)で終わる必要はありません。しかし、1行に複数の文を記述する際に使用することができます。
* ヘッダーファイルが存在しません。
* <code>/*</code>~<code>*/</code>によるコメントはネスト'''できます'''。
* 型推論のサポート。
* ジェネリックプログラミングのサポート。
* 関数は第一級オブジェクトです。
* 演算子はクラスに対して再定義(演算子のオーバーロード)でき、新しい演算子を定義できます。
* 文字列はUnicodeを完全にサポートします。ほとんどのUnicode文字は識別子や演算子でも使用できます。
* 例外処理は存在しません。Swift 2では例外処理とは互換性のない別のエラー処理モデルが導入されています。
* バグの原因となるC言語ファミリーの特徴がいくつか削除されています。
** デフォルトでは、ポインタは公開されていません。プログラマが参照の管理をする必要はありません。
** 変数割り当ては値を返しません。これにより、<code>=</code>と<code>==</code>の誤用を防ぐことができます。
** <code>switch</code>文内で<code>break</code>を行う必要はありません。明示的に<code>fallthrough</code>を行わない限り次の<code>case</code>にフォールスルーすることはありません。
** 変数と定数は常に初期化され、配列の境界は常にチェックされます。
** 算術オーバーフローは実行時エラーとしてトラップされます。オーバーフローを許可する演算子は<code>&+</code>、<code>&-</code>、<code>&*</code>、<code>&/</code>、<code>&%</code>として定義されます。また、全ての整数型にはプロパティ<code>min</code>、<code>max</code>が定義されており、潜在的なオーバーフローのチェックに利用することができます。
** ブロックを用いない1行の<code>if</code>文、<code>while</code>文はサポートされていません。
** Off-by-oneエラーの原因となるC言語スタイルの<code>for (int i = 0; i < c; i++)</code>文は、Swift 3で削除されました。
** インクリメント演算子<code>++</code>、デクリメント演算子<code>--</code>は、Swift 3で削除されました。
{{コラム|SwiftにGCはありますか?|2=Swiftにはガベージコレクション(Garbage Collection, GC)はありません。代わりに、Swiftは自動参照カウント(Automatic Reference Counting, ARC)と呼ばれるメモリ管理手法を採用しています。ARCは、オブジェクトが参照されている限りメモリを保持し、参照がなくなった時点で自動的にメモリを解放する仕組みです。ARCは、Objective-Cでも採用されており、SwiftはObjective-Cランタイムを利用することができるため、Objective-Cで使用されるARCと互換性があります。}}
== 脚註 ==
{{先頭に戻る}}
<references />
== 外部リンク ==
* [https://swift.org/ 公式ウェブサイト]
* [http://online.swiftplayground.run/ Online Swift Playground]
* [https://swiftfiddle.com/ SwiftFiddle - Swift Online Playground]
== 附録 ==
{{先頭に戻る}}
=== コードギャラリー ===
{{先頭に戻る|title=附録に戻る|label=附録|style=border-top:1px solid gray;}}
:<syntaxhighlight lang=Swift highlight=18 copy>
</syntaxhighlight>
:<syntaxhighlight lang=text>
</syntaxhighlight>
==== エラトステネスの篩 ====
{{先頭に戻る|title=コード・ギャラリーに戻る|label=コードギャラリー|style=border-top:1px solid gray;}}
エラトステネスの篩を、若干 Swift らしく書いてみました。
;エラトステネスの篩:<syntaxhighlight lang=Swift line copy>
import Foundation
func sieveOfEratosthenes(_ n: Int) -> [Int] {
var sieve = Array(repeating: true, count: n + 1)
sieve[0] = false
sieve[1] = false
let sqrtN = Int(sqrt(Double(n)))
for i in 2...sqrtN {
if sieve[i] {
for j in stride(from: i * i, through: n, by: i) {
sieve[j] = false
}
}
}
return sieve.enumerated().compactMap { $1 ? $0 : nil }
}
print(sieveOfEratosthenes(100))
</syntaxhighlight>
;実行結果:<syntaxhighlight lang=text>
[2, 3, 5, 7, 11, 13, 17, 19, 23, 29, 31, 37, 41, 43, 47, 53, 59, 61, 67, 71, 73, 79, 83, 89, 97]
</syntaxhighlight>
==== 最大公約数と最小公倍数 ====
{{先頭に戻る|title=コード・ギャラリーに戻る|label=コードギャラリー|style=border-top:1px solid gray;}}
最大公約数と最小公倍数を、若干 Swift らしく書いてみました。
;最大公約数と最小公倍数:<syntaxhighlight lang=Swift line copy>
func gcd2(_ m: Int, _ n: Int) -> Int { n == 0 ? m : gcd2(n, m % n) }
func gcd(_ args: Int...) -> Int {
guard let first = args.first else { return 0 }
return args.suffix(args.count - 1).reduce(first){ gcd2($0, $1) }
}
func lcm2(_ m: Int, _ n: Int) -> Int { m * n / gcd2(m, n) }
func lcm(_ args: Int...) -> Int {
guard let first = args.first else { return 0 }
return args.suffix(args.count - 1).reduce(first){ lcm2($0, $1) }
}
print("gcd2(30, 45) => \(gcd2(30, 45))")
print("gcd(30, 72, 12) => \(gcd(30, 72, 12))")
print("lcm2(30, 72) => \(lcm2(30, 72))")
print("lcm(30, 42, 72) => \(lcm(30, 42, 72))")
</syntaxhighlight>
;実行結果:<syntaxhighlight lang=text>
gcd2(30, 45) => 15
gcd(30, 72, 12) => 6
lcm2(30, 72) => 360
lcm(30, 42, 72) => 2520
</syntaxhighlight>
==== 二分法 ====
{{先頭に戻る|title=コード・ギャラリーに戻る|label=コードギャラリー|style=border-top:1px solid gray;}}
[[W:二分法|二分法]]を、若干 Swift らしく書いてみました。
;二分法:<syntaxhighlight lang=Swift line copy>
func bisection(low: Double, high: Double, f: (Double) -> Double) -> Double {
var low = low
var high = high
var x = (low + high) / 2.0
var fx = f(x)
if abs(fx) < 1.0e-10 {
return x
}
if fx < 0.0 {
low = x
} else {
high = x
}
return bisection(low: low, high: high, f: f)
}
let result1 = bisection(low: 0, high: 3) { x in return x - 1 }
print(result1)
let result2 = bisection(low: 0, high: 3) { x in return x * x - 1 }
print(result2)
</syntaxhighlight>
;実行結果:<syntaxhighlight lang=text>
0.9999999999417923
1.0000000000291038
</syntaxhighlight>
: [[旧課程(-2012年度)高等学校数学B/数値計算とコンピューター#2分法]]の例を Swift に移植しました。
== 外部リンク ==
{{Wikipedia|Swift (プログラミング言語)}}
* [[https://www.apple.com/jp/swift/ 公式サイト]]
[[Category:Swift|*]]
[[Category:プログラミング言語]]
{{NDC|007.64}}
kngovjgdf01wwu8550dqx4m2u8r6wu8
国籍法第1条
0
32697
264346
186473
2024-11-27T12:18:38Z
Fukupow
34984
/* 翻訳 */ 追加
264346
wikitext
text/x-wiki
{{Pathnav|法学|コンメンタール|コンメンタール国籍法|frame=1}}
== 条文 ==
(この法律の目的)
; 第1条
: 日本国民たる要件は、この法律の定めるところによる。
=== 翻訳 ===
(Purpose of This Act)<ref>{{Cite web |url=https://www.japaneselawtranslation.go.jp/ja/laws/view/4713 |title=国籍法 |website=日本法令外国語訳DBシステム |publisher=法務省 |accessdate=2024-11-27}}</ref>
; Article 1
: The requirements for Japanese citizenship are governed by the provisions of this Act.
== 解説 ==
本条は、[[w:日本国憲法第10条|日本国憲法10条]]の「日本国民たる要件は、法律でこれを定める。」に基づき、[[w:国籍法|国籍法]]によって[[w:日本国民|日本国民]]の要件を定めることを規定している。ここでいう「日本国民」とは、日本国籍を有する者を意味する。「[[w:国籍|国籍]]」とは、[[w:近代国家|近代国家]]の成立に伴い登場した概念で、「人が特定の国の構成員であるための資格<ref>[https://www.moj.go.jp/MINJI/minji78.html 法務省:国籍Q&A]</ref>」とされる。したがって、本条は、[[w:日本国籍|日本国籍]]の取得・喪失に関する制度を本法において具体的に規定することを通じて、日本国民の範囲を定めることを目的とすることを明らかにしている。
本法のうち、日本国籍の取得に関する規定は、出生に関する2条、届出に関する3/17条、帰化に関する4-10条であり、日本国籍の喪失に関する規定は、外国籍の取得・選択に関する11条、不留保に関する12条、届出に関する13条、選択に関する14-16条である。
== 参照条文 ==
* 日本国憲法第10条
* [[国籍法第2条]](出生による国籍の取得)
* [[国籍法第3条]](認知された子の国籍の取得)
* [[国籍法第4条]](帰化)
* [[国籍法第5条]]
* [[国籍法第6条]]
* [[国籍法第7条]]
* [[国籍法第8条]]
* [[国籍法第9条]]
* [[国籍法第10条]]
* [[国籍法第11条]](国籍の喪失)
* [[国籍法第12条]]
* [[国籍法第13条]]
* [[国籍法第14条]](国籍の選択)
* [[国籍法第15条]]
* [[国籍法第16条]]
* [[国籍法第17条]](国籍の再取得)
== 脚注 ==
{{reflist}}
== 参考文献 ==
* {{Cite book |和書 |author=木棚照一 |date=2021-04-06 |title=逐条国籍法 ―課題の解明と条文の解説― |publisher=日本加除出版 |isbn=9784817847171}}
{{stub}}
{{前後
|[[コンメンタール国籍法|国籍法]]
|
|-
|[[国籍法第2条]]<br />(出生による国籍の取得)
}}
[[category:国籍法|01]]
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国籍法第2条
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2024-11-27T12:21:07Z
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/* 翻訳 */ 追加
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wikitext
text/x-wiki
{{Pathnav|法学|コンメンタール|コンメンタール国籍法|frame=1}}
== 条文 ==
(出生による国籍の取得)
; 第2条
: 子は、次の場合には、日本国民とする。
# 出生の時に父又は母が日本国民であるとき。
# 出生前に死亡した父が死亡の時に日本国民であつたとき。
# 日本で生まれた場合において、父母がともに知れないとき、又は国籍を有しないとき。
: <small>(昭和59年5月25日法律第45号改正<ref>{{Cite web |url=https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_housei.nsf/html/houritsu/10119840525045.htm |title=法律第四十五号(昭五九・五・二五) |publisher=衆議院 |accessdate=2021-10-30}}</ref>)</small>
=== 改正前 ===
==== 昭和25年5月4日法律第147号 ====
(出生による国籍の取得)
; 第2条
: 子は、左の場合には、日本国民とする。
# 出生の時に父が日本国民であるとき。
# 出生前に死亡した父が死亡の時に日本国民であつたとき。
# 父が知れない場合又は国籍を有しない場合において、母が日本国民であるとき。
# 日本で生れた場合において、父母がともに知れないとき、又は国籍を有しないとき。
==== 旧国籍法(明治32年3月15日法律第66号) ====
; 第1条
: 子ハ出生ノ時其父カ日本人ナルトキハ之ヲ日本人トス其出生前ニ死亡シタル父カ死亡ノ時日本人ナリシトキ亦同シ
; 第2条
: 父カ子ノ出生前ニ離婚又ハ離縁ニ因リテ日本ノ国籍ヲ失ヒタルトキハ前条ノ規定ハ懐胎ノ始ニ遡リテ之ヲ適用ス
: 前項ノ規定ハ父母カ共ニ其家ヲ去リタル場合ニハ之ヲ適用セス但母カ子ノ出生前ニ復籍ヲ為シタルトキハ此限ニ在ラス
; 第3条
: 父カ知レサル場合又ハ国籍ヲ有セサル場合ニ於テ母カ日本人ナルトキハ其子ハ之ヲ日本人トス
; 第4条
: 日本ニ於テ生マレタル子ノ父母カ共ニ知レサルトキ又ハ国籍ヲ有セサルトキハ其子ハ之ヲ日本人トス
=== 翻訳 ===
(Acquisition of Citizenship by Birth)<ref>{{Cite web |url=https://www.japaneselawtranslation.go.jp/ja/laws/view/4713 |title=国籍法 |website=日本法令外国語訳DBシステム |publisher=法務省 |accessdate=2024-11-27}}</ref>
; Article 2
: A child is a Japanese citizen in the following cases:
# if the father or mother is a Japanese citizen at the time of birth;
# if the father died before the child's birth and was a Japanese citizen at the time of death; or
# if the child was born in Japan, either both of the parents are unknown or if known, both of them are without nationality.
== 解説 ==
本条は、[[w:出生|出生]]による[[w:国籍|国籍]]の取得について規定している。出生による国籍の取得については、「[[w:出生地主義|出生地主義]]」(父母の国籍を問わず、子の出生地である国の国籍を取得する主義)と「[[w:血統主義|血統主義]]」(子の出生地を問わず、親と同じ国籍を取得する主義)の2つがある。
制定当時の1950年(昭和25年)は、多くの国で父の国籍(血統)を優先する父系優先血統主義が採用されていたことから、日本でも父系優先血統主義を原則とした。しかし、1970年代から父の国籍を優先しない父母両系血統主義へと改正する国が増え、1981年(昭和56年)発効の[[w:女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約|女子差別撤廃条約]]9条2項において、「締約国は、子の国籍に関し、女子に対して男子と平等の権利を与える。<ref>{{Cite web |url=https://www.gender.go.jp/international/int_kaigi/int_teppai/joyaku.html |title=女子差別撤廃条約全文 |publisher=内閣府男女共同参画局 |accessdate=2021-10-30}}</ref>」と規定されたことから、日本においても1984年(昭和59年)に父母両系血統主義へ改正した。
本条1号および2号は、血統主義による国籍の取得について規定している。ここでいう「父」「母」は、血縁関係としての親子に限らず、法律上の親子関係にある者を含める。本条3号では、純粋な血統主義によれば無国籍の子が生じる危険性があるため、「父母がともに知れないとき」または「父母がともに国籍を有しないとき」に限定して出生地主義による国籍の取得について規定している。
== 参照条文 ==
* 女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約第9条
== 判例 ==
* 最高裁判所第二小法廷判決、昭和40年6月4日、昭和38年(オ)第1343号、『[https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=56278 国籍存在確認請求事件]』、最高裁判所民事判例集19巻4号898頁。
* 最高裁判所第二小法廷判決、平成7年1月27日、平成6年(行ツ)第71号、『[https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52558 国籍確認事件]』、最高裁判所民事判例集49巻1号56頁。
* 最高裁判所第二小法廷判決、平成9年10月17日、平成8年(行ツ)第60号、『[https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52604 国籍確認事件]』、最高裁判所民事判例集51巻9号3925頁。
* 最高裁判所第二小法廷判決、平成14年11月22日、平成10年(オ)第2190号、『[https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=62397 国籍確認等請求事件]』、最高裁判所民事判例集208号495頁。
* 最高裁判所第一小法廷判決、平成15年6月12日、平成13年(行ツ)第39号、『[https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=62503 国籍確認請求事件]』、最高裁判所民事判例集210号27頁。
* 最高裁判所第一小法廷判決、平成15年6月12日、平成18年(行ツ)第135号、『[https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=36415 退去強制令書発付処分取消等請求事件]』、最高裁判所民事判例集62巻6号1367頁。
* 最高裁判所大法廷判決、平成20年6月4日、平成19年(行ツ)第164号、『[https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=36416 国籍確認請求事件]』、最高裁判所民事判例集228号101頁。
== 脚注 ==
{{reflist}}
== 参考文献 ==
* {{Cite book |和書 |author=木棚照一 |date=2021-04-06 |title=逐条国籍法 ―課題の解明と条文の解説― |publisher=日本加除出版 |isbn=9784817847171}}
{{stub}}
{{前後
|[[コンメンタール国籍法|国籍法]]
|
|[[国籍法第1条]]<br />(この法律の目的)
|[[国籍法第3条]]<br />(認知された子の国籍の取得)
}}
[[category:国籍法|02]]
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国籍法第3条
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2024-11-27T12:23:53Z
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/* 翻訳 */ 追加
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wikitext
text/x-wiki
{{Pathnav|法学|コンメンタール|コンメンタール国籍法|frame=1}}
== 条文 ==
(認知された子の国籍の取得)
; 第3条
# 父又は母が認知した子で18歳未満のもの(日本国民であつた者を除く。)は、認知をした父又は母が子の出生の時に日本国民であつた場合において、その父又は母が現に日本国民であるとき、又はその死亡の時に日本国民であつたときは、法務大臣に届け出ることによつて、日本の国籍を取得することができる。
# 前項の規定による届出をした者は、その届出の時に日本の国籍を取得する。
# 前二項の規定は、認知について反対の事実があるときは、適用しない。
: <small>(昭和59年5月25日法律第45号追加<ref>{{Cite web |url=https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_housei.nsf/html/houritsu/10119840525045.htm |title=法律第四十五号(昭五九・五・二五) |publisher=衆議院 |accessdate=2024-11-17}}</ref>、平成20年12月12日法律第88号改正<ref>{{Cite web |url=https://www.shugiin.go.jp/Internet/itdb_housei.nsf/html/housei/17020081212088.htm |title=法律第八十八号(平二〇・一二・一二) |publisher=衆議院 |accessdate=2024-11-17}}</ref>、平成30年6月20日法律第59号改正<ref>{{Cite web |url=https://www.shugiin.go.jp/Internet/itdb_housei.nsf/html/housei/19620180620059.htm |title=法律第五十九号(平三〇・六・二〇) |publisher=衆議院 |accessdate=2024-11-17}}</ref>、令和4年12月16日法律第102号第3項追加<ref>{{Cite web |url=https://www.shugiin.go.jp/Internet/itdb_housei.nsf/html/housei/21020221216102.htm |title=法律第百二号(令四・一二・一六) |publisher=衆議院 |accessdate=2024-11-17}}</ref>)</small>
=== 改正前 ===
==== 昭和25年5月4日法律第147号 ====
(準正による国籍の取得)
; 第3条
# 父母の婚姻及びその認知により嫡出子たる身分を取得した子で20歳未満のもの(日本国民であつた者を除く。)は、認知をした父又は母が子の出生の時に日本国民であつた場合において、その父又は母が現に日本国民であるとき、又はその死亡の時に日本国民であつたときは、法務大臣に届け出ることによつて、日本の国籍を取得することができる。
# 前項の規定による届出をした者は、その届出の時に日本の国籍を取得する。
=== 翻訳 ===
(Acquisition of Citizenship by Acknowledged Children)<ref>{{Cite web |url=https://www.japaneselawtranslation.go.jp/ja/laws/view/4713 |title=国籍法 |website=日本法令外国語訳DBシステム |publisher=法務省 |accessdate=2024-11-27}}</ref>
; Article 3
# If a child acknowledged by the father or mother is under eighteen years of age (excluding a child who was once a Japanese citizen) and the acknowledging father or mother was a Japanese citizen at the time of the birth of the child, Japanese citizenship may be acquired by notification to the Minister of Justice if that father or mother is currently a Japanese citizen or was a Japanese at the time of death.
# The person making notification pursuant to the provisions of the preceding paragraph will acquire Japanese citizenship at the time of the notification.
# The provisions of the two previous paragraphs do not apply if there is any fact against an acknowledgment of parentage.
== 解説 ==
本条は、法務大臣への届出という方法による国籍の取得方法を認める規定である。これは、父を日本人、母を外国人とする非嫡出子について、帰化による方法よりも容易に日本国籍を取得する方法として創設された。
== 参照条文 ==
* [[民法第779条]](認知)
== 判例 ==
* 最高裁判所大法廷判決、平成20年6月4日、平成18年(行ツ)第135号、『[https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=36415 退去強制令書発付処分取消等請求事件]』、最高裁判所民事判例集62巻6号1367頁。
* 最高裁判所大法廷判決、平成20年6月4日、平成19年(行ツ)第164号、『[https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=36416 国籍確認請求事件]』、最高裁判所裁判集民事228号101頁。
== 脚注 ==
{{reflist}}
== 参考文献 ==
* {{Cite book |和書 |author=木棚照一 |date=2021-04-06 |title=逐条国籍法 ―課題の解明と条文の解説― |publisher=日本加除出版 |isbn=9784817847171}}
== 外部リンク ==
* [https://www.moj.go.jp/ONLINE/NATIONALITY/6-1.html 法務省:認知された子の国籍取得の届出]
{{stub}}
{{前後
|[[コンメンタール国籍法|国籍法]]
|
|[[国籍法第2条]]<br />(出生による国籍の取得)
|[[国籍法第4条]]<br />(帰化)
}}
[[category:国籍法|03]]
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国籍法第4条
0
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2024-11-27T12:25:19Z
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/* 翻訳 */ 追加
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wikitext
text/x-wiki
{{Pathnav|法学|コンメンタール|コンメンタール国籍法|frame=1}}
== 条文 ==
(帰化)
; 第4条
# 日本国民でない者(以下「外国人」という。)は、帰化によつて、日本の国籍を取得することができる。
# 帰化をするには、法務大臣の許可を得なければならない。
: <small>(昭和27年7月31日法律第268号改正<ref>{{Cite web |url=https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_housei.nsf/html/houritsu/01319520731268.htm |title=法律第二百六十八号(昭二七・七・三一) |publisher=衆議院 |accessdate=2021-10-30}}</ref>、昭和59年5月25日法律第45号旧第3条繰下<ref>{{Cite web |url=https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_housei.nsf/html/houritsu/10119840525045.htm |title=法律第四十五号(昭五九・五・二五) |publisher=衆議院 |accessdate=2021-10-30}}</ref>)</small>
=== 改正前 ===
==== 昭和25年5月4日法律第147号 ====
(帰化)
; 第3条
# 日本国民でない者(以下「外国人」という。)は、帰化によつて、日本の国籍を取得することができる。
# 帰化をするには、法務総裁の許可を得なければならない。
==== 旧国籍法(明治32年3月15日法律第66号) ====
; 第7条
: 外国人ハ内務大臣ノ許可ヲ得テ帰化ヲ為スコトヲ得
: 内務大臣ハ左ノ条件ヲ具備スル者ニ非サレハ其帰化ヲ許可スルコトヲ得ス
# 引続キ5年以上日本ニ住所ヲ有スルコト
# 満20年以上ニシテ本国法ニ依リ能力ヲ有スルコト
# 品行端正ナルコト
# 独立ノ生計ヲ営ムニ足ルヘキ資産又ハ技能アルコト
# 国籍ヲ有セス又ハ日本ノ国籍ノ取得ニ因リテ其国籍ヲ失フヘキコト
=== 翻訳 ===
(Naturalization)<ref>{{Cite web |url=https://www.japaneselawtranslation.go.jp/ja/laws/view/4713 |title=国籍法 |website=日本法令外国語訳DBシステム |publisher=法務省 |accessdate=2024-11-27}}</ref>
; Article 4
# A person who is not a Japanese citizen (referred to below as a "foreign national") may acquire Japanese citizenship through naturalization.
# To undergo naturalization, permission of the Minister of Justice must be obtained.
== 解説 ==
本条は、日本国民でない者(外国人)の自己の意思による申請に対して、国家が審査を経て国籍の付与を認めるという「[[w:帰化|帰化]]」による日本国籍の取得について規定している。旧国籍法7条1項から現在に到るまで、許可を求める相手が変えられただけで、内容に変更は加えられていない。
このような規定の下における帰化は、(1)外国人が国籍を取得しようとする国家に対して国籍の付与を求める意思、(2)外国人がその意思に基づいて行う帰化の許可申請、(3)国家による国籍付与、の3つが帰化に不可欠な要因とされる。
帰化の条件等に関する規定は5-9条、帰化の効力に関する規定は10条に規定されている。
== 参照条文 ==
* [[国籍法第5条]]
* [[国籍法第6条]]
* [[国籍法第7条]]
* [[国籍法第8条]]
* [[国籍法第9条]]
* [[国籍法第10条]]
== 判例 ==
* 最高裁判所大法廷判決、昭和31年7月18日、昭和25年(オ)第206号、『[https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=57171 国籍不存在確認請求事件]』、最高裁判所民事判例集10巻7号890頁。
== 脚注 ==
{{reflist}}
== 参考文献 ==
* {{Cite book |和書 |author=木棚照一 |date=2021-04-06 |title=逐条国籍法 ―課題の解明と条文の解説― |publisher=日本加除出版 |isbn=9784817847171}}
== 外部リンク ==
* [https://www.moj.go.jp/ONLINE/NATIONALITY/6-2.html 法務省:帰化許可申請]
{{stub}}
{{前後
|[[コンメンタール国籍法|国籍法]]
|
|[[国籍法第3条]]<br />(認知された子の国籍の取得)
|[[国籍法第5条]]<br />
}}
[[category:国籍法|04]]
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国籍法第5条
0
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2024-11-27T12:29:00Z
Fukupow
34984
/* 翻訳 */ 追加
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wikitext
text/x-wiki
{{Pathnav|法学|コンメンタール|コンメンタール国籍法|frame=1}}
== 条文 ==
; 第5条
# 法務大臣は、次の条件を備える外国人でなければ、その帰化を許可することができない。
## 引き続き5年以上日本に住所を有すること。
## 18歳以上で本国法によつて行為能力を有すること。
## 素行が善良であること。
## 自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によつて生計を営むことができること。
## 国籍を有せず、又は日本の国籍の取得によつてその国籍を失うべきこと。
## 日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを企て、若しくは主張し、又はこれを企て、若しくは主張する政党その他の団体を結成し、若しくはこれに加入したことがないこと。
# 法務大臣は、外国人がその意思にかかわらずその国籍を失うことができない場合において、日本国民との親族関係又は境遇につき特別の事情があると認めるときは、その者が前項第5号に掲げる条件を備えないときでも、帰化を許可することができる。
: <small>(昭和27年7月31日法律第268号改正<ref>{{Cite web |url=https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_housei.nsf/html/houritsu/01319520731268.htm |title=法律第二百六十八号(昭二七・七・三一) |publisher=衆議院 |accessdate=2024-11-17}}</ref>、昭和59年5月25日法律第45号旧第4条繰下・改正<ref>{{Cite web |url=https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_housei.nsf/html/houritsu/10119840525045.htm |title=法律第四十五号(昭五九・五・二五) |publisher=衆議院 |accessdate=2024-11-17}}</ref>、平成16年12月1日法律第147号改正<ref>{{Cite web |url=https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_housei.nsf/html/housei/16120041201147.htm |title=法律第百四十七号(平一六・一二・一) |publisher=衆議院 |accessdate=2024-11-17}}</ref>、平成30年6月20日法律第59号改正<ref>{{Cite web |url=https://www.shugiin.go.jp/Internet/itdb_housei.nsf/html/housei/19620180620059.htm |title=法律第五十九号(平三〇・六・二〇) |publisher=衆議院 |accessdate=2024-11-17}}</ref>)</small>
=== 改正前 ===
==== 昭和25年5月4日法律第147号 ====
; 第4条
: 法務総裁は、左の条件を備える外国人でなければ、その帰化を許可することができない。
# 引き続き5年以上日本に住所を有すること。
# 20歳以上で本国法によつて能力を有すること。
# 素行が善良であること。
# 独立の生計を営むに足りる資産又は技能があること。
# 国籍を有せず、又は日本の国籍の取得によつてその国籍を失うべきこと。
# 日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを企て、若しくは主張し、又はこれを企て、若しくは主張する政党その他の団体を結成し、若しくはこれに加入したことがないこと。
==== 旧国籍法(明治32年3月15日法律第66号) ====
; 第7条
: 外国人ハ内務大臣ノ許可ヲ得テ帰化ヲ為スコトヲ得
: 内務大臣ハ左ノ条件ヲ具備スル者ニ非サレハ其帰化ヲ許可スルコトヲ得ス
# 引続キ5年以上日本ニ住所ヲ有スルコト
# 満20年以上ニシテ本国法ニ依リ能力ヲ有スルコト
# 品行端正ナルコト
# 独立ノ生計ヲ営ムニ足ルヘキ資産又ハ技能アルコト
# 国籍ヲ有セス又ハ日本ノ国籍ノ取得ニ因リテ其国籍ヲ失フヘキコト
=== 翻訳 ===
; Article 5<ref>{{Cite web |url=https://www.japaneselawtranslation.go.jp/ja/laws/view/4713 |title=国籍法 |website=日本法令外国語訳DBシステム |publisher=法務省 |accessdate=2024-11-27}}</ref>
# The Minister of Justice may not permit naturalization for a foreign national who does not meet the following conditions:
## having continuously had a domicile in Japan for five years or more;
## being eighteen years of age or older and having the capacity to act independently according to the person's national law;
## being a person of good conduct;
## being able to make a living through the person's own assets or skills, or through those of the spouse or other relatives who share living expenses among them;
## not having a nationality or having to give up the person's nationality upon the acquisition of Japanese citizenship; and
## on or after the date on which the Constitution of Japan comes into effect, not having planned or advocated the destruction of the Constitution of Japan or the government established under the Constitution with force, and not having formed or joined a political party or other organization planning or advocating the destruction with force.
# If a foreign national is unable to give up their nationality despite their intention, the Minister of Justice may permit naturalization if special circumstances are found concerning a familial relationship or circumstances with a Japanese citizen even if that foreign national does not meet the conditions listed in the preceding paragraph, item (v).
== 解説 ==
本条は、一般的な外国人に対して法務大臣が[[w:帰化|帰化]]の許可を与える条件を規定している。帰化の許可については、法律上の条件があれば当然に帰化をする権利を認める「権利帰化」と、帰化の条件を備えても帰化の許否は国家の裁量に委ねられる「裁量帰化」の2つの類型があり、日本は後者の「裁量帰化」のみを採用している。したがって、本条の条件を全て満たしたとしても、それは「日本に帰化するための最低限の条件<ref>{{Cite web |url=https://www.moj.go.jp/MINJI/minji78.html#a09 |title=国籍Q&A:Q9:帰化の条件には,どのようなものがありますか? |publisher=法務省 |accessdate=2021-10-30}}</ref>」に過ぎず、必ず帰化が許可されるとは限らない。
本条が規定する条件は、(1)居住条件、(2)能力条件、(3)素行条件、(4)生計条件、(5)重国籍防止条件、(6)憲法遵守条件、の6つの条件である。重国籍防止条件については、第2項に例外規定が設置されている。すなわち、外国人が現時点で所属する国の法律の規定によって本人の意思によってその国の国籍を喪失することができない場合において、配偶者や子などの親族が日本国民であることにより日本と密接な関係であること、難民の受け入れなど人道上の配慮を要する境遇であることなど、特別の事情があるときは、重国籍防止条件を備えていなくても帰化が許可される場合がある。
== 参照条文 ==
* [[民法第22条]](住所)
* [[民法第143条]](暦による期間の計算)
* [[国籍法第4条]](帰化)
== 脚注 ==
{{reflist}}
== 参考文献 ==
* {{Cite book |和書 |author=木棚照一 |date=2021-04-06 |title=逐条国籍法 ―課題の解明と条文の解説― |publisher=日本加除出版 |isbn=9784817847171}}
{{stub}}
{{前後
|[[コンメンタール国籍法|国籍法]]
|
|[[国籍法第4条]]<br />(帰化)
|[[国籍法第6条]]
}}
[[category:国籍法|05]]
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国籍法第6条
0
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2024-11-27T12:31:27Z
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/* 翻訳 */ 追加
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text/x-wiki
{{Pathnav|法学|コンメンタール|コンメンタール国籍法|frame=1}}
== 条文 ==
; 第6条
: 次の各号の一に該当する外国人で現に日本に住所を有するものについては、法務大臣は、その者が前条第1項第1号に掲げる条件を備えないときでも、帰化を許可することができる。
# 日本国民であつた者の子(養子を除く。)で引き続き3年以上日本に住所又は居所を有するもの
# 日本で生まれた者で引き続き3年以上日本に住所若しくは居所を有し、又はその父若しくは母(養父母を除く。)が日本で生まれたもの
# 引き続き10年以上日本に居所を有する者
: <small>(昭和27年7月31日法律第268号改正<ref>{{Cite web |url=https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_housei.nsf/html/houritsu/01319520731268.htm |title=法律第二百六十八号(昭二七・七・三一) |publisher=衆議院 |accessdate=2021-10-30}}</ref>、昭和59年5月25日法律第45号旧第5条繰下・改正<ref>{{Cite web |url=https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_housei.nsf/html/houritsu/10119840525045.htm |title=法律第四十五号(昭五九・五・二五) |publisher=衆議院 |accessdate=2021-10-30}}</ref>)</small>
=== 改正前 ===
==== 昭和25年5月4日法律第147号 ====
; 第5条
: 左の各号の一に該当する外国人で現に日本に住所を有するものについては、法務総裁は、その者が前条第1号に掲げる条件を備えないときでも、帰化を許可することができる。
# 日本国民の夫で引き続き3年以上日本に住所又は居所を有するもの
# 日本国民であつた者の子(養子を除く。)で引き続き3年以上日本に住所又は居所を有するもの
# 日本で生れた者で引き続き3年以上日本に住所若しくは居所を有し、又はその父若しくは母(養父母を除く。)が日本で生れたもの
# 引き続き10年以上日本に居所を有する者
==== 旧国籍法(明治32年3月15日法律第66号) ====
; 第9条
# 左ニ掲ケタル外国人カ現ニ日本ニ住所ヲ有スルトキハ第7条第2項第1号ノ条件ヲ具備セサルトキト雖モ帰化ヲ為スコトヲ得
## 父又ハ母ノ日本人タリシ者
## 妻ノ日本人タリシ者
## 日本ニ於テ生マレタル者
## 引続キ10年以上日本ニ居所ヲ有スル者
# 前項第1号乃至第3号ニ掲ケタル者ハ引続キ3年以上日本ニ居所ヲ有スルニ非サレハ帰化ヲ為スコトヲ得ス但第3号ニ掲ケタル者ノ父又ハ母カ日本ニ於テ生マレタル者ナルトキハ此限ニ在ラス
=== 翻訳 ===
; Article 6<ref>{{Cite web |url=https://www.japaneselawtranslation.go.jp/ja/laws/view/4713 |title=国籍法 |website=日本法令外国語訳DBシステム |publisher=法務省 |accessdate=2024-11-27}}</ref>
: The Minister of Justice may permit naturalization for a foreign national currently having a domicile in Japan who falls under one of the following items even if that person does not meet the conditions listed in the preceding Article, paragraph (1), item (i):
# a child (excluding an adopted child) of a former Japanese citizen, who has continuously had a domicile or residence in Japan for three years or more;
# a person born in Japan and continuously having had a domicile or residence in Japan for three years or more or whose father or mother (excluding an adoptive parent) was born in Japan; or
# a person who has resided in Japan continuously for ten years or more.
== 解説 ==
本条は、日本国民と一定の血縁関係を有するか、日本国と一定の地縁関係を有する外国人のうち、現に日本国に住所を有する者については、帰化の条件の1つである居住条件(5条1項1号)を必要としないことを規定している。
昭和59年改正前は、「日本国民の夫で引き続き3年以上日本に住所又は居所を有するもの」という条件が挙げられており、また、6条の規定では「日本国民の妻」は居住条件のほかに能力条件、生計条件が免除されていた。すなわち、日本国民の夫となる外国人が帰化する際には3年以上の居住が条件となり、日本国民の妻となる外国人が帰化する際には日本に居住したことがなくとも帰化条件を満たすことになっていた。この条件は、昭和59年改正において削除され、両性における帰化条件の平等化が図られた。
== 参照条文 ==
* 女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約第9条
* [[国籍法第4条]](帰化)
* [[国籍法第5条]]
== 脚注 ==
{{reflist}}
== 参考文献 ==
* {{Cite book |和書 |author=木棚照一 |date=2021-04-06 |title=逐条国籍法 ―課題の解明と条文の解説― |publisher=日本加除出版 |isbn=9784817847171}}
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{{前後
|[[コンメンタール国籍法|国籍法]]
|
|[[国籍法第5条]]
|[[国籍法第7条]]
}}
[[category:国籍法|06]]
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国籍法第7条
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{{Pathnav|法学|コンメンタール|コンメンタール国籍法|frame=1}}
== 条文 ==
; 第7条
: 日本国民の配偶者たる外国人で引き続き3年以上日本に住所又は居所を有し、かつ、現に日本に住所を有するものについては、法務大臣は、その者が第5条第1項第1号及び第2号の条件を備えないときでも、帰化を許可することができる。日本国民の配偶者たる外国人で婚姻の日から3年を経過し、かつ、引き続き1年以上日本に住所を有するものについても、同様とする。
: <small>(昭和59年5月25日法律第45号追加<ref>{{Cite web |url=https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_housei.nsf/html/houritsu/10119840525045.htm |title=法律第四十五号(昭五九・五・二五) |publisher=衆議院 |accessdate=2021-10-30}}</ref>)</small>
=== 翻訳 ===
; Article 7<ref>{{Cite web |url=https://www.japaneselawtranslation.go.jp/ja/laws/view/4713 |title=国籍法 |website=日本法令外国語訳DBシステム |publisher=法務省 |accessdate=2024-11-27}}</ref>
: The Minister of Justice may permit naturalization of a foreign national who is a spouse of a Japanese citizen and continuously has had a domicile or residence in Japan for three years or more, and currently has a domicile in Japan even if that person does not meet the conditions listed in Article 5, paragraph (1), item (i) and item (ii). The same applies to a foreign national whose spouse is a Japanese citizen, and three years have passed since the date of their marriage, and the foreign national has continuously maintained a domicile in Japan for one year or more.
== 解説 ==
本条は、日本国民の配偶者である外国人について、一定の条件を満たせば[[w:帰化|帰化]]の条件の1つである居住条件(5条1項1号)、能力条件(5条1項2号)を必要としないことを規定している。本条が追加される前は、日本国民の夫であるか妻であるかにより、その外国人の帰化の条件の免除要件が異なっていた。これは、[[w:男女同権|男女同権]]の理念から望ましくなく、[[w:女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約|女子差別撤廃条約]]にも相容れない取り扱いとなったため、本条により帰化条件の両性の平等化が図られた。
== 参照条文 ==
* 女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約第9条
* [[国籍法第4条]](帰化)
* [[国籍法第5条]]
== 脚注 ==
{{reflist}}
== 参考文献 ==
* {{Cite book |和書 |author=木棚照一 |date=2021-04-06 |title=逐条国籍法 ―課題の解明と条文の解説― |publisher=日本加除出版 |isbn=9784817847171}}
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{{前後
|[[コンメンタール国籍法|国籍法]]
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|[[国籍法第6条]]
|[[国籍法第8条]]
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[[category:国籍法|07]]
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国籍法第8条
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text/x-wiki
{{Pathnav|法学|コンメンタール|コンメンタール国籍法|frame=1}}
== 条文 ==
; 第8条
: 次の各号の一に該当する外国人については、法務大臣は、その者が第5条第1項第1号、第2号及び第4号の条件を備えないときでも、帰化を許可することができる。
# 日本国民の子(養子を除く。)で日本に住所を有するもの
# 日本国民の養子で引き続き1年以上日本に住所を有し、かつ、縁組の時本国法により未成年であつたもの
# 日本の国籍を失つた者(日本に帰化した後日本の国籍を失つた者を除く。)で日本に住所を有するもの
# 日本で生まれ、かつ、出生の時から国籍を有しない者でその時から引き続き3年以上日本に住所を有するもの
: <small>(昭和27年7月31日法律第268号改正<ref>{{Cite web |url=https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_housei.nsf/html/houritsu/01319520731268.htm |title=法律第二百六十八号(昭二七・七・三一) |publisher=衆議院 |accessdate=2021-10-30}}</ref>、昭和59年5月25日法律第45号旧第6条繰下・改正<ref>{{Cite web |url=https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_housei.nsf/html/houritsu/10119840525045.htm |title=法律第四十五号(昭五九・五・二五) |publisher=衆議院 |accessdate=2021-10-30}}</ref>)</small>
=== 改正前 ===
==== 昭和25年5月4日法律第147号 ====
; 第6条
: 左の各号の一に該当する外国人については、法務総裁は、その者が第4条第1号、第2号及び第4号の条件を備えないときでも、帰化を許可することができる。
# 日本国民の妻
# 日本国民の子(養子を除く。)で日本に住所を有するもの
# 日本国民の養子で引き続き1年以上日本に住所を有し、且つ、縁組の時本国法により未成年であつたもの
# 日本の国籍を失つた者(日本に帰化した後日本の国籍を失つた者を除く。)で日本に住所を有するもの
==== 旧国籍法(明治32年3月15日法律第66号) ====
; 第10条
: 外国人ノ父又ハ母カ日本人ナル場合ニ於テ其外国人カ現ニ日本ニ住所ヲ有スルトキハ第7条第2項第1号、第2号及ヒ第4号ノ条件ヲ具備セサルトキト雖モ帰化ヲ為スコトヲ得
; 第14条
: 日本ノ国籍ヲ取得シタル者ノ妻カ前条ノ規定ニ依リテ日本ノ国籍ヲ取得セサリシトキハ第7条第2項ニ掲ケタル条件ヲ具備セサルトキト雖モ帰化ヲ為スコトヲ得
; 第25条
: 婚姻ニ因リテ日本ノ国籍ヲ失ヒタル者カ婚姻解消ノ後日本ニ住所ヲ有スルトキハ内務大臣ノ許可ヲ得テ日本ノ国籍ヲ回復スルコトヲ得
; 第26条
: 第20条又ハ第21条ノ規定ニ依リテ日本ノ国籍ヲ失ヒタル者カ日本ニ住所ヲ有スルトキハ内務大臣ノ許可ヲ得テ日本ノ国籍ヲ回復スルコトヲ得但第16条ニ掲ケタル者カ日本ノ国籍ヲ失ヒタル場合ハ此限ニ在ラス
=== 翻訳 ===
; Article 8<ref>{{Cite web |url=https://www.japaneselawtranslation.go.jp/ja/laws/view/4713 |title=国籍法 |website=日本法令外国語訳DBシステム |publisher=法務省 |accessdate=2024-11-27}}</ref>
: The Minister of Justice may permit naturalization of a foreign national who falls under one of the following items even if that person does not meet the conditions listed in Article 5, paragraph (1), item (i), item (ii), and item (iv):
# a person who is a child (excluding an adopted child) of a Japanese citizen and has a domicile in Japan;
# a person who is an adopted child of a Japanese citizen, continuously has had a domicile in Japan for one year or more, and was a minor according to the person's national law at the time of adoption;
# a person who has lost their Japanese citizenship (excluding a person who has lost their Japanese citizenship after naturalization to Japanese citizenship) and has a domicile in Japan; or
# a person who was born in Japan, has been continuously without any nationality since their birth and has continuously domiciled in Japan for three years or more since that time.
== 解説 ==
本条は、6条、7条に規定する者よりも更に日本社会と密接な関係を有する者に対し、居住条件(5条1項1号)、能力条件(5条1項2号)、生計条件(5条1項4号)を免除することを規定している。
== 参照条文 ==
* [[国籍法第4条]](帰化)
* [[国籍法第5条]]
== 脚注 ==
{{reflist}}
== 参考文献 ==
* {{Cite book |和書 |author=木棚照一 |date=2021-04-06 |title=逐条国籍法 ―課題の解明と条文の解説― |publisher=日本加除出版 |isbn=9784817847171}}
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{{前後
|[[コンメンタール国籍法|国籍法]]
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|[[国籍法第7条]]
|[[国籍法第9条]]
}}
[[category:国籍法|08]]
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国籍法第9条
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text/x-wiki
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== 条文 ==
; 第9条
: 日本に特別の功労のある外国人については、法務大臣は、第5条第1項の規定にかかわらず、国会の承認を得て、その帰化を許可することができる。
: <small>(昭和27年7月31日法律第268号改正<ref>{{Cite web |url=https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_housei.nsf/html/houritsu/01319520731268.htm |title=法律第二百六十八号(昭二七・七・三一) |publisher=衆議院 |accessdate=2021-10-30}}</ref>、昭和59年5月25日法律第45号旧第7条繰下・改正<ref>{{Cite web |url=https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_housei.nsf/html/houritsu/10119840525045.htm |title=法律第四十五号(昭五九・五・二五) |publisher=衆議院 |accessdate=2021-10-30}}</ref>)</small>
=== 改正前 ===
==== 昭和25年5月4日法律第147号 ====
; 第7条
: 日本に特別の功労のある外国人については、法務総裁は、第4条の規定にかかわらず、国会の承認を得て、その帰化を許可することができる。
==== 旧国籍法(明治32年3月15日法律第66号) ====
; 第11条
: 日本ニ特別ノ功労アル外国人ハ第7条第2項ノ規定ニ拘ハラス内務大臣勅裁ヲ経テ其帰化ヲ許可スルコトヲ得
; 第16条
: 帰化人、帰化人ノ子ニシテ日本ノ国籍ヲ取得シタル者及ヒ日本人ノ養子又ハ入夫ト為リタル者ハ左ニ掲ケタル権利ヲ有セス
:# 国務大臣ト為ルコト
:# 枢密院ノ議長、副議長又ハ顧問官ト為ルコト
:# 宮内勅任官ト為ルコト
:# 特命全権公使ト為ルコト
:# 陸海軍ノ将官ト為ルコト
:# 大審院長、会計検査院長又ハ行政裁判所長官ト為ルコト
:# 帝国議会ノ議員ト為ルコト
; 第17条
: 前条ニ定メタル制限ハ第11条ノ規定ニ依リテ帰化ヲ許可シタル者ニ付テハ国籍取得ノ時ヨリ5年ノ後其他ノ者ニ付テハ10年ノ後内務大臣勅裁ヲ経テ之ヲ解除スルコトヲ得
=== 翻訳 ===
; Article 9<ref>{{Cite web |url=https://www.japaneselawtranslation.go.jp/ja/laws/view/4713 |title=国籍法 |website=日本法令外国語訳DBシステム |publisher=法務省 |accessdate=2024-11-27}}</ref>
: The Minister of Justice may permit naturalization of a foreign national who has distinguished contributions to Japan, with the approval of the Diet, notwithstanding the provisions of Article 5, paragraph (1).
== 解説 ==
本条は、日本に特別の功労のある外国人について、5条1項に規定する帰化の条件を一切備えない場合であっても、法務大臣は国会の承認を得て、その外国人の帰化を許可することができることを規定する。通常「大帰化」「名誉帰化」と呼ばれる。
旧国籍法施行の1899年(明治32年)から2020年(令和2年)までにおいて、この規定が適用された事例はないため、本条の具体的な基準は明らかでない。
== 参照条文 ==
* [[国籍法第4条]](帰化)
* [[国籍法第5条]]
== 脚注 ==
{{reflist}}
== 参考文献 ==
* {{Cite book |和書 |author=木棚照一 |date=2021-04-06 |title=逐条国籍法 ―課題の解明と条文の解説― |publisher=日本加除出版 |isbn=9784817847171}}
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{{前後
|[[コンメンタール国籍法|国籍法]]
|
|[[国籍法第8条]]
|[[国籍法第10条]]
}}
[[category:国籍法|09]]
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国籍法第10条
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== 条文 ==
; 第10条
# 法務大臣は、帰化を許可したときは、官報にその旨を告示しなければならない。
# 帰化は、前項の告示の日から効力を生ずる。
: <small>(昭和59年5月25日法律第45号追加<ref>{{Cite web |url=https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_housei.nsf/html/houritsu/10119840525045.htm |title=法律第四十五号(昭五九・五・二五) |publisher=衆議院 |accessdate=2021-10-30}}</ref>)</small>
=== 改正前 ===
==== 旧国籍法(明治32年3月15日法律第66号) ====
; 第12条
: 帰化ハ之ヲ官報ニ告示スルコトヲ要ス
: 帰化ハ其告示アリタル後ニ非サレハ之ヲ以テ善意ノ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス
=== 翻訳 ===
; Article 10<ref>{{Cite web |url=https://www.japaneselawtranslation.go.jp/ja/laws/view/4713 |title=国籍法 |website=日本法令外国語訳DBシステム |publisher=法務省 |accessdate=2024-11-27}}</ref>
# When permitting naturalization, the Minister of Justice must provide a public notice to that effect in the Official Gazette.
# Naturalization becomes effective as of the date of the public notice stated in the preceding paragraph.
== 解説 ==
本条は、[[w:法務大臣|法務大臣]]が[[w:帰化|帰化]]の許可をしたときは、[[w:官報|官報]]にその旨を告示しなければならないこと、帰化がその告示の日から効力を生じることを規定している。告示の日以降に帰化の許可を得た者から生まれた子は、その出生によって日本国籍を取得する。
== 参照条文 ==
* [[国籍法第2条]](出生による国籍の取得)
* [[国籍法第4条]](帰化)
== 脚注 ==
{{reflist}}
== 参考文献 ==
* {{Cite book |和書 |author=木棚照一 |date=2021-04-06 |title=逐条国籍法 ―課題の解明と条文の解説― |publisher=日本加除出版 |isbn=9784817847171}}
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{{前後
|[[コンメンタール国籍法|国籍法]]
|
|[[国籍法第9条]]
|[[国籍法第11条]]<br />(国籍の喪失)
}}
[[category:国籍法|10]]
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国籍法第11条
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text/x-wiki
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== 条文 ==
(国籍の喪失)
; 第11条
# 日本国民は、自己の志望によつて外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失う。
# 外国の国籍を有する日本国民は、その外国の法令によりその国の国籍を選択したときは、日本の国籍を失う。
: <small>(昭和59年5月25日法律第45号旧第8条繰下・改正<ref>{{Cite web |url=https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_housei.nsf/html/houritsu/10119840525045.htm |title=法律第四十五号(昭五九・五・二五) |publisher=衆議院 |accessdate=2021-10-30}}</ref>)</small>
=== 改正前 ===
==== 昭和25年5月4日法律第147号 ====
(国籍の喪失)
; 第8条
: 日本国民は、自己の志望によつて外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失う。
==== 旧国籍法(明治32年3月15日法律第66号) ====
; 第20条
: 自己ノ志望ニ依リテ外国ノ国籍ヲ取得シタル者ハ日本ノ国籍ヲ失フ
=== 翻訳 ===
(Loss of Citizenship)<ref>{{Cite web |url=https://www.japaneselawtranslation.go.jp/ja/laws/view/4713 |title=国籍法 |website=日本法令外国語訳DBシステム |publisher=法務省 |accessdate=2024-11-27}}</ref>
; Article 11
# When a Japanese citizen acquires the nationality of a foreign country at their own choice, that Japanese citizen loses Japanese citizenship.
# A Japanese citizen having the nationality of a foreign country loses Japanese citizenship when they select the nationality of that foreign country according to its laws and regulations.
== 解説 ==
本条は、日本国民が自己の志望によって外国国籍を取得・選択したときは、日本国籍を喪失することを規定している。
== 参照条文 ==
* [[w:日本国憲法第22条|日本国憲法第22条]]
* [[国籍法第12条]]
* [[国籍法第13条]]
== 判例 ==
* 最高裁判所第一小法廷判決、平成16年7月8日、平成12年(行ヒ)第149号、『[https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52308 国籍確認請求事件]』、最高裁判所民事判例集10巻7号890頁。
== 脚注 ==
{{reflist}}
== 参考文献 ==
* {{Cite book |和書 |author=木棚照一 |date=2021-04-06 |title=逐条国籍法 ―課題の解明と条文の解説― |publisher=日本加除出版 |isbn=9784817847171}}
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{{前後
|[[コンメンタール国籍法|国籍法]]
|
|[[国籍法第10条]]
|[[国籍法第12条]]
}}
[[category:国籍法|11]]
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国籍法第12条
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text/x-wiki
{{Pathnav|法学|コンメンタール|コンメンタール国籍法|frame=1}}
== 条文 ==
; 第12条
: 出生により外国の国籍を取得した日本国民で国外で生まれたものは、戸籍法(昭和22年法律第224号)の定めるところにより日本の国籍を留保する意思を表示しなければ、その出生の時にさかのぼつて日本の国籍を失う。
: <small>(昭和59年5月25日法律第45号旧第9条繰下・改正<ref>{{Cite web |url=https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_housei.nsf/html/houritsu/10119840525045.htm |title=法律第四十五号(昭五九・五・二五) |publisher=衆議院 |accessdate=2021-10-31}}</ref>)</small>)</small>
=== 改正前 ===
==== 昭和25年5月4日法律第147号 ====
; 第9条
: 外国で生れたことによつてその国の国籍を取得した日本国民は、戸籍法(昭和22年法律第224号)の定めるところにより日本の国籍を留保する意思を表示しなければ、その出生の時にさかのぼつて日本の国籍を失う。
=== 翻訳 ===
; Article 12<ref>{{Cite web |url=https://www.japaneselawtranslation.go.jp/ja/laws/view/4713 |title=国籍法 |website=日本法令外国語訳DBシステム |publisher=法務省 |accessdate=2024-11-27}}</ref>
: A Japanese citizen who acquired the nationality of a foreign country by birth and who was born abroad loses Japanese citizenship retroactive to the time of birth unless they indicate an intention to reserve Japanese citizenship pursuant to the provisions of the Family Register Act (Act No. 224 of 1947).
== 解説 ==
本条は、外国での出生により日本国籍と外国国籍を取得した者が、[[コンメンタール戸籍法|戸籍法]]に規定する、日本国籍を留保する意思表示をしなかった場合には、出生の時に遡って日本国籍を喪失することを規定している。
外国で出生した子の日本国籍を失わせないためには、その子の出生から3か月以内に、「日本国籍を留保する」欄に署名・押印した出生届を届け出なければならない<ref>{{Cite web |url=https://www.moj.go.jp/MINJI/minji78.html#a14 |title=国籍Q&A:Q14:国籍の留保とは,何ですか? |publisher=法務省 |accessdate=2021-10-31}}</ref><ref>{{Cite web |url=https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/todoke/koseki/index.html |title=戸籍・国籍関係届の届出について |publisher=外務省 |accessdate=2021-10-31}}</ref>。
== 参照条文 ==
* [[戸籍法第104条]]
== 判例 ==
* 最高裁判所第三小法廷判決、昭和24年12月20日、昭和24年(オ)第24号、『[https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=55951 国籍関係確認事件]』、最高裁判所民事判例集3巻12号507頁。
* 最高裁判所大法廷判決、昭和32年7月20日、昭和25年(オ)第318号、『[https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=57190 国籍関係確認請求事件]』、最高裁判所民事判例集11巻7号1314頁。
* 最高裁判所大法廷判決、昭和32年7月20日、昭和25年(オ)第318号、『[https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=57190 国籍関係確認請求事件]』、最高裁判所民事判例集11巻7号1314頁。
* 最高裁判所第一小法廷判決、平成16年7月8日、平成12年(行ヒ)第149号、『[https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52308 国籍確認請求事件]』、最高裁判所民事判例集10巻7号890頁。
* 最高裁判所第三小法廷判決、平成27年3月10日、平成25年(行ツ)第230号、『[https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=84928 国籍確認請求事件]』、最高裁判所民事判例集69巻2号265頁。
* 最高裁判所第二小法廷決定、平成29年5月17日、平成28年(許)第49号、『[https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=86753 市町村長の処分に対する不服申立て却下の審判に対する抗告審の取消決定に対する許可抗告事件]』、最高裁判所裁判集民事256号1頁。
== 脚注 ==
{{reflist}}
== 参考文献 ==
* {{Cite book |和書 |author=木棚照一 |date=2021-04-06 |title=逐条国籍法 ―課題の解明と条文の解説― |publisher=日本加除出版 |isbn=9784817847171}}
{{stub}}
{{前後
|[[コンメンタール国籍法|国籍法]]
|
|[[国籍法第11条]]<br />(国籍の喪失)
|[[国籍法第13条]]
}}
[[category:国籍法|12]]
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国籍法第13条
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/* 翻訳 */ 追加
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wikitext
text/x-wiki
{{Pathnav|法学|コンメンタール|コンメンタール国籍法|frame=1}}
== 条文 ==
; 第13条
# 外国の国籍を有する日本国民は、法務大臣に届け出ることによつて、日本の国籍を離脱することができる。
# 前項の規定による届出をした者は、その届出の時に日本の国籍を失う。
: <small>(昭和27年7月31日法律第268号改正<ref>{{Cite web |url=https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_housei.nsf/html/houritsu/01319520731268.htm |title=法律第二百六十八号(昭二七・七・三一) |publisher=衆議院 |accessdate=2021-10-30}}</ref>、昭和59年5月25日法律第45号旧第10条繰下・改正<ref>{{Cite web |url=https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_housei.nsf/html/houritsu/10119840525045.htm |title=法律第四十五号(昭五九・五・二五) |publisher=衆議院 |accessdate=2021-10-31}}</ref>)</small>
=== 改正前 ===
==== 昭和25年5月4日法律第147号 ====
; 第10条
# 外国の国籍を有する日本国民は、日本の国籍を離脱することができる。
# 国籍を離脱するには、法務総裁に届け出なければならない。
# 国籍を離脱した者は、日本の国籍を失う。
=== 翻訳 ===
; Article 13<ref>{{Cite web |url=https://www.japaneselawtranslation.go.jp/ja/laws/view/4713 |title=国籍法 |website=日本法令外国語訳DBシステム |publisher=法務省 |accessdate=2024-11-27}}</ref>
# A Japanese citizen having foreign nationality may renounce Japanese citizenship by notification to the Minister of Justice.
# The person making the notification pursuant to the provisions stated in the preceding paragraph loses Japanese citizenship at the time of the notification.
== 解説 ==
本条は、日本国籍と外国国籍を有する[[w:多重国籍|重国籍者]]について、法務大臣に国籍を離脱する届出を行った場合には、その届出の時から日本国籍を喪失することを規定している。本条の規定では、日本国籍しか有していない日本国民が国籍を離脱して無国籍者となることを認めていない。
== 参照条文 ==
* [[w:日本国憲法第22条|日本国憲法第22条]]
== 判例 ==
* 最高裁判所第一小法廷判決、平成16年7月8日、平成12年(行ヒ)第149号、『[https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52308 国籍確認請求事件]』、最高裁判所民事判例集10巻7号890頁。
== 脚注 ==
{{reflist}}
== 参考文献 ==
* {{Cite book |和書 |author=木棚照一 |date=2021-04-06 |title=逐条国籍法 ―課題の解明と条文の解説― |publisher=日本加除出版 |isbn=9784817847171}}
== 外部リンク ==
* [https://www.moj.go.jp/ONLINE/NATIONALITY/6-3.html 法務省:国籍離脱の届出]
{{stub}}
{{前後
|[[コンメンタール国籍法|国籍法]]
|
|[[国籍法第12条]]
|[[国籍法第14条]]<br />(国籍の選択)
}}
[[category:国籍法|13]]
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国籍法第14条
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{{Pathnav|法学|コンメンタール|コンメンタール国籍法|frame=1}}
== 条文 ==
(国籍の選択)
; 第14条
# 外国の国籍を有する日本国民は、外国及び日本の国籍を有することとなつた時が18歳に達する以前であるときは20歳に達するまでに、その時が18歳に達した後であるときはその時から2年以内に、いずれかの国籍を選択しなければならない。
# 日本の国籍の選択は、外国の国籍を離脱することによるほかは、戸籍法の定めるところにより、日本の国籍を選択し、かつ、外国の国籍を放棄する旨の宣言(以下「選択の宣言」という。)をすることによつてする。
: <small>(昭和59年5月25日法律第45号追加<ref>{{Cite web |url=https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_housei.nsf/html/houritsu/10119840525045.htm |title=法律第四十五号(昭五九・五・二五) |publisher=衆議院 |accessdate=2024-11-17}}</ref>、平成30年6月20日法律第59号改正<ref>{{Cite web |url=https://www.shugiin.go.jp/Internet/itdb_housei.nsf/html/housei/19620180620059.htm |title=法律第五十九号(平三〇・六・二〇) |publisher=衆議院 |accessdate=2024-11-17}}</ref>)</small>
=== 改正前 ===
==== 昭和59年5月25日法律第45号 ====
(国籍の選択)
; 第14条
# 外国の国籍を有する日本国民は、外国及び日本の国籍を有することとなつた時が20歳に達する以前であるときは22歳に達するまでに、その時が20歳に達した後であるときはその時から2年以内に、いずれかの国籍を選択しなければならない。
# 日本の国籍の選択は、外国の国籍を離脱することによるほかは、戸籍法の定めるところにより、日本の国籍を選択し、かつ、外国の国籍を放棄する旨の宣言(以下「選択の宣言」という。)をすることによつてする。
=== 翻訳 ===
(Selection of Citizenship)<ref>{{Cite web |url=https://www.japaneselawtranslation.go.jp/ja/laws/view/4713 |title=国籍法 |website=日本法令外国語訳DBシステム |publisher=法務省 |accessdate=2024-11-27}}</ref>
; Article 14
# A Japanese citizen having a foreign nationality must select either one of the two before reaching twenty years of age if they obtain the foreign nationality and Japanese citizenship prior to becoming eighteen years of age, or within two years from that time if it is after.
# Other than by renouncing the foreign nationality, the selection of Japanese citizenship is accomplished by making a declaration of the Japanese citizenship selection and the renunciation of the foreign nationality (referred to below as "selection declaration") pursuant to the provisions of the Family Register Act.
== 解説 ==
本条は、日本国籍と外国国籍を有する[[w:多重国籍|重国籍者]]に対して、多重国籍を解消するために一定期間内に国籍を選択する義務を課すことを規定している。
== 参照条文 ==
* [[戸籍法第104条の2]]
* [[戸籍法第104条の3]]
== 脚注 ==
{{reflist}}
== 参考文献 ==
* {{Cite book |和書 |author=木棚照一 |date=2021-04-06 |title=逐条国籍法 ―課題の解明と条文の解説― |publisher=日本加除出版 |isbn=9784817847171}}
== 外部リンク ==
* [https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06.html 法務省:国籍の選択について]
* [https://www.moj.go.jp/ONLINE/NATIONALITY/6-4.html 法務省:国籍選択の届出]
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{{前後
|[[コンメンタール国籍法|国籍法]]
|
|[[国籍法第13条]]
|[[国籍法第15条]]
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[[category:国籍法|14]]
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国籍法第15条
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2024-11-27T12:52:03Z
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text/x-wiki
{{Pathnav|法学|コンメンタール|コンメンタール国籍法|frame=1}}
== 条文 ==
; 第15条
# 法務大臣は、外国の国籍を有する日本国民で前条第1項に定める期限内に日本の国籍の選択をしないものに対して、書面により、国籍の選択をすべきことを催告することができる。
# 前項に規定する催告は、これを受けるべき者の所在を知ることができないときその他書面によつてすることができないやむを得ない事情があるときは、催告すべき事項を官報に掲載してすることができる。この場合における催告は、官報に掲載された日の翌日に到達したものとみなす。
# 前2項の規定による催告を受けた者は、催告を受けた日から1月以内に日本の国籍の選択をしなければ、その期間が経過した時に日本の国籍を失う。ただし、その者が天災その他その責めに帰することができない事由によつてその期間内に日本の国籍の選択をすることができない場合において、その選択をすることができるに至つた時から2週間以内にこれをしたときは、この限りでない。
: <small>(昭和59年5月25日法律第45号追加<ref>{{Cite web |url=https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_housei.nsf/html/houritsu/10119840525045.htm |title=法律第四十五号(昭五九・五・二五) |publisher=衆議院 |accessdate=2021-10-31}}</ref>)</small>
=== 翻訳 ===
; Article 15<ref>{{Cite web |url=https://www.japaneselawtranslation.go.jp/ja/laws/view/4713 |title=国籍法 |website=日本法令外国語訳DBシステム |publisher=法務省 |accessdate=2024-11-27}}</ref>
# The Minister of Justice may make a written demand to any Japanese citizen having a foreign nationality, who has not selected Japanese citizenship within the prescribed time period as provided in the preceding Article, paragraph (1), that either selection must be made.
# The demand prescribed in the preceding paragraph may be made by publishing the matters demanded in the Official Gazette, if the location of the intended recipient is unknown or otherwise it cannot be accomplished by sending documents due to unavoidable circumstances. In these cases, the demand is deemed to have arrived on the day after the publication in the Official Gazette.
# The recipient of the demand made pursuant to the provisions of the preceding two paragraphs loses Japanese citizenship if the selection is not made within one month of receiving the demand upon expiration of the time period; provided, however, that this does not apply if the recipient is unable to select Japanese citizenship within the time period due to a natural disaster or other circumstances beyond the recipient's control, and the selection is made within two weeks of the time when the ability to make the selection is regained.
== 解説 ==
本条は、14条で定められた日本国籍と外国国籍を有する[[w:多重国籍|重国籍者]]が一定の期間内に日本国籍の選択をしない場合において、国籍選択の催告・効果について規定している。
法務大臣は、外国国籍を有する日本国民が期限内に日本国籍を選択しない場合において、国籍の選択をすべきことを催告することができる。催告を受けた者は、催告を受けた日から1ヶ月以内に日本国籍の選択をしなければ、日本国籍を喪失する。ただし、災害や病気などの事由で選択することができない場合には、その事由が止んで選択することができるようになった時から2週間以内以内に日本国籍を選択すれば、日本国籍を喪失しない。
== 参照条文 ==
* [[国籍法第14条]](国籍の選択)
== 脚注 ==
{{reflist}}
== 参考文献 ==
* {{Cite book |和書 |author=木棚照一 |date=2021-04-06 |title=逐条国籍法 ―課題の解明と条文の解説― |publisher=日本加除出版 |isbn=9784817847171}}
== 外部リンク ==
* [https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06.html 法務省:国籍の選択について]
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{{前後
|[[コンメンタール国籍法|国籍法]]
|
|[[国籍法第14条]]<br />(国籍の選択)
|[[国籍法第16条]]
}}
[[category:国籍法|15]]
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国籍法第16条
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2024-11-27T12:55:06Z
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text/x-wiki
{{Pathnav|法学|コンメンタール|コンメンタール国籍法|frame=1}}
== 条文 ==
; 第16条
# 選択の宣言をした日本国民は、外国の国籍の離脱に努めなければならない。
# 法務大臣は、選択の宣言をした日本国民で外国の国籍を失つていないものが自己の志望によりその外国の公務員の職(その国の国籍を有しない者であつても就任することができる職を除く。)に就任した場合において、その就任が日本の国籍を選択した趣旨に著しく反すると認めるときは、その者に対し日本の国籍の喪失の宣告をすることができる。
# 前項の宣告に係る聴聞の期日における審理は、公開により行わなければならない。
# 第2項の宣告は、官報に告示してしなければならない。
# 第2項の宣告を受けた者は、前項の告示の日に日本の国籍を失う。
: <small>(昭和59年5月25日法律第45号追加<ref>{{Cite web |url=https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_housei.nsf/html/houritsu/10119840525045.htm |title=法律第四十五号(昭五九・五・二五) |publisher=衆議院 |accessdate=2021-10-31}}</ref>、平成5年11月12日法律第89号改正<ref>{{Cite web |url=https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_housei.nsf/html/houritsu/12819931112089.htm |title=法律第八十九号(平五・一一・一二) |publisher=衆議院 |accessdate=2021-10-31}}</ref>)</small>
=== 改正前 ===
==== 昭和59年5月25日法律第45号 ====
; 第16条
# 選択の宣言をした日本国民は、外国の国籍の離脱に努めなければならない。
# 法務大臣は、選択の宣言をした日本国民で外国の国籍を失つていないものが自己の志望によりその外国の公務員の職(その国の国籍を有しない者であつても就任することができる職を除く。)に就任した場合において、その就任が日本の国籍を選択した趣旨に著しく反すると認めるときは、その者に対し日本の国籍の喪失の宣告をすることができる。
# 法務大臣は、前項の宣告をしようとするときは、当該宣告に係る者に対して、あらかじめ期日及び場所を指定して、公開による聴聞を行わなければならない。聴聞に際しては、その者に意見を述べ、及び証拠を提出する機会を与えなければならない。
# 第2項の宣告は、官報に告示してしなければならない。
# 第2項の宣告を受けた者は、前項の告示の日に日本の国籍を失う。
=== 翻訳 ===
; Article 16<ref>{{Cite web |url=https://www.japaneselawtranslation.go.jp/ja/laws/view/4713 |title=国籍法 |website=日本法令外国語訳DBシステム |publisher=法務省 |accessdate=2024-11-27}}</ref>
# A Japanese citizen who makes the selection declaration must try to renounce their foreign nationality.
# If a Japanese citizen having made the selection declaration and not having lost foreign nationality assumes the post of a government employee of that foreign country (with the exception of a post that may be assumed by a person not having the nationality of that country) on their own will, the Minister of Justice may pronounce loss of Japanese citizenship against the person if it is found that the assumption of the post is directly contrary to the gist of the selection of Japanese citizenship.
# The proceedings on the date of the hearing pertaining to the pronouncement stated in the preceding paragraph must be conducted open to the public.
# The pronouncement stated in paragraph (2) must be made by placing a public notice in the Official Gazette.
# The person subjected to the pronouncement stated in paragraph (2) loses Japanese citizenship as of the day of the public notice stated in the preceding paragraph.
== 解説 ==
本条は、日本国民が日本国籍の選択の宣言をした場合の効果、法務大臣ができる日本国籍の喪失の宣言について規定している。
== 参照条文 ==
* [[国籍法第14条]](国籍の選択)
== 脚注 ==
{{reflist}}
== 参考文献 ==
* {{Cite book |和書 |author=木棚照一 |date=2021-04-06 |title=逐条国籍法 ―課題の解明と条文の解説― |publisher=日本加除出版 |isbn=9784817847171}}
== 外部リンク ==
* [https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06.html 法務省:国籍の選択について]
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{{前後
|[[コンメンタール国籍法|国籍法]]
|
|[[国籍法第15条]]
|[[国籍法第17条]]<br />(国籍の再取得)
}}
[[category:国籍法|16]]
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国籍法第17条
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2024-11-27T12:56:47Z
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/* 翻訳 */ 追加
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text/x-wiki
{{Pathnav|法学|コンメンタール|コンメンタール国籍法|frame=1}}
== 条文 ==
(国籍の再取得)
; 第17条
# 第12条の規定により日本の国籍を失つた者で18歳未満のものは、日本に住所を有するときは、法務大臣に届け出ることによつて、日本の国籍を取得することができる。
# 第15条第2項の規定による催告を受けて同条第3項の規定により日本の国籍を失つた者は、第5条第1項第5号に掲げる条件を備えるときは、日本の国籍を失つたことを知つた時から1年以内に法務大臣に届け出ることによつて、日本の国籍を取得することができる。ただし、天災その他その者の責めに帰することができない事由によつてその期間内に届け出ることができないときは、その期間は、これをすることができるに至つた時から1月とする。
# 前2項の規定による届出をした者は、その届出の時に日本の国籍を取得する。
: <small>(昭和59年5月25日法律第45号追加<ref>{{Cite web |url=https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_housei.nsf/html/houritsu/10119840525045.htm |title=法律第四十五号(昭五九・五・二五) |publisher=衆議院 |accessdate=2024-11-17}}</ref>、平成30年6月20日法律第59号改正<ref>{{Cite web |url=https://www.shugiin.go.jp/Internet/itdb_housei.nsf/html/housei/19620180620059.htm |title=法律第五十九号(平三〇・六・二〇) |publisher=衆議院 |accessdate=2024-11-17}}</ref>)</small>
=== 改正前 ===
==== 昭和59年5月25日法律第45号 ====
(国籍の再取得)
; 第17条
# 第12条の規定により日本の国籍を失つた者で20歳未満のものは、日本に住所を有するときは、法務大臣に届け出ることによつて、日本の国籍を取得することができる。
# 第15条第2項の規定による催告を受けて同条第3項の規定により日本の国籍を失つた者は、第5条第1項第5号に掲げる条件を備えるときは、日本の国籍を失つたことを知つた時から1年以内に法務大臣に届け出ることによつて、日本の国籍を取得することができる。ただし、天災その他その者の責めに帰することができない事由によつてその期間内に届け出ることができないときは、その期間は、これをすることができるに至つた時から1月とする。
# 前2項の規定による届出をした者は、その届出の時に日本の国籍を取得する。
=== 翻訳 ===
(Reacquisition of Nationality)<ref>{{Cite web |url=https://www.japaneselawtranslation.go.jp/ja/laws/view/4713 |title=国籍法 |website=日本法令外国語訳DBシステム |publisher=法務省 |accessdate=2024-11-27}}</ref>
; Article 17
# A person who has lost Japanese citizenship pursuant to the provisions of Article 12 and is under eighteen years of age may acquire Japanese citizenship by notification to the Minister of Justice while domiciled in Japan.
# A person who receives the demand pursuant to the provisions of Article 15, paragraph (2) and loses Japanese citizenship pursuant to the provisions of paragraph (3) of that Article may acquire Japanese citizenship if they meet the conditions listed in Article 5, paragraph (1), item (v) by notification to the Minister of Justice within one year from the date of knowing the loss of Japanese citizenship; provided, however, that if notification cannot be made within that time period due to a natural disaster or other circumstances beyond the person's control, that time period is one month from the time when the ability to make the notification is regained.
# The person making notification pursuant to the provisions of the preceding two paragraphs acquires Japanese citizenship at the time of the notification.
== 解説 ==
本条は、一定の理由で日本国籍を喪失した者について、届出によって日本国籍の再取得を認めることについて規定している。
== 参照条文 ==
* [[国籍法第12条]]
* [[国籍法第15条]]
== 判例 ==
* 最高裁判所第三小法廷判決、平成27年3月10日、平成25年(行ツ)第230号、『[https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=84928 国籍確認請求事件]』、最高裁判所民事判例集69巻2号265頁。
== 脚注 ==
{{reflist}}
== 参考文献 ==
* {{Cite book |和書 |author=木棚照一 |date=2021-04-06 |title=逐条国籍法 ―課題の解明と条文の解説― |publisher=日本加除出版 |isbn=9784817847171}}
== 外部リンク ==
* [https://www.moj.go.jp/ONLINE/NATIONALITY/6-5.html 法務省:国籍再取得の届出]
{{stub}}
{{前後
|[[コンメンタール国籍法|国籍法]]
|
|[[国籍法第16条]]
|[[国籍法第18条]]<br />(法定代理人がする届出等)
}}
[[category:国籍法|17]]
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国籍法第18条
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2024-11-27T12:58:09Z
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/* 翻訳 */ 追加
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text/x-wiki
{{Pathnav|法学|コンメンタール|コンメンタール国籍法|frame=1}}
== 条文 ==
(法定代理人がする届出等)
; 第18条
: 第3条第1項若しくは前条第1項の規定による国籍取得の届出、帰化の許可の申請、選択の宣言又は国籍離脱の届出は、国籍の取得、選択又は離脱をしようとする者が15歳未満であるときは、法定代理人が代わつてする。
: <small>(昭和59年5月25日法律第45号追加<ref>{{Cite web |url=https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_housei.nsf/html/houritsu/10119840525045.htm |title=法律第四十五号(昭五九・五・二五) |publisher=衆議院 |accessdate=2021-10-31}}</ref>)</small>
=== 翻訳 ===
(Notification by a Legal Representative)<ref>{{Cite web |url=https://www.japaneselawtranslation.go.jp/ja/laws/view/4713 |title=国籍法 |website=日本法令外国語訳DBシステム |publisher=法務省 |accessdate=2024-11-27}}</ref>
; Article 18
: The notification of acquisition of citizenship pursuant to the provisions in Article 3, paragraph (1) or paragraph (1) of the preceding Article, application for naturalization permission, selection declaration, or notification of citizenship renouncement is made by a legal representative if the person acquiring nationality, making selection, or renouncing is under fifteen years of age.
== 解説 ==
本条は、国籍取得の届出、帰化の許可の申請、選択の宣言、国籍離脱の届出について、当事者本人が15歳未満であるときに[[w:法定代理人|法定代理人]]が代わってすることを規定している。
== 参照条文 ==
* [[国籍法第3条]](認知された子の国籍の取得)
* [[国籍法第4条]](帰化)
* [[国籍法第13条]]
* [[国籍法第14条]](国籍の選択)
* [[国籍法第17条]](国籍の再取得)
* [[民法第797条]](十五歳未満の者を養子とする縁組)
* [[民法第961条]](遺言能力)
== 脚注 ==
{{reflist}}
== 参考文献 ==
* {{Cite book |和書 |author=木棚照一 |date=2021-04-06 |title=逐条国籍法 ―課題の解明と条文の解説― |publisher=日本加除出版 |isbn=9784817847171}}
== 外部リンク ==
* [https://www.moj.go.jp/ONLINE/NATIONALITY/6-1.html 法務省:認知された子の国籍取得の届出]
* [https://www.moj.go.jp/ONLINE/NATIONALITY/6-2.html 法務省:帰化許可申請]
* [https://www.moj.go.jp/ONLINE/NATIONALITY/6-3.html 法務省:国籍離脱の届出]
* [https://www.moj.go.jp/ONLINE/NATIONALITY/6-4.html 法務省:国籍選択の届出]
* [https://www.moj.go.jp/ONLINE/NATIONALITY/6-5.html 法務省:国籍再取得の届出]
{{stub}}
{{前後
|[[コンメンタール国籍法|国籍法]]
|
|[[国籍法第17条]](国籍の再取得)
|[[国籍法第18条の2]]<br />(行政手続法の適用除外)
}}
[[category:国籍法|18]]
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国籍法第18条の2
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/* 翻訳 */ 追加
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text/x-wiki
{{Pathnav|法学|コンメンタール|コンメンタール国籍法|frame=1}}
== 条文 ==
(行政手続法の適用除外)
; 第18条の2
: 第15条第1項の規定による催告については、行政手続法(平成5年法律第88号)第36条の3の規定は、適用しない。
: <small>(平成26年6月13日法律第70号追加<ref>{{Cite web |url=https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_housei.nsf/html/housei/18620140613070.htm |title=法律第七十号(平二六・六・一三) |publisher=衆議院 |accessdate=2021-10-31}}</ref>)</small>
=== 翻訳 ===
(Exclusion from Application of the Administrative Procedure Act)<ref>{{Cite web |url=https://www.japaneselawtranslation.go.jp/ja/laws/view/4713 |title=国籍法 |website=日本法令外国語訳DBシステム |publisher=法務省 |accessdate=2024-11-27}}</ref>
; Article 18-2
: The provisions of Article 36-3 of the Administrative Procedure Act (Act No. 88 of 1993) do not apply to a demand pursuant to the provisions of Article 15, paragraph (1).
== 解説 ==
2014年(平成26年)に[[コンメンタール行政手続法|行政手続法]]の改正が行われ、行政庁に不服申立を行う制度の整備・拡充が行われた。しかし、この制度になじまないとされる特定の行政分野については、この規定の適用除外とすることも同時に定められた。本条は、15条1項に定める法務大臣の国籍の選択の催告は、その行政手続法第36条の3の規定の適用除外であることを規定している。
== 参照条文 ==
* [[国籍法第15条]]
* [[行政手続法第36条]]
== 脚注 ==
{{reflist}}
== 参考文献 ==
* {{Cite book |和書 |author=木棚照一 |date=2021-04-06 |title=逐条国籍法 ―課題の解明と条文の解説― |publisher=日本加除出版 |isbn=9784817847171}}
{{stub}}
{{前後
|[[コンメンタール国籍法|国籍法]]
|
|[[国籍法第18条]]<br />(法定代理人がする届出等)
|[[国籍法第19条]]<br />(省令への委任)
}}
[[category:国籍法|18の2]]
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国籍法第19条
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/* 翻訳 */ 追加
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text/x-wiki
{{Pathnav|法学|コンメンタール|コンメンタール国籍法|frame=1}}
== 条文 ==
(省令への委任)
; 第19条
: この法律に定めるもののほか、国籍の取得及び離脱に関する手続その他この法律の施行に関し必要な事項は、法務省令で定める。
: <small>(昭和59年5月25日法律第45号追加<ref>{{Cite web |url=https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_housei.nsf/html/houritsu/10119840525045.htm |title=法律第四十五号(昭五九・五・二五) |publisher=衆議院 |accessdate=2021-10-31}}</ref>)</small>
=== 翻訳 ===
(Delegation to Ministerial Order)<ref>{{Cite web |url=https://www.japaneselawtranslation.go.jp/ja/laws/view/4713 |title=国籍法 |website=日本法令外国語訳DBシステム |publisher=法務省 |accessdate=2024-11-27}}</ref>
; Article 19
: Procedures relating to acquisition and renouncement of citizenship as well as other required matters in effectuating this Act, not provided in this Act, are prescribed by Ministry of Justice Order.
== 解説 ==
本条は、国籍の取得・離脱に関する手続等を定めるために、[[コンメンタール国籍法施行規則|国籍法施行規則]]を定めることを規定している。
== 脚注 ==
{{reflist}}
== 参考文献 ==
* {{Cite book |和書 |author=木棚照一 |date=2021-04-06 |title=逐条国籍法 ―課題の解明と条文の解説― |publisher=日本加除出版 |isbn=9784817847171}}
{{stub}}
{{前後
|[[コンメンタール国籍法|国籍法]]
|
|[[国籍法第18条の2]]<br />(行政手続法の適用除外)
|[[国籍法第20条]]<br />(罰則)
}}
[[category:国籍法|19]]
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国籍法第20条
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2024-11-27T13:01:09Z
Fukupow
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/* 翻訳 */ 追加
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text/x-wiki
{{Pathnav|法学|コンメンタール|コンメンタール国籍法|frame=1}}
== 条文 ==
(罰則)
; 第20条
# 第3条第1項の規定による届出をする場合において、虚偽の届出をした者は、1年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する。
# 前項の罪は、刑法(明治40年法律第45号)第2条の例に従う。
: <small>(平成20年12月12日法律第88号追加<ref>{{Cite web |url=https://www.shugiin.go.jp/Internet/itdb_housei.nsf/html/housei/17020081212088.htm |title=法律第八十八号(平二〇・一二・一二) |publisher=衆議院 |accessdate=2021-10-31}}</ref>)</small>
=== 翻訳 ===
(Penal Provisions)<ref>{{Cite web |url=https://www.japaneselawtranslation.go.jp/ja/laws/view/4713 |title=国籍法 |website=日本法令外国語訳DBシステム |publisher=法務省 |accessdate=2024-11-27}}</ref>
; Article 20
# Regarding notification provided pursuant to the provisions of Article 3, paragraph (1), a person making a false notification is punishable by not more than one year of imprisonment or a fine of not more than two hundred thousand yen.
# The offense stated in the preceding paragraph is governed by the Penal Code (Act No. 45 of 1907), Article 2.
== 解説 ==
本条は、虚偽の国籍取得の届出をした者に対して罰則を科することを規定している。これは、日本国外で行われた場合にも適用される。
== 参照条文 ==
* [[国籍法第3条]](認知された子の国籍の取得)
* [[刑法第2条]](すべての者の国外犯)
== 脚注 ==
{{reflist}}
== 参考文献 ==
* {{Cite book |和書 |author=木棚照一 |date=2021-04-06 |title=逐条国籍法 ―課題の解明と条文の解説― |publisher=日本加除出版 |isbn=9784817847171}}
{{stub}}
{{前後
|[[コンメンタール国籍法|国籍法]]
|
|[[国籍法第19条]]<br />(省令への委任)
|-
}}
[[category:国籍法|20]]
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高等学校 化学
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2024-11-27T15:00:46Z
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text/x-wiki
{{pathnav|高等学校の学習|高等学校理科|高等学校化学|frame=1}}
この記事では高校化学の解説をする。無機物質では無機物質の性質について学ぶが、暗記が大きな比重を占める。有機化合物では炭素が関わる化合物について学ぶ。高分子化合物では分子量の大きい化合物について学ぶ。人間の体や服などの繊維は高分子化合物によって出来ている。
== 物質の状態 ==
* [[高校化学 結晶|結晶]]
* [[高校化学 物質の三態|物質の三態]]
* [[高校化学 気体の性質|気体の性質]]
* [[高校化学 溶液の性質|溶液の性質]]
== 物質の変化と平衡 ==
* [[高校化学 化学反応とエネルギー|化学反応とエネルギー]](2021年以前入学者用)
* [[高校化学 化学反応とエンタルピー|化学反応とエンタルピー]](2022年以降入学者用)
* [[高校化学 電池と電気分解|電池と電気分解]]
* [[高校化学 化学反応の速さ|化学反応の速さ]]
* [[高校化学 化学平衡|化学平衡]]
== 無機物質 ==
* [[高校化学 元素と周期表|元素と周期表]]
* [[高校化学 非金属元素|非金属元素]]
* [[高校化学 典型金属|典型金属]]
* [[高校化学 遷移金属|遷移金属]]
* [[高校化学 無機化学まとめ|無機化学まとめ]]
== 有機化合物 ==
* [[高等学校化学/有機化合物の特徴|有機化合物の特徴]]
* [[高校化学 脂肪族炭化水素|脂肪族炭化水素]]
* [[高校化学 酸素を含む脂肪族化合物|酸素を含む脂肪族化合物]]
* [[高校化学 芳香族化合物|芳香族化合物]]
* [[高校化学 有機化合物と人間生活|有機化合物と人間生活]]
== 高分子化合物 ==
* [[高校化学 天然高分子化合物|天然高分子化合物]]
* [[高校化学 合成高分子化合物|合成高分子化合物]]
[[カテゴリ:高等学校化学|*]]
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高等学校歴史総合/日本の開国とその影響
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過去執筆の事後処理(見直し・大幅修正)のため、本文を全て削除。
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text/x-wiki
[[小学校・中学校・高等学校の学習]]>[[高等学校の学習]]>[[高等学校地理歴史]]>[[高等学校歴史総合]]>日本の開国とその影響
== 日本の開国・開港 ==
== 交通革命の進展と東アジア ==
[[ファイル:Canal de Suez, el-Kantara LCCN2017656987.jpg|サムネイル|234x234ピクセル|スエズ運河の開通]]
[[カテゴリ:日本の歴史|かいこく]]
[[カテゴリ:高等学校歴史総合|にほんのかいこく]]
[[カテゴリ:19世紀]]
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高等学校歴史総合/社会主義革命
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2024-11-27T15:55:41Z
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/* 1920年代のソ連 */ 過去執筆の事後処理(見直し・大幅修正)本節の事後処理が完成。
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text/x-wiki
[[小学校・中学校・高等学校の学習]]>[[高等学校の学習]]>[[高等学校地理歴史]]>[[高等学校歴史総合]]>社会主義革命
詳しい内容は、「[[高等学校世界史探究|世界史探究]]」の「[[高等学校世界史探究/第一次世界大戦とロシア革命Ⅱ|第一次世界大戦とロシア革命Ⅱ]]」を見てください。本歴史総合では、簡単に記述します。
== 社会主義革命としてのロシア革命 ==
[[ファイル:ウラジーミル・レーニン 1920年5月の演説.jpg|サムネイル|324x324px|1920年5月の演説]]当時、ロシアは第一次世界大戦から食料も全然足りなくなりました。その結果、労働者がデモを始めたり、仕事を休んだりして、<span style="color:#f29100">'''三月革命'''</span>につながりました。ロシア帝国のニコライ2世は三月革命以降に皇帝を退いて、ロシア帝国も終わりを迎えました。その後、[[w:ウラジーミル・レーニン|ウラジーミル・レーニン]]が「もう戦争はやめましょう。国内政治はみんなで話し合って決めていきましょう。」と言い出しました。そして、<span style="color:#f29100">'''十一月革命'''</span>からウラジーミル・レーニンが新しく政権を取りました。ウラジーミル・レーニンは「他国から土地を奪ったりお金を取ったりしないで平和な話し合いをしましょう。そして、土地はみんなで分け合って使いましょう。」と他国に意見を出しました。その結果、ロシアはドイツとオーストリアの和解から第一次世界大戦の参加国を抜け出します。
ソヴィエト政権に対して、色んな人が反対しました。国内でも「元の帝国がいい。」とデモがありました。列強諸国も「社会主義が広がると困ります。」とソヴィエト政権の邪魔をしようとして戦争を始めました。当時の日本も列強諸国の味方になり、シベリアに軍隊を送りました。しかし、ソヴィエト政権は軍隊(赤軍)を強くしたり、デモを押さえたりして、大変な時期を何とか乗り越えました。
== 社会主義革命とその広がり ==
ソヴィエト政権は、世界中に共産主義の考え方を広めるために<span style="color:#f29100">'''コミンテルン'''</span>(第三インターナショナル)を作りました。共産主義の考え方はカール・マルクスとフリードリヒ・エンゲルスの『共産党宣言』を参考にしています。『共産党宣言』の内容は「誰でも平等な社会を作るために、みんなで分け合って使わなければならない。」と記しています。共産主義の考え方はドイツとかハンガリーで広まらず、アジアの民族運動で共産主義の考え方が広まっています。中国も共産主義の考え方から中国共産党が生まれました。さらに、日本・台湾・朝鮮でも共産党が出来ました。このように、東アジア全体で共産主義の考え方が広がりました。
== 1920年代のソ連 ==
1922年、ロシアはソビエト社会主義共和国連邦(ソ連)になり、益々大きな力を持つようになりました。1924年、ウラジーミル・レーニンが亡くなりました。その後、ヨシフ・スターリンが政権を取りました。ヨシフ・スターリンは自分と意見が合わない人を追い出しました。その一方で、五か年計画に基づいて工場を数多く作りました。この計画は成功して、他国の指導者も「私達もこんな風に国を発展させたい。」と憧れるようになりました。
[[カテゴリ:高等学校歴史総合|しやかいしゆきかくめい]]
[[カテゴリ:20世紀]]
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/* 1920年代のソ連 */ 重要用語を色太字化。
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[[小学校・中学校・高等学校の学習]]>[[高等学校の学習]]>[[高等学校地理歴史]]>[[高等学校歴史総合]]>社会主義革命
詳しい内容は、「[[高等学校世界史探究|世界史探究]]」の「[[高等学校世界史探究/第一次世界大戦とロシア革命Ⅱ|第一次世界大戦とロシア革命Ⅱ]]」を見てください。本歴史総合では、簡単に記述します。
== 社会主義革命としてのロシア革命 ==
[[ファイル:ウラジーミル・レーニン 1920年5月の演説.jpg|サムネイル|324x324px|1920年5月の演説]]当時、ロシアは第一次世界大戦から食料も全然足りなくなりました。その結果、労働者がデモを始めたり、仕事を休んだりして、<span style="color:#f29100">'''三月革命'''</span>につながりました。ロシア帝国のニコライ2世は三月革命以降に皇帝を退いて、ロシア帝国も終わりを迎えました。その後、[[w:ウラジーミル・レーニン|ウラジーミル・レーニン]]が「もう戦争はやめましょう。国内政治はみんなで話し合って決めていきましょう。」と言い出しました。そして、<span style="color:#f29100">'''十一月革命'''</span>からウラジーミル・レーニンが新しく政権を取りました。ウラジーミル・レーニンは「他国から土地を奪ったりお金を取ったりしないで平和な話し合いをしましょう。そして、土地はみんなで分け合って使いましょう。」と他国に意見を出しました。その結果、ロシアはドイツとオーストリアの和解から第一次世界大戦の参加国を抜け出します。
ソヴィエト政権に対して、色んな人が反対しました。国内でも「元の帝国がいい。」とデモがありました。列強諸国も「社会主義が広がると困ります。」とソヴィエト政権の邪魔をしようとして戦争を始めました。当時の日本も列強諸国の味方になり、シベリアに軍隊を送りました。しかし、ソヴィエト政権は軍隊(赤軍)を強くしたり、デモを押さえたりして、大変な時期を何とか乗り越えました。
== 社会主義革命とその広がり ==
ソヴィエト政権は、世界中に共産主義の考え方を広めるために<span style="color:#f29100">'''コミンテルン'''</span>(第三インターナショナル)を作りました。共産主義の考え方はカール・マルクスとフリードリヒ・エンゲルスの『共産党宣言』を参考にしています。『共産党宣言』の内容は「誰でも平等な社会を作るために、みんなで分け合って使わなければならない。」と記しています。共産主義の考え方はドイツとかハンガリーで広まらず、アジアの民族運動で共産主義の考え方が広まっています。中国も共産主義の考え方から中国共産党が生まれました。さらに、日本・台湾・朝鮮でも共産党が出来ました。このように、東アジア全体で共産主義の考え方が広がりました。
== 1920年代のソ連 ==
1922年、ロシアは<span style="color:#f29100">'''ソビエト社会主義共和国連邦'''</span>(ソ連)になり、益々大きな力を持つようになりました。1924年、ウラジーミル・レーニンが亡くなりました。その後、ヨシフ・スターリンが政権を取りました。ヨシフ・スターリンは自分と意見が合わない人を追い出しました。その一方で、五か年計画に基づいて工場を数多く作りました。この計画は成功して、他国の指導者も「私達もこんな風に国を発展させたい。」と憧れるようになりました。
[[カテゴリ:高等学校歴史総合|しやかいしゆきかくめい]]
[[カテゴリ:20世紀]]
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高等学校歴史総合/情報通信技術の発達
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/* 情報化社会とその課題 */ 過去執筆の事後処理(見直し・大幅修正)の当項目が完了。
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[[小学校・中学校・高等学校の学習]]>[[高等学校の学習]]>[[高等学校地理歴史]]>[[高等学校歴史総合]]>情報通信技術の発達
== 情報通信技術の発達と社会の変化 ==
== 情報化社会とその課題 ==
最近、スマートフォンとソーシャルネットワーキングサービス(SNS)が当たり前の世の中になって、世界中の人々と簡単に繋がるようになりました(情報化社会)。世界中の人々と簡単に繋がるようになると、自由に意見を言い合えたり、様々な情報を手に入れたり出来るようになりました。しかし、企業とか政府とかが私達の個人情報を管理するようになり、知らないうちに様々な場所で使われているかもしれません。また、誰でも簡単に情報を発信出来るようになると、フェイクニュースとヘイトスピーチが広がりやすくなるかもしれません。さらに、サイバー犯罪・ネット上での権利侵害も増えています。災害が起きたら、SNSで情報を素早く手に入りますが、間違った情報も同じくらい早く広がってしまいます。それから、情報化社会が進むと、情報弱者もうまれます。情報弱者は大切な情報を受け取れなくて困っています。
このように、様々な情報が溢れています。昔の出来事を本や資料でしっかり学んで、その情報が本当に正しいのかどうか見極められるようになりましょう。
[[カテゴリ:高等学校歴史総合]]
[[カテゴリ:情報技術]]
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== 情報通信技術の発達と社会の変化 ==
== 情報化社会とその課題 ==
スマートフォンとソーシャルネットワーキングサービス(SNS)が当たり前の世の中になると、世界中の人々と簡単に繋がるようになりました(情報化社会)。世界中の人々と簡単に繋がるようになると、自由に意見を言い合えたり、様々な情報を手に入れたり出来るようになりました。しかし、企業とか政府とかが私達の個人情報を管理するようになり、知らないうちに様々な場所で使われているかもしれません。また、誰でも簡単に情報を発信出来るようになると、フェイクニュースとヘイトスピーチが広がりやすくなるかもしれません。さらに、サイバー犯罪・ネット上での権利侵害も増えています。災害が起きたら、SNSで情報を素早く手に入りますが、間違った情報も同じくらい早く広がってしまいます。それから、情報化社会が進むと、情報弱者もうまれます。情報弱者は大切な情報を受け取れなくて困っています。
このように、様々な情報が溢れています。昔の出来事を本や資料でしっかり学んで、その情報が本当に正しいのかどうか見極められるようになりましょう。
[[カテゴリ:高等学校歴史総合]]
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2024-11-27T13:17:06Z
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/* 情報通信技術の発達と社会の変化 */ 過去執筆の事後処理(見直し・大幅修正)。当節の事後処理が完了。
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[[小学校・中学校・高等学校の学習]]>[[高等学校の学習]]>[[高等学校地理歴史]]>[[高等学校歴史総合]]>情報通信技術の発達
== 情報通信技術の発達と社会の変化 ==
戦後の情報通信技術の歴史を説明します。1970年代を迎えると、パーソナルコンピューター(パソコン)と携帯電話が生まれました。1990年代を迎えると、インターネットが世界中で使われるようになりました。2000年代を迎えると、スマートフォンが生まれます。個人でもスマートフォンから色んな情報をすぐに見たり発信したり出来るようになりました。
情報通信技術(ICT)の進化から私達の生活はかなり大きく変わりました(情報技術革命)。特にスマホとかパソコンが普及してから、日本の中心産業も製造業からサービス業に大きく変わりました。例えば、私達の周りを見ても分かるように、インターネット上で買い物をしたり、動画配信サービスで動画を見たり、音楽配信サービスで音楽を聴いたり、オンライン上でゲームを出来るようなサービスが当たり前になっています。
== 情報化社会とその課題 ==
スマートフォンとソーシャルネットワーキングサービス(SNS)が当たり前の世の中になると、世界中の人々と簡単に繋がるようになりました(情報化社会)。世界中の人々と簡単に繋がるようになると、自由に意見を言い合えたり、様々な情報を手に入れたり出来るようになりました。しかし、企業とか政府とかが私達の個人情報を管理するようになり、知らないうちに様々な場所で使われているかもしれません。また、誰でも簡単に情報を発信出来るようになると、フェイクニュースとヘイトスピーチが広がりやすくなるかもしれません。さらに、サイバー犯罪・ネット上での権利侵害も増えています。災害が起きたら、SNSで情報を素早く手に入りますが、間違った情報も同じくらい早く広がってしまいます。それから、情報化社会が進むと、情報弱者もうまれます。情報弱者は大切な情報を受け取れなくて困っています。
このように、様々な情報が溢れています。昔の出来事を本や資料でしっかり学んで、その情報が本当に正しいのかどうか見極められるようになりましょう。
[[カテゴリ:高等学校歴史総合]]
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/* 情報通信技術の発達と社会の変化 */ 重要用語を色太字化。
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[[小学校・中学校・高等学校の学習]]>[[高等学校の学習]]>[[高等学校地理歴史]]>[[高等学校歴史総合]]>情報通信技術の発達
== 情報通信技術の発達と社会の変化 ==
戦後の情報通信技術の歴史を説明します。1970年代を迎えると、パーソナルコンピューター(パソコン)と携帯電話が生まれました。1990年代を迎えると、インターネットが世界中で使われるようになりました。2000年代を迎えると、スマートフォンが生まれます。個人でもスマートフォンから色んな情報をすぐに見たり発信したり出来るようになりました。
情報通信技術(ICT)の進化から私達の生活はかなり大きく変わりました(<span style="color:#f29100">'''情報技術革命'''</span>)。特にスマホとかパソコンが普及してから、日本の中心産業も製造業からサービス業に大きく変わりました。例えば、私達の周りを見ても分かるように、インターネット上で買い物をしたり、動画配信サービスで動画を見たり、音楽配信サービスで音楽を聴いたり、オンライン上でゲームを出来るようなサービスが当たり前になっています。
== 情報化社会とその課題 ==
スマートフォンとソーシャルネットワーキングサービス(SNS)が当たり前の世の中になると、世界中の人々と簡単に繋がるようになりました(情報化社会)。世界中の人々と簡単に繋がるようになると、自由に意見を言い合えたり、様々な情報を手に入れたり出来るようになりました。しかし、企業とか政府とかが私達の個人情報を管理するようになり、知らないうちに様々な場所で使われているかもしれません。また、誰でも簡単に情報を発信出来るようになると、フェイクニュースとヘイトスピーチが広がりやすくなるかもしれません。さらに、サイバー犯罪・ネット上での権利侵害も増えています。災害が起きたら、SNSで情報を素早く手に入りますが、間違った情報も同じくらい早く広がってしまいます。それから、情報化社会が進むと、情報弱者もうまれます。情報弱者は大切な情報を受け取れなくて困っています。
このように、様々な情報が溢れています。昔の出来事を本や資料でしっかり学んで、その情報が本当に正しいのかどうか見極められるようになりましょう。
[[カテゴリ:高等学校歴史総合]]
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高等学校歴史総合/市場開放と経済の自由化
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/* 新自由主義の台頭 */ 過去執筆の事後処理(見直し・大幅修正)の当項目が完了。
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[[小学校・中学校・高等学校の学習]]>[[高等学校の学習]]>[[高等学校地理歴史]]>[[高等学校歴史総合]]>市場開放と経済の自由化
詳しい内容は、「[[高等学校世界史探究|世界史探究]]」の「」、「[[高等学校日本史探究|日本史探究]]」の「[[高等学校日本史探究/新たな世紀の日本へⅠ|新たな世紀の日本へⅠ]]」を見てください。本歴史総合では、簡単に記述します。
== 新自由主義の台頭 ==
1920年代から1970年代にかけて、アメリカとかヨーロッパなどの先進国は、誰でも豊かに暮らしていけるように様々な産業と公共サービスを充実させました。1980年代を迎えると、そのようなやり方は上手くいかなくなりました。そこで、アメリカのロナルド・レーガン大統領とイギリスのマーガレット・サッチャー首相が「政府の関与を減らして、もっと自由に活動出来るようにしよう!」と考えました。また、日本でも自民党の中曽根康弘首相が同じように考えて、国営企業を民間企業に変えました。その結果、新しい会社を作りやすくなり、品物の値段も安くなりました。しかし、大企業が益々強くなり、お金持ちの人と貧しい人の差が開いてしまうようになりました。このような考え方は、ロシア・東欧諸国・中国にまで広がりました。
== 経済のグローバル化と新たな国際経済組織 ==
== ここに注意!! ==
[[カテゴリ:高等学校歴史総合|ししようかいほうとけいさいのしゆうか]]
[[カテゴリ:国際関係学]]
[[カテゴリ:20世紀]]
[[カテゴリ:21世紀]]
[[カテゴリ:経済史]]
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/* 経済のグローバル化と新たな国際経済組織 */ 過去執筆の事後処理(見直し・本文大幅修正)第1段落が完了。
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text/x-wiki
[[小学校・中学校・高等学校の学習]]>[[高等学校の学習]]>[[高等学校地理歴史]]>[[高等学校歴史総合]]>市場開放と経済の自由化
詳しい内容は、「[[高等学校世界史探究|世界史探究]]」の「」、「[[高等学校日本史探究|日本史探究]]」の「[[高等学校日本史探究/新たな世紀の日本へⅠ|新たな世紀の日本へⅠ]]」を見てください。本歴史総合では、簡単に記述します。
== 新自由主義の台頭 ==
1920年代から1970年代にかけて、アメリカとかヨーロッパなどの先進国は、誰でも豊かに暮らしていけるように様々な産業と公共サービスを充実させました。1980年代を迎えると、そのようなやり方は上手くいかなくなりました。そこで、アメリカのロナルド・レーガン大統領とイギリスのマーガレット・サッチャー首相が「政府の関与を減らして、もっと自由に活動出来るようにしよう!」と考えました。また、日本でも自民党の中曽根康弘首相が同じように考えて、国営企業を民間企業に変えました。その結果、新しい会社を作りやすくなり、品物の値段も安くなりました。しかし、大企業が益々強くなり、お金持ちの人と貧しい人の差が開いてしまうようになりました。このような考え方は、ロシア・東欧諸国・中国にまで広がりました。
== 経済のグローバル化と新たな国際経済組織 ==
1990年代から、人々・物・お金・技術が国境を越えて自由に動けるようになりました(グローバル化)。グローバル化に伴って、多国籍企業が海外に活動の場を広げていくと国際経済も繋がるようになりました。そうなると世界共通のルールが必要になり、世界貿易機関(WTO)も生まれます。世界貿易機関はかつての関税と貿易に関する一般協定(GATT)の生まれ変わりです。世界貿易機関はサービス・知的財産権も含めて様々なルールを作りました。しかし、インターネットが広まって、簡単にお金を動かしやすくなると経済の混乱を引き起こすようになりました。タイでお金の価値が急に下がると、韓国・インドネシアにも同じように広がりました(アジア通貨危機)。
== ここに注意!! ==
[[カテゴリ:高等学校歴史総合|ししようかいほうとけいさいのしゆうか]]
[[カテゴリ:国際関係学]]
[[カテゴリ:20世紀]]
[[カテゴリ:21世紀]]
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/* 経済のグローバル化と新たな国際経済組織 */ 重要用語を色太字化。
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[[小学校・中学校・高等学校の学習]]>[[高等学校の学習]]>[[高等学校地理歴史]]>[[高等学校歴史総合]]>市場開放と経済の自由化
詳しい内容は、「[[高等学校世界史探究|世界史探究]]」の「」、「[[高等学校日本史探究|日本史探究]]」の「[[高等学校日本史探究/新たな世紀の日本へⅠ|新たな世紀の日本へⅠ]]」を見てください。本歴史総合では、簡単に記述します。
== 新自由主義の台頭 ==
1920年代から1970年代にかけて、アメリカとかヨーロッパなどの先進国は、誰でも豊かに暮らしていけるように様々な産業と公共サービスを充実させました。1980年代を迎えると、そのようなやり方は上手くいかなくなりました。そこで、アメリカのロナルド・レーガン大統領とイギリスのマーガレット・サッチャー首相が「政府の関与を減らして、もっと自由に活動出来るようにしよう!」と考えました。また、日本でも自民党の中曽根康弘首相が同じように考えて、国営企業を民間企業に変えました。その結果、新しい会社を作りやすくなり、品物の値段も安くなりました。しかし、大企業が益々強くなり、お金持ちの人と貧しい人の差が開いてしまうようになりました。このような考え方は、ロシア・東欧諸国・中国にまで広がりました。
== 経済のグローバル化と新たな国際経済組織 ==
1990年代から、人々・物・お金・技術が国境を越えて自由に動けるようになりました(<span style="color:#f29100">'''グローバル化'''</span>)。グローバル化に伴って、多国籍企業が海外に活動の場を広げていくと国際経済も繋がるようになりました。そうなると世界共通のルールが必要になり、<span style="color:#f29100">'''世界貿易機関'''</span>(WTO)も生まれます。世界貿易機関はかつての関税と貿易に関する一般協定(GATT)の生まれ変わりです。世界貿易機関はサービス・知的財産権も含めて様々なルールを作りました。しかし、インターネットが広まって、簡単にお金を動かしやすくなると経済の混乱を引き起こすようになりました。タイでお金の価値が急に下がると、韓国・インドネシアにも同じように広がりました(アジア通貨危機)。
== ここに注意!! ==
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[[カテゴリ:21世紀]]
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高等学校歴史総合/戦後の日本とアジア諸国との関係
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[[小学校・中学校・高等学校の学習]]>[[高等学校の学習]]>[[高等学校地理歴史]]>[[高等学校歴史総合]]>戦後の日本とアジア諸国との関係
== 日本の国連加盟 ==
== アジア諸国との国交回復 ==
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== 沖縄の本土復帰 ==
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高等学校歴史総合/高度経済成長
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[[小学校・中学校・高等学校の学習]]>[[高等学校の学習]]>[[高等学校地理歴史]]>[[高等学校歴史総合]]>高度経済成長
== 日本と西ドイツの経済成長 ==
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== ここに注意!! ==
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高等学校歴史総合/アジアの成長
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== アジア諸国の成長 ==
== 第三世界の多様化 ==
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== 日本の経済大国化 ==
[[カテゴリ:高等学校歴史総合|あしあのせいちよう]]
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高等学校歴史総合/戦争が変えた人々のくらし
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== マス・メディアの普及と情報や生活の画一化 ==
== 国民の組織化と戦争動員 ==
== 国民の平準化 ==
== 戦争と植民地の民衆 ==
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Objective-C
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Ef3
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s/(<syntaxhighlight lang=objc.*)>/$1 copy>/42; 校閲と推敲と加筆
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{{Wikipedia}}
Objective-Cは、MacやiOSなどのApple製品で広く使われている[[プログラミング言語]]です。[[C言語]]と[[Smalltalk]]を組み合わせた[[オブジェクト指向言語]]であり、Objective-Cを使うことで、直感的でわかりやすいユーザーインターフェースを実現するアプリケーションを開発することができます。
このチュートリアルでは、Objective-Cの基本的な概念や文法を学ぶことができるようになっています。
__TOC__
== Objective-Cとは何か? ==
Objective-Cは、C言語にSmalltalkのオブジェクト指向プログラミングの概念を組み合わせたプログラミング言語です。AppleのiOSおよびmacOSプラットフォームで広く使用されています。Objective-Cは、C言語のライブラリやAPIと互換性があるため、既存のCプログラムとの連携が容易です。
== Objective-Cを使うために必要な環境構築 ==
Objective-Cを開発するためには、XcodeというAppleの開発環境が必要です。XcodeはmacOS専用のアプリケーションであるため、WindowsユーザはまずmacOSをインストールする必要があります。
macOSをインストールしたら、App StoreからXcodeをダウンロードしてインストールします。XcodeにはObjective-Cの開発に必要なコンパイラやデバッガ、コードエディタなどが含まれています。
== Objective-Cプログラムの基本構文 ==
Objective-Cプログラムの基本構文には、C言語と同様に関数、変数、制御構造などがあります。また、Objective-Cにはオブジェクト指向プログラミングの概念が導入されており、クラスやオブジェクトを定義することができます。
以下は、Objective-Cのプログラムの基本的な構文です。
;[https://paiza.io/projects/ZGdNJfc67qmA54EySITDzw?language=objective-c hello.m]:<syntaxhighlight lang=objc copy>
// ヘッダーファイルのインポート
#import <Foundation/Foundation.h>
// クラスの定義
@interface MyClass : NSObject
// メソッドの宣言
- (void)myMethod;
@end
// クラスの実装
@implementation MyClass
// メソッドの定義
- (void)myMethod {
NSLog(@"Hello, world!");
}
@end
// メイン関数
int main(int argc, const char * argv[]) {
@autoreleasepool {
// オブジェクトの生成
MyClass *myObj = [[MyClass alloc] init];
// メソッドの呼び出し
[myObj myMethod];
}
return 0;
}
</syntaxhighlight>
このコードは、Objective-Cでクラスを定義し、そのクラスのオブジェクトを生成して、オブジェクトのメソッドを呼び出すサンプルです。
まず、<code>#import <Foundation/Foundation.h></code>でFoundationフレームワークをインポートしています。これは、Objective-Cで必要な基本的なクラスや機能を提供するフレームワークです。
次に、<code>@interface MyClass : NSObject</code>で、MyClassという名前のクラスを定義しています。<code>NSObject</code>は、Foundationフレームワークに含まれる基本的なオブジェクトクラスであり、MyClassクラスがNSObjectクラスを継承していることを示しています。<code>@interface</code>と<code>@end</code>の間には、クラスがサポートするメソッドの宣言が含まれます。ここでは、<code>- (void)myMethod</code>というメソッドを宣言しています。
次に、<code>@implementation MyClass</code>で、MyClassクラスの実装を開始しています。ここでは、<code>- (void)myMethod</code>メソッドを定義しています。このメソッドでは、単純に"Hello, world!"という文字列をログに出力しています。
最後に、<code>main</code>関数で、<code>@autoreleasepool</code>ブロック内で、MyClassクラスのオブジェクトを生成しています。<code>[[MyClass alloc] init]</code>で、MyClassのインスタンスを生成し、<code>[myObj myMethod]</code>で、<code>myMethod</code>メソッドを呼び出しています。
このサンプルでは、オブジェクトを生成してメソッドを呼び出すという基本的なプログラムの流れを示しています。
== 変数とデータ型 ==
プログラミング言語には、変数を使用してデータを格納するための仕組みがあります。Objective-Cも同様で、変数はデータを格納するためのメモリ領域を確保するために使用されます。変数には、異なるデータ型があります。Objective-Cでサポートされている主なデータ型には、整数、浮動小数点数、文字列、配列、構造体、ポインタなどがあります。
変数の宣言は、データ型と変数名を指定することで行います。たとえば、整数型の変数を宣言する場合は、以下のようになります。
:<syntaxhighlight lang=objc copy>
int num;
</syntaxhighlight>
浮動小数点数型の変数を宣言する場合は、以下のようになります。
:<syntaxhighlight lang=objc copy>
float value;
</syntaxhighlight>
Objective-Cでは、変数名の前に星印(*)をつけることで、ポインタ変数を宣言できます。たとえば、整数型のポインタ変数を宣言する場合は、以下のようになります。
:<syntaxhighlight lang=objc copy>
int *numPtr;
</syntaxhighlight>
また、Objective-Cでは、変数の初期化が必要です。変数を宣言しただけでは、値を持っていません。変数に初期値を代入するには、代入演算子を使用します。たとえば、以下のコードは、整数型の変数numに値10を代入します。
:<syntaxhighlight lang=objc copy>
int num = 10;
</syntaxhighlight>
変数に代入された値を表示するには、NSLog()関数を使用します。たとえば、以下のコードは、整数型の変数numに代入された値を表示します。
:<syntaxhighlight lang=objc copy>
NSLog(@"The value of num is %d", num);
</syntaxhighlight>
この場合、%dは、整数型の値を表示するためのフォーマット指定子です。%fは浮動小数点数、%sは文字列、%cは文字、%pはポインタなど、異なるデータ型を表示するためのフォーマット指定子があります。
== 制御構文 ==
制御構文は、プログラムの実行フローを制御するために使用されます。Objective-Cでは、if文、for文、while文、switch文など、多くの制御構文がサポートされています。
if文は、ある条件が成立している場合に、特定の処理を実行するために使用されます。以下のコードは、整数型の変数numが10より大きい場合に、「num is greater than 10」というメッセージを表示します。
:<syntaxhighlight lang=objc copy>
if (num > 10) {
NSLog(@"num is greater than 10");
}
</syntaxhighlight>
for文は、特定の処理を繰り返し実行するために使用されます。以下のコードは、整数型の変数iが1から10までの値を繰り返し表示します。
:<syntaxhighlight lang=objc copy>
for (int i = 1; i <= 10; i++) {
NSLog(@"The value of i is %d", i);
}
</syntaxhighlight>
while文は、ある条件が成立している場合に、特定の処理を繰り返し実行するために使用されます。以下のコードは、整数型の変数iが10未満の場合に、繰り返し実行されます。
:<syntaxhighlight lang=objc copy>
int i = 0;
while (i < 10) {
NSLog(@"The value of i is %d", i);
i++;
}
</syntaxhighlight>
switch文は、ある変数の値によって、複数の処理の中から特定の処理を実行するために使用されます。以下のコードは、整数型の変数numの値によって、条件分岐して処理を実行します。
:<syntaxhighlight lang=objc copy>
switch (num) {
case 1:
NSLog(@"num is 1");
break;
case 2:
NSLog(@"num is 2");
break;
default:
NSLog(@"num is not 1 or 2");
break;
}
</syntaxhighlight>
ここで、break文は、処理の実行を終了するために使用されます。
=== 高速列挙 ===
Objective-Cにおける高速列挙( ''Fast Enumeration'' )は、簡潔で効率的なコードを書くための便利な機能です。高速列挙を使用すると、配列や辞書などのコレクションに対して、forループを使用する代わりにより簡単な構文でアクセスすることができます。
以下に、Objective-Cにおける高速列挙の基本的な使用法について解説します。
==== 配列の高速列挙 ====
NSArrayクラスを使った配列に対しては、以下のように記述します。
:<syntaxhighlight lang=objc copy>
NSArray *myArray = @[ @"apple", @"banana", @"orange" ];
for (NSString *element in myArray) {
NSLog(@"%@", element);
}
</syntaxhighlight>
この例では、NSArrayオブジェクトを作成し、3つのフルーツの名前を格納しました。高速列挙を使用すると、forループで配列内の各要素にアクセスできます。各要素は、変数elementに代入されます。
==== 辞書の高速列挙 ====
NSDictionaryクラスを使った辞書に対しては、以下のように記述します。
:<syntaxhighlight lang=objc copy>
NSDictionary *myDictionary = @{ @"apple": @1, @"banana": @2, @"orange": @3 };
for (NSString *key in myDictionary) {
NSNumber *value = myDictionary[key];
NSLog(@"%@: %@", key, value);
}
</syntaxhighlight>
この例では、NSDictionaryオブジェクトを作成し、3つのフルーツの名前とそれに対応する番号を格納しました。高速列挙を使用すると、forループで辞書内の各要素にアクセスできます。各キーは、変数keyに代入され、そのキーに対応する値は、myDictionary[key]の形式で取得できます。
==== NSEnumeratorを使った高速列挙 ====
NSEnumeratorクラスを使うことにより、独自に定義したオブジェクトに対して高速列挙を実装することもできます。NSEnumeratorを使用した高速列挙は、以下のように記述します。
:<syntaxhighlight lang=objc copy>
NSEnumerator *enumerator = [myCustomObject objectEnumerator];
id element;
while (element = [enumerator nextObject]) {
NSLog(@"%@", element);
}
</syntaxhighlight>
この例では、myCustomObjectというオブジェクトに対してNSEnumeratorを作成し、そのオブジェクト内の要素を列挙しています。各要素は、変数elementに代入されます。
高速列挙は、forループと比較して、簡潔かつ効率的なコードを書くことができます。
しかしながら、高速列挙を使用する場合、要素のインデックスや位置にアクセスすることができないため、配列や辞書の順序に依存する処理を行う場合には注意が必要です。
また、高速列挙を使用する場合でも、要素の個数が多い場合にはパフォーマンスの問題が発生する可能性があるため、適切なバランスを保ちながら使用することが重要です。
== 関数とメソッド ==
関数とは、1つ以上の引数を受け取り、実行された結果を返すブロックのことです。Objective-Cでは、C言語の関数と同様に、関数を宣言することができます。以下は、引数として2つの整数を受け取り、その和を返す関数の例です。
:<syntaxhighlight lang=objc copy>
int sum(int a, int b) {
return a + b;
}
</syntaxhighlight>
この関数を使用する場合は、以下のように呼び出します。
:<syntaxhighlight lang=objc copy>
int result = sum(3, 5);
NSLog(@"The result is %d", result);
</syntaxhighlight>
Objective-Cでは、関数の代わりにメソッドを使用することができます。メソッドは、オブジェクトに関連付けられた関数のことで、オブジェクトに対して実行されます。Objective-Cのクラスには、そのクラスがサポートするメソッドの定義が含まれています。
以下は、NSStringクラスの例で、文字列の長さを返すlengthメソッドが定義されています。
:<syntaxhighlight lang=objc copy>
@interface NSString : NSObject
// NSStringのインターフェース宣言
- (NSUInteger)length;
// lengthメソッドの宣言
@end
</syntaxhighlight>
このlengthメソッドを使用する場合は、以下のように呼び出します。
:<syntaxhighlight lang=objc copy>
NSString *str = @"Hello, world!";
NSUInteger len = [str length];
NSLog(@"The length of the string is %lu", len);
</syntaxhighlight>
ここで、[str length]は、strオブジェクトに対してlengthメソッドを実行していることを示しています。メソッド名の前にある角かっこ[]の中には、メッセージとして送信される引数が含まれます。また、メソッドの戻り値は、呼び出し元に返されます。
Objective-Cでは、クラスやオブジェクトに対して動的にメソッドを追加することもできます。この場合、カテゴリと呼ばれる仕組みを使用します。以下は、NSStringクラスに新しいメソッドreverseStringを追加するカテゴリの例です。
:<syntaxhighlight lang=objc copy>
@interface NSString (ReverseString)
- (NSString *)reverseString;
@end
@implementation NSString (ReverseString)
- (NSString *)reverseString {
NSMutableString *result = [NSMutableString string];
NSInteger len = [self length];
for (NSInteger i = len - 1; i >= 0; i--) {
[result appendString:[NSString stringWithFormat:@"%C", [self characterAtIndex:i]]];
}
return result;
}
@end
</syntaxhighlight>
このカテゴリを使用する場合は、以下のように呼び出します。
:<syntaxhighlight lang=objc copy>
NSString *str = @"Hello, world!";
NSString *reversedStr = [str reverseString];
NSLog(@"The reversed string is %@", reversedStr);
</syntaxhighlight>
ここで、[str reverseString]は、strオブジェクトに対してreverseStringメソッドを実行していることを示しています。
カテゴリを使用することで、既存のクラスに新しいメソッドを追加し、再コンパイルすることなしにそのメソッドを利用することができます。
関数とメソッドは、Objective-Cのプログラミングにおいて非常に重要な概念です。
関数は、簡単な計算や処理を実行するために使用され、メソッドは、オブジェクトの振る舞いを定義するために使用されます。
また、カテゴリを使用することで、既存のクラスに新しいメソッドを追加することができます。
関数とメソッドを正しく理解し、適切に使用することが、効率的なObjective-Cプログラミングのために不可欠です。
== オブジェクト指向プログラミング ==
Objective-Cはオブジェクト指向プログラミング言語であり、C言語にオブジェクト指向機能を追加したものです。オブジェクト指向プログラミングは、データとそれを処理する関数をカプセル化して、より効率的で再利用可能なコードを作成する方法です。
オブジェクト指向プログラミングでは、クラスとオブジェクトの2つの概念があります。クラスはオブジェクトの設計図であり、オブジェクトはその設計図に基づいて作成されたインスタンスです。オブジェクトは、データを保持するプロパティと、それらのデータを処理するメソッドを持ちます。
Objective-Cでは、クラスの宣言は、インターフェイスと実装の2つのセクションに分かれています。インターフェイスセクションでは、クラスのプロパティとメソッドの宣言が行われます。実装セクションでは、クラスのメソッドの実際の実装が行われます。
=== クラスの定義 ===
以下は、Objective-Cでクラスを作成するための例です。
:<syntaxhighlight lang=objc copy>
// クラスのインターフェイス
@interface MyClass : NSObject
{
int myProperty;
}
- (void)myMethod;
@end
// クラスの実装
@implementation MyClass
- (void)myMethod {
NSLog(@"Hello, World!");
}
@end
</syntaxhighlight>
上記のコードでは、MyClassという名前のクラスが宣言されています。クラスのプロパティとして、int型のmyPropertyが宣言されています。また、myMethodという名前のメソッドが宣言され、実装セクションで実際の処理が定義されています。myMethodでは、"Hello, World!"という文字列が出力されます。
=== インスタンスの生成 ===
以下は、Objective-Cでクラスを使用するための例です。
:<syntaxhighlight lang=objc copy>
// MyClassのインスタンスを作成
MyClass *myObject = [[MyClass alloc] init];
// myPropertyに値を設定
myObject.myProperty = 42;
// myMethodを呼び出し
[myObject myMethod];
</syntaxhighlight>
上記のコードでは、MyClassのインスタンスを作成しています。そのインスタンスに対して、myPropertyに値を設定し、myMethodを呼び出しています。
Objective-Cは、他のオブジェクト指向言語と同様に、継承、ポリモーフィズム、カプセル化などの機能をサポートしています。
これらの機能を使うことで、より効率的で再利可能なコードを作成することができます。
=== 継承 ===
継承は、既存のクラスから新しいクラスを作成することを可能にします。新しいクラスは、既存のクラスのメソッドとプロパティを引き継ぎ、独自のメソッドやプロパティを追加することができます。以下は、Objective-Cで継承を実装するための例です。
:<syntaxhighlight lang=objc copy>
// 親クラスの宣言
@interface ParentClass : NSObject
{
int parentProperty;
}
(void)parentMethod;
@end
// 子クラスの宣言
@interface ChildClass : ParentClass
{
int childProperty;
}
(void)childMethod;
@end
// 親クラスの実装
@implementation ParentClass
(void)parentMethod {
NSLog(@"This is parent method");
}
@end
// 子クラスの実装
@implementation ChildClass
(void)childMethod {
NSLog(@"This is child method");
}
@end
</syntaxhighlight>
上記のコードでは、ParentClassという名前の親クラスとChildClassという名前の子クラスが宣言されています。ChildClassはParentClassを継承しており、親クラスのメソッドを使用できます。
=== ポリモーフィズム ===
ポリモーフィズムは、同じ名前のメソッドを異なるクラスで使用することができる機能です。これにより、コードをより柔軟にすることができます。以下は、Objective-Cでポリモーフィズムを実装するための例です。
:<syntaxhighlight lang=objc copy>
// 親クラスの宣言
@interface ParentClass : NSObject
{
}
(void)sayHello;
@end
// 子クラス1の宣言
@interface ChildClass1 : ParentClass
{
}
@end
// 子クラス2の宣言
@interface ChildClass2 : ParentClass
{
}
@end
// 親クラスの実装
@implementation ParentClass
(void)sayHello {
NSLog(@"Hello, World!");
}
@end
// 子クラス1の実装
@implementation ChildClass1
@end
// 子クラス2の実装
@implementation ChildClass2
(void)sayHello {
NSLog(@"Bonjour, Monde!");
}
@end
</syntaxhighlight>
上記のコードでは、ParentClassという名前の親クラスと、ChildClass1とChildClass2という名前の子クラスが宣言されています。ParentClassのsayHelloメソッドは、"Hello, World!"という文字列を出力します。ChildClass2のsayHelloメソッドは、"Bonjour, Monde!"という文字列を出力します。
=== カプセル化 ===
カプセル化は、オブジェクトのデータとメソッドを外部から隠蔽することで、オブジェクトの状態が不正な値に変更されるのを防ぎ、安全性を高めます。Objective-Cでは、プロパティを使用して、カプセル化を実現することができます。以下は、Objective-Cでプロパティを使用するための例です。
:<syntaxhighlight lang=objc copy>
@interface MyClass : NSObject
{
int _myProperty;
}
@property (nonatomic, assign) int myProperty;
(void)myMethod;
@end
@implementation MyClass
@synthesize myProperty = _myProperty;
(void)myMethod {
NSLog(@"myProperty = %d", self.myProperty);
}
@end
</syntaxhighlight>
上記のコードでは、クラスにint型の_myPropertyという名前のプロパティが宣言されています。プロパティの宣言は、@propertyキーワードを使用して行われます。また、@synthesizeキーワードを使用して、myPropertyと_myPropertyを関連付けています。これにより、myPropertyを使用すると、実際には_myPropertyが操作されます。myMethodでは、self.myPropertyを使用して、プロパティの値を出力しています。
=== カテゴリ ===
カテゴリは、既存のクラスにメソッドを追加することができる機能です。これは、Objective-Cで特に役立ちます。以下は、Objective-Cでカテゴリを使用するための例です。
:<syntaxhighlight lang=objc copy>
@interface NSString (MyCategory)
(NSString *)reverseString;
@end
@implementation NSString (MyCategory)
(NSString *)reverseString {
NSMutableString *reversedString = [NSMutableString string];
NSInteger charIndex = [self length];
while (charIndex > 0) {
charIndex--;
NSRange subStrRange = NSMakeRange(charIndex, 1);
[reversedString appendString:[self substringWithRange:subStrRange]];
}
return reversedString;
}
@end
</syntaxhighlight>
上記のコードでは、NSStringクラスに新しいメソッドreverseStringを追加しています。これにより、文字列を逆順にすることができます。カテゴリは、既存のクラスのインターフェイスを変更することができるため、注意が必要です。
== Objective-Cのコレクション ==
Objective-Cには、複数のオブジェクトを扱うためのコレクションクラスがいくつか用意されています。ここでは、Objective-Cのコレクションクラスについて解説します。
=== NSArray ===
NSArrayは、順序を持ったオブジェクトの集まりを表現するためのクラスです。要素の追加・削除はできませんが、要素の取得はインデックスを指定して行うことができます。
:<syntaxhighlight lang=objc copy>
// NSArrayの生成
NSArray *array = @[@"a", @"b", @"c"];
// 要素の取得
NSString *element = array[1];
NSLog(@"%@", element); // => "b"
</syntaxhighlight>
=== NSMutableArray ===
NSMutableArrayは、NSArrayのサブクラスで、要素の追加・削除ができる可変長の配列を表現するためのクラスです。
:<syntaxhighlight lang=objc copy>
// NSMutableArrayの生成
NSMutableArray *array = [NSMutableArray arrayWithObjects:@"a", @"b", nil];
// 要素の追加
[array addObject:@"c"];
// 要素の削除
[array removeObject:@"b"];
</syntaxhighlight>
=== NSDictionary ===
NSDictionaryは、キーと値のペアを持つオブジェクトの集まりを表現するためのクラスです。キーを指定して値を取得することができます。
:<syntaxhighlight lang=objc copy>
// NSDictionaryの生成
NSDictionary *dict = @{@"key1": @"value1", @"key2": @"value2"};
// 値の取得
NSString *value = dict[@"key1"];
NSLog(@"%@", value); // => "value1"
</syntaxhighlight>
=== NSMutableDictionary ===
NSMutableDictionaryは、NSDictionaryのサブクラスで、要素の追加・削除ができる可変長のキーと値のペアの集まりを表現するためのクラスです。
:<syntaxhighlight lang=objc copy>
// NSMutableDictionaryの生成
NSMutableDictionary *dict = [NSMutableDictionary dictionaryWithObjectsAndKeys:@"value1", @"key1", nil];
// 要素の追加
[dict setObject:@"value2" forKey:@"key2"];
// 要素の削除
[dict removeObjectForKey:@"key1"];
</syntaxhighlight>
=== NSSet ===
NSSetは、順序を持たないオブジェクトの集まりを表現するためのクラスです。重複した要素は含まれません。
:<syntaxhighlight lang=objc copy>
// NSSetの生成
NSSet *set = [NSSet setWithObjects:@"a", @"b", @"c", nil];
// 要素の存在チェック
if ([set containsObject:@"a"]) {
NSLog(@"a is in the set.");
}
</syntaxhighlight>
=== NSMutableSet ===
NSMutableSetは、NSSetのサブクラスで、要素の追加・削除ができる可変長の集合を表現するためのクラスです。
:<syntaxhighlight lang=objc copy>
// NSMutableSetの生成
NSMutableSet *set = [NSMutableSet setWithObjects:@"a", @"b", nil];
// 要素の追加
[set addObject:@"c"];
// 要素の削除
[set removeObject:@"b"];
</syntaxhighlight>
以上がObjective-Cのコレクションクラスの一覧です。コレクションクラスを使うことで、複数のオブジェクトを扱うことができます。
使い分けによって、より効率的なプログラミングが可能になります。
また、コレクションクラスの使い方を覚えておくと、多くのObjective-Cのフレームワークやライブラリを理解しやすくなるでしょう。
{{コラム|width=stretch|NSStringなどのNSって何?|2=<code>NS</code> は、Objective-CのフレームワークであるFoundationフレームワークで定義されたクラスや関数のプレフィックスです。 <code>NS</code> は "NextStep" の略称で、Appleが1989年に買収した[[w:NeXT|NeXT Software]]社が開発していた「NextStep」というオペレーティングシステムに由来します。
この歴史的背景は、1997年にSteve Jobsがネクストを通じてAppleに復帰した際、NextStepのオブジェクト指向技術とフレームワークがMac OS Xの基盤となったことと深く関連しています。<code>NS</code>プレフィックスは、その歴史的な名残として現在でも使用され続けています。
<code>NSString</code> は、文字列を表すためのクラスであり、<code>NS</code> のプレフィックスが付いていることから、Foundationフレームワークに属しています。同様に、 <code>NSArray</code>、<code>NSDictionary</code>、<code>NSData</code> など、Foundationフレームワークで定義された多くのクラスにも <code>NS</code> のプレフィックスが付いています。
現代のApple開発エコシステムでは、[[Swift]]とObjective-Cの両言語で これらのクラスが広く使用されており、<code>NS</code>プレフィックスは依然として重要な役割を果たしています。特にSwiftでは、これらのクラスは互換性のために保持されており、多くのフレームワークで継続的に使用されています。
}}
== ファイルの入出力 ==
Objective-Cでは、ファイルの入出力を行うための標準ライブラリとしてFoundationフレームワークが提供されています。ここでは、ファイルの読み込みと書き込みを行う方法について解説します。
まず、Foundationフレームワークをインポートします。
:<syntaxhighlight lang=objc copy>
#import <Foundation/Foundation.h>
</syntaxhighlight>
=== ファイルの読み込み ===
ファイルを読み込むには、まずファイルパスを指定します。以下の例では、test.txtファイルを読み込みます。
:<syntaxhighlight lang=objc copy>
NSString *filePath = @"/path/to/test.txt";
</syntaxhighlight>
次に、ファイルパスを元にファイルマネージャーを作成します。
:<syntaxhighlight lang=objc copy>
NSFileManager *fileManager = [NSFileManager defaultManager];
</syntaxhighlight>
ファイルマネージャーを使用して、ファイルが存在するかどうかを確認します。
:<syntaxhighlight lang=objc copy>
if ([fileManager fileExistsAtPath:filePath]) {
// ファイルが存在する場合の処理
} else {
// ファイルが存在しない場合の処理
}
</syntaxhighlight>
ファイルが存在する場合、ファイルを読み込みます。ここでは、ファイルの中身をNSStringとして読み込みます。
:<syntaxhighlight lang=objc copy>
NSError *error = nil;
NSString *fileContents = [NSString stringWithContentsOfFile:filePath encoding:NSUTF8StringEncoding error:&error];
if (error) {
// 読み込みエラーの場合の処理
} else {
// ファイルの中身を使用した処理
}
</syntaxhighlight>
=== ファイルの書き込み ===
ファイルを書き込むには、まずファイルパスを指定します。以下の例では、test.txtファイルを書き込みます。
:<syntaxhighlight lang=objc copy>
NSString *filePath = @"/path/to/test.txt";
</syntaxhighlight>
次に、ファイルパスを元にファイルマネージャーを作成します。
:<syntaxhighlight lang=objc copy>
NSFileManager *fileManager = [NSFileManager defaultManager];
</syntaxhighlight>
ファイルマネージャーを使用して、ファイルが存在するかどうかを確認します。
:<syntaxhighlight lang=objc copy>
if ([fileManager fileExistsAtPath:filePath]) {
// ファイルが存在する場合の処理
} else {
// ファイルが存在しない場合は、新規にファイルを作成する
BOOL success = [fileManager createFileAtPath:filePath contents:nil attributes:nil];
if (!success) {
// ファイルの作成に失敗した場合の処理
}
}
</syntaxhighlight>
ファイルが存在する場合、ファイルを上書きするか、新規に書き込むかを選択します。以下の例では、ファイルを新規に書き込みます。
:<syntaxhighlight lang=objc copy>
NSError *error = nil;
NSString *fileContents = @"書き込む内容";
BOOL success = [fileContents writeToFile:filePath atomically:YES encoding:NSUTF8StringEncoding error:&error];
if (error) {
// 書き込みエラーの場合の処理
} else {
// ファイルの書き込みが成功した場合の処理
}
</syntaxhighlight>
このように、Objective-CではFoundationフレームワークを使って簡単にファイルの入出力を行うことができます。
ただし、ファイルのパス指定やファイルマネージャーの扱い方など、初心者にはやや難しい部分があるため、慣れるまでは誤った操作をしてしまうこともあるかもしれません。
ですが、繰り返し練習を行い、徐々に慣れていくことが大切です。
== デバッグ方法 ==
Objective-Cでプログラムを作成していると、必ずと言っていいほどデバッグが必要になります。ここでは、Objective-Cのデバッグ方法について解説します。
=== NSLogを使ったデバッグ ===
NSLogは、Objective-Cでの標準的なログ出力方法です。以下のように記述することで、変数の値やメソッドの実行結果などをログに出力することができます。
:<syntaxhighlight lang=objc copy>
NSString *str = @"Hello, World!";
NSLog(@"%@", str);
</syntaxhighlight>
;実行結果
:<syntaxhighlight lang=text>
Hello, World!
</syntaxhighlight>
%@の部分には、ログに出力したい値を指定します。%@はオブジェクト型、%dは整数型、%fは浮動小数点型、%cは文字型など、様々な型に対応しています。
=== ブレークポイントを使ったデバッグ ===
ブレークポイントとは、プログラムの実行を一時停止するためのポイントのことです。Xcodeを使っている場合は、ブレークポイントを設定することで、プログラムの実行を一時停止し、変数の値やスタックトレースなどを確認することができます。
ブレークポイントを設定するには、ソースコードの行番号をクリックして、赤いポイントを表示させます。プログラムを実行すると、ブレークポイントに到達するとプログラムが一時停止します。
=== Instrumentsを使ったデバッグ ===
Instrumentsは、Xcodeに含まれるパフォーマンス分析ツールです。メモリ使用量、CPU使用率、ネットワークトラフィックなど、様々な面でアプリケーションのパフォーマンスを分析することができます。
Instrumentsを起動するには、Xcodeのメニューから、「Product」→「Profile」を選択します。Instrumentsが起動したら、分析したい項目を選択して、アプリケーションを実行します。Instrumentsは、アプリケーションの実行中にデータを収集し、グラフやテーブルで結果を表示します。
まとめると、Objective-Cでのデバッグ方法としては、NSLogを使ったログ出力、ブレークポイントを使ったデバッグ、Instrumentsを使ったパフォーマンス分析があります。それぞれの方法を組み合わせて、効率的なデバッグを行いましょう。
== よく使われるObjective-Cライブラリの紹介 ==
Objective-Cには多くのライブラリがありますが、ここでは特によく使われるライブラリを紹介します。
* CocoaPods: ライブラリを管理するための便利なツールです。Xcodeプロジェクトにライブラリを追加するだけで、ライブラリのダウンロードとインストールが自動的に行われます。
* AFNetworking: HTTPリクエストを簡単に行うためのライブラリです。iOSアプリ開発でよく使われます。
* SDWebImage: Web上の画像を簡単にダウンロードして表示するためのライブラリです。画像のキャッシュ機能も備えています。
* MagicalRecord: Core Dataを簡単に扱うためのライブラリです。オブジェクトを操作するための簡潔なAPIを提供します。
* MBProgressHUD: プログレスインジケーターを簡単に表示するためのライブラリです。ユーザーに進行状況を伝えるために使われます。
以上のライブラリはiOSアプリ開発に欠かせないものばかりです。この他にも多くの優れたライブラリが存在します。
== まとめ ==
Objective-Cは、iOSアプリ開発のために開発されたプログラミング言語です。C言語との互換性が高く、豊富なライブラリが存在するため、開発が容易になります。また、Objective-Cはオブジェクト指向言語であるため、コードの再利用性が高く、保守性が向上します。
Objective-Cの学習には、Xcodeを用いた実践的な開発が効果的です。また、よく使われるライブラリを知っておくことで、開発効率を高めることができます。
{{コラム|width=stretch|Swift後のObjective-C|2=[[Swift]]は、Objective-Cに比べて簡潔で直感的な文法、高速なコンパイル、安全なコード、そして新しいプログラミングパラダイムを提供するなど、多くのメリットがあることから、2014年にAppleが公式に導入したプログラミング言語です。
Swiftの登場により、Objective-Cの位置づけは大きく変化しました。Appleは徐々にSwiftへの移行を推奨していますが、Objective-Cは依然として重要な役割を果たしています。特に、既存の大規模なiOSアプリケーションやmacOSアプリケーションの多くがObjective-Cで開発されているため、完全な廃止は考えられていません。
SwiftはObjective-Cと高度な相互運用性を持ち、既存のObjective-Cライブラリやフレームワークをシームレスに利用できます。Apple提供のブリッジングヘッダーにより、両言語間のコード共有が容易になっています。
言語仕様の違いにより、Objective-CからSwiftへの完全自動変換は困難です。手動での移行が必要となり、開発者には一定の学習コストが求められます。特に、メモリ管理、型安全性、関数型プログラミングの概念において、両言語間には大きな違いがあります。
Apple開発エコシステムにおいて、Objective-Cの知識は依然として重要なスキルです。レガシーシステムの保守、既存プロジェクトの部分的な更新、低レベルシステムプログラミングなど、多くの場面でObjective-Cスキルが必要とされています。
2024年現在、新規プロジェクトではSwiftの使用が強く推奨されていますが、Objective-Cの完全な廃止は予定されていません。むしろ、両言語が共存しながら、徐々にSwiftへの移行が進んでいくと考えられています。
}}
== 附録 ==
=== チートシート ===
:<syntaxhighlight lang=objc copy>
// Objective-Cのチートシート
// プログラムの始まり
#import <Foundation/Foundation.h>
// 変数の宣言
NSString *message = @"Hello, world!";
// メソッドの定義
- (void)sayHello {
NSLog(@"%@", message);
}
// クラスの定義
@interface MyClass : NSObject
// メソッドの定義
- (void)myMethod;
@end
// クラスの実装
@implementation MyClass
// メソッドの実装
- (void)myMethod {
NSLog(@"My method");
}
@end
// main関数
int main(int argc, const char * argv[]) {
// メッセージの出力
NSLog(@"%@", message);
// クラスのインスタンス化
MyClass *myObject = [[MyClass alloc] init];
// メソッドの呼び出し
[myObject myMethod];
// プログラムの終了
return 0;
}
</syntaxhighlight>
{| class=wikitable
|+ 整数型
!型名
!バイト数
!範囲
!初期値
|-
!int
|4
| -2,147,483,648〜2,147,483,647
|0
|-
!short
|2
| -32,768〜32,767
|0
|-
!long
|4
| -2,147,483,648〜2,147,483,647
|0
|-
!long long
|8
| -9,223,372,036,854,775,808〜9,223,372,036,854,775,807
|0
|-
!unsigned int
|4
|0〜4,294,967,295
|0
|-
!unsigned short
|2
|0〜65,535
|0
|-
!unsigned long
|4
|0〜4,294,967,295
|0
|-
!unsigned long long
|8
|0〜18,446,744,073,709,551,615
|0
|}
{| class=wikitable
|+ 浮動小数点型
!型名
!バイト数
!範囲
!初期値
|-
!float
|4
|1.2E-38〜3.4E+38
|0.0f
|-
!double
|8
|2.3E-308〜1.7E+308
|0.0
|}
{| class=wikitable
|+ 文字型
!型名
!バイト数
!範囲
!初期値
|-
!char
|1
| -128〜127
|0
|}
{| class=wikitable
|+ 真偽型
!型名
!バイト数
!範囲
!初期値
|-
!BOOL
|1
|true/false
|false
|}
{| class=wikitable
|+ ポインタ型
!型名
!説明
|-
!id
|どのようなオブジェクトでも参照可能
|-
!Class
|クラスオブジェクト
|-
!SEL
|セレクターオブジェクト
|-
!void *
|任意のポインタ型
|}
{| class=wikitable
|+ その他の型
!型名
!説明
|-
!NSArray
|オブジェクトの配列
|-
!NSMutableArray
|オブジェクトの可変配列
|-
!NSDictionary
|キーと値のペア
|-
!NSMutableDictionary
|キーと値のペアの可変辞書
|-
!NSString
|文字列
|-
!NSMutableString
|可変文字列
|-
!NSData
|バイトデータ
|-
!NSMutableData
|可変バイトデータ
|}
=== 用語集 ===
* クラス(Class):オブジェクトの設計図のようなもので、インスタンス(実体)を生成するための構造体です。
* オブジェクト(Object):クラスを実体化したもので、メッセージの送信やデータの保存などの動作をすることができます。
* メッセージ(Message):オブジェクトに対して実行する動作を指定するためのもので、メソッドを呼び出すことに相当します。
* メソッド(Method):クラスに定義された関数のようなもので、オブジェクトに対して実行する動作を定義します。
* プロパティ(Property):オブジェクトに含まれる変数のようなもので、クラスに定義されたインスタンス変数に対して、外部からアクセスするための方法を提供します。
* プロトコル(Protocol):クラスが実装すべきメソッドの一覧を定義するためのもので、オブジェクト間の通信の方法を定めます。
* カテゴリ(Category):既存のクラスに新たなメソッドやプロパティを追加するための方法を提供します。
* デリゲート(Delegate):オブジェクトが他のオブジェクトに代わって処理を行うための方法で、プロトコルを用いて定義されます。
* フレームワーク(Framework):アプリケーション開発のために必要な機能をまとめたライブラリのことで、Objective-CではFoundationやUIKitなどがあります。
* ARC(Automatic Reference Counting):Objective-Cにおいて、メモリ管理を自動的に行う仕組みです。
* ブロック(Block):C言語の関数のようなもので、Objective-Cにおいては関数をオブジェクトとして扱うための仕組みです。
[[Category:Objective-C|*]]
[[Category:プログラミング言語]]
{{NDC|007.64}}
evzjkokcdabvnim6ysnt06yje4ro13i
ガリア戦記 第6巻/注解
0
42852
264359
264203
2024-11-27T12:41:18Z
Linguae
449
/* 各節注解 */ 進捗
264359
wikitext
text/x-wiki
<div style="font-family:Arial Black;font-style:normal;font-size:15pt;color:#990033;text-align:center;background-color:#fff0ff;">C · IVLII · CAESARIS · COMMENTARIORVM · BELLI · GALLICI</div>
<div style="font-family:Arial Black;font-style:normal;font-size:30pt;color:#990033;text-align:center;background-color:#fff0ff;">LIBER · SEXTVS</div>
<span style="font-size:13pt;">『<span style="background-color:#ffc;">[[ガリア戦記 第6巻]]</span>』の単語や構文を詳しく読み解く <span style="background-color:#fc8;font-size:15pt;">'''[[ガリア戦記/注解編|注解編]]'''</span> の目次。</span>
{| id="toc" style="border:0px #ddf; align:left;clear:all;" align="center" cellpadding="5"
|-
! style="background:#ccf; text-align:center;" colspan="10"| ガリア戦記 第6巻 注解
|- style="background:#f8f8ff; text-align:right; font-size: 0.85em;"
|[[/1節|1節]]
|[[/2節|2節]]
|[[/3節|3節]]
|[[/4節|4節]]
|[[/5節|5節]]
|[[/6節|6節]]
|[[/7節|7節]]
|[[/8節|8節]]
|[[/9節|9節]]
|[[/10節|10節]]
|- style="background:#f8f8ff; text-align:right; font-size: 0.85em;"
|[[/11節|11節]]
|[[/12節|12節]]
|[[/13節|13節]]
|[[/14節|14節]]
|[[/15節|15節]]
|[[/16節|16節]]
|[[/17節|17節]]
|[[/18節|18節]]
|[[/19節|19節]]
|[[/20節|20節]]<!--
|- style="background:#f8f8ff; text-align:right; font-size: 0.85em;"
|[[/21節|21節]]
|[[/22節|22節]]
|[[/23節|23節]]
|[[/24節|24節]]
|[[/25節|25節]]
|[[/26節|26節]]
|[[/27節|27節]]
|[[/28節|28節]]
|[[/29節|29節]]
|[[/30節|30節]]
|- style="background:#f8f8ff; text-align:right; font-size: 0.85em;"
|[[/31節|31節]]
|[[/32節|32節]]
|[[/33節|33節]]
|[[/34節|34節]]
|[[/35節|35節]]
|[[/36節|36節]]
|[[/37節|37節]]
|[[/38節|38節]]
|[[/39節|39節]]
|[[/40節|40節]]
|- style="background:#f8f8ff; text-align:right; font-size: 0.85em;"
|[[/41節|41節]]
|[[/42節|42節]]
|[[/43節|43節]]
|[[/44節|44節]]
|[[/45節|45節]]
|[[/46節|46節]]
|[[/47節|47節]]
|[[/48節|48節]]
|[[/49節|49節]]
|[[/50節|50節]]
|- style="background:#f8f8ff; text-align:right; font-size: 0.85em;"
|[[/51節|51節]]
|[[/52節|52節]]
|[[/53節|53節]]
|[[/54節|54節]]
|[[/55節|55節]]
|[[/56節|56節]]
|[[/57節|57節]]
|[[/58節|58節]]
| colspan="6" |
|- style="background:#f8f8ff; text-align:right; font-size: 0.85em;"
|[[/1節|1節]]
|[[/2節|2節]]
|[[/3節|3節]]
|[[/4節|4節]]
|[[/5節|5節]]
|[[/6節|6節]]
|[[/7節|7節]]
|[[/8節|8節]]
|[[/9節|9節]]
|[[/0節|0節]]
-->
|-
| style="background:#f5fefe; text-align:left; font-size: 0.8em;" colspan="10"|
[[ガリア戦記 第1巻/注解|'''注解''' 第1巻]] |
[[ガリア戦記 第2巻/注解|第2巻]] |
[[ガリア戦記 第3巻/注解|第3巻]] |
[[ガリア戦記 第4巻/注解|第4巻]] |
[[ガリア戦記 第5巻/注解|第5巻]] |
[[ガリア戦記 第6巻/注解|第6巻]] <!--|
[[ガリア戦記 第7巻/注解|第7巻]] |
[[ガリア戦記 第8巻/注解|第8巻]]-->
|}
<br style="clear:both;" />
__notoc__
== 各節注解 ==
[[画像:Gaule_-53.png|thumb|right|150px|ガリア戦記 第6巻の情勢図(BC53年)。<br>黄色の領域がローマ領。桃色が同盟部族領。]]
===ガッリア北部の平定===
*<span style="background-color:#fff;">[[/1節]] {{進捗|25%|2024-09-23}}</span> (129語)
*<span style="background-color:#fff;">[[/2節]] {{進捗|25%|2024-09-29}}</span> (89語) 短い節
*<span style="background-color:#fff;">[[/3節]] {{進捗|25%|2024-10-06}}</span> (112語)
*<span style="background-color:#fff;">[[/4節]] {{進捗|25%|2024-10-13}}</span> (86語) 短い節
*<span style="background-color:#fff;">[[/5節]] {{進捗|25%|2024-10-14}}</span> (150語)
*<span style="background-color:#fff;">[[/6節]] {{進捗|25%|2024-10-20}}</span> (69語) 短い節
*<span style="background-color:#fff;">[[/7節]] {{進捗|25%|2024-10-30}}</span> (196語)
*<span style="background-color:#fff;">[[/8節]] {{進捗|25%|2024-11-10}}</span> (210語)
*<span style="background-color:#fff;">[[/9節]] {{進捗|25%|2024-11-13}}</span> (141語)
===第二次ゲルマーニア遠征===
*<span style="background-color:#fff;">[[/10節]] {{進捗|25%|2024-11-16}}</span> (143語)
*<span style="background-color:#fff;">[[/11節]] {{進捗|25%|2024-11-27}}</span> (111語)
*<span style="background-color:#fff;">[[/12節]] {{進捗|00%|2024-11-25}}</span>
== 関連項目 ==
*<span style="background-color:#ffd;">[[ガリア戦記]]</span><!--【2006年4月23日起稿】-->
**<span style="background-color:#ffd;">[[ガリア戦記/注解編]]</span><!--(2020-03-27)-->
***<span style="background-color:#ffd;">[[ガリア戦記/注解編/写本と校訂版]] {{進捗|00%|2020-04-17}}</span><!--(2020-04-17)-->
**<span style="background-color:#ffd;">[[ガリア戦記/用例集]] {{進捗|00%|2020-03-29}}</span><!--(2020-03-29)-->
**[[ガリア戦記/内容目次]]:巻・章・節の内容を記した目次 {{進捗|75%|2011-04-02}}
**[[ガリア戦記/参照画像一覧]]:本文で参照した画像一覧 {{進捗|75%|2011-04-16}}
*<span style="background-color:#ffd;font-size:15px;">[[古典ラテン語]] {{進捗|00%|2018-04-18}} </span>
<br><div style="font-size:20pt;"> Ā Ē Ī Ō Ū ā ē ī ō ū Ă Ĕ Ĭ Ŏ Ŭ ă ĕ ĭ ŏ ŭ </div>
<div style="font-size:13pt;">
<math>\overline{\mbox{VIIII}} </math>
</div><!-- [[w:Help:数式の表示]] -->
<span style="font-family:Times New Roman;font-size:15pt;background-color:#fff;"></span>
<span style="font-family:Times New Roman;font-size:15pt;"></span>
<span style="font-family:Times New Roman;"></span>
<!--
*<span style="font-family:Times New Roman;font-style:normal;font-size:15pt;">† : </span>校訂者が、テクストが壊れていると判断した部分をこの記号で囲んでいる。
-->
<!--
<ruby><rb>●漢字●</rb><rp>(</rp><rt>●ルビ●</rt><rp>)</rp></ruby>
-->
<!--
*<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/1節]] {{進捗|00%|2024-11-25}}</span>
-->
<!--
<span style="color:#009900;"></span>
<small></small>
**:<span style="color:#009900;">(訳注:
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:
-->
<!--❶--><!--❷--><!--❸--><!--❹--><!--❺--><!--❻--><!--❼--><!--❽--><!--❾--><!----><!----><!----><!----><!---->
== 関連記事 ==
{{Wikisource|la:Commentarii de bello Gallico/Liber VI|ガリア戦記 第6巻(ラテン語)}}
*ウィキソース
**<span style="font-family:Times New Roman;">[[s:la:Commentarii de bello Gallico/Liber VI]] (第6巻 ラテン語)</span>
**<span style="font-family:Times New Roman;">[[s:en:Commentaries on the Gallic War/Book 6]] (第6巻 英訳)</span>
**<span style="font-family:Times New Roman;">[[s:fr:La Guerre des Gaules/Livre VI]] (第6巻 仏訳)</span>
----
{{Commons|Category:Battles of Caesar's Gallic Wars|Battles of Caesar's Gallic Warsのカテゴリ}}
*<span style="font-family:Times New Roman;font-size:13pt;">[[wikt:fr:Catégorie:Mots en latin issus d’un mot en gaulois]]</span>
----
;地名
*[[wikt:en:Gallia#Latin|Gallia]]
**Gallia [[wikt:en:cisalpinus#Latin|cisalpīna]]
**Gallia [[wikt:en:transalpinus#Latin|trānsalpīna]]
**Gallia [[wikt:en:comatus#Latin|comāta]]
;部族
*[[wikt:en:Cherusci#Latin|Chēruscī]]
*[[wikt:en:Germani#Latin|Germānī]]
*[[wikt:en:Menapii#Latin|Menapiī]]
*[[wikt:en:Suebi#Latin|Suēbī]]
*[[wikt:en:Treveri#Latin|Trēverī]]
*[[wikt:en:Ubii#Latin|Ubiī]]
;第6巻の登場人物
*[[wikt:en:Caesar#Latin|Caesar]]
:
*[[wikt:en:Ambiorix#Latin|Ambiorīx]]
:
*[[wikt:en:Commius|Commius]]
**[[w:コンミウス]]
**[[w:la:Commius]]
**[[w:en:Commius]]
**[[w:fr:Commios]]
*[[wikt:en:Cicero#Latin|Cicerō]]
**[[w:クィントゥス・トゥッリウス・キケロ|クイーントゥス・トゥッリウス・キケロー]]
**[[w:la:Quintus Tullius Cicero]]
**[[w:en:Quintus Tullius Cicero]]
**[[w:fr:Quintus Tullius Cicero]]
*[[wikt:en:Crassus#Latin|Crassus]]
*[[wikt:en:Labienus#Latin|Labiēnus]]
**[[w:ティトゥス・ラビエヌス|ティトゥス・ラビエーヌス]]
<!--
*?
**Crassus
***[[w:プブリウス・リキニウス・クラッスス]]
***[[w:la:Publius Licinius Crassus]]
***[[w:en:Publius Licinius Crassus (son of triumvir)]]
***[[w:fr:Publius Crassus]]
**Labienus (副官)
***[[w:la:Titus Labienus]]
***[[w:en:Titus Labienus]]
***[[w:fr:Titus Labienus]]
**Brutus
***[[w:デキムス・ユニウス・ブルトゥス・アルビヌス]]
***[[w:la:Decimus Iunius Brutus Albinus]]
***[[w:en:Decimus Junius Brutus Albinus]]
***[[w:fr:Decimus Junius Brutus Albinus]]
-->
<br>
===第6巻の関連記事===
<!--【第6巻の関連記事】-->
{{Commons|Category:Roman Britain|Roman Britainのカテゴリ}}
<div style="font-family:Times New Roman;font-size:13pt;">
<!--
*[[c:Category:Armorica]]
**[[c:Category:Maps of the Antiquity of Bretagne]]
-->
<hr>
*[[c:Category:Ancient Roman ships]]
<br>
</span>
<span style="font-family:Times New Roman;font-size:13pt;"></span>
== 外部リンク ==
*[[ガリア戦記/注解編#外部リンク]] を参照。
*[[ガリア戦記/注解編/写本と校訂版#オンライン注釈書等]] 等を参照。
===オンライン注釈書===
<div style="background-color:#eeeeee;">
====Caesar's Gallic war : notes by F. W. Kelsey (1897)====
:C. Iuli Caesaris De bello gallico libri VII :
::Caesar's Gallic war : with an introduction, notes, and vocabulary
::: by [[w:en:Francis Kelsey|Francis Willey Kelsey (1858-1927)]], Fifteenth Edition (1897)
:::: (HathiTrust Digital Library [[w:ハーティトラスト|ハーティトラスト・デジタルライブラリ]]で電子化)
:: [https://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=hvd.hn1tp9&seq=19 Contents] (#19)
;:─TEXT─
:: '''Book 6''' : [https://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=hvd.hn1tp9&seq=219 Commentarius Sextus] (#219)
;:─NOTES─
:: '''Book 6'''
# [https://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=hvd.hn1tp9&seq=441 I.] (#441), [https://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=hvd.hn1tp9&seq=442 II.-III.] (#442), [https://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=hvd.hn1tp9&seq=443 IV.-VII.] (#443), [https://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=hvd.hn1tp9&seq=444 VIII.-IX.] (#444),
# [https://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=hvd.hn1tp9&seq=445 X.-XI.] (#445), [https://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=hvd.hn1tp9&seq=446 XII.-XIII.] (#446), [https://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=hvd.hn1tp9&seq=447 XIV.-XV.] (#447),
</div>
====English translation by W. A. McDevitte & W. S. Bohn (1869)====
# [http://www.forumromanum.org/literature/caesar/gallic.html (www.forumromanum.org)]
# (www.perseus.tufts.edu)
## [https://www.perseus.tufts.edu/hopper/text?doc=Caes.+Gal.+6.1 C. Julius Caesar, Gallic War, Book 6, chapter 1]
## [https://www.perseus.tufts.edu/hopper/text?doc=Caes.+Gal.+6.2 C. Julius Caesar, Gallic War, Book 6, chapter 2]
## [https://www.perseus.tufts.edu/hopper/text?doc=Caes.+Gal.+6.3 C. Julius Caesar, Gallic War, Book 6, chapter 3]
## [https://www.perseus.tufts.edu/hopper/text?doc=Caes.+Gal.+6.4 C. Julius Caesar, Gallic War, Book 6, chapter 4]
## [https://www.perseus.tufts.edu/hopper/text?doc=Caes.+Gal.+6.5 C. Julius Caesar, Gallic War, Book 6, chapter 5]
## [https://www.perseus.tufts.edu/hopper/text?doc=Caes.+Gal.+6.6 C. Julius Caesar, Gallic War, Book 6, chapter 6]
## [https://www.perseus.tufts.edu/hopper/text?doc=Caes.+Gal.+6.7 C. Julius Caesar, Gallic War, Book 6, chapter 7]
## [https://www.perseus.tufts.edu/hopper/text?doc=Caes.+Gal.+6.8 C. Julius Caesar, Gallic War, Book 6, chapter 8]
## [https://www.perseus.tufts.edu/hopper/text?doc=Caes.+Gal.+6.9 C. Julius Caesar, Gallic War, Book 6, chapter 9]
## [https://www.perseus.tufts.edu/hopper/text?doc=Caes.+Gal.+6.10 C. Julius Caesar, Gallic War, Book 6, chapter 10]
<!--
====Eastman, Frederick Carlos., D'Ooge, Benjamin L. 1860-1940.(1917)====
<span style="font-family:Times New Roman;font-style:normal;font-size:13pt;">
*[https://catalog.hathitrust.org/Record/001058370 Catalog Record: Caesar in Gaul and selections from the third... | HathiTrust Digital Library] (catalog.hathitrust.org)
:[https://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=hvd.hn5cnb&view=1up&seq=7&skin=2021 #7 - Caesar in Gaul and selections from the third book of the Civil ... - Full View | HathiTrust Digital Library] (babel.hathitrust.org)
:BOOK IV. [https://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=hvd.hn5cnb&view=1up&seq=393&skin=2021 #393 ]
:IV.34,-38. [https://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=hvd.hn5cnb&view=1up&seq=403&skin=2021 #403 ]
</span>
-->
====Harkness, Albert (1889)====
<span style="font-family:Times New Roman;font-style:normal;"><span style="font-size:15pt;">Caesar's Commentaries on the Gallic War, </span><span style="font-size:13pt;">with notes, dictionary, and a map of Gaul.</span><br> <span style="font-size:15pt;">
edited by <u>[[w:en:Albert Harkness|Albert Harkness (1822-1907)]]</u> <ref>[http://onlinebooks.library.upenn.edu/webbin/book/lookupname?key=Harkness%2C%20Albert%2C%201822%2D1907 Harkness, Albert, 1822-1907 | The Online Books Page]</ref>, New York, [[w:en:D. Appleton & Company|D. Appleton and Company]], 1889 (Rivised Edition)</span></span>
::Caesar's commentaries on the Gallic war; with notes, dictionary, ... (Full View | HathiTrust Digital Library)
; BOOK SIXTH
:VI. 1. [https://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=hvd.hn3hve&view=1up&seq=365 #365]
====Incerti auctoris(編者不詳)====
; [https://books.google.co.jp/books?id=uLA8AAAAIAAJ&lpg=PA98&dq=Caesar+to+Cicero.+Be+of+good+courage.+Expect+aid&pg=PP1&redir_esc=y#v=onepage&q&f=false Caesar Gallic War V with vocabulary](第5巻)-Google ブックス(プレビュー)
;[https://www.latein.me/ Latein-Wörterbuch - Latein.me]
# [https://www.latein.me/text/3/Caesar/37/De+Bello+Gallico+%28V%29/p/0 De Bello Gallico (V) - Caesar - Latein.me]
<span style="font-family:Times New Roman;font-style:normal;font-size:13pt;"></span>
;nodictionaries.com
<!-- :[https://nodictionaries.com/caesar/de-bello-gallico-1/1 '''Caesar De Bello Gallico 1''' 1 in Latin, with adjustable running vocabulary]
:[https://nodictionaries.com/caesar/de-bello-gallico-2/1 '''Caesar De Bello Gallico 2''' 1 in Latin, with adjustable running vocabulary]
:[https://nodictionaries.com/caesar/de-bello-gallico-3/1 '''Caesar De Bello Gallico 3''' 1 in Latin, with adjustable running vocabulary]
:[https://nodictionaries.com/caesar/de-bello-gallico-4/1 '''Caesar De Bello Gallico 4''' 1 in Latin, with adjustable running vocabulary] -->
:[https://nodictionaries.com/caesar/de-bello-gallico-5/1 Caesar De Bello Gallico 5 1 in Latin, with adjustable running vocabulary]
==脚注==
<references />
[[Category:ガリア戦記 第6巻|*#]]
cij8luby944cjtbzq7djr4doi4twfjl
264385
264359
2024-11-27T14:17:31Z
Linguae
449
/* 関連記事 */
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wikitext
text/x-wiki
<div style="font-family:Arial Black;font-style:normal;font-size:15pt;color:#990033;text-align:center;background-color:#fff0ff;">C · IVLII · CAESARIS · COMMENTARIORVM · BELLI · GALLICI</div>
<div style="font-family:Arial Black;font-style:normal;font-size:30pt;color:#990033;text-align:center;background-color:#fff0ff;">LIBER · SEXTVS</div>
<span style="font-size:13pt;">『<span style="background-color:#ffc;">[[ガリア戦記 第6巻]]</span>』の単語や構文を詳しく読み解く <span style="background-color:#fc8;font-size:15pt;">'''[[ガリア戦記/注解編|注解編]]'''</span> の目次。</span>
{| id="toc" style="border:0px #ddf; align:left;clear:all;" align="center" cellpadding="5"
|-
! style="background:#ccf; text-align:center;" colspan="10"| ガリア戦記 第6巻 注解
|- style="background:#f8f8ff; text-align:right; font-size: 0.85em;"
|[[/1節|1節]]
|[[/2節|2節]]
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|[[/7節|7節]]
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|[[/9節|9節]]
|[[/10節|10節]]
|- style="background:#f8f8ff; text-align:right; font-size: 0.85em;"
|[[/11節|11節]]
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|[[/20節|20節]]<!--
|- style="background:#f8f8ff; text-align:right; font-size: 0.85em;"
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| colspan="6" |
|- style="background:#f8f8ff; text-align:right; font-size: 0.85em;"
|[[/1節|1節]]
|[[/2節|2節]]
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|[[/0節|0節]]
-->
|-
| style="background:#f5fefe; text-align:left; font-size: 0.8em;" colspan="10"|
[[ガリア戦記 第1巻/注解|'''注解''' 第1巻]] |
[[ガリア戦記 第2巻/注解|第2巻]] |
[[ガリア戦記 第3巻/注解|第3巻]] |
[[ガリア戦記 第4巻/注解|第4巻]] |
[[ガリア戦記 第5巻/注解|第5巻]] |
[[ガリア戦記 第6巻/注解|第6巻]] <!--|
[[ガリア戦記 第7巻/注解|第7巻]] |
[[ガリア戦記 第8巻/注解|第8巻]]-->
|}
<br style="clear:both;" />
__notoc__
== 各節注解 ==
[[画像:Gaule_-53.png|thumb|right|150px|ガリア戦記 第6巻の情勢図(BC53年)。<br>黄色の領域がローマ領。桃色が同盟部族領。]]
===ガッリア北部の平定===
*<span style="background-color:#fff;">[[/1節]] {{進捗|25%|2024-09-23}}</span> (129語)
*<span style="background-color:#fff;">[[/2節]] {{進捗|25%|2024-09-29}}</span> (89語) 短い節
*<span style="background-color:#fff;">[[/3節]] {{進捗|25%|2024-10-06}}</span> (112語)
*<span style="background-color:#fff;">[[/4節]] {{進捗|25%|2024-10-13}}</span> (86語) 短い節
*<span style="background-color:#fff;">[[/5節]] {{進捗|25%|2024-10-14}}</span> (150語)
*<span style="background-color:#fff;">[[/6節]] {{進捗|25%|2024-10-20}}</span> (69語) 短い節
*<span style="background-color:#fff;">[[/7節]] {{進捗|25%|2024-10-30}}</span> (196語)
*<span style="background-color:#fff;">[[/8節]] {{進捗|25%|2024-11-10}}</span> (210語)
*<span style="background-color:#fff;">[[/9節]] {{進捗|25%|2024-11-13}}</span> (141語)
===第二次ゲルマーニア遠征===
*<span style="background-color:#fff;">[[/10節]] {{進捗|25%|2024-11-16}}</span> (143語)
*<span style="background-color:#fff;">[[/11節]] {{進捗|25%|2024-11-27}}</span> (111語)
*<span style="background-color:#fff;">[[/12節]] {{進捗|00%|2024-11-25}}</span>
== 関連項目 ==
*<span style="background-color:#ffd;">[[ガリア戦記]]</span><!--【2006年4月23日起稿】-->
**<span style="background-color:#ffd;">[[ガリア戦記/注解編]]</span><!--(2020-03-27)-->
***<span style="background-color:#ffd;">[[ガリア戦記/注解編/写本と校訂版]] {{進捗|00%|2020-04-17}}</span><!--(2020-04-17)-->
**<span style="background-color:#ffd;">[[ガリア戦記/用例集]] {{進捗|00%|2020-03-29}}</span><!--(2020-03-29)-->
**[[ガリア戦記/内容目次]]:巻・章・節の内容を記した目次 {{進捗|75%|2011-04-02}}
**[[ガリア戦記/参照画像一覧]]:本文で参照した画像一覧 {{進捗|75%|2011-04-16}}
*<span style="background-color:#ffd;font-size:15px;">[[古典ラテン語]] {{進捗|00%|2018-04-18}} </span>
<br><div style="font-size:20pt;"> Ā Ē Ī Ō Ū ā ē ī ō ū Ă Ĕ Ĭ Ŏ Ŭ ă ĕ ĭ ŏ ŭ </div>
<div style="font-size:13pt;">
<math>\overline{\mbox{VIIII}} </math>
</div><!-- [[w:Help:数式の表示]] -->
<span style="font-family:Times New Roman;font-size:15pt;background-color:#fff;"></span>
<span style="font-family:Times New Roman;font-size:15pt;"></span>
<span style="font-family:Times New Roman;"></span>
<!--
*<span style="font-family:Times New Roman;font-style:normal;font-size:15pt;">† : </span>校訂者が、テクストが壊れていると判断した部分をこの記号で囲んでいる。
-->
<!--
<ruby><rb>●漢字●</rb><rp>(</rp><rt>●ルビ●</rt><rp>)</rp></ruby>
-->
<!--
*<span style="background-color:#ffd;">[[/注解/1節]] {{進捗|00%|2024-11-25}}</span>
-->
<!--
<span style="color:#009900;"></span>
<small></small>
**:<span style="color:#009900;">(訳注:
**:<span style="color:#009900;font-family:Times New Roman;">(訳注:
-->
<!--❶--><!--❷--><!--❸--><!--❹--><!--❺--><!--❻--><!--❼--><!--❽--><!--❾--><!----><!----><!----><!----><!---->
== 関連記事 ==
{{Wikisource|la:Commentarii de bello Gallico/Liber VI|ガリア戦記 第6巻(ラテン語)}}
*ウィキソース
**<span style="font-family:Times New Roman;">[[s:la:Commentarii de bello Gallico/Liber VI]] (第6巻 ラテン語)</span>
**<span style="font-family:Times New Roman;">[[s:en:Commentaries on the Gallic War/Book 6]] (第6巻 英訳)</span>
**<span style="font-family:Times New Roman;">[[s:fr:La Guerre des Gaules/Livre VI]] (第6巻 仏訳)</span>
----
{{Commons|Category:Battles of Caesar's Gallic Wars|Battles of Caesar's Gallic Warsのカテゴリ}}
*<span style="font-family:Times New Roman;font-size:13pt;">[[wikt:fr:Catégorie:Mots en latin issus d’un mot en gaulois]]</span>
----
;地名
*[[wikt:en:Gallia#Latin|Gallia]]
**Gallia [[wikt:en:cisalpinus#Latin|cisalpīna]]
**Gallia [[wikt:en:transalpinus#Latin|trānsalpīna]]
**Gallia [[wikt:en:comatus#Latin|comāta]]
;部族
*[[wikt:en:Aedui#Latin|(H)aeduī]]
*[[wikt:en:Cherusci#Latin|Chēruscī]]
*[[wikt:en:Germani#Latin|Germānī]]
*[[wikt:en:Menapii#Latin|Menapiī]]
*[[wikt:en:Remi#Latin|Rēmī]]
*[[wikt:en:Sequani#Latin|Sēquanī]] セークァニー
*[[wikt:en:Suebi#Latin|Suēbī]]
*[[wikt:en:Treveri#Latin|Trēverī]]
*[[wikt:en:Ubii#Latin|Ubiī]]
;第6巻の登場人物
*[[wikt:en:Caesar#Latin|Caesar]]
:
*[[wikt:en:Ambiorix#Latin|Ambiorīx]]
:
*[[wikt:en:Commius|Commius]]
**[[w:コンミウス]]
**[[w:la:Commius]]
**[[w:en:Commius]]
**[[w:fr:Commios]]
*[[wikt:en:Cicero#Latin|Cicerō]]
**[[w:クィントゥス・トゥッリウス・キケロ|クイーントゥス・トゥッリウス・キケロー]]
**[[w:la:Quintus Tullius Cicero]]
**[[w:en:Quintus Tullius Cicero]]
**[[w:fr:Quintus Tullius Cicero]]
*[[wikt:en:Crassus#Latin|Crassus]]
*[[wikt:en:Labienus#Latin|Labiēnus]]
**[[w:ティトゥス・ラビエヌス|ティトゥス・ラビエーヌス]]
<!--
*?
**Crassus
***[[w:プブリウス・リキニウス・クラッスス]]
***[[w:la:Publius Licinius Crassus]]
***[[w:en:Publius Licinius Crassus (son of triumvir)]]
***[[w:fr:Publius Crassus]]
**Labienus (副官)
***[[w:la:Titus Labienus]]
***[[w:en:Titus Labienus]]
***[[w:fr:Titus Labienus]]
**Brutus
***[[w:デキムス・ユニウス・ブルトゥス・アルビヌス]]
***[[w:la:Decimus Iunius Brutus Albinus]]
***[[w:en:Decimus Junius Brutus Albinus]]
***[[w:fr:Decimus Junius Brutus Albinus]]
-->
<br>
===第6巻の関連記事===
<!--【第6巻の関連記事】-->
{{Commons|Category:Roman Britain|Roman Britainのカテゴリ}}
<div style="font-family:Times New Roman;font-size:13pt;">
<!--
*[[c:Category:Armorica]]
**[[c:Category:Maps of the Antiquity of Bretagne]]
-->
<hr>
*[[c:Category:Ancient Roman ships]]
<br>
</span>
<span style="font-family:Times New Roman;font-size:13pt;"></span>
== 外部リンク ==
*[[ガリア戦記/注解編#外部リンク]] を参照。
*[[ガリア戦記/注解編/写本と校訂版#オンライン注釈書等]] 等を参照。
===オンライン注釈書===
<div style="background-color:#eeeeee;">
====Caesar's Gallic war : notes by F. W. Kelsey (1897)====
:C. Iuli Caesaris De bello gallico libri VII :
::Caesar's Gallic war : with an introduction, notes, and vocabulary
::: by [[w:en:Francis Kelsey|Francis Willey Kelsey (1858-1927)]], Fifteenth Edition (1897)
:::: (HathiTrust Digital Library [[w:ハーティトラスト|ハーティトラスト・デジタルライブラリ]]で電子化)
:: [https://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=hvd.hn1tp9&seq=19 Contents] (#19)
;:─TEXT─
:: '''Book 6''' : [https://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=hvd.hn1tp9&seq=219 Commentarius Sextus] (#219)
;:─NOTES─
:: '''Book 6'''
# [https://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=hvd.hn1tp9&seq=441 I.] (#441), [https://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=hvd.hn1tp9&seq=442 II.-III.] (#442), [https://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=hvd.hn1tp9&seq=443 IV.-VII.] (#443), [https://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=hvd.hn1tp9&seq=444 VIII.-IX.] (#444),
# [https://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=hvd.hn1tp9&seq=445 X.-XI.] (#445), [https://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=hvd.hn1tp9&seq=446 XII.-XIII.] (#446), [https://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=hvd.hn1tp9&seq=447 XIV.-XV.] (#447),
</div>
====English translation by W. A. McDevitte & W. S. Bohn (1869)====
# [http://www.forumromanum.org/literature/caesar/gallic.html (www.forumromanum.org)]
# (www.perseus.tufts.edu)
## [https://www.perseus.tufts.edu/hopper/text?doc=Caes.+Gal.+6.1 C. Julius Caesar, Gallic War, Book 6, chapter 1]
## [https://www.perseus.tufts.edu/hopper/text?doc=Caes.+Gal.+6.2 C. Julius Caesar, Gallic War, Book 6, chapter 2]
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## [https://www.perseus.tufts.edu/hopper/text?doc=Caes.+Gal.+6.7 C. Julius Caesar, Gallic War, Book 6, chapter 7]
## [https://www.perseus.tufts.edu/hopper/text?doc=Caes.+Gal.+6.8 C. Julius Caesar, Gallic War, Book 6, chapter 8]
## [https://www.perseus.tufts.edu/hopper/text?doc=Caes.+Gal.+6.9 C. Julius Caesar, Gallic War, Book 6, chapter 9]
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<!--
====Eastman, Frederick Carlos., D'Ooge, Benjamin L. 1860-1940.(1917)====
<span style="font-family:Times New Roman;font-style:normal;font-size:13pt;">
*[https://catalog.hathitrust.org/Record/001058370 Catalog Record: Caesar in Gaul and selections from the third... | HathiTrust Digital Library] (catalog.hathitrust.org)
:[https://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=hvd.hn5cnb&view=1up&seq=7&skin=2021 #7 - Caesar in Gaul and selections from the third book of the Civil ... - Full View | HathiTrust Digital Library] (babel.hathitrust.org)
:BOOK IV. [https://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=hvd.hn5cnb&view=1up&seq=393&skin=2021 #393 ]
:IV.34,-38. [https://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=hvd.hn5cnb&view=1up&seq=403&skin=2021 #403 ]
</span>
-->
====Harkness, Albert (1889)====
<span style="font-family:Times New Roman;font-style:normal;"><span style="font-size:15pt;">Caesar's Commentaries on the Gallic War, </span><span style="font-size:13pt;">with notes, dictionary, and a map of Gaul.</span><br> <span style="font-size:15pt;">
edited by <u>[[w:en:Albert Harkness|Albert Harkness (1822-1907)]]</u> <ref>[http://onlinebooks.library.upenn.edu/webbin/book/lookupname?key=Harkness%2C%20Albert%2C%201822%2D1907 Harkness, Albert, 1822-1907 | The Online Books Page]</ref>, New York, [[w:en:D. Appleton & Company|D. Appleton and Company]], 1889 (Rivised Edition)</span></span>
::Caesar's commentaries on the Gallic war; with notes, dictionary, ... (Full View | HathiTrust Digital Library)
; BOOK SIXTH
:VI. 1. [https://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=hvd.hn3hve&view=1up&seq=365 #365]
====Incerti auctoris(編者不詳)====
; [https://books.google.co.jp/books?id=uLA8AAAAIAAJ&lpg=PA98&dq=Caesar+to+Cicero.+Be+of+good+courage.+Expect+aid&pg=PP1&redir_esc=y#v=onepage&q&f=false Caesar Gallic War V with vocabulary](第5巻)-Google ブックス(プレビュー)
;[https://www.latein.me/ Latein-Wörterbuch - Latein.me]
# [https://www.latein.me/text/3/Caesar/37/De+Bello+Gallico+%28V%29/p/0 De Bello Gallico (V) - Caesar - Latein.me]
<span style="font-family:Times New Roman;font-style:normal;font-size:13pt;"></span>
;nodictionaries.com
<!-- :[https://nodictionaries.com/caesar/de-bello-gallico-1/1 '''Caesar De Bello Gallico 1''' 1 in Latin, with adjustable running vocabulary]
:[https://nodictionaries.com/caesar/de-bello-gallico-2/1 '''Caesar De Bello Gallico 2''' 1 in Latin, with adjustable running vocabulary]
:[https://nodictionaries.com/caesar/de-bello-gallico-3/1 '''Caesar De Bello Gallico 3''' 1 in Latin, with adjustable running vocabulary]
:[https://nodictionaries.com/caesar/de-bello-gallico-4/1 '''Caesar De Bello Gallico 4''' 1 in Latin, with adjustable running vocabulary] -->
:[https://nodictionaries.com/caesar/de-bello-gallico-5/1 Caesar De Bello Gallico 5 1 in Latin, with adjustable running vocabulary]
==脚注==
<references />
[[Category:ガリア戦記 第6巻|*#]]
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高等学校日本史探究/古代国家の形成Ⅱ
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Kwawe
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/* 資料出所 */ 東京書籍を追加。
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[[小学校・中学校・高等学校の学習]]>[[高等学校の学習]]>[[高等学校地理歴史]]>[[高等学校日本史探究]]>古代国家の形成Ⅱ
==大化の改新==
蘇我氏がいなくなると、朝廷内で大きな人事異動がありました。この頃、中大兄皇子が主役になりました。ここで、中大兄皇子はあえて皇太子のままで政治をしていました。なお、『日本書紀』は、「中大兄皇子は皇太子になった。」と書いています。しかし、皇太子は飛鳥時代になく、それ以降の時代に入ってから、「中大兄皇子は皇太子になった。」と付け加えられたかもしれません。以前は、親から子供へ代々重要な役職を代々受け継がれていましたが、そのような制度も乙巳の変で終わりました。そこで、中大兄皇子は賢くて仕事も出来るような人でも重要な役職につけるように左大臣と右大臣を作りました。そして阿倍内麻呂を左大臣に就かせ、蘇我倉山田石川麻呂を右大臣に就かせました。次に、中大兄皇子は中臣鎌足を内臣に就かせ、高向玄理と旻を国博士に就かせました。さらに、皇極天皇は弟の孝徳天皇に自分から位を譲りました。以前の天皇は亡くなるまでずっと天皇でした。乙巳の変以降、この人が次の天皇に相応しいと思ったら、天皇の家族内で自由に決められるようになりました。
実際、改新の詔は日本書紀の記述と異なります。しかし、当時の様子を考えると、これからの改革の方向性を示すようなお知らせをしていたと考えられています。
改新の詔第1条は公地公民制と食封制度を定めています。しかし、王様・豪族は改新の詔第1条を定めても、人民を自分の奴隷(部曲)にしたり、土地を自分の土地(田荘)にしたりしました。
==東北遠征と白村江の戦い==
== 資料出所 ==
* 平雅行、横田冬彦ほか編著『[https://www.jikkyo.co.jp/material/dbook/R5_chireki_20220510/?pNo=6 日本史探究]』実教出版株式会社 2023年
* 佐藤信、五味文彦ほか編著『[https://new-textbook.yamakawa.co.jp/j-history/ 詳説日本史探究]』株式会社山川出版社 2023年
* 渡邊晃宏ほか編著『[https://ten.tokyo-shoseki.co.jp/text/hs/shakai/16596/ 日本史探究]』東京書籍株式会社 2023年
* 山中裕典著'''『'''[https://www.amazon.co.jp/E6-94-B9-E8-A8-82-E7-89-88-E5-A4-A7-E5-AD-A6-E5-85-A5-E5-AD-A6-E5-85-B1-E9-80-9A-E3-83-86-E3-82-B/dp/4046062371/ref=dp_ob_title_bk 改訂版 大学入学共通テスト 歴史総合、日本史探究の点数が面白いほどとれる本]'''』'''株式会社KADOKAWA 2024年
* 佐藤信、五味文彦ほか編著『[https://www.amazon.co.jp/%E8%A9%B3%E8%AA%AC%E6%97%A5%E6%9C%AC%E5%8F%B2%E7%A0%94%E7%A9%B6-%E4%BD%90%E8%97%A4-%E4%BF%A1/dp/4634010739/ref=sr_1_1?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&crid=2JVCFQ6ZSAM4W&keywords=%E6%97%A5%E6%9C%AC%E5%8F%B2%E7%A0%94%E7%A9%B6&qid=1673018227&sprefix=%E6%97%A5%E6%9C%AC%E5%8F%B2%E7%A0%94%E7%A9%B6%2Caps%2C229&sr=8-1 詳説日本史研究]』株式会社山川出版社 2017年
* 河合敦著『[https://www.amazon.co.jp/%E4%B8%96%E7%95%8C%E4%B8%80%E3%82%8F%E3%81%8B%E3%82%8A%E3%82%84%E3%81%99%E3%81%84-%E6%B2%B3%E5%90%88%E6%95%A6%E3%81%AE-%E6%97%A5%E6%9C%AC%E5%8F%B2B-%E3%80%8C%E5%8E%9F%E5%A7%8B-%E9%8E%8C%E5%80%89%E3%80%8D%E3%81%AE%E7%89%B9%E5%88%A5%E8%AC%9B%E5%BA%A7-%E6%B2%B3%E5%90%88/dp/404600794X/ref=d_pd_sbs_sccl_2_1/355-7112149-5713814?pd_rd_w=H8Pxa&content-id=amzn1.sym.820591ed-a555-4556-9bf6-5ebd5493c69e&pf_rd_p=820591ed-a555-4556-9bf6-5ebd5493c69e&pf_rd_r=ZWG9FNM6AD22NFF5WK2G&pd_rd_wg=scszo&pd_rd_r=8c1e9eda-f944-4c80-9e4e-7e35244ab2a6&pd_rd_i=404600794X&psc=1 世界一わかりやすい河合敦の日本史B[原始~鎌倉]の特別講座]』株式会社KADOKAWA 2014年(絶版本)
[[カテゴリ:高等学校日本史探究]]
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ガリア戦記 第6巻/注解/11節
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/* 整形テキスト */
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text/x-wiki
<div style="font-family:Arial Black;font-style:normal;font-size:15pt;color:#990033;text-align:center;">C · IVLII · CAESARIS · COMMENTARIORVM · BELLI · GALLICI</div>
<div style="font-family:Arial Black;font-style:normal;font-size:30pt;color:#990033;text-align:center;">LIBER · SEXTVS</div>
<br>
{| id="toc" style="align:center;clear:all;" align="center" cellpadding="5"
|-
! style="background:#bbf; text-align:center;" | [[ガリア戦記/注解編|ガリア戦記 注解編]]
| style="background:#ccf; text-align:center;" | [[ガリア戦記 第6巻/注解|第6巻]]
| style="background:#eef; text-align:center;"|
[[ガリア戦記 第6巻/注解/10節|10節]] |
[[ガリア戦記 第6巻/注解/11節|11節]] |
[[ガリア戦記 第6巻/注解/12節|12節]]
|}
__notoc__
== 原文テキスト ==
<div style="font-family:Times New Roman;font-style:normal;font-size:15pt;color:#333;text-align:left;"><ref>原文テキストについては[[ガリア戦記/注解編#原文テキスト]]を参照。</ref> 11.
<!--❶--><sup>1</sup>Quoniam ad hunc locum perventum est, non alienum esse videtur de Galliae Germaniaeque moribus et quo differant hae nationes inter sese proponere. <!--◆--> <!--❷--><sup>2</sup>In Gallia non solum in omnibus civitatibus atque in omnibus pagis partibusque<!--,--> sed paene etiam in singulis domibus factiones sunt, <!--◆--> <!--❸--><sup>3</sup>earumque factionum <!--(TU) -->principes sunt<!--(αT) sunt principes-->, qui summam auctoritatem eorum iudicio habere existimantur, quorum ad arbitrium iudiciumque summa omnium rerum consiliorumque redeat. <!--◆--> <!--❹--><sup>4</sup><!--(α) -->Itaque<!--(β) idque--> eius rei causa antiquitus institutum videtur, ne quis ex plebe contra potentiorem auxili<!--auxilii--> egeret: <!--◆--> suos enim quisque opprimi et circumveniri non patitur, neque, aliter si faciat, ullam inter suos habet auctoritatem. <!--◆--> <!--❺--><sup>5</sup>Haec eadem ratio est in summa totius Galliae: <!--◆--> namque omnes civitates <!--(α) -->in partis<!--partes--> divisae sunt duas<!--(β) divisae sunt in duas partes-->. </div>
<span style="background-color:#ffc;"></span>
----
;テキスト引用についての注記
<span style="font-family:Times New Roman;font-style:normal;font-size:15pt;"></span>
<span style="font-family:Times New Roman;font-style:oblique;font-size:15pt;"></span>
<span style="font-family:Times New Roman;font-style:bold;font-size:15pt;"></span>
== 整形テキスト ==
<div style="font-family:Times New Roman;font-style:normal;font-size:15pt;color:#333;text-align:left;"><ref>整形テキストについては[[ガリア戦記/注解編#凡例]]を参照。</ref> XI.
<!--❶--><sup>①</sup>Quoniam ad hunc locum perventum est, nōn aliēnum esse vidētur<!--,--> dē Galliae Germāniaeque mōribus et<!--,--> quō differant hae nātiōnēs inter sēsē<!--,--> prōpōnere. <!--◆--> <!--❷--><sup>②</sup>In Galliā nōn sōlum in omnibus cīvitātibus atque in omnibus pāgīs partibusque<!--,--> sed paene etiam in singulīs domibus factiōnēs sunt, <!--◆--> <!--❸--><sup>③</sup>eārumque factiōnum <!--(TU) --><u>prīncipēs sunt</u><!--(αT) sunt prīncipēs-->, quī summam auctōritātem eōrum iūdiciō habēre exīstimantur, quōrum ad arbitrium iūdiciumque summa omnium rērum cōnsiliōrumque redeat. <!--◆--> <!--❹--><sup>④</sup><!--(α) --><u>Itaque</u><!--(β) idque--> eius reī causā antīquitus īnstitūtum vidētur, nē quis ex plēbe contrā potentiōrem <span style="color:#800;">auxiliī</span><!--auxilī--> egēret:<!--;--> <!--◆--> suōs enim quisque opprimī et circumvenīrī nōn patitur, neque, aliter sī faciat, ūllam inter suōs habet auctōritātem. <!--◆--> <!--❺--><sup>⑤</sup>Haec eadem ratiō est in summā tōtīus Galliae:<!--;--> <!--◆--> namque omnēs cīvitātēs <!--(α) --><u>in <span style="color:#800;">partēs</span><!--partīs--> dīvīsae sunt duās</u><!--(β) dīvīsae sunt in duās partēs-->. </div>
<span style="color:#800;"></span>
----
;注記
*原文の <span style="font-family:Times New Roman;font-style:normal;font-size:15pt;">[[wikt:en:auxili#Latin|auxilī]], [[wikt:en:partis#Latin|partīs]] <!--[[wikt:en:accommodatae|accommodātae]], [[wikt:en:allatis|allātīs]], [[wikt:en:Aduatuci|Aduatucī]], [[wikt:en:Aduatucis|Aduatucīs]], [[wikt:en:Aduatucos|Aduatucōs]], [[wikt:en:Aeduae|Aeduae]], [[wikt:en:Aedui#Latin|Aeduī]], [[wikt:en:Aeduis|Aeduīs]], [[wikt:en:Aeduorum|Aeduōrum]], [[wikt:en:Aeduos|Aeduōs]], [[wikt:en:Aeduus#Latin|Aeduus]], [[wikt:en:aequinocti|aequinoctī]], [[wikt:en:affectus#Participle|affectus]], [[wikt:en:aggregabat|aggregābat]], [[wikt:en:allato|allātō]], [[wikt:en:Alpis#Latin|Alpīs]], [[wikt:en:appelluntur|appelluntur]], [[wikt:en:apportari|apportārī]], [[wikt:en:appropinquabat|appropinquābat]], [[wikt:en:appropinquare#Latin|appropinquāre]], [[wikt:en:appropinquarent|appropinquārent]], [[wikt:en:appropinquaverunt|appropinquāvērunt]] ([[wikt:en:appropinquarunt|appropinquārunt]]), [[wikt:en:appropinquavit|appropinquāvit]], [[wikt:en:appulso#Latin|appulsō]], [[wikt:en:arripere|arripere]], [[wikt:en:ascendissent#Latin|ascendissent]], [[wikt:en:ascensu#Noun|ascēnsū]], [[wikt:en:assuefacti|assuēfactī]], [[wikt:en:cedentis|cēdentīs]], [[wikt:en:cohortis|cohortīs]], [[wikt:en:coicere|coicere]], [[wikt:en:coicerent|coicerent]], [[wikt:en:coici|coicī]], [[wikt:en:coiciant|coiciant]], [[wikt:en:coiciebant|coiciēbant]], [[wikt:en:coiciunt|coiciunt]], [[wikt:en:coiecerant|coiēcerant]], [[wikt:en:coiecerunt|coiēcērunt]], [[wikt:en:coiecisse|coiēcisse]], [[wikt:en:coiecta|coiecta]], [[wikt:en:coiecti|coiectī]], [[wikt:en:coiectis|coiectīs]], [[wikt:en:collatis|collātīs]], [[wikt:en:collaudat|collaudat]], [[wikt:en:collaudatis#Participle|collaudātīs]], [[wikt:en:collis#Latin|collīs]], [[wikt:en:collocabant|collocābant]], [[wikt:en:collocabat|collocābat]], [[wikt:en:collocandis|collocandīs]], [[wikt:en:collocant#Latin|collocant]], [[wikt:en:collocarat|collocārat]], [[wikt:en:collocare#Latin|collocāre]], [[wikt:en:collocaret|collocāret]], [[wikt:en:collocari|collocārī]], [[wikt:en:collocatas|collocātās]], [[wikt:en:collocati#Latin|collocātī]], [[wikt:en:collocatis#Participle|collocātīs]], [[wikt:en:collocavit|collocāvit]], [[wikt:en:collocuti|collocūtī]], [[wikt:en:colloquantur|colloquantur]], [[wikt:en:colloquendi|colloquendī]], [[wikt:en:colloqui#Latin|colloquī]], [[wikt:en:colloquium#Latin|colloquium]], [[wikt:en:compluribus|complūribus]], [[wikt:en:compluris|complūrīs]], [[wikt:en:conantis|cōnantīs]], [[wikt:en:consili|cōnsilī]], [[wikt:en:egredientis#Etymology_2|ēgredientīs]], [[wikt:en:ei#Latin|eī]], [[wikt:en:eis#Latin|eīs]], [[wikt:en:ferventis#Latin|ferventīs]], [[wikt:en:finis#Latin|fīnīs]], [[wikt:en:glandis#Latin|glandīs]], [[wikt:en:hostis#Latin|hostīs]], [[wikt:en:immittit|immittit]], [[wikt:en:immittunt|immittunt]], [[wikt:en:imperi#Latin|imperī]], [[wikt:en:incolumis#Latin|incolumīs]], [[wikt:en:irridere#Latin|irrīdēre]], [[wikt:en:irrumpit|irrumpit]], [[wikt:en:irruperunt|irrūpērunt]], [[wikt:en:laborantis#Etymology_2|labōrantīs]], [[wikt:en:montis|montīs]], [[wikt:en:navis#Latin|nāvīs]], [[wikt:en:negoti|negōtī]], nōn nūllae, nōn nūllōs, [[wikt:en:offici#Noun_2|officī]], [[wikt:en:omnis#Latin|omnīs]], [[wikt:en:periclum#Latin|perīclum]], plūrīs, [[wikt:en:praesidi|praesidī]], [[wikt:en:proeli|proelī]], proficīscentīs, [[wikt:en:resistentis|resistentīs]], [[wikt:en:singularis#Latin|singulārīs]], [[wikt:en:spati#Latin|spatī]], [[wikt:en:subeuntis|subeuntīs]], [[wikt:en:suffossis|suffossīs]], [[wikt:en:sumministrata|sumministrāta]], [[wikt:en:summissis|summissīs]], [[wikt:en:summittebat|summittēbat]], [[wikt:en:summittit|summittit]], [[wikt:en:summoveri|summovērī]], [[wikt:en:Trinobantes#Latin|Trinobantēs]], trīs, [[wikt:en:turris#Latin|turrīs]], [[wikt:en:utilis#Latin|ūtilīs]], [[wikt:en:vectigalis#Latin|vectīgālīs]] --></span> などは、<br>それぞれ <span style="font-family:Times New Roman;font-style:normal;font-size:15pt;">[[wikt:en:auxilii|auxiliī]], [[wikt:en:partes#Latin|partēs]] <!--[[wikt:en:adcommodatae|adcommodātae]], [[wikt:en:adlatis|adlātīs]], [[wikt:de:Atuatuci|Atuatucī]], Atuatucīs, Atuatucōs, Haeduae, Haeduī, Haeduīs, Haeduōrum, Haeduōs, Haeduus, [[wikt:en:aequinoctii|aequinoctiī]], [[wikt:en:adfectus#Adjective|adfectus]], [[wikt:en:adgregabat|adgregābat]], [[wikt:en:adlato|adlātō]], [[wikt:en:Alpes#Latin|Alpēs]], [[wikt:en:adpelluntur|adpelluntur]], [[wikt:en:adportari|adportārī]], [[wikt:en:adpropinquabat|adpropinquābat]], [[wikt:en:adpropinquare|adpropinquāre]], [[wikt:en:adpropinquarent|adpropinquārent]], [[wikt:en:adpropinquaverunt|adpropinquāvērunt]] ([[wikt:en:adpropinquarunt|adpropinquārunt]]), [[wikt:en:adpropinquavit|adpropinquāvit]], [[wikt:en:adpulso|adpulsō]], [[wikt:en:adripere|adripere]], [[wikt:en:adscendissent|adscendissent]], [[wikt:en:adscensu#Noun|adscēnsū]], [[wikt:en:adsuefacti|adsuēfactī]], [[wikt:en:cedentes#Latin|cēdentēs]], 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<span style="font-family:Times New Roman;font-style:normal;font-size:15pt;"></span>
<span style="font-family:Times New Roman;font-style:oblique;font-size:15pt;"></span>
<span style="color:#b00;"></span>
<span style="color:#800;"></span>
<span style="font-size:10pt;"></span>
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== 注解 ==
=== 1項 ===
<span style="font-family:Times New Roman;font-size:20pt;"></span>
;語釈
<span style="font-family:Times New Roman;font-size:15pt;background-color:#fff;"></span>
<span style="font-family:Times New Roman;font-size:15pt;"></span>
<span style="font-family:Times New Roman;font-size:15pt;"></span>
<span style="background-color:#ccffcc;"></span>
<!--
;対訳
《 》 内は、訳者が説明のために補った語。<span style="font-family:Times New Roman;font-size:30pt;">{</span> <span style="font-family:Times New Roman;font-size:30pt;">}</span> 内は関係文。
<span style="font-family:Times New Roman;font-size:15pt;"></span>
-->
== 訳文 ==
*<span style="background-color:#dff;">訳文は、[[ガリア戦記_第6巻#11節]]</span>
== 脚注 ==
{{Reflist}}
== 解説 ==
<!--
{| class="wikitable" style="text-align:center"
|- style="height:23em;"
|
|
|}
-->
== 関連項目 ==
*[[ガリア戦記]]
**[[ガリア戦記/注解編]]
***[[ガリア戦記 第6巻/注解]]
**[[ガリア戦記/用例集]]
== 関連記事 ==
== 外部リンク ==
*[https://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=hvd.hn1tp9&seq=225 #225 - C. Iuli Caesaris De bello gallico libri VII : Caesar's Gallic ... - Full View | HathiTrust Digital Library]
[[Category:ガリア戦記 第6巻|11節]]
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高校化学 水素と貴ガス
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Nermer314
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Nermer314 がページ「[[高校化学 水素と貴ガス]]」を「[[高校化学 非金属元素]]」に移動しました: ページ体系の変更
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text/x-wiki
#転送 [[高校化学 非金属元素]]
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高校化学 アルカリ金属
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2024-11-27T14:52:21Z
Nermer314
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Nermer314 がページ「[[高校化学 アルカリ金属]]」を「[[高校化学 典型金属]]」に移動しました: ページ体系の変更
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text/x-wiki
#転送 [[高校化学 典型金属]]
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高校化学 鉄
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Nermer314
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Nermer314 がページ「[[高校化学 鉄]]」を「[[高校化学 遷移金属]]」に移動しました: ページ体系の変更
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text/x-wiki
#転送 [[高校化学 遷移金属]]
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